説明

ニコチン作動薬を含む組成物及びそれを用いる方法

本発明は、例えば、神経系障害を治療するニコチン作動薬を含む組成物及び方法を対象とし、特に、ニコチン作動薬(例えば、ニコチン)及びニコチン性アセチルコリン受容体脱感作阻害薬(例えば、オピプラモール)を含む併用療法を対象としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ニコチン作動薬の投与に反応する疾患、障害又は中毒を治療する及び/又は制御する組成物及び方法に関し、特に、ニコチン作動薬をニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の脱感作の阻害薬と共に含む、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)の障害、疾患及び状態を治療するための組成物及び併用療法に関する。ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬のこの組合せは、ニコチン作動薬をより有効にし、その作用時間を延長する。
【背景技術】
【0002】
ニコチン性ACh受容体(nAChR)は、中枢神経系(CNS)及び末梢神経系(PNS)並びに横紋筋に存在するあるクラスの(5つのサブユニットを含む)五量体のリガンド開口型イオンチャネルを含む。神経系のnAChR及び末梢ニューロンで見出されるnAChRは、構造上(サブユニット組成物)及び機能上の側面において横紋筋で見出されるnAChRと異なる。一方、横紋筋受容体は、2つのαサブユニット(α1)及び1つのβサブユニット(β1)、1つのγサブユニット及び1つのδ(又は1つのε)サブユニットを含み、ニューロンのnAChRは、α(α2〜α10サブタイプのうち少なくとも2つのサブユニット)及びβ(一般に、β2〜β4サブタイプのうち3つのサブユニット)のみから構成される。ニューロンのnAChR(α2〜α10)のαサブユニットのアミノ酸配列は、(ACh結合部位及び膜を貫通する4つの疎水性領域を含む)糖脂質領域からなる。ニューロンのβサブユニット(β2〜β4)は、αサブユニットのリガンド結合領域に存在する、隣接する対のシスチンを有さない。
【0003】
大まかに言えば、AChの2つの分子は、受容体のそれぞれのα−サブユニットに結合し、すべての受容体サブユニットの立体構造変化を誘発し、その結果、Na/Kチャネルを開口し、局所的な脱分極を引き起こす。局所的な脱分極は、活動電位を起こし、神経筋接合部におけるいくつかの受容体の作用と一緒になったとき、筋収縮などの生理反応をもたらし得る。ニコチン性受容体は、安静時にはAChに対して比較的低い親和性を有する。アセチルコリンに対する親和性は、第1のACh分子の結合後、(AChの別の分子が他方のαサブユニットに結合する可能性を増加させる、アロステリックな機序により)増加する。AChへの長期の曝露後及び例えば、この神経伝達物質の高濃度で、受容体チャネルは例えば、AChの受容体への親和性を増加させるにもかかわらず閉じることがあり、続いて受容体は脱感作され得る。
【0004】
nAChRのアロステリック遷移状態モデルには、少なくとも静止状態、活性化状態及び「脱感作した」閉じたチャネル状態が含まれる。異なるnAChRリガンドは、それらが優先的に結合する立体構造状態を差次的に安定させることができる。例えば、作動薬ACh及び(−)−ニコチンは、まず活性状態を安定させ、次いで脱感作状態を安定させる。
【0005】
nAChRは、体温調節、認知、注意などの様々な脳機能の調節に関与する。したがって、潜在的に、ニコチン又は直接的若しくは間接的にnAChRを活性化する薬物による治療は、アルツハイマー型認知症、統合失調症に関連する認知障害、例えば、注意欠陥多動障害(ADHD)における注意欠陥などの認知機能障害を緩和するのに有益な効果を提供することができる。ニコチンはまた、神経保護的であることが示されており、喫煙とパーキンソン病及びアルツハイマー病などの神経変性障害の発症との間の負相関も報告されている。さらに、ニコチンは禁煙にも用いられる。
【0006】
過去数年にわたって、様々な研究グループが、選択的ニコチン作動薬の開発に焦点を絞ってきた。ニコチン作動薬は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び慢性疼痛を含めた、様々な神経障害の治療に有用となり得る。例えば、エピバチジン、エピボキシジン、ABT−418、ABT−594及びSIB−1508(アルチニクリン)などのニコチン作動薬は鎮痛性を示すことが明らかにされており、nAChRが新規な鎮痛薬の標的として用いられ得ることが示唆されている。
【0007】
nAChRが急速に脱感作されると、ニコチン、及びニコチン性受容体を直接的又は間接的に活性化させる他の薬剤が治療薬として無効になることがある。さらに、ニコチン作動薬は、非競合的な遮断(開口チャネル遮断)の過程により無効になることがある。さらに、長期の活性化は、持続的な受容体不活性化を誘発すると思われる。受容体の脱感作を遅らせ、したがって、ニコチン作動薬のプラスの効果を延長し、又は反復投与中にそれらをより有効にする薬物を見出すことが望まれよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、一態様では、少なくとも1つのニコチン作動薬を少なくとも1つのnAChR脱感作阻害薬及び医薬として許容される担体と共に含む医薬組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
任意のニコチン作動薬は、直接型ニコチン作動薬及び間接型ニコチン作動薬は共に、本発明の組成物中で、例えば、それだけには限らないが、ニコチン、ニコチン代謝産物、臭化デカメトニウム、エピバチジン、ロベリン、バレニクリン、エピボキシジン、エピキナミド;ABT418、すなわち、(S)−3−メチル−5−(1−メチル−2−ピロリジニル)イソキサゾール、α4β2nAChR作動薬である(−)−ニコチンのイソキサゾール類似体;ABT−594、エピバチジンのアゼチジン誘導体;ABT−894;DMXB−A、すなわち、3−(2,4−ジメトキシベンジリデン)−アナバセイン(GTS−21としても知られている)、α7−nAChR選択的作動薬;SIB−1508(アルチニクリン);及びRJR2403(メタニコチン)、及び医薬として許容されるその塩及び異性体などの直接型ニコチン作動薬を使用することができる。本発明で企図される活性ニコチン代謝産物の例としては、コチニン、ノルニコチン、ノルコチニン、ニコチンN−オキシド、コチニンN−オキシド、3−ヒドロキシ−コチニン、5−ヒドロキシ−コチニン及び医薬として許容されるその塩が含まれる。ニコチン塩の例としては、ニコチンシトラート及びニコチンマレアートが含まれる。好ましい実施形態では、ニコチン作動薬は、ニコチン又は医薬として許容されるその塩又はN−オキシドである。間接型ニコチン作動薬の例としては、フィゾスチグミン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミンなどの可逆的コリンエステラーゼ阻害薬及びエコチオファートなどの非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬である。間接型ニコチン作動薬は、単独で又は直接型ニコチン作動薬と共に用いることができる。
【0010】
本発明の組成物に用いることができる代表的なnAChR脱感作阻害薬には、それだけには限らないが、イオンチャネル阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬、カリウムチャネル阻害薬、カルシウムチャネル阻害薬、β遮断薬、σ受容体拮抗薬、ノルエピネフリン(NE)再取り込み阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、ムスカリン作動薬、アデノシン拮抗薬、κオピオイド作動薬、ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬、神経ステロイド、σ1受容体作動薬、及びガランタミン、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が含まれる。
【0011】
イオンチャネル阻害薬の例としては、リドカイン及びメピバカインが含まれる。ナトリウムチャネル阻害薬の例としては、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、メキシレチン、トカイニド、フレカイニド、プロパフェノンが含まれる。カリウムチャネル阻害薬の例としては、ニベタン、ソタロール、アミオダロン、ブレチリウムが含まれる。カルシウムチャネル阻害薬の例としては、ベラパミル、ジルチアゼムが含まれる。β遮断薬の例としては、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、メトプロロールが含まれる。σ受容体拮抗薬の例としては、オピプラモール、リムカゾールが含まれる。NE再取り込み阻害薬の例としては、ドスレピン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、プロトリプチリンが含まれる。選択的セロトニン再取り込み阻害薬の例としては、クロミプラミンが含まれる。ムスカリン作動薬の例としては、McN−A−343、アレコリン、セビメリン(AF−102B)、AF−150、及びAF−267Bが含まれる。アデノシン拮抗薬の例としては、カフェインが含まれる。κオピオイド作動薬の例としては、コデイン又はペンタゾシンが含まれる。ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬の例としては、クロザピン、DHA、又はクエチアピンが含まれる。神経ステロイドの例としては、アルファキサロン、ミナキソロンが含まれる。σ1受容体作動薬の例としては、ペンタゾシンが含まれる。好ましい実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、オピプラモール、McN−A−343、ガランタミン、リドカイン及びクロミプラミン、又は医薬として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグから選択することができる。他のnAChR脱感作阻害薬には、トラゾドン、ノルフルオキセチン、フルオキセチン、又はジメルジンを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、ニコチン性作動薬:nAChR脱感作阻害薬の重量比約1:2〜約1:100、又は約1:5〜約1:20、例えば約1:14などで、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬を含むことができる。
【0013】
企図される本発明の組成物は、医薬として許容される担体をさらに含むことができる。一実施形態において、医薬として許容される担体は、経皮(transdermal)投与又は局所投与に適している。
【0014】
好ましい実施形態では、ニコチン作動薬は、ニコチン、その異性体、医薬として許容される塩又はN−オキシドであり、nAChR脱感作阻害薬は、オピプラモール、McN−A−343、リドカイン、ガランタミン若しくはクロミプラミン、又は医薬として許容されるその塩若しくはプロドラッグである。より好ましい実施形態では、医薬組成物は、a)ニコチン又は医薬として許容されるその塩若しくはN−オキシド、及びb)オピプラモール又は医薬として許容されるその塩、エステル、若しくはプロドラッグを含むものが提供される。
【0015】
企図される本発明の組成物は、経口、非経口、経皮的(transcutaneous)、粘膜、経皮又は吸入投与のうちのいずれか1つに適し得、チューインガム、小袋、薄膜、経皮パッチ、カプセル、錠剤、又は鼻内スプレーの形態となり得る。
【0016】
例えば、本発明で提供されるのは、ニコチン、オピプラモール及び経皮投与又は局所投与に適した医薬として許容される担体を含む組成物を含む経皮パッチであり、前記担体は皮膚浸透促進剤を含むことができる。このような経皮パッチは、ニコチン及びオピプラモールの実質的に連続的な送達を患者に提供するように製剤することができる。
