説明

ニコチン性アセチルコリン受容体サブタイプ選択的なジアザビシクロアルカンのアミド

【課題】ニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、それの活性を調節するジアザビシクロアルカンから形成されるアミド化合物の提供。
【解決手段】下記式1の化合物。


[式中、nは0または1であり、Cyは2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、および4−ピリジニルの群から選択される、2個以下の非水素置換基で置換されていても良いヘテロアリール基]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューロンニコチン性アセチルコリン受容体に結合し、それの活性を調節する化合物、その化合物の製造方法、その化合物を含む医薬組成物、ならびに中枢神経系(CNS)の機能障害に関連するものなどの非常に多様な状態および障害を治療する上でのその化合物の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)とも称されるニューロンニコチン性受容体(NNR)を標的とする化合物の治療上の可能性が、いくつかの最近の総覧のテーマとなっている(Breining et al., Ann. Rep. Med. Chem. 40: 3 (2005);Hogg and Bertrand, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 3: 123 (2004);Suto and Zacharias, Expert Opin. Ther. Targets 8: 61 (2004);Dani et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 1837 (2004);Bencherif and Schmitt, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 349 (2002)参照)。療法としてNNRリガンドが提案されている各種適応症の中には、アルツハイマー病、注意力欠如障害および統合失調症などの認知障害(Newhouse et al., Curr. Opin. Pharmacol. 4: 36 (2004);Levin and Rezvani, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 423 (2002);Graham et al., Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 387 (2002);Ripoll et al., Curr. Med. Res. Opin. 20(7): 1057 (2004);およびMcEvoy and Allen, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 433 (2002));疼痛および炎症(Decker et al., Curr. Top. Med. Chem. 4(3): 369 (2004);Vincler, Expert Opin. Invest. Drugs 14(10): 1191 (2005);Jain, Curr. Opin. Inv. Drugs 5: 76 (2004);Miao et al., Neuroscience 123: 777 (2004));抑鬱および不安(Shytle et al., Mol. Psychiatry 7: 525 (2002);Damaj et al., Mol. Pharmacol. 66: 675 (2004);Shytle et al., Depress. Anxiety 16: 89 (2002));神経変性(O′Neill et al., Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 399 (2002);Takata et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 306: 772 (2003);Marrero et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 309: 16 (2004));パーキンソン病(Jonnala and Buccafusco, J. Neurosci. Res. 66: 565 (2001));依存症(Dwoskin and Crooks, Biochem. Pharmacol. 63: 89 (2002);Coe et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 15(22): 4889 (2005));肥満(Li et al., Curr. Top. Med. Chem. 3: 899 (2003));ならびにトゥレット・シンドローム(Sacco et al., J. Psychopharmacol. 18(4): 457 (2004);Young et al., Clin. Ther. 23(4): 532 (2001))がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Breining et al., Ann. Rep. Med. Chem. 40: 3 (2005)
【非特許文献2】Hogg and Bertrand, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 3: 123 (2004)
【非特許文献3】Suto and Zacharias, Expert Opin. Ther. Targets 8: 61 (2004)
【非特許文献4】Dani et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 1837 (2004)
【非特許文献5】Bencherif and Schmitt, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 349 (2002)
【非特許文献6】Newhouse et al., Curr. Opin. Pharmacol. 4: 36 (2004)
【非特許文献7】Levin and Rezvani, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 423 (2002)
【非特許文献8】Graham et al., Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 387 (2002)
【非特許文献9】Ripoll et al., Curr. Med. Res. Opin. 20(7): 1057 (2004)
【非特許文献10】McEvoy and Allen, Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 433 (2002)
【非特許文献11】Decker et al., Curr. Top. Med. Chem. 4(3): 369 (2004)
【非特許文献12】Vincler, Expert Opin. Invest. Drugs 14(10): 1191 (2005)
【非特許文献13】Jain, Curr. Opin. Inv. Drugs 5: 76 (2004)
【非特許文献14】Miao et al., Neuroscience 123: 777 (2004)
【非特許文献15】Shytle et al., Mol. Psychiatry 7: 525 (2002)
【非特許文献16】Damaj et al., Mol. Pharmacol. 66: 675 (2004)
【非特許文献17】Shytle et al., Depress. Anxiety 16: 89 (2002)
【非特許文献18】O′Neill et al., Curr. Drug Targets: CNS Neurol. Disord. 1: 399 (2002)
【非特許文献19】Takata et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 306: 772 (2003)
【非特許文献20】Marrero et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 309: 16 (2004)
【非特許文献21】Jonnala and Buccafusco, J. Neurosci. Res. 66: 565 (2001)
【非特許文献22】Dwoskin and Crooks, Biochem. Pharmacol. 63: 89 (2002)
【非特許文献23】Coe et al., Bioorg. Med. Chem. Lett. 15(22): 4889 (2005)
【非特許文献24】Li et al., Curr. Top. Med. Chem. 3: 899 (2003)
【非特許文献25】Sacco et al., J. Psychopharmacol. 18(4): 457 (2004)
【非特許文献26】Young et al., Clin. Ther. 23(4): 532 (2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一部のニコチン系化合物の限界は、それらが、例えば筋肉および神経節受容体を刺激することにより、各種の望ましくない副作用に関連しているという点である。障害の症状改善を含む各種状態もしくは障害(例:CNS障害)を予防および/または治療する化合物、組成物および方法であって、有用な効果(例:CNSの機能に対する効果)を示すが、重大な随伴する副作用を示さないニコチンの薬理を前記化合物が発揮するものがあることが望ましいと考えられる。さらに、望ましくない副作用(例:心血管および骨格筋部位での顕著な活性)を誘発する可能性を持つ受容体サブタイプに対する重大な影響を与えることなく、CNS機能に影響を与える化合物、組成物および方法を提供することが非常に望ましいものと考えられる。本発明は、そのような化合物、組成物および方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ある種のヘテロアリールカルボン酸およびある種のジアザビシクロアルカン、特には3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンおよび3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンから形成することができるある種のアミド化合物を提供する。これらのアミド化合物は、CNSで認められるα4β2サブタイプのNNRに高アフィニティで結合し、やはりCNSで認められるα7NNRサブタイプと比較してα4β2サブタイプに対する選択性を示す。本発明はまた、非常に多様な状態もしくは障害、特にはニコチン様コリン作動性神経伝達の機能障害またはニコチン様コリン作動性ニューロンの変性を特徴とする障害の治療および/または予防に用いることができるこれら化合物から製造される製薬上許容される塩およびそれらの医薬組成物に関するものでもある。さらに、CNS障害などの障害の治療および/または予防を行う方法、さらには処置を必要とする哺乳動物でのある種の状態の治療(例:疼痛および炎症の改善)を行う方法も提供される。それらの方法では、治療上有効量の前記化合物(塩を含む)またはそのような化合物を含む医薬組成物を対象者に対して投与する。さらに、加齢に伴う記憶障害、軽度認識障害、初老期認知症(若年性アルツハイマー病)、老年性認知症(アルツハイマー型の認知症)、レヴィー小体認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、卒中、AIDSによる認知症、注意力欠如障害、注意欠陥過活動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、および統合失調性感情障害からなる群から選択される障害の治療方法も提供される。さらに、軽度ないし中等度のアルツハイマー型の認知症、注意力欠如障害、軽度認識障害および加齢に伴う記憶障害の治療からなる群から選択される障害の治療方法も提供される。
【0006】
医薬組成物は、有効量で用いた場合に、対象者の関連するニコチン受容体部位と相互作用することから、非常に多様な状態および障害を治療および予防する上での治療薬として作用する本発明の化合物を組み込んだものである。医薬組成物は、有効量で用いた場合に、その組成物に含まれる化合物が、(i)ニコチンの薬理を示し、関連する受容体部位に影響を与え(例えば、薬理的作働薬として作用してニコチン受容体を活性化する)、および/または(ii)神経伝達物質分泌を誘発することから、その疾患に関連する症状を予防および抑制することができるという点で、そのような障害を患い、そのような障害の臨床的症状を示す個人に対して治療効果を与えるものである。さらに、その化合物は、(i)患者の脳のニコチン様コリン作動性受容体の数を増やし、(ii)神経保護効果を示し、および/または(iii)有効量で用いた場合に、顕著な副作用(例:血圧および心拍数の大幅な上昇、消化管に対する重大な悪影響、および骨格筋に対する重大な効果)を生じさせない能力を有する。本発明の化合物を含む医薬組成物は、非常に多様な状態および障害の予防および治療に関して安全かつ効果的であると考えられている。
【0007】
