ニッケル水素蓄電池およびその製造方法
【課題】 La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の高放電容量をできるだけ維持しつつ、サイクル寿命性能の優れたニッケル水素蓄電池を提供すること。
【解決手段】La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池による。
【解決手段】La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池による。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素蓄電池とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素蓄電池は、高エネルギー密度を有することから、デジタルカメラ、ノート型パソコン等の小型電子機器類の電源として、また、作動電圧がアルカリマンガン電池等の一次電池と同等で互換性があることから、該一次電池の代替として、広く利用されており、その需要は飛躍的に拡大している。
【0003】
この種のニッケル水素蓄電池は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含んでなるニッケル電極、水素吸蔵合金を主材料とする負極、セパレータ、及びアルカリ電解液を備えて構成されるものであるが、これらの電池構成材料のうち、特に、負極の主材料となる水素吸蔵合金は、放電容量やサイクル特性といったニッケル水素蓄電池の性能に大きな影響を及ぼすものであり、従来、種々の水素吸蔵合金が検討されている。
【0004】
近年、AB5系希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の放電容量を上回る放電容量を示しうる合金として、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金が注目されている。
しかし、従来のLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池では、充電と放電(即ち、水素吸蔵合金においては水素の吸蔵と放出)を繰り返し行った場合に、合金の水素吸蔵容量が低下しやすく、前記AB5系希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた電池と比べてサイクル寿命性能が低いという問題がある。
【0005】
また、このようなLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の表面に、所定粒径のニッケル粒子を該合金の表面に多く存在させることによって低温放電特性や高率放電特性を向上させる方法も提案されている(下記特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−87886号公報
【0007】
しかしながら、該特許文献1記載の方法によって低温放電特性や高率放電特性を向上させた場合であっても、依然として、サイクル寿命性能が低いという問題については解決されておらず、サイクル寿命性能の向上は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池についての大きな問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の高放電容量をできるだけ維持しつつ、サイクル寿命性能の優れたニッケル水素蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金粒子に所定のNi濃度の表面層を備えるように構成することにより、該合金粒子を負極材料として用いたニッケル水素蓄電池が、サイクル寿命を顕著に向上させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池を提供する。
該表面層は、好ましくは下記式(1)
0.25≦(Cmax−Cin)/dmax≦0.54 (1)
(ここで、Cmaxは表面層において最大となるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]、dmaxは粒子との界面からCmaxとなる位置までの表面層の厚み[nm]を示す)
を満たすように構成される。
【0011】
また、前記表面層は、好ましくはさらに下記式(2)
84≦Cout (2)
(ここで、Coutは表面層の最外部におけるNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成され、好ましくはさらに下記式(3)
C10<Cin (3)
(ここで、C10は粒子との界面から10nmにおけるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成される。
【0012】
さらに、本発明は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を、9mol/l以上且つ110℃以上、又は10mol/l以上且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる表面処理工程を含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池の製造方法を提供する。
【0013】
尚、本発明における表面層は、例えば、表面層を備えた水素吸蔵合金の粒子を水洗した後に乾燥させ、収束イオンビーム装置(FIB)で切断し、形成された断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(一例として、トプコン社製、EM−002B型)を用いて観察することにより、中心部分(水素吸蔵合金の粒子)とは組成が異なるために明暗に差がある領域として、確認することができる。また、表面層には、酸素原子が含まれているので、該酸素原子の有無を調べることによっても、表面層と粒子とを区別することができる。
また、該表面層のNi濃度は、例えば、該TEMに付属するエネルギー分散型X線分光装置を用いて組成分析することにより得られるものである。具体的には、前記TEMで表示された画像中で測定点を選定し、該測定点に対する組成分析結果(金属元素の存在比率(原子%))を得ることによって行うことができる。該組成分析は、測定機器によっても異なるが、例えば、選定された測定点を中心として直径10nm程度の円形の領域に対して行われるものである。
さらに、本発明におけるCin、C10、Cmax、Coutは、上記のような測定方法によって表面層あるいは粒子について測定されたNi濃度に基づき、それぞれ、該粒子におけるNi濃度[原子%]、該表面層において粒子との界面から10nm離れた測定点におけるNi濃度[原子%]、該表面層において最大となるNi濃度[原子%]、及び該表面層において最も外側におけるNi濃度[原子%]を意味するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るニッケル水素蓄電池によると、表面層において粒子表面との界面から10nm離れた部分のニッケル濃度を該粒子のニッケル濃度と実質的に同じとすることにより、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制される。
【0015】
従って、本発明によれば、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の高い放電容量が維持されつつ、しかも水素の吸蔵と放出を繰り返した際の劣化が抑制され、サイクル寿命性能の優れたニッケル水素蓄電池が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るニッケル水素蓄電池は、負極材料としてLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子を含んでなるものであり、しかも、該水素吸蔵合金粒子が、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われたものである。
【0017】
該表面層は、所定のNi濃度分布を有するものであるが、粒子との界面から10nm離れた部分のニッケル濃度(C10)は該粒子のニッケル濃度(Cin)と実質的に同じである必要がある。このような濃度分布を備えることにより、サイクル寿命性能が顕著に向上する。この現象は、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制されたことに起因するものである。
この作用を確実に発揮させるという観点から、二つの濃度C10およびCinが実質的に同じであるという構成のうち、C10/Cinの値を0.95以上1.05以下の範囲に収まるようにすることが好ましく、さらには、C10/Cinの値を0.98以上とすることがより好ましく、また、C10/Cinの値を1.03以下とすることがより好ましく、1以下とすることがさらに好ましい。
【0018】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.25≦(Cmax−Cin)/dmax≦0.54 (1)
尚、Cmax、Cin、およびdmaxは、上述の通りである。
この式(1)における(Cmax−Cin)/dmaxは、該表面層の一部又は全体のNi濃度勾配を意味するものであるが、上述のようなC10とCinとが実質的に同じであるとの条件を満たしつつ、このNi濃度勾配を上記範囲とすることにより、劣化防止によるサイクル寿命特性の向上及び合金活性の向上に加え、表面層の薄層化による活性の更なる向上を図ることができる。
(Cmax−Cin)/dmaxの値を0.25以上とすることにより、粒子の劣化防止によるサイクル寿命性能向上の効果が得られる。この劣化防止は、表面層のうち電解液との界面に接した領域にニッケルの緻密な層が形成されることに起因するものと考えられる。ニッケルの緻密な層が存在する場合、電解液や酸素が表面層の内部に侵入するのが妨げられるとともに、表面層内部から外部への物質の拡散による移動が妨げられるので、粒子の腐食あるいは溶解が効率的に抑制される。
