説明

ニトリル化合物の新規製造法

【課題】炭素数を増加させることなくハロゲン化物から芳香族ニトリルを製造する。
【解決手段】一般式(1):Ar−CN (1)(式(1)中、Arは、置換もしくは非置換の芳香環を表す)の芳香族ニトリルの製造方法において、一般式(2):Ar−CH−X (2)(式(2)中、Arは、置換もしくは非置換の芳香環を表し、Xは、塩素、臭素又はヨウ素の何れかを表す)の芳香族化合物を、アンモニア水及び単体ヨウ素と反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルハライドを原料として、ニトリル化合物を製造するためのニトリル化合物の新規製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニトリル化合物は、医薬、農薬、機能性色素および機能性ポリマーなどの中間体、及びエステル、アミン、アミド、或いはイソシアネート等の中間原料として有用な化合物である。
【0003】
このようなニトリル化合物をアルキルハライドから得る方法としては、金属シアン化物による置換反応が、従来において最も用いられる。
【0004】
しかしながら、この金属シアン化物による置換反応では、毒性が強いシアン化化合物を用いなくてはならず、また、炭素数の増加を伴うという問題点があった。このため、出発物質のアルキルハライドを、従来法より安全で、炭素鎖長を変化させることなくニトリル化合物へ変換する方法が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、炭素数を増加させることなくハロゲン化物からニトリル化合物を製造することが可能なニトリル化合物の新規製造法、芳香族ニトリル化合物の製造方法並びにアルキルニトリル化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に係るニトリル化合物の新規製造法は、上述した課題を解決するために、一般式(1):A−CH−X (1)
(式(1)中、Aは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環基、アルケニル基又はアルキニル基、を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(2):A−CN (2)
(式(2)中 Aは上記の意味を示す)で定義されるニトリル化合物の新規製造法である。
【0007】
本願請求項2に係る芳香族ニトリル化合物の製造方法は、上述した課題を解決するために、
一般式(3):Ar−CH−X (3)
(式(3)中、Arは置換されていてもよい芳香族基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(4):Ar−CN (4)
(式(4)中 Arは上記の意味を示す)で定義される芳香族ニトリル化合物の製造方法である。
【0008】
本願請求項3に係るアルキルニトリル化合物の製造方法は、上述した課題を解決するために、
一般式(5):R−CH−X (5)
(式(5)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい非芳香族複素環基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(6):R−CN (6)
(式(6)中 Rは上記の意味を示す)で定義されるアルキルニトリル化合物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本願請求項1に係るニトリル化合物の新規製造法は、式(1)により表されるハロゲン化アルキル化合物から、式(2)により表されるニトリル化合物を製造する上で、毒性が高いシアン化化合物を用いることなく、同時に炭素数を増加させることなく、対応するニトリルをワンポットで得ることが可能となる。
【0010】
本願請求項2に係る芳香族ニトリル化合物の製造方法は、式(3)により表されるハロゲン化アルキル化合物から、式(4)により表される芳香族ニトリル化合物を製造する上で、毒性が高いシアン化化合物を用いることなく、同時に炭素数を増加させることなく、対応するニトリルをワンポットで得ることが可能となる。
【0011】
本願請求項3に係るアルキルニトリル化合物の製造方法は、式(5)により表されるハロゲン化アルキル化合物から、式(6)により表されるアルキルニトリル化合物を製造する上で、毒性が高いシアン化化合物を用いることなく、同時に炭素数を増加させることなく、対応するニトリルをワンポットで得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、ニトリル化合物の新規製造法、芳香族ニトリルの製造方法並びにアルキルニトリル化合物の製造方法について詳細に説明をする。
【0013】
ニトリル化合物の新規製造法
本発明を適用したニトリル化合物の新規製造法では、以下の一般式(2)のニトリル化合物を新規に製造するものである。
【0014】
より具体的には、
一般式(1):A−CH−X (1)
(式(1)中、Aは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環基、アルケニル基又はアルキニル基、を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする。
【0015】
一般式(2):A−CN (2)
(式(2)中 Aは上記の意味を示す)で定義されるニトリル化合物の新規製造法である。
【0016】
芳香族ニトリルの新規製造法
本発明を適用した芳香族ニトリルの製造方法では、以下の一般式(4)の芳香族ニトリル化合物を製造するものである。
より具体的には、
一般式(3):Ar−CH−X (3)
(式(3)中、Arは置換されていてもよい芳香族基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
【0017】
一般式(4):Ar−CN (4)
(式(4)中 Arは上記の意味を示す)で定義される芳香族ニトリル化合物の製造方法である。
【0018】
アルキルニトリル化合物の新規製造法
本発明を適用したアルキルニトリル化合物では、以下の一般式(6)のアルキルニトリル化合物を製造するものである。
より具体的には、
一般式(5):R−CH−X (5)
(式(5)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい非芳香族複素環基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(6):R−CN (6)
(式(6)中 Rは上記の意味を示す)で定義されるアルキルニトリル化合物の製造方法である。
【0019】
ここで、アルキル基とは、直鎖、分枝又は環状式の炭素数1から18のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0020】
芳香族基とは、芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フリル基、チエニル基、キノリル基、トリアジリル基、テトラゾリル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0021】
非芳香族複素環式基とは、少なくとも1個以上の複素原子、たとえば窒素原子、硫黄原子および酸素原子等を含む、5〜8員の単環式、ニ環式又は三環式の非芳香族複素環式基が挙げられ、具体的にはピロリジニル基、ピペリジニル基、ピラゾリジル基、モルホリル基、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリニル基、ジヒドロチアゾリル基、インドリニル基、クロマニル基、キヌクリジニル基等が挙げられる。
【0022】
アルケニル基とは、炭素数2から6のアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、プロペニル基、メチルプロペニル基、ブテニル基等が挙げられる。
【0023】
アルキニル基とは、炭素数2から6のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられる。
【0024】
置換されていてもよいアルキル基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数であり、置換してもよい基としては置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基等が挙げられる。
【0025】
置換されていてもよい芳香族基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数であり、置換してもよい基としてはハロゲン原子、置換されていてもよ
い芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基等が挙げられる。
【0026】
