ニトロキシド放射線防護製剤および使用法
放射線療法に伴う有害な副作用を予防または治療するのに有用な薬剤組成物を開示する。より詳細には、放射線療法を受けている患者の皮膚および粘膜に適用することのできる新規な製剤、ならびにそれら製剤の使用方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、放射線療法に伴う有害な副作用を予防または治療する分野に関する。より詳細には、本発明は、放射線療法を受けている患者の皮膚および粘膜に適用することのできる新規な製剤、ならびにそれら製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、癌との闘いでの重要な手段であり、全癌患者のうち50%もの患者の治療に使用されている。したがって、毎年50万を超える癌患者が放射線療法を受けている。放射線療法の使用は、多くの種類の癌を治療するための有効な手段であるが、この手段は、数多くの複雑な合併症をもたらす。一般的な合併症には、患者の皮膚、毛嚢、および粘膜に対する有害作用を含めることができる。
【0003】
放射線療法の一般的な皮膚の合併症には、紅斑および毛嚢炎が含まれる。これらの障害は、どちらも皮膚の痒みと赤みを伴うので、患者を非常に苛立たせるものとなり得る。これらの合併症および他の皮膚合併症は、酸化によるストレスおよび放射線によって引き起こされる他のストレスによって起こり得る。放射線によって引き起こされる皮膚症状の他の例には、線維症、乾性落屑、および湿性落屑が含まれる。
【0004】
さらに、毛嚢は、放射線療法に対して実に敏感である。したがって、毛髪が放射線治療のビーム場にある場合、毛髪は成長が止み、抜けることがある。毛髪の喪失は、当惑し、自尊心を失う原因となりかねない。
【0005】
放射線療法は、目、鼻、口、膣、腸粘膜などの粘膜に対しても有害作用を及ぼし得る。たとえば、口内炎とも呼ばれる口腔粘膜炎は、口腔粘膜に対する放射線の局所作用の結果として起こる。粘膜炎は、口の粘膜の炎症を特徴とし、発赤から重度の潰瘍までの範囲に及ぶ。粘膜炎の症状は、痛みおよび不快感から、食物または液体を許容できなくなるに及ぶまで様々である。さらに悪いことに、口腔粘膜炎は、更なる放射線療法または化学療法を受け入れる能力を制限するほど重症になることもある。
【0006】
放射線療法によって口腔粘膜に損傷を受け、免疫が低下している患者は、口腔中に日和見感染を被りがちでもある。したがって、粘膜炎は、治療および/または緩和ケアに対する患者の応答をさらに弱めることもある。したがって、粘膜炎を可能な限り予防し、またはせめてその重症度および起こり得る合併症を低減すべく治療することは極めて重要である。
【0007】
放射線療法によって引き起こされる別の一般的な粘膜症状は、直腸炎である。直腸炎は、直腸の内層(直腸粘膜)の炎症である。最もよくある症状は、頻繁または継続的な便意または排便衝動である。他の症状には、便秘、直腸膨満感、左脇腹痛、直腸の粘液の通過、直腸出血、および肛門直腸痛が含まれる。
【特許文献1】米国特許第5,352,442号
【特許文献2】米国特許第5,462,946号
【特許文献3】国際公開第WO87/00427号
【非特許文献1】Hilderley、Oncology Nursing Forum、第10巻第1号、51〜56ページ(1983年)
【非特許文献2】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年
【非特許文献3】FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに、Tempol、すなわち化学式4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-オキシルによって特徴付けられる安定なニトロキシドラジカルを、放射線療法の作用を改善する局所用製剤として使用することを提唱しているものがある(たとえば、Proctorの米国特許第5,352,442号およびMitchellの米国特許第5,462,946号を参照のこと)。これらの参照文献は、Tempolの局所への使用をクリーム、ローション、シャンプー、クリームリンス、および軟膏から選択された製剤に限定している。これらの種類の局所用製剤は、患者への実際の放射線療法の施術直前に投与するのに適さないことが現在わかっている。実際に、これらの製品形態は、放射線が当てられるときに、重症の火傷を含む局所の焼けをもたらし得る残渣を残す。したがって、放射線療法の実際の施術直前に患者に投与することのできる局所用製剤が当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、溶媒、好ましくは濃厚にし、または低残渣ゲルの形にした溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含む薬剤組成物に関する。ある好ましい実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、TEMP0、すなわち2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、およびTEMPOL、すなわち4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0010】
薬剤組成物は、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択された溶媒を含んでいてよい。溶媒がアルコールの実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどからなる群から選択されると有利であろう。溶媒をグリコールとする実施形態では、グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールなどからなる群から選択されると有利であろう。ある実施形態では、粘膜に投与する製剤用の溶媒として、水または他の刺激性でない液体を使用することが好ましい。別の実施形態では、粘膜用製剤に使用する溶媒は、非刺激性である(たとえば、アルコール、尿素など)。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書に記載の薬剤化合物は、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状などを含む、放射線療法によって引き起こされ、または増強される症状を改善することができる。特別な実施形態では、この薬剤組成物によって治療または予防することのできる特定の皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などが含まれる。ある実施形態では、本明細書に記載の薬剤組成物は、口腔粘膜炎や直腸炎などの粘膜症状を予防することができ、前立腺腫瘍など、その範囲の腫瘍の放射線療法を行う際の直腸粘膜の保護において特に価値を有する。さらに、他の実施形態では、この薬剤組成物は、脱毛症などの毛嚢症状を治療または予防することができる。
【0012】
別の実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤の予防もしくは治療有効量は、製剤1mlあたり約0.01〜約100mgの量である。企図される特定の量の具体例としては、約.02、.03、.04、.05、.10、.15、.20、.25、.30、.35、.40、.45、.50、.55、.60、.65、.70、.75、.80、.85、.90、.95、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100mg/ml、またはそれ以上が挙げられる。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0013】