本発明の上記およびその他の態様について、下記の詳細な説明および実施例で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンを経口投与したラットでの対象認識に関する試験の結果を示すチャートである(結果は、認識指数(%)対用量(mg/kg)の関数として示してある)。
【図2】N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンを経口投与したラットでの対象認識に関する試験の結果を示すチャートである(結果は、認識指数(%)対用量(mg/kg)の関数として示してある)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
サブタイプ選択的化合物、その化合物を含む医薬組成物、その化合物の製造方法、ならびにその化合物を用いた治療および/または予防方法について下記で詳細に説明する。
【0010】
本明細書に記載の化合物および方法については、下記の好ましい実施形態を参照することで理解が深まるであろう。下記の定義は、本発明の範囲を定義する上で有用となろう。
【0011】
本明細書において、別段の断りがない限り、「アルキル」という用語は、直鎖および分岐の両方のアルキル基を含むものである。これらは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオ−ペンチル、n−ヘキシルまたはi−ヘキシルであることができるが、これらに限定されるものではない。そこで、「C1−4アルキル」という用語は、1から4個の炭素原子を有するアルキル基を含むものであり、それにはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピルまたはtert−ブチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本明細書において、別段の断りがない限り、「シクロアルキル」という用語は、置換されていても良い部分飽和もしくは完全飽和の単環式、二環式または架橋炭化水素環系を指す。「C3−8シクロアルキル」という用語には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本明細書で使用される場合、複素環基は、酸素、硫黄および窒素から選択される1以上のヘテロ原子を含む3から10個の環員を含む。好適な複素環部分の例には、ピペリジニル、モルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、イソチアゾリジニル、チアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、オキサニル(テトラヒドロピラニル)およびオキソラニル(テトラヒドロフラニル)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本明細書で使用される場合、C1−6アルコキシ基は、直鎖もしくは分岐で1から6個の炭素原子を含み、C3−6シクロアルコキシ基およびC3−6シクロアルキル部分を含むアルコキシ基も包含するものである。例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、シクロプロピルメトキシ、アリルオキシまたはプロパルギルオキシなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「芳香族」は、3から10員、好ましくは5および6員環の芳香族およびヘテロ芳香族環を指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「芳香族基含有化学種」とは、芳香族基であるかそれを含む部分を指す。従ってフェニルおよびベンジル部分は、いずれも芳香族基であるかそれを含むことから、この定義に含まれ、ピリジニルおよびピリミジニルはいずれも芳香族の下位集合であるヘテロ芳香族であることから、その定義に含まれる。
【0017】
本明細書で使用される場合、アリール基は、フェニル、ナフチルおよびインデニルから選択される。
【0018】
本明細書で使用される場合、ヘテロアリール基は、酸素、硫黄および窒素から選択される1以上のヘテロ原子を含む3から10個の環員、好ましくは5または6個の環員を含む。好適な5員環ヘテロアリール部分の例には、フラニル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、トリアゾリルおよびピラゾリルなどがある。好適な6員ヘテロアリール部分の例には、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびピリダジニルなどがある。9員へテロアリール基の例には、ベンズイミダゾリル、インドリジニル、インドリル、プリニルおよびインドリニルなどがある。10員ヘテロアリール基の例には、キノリニルおよびイソキノリニルなどがある。
【0019】
明細書を通じて、本発明の化合物における環上の置換基の数および性質を選択して立体的に望ましくない組み合わせを回避することは明らかであろう。
【0020】
本発明のある種の化合物の名称は、コンピュータソフトウェア(ACDLabs8.0/Name(IUPAC))の助けを得て作ったものである。
【0021】
好適な製薬上許容される塩の例には、塩化物、臭化物、硫酸塩、リン酸塩および硝酸塩などの無機酸付加塩;酢酸塩、ガラクタル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびアスコルビン酸塩などの有機酸付加塩;アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩などの酸性アミノ酸との塩;ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩;マグネシウム塩およびカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩およびN,N′−ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機塩基性塩;ならびにリジン塩およびアルギニン塩などの塩基性アミノ酸との塩などがある。塩は、場合によっては、水和物またはエタノール溶媒和物であることができる。代表的な塩は、ダル(Dull)らへの米国特許第5597919号、ダル(Dull)らへの第5616716号およびレクロフト(Ruecroft)らへの第5663356号に記載の方法に従って提供される。
【0022】
式Iの化合物およびそれの製薬上許容される塩は、例えば水和型などの溶媒和型ならびに非溶媒和型で存在していても良く、本発明はそのような形態を全て包含する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「作働薬」は、それの結合相手、代表的には受容体を刺激する物質である。刺激は、特定のアッセイの文脈で定義されるか、当業者であれば理解できる、実質的に同様の環境下で特定の結合相手の「作働薬」もしくは「拮抗薬」として認められている要素または物質との比較を行う本明細書での説明から文字通り明らかである場合がある。刺激は、結合相手との作働薬もしくは部分作働薬の相互作用によって誘発される特定の効果もしくは機能における上昇に関して定義することができ、アロステリック効果を含むことができる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「拮抗薬」とは、それの結合相手、代表的には受容体を阻害する物質である。阻害は、特定のアッセイの文脈で定義されるか、当業者であれば理解できる、実質的に同様の環境下で特定の結合相手の「作働薬」もしくは「拮抗薬」として認められている要素または物質との比較を行う本明細書での説明から文字通り明らかである場合がある。阻害は、結合相手との拮抗薬の相互作用によって誘発される特定の効果もしくは機能における低下に関して定義することができ、アロステリック効果を含むことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「部分作働薬」または「部分拮抗薬」は、それぞれ十分または完全に作働性または拮抗性ではないそれの結合相手に対して、それぞれあるレベルの刺激または阻害を与える物質である。刺激、および阻害は、作働薬、拮抗薬または部分作働薬と定義される物質または物質カテゴリーに関して固有に定義されるものであることは明らかであろう。
【0026】
本明細書で使用される場合、「固有活性」または「効力」は、結合相手複合体の生理的有効性の何らかの尺度を指す。受容体の薬理に関して、固有活性または効力が定義されるべき文脈は、結合相手(例:受容体/リガンド)複合体の文脈および特定の生理的結果に関連する活性の検討によって決まるものである。例えば、環境によっては、固有活性は、関与する特定の第2のメッセンジャー系に応じて変動し得る。ホイヤーらの報告(Hoyer, D. and Boddeke, H., Trends Pharmacol. Sci. 14(7): 270-5 (1993))を参照する。そのような文脈上特有の評価が関連している場合や、それらが本発明の文脈においてどのように関連しているかは、当業者には明らかであろう。
【0027】
本明細書で使用される場合、受容体の調節には、受容体の作働作用、部分作働作用、拮抗作用、部分拮抗作用または逆作働作用などがある。
【0028】
本明細書で使用される場合、本明細書に記載の化合物が放出に介在している神経伝達物質には、アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニンおよびグルタメートなどがあるが、これらに限定されるものではなく、本明細書に記載の化合物は、CNS NNRのα4β2サブタイプで調節剤として機能する。
【0029】
本明細書に記載の化合物は、ある種のヘテロアリールカルボン酸およびある種のジアザビシクロアルカンから形成されるアミド化合物である。これらの化合物は、下記式Iまたはそれの製薬上許容される塩として表すことができる。
【化1】

【0030】
式中、nは0または1の値を有し、Cyは2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イルおよび4−ピリジニルの群から選択されるヘテロアリール基であり、ヘテロアリール基は独立にC1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C2−6アルケニル、置換C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、置換C2−6アルキニル、C3−8複素環、置換C3−8複素環、C3−8シクロアルキル、置換C3−8シクロアルキル、C5−10アリール、C5−10ヘテロアリール、置換C5−10アリール、置換C5−10ヘテロアリール、C1−6アルキル−C5−10アリール、C1−6アルキル−C5−10ヘテロアリール、置換C1−6アルキル−C5−10アリール、置換C1−6アルキル−C5−10ヘテロアリール、C5−10アリール−C1−6アルキル、C5−10ヘテロアリール−C1−6アルキル、置換C5−10アリール−C1−6アルキル、置換C5−10ヘテロアリール−C1−6アルキル、ハロ、−OR′、−NR′R″、−CF、−CN、−NO、−CR′、−SR′、−N、−C(=O)NR′R″、−NR′C(=O)R″、−C(=O)R′、−C(=O)OR′、−OC(=O)R′、−OC(=O)NR′R″、−NR′C(=O)OR″、−SOR′、−SONR′R″および−NR′SOR″から選択される3個以下の非水素置換基で置換されていても良く、R′およびR″は独立に水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、C3−8複素環、C5−10アリール、C5−10ヘテロアリールまたはC5−10アリール−C1−6アルキルから選択され、あるいはR′と、R″と、それらが結合している原子とが一体となってC3−8複素環を形成していても良く、アルキル、アルケニル、アルキニル、複素環、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルに適用される「置換」という用語は、1以上のアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、−OR′および−NR′R″基による置換を指す。
【0031】
本発明の一実施形態は、nが0または1の値を有し、Cyが2−フラニルまたは3−フラニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−イル、1,2,4−オキサジアゾール−5−イル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾール−2−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−イル、1,2,4−チアジアゾール−5−イルおよび4−ピリジニルの群から選択されるC5−10ヘテロアリール基であり、該ヘテロアリール基が独立にC1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ハロ、および、フェニルで置換されたC2−6アルキニル、から選択される3個以下の非水素置換基で置換されていても良い式Iの化合物に関するものである。
【0032】
