説明

ニップ式仮撚装置、及びこれを備える繊維機械

【課題】ベルトの片アタリが防止される、ニップ式仮撚装置を提供する。
【解決手段】基準ベルト1と可動ベルト2を備え、これらを互いに近接させることで走行する糸Yに対して撚りを付与する。可動ベルト2は、基準ベルト対向面1aと、可動ベルト対向面2aと、の平行な関係を維持しながら基準ベルト1に対して進退可能に構成される。基準ベルト1に対して近接する方向へ可動ベルト2を付勢する可動ベルト近接付勢部18が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニップ式仮撚装置、及びこれを備える繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として特許文献1は、所定の設定角度θの下で交差させた第1の無端ベルトV1と第2の無端ベルトV2を備え、これらのベルトV1・V2間に糸Yを一定接圧の下で通して、ベルト走行力の分力である加撚力と送出力を糸Yに付与する形式のベルト式仮撚装置7を開示する。このベルト式仮撚装置7は、以下のように構成される。第1の無端ベルトV1はブラケット13のプーリ14、15に掛けられ、このブラケット13は駆動プーリ14の軸を中心に旋回可能とされる。この構成で、ベルトV1の表面を他のベルトV2の表面に対して圧接・離反できるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58-197328号公報(第2頁第2カラム第11〜18行目、同第3カラム第12〜16行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の構成では、駆動プーリ14の軸まわりに旋回することでベルトV1とベルトV2が圧接する構成であるから、ベルトV1とベルトV2との片アタリは免れられない。
【0005】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ベルトの片アタリが防止される、ニップ式仮撚装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第一の観点によれば、以下のように構成される、ニップ式仮撚装置が提供される。即ち、基準側のベルトとしての基準ベルトと、可動側のベルトとしての可動ベルトと、を備え、前記の基準ベルト及び可動ベルトを走行させつつ互いに近接させることで、前記の基準ベルト及び可動ベルトに挟まれながら走行する糸に対して撚りを付与する。前記可動ベルトは、前記可動ベルトに対して対向する前記基準ベルトの部分としての基準ベルト対向面と、前記基準ベルトに対して対向する前記可動ベルトの部分としての可動ベルト対向面と、の平行な関係を維持しながら前記基準ベルトに対して進退可能に構成される。前記基準ベルトに対して近接する方向へ前記可動ベルトを付勢する可動ベルト近接付勢手段が設けられる。以上の構成によれば、前記の基準ベルト対向面と可動ベルト対向面とが片アタリすることがないので前記の基準ベルトや可動ベルト自体の寿命が延びるし、片アタリに起因するベルト発熱が回避されるので熱による糸の品質劣化が防止される。例えば、ベルト幅の大きい基準ベルトや可動ベルトを備えるニップ式仮撚装置や、基準ベルト又は可動ベルトのうち少なくとも何れか一方が複数並列のベルトから成る形式のニップ式仮撚装置においては、上記の効果が特に顕著に現れる。
【0008】
上記のニップ式仮撚装置は、以下のように構成される。即ち、前記可動ベルト近接付勢手段は、前記可動ベルトに対して付与する付勢力を増減可能に構成される。以上の構成によれば、糸に対する前記可動ベルトの接圧(糸に対する前記基準ベルトの接圧)を増減できる。
【0009】
上記のニップ式仮撚装置は、以下のように構成される。即ち、前記可動ベルト近接付勢手段は、空気圧式に構成される。以上の構成によれば、簡素な構成のニップ式仮撚装置が実現される。
【0010】
上記のニップ式仮撚装置は、以下のように構成される。即ち、前記基準ベルトから離反する方向へ前記可動ベルトを付勢する可動ベルト離反付勢手段が設けられる。以上の構成によれば、単に、前記可動ベルト近接付勢手段によって前記可動ベルトに対して付与される付勢力を消失させるだけで、前記可動ベルトを前記基準ベルトから離反させることができる。
