ニッケル水素蓄電池の製造方法

【課題】直流内部抵抗(DC−IR)の低減を可能として、初期出力性能をより高く確保することのできるニッケル水素蓄電池の製造方法を提供する。
【解決手段】正極及び負極及びそれらを分離するセパレータ及び電解液をケースに封入して電池を組み立て、この組み立てた電池の充電状態が部分充電状態内での充電を行って正極中のコバルトを充電する。そしてこのコバルト充電した電池の過充電及び放電による初期充放電により正極中の水酸化ニッケルの活性化を含む正極活物質の活性化を行い、この正極活性された電池に対する1乃至複数回の充放電サイクルの実施によって負極の活物質である水素吸蔵合金の活性化を行う。そしてこの水素吸蔵合金の活性化に際し、1乃至複数回の充放電サイクル中、少なくとも1サイクルは、当該電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポータブル機器や携帯機器などの電源として、また電気自動車やハイブリッド自動車用の電源として、アルカリ蓄電池が注目されている。その中でも特に、ニッケル水素蓄電池は、水酸化ニッケルを主体とした活物質からなる正極と水素吸蔵合金を主材料とした負極とを備える二次電池であり、エネルギー密度が高く信頼性にも優れている等々の理由から、それら用途の電源として急速に普及している。
【0003】
ただし、こうしたニッケル水素蓄電池は、電池組立直後の水素吸蔵合金の活性が低く、その初期出力が低下してしまう不都合がある。そこで、このような水素吸蔵合金を活性化させるべく各種の提案がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1にあっては、正極、負極、セパレータ及び電解液をケースに封入して電池を組み立てたのちに(第1工程)、この電池を所定の条件のもとに充放電することで電池を活性化させている。すなわち、まず「0.05〜0.2C(1C=電池の定格容量/1時間)」の範囲内の電流で上記組み立てられた電池をSOC(充電状態)が「10〜30%」になるまで充電することによって、正極に含まれているコバルトを酸化させるとともに、過放電時の転極を防止する放電リザーブを負極に形成する(第2工程)。そして、この第2工程を経た電池を「0.2〜1C」の範囲内の電流で過充電したのちに、SOCが「10%」以下になるまで放電することで正極中の活物質を活性化させる(第3工程)。さらに、「0.2〜5C」の範囲内の電流でSOCが「60〜95%」になるまで充電したのちに、電池の電圧が「0.70〜1.05V」になるまで放電を行う充放電サイクルを複数回繰り返すとともに、この充放電サイクル時に「30〜60℃」の冷媒によって電池を冷却することにより、負極中の活物質を活性化する(第4工程)。このような各工程を経ることで、比較的短時間で水素吸蔵合金が活性化されるようになり、水素吸蔵合金が水素を吸蔵した状態で放置(エージング)する工程を経ることなく上記ニッケル水素蓄電池を製造することができるようになる。
【特許文献1】特開2002−260719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、上記製造方法によれば、水素吸蔵合金の活性化が促進され、ニッケル水素蓄電池の生産性も大幅に向上されるようにはなる。ただし、水素吸蔵合金の活性化が促進されるとはいえ、同水素吸蔵合金自体が持つ直流内部抵抗(DC−IR)の制約からか、こうして製造されたニッケル水素蓄電池の初期出力性能が必ずしも十分に満たされているとは限らない。すなわち、ニッケル水素蓄電池としての初期の直流内部抵抗は依然として改善されていないことが発明者らによって確認されており、このような内部抵抗の存在がニッケル水素蓄電池の初期出力性能に及ぼす影響が無視できないものとなっている。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、直流内部抵抗(DC−IR)の低減を可能として、初期出力性能をより高く確保することのできるニッケル水素蓄電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、水酸化ニッケル及びコバルトを活
物質とする正極と水素吸蔵合金を活物質とする負極とを備えて構成されるニッケル水素蓄電池を製造する方法であって、前記正極と前記負極とがセパレータを介して積層して構成された極板群を電解液とともにケースに封入して電池を組み立てる組立工程と、この組み立てた電池の充電状態が部分充電状態(「SOC0〜100%」)内での充電を行って前記正極中のコバルトを充電するコバルト充電工程と、このコバルト充電した電池の過充電及び放電による初期充放電により前記正極中の水酸化ニッケルの活性化を含む正極活物質の活性化を図る正極活性工程と、この正極活性された電池に対する1乃至複数回の充放電サイクルの実施によって前記負極の活物質である水素吸蔵合金の活性化を図る負極活性工程とを含み、前記負極活性工程では、前記1乃至複数回の充放電サイクル中、少なくとも1サイクルは、当該電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うことを要旨とする。
【0008】
このような製造方法によれば、負極活性工程に際し、電池の充電状態が過充電状態になるまで充電することによって、負極中の水素吸蔵合金表面にいわゆる割れ(クラック)が生じるようになる。そしてこれにより、負極中の水素吸蔵合金表面が微粉化されてその表面積が拡大されるようになり、電解液との接触面積、すなわち電極材料としての反応面積(活性点)を拡大することができるようになる。上記製造方法ではこのように、負極中の水素吸蔵合金の活性点が拡大されることによって、ニッケル水素蓄電池としての初期の直流内部抵抗(DC−IR)を低減させることが可能となり、初期出力性能をより高く確保することができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記負極活性工程における当該電池の充電状態が過充電状態となる充電に際しては、その充電工程を2段階以上の工程に分け、第1段階の充電工程では「1C」を超える第1の電流で同電池の充電容量以内での充電を行い、第2段階以降の充電工程で前記第1の電流よりも小さい第2の電流により当該電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うことを要旨とする。
【0010】