他方、(Cmax−Cin)/dmaxの値を0.54以下とすることにより、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制されるので、サイクル寿命性能が向上する。
斯かる観点から、(Cmax−Cin)/dmaxは、0.26以上であることが好ましい。
また、表面層におけるNi濃度分布は、Ni濃度分布のグラフ、即ち、横軸が表面層の厚み方向位置、縦軸がNi濃度という座標系に示されるNi濃度分布のグラフにおいて、下に凸の曲線で表されることが好ましい。このような分布を有する場合には、上に凸の曲線で表される場合と比べてサイクル寿命特性の改善効果がより一層顕著となる。
【0019】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(2)を満たすことが好ましい。
84≦Cout (2)
尚、Coutは上記のとおりである。
この式(2)は、表面層の最外部におけるNi濃度の値を規定したものであり、該式(2)を満たすようなNi濃度とすることにより、該表面層の外側領域(即ち、水素吸蔵合金粒子の表面部分)における水素の触媒能が高まり、水素の吸蔵と放出の活性が高まる。また、該式(2)を満たすようなNi濃度とすることにより、表面層の外側の領域に形成されるニッケルの緻密な層による劣化防止の効果が顕著となり、優れたサイクル寿命性能が得られる。
斯かる観点から、該Coutの値は、87.3[原子%]以上であることが好ましく、88.9[原子%]以上であることがより好ましい。
【0020】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(3)を満たすことが好ましい。
C10<Cin (3)
尚、C10およびCinは上記のとおりである。
表面層におけるNi濃度分布が、上記のような条件を満たすと同時に、このようなC10<Cinの条件を満たすことにより、劣化防止の効果が発揮されやすくなる。これは、この条件を満たすことにより、Ni濃度分布が、確実に、前出のグラフにおいて下に凸の曲線で表されるようになるからと考えられる。
【0021】
上記のようなNi濃度分布を満たす表面層の厚みDは、40[nm]以上、100[nm]以下であることが好ましく、また、50[nm]以上、80[nm]以下であることがより好ましい。
【0022】
尚、表面層におけるNi濃度分布については、上記のように、TEMに付属するエネルギー分散型X線分光装置を用いて測定することができるが、より具体的には、表面層の厚み方向において、該厚みを5乃至10等分するような間隔(例えば、厚みDが100[nm]であれば、約10[nm]間隔)でNi濃度(全金属元素の合計に対する値)を測定し、得られた測定結果を線形補間又は近似式を求めることにより、得ることができる。
【0023】
一方、このような表面層に覆われた粒子自体については、特に限定されるものではなく、従来公知のLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を採用することができるが、中でも、組成が、一般式R1aMgbR2cNidR3e(但し、R1はYを含む希土類元素からなる群より選択される1種又は2種以上の元素、R2はCa、SrおよびBaからなる群より選択される1種又は2種以上の元素、R3はCo、Mn、Al、Cr、Fe、Cu、Zn、Si,Sn、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、a、b、c、dおよびeは、10≦a≦30、1≦(b+c)≦10、65≦(d+e)≦90、0≦e≦4、a+b+c+d+e=100を満たす数)で表されるものを好適に使用することができる。
【0024】
また、該水素吸蔵合金は、結晶相として、菱面体晶La5MgNi24型結晶構造(以下、単にLa5MgNi24相ともいう。以下同様)からなる結晶相、六方晶Pr5Co19型結晶構造からなる結晶相、菱面体晶Ce5Co19型結晶構造からなる結晶相、六方晶Ce2Ni7型の結晶構造からなる結晶相、菱面体晶Gd2Co7型の結晶構造からなる結晶相、六方晶CaCu5型結晶構造からなる結晶相、立方晶AuBe5型結晶構造からなる結晶相、菱面体晶PuNi3型結晶構造からなる結晶相などを挙げることができる。
【0025】
中でも、La5MgNi24相、Pr5Co19相、Ce5Co19相、及びCe2Ni7相からなる群より選択される2種以上を積層してなる水素吸蔵合金が好適に使用される。これらの結晶相が積層されてなる水素吸蔵合金は、各結晶相間の膨張収縮率の差が小さいために歪みが生じ難く、水素の吸蔵放出を繰り返した際の劣化が起こりにくいという優れた特性を有する。
【0026】
ここで、La5MgNi24型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが4ユニット分、挿入された結晶構造であり、Pr5Co19型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが3ユニット分、挿入された結晶構造であり、Ce5Co19型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが3ユニット分、挿入された結晶構造であり、Ce2Ni7型の結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが2ユニット分、挿入された結晶構造であり、Gd2Co7型の結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが2ユニット分、挿入された結晶構造であり、AuBe5型結晶構造とは、A2B4ユニットのみで構成された結晶構造である。
【0027】
尚、A2B4ユニットとは、六方晶MgZn2型結晶構造(C14構造)又は六方晶MgCu2型結晶構造(C15構造)を持つ構造ユニットであり、AB5ユニットとは、六方晶CaCu5型結晶構造を持つ構造ユニットである。
また、Aは、希土類元素とMgからなる群より選択される何れかの元素を表し、Bは、遷移金属元素とAlからなる群より選択される何れかの元素を表すものである。
【0028】
尚、前記各結晶構造を有する結晶相は、例えば、粉砕した合金粉末についてX線回折測定を行い、得られたX線回折パターンをリートベルト法により解析することによって結晶構造を特定することができる。
【0029】
本発明で用いる水素吸蔵合金は、以下のような製造方法によって得ることができる。
即ち、一実施形態としての水素吸蔵合金の製造方法は、所定の組成比となるように配合された合金原料を溶融する溶融工程と、溶融した合金原料を1000K/秒以上の冷却速度で急冷凝固する冷却工程と、冷却された合金を焼鈍する焼鈍工程と、該合金を粉砕する粉砕工程と、粉末状となった水素吸蔵合金粒子の表面に上述の如き表面層を形成するための表面処理工程とを備えたものである。なお、冷却工程は、急冷となる条件で行ってもよいし、徐冷となる条件で行ってもよい。
【0030】
より具体的に説明すると、まず、目的とする水素吸蔵合金の化学組成に基づいて、原料インゴッド(合金原料)を所定量秤量する。
前記溶融工程は、秤量された前記合金原料をルツボ等に入れ、不活性ガス雰囲気中又は真空中で高周波溶融炉を用い、例えば、1200〜1600℃に加熱して合金原料を溶融させるものである。
【0031】
前記冷却工程は、溶融した合金原料を冷却して固化させるものである。冷却速度は、1000K/秒以上(急冷ともいう)が好ましい。1000K/秒以上で急冷することにより、合金組成が微細化し、均質化するという効果がある。
【0032】
該冷却方法においては、具体的には、冷却速度が100000K/秒以上であるメルトスピニング法、冷却速度が10000K/秒程度であるガスアトマイズ法などを好適に用いることができる。
【0033】
前記焼鈍工程は、不活性ガス雰囲気下の加圧状態において、例えば、電気炉等を用いて860〜1000℃に加熱するものである。加圧条件としては、0.2〜1.0MPa(ゲージ圧)が好ましい。また、該焼鈍工程における処理時間は、3〜50時間とすることが好ましい。斯かる焼鈍工程により、結晶格子の歪みが取り除かれる。
【0034】
前記粉砕工程は、焼鈍の前後のどちらで行ってもよいが、粉砕により表面積が大きくなるため、合金の表面酸化を防止する観点から、焼鈍工程の後に粉砕工程を実施するのが望ましい。粉砕は、合金表面の酸化防止のために不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
粉砕手段としては、例えば、機械粉砕、水素化粉砕などが用いられ、粉砕後の水素吸蔵合金粒子の粒径が、概ね20〜70[μm]となるように行うことが好ましい。
【0035】
前記表面処理工程としては、水素吸蔵合金粒子に上述のような表面層を形成しうるものであれば特に限定されるものではないが、比較的容易に上記構成の表面層を形成しうるという観点から、アルカリ性水溶液に接触させる方法を、好適な例として挙げることができる。
【0036】
アルカリ性水溶液に接触させる方法においては、具体的には、粉末状となった水素吸蔵合金粒子を、9mol/l以上で且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる工程が好ましく、特に、9mol/l以上で且つ110℃以上の強アルカリ性水溶液に接触させる工程、又は10mol/l以上で且つ80℃以上の強アルカリ性水溶液に接触させる工程がより好ましい。
このようなアルカリ性水溶液に接触させることにより、前記水素吸蔵合金粒子の表面には、上述のような所定のNi濃度分布を有する表面層が形成されやすいという効果がある。
特に、上記のような温度および濃度条件とすることによって、式(1)および式(2)を満たす表面層を形成することが容易となる。