【0011】
上記のニップ式仮撚装置は、以下のように構成される。即ち、前記基準ベルトから離反する方向へ前記可動ベルトを移動させる可動ベルト移動手段が設けられる。以上の構成によれば、前記可動ベルト近接付勢手段によって前記可動ベルトに対して付与される付勢力の有無や程度に関わらず、前記可動ベルトを前記基準ベルトから離反させることができる。
【0012】
繊維機械は、上記のニップ式仮撚装置を備えて構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態において繊維機械の一例としての延伸仮撚加工機は、ニップ式仮撚装置を備える。図1は、本発明の一実施形態に係る延伸仮撚加工機の概略構成図である。
【0014】
本実施形態において延伸仮撚加工機100は、給糸パッケージ101を有して糸Yを供給する給糸部102と、この給糸部102から供給される糸Yに対して延伸仮撚加工処理を施す糸加工処理部103と、糸加工処理部103により延伸仮撚加工処理が施された糸Yを巻き取って所定径の巻取パッケージを形成する巻取部104と、から成る錘105を複数で備える。延伸仮撚加工機100をコンパクトとすることを目的として、図1に示されるように、給糸部102や巻取部104は、上下に重ねて配される。
【0015】
給糸パッケージ101は、複数の錘105・105・・・で共通のクリールスタンド106に取着されるペグ107に保持される。
【0016】
糸加工処理部103は、糸Yの走行方向に沿って順に、第一フィードローラ108と、一次ヒータ109と、冷却器110と、ニップ式仮撚装置111と、撚止ガイド112と、ガイドローラ113と、第二フィードローラ114と、インタレースノズル115と、二次ヒータ116と、第三フィードローラ117と、を備えて構成される。
【0017】
第一フィードローラ108と第二フィードローラ114の間で糸Yが延伸されるように、第二フィードローラ114の糸送り速度は、第一フィードローラ108の糸送り速度と比較して大きく設定される。一方、第二フィードローラ114と第三フィードローラ117の間で糸Yが弛緩されるように、第三フィードローラ117の糸送り速度は、第二フィードローラ114の糸送り速度と比較して小さく設定される。
【0018】
ニップ式仮撚装置111は、走行する糸Yに対して撚りを付与するものであって、この糸Yに付与された撚りはニップ式仮撚装置111から糸Yの走行方向上流側へ向かって第一フィードローラ108に至るまで伝播する。糸Yは、延伸されつつ撚りが付与された状態で熱セットされた後、冷却器110で冷却され、ニップ式仮撚装置111を通過するときに解撚される。この延伸仮撚加工処理が施された糸Yには、インタレースノズル115において適宜に交絡部が形成されることで、加撚糸と同程度の集束性が付与される。その後、糸Yは、弛緩された状態で二次ヒータ116において所定の熱処理が施され、巻取部104においてパッケージに巻き取られる。
【0019】
以上の構成で、撚止ガイド112は、糸Yに付与された撚りが撚止ガイド112よりも糸Yの走行方向下流側へ伝播するのを抑止する機能を発揮し、ガイドローラ113は、撚止ガイド112に対する糸Yの巻付角度を調整するのに供される。
【0020】
次に、ニップ式仮撚装置111について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るニップ式仮撚装置の正面図である。本図に示されるように、ニップ式仮撚装置111は、基準側のベルトとしての基準ベルト1と、可動側のベルトとしての可動ベルト2と、を備え、前記の基準ベルト1及び可動ベルト2を走行させつつ互いに近接させることで、前記の基準ベルト1及び可動ベルト2に挟まれながら走行する糸Yに対して撚りを付与するものである。即ち、ニップ式仮撚装置111は、基準ベルト1を含む基準ベルトユニット3と、可動ベルト2を含む可動ベルトユニット4と、を備える。これら基準ベルトユニット3・可動ベルトユニット4は互いに概ね対称の構造とされるので、以下、主として、可動ベルトユニット4の構造を詳細に説明する。
【0021】
