説明

ニトロカテコール誘導体の製造方法およびその製造中間体

【課題】 COMT阻害剤として有用な化合物(V)の製造方法および該化合物(V)を製造するための新規な中間体の提供。
【解決手段】
本発明は、化合物(I)から化合物(V)を製造する方法、および化合物(V)を製造するための新規な中間体を提供する〔式中、Rは低級アルキル基、置換されてもよいアリール基、ヘテロアリール基または低級アルコキシ基等であり、Rは低級アルキル基、シクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基であり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロカテコール誘導体の製造方法およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は中高年齢者に好発する進行性の神経変性疾患であり、高齢化社会の進展とともにその患者数が増加している。パーキンソン病は、安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などの協調性運動機能障害を主症状とする疾患であり、その病因は中脳黒質ドパミン性神経細胞の変性による線条体ドパミンの欠乏に起因すると考えられている。このようなことから、パーキンソン病の治療薬として、L−ドパおよびドパミンレセプター刺激薬などが使用されている。
【0003】
L−ドパは、ドパミンの前駆物質であり、脳内でドパミンに代謝されて効果を示す薬剤であるが、血中半減期が非常に短い欠点を有する。そのため、L−ドパは、通常L−ドパの代謝酵素阻害剤である、末梢性芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤および/またはカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤とともに使用されている。カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(以下、COMTと称する)は、その補酵素であるS−アデノシル−L−メチオニンからカテコール基質へのメチル基の転送を触媒する酵素であり、この酵素を阻害することによりL−ドパから3−O−メチル−L−ドパへの代謝が阻害され、L−ドパの血中半減期が増加し、さらには血液脳関門を透過するL−ドパ量が増加することが知られている。このようにCOMT阻害剤は、L−ドパと一緒に投与することにより、L−ドパの生体内利用率を増加させ、その作用時間を延長させることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
近年、種々のCOMT阻害剤が報告されている。今日まで知られている最も強力なCOMT阻害剤は、トルカポン(3,4−ジヒドロキシ−4’−メチル−5−ニトロベンゾフェノン,特許文献1参照)およびエンタカポン((E)−2−シアノ−N,N−ジエチル−3−(3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェニル)アクリルアミド,特許文献2参照)であり、これら2剤がパーキンソン病患者に使用されている。しかしながら、トルカポンは、重篤な肝機能障害が認められたことから、厳重な肝機能の監視下での投与が必要とされている(例えば、非特許文献2参照)。また、エンタカポンは、トルカポンに比べて効果が弱く、さらに作用持続時間が短い問題点を有している(例えば、非特許文献3参照)。このようなことから、安全性が高く、強力なCOMT阻害作用を有する新規なCOMT阻害剤が望まれている。
【0005】
特許文献1は、COMT阻害作用を有する[1,2,4]オキサジアゾール誘導体として、式:
【化1】

で表される5−(3−メチル−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル)−3−ニトロピロカテコールを開示している(特許文献1の実施例75参照)。しかしながら、当該化合物と本発明の製造方法に従って製造される一般式(V)で表される化合物とは、1,2,4−オキサジアゾール環に結合するニトロカテコール基の結合位置が異なる。
【0006】
特許文献3には、一般式:
【化2】

で表される3−ニトロ−5−[3−(1−オキシピリジン−4−イル)−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル]ベンゼン−1,2−ジオール誘導体を開示している。当該化合物と本発明の製造方法に従って製造される一般式(V)で表される化合物とは、1,2,4−オキサジアゾール環に結合するニトロカテコール基の結合位置が異なる。
【0007】
これまで一般式(V)で表される化合物のようにニトロカテコール環上のニトロ基とオキサジアゾール基との間に−C(O)R基を有するCOMT阻害剤は知られておらず、このような一般式(V)で表される化合物を、一般式(I)で表される化合物から一般式(II)、(III)および(IV)で表される化合物を経由して製造する製造方法は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第237929号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2200109号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/013830号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Nutt J.G.ら,「Lancet」, 1998年, 351巻, 9111号, p.1221-1222
【非特許文献2】Benabou R.ら, 「Expert Opin. Drug Saf.」, 2003年, 2巻, 3号, p.263-267
【非特許文献3】Forsberg M.ら, 「J. Pharmacol. Exp. Ther.」, 2003年, 304巻, 2号, p.498-506
【非特許文献4】Koga K.ら,「Eur. J. Pharmacol.」, 2000年, 408巻, p.249-255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、強力なCOMT阻害作用を有し高い安全性を有するニトロカテコール誘導体の新規な製造方法および中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、優れたCOMT阻害作用を有する一般式(V)で表されるニトロカテコール誘導体を見出し、その製造方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]乃至[12]:
[1] 一般式(IV):
【化3】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物;
[2] Pがメチル基である、[1]記載の化合物;
[3] 一般式(IV):
【化4】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物の製造方法であって、該方法は、以下の工程1〜3:
工程1:
一般式(I):
【化5】

〔式中、RおよびPは前記定義の通りであり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物を、R10MgX(式中、R10は低級アルキル基であり、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)と反応させた後、
アシル化剤RC(O)−L(式中、Rは前記定義の通りであり、Lは塩素原子、臭素原子、−OC(O)Rまたは−N(R11)OR12であり、R11およびR12は独立して低級アルキル基である)と反応させるか、あるいは
一般式(I)で表される化合物を、一酸化炭素および低級アルキルアルコールと反応させることにより、一般式(II):
【化6】

(式中、R、R、PおよびPは前記定義の通りである)で表される化合物を調製する工程;
工程2:
一般式(II)で表される化合物の保護基Pを、酸またはルイス酸を用いて除去することにより一般式(III):
【化7】

(式中、R、RおよびPは前記定義の通りである)で表される化合物を調製する工程;および
工程3:
一般式(III)で表される化合物を、ニトロ化することにより一般式(IV)で表される化合物を調製する工程、
を包含する、製造方法;
[4] Pがメチル基であり、Pがベンジル基である、[3]記載の製造方法;
[5] 一般式(I):
【化8】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基であり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物;
[6] Pがメチル基であり、Pがベンジル基である、[5]記載の化合物;
[7] 一般式(II):
【化9】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基であり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物;
[8] Pがメチル基であり、Pがベンジル基である、[7]記載の化合物;
[9] 一般式(III):
【化10】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物;
[10] Pがメチル基である、[9]記載の化合物;
[11] 一般式(IV):
【化11】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物の保護基Pを、酸またはルイス酸と反応させることにより除去することを特徴とする、一般式(V):
【化12】