【0017】
また、本発明で提供されるのは、ニコチン、オピプラモール及び組成物を予め決定した送達速度で患者に送達することのできる医薬として許容される担体を含む組成物の送達のための制御放出組成物であり、例えば、予め決定した送達速度は、少なくとも12時間、又は少なくとも1日、又は少なくとも3日、又は少なくとも7日(1週間)にわたって実質的に連続的にである。
【0018】
本発明の医薬組成物は、nAChRの、例えば、ニコチン作動薬への長期の曝露後に普通なら起こる「脱感作した」閉じたチャネル状態への遷移を防止する又は減少させるのに有用である。組成物は、CNS及びPNSの障害、疾患又は状態などの神経系障害、疾患又は状態の治療に有用である。一実施形態において、組成物は、認知機能障害又は認知障害の治療に有用である。いくつかの他の実施形態では、組成物は、それだけには限らないが、不安、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、血管性認知症、レビー小体病、外傷後認知症、ピック病、多発性硬化症、ヤコブ・クロイツフェルト病、ニコチン中毒、アルコール中毒、大麻中毒及びコカイン中毒などの薬物中毒、妄想障害、強迫性障害、衝動制御障害、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する神経状態、痛覚消失、及びハンチントン病などを含めたCNS障害の治療に有用である。いくつかの他の実施形態では、組成物は、それだけには限らないが、手根管症候群、ギラン・バレー症候群、顔面神経麻痺(又はベル麻痺)、感染病原体によって引き起こされるニューロパチー、又は糖尿病性ニューロパチー、アミロイドニューロパチー、及び/又は腕神経叢ニューロパチーなどの単ニューロパチー及び多発ニューロパチーを含めたニューロパチーを含むPNS障害の治療に有用である。
【0019】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物は、タバコ又はニコチンの依存又は使用を治療又は抑制し、したがって、禁煙を誘発するのに有用である。
【0020】
本発明の組成物の投与は、ニコチン作動薬を単独で投与することからなる治療のための方法を用いたニコチン作動薬のその後の投与に比べて、実質的により治療上有効であるニコチン作動薬のその後の投与の効果を患者にもたらすことができる。追加して又は別々に、開示された組成物は、ニコチン作動薬を単独で患者に投与することに比べて、nAChR脱感作阻害薬の前記同時投与の後に実質的に延長されたニコチン作動薬の効果をもたらすことができる。例えば、nAChR脱感作阻害薬の同時投与後のニコチン作動薬の効果は、ニコチン作動薬を単独で患者に投与することに比べて、約2倍有効であり得る。いくつかの実施形態において、nAChR脱感作阻害薬は、少なくとも約3時間、少なくとも約12時間、又は少なくとも約1日、少なくとも約3日以上、前記ニコチン作動薬の脱感作を減少することができる。
【0021】
ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、同じ剤形で一緒に投与しても、別々の剤形、例えば、異なる剤形で投与してもよい。いくつかの実施形態では、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、順次投与することができ、又は約10分〜約4時間、又は約10分〜約12時間、又は約10分〜約24時間以上に分けて連続的に投与することができる。本発明において企図されるのは、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が経口、非経口、粘膜、吸入及び経皮製剤、又はその組合せから選択される製剤によってそれぞれ投与される実施形態であり、例えば、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、チューインガム、小袋、薄膜、経皮パッチ、カプセル、錠剤、トローチ剤、又は鼻内スプレーの形態で同時投与することができる。例えば、ニコチン作動薬は、経皮投与することができ、nAChR脱感作阻害薬は、経口投与することも経皮投与することもできる。
【0022】
いくつかの実施形態では、企図される組成物には、実質的に連続的なやり方で少なくとも12時間、又は少なくとも1日、又は少なくとも3日、又は少なくとも1週間にわたってそれぞれ投与されるニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が含まれる。例えば、一実施形態において、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、1つの経皮パッチとして投与することができる。他の実施形態では、ニコチン作動薬は第1の経皮パッチとして送達され、nAChR脱感作阻害薬は第2の経皮パッチで投与される。
【0023】
本発明によれば、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬の投与は、企図される併用療法の前の投与の、例えば、約1日又は約2日以内に数回繰り返すことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、1日投与量は、ニコチン約5mg/日〜約21mg/日及び/又はオピプラモール約50mg/日〜約150mg/日、又は約50mg〜約200mgを含むことができる。このようにして、ニコチン作動薬は、少なくとも約1日、又は少なくとも約3日以上の間有効となり得る。
【0025】
本発明はさらに、a)ニコチン作動薬、好ましくはニコチン、その異性体、医薬として許容されるその塩又はN−オキシドを含む医薬組成物、b)nAChR脱感作阻害薬、好ましくはオピプラモール、医薬として許容されるその塩、エステル又はプロドラッグを含む医薬組成物、及びc)CNS又はPNS疾患、障害又は状態を治療し、禁煙を誘発する前記組成物を投与するための指示を含むパンフレットを含むキットを含む。好ましい実施形態では、キットは、経皮パッチの形態で前記組成物を含む。こうした目的のために、本発明によって提供されるのはまた、オピプラモールを含む経皮パッチである。
【0026】
他の態様では、本発明は、CNS若しくはPNS疾患、障害又は状態の治療又は禁煙の誘発のためのニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬の合剤を提供する。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、CNS若しくはPNS疾患、障害又は状態を治療する又は禁煙を誘発する医薬組成物を調製するためのニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬の合剤の使用に関する。
【0028】
さらに他の態様では、本発明は、例えば、ニコチン作動薬への長期の曝露後に普通なら起こる「脱感作した」閉じたチャネル状態へのnAChRの遷移を防止する又は減少させる方法に関する。このような態様では、本発明は、治療有効量のニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬をそれを必要とする患者に同時投与することを含む、上記で定義した中枢神経系障害又は末梢神経系障害などの神経系障害を治療する方法を対象としている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(1)(添加なしで)45Ca2+を含む増殖培地のみ(DMEM);(2)(1)と同様で50μMニコチンを含むもの;(3)(1)と同様で50μMニコチン+10μMオピプラモールを含むもの;(4)(2)と同様であるが、細胞を事前に50μMニコチンと共に15分間インキュベートした後のもの;及び(5)(2)と同様であるが、細胞を事前に50μMニコチン+10μMオピプラモールと共に15分間インキュベートした後のもので処理したヒト神経芽細胞腫細胞におけるニコチン誘発カルシウム摂取に対するオピプラモールの効果を示す図である。細胞内の45Ca2+の放射能は、細胞をDMEMで洗浄した後測定し、壊変毎分(DPM)として表した。
【図2】モルモットの回腸標本の実験を用いてニコチン誘発平滑筋収縮に対するオピプラモールの効果を示す図であり、筋収縮は、(1)25μMニコチン;(2)10μMオピプラモールの存在下における25μMニコチン;(3)(1)と同様であるが、筋肉が25μMニコチンで一度刺激された後のもの;及び(4)(1)と同様であるが、筋肉が10μMオピプラモールの存在下で25μMニコチンで一度刺激した後のものを添加することによって生じる収縮の百分率として示される。Opi=オピプラモール、Nic=ニコチン。
【図3A】ラットにおけるニコチン(2mg/kg)誘発低体温に対するオピプラモール(20mg/kg)の効果を示す図である。各点は、少なくとも5匹のラットについて時間0(第1の注射前)で測定した体温と比べた体温の変化の平均値±標準誤差である。D=日。ニコチン(黒丸)の注射(Inj)、オピプラモール(三角形)及びニコチン+オピプラモール(黒い正方形)。
【図3B】ラットにおけるニコチン(2mg/kg)誘発低体温に対するオピプラモール(20mg/kg)の効果を示す図である。図3Bは、注射直前に測定した体温と比較した体温の最大の変化の平均値±標準誤差を表す棒状ヒストグラムを示す。
【図4A】ニコチン(Nic)(2mg/kg)誘発低体温に対するオピプラモール(Opi)(20mg/kg)又はガランタミン(Gal)(5mg/kg)の効果を示す図である。各点は少なくとも5匹のラットについて時間0(第1の注射前)で測定した体温と比べた体温の変化の平均値±標準誤差である。
【図4B】ニコチン(Nic)(2mg/kg)誘発低体温に対するオピプラモール(Opi)(20mg/kg)又はガランタミン(Gal)(5mg/kg)の効果を示す図である。棒状ヒストグラムは、注射直前に測定した体温と比較した体温の最大の変化の平均値±標準誤差を表す。
【図5A】高架式十字迷路法における挙動によって評価したラットの不安に対するニコチン(0.5mg/kg又は2mg/kg)を含む、オピプラモール(10mg/kg)又はガランタミン(5mg/kg)の効果を示す図である。棒状ヒストグラムは壁のない道(open arm)に費やした時間の平均値±標準誤差を表す。低用量のニコチン(0.5mg/kg)の結果。
【図5B】高架式十字迷路法における動作によって評価したラットの不安に対するニコチン(0.5mg/kg又は2mg/kg)を含む、オピプラモール(10mg/kg)又はガランタミン(5mg/kg)の効果を示す図である。棒状ヒストグラムは壁のない道(壁のない道)に費やす時間の平均値±標準誤差を表す。高用量のニコチン(2mg/kg)の結果。
【図5C】高架式十字迷路法における動作によって評価したラットの不安に対するニコチン(0.5mg/kg又は2mg/kg)を含む、オピプラモール(10mg/kg)又はガランタミン(5mg/kg)の効果を示す図である。棒状ヒストグラムは壁のない道(壁のない道)に費やす時間の平均値±標準誤差を表す。低用量及び高用量のニコチンを含むガランタミンとオピプラモールとの比較。
【図6】ラットの大脳皮質における脳由来神経栄養因子(BDNF)mRNAの発現に対するオピプラモール(10mg/kg)及びニコチン(0.5mg/kg)の効果を示す図である。
【図7】ラットにおけるニコチン(2mg/kg)誘発体温に対するクロミプラミン(30mg/kg)の効果を示す図である。
【図8A】ラットにおけるニコチン(2mg/kg)誘発低体温に対するリドカイン(15mg/kg)の効果を示す図である。薬物は、1日目(8A)及び2日目(8B)の2日間注射された。
【図8B】ラットにおけるニコチン(2mg/kg)誘発低体温に対するリドカイン(15mg/kg)の効果を示す図である。薬物は、1日目(8A)及び2日目(8B)の2日間注射された。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付した特許請求の範囲で用いたいくつかの用語を本節で収集する。