可動ベルトユニット4は、延伸仮撚加工機100本体に対して固定されるユニットベース5と、このユニットベース5に対して摺動可能な可動ベルト支持体6と、前記の可動ベルト2と、から構成される。可動ベルト支持体6は、ユニットベース5内に収容される駆動部7と、この駆動部7から突設されるプーリ駆動軸収容筒8と、このプーリ駆動軸収容筒8の先端に配され、該プーリ駆動軸収容筒8内に収容される略示の駆動シャフト9によって回転駆動される駆動プーリ10と、この駆動プーリ10と対を成し、駆動プーリ10と共に可動ベルト2が掛けられる従動プーリ11と、これら駆動プーリ10及び従動プーリ11に掛けられる可動ベルト2に対して所定の張力を付与するための張力付与部12と、から構成される。張力付与部12は、プーリ駆動軸収容筒8の外周面から従動プーリ11へ向かって延びる支持アーム13と、この支持アーム13に対して可動ベルト2の走行方向に沿って摺動可能であって、従動プーリ11を軸支するスライダ14と、これら支持アーム13及びスライダ14の間に介設される図略の圧縮コイルスプリングと、から成る。
【0022】
本実施形態において駆動プーリ10と従動プーリ11に掛けられる可動ベルト2は、可撓性有する無端ベルトであって、そのベルト幅は概ね8〜12[mm]とされる。前記のプーリ駆動軸収容筒8は概ね基準ベルトユニット3へ向かって延在し、可動ベルトユニット4によって支持される可動ベルト2が、基準ベルトユニット3に支持される基準ベルト1と接触可能に構成される。基準ベルト1と可動ベルト2が糸Yを挟むとき、本図に示されるように、可動ベルト2に対して対向する基準ベルト1の部分としての基準ベルト対向面1aと、基準ベルト1に対して対向する可動ベルト2の部分としての可動ベルト対向面2aと、は略平行とされる。そして、本実施形態において可動ベルト2は、基準ベルト対向面1aと、可動ベルト対向面2aと、の平行な関係を維持しながら基準ベルト1に対して進退可能に構成される。即ち、可動ベルト2を支持する可動ベルト支持体6の駆動部7は、ユニットベース5内において、可動ベルト対向面2aに対して垂直な方向へ摺動するように構成される。
【0023】
ここで、図3を参照されたい。図3は、図2の3-3線矢視断面図である。本図に示されるように、ユニットベース5には上記の可動ベルト対向面2aに対して垂直な方向に沿う略示のガイドシャフト15が挿設され、このガイドシャフト15と図示しないリニアブッシングを介して、駆動部7はユニットベース5に対して連結される。この構成で、可動ベルト2は、基準ベルト対向面1aと、可動ベルト対向面2aと、の平行な関係を維持しながら基準ベルト1に対して進退可能とされる。加えて、上記の駆動部7には上記のガイドシャフト15の挿設方向と平行に延びるキー溝16が刻設され、このキー溝16内に収容されるキー17がユニットベース5に設けられ、このキー溝16及びキー17の存在により、ガイドシャフト15まわりの駆動部7の回転が規制されるように構成される。前記のプーリ駆動軸収容筒8は、本図に示されるように駆動部7に対して嵌入され、駆動プーリ10に連結される駆動シャフト9はプーリ駆動軸収容筒8に対して略同軸の関係とされる。
【0024】
ユニットベース5には、基準ベルト1に対して近接する方向Aへ可動ベルト2を付勢する可動ベルト近接付勢部18(可動ベルト近接付勢手段)と、基準ベルト1から離反する方向Bへ可動ベルト2を付勢する可動ベルト離反付勢部19と、基準ベルト1から離反する方向Bへ可動ベルト2を移動させる可動ベルト移動部20と、が設けられる。
【0025】
この可動ベルト近接付勢部18は、本実施形態において空気圧式に構成されることで、可動ベルト2に対して付与する付勢力を増減可能に構成される。可動ベルト近接付勢部18は、具体的には、図略の圧縮空気供給装置に対してエアチューブを介して接続されるエア供給口21と、エア供給口21を介して供給される圧縮空気によって駆動される図略のベロフラムを内蔵する可動ベルト近接付勢部本体22と、このベロフラムの動作に連動するロッド23と、から構成される。このロッド23は、ガイドシャフト15の挿設方向と平行となるように配され、エア供給口21を介して可動ベルト近接付勢部本体22に圧縮空気が供給されると駆動部7に形成されるロッド当接面7aに当接し、圧縮空気によりベロフラムを介してロッド23に作用される圧力が駆動部7に伝達されるように構成される。この可動ベルト近接付勢部18は、駆動部7に伝達される上記圧力(エアー圧)が、基準ベルト1に対して近接する方向Aへ可動ベルト2を付勢するのに供されるように構成される。即ち、可動ベルト2から基準ベルト1を望む方向と、可動ベルト近接付勢部本体22からロッド23乃至ロッド当接面7aを望む方向と、が同一方向とされる。
