説明

ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物

【課題】
耐油性に特に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物を提供する。
【解決手段】
ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)10〜99.9重量%、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)0.1〜20重量%、及びα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)0〜70重量%を有する架橋粒子(B)10〜300重量部を、含有してなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物に係り、さらに詳しくは、耐油性に特に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムに代表されるニトリル基含有高飽和共重合体ゴムは、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどの、主鎖構造に炭素−炭素間不飽和結合の多い、一般的なニトリル基含有共重合ゴムに比べて、耐熱性、耐油性、耐オゾン性などに優れているため、自動車用の各種燃料油ホース、O−リング、油中ベルト等に多く使用されている。
【0003】
このようなニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの組成物として、たとえば、特許文献1では、ゲルを1〜20重量%含有する、ヨウ素化80以下の高飽和ニトリルゴム組成物が提案されている。該組成物により機械的強度に優れるゴム架橋物が得られるものの、耐油性の更なる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−281498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐油性に特に優れたゴム架橋物を与えることのできるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物に架橋剤を添加してなる架橋性ゴム組成物、及びこの架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定のヨウ素価のニトリル基含有高飽和共重合体ゴムに、特定組成の架橋粒子を特定量加えたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)10〜99.9重量%、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)0.1〜20重量%、及びα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)0〜70重量%を有する架橋粒子(B)10〜300重量部を、含有してなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物が提供される。
また、上記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位15〜55重量%、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜10重量%、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位1〜30重量%、及び共役ジエン単量体単位5〜83重量%を有し、前記共役ジエン単量体単位の少なくとも一部を水素化してなるものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明によれば、上記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物と、架橋剤とを含有してなる架橋性ゴム組成物が提供され、該架橋剤としては、ポリアミン系架橋剤が好ましい。
さらに、本発明によれば、上記架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐油性に特に優れた架橋物を与えることのできるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物、及びこれを架橋して得られ、上記特性を有するゴム架橋物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物は、ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)10〜99.9重量%、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)0.1〜20重量%,及びα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)0〜70重量%を含有する架橋粒子(B)10〜300重量部を,含有してなるものである。
【0011】
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)
本発明で用いるヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体及び必要に応じて用いられる共重合可能なその他の単量体を共重合することにより得られる、ヨウ素化が120以下のゴムである。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば特に限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリル;などが挙げられる。これらのなかでも、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体は一種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0013】
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは15〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合が高すぎると、得られる架橋物の耐寒性が低下するおそれがあり、逆に、低すぎると、得られる架橋物の耐油性が低下する可能性がある。
【0014】
また、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られる架橋物がゴム弾性を有するものとするために、共役ジエン単量体単位を含有することが好ましい。
【0015】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4〜6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエン及びイソプレンがより好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエン単量体は一種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0016】
共役ジエン単量体単位(水素化されている部分も含む)の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは5〜83重量%、より好ましくは30〜70重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合が低すぎると、得られる架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0017】
また、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られる架橋物の耐油性のみならず、耐圧縮永久ひずみ性も改善することができることから、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有することが好ましい。
【0018】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を形成する単量体としては、エステル化されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個有する、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体であれば特に限定されない。無置換のカルボキシル基は、主として架橋のために用いられる。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体のエステル部の、酸素原子を介してカルボニル基と結合する有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基及びアルキルシクロアルキル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。このようなカルボニル基と結合する有機基としてのアルキル基は、炭素数が1〜12のものが好ましく、より好ましくは炭素数が2〜6のものである。また、カルボニル基と結合する有機基としてのシクロアルキル基は、炭素数が5〜12のものが好ましく、より好ましくは炭素数が6〜10のものである。さらに、カルボニル基と結合する有機基としてのアルキルシクロアルキル基は、炭素数が6〜12のものが好ましく、より好ましくは炭素数が7〜10のものである。カルボニル基と結合する有機基の炭素数が少なすぎると、架橋剤を添加し、架橋性ゴム組成物とした場合における加工安定性が低下するおそれがあり、逆に、炭素数が多すぎると架橋速度が遅くなったり、得られるゴム架橋物の機械的特性が低下したりする可能性がある。