別の実施形態は、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーを含む薬剤組成物を含む。
【0014】
別の実施形態は、薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する薬剤組成物を含む。
【0015】
本発明の実施形態は、溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含む、皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物も含み、この薬剤組成物は、カルボキシメチルセルロース、グアーガムなどのゴム、アルギン酸塩、または他の低残渣増粘剤などの増粘剤によって濃厚にされている、または低残渣ゲルの形態であることが好ましい。増粘剤またはゲル化剤は、放射線療法が適用される際に、皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な残渣が残らないように選択すべきである。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0016】
別の実施形態は、溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、低残渣ゲルの形態をした、脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物を含む。
【0017】
他の実施形態は、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所に適用することを含み、そのニトロキシド放射線防護剤が溶媒の溶液になっている、患者の治療方法を含む。好ましい実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。他の有利な実施形態は、低残渣ゲルまたは濃厚にした液体の形態の溶液を含む。ある実施形態では、溶媒は、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択することができる。有害な副作用は、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、および湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎などの皮膚症状、口腔粘膜炎や直腸炎などの粘膜症状、脱毛症などの毛嚢症状、細胞毒性、ならびにポリ核酸の損傷からなる群から選択されることが好ましい。
【0018】
別の実施形態は、患者の治療方法であって、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用し、そのニトロキシド放射線防護剤が溶媒中の溶液になっている工程と、溶媒を蒸発させる工程と、その患者に放射線療法を適用する工程とを含む方法を含む。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0019】
別の実施形態は、患者の治療方法であって、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用する工程を含み、そのニトロキシド放射線防護剤が溶液になっており、かつ低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした方法を含む。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
放射線療法と癌
放射線療法は、癌性細胞の遺伝物質に損傷を与え、それによって癌性細胞の分裂を不可能にすることを目的として、治療する範囲に電離放射線を向けることによって機能する。したがって、放射線療法は、癌との闘いにおける重要な手段であり、全癌患者のうち50%もの患者の治療に使用されている。事実、毎年50万人を超える癌患者が、単独で、または外科手術、化学療法、もしくは他の形態の癌療法と共に放射線療法を受けている。放射線療法(radiotherapy)の他の用語には、放射療法(radiation therapy)、X線療法、電子ビーム療法、コバルト療法、または照射が含まれる。
【0021】
放射線療法は、癌を手術によって除去するのが不可能である場合、手術によって患者が衰弱するかもしれない場合、または手術による腫瘍の減量化によってすべての癌組織が完全に除去されていない場合に特に有用である。放射線療法は、手術によって除去されなかった癌細胞を破壊するために、外科手術の後に決まって使用される。放射線療法の別の使用は、手術前にあり、その場合、放射線療法によってそれまでは手術不能であった腫瘍を処理できる大きさに「縮小」させて、外科的切除を可能にすることができる。
【0022】
たとえ治癒することがあり得ないとしても、放射線療法を使用して、末期癌の症状(出血や痛みなど)の軽減を助けることができる。実施される放射線療法の3分の1以上は、姑息的である。姑息的治療の典型的な意図は、速やかに痛みを軽減し、患者が生存する間、症状の抑制を維持することである。したがって、治療は、通常は患者の臨床的状態および全般的な予後に合わせて行われる。姑息的治療はしばしば、痛みのもとを直接に標的にすることができるので、鎮痛薬療法を補足し、その有効性を高めることができる。
【0023】
詳細には、放射線療法は、皮膚、頭頚部、脳、乳、前立腺、子宮頚などの癌のような限局性の充実性腫瘍の治療に使用することができる。放射線療法は、それぞれ白血病およびリンパ腫を含む、造血細胞およびリンパ系の癌などの治療にも使用することができる。放射線の近くまたは放射線の通路にある粘膜または毛髪(たとえば、脳腫瘍の場合の頭毛、前立腺癌の場合の直腸粘膜)は、本発明を利用して保護することができる。
【0024】
放射線の形態および線量
外部ビーム放射線療法は、一般に、時に「エネルギーの束」と呼ばれる光子を癌治療のために使用する。本明細書では、X線、γ線、UV-A、UV-BおよびUV-Cを含む紫外線を含む光子または粒子;中性子;陽子;およびβ粒子を含む電子などといった形態に拘らず、全放射線療法の有害作用を改善することが目的である。
【0025】
X線は、放射線療法に使用される放射線の非常に一般的な形態である。γ線は、放射線療法に使用される別の形態の光子である。γ線は、分解または崩壊するにつれて放射線を放出するある種の元素(ラジウム、ウラン、およびコバルト60など)として自発放出的に発生させることができる。各元素は、特定の速度で崩壊し、γ線および他の粒子の形でエネルギーを放出することができる。通常、X線とγ線は、癌細胞に対する全般的な作用が同じである。
【0026】
外部ビーム放射線療法は、線形加速器によって送達することができる。通常、線形加速器は、外部ビーム放射線療法のための高エネルギー線の生成に強力な発電機を使用する。一般に、線形加速器は、様々なエネルギーのX線を生成することができる。線形加速器は、線を焦点に集めて腫瘍に向けるコリメーターと呼ばれる特別な鉛シャッター装備を含んでいてよい。線形加速器は、加速器が回転し、全角度から放射線を送達するのを可能にする大きな「L字型」の設計にすることができる。多様な角度によって、周囲の健康な組織への放射線送達を最小限に抑えながら、腫瘍に最大量の放射線を送達できるようになる。本明細書に記載製剤および方法は、コリメーターもしくは、正常細胞への放射線の曝露を制限する他の装置および方法と共に使用することができる。