上記ニッケル水素蓄電池の製造に際しては、「1C」を超える大きな電流で充電するほどガス(水素ガス等)が生じやすくなり、これに伴ってニッケル水素蓄電池内の内圧が上昇する。この点、上記製造方法によるように、「1C」を超える第1の電流により同電池の充電容量以内で充電を行ったのちに第1の電流よりも小さい電流によって電池の充電状態が過充電状態になるまで充電することとすれば、水素吸蔵合金の活性化を図る上で水素ガス等の発生に起因する内圧上昇を抑制することができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法において、前記第1段階の充電工程での前記第1の電流による前記充電容量以内での充電が、充電状態(SOC)「60〜95%」の範囲での充電であり、前記第2段階以降の充電工程での前記第2の電流による前記充電状態が過充電状態となる充電が、充電状態(SOC)「110〜130%」の範囲での充電であることを要旨とする。
【0012】
上記製造方法によるように、第1段階の充電工程での第1の電流による充電範囲をSOC「60〜95%」とし、第2段階以降の充電工程での第2の電流による充電範囲をSOC「110〜130%」とすれば、過充電による水素吸蔵合金の活性化をより促進させることができるようになり、ひいては、水素吸蔵合金の初期内部抵抗の低減、ならびに初期出力性能の向上を図ることができるようになることが発明者らによって確認されている。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法において、前記第2段階以降の充電工程での前記第2の電流による前記充電状態が過充電状態となる充電が、充電状態(SOC)「115〜125%」の範囲での充電であることを要旨とする。
【0014】
一般に、ニッケル水素蓄電池の初期内部抵抗は、負極を構成する水素吸蔵合金の酸化に伴う腐食等により増大することが知られている。そして、ニッケル水素蓄電池の保存期間が長いほど水素吸蔵合金が酸化されるようになり、これに伴ってニッケル水素蓄電池の内部抵抗が増大するためにその出力性能が低下するようになる。この点、上記製造方法によるように、第2段階以降での第2の電流によって電池を過充電状態にする際の充電範囲をSOC「115〜125%」とすれば、ニッケル水素蓄電池の初期内部抵抗がさらに低減されることが発明者らによって確認されている。上記製造方法ではこのように、ニッケル水素蓄電池の初期内部抵抗の低減がなされることで、初期出力性能の向上はもとより、電池としての保存特性をも向上させることができるようになる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法において、前記第1の電流が「2〜5C」の範囲の電流であり、前記第2の電流が「1.1〜2C」の範囲の電流であることを要旨とする。
【0016】
上記製造方法によるように、第1の電流を「2〜5C」の範囲の電流とし、第2の電流を「1.1〜2C」の範囲の電流とすれば、負極活性工程における過充電に際しての内圧上昇の抑制と上記製造されるニッケル水素蓄電池の初期内部抵抗の低減ならびに初期出力性能の向上との好適な両立が図られるようになる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法において、前記負極活性工程では複数回の充放電サイクルを繰り返し、同負極活性工程における当該電池の充電状態が過充電状態となる充電を、当該負極活性工程の最初の充放電サイクルにて行うことを要旨とする。
【0018】
上記製造方法によるように、負極活性工程において、複数回の充放電サイクルに先立ってニッケル水素蓄電池の充電状態が過充電状態となる充電を実施することとすれば、まず、同電池の充電状態が過充電状態になることによって負極中の水素吸蔵合金の活性点が高められるようになり、この活性点の高められた水素吸蔵合金に対して複数回の充放電サイクルが実施されて負極の活性化がなされるようになる。このため、電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うことによって負極の活性化を図る上で、負極の活性化の度合いをより高めることができるようになる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法において、前記負極活性工程に際しての温度環境が「50℃」以内に維持されることを要旨とする。
【0020】
充電と放電とを繰り返す負極活性工程においては、充電する電流の大きさや充電範囲のみならず、温度環境にも起因して負極の活性化の度合いが変化する。この点、上記製造方法によれば、負極活性工程に際しての温度環境を50℃以下に維持することにより、負極の活性化がより促進されるようになる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法であって、前記コバルト充電工程における電池の充電状態が部分充電状態内での充電が、「0.05〜0.2C」の範囲の電流による充電状態(SOC)「10〜30%」の範囲での充電であり、前記正極活性工程における電池の過充電及び放電による初期充放電が、「0.2〜1C」の範囲の電流での過充電、及びその後の充電状態(SOC)「10%」以下になるまでの放電であることを要旨とする。
【0022】
上記製造されるニッケル水素蓄電池は、負極活性工程のみならず同工程の前工程である
コバルト充電工程、正極活性工程によってもその初期内部抵抗、初期出力性能等が変化するようになる。この点、上記製造方法によれば、負極活性工程に先立つ各工程での充電状態(SOC)を上記各条件に基づいて設定することによって、正極及び負極が十分に活性化されるようになり、上述した初期内部抵抗の低減ならびに初期出力特性の向上を可能とするニッケル水素蓄電池の製造が容易ともなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法によれば、ニッケル水素蓄電池としての初期の直流内部抵抗(DC−IR)を低減させることが可能となり、初期出力性能をより高く確保することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態)
以下、本発明にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法の一実施の形態について図1〜図4を参照して説明する。なお、図1は、この実施の形態にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法について、その製造対象とするニッケル水素蓄電池の概略構成を示したものであり図1(a)及び図1(b)はその平面構造及び側面構造をそれぞれ示している。また、図2は、本実施の形態において製造対象とするニッケル水素蓄電池の側面方向から見た拡大断面構造を示したものである。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態において製造の対象とするニッケル水素蓄電池は、複数のニッケル水素蓄電池(単電池)を電気的に直列接続することによって構成される角形の密閉式電池である。