(式中、RおよびRは前記定義の通りである)で表される化合物の製造方法;
[12] Pがメチル基である、[11]記載の製造方法 、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、強力なCOMT阻害作用を有する上、肝への影響が軽微であり高い安全性を有する、新規なニトロカテコール誘導体を有利に製造するための製造方法および中間体を提供するものとして有用である。本発明の製造方法および中間体に従って製造されるニトロカテコール誘導体は、パーキンソン病、うつ病、高血圧症の治療または予防剤として有用であり、特にL−ドパとを組み合わせて使用することにより、L−ドパの生体内利用率を増加させることができるので、パーキンソン病の治療または予防に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般式(I)で表される化合物において、下記の用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0015】
本明細書において、「低級」との用語は、特に断らない限り、炭素数1〜6個を有することを意味する。
【0016】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表す。
【0017】
「低級アルキル基」とは、直鎖または分岐鎖状のC1−6アルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基などが挙げられる。R、RおよびPにおいては、C1−4アルキルが好適であり、メチル基がさらに好適である。
【0018】
「ハロ低級アルキル基」とは、1〜3個の同種または異種のハロゲン原子で置換されたC1−6アルキル基を意味し、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などが挙げられ、好適にはジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基である。
【0019】
「低級アルコキシ基」とは、直鎖または分岐鎖状のC1−6アルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などが挙げられる。
【0020】
「シクロアルキル基」とは、3〜7員の飽和環状炭化水素を意味し、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基およびシクロヘプチル基が挙げられる。
【0021】
「ヘテロシクロアルキル基」とは、環内に−NH−、−O−または−S−を含有し、炭素原子を介して結合する4〜7員の飽和複素環基を意味し、例えば、テトラヒドロフリル基、テトラヒドロチエニル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジン−2−イル基、ピロリジン−3−イル基、ピペリジン−2−イル基、ピペリジン−3−イル基、ピペリジン−4−イル基などが挙げられる。
【0022】
「アリール基」とは、C6−10芳香族炭化水素を意味し、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基が挙げられ、好適にはフェニル基である。
【0023】
「置換アリール基」とは、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルコキシカルボニル基およびシアノ基から独立して選択される1〜5個の基で置換されるアリール基を意味する。
【0024】
「置換ベンジル基」とは、ハロゲン原子、低級アルキル基、および低級アルコキシ基から独立して選択される1〜5個の基でフェニル環が置換されるベンジル基を意味する。Pにおける非置換もしくは置換ベンジル基は、好適にはベンジル基である。
【0025】
「ヘテロアリール基」とは、1〜5個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する5〜6員の単環式芳香族複素環、あるいは1〜9個の炭素原子ならびにO、NおよびS原子からなる群から独立して選択される1〜4個のヘテロ原子を含有する8〜10員の二環式芳香族複素環を意味し、但し、これらの環は、隣接する酸素原子および/または硫黄原子を含まない。単環式芳香族複素環としては、例えば、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3−チアジアゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジルおよびピリダジニルなどが挙げられ、好適にはイソキサゾリルである。二環式芳香族複素環としては、例えば、インドリル、インダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリルなどが挙げられる。これらの複素環の全ての位置異性体が考えられる(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジルなど)。
【0026】
「低級アルコキシ低級アルキル基」とは、C1−6アルコキシ−C1−6アルキル基を意味し、例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基などが挙げられ、好適にはメトキシメチル基または2−エトキシエチル基である。
【0027】
「アリールオキシ低級アルキル基」とは、アリールオキシ−C1−6アルキル基を意味し、例えば、フェノキシメチル基、1−フェノキシエチル基、2−フェノキシエチル基、1−メチル−1−フェノキシエチル基、3−フェノキシプロピル基、ナフチルオキシメチル基などが挙げられる。
【0028】
「低級アルコキシカルボニル基」とは、(C1−6アルコキシ)−C(O)−で表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0029】
「低級アルコキシカルボニル低級アルキル基」とは、(C1−6アルコキシ)−C(O)−C1−6アルキルで表される基を意味し、例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基などが挙げられる。
【0030】
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される化合物において1つまたはそれ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物、およびそれらの任意の組み合せの化合物のいずれも包含する。またそれらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物が本発明の範囲に含まれる。一般式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される化合物において幾何学異性が存在する場合、本発明はその幾何学異性体のいずれも包含する。一般式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)で表される化合物においてアトロプ異性体が存在する場合、本発明はそのアトロプ異性体のいずれも包含する。さらに一般式(V)で表される化合物には、水和物やエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0031】
一般式(II)、(III)および(IV)で表される化合物の好ましい実施態様では、
(1)Rが低級アルキル基であり、Rがハロ低級アルキル基であり;
(2)Rが低級アルキル基であり、Rがヘテロシクロアルキル基であり;
(3)Rが低級アルキル基であり、Rがアリールオキシ低級アルキル基であり;
(4)Rが低級アルキル基であり、Rが低級アルコキシ低級アルキル基であり;
(5)Rが低級アルキル基であり、Rが低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり;
(6)Rがハロ低級アルキル基であり、Rが低級アルキル基であり;
(7)Rが非置換もしくは置換アリール基であり、Rが低級アルキル基であり;
(8)Rがアリールオキシ低級アルキル基であり、Rが低級アルキル基であり;
(9)Rがヘテロアリール基であり、Rが低級アルキル基であり;
(10)Rが低級アルコキシ基であり、Rが低級アルキル基であり;
(11)Rが低級アルコキシ基であり、Rがシクロアルキル基であり;または
(12)Rが低級アルコキシ基であり、Rが低級アルコキシ低級アルキル基である。
【0032】
一般式(IV)で表される化合物は、スキーム1に示す工程1−1乃至工程1−3の反応を行うことにより製造することができる。
【0033】
【化13】

(式中、R、R、P、P、R10およびXは前記と同義であり、Lは塩素原子、臭素原子、−OC(O)Rまたは−N(R11)OR12を表し、R11およびR12は低級アルキル基を表し、ROHは低級アルキルアルコールを表す。)
【0034】
工程1−1
化合物(I)を不活性溶媒中、有機マグネシウム試薬(X)と反応させ、その後、アシル化剤(XI)と反応させることにより、化合物(II)が得られる。
本反応に用いられる不活性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランなどが挙げられる。有機マグネシウム試薬(X)としては低級アルキルハライドから調製されるR10MgXが用いられ、好適にはイソプロピルマグネシウムクロリドが使用される。有機マグネシウム試薬(X)の量は、通常、化合物(I)に対して約1〜約2当量の範囲から適宜選択して使用され、その反応温度は−78℃〜0℃である。アシル化剤(XI)の量は、通常、化合物(I)に対して約1〜約2当量の範囲から適宜選択して使用される。その反応温度は通常−78℃〜50℃であり、好適には−78℃〜0℃である。反応時間は、使用する原料物質や溶媒、反応温度などにより異なるが、通常15分〜2時間である。
【0035】
また化合物(II)は、化合物(I)と低級アルキルアルコール(XII)とを、不活性溶媒中、一酸化炭素雰囲気下、塩基、パラジウム触媒およびリン配位子の存在下に縮合させることによっても製造することができる。本反応に用いられる不活性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、トルエンなどが挙げられる。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどが挙げられる。パラジウム触媒としては、例えば、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウムなどが挙げられる。配位子としては、例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。
本反応に用いられる低級アルキルアルコール(XII)としては、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールが好適に用いられ、メタノールが特に好適である。低級アルキルアルコール(XII)の量は、通常、化合物(I)に対して約1〜約300当量であり、好適には約100〜約300当量の範囲から適宜選択して使用される。塩基の量は、通常化合物(I)に対して、約1〜約10当量であり、好適には約1〜約5当量である。パラジウム触媒の量は通常化合物(I)に対して、0.001〜1当量であり、リン配位子の当量は約0.05〜約2当量である。その反応温度は、通常、80℃〜110℃であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、1時間〜24時間である。
【0036】
工程1−2
化合物(II)の保護基Pを、不活性溶媒(例えば、塩化メチレン、トルエンなど)中、酸またはルイス酸を用いて除去することにより化合物(III)が得られる。
本反応に用いられる酸としては、臭化水素−酢酸溶液または臭化水素酸などが挙げられる。ルイス酸としては、塩化アルミニウム、四塩化チタンなどが挙げられる。これらの酸およびルイス酸の中では、四塩化チタンが好適に用いられる。酸またはルイス酸の量は、通常、化合物(II)に対して約1〜約10当量であり、好適には約1〜約2当量である。その反応温度は、通常、0℃〜80℃であり、好適には0℃〜室温である。反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常15分〜24時間である。
【0037】
工程1−3
化合物(III)を、適切な溶媒中、ニトロ化剤を用いニトロ化することにより、化合物(IV)が得られる。
本反応に用いられる溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸、テトラヒドロフラン、無水酢酸などが挙げられる。ニトロ化剤としては、例えば、硝酸、発煙硝酸、テトラフルオロホウ酸ニトロニウムなどが挙げられる。ニトロ化剤の量は通常、化合物(III)に対して約1〜約2当量である。その反応温度は、通常、−40℃〜80℃であり、好適には0℃〜80℃である。反応時間は、使用する原料物質や溶媒、反応温度などにより異なるが、通常、5分〜12時間である。また、本反応は必要に応じて、硫酸などの添加剤を加えて行ってもよい。
【0038】
次にこのようにして得られた本発明の一般式(IV)で表わされる化合物を使用して、COMT阻害剤として有用な一般式(V)で表されるニトロカテコール誘導体を製造する方法について説明する。
【0039】
【化14】

(式中、R、RおよびPは前記と同義である。)
【0040】
工程2−1
化合物(IV)の保護基Pを、適切な溶媒中、脱アルキル化剤を用いて除去することにより化合物(V)が得られる。本反応に用いられる脱アルキル化剤としては、ルイス酸および酸が挙げられ、好適にはルイス酸が用いられる。
【0041】
脱アルキル化剤として用いられるルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム/ピリジン、塩化アルミニウム/トリエチルアミン、三臭化ほう素などが挙げられ、好適には塩化アルミニウム/ピリジンが用いられる。脱アルキル化剤としてルイス酸を使用する場合の溶媒としては、例えば、酢酸エチル、ピリジン、1,4−ジオキサン、クロロホルム、塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
塩化アルミニウム/ピリジンを用いる場合の塩化アルミニウムの量は、通常、化合物(IV)に対して約2〜約5当量の範囲から適宜選択され、ピリジンの量は、通常、化合物(IV)に対して約4〜約10当量の範囲から適宜選択される。塩化アルミニウム/トリエチルアミンを用いる場合の塩化アルミニウムの量は、通常、化合物(IV)に対して約0.5〜約5当量の範囲から適宜選択され、トリエチルアミンの量は、通常、化合物(IV)に対して約1〜約10当量の範囲から適宜選択される。三臭化ほう素の量は、通常、約1〜約5当量の範囲から適宜選択して使用される。
その反応温度は、通常、−20℃〜120℃であり、好適には40℃〜80℃である。反応時間は、使用する原料物質や溶媒、反応温度などにより異なるが、通常、1時間〜24時間である。
【0042】
また化合物(V)は、化合物(IV)を、酢酸溶媒中、臭化水素酸またはヨウ化水素酸等の酸を用いて処理することによっても得ることができる。
臭化水素酸またはヨウ化水素酸の量は、通常、約1〜約5当量の範囲から適宜選択される。その反応温度は、通常、20℃〜還流温度であり、反応時間は、使用する原料物質、反応温度などにより異なるが、通常、1時間〜24時間である。
【0043】
スキーム1において出発原料として用いられる一般式(I)で表される化合物は、スキーム3に示す方法により製造することができる。
【0044】
【化15】

