説明

ニコチン受容体およびGABAA受容体のアロステリックモジュレーターとしての置換複素環およびそれらの使用

本発明は、α7 nAChRおよび/またはGABA受容体の新規アロステリックモジュレーターである式(I)の化合物によって代表される複素環に関する。本発明は、哺乳動物におけるα7 nAChRに対するアセチルコリン作用の増強およびGABA受容体のネガティブアロステリックモジュレーションに応答する障害の、有効量の式(I)の化合物を投与することによる治療も開示する。本発明は、本発明の化合物を含む医薬製剤も対象とする。そのような製剤は、治療有効量の式Iの化合物と、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含有する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2009年3月9日に出願された米国仮特許米国仮特許出願第61/158,684号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は医薬化学分野におけるものである。特に、本発明は、置換複素環およびその誘導体、ならびに、これらの化合物がニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)およびGABA受容体を治療に関連する方式でアロステリックにモジュレートし、nAChRおよびGABA受容体のモジュレーションの影響を受けやすいCNS障害を寛解するために使用され得るという発見に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
α7 nAChRは、Cysループ受容体のリガンド依存性イオンチャネルスーパーファミリーに属する。Cysループスーパーファミリーは、筋肉およびニューロンのnAChR、5−ヒドロキシトリプタミン3型(5HT)、γ−アミノ酪酸(GABA)、GABAならびにグリシン受容体を含む。α7 nAChRは、アセチルコリンおよびコリンをオルソステリックリガンドとして認識し、オルソステリック部位においてニコチンを結合させるアロステリックタンパク質である。ニューロンのα7 nAChRは、受容体1つにつき5つのオルソステリック部位を含有する。オルソステリック部位とのアゴニスト結合は、アゴニスト適用の濃度および反応速度論に応じて受容体の機能状態をモジュレートするアロステリック効果を伝達する。nAChRについては、4つの機能状態:1つの開口および3つの閉鎖状態(休止、早発性脱感作、遅発性脱感作)が記載されている。ニューロンのnAChRの活性化は、速いシナプス伝達を媒介し、主要な阻害性および興奮性神経伝達物質であるGABAおよびグルタメートによってシナプス伝達を制御する。
【0004】
α7 nAChRは、海馬ニューロンにおける主なニコチン電流を媒介する。α7 nAChRは当初、ニワトリ脳ライブラリーから、他のnAChRと約40%の配列相同性を呈するα−ブンガロトキシン結合タンパク質として同定されていた。α7 nAChRは、五量体Cysループ受容体構造およびチャネル孔の各サブユニット内層のM2断片等、他のニューロンおよび筋肉のnAChRと同様の特徴を共有しているが、α7 nAChRは、Xenopus卵母細胞において再構成すると、α8およびα9 nAChRとのみ特徴を共有するホモ五量体構造を呈する。Xenopus卵母細胞中の異種発現したホモマーα7 nAChRは、高親和性を有するα−ブンガロトキシンによって不活性化されるのに対し、他のnAChRは不活性化されない。α7 nAChRは、海馬ニューロン中のニコチン性アゴニストによって誘発される異なる種類の全細胞電流によって、薬理学的にも同定されている。種々のニコチン性アゴニストに暴露されると、培養された海馬ニューロンからの全細胞記録は、概して、非常に短い開口時間、高い伝導性、非常に高いCa++透過性、迅速な消滅を有し、かつMLAおよびα−ブンガロトキシンによる遮断に感受性であるIA型電流を示す。海馬ニューロンにおけるこれらのニコチン電流の特性は、卵母細胞中に発現したα7 nAChRによって媒介される電流に相当する。本出願人らは、海馬機能のモジュレーションの特異的標的を提供する海馬における、速いシナプス伝達を調節する上でのそれらの役割により、特にα7 nAChRに関心を持っている。
【0005】
α5サブユニットを含有するGABA受容体は、異なる免疫組織化学、mRNAハイブリダイゼーション、および哺乳類の脳における海馬の構造に特異的である選択的放射性リガンド結合パターンを示す。皮質でも全ラット脳でもなく海馬由来の免疫沈降したGABA αサブユニットは、α5免疫活性を示す。さらに、海馬におけるCA1錐体細胞の持続性阻害は、GABA α5受容体によって部分的に媒介される。GABA α5受容体の遺伝子変化は、空間学習および連想的学習等の海馬依存性学習および記憶の増強と一致する行動的応答を引き起こす。GABA α5受容体の選択的ネガティブアロステリックモジュレーションを有する一連のトリアゾロフタラジンは、水迷路海馬依存性動物認知モデルにおける遅延位置合わせ試験において効果的であることが報告されている(非特許文献1)。したがって、GABA α5受容体は、アルツハイマー病(AD)に関連する学習および記憶における欠損を回復するための適切な標的を提供し得る。多くのリガンド依存性イオンチャネルおよびGタンパク質共役受容体系は、AD脳における発現が減弱していることが実証されている。しかしながら、GABA α5受容体の密度および機能は、GABA α5サブユニットmRNAにおけるささやかな減少の証拠があるにもかかわらず、ADにおいて比較的無傷である。
【0006】
1個の分子によるα7 nAChRおよびGABA α5受容体の同時標的化は、いくつかの重要な理由で、神経変性疾患における認知増強薬物の同定のための有力な戦略である。ニコチンのようなアゴニストによるα7 nAChRの活性化は、作業記憶の選択的改善を生じさせる。したがって、α7 nAChRのポジティブアロステリックモジュレーションは、作業記憶にもプラスの影響を与えるはずである。α7 nAChRおよびGABA α5受容体は、海馬に共局在化され、同場所内で神経生理学的相乗効果を促進し得る。GABA α5受容体のネガティブな有効性モジュレーションは、作業記憶を改善する。α7 nAChRおよびGABA α5受容体は、ADの進行に伴うα4β2 nAChRの重度の減少に対して保存される。その上、特許開示は、GABAおよびコリン作動系をそれぞれ逆アゴニストおよびアゴニストと同時にモジュレートすることが、「…驚くほど有効な相乗的組合せ…」を生じさせることを示唆している(特許文献1)。本開示において具現化されているもの等、α7 nAChRおよびGABA α5受容体の多機能アロステリックモジュレーターは、α7 nAChRアゴニストに直接作用するのとは異なり、アロステリックモジュレーターが内因性アゴニスト(すなわち、AChおよびコリン)の存在下でα7 nAChRのみを特異的に活性化するため、認知障害に対する他の潜在的なコリン作動薬ベースの治療戦略に特有の副作用を緩和するはずである。アロステリックモジュレーターは、概して、ドネペジル(donepizal)等の現在臨床的に使用されているアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と同様に、内因性AChのレベルを見境なく上昇させない。