【0031】
「担体」という用語は、企図される薬剤又は治療薬が共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを意味する。医薬組成物中の担体は、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン(ポリビドン又はポビドン)、トラガカントゴム、ゼラチン、デンプン、ラクトース又はラクトース一水和物などの結合剤;アルギン酸、トウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、又はラウリル硫酸ナトリウムなどの滑剤又は界面活性剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;及び/又はハッカ、サリチル酸メチル、又はオレンジ香味料などの矯味剤を含むことができる。
【0032】
本明細書では、「併用療法」という語句は、治療薬の相互作用から得られる有益な効果を提供することを目的とした特定の治療レジメンの一部として、例えば、ニコチンなどのニコチン作動薬と、例えば、オピプラモールなどのニコチン性アセチルコリン受容体脱感作阻害薬とを同時投与することを意味する。本発明はまた、併用療法における1種又は複数のニコチン作動薬及び1種又は複数のnAChR脱感作阻害薬の使用を想定することが理解されたい。この組合せの有益な効果は、それだけに限らないが、治療薬の併用によって生じる薬物動態学的又は薬力学的な相互作用が含まれる。通常、併用におけるこれらの治療薬の投与は、規定の期間(通常、選択された組合せに応じた週、月又は年)にわたって行われる。併用療法は、逐次的なやり方(すなわち、各治療薬は異なる時間に投与される)における複数の治療薬の投与並びに実質的に同時のやり方におけるこれらの治療薬又は治療薬のうち少なくとも2つの投与を包含するものとする。実質的に同時の投与は、例えば、対象に固定された比の各治療薬を有する単一の錠剤又はカプセルを投与する又は治療薬のそれぞれに対して複数の単一カプセル又は錠剤で投与することによって達成することができる。各治療薬の逐次投与又は実質的に同時の投与は、それだけには限らないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、及び粘膜組織を通した直接吸収を含む任意の適当な経路で実施することができる。治療薬、例えば、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、同じ経路によって又は異なる経路によって投与することができる。例えば、選択された組合せの第1の治療薬を経皮投与することができ、一方、組合せの他方の治療薬を経口投与することができる。或いは、例えば、治療薬を両方とも経口投与してもよく両方とも経皮投与してもよい。
【0033】
併用療法は、他の生物活性成分及び非薬物療法とさらに併用して前述した治療薬を投与することを包含することもできる。併用療法がさらに非薬物治療を含む場合、治療薬及び非薬物治療の併用の相互作用により得られる有益な効果が達成される限り、非薬物治療は任意の適当な時間で行うことができる。例えば、適当な場合、非薬物治療をおそらく数日、さらには数週間、治療薬の投与から一時的に取り除いたときでも、有益な効果が達成される。
【0034】
組合せの成分は、患者に同時に投与しても順次投与してもよい。これらの成分は同じ医薬として許容される担体中に存在することができ、したがって、同時に投与されることが理解されよう。或いは、有効成分は、同時に投与する又は順次投与することができる、従来の経口剤形などの、別々の医薬用担体中に存在することができる。
【0035】
本明細書では、「連続的に」という用語は、例えば、2、3、8、12時間以上、さらには1、2、3、5、7又は10日以上の間、実質的にゆっくりと及び実質的に中断されずに送達される薬物を意味する。いくつかの実施形態では、「連続的に」という用語は、単回ボーラス投与又は多回ボーラス投与に比べて実質的に長い薬物又は薬剤の送達を意味する。こうした目的のために、本発明による経皮パッチは適している。
【0036】
「個体」、「患者」又は「対象」という用語は、本明細書において同義的に用いられ、例えば霊長目、例えばヒトなどの動物、及び例えば、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどの他の動物を含めた任意の哺乳動物を含む。本発明の化合物は、ヒトなどの哺乳動物に投与することができるが、他の哺乳動物、例えば、動物治療を必要とする動物、例えば、一般家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、農業用家畜(例えば、雌ウシ、ヒツジ、家畜ブタ、ウマなど)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であってもよい。
【0037】
「ニコチン作動薬」と言う用語は、本明細書において「直接型ニコチン作動薬」及び「間接型ニコチン作動薬」の両方を意味する。直接型ニコチン作動薬は、節後のニコチン性受容体、PNS中の神経効果器接合部及び/又はCNS中のニコチン性受容体を含めたニコチン性コリン作動性受容体を少なくとも部分的に結合及び/又は直接活性化する薬剤である。直接型ニコチン作動薬の例としては、それに限られるものではないが、ニコチン及びニコチン受容体を実質的に又は少なくとも部分的に結合し、薬理学的効果を提供する他の化合物が含まれる。この用語は、前述した化合物を包含する。さらに、この用語は、天然に存在する化合物(それだけには限らないが、小分子、ポリペプチド、ペプチドなど、特に、天然に存在する植物アルカロイドなどが含まれる)、内因性リガンド(例えば、天然の発生源から精製した内因性リガンド、組み換えによって生成された内因性リガンド、又は合成の内因性リガンド、さらに、かかる内因性リガンドの誘導体及び変異体が含まれる)及び合成により生成された化合物(例えば、小分子、ペプチドなど)も包含する。間接型ニコチン作動薬は、Achレベルを増加させることのできる薬剤であり、したがって、nAChRを間接的に活性化し、例えば、フィゾスチグミン、ドネペジル、タクリン、リバスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミンなどの可逆的コリンエステラーゼ阻害薬及びエコチオファートなどの非可逆的コリンエステラーゼ阻害薬などのコリンエステラーゼ阻害薬など、Achを加水分解する酵素を阻害する物質が含まれる。
【0038】
「ニコチン」という用語は、天然から単離し精製することができる又は任意のやり方で合成によって生成することができる、化学名S−3−(1−メチル−2−ピロリジニル)ピリジンを有するニコチンとして知られる天然に存在するアルカロイドを意味するものとする。この用語はまた、例えば、コチニン、ノルコチニン、ノルニコチン、ニコチンN−オキシド、コチニンN−オキシド、3−ヒドロキシコチニン及び5−ヒドロキシコチニンなどの、ニコチン代謝産物及び誘導体及び類似の化合物、並びに例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩若しくは重硫酸塩、リン酸塩若しくは酸リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩若しくは酸性クエン酸塩、酒石酸塩若しくは酒石酸水素塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩及びパモ酸塩などの薬理学的に許容される陰イオンを含む普通に存在する塩などの医薬として許容されるその塩、並びにそのN−オキシド、エステル又はプロドラッグを包含するものとする。
【0039】
「ニコチン性アセチルコリン受容体脱感作阻害薬」又は「nAChR脱感作阻害薬」という用語は、ニコチン性アセチルコリン受容体脱感作を少なくとも部分的に減少し、阻害し又は遅延させる薬剤、例えば、患者へのニコチンの反復(例えば、2回以上の)投与によって引き起こされる脱感作を少なくとも部分的に減少させる薬剤を意味する。かかるnAChR脱感作阻害薬は、わずかな減少から十分な阻害(すなわち、ニコチン作動薬の第1の適用と前記作動薬の適用を引続き反復した結果との間のニコチン様作用が明らかに減少しない)までnAChR脱感作を減弱することができる。
【0040】
「治療上有効な」という用語は、有効成分の、単独で又は他の有効な薬剤と併用して、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって探求されている生物学的又は医学的な応答を誘導する能力を意味する。
【0041】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家によって探求されている生物学的又は医学的な応答を誘導する有効成分の量、又は有効成分の組合せの量が含まれる。本発明の化合物は、CNS又はPNS障害を治療するのに有効な量で投与される。或いは、有効成分の治療有効量は、その状態に関連する症状の予防又は症状の減少をもたらす有効成分の量など、所望の治療効果及び/又は予防効果を達成するために(例えば、エンドポイントを満たすために)必要とされる化合物の量である。
【0042】
「認知障害」又は「認知機能障害」という用語は、患者を思考困難にし、症状が注意、知覚、推理、記憶及び判断が障害されることによって一般に特徴付けられる精神状態を意味する。認知障害の1つのタイプは、認知症であり、これは記憶、言語及び判断を含む複数の認知能力の漸進的な障害を特徴とする。記憶欠損及び認知症の状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、レビー小体病、ピック病、ヤコブ・クロイツフェルト病、多発性硬化症、不安、うつ病、統合失調症、辺縁系脳炎、正常圧水頭症、加齢性記憶障害などの神経変性又は神経の疾患、障害又は状態;脳卒中、脳外傷及び血管性認知症によって引き起こされる脳損傷;神経梅毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)、真菌感染症、結核などの感染症;アルコール中毒、ニコチン中毒、大麻中毒及びコカイン中毒などの薬物中毒症又は重金属曝露によって引き起こされ得る又は関連し得る。注意欠陥障害(ADD)及び注意欠陥多動障害(ADHD)は、小児及び成人の両方で見出される認知機能障害のタイプである。
【0043】
「治療する」という用語は、本明細書において、疾患、障害又は状態を治療すること又は疾患の症状を寛解させる、緩和する、軽減する若しくは抑制すること、又は疾患の進行を遅らせる若しくは停止させることを示すために用いる。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物又は合剤の投与は、上記の疾患、障害及び状態に関連する認知症における認知障害の症状を寛解させる、緩和する又は軽減することができる。
【0044】
「医薬として許容される」又は「薬理学的に許容される」という用語は、動物又はヒトに適宜投与したときに有害反応、アレルギー反応又は他の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を意味する。「医薬として許容される担体」という用語には、任意の及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬、抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。医薬活性物質に対するかかる媒体及び薬剤の使用は、当技術分野でよく知られている。従来の任意の媒体又は薬剤が有効成分に適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助的な有効成分も組成物に組み入れることができる。
【0045】