(式中、R、R、PおよびPは前記と同義である。)
【0045】
工程3−1
アルデヒド誘導体(XX)を適切な溶媒中(例えば、塩化メチレン、メタノール、酢酸など)、ヨウ素化剤(例えばヨウ素、N−ヨードこはく酸イミド、一塩化よう素 )の存在下ヨウ素化することによりヨードベンズアルデヒド(XXI)が得られる。
ヨウ素化剤の量は通常、化合物(XX)に対して約1〜約2当量である。その反応温度は、通常、20℃〜還流温度であり、好適には20℃〜40℃である。反応時間は、使用する原料物質、反応温度などにより異なるが、通常、15分〜24時間である。
また、本反応は必要に応じて、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸銀などの添加剤を加えて行ってもよい。これらの添加剤の量は通常、化合物(XX)に対して約0.1〜約2当量である。
【0046】
工程3−2
ヨードベンズアルデヒド(XXI)を適切な溶媒中(例えば、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)、ヒドロキシルアミンまたはヒドロキシルアミン酸付加塩(例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミンなど)の存在下にオキシム化することにより、オキシム誘導体(XXII)が得られる。
ヒドロキシルアミンの量は通常、化合物(XXI)に対して約1〜約3当量である。その反応温度は、通常、20℃〜還流温度であり、反応時間は、使用する原料物質、反応温度などにより異なるが、通常、15分〜24時間である。また、本反応は必要に応じて、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基を加えて行ってもよい。塩基の量は通常、化合物(XXI)に対して、約1〜3当量である。
【0047】
工程3−3
オキシム誘導体(XXII)を不活性溶媒中(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)、塩素化剤(N−クロロこはく酸イミドなど)の存在下塩素化することによりN−ヒドロキシベンズイミドイルクロリド誘導体が得られる。塩素化剤の量は通常、化合物(XXII)に対して、約1〜2当量である。その反応温度は、0℃〜80℃であり、好適には室温から80℃である。反応時間は、使用する原料物質、反応温度などにより異なるが、通常、5分〜24時間である。
N−ヒドロキシベンズイミドイルクロリド誘導体を不活性溶媒中(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなど)、アミノ化剤(例えば、アンモニア水、アンモニアなど)と反応させることにより、アミドキシム誘導体(XXIII)が得られる。
アミノ化剤の量は通常、化合物(XXII)に対して、約1〜10当量である。その反応温度は、0℃〜30℃であり、反応時間は、使用する原料物質、反応温度などにより異なるが、通常、15分〜24時間である。
【0048】
工程3−4
アミドキシム誘導体(XXIII)を、不活性溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなど)もしくは塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)を溶媒として、アシル化剤(例えば、酸ハライド、酸無水物、混合酸無水物、ベンゾトリアゾール−1−イルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,5−ジオキサピロリジンエステルなど)および塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下アシル化することにより、アシルアミドキシム誘導体(XXIV)が得られる。
アシル化剤の量は通常、化合物(XXIII)に対して、約1〜2当量である。塩基の量は通常、化合物(XXIII)に対して、約1〜4当量である。このアシル化反応の温度は通常−20℃〜還流温度であり、好適には0℃〜室温である。反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、15分〜24時間である。
また、アシルアミドキシム誘導体(XXIV)は、不活性溶媒中(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、塩化メチレンなど)、カルボン酸およびアミドキシム(XXIII)を、縮合剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、シアノリン酸ジエチル、アジ化ジフェニルホスホリルなど)の存在下に縮合させることによっても得ることができる。
縮合剤の量は通常、化合物(XXIII)に対して、約1〜2当量である。この縮合反応は通常−20℃〜還流温度であり、好適には0℃〜室温である。反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、15分〜24時間である。
【0049】
工程3−5
アシルアミドキシム誘導体(XXIV)を不活性溶媒中(例えば、テトラヒドロフラン)、塩基(例えば、ピリジン、テトラブチルアンモニウムフルオリドなど)の存在下に環化することにより、化合物(I)が得られる。塩基の量は通常、1〜2当量である。その反応温度は通常0℃〜120℃であり、好適には10〜40℃である。反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常15分〜12時間である。
また、化合物(I)は、アシルアミドキシム誘導体(XXIV)を塩基(例えば、ピリジンなど)中、環化させることによっても得ることが出来る。この環化は通常20℃〜還流温度であり、反応時間は使用する原料物質や溶媒、反応温度等により異なるが、通常、15分〜24時間である。
【0050】
本発明の一般式(IV)で表される化合物、その製造中間体(I)、(II)および(III)、、ならびに化合物(IV)を使用して製造される一般式(V)で表されるニトロカテコール誘導体は、必要に応じて慣用の単離・精製手段である溶媒抽出、再結晶、クロマトグラフィーなどの操作を行うことにより、単離・精製することができる。
【0051】
本発明の製造方法および中間体を使用して製造されるニトロカテコール誘導体(V)は、優れたCOMT阻害作用を有するのでパーキンソン病の治療または予防薬として有用であり、好適にはL−ドパと組み合わせて使用される。また、ニトロカテコール誘導体(V)およびL−ドパと、芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤とを組み合わせて使用してもよい。ニトロカテコール誘導体(V)と組み合わせて使用できる芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤としては、例えば、カルビドパ、ベンセラジドなどが挙げられる。
【0052】
ニトロカテコール誘導体(V)は、用法に応じ種々の剤型の製剤が使用される。このような剤型としては例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤などを挙げることができ、経口または非経口的に投与される。
【0053】
ニトロカテコール誘導体(V)の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患および治療の程度等により適宜決定されるが、経口投与の場合成人1日当たり約10mg〜約3000mgの範囲で、非経口投与の場合は、成人1日当たり約5mg〜約1000mgの範囲で、一回または数回に分けて適宜投与することができる。
【0054】
ニトロカテコール誘導体(V)と、L−ドパおよび芳香族L−アミノ酸デカルボキシラーゼ阻害剤から選択される少なくとも1種とを組み合わせて使用する場合、薬剤の配合比は、患者の年齢、性別、および体重、症状、投与時間、剤形、投与方法、薬剤の組み合わせなどにより、適宜選択することができる。
【0055】
本発明の内容を以下の参考例、実施例および試験例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【実施例】
【0056】
参考例1−1
4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアルデヒド
4−ベンジルオキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(10g)、トリフルオロ酢酸銀(11.4g)および塩化メチレン(105mL)の混合物にヨウ素(13.1g)を室温下加えた。2時間撹拌した後、混合物をセライト(登録商標)層を通してろ過した。濾液を亜硫酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をメタノール:水=4:1にて粉砕し、表題化合物(13.2g)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.91(3H, s), 5.19(2H, s), 7.30-7.50(7H, m), 9.86(1H, s)
【0057】
参考例2−1
4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアルデヒドオキシム
4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアルデヒド(参考例1−1)(12.2g)、塩酸ヒドロキシルアミン(2.54g)、酢酸ナトリウム(6g)およびエタノール(170mL)の混合物を70℃で1.5時間撹拌した。混合物を減圧下濃縮した。残渣に水を加え、混合物を室温で30分撹拌した。固形物を濾取し、表題化合物(12.8g)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.88(3H, s), 5.13(2H, s), 7.19(1H, s), 7.29(1H, s), 7.30-7.50(6H, m), 8.30(1H, s)
【0058】
参考例3−1
4−ベンジルオキシ−N−ヒドロキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアミジン
4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアルデヒドオキシム(参考例2−1)(12.8g)およびN,N−ジメチルホルムアミド(110mL)の混合物に室温下、N−クロロこはく酸イミド(4.9g)を加えた。室温で20分間撹拌した後、氷冷下混合物に水および酢酸エチルを加えた。分取した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、4−ベンジルオキシ−N−ヒドロキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズイミドイルクロリドを得た。
4−ベンジルオキシ−N−ヒドロキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズイミドイルクロリドおよびN,N−ジメチルホルムアミド(110mL)の混合物に氷冷下28%アンモニア水(12mL)を加えた。氷冷下3時間撹拌した後、混合物に水および酢酸エチルを加えた。分取した有機層を水、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をヘキサン:ジエチルエーテル=1:4にて粉砕し、表題化合物(9.3g)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:3.77(3H, s), 5.12(2H, s), 5.65(2H, br s), 6.91(1H, s), 7.30-7.50(6H, m), 9.35(1H, s)
【0059】
実施例1−1
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール
4−ベンジルオキシ−N−ヒドロキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアミジン(参考例3−1)(35g)、トリエチルアミン(31mL)およびテトラヒドロフラン(300mL)の混合物に氷冷下塩化アセチル(8.2mL)を加えた。混合物を同温度で1時間撹拌した。不溶物を濾去し、クルードのN−アセチルオキシ−4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアミジン溶液を得た。
この溶液に、アルゴン雰囲気下テトラブチルアンモニウムフルオリド(1mol/L、テトラヒドロフラン溶液、89mL)を加えた。同温にて2時間撹拌した後、混合物に水および酢酸エチルを加えた。分取した有機層を1mol/L塩酸、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をメタノールで粉砕し、表題化合物(31.5g)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.67(3H, s), 3.90(3H, s), 5.16(2H, s), 7.28(1H, s), 7.30-7.50(6H, m)
【0060】
4−ベンジルオキシ−N−ヒドロキシ−2−ヨード−5−メトキシベンズアミジンおよび塩化アセチルの代わりに対応するアミジンおよび酸塩化物または酸無水物を用い、実施例1−1と同様の方法により、実施例1−2〜実施例1−11を合成した。これらを表1に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1−2〜実施例1−11の物性値を以下に示した。
【0063】
実施例1−2
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.23-1.28(2H, m), 1.30-1.34(2H, m), 2.24-2.30(1H, m), 3.89(3H, s), 5.15(2H, s), 7.25(1H, s), 7.31-7.45(6H, m)
【0064】
実施例1−3
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.57(3H, s), 3.90(3H, s), 4.77(2H, s), 5.17(2H, s), 7.32(1H, s), 7.33-7.46(5H, m), 7.47(1H, s)
【0065】
実施例1−4
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.51(9H, s), 3.91(3H, s), 5.16(2H, s), 7.29(1H, s), 7.31-7.45(6H, m)
【0066】
実施例1−5
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.90(3H, s), 5.17(2H, s), 5.37(2H, s), 7.00-7.10(3H, m), 7.25-7.50(9H, m)
【0067】
実施例1−6
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.40-1.50(6H, m), 3.20-3.40(1H, m), 3.90(3H, s), 5.16(2H, s), 7.29(1H, s), 7.30-7.50(6H, m)
【0068】
実施例1−7
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.00-1.10 (3H, m), 1.80-2.00 (2H, m), 2.90-3.00 (2H, m), 3.90 (3H, s), 5.16 (2H, s), 7.28 (1H, s), 7.30-7.50 (6H, m)
【0069】
実施例1−8
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.27(3H, t, J=7.2Hz), 2.94(2H, t, J=7.4Hz), 3.28(2H, t, J=7.4Hz), 3.90(3H, s), 4.19(2H, q, J=7.2Hz), 5.16(2H, s), 7.20-7.50(7H, m)
【0070】
実施例1−9
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.92 (3H, s), 5.18 (2H, s), 7.33-7.46 (6H, m), 7.50 (1H, s)
【0071】
実施例1−10
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.05-2.15(4H, m), 3.24-3.34(1H, m), 3.54-3.64(2H, m), 3.90(3H, s), 4.03-4.10(2H, m), 5.16(2H, s), 7.30(1H, s), 7.31-7.48(6H, m)
【0072】
実施例1−11
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.20(3H, t, J=6.8Hz), 3.24(2H, t, J=6.7Hz), 3.56(2H, q, J=6.8Hz), 3.85-4.00(5H, m), 5.16(2H, s), 7.30(1H, s), 7.30-7.50(6H, m)
【0073】
実施例2−1
[5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノン
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール(実施例1−1)(500mg)およびテトラヒドロフラン(6mL)の混合物にアルゴン雰囲気下氷塩浴で冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド(2.0mol/L、テトラヒドロフラン溶液、0.7mL)を加えた。塩氷浴下30分撹拌した後、混合物に無水安息香酸(535mg)およびテトラヒドロフラン(1mL)の混合物を加えた。塩氷浴下で15分撹拌した後、混合物に塩化アンモニウム水溶液および、酢酸エチルを加えた。分取した有機層を水、食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:20%−100%酢酸エチル/ヘキサン、グラジエント溶出)で精製して表題化合物(260mg)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.42(3H, s), 4.01(3H, s), 5.18(2H, s), 7.06(1H, s), 7.30-7.50(9H, m), 7.60-7.70(2H, m)
【0074】
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾールおよび無水安息香酸の代わりに対応するヨードベンゼンおよび無水酢酸を用い、実施例2−3および実施例2−5〜実施例2−9を合成した。これらを表2に示した。
【0075】
実施例2−2
[5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]イソオキサゾール−5−イルメタノン
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール(実施例1−1)(1g)およびテトラヒドロフラン(12mL)の混合物を氷塩浴で冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド(2.0mol/L、テトラヒドロフラン溶液、1.42mL)を加えた。15分撹拌した後、混合物に塩化イソオキサゾール−5−カルボニル(624mg)およびテトラヒドロフラン(1mL)の混合物を加えた。30分撹拌した後、混合物に塩化アンモニウム水溶液および、酢酸エチルを加えた。分取した有機層を水、食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:0%−70%酢酸エチル/ヘキサン、グラジエント溶出)で精製して表題化合物(330mg)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.50(3H, s), 4.03(3H, s), 5.23(2H, s), 6.67(1H, d, J=1.7Hz), 7.21(1H, s), 7.30-7.50(5H, m), 7.51(1H, s), 8.23(1H, d, J=1.7Hz)
【0076】
塩化イソオキサゾール−5−カルボニルの代わりに対応する酸ハライドを用い、実施例2−10および実施例2−11を合成した。これらを表2に示した。
【0077】
実施例2−4
1−[5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]−2−フェノキシエタノン
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール(実施例1−1)(845mg)およびテトラヒドロフラン(10mL)の混合物をアルゴン雰囲気下氷塩浴で冷却し、イソプロピルマグネシウムクロリド(2.0mol/L、テトラヒドロフラン溶液、3mL)を加えた。同温度にて10分間撹拌した後、混合物にN−メトキシ−N−メチル−2−フェノキシアセトアミド(781mg)およびテトラヒドロフラン(3mL)の混合物を加えた。室温で1.5時間撹拌した後、混合物に2mol/L塩酸および酢酸エチルを加えた。分取した有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:10%−30%酢酸エチル/ヘキサン、グラジエント溶出)で精製して表題化合物(550mg)を得た。
MS(ESI, m/z):431(M+1)
【0078】
【表2】