【0007】
本明細書において開示されているアロステリックモジュレーターは、局所神経伝達の時間的整合性を保存しながら、局所濃度の内因性アゴニストの作用に対するα7 nAChRの感受性を選択的に増強するであろう。この戦略は、2つの作用部位を有する分子が相乗的であり、故に、a)薬物毒性の可能性またはb)両方の受容体が薬物カクテルとして標的化された場合の薬物−薬物相互作用を単独で減少させる作用部位のいずれかを標的とする分子よりも必要となる用量を低くすることができるため、それぞれ特定の活性を有する2種の薬物を組み合わせるよりも有利となり得る。
【0008】
本明細書において論じられるすべての参考文献は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第1999/47142号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Dawsonら、J. Pharmacol. Exp. Ther.、316巻:1335〜1345頁、2006年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、概して、α5 GABAおよび/またはα7 nAChRのアロステリックモジュレーターならびにそれらの調製および使用のための方法、ならびにそれらを含有する医薬組成物を対象とする。より具体的には、本発明のα5 GABAのアロステリックモジュレーターおよび/またはα7 nAChRモジュレーターは、薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物およびプロドラッグを含む、一般構造:
【0012】
【化1】

によって表される化合物[式中、R、R、R、R、R、A、B、G、D、EおよびFは、以下で定義する通りである]である。さらに、本発明は、式IのH、11C、18F、35S、36Cl、14Cおよび125I放射性標識化合物、ならびに、α5 GABAおよびα7 nAChR複合体上におけるそれらの結合部位のための放射性リガンドとしてのそれらの使用を対象とする。
【0013】
本発明は、哺乳動物におけるα5 GABA受容体に対するGABA作用の阻害およびα7 nAChRに対するアセチルコリン作用の増強に応答する障害を、有効量の本明細書において記載されている通りの式Iの化合物を投与することによって治療する方法も対象とする。本発明の化合物は、中枢神経系(CNS)のものを含む様々な障害を治療するために使用され得る。CNSの障害は、神経変性疾患、老年性認知症、統合失調症、アルツハイマー病、学習欠損、認知欠損、記憶喪失、レヴィー小体認知症、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、不安、躁病、躁鬱病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳の炎症およびトゥレット症候群を含むがこれらに限定されない。加えて、本発明の化合物は、疼痛、炎症、敗血性ショック、潰瘍性結腸炎および過敏性腸症候群を治療するために使用され得る。
【0014】
本発明は、本発明の化合物を含む医薬製剤も対象とする。そのような製剤は、治療有効量の式Iの化合物と、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含有する。
【0015】
本発明の追加の実施形態および利点は、一部は次の記述において説明され、一部は記述から明らかとなるか、または本発明の実践によって学習できる。本発明の実施形態および利点は、特に添付の請求項において指摘されている要素および組合せを利用して、実現および達成される。
【0016】
前述の一般的な記述および下記の詳細な記述はいずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、請求項に記載されている通りの本発明を制限するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態において、式Iによって表される置換二環式ヘテロアレーン:
【0018】
【化2】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
A、B、G、D、EおよびFは、CR3または窒素からなる群から独立に選択され、但し、A、BおよびGが炭素である場合、Dは窒素ではなく、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
が提供される。
【0019】
別の実施形態において、式IIによって表される置換1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン:
【0020】
【化3】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
EおよびFは、窒素およびCRからなる群から独立に選択される]
が提供される。
【0021】
別の実施形態において、式IIIによって表される置換1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン:
【0022】
【化4】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
が提供される。
【0023】
別の実施形態において、式IVによって表される置換1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン:
【0024】
【化5】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
が提供される。
【0025】