【0026】
ここで、この角形の密閉式電池は、複数の単電池を収容可能な一体電槽100と同一体電槽100を封止する蓋体200とによって構成される直方体状の角形ケース300を有している。なお、この角形ケース300は、樹脂製あるいは金属製のものを用いることができる。そして、その表面には電池使用時の放熱性を高めるべく複数の凹凸が形成されているが、便宜上、図1では図示を省略する。
【0027】
このうち、角形ケース300を構成する一体電槽100は、これが例えば樹脂製からなる場合、例えばポリプロピレンやポリエチレン等といった、電解液に対して耐性を有する合成樹脂材料により構成されている。そしてこの一体電槽100の内部には、図2に示されるように、複数の単電池を区画するかたちで隔壁100aが形成されており、この隔壁100aによって区画された部分が、各単電池毎の電槽100bとなる。
【0028】
こうして区画された電槽100b内には、その上面から見た単電池の拡大断面構造を図3に示すように、矩形状の正極板141及び負極板142がセパレータ143を介して積層して構成された極板群140と、その両側に接合された正極の集電板150及び負極の集電板160とが電解液とともに収容されている。ここで、上記極板群140の正極板141及び負極板142は互いに反対側の側部に突出されることで正極板141及び負極板142のリード部141a、142aが構成され、これらリード部141a、142aの側端縁にそれぞれ上記集電板150、160が接合されている。また、極板群140の両側面には同極板群を厚み方向に挟むように外周セパレータ144が設けられている。
【0029】
また、図2に示されるように、上記隔壁100aの上部には各電槽100bの接続に用いられる貫通孔170が形成されており、これら集電板150、160の上部に突設されている接続突部151及び161同士がこの貫通孔170を介して溶接接続されることで、各々隣接する電槽100bが電気的に直列に接続されている。そして、上記貫通孔170のうち、両端の電槽100bの各々外側に位置するもの、すなわち一体電槽100の端
側壁上方の貫通孔170には正極または負極の接続端子120、130(図1)が装着され、それら接続端子120、130と集電板150または160の接続突部151または161とが溶接接続されることによって、こうして直列接続された電槽100b、すなわち複数の単電池の総出力がこれら接続端子120、130から取り出される。
【0030】
一方、上記角形ケース300を構成する蓋体200には、角形ケース300の内部圧力が一定以上になったときに圧力を解放するための安全弁210と、内部の温度を検出するためのセンサを装着するセンサ装着穴220とが設けられている。
【0031】
このうち、安全弁210は、角形密閉式電池内の内部圧力を許容されうる閾値以下に維持するためのものであり、内部圧力の値が許容される閾値を超えた場合には、開弁されることで同電池内部に発生したガスを排出する。これにより、角形密閉式電池の製造工程においても、その内部圧力が許容されうる閾値以下に維持されるようになる。
【0032】
次に、このようなニッケル水素蓄電池を製造する本実施の形態にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法について、その一例を図4を併せ参照しつつ説明する。
この製造工程は、大きくは、正極板141、負極板142、セパレータ143及び電解液をケースに封入して電池を組み立てる組立工程(第1工程)と、この組み立てられた電池を活性化させるべく所定の条件のもとに充放電を行う第2工程〜第5工程からなる。
【0033】
まず、電池の組立工程(第1工程)においては、先の図3に示したような正極板141や負極板142、セパレータ143、集電板150、160等を有して構成される単電池を一体電槽100(図1、図2)内で電気的に直列接続して、上記角形の密閉式電池を組み立てる。
このうち、上記正極板141は、水酸化ニッケル及びコバルトを活物質として構成されている。詳しくは、水酸化ニッケルに、水酸化コバルトや金属コバルト粉末などの導電剤、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を適量加えてまずはペースト状に加工する。その後、こうしてペースト状になった加工物を、発泡ニッケル三次元多孔体等の芯材に塗布あるいは充填したのちに、これを乾燥、圧延、切断することによって板状の正極板141を形成する。なお、発泡ニッケル三次元多孔体としては、発泡ウレタンのウレタン骨格表面にニッケルメッキを施した後、発泡ウレタンを焼失させたものが用いられる。
【0034】
一方、上記負極板142は、例えば、ランタン、セリウム、及びネオジム等の希土類元素の混合物であるミッシュメタル、ニッケル、アルミニウム、コバルトおよびマンガンを構成要素とする水素吸蔵合金を活物質として構成されている。これも詳しくは、この水素吸蔵合金にカーボンブラックなどの導電剤、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤や、スチレン−ブタジエン共重合体などの結着剤を添加してまずはペースト状に加工する。その後、こうしてペースト状に加工された水素吸蔵合金を、パンチングメタル(活物質支持体)などの芯材に塗布あるいは充填した後、これを乾燥、圧延、切断することによって同じく板状の負極板142を形成する。
【0035】
また、上記セパレータ143としては、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の不織布、もしくは必要に応じてこれにスルフォン化などの親水処理を施したものを用いることができる。
【0036】
こうして正極板141及び負極板142、ならびにセパレータ143の形成を終えると、これら正極板141と負極板142とを互いに反対側に突出する態様でセパレータ143を介して交互に積層することで直方体状の極板群140を構成する。そして、一方に突出して積層された各正極板141のリード部141aの外縁と集電板150とをスポット
溶接等により接合するとともに、同じく他方に突出して積層された各負極板142のリード部142aの外縁と集電板160とをスポット溶接等により接合する。
【0037】
次いで、これら集電板150及び160が形成された極板群140を先の角形ケース300内の各電槽100bに収容し、隣接する極板群140の集電板150(正極)と集電板160(負極)とをそれらの上部に突設された接続突部151及び161同士をスポット溶接等により接続することで、互いに隣接する極板群140を電気的に直列接続する。
