説明

ニガヨモギより得られた防腐・抗菌機能を有するエキス剤

【課題】 現在化粧品業界では消費者の製品に対する安全性への関心が高まっている。それに伴い、製品に配合される原料についても天然物由来のものが好まれる傾向にある。
特に製品中に配合される防腐剤は安全性や肌への刺激などが懸念されているが、薬事法上製品には原則として3年間の品質保証期間を義務づけているため防腐剤の使用が避けられないという現状がある。
そこで、化粧品業界では消費者の安全性への要望に応えるため天然物由来の防腐剤を開発しようと努力が行われているが、未だに安全性、機能性、扱いやすさにおいて満足のいく天然物由来の防腐原料を開発出来ずにいる。
【解決手段】 本発明は、キク科ヨモギ属の一種であるニガヨモギから抽出して得られた成分を化粧品に2〜7%、さらに好ましくは5〜7%配合することで防腐剤としての機能を十分に発揮することを発見した。
また、ニガヨモギの抽出物は元来飲料として古くから用いられており、現在では食品添加物として苦味成分としての利用も行われており、それに伴う安全性試験も数多く行われており安全性の高い原料であると言える。
さらに、ニガヨモギの抽出物は水溶性の液体として得られ、化粧品を製造するにあたり溶解性が高く非常に扱い易い原料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクリームや美容液、化粧水等に使用される化粧品類に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より化粧品に配合される原料として商品の価値を高める有効原料の他に、商品を安定化させる目的として酸化防止剤や防腐剤などの配合が必要とされている。特に、防腐剤はその配合目的から商品の安全性を保持する意味でも最も重要なものである。一般的に、化粧品に配合される防腐剤として、メチルパラベンやエチルパラベン、プロピルパラベンなどのパラベン類や、デヒドロ酢酸塩、安息香酸塩等が用いられている。また、近年では、フェノキシエタノールや1,3−ブチレングリコール、ヘキサンジオールなどにより、パラベン類を使用しなくても防腐できる処方が汎用されるようになっている。
【0003】
しかし、既存の防腐剤やフェノキシエタノールや1,3−ブチレングリコール、ヘキサンジオールなどの肌への刺激性が懸念されるようになり、消費者の商品に対する安全性への関心が高まっている。さらに、安全性の面から天然素材への関心の高まりにより、防腐剤の使用へ嫌悪感を抱く消費者もおり、天然由来成分による化粧品を求める傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような現状を受け、パラベン類の配合をしないパラベンフリー商品が販売されるなど消費者の要望に応えようと化粧品業界の努力が行われている。しかし、化粧品は原則として3年以上の品質保持期間が好ましいとされているため、防腐剤の使用は避けられない。防腐剤の未使用から発生する、微生物による化粧品の汚染は非常に危険であり、使用箇所への雑菌汚染による深刻な問題を引き起こす。また、パラベン類の代替品として配合される防腐剤の多くは肌への刺激が懸念されるものも多い。
【0005】
本発明は、ニガヨモギから抽出することにより得た防腐機能を有する天然エキス成分であり、この抽出物は元来飲料や食品の苦味成分として添加物として使用されていることから安全性が確認されており、パラベン類と同等又はそれ以上の防腐能をもつ成分であることを発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、キク科ヨモギ属の一種であるニガヨモギに含まれる成分が防腐成分として利用できることを見出したものである。
【0007】
ニガヨモギの抽出物はセスキテルペンを主成分とし、ツヨンやサントニンなど様々な成分を含有する抽出物である。
【0008】
ニガヨモギをアルコール類による蒸留により抽出されたアルコール濃度53%の液体を用いることにより本発明の説明を行う。しかし、本発明はニガヨモギの抽出物における防腐機能に関するものであり、抽出方法及び抽出方法によるニガヨモギ由来成分を含有する抽出物の形態を限定するものではない。
【0009】
本発明は、配合を目的とする成分のうち水及びその他の配合原料が93〜97重量%、ニガヨモギより抽出された原料が3〜7重量%とで化粧品類を構成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果を説明するために以下のような実験を行った。
【0011】
鶏肉に含まれるサルモネラ菌に対するニガヨモギ抽出物の防腐能力の検討を行う。
【0012】
まず、5%ニガヨモギ抽出液配合水溶液、6%ニガヨモギ抽出液配合水溶液、7%ニガヨモギ抽出液配合水溶液、0.2%メチルパラベン水溶液、対照の以上5種類のサンプルについて実験を行う。本実験におけるメチルパラベンの濃度は、薬事法上メチルパラベンの配合濃度は1%以下と定められており、さらに化粧品においてメチルパラベンの使用は0.5%以下が一般的である。それらを考慮し化粧品などに配合されるメチルパラベンの最も現実的な配合濃度として0.2%濃度のメチルパラベン水溶液とした。
【0013】
市販の鶏肉をサンプルとして用意し、鶏肉を10g量り取りそこに90mlの精製水を加え鶏肉を潰すようにして混ぜ合わせる。前工程で作成したサンプルを37℃で24時間培養を行う。24時間培養後それを1ml量り取り精製水を99ml加え100倍希釈し、これをサルモネラ菌株とする。試験試料をそれぞれ50mlずつ調整する。調整した試料に、サルモネラ菌株含有液を0.1mlずつ加え30分間培養を行う。培養終了後、それぞれの試料を培地に殖菌を行う。以後一時間置きに一回以上の観察を行い、各サンプルの変化の記録をおこない、平均値を測定する。(使用した培地:株式会社アテクト製プチ生培地「標準寒天培地」、株式会社アテクト製プチ生培地「マデック培地」)
【0014】
以上のいような方法で実験を行った際、表1およびグラフ1のような結果が得られた。
【0015】
【表1】