医療において使用するために、式I〜IVの化合物の塩は、薬学的に許容される塩となる。しかしながら、他の塩は、本発明による化合物の、またはそれらの薬学的に許容される塩の調製において有用となり得る。本発明の化合物の適切な薬学的に許容される塩は、例えば、本発明による化合物の溶液を、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸またはリン酸等の薬学的に許容される酸の溶液と混合することによって形成され得る酸付加塩を含む。さらに、本発明の化合物が酸性部分を含む場合、適切な薬学的に許容されるその塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムまたはマグネシウム塩;および適切な有機リガンドと形成された塩、例えば第四級アンモニウム塩を含み得る。薬学的に許容される塩およびそれらの製剤の調製のための標準的な方法は当技術分野において周知であり、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」、A. Gennaro編、第20版、Lippincott、Williams & Wilkins、Philadelphia、PAを含む種々の参考文献において開示されている。
【0026】
本発明は、上記式I〜IVの化合物のプロドラッグをその範囲内に含む。概して、そのようなプロドラッグは、式I〜IVの必要とされる化合物にインビボで容易に変換可能な式I〜IVの化合物の官能性誘導体であろう。適切なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手順は、例えば、Design of Prodrugs、H. Bundgaard編、Elsevier、1985年において記載されている。プロドラッグは、アルコールに由来するエステル、酸から形成されるエステル、およびアルコールから形成されるホスフェートを含むがこれらに限定されない。
【0027】
本明細書において使用される場合、「溶媒和物」は、溶質によって形成される可変化学量論(例えば、式(I)の化合物、またはその塩、エステルもしくはプロドラッグ)と溶媒との複合体を指す。本発明の目的のためのそのような溶媒は、溶質の生物学的活性に干渉しない。適切な溶媒の例は、水、メタノール、エタノールおよび酢酸を含む。概して、使用される溶媒は、薬学的に許容される溶媒である。適切な薬学的に許容される溶媒の例は、水、エタノールおよび酢酸を含む。概して、使用される溶媒は水である。
【0028】
本発明による化合物が少なくとも1つの不斉中心を有する場合、該化合物は鏡像異性体として適宜存在し得る。本発明による化合物が2つ以上の不斉中心を保有する場合、該化合物はジアステレオ異性体としてさらに存在し得る。すべてのそのような異性体およびその任意の比率での混合物は本発明の範囲内に包含されることを理解されたい。本発明による化合物が幾何異性体を保有する場合、すべてのそのような異性体およびその任意の比率での混合物は本発明の範囲内に包含される。
【0029】
「ハロゲン」または「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0030】
「アルキル」は、描写されている炭素原子数を有する直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和の脂肪族ラジカルを意味する。アルキル基は、アルキル基の鎖内に挿入された、または鎖中にある、酸素、窒素または硫黄等のヘテロ原子を含み得る。有用なアルキル基は、直鎖および分枝鎖C1〜20アルキル基、より好ましくはC1〜10アルキル基を含む。アルキル基はC1〜5アルキルであってよい。典型的なC1〜10アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、1,2−ジメチルプロピル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニルおよびn−デシル基を含む。アルキル基は、ベンジル基等の「アリールアルキル」基等、別の基で表されることもある。
【0031】
「アリール」基は、単環式、二環式または多環式環系であってよく、ここで、各環は芳香族であるか、あるいは1つまたは複数の環と縮合または結合した場合に、多環式環系を形成する。アリール環は、非芳香族環と縮合してもよい。アリール環は、ヘテロ原子を含有してヘテロアリール環を形成してもよい。有用なアリール基は、C6〜14アリール、とりわけC6〜10アリールである。典型的なC6〜14アリール基は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、インデニルおよびビフェニル基を含む。
【0032】
「アリールアルキル」または「アラルキル」基は、上述したC6〜10アリール基のいずれかで置換されている上述したC1〜20アルキル基のいずれかを含む。同様に、置換C1〜10アルキルは、C1〜10アルキル基がアリール基で置換されている場合、アリールアルキルまたはアラルキル基(つまりヘテロアリールアルキル等)も表し得る。有用なアリールアルキル基は、上述したC6〜10アリール基のいずれかで置換されている上述したC1〜20アルキル基のいずれかを含む。有用なアリールアルキル基は、ベンジルおよびフェネチルを含む。
【0033】
「シクロアルキル」基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル基を含む。
【0034】
「シクロアルキルアルキル」基は、先に述べたシクロアルキル基のいずれかで置換されている上述したC1〜20アルキル基のいずれかを含む。有用なシクロアルキルアルキル基の例は、シクロヘキシルメチルおよびシクロプロピルメチル基を含む。
【0035】
「ハロアルキル」基は、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチルおよび1,1−ジフルオロエチル基を含む、1個または複数のフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子で置換されているC1〜20アルキル基である。ハロアルキルという用語は、例えばトリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチル基を含むペルハロアルキル基も含む。
【0036】
「ヒドロキシアルキル」基は、1個または複数のヒドロキシルによって置換されているC1〜20アルキル基を含み、ヒドロキシメチル、1−および2−ヒドロキシエチル、ならびに1−ヒドロキシプロピル基を含む。
【0037】