ある実施形態において、nは0である。別の実施形態において、nは1である。さらに別の実施形態において、Cyは2−フラニルである。さらに別の実施形態において、Cyは、ハロで置換された2−フラニルである。一実施形態において、Cyは塩素で置換された2−フラニルである。さらに別の実施形態において、nは0であり、Cyはハロで置換されていても良い2−フラニルである。一実施形態において、nは1であり、Cyはハロで置換されていても良い2−フラニルである。さらに別の実施形態において、2−フラニルは5位で置換されている。別の実施形態において、R′およびR″は独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチルまたはt−ブチルから選択される。別の実施形態において、R′およびR″は独立に、フェニルまたはベンジルから選択される。
【0033】
場合より、本発明の化合物はキラルである。本発明は、そのような化合物の全てのエナンチオマー型またはジアステレオマー型を含む。
【0034】
本発明の代表的な化合物には、
N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(4−フェニルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−(2−ピリジニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−(フェニルエチニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(フラン−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−ブロモイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−メトキシイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(ピリジン−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン
およびこれらの製薬上許容される塩などがある。
【0035】
本発明の代表的な化合物には、
N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(4−フェニルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−(2−ピリジニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−(フェニルエチニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(フラン−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−ブロモイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−メトキシイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(ピリジン−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン
およびこれらの製薬上許容される塩などもある。
【0036】
一実施形態は、化合物N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンまたはそれの製薬上許容される塩に関するものである。別の実施形態は、化合物N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンまたはそれの製薬上許容される塩に関するものである。
【0037】
化合物
化合物の製造
本発明の化合物は、モノ保護ジアザビシクロ化合物(すなわち、2個のアミン官能基のうちの1個が好適な誘導体化によって非反応性とされている)の好適に官能化されたヘテロアリール酸塩化物その他の反応性カルボン酸誘導体とのカップリングを介して製造することができる。
【0038】
本発明の化合物を製造するのに使用されるモノ保護ジアザビシクロ化合物の製造方法は多くある。好適に保護された3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンの合成方法については、コロン−クルツ(Colon-Cruz)らへのPCTWO02/070523およびツェンクン(Zhenkun)らへの米国特許出願第2006/0019985号に記載されており、そこではN−ベンジルマレイミドをパラホルムアルデヒドおよびN−ベンジルグリシンまたはN−(メトキシメチル)−N−(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミンのいずれかと縮合させて、3,7−ジベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジオン(2,5−ジベンジルテトラヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,3−ジオンとも称される)を製造する。この中間体に関するその後の変換は、いくつかの経路に従うことができる。一例では、クロルギ酸α−クロロエチルでの処理によって、3−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジオン(2−ベンジルテトラヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,3−ジオンとも称される)を製造し、次に順次、それを還元し(ボラン−ジメチルスルフィド錯体を使用)、それのN−(tert−ブトキシカルボニル)誘導体に変換し、水素化する(第2のベンジル基を脱離させるため)。これによって、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンが製造され、それをカルボン酸およびそれの誘導体とのカップリングに用いて、本発明の化合物を製造することができる。あるいは、3,7−ジベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジオンを、還元し(水素化リチウムアルミニウムで)、部分水素化し(1個のベンジル基を脱離させるため)、それのN−(tert−ブトキシカルボニル)誘導体に変換し、そして水素化して(第2のベンジル基を脱離させるため)、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンを製造することができる。ベンジル、tert−ブトキシカルボニルおよび他のアミン保護基の導入および脱離を行う他の方法は、当業者には公知であり、グリーンらの著作(T. W. Greene and P.G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Edition, John Wiley & Sons, New York (1999))にさらに記載されている。
【0039】
N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンの別途製造が、シュリンプ(Schrimpf)らに対する米国特許出願第2004/0186107号およびバシャ(Basha)らに対する第2005/0101602号に記載されており、そこではマレイミドおよびN−(メトキシメチル)−N−(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミンを縮合させることで、7−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジオン(5−ベンジルテトラヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,3−ジオンとも称される)を得る。次に還元剤(例:水素化リチウムアルミニウム)で処理することで、3−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンが製造され、その遊離アミンはtert−ブトキシカルボニル基によって保護し、次に水素化分解によってベンジル保護基を脱離させることができる。
【0040】
これらの縮合反応で、マレイミドに対する代替物として、マレイン酸エステルを用いることができる。従って、シャウス(Schaus)らへのPCTWO96/007656によれば、N−ベンジルグリシンのパラホルムアルデヒドおよびマレイン酸ジメチルとの縮合によって、N−ベンジル−シス−3,4−ピロリジン・ジカルボン酸ジメチルエステルが得られる。次に、この化合物を、例えば水素化リチウムアルミニウムで還元してジオールを得ることができ、それをトリエチルアミンの存在下にメタンスルホニルクロライドと反応させて、相当するジメシレートを得ることができる。アンモニアによるさらなる処理および加熱によって、N−ベンジル保護3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンを得る。上記のように、これをN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンに変換することができる。
【0041】
3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン(ビスピジン)の好適な誘導体を用いて、本発明の化合物を製造することができる。一つのそのような誘導体は、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンであり、それは各種方法で製造することができる。ある合成は、文献(Stead et al. in Org. Lett. 7: 4459 (2005))に記載のN−ベンジル−N′−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンを介して進行する。そこで、N−(tert−ブトキシカルボニル)ピペリジン−4−オン、ベンジルアミンとパラホルムアルデヒドとの間のマンニッヒ反応によってN−ベンジル−N′−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オンが得られ、それをp−トルエンスルホンヒドラジドおよび水素化ホウ素ナトリウム(カルボニル酸素を脱離させるため)の順で処理して、N−ベンジル−N′−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンを得ることができる。そのベンジル基を上記の方法に従って脱離させて、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンを得ることができる。N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンまたは別のモノ保護誘導体のいずれかへの変換に好適なジアザビシクロ[3.3.1]ノナンの別途合成が、ジェヤラマンらの報告(Jeyaraman and Avilain Chem. Rev .81(2): 149-174 (1981))およびバーリン(Berlin)らへの米国特許第5468858号に記載されている。
【0042】
本発明のアミドを製造する一つの手段は、N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンまたはN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンのいずれかを好適に官能化されたカルボン酸とカップリングさせ、次にtert−ブトキシカルボニル保護基を脱離させるというものである。そのようなカルボン酸の多くが市販されており、他のものは当業者に公知の手順によって容易に製造することができる。アミンおよびカルボン酸の縮合によるアミドの製造では通常、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−ビス(テトラメチレン)ウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBPyU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウム・テトラフルオロボレート(TBTU)または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と組み合わせた(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(EDCI)などの好適な活性化剤を使用する必要がある。他の活性化剤は当業者には公知である(例えば、Kiso and Yajima, Peptides, pp 39-91, Academic Press, San Diego, CA (1995)参照)。
【0043】
あるいは、モノ保護ジアザビシクロ化合物を市販されているか好適に官能化されたカルボン酸の変換によって製造することができる好適に官能化された酸塩化物とカップリングさせることで、アミド結合を形成することができる。その酸塩化物は、適切なカルボン酸を、特に塩化チオニルまたはオキサリルクロライド試薬で処理することで製造することができる。
【0044】
アミド形成後、水系または非水系での酸による保護基(例:tert−ブトキシカルボニル基)の脱離によって、本発明の化合物が得られる。
【0045】
有機合成の当業者には、各種診断用途に適した放射性同位元素で標識した本発明の化合物を製造する手段が多数存在することは明らかであろう。従って、上記の方法を用いて11C−または18F−標識されたヘテロ芳香族カルボン酸をN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンまたはN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンのいずれかと縮合させ、次にtert−ブトキシカルボニル基を脱離させることで、ポジトロン放出断層撮影で用いる上で好適な化合物が製造される。
