説明

ニッケルめっき液およびそれを利用した柔軟性を有するスタンプの製造方法

【課題】柔軟性を有するニッケルスタンプを提供する。
【解決手段】本発明の一実施例に係るニッケルめっき液は、600〜650g/Lのスルファミン酸ニッケルと、5〜6g/Lの塩化ニッケルと、25〜35g/Lのホウ酸と、を含む。このような本発明の一実施例に係るニッケルめっき液は、それ自体の応力が減少され、柔軟性を有するニッケルスタンプを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケルめっき液およびそれを利用した柔軟性を有するスタンプの製造方法に関する。詳細には、スタンプの応力を減少させるニッケルめっき液、および、マイクロ単位やナノ単位の厚さと柔軟性とを有し、それ自体の応力が減少されたニッケルまたはニッケル合金スタンプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バイオテクノロジーおよび医学の分野に関する研究が活発に進められており、それに伴って超小型システムを製作できる微小電子機械システム(Micro Electro Mechanical Systems,MEMS)についての関心が増している。たとえば、医学分野においては、超小型内視鏡、薬物送達システム、および、体内挿入型バイオセンサに関する研究がMEMSに基づいて行われている。また、バイオテクノロジー分野においては、DNAチップおよびラボオンチップ(Lab-On-a-Chip、以下LOCという)に関する研究がMEMSに基づいて行われている。
【0003】
このような研究が進むにつれ、非シリコン材料に関する研究も活発に行われている。特に、ポリマーを中心とした研究が注目を集めている。ポリマーは光学的特性に優れ、蛍光物質の検出に適している。また、DNAチップや光学レンズのような光学部品の製作などに用いられる。さらに、生体親和性および表面処理技術を利用して表面の親水性または疎水性を改質することができ、微小分析システム(Micro Total Analysis System,M−TAS)とLOCに幅広く応用することができる。また、比較的に安価で大量生産が可能であるといったメリットがある。ポリマーを利用したバイオチップの製造には、主にキャスティング(casting)、熱型押し(hot embossing)、または、注入成形(injection molding)などが用いられる。材料としては、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、以下PDMSという)、シリコン(Silicon)、ポリカーボネート(polycarbonate)、COS(Cyclic Olefin Copolymer)などのポリマーが使用されている。PDMSは主に研究室のレベルで使用されているが、表面処理を行ってもその性質を長期間にわたって保ち難く、大量生産に向いていないというデメリットがある。しかしながら、COSは、光学特性、耐化学薬品性、生体親和性に優れ、表面処理により親水性または疎水性を有するように改質することができ、射出成形で大量生産が可能である、といった、メリットを有している。
【0004】
LOCにおける核心技術はマイクロ流体制御技術(microfluidic system)であり、それを実現するためのポリマーに基づいたマイクロ流体システムの作成が重要技術とされている。このようなマイクロ単位のチャネルを作成するためには、射出成形用金属製の金型(mold)を製作する必要がある。
【0005】
図1は、従来の金属製の金型の製作工程を説明する図面である。一般的に、金属を、必要とされる大きさの金型に加工し、パターンが入るべき面に鏡面仕上げを施した後、レーザまたは機械加工を通じて所定のパターンで加工する。
【0006】
まず、図1(a)は鏡面仕上げを施した金属性の金型110を示したものである。図1(b)のように、金属製の金型110に直接パターン120が加工される。このような、いわゆる直接加工法は、微小、即ち、マイクロ単位やナノ単位のパターンを製作しにくく、マイクロ単位の厚さを有する金属製の金型を製作しにくいといった問題がある。
【0007】
一方で、前記直接加工法以外の、電気めっき液を利用した従来のめっき法は、約300μm以上の厚さを有する金属製の金型(以下、スタンプ)の製作においては有用な方法である。しかしながら、300μm以下の厚さを有する金属製の金型について前記従来型電気めっき液を利用して製作する場合、スタンプはそれ自体の応力を制御できず、ストレスによる曲がりや撚りといった現状が起こるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マイクロ単位やナノ単位の厚さと柔軟性を有し、それ自体の応力が減少されたニッケルまたはニッケル合金スタンプを製造できるニッケルめっき液を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、ニッケルめっき液を使用して、マイクロ単位やナノ単位の厚さおよび柔軟性を有し、それ自体の応力が減少されたニッケルまたはニッケル合金スタンプの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液を提供する。