【0037】
アルカリ性水溶液と水素吸蔵合金粒子との接触方法については、特に限定されるものではないが、例えば、水素吸蔵合金粒子をアルカリ性水溶液に浸漬する方法、水素吸蔵合金粒子の充填層にアルカリ性水溶液を透過させる方法などが挙げられる。
【0038】
尚、前記アルカリ性水溶液の温度の上限については、特に限定されるものではなく、該水溶液の沸点まで使用可能ある。また、該アルカリ性水溶液の濃度の上限についても特に限定されるものではなく、溶質の飽和濃度まで使用可能である。前記アルカリ性水溶液としては、KOHや、NaOH等を挙げることができる。
【0039】
また、水素吸蔵合金粉末とアルカリ性水溶液との接触時間は、水素吸蔵合金の種類や粒径により、適宜決定しうるものであるが、通常、30〜180分の範囲内である。
【0040】
このようなアルカリ性水溶液を用いた表面処理工程を実施すると、次のような事情により、水素吸蔵合金の粒子の表面部分の組成が変化し、これによって該粒子とは組成の異なる表面層が形成される。即ち、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を構成する希土類元素はこのアルカリ性水溶液によって溶解して表面に析出した後、剥がれ落ちるため、粒子表面(即ち、表面層の外側領域)には該アルカリ性水溶液には溶解されないNi元素のみが残留されやすく、Ni濃度が高い状態となる。また、合金粒子の内部に浸透した該アルカリ性水溶液も、同じく合金を構成する希土類元素を溶解させるが、粒子の内側になるほど、これが粒子外へ拡散されにくくなり、水酸化物(例えば、La(OH)3)となってNi元素とともにその付近に残存することとなる。その結果、内側(即ち、表面層の内側領域)ではNi濃度が粒子と同程度であるとともに、粒子の径方向外側へと行くにつれてNi濃度が徐々に高くなり(条件によっては、10nm付近で一旦低下した後、外側へ向かって徐々に高くなり)、粒子の外側(即ち、表面層の外側領域)では、上記のようにNi濃度が高い状態となった表面層が形成されるものと考えられる。
【0041】
本発明のニッケル水素蓄電池を構成する負極は、上述のようにして得た水素吸蔵合金を水素吸蔵媒体として備えたものである。
【0042】
一方、該ニッケル水素蓄電池の正極としては、特に限定されるものではないが、一般には、水酸化ニッケルを主成分とし且つ水酸化亜鉛や水酸化コバルトが混合されてなる水酸化ニッケル複合酸化物を正極活物質として含む正極を好適に使用することができ、共沈法によって均一分散した該水酸化ニッケル複合酸化物を含む正極をより好適に使用することができる。
水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物としては、導電改質剤としての水酸化コバルト、酸化コバルト等を用いることができ、また、前記水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含有気体、又は、K2S2O8、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものを用いることができる。
また、添加剤としては、酸素過電圧を向上させる物質として、Y、Yb等の希土類元素の化合物や、Ca化合物を用いることができる。Y、Yb等の希土類元素は、その一部が溶解して、負極表面に配置されるため、負極活物質の腐食を抑制する効果も期待できる。
【0043】
尚、前記正極及び負極には、上述したような主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤等が、他の構成成分として含有されていてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(ニッケル、金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種又は2種以上の混合物として含ませることができる。
これらを混合する方法としては、できる限り均一な状態とし得るものが好ましく、例えば、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといった粉体混合機を、乾式、あるいは湿式で用いる方法を採用しうる。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。該結着剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜3質量%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜0.3質量%が好ましい。
【0044】
正極及び負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を、水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合した後、得られた混合液を集電体の上に塗布し、乾燥することによって好適に作製される。前記塗布方法としては、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、パーコーティング等の手段を用い、任意の厚み及び任意の形状に塗布する方法が好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記集電体としては、構成された電池において前記活物質との電子の授受に悪影響を及ぼさない電子伝導体を特に制限されることなく使用し得る。該集電体としては、例えば、耐還元性及び耐酸化性の観点から、材料としてはニッケルやニッケルメッキした鋼板を好適に用いることができ、形状としては、発泡体、繊維群の成形体、凹凸加工を施した3次元基材、或いは、パンチング板等の2次元基材を好適に用いることができる。また、該集電体の厚みについても特に限定はなく、5〜700μmのものが好適に用いられる。
これらの集電体のうち、正極用としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れたニッケルを材料とし、集電性に優れた構造である多孔体構造の発泡体としたものを用いることが好ましい。また、負極用としては、安価で、且つ導電性に優れる鉄箔に、ニッケルメッキを施した、パンチング板を使用することが好ましい。
パンチング径は2.0mm以下、開口率は40%以上であることが好ましく、これにより、少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性を高めることができる。
【0046】
ニッケル水素蓄電池のセパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独で、あるいは2以上併用して構成することが好ましい。該セパレータを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
該セパレータの目付は、40g/m2から100g/m2が好ましい。40g/m2未満であると、短絡や自己放電性能が低下する虞があり、100g/m2を超えると単位体積当たりに占めるセパレータの割合が増加するため、電池容量が下がる傾向にある。該セパレータの通気度は、1cm/secから50cm/secが好ましい。1cm/sec未満であると、電池内圧が上昇する虞があり、50cm/secを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。該セパレータの平均繊維径は、1μmから20μmが好ましい。1μm未満であるとセパレータの強度が低下し、電池組み立て工程での不良率が増加する虞があり、20μmを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。
また、該該セパレータは、親水化処理を施すことが好ましい。例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維の表面にスルフォン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものを用いても良い。特に、スルフォン化処理を施されたセパレータは、シャトル現象を引き起こすNO3-、NO2-、NH3-等の不純物や負極からの溶出元素を吸着する能力が高いため、自己放電抑制効果が高く、好ましい。
【0047】
ニッケル水素蓄電池を構成するアルカリ電解液としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンの少なくとも何れか一方を含み、イオン濃度の合計が9.0mol/リットル以下であるものを好適に使用することができ、イオン濃度の合計が5.0〜7.0mol/リットルであるものをより一層好適に使用することができる。
【0048】
また、該電解液には、合金への防食性向上、正極での過電圧向上、負極の耐食性の向上、自己放電向上のため、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、亜鉛などの酸化物、水酸化物等を1種で又は2種以上混合して用いることができる。
【0049】
本発明の一実施形態としての密閉型ニッケル水素蓄電池は、前記電解液を、前記正極、セパレータ及び負極を積層する前又は積層した後に注液し、外装材で封止することにより、好適に作製される。また、正極と負極とが前記セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる密閉型ニッケル水素蓄電池においては、前記電解液は、巻回の前又は後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸法、加圧含浸法、遠心含浸法も使用可能である。また、該密閉型ニッケル水素蓄電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等が一例として挙げられる。
【0050】