【0020】
このようなα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の具体例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0021】
これらの中でも、得られるゴム架橋物の機械的特性及び耐圧縮永久ひずみ性向上の観点から、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチル;などのα,β−エチレン性不飽和結合を形成する二つの炭素原子の各々にカルボキシル基を有するジカルボン酸のモノエステルが好ましく、マレイン酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピルなどの該二つのカルボキシル基をシス位(シス配置)に有するジカルボン酸のモノエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。なお、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体は一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0022】
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)中における、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有割合は、全単量体単位中、1〜10重量%が好ましく、2〜8重量%が特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有割合が低すぎると、得られる架橋物の機械的特性及び耐圧縮永久ひずみ性が悪化するおそれがある。一方、多すぎると、架橋剤を添加し、架橋性ゴム組成物とした場合におけるスコーチ安定性が悪化したり、得られる架橋物の耐疲労性が低下するおそれがある。
【0023】
さらに、本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、得られる架橋物の耐油性のみならず、耐寒性も改善することができることから、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有することが好ましい。
【0024】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成する単量体としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル(アクリル酸メトキシメチル及び/又はメタクリル酸メトキシメチルの意。以下、同様。)、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸i−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸i−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチルなどの炭素数2〜10のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシルなどの炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸α−シアノエチル、(メタ)アクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜10のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜10のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル単量体;などが挙げられるが、炭素数2〜10のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、炭素数2〜6のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸2−メトキシエチル及びアクリル酸2−エトキシエチルがさらに好ましく、アクリル酸2−メトキシエチルが特に好ましい。
これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0025】
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)中における、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有割合は、全単量体単位に対して、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)中における、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有割合が低すぎると、得られるゴム架橋物の耐油性及び耐寒性が低下するおそれがあり、一方、含有割合が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性及び摺動摩耗性が低下するおそれがある。
【0026】
また、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、共役ジエン単量体単位(水素化されている部分も含む)、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、及び、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有していても良い。共重合可能なその他の単量体の単位を形成する単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体とα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体とを除く、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられる。
【0027】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体とα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体とを除く、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの:イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;などが挙げられる。
【0028】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0029】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0030】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが例示される。
【0031】
これらの共重合可能なその他の単量体は、一種単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。その他の単量体単位の含有割合は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0032】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)は、ヨウ素価が120以下であり、より好ましくは80以下、さらに好ましくは25以下、特に好ましくは10以下である。ヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性及び耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0033】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のポリマームーニー粘度〔ML1+4、100℃〕は、好ましくは15〜200、より好ましくは15〜150、さらに好ましくは15〜100である。ポリマームーニー粘度が低すぎると、得られるゴム架橋物の機械的特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、架橋剤を添加し、架橋性ゴム組成物とした場合における加工性が低下するおそれがある。
【0034】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のテトラヒドロフラン不溶解分量は、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。