【0038】
そして最後に、各電槽内に水酸化カリウムを主成分とするアルカリ水溶液(電解液)を所定量注入したのちに、蓋体200で一体電槽100の開口を封止することによって、複数の単電池(ニッケル水素蓄電池)からなる例えば定格容量「6.5Ah」の角形密閉式電池の組み立てが完了する。
【0039】
次に、このようにして組み立てられたニッケル水素蓄電池の活性化工程を図4を参照して説明する。なお、図4において、同図4(a)は、第2〜第5工程においてニッケル水素蓄電池の充電に際して印加される電流、及び同ニッケル水素蓄電池の放電に際して出力される電流の推移を示しており、同図4(b)は、これらの電流に対応するニッケル水素蓄電池のSOC(充電状態)の推移を示したものである。
【0040】
この活性化工程では、大きくは、上記組み立てた電池の充電状態が部分充電状態内での充電を行って正極中のコバルトを充電するコバルト充電工程(第2工程)、このコバルト充電した電池の過充電及び放電による初期充放電により正極中の水酸化ニッケルの活性化を含む正極活物質の活性化を図る正極活性工程(第3工程)、この正極活性された電池に対する1乃至複数回の充放電サイクルを実施する負極活性工程(第4工程、第5工程)が順次実施される。
【0041】
このうち、まずコバルト充電工程(第2工程)においては、ニッケル水素蓄電池の接続端子120、130を通じて、「0.05〜0.2C」(ここでの例では1C=6.5A)の範囲の電流により、ニッケル水素蓄電池の充電状態(SOC)が「10〜30%」になるまで充電する(図4(a)、(b):t0〜t1)。そしてこの際、正極中に含まれているコバルトや水酸化コバルトがオキシ水酸化コバルトとなるまで酸化されることによって正極活物質間の電気的ネットワークが構築されるようになり、正極の性能が高められるようになる。一方、負極には過放電時の転極を防止する放電リザーブが形成される。なお、本工程では、正極活物質間の電気的ネットワークを構築するには低レートでの充電を要すること、ならびに、未充電の負極の活物質は活性化がなされておらず高レートで充電することが困難であることに鑑み、低レート(「0.08〜0.2C」)での充電を行う。
【0042】
こうしてコバルト充電工程(第2工程)を終えると、正極中の活物質を活性化すべく正極活性工程(第3工程)を実施する。この正極活性工程では、コバルト充電された電池に対して「0.2〜1C」の範囲の電流により充電状態(SOC)が「100〜130%」になるまで一旦充電する(図4(a)、(b):t1〜t2)。そしてその後、同じく「0.2〜1C」の範囲の電流によりSOCが「10%」以下になるまで放電する(図4(a)、(b):t2〜t3)。そしてこの際、正極中の水酸化ニッケルが酸化されることによって、この水酸化ニッケルが一旦オキシ水酸化ニッケルとなり、その後、同オキシ水酸化ニッケルから水酸化ニッケルへと還元する。本工程では、正極中の水酸化ニッケルがこのような可逆的に変化することによって正極の活性化がなされるようになる。
【0043】
こうして正極活性工程(第3工程)を終えると、負極中の活物質を活性化すべく負極活性工程(第4工程、第5工程)を実施する。この負極活性工程では、上記正極の活性化が
なされた電池に対して1乃至複数回の充放電サイクルを実施し、この充電サイクル中に少なくとも1サイクルは同電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うようにしている。そしてこの電池を過充電状態とする充電に際しては、その充電工程を2段階に分け、第1段階の充電工程では第1の電流(「2〜5C」)により同電池の充電容量以内での充電(SOC「60〜95%」)を行い、さらに、第1の電流よりも小さい第2の電流(「1.1〜2C」)によって電池の充電状態が過充電状態になるまで充電(SOC「110〜130%」)を行う。なお、本実施の形態では、負極中の水素吸蔵合金の反応面積を拡大すべく1乃至複数の充放電サイクル中に行われる電池の充電状態を過充電状態とする充放電サイクルを第4工程とし、同第4工程によって反応面積の拡大された水素吸蔵合金を活性化すべく行われるその他の充放電サイクルを第5工程とし、第5工程に先立ち第4工程を実施するようにしている。
【0044】
なお、特に負極活性工程においては、ニッケル水素蓄電池の温度環境に起因して負極の活性化の度合いも変化するようになる。そこで本実施の形態では、負極の活性化の度合いを最大とすべく、管理温度を「50℃」以下に設定する。そして、蓋体200に設けられたセンサ装着穴220に温度センサを装着し、この温度センサの検出値が「50℃」以下に維持されるように例えば空冷による温度管理を行うようにしている。
【0045】
このような前提のもとに、まず第4工程のうちの第1段階の充電工程において、「2〜5C」の範囲の電流(第1の電流)により充電状態(SOC)が「60〜95%」になるまで充電する(図4(a)、(b):t3〜t4)。そして続く第2段階の充電工程においては、SOCが「60〜95%」になるまで充電された電池に対してさらに「1.1〜2C」の範囲の電流(第2の電流)によってSOCが「110〜130%」になるまで充電する(図4(a)、(b):t4〜t5)。そしてこの際、こうした負極に対する過充電によって、負極中の水素吸蔵合金表面にいわゆる割れ(クラック)が生じるようになり、この水素吸蔵合金表面が次第に微粉化されるようになる。これにより、続く第5工程に先立ち、第5工程において活性化の対象とする水素吸蔵合金の表面積、すなわち電極材料としての反応面積を拡大させることができるようになる。そして、こうして電池が過充電状態とされると、次に、電池の電圧が「0.70〜1.05V」に低下するまで放電する(図4(a)、(b):t5〜t6)。
【0046】
このように、本実施の形態では、上記第4工程を、その充電工程を第1段階と第2段階とに分けるようにしている。そして、このうち第1段階では、「1C」を超え、かつ第4工程に先立つ第3工程の充放電に際して用いられる電流よりも大きい第1の電流(「2〜5C」)によって電池の充電容量の範囲内、好ましくは電池の充電状態が過充電状態になる直前(SOC「90%」)まで充電する。一方、第4工程のうちの第2段階においては、上記第1の電流よりも小さく、かつ「1C」近傍の電流(「1.1〜2C」)によって電池の充電状態が過充電状態になるまで充電する。本実施の形態では、このような条件のもとに電池の充電状態が過充電状態になるまで充電することによって、比較的短時間で負極を活性化させることができるようになるとともに、過充電に起因する水素ガス等の過剰な発生を抑制することができるようになる。そしてこれにより、負極中の水素吸蔵合金の反応面積を拡大させる上で電池の内圧上昇を最小限に抑制することができるようにもなる。