【0046】
治療方法
本発明の化合物は、CNSに特徴的なα4β2NNRサブタイプの調節剤であり、CNSのものなどの各種状態もしくは障害を、α4β2NNRの調節によって、そのような状態もしくは障害を有するかそれにかかりやすい対象者において予防および/または治療する上で用いることができる。それらの化合物は、α4β2NNRに選択的に結合し、ニコチン性の薬理(例えば、作働薬、部分作働薬、拮抗薬などとして作用する)を発現する能力を有する。例えば本発明の化合物は、処置を必要とする患者に対して有効量で投与した場合に、ある程度のCNS障害の進行の予防(すなわち、保護効果の提供)、CNS障害の症状の改善、および/またはCNS障害の再発の改善を提供する。
本発明の化合物を用いて、他の種類のニコチン系化合物が治療法として提案されている種類の状態および障害を治療および/または予防することができる。例えば、「背景技術」のセクションですでに挙げた参考文献ならびにWilliams et al., Drug News Perspec. 7(4): 205 (1994);Arneric et al., CNS Drug Rev. 1(1): 1-26 (1995);Arneric et al., Exp. Opin. Invest. Drugs 5(1): 79-100 (1996);Bencherif et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 279: 1413 (1996);Lippiello et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 279: 1422 (1996);Damaj et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 291: 390 (1999);Chiari et al., Anesthesiology 91: 1447 (1999);Lavand'homme and Eisenbach, Anesthesiology 91: 1455 (1999);Holladay et al., J. Med. Chem. 40(28): 4169-94 (1997);Bannon et al., Science 279: 77 (1998);PCT WO94/08992、PCT WO96/31475、PCT WO96/40682ならびにベンチェリフ(Bencherif)らに対する米国特許第5583140号、ダル(Dull)らに対する同5597919号、スミス(Smith)らに対する同5604231号ならびにコスフォード(Cosford)らに対する同5852041号(これらの開示内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるものとする)を参照する。
【0047】
前記化合物およびそれらの医薬組成物は、神経変性障害、精神神経障害、神経障害および依存症などの各種CNS障害の治療および/または予防において有用である。前記化合物およびそれらの医薬組成物を用いて、認知障害(加齢性および他のもの)、注意障害および認知症(病原体または代謝障害によるものを含む)を治療および/または予防し;神経保護をもたらし;痙攣および多発性脳梗塞を治療し;気分障害、強迫および常習行為を治療し;鎮痛をもたらし;炎症(サイトカイン類および核因子カッパBが介在するものなど)を抑制し、炎症障害を治療し;疼痛軽減をもたらし;感染を治療する(細菌感染、真菌感染およびウィルス感染を治療するための抗感染薬として)ことができる。治療および/または予防に本発明の化合物および医薬組成物を用いることができる障害、疾患および状態の中には、加齢に伴う記憶障害、軽度認識障害、初老期認知症 (若年性アルツハイマー病)、老年性認知症 (アルツハイマー型の認知症)、レヴィー小体認知症、HIV認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、卒中、AIDSによる認知症、注意力欠如障害、注意欠陥過活動性障害、失読症、統合失調症、統合失調症様障害、統合失調性感情障害、パーキンソン病などのパーキンソニズム、ピック病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジア、運動過剰症、進行性核上麻痺、クロイツフェルトヤコブ病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、躁病、不安、抑鬱、パニック障害、双極性障害、全般性不安障害、強迫性障害、激怒の突発(rage outbursts)、トゥレット・シンドローム、自閉症、薬物およびアルコール依存症、たばこ中毒、肥満、悪液質、乾癬、狼瘡、急性胆管炎、アフタ性口内炎、喘息、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、嚢炎、ウイルス性肺炎および関節炎(例:関節リウマチおよび骨関節炎)、内毒血症、敗血症、アテローム性動脈硬化、特発性肺線維症および異常増殖がある。
【0048】
顕著な副作用(例えば、血圧および心拍数の大幅な上昇、消化管に対する重大な悪影響、および骨格筋に対する重大な効果)を起こすことなく、疾患、障害および状態の治療または予防を行うことが有利である。本発明の化合物は、有効量で使用される場合、ヒト神経節(副腎クロム親和性組織でのニコチン機能を誘発する能力がないことによって示される)または骨格筋(筋肉型ニコチン受容体を発現する細胞標本においてニコチン機能を誘発する能力がないことによって示される)を特徴付けるニコチンサブタイプとの顕著な相互作用を生じることなく、α4β2 NNRの活性を調節することができる。従って、これらの化合物は、神経節部位および神経筋部位での活性に関連する重大な副作用を誘発することなく、疾患、障害および状態を治療および/または予防することができる。従って、その化合物を投与することで、ある種の疾患、障害および状態の治療が行われ、ある種の副作用が回避される治療ウィンドウが提供される。すなわち、前記化合物の有効用量は、疾患、障害または状態に対する所望の効果を提供する上で十分であるが、望ましくない副作用を生じるには不十分である(すなわち、十分に高いレベルではない)。
【0049】
従って本発明は、治療法(上記の治療法など)で使用される式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0050】
さらに別の態様において本発明は、CNS障害(上記の障害、疾患または状態など)の治療において用いられる医薬の製造における式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0051】
さらに別の態様において本発明は、軽度ないし中等度のアルツハイマー型の認知症、注意力欠如障害、軽度認識障害および加齢に伴う記憶障害の治療において用いられる医薬の製造における式Iの化合物またはそれの製薬上許容される塩の使用を提供する。
【0052】
診断用途
前記化合物は、特にそれが適切な標識を含むように修飾されている場合には、プローブなどの診断組成物で用いることができる。そのプローブは、特定の受容体、特にはα4β2受容体サブタイプの相対的な数および/または機能を測定するのに用いることができる。これに関しては、本発明の化合物は最も好ましくは、11C、18F、76Br、123Iまたは125Iなどの放射性同位体部分で標識される。
【0053】
投与された化合物は、使用した標識に適した公知の検出方法を用いて検出することができる。検出方法の例には、ポジトロン放出断層撮影(PET)および単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)などがある。上記の放射性標識は、PET(例:11C、18Fまたは76Br)およびSPECT(例:123I)画像診断で有用であり、半減期は11Cで約20.4分、18Fで約109分、123Iで約13時間、76Brで約16時間である。非飽和濃度での選択された受容体サブタイプを肉眼で観察するには、高い比放射能が望まれる。投与される線量は代表的には毒性範囲より低く、高コントラストの画像を提供する。前記化合物は、無毒性レベルでの投与が可能であると予想される。線量の測定は、放射標識画像法における当業者に公知の方法で行う。例えば、ロンドン(London)らに対する米国特許第5969144号を参照する。
【0054】
前記化合物は、公知の技術を用いて投与することができる。例えばロンドン(London)らに対する米国特許第5969144号を参照する。前記化合物は、診断組成物を製剤する上で有用な種類の成分などの他の成分を組み込んだ製剤組成物で投与することができる。本発明の実施に従って有用な化合物は最も好ましくは、高純度の形態で用いられる。エルマルヒ(Elmalch)らに対する米国特許第5853696号を参照する。
【0055】
対象者(例:ヒト対象者)に化合物を投与した後、患者体内でのその化合物の存在を、適切な技術によって撮像および定量して、選択されたNNRサブタイプの存在、量および機能性を示すことができる。ヒト以外にも、前記化合物は、マウス、ラット、イヌおよびサルなどの動物にも投与することができる。SPECTおよびPET画像法は、いずれか適切な技術および装置を用いて行うことができる。代表的な画像診断技術の開示に関しては、ヴィルマーニュ(Villemagne)らの著作(アーネリック(Arneric)ら(編者)の編著:Neuronal Nicotinic Receptors: Pharmacology and Therapeutic Opportunities, 235-250 (1998))およびエルマルヒ(Elmalch)らに対する米国特許第5853696号を参照する。
【0056】
放射能標識化合物は、高アフィニティで選択的NNRサブタイプ(例:α4β2)に結合し、好ましくは他のニコチン様コリン作動性受容体サブタイプ(例:筋肉および神経節に関連する受容体サブタイプ)への非特異的結合は無視できる程度である。従って、前記化合物は、各種のCNS疾患および障害に関連する診断用の、対象者の身体内、特には脳内のニコチン様コリン作動性受容体サブタイプの非侵襲的撮像を行うための薬剤として用いることができる。
【0057】
一態様において、診断組成物は、ヒト患者などの対象者において疾患を診断する方法で用いることができる。その方法では、その患者に対して、本明細書で記載の検出可能に標識された化合物を投与し、その化合物の選択されたNNRサブタイプ(例:α4β2受容体サブタイプ)への結合の検出を行う。PETおよびSPECTなどの診断ツールを用いる業界の当業者は、本明細書に記載の放射能標識化合物 を用いて、中枢神経系および自律神経系の機能障害に関連する状態および障害などの非常に多様な状態および障害を診断することができる。そのような障害には、アルツハイマー病、パーキンソン病および統合失調症などの非常に多様なCNS疾患および障害などがある。これらおよび他の評価可能な代表的な疾患および障害には、ベンシェリフ(Bencherif)らに対する米国特許第5952339号に記載のものなどがある。
【0058】
別の態様では、ヒト患者などの対象者の選択的ニコチン受容体サブタイプをモニタリングする方法で、診断組成物を用いることができる。その方法では、本明細書に記載の検出可能に標識された化合物をその患者に投与し、選択されたニコチン受容体サブタイプ(例:α4β2受容体サブタイプ)へのその化合物の結合を検出する。
【0059】
医薬組成物
本発明の一実施形態によれば、1以上の製薬上許容される希釈剤、賦形剤および/または不活性担体とともに、有効成分として治療上有効量の本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0060】
化合物を投与する方法は多様であることができる。組成物は好ましくは、経口投与される(例えば、水系もしくは非水系の液体などの溶媒中の液体の形態で、または固体担体中で)。経口投与に好ましい組成物には、硬ゼラチンカプセルおよび徐放性カプセルを含めた丸薬、錠剤、カプセル、カプレット、シロップおよび液剤などがある。組成物は、単位製剤でまたは複数用量もしくはサブユニット用量で製剤することができる。好ましい組成物は、液体または半固体型である。水その他の製薬上適合性の液体もしくは半固体などの液体の製薬上不活性な担体を含む組成物を用いることができる。そのような液体および半固体の使用は当業者には公知である。
【0061】
組成物は、注射によって、すなわち静脈注射、筋肉注射、皮下注射、腹腔内注射、動脈注射、髄腔内注射および脳室内注射によって投与することもできる。静脈注射が好ましい注射方法である。注射に好適な担体は当業者には公知であり、5%ブドウ糖溶液、生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水などがある。前記化合物は、注入または注射によって投与することもできる(例えば、製薬上許容される液体または液体混合物中の懸濁液または乳濁液として)。
【0062】
製剤は、他の手段、例えば直腸投与を用いて投与しても良い。坐剤などの直腸投与に有用な製剤は、当業者には公知である。その化合物は、吸入により(例えば、経鼻的にまたはブルックス(Brooks)らに対する米国特許第4922901号(その開示内容は参照によって全体が本明細書に組み込まれる)に記載の種類の投与製品を用いてエアロゾルの形態で);局所的に(例えば、ローションの形態で);経皮的に(例えば、ノバルティス・アンド・アルザ社(Novartis and Alzza Corporation)から市販されている技術を用いて経皮貼布薬を用いるか、粉末注射により);あるいは口腔内、舌下または鼻腔内吸収によって投与することもできる。活性化学物質原体の形態で前記化合物を投与することが可能ではあるが、各化合物を医薬組成物または効率のよい有効な投与を行うための製剤の形態で提供することが好ましい。