置換されていてもよい非芳香族複素環式基における置換基の数は、置換可能であれば特に制限はなく、1または複数であり、置換してもよい基としては置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環式基、カルボキシル基、アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基等が挙げられる。
【0027】
置換してもよい基としてのハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アルコキシ基とは、炭素数1から4のアルコキシ基等が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。
【0028】
ヨウ素化剤とは、酸化能を有するヨウ素化合物が挙げられ、具体的にはヨウ素単体、1−ヨードピロリジン−2,5−ジオン、1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン、一塩化ヨウ素等が挙げられる。
【0029】
本発明において式(2)に示される化合物は、式(1)で示される化合物にアンモニア水と、ヨウ素化剤を加えて反応させることによって製造することができる。
【0030】
また、本発明において式(4)に示される化合物は、式(3)で示される化合物にアンモニア水と、ヨウ素化剤を加えて反応させることによって製造することができる。
【0031】
また、本発明において式(6)に示される化合物は、式(5)で示される化合物にアンモニア水と、ヨウ素化剤を加えて反応させることによって製造することができる。
【0032】
なお、反応温度は20℃以上が好ましく、より好ましくは30から120℃であり、通常1時間から7日程度で完了する。また反応時における圧力は常圧または加圧のいずれでもよい。
【0033】
特に本発明では、ハロゲン化アルキル化合物から、ニトリル化合物を製造する上で、毒性が高いシアン化化合物を用いることなく、同時に炭素数を増加させることなく、対応するニトリルをワンポットで得ることが可能となる。特にハロゲン化アルキル化合物は、何れも安価で比較的入手しやすい物質であることから、これを原料としてニトリル化を実現できる本発明では、製法の汎用化を推し進める上で好適となる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
表1は、実施例1〜7を示している。この表1では最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライドを記載している。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1は、4−メチルベンジルクロリド140.6mg(1.0mmol)に、アンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素533mg(2.1mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、p−トルニトリル96mg(収率82%)を得た。
Mp 25℃. IR (NaCl): 2230 cm-1、1H-NMR(CDCl3)δ値:7.55 (2 H, d, J = 7.9 Hz), 7.27 (2 H, d, J = 7.9 Hz), 2.42(3 H, s)。
【0038】
実施例2は、2−フェニルベンジルブロミド247mg(1.0mmol)に、アンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素620mg(2.4mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム
水溶液2mlを加えた。塩化メチレン15mlで2回抽出し、抽出液を希塩酸、飽和食塩水の順で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、2−シアノビフェニル156mg(収率87%)を得た。1H-NMR(CDCl3)δ値:7.77(1H,dd,J=0.9, 7.8Hz), 7.65(1H,dt,J=1.4, 7.8Hz), 7.55-7.58(2H,m), 7.42-7.53(5H,m)
13C-NMR(CDCl3)δ値:145.41, 138.06, 133.67, 132.76, 130.01, 128.68, 128.66, 127.48, 118.66, ,111.18。
【0039】
実施例3は、3−フェニルプロピルブロミド199.1mg(1.0mmol)に、第一段階としてアンモニア水(28%)5ml(75mmol)を加え、60℃で24時間攪拌した後、反応液を室温に戻した。第二段階として、これにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素761.4mg(3.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、3−フェニルプロピオニトリル96mg(収率73%)を得た。IR (NaCl): 2250 cm-1.1H-NMR(CDCl3)δ値:d = 7.34 (2 H, t, J = 8.2 Hz),7.28 (1 H, t, J = 8.2 Hz), 7.23 (2 H,
d, J = 8.2 Hz), 2.96 (2 H,d, J = 7.9 Hz), 2.62 (2 H, d, J = 7.9 Hz)。
【0040】
実施例4では、4−メチルベンジルクロリド140.6mg(1.0mmol)に、アンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン439.1mg(1.2mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、p−トルニトリル90mg(収率77%)を得た。Mp 25℃. IR (NaCl): 2230 cm-1
1H-NMR(CDCl3)δ値:7.55 (2 H, d, J = 7.9 Hz), 7.27 (2 H, d, J = 7.9 Hz), 2.42(3 H, s)。
【0041】
実施例5では、3−フェニルプロピルブロミド199.1mg(1.0mmol)に、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え、60℃で24時間攪拌した後、反応液を室温に戻した。第二段階として、これにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン731.94mg(2.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、3−フェニルプロピオニトリル94mg(収率72%)を得た。IR (NaCl): 2250 cm-1.1H-NMR(CDCl3)δ値:d = 7.34 (2 H, t, J = 8.2 Hz),7.28 (1 H, t, J = 8.2 Hz), 7.23 (2 H, d, J = 8.2 Hz), 2.96 (2 H,d, J = 7.9 Hz), 2.62 (2 H, d, J = 7.9 Hz)。
【0042】
実施例6は、11-ブロモウンデカン酸265mg(1mmol)に、第一段階としてアンモニア水(28%)5ml(75mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素761.4mg(3.0mmol)を加え、60℃で12時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、10-シアノデカン酸110mg(収率56%)を得た。Mp 42-44 °C. IR (neat):
2243, 1690 cm-1. 1H−NMR (CDCl3)δ値:7.34 (1H, t, J
= 7.2Hz), 2.35 (2H, t, J = 7.4 Hz), 1.64 (4H, m), 1.44 (2H, br) 1.32 (9H, br).
【0043】
実施例7では、11-ブロモウンデカン酸265mg(1mmol)に、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン1.52g(4.0mmol)を加え、60℃で12時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、10-シアノデカン酸110mg(収率56%)を得た。Mp 42-44 °C. IR (neat): 2243, 1690 cm-1. 1H−NMR (CDCl3)δ値:7.34 (1H, t, J = 7.2Hz), 2.35 (2H, t, J = 7.4 Hz), 1.64 (4H, m), 1.44 (2H, br) 1.32 (9H, br)。
【0044】
表2は、実施例8〜19を示している。この表2では最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、更にはヨウ素化剤の量(表中ではヨウ素量とする)、攪拌時間(時間)、収率(%)を示している。ちなみにこの実施例8〜19は、何れも芳香族ニトリルの新規製造法に含まれるものである。
【0045】
【表2】