【0011】
本発明の一実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法は、(a)基板の上部に酸化膜を形成するステップと、(b)前記酸化膜上に第1のシード金属層を形成するステップと、(c)前記第1のシード金属層上に感光層を形成して、前記感光層をパターニングしてフォトレジスト金型を形成するステップと、(d)前記第1のシード金属層および前記フォトレジスト金型上に第2のシード金属層を形成するステップと、(e)スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液を用いて電気めっきを行って、前記第2のシード金属層上にニッケルスタンプを形成するステップと、を含む。
【0012】
ここで、前記ステップ(a)において、前記基板の下部にも前記酸化膜を形成することが好ましい。
【0013】
前記ステップ(c)において、前記感光層上にマスク層を形成し、前記マスク層のパターンを前記感光層に転写し、前記フォトレジスト金型を形成することが好ましい。
【0014】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記基板、前記酸化膜、前記第1のシード金属層、フォトレジスト金型、および、前記第2のシード金属層が設けられたウェーハを容器内の脱イオン水に浸漬させるステップと、前記ウェーハが浸漬されている前記容器を真空室に入れ、真空ポンプで前記第2のシード金属層のパターン同士の間にトラップされた空気を除去するステップと、を含むことが好ましい。
【0015】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記第2のシード金属層の表面を重クロム酸カリウムで塗布するステップを含むことが好ましい。
【0016】
水中で前記第2のシード金属層の表面を前記重クロム酸カリウムで塗布することが好ましい。
【0017】
本発明の別の実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法は、(a)基板の上部に酸化膜を形成するステップと、(b)前記酸化膜上に第1のシード金属層を形成するステップと、(c)前記第1のシード金属層上に感光層を形成し、前記感光層をパターニングしてフォトレジスト金型を形成するステップと、(d)前記第1のシード金属層および前記フォトレジスト金型上に第2のシード金属層を形成するステップと、(e)ニッケル合金めっき液を用いて電気めっきを行って、前記第2のシード金属層上にニッケル合金層を形成するステップと、(f)スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液を用いて電気めっきを行って、前記ニッケル合金層上にニッケル層を形成するステップと、を含む。
【0018】
ここで、前記ニッケル合金めっき液が、サルファミン酸ニッケル110g/L、サルファミン酸金属10g/L、および、ホウ酸30g/Lを含むことが好ましい。
【0019】
前記サルファミン酸金属における金属が、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、または、マンガン(Mn)であることが好ましい。
【0020】
前記ステップ(a)において、前記基板の下部にも前記酸化膜を形成する意ことが好ましい。
【0021】
前記ステップ(c)において、前記感光層上にマスク層を形成し、前記マスク層のパターンを前記感光層に転写し、前記フォトレジスト金型を形成することが好ましい。
【0022】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記基板、前記酸化膜、前記第1のシード金属層、フォトレジスト金型、および、前記第2のシード金属層が設けられたウェーハを容器内の脱イオン水に浸漬させるステップと、前記ウェーハが浸漬されている前記容器を真空室に入れ、真空ポンプで前記第2のシード金属層のパターン同士の間にトラップされた空気を除去するステップと、を含むことが好ましい。
【0023】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記第2のシード金属層の表面を重クロム酸カリウムで塗布するステップを含むことが好ましい。
【0024】
水中で前記第2のシード金属層の表面を前記重クロム酸カリウムで塗布することが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、マイクロ単位やナノ単位の厚さと柔軟性を有し、それ自体の応力が減少されたニッケルまたはニッケル合金スタンプを提供することができる。
【0026】