ここで、テトラヒドロフラン不溶解分量は、以下のようにして求めた値である。
すなわち、40℃で24時間真空乾燥することで得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム300mgを精秤し、100メッシュのステンレス鋼金網製の籠に入れ、該ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを入れた籠を100mlのテトラヒドロフランに浸漬して25℃で48時間静置する。そして、浸漬させた籠をテトラヒドロフランから引き上げ、12時間風乾した後、籠ごと60℃で一晩真空乾燥させる。乾燥後、籠に残った不溶解分量を精秤し、テトラヒドロフランに浸漬する前のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム重量に対する割合(%)を算出することで、テトラヒドロフラン不溶解分量(単位は、「重量%」)とする。
【0035】
本発明で用いるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)の製造方法は、特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合してニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを調製し、これを水素化することにより製造することが好ましい。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0036】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等の非イオン性乳化剤;ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸カリウム及びリノレン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン性乳化剤;α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等の共重合性乳化剤;などが挙げられる。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0037】
重合開始剤としては、ラジカル開始剤であれば特に限定されないが、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤としては、無機または有機の過酸化物が好ましい。重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部である。
【0038】
分子量調整剤としては、特に限定されないが、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の、メルカプタン類以外の含硫黄化合物等が挙げられる。これらは単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部である。
【0039】
乳化重合の媒体には、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部である。
【0040】
乳化重合に際しては、さらに、必要に応じて安定剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。これらを用いる場合においては、その種類、使用量とも特に限定されない。
【0041】
そして、乳化重合で得られた共重合体に対して、共役ジエン単量体単位の二重結合を選択的に水素添加することにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のラテックス(以下、「L1」と略すことがある。)を得ることができる。そして、該ラテックス(L1)に、従来公知の凝固・乾燥方法を適用することにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を製造することができる。なお、水素添加に用いる水素添加触媒の種類と量、水素添加温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。
【0042】
架橋粒子(B)
本発明で用いる架橋粒子(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体、及び、必要に応じて用いられるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体を共重合して得られる架橋構造を有する重合体の粒子である。
【0043】
架橋粒子(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)10〜99.9重量%、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)0.1〜20重量%、及びα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)0〜70重量%を有する。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)を形成する単量体としては、(メタ)アクリル酸メトキシメチル(アクリル酸メトキシメチル及び/又はメタクリル酸メトキシメチルの意。以下、同様。)、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸i−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸i−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチルなどの炭素数2〜10のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシルなどの炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸α−シアノエチル、(メタ)アクリル酸シアノブチルなどの炭素数2〜10のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1〜10のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル単量体;などが挙げられるが、本発明の効果がより一層顕著になることから、炭素数2〜10のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体、及び、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が好ましく、炭素数2〜5のアルコシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体、及び、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体がより好ましく、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル及び(メタ)アクリル酸n−ブチルがさらに好ましく、アクリル酸2−メトキシエチル及びアクリル酸n−ブチルが特に好ましい。なお、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0045】
架橋粒子(B)中における、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)の含有割合は、全単量体単位に対して、10〜99.9重量%、好ましくは20〜90重量%である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)の含有割合を上記範囲にすることで、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物から得られる架橋物の耐油性が向上する。
【0046】
架橋粒子(B)の、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)を形成する単量体としては、少なくとも2個の重合性不飽和基を有し、架橋粒子(B)の架橋構造を形成することができる架橋性単量体であれば、特に限定はされないが、重合時の架橋反応が容易になることから、炭素数が4〜20のものが好ましく、炭素数が6〜20のものが特に好ましい。
【0047】
少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)を形成する単量体としては、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリル酸エステル;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリル酸エステル;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンなどのジアルケニルベンゼン;などが挙げられるが、トリ(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。なお、これらは一種単独でも、複数種を併用してもよい。
【0048】