開示される化合物の医薬として許容されるその塩は、従来の化学的方法によって、例えば、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般的に、このような塩は、遊離の酸又は塩基の形のこれらの化合物を水又は有機溶媒或いは両者の混合物中で化学量論量の適当な塩基又は酸と反応させることによって調製することができる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリルのような非水媒体である。適当な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000年、704頁で見出される。
【0046】
「プロドラッグ」という用語は、in vivoで転換されて、開示される化合物又は医薬として許容されるその化合物の塩、水和物若しくは溶媒和物をもたらす化合物を意味する。転換は、血液中の加水分解によるなどの様々な機序によって起こり得る。例えば、nAChR脱感作阻害薬、又は医薬として許容されるその化合物の塩、水和物若しくは溶媒和物がカルボン酸官能基を含む場合、プロドラッグは、酸性基の水素原子を、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキル及びピペリジノ−、ピロリジノ−若しくはモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基で置換することによって形成されたエステルを含むことができる。
【0047】
同様に、ニコチン作動薬又はnAChR脱感作阻害薬がアルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を、(C〜C)アルカノイル−オキシメチル、1−(C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−(C〜C)アルカノイルオキシ)エチル(C〜C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C〜C)アルコキシカルボニルアミノメチル、サクシノイル、(C〜C)アルカノイル、α−アミノ(C〜C)アルカノイル、アリールアシル及びα−アミノアシル、又はα−アミノ−アシル−α−アミノアシル[各α−アミノアシル基はそれぞれ独立に、天然に存在するL−アミノ酸、P(O)(OH)、−P(O)(O(C〜C)アルキル)又はグリコシル(ヘミアセタールの形の炭水化物のヒドロキシル基を除去することによって生じるラジカル)から選択される]などの基で置換することによって形成することができる。
【0048】
nAChR脱感作阻害薬又はニコチン作動薬がアミノ官能基を組み入れる場合、プロドラッグは、アミノ基中の水素原子を、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル[式中、R及びR’は、それぞれ独立に(C〜C10)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、ベンジルであり、或いはR−カルボニルは、天然のα−アミノアシル若しくは天然のα−アミノアシル−天然のα−アミノアシル、−C(OH)C(O)OY(式中、YはH、(C〜C)アルキル若しくはベンジル、−C(OY)Yである(式中、Yは(C−C)アルキルであり、Yは(C〜C)アルキル、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノアルキル、−C(Y)Yである(式中、Y4はH又はメチルであり、Yはモノ−N−若しくはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン−1−イル又はピロリジン−1−イルである)))である]などの基で置換することによって形成することができる。
【0049】
「経皮送達」という用語は、通常は皮膚を貫通せずに達成される皮膚への薬物送達を意味する。
【0050】
方法
本発明で提供されるのは、開示される組成物又は配合物を用いてCNS及びPNS疾患、障害又は状態を治療する方法である。いくつかの実施形態では、開示される方法によって、例えば、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬の前記患者への第1の投与が、例えば、前記患者に最初にニコチン作動薬を単独で投与することからなる治療方法を用いたニコチン作動薬又はニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬のその後の投与に比べて実質的により治療上有効であった後、ニコチン作動薬のその後の投与の効果を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、開示される組合せのnAChR脱感作阻害薬は、投与されるニコチン作動薬の脱感作を少なくとも約3時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、又は少なくとも約1、2又は3日間又は約1週間以上減少させることができる。
【0051】
他の実施形態では、方法は、例えば、患者にニコチン作動薬を単独で投与することによって得られたニコチンの効果に比べて、前記患者において前記同時投与後に実質的に長期のニコチン作動薬の効果を提供する。例えば、開示される方法は、同時投与後に、ニコチン作動薬を単独で投与することに比べて、例えば、約1.5倍、約2倍さらには3倍有効である、又は約1.5倍、2倍さらには3倍延長される、ニコチン作動薬の効果を提供することができる。
【0052】
開示される方法は、例えば、患者にニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬を同時投与することによって達成することができる併用療法を含む。ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、(i)単一の剤形又は組成物として、(ii)別々の剤形又は医薬組成物として同時に、(iii)ニコチン作動薬から開始し、次いでnAChR脱感作阻害薬を投与する別々の剤形又はnAChR脱感作阻害薬から開始し、次いでニコチン阻害薬を投与する別々の剤形として順次、(iv)例えば、約10分〜約4時間、約1〜4時間、約1〜8時間、約1時間〜約12若しくは24時間又はそれ以上の時間ごとに分けて連続的に、又は(v)個別に、その後合剤で投与することができる。本明細書で開示される方法は、例えば、ニコチン作動薬、nAChR脱感作阻害薬及び例えば、CNS又はPNS疾患、障害又は状態を治療する他の薬剤を含み得る、他の投与レジメンの前、レジメン中又はレジメン後に行うことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、例えば、nAChR脱感作阻害薬はニコチン作動薬の投与の前に、それと同時に、又はその直後に投与することができる。一実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、例えば、同じ組成物中でニコチン作動薬と同時に投与することができる。例えば、一実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、経口投与することができ、ニコチン作動薬は、経皮投与される。例えば、ニコチンの投与は、例えば、許容されない有害事象を引き起こし得、且つ/又は腸管から門脈に吸収され、肝臓によって迅速に分解し得るため、経口送達に適しにくいこともある。しかし、いくつかの実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、チューインガム、薄膜(例えば、経口により溶解する薄膜)、小袋、経皮パッチ、カプセル、錠剤、トローチ剤、鼻内スプレー及び経口吸入装置などの剤形を含めた、粘膜又は皮膚による吸収によってニコチン作動薬を体循環に送達する剤形としてニコチン作動薬と共に投与することができる。
【0054】
或いは、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、患者に局所投与及び(例えば、経皮パッチによって)経皮投与することができる。例えば、nAChR脱感作阻害薬及び/又はニコチン作動薬は、例えば、経皮パッチによって及び/又は徐放性組成物によって実質的に連続的に患者に投与することができる。例えば、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、1つの経皮パッチによって(例えば、実質的に連続的に)投与することができ、或いはニコチン作動薬を、第1の経皮パッチとして投与することができ、nAChR脱感作阻害薬を、第1の経皮パッチと異なる第2の経皮パッチとして投与することができる(例えば、両方とも2種のパッチによって実質的に連続的に投与することができ、又は第1のパッチは、第2のパッチと異なる送達速度を有することができ、且つ/又は第1のパッチは第2のパッチに比べて異なる表面積を有することができる)。一実施形態では、第1のパッチを、患者のある位置に置くことができ、第2のパッチを、第1のパッチの実質的に近くになり得る又は実質的に異なる位置になり得る他の位置に置くことができる。
【0055】
他の実施形態では、ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬は、例えば、1日、3日、1週間、10日以上にわたって実質的に一定の量を提供する実質的に連続的なやり方で、患者に投与することができる。他の実施形態では、開示される方法は、例えば、以前の投与の約12時間、1日、2日以上の範囲内で、治療有効量のニコチン作動薬及びAChR脱感作阻害薬を患者に再投与することをさらに含むことができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、ニコチン作動薬は、用量を漸増して投与することができる。かかる漸増用量は、第1の投与レベル及び第2の投与レベルを含むことができる。他の実施形態では、漸増用量は、少なくとも第1の投与量レベル、第2の投与量レベル、及び第3の投与量レベル、場合によっては、第4、第5又は第6の投与量レベルを含むことができる。ニコチン性アセチルコリン受容体脱感作阻害薬は、ニコチン作動薬と併用して投与するとき1回投与量レベルで提供してもよく、漸増用量で投与してもよい。
【0057】
第1、第2、第3以上の投与量レベルは、持続期間において約2日〜約6ヵ月以上の間間患者に投与することができる。例えば、第1、第2及び/又は第3の投与レベルは、約1週間〜約26週間、又は約1週間〜約12週間、又は約1週間〜約4週間対象にそれぞれ投与される。或いは、第1、第2及び/又は第3の投与量レベルは、約2日〜約40日間又は6ヵ月の間対象に投与される。
【0058】
ニコチン作動薬は、治療上有効な量で投与することができる。いくつかの実施形態では、企図される治療上有効な用量のニコチン作動薬は、単独療法で用いるときに有効でないが、本明細書において開示される合剤に用いるときに有効となり得る。
【0059】
本発明で企図及び開示される組成物又は剤形又は併用療法を患者に投与することを含む代表的な方法には、認知障害又は認知機能障害、不安、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、血管性認知症、レビー小体病、外傷後認知症、ピック病、多発性硬化症、ヤコブ・クロイツフェルト病、ニコチン中毒、アルコール中毒、大麻中毒、コカイン中毒、妄想障害、強迫性障害、衝動制御障害、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する神経状態、老化及び/又はハンチントン病などのCNS又はPNS疾患、障害及び状態を治療する方法が含まれる。他の実施形態では、患者における疼痛を管理する及び/又は治療する方法が提供される。いくつかの実施形態では、認知障害又は認知機能障害を治療する方法は、患者に開示される組成物又は剤形を投与することを含む、例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、又はニコチン中毒又は他の中毒を治療する方法が企図される。一実施形態では、方法は、軽度の認知障害、例えば、アルツハイマー病の初期における患者を治療する及び/又は寛解させることをも提供される。
【0060】