【0047】
こうした第4工程を経て水素吸蔵合金の反応面積が拡大されると、次いで、この水素吸蔵合金を主とする負極中の活物質を活性化すべく第5工程を実施する。この第5工程では、上記第4工程によって負極中の水素吸蔵合金の反応面積が拡大された電池に対して、「2〜5C」の範囲の電流でSOCが「60〜95%」になるまで一旦充電したのちに同電池の電圧が「0.70〜1.05V」に低下するまで放電する充放電サイクルを8サイクル実施する(図4(a)、(b):t6〜)。これにより、第4工程を経て表面積の拡大
のなされた水素吸蔵合金は、その表面積に比例する活性化がなされるようになる。そして、こうした負極中の活物質を構成する水素吸蔵合金の活性化が促進されることによって、負極の活性化の度合いが高められるようになり、ひいては負極自体の有する直流内部抵抗(DC−IR)が低減されるようになる。
【0048】
こうして第4工程、第5工程からなる負極活性工程が終了することによって、先の図1〜図3にその構造を示したニッケル水素蓄電池の製造が完了される。
(実施例)
以下、実施例により本発明にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法についてその具体例をさらに詳細に説明する。なお、本実施例においては、ミッシュメタル(Mm)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、及びコバルト(Co)を、それぞれMmNi3.55Mn0.4Al0.3Co0.75の組成となるように配合してAB系水素吸蔵合金を作成し、このAB系水素吸蔵合金により負極の活物質としてニッケル水素蓄電池を組み立てたものである。そしてこの組み立てられた電池に対して、各条件(実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4)のもとにニッケル水素蓄電池を製造し、この製造された電池に対して各種特性試験及び保存特性評価を行った。次に、比較例及び実施例の製造条件について前述の実施の形態との相違点を中心に詳述する。
(実施例1)
本実施例では、上述したAB系水素吸蔵合金を負極の活物質として組み立てられた電池に対し、まず、コバルト充電工程(第1工程)において「0.08C」相当の電流で約2時間充電する。そして、次の第3工程において「0.5C」相当の電流でSOCが「110%」になるまで充電したのちに、同じく「0.5C」相当の電流でSOCが「0%」になるまで放電する。次いで、第4工程の第1段階の充電工程において「4C」相当の電流でSOCが「90%」になるまで充電し、続く第2段階の充電工程においてさらに「1.1C」相当の電流によってSOCが「110%」になるまで充電したのちに、電池の電圧が「0.70〜1.05V」になるまで放電する。そして、次の第5工程において、「4C」相当の電流でSOCが「90%」になるまで充電したのちに電池の電圧が「0.70〜1.05V」になるまで放電する充放電サイクルを8回繰り返す。なお、第4工程及び第5工程における電池の管理温度は「50℃」以下とした。
【0049】
このような活性化工程を経て、先の図1に示したニッケル水素蓄電池を製造した。
(実施例2)
この実施例2では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「115%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
(実施例3)
この実施例3では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「120%」になるまで充電することとし、その他の条件は(実施例1)と同じ条件とした。
(実施例4)
この実施例4では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「125%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
(実施例5)
この実施例5では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「130%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
(比較例1)
この比較例1では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を割愛し、第4工程及び第5工程による負極活性工程に際しては電池の充電状態が過充電状態となる
充電を行わないこととした。
(比較例2)
この比較例2では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「105%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
(比較例3)
この比較例3では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「135%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
(比較例4)
この比較例4では、上記実施例1において、第4工程の第2段階の充電工程を「1.1C」相当の電流によってSOCが「140%」になるまで充電することとし、その他の条件は実施例1と同じ条件とした。
【0050】
図5は、以上の実施例1〜実施例5、及び比較例1〜比較例4の上記各数値を一覧して示したものである。次に、このようにして製造されるニッケル水素蓄電池に対して、以下の方法により各特性試験及び保存特性評価を行った。この結果についても、図5に併せて示している。
(磁化率の特性試験)
上記各実施例、ならびに各比較例に用いられる水素吸蔵合金は、ミッシュメタル(Mm)とニッケル(Ni)を主成分とする合金である。こうした水素吸蔵合金が酸化されると、ミッシュメタル(Mm)を構成するランタン(La)やセリウム(Ce)、ニッケル(Ni)と置換したマンガン(Mn)やアルミニウム(Al)が水酸化物になるとともに、水素吸蔵合金の微粉化が促進されるようになる。そしてこの際、水素吸蔵合金中のニッケル(Ni)は、酸化され難く、ニッケル(Ni)金属として水素吸蔵合金の表面に析出するようになる。
【0051】
そして、こうしたニッケル(Ni)は、水素吸蔵合金を構成する希土類元素やマンガン(Mn)と合金化された状態にあっては磁性体としての性質を有さないものの、合金化された状態から金属状態へと遷移することによって非磁性体から強磁性体へと状態遷移する特性を有している。このため、水素吸蔵合金の磁化率(VSM)を測定することにより、金属状態にあるニッケル(Ni)の量を求めることが可能であり、この求められたニッケル(Ni)の量に基づいて水素吸蔵合金の酸化の度合い、ひいては微粉化の度合いを確認することができる。