【0027】
本明細書に記載の製剤および方法は、大抵の形の放射線療法による作用を改善することができる。たとえば、この組成物および方法によって、局所場放射線および広範囲場放射線の影響を改善することができる。局所場放射線とは、特定の転移性部位に向けられた放射線ナロービームを示す。習慣的に、局所場放射線は、予想余命が長く、転移性部位がほとんどない患者に使用される傾向がある。対照的に、広範囲場放射線は、より広い範囲に放射線を使用し、しばしば予想余命がより短く、痛みを引き起こす多数の転移性部位を有する患者の治療に使用される。
【0028】
放射線療法の線量は、照射を受けた材料1グラムあたり100エルグのエネルギーに等しい放射線エネルギー線量である、科学的単位ラド(放射線吸収線量)によって測定される。癌の治療として放射線療法を受ける患者は、非常に短い期間(数週間または数カ月)で数千ラドを受けることがある。対照的に、典型的な走査用X線は、はるかに少ないラドしか含まない。たとえば、胸部のX線像の撮影に使用される現代の乳房撮影装置は、X線について約0.1〜0.2ラドの線量を使用する。
【0029】
伝統的な放射線療法によれば、正常組織の許容度に限りがあるので、放射線の1日当たり線量が多いほど、与えることのできる合計線量は少なくなる。1日当たり放射線用量が多いときほど、その分より多くの腫瘍細胞が死滅する。通常、腫瘍の死滅と正常組織に対する有害な放射線作用とを、大抵は1日線量の関数で釣り合いを取る。特定の腫瘍の特性および正常組織の許容度を考慮に入れた、いくつかの各種スケジュールが開発されている。その文献は、原発性部位または転移性部位の腫瘍の退行および疾患の寛解を実現するのに最適な放射線スケジュールの点で区別される。しかし、一般に、放射線治療は、臨床的な状態に関して計画される。本発明では、主要な目的が、放射線療法の有害作用を改善することであるので、正常組織が放射線療法に対してより高い許容度をもつことができ、より多い線量の放射線を安全に与えることができる。
【0030】
放射線の副作用
一般に、放射線療法は、局所的な治療である。放射線療法は通常、治療部位の細胞に作用する。しかし、上述のように、放射線は、癌細胞に損傷を与えるだけでなく、治療部位にある正常細胞にも損傷を与え得る。治療部位にある正常細胞には、皮膚細胞、粘膜、毛嚢などが含まれ得る。
【0031】
放射線の副作用は、通常は放射線の入り口に限られ、放射線療法の過程の最中もしくは直後に起こる急性、または数カ月から数年の後に起こる後発性として分類することができる。急性の放射線作用は、合計線量の多い放射線を1日に少量ずつ送達する放射線スケジュールではより顕著であり、一般に、治療を始めて2週間の終わりに始まる。急性放射線作用は、主に皮膚および粘膜の表面で起こり、通常、皮膚の紅斑もしくは色素沈着や粘膜炎などの炎症性応答からなる。後発性放射線作用は、前述の急性の反応なしで現れることもある。線維症は、最もよくある種類の後発性放射線傷害であり、皮膚を含む多くの種類の組織で認めることができる。
【0032】
放射線療法によって引き起こされる他の皮膚症状には、乾性落屑および湿性落屑が含まれる。乾性落屑は、乾燥した薄片状の皮膚および照射範囲の痒みを特徴とする。湿性落屑は、表皮の脱落、皮膚の湿った赤剥けの真皮層の露出を特徴とする。
【0033】
特定の毛細胞が成長する速度と、放射線療法に対するその感受性は正比例する。したがって、放射線療法に対する特定の毛細胞の感受性を表すと、高いものから順に、頭毛、男性のひげ、眉毛、腋毛、陰毛、および最後に産毛となる。毛嚢上皮は、表皮に由来し、同様に放射線感受性である。その結果として、瀘胞細胞は、真皮中の他の細胞よりも早く急性皮膚炎または色素沈着過剰を発症し得る。毛嚢の放射線に対する感受性はしばしば、放射線療法を受けている患者に脱毛症をもたらし得る。
【0034】
本明細書に記載の一目的は、その作用が急性であろうと後発性であろうと、あるいはその作用が患者の皮膚、粘膜、毛嚢、または他の治療部位のいずれに関連していようと、正常細胞に対する放射線療法の有害作用を改善することである。
【0035】
ニトロキシド放射線防護剤
本明細書では、用語「ニトロキシド放射線防護剤」には、放射線療法の作用を改善することのできるいかなるニトロキシドも包含される。典型的には、ニトロキシドは安定なフリーラジカル化合物であり、OHやHなどの他のフリーラジカルを含む生物学的に重要な様々な化合物と反応することができる。一般に、ニトロキシド放射線防護剤は、細胞毒性、および、変異原性を含むポリ核酸(たとえば、DNA、RNA)損傷から保護することを含むがこれに限らず、放射線療法の作用の大部分を改善することができる。ニトロキシド放射線防護剤によって改善することのできる作用の別の例には、皮膚症状、粘膜症状、および毛嚢症状が含まれるがこれに限らない。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤には、たとえば抗酸化剤など、オキシ基と反応することのできるニトロキシドが含まれる。さらなる実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、超酸化物および過酸化水素を中和することができる。
【0036】
ある実施形態によれば、ニトロキシド放射線防護剤は、次式、すなわち、
【0037】
【化1】
【0038】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、COOH、CONH、CN、およびCH2NH2から選択される。]、
【0039】
【化2】
【0040】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、R1は、CH3およびスピロシクロヘキシルから選択され、R2は、C2H5およびスピロシクロヘキシルから選択される。]、
【0041】
【化3】
【0042】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、CONHから選択される。]、
【0043】
【化4】
【0044】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、H、OH、およびNH2から選択され、TはOから選択される。]、
の構造を有するものから選択することができる。
【0045】
適切なニトロキシド放射線防護剤は、Proctorの米国特許第5,352,442号およびMitchellらの米国特許第5,462,946号でも見ることができる。
【0046】
ニトロキシド放射線防護剤を非限定的に挙げれば、2-エチル-2,5,5-トリメチル-3-オキサゾリジン-1-オキシル(OXANO)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(Tempamine)、3-アミノメチル-PROXYL、3-シアノ-PROXYL、3-カルバモイル-PROXYL、3-カルボキシ-PROXYL、および4-オキソ-TEMPOである。これらの材料は、単独の活性成分として使用してもよく、または「ニコランジル」や「ミノキシジル」などの毛髪成長促進剤と共に使用してもよい。
【0047】
本明細書では、ニトロキシド放射線防護剤は、適切な溶媒に溶解させた溶質である。これは、従来技術で使用されているようなニトロキシド放射線防護剤の分散液、懸濁液、または乳濁液と区別されるものである。
【0048】