また、本発明によると、マイクロ単位やナノ単位の厚さおよび柔軟性を有し、それ自体の応力が減少されたニッケルまたはニッケル合金スタンプの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の一実施例に係るニッケルめっき液は、以下の[化1]に示すように、スルファミン酸ニッケル(Ni(NH2SO3)2)600〜650g/L、塩化ニッケル(NiCl2)5〜6g/L、および、ホウ酸(H3BO3)25〜35g/Lを含む。
【0028】
[化1]
Ni(NH2SO3)2*4H2O + NiCl2*6H2O + H3BO3
前記[化1]のニッケルめっき液を用いた電気めっきを施し、マイクロ単位やナノ単位の厚さを有するニッケルスタンプ(stamp)を製作する際に、サルファミン酸ニッケルの濃度が600g/L未満であれば、その結果製作されるニッケルスタンプはそれ自体の応力を制御することができず、曲がりまたは撚り現状が起こる。また、前記サルファミン酸ニッケルの濃度が650g/Lを超える場合にも、ニッケルスタンプそれ自体の応力に起因した曲がりや撚りなどが起こる。
【0029】
同様に、塩化ニッケルおよびホウ酸の濃度が前記範囲から外れた場合に、ニッケルスタンプそれ自体の応力を制御することができず、曲がりや撚りなどの現状が起こる。
【0030】
したがって、マイクロ単位やナノ単位の厚さを有するニッケルスタンプ、好適には、100μm以下の厚さを有するニッケルスタンプを製作する際に用いられるニッケルめっき液は、600〜650g/Lのスルファミン酸ニッケル、5〜6g/Lの塩化ニッケル、および、25〜35g/Lのホウ酸を含むのが好ましい。このようなニッケルめっき液を使用する場合、100μm以下の厚さを有するニッケルスタンプは、それ自体の応力が減少され、スタンプ自体のストレスに起因したニッケルスタンプ自体の曲がりや撚りなどが起こることを防止することができる。
【0031】
図2(a)〜(f)は、本発明の一実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法を示したものである。
【0032】
本発明の一実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法は、図2(a)〜(f)に示すように、基板上に酸化膜を形成するステップと、第1のシード金属層(First seed metal layer)を形成するステップと、フォトレジスト金型(PhotoResist Mold)を形成するステップと、第2のシード金属層(Second seed metal layer)を形成するステップと、ニッケルスタンプを形成するステップと、を含む。
【0033】
まず、図2(a)に示したように、基板210の上部に第1の酸化膜220aを形成する。本発明の第1の実施例に係る基板210は、シリコン材からなるシリコン基板210を用いた。ここで、シリコン基板210の下部に第2の酸化膜220bを形成しても良い。シリコン基板210の下部に第2の酸化膜220bを形成することで、図2(f)に示したようなニッケルスタンプ260の厚さをマイクロ単位やナノ単位、好適には、100μm以下に調節することができる。
【0034】
次に、図2(a)を参照すると、第1の酸化膜220a上に第1のシード金属層230を形成する。第1のシード金属層230は概して蒸着(evaporation)、または、スパッタリング(sputtering)のような工程を経て第1の酸化膜220a上に形成され得る。
【0035】
次に、図2(b)に示したように、第1のシード金属層230上にフォトレジスト金型240を形成する。フォトレジスト金型240は第1のシード金属層230上にフォトレジスト金型230の材料である感光層240を感光液塗布装置(PhotoResist coater)を用いて形成し、感光層240上にパターンを有するマスク層(図示しない)を形成する。そして、パターンが感光層240に転写されるように露光(Exposure)および現像(Development)を行い、それにより、マイクロ単位やナノ単位の微細なパターンが刻み込まれたフォトレジスト金型240を形成することができる。
【0036】
次に、図2(c)に示すように、パターンが転写されたフォトレジスト金型240とフォトレジスト金型240とを除去し、外部に露出した第1の金属層230上に蒸着またはスパッタリングにより第2のシード金属層250を形成する。
【0037】
次に、図示されていないが、図2(c)に示した基板210、第1の酸化膜220a、第2の酸化膜220b、第1のシード金属層230、フォトレジスト金型240、および、第2のシード金属層250が形成されたウェーハを脱イオン水(容器内に入っている)に浸漬させる。その後、前記脱イオン水が入った容器を真空室に置き、真空ポンプで第2のシード金属層250のパターン同士の間に存在する余分の空気を除去する。ここで、脱イオン水は、水がそれ自体内でイオン化して生じたイオンを除き、水中に存在する全てのイオンを除去した、いわゆる不純物のない純粋な水である。この方法によって第2のシード金属層250のマイクロ単位やナノ単位の微細なパターン同士の間にトラップされた余分の気泡を除去することで、図2(f)に示したように、ニッケルスタンプ260に所定のマイクロ単位やナノ単位の微細なパターンを転写させることができる。