【0046】
実施例8〜19:アルキルハライド1.0mmolに、アンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素を加え、60℃で所定の時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し
、表2に示すニトリル体を得た。
【0047】
表3は、実施例20〜21を示している。この表3では最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、更にはヨウ素化剤の量(表中ではヨウ素量とする)、収率(%)を示している。ちなみにこの実施例20〜21は、何れも芳香族ニトリルの新規製造法に含まれるものである。
【0048】
【表3】

【0049】
実施例20〜21:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え60℃で2時間攪拌した後、第二段階として単体ヨウ素を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表3に示すニトリル体を得た。
【0050】
表4は、実施例22〜26を示している。この実施例22〜26では、DMF(ジメチルホルムアミド)を添加するプロセスが入る。この表4では最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、更にはDMFの量(ml)、攪拌時間(時間)、収率(%)を示している。ちなみに、この実施例22〜26は、非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。また、この実施例22〜26では、アンモニア水を2段に分けて添加するプロセスが入る。この表4の温度は、アンモニア添加の第一段階における温度を示している。
【0051】
【表4】

【0052】
実施例22〜26:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)1ml(15mmol)およびDMFを加え、所定の温度で攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)6ml(90mmol)及び単体ヨウ素761.4(3.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表4に示すニトリル体を得た。
【0053】
表5は、実施例27〜28を示している。この表5では最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、攪拌時間(時間)、収率(%)を示している。ちなみに、この実施例27〜28は、非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。
【0054】
【表5】

【0055】
実施例27〜28:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌した後、アンモニア水(28%)6ml(90mmol)及び単体ヨウ素1.52mg(6.0mmol)を加え
、60℃で6時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表5に示すニトリル体を得た。
【0056】
表6は、実施例29〜35を示している。この表6では、最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、攪拌時間(時間)、収率(%)の他、第一段階で加えたアンモニア水の量、第一段階の温度を示している。この実施例29〜35は、非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。
【0057】
【表6】