本明細書等に記載の組成物中ではすべて、少なくとも1種のニトロキシド放射線防護剤を活性成分とするが、これらの組成物は、放射線療法または化学療法の有害作用を改善することのできる他の活性成分も含んでよい。したがって、ニトロキシド放射線防護剤は、単独で使用しても、他のニトロキシド放射線保護剤、毛髪成長刺激物質、または添加物(additament)と併用してもよい。他の毛髪成長刺激物質および添加物には、ヒドロキシルラジカル捕捉剤、抗酸化剤、および国際公開第WO87/00427号および欧州特許出願第89300785.6号に記載されている他の化合物が含まれる。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、グルタチオンなどの他の抗酸化剤と共に使用することができる。
【0049】
ニトロキシド放射線防護剤は、皮膚、粘膜、毛嚢などへの症状を含む、放射線療法の数多くの有害作用を改善することができる。ニトロキシド放射線防護剤が予防または治療の助けとなり得る皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎などが含まれる。ニトロキシド放射線防護剤が予防または治療の助けとなり得る粘膜症状には、口腔粘膜炎、直腸炎などが含まれる。ニトロキシド放射線防護剤は、毛髪の成長を刺激して、脱毛症などの予防または治療の助けともなり得る。毛髪成長の刺激には、成長速度を増大させること、毛髪直径を増大させること、毛嚢新生などを含めることができる。ニトロキシド放射線防護剤は、脱毛または脱毛症の進行を阻止することもできる。
【0050】
本明細書での別の実施形態は、その症状をもたらしたのが放射線療法であろうと他の手段であろうと、脱毛または脱毛症を予防または治療する方法を含む。たとえば、脱毛または脱毛症が、たとえば、遺伝的要因、加齢、局所の皮膚症状、全身性疾患、および化学療法によって起こることはよく知られている。当業者ならば、本明細書に記載の実施形態が、治療部位に望ましくない残渣を残さず、任意のタイプの脱毛を治療または予防する際に有効な製剤に関連した組成物および方法を包含することがわかるであろう。別の実施形態は、任意のタイプの脱毛を治療または予防する際に有効であり、患者に適用された後に治療部位から直ちに垂れ落ちないような十分な粘性を有する製剤に関連した組成物および方法を含む。
【0051】
低残渣製剤の開発は、ニトロキシド放射線防護剤が低残渣ゲル、濃厚液体、液体などの中に存在している溶液を調製して行うことができる。十分な粘性を有する低残渣製剤の開発は、ニトロキシド放射線防護剤を低残渣ゲルまたは濃厚液体に溶かした溶液を調製して行うことができる。
【0052】
ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液中に約5〜15重量%存在する。他の実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液中に約7〜12重量%存在する。より詳細な実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液の7重量%を占める。ニトロキシド放射線防護剤は、エタノール系溶液に溶解していることが好ましい。
【0053】
本発明におけるゲルは、通常、過半量の液相と半量未満の増粘剤またはゲル化剤とを含む。好ましい実施形態では、ゲル化剤が占めるのは、組成物の総体積または総重量の5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、またはそれ以下にすぎず、したがって、液体は、皮膚または粘膜に適用された場合、ゲル化剤および活性成分だけを残して、蒸発することができる。このようにして、薬物の担体の98%、99%、またはそれ以上が放射線療法の前に消失し、ボーラス効果による局所の焼けを大いに低減または解消することができる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、直腸用ゲル(または他の粘膜使用向けゲル)の液相は、特に、非刺激性の対粘膜特性があるかどうかで選択されることに留意されたい。したがって、水性媒体、ならびに非刺激性アルコール(グリコールやポリオールなど)および他の非刺激性溶媒が適切である。本発明の実施に際しては、有効な放射線防護量のニトロキシドゲルを直腸投与し、次いで、好ましくは放射線療法の際に直腸中にゲルを保っておき、またはそれほど好ましくはないが、放射線療法の前にゲルを除去することが望ましいであろう。
【0055】
Tempol
上述のように、本明細書等に記載の薬剤製剤に使用してよい好ましい一ニトロキシド放射線防護剤は、Tempolである。Tempolは、販売供給業者から用意に入手できる安定なニトロキシドラジカルである。Tempolは、化学式4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルによって特徴付けられる。
【0056】
Tempolは、皮膚、粘膜、毛嚢などへの症状を含む、放射線療法の数多くの有害作用を改善することができる。Tempolが予防または治療の助けとなり得る皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などが含まれる。Tempolが予防および治療の助けとなり得る粘膜症状には、口腔粘膜炎、直腸炎などが含まれる。毛髪の成長を刺激することによって、Tempolが予防または治療の助けとなり得る毛嚢症状には、脱毛症などが含まれる。毛髪成長を刺激するとは、成長速度を増大させること、毛髪直径を増大させること、毛嚢新生などに関する。Tempolは、脱毛または脱毛症の進行を阻止することもできる。
【0057】
発明の背景で述べたように、従来技術は、Tempolの局所的な使用を、クリーム、ローション、シャンプー、クリームリンス、および軟膏から選択される製剤に限定している。本発明は、Tempolの従来技術の局所形態は、患者に実際に放射線療法が施術される直前に使用すべきでないという発見に注目している。これら従来技術の製剤は、患者の治療部位(たとえば、皮膚、粘膜)に残渣または薄膜を残す。この残渣または薄膜は、放射線療法の前に治療部位に残っていると、放射線を増強または吸収することがあり、重症にもなりかねない焼けを引き起こし得る。残渣または薄層によって引き起こされるこの焼けは、ボーラス効果と呼ぶことができる(一般に、Hilderley、Oncology Nursing Forum、第10巻第1号、51〜56ページ(1983年)を参照のこと)。したがって、本明細書では、組成物および方法は、放射線療法を実際に施術する直前に患者に投与することのできる局所用製剤を含む。これは、Tempolを低残渣ゲル、濃厚液体、液体などに溶かした溶液を含むがこれに限らない低残渣製剤の形態にしたTempolを局所投与して行うことができる。
【0058】
適する溶媒
Tempolなどのニトロキシド放射線防護剤は、ある実施形態では、ニトロキシド放射線保護剤は、溶媒に溶解させ、低残渣ゲル、低残渣濃厚液体、低残渣液体などを含む製剤に製剤してよい。当分野の技術者ならば、グリセリン、PEG、ポリソルベートなどを含むがこれに限らない、水と混和性の任意の液体を適切な濃度で溶媒として使用してよいことが容易にわかるであろう。本明細書で提示される製剤および方法の主目的は、低残渣のニトロキシド放射線防護製剤を調製することであるので、本明細書の実施形態は、比較的揮発性である溶媒を含む。用語「比較的揮発性」とは、比較的低い温度で容易に気化する溶媒を示す。たとえば、ここでの実施形態は、約0〜38℃で容易に気化する溶媒を含む。このような液体は、たとえば、25℃で少なくとも50mmHgの蒸気圧、より好ましくは少なくとも75、90、100、150、200、250、または300mmHgの蒸気圧を有すると有利であろう。したがって、別の実施形態は、放射線療法を治療部位に適用する前に、溶媒が完全にまたは実質的に蒸発してしまう製剤および方法を含む。