【0038】
また、第2のシード金属層250の表面に10%重クロム酸カリウム(K2Cr2O7)を塗布しても良い。ここで、第2のシード金属層250の表面を10%重クロム酸カリウムで塗布する際に、ウェーハが外部の空気と接触しないように水中作業で前記塗布工程を行うことが好ましい。このようにして10%重クロム酸カリウムを塗布することによって、第2のシード金属層250をニッケルスタンプ260から容易に剥がすことができる。
【0039】
次に、図2(d)に示したように、ニッケルめっき液を用いた電気めっきを行い、第2のシード金属層250上にマイクロ単位やナノ単位の厚さを有するニッケルスタンプ260を形成する。ここで、ニッケルめっき液は、600〜650g/Lのスルファミン酸ニッケル 、5〜6g/Lの塩化ニッケル、および、25〜35g/Lのホウ酸を含む。このようなニッケルめっき液を使用する場合、100μm以下の厚さを有するニッケルスタンプ260が形成されても、スタンプ自体のストレスに起因した曲がりや撚りが起こらない、柔軟性に優れたニッケルスタンプ260が得られる。
【0040】
このような柔軟性を有するニッケルスタンプ260を製造するに当たって、ニッケルめっき液はpH4〜4.5、温度50〜60℃で保たれるのが好ましい。
【0041】
具体的に、6500μmのニッケルスタンプを製造するために印加する電流の大きさとその印加時間について説明すると、まず、100mA〜500mAの電流で90分間、1000mAの電流で60分間、2000mAの電流で60分間、4000mAの電流で60分間、7000mAの電流で60分間の順にめっきを行う。次に、11000mA程度の電流で4.5時間程度めっきを行う。
【0042】
一方で、めっきが行われる内部容器と、その内部容器を含む外部容器とを用いて、ニッケルめっき液を外部容器から内部容器へ流入させた後、再び電気めっき液が外部容器に流入するようにオーバーフロー(overflow)させる循環工程を遂行するのが好ましい。このようなオーバーフローおよび循環工程を行うことで、ニッケルスタンプ260の均一性を高めることができる。
【0043】
次に、図2(e)および(f)に示すように、ニッケルスタンプ260を除き、基板、第1,2の酸化膜、第1,2のシード金属層をニッケルスタンプ260から除去する。
【0044】
図3は、本発明の一実施例に係るニッケルめっき液を用いたニッケルスタンプの製造方法により製造されたニッケルスタンプを示す図面代用写真を表したものである。図3(a)は、本発明に係るニッケルめっき液を使用しないで製造されたニッケルスタンプを示す図面代用写真を表したものであり、図3(b)は、本発明に係るニッケルめっき液を使用して製造されたニッケルスタンプを示す図面代用写真を表したものである。図3の(a)および(b)に示したように、本発明に係るニッケルめっき液を使用しないニッケルスタンプ(図3(a))は、それ自体の応力により曲がっているが、本発明に係るめっき液を使用して製造されたニッケルスタンプ(図3(b))はそれ自体の応力がなく、柔軟性を有していることが判る。
【0045】
図4は、本発明の別の実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法を説明するための図である。図4(a)から(g)に図示された本発明の別の実施例に係るスタンプの製造方法のうち図4(a)から(c)は、図2に示したスタンプの製造方法のうち図2(a)から(c)と同じであるので、図4(a)から(c)についての説明は重複を避けるためそれを省略する。
【0046】
次に、図4(d)から(g)について説明する。
【0047】
図4(d)に示すように、第2シード金属層250上に電気めっきを行い、ニッケル合金層360を形成する。ここで、ニッケル合金層360は、ニッケル・コバルト(NiCo)層であるのが好ましい。しかしながら、ニッケルと結合してニッケル合金層360を形成するのは、コバルトのほか、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、または、マンガン(Mn)であっても良い。第2のシード金属層250上にニッケルコバルト層360を形成するためのニッケルコバルトめっき液はサルファミン酸ニッケル110g/L、サルファミン酸コバルト10g/L、および、ホウ酸30g/Lを含むのが好ましい。具体的に、たとえば、6500μmの厚さを有するニッケルコバルト層360を形成するためのめっきの条件において、印加する電流の大きさおよび印加時間は、100mA〜500mAで90分間めっきを行い、1000mAの電流で約60分間めっきを行うのが好ましい。
【0048】
次に、図4(e)に示すように、ニッケルコバルト層360上に電気めっきを行い、ニッケル層370を形成する。このような、ニッケル層370を形成するためのめっき液は、600〜650g/Lのサルファミン酸ニッケル、5〜6g/Lの塩化ニッケル、および、25〜35g/Lのホウ酸を含む。
【0049】
