説明

ニキビ改善剤

【課題】高濃度のビタミンC又はその誘導体によるスティンギングの誘発がなく、ニキビの改善に高い効果を有するニキビ改善剤を提供する。
【解決手段】本発明は、ビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とし、ビタミンC又はその誘導体と、グルタチオンレダクターゼ活性増強作用を有するサンシチニンジン抽出物とを併せて用いることにより、スティンギングを誘発することなく、相乗的にニキビの改善効果が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤及びニキビ改善用皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ニキビとは、様々な原因により引き起こされる皮膚の炎症性疾患で、医学的には尋常性ざ瘡と呼ばれる。主に皮脂腺の多い顔、頭、胸、背中に多く発症する。ニキビの発症には、皮脂分泌過剰、毛嚢角化、毛嚢内細菌が重要な役割を果たしつつ、種々の要因が複雑に絡み合っていると考えられている。したがって、ニキビ治療用の外用剤としては、皮脂分泌抑制成分、角質溶解成分、消炎成分及び抗菌物質を配合したクリームや軟膏が一般に多く用いられている。
【0003】
近年、ビタミンC類を含有する製剤で処置することにより、臨床的にニキビの改善効果がみられることが明らかになってきた(特許文献1)。ビタミンC類は、強力な還元作用を有する抗酸化成分であることから、ニキビの改善に皮膚の酸化防御が有効であると考えられるが、ビタミンC類の高濃度化によりニキビの改善効果を高めることには、ビタミンC類に起因するスティンギングが誘発されやすくなるという問題があり、実用的ではない。スティンギングとは、化粧品等を塗布した際に、一過性に感じるヒリヒリ感やチクチク感のことであり、これによりその化粧品等の使用を中止せざるを得ない場合も少なくない。そこで、ビタミンC類の高濃度化以外にニキビの改善効果を高める手段の開発が望まれていた。
【0004】
一方、グルタチオンとは、グルタミン酸、システイン、グリシンからなるトリペプチドであり、細胞内に存在する抗酸化成分である。グルタチオンは、電子供与体として作用することによって還元作用を示すが、このプロセスにおいて酸化型グルタチオンに変換される。酸化型グルタチオンは、グルタチオンレダクターゼの作用により還元型グルタチオンに変換され、再度、還元作用を示すようになる。すなわち、細胞内のグルタチオンレダクターゼ活性を高めることは、細胞の抗酸化レベルを高めることにつながると考えられ、グルタチオンレダクターゼ活性増強剤が開示されている(特許文献2)。
【0005】
近年、サンシチニンジン抽出物についての研究が進められ、コラーゲン合成促進剤(特許文献3)、毛髪育成用組成物(特許文献4)が開示されているが、サンシチニンジン抽出物のグルタチオンレダクターゼ活性増強作用及びニキビ改善作用は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−244370
【特許文献2】特開2006−206513
【特許文献3】特開2005−139141
【特許文献4】特開2009−167121
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビタミンC又はその誘導体単独でのニキビ改善効果は、低濃度では充分なものではなく、高濃度では効果は高まるもののスティンギング誘発という問題があった。本発明は、スティンギングを誘発することなく、高い効果を有するニキビ改善剤及びニキビ改善用皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、この問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、皮膚細胞内のグルタチオンレダクターゼ活性を亢進し細胞の抗酸化レベルを高めることがニキビの改善に有用であることを見出した。また、ビタミンC又はその誘導体と、グルタチオンレダクターゼ活性増強剤とを併用することにより、スティンギングを誘発することなく、相乗的にニキビ改善効果を増強することができること、さらにサンシチニンジン抽出物がグルタチオンレダクターゼ活性増強作用を発揮することを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、ビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤及びニキビ改善用皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを併せて用いることにより、スティンギングを誘発することなく、相乗的にニキビの改善効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明でいうビタミンC又はその誘導体としては特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸のリン酸エステル、アスコルビン酸の脂肪酸エステル、アスコルビン酸グルコシド等のアスコルビン酸の配糖体及びそれらの塩等を挙げることができる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩が好ましい。これらのビタミンC又はその誘導体のうち、特に好ましいものは、アスコルビン酸又はアスコルビン酸リン酸エステル、及びそれらの塩である。これらは一種を用いることもできるし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0012】
本発明でいうサンシチニンジンは、ウコギ科ニンジン属に属し、学名Panax noto−ginsengである。中国南部雲南省近郊の標高約1500mの高山の斜面で栽培され、漢方薬として、止血、滋養強壮薬に用いられる。生薬としては、三七人参、田七人参、三七、田七、山漆、金不換等の名称があり、製造方法の違いから、根をそのまま乾燥した三七人参、田七人参と、蒸気で蒸して加熱処理をしてから乾燥した熟三七人参、熟田七人参等に大別できる。