架橋粒子(B)中における、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)の含有割合は、全単量体単位に対して、0.1〜20重量%、好ましくは1〜20重量%である。少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位が少なすぎると、十分な耐油性が得られず、逆に多すぎると、架橋粒子(B)を重合によって製造する際の重合安定性が悪化する。
【0049】
架橋粒子(B)の、必要に応じて用いられるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)を形成する単量体としては、上述のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)を構成するα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と同様のものが挙げられるが、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルが特に好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体として、1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0050】
架橋粒子(B)中における、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)の含有割合は、全単量体単位に対して、0〜70重量%、好ましくは0〜50重量%、特に好ましくは0〜30重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)の含有割合を上記範囲にすることで、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物から得られる架橋物の、耐油性及び耐寒性が適度にバランスしたものとなる。
【0051】
また、架橋粒子(B)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位、及び、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体の単位を形成する単量体としては、たとえば、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが挙げられ、これらの具体例は上述したニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)の場合と同様である。
【0052】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。その他の単量体単位の含有割合は、架橋粒子(B)を構成する全単量体単位に対して、好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0053】
なお、架橋粒子(B)の組成は、熱分解ガスクロマトグラフ分析法により、測定することができる。なお、架橋粒子(B)を重合によって得る際に、重合転化率が100重量%に非常に近い場合には、重合に用いた各単量体の仕込み量の割合から、計算によって求めることもできる。
【0054】
架橋粒子(B)のテトラヒドロフラン不溶解分量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。
ここで、テトラヒドロフラン不溶解分量は、上述のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のテトラヒドロフラン不溶解分量の測定において、「ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム」に代えて「架橋粒子」を用いる以外は、同様にして求めた値である。
【0055】
架橋粒子(B)の重量平均粒子径は、好ましくは3〜1000nm、より好ましくは10〜500nm、特に好ましくは20〜300nmである。架橋粒子(B)の重量平均粒子径が上記範囲にあることで、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)中の架橋粒子(B)の分散性が向上し、本発明の効果がより一層顕著になる。
なお、架橋粒子の重量平均粒子径は、光散乱粒子径測定器(コールターLS230:コールター社製)を用いて測定することができる。
【0056】
架橋粒子(B)の製造方法は、上記各単量体を共重合する方法であれば特に限定されないが、乳化剤を用いた乳化重合により上述の単量体を共重合して、架橋粒子(B)のラテックス(以下、「L2」と略すことがある。)を得ることが好ましい。そして、該ラテックス(L2)に、従来公知の凝固・乾燥方法を適用することにより、架橋粒子(B)を製造することができる。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤等の通常用いられる重合副資材を使用することができ、その具体例としては、上述したニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)と同様のものが挙げられる。
【0057】
なお、架橋粒子(B)を共重合によって得る際の重合転化率は、架橋粒子(B)のテトラヒドロフラン不溶解分量が多くなることから、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましく、97重量%以上が特に好ましい。
【0058】
ゴム組成物
本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物は、上記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、上記架橋粒子(B)10〜300重量部を、含有してなる。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対する、架橋粒子(B)の含有量は、本発明の効果がより一層顕著になることから、10〜200重量部が好ましく、10〜100重量部が特に好ましい。
【0059】
また、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)以外の重合体を配合しても良い。ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)以外の重合体の配合量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)の合計量100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下である。
なお、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)以外の重合体の具体例としては、塩化ビニル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0060】
本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)をバンバリーミキサ等の混合機で混練して製造しても良いが、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)と架橋粒子(B)の分散性向上の観点から、乳化重合で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)のラテックス(L1)と、乳化重合で得られた架橋粒子(B)のラテックス(L2)を混合後、従来公知の凝固・乾燥方法を適用して、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物を製造することが好ましい。なお、この場合における上記ラテックス(L1)及びラテックス(L2)の固形分濃度は、10〜50重量%が好ましく、20〜40重量%が特に好ましい。
【0061】
架橋性ゴム組成物
本発明の架橋性ゴム組成物は、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物と、架橋剤と、を含有してなるものである。本発明で使用される架橋剤は、本発明のニトリル基含有高飽和共重合ゴム組成物を架橋できるものであれば良く、特に限定されず、硫黄系架橋剤、有機過酸化物架橋剤またはポリアミン系架橋剤などが挙げられ、これらのなかでも、耐圧縮永久ひずみ性改善の観点から、ポリアミン系架橋剤が好ましい。
【0062】
硫黄系架橋剤としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降性硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、ジベンゾチアジルジスルフィド、N,N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼノピン−2)、含リンポリスルフィド、高分子多硫化物などの含硫黄化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾールなどの硫黄供与性化合物;などが挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0063】