「アルコキシ」基は、上記で定義したアルキル基によって置換されている酸素を介して結合している基である。
【0038】
「アルキルチオ」基は、上記で定義したアルキル基によって置換されている硫黄を介して結合している基であり、例えば、メチル−およびエチルチオ基を含む。
【0039】
「アミノ」基は−NHである。アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基は、例えば基−NHR’および−NR’R”を含み、ここで、各R’およびR”は、独立に、上記で定義した置換または非置換アルキル基である。そのような基の例は、−NHMe、−NHEt、−NHシクロヘキシル、−NHCH2フェニル、−N(Me)等を含む。有用なジアルキルアミノアルキル基は、それぞれ置換または非置換の、上述したC1〜10アルキル基のいずれかを含む。また、置換アミノ基は、例えば、−NHMe、−NHEt、−NHシクロヘキシル、−N(Me)等を含み得る。
【0040】
「アルキルチオール」基は、−SH基によって置換されている上記で定義したアルキル基のいずれかである。
【0041】
「カルボキシ」基は−COOHである。
【0042】
用語「複素環式」は、本明細書において、炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群から独立に選択される1から4個までのヘテロ原子からなる、飽和もしくは部分不飽和の3〜7員の単環式または7〜10員の二環式環系を意味するために使用され、ここで、該窒素および硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていてよく、該窒素は場合により四級化されていてよく、かつ上記で定義した複素環式環のいずれかがベンゼン環と縮合している任意の二環式基を含み、ここで、該複素環式環は、得られる化合物が安定であれば、炭素または窒素上で置換されていてよい。例は、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン等を含むがこれらに限定されない。
【0043】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書において、炭素原子ならびにO、NおよびSからなる群から独立に選択される1から4個までのヘテロ原子からなる、完全不飽和の5および6員の単環式または9および10員の二環式環系を意味するために使用され、ここで、該窒素および硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されて、例えば−N(O)−、−SO−、SO−を形成してよく、該窒素は場合により四級化されていてよく、かつ上記で定義した複素環式環のいずれかがベンゼン環と縮合している任意の二環式基を含み、ここで、該ヘテロアリール環は、得られる化合物が安定であれば、炭素または窒素上で置換されていてよい。例は、ピリジン、ピリミジン、ピラジジン(pyradizine)、テトラゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、キノリン等を含むがこれらに限定されない。
【0044】
「異性体」は、同一の分子式であるが、空間における原子の結合または配置の性質または順序における差異を有する任意の化合物を意味する。そのような異性体の例は、例えば、二重結合のEおよびZ異性体、鏡像異性体、ならびにジアステレオマーを含む。
【0045】
「置換または非置換」は、ある基が、水素置換基のみからなってよく(非置換)、または別段特定されていない1個または複数の非水素置換基をさらに含んでよい(置換)ことを意味する。例えば、tert−ブチル基は、メチル基によって置換されているプロピル基の例となり得る。置換基の例は、C1〜10アルキル、C2〜10アルキレン、アミド、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、カルバモイル、カルボニル基、シクロアルキル、エステル、ハロ、ヘテロアリール、オキソ、ヒドロキシまたはニトロ基を含むがこれらに限定されず、そのそれぞれは、価数が許す限り、置換されていても置換されていなくてもよい。RからR上の任意選択の置換基は、上述したハロ、ハロ(C1〜20)アルキル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、シクロアルキル、シクロアルキルオキシ、C1〜20アルキル、アリール(C1〜20)アルキル、シクロアルキル(C1〜20)アルキル、ヒドロキシ(C1〜20)アルキル、アミノ(C1〜20)アルキル、アルコキシ(C1〜20)アルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、チオール、C1〜20アルコキシおよびC1〜20アルキルチオール基のいずれか1つを含む。好ましい任意選択の置換基は、ハロ、ハロ(C1〜6)アルキル、アミノ(C1〜6)アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノを含む。
【0046】
本明細書において使用される場合、α5 GABAAおよび/またはα7 nAChRの「アロステリックモジュレーター」は、α5 GABAAおよび/またはα7 nAChRとアロステリックに結合し、それによってアゴニスト誘起応答を増大させる(ポジティブアロステリックモジュレーター)、または低減させる(ネガティブアロステリックモジュレーター)化合物を指す。
【0047】
本明細書において使用される場合、「α5 GABAAおよびα7 nAChRのモジュレーションの影響を受けやすい障害」は、α5 GABAAおよびα7 nAChR機能不全に関連する障害ならびに/またはα5 GABAAおよびα7 nAChR受容体が関与している障害を指す。そのような障害は、神経変性疾患、老年性認知症、統合失調症、アルツハイマー病、学習欠損、認知欠損 記憶喪失、レヴィー小体認知症、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、不安、躁病、躁鬱病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳の炎症、トゥレット症候群、疼痛、炎症、敗血性ショック、潰瘍性結腸炎および過敏性腸症候群を含むがこれらに限定されない。
【0048】
本明細書において使用される場合、「学習または記憶に関係する認知障害」は、記憶、学習、知覚、問題解決、概念化、言語、読解、言語的理解、音声言語理解、数学理解、視覚理解および注意等の認知機能に影響を及ぼす精神障害を指す。学習または記憶に関係する認知障害は、軽度認知機能障害、加齢関連認知低下、老年性認知症およびアルツハイマー病を含むがこれらに限定されない。