【0013】
本発明に用いるサンシチニンジン抽出物とは、植物体の葉、茎、花、果実、種子、根等の植物体の一部又は全草から抽出した物である。好ましくは根から抽出して得られるものがよい。これは三七人参の名称で市販されているので、それを利用することができる。
【0014】
本発明のサンシチニンジンの抽出方法は特に限定されず、例えば、加熱抽出したものであっても良いし、常温又は低温で抽出したものであっても良い。
抽出する溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)が挙げられる。好ましくは、水、低級アルコール及び液状多価アルコール等の極性溶媒が良く、特に好ましくは、水、エタノール、1,3−ブチレングリコール及びプロピレングリコールが良い。これらの溶媒は1種でも2種以上を混合して用いても良い。
【0015】
上記抽出物は、抽出した溶液のまま用いても良く、必要に応じて、濃縮、希釈、濾過、活性炭等による脱色、脱臭等の処理をして用いても良い。さらには、抽出した溶液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行い、乾燥物として用いても良いし、カラム精製等を行って有効成分を濃縮したり、単離して用いても良い。
【0016】
本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤を用いるには、通常外用により投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常成人1人当たり1回に1mg〜5000mg、好ましくは5mg〜1000mg、より好ましくは20mg〜200mgの範囲で1日1回から数回投与される。投与量は種々の条件で変動するので、上記投与範囲より少ない量で十分な場合もあるし、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【0017】
本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤は、化粧品、医薬部外品及び医薬品のいずれにも用いることができ、その剤型としては、例えば、化粧水、クリーム、乳液、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、パップ剤、ペースト剤、プラスター剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション、打粉、口紅等の皮膚に適用されるものが挙げられる。ビタミンC又はその誘導体と上記抽出物をそのまま使用しても良く、それらの効果を損なわない範囲内で、外用剤に用いられる成分である油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、増粘剤、色素、酸化防止剤、キレート剤等の成分を配合することができる。
【0018】
本発明に用いるビタミンC又はその誘導体の配合量は、本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤の全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上、好ましくは0.001〜5重量%の配合が良い。0.0001重量%未満では充分な効果は望みにくい。5重量%を超えて配合した場合、スティンギングを誘発しやすくなる。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0019】
本発明に用いるサンシチニンジン抽出物の配合量は、本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤の全量に対し、固形物に換算して0.0001重量%以上、好ましくは0.001〜50重量%の配合が良い。0.0001重量%未満では充分な効果は望みにくい。50重量%を超えて配合した場合、効果の増強はみられにくく不経済である。また、添加の方法については、予め加えておいても、製造途中で添加しても良く、作業性を考えて適宜選択すれば良い。
【0020】
本発明を詳細に説明するため、実施例として本発明に用いる抽出物の製造例、ニキビ改善剤又はニキビ改善用皮膚外用剤の処方例及び実験例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
製造例1 サンシチニンジンの熱水抽出物
サンシチニンジンの根の乾燥物を細かく切断し、40gに800mLの水を加えた後に95〜100℃で2時間抽出した。得られた抽出液を濾過し、濃縮した後に凍結乾燥してサンシチニンジンの熱水抽出物7.5gを得た。
【0022】
製造例2 サンシチニンジンの50%エタノール抽出物
サンシチニンジンの根の乾燥物を細かく切断し、100gに500mLの水及び500mLのエタノールを加えた後に常温で7日間抽出した。得られた抽出液を濾過した後に濃縮乾固してサンシチニンジンの50%エタノール抽出物9.8gを得た。
【0023】
製造例3 サンシチニンジンの50%1,3−ブチレングリコール抽出物
サンシチニンジンの葉及び茎の乾燥物を細かく切断し、20gに1,3−ブチレングリコールの50重量%水溶液を200g加え、常温で7日間抽出した。抽出後、その抽出液を濾過してサンシチニンジンの50%1,3−ブチレングリコール抽出物160gを得た。
【実施例2】
【0024】
本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤又はニキビ改善用皮膚外用剤の処方例として下記の製剤化を行うことができる。
【0025】
処方例1 化粧水1
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸リン酸ナトリウム 1.0
2.サンシチニンジンの熱水抽出物(製造例1) 0.1
3.1,3−ブチレングリコール 8.0
4.グリセリン 2.0