【0063】
そのような化合物の投与方法の例は、当業者には明らかであろう。これら製剤の有用性は、使用される特定の組成物および治療を受ける特定の対象者によって決まる可能性がある。例えば、前記粗成物は、錠剤、硬ゼラチンカプセルの形態で、または徐放性カプセルとして投与することができる。これらの製剤は、油系、水系、乳化しているか、投与形態に好適なある種の溶媒を含んでいても良い液体担体を含むことができる。
【0064】
本明細書に記載の医薬組成物の投与は、温血動物(例えば、マウス、ラット、ネコ、ウサギ、イヌ、ブタ、ウシまたはサルなどの哺乳動物)に対して、間欠的あるいは徐々に、継続的に、一定速度で、または制御された速度で投与することができるが、有利にはヒトに対して投与することが好ましい。さらに、医薬組成物を投与する時刻および1日当たりの回数は可変である。
【0065】
化合物の適切な用量は、障害の症状発生を予防したり、患者が患う障害のいくつかの症状を治療する上で有効な量である。「有効量」、「治療量」または「有効用量」という標語は、所望の薬理的または治療的効果を誘発することで、結果的に障害の有効な予防もしくは治療を生じる上で十分な量を意味するものである。従って、CNS障害を治療する場合、化合物の有効量とは、対象者の血液−脳関門を通過し、対象者の脳内の関連する受容体部位に結合し、関連するニコチン受容体サブタイプの活性を調節する(例えば、神経伝達物質分泌を調節することで、障害の有効な予防または治療を行う)上で十分な量である。障害の予防は、その障害の症状の発症を遅延されることで現れる。障害の治療は、障害に関連する症状の軽減または障害の症状再発の軽減によって現れる。
【0066】
有効用量は、患者の状態、障害の症状の重度および医薬組成物の投与方法などの要素に応じて変動し得る。ヒト患者の場合、代表的な化合物の有効用量には通常、疾患に関連する受容体を調節して神経伝達物質(例:ドーパミン)放出に影響を与える上で十分な量で化合物を投与することが必要とされるが、その量は、重大な程度まで骨格筋および神経節に対する効果を誘発するには不十分なものでなければならない。当然のことながら、化合物の有効用量は患者ごとに異なるものであるが、CNS効果その他の所望の治療効果が起こるが、筋肉および神経節効果が認められる量以下で開始する量を含むものである。
【0067】
代表的には、有効用量で投与するためには、化合物は、患者体重1kg当たり5mg未満の量で投与する必要がある。多くの場合、前記化合物は、患者体重1kg当たり約1mg未満から患者体重1kg当たり約100μg未満、場合によっては患者体重1kg当たり約10μgから100μg未満の量で投与することができる。前記有効用量は代表的には、単一用量として、または24時間の期間にわたって投与される1以上の用量として投与される量を表すものである。ヒト患者の場合、化合物の有効用量には、少なくとも約1mg/24時間/患者であって約1000mg/24時間/患者以下の量で、そして多くの場合約500mg/24時間/患者以下の量で化合物を投与することが必要である可能性がある。
【0068】
エルマルヒ(Elmalch)らに対する米国特許第5853696号およびロンドン(London)らに対する同5969144号(これらの内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載の、診断薬として有用な組成物を用いることができる。前記化合物は、診断組成物を製剤する上で有用な種類の成分などの他の成分を組み込んだ製剤組成物で投与することもできる。
【0069】
下記の実施例は本発明を説明することを目的として提供されるものであり、本発明に限定を加えるものと解釈すべきではない。これらの実施例において、部表示およびパーセント表示はいずれも、別段の断りがない限りは重量基準である。
【実施例】
【0070】
生物アッセイ
実施例1:CNS nAChRでの放射性リガンド結合
α4β2 nAChRサブタイプ
ラット大脳皮質からの膜の取得:体重150から250gのラット(雌、スプリング−ドーリー)を、12時間明/暗サイクルに維持し、水および飼料(PMI Nutrition International, Inc.が供給)は自由に摂取させた。動物に70%COで麻酔を施し、断頭によって屠殺した。脳を摘出し、氷冷プラットホームに乗せた。大脳皮質を取り、20体積(重量:体積)の氷冷した調製緩衝液(137mM NaCl、10.7mM KCl、5.8mM KHPO、8mM NaHPO、20mM HEPES(遊離酸)、5mMヨードアセトアミド、1.6mM EDTA、pH7.4)に入れ、メタノールに溶かして最終濃度100μMとしたPMSFを加え、懸濁液をポリトロン(Polytron)によって均質化した。得られたホモジネートを4℃にて18000×gで20分間遠心し、得られたペレットを20体積の氷冷水に再懸濁させた。氷上で60分間インキュベーションした後、4℃にて18000×gで20分間遠心することで、新たなペレットを回収した。最終のペレットを10体積の緩衝液に再懸濁させ、−20℃で保存した。
【0071】
SH−EP1/ヒトα4β2クローン細胞からの膜の取得:40 150mm培養皿からの細胞ペレットを蓄積し、氷冷調製緩衝液20mL中にてポリトロン(Kinematica GmbH, Switzerland)によって均質化した。そのホモジネートを4℃にて48000gで20分間遠心した。得られたペレットを氷冷調製緩衝液20mLに再懸濁させ、−20℃で保存した。
【0072】
アッセイ当日、冷凍した膜を解凍し、48000×gで20分間遠心した。上清を傾斜法で分離し、廃棄した。ペレットをpH7.4のダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Life Technologies)に再懸濁させ、ポリトロンで6秒間均質化した。標準としてウシ血清アルブミンを使用するPierce BCAタンパク質アッセイキット(Pierce Chemical Company, Rockford, IL)を用いて、タンパク質濃度を測定した。
【0073】
膜取得物(ヒトの場合で約50μg、ラットα4β2の場合で200から300μgのタンパク質)を、氷上で、競合化合物(0.01nMから100μM)および5nMの[H]ニコチンの存在下にPBS(それぞれ、50μLおよび100μL)中にて2から3時間インキュベートした。0.33%ポリエチレンイミン(重量/体積)に予浸したGF/Bフィルターを用いて、多岐管組織ハーベスタ(Brandel, Gaithersburg, MD)で急速濾過することでインキュベーションを停止して、非特異的結合を低減した。組織をpH7.4のPBSで3回洗った。シンチレーション液を、洗浄した組織を含むフィルターに加え、平衡とした。次に、液体シンチレーションカウンティング(2200CA トリ−カーブLSC(2200CA Tri-Carb LSC)(Packard Instruments)、効率50%またはワラック・トリルクス1450マイクロベータ(Wallac Trilux 1450 MicroBeta)、効率40%(Perkin Elmer))によってフィルターのカウンティングを行って、膜に結合した放射能を測定した。
【0074】
データは、壊変毎分(DPM)として表した。各アッセイ内では、各点は2から3連の反復測定とした。各点についての反復測定値の平均を求め、薬剤濃度の対数に対してプロットした。結合の50%阻害を生じる化合物濃度であるIC50を、最小自乗非線形回帰によって求めた。チェン−プルソフ式(1973)を用いてKi値を計算した。
【0075】
Ki=IC50/(1+N/Kd)
式中、Nは[H]ニコチンの濃度であり、Kdはニコチンのアフィニティ(3nM、別の実験で測定)である。
【0076】
α7nAChRサブタイプ
体重150から250gのラット(雌、スプリング−ドーリー)を、12時間明/暗サイクルに維持し、水および飼料(PMI Nutrition International, Inc.が供給)は自由に摂取させた。動物に70%COで麻酔を施し、断頭によって屠殺した。脳を摘出し、氷冷プラットホームに乗せた。海馬を取り、10体積(重量:体積)の氷冷した調製緩衝液(137mM NaCl、10.7mM KCl、5.8mM KHPO、8mM NaHPO、20mM HEPES(遊離酸)、5mMヨードアセトアミド、1.6mM EDTA、pH7.4)に入れ、メタノールに溶かして最終濃度100μMとしたPMSFを加え、組織懸濁液をポリトロン(Polytron)によって均質化した。得られたホモジネートを4℃にて18000×gで20分間遠心し、得られたペレットを10体積の氷冷水に再懸濁させた。氷上で60分間インキュベーションした後、4℃にて18000×gで20分間遠心することで、新たなペレットを回収した。最終のペレットを10体積の緩衝液に再懸濁させ、−20℃で保存した。アッセイ当日、組織を解凍し、18000×gで20分間遠心し、氷冷PBS(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水、138mM NaCl、2.67mM KCl、1.47mM KHPO4、8.1mM NaHPO、0.9mM CaCl、0.5mM MgCl、インビトロゲン/ギブコ(Invitrogen/Gibco)、pH7.4)に再懸濁させて、最終濃度約2mgタンパク質/mLとした。標準としてウシ血清アルブミンを用い、文献(Lowry et al., J. Biol. Chem. 193: 265 (1951))の方法によってタンパク質を測定した。
【0077】
H]MLAの結合を、文献(Davies et al., Neuropharmacol. 38: 679 (1999))の方法の変法を用いて測定した。[H]MLA(比放射能=25〜35Ci/mmol)を、トクリス(Tocris)から入手した。[H]MLAの結合を、21℃での2時間のインキュベーションを用いて測定した。インキュベーションは、48ウェルのマイクロタイタープレートで行い、最終インキュベーション体積300μL中にタンパク質約200μg/ウェルを含んでいた。インキュベーション緩衝液はPBSとし、[H]MLAの最終濃度は5nMであった。室温でブランデル組織ハーベスタを用いて、ガラス繊維フィルター(GF/B、ブランデル(Brandel))上に結合したリガンドを含むタンパク質を濾過することで、結合反応を停止した。フィルターを、0.33%ポリエチレンイミンを含む脱イオン水に浸漬して、非特異的結合を低減した。各フィルターを、室温にてPBSで洗浄した(1mLで3回)。選択されたウェルに50μMの非放射性MLAを含ませることで、非特異的結合を測定した。
【0078】
選択されたウェルに7種類の異なる濃度の被験化合物を含ませることで、被験化合物による[H]MLA結合の阻害を測定した。各濃度について三連で測定を行った。IC50値は、特異的[H]MLA結合の50%を阻害する化合物の濃度として推算した。文献(Cheng et al., Biochem. Pharmacol. 22: 3099-3108 (1973))の方法を用い、IC50値からnM単位で報告される阻害定数(Ki値)を計算した。
【0079】
実施例2:ドーパミン放出の測定
文献(Rapier et al., J. Neurochem. 54: 937 (1990))に記載の手順に従い、ラット脳から得た線条体シナプトゾームを用いて、ドーパミン放出を測定した。体重150から250gのラット(雌、スプリング−ドーリー)を、12時間明/暗サイクルに維持し、水および飼料(PMI Nutrition International, Inc.が供給)は自由に摂取させた。動物に70%COで麻酔を施し、断頭によって屠殺した。脳を迅速に摘出し、線条体を切開した。2匹のラットそれぞれからの線条体組織を蓄積し、ガラス/ガラスホモジナイザーを用いて5mM HEPES(pH7.4)を含む氷冷0.32Mショ糖(5 mL)中で均質化した。次に、組織を1000×gで10分間遠心した。ペレットを廃棄し、上清を12000×gで20分間遠心した。得られたペレットを、モノアミンオキシダーゼ阻害薬を含む潅流緩衝液(128mM NaCl、1.2mM KHPO、2.4mM KCl、3.2mM CaCl、1.2mM MgSO、25mM HEPES、1mMアスコルビン酸、0.02mMパージリンHClおよび10mMグルコース、pH7.4)中に再懸濁させ、25000×gで15分間遠心した。最終のペレットを潅流緩衝液(1.4mL)に再懸濁させて、直ちに使用した。
【0080】
得られたシナプトソーム懸濁液を37℃で10分間インキュベートして、代謝活性を回復させた。[H]ドーパミン([H]DA、比放射能=28.0Ci/mmol、NEN Research Products)を最終濃度0.1μMで加え、懸濁液を37℃でさらに10分間インキュベートした。組織のアリコート(50μL)および潅流緩衝液(100μL)を、ブランデル・スプラフュージョン・システム(Brandel Suprafusion System;シリーズ2500、Gaithersburg, MD)のスプラフュージョン・チャンバに入れた。潅流緩衝液(室温)を、洗浄期間16分にわたり、1.5mL/分の速度でチャンバにポンプで投入した。被験化合物(10μM)またはニコチン(10μM)を、48秒間にわたり潅流液流に加えた。実験を通じて、分画(それぞれ24秒)を各チャンバから連続的に回収して、基礎放出および作働薬誘発ピーク放出を捕捉し、作働薬投与後の基底線を再作成した。潅流液を直接シンチレーションバイアル中に回収し、それにシンチレーション液を加えた。放出された[H]DAをシンチレーションカウンティングによって定量した。各チャンバについて、ピーク面積の積分値を基底線に対して正規化した。