【0079】
実施例2−3、実施例2−5〜実施例2−11の物性値を以下に示した。
【0080】
実施例2−3
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.63(3H, s), 4.00(3H, s), 5.21(2H, s), 7.12(1H, s), 7.25-7.55(6H, m)
【0081】
実施例2−5
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.35(3H, s), 3.96(3H, s), 5.23(2H, s), 5.34(2H, s), 6.95-7.10(3H, m), 7.14(1H, s), 7.20-7.60(8H, m)
【0082】
実施例2−6
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.27(3H, t, J=7.1Hz), 2.35(3H, s), 2.90(2H, t, J=7.2Hz), 3.24(2H, t, J=7.2Hz), 3.96(3H, s), 4.18(2H, q, J=7.1Hz), 5.21(2H, s), 7.11(1H, s), 7.29(1H, s), 7.25-7.50(5H, m)
【0083】
実施例2−7
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.44(3H, s), 3.98(3H, s), 5.25(2H, s), 7.21(1H, s), 7.25(1H, s), 7.30-7.50(5H, m)
【0084】
実施例2−8
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.95-2.15(4H, m), 2.37(3H, s), 3.19-3.30(1H, m), 3.52-3.62(2H, m), 3.97(3H, s), 4.00-4.08(2H, m), 5.22(2H, s), 7.13(1H, s), 7.29(1H, s), 7.30-7.50(5H, m)
【0085】
実施例2−9
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.19(3H, d, J=7.0Hz), 2.36(3H, s), 3.21(2H, t, J=6.6Hz), 3.54(2H, q, J=7.0Hz), 3.89(2H, t, J=6.6Hz), 3.96(3H, s), 5.22(2H, s), 7.13(1H, s), 7.29(1H, s), 7.30-7.50(5H, m)
【0086】
実施例2−10
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.42(3H, s), 3.93(3H, s), 4.02(3H, s), 5.19(2H, s), 7.06(1H, s), 7.30-7.44(5H, m), 7.49(1H, s), 7.71(2H, d, J=8.6Hz), 7.98(2H, d, J=8.6Hz)
【0087】
実施例2−11
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.44(3H, s), 4.02(3H, s), 5.20(2H, s), 7.04(1H, s), 7.30-7.46(5H, m), 7.50(1H, s), 7.61(2H, d, J=8.8Hz), 7.73(2H, d, J=8.8Hz)
【0088】
実施例3−1
5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)安息香酸メチル
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(163mg)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(394mg)およびN,N−ジメチルホルムアミド(10mL)の混合物をアルゴン雰囲気下10分撹拌した。混合物に3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール(実施例1−1)(1.5g)、メタノール(15mL)およびトリエチルアミン(1.5mL)を加えた。一酸化炭素雰囲気下に置換した後、混合物を90℃で16時間撹拌した。室温まで冷却した後、混合物に酢酸エチルおよび2mol/L塩酸を加えた。分取した有機層を水、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液および食塩水で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:15%−30%酢酸エチル/ヘキサン、グラジエント溶出)で精製して表題化合物(1.1g)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.65(3H, s), 3.77(3H, s), 3.94(3H, s), 5.21(2H, s), 7.16(1H, s), 7.31-7.47(6H, m)
【0089】
3−(4−ベンジルオキシ−2−ヨード−5−メトキシフェニル)−5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾールの代わりに対応するヨードベンゼンを用い実施例3−1と同様の方法により、実施例3−2〜実施例3−4を合成した。これらを表3に示した。
【0090】
【表3】

