説明

ニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法、ニッケル酸ランタン膜の製造方法、及び圧電素子の製造方法

【課題】特殊な環境が不要で短時間且つ低コストでニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができるニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法、ニッケル酸ランタン膜の製造方法、及び圧電素子の製造方法を提供する。
【解決手段】圧電素子300(アクチュエーター)は、絶縁体膜55上に、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられて厚さが3μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、圧電体層70の上方に設けられた第2電極80とが、積層形成される。圧電膜70であるニッケル酸ランタン膜形成用組成物は、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、混合溶液を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法、ニッケル酸ランタン膜の製造方法、及び圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電デバイスに用いられる圧電素子としては、電気機械変換機能を呈する圧電材料、例えば、結晶化した誘電材料からなる強誘電体層を、2つの電極で挟んで構成されたものがある。このような圧電素子では、ニッケル酸ランタン層が用いられることがある。具体的には、ニッケル酸ランタン層は、室温で高い電気伝導度を示すことから、酸化物電極として使用することができる。また、ニッケル酸ランタン層は、(001)面に自然配向(優先配向)することが知られており、配向させたニッケル酸ランタン層上に、結晶構造や格子定数が比較的に近いチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される強誘電体層を成長させることにより、強誘電体層の配向を制御することができ、配向制御層としても機能することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなニッケル酸ランタン層(ニッケル酸ランタン膜)の製造方法としては、スパッタリング法等の気相法や化学溶液法(CSD法:Chemical Solution Deposition)が挙げられる。しかしながら、気相法であるスパッタリング法は、真空中で酸化物ターゲットに対し、例えばイオン化されたアルゴンなどを衝突させ、それによってはじき出された元素を基板に蒸着させることでニッケル酸ランタン膜を作製する方法であり、高真空が必要であることから、装置の大型化は避けられずコストがかかるという問題がある。
【0004】
一方、化学溶液法は、目的組成の金属元素を含む前駆体溶液(ニッケル酸ランタン膜形成用組成物)を用いて、例えばスピンコート法、ディップコート法、インクジェット法などにより基板上に成膜し、焼成することでニッケル酸ランタン膜を作製する手法である(例えば、特許文献2参照)。この方法では、高真空を必要としないため小型の装置で製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−043095号公報
【特許文献2】特開2008−251916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載されているようなニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法では、合成に特殊な環境(N雰囲気下等)が必要であるという問題や、合成に多大な時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、特殊な環境が不要で短時間且つ低コストでニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができるニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法、ニッケル酸ランタン膜の製造方法、及び圧電素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、前記混合溶液を加熱することを特徴とするニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法にある。
かかる態様では、特殊な環境が不要で短時間且つ低コストでニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができる。
【0009】
ここで、前記混合溶液における前記酢酸と前記水とのモル比(酢酸/水)を0.6以上6.3以下とするのが好ましい。これによれば、ランタンアセチルアセトナート及びニッケルアセチルアセトナートを、酢酸及び水の混合溶液に容易に溶解させることができ、効率よくニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができる。
【0010】
本発明の他の態様は、上記のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を塗布してニッケル酸ランタン前駆体膜を形成する工程と、前記ニッケル酸ランタン前駆体膜を加熱により結晶化させてニッケル酸ランタン膜を形成する工程と、を具備することを特徴とするニッケル酸ランタン膜の製造方法にある。