【0049】
本発明の化合物の調製は、有機合成の技術分野において公知の標準的な方法を使用して実施され得る。官能基を有する化合物を使用する反応は、保護することができる官能基を有する化合物について実施され得る。「保護された」化合物または誘導体は、1つもしくは複数の反応部位または官能基が保護基でブロックされている化合物の誘導体を意味する。保護された誘導体は、本発明の化合物の調製において、またはそれ自体で有用であり、保護された誘導体は、生物学的活性剤となり得る。適切な保護基を収載している包括的教科書の一例は、T.W. Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、第3版、John Wiley & Sons, Inc.、1999年において見ることができる。
【0050】
上述した通り、本発明のアロステリックモジュレーターは、広範な治療用途にわたって有用性を有し、ヒトおよび概して哺乳動物における様々なCNS関連状態を治療するために使用され得る。例えば、そのような状態は、神経変性疾患、老年性認知症、統合失調症、アルツハイマー病、学習欠損、認知欠損、記憶喪失、レヴィー小体認知症、注意欠陥障害、注意欠陥多動性障害、不安、躁病、躁鬱病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳の炎症およびトゥレット症候群を含む。
【0051】
加えて、本発明の化合物は、CNS関連状態の治療のための、α7 nAChRおよび/またはα5 GABAA受容体の直接的なモジュレーターである化合物と組み合わせて有用となり得る。
【0052】
本発明の別の実施形態において、1種または複数の本発明の化合物を含有する医薬組成物が開示される。投与を目的として、本発明の化合物は医薬組成物として製剤化され得る。本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と薬学的に許容される担体および/または賦形剤とを含む。本発明の化合物は、組成物中に、特定の障害を治療するのに有効な量で、好ましくは患者に許容される毒性で存在する。典型的には、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物を、投与経路に応じて投薬量当たり0.1mgから250mgまで、より典型的には1mgから60mgまでの量で含み得る。適切な濃度および投薬量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0053】
薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、当業者によく知られている。液剤として製剤化される組成物では、許容される担体および/または賦形剤は生理食塩水および滅菌水を含み、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および他の一般的な添加物を場合により含み得る。組成物は、本発明の化合物に加えて、賦形剤、分散剤および界面活性剤、結合剤、ならびに滑沢剤を含有する、丸剤、カプセル剤、顆粒剤または錠剤として製剤化されてもよい。当業者であれば、適切な様式で、かつRemington’s Pharmaceutical Sciences、Gennaro編、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1990年において開示されているもの等の慣例に従って、本発明の化合物をさらに製剤化することができる。
【0054】
別の実施形態において、本発明は、上記で論じた通りのCNS関連状態を治療するための方法を提供する。そのような方法は、温血動物への、該状態を治療するのに十分な量での本発明の化合物の投与を含む。この文脈において、「治療する」は予防的投与を含む。そのような方法は、本発明の化合物の、好ましくは上記で論じた通りの医薬組成物の形態での全身投与を含む。本明細書において使用される場合、全身投与は、経口および非経口投与方法を含む。経口投与では、本発明の適切な医薬組成物は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤およびカプセル剤、ならびに液剤、シロップ剤、懸濁剤および乳剤を含む。これらの組成物は、香味剤、保存剤、懸濁化剤、増粘剤および乳化剤、ならびに他の薬学的に許容される添加物を含んでもよい。非経口(parental)投与では、本発明の化合物は、本発明の化合物に加えて、緩衝剤、酸化防止剤、静菌剤、およびそのような液剤において一般に用いられる他の添加物を含有し得る水性注射溶液中で調製できる。
【0055】
式IVの化合物は、市販の3,6−ジクロロピリダジンから出発し、スキーム1で示される通りに調製した。安息香酸ヒドラジドとの反応により中間体を得、これを、キシレン中EtNHClを使用して環化して、1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンとした。次いで、塩化物のボロン酸カップリングにより、所望生成物を得た。代替として、最初にボロン酸カップリングを、続いて安息香酸ヒドラジドとの反応を遂行してもよい。安息香酸ヒドラジドは、対応する安息香酸から、スキーム2で示される通りに調製した。
【0056】
【化6】

卵母細胞電気生理学:
ヒト受容体を発現している卵母細胞を使用し、α7 nAChRにおける最大下ニコチン誘起電流のモジュレーションについて個々の化合物を試験した。各卵母細胞について、3mMのニコチンに応答する最大ニコチン誘起電流を決定した。すべての他の電流は、この値を尺度とした。約0.05(最大5%、または「EC」)の部分電流を誘起するようにニコチン濃度を調整し、このニコチン濃度を使用してEC制御電流を生成した。漸増濃度の試験化合物を、単独で(前処理)、次いでEC濃度のニコチンと組み合わせて(同時適用)、卵母細胞に適用した。このプロトコールにより、α7 nAChRに対する試験化合物の直接的影響およびニコチン誘起応答に対する化合物のモジュレート効果の両方の測定が可能になった。従来の技術を使用して、ヒトニコチン受容体サブユニットをコードしているcDNAクローンからmRNAを調製し、保存した。卵母細胞の調製、微量注射および維持は、先に詳細に報告されている通りに実施した(Whittemoreら、Mol. Pharmacol.、50巻:1364〜1375頁、1996年)。個々の卵母細胞に、5〜50ngの各サブユニットのmRNAを注射した。注射に続いて、卵母細胞をバース培地中16〜17℃で維持した。二極電圧クランプ記録を3〜14日間、続いて、規定がなければ−70mVの保持電圧でmRNA注射を行った。ニコチン記録は、Ca++を含まないリンゲル液(mM:NaCl、115;KCl、2;BaCl、1.8;HEPES、5;pH7.4)中で行って、Ca++活性塩化物およびムスカリン性電流を制限した。本発明の化合物は、10μM濃度において、100%より大きいα7 nAChRでの最大ポジティブモジュレーションを有することが分かった。ある特定の本発明の化合物は、10μM濃度において、500%より大きい、ある特定の場合には1000%より大きいα7 nAChRでの最大ポジティブモジュレーションを有することが分かった。