【0059】
ニトロキシド放射線防護剤の溶媒として使用してよい溶媒を非限定的に挙げるとすれば、水、尿素、アルコール、およびグリコールである。本明細書等に記載の製剤および方法には、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させることのできる任意のアルコールを使用してもよく、その例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが含まれる。同様に、本明細書に記載の製剤および方法には、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させることのできる任意のグリコールを使用してもよく、その例には、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが含まれる。好ましい一実施形態では、溶媒は、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるだけでなく、経皮送達を促進する。すなわち、経皮送達促進剤、とりわけ角質層の成分を破壊または可溶化するものが特に好ましい。我々は、たとえば、様々なアルコールが、ニトロキシド放射線防護剤の皮膚への浸透を促進することを発見した。さらなる実施形態は、患者の全身の治療を可能にする入手可能な経皮相乗剤を含む。
【0060】
本発明のある実施形態では、活性成分であるニトロキシド放射線防護剤の濃度は、溶解限度またはその付近の濃度でよい。たとえば、ニトロキシド放射線防護剤は、溶液中に飽和状態の約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%でよい。実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤が、治療部位に適用された後に所望の速度でその放出を促進するほど十分に溶媒に溶解性である製剤も含む。
【0061】
ある実施形態では、溶媒は、溶液の約70〜90%を占めていてよい。他の実施形態では、溶媒は、溶液の約75〜86%を占める。より詳細な実施形態では、溶媒は、溶液の約79%を占める。
【0062】
上述の溶媒はすべて、本明細書に記載の低残渣ゲル、濃厚液体、および液体のいずれについても使用してよい。
【0063】
ニトロキシド放射線防護剤製剤の特性
本明細書での実施形態は、溶液に溶解させたニトロキシド放射線防御剤を含有する局所用製剤を含む。上述の溶媒はすべて、本明細書等に記載の製剤に使用することができる。
【0064】
局所用製剤は、頭皮、顔面、首、胸部、腕、足、胴部、背中などを含む患者の皮膚の全範囲に容易に適用できるように調製することができる。局所用製剤は、目、口、鼻、膣、直腸などの部位を含む患者のすべての粘膜に適用できるように調製することもできる。ある実施形態では、粘膜の治療に使用する製剤は、水または別の非刺激性溶媒を含んでいることが好ましい。さらなる実施形態では、粘膜に適用しようとする製剤は、アルコール、尿素などの刺激性の溶媒を欠いている。
【0065】
局所用製剤では、吸収されるニトロキシド放射線防護剤または他の活性成分の総量は、適用範囲の大きさ、適用頻度および適用強度、適用する媒体の粘性もしくは濃度を含む、多くの要素に基づき大いに様々でよい。薬物の吸収に影響を及ぼす他の要因は、適用部位、年齢、および皮膚状態である。たとえば、角質化していない皮膚、老化した皮膚、痛んだ皮膚、または擦りむけた皮膚では、これらの皮膚タイプに活性成分がより浸透しやすいので、薬物の吸収がより高くなる。したがって、一実施形態は、低残渣製剤としたままで、治療を受ける患者によるニトロキシド放射線防護剤の吸収を最適化することである。
【0066】
本明細書の主目的は、ボーラス効果を増強することなく、放射線療法の有害作用を改善することであるので、局所用組成物の実施形態は、低残渣にすべきである。本明細書では、用語「低残渣」とは、治療部位に放射線療法の施術によってボーラス効果を増強し得る残渣を残さずに、放射線療法を受ける直前に患者に適用することのできる製剤を示す。本明細書に記載の方法によれば、どんな低残渣製剤を使用してもよい。低残渣製剤は、ゲル、液体、濃厚液体などを含むがこれに限らない。当業者ならば、本明細書に記載の方法に従って使用する低残渣ゲル、低残渣液体、および低残渣濃厚液体の調製方法は容易にわかるものである。
【0067】
他の実施形態は、適用された後に治療部位から直ちに垂れ落ちないような十分な粘性を有する局所用製剤を含む。ある実施形態では、薬剤組成物は、ニトロキシド放射線防護剤および他の活性成分を、治療部位への適度な吸収を可能にするのに十分な期間治療部位に接触させておく粘性を備えているべきである。ある実施形態では、ゲルおよび濃厚液体製剤は、製剤が治療部位から直ちに垂れ落ちないような適度な粘性を備えることができる。したがって、製剤をその場所に保つ方法が本発明に包含される。上述のように、組成物の粘性に拘らず、治療部位に放射線療法を施術するとき、危険なボーラス効果を生じるのに十分な残渣が存在すべきでない。
【0068】
代替の実施形態は、それだけに限らないが低残渣液体および低残渣濃厚液体などの、粘性の低い局所用製剤である。ある実施形態では、液体および濃厚液体は、治療部位にニトロキシド放射線防護剤を適切に適用するために、塗布具を用いて適用してよい。塗布具には、布、きれ、スポンジ、タオル、ガーゼ、および同様な吸収性材料を含めることができるがこれに限定するものではなく、また塗布具とニトロキシド放射線防護剤溶液の組合せは、本明細書に記載の方法の一態様である。
【0069】
本明細書の局所用組成物は、ニトロキシド放射線防護剤および溶媒を含むだけでなく、ポリマー、着色剤、抗菌剤、保存剤、抗酸化剤、アルコール、皮膚軟化薬、追加の活性成分、治療部位の透過性を高める成分、水、および低残渣局所用製剤に一般に使用される他の成分を含んでいてもよい。製剤が全体として低残渣のままである限り、本明細書の組成物中に追加の成分が含まれることは許容される。
【0070】
当業者ならば、ゲルであろうと液体であろうと、ポリマーを用い、ニトロキシド放射線防護剤製剤の濃度を容易に変更することができる。実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるのに使用する溶媒との相溶性が中程度から高度である1種または複数の適切なポリマーを含有する製剤を含む。ある実施形態では、ポリマーは、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、化工セルロースなどのセルロース系ポリマー、コラーゲンなどの天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、無機ポリマーなどから選択することができる。
【0071】
使用することのできるエチレン系ポリマーの例には、酸化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコールなどが含まれるがこれに限らない。
【0072】
使用することのできるアクリル系ポリマーの例には、アクリルエステル、メタクリルエステル共重合体、アクリルポリマー乳濁液、カルボマー、エチレンアクリレート、メタクリロイルエチルベタイン、メタクリル酸共重合体、オクチルアクリルアミド、アクリレート、ブチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スルホン酸ポリアクリルアミドメチルプロパン、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-15などが含まれるがこれに限らない。