該密閉型ニッケル水素蓄電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを備えた電池、例えば、コイン電池、ボタン電池、角型電池、扁平型電池、あるいは、ロール状の正極、負極及びセパレータを有する円筒型電池等を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
(正極の作製)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく攪拌しながら更に水酸化ナトリウムを滴下し、反応系のpHを10〜13に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=93:5:2の質量比となるように合成した。
該高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ナトリウムでpH10〜13に制御したアルカリ水溶液に投入し、溶液を攪拌しながら所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを10〜13の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は水酸化物の芯層母材粒子(以下、単に芯層という)に対して、4質量%であった。
さらに、前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子を、30質量%(10mol/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液と混合してから空気中で110℃に加熱処理したのちに、水洗、ろ過および乾燥の処理を行った。得られた活物質粒子に、カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を0.2質量%とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を0.3質量%、Yb2O3を2質量%添加して前記活物質粒子:CMC溶質:PTFE:Yb2O3=97.5:0.2:0.3:2.0質量%(固形分比)のペーストとし、該ペーストを350g/mのニッケル多孔体に充填した。その後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、2000mAhのニッケル正極板とした。
【0053】
(負極の作製)
化学組成がLa13.9Pr4.3Mg3.5Ni69.9Co5.1Al3.3となるように原料インゴット(合金原料)を所定量秤量してルツボに入れ、減圧アルゴンガス雰囲気下で高周波溶融炉を用いて1200℃〜1600℃に加熱し、材料を溶融した。溶融後、メルトスピニング法を適用して1000K/秒以上の冷却速度で急冷し、合金を固化させた。
次に、得られた合金インゴッドを0.2MPa(ゲージ圧、以下同じ)に加圧されたアルゴンガス雰囲気下、電気炉にて930℃で5時間加熱した。
得られた水素吸蔵合金を平均粒径D50=50μmに粉砕し、得られた粉末を、X線回折装置(BrukerAXS社製、品番M06XCE)を用い、40kV、100mA(Cu管球)の条件下でX線回折試験を行った。さらに、リートベルト法(解析ソフト:RIETAN2000)による解析を行い、結晶相の生成割合を算出したところ、
Gd2Co7相が0質量%、PuNi3相が0質量%、CaCu5相が2質量%、Ce2Ni7相が32質量%、Pr5Co19相が42質量%、Ce5Co19相が24質量%含まれてなることが判明した。
【0054】
次いで、前記合金粉末を、110℃、10mol/リットルのKOH水溶液に2時間浸漬・攪拌し、表面処理を行った。
得られた水素吸蔵合金粒子を水洗した後に乾燥させ、収束イオンビーム装置(FIB)で切断し、形成された断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(トプコン社製、EM−002B型)で観察したところ、図1に示すように、粒子表面に厚み約70μmの表面層が形成されていることが認められた。
さらに、該TEMに付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて組成分析した結果、該表面層は、表1及び図2に示すようなNi濃度分布を有していることがわかった。
また、得られたNi濃度分布に基づき、上記関係式に換算した計算結果を表2に示す。
【0055】
(負極の作製)
このようにして得られた合金粉末、スチレンブタジエン共重合体(SBR)水溶液、及びメチルセルローズ(MC)水溶液を、99.0:0.8:0.2の固形分質量比で混合してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板に塗布し、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスして負極とした。該負極に含まれる活物質量(合金量)は、8.5gであった。
【0056】
(評価電池の作製)
前記負極と、スルフォン化処理を施した厚み100μmのポリプロピレンの不織布状セパレータと、前記正極とを組み合わせてロール状に巻回し、表1に示す組成のアルカリ電解液を1.97cc注液し、開弁圧3.0MPaの弁を具備するAA形の密閉型ニッケル水素蓄電池(容量2000mAh)を作製した。
(電池の化成処理)
【0057】
この電池を0.1ItA(200mA)にて12時間充電した後、0.2ItAで1Vまで放電する操作を20℃で2回繰り返したのち、40℃で48時間保存し、化成(活性化)した。
【0058】
(サイクル寿命特性の測定)
20℃の恒温槽中で、1ItAおよび−dV=5mVの条件での充電と、1ItAで終止電圧が1.0V(対Hg/HgO)となる放電とを繰り返し、放電容量が、最大放電容量に対して60%となる回数を、サイクル寿命として求めた。
【0059】
実施例2〜7、比較例1〜3
表1に示した表面処理条件としたことを除き、他は実施例1と同様にして水素吸蔵合金を作成し、表面層のNi濃度分布を測定するとともに、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル寿命特性を測定した。ただし、比較例1については、表面層のNi濃度分布の測定を電池の化成処理後に行った。結果を表2及び図3〜図11に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示した結果によると、C10の値がCinと大きく異なる比較例に比べて、これらの値が実質的に同じとなっている実施例では、サイクル寿命が改善されていることが認められる。また、式(1)、(2)、(3)の条件を満たすように構成された場合には、より一層顕著に、サイクル寿命の改善が図られていることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1で得られた水素吸蔵合金粒子をTEMによりその表面部分を撮影した写真。
【図2】実施例1で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図3】実施例2で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図4】実施例3で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図5】実施例4で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図6】実施例5で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図7】実施例6で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図8】実施例7で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図9】比較例1で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図10】比較例2で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図11】比較例3で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素蓄電池とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素蓄電池は、高エネルギー密度を有することから、デジタルカメラ、ノート型パソコン等の小型電子機器類の電源として、また、作動電圧がアルカリマンガン電池等の一次電池と同等で互換性があることから、該一次電池の代替として、広く利用されており、その需要は飛躍的に拡大している。
【0003】
この種のニッケル水素蓄電池は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質を含んでなるニッケル電極、水素吸蔵合金を主材料とする負極、セパレータ、及びアルカリ電解液を備えて構成されるものであるが、これらの電池構成材料のうち、特に、負極の主材料となる水素吸蔵合金は、放電容量やサイクル特性といったニッケル水素蓄電池の性能に大きな影響を及ぼすものであり、従来、種々の水素吸蔵合金が検討されている。
【0004】
近年、AB5系希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の放電容量を上回る放電容量を示しうる合金として、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金が注目されている。
しかし、従来のLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池では、充電と放電(即ち、水素吸蔵合金においては水素の吸蔵と放出)を繰り返し行った場合に、合金の水素吸蔵容量が低下しやすく、前記AB5系希土類−Ni系の水素吸蔵合金を用いた電池と比べてサイクル寿命性能が低いという問題がある。
