説明

ニコランジルを含む組成物、調製方法及び使用

本発明は、ニコランジルを含む組成物、前記方法により得られる組成物及びそれらの使用に関する。本発明は、特に、ニコランジルを含む組成物を調製するための方法、前記方法により得られる組成物、直接圧縮により得られる錠剤及び医薬品としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ニコランジルを含む組成物、それらを調製するためのプロセス、これらの組成物を含む錠剤及び医薬品としてのそれらの使用に関する。
【0002】
とりわけ、及び第一の態様によると、本発明は、ニコランジルを含む組成物に関し、この組成物は、この組成物を含む錠剤の製造のための工業プロセスを著しく簡素化するという長所を有する。
【背景技術】
【0003】
ニコランジル(INN)(Ikorel(R))錠剤の調製のために工業レベルで現在使用されている方法は、錠剤形成段階に先立つ造粒段階を含む。
【0004】
造粒段階を含む方法は、特許EP0230932B1に記載されている。この特許において、実施例1、2、4、5及び6は、造粒段階を用いたプロセスを述べている。一般に、造粒段階の使用により、この段階を行わない場合よりも安定性に優れた錠剤が得られるようになることが指摘される(表1から7、実施例3、7、8)。これは、さらに、市販製品に対して造粒によるプロセスの使用が選択される理由の1つである。
【0005】
市販の賦形剤により、通常、直接圧縮に対して受容可能な組成物が得られるようになる。一般に、これらの賦形剤は顆粒形態であり、「直接圧縮用」という名称で販売されている。残念なことに、及び活性成分に生来備わっている安定性の問題のために、長期にわたり十分に安定な錠剤を得ることを可能とする直接圧縮用の処方は現在に至るまで得られていない。特許EP0230932B1の実施例3は、第一の段階において、活性成分をステアリン酸と混合し、次いでその混合物を微粉化するプロセスを述べている。しかし、得られた組成物の安定性は、満足いくものではない(表3、5ページ:40℃にて3ヵ月後、97.3%、0%残留水含量)。
【0006】
比較として、実施例2(99.4%)は、市販の組成物に最も近い安定性を有するものである。
【0007】
EP 0230932B1、2ページ、32−36行目において、錠剤の安定性の問題に対する許容可能な解決法が、ニコランジルと飽和脂肪酸又はアルコールとの混合物により得ることができると書かれている。しかし、この解決法は、上記で考察した、安定性測定結果を見て指摘し得るように、完全に満足できるものではない。
【発明の開示】
【0008】
予想外に、造粒段階を介して得られる最良の組成物と同等の安定性を有する直接圧縮用の組成物を得ることができることが分かった(これは市販組成物である。)。
【0009】
直接圧縮用のこの組成物は、活性成分(ニコランジル)及び飽和高級脂肪酸又は飽和高級アルコール(微粉化されていない。)を含む。許容可能な飽和高級脂肪酸又は飽和高級アルコールは、周囲温度(つまり、20℃から25℃付近)で固体でなければならない。好ましい飽和高級脂肪酸又はアルコールは、40℃の領域、好ましくは50℃の領域の温度でも固体である。
【0010】
特に好ましい飽和脂肪酸は、パルミチン酸及びステアリン酸から選択することができる。
【0011】
特に好ましい飽和高級アルコールは、ヘキサンデカンアルコール及びオクタデカンアルコール、好ましくはヘキサデカン−1−オール及びオクタデカン−1−オールから選択することができる。
【0012】
本発明による組成物は、有利に、(i)ニコランジル及び(ii)飽和高級脂肪酸及びその塩及び/又は飽和高級アルコールから選択される滑剤(周囲温度で固体である。)を含み、この滑剤は微粉化されていない。
【0013】
好ましい滑剤は、ステアリン酸である。
【0014】
本発明による組成物はまた、崩壊剤及び希釈剤も含み得る。
【0015】
好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0016】
好ましい希釈剤はマンニトールである。
【0017】
本発明による組成物は、有利に、ニコランジル10重量%と、微粉化されていない、周囲温度で固体である滑剤を含む。
【0018】
本発明による組成物は、好ましくは、微粉化されていないステアリン酸8%を含む。
【0019】
本発明による組成物は、有利に、崩壊剤、好ましいクロスカルメロースナトリウム5%を含む。
【0020】
本発明による組成物は、有利に、希釈剤、好ましくはマンニトール、特に76重量%を含む。
【0021】
第二の態様によると、本発明は、本発明の第一の態様による組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0022】
特に、本発明の第二の態様による調製プロセスは、第一のプレミックスを形成するように、ニコランジル30重量部と、クロスカルメロースナトリウム15重量部と、マンニトール35重量部と、コーンスターチ3重量部とを混合する第一の段階を含む。
【0023】
第一のプレミックスは好ましくは調整される。
【0024】
本発明によるプロセスはまた、第二のプレミックスを形成するように、調整された第一のプレミックスをマンニトール193重量部と混合する第二の段階も含む。
【0025】
本発明によるプロセスはまた、第二のプレミックスを非微粉化ステアリン酸24重量部と混合する第三の段階も含む。
【0026】
第三の態様によると、本発明は、本発明の第二の態様によるプロセスにより得られる直接圧縮用の組成物に関する。
【0027】
第四の態様によると、本発明は、(i)本発明の第三の態様による直接圧縮用の組成物を鋳型のインプレッションに置く第一の段階を含み、(ii)直接圧縮用の組成物が鋳型の体積V1のチャンバーに捕捉されるように、鋳型の対になるインプレッションがインプレッションに対して適用される第二の段階を含み、(iii)錠剤が得られるまで圧縮することにより、鋳型の体積V1が体積V1よりも少ない体積V0に減少させられる第三の段階も含む、ニコランジルを含む錠剤を調製するためのプロセスに関する。
【0028】
本発明の第四の態様によるプロセスは有利に、(iv)インプレッション及び対になるインプレッションが引き離され、錠剤がチャンバーから抜き出される第四の段階も含む。
【0029】
第五の態様によると、本発明は、本発明の第四の態様に従い得られる錠剤に関する。
【0030】
第六の態様によると、本発明は、第五の態様による錠剤のための許容可能な包装、特に、ブリスター包装又はボトルに関する。
【実施例】
【0031】
本発明の長所を以下の実施例によりさらに詳しく説明する。
【0032】
先行技術によるニコランジルを含む許容可能な組成物を以下のように調製できる。
【0033】
1)市販組成物:
【0034】
【表1】