5.キサンタンガム 0.02
6.クエン酸 0.01
7.クエン酸ナトリウム 0.1
8.エタノール 5.0
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
11.香料 0.1
12.精製水 83.47
[製造方法]成分1〜7及び12と、成分8〜11をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0026】
比較例1 従来の化粧水1
処方例1において、サンシチニンジンの熱水抽出物を精製水に置き換えたものを従来の化粧水1とした。
【0027】
比較例2 従来の化粧水2
処方例1において、アスコルビン酸リン酸ナトリウムを精製水に置き換えたものを従来の化粧水2とした。
【0028】
比較例3 従来の化粧水3
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸リン酸ナトリウム 6.0
2.1,3−ブチレングリコール 8.0
3.グリセリン 2.0
4.キサンタンガム 0.02
5.クエン酸 0.01
6.クエン酸ナトリウム 0.1
7.エタノール 5.0
8.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
9.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 0.1
10.香料 0.1
11.精製水 78.57
[製造方法]成分1〜6及び11と、成分7〜10をそれぞれ均一に溶解し、両者を混合し濾過して製品とする。
【0029】
比較例4 従来の化粧水4
処方例1において、アスコルビン酸リン酸ナトリウム及びサンシチニンジンの熱水抽出物を精製水に置き換えたものを従来の化粧水4とした。
【0030】
処方例2 クリーム
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 0.5
2.サンシチニンジンの50%エタノール抽出物
(製造例2) 0.1
3.スクワラン 5.5
4.オリーブ油 3.0
5.ステアリン酸 2.0
6.ミツロウ 2.0
7.ミリスチン酸オクチルドデシル 3.5
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ベヘニルアルコール 1.5
10.モノステアリン酸グリセリン 2.5
11.香料 0.1
12.1,3−ブチレングリコール 8.5
13.パラオキシ安息香酸エチル 0.05
14.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
15.精製水 67.55
[製造方法]成分3〜10を加熱して混合し、70℃に保ち油相とする。成分12〜15を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分11を加え、更に30℃まで冷却して成分1及び2を加え、製品とする。
【0031】
処方例3 乳液
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸 0.5
2.サンシチニンジンの50%1,3−ブチレン
グリコール抽出物(製造例3) 0.05
3.スクワラン 5.0
4.オリーブ油 5.0
5.ホホバ油 5.0
6.セタノール 1.5
7.モノステアリン酸グリセリン 2.0
8.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
9.ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート 2.0
10.香料 0.1
11.プロピレングリコール 1.0
12.グリセリン 2.0
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
14.精製水 72.65
[製造方法]成分3〜9を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分11〜14を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら冷却し、45℃で成分10を加え、更に30℃まで冷却して成分1及び2を加え、製品とする。
【0032】
処方例4 軟膏
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸リン酸ナトリウム 1.0
2.サンシチニンジンの熱水抽出物(製造例1) 1.0
3.ポリオキシエチレンセチルエーテル(30E.O.) 2.0
4.モノステアリン酸グリセリン 10.0
5.流動パラフィン 5.0
6.セタノール 6.0
7.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
8.プロピレングリコール 10.0
9.精製水 64.9
[製造方法]成分3〜6を加熱溶解して混合し、70℃に保ち油相とする。成分1、2及び7〜9を加熱溶解して混合し、75℃に保ち水相とする。油相に水相を加えて乳化して、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0033】
処方例5 ファンデーション
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸リン酸マグネシウム 1.0
2.サンシチニンジンの熱水抽出物(製造例1) 1.0
3.ステアリン酸 2.4
4.ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート
(20E.O.) 1.0
5.ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 2.0
6.セタノール 1.0
7.液状ラノリン 2.0
8.流動パラフィン 3.0
9.ミリスチン酸イソプロピル 6.5
10.パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