【0005】
また、このようなLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の表面に、所定粒径のニッケル粒子を該合金の表面に多く存在させることによって低温放電特性や高率放電特性を向上させる方法も提案されている(下記特許文献1)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−87886号公報
【0007】
しかしながら、該特許文献1記載の方法によって低温放電特性や高率放電特性を向上させた場合であっても、依然として、サイクル寿命性能が低いという問題については解決されておらず、サイクル寿命性能の向上は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池についての大きな問題となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑み、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の高放電容量をできるだけ維持しつつ、サイクル寿命性能の優れたニッケル水素蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金粒子に所定のNi濃度の表面層を備えるように構成することにより、該合金粒子を負極材料として用いたニッケル水素蓄電池が、サイクル寿命を顕著に向上させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池を提供する。
該表面層は、好ましくは下記式(1)
0.25≦(Cmax−Cin)/dmax≦0.54 (1)
(ここで、Cmaxは表面層において最大となるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]、dmaxは粒子との界面からCmaxとなる位置までの表面層の厚み[nm]を示す)
を満たすように構成される。
【0011】
また、前記表面層は、好ましくはさらに下記式(2)
84≦Cout (2)
(ここで、Coutは表面層の最外部におけるNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成され、好ましくはさらに下記式(3)
C10<Cin (3)
(ここで、C10は粒子との界面から10nmにおけるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成される。
【0012】
さらに、本発明は、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を、9mol/l以上且つ110℃以上、又は10mol/l以上且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる表面処理工程を含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池の製造方法を提供する。
【0013】
尚、本発明における表面層は、例えば、表面層を備えた水素吸蔵合金の粒子を水洗した後に乾燥させ、収束イオンビーム装置(FIB)で切断し、形成された断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(一例として、トプコン社製、EM−002B型)を用いて観察することにより、中心部分(水素吸蔵合金の粒子)とは組成が異なるために明暗に差がある領域として、確認することができる。また、表面層には、酸素原子が含まれているので、該酸素原子の有無を調べることによっても、表面層と粒子とを区別することができる。
また、該表面層のNi濃度は、例えば、該TEMに付属するエネルギー分散型X線分光装置を用いて組成分析することにより得られるものである。具体的には、前記TEMで表示された画像中で測定点を選定し、該測定点に対する組成分析結果(金属元素の存在比率(原子%))を得ることによって行うことができる。該組成分析は、測定機器によっても異なるが、例えば、選定された測定点を中心として直径10nm程度の円形の領域に対して行われるものである。
さらに、本発明におけるCin、C10、Cmax、Coutは、上記のような測定方法によって表面層あるいは粒子について測定されたNi濃度に基づき、それぞれ、該粒子におけるNi濃度[原子%]、該表面層において粒子との界面から10nm離れた測定点におけるNi濃度[原子%]、該表面層において最大となるNi濃度[原子%]、及び該表面層において最も外側におけるNi濃度[原子%]を意味するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るニッケル水素蓄電池によると、表面層において粒子表面との界面から10nm離れた部分のニッケル濃度を該粒子のニッケル濃度と実質的に同じとすることにより、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制される。
【0015】
従って、本発明によれば、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を用いた場合の高い放電容量が維持されつつ、しかも水素の吸蔵と放出を繰り返した際の劣化が抑制され、サイクル寿命性能の優れたニッケル水素蓄電池が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るニッケル水素蓄電池は、負極材料としてLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子を含んでなるものであり、しかも、該水素吸蔵合金粒子が、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われたものである。
【0017】
該表面層は、所定のNi濃度分布を有するものであるが、粒子との界面から10nm離れた部分のニッケル濃度(C10)は該粒子のニッケル濃度(Cin)と実質的に同じである必要がある。このような濃度分布を備えることにより、サイクル寿命性能が顕著に向上する。この現象は、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制されたことに起因するものである。
この作用を確実に発揮させるという観点から、二つの濃度C10およびCinが実質的に同じであるという構成のうち、C10/Cinの値を0.95以上1.05以下の範囲に収まるようにすることが好ましく、さらには、C10/Cinの値を0.98以上とすることがより好ましく、また、C10/Cinの値を1.03以下とすることがより好ましく、1以下とすることがさらに好ましい。
【0018】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(1)を満たすことが好ましい。
0.25≦(Cmax−Cin)/dmax≦0.54 (1)
尚、Cmax、Cin、およびdmaxは、上述の通りである。
この式(1)における(Cmax−Cin)/dmaxは、該表面層の一部又は全体のNi濃度勾配を意味するものであるが、上述のようなC10とCinとが実質的に同じであるとの条件を満たしつつ、このNi濃度勾配を上記範囲とすることにより、劣化防止によるサイクル寿命特性の向上及び合金活性の向上に加え、表面層の薄層化による活性の更なる向上を図ることができる。
(Cmax−Cin)/dmaxの値を0.25以上とすることにより、粒子の劣化防止によるサイクル寿命性能向上の効果が得られる。この劣化防止は、表面層のうち電解液との界面に接した領域にニッケルの緻密な層が形成されることに起因するものと考えられる。ニッケルの緻密な層が存在する場合、電解液や酸素が表面層の内部に侵入するのが妨げられるとともに、表面層内部から外部への物質の拡散による移動が妨げられるので、粒子の腐食あるいは溶解が効率的に抑制される。
他方、(Cmax−Cin)/dmaxの値を0.54以下とすることにより、水素の吸蔵・放出の際に生じる粒子と表面層との間の歪みが抑制されるので、サイクル寿命性能が向上する。
斯かる観点から、(Cmax−Cin)/dmaxは、0.26以上であることが好ましい。
また、表面層におけるNi濃度分布は、Ni濃度分布のグラフ、即ち、横軸が表面層の厚み方向位置、縦軸がNi濃度という座標系に示されるNi濃度分布のグラフにおいて、下に凸の曲線で表されることが好ましい。このような分布を有する場合には、上に凸の曲線で表される場合と比べてサイクル寿命特性の改善効果がより一層顕著となる。
【0019】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(2)を満たすことが好ましい。
84≦Cout (2)
尚、Coutは上記のとおりである。
この式(2)は、表面層の最外部におけるNi濃度の値を規定したものであり、該式(2)を満たすようなNi濃度とすることにより、該表面層の外側領域(即ち、水素吸蔵合金粒子の表面部分)における水素の触媒能が高まり、水素の吸蔵と放出の活性が高まる。また、該式(2)を満たすようなNi濃度とすることにより、表面層の外側の領域に形成されるニッケルの緻密な層による劣化防止の効果が顕著となり、優れたサイクル寿命性能が得られる。
斯かる観点から、該Coutの値は、87.3[原子%]以上であることが好ましく、88.9[原子%]以上であることがより好ましい。
【0020】
また、該表面層は、Ni濃度分布に関する条件として、下記式(3)を満たすことが好ましい。
C10<Cin (3)
尚、C10およびCinは上記のとおりである。
表面層におけるNi濃度分布が、上記のような条件を満たすと同時に、このようなC10<Cinの条件を満たすことにより、劣化防止の効果が発揮されやすくなる。これは、この条件を満たすことにより、Ni濃度分布が、確実に、前出のグラフにおいて下に凸の曲線で表されるようになるからと考えられる。