有機過酸化物架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、パラメンタンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3−トリメチルシクロヘキサン、4,4−ビス−(t−ブチル−ペルオキシ)−n−ブチルバレレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。これらは一種単独でまたは複数種併せて用いることができる。
【0064】
本発明で使用されるポリアミン系架橋剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物及び架橋時にその化合物の形態になるものが好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、脂肪族多価アミン類が好ましく、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0065】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、架橋剤の配合量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の機械特性及び耐圧縮永久ひずみ性が悪化するおそれがある。一方、多すぎると、得られるゴム架橋物の耐疲労性が悪化する可能性がある。
【0066】
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物及び架橋剤に加えて、塩基性架橋促進剤をさらに含有していることが好ましい。塩基性架橋促進剤をさらに含有させることにより、本発明の効果がより一層顕著になる。
【0067】
塩基性架橋促進剤の具体例としては、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(以下「DBU」と略す場合がある)及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5(以下「DBN」と略す場合がある)、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−エチル−2−メチルイミダゾール、1−メトキシエチルイミダゾール、1−フェニル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−2−フェニルイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルイミダゾール、1,4−ジメチルイミダゾール、1,5−ジメチルイミダゾール、1,2,4−トリメチルイミダゾール、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−エトキシイミダゾール、1−メチル−4−メトキシイミダゾール、1−メチル−2−メトキシイミダゾール、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾール、1−メチル−4−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−ニトロイミダゾール、1,2−ジメチル−5−アミノイミダゾール、1−メチル−4−(2−アミノエチル)イミダゾール、1−メチルベンゾイミダゾール、1−メチル−2−ベンジルベンゾイミダゾール、1−メチル−5−ニトロベンゾイミダゾール、1−メチルイミダゾリン、1,2−ジメチルイミダゾリン、1,2,4−トリメチルイミダゾリン、1,4−ジメチル−2−エチルイミダゾリン、1−メチル−フェニルイミダゾリン、1−メチル−2−ベンジルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプチルイミダゾリン、1−メチル−2−ウンデシルイミダゾリン、1−メチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン、1−メチル−2−エトキシメチルイミダゾリン、1−エトキシメチル−2−メチルイミダゾリンなどの環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤;テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−オルト−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニドなどのグアニジン系塩基性架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン系塩基性架橋促進剤;などが挙げられる。
【0068】
これらのなかでも、環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤が好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7及び1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン−5がさらに好ましく、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7が特に好ましい。なお、上記環状アミジン構造を有する塩基性架橋促進剤は、有機カルボン酸やアルキルリン酸などと塩を形成していても良い。
【0069】
本発明の架橋性ゴム組成物中における、塩基性架橋促進剤の配合量は、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)及び架橋粒子(B)の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部である。塩基性架橋促進剤の配合量が少なすぎると、架橋性ゴム組成物の架橋速度が遅過ぎて架橋密度が低下する場合がある。一方、配合量が多すぎると、架橋性ゴム組成物の架橋速度が速すぎてスコーチを起こしたり、貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
【0070】
また、本発明の架橋性ゴム組成物には、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物及び架橋剤、必要に応じて添加される塩基性架橋促進剤以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、カーボンブラックやシリカなどの補強性充填材、炭酸カルシウムやクレイなどの非補強性充填材、塩基性架橋促進剤以外の架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0071】
本発明の架橋性ゴム組成物は、本発明のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物と、上記架橋剤をはじめとする上記各成分とを好ましくは非水系で混合して調製される。本発明の架橋性ゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、架橋剤及び熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移して架橋剤や熱に不安定な架橋助剤などを加えて二次混練することにより調製できる。
【0072】
このようにして得られる本発明の架橋性ゴム組成物は、コンパウンドムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜175、さらに好ましくは25〜150であり、加工性に優れるものである。
【0073】
ゴム架橋物
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の架橋性ゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明の架橋性ゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜6時間である。
【0074】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
二次架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは30分〜16時間である。
【0075】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0076】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、特に耐油性に優れたものである。
このため、本発明のゴム架橋物は、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置及びボールねじ等)用のシール、バルブ及びバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板及び負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;
【0077】