【グラフ1】

【0016】
この実験結果から、ニガヨモギ抽出液を配合したものについて顕著な抗菌作用が確認できた。その抗菌力は、5〜7%の間で0.2%メチルパラベンと同等またはそれ以上の力を発揮している。
【0017】
次に、このニガヨモギ抽出液の抗菌作用が抽出に用いられたアルコール分によるものでないことを確認するため以下のような実験を行った。
【0018】
まず、2%ニガヨモギ抽出液配合水溶液、2%アルコール水溶液、対照の3種類の試料について実験を行った。
【0019】
市販の鶏肉をサンプルとして用意し、鶏肉を10g量り取りそこに90mlの精製水を加え鶏肉を潰すようにして混ぜ合わせる。
前工程で作成したサンプルを37℃で24時間培養を行う。
24時間培養後それを1ml量り取り精製水を99ml加え100倍希釈し、これをサルモネラ菌株とする。
試験試料をそれぞれ50mlずつ調整する。
調整した試料に、サルモネラ菌株含有液を0.1mlずつ加え30分間培養を行う。
培養終了後、それぞれの試料を培地に殖菌を行う。(使用した培地:株式会社アテクト製プチ生培地「標準寒天培地」)
【0020】
以上の手順で実験を行ったところ表2およびグラフ2のような結果が得られた。
【0021】
【表2】

【グラフ2】

【0022】
この結果のとおり、2%アルコール水溶液は全く抗菌作用を示していないが、2%ニガヨモギ抽出液配合水溶液は顕著にその抗菌作用を示している。
【0023】
この結果より、ニガヨモギ抽出液の抗菌作用はその抽出時に用いられるアルコールによるものではなく、抽出により得られるニガヨモギに含まれる有効成分によるものであることがわかる。
【0024】
防腐を目的として配合される成分に求められる条件として抗菌作用の多様性が上げられる。
【0025】
現在使用されている防腐成分には、ある特定の菌腫に対して著しく防腐作用が低く又は全く作用しない成分などがある。
【0026】
この場合、いくつかの防腐剤の併用が必要となり、防腐剤の配合割合が高くなってしまうことが多く、結果として肌への負担を増加させてしまうということがある。
【0027】
そこで本発明が防腐成分としていかに多様性を持ち、優れた発明なのかを検証するために、化粧品の開発などで防腐能力の確認で行う抗菌テストを行った。
【0028】
今回試験では、S.aureus(黄色ブドウ球菌)、E.coli(大腸菌)、P.aeruginosa(グラム陰性細菌)、C.albicans(真菌)、A.niger(クロカビ)の5種類の菌類について試験を行った。
【0029】
今回の試験は、それぞれの菌を試験物に殖菌し28日間培養を行い初発菌数と14日目、そして28日目の菌数を測定することで、試験物における菌数の増減を観察することにより防腐能力を評価するものである。
【0030】
今回、抗菌テストを行った試験物の処方は、水85重量%、グリセリン8重量%、プロピレングリコール4.99重量%、ニガヨモギ抽出液1重量%、水溶性コラーゲン1重量%、ヒアルロン酸Na0.01重量%である。
【0031】
この処方は、一般的な化粧水をモデルにグリセリン、プロピレングリコールを配合し、細菌汚染による菌の増殖の危険性を持たせるため、あえて水溶性コラーゲンとヒアルロン酸Naを配合しテストを行った。また、ニガヨモギ抽出液以外の防腐成分が配合されていないことが確認できる。
【0032】
試験の結果を表3およびグラフ3に示す。
【0033】
【表3】

【グラフ3】

【0034】
試験の結果からニガヨモギ抽出液の配合濃度が1%と低濃度であっても全ての菌腫に対して抗菌作用を示している。
【0035】
このことからニガヨモギ抽出液が防腐成分として多くの菌腫に対して作用し、本発明単独でも十分に防腐機能をはたすことが確認できる。
しかし、これは本発明の使用方法を単独での使用とすることを限定するものでは無く、2種類以上の他の成分と組み合わせることで使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は化粧品類を製造する産業で利用される。
【0037】
本発明は液体成分であることから非常に扱いやすく主にクリーム、美容液、化粧水、その他様々な形態の製品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニガヨモギ抽出液を配合した化粧品類
【請求項2】
ニガヨモギ抽出液を防腐成分として利用された原料
【請求項3】
ニガヨモギ抽出液を防腐成分として配合された化粧品類
【請求項4】
ニガヨモギ抽出液に含有される成分を用いた防腐成分

【公開番号】特開2013−10728(P2013−10728A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154293(P2011−154293)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(511169265)
【Fターム(参考)】