【0057】
同様の方法を使用して、α5 GABA受容体における最大下GABA誘導電流の阻害について化合物を試験した。EC20のGABA濃度をベースライン応答として使用した。アゴニストの迅速な適用を可能にするために、微小毛細血管の「直線配列」(Hawkinsonら、Mol. Pharmacol.、49巻:897〜906頁、1996年)を使用して薬物および洗浄液を適用した。電流は、その後の分析のためにチャート式記録計および/またはPCベースのコンピューターで記録した。試験化合物を、0.001〜10mMの濃度範囲にわたるDMSO中で構成し、試験直前、適切な生理食塩水中に1000〜3000倍希釈した(最終[DMSO]≦0.1%)。GraphPad「プリズム」曲線あてはめソフトウェアを使用して、モジュレーションの濃度依存性を分析した。本発明の化合物は、10μM濃度において、5%から50%までのα5 GABA受容体の最大ネガティブモジュレーションを有することが分かった。
【0058】
α7 nAChRのポジティブアロステリックモジュレーターは、HEK−293および細胞培養ニューロンを含む細胞株において過渡的に発現したα7 nAChRを介するカルシウム流出の撮像によってアッセイしてもよい(例えば、WO2006/071184を参照)。ラット海馬スライス中における電気生理学的記録による天然α7 nAChRの活性化を使用して、アロステリックモジュレーターの効果を測定することもできる。アロステリックモジュレーターの存在下でのAChの適用により、海馬CA1放線状層介在ニューロン中におけるα7 nAChR媒介電流の活性化に対する効果を観察することができる。
行動:認知測定。
【0059】
暗コンパートメントから明コンパートメントを隔てるギロチン式ドアが付いた2コンパートメント活動チャンバー(モデルE63−12、Coulbourn Instruments、Allentown、PA)の明コンパートメントに、マウスをドアとは逆に向けて入れた。5秒後、ギロチン式ドアを上げ、動物の四肢すべてが暗コンパートメントに入った際に、入口から暗コンパートメントまでの潜時(ステップスルー潜時)を記録した。動物が暗コンパートメントに自発的に入った後、ギロチン式ドアを下げ、50Hz方形波、0.25mA定電流ショックを1.0秒間印加した。20〜24時間後、暗チャンバーに入るまでの潜時を再度測定した。種々の用量の試験薬物を、獲得試行の10分前または直後に投与して、獲得および強化に対する薬物の影響をそれぞれ測定した。試験潜時と獲得潜時の間の差異を記録し、対照を上回る有意な(ANOVA、ポストホックニューマンクールズ)潜時の増大は、記憶に対するプラスの影響を示唆している。ムスカリン性アンタゴニストのスコポラミンによる獲得および強化の破壊を回復する能力も測定した(Sarterら、Psychopharmacologia、107巻:144〜159頁、1992年)。本発明の化合物は、10mg/kg未満の腹腔内注射、他の場合には1mg/kg未満の腹腔内注射、ある特定の場合には0.1mg/kg未満の腹腔内注射で、放射状迷路パラダイムにおける活性を有することが分かった。
鎮静。ロータロッド性能を先に記載した通りに測定して、考えられるCNS抑制効果を評価した(Johnstoneら、Nat. Med.、10巻:31〜32頁、2004年)。試験した化合物は、ロータロッド性能を破壊しなかった。
【0060】
以下に例示する本発明の化合物は、10μM濃度において、100%より大きいα7 nAChRでの最大ポジティブモジュレーション、および10%から50%までのα5 GABA受容体の最大ネガティブモジュレーションを有することが分かった。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン
【0062】
【化7】

a.5−(6−クロロ−3−ピリダジニル)−1H−インドール。
【0063】
O(5mL)中のNaCO(0.70g、6.6mmol)の溶液に、インドール−5−ボロン酸(1.0g、6.2mmol)およびEtOH(25mL)を添加した。室温で30分間撹拌後、3,6−ジクロロピリダジン(935mg、6.30mmol)、トルエン(50mL)およびPd(PPh(0.30g)を添加した。混合物を90℃で30時間撹拌し、次いで真空蒸発させた。残留物をCHCl(100mL)で処理し、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮した。(CHCl−MeOH=100:5)で溶離するフラッシュクロマトグラフィーによって残留物を精製して、0.35g(37%収率)の生成物を黄色固体として得た。1H NMR (DMSO-d6) δ 6.52(1H, s), 7.40 (1H, s), 7.50 (1H, d, 6.3Hz), 7.86-7.90 (2H, m), 8.27 (1H, d, 6.9Hz), 8.32 (1H, s), 11.32 (1H, s).MS m/e 230(M+H);C12ClNの算出分子量:229。
b.2,5−ジフルオロ安息香酸ヒドラジド。
【0064】
CHCl(60mL)中の2,5−ジフルオロ安息香酸(5.0g、31.6mmol)の溶液に、SOCl(23mL)を室温でゆっくり添加した。混合物を3時間還流させ、冷却させ、真空濃縮した。残留物をトルエンで処理し、真空濃縮した。CHCl中の粗製酸塩化物の溶液(100mL)を無水ヒドラジン(5.0g)で処理し、4時間加熱還流した。室温になったら、反応物をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。得られた固体をMeOH(20mL)から再結晶させた。無色結晶を濾過によって収集し、乾燥させて、1.99g(56%収率)のヒドラジドを得た。1H NMR (DMSO-d6) δ 4.52(2H, s), 7.29-7.33 (3H, m), 9.53 (1H, s).MS m/e 173(M+H);COの算出分子量:172。