【0073】
ポリビニルピロリドン(PVP)の例には、ポリクオタニウム-11、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、PVP/Elcosene共重合体、PVP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸三元重合体、PVP/ヘキサデセン共重合体、PVP/VA共重合体、スチレン/PVP共重合体などが含まれるがこれに限らない。
【0074】
ポリビニル系コポリマーの例には、エチレン酢酸ビニル共重合体、PVM/MA共重合体エステル、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/メタクリルオキシベンゾフェノン-1共重合体、酢酸ビニル/コトン酸(cotonic acid)/ネオデカン酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、PEGセルロース、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10などが含まれるがこれに限らない。
【0075】
天然ポリマーの例には、アラビアゴム、寒天、アルギン酸塩、カラゲナン、ファーセレラン、ゼラチン、ガティ(ghatti)ゴム、グリコサミノグリカン、グアーガム、グアーガム誘導体、ヒドロキシプロピルグアー、ヒアルロン酸、インドゴム、ローカストビーンガム、マルトデキストリン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンなどが含まれるがこれに限らない。
【0076】
ポリスチレン系ポリマーの例には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムが含まれるがこれに限らない。
【0077】
シリコーン系ポリマーの例には、アミノビスプロピルジメチコーン、シクロメチコーン、ジメチコーン、ジメチコーンコポリオール、ヘキサメチルジシロキサン、メチコーン、オクタデシルジメチコーン、フェニルジメチコーン、ステアロキシジメチコーンなどが含まれる。
【0078】
無機ポリマーの例には、ベントナイト、改質ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、改質ヘクトライト、ケイ酸ナトリウムマグネシウムなどが含まれるがこれに限らない。
【0079】
上で挙げたポリマーは、本明細書等に記載のすべての組成物に使用することができる。たとえば、これらポリマーを低残渣ゲル中に使用することができる。これらポリマーは、低残渣濃厚液体中に増粘剤として使用することもできる。
【0080】
ゲル
以上で開示したように、ある実施形態では、薬剤組成物は、低残渣ゲルの形の局所用製剤である。本明細書では、「ゲル」は、液体を浸透させた小さな無機粒子または大きな有機分子のいずれから構成される半固体系も示す。一般に、ゲルは、しばらくそのままにしておけば、半固形状またはゼラチン状になることができる。ある種のゲルでは、放置しておくと少量の水が分離することもある。
【0081】
当業者ならば、低残渣ゲルの調製方法は容易にわかるであろう。このようなゲルの調製方法についての詳細は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年に載っている。一実施形態では、ゲルは、1種または複数の適切なポリマーを必要量の適切な溶媒中にゆっくりと分散させて調製することができる。適切な溶媒およびポリマーについての議論は、上に示してある。一調製方法によれば、ポリマーと溶媒を、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌してよい。攪拌する際、ポリマー/溶媒溶液に水を加えることができる。この攪拌した混合物に、ニトロキシド放射線防護剤が十分に溶解するまで、十分な量のニトロキシド放射線防護剤を加えてよい。
【0082】
ゲルは、一相系でも多相系でもよい。小さなばらばらの粒子の網目からなるゲル塊は一般に二相系と呼ばれ、単相ゲルは、通常、有機巨大分子が、分散した巨大分子と液体との間にはっきりとした境界が存在しないような形で液体中に均質に分散したものからなる。
【0083】
ある実施形態では、低残渣ゲルは、水性アルコールゲルでよい。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるのに、エタノールなどのアルコールを使用することができるが、PEG40、硬化ヒマシ油、ポリソルベート20、または同様の成分など、可溶化剤の使用は避ける。これらの可溶化剤が存在しないと、粘着性およびゴムのような感触が実質的になくなり得るので、製品の表面上の感触を大いに向上させることができる。薬剤組成物がかなりのアルコール(たとえば、エタノール)含有量を有する実施形態では、追加の保存処置が必要でないこともある。
【0084】
当業者ならば、数多くの方法を使用して、本明細書に記載の製剤特性を有する水性アルコールゲルを容易に調製することができる。水性アルコールゲルを調製する一方法によればニトロキシド放射線防護剤をエタノールに溶解させて、溶液を調製することができる。このニトロキシド放射線防護剤の溶液をヒドロゲルに加えてよい。ある実施形態によれば、放射線防護剤/エタノール溶液は、アンカーミキサーをゆっくりと動かして使用しながら既製のヒドロゲルに加えることができ、これによって、水性アルコールゲル中での気泡生成を低減することができる。
【0085】
水素結合が減少するため、水性アルコールゲルの粘性は、対応するヒドロゲルの粘性よりも一般に低い。それでも、当業者は、水性アルコールゲルの成分の調整を行って、所望の特性に合った適切な粘性を有する組成物を調製することができる。たとえば、上で論じた増粘剤またはポリマーを使用して、特定の製剤の粘性を上昇させることができる。
【0086】
ある実施形態では、低残渣ゲルは、噴霧可能にすることができる。噴霧可能なゲルの調製方法は、当業界でよく知られている。噴霧可能なゲルの一調製方法によれば、適切なポリマーを水に加えることができる。水和し、構造ができた後、濃厚ポリマー/水混合物をニトロキシド放射線防護剤/溶媒に加えることができる。
【0087】
液体製剤
本明細書の別の実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤含有液体製剤を含む。たとえば、ニトロキシド放射線防護剤を、上で論じた適切な溶媒のいずれかに溶解させることができる。Tempolの溶媒として使用することのできる溶媒を非限定的に挙げるとすれば、水、尿素、アルコール、グリコールなどである。これらの液体製剤は、その必要のある患者に製剤を塗布するために、タオル、布、きれ、スポンジ、ガーゼ、または同様の吸収性材料などの塗布具を用いて使用してよい。
【0088】
別の実施形態は、ポリマーを加えて、ニトロキシド放射線防護剤含有液状溶液を濃厚にすることを含む。上述のポリマーのいずれかを、これらの製剤のための増粘剤として使用することができる。たとえば、次のポリマー、すなわち、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、無機ポリマーなどを増粘剤として使用してよい。
【0089】
当業者ならば、本明細書に記載の方法に従う、濃厚液状溶液の調製方法がすぐにわかるであろう。そのような液体の調製方法についての詳細は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年に載っている。