【0052】
そこで本特性試験では、上記製造されたニッケル水素蓄電池の負極を構成する芯材に塗布された水素吸蔵合金を剥がし、この水素吸蔵合金の磁化率を試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer)によって測定した。そしてこの測定値に基づいて水素吸蔵合金の微粉化の度合い、すなわち水素吸蔵合金の反応面積の変化の度合いを確認した。このようにして測定された磁化率が高い場合は、水素吸蔵合金の微粉化の度合いが高いと判断することができ、これに相関する負極の活性化の度合いも高められたと判断することができる。一方、磁化率が低い場合には、水素吸蔵合金の微粉化の度合いが低いと判断することができ、これに相関する負極の活性化の度合いも低いものと判断することができる。なお、これら測定されるVSM値に基づき上記製造される電池の負極中の水素吸蔵合金の微粉化の度合いを「合金割れ評価」として評価した。そして、図5では、最も水素吸蔵合金の微粉化の度合いが顕著なものを「◎」とし、微粉化の度合いが比較的良好なものを「○」とし、従来製造方法による電池(特許文献1:特開2002−260719号公報参照)の同VSM値と比較して微粉化の度合いが小さいものを「×」として評価した。
(DC−IR値の特性試験)
まず、上記製造されたニッケル水素蓄電池に対して、電池の温度を「25℃」一定とし、「4A」の定電流により1時間充電する。こうして充電されたニッケル水素蓄電池に対して「10A」の電流で5秒間放電し、この5秒経過時の同電池の電圧を計測する。次に、1分間の休止後、「60A」の電流により5秒間放電し、この5秒経過時の同電池の電圧を計測する。そして各電流値と各々計測された電圧値とに基づきニッケル水素蓄電池の直流内部抵抗値すなわちDC−IR値を算出する。
(保存特性評価方法)
まず、上記製造された電池を「25℃」の温度環境下で保管し、保管開始から2週間毎のDC−IR値を測定した。次に、縦軸にDC−IR値、横軸に保管日数としたグラフに測定結果を記入し、隣り合う測定点毎を直線で結ぶことにより、保管日数に対するDI−IR値の推移を示すグラフを作成した。次いで、こうして作成されるDC−IR値の推移を示す直線と電池として許容されるDC−IR値との交点を求め、この求められた交点から上記各条件(実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4)のもとに製造されるニッケル水素蓄電池の保管日数を記録した。そして、こうして求められた保管日数、VSM値、及び上記製造される電池の内圧の測定結果に基づいて、各条件(実施例1〜実施例5、比較例1〜比較例4)のもとに製造されるニッケル水素蓄電池の保存特性評価を行った。なお、この保存特性評価について、図5おいては、最も優良な特性を示す電池を「◎」とし、良好な特性を示す電池を「○」とし、従来の製造方法による電池(特許文献1:特開2002−260719号公報参照)と比較して顕著な特性の見られない電池、あるいは電池としての必要最低限の容量を確保できない電池を「×」として評価した。
【0053】
そして、こうした各特性試験及び保存特性評価の結果に基づいて、図6に示すグラフを作成した。なお、図6は、上記比較例1及び上記実施例3で製造される各電池において、保管日数に対するDC−IR値の推移を示したものである。
【0054】
まず、図5に示されるように、負極中の水素吸蔵合金のVSM値は、比較例1及び比較例2は「3.3wt%」であるのに対して、実施例1では「3.5wt%」、実施例2〜実施例4では「3.9wt%」、実施例5では「4.0wt%」と上昇している。すなわち、第4工程のうち第2段階の充電工程において、電池の充電状態が過充電状態となり、かつ、その際のSOCが「110〜130%」の範囲での充電を行うことが負極中の水素吸蔵合金のVSM値を向上させるのに有効であると考えられる。なお、比較例3及び比較例4は、第4工程においてSOCが「135%」以上になるまで充電を行った場合には、水素ガスが過剰に発生したことにより安全弁210が開弁し、各種試験を実施することができなかった。これは、正極が過充電されることにより電池の容量低下が発生したものと推測される。
【0055】
以上のことから、第4工程のうち第2段階の充電工程においては、VSM値の向上及び電池の内圧の抑制を図る上で最も好ましいSOCの範囲は「115〜125%」であると考えられる。
【0056】
次に、上記製造される電池の負極の初期直流内部抵抗(DC−IR)は、比較例1、比較例2、実施例1においてはそれぞれ「2.29mΩ」であるのに対して、実施例2〜実施例5では「2.25mΩ」と低下している。すなわち、第4工程のうち第2段階の充電工程において、電池の充電状態が過充電状態となり、かつ、その際のSOCが「115〜130%」の範囲での充電を行うことが負極中のDC−IRを低減させるのに有効であると考えられる。また、上述のように、同工程において、同じくSOCが「115〜130%」の範囲で充電を行った場合には、VSM値が「3.9wt%」以上となっており、こうしたことからも、VSM値、すなわち負極中の水素吸蔵合金表面の微粉化の度合いを向上させることによって負極のDC−IRの低減がなされていることを確認することができる。
【0057】
そして、上記製造された電池の保管開始から同電池の負極のDC−IRが電池としての許容されるDC−IRを超えまでの日数は、比較例1及び比較例2は「54日」、また実施例1は「57日」であるのに対し、実施例2〜実施例4ではそれぞれ「73日」、実施例5では「75日」と保管可能期間が延長されている。すなわち、これら実施例2〜実施例5では、負極の初期DC−IR値の低減がなされることから、この初期DC−IR値の低減の分だけ電池の保管期間を延長することができるようになると考えられる。
【0058】
次に、例えば比較例1における負極のDC−IR値の推移と、実施例3における負極のDC−IR値の推移とを、図6を参照して比較する。
図6に示されるように、電池の保管開始時(T0)において、実施例3における負極の初期DC−IR値は、比較例1における負極の初期DC−IR値よりも低くなっている。そして、これら初期DC−IR値は、負極の酸化による腐食等に起因し、電池の保管期間に比例して上昇するようになる。このため、比較例1におけるDC−IR値は、期間T1経過後、電池として許容される内部抵抗の閾値IRに達するようになる。一方、比較例3における初期DC−IR値は、比較例1における初期DC−IR値よりも低減されていることから、期間T1経過時点において初期DC−IR値が低減された分(IR12)の余裕を有している。そして、期間T2経過後にはじめて実施例3におけるDC−IR値が上記閾値IRに達するようになる。