次に、図4(f)および(g)に示すように、ニッケルコバルト層360とニッケル層370を除き、そのほかの部分を除去する。
【0050】
このようにして、本発明の別の実施例に係る、ニッケルコバルト層360とニッケル層370とが結合されたニッケル合金スタンプを製作することができる。
【0051】
図5は、本発明の一実施例に係る柔軟性を有するスタンプの硬度とヤング率についての実験結果を示す図面であり、図6は本発明の別の実施例に係るニッケルスタンプの硬度とヤング率についての実験結果を示す図面である。図5に示したように、本発明の一実施例に係るニッケルスタンプは、略2000nm以下での硬度(Hardness)が略3.57Gpaであり、ヤング率(modulus)が略195.5Gpaであった。一方で、図6に示したように、本発明の別の実施例に係るニッケルコバルト層とニッケル層とが結合されたニッケル合金スタンプの場合、図2に示したような本発明の一実施例に係る製造方法で製造されたニッケルスタンプより硬度およびヤング率が略2倍程度高いことがわかった。したがって、ニッケル合金スタンプを製作するのが、ニッケルスタンプを製造するより有利であることが判った。
【0052】
図7は、本発明の実施例に係る柔軟性を有するスタンプを利用した熱型押付機(hot embossing apparatus)を示す図である。
【0053】
図7に示すように、 熱型押付機 400で、本発明の実施例に係る製造方法によって製造されたニッケルスタンプ430またはニッケル合金スタンプ430はA-A'軸を中心に回転できるロールプレート420に巻き取られている。そして、マイクロ単位やナノ単位のパターン435が転写されるべきポリマー440が通過できるように、ロールプレート420と平板プレート410とは互いに間隔を置いて配置されている。ここで、平板プレート410の内部にヒーター410が設けられていても良く、そして、ロールプレート420の内部にヒーター(不図示)が設けられていても良い。
【0054】
このような本発明に係る柔軟性を有するスタンプは、それ自体の応力がなく、ロールプレート420で容易に巻き取られることが可能であるため、ポリマー440にマイクロ単位やナノ単位のパターン435と同じマイクロ単位やナノ単位の転写パターン445を転写することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。本明細書に記載された内容に基づいて、当業者が上記好ましい実施例を変更して実施するか、または、それを応用することができることは明らかである。そのような変更または応用はもっぱら特許請求の範囲により定められる本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来の金属製の金型の製造方法を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施例に係るニッケルめっき液を利用したニッケルスタンプの製造方法により製造されたスタンプを示す図面代用写真を表したものである。
【図4】本発明の別の実施例に係る柔軟性を有するスタンプの製造方法を説明するための図である。
【図5】本発明の実施例に係る柔軟性を有するスタンプの硬度とヤング率についての実験結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る柔軟性を有するスタンプの硬度とヤング率についての実験結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る柔軟性を有するスタンプを利用した熱型押装置を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
210 基板
220a 第1の酸化膜
220b 第2の酸化膜
230 第1のシード金属層
240 フォトレジスト金型
250 第2のシード金属層
260 ニッケルスタンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液。
【請求項2】
(a)基板の上部に酸化膜を形成するステップと、
(b)前記酸化膜上に第1のシード金属層を形成するステップと、
(c)前記第1のシード金属層上に感光層を形成して、前記感光層をパターニングしてフォトレジスト金型を形成するステップと、
(d)前記第1のシード金属層および前記フォトレジスト金型上に第2のシード金属層を形成するステップと、
(e)スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液を用いて電気めっきを行って、前記第2のシード金属層上にニッケルスタンプを形成するステップと、
を含む柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、前記基板の下部にも前記酸化膜を形成する請求項2に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項4】