c.3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン。
【0065】
トルエン(20mL)およびDMF(2mL)中の、5−(6−クロロ−3−ピリダジニル)−1H−インドール(0.85g、3.7mmol)、2,5−ジフルオロ安息香酸ヒドラジド(0.64g、3.7mmol)およびEtN・HCl(0.5g、3.6mmol)の混合物を、150℃で3日間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。残留物をCHCl(100mL)で処理し、ブライン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発させた。CHCl−MeOH(100:5)で溶離するフラッシュクロマトグラフィーによって残留物を精製して、400mg(31%収率)の生成物を黄色固体として得た。1H NMR (DMSO-d6) δ 6.53(1H, s), 7.41 (1H, s), 7.50-7.58 (3H, m), 7.76 (1H, d, J = 6.3 Hz), 7.85-7.90(1H, m), 8.08 (1H, d, J = 7.2 Hz), 8.28 (1H, s), 8.46 (1H, d J = 7.2 Hz), 11.39(1H, s).MS m/e 348(M+H);C1911の算出分子量:347。
【0066】
下記の化合物は、3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンの合成について上記に記載した方法を使用することによって調製した。
3−(2−クロロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、MS340(M+H);
3−フェニル−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、MS312(M+H);および
3−(3,4−ジフルオロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンMS348(M+H)。
【0067】
(実施例2)
3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1−エチル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン
【0068】
【化8】

DMF(15mL)中の3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン(0.37g、1.0mmol)および粉末NaOH(60mg、1.5mmol)の混合物を室温で30分間撹拌し、ヨードエタン(300mg、1.9mmol)を添加した。混合物を室温で16時間撹拌し、蒸発乾固させた。残留物をCHCl(60mL)で処理し、ブライン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、蒸発させた。CHCl−MeOH(100:5)で溶離するフラッシュクロマトグラフィーによって残留物を精製して、290mg(80%収率)の生成物をオフホワイトの固体として得た。1H NMR (DMSO-d6) δ 1.33 (3H, t, J = 5.4 Hz), 4.21 (2H, q, J = 5.4 Hz), 6.55 (1H, d, J =2.1 Hz), 7.47 (1H, d, J = 2.1 Hz), 7.54-7.59 (2H, m), 7.63 (1H, d, J = 6.3 Hz),7.81, (1H, d J = 6.9 Hz), 7.87-7.91 (1H, m), 8.09 (1H, d, J = 7.2 Hz), 8.28(1H, s), 8.47 (1H, d J = 7.2 Hz).MS m/e 376(M+H);C2115の算出分子量:375。
【0069】
下記の化合物は、3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1−エチル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジンの合成について上記に記載した方法を使用することによって調製した。
3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1−メチル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]−ピリダジン、MS362(M+H);
3−(2,5−ジフルオロフェニル)−6−(1−プロピル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]−ピリダジン、MS390(M+H);
3−(3,4−ジフルオロフェニル)−6−(1−プロピル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]−ピリダジン、MS390(M+H);および
3−フェニル−6−(1−エチル−1H−インドール−5−イル)−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン、MS340(M+H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化9】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
A、B、G、D、EおよびFは、CRおよび窒素からなる群から独立に選択され、但し、A、BおよびGが炭素である場合、Dは窒素ではなく、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]。
【請求項2】
式IIの化合物:
【化10】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
EおよびFは、窒素およびCRからなる群から独立に選択される]。
【請求項3】
式IIIの化合物:
【化11】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]。
【請求項4】
式IVの化合物:
【化12】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