11.カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
12.ベントナイト 0.5
13.プロピレングリコール 4.0
14.トリエタノールアミン 1.1
15.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
16.二酸化チタン 8.0
17.タルク 4.0
18.ベンガラ 1.0
19.黄酸化鉄 2.0
20.香料 0.1
21.精製水 59.0
[製造方法]成分3〜10を加熱溶解し、80℃に保ち油相とする。成分21に成分11をよく膨潤させ、続いて、成分1、2及び12〜15を加えて均一に混合する。これに粉砕機で粉砕混合した成分16〜19を加え、ホモミキサーで撹拌し75℃に保ち水相とする。この水相に油相をかき混ぜながら加え、冷却し、45℃で成分20を加え、かき混ぜながら30℃まで冷却して製品とする。
【0034】
処方例6 浴用剤
成分 配合量(重量%)
1.アスコルビン酸 2.0
2.サンシチニンジンの50%エタノール抽出物
(製造例2) 5.0
3.炭酸水素ナトリウム 50.0
4.黄色202号(1) 0.05
5.香料 0.25
6.無水硫酸ナトリウム 42.7
[製造方法]成分1〜6を均一に混合し製品とする。
【実施例3】
【0035】
以下、本発明を効果的に説明するために、実験例を挙げる。なお、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0036】
実験例1 細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化試験
細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化効果を下記の条件にて測定した。
【0037】
コンフルエントな状態のヒト表皮角化細胞を、1μg/mLの試料を含むDMEM培地でさらに24時間培養した後、細胞を剥離し、1mMEDTAを含む50mMリン酸緩衝液(pH7.5)1mLを加えて超音波破砕し、15,000rpmで15分間遠心分離を行い、上清を試料溶液とした。試料溶液900μLに、9.5mM酸化型グルタチオン/リン酸緩衝溶液100μL及び2mMNADPH/リン酸緩衝溶液120μLを加え、340nmの吸光度の時間変化(φA340nm/min、3分間)を測定し、標準のグルタチオンレダクターゼ0、5、10及び20mU/mLから作成した検量線より試料溶液のグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。同時に、試料溶液のタンパク濃度を測定し、単位タンパク当りのグルタチオンレダクターゼ活性を算出した。試料未添加の細胞のグルタチオンレダクターゼ活性をコントロールとし、コントロールを100としたときの試料添加のグルタチオンレダクターゼ活性の値を以下の数1により算出し、細胞内グルタチオンレダクターゼ活性とした。
【0038】
【数1】

【0039】
これらの試験結果を表1に示した。サンシチニンジン抽出物には優れた細胞内グルタチオンレダクターゼの活性化作用が認められた。
【0040】
【表1】

【0041】
実験例2 使用試験
処方例1及び比較例1〜4の化粧水を用いて、軽度のニキビに悩む20代〜30代の女性75名を対象に1ヶ月間の使用試験を行った。被験者を15名ずつ5群に分け、それぞれ処方例1及び比較例1〜4の化粧水を連日朝晩の2回使用させた。試験終了後、ニキビの改善度を著しく改善:スコア3、改善:スコア2、やや改善:スコア1、不変:スコア0、増悪:スコア−1の基準で評価した。また、スティンギングの実感を調査した。
【0042】
これらの試験結果を表2に示した。ビタミンCの誘導体を配合した比較例1の従来の化粧水1及びサンシチニンジン抽出物を配合した比較例2の従来の化粧水2を使用した群では、それぞれ比較例4の従来の化粧水4を使用した群に比べ、ニキビ改善スコアの増加が認められた。ビタミンCの誘導体を高濃度配合した比較例3の従来の化粧水3を使用した群では、さらなるニキビ改善スコアの増加がみられたが、半数以上の被験者にスティンギングの誘発がみられた。一方、ビタミンCの誘導体とサンシチニンジン抽出物とを配合した処方例1の化粧水を使用した群では、スティンギングの誘発はみられず、ビタミンCの誘導体を高濃度配合した比較例3の従来の化粧水3を使用した群を上回るニキビ改善スコアの増加がみられ、その効果は、ビタミンCの誘導体及びサンシチニンジン抽出物それぞれ単独の効果に対し、相乗的なものであった。なお、試験期間中、トラブルはひとりもなく、安全性においても問題はなかった。また、処方例2〜6についても優れたニキビ改善効果が認められ、スティンギングの誘発もみられなかった。
【0043】
【表2】

【0044】
以上の結果より、本発明のサンシチニンジン抽出物は、グルタチオンレダクターゼ活性増強効果を示すこと、また本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤は、スティンギングを誘発することなく、優れたニキビ改善効果を示すことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤は、スティンギングを誘発することなく、優れたニキビ改善作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC又はその誘導体と、サンシチニンジン抽出物とを含有することを特徴とするニキビ改善剤。
【請求項2】
請求項1記載のニキビ改善剤を含有することを特徴とするニキビ改善用皮膚外用剤。

【公開番号】特開2013−49634(P2013−49634A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186845(P2011−186845)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】