かかる態様では、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物が安定であるので厳格な環境管理をする必要がなく、低コストでニッケル酸ランタン膜を製造することができる。
【0011】
本発明の他の態様は、上記のニッケル酸ランタン膜の製造方法によりニッケル酸ランタン層を形成する工程と、前記ニッケル酸ランタン層上方に圧電体膜から構成される圧電体層を形成する工程と、を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法にある。
かかる態様では、ニッケル酸ランタン層と圧電体膜とを備えた圧電素子を低コストで製造することができる。また、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物が安定であるので、製造工程において厳格な環境管理をする必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態2に係る記録ヘッドの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】実施形態2に係る記録ヘッドの平面図及び断面図である。
【図3】実施例7のXRD測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法は、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、混合溶液を加熱することにより、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物を得るというものである。これにより、特殊な環境が不要で短時間且つ低コストでニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができる。このニッケル酸ランタン膜形成用組成物により形成されたニッケル酸ランタン膜は、(001)面に自然配向(優先配向)する。
【0014】
具体的には、まず、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得る(混合溶液調製工程)。なお、水を混合しない場合又は酢酸を混合しない場合は、ランタンアセチルアセトナート及びニッケルアセチルアセトナートを溶解させることができず、また、混合溶液の安定性が悪化する。
【0015】
本発明にかかる混合溶液は、ランタンアセチルアセトナートと、ニッケルアセチルアセトナートを、酢酸と水とを混合した酢酸水に溶解させたものである。混合溶液の調製方法は特に限定されず、例えば、所定量のランタンアセチルアセトナートとニッケルアセチルアセトナートとを混合した後、これに、酢酸及び水を添加することにより混合溶液を得ることができる。酢酸及び水の混合方法も特に限定されず、酢酸を添加した後に水を添加してもよく、水を添加した後に酢酸を添加してもよく、酢酸と水とを混合してから添加してもよい。
【0016】
また、混合溶液調製工程では、ランタンアセチルアセトナート及びニッケルアセチルアセトナートは、ランタン(La)及びニッケル(Ni)の各金属が所望のモル比となるように混合する。具体的には、例えば、LaNiO(x=2〜3)のニッケル酸ランタン膜を形成するものとする場合、ランタン:ニッケルのモル比が1:1となるように、ランタンアセチルアセトナートとニッケルアセチルアセトナートとを混合する。
【0017】
混合溶液調製工程では、混合溶液における酢酸と水とのモル比(酢酸/水)が、例えば、0.6以上6.3以下となるように調製するのが好ましい。この範囲とすることにより、ランタンアセチルアセトナート及びニッケルアセチルアセトナートを、酢酸及び水を混合した酢酸水に容易に溶解させることができ、効率よくニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができるためである。
【0018】
また、混合溶液調製工程では、混合溶液の金属濃度が0.5mol/L以下となるように調製するのが好ましく、0.1mol/L以上0.5mol/L以下となるように調製するのがより好ましい。混合溶液の金属濃度が0.5mol/L以下となるようにすることにより、ニッケル酸ランタン膜を形成するのにより好適なニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造することができる。具体的には、ニッケル酸ランタン膜を形成するのに好適な粘度のニッケル酸ランタン膜形成用組成物とすることができ、膜厚が一定で膜均一性が良好なニッケル酸ランタン膜を容易に形成することができるものとなる。なお、0.1mol/L未満とすると、ニッケル酸ランタン膜を形成する際の膜の収縮率、具体的には、後述する脱脂工程におけるニッケル酸ランタン前駆体膜の収縮率が大きくなることで残留応力が大きくなりやすく、ニッケル酸ランタン膜にクラックが発生し易くなる虞がある。
やすく、ニッケル酸ランタン膜にクラックが発生し易くなる虞がある。
【0019】
次に、得られた混合溶液を加熱する(加熱工程)。これにより、反応が進行し、所定の金属錯体を含む錯体溶液からなるニッケル酸ランタン膜形成用組成物を得ることができる。本発明では、従来の加熱時間(特許文献2に記載の合成時間)と比較して、合成時間(加熱時間)を著しく短くすることができる。なお、本実施形態では、混合溶液を70℃で1時間加熱して、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物とした。
【0020】