【0021】
上記のようなNi濃度分布を満たす表面層の厚みDは、40[nm]以上、100[nm]以下であることが好ましく、また、50[nm]以上、80[nm]以下であることがより好ましい。
【0022】
尚、表面層におけるNi濃度分布については、上記のように、TEMに付属するエネルギー分散型X線分光装置を用いて測定することができるが、より具体的には、表面層の厚み方向において、該厚みを5乃至10等分するような間隔(例えば、厚みDが100[nm]であれば、約10[nm]間隔)でNi濃度(全金属元素の合計に対する値)を測定し、得られた測定結果を線形補間又は近似式を求めることにより、得ることができる。
【0023】
一方、このような表面層に覆われた粒子自体については、特に限定されるものではなく、従来公知のLa−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を採用することができるが、中でも、組成が、一般式R1aMgbR2cNidR3e(但し、R1はYを含む希土類元素からなる群より選択される1種又は2種以上の元素、R2はCa、SrおよびBaからなる群より選択される1種又は2種以上の元素、R3はCo、Mn、Al、Cr、Fe、Cu、Zn、Si,Sn、V、Nb、Ta、Ti、ZrおよびHfからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、a、b、c、dおよびeは、10≦a≦30、1≦(b+c)≦10、65≦(d+e)≦90、0≦e≦4、a+b+c+d+e=100を満たす数)で表されるものを好適に使用することができる。
【0024】
また、該水素吸蔵合金は、結晶相として、菱面体晶La5MgNi24型結晶構造(以下、単にLa5MgNi24相ともいう。以下同様)からなる結晶相、六方晶Pr5Co19型結晶構造からなる結晶相、菱面体晶Ce5Co19型結晶構造からなる結晶相、六方晶Ce2Ni7型の結晶構造からなる結晶相、菱面体晶Gd2Co7型の結晶構造からなる結晶相、六方晶CaCu5型結晶構造からなる結晶相、立方晶AuBe5型結晶構造からなる結晶相、菱面体晶PuNi3型結晶構造からなる結晶相などを挙げることができる。
【0025】
中でも、La5MgNi24相、Pr5Co19相、Ce5Co19相、及びCe2Ni7相からなる群より選択される2種以上を積層してなる水素吸蔵合金が好適に使用される。これらの結晶相が積層されてなる水素吸蔵合金は、各結晶相間の膨張収縮率の差が小さいために歪みが生じ難く、水素の吸蔵放出を繰り返した際の劣化が起こりにくいという優れた特性を有する。
【0026】
ここで、La5MgNi24型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが4ユニット分、挿入された結晶構造であり、Pr5Co19型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが3ユニット分、挿入された結晶構造であり、Ce5Co19型結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが3ユニット分、挿入された結晶構造であり、Ce2Ni7型の結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが2ユニット分、挿入された結晶構造であり、Gd2Co7型の結晶構造とは、A2B4ユニット間に、AB5ユニットが2ユニット分、挿入された結晶構造であり、AuBe5型結晶構造とは、A2B4ユニットのみで構成された結晶構造である。
【0027】
尚、A2B4ユニットとは、六方晶MgZn2型結晶構造(C14構造)又は六方晶MgCu2型結晶構造(C15構造)を持つ構造ユニットであり、AB5ユニットとは、六方晶CaCu5型結晶構造を持つ構造ユニットである。
また、Aは、希土類元素とMgからなる群より選択される何れかの元素を表し、Bは、遷移金属元素とAlからなる群より選択される何れかの元素を表すものである。
【0028】
尚、前記各結晶構造を有する結晶相は、例えば、粉砕した合金粉末についてX線回折測定を行い、得られたX線回折パターンをリートベルト法により解析することによって結晶構造を特定することができる。
【0029】
本発明で用いる水素吸蔵合金は、以下のような製造方法によって得ることができる。
即ち、一実施形態としての水素吸蔵合金の製造方法は、所定の組成比となるように配合された合金原料を溶融する溶融工程と、溶融した合金原料を1000K/秒以上の冷却速度で急冷凝固する冷却工程と、冷却された合金を焼鈍する焼鈍工程と、該合金を粉砕する粉砕工程と、粉末状となった水素吸蔵合金粒子の表面に上述の如き表面層を形成するための表面処理工程とを備えたものである。なお、冷却工程は、急冷となる条件で行ってもよいし、徐冷となる条件で行ってもよい。
【0030】
より具体的に説明すると、まず、目的とする水素吸蔵合金の化学組成に基づいて、原料インゴッド(合金原料)を所定量秤量する。
前記溶融工程は、秤量された前記合金原料をルツボ等に入れ、不活性ガス雰囲気中又は真空中で高周波溶融炉を用い、例えば、1200〜1600℃に加熱して合金原料を溶融させるものである。
【0031】
前記冷却工程は、溶融した合金原料を冷却して固化させるものである。冷却速度は、1000K/秒以上(急冷ともいう)が好ましい。1000K/秒以上で急冷することにより、合金組成が微細化し、均質化するという効果がある。
【0032】
該冷却方法においては、具体的には、冷却速度が100000K/秒以上であるメルトスピニング法、冷却速度が10000K/秒程度であるガスアトマイズ法などを好適に用いることができる。
【0033】
前記焼鈍工程は、不活性ガス雰囲気下の加圧状態において、例えば、電気炉等を用いて860〜1000℃に加熱するものである。加圧条件としては、0.2〜1.0MPa(ゲージ圧)が好ましい。また、該焼鈍工程における処理時間は、3〜50時間とすることが好ましい。斯かる焼鈍工程により、結晶格子の歪みが取り除かれる。
【0034】
前記粉砕工程は、焼鈍の前後のどちらで行ってもよいが、粉砕により表面積が大きくなるため、合金の表面酸化を防止する観点から、焼鈍工程の後に粉砕工程を実施するのが望ましい。粉砕は、合金表面の酸化防止のために不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
粉砕手段としては、例えば、機械粉砕、水素化粉砕などが用いられ、粉砕後の水素吸蔵合金粒子の粒径が、概ね20〜70[μm]となるように行うことが好ましい。
【0035】
前記表面処理工程としては、水素吸蔵合金粒子に上述のような表面層を形成しうるものであれば特に限定されるものではないが、比較的容易に上記構成の表面層を形成しうるという観点から、アルカリ性水溶液に接触させる方法を、好適な例として挙げることができる。
【0036】
アルカリ性水溶液に接触させる方法においては、具体的には、粉末状となった水素吸蔵合金粒子を、9mol/l以上で且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる工程が好ましく、特に、9mol/l以上で且つ110℃以上の強アルカリ性水溶液に接触させる工程、又は10mol/l以上で且つ80℃以上の強アルカリ性水溶液に接触させる工程がより好ましい。
このようなアルカリ性水溶液に接触させることにより、前記水素吸蔵合金粒子の表面には、上述のような所定のNi濃度分布を有する表面層が形成されやすいという効果がある。
特に、上記のような温度および濃度条件とすることによって、式(1)および式(2)を満たす表面層を形成することが容易となる。
【0037】
アルカリ性水溶液と水素吸蔵合金粒子との接触方法については、特に限定されるものではないが、例えば、水素吸蔵合金粒子をアルカリ性水溶液に浸漬する方法、水素吸蔵合金粒子の充填層にアルカリ性水溶液を透過させる方法などが挙げられる。
【0038】
尚、前記アルカリ性水溶液の温度の上限については、特に限定されるものではなく、該水溶液の沸点まで使用可能ある。また、該アルカリ性水溶液の濃度の上限についても特に限定されるものではなく、溶質の飽和濃度まで使用可能である。前記アルカリ性水溶液としては、KOHや、NaOH等を挙げることができる。
【0039】
また、水素吸蔵合金粉末とアルカリ性水溶液との接触時間は、水素吸蔵合金の種類や粒径により、適宜決定しうるものであるが、通常、30〜180分の範囲内である。
【0040】
このようなアルカリ性水溶液を用いた表面処理工程を実施すると、次のような事情により、水素吸蔵合金の粒子の表面部分の組成が変化し、これによって該粒子とは組成の異なる表面層が形成される。即ち、La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を構成する希土類元素はこのアルカリ性水溶液によって溶解して表面に析出した後、剥がれ落ちるため、粒子表面(即ち、表面層の外側領域)には該アルカリ性水溶液には溶解されないNi元素のみが残留されやすく、Ni濃度が高い状態となる。また、合金粒子の内部に浸透した該アルカリ性水溶液も、同じく合金を構成する希土類元素を溶解させるが、粒子の内側になるほど、これが粒子外へ拡散されにくくなり、水酸化物(例えば、La(OH)3)となってNi元素とともにその付近に残存することとなる。その結果、内側(即ち、表面層の内側領域)ではNi濃度が粒子と同程度であるとともに、粒子の径方向外側へと行くにつれてNi濃度が徐々に高くなり(条件によっては、10nm付近で一旦低下した後、外側へ向かって徐々に高くなり)、粒子の外側(即ち、表面層の外側領域)では、上記のようにNi濃度が高い状態となった表面層が形成されるものと考えられる。
【0041】
本発明のニッケル水素蓄電池を構成する負極は、上述のようにして得た水素吸蔵合金を水素吸蔵媒体として備えたものである。
【0042】