【0091】
実施例3−2〜実施例3−4の物性値を以下に示した。
【0092】
実施例3−2
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.22-1.30(4H, m), 2.21-2.27(1H, m), 3.76(3H, s), 3.94(3H, s), 5.21(2H, s), 7.15(1H, s), 7.31-7.46(6H, m)
【0093】
実施例3−3
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.56(3H, s), 3.77(3H, s), 3.95(3H, s), 4.76(2H, s), 5.22(2H, s), 7.17(1H, s), 7.32-7.47(5H, m), 7.49(1H, s)
【0094】
実施例3−4
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.49(9H, s), 3.73(3H, s), 3.95(3H, s), 5.21(2H, s), 7.18(1H, s), 7.30-7.46(6H, m)
【0095】
実施例4−1
[5−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノン
[5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノン(実施例2−1)(526mg)および塩化メチレン(22mL)の混合物に四塩化チタン(0.288mL)を室温下で加えた。30分間撹拌した後、混合物に2mol/L塩酸および酢酸エチルを加えた。分取した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:50−67% 酢酸エチル/ヘキサン、グラジエント溶出)で精製して表題化合物(383mg)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.44(3H, s), 4.03(3H, s), 5.93(1H, s), 7.07(1H, s), 7.30-7.80(6H, m)
【0096】
[5−ベンジルオキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノンの代わりに対応するベンジルエーテルを用い実施例4−1と同様の方法により、実施例4−2〜実施例4−15を合成した。これらを表4に示した。
【0097】
【表4】


【0098】
実施例4−2〜実施例4−15の物性値を以下に示した。
【0099】
実施例4−2
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.64(3H, s), 3.80(3H, s), 3.97(3H, s), 5.85(1H, s), 7.17(1H, s), 7.44(1H, s)
【0100】
実施例4−3
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.21-1.29(4H, m), 2.21-2.27(1H, m), 3.78(3H, s), 3.96(3H, s), 5.83(1H, s), 7.16(1H, s), 7.42(1H, s)
【0101】
実施例4−4
H-NMR(CDCl3)δ ppm:3.55(3H, s), 3.79(3H, s), 3.97(3H, s), 4.74(2H, s), 5.87(1H, s), 7.18(1H, s), 7.46(1H, s)
【0102】
実施例4−5
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.49(9H, s), 3.76(3H, s), 3.98(3H, s), 5.84(1H, s), 7.19(1H, s), 7.42(1H, s)
【0103】
実施例4−6
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.50(3H, s), 4.05(3H, s), 5.99(1H, brs), 6.80(1H, d, J=2.0Hz), 7.22(1H, s), 7.52(1H, s), 8.26(1H, d, J=2.0Hz)
【0104】
実施例4−7
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.62(3H, s), 4.03(3H, s), 5.99(1H, s), 7.15-7.20(1H, m), 7.47(1H, s)
【0105】
実施例4−8
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.50(3H, s), 4.00(3H, s), 4.96(2H, s), 5.92(1H, s), 6.83-6.96(3H, m), 7.12(1H, s), 7.21-7.26(2H, m), 7.41(1H, s)
【0106】
実施例4−9
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.46(3H, s), 3.98(3H, s), 5.33(2H, s), 5.91(1H, s), 6.95-7.10(3H, m), 7.19(1H, s), 7.27(1H, s), 7.25-7.40(2H, m)
【0107】
実施例4−10
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.27(3H, t, J=7.2Hz), 2.45(3H, s), 2.90(2H, t, J=7.4Hz), 3.24(2H, t, J=7.4Hz), 3.98(3H, s), 4.18(2H, q, J=7.2Hz), 5.89(1H, s), 7.14(1H, s), 7.27(1H, s)
【0108】
実施例4−11
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.54(3H, s), 4.00(3H, s), 5.97(1H, s), 7.23(1H, s), 7.29(1H, s)
【0109】
実施例4−12
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.19(3H, t, J=7.0Hz), 2.45(3H, s), 3.20(2H, t. J=6.7Hz), 3.54(2H, q, J=7.0Hz), 3.89(2H, t, J=6.7Hz), 3.98(3H, s), 5.91(1H, s), 7.16(1H, s), 7.28(1H, s)
【0110】
実施例4−13
H-NMR(CDCl3)δ ppm:0.31-0.39(2H, m), 0.61-0.69(2H, m), 1.21-1.31(1H, m), 2.46(3H, s), 3.83(2H, d, J=6.9Hz), 4.01(3H, s), 6.11(1H, s), 6.84(2H, d, J=8.8Hz), 7.02(1H, s), 7.48(1H, s), 7.73(2H, d, J=8.9Hz)
【0111】
実施例4−14
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.42(3H, s), 3.93(3H, s), 4.04(3H, s), 7.07(1H, s), 7.49(1H, s), 7.80(2H, d, J=8.5Hz), 8.02(2H, d, J=8.5Hz)
【0112】
実施例4−15
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.45(3H, s), 3.93(3H, s), 6.95(1H, s), 7.45(1H, s), 7.73(2H, d, J=8.4Hz), 7.91(2H, d, J=8.4Hz)
【0113】
実施例5−1
[3−ヒドロキシ−4−メトキシ−6−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−2−ニトロフェニル]フェニルメタノン
[5−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノン(実施例4−1)(383mg)および塩化メチレン(10mL)の混合物に発煙硝酸(68μL)を室温で加え、その混合物を20分間撹拌した。分取した有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をヘキサン:塩化メチレン=4:1で粉砕し、表題化合物(377mg)を得た。
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.46(3H, s), 4.09(3H, s), 7.30-7.90(6H, m), 10.72(1H, s)
【0114】
[5−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)フェニル]フェニルメタノンの代わりに対応するフェノール用い実施例5−1と同様の方法により、実施例5−2〜実施例5−15を合成した。これらを表5に示した。
【0115】
【表5】