【0035】
2)先行技術の調整プロセス(工業プロセス):
フェーズ1:Ikorel中性顆粒(表2、下記)の調製
【0036】
【表2】

【0037】
フェーズ2:Ikorel錠剤の製造
【0038】
【表3】

【0039】
本発明によるニコランジルを含有する許容可能な組成物を次のように調整することができる。
1)本発明による組成物:
【0040】
【表4】

【0041】
2)本発明による工程:
【0042】
【表5】

【0043】
組成物が包装されていない錠剤の形態であり、ミニバッグに保存されている場合の、市販組成物と本発明による組成物との、安定性の比較
1)市販組成物:
【0044】
【表6】

【0045】
2)本発明による組成物:
【0046】
【表7】

【0047】
考察
本発明によるプロセスにより得られた包装されていない錠剤は、市販の錠剤よりも安定である。
【0048】
安定性における重要な要因である水含量は、本発明によるプロセスにより得られた製品のバッチの場合、全体的に低い。
【0049】
本発明による錠剤の場合のニコランジルの量は、長期にわたり、市販の錠剤と同程度に安定である。
【0050】
市販の錠剤と比較して本発明による錠剤の場合、t=0での不純物値が高いことを指摘する。しかし、不純物レベルの増加は、本発明による錠剤の場合長時間にわたりゆっくりと進む。したがって、市販のバッチの場合、5ヶ月の時点で、不純物値は基準外となるが、本発明によるバッチの場合は当てはまらない。
【0051】
最後に、崩壊値は、この2つの場合において安定である。
【0052】
保存条件(ブリスター包装での、6ヶ月、40℃、75%RH)による錠剤の安定性の比較
【0053】
【表8】