一方、該ニッケル水素蓄電池の正極としては、特に限定されるものではないが、一般には、水酸化ニッケルを主成分とし且つ水酸化亜鉛や水酸化コバルトが混合されてなる水酸化ニッケル複合酸化物を正極活物質として含む正極を好適に使用することができ、共沈法によって均一分散した該水酸化ニッケル複合酸化物を含む正極をより好適に使用することができる。
水酸化ニッケル複合酸化物以外の添加物としては、導電改質剤としての水酸化コバルト、酸化コバルト等を用いることができ、また、前記水酸化ニッケル複合酸化物に水酸化コバルトをコートしたものや、これらの水酸化ニッケル複合酸化物の一部を酸素又は酸素含有気体、又は、K2S2O8、次亜塩素酸などの薬剤を用いて酸化したものを用いることができる。
また、添加剤としては、酸素過電圧を向上させる物質として、Y、Yb等の希土類元素の化合物や、Ca化合物を用いることができる。Y、Yb等の希土類元素は、その一部が溶解して、負極表面に配置されるため、負極活物質の腐食を抑制する効果も期待できる。
【0043】
尚、前記正極及び負極には、上述したような主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤等が、他の構成成分として含有されていてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカー、炭素繊維、気相成長炭素、金属(ニッケル、金等)粉、金属繊維等の導電性材料を1種又は2種以上の混合物として含ませることができる。
これらを混合する方法としては、できる限り均一な状態とし得るものが好ましく、例えば、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといった粉体混合機を、乾式、あるいは湿式で用いる方法を採用しうる。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを、1種又は2種以上の混合物として用いることができる。該結着剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜3質量%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、キサンタンガム等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることができる。増粘剤の添加量は、正極又は負極の総量に対して、0.1〜0.3質量%が好ましい。
【0044】
正極及び負極は、前記活物質、導電剤および結着剤を、水やアルコール、トルエン等の有機溶媒に混合した後、得られた混合液を集電体の上に塗布し、乾燥することによって好適に作製される。前記塗布方法としては、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ブレードコーティング、スピンコーティング、パーコーティング等の手段を用い、任意の厚み及び任意の形状に塗布する方法が好適であるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記集電体としては、構成された電池において前記活物質との電子の授受に悪影響を及ぼさない電子伝導体を特に制限されることなく使用し得る。該集電体としては、例えば、耐還元性及び耐酸化性の観点から、材料としてはニッケルやニッケルメッキした鋼板を好適に用いることができ、形状としては、発泡体、繊維群の成形体、凹凸加工を施した3次元基材、或いは、パンチング板等の2次元基材を好適に用いることができる。また、該集電体の厚みについても特に限定はなく、5〜700μmのものが好適に用いられる。
これらの集電体のうち、正極用としては、アルカリに対する耐食性と耐酸化性に優れたニッケルを材料とし、集電性に優れた構造である多孔体構造の発泡体としたものを用いることが好ましい。また、負極用としては、安価で、且つ導電性に優れる鉄箔に、ニッケルメッキを施した、パンチング板を使用することが好ましい。
パンチング径は2.0mm以下、開口率は40%以上であることが好ましく、これにより、少量の結着剤でも負極活物質と集電体との密着性を高めることができる。
【0046】
ニッケル水素蓄電池のセパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独で、あるいは2以上併用して構成することが好ましい。該セパレータを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、ナイロンを挙げることができる。
該セパレータの目付は、40g/m2から100g/m2が好ましい。40g/m2未満であると、短絡や自己放電性能が低下する虞があり、100g/m2を超えると単位体積当たりに占めるセパレータの割合が増加するため、電池容量が下がる傾向にある。該セパレータの通気度は、1cm/secから50cm/secが好ましい。1cm/sec未満であると、電池内圧が上昇する虞があり、50cm/secを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。該セパレータの平均繊維径は、1μmから20μmが好ましい。1μm未満であるとセパレータの強度が低下し、電池組み立て工程での不良率が増加する虞があり、20μmを超えると、短絡や自己放電性能が低下する虞がある。
また、該該セパレータは、親水化処理を施すことが好ましい。例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂繊維の表面にスルフォン化処理、コロナ処理、フッ素ガス処理、プラズマ処理を施したり、これらの処理を既に施されたものを混合したものを用いても良い。特に、スルフォン化処理を施されたセパレータは、シャトル現象を引き起こすNO3-、NO2-、NH3-等の不純物や負極からの溶出元素を吸着する能力が高いため、自己放電抑制効果が高く、好ましい。
【0047】
ニッケル水素蓄電池を構成するアルカリ電解液としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンの少なくとも何れか一方を含み、イオン濃度の合計が9.0mol/リットル以下であるものを好適に使用することができ、イオン濃度の合計が5.0〜7.0mol/リットルであるものをより一層好適に使用することができる。
【0048】
また、該電解液には、合金への防食性向上、正極での過電圧向上、負極の耐食性の向上、自己放電向上のため、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、イットリウム、イッテルビウム、エルビウム、カルシウム、亜鉛などの酸化物、水酸化物等を1種で又は2種以上混合して用いることができる。
【0049】
本発明の一実施形態としての密閉型ニッケル水素蓄電池は、前記電解液を、前記正極、セパレータ及び負極を積層する前又は積層した後に注液し、外装材で封止することにより、好適に作製される。また、正極と負極とが前記セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる密閉型ニッケル水素蓄電池においては、前記電解液は、巻回の前又は後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸法、加圧含浸法、遠心含浸法も使用可能である。また、該密閉型ニッケル水素蓄電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、ポリオレフィン系樹脂等が一例として挙げられる。
【0050】
該密閉型ニッケル水素蓄電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを備えた電池、例えば、コイン電池、ボタン電池、角型電池、扁平型電池、あるいは、ロール状の正極、負極及びセパレータを有する円筒型電池等を挙げることができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1
(正極の作製)
硫酸ニッケルと硫酸亜鉛および硫酸コバルトを所定比で溶解した水溶液に硫酸アンモニウムと水酸化ナトリウム水溶液を添加してアンミン錯体を生成させた。反応系を激しく攪拌しながら更に水酸化ナトリウムを滴下し、反応系のpHを10〜13に制御して芯層母材となる球状高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ニッケル:水酸化亜鉛:水酸化コバルト=93:5:2の質量比となるように合成した。
該高密度水酸化ニッケル粒子を水酸化ナトリウムでpH10〜13に制御したアルカリ水溶液に投入し、溶液を攪拌しながら所定濃度の硫酸コバルト、アンモニアを含む水溶液を滴下した。この間、水酸化ナトリウム水溶液を適宜滴下して反応浴のpHを10〜13の範囲に維持した。約1時間pHを10〜13の範囲に保持し、水酸化ニッケル粒子表面にCoを含む混合水酸化物から成る表面層を形成させた。該混合水酸化物の表面層の比率は水酸化物の芯層母材粒子(以下、単に芯層という)に対して、4質量%であった。
さらに、前記混合水酸化物から成る表面層を有する水酸化ニッケル粒子を、30質量%(10mol/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液と混合してから空気中で110℃に加熱処理したのちに、水洗、ろ過および乾燥の処理を行った。得られた活物質粒子に、カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を0.2質量%とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を0.3質量%、Yb2O3を2質量%添加して前記活物質粒子:CMC溶質:PTFE:Yb2O3=97.5:0.2:0.3:2.0質量%(固形分比)のペーストとし、該ペーストを350g/mのニッケル多孔体に充填した。その後、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスし、2000mAhのニッケル正極板とした。