【0081】
放出は、等しい濃度のL−ニコチンで得られた放出パーセントとして表した。各アッセイ内では、各被験化合物を2から3個のチャンバを用いて並行して測定した。並行測定値の平均を求めた。適切な場合、被験化合物の用量−応答曲線を求めた。個々の化合物についての最大活性化(Emax)を、L−ニコチンによって誘発される最大活性化のパーセントとして求めた。比イオンフラックスの半最大活性化を生じる化合物濃度(EC50)も定義した。
【0082】
実施例3:選択性と末梢nAChR
ヒト筋肉nAChRサブタイプでの相互作用
筋肉型nAChRの活性化を、胎児性横紋筋肉腫由来のヒトクローン系TE671/RDについて確立した(Stratton et al., Carcinogen 10: 899 (1989))。これらの細胞は、筋肉型nAChRと同様の薬理的(Lukas, J. Pharmacol. Exp. Ther. 251: 175 (1989))、電気生理学的(Oswald et al., Neurosci. Lett. 96: 207 (1989))および分子生物学的プロファイル(Luther et al., J. Neurosci. 9: 1082 (1989))を有する受容体を発現する。
【0083】
TE671/RD細胞を、通常のプロトコールに従って増殖成長相に維持した(Bencherif et al., Mol. Cell. Neurosci. 2: 52 (1991)およびBencherif et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 257: 946 (1991))。10%ウマ血清(Gibco/BRL)、5%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミンおよび50000単位のペニシリン−ストレプトマイシン(Irvine Scientific)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco/BRL)中で細胞を培養した。細胞が80%集密となった時点で、それを12ウェルポリスチレンプレート(Costar)で平板培養した。細胞が100%集密に到達した時点で実験を行った。
【0084】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)機能を、文献(Lukas et al., Anal. Biochem. 175: 212 (1988))に記載の方法に従って、86Rb流出を用いて定量した。実験当日、成長培地をウェルから優しく除去し、86塩化ルビジウム(10μCi/mL)を含む成長培地を各ウェルに加えた。細胞を37℃で最低3時間インキュベートした。その負荷期間後、過剰の86Rbを除去し、細胞を壊さないように注意しながら、細胞を標識していないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(138mM NaCl、2.67mM KCl、1.47mM KHPO、8.1mM NaHPO、0.9mM CaCl、0.5mM MgCl、Invitrogen/Gibco、pH:7.4)で2回洗浄した。次に、細胞を100μMの被験化合物、100μMのL−ニコチン(Acros Organics)または緩衝液単独に4分間曝露した。曝露期間後、放出86Rbを含む上清を除去し、シンチレーションバイアルに移した。シンチレーション液を加え、放出放射能を液体シンチレーションカウンティングによって測定した。
【0085】
各アッセイ内で、各点について二連で測定を行い、それらの平均を求めた。86Rb放出の量を、陽性対照(100μM L−ニコチン)および陰性対照(緩衝液単独)の両方と比較して、L−ニコチンのものと比較した放出パーセントを求めた。
【0086】
適切な場合、被験化合物の用量−応答曲線を求めた。個々の化合物の最大活性化(Emax)を、L−ニコチンによって誘発される最大活性化のパーセントとして求めた。比イオンフラックスの半最大活性化を生じる化合物濃度(EC50)も求めた。
【0087】
ラット神経節nAChRサブタイプでの相互作用
ラット神経節nAChRの活性化を、ラット副腎髄質の腫瘍由来である神経冠起源の連続クローン細胞系であるクロム親和細胞腫クローン系PC12で確立した。これらの細胞は、神経節様nAChRを発現する(Whiting et al., Nature 327: 515 (1987);Lukas, J. Pharmacol. Exp. Ther. 251: 175 (1989);Whiting et al., Mol. Brain Res. 10: 61 (1990)参照)。
【0088】
ラットPC12細胞を、通常のプロトコールに従って増殖成長相に維持した(Bencherif et al., Mol. Cell. Neurosci. 2: 52 (1991)およびBencherif et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 257: 946 (1991))。10%ウマ血清(Gibco/BRL)、5%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミンおよび50000単位のペニシリン−ストレプトマイシン(Irvine Scientific)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco/BRL)中で細胞を培養した。細胞が80%集密となった時点で、それを12ウェルのNuncプレート(Nunclon)で平板培養し、0.03%ポリ−L−リジン(Sigma、100mMホウ酸に溶かしたもの)でコーティングした。細胞が80%集密に到達した時点で実験を行った。
【0089】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)機能を、文献(Lukas et al., Anal. Biochem. 175: 212 (1988))に記載の方法に従って、86Rb流出を用いて定量した。実験当日、成長培地をウェルから優しく除去し、86塩化ルビジウム(10μCi/mL)を含む成長培地を各ウェルに加えた。細胞を37℃で最低3時間インキュベートした。その負荷期間後、過剰の86Rbを除去し、細胞を壊さないように注意しながら、細胞を標識していないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(138mM NaCl、2.67mM KCl、1.47mM KHPO、8.1mM NaHPO、0.9mM CaCl、0.5mM MgCl、Invitrogen/Gibco、pH:7.4)で2回洗浄した。次に、細胞を100μMの被験化合物、100μMのニコチンまたは緩衝液単独に4分間曝露した。曝露期間後、放出86Rbを含む上清を除去し、シンチレーションバイアルに移した。シンチレーション液を加え、放出放射能を液体シンチレーションカウンティングによって測定した。
【0090】
各アッセイ内で、各点について二連で測定を行い、それらの平均を求めた。86Rb放出の量を、陽性対照(100μMニコチン)および陰性対照(緩衝液単独)の両方と比較して、L−ニコチンのものと比較した放出パーセントを求めた。
【0091】
適切な場合、被験化合物の用量−応答曲線を求めた。個々の化合物の最大活性化(Emax)を、L−ニコチンによって誘発される最大活性化のパーセントとして求めた。比イオンフラックスの半最大活性化を生じる化合物濃度(EC50)も求めた。
【0092】
ヒト神経節nAChRサブタイプでの相互作用
細胞系SH−SY5Yは、ヒト末梢神経芽細胞腫から最初に得られた親細胞系SK−N−SHの順次サブクローニングによって得られた連続系である。SH−SY5Y細胞は、神経節様nAChRを発現する(Lukas et al., Mol. Cell. Neurosci. 4: 1 (1993))。
【0093】
ヒトSH−SY5Y細胞を、通常のプロトコールに従って増殖成長相に維持した(Bencherif et al., Mol. Cell. Neurosci. 2: 52 (1991)およびBencherif et al., J. Pharmacol. Exp. Ther. 257: 946 (1991))。10%ウマ血清(Gibco/BRL)、5%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミンおよび50000単位のペニシリン−ストレプトマイシン(Irvine Scientific)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Gibco/BRL)中で細胞を培養した。細胞が80%集密となった時点で、それを12ウェルのポリスチレンプレート(Costar)で平板培養した。細胞が100%集密に到達した時点で実験を行った。
【0094】
ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)機能を、文献(Lukas et al., Anal. Biochem. 175: 212 (1988))に記載の方法に従って、86Rb流出を用いて定量した。実験当日、成長培地をウェルから優しく除去し、86塩化ルビジウム(10μCi/mL)を含む成長培地を各ウェルに加えた。細胞を37℃で最低3時間インキュベートした。その負荷期間後、過剰の86Rbを除去し、細胞を壊さないように注意しながら、細胞を標識していないダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(138mM NaCl、2.67mM KCl、1.47mM KHPO、8.1mM NaHPO、0.9mM CaCl、0.5mM MgCl、Invitrogen/Gibco、pH:7.4)で2回洗浄した。次に、細胞を100μMの被験化合物、100μMのニコチンまたは緩衝液単独に4分間曝露した。曝露期間後、放出86Rbを含む上清を除去し、シンチレーションバイアルに移した。シンチレーション液を加え、放出放射能を液体シンチレーションカウンティングによって測定した。
【0095】
各アッセイ内で、各点について二連で測定を行い、それらの平均を求めた。86Rb放出の量を、陽性対照(100μMニコチン)および陰性対照(緩衝液単独)の両方と比較して、L−ニコチンのものと比較した放出パーセントを求めた。
【0096】
適切な場合、被験化合物の用量−応答曲線を求めた。個々の化合物の最大活性化(Emax)を、L−ニコチンによって誘発される最大活性化のパーセントとして求めた。比イオンフラックスの半最大活性化を生じる化合物濃度(EC50)も定義した。
【0097】
実施例4:新物体認識(NOR)作業
新物体認識(NOR)作業を、文献(Ennaceur and Delacour Behav. Brain Res. 100: 85-92 (1988))の記載に従って実施した。
【0098】
合成実施例
実施例5:N−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
実施例5は、下記の技術に従って、シュリンプ(Schrimpf)らに対する米国特許出願第2004/0186107号およびバシャ(Basha)らに対する同2005/0101602号に記載の方法で製造したN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンの合成に関するものである。
【0099】
5−ベンジルテトラヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,3−ジオン(または7−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジオン)
マレイミド(6.27g、0.0646mol)のジクロロメタン(150mL)中溶液を冷却したもの(0℃)に窒素下にて、トリフルオロ酢酸(TFA、0.50mL、6.5mmol)を加えた。N−(メトキシメチル)−N−(トリメチルシリルメチル)ベンジルアミン(20g、0.084mol)のジクロロメタン(100mL)中溶液を、45分間かけて滴下した。添加完了後、混合物を徐々に昇温させて室温とし、16時間攪拌した。混合物を濃縮し、得られた残留物をジクロロメタン(200mL)に溶かし、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した(50mLで2回)。水層を分離し、ジクロロメタンで抽出した(75mLで2回)。合わせたジクロロメタン抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、濾過し、濃縮して、明黄色ロウ状固体12.5g(収率83.9%)を得た(MSm/z231(M+H))。
【0100】
2−ベンジルオクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール(または3−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン)