また、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物は、必要に応じて、溶媒等を添加したものであってもよい。
【0021】
上述したように、本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法では、水を含む系でニッケル酸ランタン膜形成用組成物を合成している。このため、従来の製造方法のように、脱水処理をする必要がなく、大気中の水との反応を防ぐためにN雰囲気下やAr雰囲気下などの特殊な環境下で合成をする必要がない。また、短時間でニッケル酸ランタン膜形成用組成物を合成することができる。さらに、高真空を必要としないため、小型の装置で製造することができ、また、低コストで製造することができる。
【0022】
そして、本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法により得られるニッケル酸ランタン膜形成用組成物は水を含む大気中でも安定であり、取り扱いが容易なものとなる。
【0023】
本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物は、CSD法(Chemical Solution Deposition)の塗布溶液として用いられるものである。CSD法とは、詳細については後述するが、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物を塗布してニッケル酸ランタン前駆体膜を形成する工程と、ニッケル酸ランタン前駆体膜を加熱することにより結晶化させてニッケル酸ランタン膜を形成する工程と、を備えるものであり、例えば、ゾル−ゲル法、MOD法等が挙げられる。言い換えれば、本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物は、MOD法又はゾル−ゲル法に好適に用いることができるものである。
【0024】
ここで、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いたニッケル酸ランタン膜の製造方法について説明する。具体的には、例えば、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物を被対象物上にスピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等で塗布しニッケル酸ランタン前駆体膜を形成する(塗布工程)。次いで、このニッケル酸ランタン前駆体膜を所定温度(例えば100℃以上250℃以下)に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥したニッケル酸ランタン前駆体膜を所定温度(例えば300℃以上500℃以下)に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、ニッケル酸ランタン前駆体膜に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。乾燥工程や脱脂工程の雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
【0025】
次に、ニッケル酸ランタン前駆体膜を所定温度(例えば500℃以上800℃以下)に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、ニッケル酸ランタン膜を形成する(焼成工程)。この焼成工程においても、雰囲気は限定されず、大気中でも不活性ガス中でもよい。
【0026】
なお、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
【0027】
なお、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返すことにより、複数層のニッケル酸ランタン膜からなるものとしてもよい。 これにより、ニッケル酸ランタン膜(LNO膜)を形成する。
【0028】
上述した製造方法により得られるニッケル酸ランタン膜としては、LaNiO、LaNi、LaNiO、LaNiO、LaNi、LaNi10等が挙げられる。
【0029】
上述したように、本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いることにより、ニッケル酸ランタン膜を化学溶液法で形成できるため、スパッタリング法のように、ターゲットとして使用した酸化物から組成がずれるという問題や、高真空のための装置の大型化の問題もなく、特殊な環境が不要で容易に低コストでニッケル酸ランタン膜を製造することができる。また、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物が安定であるので厳格な環境管理をする必要がない。
【0030】
(実施形態2)
図1は、本発明の実施形態2に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′線断面図である。
【0031】
図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には、振動板を構成する二酸化シリコンからなる厚さ0.5〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0032】