本発明は、いくつかの実施形態では、開示される組成物、例えば、ニコチン及びニコチンによって引き起こされるnAChR脱感作を減少することのできる化合物を含む組成物を喫煙個体に投与することを含む、禁煙のための方法を提供する。他の実施形態では、本発明で提供されるのは、患者に開示される組成物又は剤形又は併用療法を投与することを含む、不安、うつ病、下肢静止不能症候群、ツレット症候群、慢性チック障害、又は本態性振戦を治療する方法である。方法は、行動性の、例えば、強迫症及び/又は全般性不安障害などの強迫性障害を治療することにも提供される。
【0061】
また、開示されるのは、パーキンソン病の進行を遅らせる又は寛解させる方法であり、例えば、投与後、ニコチン作動薬は神経保護剤として作用し得る(神経保護効果は、例えば、nAChR脱感作阻害薬の同時投与によって増強することができる)。
【0062】
具体的な実施形態では、タバコ又はニコチンの依存又は使用を治療する又は抑制することを提供する方法が開示され、前記方法は、開示される組成物又は剤形又は併用療法をヒトに投与することを含む。また、提供されるのは、組成物又は剤形又は併用療法を患者に投与することを含む、ニコチン、大麻若しくはコカインなどの刺激薬に対する薬物中毒、依存又は耐性を治療する方法である。
【0063】
また、本発明で提供されるのは、血管新生を促進し虚血組織に対する血流を増加させるのに有効な、開示される組成物又は剤形又は併用療法を投与することを含む、患者の虚血組織に血流を増加させる方法である。一実施形態では、本発明で企図されるのは、例えば、酸化ストレスからのニューロンの保護をもたらす方法であり、或いはかかる方法は、例えば、虚血によって誘発され得る、例えば、海馬ニューロンの、例えば、死を遅延させることができる。例えば、一実施形態では、脳卒中若しくは他の血管疾患の危険性がある患者又はそれらを有している患者において脳卒中を治療する及び/又は寛解させる方法が、本発明で提供される。また、本発明で提供されるのは、例えば、筋萎縮性側索硬化症などのニューロン死(例えば、運動ニューロン死)に関連する疾患を治療する及び/又は寛解させる方法である。
【0064】
また、本発明で提供されるのは、開示される化合物、併用療法、及び/又は剤形を投与することを含む、手根管症候群、ギラン・バレー症候群、又は糖尿病性ニューロパチー、アミロイドニューロパチー及び/又は腕神経叢ニューロパチーなどの末梢神経障害を治療する方法である。
【0065】
例えば、前記ニコチン作動薬で治療される個体においてnAChRの脱感作を阻害する又は減少することによりニコチン作動薬の効力を増大させる方法が提供され、この方法は、nAChR脱感作を減少し、したがって、ニコチン作動薬の効力を増大させることのできる治療有効量の化合物を個体に同時投与することを含む。
【0066】
例えば、CNS若しくはPNS疾患、障害又は状態を治療する開示される方法は、いくつかの実施形態では、nAChR以外の受容体の脱感作阻害薬を投与することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、このような阻害薬は、本発明で企図されるnAChR脱感作阻害薬と同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
代表的な実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、オピプラモール若しくはイミプラミンなどの三環系抗うつ薬、又はガランタミン(四環系のアルカロイド)、ミルタザピン、若しくはマプロチリンなどの四環系抗うつ薬である。他の実施形態では、nAChR脱感作阻害薬は、McN−A−343、すなわち、ある種のサブクラスのムスカリン性受容体を選択的に活性化することができる薬物である。
【0068】
組成物及び配合物
本発明で提供される組成物は、少なくとも1種のニコチン作動薬、少なくとも1種のnAChR脱感作阻害薬、及び医薬として許容される担体を含むことができる。代表的な実施形態では、医薬組成物は、ニコチン及びオピプラモール、又はその医薬として許容される塩、エステル及び/又はプロドラッグを含む。他の実施形態では、医薬組成物は、ニコチン及びガランタミン、クロミプラミン、リドカイン又はMcN−A−343を含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、ニコチン作動薬(例えば、ニコチン)及びnAChR脱感作阻害薬(例えば、オピプラモール)を、ニコチン作動薬:nAChR脱感作阻害薬の重量比約1:100〜約100:1、例えば、約1:1〜約1:50、約1:1〜約1:5、1:5〜約1:50、約1:5〜約1:20で、又は約1:10〜約1:15、例えば約1:14、若しくは約1:13で含むことができる。
【0070】
医薬組成物は、経口、非経口、経皮的、粘膜、又は吸入投与のための形態を含めた、任意の適当な形態となり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、チューインガム、小袋、経皮パッチ、カプセル、錠剤、トローチ剤、又は鼻内スプレーの形態で投与することができる。
【0071】
局所投与について、開示される組成物は、ゲル剤、クリーム剤、パスタ剤、ローション剤、スプレー剤、懸濁剤、散剤、分散剤、軟膏(salve)及び軟膏剤の形態で投与することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、経皮送達のための組成物は、経皮の軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤又は他の経皮の液剤若しくは懸濁剤である。好ましくは、経皮送達について、粘着パッチ中の単層の薬物、粘着パッチ中の多層の薬物、リザーバーパッチ、マトリックスパッチ、マイクロニードルパッチ又は通常、直流を印加することを必要とするイオントフォレーシスパッチとなり得る経皮パッチを用いることができる。例えば、経皮送達系(パッチ)は、米国特許第4,839,174号に記載されている経皮ニコチン送達装置などを用いることができる。パッチを含めた経皮送達のための組成物は、当技術分野で知られた皮膚浸透促進剤を含むことができる。さらなる実施形態では、経皮パッチは徐放に適合される。
【0073】
いくつかの実施形態において、開示される組成物は経口投与することができる。経口投与について、有効成分は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、充填剤(例えば、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウムなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカなど)、崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなど)、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの医薬として許容される賦形剤及び担体と共に従来の手段によって調製された、例えば、錠剤(嚥下可能な形態及び咀嚼可能な形態)、カプセル又はゲルカプセルなどの固形剤形の形態になってもよい。かかる錠剤は、当技術分野で周知の方法でコーティングすることもできる。或いは、医薬品は、例えば、液剤、シロップ剤又は懸濁剤などの液体の形態となり得、又は使用前に水又は他の適当なビヒクルで再構成する製剤として提供することができる。かかる液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体又は水素化された食用脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアラビアゴム);非水性のビヒクル(例えば、扁桃油、油性エステル、又は分画された植物油);及び保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピル又はソルビン酸)などの医薬として許容される添加剤と共に従来の手段によって調製することができる。
【0074】
開示される組成物は、前述した任意の適当な形態で単一用量又は多回用量として投与することができ、それらは薬物送達装置又は徐放性組成物によって実質的に連続的に投与することができる。例えば、徐放性組成物は、例えば、PLGAの微小粒子であるポリ(ラクチド−co−グリコリド);ポリアクリラート、ラテックス、デンプン、セルロース、デキストランなどのようなかかる賦形剤、非液体親水性コア(例えば、架橋多糖類又はオリゴ糖)を含む超分子バイオベクター及び、場合によってはリン脂質(例えば、米国特許第5,151,254号、国際公開第94/20078号、国際公開第94/23701号及び国際公開第96/06638号)、生体分解性ミクロスフェア(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸)(例えば、米国特許第4,897,268号;米国特許第5,075,109号;米国特許第5,928,647号;米国特許第5,811,128号;米国特許第5,820,883号;米国特許第5,853,763号;米国特許第5,814,344号、米国特許第5,407,609号及び米国特許第5,942,252号を参照のこと。)及びリン酸カルシウムコア粒子などの両親媒性化合物を含む外層を含むことができる。
【0075】
開示される方法及び組成物で使用するニコチン作動薬の企図される用量は、所望の効果をもたらすのに十分なほど大量であり、それにより、例えば、nAChRの脱感作は実質的に防止され、ニコチン作動薬の作用は延長されるものとし、さらに疾患、障害又は状態の症状は実質的に軽減し寛解する。用量は副作用を引き起こすほど大量にするべきではない。いくつかの実施形態では、ニコチン作動薬の治療有効量は、患者1人当たり1〜100mgの範囲となり得る。例えば、ニコチンは、約5mg/日〜約21mg/日、又は約10mg/日〜約21mg/日、又は約15mg/日、20mg/日、又は約7mg/日で投与することができる。他の実施形態では、例えばニコチンなどのニコチン作動薬は、約0.05mg/kg/日〜約5mg/kg/日まで投与される。ニコチン作動薬が連続的に投与される状況において、用量は、いくつかの実施形態では、望まれない副作用を避けるためにより低い用量を維持することができる。
【0076】
オピプラモールは、例えば、約50mg又は約100mg/日、例えば、約10mg/日〜約300mg/日、約50mg/日〜約200mg/日、約50mg/日〜約150mg/日又は約50mg/日〜約250mg/日の用量で投与することができる。例えば、オピプラモール200mg/日、又は125mg/日、150mg/日又は250mg/日が投与することができる。他の実施形態では、オピプラモールは約0.2mg/kg/日〜約20mg/kg/日まで投与することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、リドカインは、約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日まで投与することができる。例えば、経皮投与の総用量は、約5〜約300mgとなり得る。
【0078】
本発明はまた、ニコチン作動薬の投与に反応する疾患、障害又は状態を治療する、ニコチン作動薬をも含む医薬品を調製するために又はニコチン作動薬を含む医薬品と共に投与するために、ニコチン作動薬によって引き起こされるnAChR脱感作を減少することのできる化合物の使用に関する。
【0079】
本発明はまた、例えば、CNS若しくはPNS疾患、障害又は状態などのニコチン作動薬の投与に反応する疾患、障害又は状態を治療するためのパッケージ又はキットを提供し、前記キットは、ニコチン作動薬を含む医薬組成物、nAChR脱感作阻害薬を含む医薬組成物、及びニコチン作動薬の投与に反応する疾患、障害又は状態を治療するための前記組成物の投与についての指示を含むパンフレットを備える。
【0080】