粗5−ベンジルテトラヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−1,3−ジオン(4.9g、0.021mol)を、窒素下に冷(0℃)脱水テトラヒドロフラン(THF)(50mL)に溶かし、冷却を続けた溶液に、水素化リチウムアルミニウム(1M THF63mL、0.063mol)を、30分かけて滴下した。得られた混合物を室温で30分間攪拌し、昇温して還流させて4時間経過させた。混合物を冷却して0℃とし、過剰の固体硫酸ナトリウム・10水和物をゆっくり加えることで反応停止した。混合物を昇温させて室温とし、16時間攪拌した。固体を濾過し、残留物を酢酸エチルで洗浄した(100mLで3回)。合わせた濾液を濃縮して、ロウ状固体4.2g(収率99%)を得た(MSm/z203(M+H))。
【0101】
5−ベンジルヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(またはN−ベンジル−N′−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン)
粗2−ベンジルオクタヒドロピロロ[3,4−c]ピロール(4.2g、0.021mol)をTHF(50mL)に溶かした。ジ−t−ブチル・ジカーボネート(5.5g、0.025mol)および飽和NaHCO水溶液(10mL)を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。水(10mL)で反応停止し、酢酸エチル(30mL)を加えた。水層を酢酸エチルで抽出し(20mLで2回)、合わせた有機抽出液を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1:1ヘキサン/酢酸エチル)による精製によって、標題化合物5.07g(収率79.8%)を得た(MSm/z303(M+H))。
【0102】
ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(またはN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン)
5−ベンジルヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(5.07g、0.0168mol)をメタノール(50mL)に溶かし、20%Pd(OH)/C(湿)(約2g)を窒素雰囲気下に加えた。得られた混合物を昇温させ(45から50℃)、約0.28MPa(40psi)の水素下に2時間振盪した。混合物を濾過し、濃縮して、標題化合物3.49g(収率97.7%)を得た(MSm/z213(M+H))。
【0103】
実施例6:N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンの合成
実施例6は、3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンのヘテロ芳香族アミドを作るのに用いられるカップリング反応を例示する、下記の技術に従って製造したフラン−2−イル(ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−イル)メタノン(またはN−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン)の合成に関するものである。
【0104】
フラン−2−イル(ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−イル)メタノン・トリフルオロ酢酸塩(またはN−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン・トリフルオロ酢酸塩)
フラン−2−カルボン酸(0.037g、0.33mmol)およびトリエチルアミン(0.125mL、0.99mmol)を脱水ジクロロメタン(1mL)中で合わせ、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート(HBTU;0.125g、0.33mmol)を加えた。ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.064g、0.30mmol)のジクロロメタン(0.5mL)中溶液を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物を10%水酸化ナトリウム水溶液とともに振盪し、有機層を分離した。水層をクロロホルムで抽出した(2mLで2回)。合わせた有機抽出液を水で洗浄し(1mLで2回)、濃縮した。得られた残残留物をジメチルホルムアミド(DMF)(0.3mL)に溶かし、HPLC(アセトニトリル/水勾配)によって精製した。所望の材料を含む分画を蓄積し、濃縮したところ、tert−ブトキシカルボニル−保護生成物が残った。この取得物をトリフルオロ酢酸(0.5mL)およびジクロロメタン(0.5mL)の混合物に溶かし、混合物を室温で1時間攪拌した。揮発分をロータリーエバポレータによって除去し、次に高真空処理して、油状物77mgを得た(収率80%)(H NMR(d−メタノール、300MHz)3.20(m、2H)、3.47−4.2(m、8H)、6.60(t、1H)、7.18(d、1H)、7.72(d、1H);MSm/z207(M+H))。
【0105】
実施例7:N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン・トリフルオロ酢酸塩の合成
実施例7は、3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタンのヘテロ芳香族アミドを製造するのに用いられるカップリング反応を例示する、下記の技術に従って製造した5−クロロフラン−2−イル(ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−イル)メタノン・トリフルオロ酢酸塩(またはN−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン・トリフルオロ酢酸塩)の合成に関するものである。
【0106】
5−クロロフラン−2−カルボン酸
水酸化ナトリウム水溶液(10%品80mL)を、硝酸銀(8.0g、47mmol)の水(20mL)溶液に加えた。この懸濁液を攪拌し、それが透明になるまで30%水酸化アンモニウム水溶液でゆっくり処理した。5−クロロフラン−2−カルボキシアルデヒド(3.0g、23mmol)(アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical))のメタノール(5mL)中溶液を加え、得られた混合物を室温で30分間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液をエーテル(100mL)で洗浄した。得られた水系濾液を、冷20%硫酸を加えることで酸性(約pH3)とした。得られた混合物を酢酸エチルで抽出した(100mLで3回)。抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、脱水し(無水硫酸ナトリウム)、減圧下に濃縮して、白色固体3.2g(収率95%)を得た(融点:178−179℃)。この反応は容易に大量化することができ、10gを超えるスケールで複数回行った。
【0107】
N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン・トリフルオロ酢酸塩
DMF1滴を含むオキサリルクロライド(12.2g、95.8mmol)を、5−クロロフラン−2−カルボン酸(6.25g、47.9mmol)のジクロロメタン200mL中溶液を氷冷したものに滴下した。添加完了後、氷浴を外し、反応液を1時間かけて昇温させて室温とした。揮発分を減圧下に除去し、残留物をにTHF(50mL)溶かした。得られた酸塩化物の溶液を、ヘキサヒドロピロロ[3,4−c]ピロール−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(10.2g、47.9mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(25g、約4当量)のTHF(200mL)溶液を氷冷攪拌したものに加えた。この混合物を室温で16時間攪拌した。揮発分を減圧下に除去し、残留物を水(100mL)とエーテル(300mL)との間で分配した。エーテル層および2つの水層のエーテル抽出液(100mL)をロータリーエバポレータで濃縮した。残留物について、0%から60%酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶離を行うシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーを行った。選択された分画を濃縮することで、淡黄色シロップ13.9g(収率85.3%)を得た。この取得物の一部(12.9g、37.9mmol)を、ジクロロメタンおよびトリフルオロ酢酸の混合物(それぞれ100mL)に溶かした。この混合物を室温で2時間攪拌し、減圧下に濃縮した。残留物を、クロロホルム(200mL)と50%炭酸カリウム水溶液(200mL)との間で分配し、水層をクロロホルムで抽出した(200mLで3回)。合わせたクロロホルム層を無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下に濃縮して、淡黄色固体8.66g(収率95%)が残った(H NMR(d−メタノール、300MHz)3.15−3.35(m、4H)、3.50−4.20(m、6H)、6.51(d、1H)、7.17(d、1H);MSm/z241(M+H))。
【0108】
実施例8:3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルの合成
実施例8は、下記の技術に従って製造した3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(またはN−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン)の合成に関するものである。
【0109】
7−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(またはN−ベンジル−N′−(tert−ブトキシカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン)
7−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−カルボン酸tert−ブチルエステルを、ステッドらの報告(Stead et al. in Org. Lett., 7(20): 4459 (2005))に記載の手順に従って製造した。
【0110】
3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]−3−カルボン酸tert−ブチルエステル
7−ベンジル−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.49g、1.6mmol)をメタノール(20mL)に溶かし、窒素雰囲気下に20%Pd(OH)/C(湿)(約2g)を加えた。この混合物を昇温させて約50℃とし、約0.38MPa(55psi)の水素下で2時間振盪した。得られた混合物を濾過し、濃縮して、標題化合物0.32g(収率94%)を得た(MSm/z227(M+H))。
【0111】
実施例9:N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン・トリフルオロ酢酸塩の合成
実施例9は、3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンのヘテロ芳香族アミドを製造するのに用いられるカップリング反応を例示する、下記の技術に従って製造した(3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノン−3−イル)−フラン−2−イルメタノン・トリフルオロ酢酸塩(またはN−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン・トリフルオロ酢酸塩)の合成に関するものである。
【0112】
3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノン−3−イル)−フラン−2−イルメタノン・トリフルオロ酢酸塩(またはN−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン・トリフルオロ酢酸塩)
フラン−2−カルボン酸(0.032g、0.29mmol)を脱水ジクロロメタン(1mL)中でトリエチルアミン(0.870mmol、0.121mL)と組み合わせ、HBTU(0.11g、0.29mmol)を加えた。3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.059g、0.26mmol)のジクロロメタン(0.5mL)中溶液を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物を10%水酸化ナトリウム水溶液で処理し、クロロホルムで抽出した(2mLで2回)。合わせた有機抽出液を水で洗浄し(1mLで2回)、濃縮した。得られた残留物をDMF(0.3mL)に溶かし、HPLC(アセトニトリル/水勾配)によって精製した。所望の材料を含む分画を蓄積し、濃縮したところ、tert−ブトキシカルボニル−保護生成物が残った。この取得物をトリフルオロ酢酸(0.5mL)およびジクロロメタン(0.5mL)の混合物に溶かし、混合物を室温で1時間攪拌した。揮発分をロータリーエバポレータによって除去し、次に真空で処理して、油状物36mg(収率41%)を得た(H NMR(d−メタノール、300MHz)2.10(bs、2H)、2.35(bs、2H)、3.30−3.45(m、4H)、3.55(m、2H)、6.65(m、1H)、7.15(d、1H)、および7.75(d、1H)。MSm/z221(M+H))。