印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、及び医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。これらのなかでも、本発明のゴム架橋物は、ベルト、ホースまたはシール材として好適に用いることができ、特にシール材として好適であり、シール材のなかでもO−リングとして好適である。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0079】
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの組成
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを構成する各単量体単位の含有割合は、以下の方法により測定した。
すなわち、マレイン酸モノn−ブチル単位の含有割合は、2mm角のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム0.2gに、2−ブタノン100mlを加えて4時間攪拌した後、エタノール20ml及び水10mlを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn−ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3−ブタジエン単位及び飽和化ブタジエン単位の含有割合の合計は、水素添加前のニトリル基含有共重合体ゴムを用いて、ヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6383に従い、ケルダール法により、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸2−メトキシエチル単位の含有割合は、上記各単量体単位に対する残り成分として算出した。
【0080】
ヨウ素価
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムのヨウ素価は、JIS K 6235に準じて測定した。
【0081】
ムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)
ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー)は、JIS K6300−1に従って測定した(単位は〔ML1+4、100℃〕)。
【0082】
テトラヒドロフラン不溶解分量
試料(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム、架橋粒子、又は、架橋重合体)を、40℃で24時間真空乾燥した。次に、乾燥後の試料300mgを精秤し、100メッシュのステンレス鋼金網製の籠に入れ、該試料を入れた籠を100mlのテトラヒドロフランに浸漬して25℃で48時間静置した。そして、浸漬させた籠をテトラヒドロフランから引き上げ、12時間風乾した後、籠ごと60℃で一晩真空乾燥させた。乾燥後、籠に残った不溶解分量を精秤し、テトラヒドロフランに浸漬する前の試料に対する割合(%)を算出することで、テトラヒドロフラン不溶解分量(単位は、「重量%」)を求めた。
【0083】
常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力、硬さ)
架橋性ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状の架橋物を得た。次いで、得られた架橋物をギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋し、得られたシート状のゴム架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。そして、得られたこの試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ、伸び及び100%引張応力を、また、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機(タイプA)を用いてゴム架橋物の硬さを、それぞれ測定した。
【0084】
O−リング圧縮永久ひずみ
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行うことにより、O−リング状の試験片を得た。そして、得られたO−リング状の試験片を用いて、O−リング状の試験片を挟んだ二つの平面間の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って、O−リング圧縮永久ひずみを測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久ひずみ性に優れる。
【0085】
耐油性
上記常態物性の評価で用いた架橋物と同様の架橋物を準備し、該架橋物を、温度40℃、168時間の条件で、イソオクタン/トルエン=50/50(体積比)の燃料油(Fuel−C)中に浸漬させた。そして、燃料油中に浸漬させた架橋物について、浸漬前後の体積の変化率(単位:%)を測定することにより、耐油性を評価した。浸漬前後の体積の変化率の値が小さいほど、燃料油による膨潤の度合いが小さく、耐油性に優れると判断できる。
【0086】
重量平均粒子径
架橋粒子の重量平均粒子径は、光散乱粒子径測定器(コールターLS230:コールター社製)を用いて測定した。
【0087】
合成例1(架橋粒子B1の製造)
攪拌装置を備えた耐圧容器(X1)に、イオン交換水25部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、アクリロニトリル56部、アクリル酸2−メトキシエチル24部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌して、乳化物(e1)を得た。
また、上記とは別の攪拌装置を備えた耐圧容器(Y1)に、イオン交換水418部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、85℃に昇温し、5重量%の過硫酸カリウム水溶液60部を添加した。
次に、前記乳化物(e1)を、耐圧容器(Y1)に連続的に3時間供給して乳化重合を行い、乳化物(e1)の全量を供給後さらに3時間反応を継続した。
その後、30℃まで冷却し、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した(重合転化率は98重量%であった)。
得られた重合反応液を、60℃で減圧にし、残留単量体(未反応単量体)および水分を除去し、架橋粒子B1(重量平均粒子径:80nm)のラテックス(固形分濃度25重量%、以下「B1−Lx」と略すことがある。)を得た。
また、上記架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)の一部を取り出し、2倍の体積のメタノールを加えて凝固した後、ろ過してクラムを取り出し、60℃で12時間真空乾燥することにより、架橋粒子B1を得た。架橋粒子B1のテトラヒドロフラン不溶解分量は95重量%であった。
そして、架橋粒子B1の組成は、重合転化率が98重量%(100重量%に非常に近い)であるため、次のように計算して各単量体単位の最小値と最大値を求めた。
すなわち、重合に使用した各単量体の量は、アクリロニトリル56部、アクリル酸2−メトキシエチル24部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20部であり、98部が重合に使用され、2部が未反応単量体となる。
アクリロニトリル単位の最小値は、未反応単量体2部が全量アクリロニトリルの場合であって、重合した単量体は、アクリロニトリル54部、アクリル酸2−メトキシエチル24部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20部であり、アクリロニトリル単位の最小値は、54部/98部×100であるため、55.1重量%であった。
一方、アクリロニトリル単位の最大値は、未反応単量体2部が全量アクリルニトリル以外の単量体の場合であって、56部/98部×100であるため、57.1重量%であった。
同様にして、アクリル酸2−メトキシエチル単位及びトリメチロールプロパントリメタクリレート単位についても、最小値と最大値を求めた。
結果を表1に示す。
【0088】
合成例2(架橋粒子B2の製造)
攪拌装置を備えた耐圧容器(X2−1)に、イオン交換水48部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.54部、マレイン酸モノn−ブチル6部、アクリル酸2−メトキシエチル82.2部、トリメチロールプロパントリメタクリレート1.8部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌して、乳化物(e2−1)を得た。
上記とは別の攪拌装置を備えた耐圧容器(X2−2)に、イオン交換水32部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.36部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌して、乳化物(e2−2)を得た。
さらに、上記とは別の攪拌装置を備えた耐圧容器(Y2)に、イオン交換水280部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、85℃に昇温し、3.8重量%の過硫酸カリウム水溶液15.6部を添加した。