キットの医薬組成物はそれぞれ、1つの容器に含むことができ、キットは、2つの容器、すなわち、ニコチン作動薬及び医薬として許容される担体を含む第1の容器及びnAChR脱感作阻害薬及び医薬として許容される担体を含む第2の容器、並びにパンフレットを備える。2種の医薬組成物は、類似の製剤形態となり得、例えば、それぞれが経皮パッチの形態であり、或いは異なる製剤形態では、例えば、一方が経皮パッチとして提供され、もう一方が経口で提供される。例えば、ニコチンは経皮パッチの中に含むことができ、オピプラモールは錠剤として含むことができる。他の実施形態では、キットには、例えばニコチン作動薬(例えば、ニコチン)を含む経皮パッチなどの第1の剤形及び例えばnAChR脱感作阻害薬(例えば、オピプラモール)を含む経皮パッチなどの第2の剤形及び使用のための指示が含まれる。
【0081】
また、提供されるのは、組成物を予め決定した送達速度で患者に送達することのできる、a)ニコチン、b)オピプラモール又は医薬として許容されるその塩、エステル及びプロドラッグを含む組成物を送達するための制御放出医療機器である。一実施形態では、予め決定した送達速度は、少なくとも1日にわたって実質的に連続的である。
【0082】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものでは決してないが、本発明の方法を例示するために提供される。本発明の多くの他の実施形態は、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0083】
材料及び方法
(i)細胞−SK−N−SHヒト神経芽細胞腫細胞系を、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATTC)から入手した。
(ii)動物−若年(240g〜290g)の雄Sprague−Dawley系ラット(Charles River、USA又はHarlan、Israel)を実験に用いた。
(iii)薬物−ニコチン(Sigma);オピプラモール(Rafa Laboratories Ltd. Jerusalem、Israel)、McN−A−343(4−(N−[3−クロロフェニル]−カルバモイルオキシ}−2−ブチニル−トリメチルアンモニウム塩酸塩−R.B.I、USA)、ガランタミン(Sigma、Israel)、リドカイン(Sigma)及びクロミプラミン(Sigma)は、使用前に0.9%食塩水に溶解させた。
(iv)ニコチン誘発低体温の決定−ラットを個別に25℃に保った実験用ケージに入れ、薬物の注射前に1時間休ませた。その間に、動物の体温に対する操作の影響を除外するために、体温を15分又は30分間隔で測定した。体温を直腸サーミスタプローブ(M.R.C、Israel、感受性0.1℃)で測定した。プローブを直腸に2cmの深さまで挿入させる前に石油で滑らかにした。データは、基底値からの直腸温の変化として提供される。基底値は薬物の注射前に直ちに得られたものである(時間0)。
(v)高架式十字迷路法(EPM)−EPMの目的は、被験薬の抗不安効果を決定することである。実験動物が迷路の壁のない道(open arm)に費やした時間が、抗不安効果の指標であり、時間が長いほど抗不安効果も高い。EPMは木製の、プラス記号の形状に配置された4つのアームからなる十字形の装置である。アームのうち2つは、側壁又は端壁を有さない(壁のない道;30×5×0.25cm)。他の2つのアームは、側壁及び端壁を有するが、先端が開放されている(閉じたアーム;30×5×15cm)。迷路を50cmの高さまで上げる。動物を、探索行動を高めるために迷路に出す前に比較的暗い箱に入れておく。薄暗い光の下で無音の環境で試験を行った。動物を研究室に運び、実験前の1時間乱されないようにそこに放置した。各ラットを個別に壁のない道に面する5×5の中央のプラットフォームに置き、動物が壁のない道に費やした時間を記録する2名の観察者が同じ部屋に座って5分間観察した。
(vi)統計分析−結果は、各治療群におけるすべての動物から得られたデータの平均値±標準誤差として示される。適当なときに、結果をANOVA(α=0.05)又はスチューデントのt検定を用いて分析した。
【0084】
(例1)
培養細胞におけるニコチン誘発カルシウム流入に対するオピプラモール及びMCN−A−343の効果
nAChRを発現することで知られるSK−N−SHヒト神経芽細胞腫細胞を、24穴プレートでダルベッコ/フォークト変法イーグル最小基本培地(DMEM)中、培養密度に増殖させた。任意の他の添加剤を含まない45Ca2+(1)又は50μMニコチンを含む45Ca2+(2)又は50μMニコチン+10μMオピプラモールを含む45Ca2+(3)を含むDMEMを、24穴プレート中で増殖した細胞に加え、事前に培地だけで15分間インキュベートし、次いで、速やかに洗浄した。細胞内の放射能は各条件に対して決定された。ニコチンを含む同じ培地を50μMニコチン単独(4)又は50μMニコチン+10μMオピプラモール(5)と共に事前に15分間インキュベートした細胞にも加えた。45Ca2+の取り込みを10分後に決定した。ニコチン性受容体の活性化は、カルシウム流入を引き起こすため、それがニコチン性受容体活性の指標である。
【0085】
オピプラモールによる結果を図1に示す。ニコチンへの最初の曝露は、ニコチンの存在しない基礎取り込み(1)と比較してカルシウム流入の増加を引き起こした(2)。オピプラモールの存在下でニコチンで細胞を初めてシミュレーションすると、カルシウム取り込みの有意な上昇をも引き起こし(3)、それはニコチン単独による1回目の刺激で得られたものと比較してほんのわずかに小さかった。しかし、細胞が2回目にニコチンに曝露されたとき(4)、カルシウム流入はnAChR受容体脱感作によりかなり減少した。比較すると、細胞がニコチン及びオピプラモールで刺激されたとき、1回目の刺激の間45Ca2+取り込みのわずかな減少だけが観察され、2回目の刺激においてnAChR脱感作は著しく減少し(5)、オピプラモールが受容体脱感作を減少させることを示した。DPM=壊変毎分。10μMのMc−N−A−343をオピプラモールの代わりに用いたとき類似の結果を得た(未掲載)。
【0086】
(例2)
モルモット回腸標本におけるニコチン誘発平滑筋収縮及びニコチン誘発脱感作に対するオピプラモールの効果。
モルモットの回腸の平滑筋の自由端を力変位トランスデューサーに取り付けた。平滑筋の等尺性張力を、事前に増幅したトランスデューサーのシグナルをコンピュータに出力することによって連続的にモニターした。25μMのニコチンを加えると筋収縮が引き起こされた。このニコチンの濃度から得られたピークを、変位トランスデューサーで定量化し、正規化し、図2の左の黒い棒に示される100%収縮として定義した(1回目の刺激;棒1)。
【0087】
オピプラモールは、ニコチンの効果をニコチン単独で誘発されたものの約50%まで減少させた(1回目の刺激;棒2)。ニコチンを加えてから回腸標本を生理溶液で10分洗浄し、次いで、25μMの最終濃度のニコチンをさらに10分間その筋肉標本に再び加えた。(2回目の刺激;棒3)。わかるように、ニコチンは、第2の刺激(第2の刺激;棒4)の間、受容体の脱感作により筋収縮を誘発しなかった。しかし、1回目の刺激をオピプラモールの存在下で行った場合(1回目の刺激の棒2に記載される)、ニコチンは、第2の刺激(棒4)の間ほとんど十分な反応を誘発し、オピプラモールがnAChR脱感作を防止し或いは減少させたことを示した。
【0088】
ニコチンをオピプラモールと共に投与したとき、ニコチンの効果は薬物を洗浄して除去するまで1時間安定し続け(データ未掲載)、オピプラモールが効果的にnAChR脱感作を防止したことを示した。
【0089】
(例3)
ラットにおけるニコチン誘発低体温に対するオピプラモールの効果
ラットは、各5匹のラットの以下のように3つの治療群に分けられた。1.ニコチン(2mg/kg)による処理;2.オピプラモール(20mg/kg)による処理;3.ニコチン(2mg/kg)と共にオピプラモール(20mg/kg)による処理。ラットに、初日にはニコチンを2回注射し(図3A、D−1、左パネル)、2日目(図3A、D−2、中央パネル)及び3日目(図3A、D−3、右パネル)には3回注射した。注射の間隔は、正常の体温に戻るのに必要な時間に従って3時間であった。ニコチンをオピプラモールを含んで及び含まずに注射し、体温を30分間隔で測定した。結果を図3に示す。(図3A:黒丸−ニコチン(2mg/kg)を1日3回3時間間隔で継続して3日間注射したラット(N=5);逆三角形−オピプラモール(20mg/kg)を1日3回3時間間隔で継続して3日間注射したラット(N=5);黒い正方形−ニコチン(2mg/kg)及びオピプラモール(20mg/kg)を1日3回3時間間隔で継続して3日間注射したラット(N=5)。Dは日;Inj.は注射;Opiはオピプラモール;Nicはニコチンである。)ニコチン(2mg/kg)を継続して3日間繰り返して注射したとき、一定の用量のニコチンによって誘発される体温の低下の大きさは、連続的に小さくなり(P<0.05)、nAChRの脱感作を示した。オピプラモールを2日目及び3日目にニコチンと共に注射したとき、体温の減少の大きさは、2回目及び3回目の注射後ニコチン単独で誘発されたものよりも有意に大きかった(P<0.001)。オピプラモール単独は、体温のわずかな低下をもたらしただけであった。図3A:各点は少なくとも5匹のラットについて時間0(第1の注射前)で測定した体温と比較した体温の変化の平均値±標準誤差である。図3Bは、注射直前に測定した体温と比較した体温の最大の変化の平均値±標準誤差を表す棒状ヒストグラムを示す。
【0090】
(例4)
ラットにおけるニコチン誘発低体温に対するオピプラモール又はガランタミンの効果
実施例3のものと類似のプロトコールの後に、オピプラモール(20mg/kg)又はガランタミン(5mg/kg)をニコチンを含んで又は含まずに注射した。体温を30分間隔で記録した。図4は結果を示す。図4A:各点は、少なくとも5匹のラットについて時間0(第1の注射前)で測定した温度と比較した体温の変化の平均値±標準誤差である。図4Bは注射直前に測定した温度と比較した体温の最大の変化の平均値±標準誤差を表す棒状ヒストグラムである。
【0091】
(例5)
ラットにおける不安に対する反復ニコチン投与の効果。
この試験を用いて不安を評価する。ラットを無作為にそれぞれ5匹の動物を含む5群に割り付け、次いで、高架式十字迷路法(EPM)で試験した。第1(対照)群では、ラットに1日1回食塩水を注射した;第2群では、ラットにニコチン(0.5mg/kg又は2mg/kg)を1日3回注射し、3回目の注射後に迷路で試験した;第3群では、ラットにオピプラモール(10mg/kg)を1日3回注射し、次いで、迷路で試験した;第4群では、ラットをオピプラモール(10mg/kg)又はガランタミン(5mg/kg)及びニコチン(2mg/kg又は0.5mg/kg)を1日3回注射し、最後の注射後に迷路で試験した。EPMにおけるニコチンに対する行動反応を第1の注射後30分してから評価し、次いで、3回目の注射後30分してから再び評価した。図5からわかるように、ニコチンの1回の注射は、ラットが壁のない道に費やした時間を有意に増加させ、ニコチンの抗不安効果を示した。しかし、0.5mg/kg及び2mg/kgの両方の用量におけるニコチンは、2回目の注射中受容体脱感作により抗不安効果を誘発しなかった。ニコチンをガランタミン又はオピプラモールと共に注射したとき、2回目の注射(ニコチン0.5mg/kg)で抗不安効果を示し、ガランタミン及びオピプラモールの両方がnAChR脱感作を阻害したことを示した。ニコチンの用量を2mg/kgまで増加したとき、オピプラモールがまた脱感作を阻害したため、オピプラモールはこのテストにおいてより有効であると思われる。ガランタミンは、このニコチンの用量ではnAChR脱感作を阻害するのに有効でなかった。棒状ヒストグラムは、壁のない道に費やした時間の平均値±標準誤差を表す。図5Aは、低用量のニコチン(0.5mg/kg)の結果を示し、図5Bは高用量のニコチン(2mg/kg)を示し、図5Cは異なる用量のニコチンとのガランタミン及びオピプラモールの間の比較を示す。
【0092】
(例6)
ラットの皮質におけるBDNFmRNA発現に対するニコチン及びオピプラモールの効果