流路形成基板10には、一方の面とは反対側の面となる他方面側から異方性エッチングすることにより、圧力発生室12が形成されている。そして、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が同じ色のインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1方向と称し、これと直交する方向を第2方向と称する。また、流路形成基板10の圧力発生室12の第2方向の一端部側には、インク供給路14と連通路15とが隔壁11によって区画されている。また、連通路15の一端には、各圧力発生室12の共通のインク室(液体室)となるマニホールド100の一部を構成する連通部13が形成されている。すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12、インク供給路14、連通路15及び連通部13からなる液体流路が設けられている。
【0033】
インク供給路14は、圧力発生室12の第2方向一端部側に連通し且つ圧力発生室12より小さい断面積を有する。例えば、本実施形態では、インク供給路14は、マニホールド100と各圧力発生室12との間の圧力発生室12側の流路を幅方向に絞ることで、圧力発生室12の幅より小さい幅で形成されている。なお、このように、本実施形態では、流路の幅を片側から絞ることでインク供給路14を形成したが、流路の幅を両側から絞ることでインク供給路を形成してもよい。また、流路の幅を絞るのではなく、厚さ方向から絞ることでインク供給路を形成してもよい。さらに、各連通路15は、インク供給路14の圧力発生室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(第1方向)より大きい断面積を有する。本実施形態では、連通路15を圧力発生室12と同じ断面積で形成した。
【0034】
すなわち、流路形成基板10には、圧力発生室12と、インク供給路14と、連通路15とが複数の隔壁11により区画されて設けられている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の一方面は、振動板を構成する弾性膜50によって画成されている。
【0035】
一方、流路形成基板10の圧力発生室12等の液体流路が開口する一方面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱用着フィルム等を介して接合されている。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0036】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、二酸化シリコンからなり厚さが例えば、約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)等からなる絶縁体膜55が積層形成されている。
【0037】
また、絶縁体膜55上には、第1電極60と、第1電極60の上方に設けられて厚さが3μm以下、好ましくは0.3〜1.5μmの薄膜である圧電体層70と、圧電体層70の上方に設けられた第2電極80とが、積層形成されて、圧電素子300(アクチュエーター)を構成している。なお、ここで言う上方とは、直上だけでなく、間に他の部材が介在した状態も含むものである。ここで、圧電素子300は、第1電極60、圧電体層70、及び第2電極80、を含む部分をいう。
【0038】
圧電素子300は、一般的には、何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極をそれぞれ独立する個別電極とする。本実施形態では、圧電素子300の実質的な駆動部となる各圧電体能動部の個別電極として第1電極60を設け、複数の圧電体能動部に共通する共通電極として第2電極80を設けるようにした。ここで、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部といい、圧電体能動部から連続するが第1電極60と第2電極80に挟まれておらず、電圧駆動されない部分を圧電体非能動部という。
【0039】
なお、上述した例では、弾性膜50、絶縁体膜55、及び第1電極60が圧電素子300と共に変形する振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、弾性膜50及び絶縁体膜55を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。例えば、弾性膜50のみを振動板とした場合、絶縁体膜55を設けた場合よりも剛性が低いため、変位量を大きくすることができる。
【0040】
ここで、図2(b)に示すように、本実施形態の第1電極60は、例えば、白金からなる配線層61と、配線層61上に形成されたニッケル酸ランタン層(LNO層)62との二層から構成されるものである。
【0041】
かかるニッケル酸ランタン層62は、実施形態1のニッケル酸ランタン膜形成用組成物、具体的には、ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、混合溶液を加熱することにより得られたニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いて形成されているものである。ニッケル酸ランタン層62は、結晶の配向面が(001)面に優先配向(自然配向)する。ニッケル酸ランタンとしては、LaNiO、LaNi、LaNiO、LaNiO、LaNi、LaNi10等が挙げられ、本実施形態では、LaNiOを用いた。
【0042】
また、本実施形態では、配線層61は、白金からなる白金層としたが、これに限定されず、例えば、イリジウム、酸化イリジウムを含む酸化イリジウム層、白金層と酸化イリジウム層の積層構造等が挙げられる。