【0090】
本発明を、濃厚液体を用いて実施する場合、液体を20〜100,000センチポアズ、またはそれ以上の粘度にまで濃厚にすると有利である。ある実施形態では、本明細書等で提示する製剤は、400〜2000cps、またはより詳細には900〜1500cpsの粘性を備えていてよい。より詳細な実施形態では、製剤は、約1215cpsの粘性を備えていてよい。
【0091】
組成物の使用方法
方法実施形態は、放射線療法を受けている患者への本明細書等に記載の低残渣製剤のいずれかの使用を含む。ある実施形態で、製剤を放射線療法の直前に適用することができる。低残渣製剤を適用するのに適する範囲には、皮膚および粘膜のすべての範囲が含まれる。方法には、頭皮、顔面、首、胸部、腕、足、胴部、背中などへの製剤の適用が含まれるがこれに限らない。別の方法には、口腔、鼻、目、膣、直腸などの部位が含まれるがこれに限らない粘膜に製剤を適用することが含まれるがこれに限らない。
【0092】
ある実施形態は、放射線療法を受けている患者のある部位に、低残渣ニトロキシド放射線防護剤含有製剤を擦込むことを含む。擦込みは、通常は手袋をはめた施術者の手を用いて実施することもでき、あるいは布、タオル、スポンジ、きれ、ガーゼなどの塗布具を用いて行ってもよい。他の実施形態は、放射線療法を受けている患者の治療部位に低残渣製剤を噴霧することを含む。製剤を、治療部位に噴霧した後、そのままにして吸収されるようにしてもよいし、またはニトロキシド放射線防護剤が吸収されやすくするために擦込んでもよい。
【0093】
別の実施形態は、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量の、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルなどのニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用することを含み、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルは、溶液とし、かつ低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態とする。
【0094】
ある実施形態では、本明細書に記載の製剤および方法を使用して、皮膚症状、粘膜症状、および毛嚢症状から選択される放射線療法の有害な副作用を治療または予防することができる。ある実施形態では、本明細書の方法を使用して、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などを含む皮膚症状を治療または予防することができる。別の実施形態は、口腔粘膜炎、直腸炎などの粘膜症状の治療方法を含む。別の実施形態は、脱毛症などの毛嚢症状の治療方法を含む。
【実施例】
【0095】
以下の実施例では、ニトロキシド放射線防護剤製剤の製造法および使用法を教示する。これら実施例は、例示的なものに過ぎず、本明細書の教示の範囲を限定する意図のものではない。
【0096】
(実施例I)
序論
選択的手術で得たヒトの切除皮膚を使用する以下の調査を実施し、Tempol(4-ヒドロキシTempo)の4種の媒体からのin vitroでの経皮吸収を評価した。この調査は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)に記載の手順を使用して実施した。
【0097】
方法
このin vitro経皮吸収調査で使用したTempol製剤は、Dow Pharmaceutical Sciences、米カリフォルニア州ペタルーマによって製剤されたものである。これらの製剤の組成を表1にまとめて示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示したように、4種のTempol含有製剤を調製した。製剤Iを基準エタノール溶液とし、製剤IIを軽度にゲル化したエタノール/水溶液とし、製剤IIIを中程度にゲル化したエタノール/水溶液とし、製剤IVを噴霧可能なエタノール/水ゲルとした。
【0100】
Franz型静的拡散セルFDC-400(開口部直径15mm、O型環接合部、Crown Bio Scientific、米ニュージャージー州Clinton)を9セル型集合体上に取り付け、再循環型水浴を使用して32℃の一定温度に保った。これらのセルは、1.767cm2のわずかな面積の開口部と、体積12〜14mLの範囲のレセプター区画とを有する。切除した単一ドナー由来のヒト腹部皮膚を、真皮側を下にして置き、次いでTeflon(登録商標)製O型環(レセプター側、すなわち、拡散セルの下半分の溝に入っている)を置いて、各拡散セルの組み立てを行った。次いで、拡散セルのドナー側、すなわち上半分を、皮膚上に置かれたO環の上部に置き、ピンチクランプによってその場所に保った。各セルのドナー区画とレセプター区画の間の接合部をPARAFILM(登録商標)で包んで、レセプター溶液が蒸発しないようにした。
【0101】
次いで、各セルを、0.1%のアジ化ナトリウムおよび1.5%のOleth-20を加えた脱気したPBSからなるレセプター溶液で満たした。気泡を皮膚の下から消散させた。レセプター液を、Teflon製磁気攪拌棒を使用して絶えず攪拌し、接種ループをループ上部から約5.0cmに切断した。製剤を適用する前に1時間かけて、皮膚がレセプター溶液と平衡に達するようにした。
【0102】
シリンジを使用して、有限用量(0.1mL/cm2)の各製剤を皮膚に適用した。各製剤を、セル1個につき製剤0.18MLとして6個の拡散セルに交互に適用した。拡散セルのサンプル採取口をPARAFILM(登録商標)で封じて蒸発を防いだ。15分間の曝し期間の後、レセプター液の全部をシンチレーションバイアル中に集めた。皮膚を綿棒で続けて2回拭き、セルのキャップを取り外した。皮膚からそれ以上材料が除去されなくなるまで、残留している製剤を多数のセロハンテープ片で角質層から取り除いた。ピンセットを使用して表皮を真皮から物理的に引き離した。各皮膚切片を別々のバイアルに入れ、ラベルを貼った。すべてのレセプター、拭取り具拭いサンプル、テープ片、表皮、および真皮サンプルを分析のために分析試験所に発送した。Tempol含有量は「標準型」および「酸化型」として報告された。
【0103】
結果
Tempolの皮膚透過は、4種の製剤において適用量の0.003〜0.01パーセントの範囲であった。生存表皮および真皮のレベルは、標準型分析では適用量の0.2〜2.8パーセントであり、酸化型分析では1.1〜6.6パーセントの適用量であった。中程度にゲル化したエタノール/水製剤、すなわち製剤IIIは、生存表皮/真皮レベルが最も高く、標準型分析では適用量の2.8%であり、酸化型分析では適用量の6.6%であった。噴霧可能なエタノール/水ゲル製剤、すなわち製剤IVでは、標準型分析で適用量の2.1%という結果が得られた。基準エタノール溶液、すなわち製剤Iでは、酸化型分析で適用量の4.4%という結果が得られた。皮膚沈着および皮膚浸透、ならびに回収用量を表2および3にまとめて示す。より詳細な結果は、図1〜12に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
結論
皮膚を透過してレセプター液に至ったTempolの、適用量に対する百分率および量は、非常に低く、皮膚に15分間作用させた後、それぞれ0.003%〜0.01%および0.32ug/皮膚1.77cm2〜0.78ug/皮膚1.77cm2の範囲であった。この調査は、中程度にゲル化したエタノール/水製剤、すなわち製剤IIIが、基準エタノール製剤、すなわち製剤Iよりも高い皮膚(表皮/真皮)レベル(標準型分析で適用量の2.8%、酸化型分析で適用量の6.6%)を実現したが、皮膚透過はそれよりも高くなかったことを示している。この最初の調査の結果は、製剤IIIが、頭部に局所的に適用されたならば、同等またはより良好な臨床効力を実現し得ることを示唆している。さらに、製剤IIIは、製剤Iよりも皮膚に対する保持力が良好である(垂れ落ちが少ない)はずである。