ニコチン単独(0.5mg/kg)又はオピプラモール(10mg/kg)又はニコチン(0.5mg/kg)+オピプラモール(10mg/kg)を、ラット(1群当たり5匹)に対して1日の間に2時間間隔で腹腔内(ip)に注射した。薬物を食塩水に溶解し同じ日に用いた。各注射は体重1kg当たり1mlの体積を有する。動物は各注射後90分してから屠殺し、脳由来神経栄養因子(BDNF)及びβ−アクチンmRNAを各動物の大脳皮質のホモジネートで決定した。
【0093】
大脳皮質のホモジネートを、以下のように調製する。:ラットの脳組織を15秒間超音波処理し、全RNAをトリゾール試薬(Molecular Research Center、Cincinnati、OH、USA)を用いて、製造業者の指示に従って得た。RNA濃度を260nm及び280nmにおける吸収度を測定することによって定量した。RNAを42℃で45分間cDNAに逆転写させた。cDNA生成物をBDNFに対して1:40に希釈し、β−アクチン(内部標準のためのハウスキーピング遺伝子)に対して1:1000に希釈した。遺伝子の特異的な配列を増幅するために、PCR技法を、ReadyMix PCR Master Mix(AB−genes、Surrey、UK)並びにBDNF及びβアクチンに対する特異的なプライマー配列を用いて適用した。生成物をアガロースの電気泳動によって分離し、バンドの定量を画像分析機器によって行った。
【0094】
図6は、対照(食塩水)の注射、ニコチン単独(1回目及び3回目の注射)、オピプラモール単独(3回目の注射)及びオピプラモール/ニコチン注射(3回目の注射)の結果(BDNFmRNAレベル/βアクチン比の平均値±標準誤差)を示す。わかるように、BDNFmRNAは、動物のニコチンによる治療の結果として増加した。反復されたニコチンの注射は、nAChR脱感作の結果としてBDNFmRNAのかなり小さい増加を伴った。しかし、ニコチンをオピプラモールと共に注射したとき、nAChRの脱感作は阻害され、BDNFmRNAレベルは、ニコチン単独で観察されたものよりもさらに上方に上昇しており、オピプラモールがニコチンの効果を増強しnAChR脱感作を阻害し得ることを示した。オピプラモール単独は、BDNFmRNAレベルに対して全く影響を及ぼさなかった。
【0095】
(例7)
ラットにおけるニコチン誘発低体温に対するクロミプラミンの効果。
実施例3のものと類似のプロトコールに従って、ニコチン(2mg/kg)を単独で又はクロミプラミン(30mg/kg)と併用して、ラットに2時間間隔で3回注射した。注射後30分してから体温(℃)を測定した。図7は各注射後の体温の最大の低下を示す。わかるように、ニコチンを単独で注射したとき、徐々に低体温効果の低下を示し、nAChR脱感作を示した。クロミプラミンは、1回目の注射においてニコチンの効果をある程度まで阻害したが、継続的な注射においてニコチンの低体温効果のさらなる減少を述べておらず、クロミプラミンがnAChR脱感作を阻害することを示唆している。
【0096】
(例8)
ラットにおけるニコチン誘発低体温に対するリドカインの効果。
実験計画は、実施例3に記載したものと類似していた。ニコチン(2mg/kg)、リドカイン(15mg/kg)、及びニコチン+リドカイン(2mg/kg+15mg/kg)を、上記プロトコールに従ってラットに1日2回2日間投与した。図8A〜8Bは、1日目及び2日目の結果をそれぞれ示し、リドカインは、それが単独で投与されたときにニコチンの低体温効果を喪失するのに比べて、ニコチンの低体温効果を維持したことを示した。これらの結果は、リドカインがnAChR脱感作を阻害することを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニコチン作動薬及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)脱感作阻害薬、並びに医薬として許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項2】
ニコチン作動薬が、ニコチン、ニコチン代謝産物、臭化デカメトニウム、エピバチジン、ロベリン、バレニクリン、エピボキシジン、エピキナミド;ABT418、ABT−594、DMXB−A、アルチニクリン、メタニコチン、フィゾスチグミン、リバスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、ドネペジル、タクリン、並びに医薬として許容されるその塩及び異性体から選択され、ニコチン代謝産物がコチニン、ノルニコチン、ノルコチニン、ニコチンN−オキシド、コチニンN−オキシド、3−ヒドロキシ−コチニン、5−ヒドロキシ−コチニン及び医薬として許容されるその塩から選択される、請求項1の医薬組成物。
【請求項3】
nAChR脱感作阻害薬が、イオンチャネル阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬、カリウムチャネル阻害薬、カルシウムチャネル阻害薬、β遮断薬、σ受容体拮抗薬、ノルエピネフリン(NE)再取り込み阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、ムスカリン作動薬、アデノシン拮抗薬、κオピオイド作動薬、ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬、神経ステロイド、σ1受容体作動薬、及びガランタミンから選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記イオンチャネル阻害薬がリドカイン及びメピバカインを含み;前記ナトリウムチャネル阻害薬がフェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、メキシレチン、トカイニド、フレカイニド、及びプロパフェノンを含み;前記カリウムチャネル阻害薬がニベタン、ソタロール、アミオダロン、及びブレチリウムを含み;前記カルシウムチャネル阻害薬がベラパミル及びジルチアゼムを含み;前記β遮断薬がプロプラノロール、チモロール、アテノロール、及びメトプロロールを含み;前記σ受容体拮抗薬がオピプラモール及びリムカゾールを含み;前記NE再取り込み阻害薬がドスレピン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、及びプロトリプチリンを含み;前記選択的セロトニン再取り込み阻害薬がクロミプラミンを含み;前記ムスカリン作動薬が、McN−A−343、アレコリン、セビメリン、AF−150、及びAF−267Bを含み;前記アデノシン拮抗薬がカフェインを含み;前記κオピオイド作動薬がコデイン及びペンタゾシンを含み;前記ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬がクロザピン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びクエチアピンを含み;前記神経ステロイドがアルファキサロン及びミナキソロンを含み;前記σ1受容体作動薬がペンタゾシンを含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ニコチン作動薬が、ニコチン、医薬として許容されるその塩、異性体又はN−オキシドであり、nAChR脱感作阻害薬が、オピプラモール、McN−A−343、ガランタミン、リドカイン若しくはクロミプラミン、又は医薬として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ニコチン、オピプラモール及び医薬として許容される担体を含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が、ニコチン作動薬:nAChR脱感作阻害薬の重量比約1:2〜約1:100、好ましくは約1:5〜約1:20、より好ましくは約1:14で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
経口、非経口、経皮的、粘膜、経皮又は吸入投与に適している、請求項1から7までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
チューインガム、薄膜、小袋、経皮パッチ、カプセル、錠剤又は鼻内スプレーである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ニコチン及びオピプラモール、又は医薬として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグ、並びに経皮投与又は局所投与に適した医薬として許容される担体を含む、請求項9に記載の経皮パッチ。
【請求項11】
患者へのニコチン及びオピプラモールの実質的に連続的な送達を提供するように製剤されている、請求項10に記載の経皮パッチ。
【請求項12】
予め決定した送達速度でのニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬の制御放出送達のために設計された、請求項1から11までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
予め決定した送達速度が、少なくとも12時間又は少なくとも1、3又は7日の期間にわたって実質的に連続的である、請求項12に記載の制御放出医薬組成物。
【請求項14】
ニコチン及びオピプラモール又は医薬として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグを含む、請求項12又は13に記載の制御放出医薬組成物。
【請求項15】
中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)の疾患、障害又は状態を治療するため又は禁煙を誘発するための、請求項1から14までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記CNS又はPNSの疾患、障害又は状態が、認知障害又は認知機能障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、不安、うつ病、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、血管性認知症、レビー小体病、外傷後認知症、ピック病、多発性硬化症、ヤコブ・クロイツフェルト病、ニコチン中毒、アルコール中毒、大麻中毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する神経状態、及びハンチントン病から選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
タバコ又はニコチンの依存又は使用を治療又は抑制し、したがって、禁煙を誘発するための、請求項1から14までのいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
CNS若しくはPNS疾患、障害又は状態を治療するため又は禁煙を誘発するためのキットであって、ニコチン作動薬を含む医薬組成物、nAChR脱感作阻害薬を含む医薬組成物、及び前記CNS又はPNSの疾患、障害又は状態を治療する前記組成物の投与についての指示を含む上記キット。
【請求項19】
各医薬組成物が経皮パッチである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
ニコチン作動薬を含む第1のパッチ及びnAChR脱感作阻害薬を含む第2のパッチを含む、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
ニコチンを含む第1のパッチ及びオピプラモール又は医薬として許容されるその塩、エステル、若しくはプロドラッグ及び経皮投与又は局所投与に適した医薬として許容される担体を含む第2のパッチを備える、請求項19に記載のキット。
【請求項22】
各パッチがニコチン及びオピプラモールの実質的に連続的な送達を提供するように製剤されている、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記CNSの疾患、障害又は状態が、認知障害又は認知機能障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、不安、うつ病、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、血管性認知症、レビー小体病、外傷後認知症、ピック病、多発性硬化症、ヤコブ・クロイツフェルト病、ニコチン中毒、アルコール中毒、大麻中毒、コカイン中毒、後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する神経状態、及びハンチントン病から選択される、請求項18から22までのいずれか一項に記載のキット。