【0043】
配線層61の厚さは特に限定されないが、例えば、10〜300nm程度とすればよい。また、ニッケル酸ランタン層62の厚さも特に限定されないが、例えば10〜100nm程度とすればよい。本実施形態では、配線層61の厚さを100nmとし、ニッケルランタン層の厚さを40nmとした。
【0044】
また、圧電体層70の材料は特に限定されないが、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の鉛を有する強誘電性圧電性材料や、これにニオブ、ニッケル、マグネシウム、ビスマス又はイットリウム等の金属を添加したリラクサ強誘電体等が用いられる。また、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸バリウムストロンチウム((Ba,Sr)TiO)、鉄酸ビスマス(BiFeO)、鉄酸チタン酸マンガン酸ビスマスバリウム((Bi,Ba)(Fe,Ti,Mn)O)、マグネシウム酸ニオブ酸鉛(PMN)とチタン酸鉛(PT)との固溶体等でもよい。
【0045】
圧電体層70は、ペロブスカイト構造、すなわちABO型構造の複合酸化物であることが好ましい。なお、ペロブスカイト構造は、Aサイトは酸素が12配位しており、また、Bサイトは酸素が6配位して8面体(オクタヘドロン)をつくっている構造である。
【0046】
本実施形態においては、圧電体層70は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる。かかる圧電体層70は、(001)面に優先配向したニッケル酸ランタン層62上に設けられる。さらに、圧電体層70は、分極モーメントの向いている方向を示す分極方向が膜面垂直方向(圧電体層70の厚さ方向、すなわち、第1電極60又は第2電極80が設けられた面に対して垂直な方向)に対して所定角度傾いているエンジニアード・ドメイン配置であることが望ましい。圧電体層70の分極方向がエンジニアード・ドメイン配置となることで、圧電体層70として良好な圧電特性を得ることができる。
【0047】
第2電極80としては、Ir,Pt,タングステン(W),タンタル(Ta),モリブデン(Mo)等の各種金属の何れでもよく、また、これらの合金や、酸化イリジウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0048】
このような各圧電素子300の第2電極80には、インク供給路14側の端部近傍から引き出され、流路形成基板10の絶縁体膜55上に延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。
【0049】
このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上、すなわち、第1電極60、弾性膜50及びリード電極90上には、マニホールド100の少なくとも一部を構成するマニホールド部31を有する保護基板30が接着剤35を介して接合されている。このマニホールド部31は、本実施形態では、保護基板30を厚さ方向に貫通して圧力発生室12の幅方向に亘って形成されており、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通のインク室となるマニホールド100を構成している。
【0050】
また、保護基板30の圧電素子300に対向する領域には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部32が設けられている。圧電素子保持部32は、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。
【0051】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0052】
また、保護基板30には、保護基板30を厚さ方向に貫通する貫通孔33が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔33内に露出するように設けられている。
【0053】
また、保護基板30上には、並設された圧電素子300を駆動するための駆動回路120が固定されている。この駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)等を用いることができる。そして、駆動回路120とリード電極90とは、ボンディングワイヤー等の導電性ワイヤーからなる接続配線121を介して電気的に接続されている。
【0054】
また、このような保護基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなり、この封止膜41によってマニホールド部31の一方面が封止されている。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0055】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドでは、図示しない外部インク供給手段と接続したインク導入口からインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路120からの記録信号に従い、圧力発生室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、第1電極60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0056】