【0026】
上記の可動ベルト離反付勢部19は、本実施形態においてバネ式に構成され、具体的には、ガイドシャフト15の挿設方向と平行な方向に摺動可能な態様でユニットベース5に支持されるバネ収容体24と、このバネ収容体24と駆動部7の間に介設される圧縮コイルスプリング25と、バネ収容体24をガイドシャフト15の挿設方向と平行な方向に進退移動させるネジ式偏心カム26と、から構成される。上記のバネ収容体24と圧縮コイルスプリング25と駆動部7は、バネ収容体24と駆動部7の間に介設される圧縮コイルスプリング25の自己弾性復元力が可動ベルト2を基準ベルト1から離反させる方向Bへ付勢するのに供されるように配置される。従って、可動ベルト近接付勢部18によって可動ベルト2に対して付与される付勢力と、可動ベルト離反付勢部19によって可動ベルト2に対して付与される付勢力と、は反対の方向に作用するように構成される。ネジ式偏心カム26は、バネ収容体24をガイドシャフト15の挿設方向と平行な方向に進退移動させることで、可動ベルト離反付勢部19によって可動ベルト2に対して付与される付勢力を調節するためのものである。
【0027】
上記の可動ベルト移動部20は、本実施形態においてカム駆動式に構成され、具体的には、ガイドシャフト15の挿設方向と平行な方向に摺動可能な態様でユニットベース5に支持される進出ロッド27と、先端に進出ロッド27と係合する切欠部を有し、この進出ロッド27を進出させるための、カム式ノブ28と、から構成される。このカム式ノブ28による進出ロッド27の進出方向は、可動ベルト2が基準ベルト1から離反する方向と同一の方向に設定され、進出ロッド27がカム式ノブ28との係合により進出すると、進出ロッド27が駆動部7に対して当接し、当該駆動部7を介して可動ベルト2が基準ベルト1から離反するように構成される。カム式ノブ28による進出ロッド27の進出が解除されたときに進出ロッド27が駆動部7から離反する方向へ短時間で退避するよう、進出ロッド27とユニットベース5の間に圧縮コイルスプリング29が介設される。
【0028】
次に、本実施形態に係るニップ式仮撚装置111の作動について説明する。再度、図2を参照されたい。
【0029】
先ず、基準ベルト1と可動ベルト2の間に、加撚対象としての糸Yの太さよりも十分大きな間隙が存在しており、この糸Yは、太線矢印で示される方向へ走行しているものとする。
【0030】
<加撚の開始>
この状態で、糸Yに対する加撚を開始するときは、先ず、図示しないモータによって駆動プーリ10を所定の回転数で回転させて、可動ベルト2を所定速度で走行させた状態とする。この可動ベルト2の走行方向は本図において太線矢印で示される方向である。基準ベルトユニット3についても同様とする。なお、本図において基準ベルト1の走行方向は一見すると糸Yの走行方向に対して逆らう方向のようにも見えるが、本図においては直接的には描かれない前記の基準ベルト対向面1aにおいては、基準ベルト1の走行方向が糸Yの走行方向に対して逆らう方向ではないことが容易に理解されよう。
【0031】
次に、図3に示される可動ベルト近接付勢部18に所定圧力の圧縮空気を導入してロッド23を進出させる。これにより、ロッド23が駆動部7のロッド当接面7aに当接し、ロッド23が可動ベルト近接付勢部本体22から受ける圧力が駆動部7に伝達されることで、駆動部7は、可動ベルト離反付勢部19に属する圧縮コイルスプリング25の自己弾性復元力に抗するかたちで、ガイドシャフト15の挿設方向に沿って摺動し、もって、可動ベルト2が基準ベルト1に対して近接し、やがて、可動ベルト2が糸Yに対して当接すると、ロッド23が可動ベルト近接付勢部本体22から受ける圧力が、糸Yに対する可動ベルト2の接圧(糸Yに対する基準ベルト1の接圧)に変換される。
【0032】
基準ベルト1及び可動ベルト2の走行方向は、何れも、糸Yに対して所定の角度を有しており、もって、基準ベルト1の走行は、糸Yを送出する機能と、糸Yに対して撚りを付与する機能と、を発揮するようになっている。
【0033】
<加撚の停止:1>