【請求項24】
中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)の疾患、障害又は状態を治療する方法であって、治療を必要とする患者に治療有効量のニコチン作動薬及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)脱感作阻害薬を同時投与することを含む方法。
【請求項25】
前記CNS疾患、障害又は状態が認知障害又は認知機能障害である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記CNS又はPNSの疾患、障害又は状態が、不安、うつ病、アルツハイマー病、パーキンソン病、統合失調症、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、血管性認知症、レビー小体病、外傷後認知症、ピック病、多発性硬化症、ヤコブ・クロイツフェルト病、ニコチン中毒、アルコール中毒、大麻中毒、コカイン中毒、又は後天性免疫不全症候群(AIDS)に関連する神経状態、及びハンチントン病からなる群から選択される、請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
不安又はうつ病を治療する方法であって、治療を必要とする患者に、治療有効量のニコチン作動薬及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)脱感作阻害薬を同時投与することを含む上記方法。
【請求項28】
タバコ又はニコチンの依存又は使用を治療する又は抑制する方法であって、治療を必要とする患者に、治療有効量のニコチン作動薬及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)脱感作阻害薬を同時投与することを含む上記方法。
【請求項29】
ニコチン作動薬の前記患者へのその後の投与の効果が、前記患者にニコチン作動薬を単独で最初に投与することからなる治療方法を用いたニコチン作動薬のその後の投与に比べて、実質的により治療上有効である、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ニコチン作動薬の効果が、前記患者にニコチン作動薬を単独で投与することに比べて、前記患者において前記同時投与後に実質的により延長される、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
同時投与後のニコチン作動薬の効果が患者にニコチン作動薬を単独で投与することに比べて、約2倍有効である、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
nAChR脱感作阻害薬が、前記ニコチン作動薬の脱感作を少なくとも約3時間、約12時間、約1日、又は約3日の間減少させる、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が同じ剤形で一緒に投与される、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が別々の剤形で、場合によっては異なる剤形で投与される、請求項24から28までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬が約10分〜約12時間に分けて順次又は連続的に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ニコチン作動薬及び前記nAChR脱感作阻害薬それぞれが、経口、非経口、粘膜、吸入及び経皮製剤、又はそれらの組合せから選択される製剤によって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
前記ニコチン作動薬及び前記nAChR脱感作阻害薬が、チューインガム、小袋、薄膜、経皮パッチ、カプセル、錠剤、トローチ剤、又は鼻内スプレーの形態で同時投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ニコチン作動薬が経皮投与され、nAChR脱感作阻害薬が経口投与又は経皮投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ニコチン作動薬及び前記nAChR脱感作阻害薬がそれぞれ、実質的に連続的なやり方で、少なくとも12時間、少なくとも1日、少なくとも3日、又は少なくとも1週間にわたって投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記ニコチン作動薬及び前記nAChR脱感作阻害薬が1つの経皮パッチとして投与される、又は前記ニコチン作動薬が第1経皮パッチで投与され、前記nAChR脱感作阻害薬が第2の経皮パッチとして投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
治療有効量のニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬を再投与するステップをさらに含み、場合によっては、再投与は以前の投与の約1日以内に行う、請求項24に記載の方法。
【請求項42】
ニコチン作動薬が、ニコチン、ニコチン代謝産物、臭化デカメトニウム、エピバチジン、ロベリン、バレニクリン、エピボキシジン、エピキナミド;ABT418、ABT−594、DMXB−A、アルチニクリン、メタニコチン、フィゾスチグミン、リバスチグミン、ピリドスチグミン、ネオスチグミン、ドネペジル、タクリン、並びに医薬として許容されるその塩及び異性体から選択され、ニコチン代謝産物がコチニン、ノルニコチン、ノルコチニン、ニコチンN−オキシド、コチニンN−オキシド、3−ヒドロキシ−コチニン、5−ヒドロキシ−コチニン及び医薬として許容されるその塩から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項43】
ニコチン作動薬が、ニコチン又は医薬として許容されるその塩若しくはN−オキシドである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
nAChR脱感作阻害薬が、イオンチャネル阻害薬、ナトリウムチャネル阻害薬、カリウムチャネル阻害薬、カルシウムチャネル阻害薬、β遮断薬、σ受容体拮抗薬、ノルエピネフリン(NE)再取り込み阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、ムスカリン作動薬、アデノシン拮抗薬、κオピオイド作動薬、ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬、神経ステロイド、σ1受容体作動薬、及びガランタミンから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項45】
前記イオンチャネル阻害薬がリドカイン及びメピバカインを含み;前記ナトリウムチャネル阻害薬がフェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリジン、キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、メキシレチン、トカイニド、フレカイニド、及びプロパフェノンを含み;前記カリウムチャネル阻害薬がニベタン、ソタロール、アミオダロン、及びブレチリウムを含み;前記カルシウムチャネル阻害薬が、ベラパミル及びジルチアゼムを含み;前記β遮断薬が、プロプラノロール、チモロール、アテノロール、及びメトプロロールを含み;前記σ受容体拮抗薬がオピプラモール及びリムカゾールを含み;前記NE再取り込み阻害薬が、ドスレピン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン、及びプロトリプチリンを含み;前記選択的セロトニン再取り込み阻害薬がクロミプラミンを含み;前記ムスカリン作動薬が、McN−A−343、アレコリン、セビメリン(AF−102B)、AF−150、及びAF−267Bを含み;前記アデノシン拮抗薬がカフェインを含み;前記κオピオイド作動薬がコデイン及びペンタゾシンを含み;前記ドーパミン及び/又はセロトニン受容体拮抗薬が、クロザピン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、及びクエチアピンを含み;前記神経ステロイドがアルファキサロン及びミナキソロンを含み;前記σ1受容体作動薬がペンタゾシンを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
nAChR脱感作阻害薬が、オピプラモール、医薬として許容されるその塩、エステル又はプロドラッグである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ニコチン作動薬が、ニコチン、医薬として許容されるその塩、異性体又はN−オキシドであり、nAChR脱感作阻害薬が、オピプラモール、McN−A−343、ガランタミン、リドカイン若しくはクロミプラミン、又は医薬として許容されるその塩、エステル又はプロドラッグである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
ニコチン作動薬がニコチンであり、nAChR脱感作阻害薬がオピプラモール又は医薬として許容されるその塩若しくはエステルである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ニコチン約5mg/日〜約21mg/日が投与され、オピプラモール約50mg/日〜約250mg/日が投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ニコチン作動薬が少なくとも約1日間又は少なくとも約3日間有効である、請求項24に記載の方法。
【請求項51】
ニコチン作動薬を投与することによって引き起こされるnAchR脱感作を減少させる方法であって、患者にニコチン作動薬及びnAChR脱感作阻害薬を同時投与することを含む上記方法。
【請求項52】
ニコチン作動薬がニコチンであり、nAChR脱感作阻害薬が、オピプラモール、McN−A−343、ガランタミン、リドカイン若しくはクロミプラミン、又は医薬として許容されるその塩、エステル若しくはプロドラッグから選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
a)ニコチン、b)オピプラモール又は医薬として許容されるその塩、エステル又はプロドラッグを含む組成物の送達のための制御放出医療機器であって、予め決定した送達速度で患者に組成物を送達することができる上記機器。
【請求項54】
予め決定した送達速度が、少なくとも1日にわたって実質的に連続的である、請求項53に記載の制御放出医療機器。

【図2】
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【図1】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公表番号】特表2011−504490(P2011−504490A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534598(P2010−534598)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001546
【国際公開番号】WO2009/069126
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(510144661)ニューロデルム リミテッド (2)
【Fターム(参考)】