このような圧電素子300を流路形成基板10上に形成する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、シリコンウェハーである流路形成基板用ウェハーの表面に弾性膜50を構成する二酸化シリコン(SiO)等からなる二酸化シリコン膜を形成する。次いで、弾性膜50(二酸化シリコン膜)上に、酸化ジルコニウム等からなる絶縁体膜55を形成する。
【0057】
次に、絶縁体膜55上に、第1電極60を形成する。具体的には、まず、配線層61をスパッタリング法、レーザーアブレーション法やMOCVD法等により形成する。次に、ニッケル酸ランタン層62を形成する。ニッケル酸ランタン層62の形成方法は、実施形態1のニッケル酸ランタン膜の製造方法と同一であるので、説明を省略する。
【0058】
次いで、第1電極60上に、圧電体層70を積層する。圧電体層70の製造方法は特に限定されないが、例えば、有機金属錯体を溶媒に溶解・分散したゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体層70を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いて圧電体層70を形成できる。なお、圧電体層70の製造方法は、ゾル−ゲル法に限定されず、例えば、MOD(Metal−Organic Decomposition)法などの液相法や、PVD法、CVD法などを用いてもよい。
【0059】
例えば、まず、第1電極60上に、圧電体層70となる圧電材料の構成金属を含有する有機金属錯体を含むゾルやMOD溶液(前駆体溶液)を、スピンコート法などを用いて、塗布して圧電体前駆体膜を形成する(塗布工程)。
【0060】
塗布する前駆体溶液は、例えば、圧電体層70となる圧電材料の構成金属をそれぞれ含む有機金属錯体を、各構成金属が所望のモル比となるように混合し、該混合物をアルコールなどの有機溶媒を用いて溶解または分散させたものである。圧電材料の構成金属を含む有機金属錯体としては、例えば、金属アルコキシド、有機酸塩、βジケトン錯体などを用いることができる。具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。鉛(Pb)を含む有機金属錯体としては、例えば酢酸鉛などが挙げられる。ジルコニウム(Zr)を含む有機金属錯体としては、例えばジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムモノアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート等が挙げられる。チタニウム(Ti)を含む有機金属錯体としては、例えばチタニウムアルコキシド、チタニウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0061】
次いで、この圧電体前駆体膜を所定温度、例えば130℃〜180℃程度に加熱して一定時間乾燥させる(乾燥工程)。次に、乾燥した圧電体前駆体膜を所定温度、例えば300℃〜400℃に加熱して一定時間保持することによって脱脂する(脱脂工程)。なお、ここで言う脱脂とは、圧電体前駆体膜に含まれる有機成分を、例えば、NO、CO、HO等として離脱させることである。
【0062】
次に、圧電体前駆体膜を所定温度、例えば650℃〜800℃程度に加熱して一定時間保持することによって結晶化させ、圧電体膜を形成する(焼成工程)。乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程で用いられる加熱装置としては、例えば、赤外線ランプの照射により加熱するRTA(Rapid Thermal Annealing)装置やホットプレート等が挙げられる。
【0063】
なお、上述した塗布工程、乾燥工程及び脱脂工程や、塗布工程、乾燥工程、脱脂工程及び焼成工程を所望の膜厚等に応じて複数回繰り返すことにより、複数層の圧電体膜からなる圧電体層を形成してもよい。
【0064】
圧電体層70を形成した後は、圧電体層70上に、例えば、白金等の金属からなる第2電極80を積層し、圧電体層70及び第2電極80を同時にパターニングして圧電素子300を形成する。
【0065】
その後、必要に応じて、600℃〜700℃の温度域でポストアニールを行ってもよい。これにより、圧電体層70と第1電極60や第2電極80との良好な界面を形成することができ、かつ、圧電体層70の結晶性をさらに改善することができる。
【0066】
本実施形態では、ニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いて形成したニッケル酸ランタン層62上方に、圧電体層70を形成することにより、単結晶基板やシード層を用いることなく、低コストで(100)面に優先配向した圧電体層70を形成することができる。また、本実施形態において用いたニッケル酸ランタン膜形成用組成物が安定であるので製造工程において、厳格な環境管理をする必要がない。
【0067】
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
まず、ランタンアセチルアセトナート(ランタンアセチルアセトナート2水和物(La(acac))・2HO)とニッケルアセチルアセトナート(ニッケルアセチルアセトナート2水和物[Ni(acac)・2HO)を、ランタンとニッケルがそれぞれ0.005molとなるようにビーカーに加えた。その後、酢酸水溶液(酢酸99.7重量%)25mlを加え、さらに、水5mlを加えて混合した。その後、溶液の温度が70℃となるよう、ホットプレートで加熱し、約1時間加熱攪拌してニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0069】