【0116】
実施例5−2〜実施例5−11および実施例5−13〜実施例5−15の物性値を以下に示した。
【0117】
実施例5−2
MS(ESI, m/z):308(M-1)
【0118】
実施例5−3
H-NMR(CDCl3)δ ppm:1.12-1.15(2H, m), 1.28-1.32(2H, m), 2.38-2.43(1H, m), 3.68(3H, s), 3.99(3H, s), 7.50(1H, s), 11.54(1H, br)
【0119】
実施例5−4
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:3.42(3H, s), 3.69(3H, s), 4.01(3H, s), 4.83(2H, s), 7.55(1H, s), 11.66(1H, br)
【0120】
実施例5−5
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.42(9H, s), 3.68(3H, s), 4.00(3H, s), 7.51(1H, s), 11.58(1H, br)
【0121】
実施例5−6
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.53(3H, s), 4.05(3H, s), 7.16(1H, d, J=2.2Hz), 7.68(1H, s), 8.76(1H, d, J=2.2Hz)
【0122】
実施例5−7
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.68(3H, s), 4.06(3H, s), 7.68(1H, s)
【0123】
実施例5−8
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.58(3H, s), 4.06(3H, s), 5.10(2H, s), 6.78-6.81(2H, m), 6.93-6.97(1H, m), 7.21-7.25(2H, m), 7.76(1H, s), 10.85(1H, s)
【0124】
実施例5−9
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.30(3H, s), 4.00(3H, s), 5.60(2H, s), 6.95-7.15(3H, m), 7.25-7.40(2H, m), 7.60(1H, s)
【0125】
実施例5−10
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.18(3H, t, J=7.1Hz), 2.32(3H, s), 2.88(2H, t, J=6.8Hz), 3.24(2H, t, J=6.8Hz), 3.99(3H, s), 4.08(2H, q, J=7.1Hz), 7.56(1H, s), 11.00-12.00(1H, br)
【0126】
実施例5−11
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.43(3H, s), 4.01(3H, s), 7.62(1H, s), 11.05-12.50(1H, br)
【0127】
実施例5−13
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.07(3H, t, J=7.0Hz), 2.34(3H, s), 3.25(2H, t, J=6.1Hz), 3.46(2H, q, J=7.0Hz), 3.80(2H, t, J=6.1Hz), 3.99(3H, s), 7.57(1H, s), 11.40-11.70(1H, br)
【0128】
実施例5−14
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.45(3H, s), 3.93(3H, s), 4.10(3H, s), 7.82-7.88(3H, m), 8.07(2H, d, J=8.8Hz)
【0129】
実施例5−15
H-NMR(CDCl3)δ ppm:2.47(3H, s), 4.09(3H, s), 7.69-7.95(5H, m)
【0130】
実施例6−1
[3,4−ジヒドロキシ−6−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−2−ニトロフェニル]フェニルメタノン
[3−ヒドロキシ−4−メトキシ−6−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−2−ニトロフェニル]フェニルメタノン(実施例5−1)(377mg)および酢酸エチル(10.6mL)の混合物に塩化アルミニウム(361mg)およびピリジン(0.387mL)を加えた。混合物を2.5時間加熱還流した。室温に冷却し、混合物に1mol/L塩酸を加えた。分取した有機層を食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をヘキサン:塩化メチレン=4:1にて粉砕し表題化合物(317mg)をアモルファスとして得た。
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.43(3H, s), 7.40-7.70(6H, m), 11.28(2H, brs)
MS(ESI, m/z):342(M+1)
【0131】
[3−ヒドロキシ−4−メトキシ−6−(5−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−2−ニトロフェニル]フェニルメタノンの代わりに対応する3−ニトロベンゼン−1−メトキシ−2−オールを用い、実施例6−1と同様の方法により、実施例6−2〜実施例6−15を合成した。これらを表6に示した。
【0132】
【表6】