【0113】
実施例10:N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン・トリフルオロ酢酸塩の合成
実施例10は、下記の技術に従って実施例9に記載の方法と同様の方法によって製造した(3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノン−3−イル)−5−クロロフラン−2−イルメタノン・トリフルオロ酢酸塩(またはN−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン・トリフルオロ酢酸塩)の合成に関するものである。
【0114】
5−クロロフラン−2−カルボン酸(0.96g、6.5mmol)を脱水ジクロロメタン(10mL)中にてトリエチルアミン(21mmol、2.9mL)と組み合わせ、HBTU(2.47g、65.1mmol)を加えた。3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]−3−カルボン酸tert−ブチルエステル(1.5g、66mmol)のジクロロメタン(5mL)中溶液を加え、混合物を室温で終夜攪拌した。混合物を10%水酸化ナトリウム水溶液で処理し、クロロホルムで抽出した(20mLで2回)。合わせた有機抽出液を水で洗浄し(10mLで2回)、濃縮した。得られた残留物を、酢酸エチル/ヘキサン勾配で溶離を行うシリカゲルでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、tert−ブトキシカルボニル−保護生成物を粘稠油状物として得た。この取得物をトリフルオロ酢酸(20mL)およびジクロロメタン(20mL)の混合物に溶かし、混合物を室温で1時間攪拌した。揮発分をロータリーエバポレータによって除去し、次に高真空処理して、粘稠黄色油状物1.38g(収率57.5%)を得た(H NMR(d−メタノール、300MHz)2.00(bs、2H)、2.15(bs、2H)、3.15−3.35(m、6H)、4.25(m、2H)、6.53(d、1H)および7.10(d、1H)。MSm/z255(M+H))。
【0115】
実施例11:スペクトルデータおよび受容体結合データの表
上記で説明したアミドカップリング手順を利用して、表1および2に示した化合物を製造した。一部の場合では、化合物の合成は核磁気共鳴(NMR)データを得るのに十分な規模で合成した。他の場合には、化合物の製造は各種並行合成装置でそれより小さい規模で行い、LCMSのみで(構造的に)特性決定を行った。
【表1】






【表2】





【0116】
生物データのまとめ
本発明を代表する表1および2の化合物は、ラットおよびヒトα4β2サブタイプでそれぞれ1nM〜1000nMおよび1nM〜220nMの範囲の阻害定数(Ki値)を示した。このことはα4β2サブタイプに対する高アフィニティを示している。α7サブタイプでのKi値は1700nMから210000nMの範囲内で変動する(多くの場合、それら化合物はα7サブタイプでの高スループットスクリーニングでKi測定が可能となるほど結合しなかった)。これらの同じ化合物は、ヒト筋肉サブタイプ(ニコチンに対する最大応答の1〜25%)またはヒト神経節サブタイプ(ニコチンに対する最大応答の1〜20%)のいずれかで比較的低い機能活性を示した。
【0117】
ある種の例示化合物はNOR作業で評価した。N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン(図1)およびN−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン(図2)の両方が、それぞれ0.1mg/kgおよび0.3mg/kgでラットでのORで活性であった。これは、認知障害、注意障害および認知症の治療における本発明の化合物の効力(および有効性)、ならびにヒト療法でのこれら化合物の有効性の証拠を提供するものである。
【0118】
前記内容は本発明を説明するものであって、本発明に制限を加えるものと解釈すべきではない。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、その特許請求の範囲の均等物は本発明に包含されるべきものである。本明細書で言及している全ての特許および刊行物は、本願において、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iとして表される化合物または該化合物の製薬上許容される塩。
【化1】


[式中、nは0または1であり、Cyは2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、および4−ピリジニルの群から選択されるヘテロアリール基であり、
該ヘテロアリール基は独立にC1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C2−6アルケニル、置換C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、置換C2−6アルキニル、3〜8員の複素環、C3−8シクロアルキル、C5−10アリール、5〜10員のヘテロアリール、ハロ、−OR′、−NR′R″、−CF、−CN、−NO、−CR′、−SR′、および−Nからなる群から選択される2個以下の非水素置換基で置換されていても良く、
R′およびR″は独立に水素、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、3〜8員の複素環、C5−10アリール、5〜10員のヘテロアリールおよびC5−10アリール−C1−6アルキルからなる群から選択されるか、あるいはR′と、R″はそれらが結合している原子と一体となって、3〜8員の複素環を形成していても良く、
アルキル、アルケニル、およびアルキニルに適用される「置換」という用語は、1以上のアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、−OR′および−NR′R″基による置換を指す。]
【請求項2】
Cyが2−フラニル、3−フラニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、および4−ピリジニルからなる群から選択される5〜10員のヘテロアリール基であり、ヘテロアリール基が独立にC1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ハロ、および、フェニルで置換されたC2−6アルキニル、からなる群から選択される2個以下の非水素置換基で置換されていても良い請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Cyが2−フラニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Cyがハロで置換された2−フラニルである、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(4−フェニルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−(2−ピリジニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(5−(フェニルエチニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(フラン−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(オキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−ブロモイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(3−メトキシイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(チアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(イソチアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、及び
N−(ピリジン−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.0]オクタン、
からなる群から選択される化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項7】
N−(フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−メチルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−ブロモフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(4−フェニルフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−(2−ピリジニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(5−(フェニルエチニル)フラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(フラン−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(オキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−ブロモイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(3−メトキシイソオキサゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−オキサジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(チアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(イソチアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−3−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,2,4−チアジアゾール−5−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、
N−(1,3,4−チアジアゾール−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、および
N−(ピリジン−4−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン
からなる群から選択される化合物またはその製薬上許容される塩。
【請求項8】
化合物N−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンまたは該化合物の製薬上許容される塩。
【請求項9】
1以上の製薬上許容される希釈剤、賦形剤および/または不活性担体とともに、有効成分として治療上有効量の請求項1に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項10】
化合物がN−(5−クロロフラン−2−イルカルボニル)−3,7−ジアザビシクロ[3.3.1]ノナンまたはその製薬上許容される塩である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
神経変性障害、神経精神障害、または神経障害を治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
神経保護をもたらす、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
パーキンソニズムまたはパーキンソン病を治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ピック病、ハンチントン舞踏病、遅発性ジスキネジア、運動過剰症、進行性核上麻痺、クロイツフェルトヤコブ病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、トゥレット・シンドローム、または自閉症を治療するための、請求項9に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−56919(P2013−56919A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−253103(P2012−253103)
【出願日】平成24年11月19日(2012.11.19)
【分割の表示】特願2009−535465(P2009−535465)の分割
【原出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(501054735)ターガセプト,インコーポレイテッド (37)
【Fターム(参考)】