上記の状態で、糸Yに対する加撚を停止するときは、先ず、可動ベルト近接付勢部18に対する圧縮空気の供給を停止すると共に、既に可動ベルト近接付勢部18に対して供給された圧縮空気を抜くことで、可動ベルト近接付勢部18によって駆動部7に対して付与される付勢力を消失させる。すると、糸Yに対する可動ベルト2の接圧がゼロとなると共に、可動ベルト離反付勢部19によって駆動部7に対して付与される付勢力により駆動部7は可動ベルト2を基準ベルト1から離反させる方向に移動(退避)し、基準ベルト1と可動ベルト2の間に糸Yの太さと比較して十分大きな間隙が生成され、もって、糸Yに対する加撚が停止する。
【0034】
<加撚の停止:2>
例えば基準ベルト1や可動ベルト2を交換するときは、カム式ノブ28を適宜回転させておくとよい。これによれば、進出ロッド27がカム式ノブ28との係合により進出し、駆動部7が、可動ベルト2が基準ベルト1から離反する方向へ移動(退避)し、基準ベルト1と可動ベルト2の間に間隙が生成されるからである。付言ならば、可動ベルト近接付勢部18によって駆動部7に対して付勢力が付与されているときは、ガイドシャフト15の挿設方向に沿った駆動部7の進退は、択一的に、進出ロッド27の進出量か、それとも圧縮コイルスプリング25によって駆動部7に対して付与される付勢力に支配されることとなる。一方、可動ベルト近接付勢部18によって駆動部7に対して付勢力が付与されていないときは、ガイドシャフト15の挿設方向に沿った駆動部7の進退は、圧縮コイルスプリング25によって駆動部7に対して付与される付勢力に支配されることとなる。
【0035】
<接圧の調整>
ところで、糸Yに対する加撚の際に、可動ベルト近接付勢部18に対して所定圧力の圧縮空気を供給することで発生する、糸Yに対する可動ベルト2の接圧(糸Yに対する基準ベルト1の接圧)を調整するには、ネジ式偏心カム26を何れかの方向に回転させればよい。即ち、糸Yに対する加撚の際は、可動ベルト近接付勢部18によって駆動部7に対して付与される付勢力が、糸Yに対する可動ベルト2の接圧と、可動ベルト離反付勢部19によって駆動部7に対して付与される付勢力と、の合力と等しくなっているので、この関係において、ネジ式偏心カム26を何れかの方向に回転すると、可動ベルト離反付勢部19によって駆動部7に対して付与される付勢力が増減することにより、相対的に、糸Yに対する可動ベルト2の接圧が変化するからである。全体(例えば1機台240錘)の接圧調整(糸の種類により)は、空気圧力を変えることにより全錘一斉に行う。ネジ式偏心カム26による調整は、上記一定の圧力で接圧力を測定し、それが各錘でバラついたときに調整するために使用される。
【0036】
以上説明したように上記実施形態においてニップ式仮撚装置111は、以下のように構成される。即ち、基準側のベルトとしての基準ベルト1と、可動側のベルトとしての可動ベルト2と、を備え、前記の基準ベルト1及び可動ベルト2を走行させつつ互いに近接させることで、前記の基準ベルト1及び可動ベルト2に挟まれながら走行する糸Yに対して撚りを付与する。前記可動ベルト2は、前記可動ベルト2に対して対向する前記基準ベルト1の部分としての基準ベルト対向面1aと、前記基準ベルト1に対して対向する前記可動ベルト2の部分としての可動ベルト対向面2aと、の平行な関係を維持しながら前記基準ベルト1に対して進退可能に構成される。前記基準ベルト1に対して近接する方向へ前記可動ベルト2を付勢する可動ベルト近接付勢部18が設けられる。以上の構成によれば、前記の基準ベルト対向面1aと可動ベルト対向面2aとが片アタリすることがないので前記の基準ベルト1や可動ベルト2自体の寿命が延びるし、片アタリに起因するベルト発熱が回避されるので熱による糸Yの品質劣化が防止される。例えば、ベルト幅の大きい基準ベルト1や可動ベルト2を備えるニップ式仮撚装置111や、基準ベルト1又は可動ベルト2のうち少なくとも何れか一方が複数並列のベルトから成る形式のニップ式仮撚装置111においては、上記の効果が特に顕著に現れる。
【0037】
上記のニップ式仮撚装置111は、以下のように構成される。即ち、前記可動ベルト近接付勢部18は、前記可動ベルト2に対して付与する付勢力を増減可能に構成される。以上の構成によれば、糸Yに対する前記可動ベルト2の接圧(糸Yに対する前記基準ベルト1の接圧)を増減できる。
【0038】