【0133】
実施例6−2〜実施例6−15の物性値を以下に示した。
【0134】
実施例6−2
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.64(3H, s), 3.67(3H, s), 7.42(1H, s), 11.29(2H, br)
【0135】
実施例6−3
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.10-1.14(2H, m), 1.26-1.31(2H, m), 2.35-2.42(1H, m), 3.66(3H, s), 7.40(1H, s), 11.27(2H, br)
【0136】
実施例6−4
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:3.41(3H, s), 3.67(3H, s), 4.81(2H, s), 7.44(1H, s), 11.38(2H, br)
【0137】
実施例6−5
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.41(9H, s), 3.67(3H, s), 7.45(1H, s), 11.33(2H, br)
【0138】
実施例6−6
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:7.13(1H, d, J=2.0Hz), 7.62(1H, s), 8.74(1H, d, J=2.0Hz)
【0139】
実施例6−7
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.66(3H, s), 7.59(1H, s)
【0140】
実施例6−8
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.56(3H, s), 4.94(2H, s), 6.84-6.96(3H, m), 7.23-7.27(2H, m), 7.58(1H, s), 11.30(2H, br)
【0141】
実施例6−9
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.29(3H, s), 5.59(2H, s), 6.95-7.15(3H, m), 7.30-7.40(2H, m), 7.54(1H, s), 10.00-12.00(2H, br)
【0142】
実施例6−10
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.10-1.25(3H, m), 2.31(3H, s), 2.86(2H, t, J=6.8Hz), 3.22(2H, t, J=6.8Hz), 4.00-4.15(2H, m), 7.50(1H, s), 10.50-11.50(2H, br)
【0143】
実施例6−11
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.41(3H, s), 7.57(1H, s), 10.50-12.00(2H, br)
【0144】
実施例6−12
MS(ESI, m/z):348(M-1)
【0145】
実施例6−13
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:1.07(3H, t, J=7.0Hz), 2.33(3H, s), 3.23(2H, t, J=6.2Hz), 3.45(2H, q, J=7.0Hz), 3.79(2H, t, J=6.2Hz), 7.52(1H, s), 10.80-11.80(2H, br)
実施例6−14
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.43(3H, s), 3.86(3H, s), 7.60(1H, s), 7.76(2H, d, J=8.7Hz), 7.99(2H, d, J=8.7Hz)
【0146】
実施例6−15
H-NMR(DMSO-d)δ ppm:2.44(3H, s), 7.60(1H, s), 7.81(2H, d, J=8.6Hz), 7.92(2H, d, J=8.6Hz)
【0147】
試験例1
ヒトCOMT阻害活性
1)組換えヒトCOMTの調製
(1)組換えヒトカテコール−O−メチルトランスフェラーゼの調製
完全長のヒトカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(以下、COMT)をコードする、NCBI(National Center for Biotechnology Information)上に登録されている受入番号BC011935のDNA配列に基づき、配列番号1記載の組換えヒトCOMTをコードするDNA配列を増幅するために2つのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。5’プライマーの配列を配列番号3に、3’プライマーの配列を配列番号4に示した。これらのプライマーは、所望のベクター中に該当PCR産物を挿入しやすくするために制限酵素部位(5’側はBamH I、3’側はEcoR I)を含んでいる。
配列番号3記載の5’プライマーおよび配列番号4記載の3’プライマーの各々を、TE緩衝液で希釈して15pmol/μL溶液とした。HO(PCR用, 34.8μL)、25mmol/L MgSO(2.0μL)、2mmol/L dNTPs(5.0μL)、10倍濃縮のDNAポリメラーゼ KOD plus緩衝液(5.0μL、東洋紡)を混合し、PCR反応用混合物を調製した。次いでヒト肝臓cDNA(5.0μL、Clontech)、更に各々のプライマー対(1μL、15pmol)を上記混合物に加え、最後に1.0μLのKOD plus(東洋紡)を加えた。その後、PCR反応を行った。PCR反応は94℃2分間の処置後、94℃15秒間、59℃30秒間、68℃1分間でこのサイクルを40サイクル行った。次いで68℃5分間、4℃10分間で終了した。
PCR産物をQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)にて精製した。所望のインサートDNAは同キットのEB緩衝液(30μL)で溶出した。
【0148】
(2)組換えヒトCOMTインサートDNAおよびpGEX−2Tベクターの二重消化
組換えヒトCOMTインサートDNA(1.5μg)に、10倍濃縮のEcoR I緩衝液(3.0μL、New England Biolab)、HO(11.1μL)、BamH I(1.5μL、15U、10U/μL)とEcoR I(1.0μL、15U、10U/μL)を加え混合した。その混合溶液を37℃で1.5時間加熱した。更にその溶液に10倍濃縮のローディング緩衝液を加えた。混合溶液を電気泳動にて分離し、当該消化断片を有するDNAを含むゲルの部分を切り出し、MinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN)を使用して精製した。 pGEX−2TベクターDNA(1.5μg、Amersham)についても同様に二重消化を行い精製した。
【0149】
(3)ライゲーションと大腸菌JM109の形質転換
二重消化したpGEX−2Tベクター(2.0μL、50ng)およびインサートDNA(1.24μL、33.4ng)を、2倍濃縮のライゲーション緩衝液(3.24μL、Promega)に加えて混合した。次いで、T4リガーゼ(1.0μL、3U/μL、Promega)を混合溶液に加え、その混合物を25℃で1時間インキュベーションした。次に、大腸菌JM109(100μL)を0℃にて溶解し、リガーゼで反応させた上記混合溶液(5μL)をJM109懸濁液に加え、穏やかに混合し、0℃で30分間静置した。この混合物に強く振盪すること無しに42℃で40秒間の熱ショックを与え、0℃で10分間冷却した。次いで、450μLのSOC溶液を熱ショック後の溶液に加え37℃で1時間振盪した。振盪後、混合溶液の50μLと200μLを、LB−アンピシリン培地のプレート上(直径9cm、アンピシリン濃度100μg/mL)にそれぞれ播種し、37℃で16時間の静置培養を行った。その結果、プレート上にはコロニーが出現していた。
【0150】
(4)GST融合組換えヒトCOMTプラスミドによるJM109形質転換後のコロニーセレクション
上記の静置培養後のプレートから適当数のコロニーを選択し、それらを滅菌爪楊枝にてLB−アンピシリン液体培地(各2mL、アンピシリン濃度100μg/mL)に植菌し、37℃で16時間振盪培養した。それぞれから200μLを1.5mLマイクロチューブに分取し、フェノール抽出法によってプラスミドを抽出した。抽出されたプラスミドは、TE緩衝液に再溶解し、電気泳動に供した。検出されたバンドの泳動位置が、インサートDNAのないpGEX−2Tベクターのそれと近いものを一次陽性コロニーと判定し、以下の制限酵素二重消化による再確認を行った。
上記の一次陽性コロニー由来のDNA溶液(各7μL)を、10倍濃縮のEcoR I緩衝液(0.9μL、New England Biolab)と混和し、次いでBamH I(0.5μL、10U/μL) とEcoR I(0.5μL、15U/μL)を添加した。その溶液は、37℃で1時間加温した後、電気泳動を行った。およそ670bpの位置にバンドが検出された試料が由来するコロニーを、二次陽性コロニーと判定した。
【0151】
(5)GST融合組換えヒトCOMTプラスミドの大腸菌JM109からの抽出と精製
(4)で二次陽性コロニーと判定された、GST融合組換えヒトCOMTプラスミドでの形質転換JM109の培養液は、一部(100μL)をグリセロールストックとし、残りの培養液は12000rpmで10分間遠心を行い、大腸菌ペレットを得た。得られた大腸菌ペレットから、QIAGEN Plasmid mini kit(QIAGEN)を用いてプラスミドDNAを精製した。その濃度はOD260nmによって決定され247ng/μLであった。常法に従い配列確認を行なったところ、配列番号2のDNA配列が所望の位置に挿入されていた。
【0152】
(6)GST融合組換えヒトCOMTプラスミドDNAの大腸菌BL21 CODON PLUS (DE3)RPへの形質転換
(5)で精製され配列確認が終了したGST融合組換えヒトCOMTプラスミドDNA1μL(1ng/μL)を0℃で融解した大腸菌BL21 CODON PLUS (DE3)RP細胞懸濁液50μLに加え、(3)と同様に形質転換を行い、プレート培養を行った。
【0153】
(7)GST融合組換えヒトCOMTの発現
形質転換後の大腸菌BL21 CODON PLUS (DE3)RPのプレートからコロニーを拾い上げ、5mLのLB−アンピシリン培地(アンピシリン濃度100μg/mL)に投入し、37℃にて15時間振盪培養を行った。培養液の一部50μLをグリセロールストックとし、−80℃で保存した。使用時にこのグリセロールストックの一部を150mLのLB−アンピシリン培地(アンピシリン濃度100μg/mL)に植菌し、37℃にて16時間振盪培養を行った。この培養液を500mLずつ7本のLB−アンピシリン培地(アンピシリン濃度100μg/mL)で希釈し、20℃にて4.5時間振盪培養を行った。培養液の600nm吸光度が0.44となっていることを確認した後、各50μLのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(1mol/L)を添加し,20℃にて18時間振盪培養を行った。この培養液を9000rpmで20分間遠心して大腸菌ペレットを回収し,4gずつ4本に分けて使用時まで−80℃で凍結保存した。
【0154】
(8)GST融合組換えヒトCOMTのトロンビン処理
(7)から得られた大腸菌ペレットに40mLのBugBuster溶液(Novagen)、30μLのBenzonase(Novagen)および1μLのrLysozyme(Novagen)を添加し、15分間室温にて穏やかに撹拌しながら処理した。得られたライゼートを12000rpm、4℃、20分間遠心し、上澄み液を回収した。次いで、予めD−PBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)にて平衡化し、D−PBSで50%に再懸濁させた、20mLのグルタチオン4BSepharose(レジンベッドボリューム10mL)を上記上澄み溶液に加え、得られた混合物を4℃にて1時間振盪した。振盪後の混合物をフィルターによりレジンと濾液に分別した。得られたレジンを30mLのD−PBSで5回洗浄し、30mLのトロンビン処理用緩衝液(150mmol/L NaCl、50mmol/L Tris−HCl、pH8.0、10%glycerol、2.5mmol/L CaCl、0.5% β−オクチル−D−グルコピラノシド)で3回洗浄した。次いで、レジンにトロンビン処理用緩衝液を加え30mLとし、トロンビン(アマシャムバイオサイエンス)30ユニットを加えた。レジン混合液を4℃で15時間穏やかに撹拌した後、レジンを濾過し、濾液として得られた組換えヒトCOMTの溶液を使用時まで−80℃で保管した。
【0155】
2)ヒトCOMT阻害作用の測定
ヒトCOMT阻害作用の測定は、Zurcher Gらの方法(J. Neurochem., 1982年, 38巻, P.191-195)を一部改変して実施した。1)で調製した組換えヒトCOMT(約1mg/mL)0.25μL、リン酸カリウム緩衝液(500mmol/L、pH7.6)40μL、塩化マグネシウム(100mmol/L)10μL、ジチオスレイトール(62.5mmol/L)10μL、アデノシンデアミナーゼ(2550ユニット/mL)0.5μLと試験化合物の混合物を37℃で5分間プレインキュベートした。対照サンプルは同様の方法で調製したが、試験化合物の代わりにジメチルスルホキシド(5μL)を加えた。[3H]-S-アデノシル-L-メチオニン(12.5mmol/L、1.2Ci/mol;アマシャムバイオサイエンス社製)20μLの添加後、カテコール基質(7mmol/L)25μLを加えることにより反応を開始した。反応混合液(終容量0.25mL)は、37℃で30分間インキュベートした。反応は氷冷した0.1g/Lのグアイアコールを含む1mol/L塩酸(0.25mL)を加えることで停止させた。シンチレーター(オプティフロー(登録商標)0;パッカード社製)2.5mLを加え、次いで1分間勢い良く振とうした後、パッカード社製液体シンチレーションカウンター(TRICARB 1900CA)で有機層に存在する放射活性を直接計数した。ブランクはカテコール基質の非存在下でインキュベートした(基質を反応停止後に加えた)。IC50値は酵素活性を50%阻害するのに要した濃度を示す。比較例として、トルカポン、エンタカポンおよび特許文献1の実施例75に記載された5−(3−メチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−3−ニトロベンゼン−1,2−ジオールを同様に比較例1として試験した。これらの結果を表7に示した。
【0156】
【表7】

【0157】
試験例2
ラット肝細胞毒性
-150℃に保存されたラット凍結肝細胞3x10−6cells/vialを37℃に暖め、グルコース含有thawing medium(10mL)に加えて混合した後、1000rpmで1分間遠心した。上清を除去した後、細胞沈査をWilliams E.medium(15mL)に懸濁させた。薬物はジメチルスルホキシド用いて45、15、4.5、1.5、0.45mmol/Lに調製後、各薬物溶液およびコントロール(ジメチルスルホキシド)を2.0μLずつ試験管に分注した、この試験管に上記の細胞の懸濁液(300μL)を分注して混合させた。各懸濁液を96ウェルプレートに100μLずつ分注し、37℃にて4時間COインキュベータ中でインキュベートした。Promega社のCell Viability Assay法に従いATP活性を測定した。コントロールの50%ATP活性を示す濃度をEC50値として表した。これらの結果を表8に示した。
【0158】
【表8】