(実施例2)
酢酸水溶液を10mlとした以外は実施例1と同様にして、実施例2のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0070】
(実施例3)
酢酸水溶液を100mlとした以外は実施例1と同様にして、実施例3のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0071】
(実施例4)
酢酸水溶液を83.3ml、水を16.7mlとした以外は実施例1と同様にして、実施例4のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0072】
(実施例5)
酢酸水溶液を41.7ml、水を8.3mlとした以外は実施例1と同様にして、実施例5のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0073】
(実施例6)
酢酸水溶液を16.7ml、水を3.3mlとした以外は実施例1と同様にして、実施例6のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0074】
(比較例1)
酢酸水溶液を5mlとし、水を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例1のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0075】
(比較例2)
酢酸水溶液を30mlとし、水を混合しなかった以外は実施例1と同様にして、比較例2のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0076】
(比較例3)
硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)をビーカーに採り、水和物の除去のため150℃で1時間以上乾燥させる。次に室温まで冷却の後、2−メトキシエタノールを加えて、室温で3時間攪拌することで、硝酸ランタンを溶解させた(溶液A)。また、酢酸ニッケル四水和物((CHCOO)Ni・4HO)を別のセパラブルフラスコに採り、水和物の除去のため150℃で1時間乾燥の後、200℃で1時間、計2時間乾燥させた。次に、2−メトキシエタノールおよび2−アミノエタノールを加え、110℃で30分間攪拌した(溶液B)。
【0077】
溶液Bを室温まで冷却後、溶液Aを溶液Bが入っているセパラブルフラスコに投入する。これらの混合液を室温で3時間攪拌することにより、比較例3のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を製造した。
【0078】
【表1】

【0079】
比較例1及び2では、酢酸にランタンアセチルアセトナートとニッケルアセチルアセトナートが完全には溶解しなかった。
【0080】
これに対し、実施例1〜6では1時間の加熱で反応が十分に進行しており、比較例3のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法と比較して、合成時間を大幅に短縮できることが確認された。
【0081】
(実施例7)
まず、シリコン基板の表面に熱酸化により二酸化シリコン膜を形成した。次に、二酸化シリコン膜上にスパッタ法によりジルコニウム膜を作製し、熱酸化することで酸化ジルコニウム膜を形成した。次に、酸化ジルコニウム膜上に(111)面に配向した白金を150nm積層して配線層61を形成した。
【0082】
次に、配線層61上に、実施例1のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を使用してニッケル酸ランタン膜を形成した。具体的には、上記ニッケル酸ランタン膜形成用組成物(前駆体溶液)を酸化チタン膜及び白金膜が形成された上記基板上に滴下し、3000rpmで基板を回転させてニッケル酸ランタン前駆体膜を形成した(塗布工程)。次に180℃で5分間、400℃で5分間加熱した(乾燥及び脱脂工程)。その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)装置で、酸素雰囲気中で750℃で5分間焼成して結晶化させて、厚さ約30nmのニッケル酸ランタン層62を形成した。
【0083】
次に、ゾル−ゲル法により圧電体層70を形成した。その手法は以下のとおりである。まず、酢酸鉛3水和物(Pb(CHCOO)・3HO)、チタニウムイソプロポキシド(Ti[OCH(CH)、ジルコニウムアセチルアセトナート(Zr(CHCOCHCOCH)を主原料とし、ブチルセロソルブ(C14)を溶媒とし、ジエタノールアミン(C11NO)を安定剤とし、ポリエチレングリコール(C)を増粘剤として混合した前駆体溶液を、第1電極60上にスピンコートにより塗布して、圧電体前駆体膜を形成した(塗布工程)。なお、前駆体溶液は、酢酸鉛3水和物:チタニウムイソプロポキシド:ジルコニウムアセチルアセトナート:ブチルセロソルブ:ジエタノールアミン:ポリエチレングリコール=1.1:0.44:0.56:3:0.65:0.5(モル比)の割合で混合した。また、酢酸鉛3水和物は蒸発による減少を考慮して10%過剰に加えている。次に80℃(乾燥工程)及び360℃(脱脂工程)の熱処理を経た後、700℃で焼成し圧電体前駆体膜を結晶化させて、厚さ1300nmのチタン酸ジルコン酸鉛からなりペロブスカイト構造を有する圧電体層70を形成した(焼成工程)。
【0084】
(試験例1)