【0059】
すなわち、図6に期間T12として示すように、実施例3においては、第4工程の第2段階の充電工程においてSOCが「120%」を超えるまで電池を充電したことによって低減された分(IR12)だけ、その保管期間が延長されるようになることがわかる。
(実施の形態の効果)
以上説明したように、本実施の形態にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法によれば、以下のような効果が得られるようになる。
【0060】
(1)負極活性工程において、SOCが「110〜130%」になるまで充電を行うこととした(第4工程)。これにより、負極中の水素吸蔵合金表面の微粉化の度合いが高められ、電極材料としての反応面積(活性点)が拡大されるようになる。そしてこの結果、ニッケル水素蓄電池としての初期の直流内部抵抗(DC−IR)を低減することができるようになり、ひいては、ニッケル水素蓄電池としての初期出力性能及び保存特性を高めることができるようになる。
【0061】
(2)負極活性工程に際し、電池の充電容量の範囲内で電池に対して充電と放電とを繰り返す第5工程に先立って電池の充電状態が過充電状態となる充電を行う第4工程を実施することとした。これにより、まず第4工程を経ることによって負極中の水素吸蔵合金の電極材料としての反応面積(活性点)が高められるようになり、続く第5工程においては反応面積の拡大された水素吸蔵合金に対して電池の充電容量の範囲内での充放電サイクルが実施されるようになる。このため、充電状態が過充電状態になるまで充電を行うことによって負極の活性化を図る上で、負極の活性化の度合いをより高めることができるようになる。
【0062】
(3)電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行う第4工程に際し、その充電工程を第1段階と第2段階からなる2つの工程に分けることとした。すなわち、まず、第1段階の充電工程において、高レートの電流(「2〜5C」)でSOCが「60〜95%」になるまで充電し、続く第2段階の充電工程においては、第1の電流よりも小さい電流(「1.1〜2C」)によってSOCが「110〜130%」になるまで充電するようにした。これにより、水素吸蔵合金の活性化を図る上で水素ガス等の発生に起因する内圧上昇を抑制することができるようになる。また、第2段階の電流を「1C」以上(「1.1C
〜2C」)としたことで、同充電工程に要する時間を短縮することができるようにもなる。
【0063】
(4)負極活性化工程(第4工程、第5工程)において、電池の管理温度を「50℃」に設定し、電池の温度が「50℃」以下となるように空冷によって管理した。これにより、負極の活性化の度合いに起因する電池の温度環境を最適なものとすることができ、ひいては、上記製造される電池としての初期直流内部抵抗の低減及び初期出力性能をより高めることができるようになる。
【0064】
(5)第4工程の第2段階の充電工程に際し、特に「1.1C」相当の電流によって電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うこととすれば、電池の充電状態を過充電状態とする上で、こうした過充電に起因する各種ガスの発生を抑制と充電時間の短縮との両立とを図ることができるようにもなる。
【0065】
(6)同じく第4工程の第2段階の充電工程に際し、特にSOCが「115〜125%」の範囲で充電することとすれば、水素吸蔵合金の微粉化の度合いを最大にすることができるようになる。このため、電池としての初期直流内部抵抗の低減及び初期出力性能の向上、さらには保存特性の向上を図ることができるようになる。
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態は、以下のような態様をもって実施することもできる。
【0066】
・上記実施の形態では、コバルト充電工程(第2工程)における電池の充電状態が部分充電状態内での充電を「0.05〜0.2C」の範囲の電流による充電状態(SOC)「10〜30%」の範囲での充電とした。また、正極活性工程(第3工程)における電池の過充電及び放電による初期充放電を「0.2〜1C」の範囲の電流での過充電、及びその後の充電状態(SOC)「10%」以下になるまでの放電とした。これに限らず、ニッケル水素蓄電池を製造する上で正極中のコバルト充電及び正極の活性化を実現可能な電流の範囲あるいはSOCの範囲であればよく、これらの値に限定されるものではない。
【0067】
・上記実施の形態では、第4工程における電池の過充電に際し、SOCの範囲を「110〜130%」としたが、電池の充電状態が過充電状態となる充電であればよく、この値に限定されるものではない。また、第1の電流の範囲を「2〜5C」とし、第2の電流の範囲を第1の電流の範囲よりも小さく、かつ、その範囲を「1.1〜2C」としたが、これらの値に限定されるものもではない。同じく、第5工程における充放電サイクルを「2〜5C」の範囲の電流でSOCが「60〜95%」になるまで充電することとしたが、複数回の充放電サイクルによる負極の活性化を実現可能な電流の範囲あるいはSOCの範囲であればよく、これらの値に限定されるものではない。
【0068】
・上記実施の形態では、第4工程に際して、第1の電流及び第2の電流からなる2種の電流によって充電することとしたが、電流値の異なる3種以上の電流によって段階的に充電するようにしてもよい。また、第1の電流のみによって充電することとし、第4工程を一つの充電工程とするようにしてもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、負極活性工程において、電池の充電容量の範囲内での複数回の充放電サイクル(第5工程)に先立ち、電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うこととした(第4工程)。これに限らず、負極活性工程では、複数回の充放電サイクル中、少なくとも1サイクル電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行うこととすればよく、そのタイミングは限定されるものではない。
【0070】
・上記実施形態では、第4工程において、電池の充電状態が過充電状態となる充電を1