次に、前記乳化物(e2−1)を、耐圧容器(Y2)に連続的に1時間供給して乳化重合を行い、乳化物(e2−1)の全量を供給後さらに2時間反応を継続した。
次いで、前記乳化物(e2−2)を、耐圧容器(Y2)に連続的に30分間供給して乳化重合を行い、乳化物(e2−2)の全量を供給後さらに3時間反応を継続した。
その後、30℃まで冷却し、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した(重合転化率は98重量%であった)。
得られた重合反応液を、60℃で減圧にし、残留単量体(未反応単量体)および水分を除去し、架橋粒子B2(重量平均粒子径:120nm)のラテックス(固形分濃度25重量%、以下「B2−Lx」と略すことがある。)を得た。
また、上記架橋粒子B2のラテックス(B2−Lx)の一部を取り出し、2倍の体積のメタノールを加えて凝固した後、ろ過してクラムを取り出し、60℃で12時間真空乾燥することにより、架橋粒子B2を得た。架橋粒子B2のテトラヒドロフラン不溶解分量は95重量%であった。
また、架橋粒子B2の組成は、合成例1と同様に、計算によって各単量体単位の最小値と最大値を求めた。結果を表1に示す。
【0089】
合成例3(架橋粒子B3の製造)
攪拌装置を備えた耐圧容器(X3−1)に、イオン交換水48部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.54部、アクリル酸n−ブチル31.7部、トリメチロールプロパントリメタクリレート2.4部、アクリロニトリル25.9部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌して、乳化物(e3−1)を得た。
上記とは別の攪拌装置を備えた耐圧容器(X3−2)に、イオン交換水32部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.36部、アクリル酸2−メトキシエチル11.8部、トリメチロールプロパントリメタクリレート0.8部、アクリロニトリル27.4部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌して、乳化物(e3−2)を得た。
さらに、上記とは別の攪拌装置を備えた耐圧容器(Y3)に、イオン交換水280部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部を添加し、窒素雰囲気下で攪拌しながら、85℃に昇温し、3.8重量%の加硫酸カリウム水溶液15.6部を添加した。
次に、前記乳化物(e3−1)を、耐圧容器(Y3)に連続的に1時間供給して乳化重合を行い、乳化物(e3−1)の全量を供給後さらに2時間反応を継続した。
次いで、前記乳化物(e3−2)を、耐圧容器(Y3)に連続的に30分間供給して乳化重合を行い、乳化物(e3−2)の全量を供給後さらに3時間反応を継続した。
その後、30℃まで冷却し、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した(重合転化率は98重量%であった)。
得られた重合反応液を、60℃で減圧にし、残留単量体(未反応単量体)および水分を除去し、架橋粒子B3(重量平均粒子径:120nm)のラテックス(固形分濃度25重量%、以下「B3−Lx」と略すことがある。)を得た。
また、上記架橋粒子B3のラテックス(B3−Lx)の一部を取り出し、2倍の体積のメタノールを加えて凝固した後、ろ過してクラムを取り出し、60℃で12時間真空乾燥することにより、架橋粒子B3を得た。架橋粒子B3のテトラヒドロフラン不溶解分量は95重量%であった。
また、架橋粒子B3の組成は、合成例1と同様に、計算によって各単量体単位の最小値と最大値を求めた。結果を表1に示す。
【0090】
合成例4(架橋重合体B4の製造)
攪拌装置を備えた耐圧容器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル8部、及び、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.3部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン80部を仕込んだ。耐圧容器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら重合反応を開始した。重合反応開始から4時間後にアクリロニトリル5部、重合反応開始から8時間後にアクリロニトリル4部、重合反応開始から12時間後にアクリロニトリル3部をそれぞれ添加し、重合反応開始から20時間後に、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した(重合転化率は85重量%であった)。その後、60℃で減圧にして、残留単量体を除去し、アクリロニトリル単位20.5重量%、1,3−ブタジエン単位79.5重量%のニトリル基含有共重合体ゴム(分子量調整剤の使用量が少なかったために、重合体ゴム中に架橋構造が生成している)のラテックスを得た。
【0091】
次いで、上記にて得られたラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000ppmになるように、攪拌装置を備えた耐圧容器中に、上記にて製造したラテックス及びパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加した。
その後、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、架橋重合体B4のラテックスを得、該ラテックスにイオン交換水を添加し、固形分濃度25重量%に調整した。
【0092】
得られた架橋重合体B4のラテックスの一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、それを、60℃で12時間真空乾燥することにより、架橋重合体B4を得た。得られた架橋重合体B4は、ヨウ素価が8、テトラヒドロフラン不溶解分量は70重量%であった。
また、得られた架橋重合体B4を構成する各単量体単位の含有割合は、アクリロニトリル単位20.5重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化されている部分も含む)79.5重量%であった。
【0093】
合成例5(ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1の製造)
攪拌装置を備えた耐圧容器に、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル25部、マレイン酸モノn−ブチル5部、アクリル酸2−メトキシエチル31部、及び、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン40部を仕込んだ。耐圧容器を5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら16時間重合反応した。次いで、濃度10重量%のハイドロキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した(重合転化率は85重量%であった)。その後、60℃で減圧にして、残留単量体を除去し、ニトリル基含有共重合体ゴムのラテックスを得た。
【0094】
次いで、上記にて得られたラテックスに含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1,000ppmになるように、攪拌装置を備えた耐圧容器中に、上記にて製造したラテックス及びパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加した。
そして、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1のラテックスを得、該ラテックスにイオン交換水を添加し、固形分濃度25重量%に調整した(以下「A1−Lx」と略すことがある。)。
【0095】
得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1のラテックス(A1−Lx)の一部を取り出し、2倍容量のメタノールを加えて凝固した後、ろ過して固形物(クラム)を取り出し、それを、60℃で12時間真空乾燥することにより、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1を得た。得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1は、ヨウ素価が8、ポリマー・ムーニー粘度〔ML1+4、100℃〕が56、テトラヒドロフラン不溶解分量は0重量%であった。また、得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1を構成する各単量体単位の含有割合は、アクリロニトリル単位25.6重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位4.3重量%、アクリル酸2−メトキシエチル単位22.9重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化されている部分も含む)47.2重量%であった。