Bruker AXS社製の「D8 Discover;微小領域X線回折装置」を用い、X線源にCuKα線を使用し、室温で、実施例7のX線回折チャートを求めた。実施例7の回折強度−回折角2θの相関関係を示す図であるX線回折パターンを、図4に示す。
【0085】
その結果、実施例7の圧電体層は、ペロブスカイト型構造(ABO型構造)を形成していることが確認された。また、上記のX線回折測定(2θ/θ測定)において、PZT結晶に起因するX線回折パターンと下記の計算式から、圧電体層の(100)面配向率を算出した。なお、圧電体層は、擬キュービック構造であるため、ここでは(100)面と表記している。
【0086】
[式1]
圧電体層の(100)面配向率(%)=[PZT結晶の(100)面の回折ピークの面積]/[PZT結晶に起因するすべての回折ピークの面積の総和]×100
上記「回折ピークの面積」は、Fittingにより算出し、Fitting関数はGaussianとLorentzianの和の関数であるpseudo−Voigt関数を使用した。
【0087】
この結果、実施例7の圧電体層の(100)面配向率は99%以上であり、(100)面に優先配向していることが確認された。
【0088】
なお、作成から1ヶ月経過した実施例1のニッケル酸ランタン組成物を用いて形成した圧電体層も(100)面に優先配向することが確認された。
【0089】
上述した製造条件では、実施例1のニッケル酸ランタン膜形成用組成物を用いることにより、圧電体層を(100)面に優先配向させることができることが確認された。すなわち、実施例1の圧電セラミックス膜形成用組成物を用いて形成したニッケル酸ランタン膜は、配向制御層として機能することが確認された。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述したものに限定されるものではない。例えば、実施形態2では、第1電極60が配線層61を備えるものとしたが、配線層61を設けなくてもよい。
【0091】
上述した実施形態2では、圧電素子の一例として、インクジェット式記録ヘッドに用いられる圧電素子を挙げて説明したが、本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載される圧電素子を形成する際に限らず、他の圧電デバイスに用いられる圧電素子のニッケル酸ランタン膜を形成するのに好適に用いることができる。
【0092】
本発明のニッケル酸ランタン膜形成用組成物により形成されるニッケル酸ランタン膜は、例えば、圧電素子の電極層及び/又は配向制御層として特に好適に用いることができる。
【0093】
また、本発明にかかる圧電素子は、液体噴射ヘッドに用いられる圧電素子に限定されず、その他のデバイスにも用いることができる。その他のデバイスとしては、例えば、超音波発信器等の超音波デバイス、超音波モーター、温度−電気変換器、圧力−電気変換器、強誘電体トランジスター、圧電トランス、赤外線等の有害光線の遮断フィルター、量子ドット形成によるフォトニック結晶効果を使用した光学フィルター、薄膜の光干渉を利用した光学フィルター等のフィルターなどが挙げられる。また、センサーとして用いられる圧電素子、強誘電体メモリーとして用いられる圧電素子にも本発明は適用可能である。圧電素子が用いられるセンサーとしては、例えば、赤外線センサー、超音波センサー、感熱センサー、圧力センサー、焦電センサー、及びジャイロセンサー(角速度センサー)等が挙げられる。
【符号の説明】
【0094】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 13 連通部、 14 インク供給路、 15 連通路、 20 ノズルプレート、 21 ノズル開口、 30 保護基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 第1電極、 70 圧電体層、 80 第2電極、 90 リード電極、 100 マニホールド、 120 駆動回路、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランタンアセチルアセトナート、ニッケルアセチルアセトナート、酢酸、及び水を混合して混合溶液を得た後、前記混合溶液を加熱することを特徴とするニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法において、前記混合溶液における前記酢酸と前記水とのモル比(酢酸/水)を0.6以上6.3以下とすることを特徴とするニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のニッケル酸ランタン膜形成用組成物の製造方法により製造したニッケル酸ランタン膜形成用組成物を塗布してニッケル酸ランタン前駆体膜を形成する工程と、
前記ニッケル酸ランタン前駆体膜を加熱により結晶化させてニッケル酸ランタン膜を形成する工程と、
を具備することを特徴とするニッケル酸ランタン膜の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のニッケル酸ランタン膜の製造方法によりニッケル酸ランタン層を形成する工程と、
前記ニッケル酸ランタン層上方に圧電体膜から構成される圧電体層を形成する工程と、
を具備することを特徴とする圧電素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−1680(P2013−1680A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134629(P2011−134629)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】