【0058】
実施例29〜35:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)を加え、所定の温度で攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び単体ヨウ素761.4mg(3.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表6に示すニトリル体を得た。
【0059】
表7は、実施例36〜47を示している。この表7では、最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライド、攪拌時間(時間)、ニトリル体の収率(%)を示している。この実施例36〜47は、何れも芳香族ニトリルの新規製造法に含まれるものである。
【0060】
【表7】

【0061】
実施例36〜47:アルキルハライド1.0mmolに、アンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン439.1mg(1.2mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで
3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表7に示すニトリル体を得た。
【0062】
表8は、実施例48〜49を示している。最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライドの構造の他、ニトリル体の収率を示している。この実施例48〜49は、何れも芳香族ニトリルの新規製造法に含まれるものである。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例48〜49:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え60℃で2時間攪拌した後、第二段階としてこれに1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン439.1mg(1.2mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽
和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表8に示すニトリル体を得た。
【0065】
表9は、実施例50〜53を示している。この表9では、最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライドの構造の他、第一段階において混合するDMFの量、第一段階の温度、攪拌時間及びニトリル体の収率を示している。実施例50〜53は、何れも非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。
【0066】
【表9】

【0067】
実施例50〜53:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)1ml(15mmol)およびDMFを加え、所定の温度で攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)6ml(90mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン731.9mg(2.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表9に示すニトリル体を得た。
【0068】
表10は、実施例54〜55を示している。表10では、最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライドの構造の他、第一段階の攪拌時間及びニトリル体の収率を示している。この実施例54〜55は、何れも非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。
【0069】
【表10】

【0070】
実施例54〜55:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)3ml(90mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン731.9mg(2.0mmol)を加え、60℃で6時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表10に示すニトリル体を得た。
【0071】
表11は、実施例56〜61を示している。表11では、最終的に得られるニトリル体の構造式と、原料としてのアルキルハライドの構造の他、第一段階の攪拌時間及びニトリル体の収率を示している。この実施例56〜61は、何れも非芳香族としてのアルキルニトリル化合物の新規製造法に含まれる。
【0072】
【表11】

【0073】
実施例56〜61:アルキルハライド1.0mmolに、第一段階としてアンモニア水(28%)3ml(45mmol)を加え、60℃で所定の時間攪拌した後、第二段階としてこれにアンモニア水(28%)3ml(45mmol)及び1,3-ジヨード-5,5-ジメチルイミダゾリジン-2,4-ジオン731.9mg(2.0mmol)を加え、60℃で4時間攪拌した。反応液を0℃に冷却し、水10mlと飽和亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加えた。エーテル15mlで3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥し、溶媒を留去し、表11に示すニトリル体を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):A−CH−X (1)
(式(1)中、Aは置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよい芳香族基、置換されていてもよい非芳香族複素環基、アルケニル基又はアルキニル基、を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(2):A−CN (2)
(式(2)中 Aは上記の意味を示す)で定義されるニトリル化合物の新規製造法。
【請求項2】
一般式(3):Ar−CH−X (3)
(式(3)中、Arは置換されていてもよい芳香族基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(4):Ar−CN (4)
(式(4)中 Arは上記の意味を示す)で定義される芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項3】
一般式(5):R−CH−X (5)
(式(5)中、Rは置換されていてもよいアルキル基又は置換されていてもよい非芳香族複素環基を示し、Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す)で示されるハロゲン化アルキル化合物を、アンモニア水と、ヨウ素化剤と反応させることを特徴とする
一般式(6):R−CN (6)
(式(6)中 Rは上記の意味を示す)で定義されるアルキルニトリル化合物の製造方法。


【公開番号】特開2010−64985(P2010−64985A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233460(P2008−233460)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (発行所) 社団法人日本化学会 (刊行物名)日本化学会第88春季年会 2008年 講演予稿集II 第1563ページ (発行日) 平成20年3月12日 (発行所) 有機合成化学協会(刊行物名)第93回 有機合成シンポジウム講演要旨集 第101ページ〜第104ページ(発行日) 平成20年5月30日 (掲載日) 平成20年6月11日(掲載アドレス)http://www.thieme−connect.com/ejournals/toc/synlett/33886 http://www.thieme−connect.com/ejournals/abstract/synlett/doi/10.1055/s−2008−1078491 http://www.thieme−connect.com/ejournals/pdf/synlett/doi/10.1055/s−2008−1078491.pdf http://www.thieme−connect.com/ejournals/html/synlett/doi/10.1055/s−2008−1078491
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(392000888)合同資源産業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】