【0096】
実施例1
攪拌装置を備えた容器に、合成例1で得られた架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)と、合成例5で得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1のラテックス(A1−Lx)を、重量比で45:55となるように入れ、攪拌・混合した(ラテックスブレンド)。
次に、攪拌しながら、11重量%塩化ナトリウム水溶液を1000部添加して凝固させ、生成したクラムをろ過した後、水洗・乾燥を行うことにより、架橋粒子B1とニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA1を含有するゴム組成物(以下、「B1−A1」と略すことがある。)を得た。
バンバリーミキサを用い、上記で得られたゴム組成物(B1−A1)100部(B1が45部、A1が55部)に、FEFカーボン(商品名:シーストSO、東海カーボン社製、カーボンブラック)30部、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(商品名:ADK Cizer C−8、ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、及び、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:Naugard 445、Crompton社製、老化防止剤)1.5部を添加して混練し、次いで、混合物をロールに移してDBU(商品名:RHENOGRAN XLA−60(GE2014)、RheinChemie社製、DBU60%(ジンクジアルキルジフォスフェイト塩になっている部分を含む)並びにアクリル酸ポリマーと分散剤40%からなるもの、塩基性架橋促進剤)2.2部、及び、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名:Diak#1、デュポン・ダウ・エラストマー社製、脂肪族多価アミン類に属するポリアミン系架橋剤)1.1部を添加して混練し、架橋性ゴム組成物を調製した。
【0097】
そして、上述した方法により、上記にて調製した架橋性ゴム組成物を用いてゴム架橋物を得て、得られたゴム架橋物について、常態物性、耐油性、及び、O−リング圧縮永久ひずみの各評価・試験を行った。結果を表2に示す。
【0098】
実施例2
合成例1で得られた架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)に代えて、合成例2で得られた架橋粒子B2のラテックス(B2−Lx)を用い、表2に示す配合量にした以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
実施例3
合成例1で得られた架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)に代えて、合成例3で得られた架橋粒子B3のラテックス(B3−Lx)を用い、表2に示す配合量にした以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0100】
実施例4
合成例1で得られた架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)に代えて、合成例2で得られた架橋粒子B2のラテックス(B2−Lx)を用い、表2に示す配合量にした以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
実施例5
バンバリーミキサを用いて、合成例3のメタノール凝固で得られた架橋粒子(B3)45部とニトリル基含有高飽和共重合体ゴムA2(商品名:Zetpol2000、日本ゼオン社製、アクリロニトリル単位36重量%、1,3−ブタジエン単位(水素化されている部分も含む)64重量%、ヨウ素価7以下)55部に、FEFカーボン(商品名:シーストSO、東海カーボン社製、カーボンブラック)30部、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(商品名:ADK Cizer C−8、ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、及び、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:Naugard 445、Crompton社製、老化防止剤)1.5部を添加して混練し、次いで、混練物をロールに移して1,3−ビス[t−ブチルペルオキシ]ジイソプロピルベンゼン(商品名:Vul−Cup40KE、GEO Specialty Chemicals Inc社製)5.5部を添加して混練し、架橋性ゴム組成物を調製した。
そして、上述した方法により、上記にて調製した架橋性ゴム組成物を用いてゴム架橋物を得て、得られたゴム架橋物について、常態物性、耐油性、及び、O−リング圧縮永久ひずみの各評価・試験を行った。結果を表2に示す。
【0102】
比較例1
合成例1で得られた架橋粒子B1のラテックス(B1−Lx)に代えて、合成例3で得られた架橋粒子B3のラテックス(B3−Lx)を用い、表2に示す配合量にした以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
比較例2
合成例3のメタノール凝固で得られた架橋粒子(B3)に代えて、合成例4のメタノール凝固で得られた架橋粒子(B4)を用い、表2に示す配合量にした以外は、実施例5と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
比較例3
合成例3のメタノール凝固で得られた架橋粒子(B3)を使用せず、表2に示す配合量にした以外は、実施例5と同様にして、架橋性ゴム組成物及びゴム架橋物を作製し、実施例5と同様にして評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
表2より、本発明所定のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物を用いて得られる架橋物は、常態物性が良好であり、耐油性に優れていた(実施例1〜5)。
これに対して、架橋粒子(B)の配合量が多すぎて、本発明の要件を満たさない場合には、「伸び」が小さ過ぎて「100%引張応力」の測定も出来ず、ゴム弾性に乏しい架橋物しか得られなかった(比較例1)。
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)を含有しない架橋粒子(B4)を用いたために本発明の要件を満たさない場合には、耐油性に劣っていた(比較例2)。
さらに、架橋粒子を全く用いないために本発明の要件を満たさない場合にも、耐油性に劣っていた(比較例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価が120以下であるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(a)10〜99.9重量%、少なくとも2個の重合性不飽和基を有する単量体の単位(b)0.1〜20重量%、及びα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位(c)0〜70重量%を有する架橋粒子(B)10〜300重量部を、含有してなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物。
【請求項2】
前記ニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(A)が、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位15〜55重量%、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位1〜10重量%、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位1〜30重量%、及び共役ジエン単量体単位5〜83重量%を有し、前記共役ジエン単量体単位の少なくとも一部を水素化してなるものである請求項1に記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のニトリル基含有高飽和共重合体ゴム組成物と、架橋剤とを含有してなる架橋性ゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋剤が、ポリアミン系架橋剤である請求項3に記載の架橋性ゴム組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の架橋性ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。

【公開番号】特開2012−57111(P2012−57111A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203914(P2010−203914)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】