各Rは、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項6】
nAChRおよび/またはGABA受容体複合体のモジュレーションの影響を受けやすいCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式Iの化合物:
【化13】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
A、B、G、D、EおよびFは、A、BおよびGが炭素である場合、Dは窒素ではないことを除いて、CRおよび窒素からなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項7】
nAChRおよび/またはGABA受容体複合体のモジュレーションの影響を受けやすいCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IIの化合物:
【化14】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
EおよびFは、窒素およびCRからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項8】
nAChRおよび/またはGABA受容体複合体のモジュレーションの影響を受けやすいCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IIIの化合物:
【化15】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
nAChRおよび/またはGABA受容体複合体のモジュレーションの影響を受けやすいCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IVの化合物:
【化16】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項10】
前記CNS障害が神経変性障害である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記CNS障害が老年性認知症である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記CNS障害が統合失調症である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記CNS障害が認知欠損障害である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
軽度認知障害、加齢関連認知低下、老年性認知症およびアルツハイマー病からなる群から選択されるCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式Iの化合物:
【化17】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、および非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
A、B、G、D、EおよびFは、A、BおよびGが炭素である場合、Dは窒素ではないことを除いて、CRおよび窒素からなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項15】
軽度認知障害、加齢関連認知低下、老年性認知症およびアルツハイマー病からなる群から選択されるCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IIの化合物:
【化18】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
EおよびFは、窒素およびCRからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項16】
軽度認知機能障害、加齢関連認知低下、老年性認知症およびアルツハイマー病からなる群から選択されるCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IIIの化合物:
【化19】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
、RおよびRは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項17】
軽度認知機能障害、加齢関連認知低下、老年性認知症およびアルツハイマー病からなる群から選択されるCNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の式IVの化合物:
【化20】

または薬学的に許容されるその塩、エステル、溶媒和物もしくはプロドラッグ[式中、
nは1〜5であり、
は、水素、非置換または置換アルキル、および非置換または置換シクロアルキルからなる群から選択され、
各Rは、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、C1〜10アルコキシ、ニトロ、ハロC1〜10アルキル、ペルハロC1〜10アルキル、および非置換または置換C1〜10アルキルからなる群から独立に選択され、かつ
各Rは、水素、および非置換または置換アルキルからなる群から独立に選択される]
を投与するステップを含む方法。
【請求項18】
前記CNS障害が不安障害である、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
CNS障害を治療するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、治療有効量の請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を投与するステップを含み、前記化合物が、GABAおよびα7 nAChR受容体の両方においてアロステリックなモジュレート活性を呈する方法。

【公表番号】特表2012−519731(P2012−519731A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554118(P2011−554118)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/026645
【国際公開番号】WO2010/104843
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】