【0054】
現在の工業プロセスにより、バッチ20、21及び22CMPを得る。バッチLOP107CDは、上記の本発明によるプロセスにより得たバッチである。
【0055】
考察:
25℃、60%RHであれm30℃、65%RHであれ、t=6ヶ月において、本発明によるプロセスにより得たバッチの活性成分の量は、現在のプロセスにより得たバッチにおいて測定したものと同等である。不純物濃度についても同じことが当てはまる。
【0056】
40℃、75%RHにおいて、t=6ヶ月の時点で、本発明によるプロセスにより得たバッチの活性成分の量は、現在のプロセスにより得たバッチにおいて測定したものよりも良いか、又は同等である。不純物濃度についても同じことが当てはまる。
【0057】
結論
直接圧縮によるプロセスに従い製造し、ミニバッグ中で保存した未包装の錠剤は、市販の錠剤よりも安定である。
【0058】
このさらなる実験から、おそらく、本発明による錠剤は、現在のプロセスによる錠剤に対して、全体に著しい安定性を示すと思われる。ここで考慮した安定条件は、この製品にとって厳しい状態であることを思い起こす必要があり、このために、厳格な保存条件が推奨される(温度<25℃)。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、ニコランジル含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。
【図2】図2は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、ニコランジル含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。
【図3】図3は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、ニコランジル含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。
【図4】図4は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、不純物含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。
【図5】図5は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、不純物含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。
【図6】図6は、それぞれ、25℃、60%RH;30℃、65%RH;及び40℃、75%RHにおいてブリスター包装で保存した錠剤に対し、時間の関数として、不純物含量変化を図示したものであり、40℃、75%RHでの値は、表14で示す値に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ニコランジル及び(ii)飽和高級脂肪酸及びその塩及び/又は飽和高級アルコールから選択される滑剤(周囲温度で固体である。)を含み、滑剤が微粉化されていないことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
滑剤がステアリン酸であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
崩壊剤及び希釈剤も含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
崩壊剤がクロスカルメロースナトリウムであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
希釈剤がマンニトールであることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ニコランジル10重量%と、周囲温度で固体である非微粉化滑剤と、を含む組成物。
【請求項7】
非微粉化ステアリン酸8%を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
崩壊剤も含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
クロスカルメロースナトリウム5%を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
希釈剤も含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
マンニトール76%を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第一のプレミックスを形成するように、ニコランジル30重量部と、クロスカルメロースナトリウム15重量部と、マンニトール35重量部と、コーンスターチ3重量部とを混合する第一の段階を含むことを特徴とする、請求項1から請求項11の何れか一項に記載の組成物を調製するための方法。
【請求項13】
第一のプレミックスが調整されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第二のプレミックスを形成するように、調整された第一のプレミックスがマンニトール193重量部と混合される第二の段階を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第二のプレミックスが非微粉化ステアリン酸24重量部と混合される第三の段階を含むことを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の方法により得られる、直接圧縮用の組成物。
【請求項17】
(i)請求項16に記載の直接圧縮用の組成物を周囲温度で鋳型のインプレッションに置く第一の段階を含み、(ii)直接圧縮用の組成物が鋳型の体積V1のチャンバー中に捕捉されるように、鋳型の対になるインプレッションが、インプレッションに対して適用される第二の段階を含み、(iii)錠剤が得られるまで圧縮することにより、鋳型の体積V1が、体積V1よりも少ない体積V0に減少させられる第三の段階も含むことを特徴とする、ニコランジルを含む錠剤を調製するための方法。
【請求項18】
(iv)インプレッション及び対になるインプレッションが分離され、錠剤がチャンバーから抜き出される第四の段階も含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載のようにして得られる錠剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−505873(P2008−505873A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519838(P2007−519838)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001730
【国際公開番号】WO2006/016040
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500152119)アバンテイス・フアルマ・エス・アー (65)
【Fターム(参考)】