上記のニップ式仮撚装置111は、以下のように構成される。即ち、前記可動ベルト近接付勢部18は、空気圧式に構成される。以上の構成によれば、簡素な構成のニップ式仮撚装置111が実現される。
【0039】
上記のニップ式仮撚装置111は、以下のように構成される。即ち、前記基準ベルト1から離反する方向へ前記可動ベルト2を付勢する可動ベルト離反付勢部19が設けられる。以上の構成によれば、単に、前記可動ベルト近接付勢部18によって前記可動ベルト2に対して付与される付勢力を消失させるだけで、前記可動ベルト2を前記基準ベルト1から離反させることができる。
【0040】
上記のニップ式仮撚装置111は、以下のように構成される。即ち、前記基準ベルト1から離反する方向へ前記可動ベルト2を移動させる可動ベルト移動部20が設けられる。以上の構成によれば、前記可動ベルト近接付勢部18によって前記可動ベルト2に対して付与される付勢力の有無や程度に関わらず、前記可動ベルト2を前記基準ベルト1から離反させることができる。
【0041】
延伸仮撚加工機100は、上記のニップ式仮撚装置111を備えて構成される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る延伸仮撚加工機の概略構成図
【図2】本発明の一実施形態に係るニップ式仮撚装置の正面図
【図3】図2の3-3線矢視断面図
【符号の説明】
【0043】
1 基準ベルト
2 可動ベルト
3 基準ベルトユニット
4 可動ベルトユニット
18 可動ベルト近接付勢部(可動ベルト近接付勢手段)
19 可動ベルト離反付勢部(可動ベルト離反付勢手段)
20 可動ベルト移動部(可動ベルト移動手段)
100 延伸仮撚加工機(繊維機械)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準側のベルトとしての基準ベルトと、可動側のベルトとしての可動ベルトと、を備え、前記の基準ベルト及び可動ベルトを走行させつつ互いに近接させることで、前記の基準ベルト及び可動ベルトに挟まれながら走行する糸に対して撚りを付与する、ニップ式仮撚装置において、
前記可動ベルトは、前記可動ベルトに対して対向する前記基準ベルトの部分としての基準ベルト対向面と、前記基準ベルトに対して対向する前記可動ベルトの部分としての可動ベルト対向面と、の平行な関係を維持しながら前記基準ベルトに対して進退可能に構成され、
前記基準ベルトに対して近接する方向へ前記可動ベルトを付勢する可動ベルト近接付勢手段が設けられる、
ことを特徴とするニップ式仮撚装置
【請求項2】
前記可動ベルト近接付勢手段は、前記可動ベルトに対して付与する付勢力を増減可能に構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のニップ式仮撚装置
【請求項3】
前記可動ベルト近接付勢手段は、空気圧式に構成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のニップ式仮撚装置
【請求項4】
前記基準ベルトから離反する方向へ前記可動ベルトを付勢する可動ベルト離反付勢手段が設けられる、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載のニップ式仮撚装置
【請求項5】
前記基準ベルトから離反する方向へ前記可動ベルトを移動させる可動ベルト移動手段が設けられる、
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一に記載のニップ式仮撚装置
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一に記載のニップ式仮撚装置を備える、
ことを特徴とする繊維機械

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−303513(P2008−303513A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154264(P2007−154264)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【出願人】(502455511)TMTマシナリー株式会社 (91)
【Fターム(参考)】