【0159】
これらの試験の結果、本発明の製造方法に従って調製されるニトロカテコール誘導体(V)は、トルカポン、エンタカポンまたは比較例1に比べて極めて軽微な肝細胞毒性しか示さないことが示唆された。
【0160】
試験例3
血漿中L−ドパ濃度の評価
(1)投薬および血漿のサンプリング
6週齢(体重170gから190g)の雄性Sprague-Dawleyラット(日本チャールス・リバー)を一晩絶食した。被験化合物の懸濁液(0.6mg/mL)、ならびにL−ドパ(1mg/mL)およびカルビドパ(6mg/mL)の混合懸濁液は、0.5%メチルセルロース水溶液を媒体として乳鉢を用いて調製した。被験化合物の経口投与(3mg/kg)から4時間後または6時間後にL−ドパ(5mg/kg)およびカルビドパ(30mg/kg)の混合懸濁液を経口投与した。L−ドパとカルビドパの混合懸濁液投与から2時間後に採血を行い、得られた血液はヘパリンナトリウム、グリコールエーテルジアミン四酢酸および還元型グルタチオンを含んだチューブに移し、氷上に保管した。L−ドパ濃度測定用の血漿サンプルを遠心分離により得た。
【0161】
(2)L−ドパ濃度の測定
上記(1)により得られた血漿0.05mLに常法に従い内部標準物質として100μg/mLメトホルミン塩酸塩水溶液を0.01 mL添加した後、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(250mmol/L 、0.5mol/L過塩素酸水溶液、0.05mL)を加え、除タンパクを行った。遠心分離後、その上清0.002mLをLC-MS/MSに注入した。血漿中L−ドパ濃度はLC-MS/MS法により以下の条件にて測定した。L−ドパ濃度は、被験化合物投与無しの対照群のL−ドパ濃度を100%として表9に示した。
LC
装置:Agilent 1100
カラム:Capcellpak C18 MGIII 5μm 4.6x50mm
移動相:0.5%ヘプタフルオロ酪酸水溶液 / アセトニトリル
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min

MS/MS
装置:API-4000
イオン化法:ESI (Turbo Ion Spray)
【0162】
【表9】

【0163】
これらの試験の結果より、L−ドパおよびカルビドパと、本発明の製造方法に従って調製されるニトロカテコール誘導体(V)とを併用投与した際の血漿中L−ドパ濃度増加作用は、L−ドパ、カルビドパおよび比較例1を投与した場合に比べて、より持続的であることが明らかとなった。
【0164】
試験例4
片側性6−ヒドロキシドパミン損傷の片側パーキンソン病ラットにおけるL−ドパ薬効増強作用
(1)薬物
以下の薬物を使用した:
6−ヒドロキシドパミン塩酸塩(6−OHDA,シグマ);デシプラミン塩酸塩(デシプラミン,シグマ);L−アスコルビン酸(シグマ);ペントバルビタールナトリウム(ネンブタール注,大日本住友製薬);アポモルヒネ塩酸塩1/2水和物(アポモルヒネ,シグマ);ジヒドロキシフェニルアラニン(L−ドパ,シグマ);カルビドパ一水和物(カルビドパ,ケンプロテック);0.5%メチルセルロース(和光純薬工業)。
6−OHDAは、0.2%のL−アスコルビン酸を含んだ生理食塩水中に、2mg/mLで溶解した。デシプラミンは、温水浴中で蒸留水中に10mg/mLで溶解した。アポモルヒネは、生理食塩水中に0.1mg/mLで溶解した。L−ドパ/カルビドパは、0.5%メチルセルロース水溶液中に懸濁した。試験化合物は、0.5%のジメチルスルホキシド、20%のポリエチレングリコールおよび79.5%の0.1mol/Lのアルギニン水溶液を含んだ溶液中に溶解した。
【0165】
(2)6−OHDA損傷モデルの作成
6−OHDA損傷モデルの作成は、非特許文献4の方法を一部改変して実施した。雄性のSprague−Dawley系ラット(6週齢、日本チャールスリバー)をペントバルビタールナトリウム(45mg/kg)の腹腔内投与で麻酔して、定位フレーム(ナリシゲ、東京、日本)に固定した。ノルアドレナリンニューロンの6−OHDAによる損傷を防ぐために、腹腔内デシプラミン注射(25mg/kg)を6−OHDA注入の30分前に施した。頭頂部中央部切開を経たブレグマ識別の後、6−OHDA注入部位に歯科用ドリルを用いて頭蓋骨に穴を開けた。損傷は左側の内側前脳束にマイクロシリンジ(ハミルトン)に接続した注入用カニューレ(30ゲージの針)を用いて6−OHDA(1分間あたり1μLの速度で4μL中の8μg)を注入することによって行った(損傷部位の座標;ブレグマ点および頭蓋骨表面から前後−2.5mm、左右−1.8mm、深さ−8.0mm)。カニューレは損傷部位に5分間静置した後、動物から慎重に取り除いた。頭蓋骨の穴に歯科用セメントを補充し、消毒後、頭皮の切開部位を外科的に縫合した。麻酔から回復した動物は、実験日まで通常通り飼育した。
【0166】
(3)回転行動の評価
損傷の3週間後、皮下投与された0.1mg/kgのアポモルヒネに反応した対側回転(一回転は360度の回転と定義)に基づいて、ラットを試験した。行動観察の際には、ラットを半径20センチメートルのプラスチック製円筒内に入れ、回転行動をビデオ撮影し、ラット旋回運動自動計測装置R−RACS(キッセイウェルコム)によって定量化した。一時間に100カウント以上回転した動物を更なる実験に用いた。実験日には、動物は午前9時から10時間絶食され、試験化合物は、10mg/kgの用量で経口投与され、同時にL−ドパ5mg/kgおよびカルビドパ30mg/kgが経口投与された。薬効の強さを対側回転数として測定し、薬効の持続時間を10分間あたりの回転数が10カウント以下の時間が60分間持続した時点までの時間とした。総回転数および薬効の持続時間を表10に示した。同様にL−ドパおよびカルビドパのみの群をコントロールとして示した。
【0167】
【表10】

【0168】
これらの試験の結果、L−ドパ/カルビドパのみのコントロールに比べて、本発明の製造方法に従って調製されるニトロカテコール誘導体(V)と、L−ドパ/カルビドパとを組み合わせて使用することにより顕著な薬効の増強が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明の製造方法に従って調製されるニトロカテコール誘導体(V)は、優れたCOMT阻害作用を有するので、パーキンソン病、うつ病、高血圧症の治療または予防剤として有用である。特にニトロカテコール誘導体(V)と、L−ドパとを組み合わせて使用することにより、L−ドパの生体内利用率を増加させることができるので、パーキンソン病の治療および予防に好適である。
【配列表フリーテキスト】
【0170】
<配列番号1>
配列番号1は、組換えヒトカテコール−O−メチルトランスフェラーゼの配列である。
<配列番号2>
配列番号2は、配列番号1の組換えヒトカテコール−O−メチルトランスフェラーゼを発現するように配列番号3および4のプライマーを用いて増幅されたDNA配列である。
<配列番号3>
配列番号3は、配列番号2のDNAを増幅するために使用された5’プライマーの配列である。
<配列番号4>
配列番号4は、配列番号2のDNAを増幅するために使用された3’プライマーの配列である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(IV):
【化1】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物。
【請求項2】
が、メチル基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
一般式(IV):
【化2】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物の製造方法であって、該方法は、以下の工程1〜3:
工程1:
一般式(I):
【化3】

〔式中、RおよびPは前記定義の通りであり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物を、R10MgX(式中、R10は低級アルキル基であり、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である)と反応させた後、
アシル化剤RC(O)−L(式中、Rは前記定義の通りであり、Lは塩素原子、臭素原子、−OC(O)Rまたは−N(R11)OR12であり、R11およびR12は独立して低級アルキル基である)と反応させるか、あるいは
一般式(I)で表される化合物を、一酸化炭素および低級アルキルアルコールと反応させることにより、一般式(II):
【化4】

(式中、R、R、PおよびPは前記定義の通りである)で表される化合物を調製する工程;
工程2:
一般式(II)で表される化合物の保護基Pを、酸またはルイス酸を用いて除去することにより一般式(III):
【化5】

(式中、R、RおよびPは前記定義の通りである)で表される化合物を調製する工程;および
工程3:
一般式(III)で表される化合物を、ニトロ化することにより一般式(IV)で表される化合物を調製する工程、
を包含する、製造方法。
【請求項4】
がメチル基であり、Pがベンジル基である、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
一般式(I):
【化6】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基であり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物。
【請求項6】
がメチル基であり、Pがベンジル基である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
一般式(II):
【化7】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基であり、Pは非置換もしくは置換ベンジル基である〕で表される化合物。
【請求項8】
がメチル基であり、Pがベンジル基である、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
一般式(III):
【化8】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物。
【請求項10】
がメチル基である、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
一般式(IV):
【化9】

〔式中、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、非置換もしくは置換アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシ基であり、Rは低級アルキル基、ハロ低級アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、低級アルコキシ低級アルキル基、アリールオキシ低級アルキル基、または低級アルコキシカルボニル低級アルキル基であり、Pは低級アルキル基である〕で表される化合物の保護基Pを、酸またはルイス酸と反応させることにより除去することを特徴とする、一般式(V):
【化10】

(式中、RおよびRは前記定義の通りである)で表される化合物の製造方法。
【請求項12】
がメチル基である、請求項11記載の製造方法。


【公開番号】特開2011−21009(P2011−21009A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137973(P2010−137973)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000104560)キッセイ薬品工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】