前記ステップ(c)において、前記感光層上にマスク層を形成し、前記マスク層のパターンを前記感光層に転写し、前記フォトレジスト金型を形成する請求項2に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項5】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記基板、前記酸化膜、前記第1のシード金属層、フォトレジスト金型、および、前記第2のシード金属層が設けられたウェーハを容器内の脱イオン水に浸漬させるステップと、前記ウェーハが浸漬されている前記容器を真空室に入れ、真空ポンプで前記第2のシード金属層のパターン同士の間にトラップされた空気を除去するステップと、を含む請求項2に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項6】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記第2のシード金属層の表面を重クロム酸カリウムで塗布するステップを含む請求項2に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項7】
水中で前記第2のシード金属層の表面を前記重クロム酸カリウムで塗布する請求項6に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項8】
(a)基板の上部に酸化膜を形成するステップと、
(b)前記酸化膜上に第1のシード金属層を形成するステップと、
(c)前記第1のシード金属層上に感光層を形成し、前記感光層をパターニングしてフォトレジスト金型を形成するステップと、
(d)前記第1のシード金属層および前記フォトレジスト金型上に第2のシード金属層を形成するステップと、
(e)ニッケル合金めっき液を用いて電気めっきを行って、前記第2のシード金属層上にニッケル合金層を形成するステップと、
(f)スルファミン酸ニッケル600〜650g/L、塩化ニッケル5〜6g/L、および、ホウ酸25〜35g/Lを含むニッケルめっき液を用いて電気めっきを行って、前記ニッケル合金層上にニッケル層を形成するステップと、
を含む柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項9】
前記ニッケル合金めっき液が、サルファミン酸ニッケル110g/L、サルファミン酸金属10g/L、および、ホウ酸30g/Lを含む請求項8に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項10】
前記サルファミン酸金属における金属が、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ヒ素(As)、または、マンガン(Mn)である請求項9に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)において、前記基板の下部にも前記酸化膜を形成する請求項8に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)において、前記感光層上にマスク層を形成し、前記マスク層のパターンを前記感光層に転写し、前記フォトレジスト金型を形成する請求項8に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記基板、前記酸化膜、前記第1のシード金属層、フォトレジスト金型、および、前記第2のシード金属層が設けられたウェーハを容器内の脱イオン水に浸漬させるステップと、前記ウェーハが浸漬されている前記容器を真空室に入れ、真空ポンプで前記第2のシード金属層のパターン同士の間にトラップされた空気を除去するステップと、を含む請求項8に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(d)とステップ(e)との間に、前記第2のシード金属層の表面を重クロム酸カリウムで塗布するステップを含む請求項8に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。
【請求項15】
水中で前記第2のシード金属層の表面を前記重クロム酸カリウムで塗布する請求項14に記載の柔軟性を有するスタンプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−138257(P2009−138257A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119451(P2008−119451)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(592127149)韓国科学技術院 (129)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ADVANCED INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】373−1,Gusung−dong,Yuseong−ku,Daejeon 305−701 KR
【Fターム(参考)】