サイクルのみとしたが、これに限らず、電池の充電状態が過充電状態となる充電を複数回行うようにしてもよい。また、第5工程において、充放電サイクルを8回行うこととしたが、この充放電サイクルの回数は任意である。
【0071】
・上記実施の形態では、負極活性工程において、電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行う第4工程と、電池の充電容量の範囲内での複数回の充放電サイクルを行う第5工程とを各別に設けた。これに限らず、一つの工程によって負極を活性化する工程としてもよい。
【0072】
・上記実施の形態では、負極活性工程において、管理温度を「50℃」以下としたが、この値に限定されるものではない。
・上記実施の形態では、角形密閉式電池を製造の対象としたが、これに限らず、水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池であればその適用対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)、(b)は、本発明にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法の一実施の形態において製造の対象とする角形密閉式電池の概略構成を示す平面図及び側面図。
【図2】同角形密閉式電池の側面方向から見た拡大断面構造を示す部分断面図。
【図3】同角形密閉式電池を構成する極板群の拡大断面構造を示す断面図。
【図4】(a)は、同実施の形態にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法について、その活性化工程に用いられる電流の範囲を示すタイムチャート。(b)は、同活性化工程における電池のSOC(充電状態)の推移を示すタイムチャート。
【図5】本発明にかかるニッケル水素蓄電池の製造方法の実施例及び比較例とともに、各特性試験の測定結果を一覧して示す図。
【図6】比較例1と実施例3との比較のもとに保管日数に対するDC−IR(直流内部抵抗)値の推移を示したグラフ。
【符号の説明】
【0074】
100…一体電槽、100a…隔壁、100b…電槽、120,130…接続端子、140…極板群、140…極板群、141…正極板、141a…リード部、142…負極板、142a…リード部、143…セパレータ、144…外周セパレータ、150…集電板、151…接続突部、160…集電板、170…貫通孔、200…蓋体、210…安全弁、220…センサ装着穴、300…角形ケース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ニッケル及びコバルトを活物質とする正極と水素吸蔵合金を活物質とする負極とを備えて構成されるニッケル水素蓄電池を製造する方法であって、
前記正極と前記負極とがセパレータを介して積層して構成された極板群を電解液とともにケースに封入して電池を組み立てる組立工程と、この組み立てた電池の充電状態が部分充電状態内での充電を行って前記正極中のコバルトを充電するコバルト充電工程と、このコバルト充電した電池の過充電及び放電による初期充放電により前記正極中の水酸化ニッケルの活性化を含む正極活物質の活性化を図る正極活性工程と、この正極活性された電池に対する1乃至複数回の充放電サイクルの実施によって前記負極の活物質である水素吸蔵合金の活性化を図る負極活性工程とを含み、
前記負極活性工程では、前記1乃至複数回の充放電サイクル中、少なくとも1サイクルは、当該電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行う
ことを特徴とするニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項2】
前記負極活性工程における当該電池の充電状態が過充電状態となる充電に際しては、その充電工程を2段階以上の工程に分け、第1段階の充電工程では「1C」を超える第1の電流で同電池の充電容量以内での充電を行い、第2段階以降の充電工程で前記第1の電流よりも小さい第2の電流により当該電池の充電状態が過充電状態になるまで充電を行う
請求項1に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1段階の充電工程での前記第1の電流による前記充電容量以内での充電が、充電状態(SOC)「60〜95%」の範囲での充電であり、前記第2段階以降の充電工程での前記第2の電流による前記充電状態が過充電状態となる充電が、充電状態(SOC)「110〜130%」の範囲での充電である
請求項2に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2段階以降の充電工程での前記第2の電流による前記充電状態が過充電状態となる充電が、充電状態(SOC)「115〜125%」の範囲での充電である
請求項3に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項5】
前記第1の電流が「2〜5C」の範囲の電流であり、前記第2の電流が「1.1〜2C」の範囲の電流である
請求項2〜4のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項6】
前記負極活性工程では複数回の充放電サイクルを繰り返し、同負極活性工程における当該電池の充電状態が過充電状態となる充電を、当該負極活性工程の最初の充放電サイクルにて行う
請求項1〜5のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項7】
前記負極活性工程に際しての温度環境が「50℃」以内に維持される
請求項1〜6のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。
【請求項8】
前記コバルト充電工程における電池の充電状態が部分充電状態内での充電が、「0.05〜0.2C」の範囲の電流による充電状態(SOC)「10〜30%」の範囲での充電であり、前記正極活性工程における電池の過充電及び放電による初期充放電が、「0.2〜1C」の範囲の電流での過充電、及びその後の充電状態(SOC)「10%」以下になるまでの放電である
請求項1〜7のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153261(P2010−153261A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331467(P2008−331467)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(399107063)パナソニックEVエナジー株式会社 (193)
【Fターム(参考)】