【0053】
(負極の作製)
化学組成がLa13.9Pr4.3Mg3.5Ni69.9Co5.1Al3.3となるように原料インゴット(合金原料)を所定量秤量してルツボに入れ、減圧アルゴンガス雰囲気下で高周波溶融炉を用いて1200℃〜1600℃に加熱し、材料を溶融した。溶融後、メルトスピニング法を適用して1000K/秒以上の冷却速度で急冷し、合金を固化させた。
次に、得られた合金インゴッドを0.2MPa(ゲージ圧、以下同じ)に加圧されたアルゴンガス雰囲気下、電気炉にて930℃で5時間加熱した。
得られた水素吸蔵合金を平均粒径D50=50μmに粉砕し、得られた粉末を、X線回折装置(BrukerAXS社製、品番M06XCE)を用い、40kV、100mA(Cu管球)の条件下でX線回折試験を行った。さらに、リートベルト法(解析ソフト:RIETAN2000)による解析を行い、結晶相の生成割合を算出したところ、
Gd2Co7相が0質量%、PuNi3相が0質量%、CaCu5相が2質量%、Ce2Ni7相が32質量%、Pr5Co19相が42質量%、Ce5Co19相が24質量%含まれてなることが判明した。
【0054】
次いで、前記合金粉末を、110℃、10mol/リットルのKOH水溶液に2時間浸漬・攪拌し、表面処理を行った。
得られた水素吸蔵合金粒子を水洗した後に乾燥させ、収束イオンビーム装置(FIB)で切断し、形成された断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(トプコン社製、EM−002B型)で観察したところ、図1に示すように、粒子表面に厚み約70μmの表面層が形成されていることが認められた。
さらに、該TEMに付属のエネルギー分散型X線分光装置を用いて組成分析した結果、該表面層は、表1及び図2に示すようなNi濃度分布を有していることがわかった。
また、得られたNi濃度分布に基づき、上記関係式に換算した計算結果を表2に示す。
【0055】
(負極の作製)
このようにして得られた合金粉末、スチレンブタジエン共重合体(SBR)水溶液、及びメチルセルローズ(MC)水溶液を、99.0:0.8:0.2の固形分質量比で混合してペースト状にし、ブレードコーターを用いて、鉄にニッケルメッキを施したパンチング鋼板に塗布し、80℃で乾燥した後、所定の厚みにプレスして負極とした。該負極に含まれる活物質量(合金量)は、8.5gであった。
【0056】
(評価電池の作製)
前記負極と、スルフォン化処理を施した厚み100μmのポリプロピレンの不織布状セパレータと、前記正極とを組み合わせてロール状に巻回し、表1に示す組成のアルカリ電解液を1.97cc注液し、開弁圧3.0MPaの弁を具備するAA形の密閉型ニッケル水素蓄電池(容量2000mAh)を作製した。
(電池の化成処理)
【0057】
この電池を0.1ItA(200mA)にて12時間充電した後、0.2ItAで1Vまで放電する操作を20℃で2回繰り返したのち、40℃で48時間保存し、化成(活性化)した。
【0058】
(サイクル寿命特性の測定)
20℃の恒温槽中で、1ItAおよび−dV=5mVの条件での充電と、1ItAで終止電圧が1.0V(対Hg/HgO)となる放電とを繰り返し、放電容量が、最大放電容量に対して60%となる回数を、サイクル寿命として求めた。
【0059】
実施例2〜7、比較例1〜3
表1に示した表面処理条件としたことを除き、他は実施例1と同様にして水素吸蔵合金を作成し、表面層のNi濃度分布を測定するとともに、該水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池のサイクル寿命特性を測定した。ただし、比較例1については、表面層のNi濃度分布の測定を電池の化成処理後に行った。結果を表2及び図3〜図11に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
表2に示した結果によると、C10の値がCinと大きく異なる比較例に比べて、これらの値が実質的に同じとなっている実施例では、サイクル寿命が改善されていることが認められる。また、式(1)、(2)、(3)の条件を満たすように構成された場合には、より一層顕著に、サイクル寿命の改善が図られていることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1で得られた水素吸蔵合金粒子をTEMによりその表面部分を撮影した写真。
【図2】実施例1で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図3】実施例2で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図4】実施例3で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図5】実施例4で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図6】実施例5で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図7】実施例6で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図8】実施例7で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図9】比較例1で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図10】比較例2で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【図11】比較例3で用いた水素吸蔵合金の表面層のNi濃度分布を示したグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項2】
前記表面層が、下記式(1)
0.25 ≦(Cmax−Cin)/dmax ≦ 0.54 (1)
(ここで、Cmaxは表面層において最大となるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]、dmaxは粒子との界面からCmaxとなる位置までの表面層の厚み[nm]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項3】
前記表面層が、さらに、下記式(2)
84≦Cout (2)
(ここで、Coutは表面層の最外部におけるNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項4】
前記表面層が、さらに、下記式(3)
C10<Cin (3)
(ここで、C10は粒子との界面から10nmにおけるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項5】
La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を、9mol/l以上且つ110℃以上、又は10mol/l以上且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる表面処理工程を含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項1】
La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子を含んでなる負極を備えたニッケル水素蓄電池であって、前記La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金の粒子は、該粒子とは組成が異なる表面層に覆われてなり、該表面層においては、前記粒子との界面から10nmにおけるニッケル濃度が粒子のニッケル濃度と実質的に同じであることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項2】
前記表面層が、下記式(1)
0.25 ≦(Cmax−Cin)/dmax ≦ 0.54 (1)
(ここで、Cmaxは表面層において最大となるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]、dmaxは粒子との界面からCmaxとなる位置までの表面層の厚み[nm]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
【請求項3】
前記表面層が、さらに、下記式(2)
84≦Cout (2)
(ここで、Coutは表面層の最外部におけるNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項4】
前記表面層が、さらに、下記式(3)
C10<Cin (3)
(ここで、C10は粒子との界面から10nmにおけるNi濃度[原子%]、Cinは粒子のNi濃度[原子%]を示す)
を満たすように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のニッケル水素蓄電池。
【請求項5】
La−Mg−Ni系の水素吸蔵合金を、9mol/l以上且つ110℃以上、又は10mol/l以上且つ80℃以上のアルカリ性水溶液に接触させる表面処理工程を含むことを特徴とするニッケル水素蓄電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−50011(P2010−50011A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214850(P2008−214850)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】
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