【0107】
(実施例II)
序論
この調査では、実施例Iで用いたものと同様の試験手順を使用して、中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水製剤(製剤V)の複数回の適用が、Tempolのin vitro経皮吸収に及ぼす影響を評価した。これらの試験手順は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)に準拠した。
【0108】
このin vitro経皮吸収調査で使用した試験製剤は、Dow Pharmaceutical Sciences、米カリフォルニア州ペタルーマによって調製されたものである。製剤の組成を表4にまとめて示す。BrooKfield RVDV-1+粘度計を使用して、製剤Vの粘性を測定した。重量8.4134グラムのサンプルで測定した粘度は、22.9℃で1215cpsであった。
【0109】
【表4】
【0110】
次の4種の適用療法を、それぞれ6個のセルで実施した。(1)Tempol製剤(製剤V)の1回の適用、(2)Tempol製剤(製剤V)の2回の適用、(3)Tempol製剤(製剤V)の3回の適用、および(4)Tempol製剤(製剤V)の1回の適用の後に媒体製剤(製剤VI)の1回の適用。製剤は、適用ごとに皮膚表面に30分間曝した。
【0111】
皮膚を、適用後に毎回2本の乾燥綿棒で拭いた。最後の適用および皮膚の拭取りが完了した後、角質を皮膚から除去した。すべての角質層サンプル、ならびに調査中に収集された残りの皮膚(生存表皮/真皮)、レセプター液、および皮膚表面拭いサンプルのTempol含有量の分析を実験室で行った。Tempol含有量は、「標準型」、「酸化型」、および「還元型」として報告された。
【0112】
方法
Franz型静的拡散セル(開口部直径15mm、O型環接合部、Crown Bio Scientific、米ニュージャージー州Clinton)を9セル型集合体上に取り付け、再循環型水浴を使用して32℃の一定温度に保った。これらのセルは、1.77cm2のわずかな面積の開口部と、体積12〜14mLの範囲のレセプター区画とを有する。切除した単一ドナー由来のヒト腹部皮膚を、真皮側を下にして置き、次いでTeflon(登録商標)製O型環(ドナー側、すなわち、拡散セルの上半分の溝に入っている)を置いて、各拡散セルの組み立てを行った。次いで、拡散セルのドナー側(上半分)を、皮膚上に置かれたO環の上部に置き、ピンチクランプによってその場所に保った。各セルのドナー区画とレセプター区画の間の接合部をParafilm(登録商標)で包んで、レセプター溶液が蒸発しないようにした。
【0113】
次いで、各セルを、0.1%のアジ化ナトリウムおよび1.5%のOleth-20を加えた脱気したPBSからなるレセプター溶液で満たした。気泡を皮膚の下から消散させた。レセプター液を、Teflon製磁気攪拌棒を使用して絶えず攪拌し、接種ループをループ上部から約3.0cmに切断した。製剤を適用する前に1時間かけて、皮膚がレセプター溶液と平衡に達するようにした。
【0114】
置換ピペットを使用して、有限用量(0.1mL/cm2)の製剤を皮膚に適用した。製剤を、セル1個につき製剤0.18mLとして6個の拡散セルに交互に適用した。拡散セルのサンプル採取口をPARAFILM(登録商標)で包んで蒸発を防いだ。30分間の曝し期間の後、レセプター液の中身全部をシンチレーションバイアル中に集めた。適宜、2本の綿棒を使用して皮膚表面を拭いて前の分を取り除いた後、セルに試験製剤を盛り直してもよい。試験製剤を最後に適用した後、皮膚を乾燥綿棒で続けて2回拭いた。セルのキャップを除去した。皮膚からそれ以上材料が除去されなくなるまで、残留製剤を、多数のセロハンテープ片を用いて角質層から取り除いた。残りの生存表皮/真皮を集めた。すべてのレセプター、拭いサンプル、テープ片、および生存表皮/真皮サンプルを、分析のために分析試験所に発送した。
【0115】
分析試験所から、標準型および酸化型Tempol濃度の形のデータを得た。還元型Tempolは、分析的方法によって検出できないので、存在するすべてのTempolが酸化型になるように、サンプル中のTempolを酸化させた。酸化型Tempolは、回収されたTempolの総量を表す。還元型Tempolは、酸化型Tempolから標準型Tempolを引いて算出した。
【0116】
30分間の皮膚への曝し期間の後、還元型Tempolの皮膚透過は、0μg/皮膚1.77cm2〜0.62μg/皮膚1.77cm2の範囲であった。Tempolの2回目を適用し、さらに30分間皮膚表面に作用させておくと、2.94μg/皮膚1.77cm2〜3.80μg/皮膚1.77cm2の累積量範囲になった。Tempol製剤(製剤V)を1回盛った後、媒体製剤(製剤VI)を適用しても、皮膚を透過する還元型Tempolの量は増大しなかった。Tempolの3回目を適用し、さらに30分間皮膚表面に作用させておくと、還元型Tempolの累積量が8.8μg/皮膚1.77cm2になった。
【0117】
生存表皮および真皮のレベルは、標準型分析で153.7μg/1.77cm2〜496.5μg/1.77cm2、酸化型分析で248.0μg/1.77cm2〜595.5μg/1.77cm2、還元型の結果で57.3μg/1.77cm2〜96.9μg/1.77cm2であった。最も高い生存表皮/真皮レベルは、Tempolの2回の適用で見られ、184.1μgの還元型Tempol/皮膚1.77cm2であった。皮膚透過および皮膚沈着を表5(aおよびb)と表6(aおよびb)にまとめて示す。他の結果を図13および14に示す。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
対応のないt検定(p値<0.05をもって製剤間の有意差とする)を行って、薬物の沈着および透過を統計学的に評価した。皮膚に作用させて30分間経過後、4種の適用療法は、酸化型Tempolの試験2対試験3(p=0.033)を除き、酸化型および標準型Tempolの透過が統計学的に互いに同等である(p<0.05)。試験2の標準型、酸化型、および還元型Tempolの量は、2回目のTempolを適用し、さらに30分間皮膚に作用させた後では、試験3と統計学的に同等であった。標準型分析および酸化型分析では、2回目のTempolを適用した後の試験2が、媒体を適用し、さらに30分間皮膚に作用させた後の試験4よりも有意に高かった。試験2、3、および4では、2回目および追加の期間の後に還元型Tempolのレベルが同等になった。試験3の3回目の適用の結果のレベルは、2回目の時点のレベルの2倍であった。このことは、Tempolが安定な吸収状態に到達していることを示唆する。
【0121】
複数回適用(試験2および3)後の標準型および酸化型Tempolの皮膚沈着は、単一の適用(試験1および4)よりも有意に高かった(p<0.05)。還元型Tempolは、4種のすべての適用試験で統計学的に同等であった。試験4では、媒体の適用は、ウォッシュイン(washing-in)作用を確かにもたらし、標準型および酸化型Tempolのレベルを増大させたが、活性製剤の複数回の投与ほど大きいものではなかった。
【0122】
結論
この調査は、中程度にゲル化したエタノール/水製剤の2回の連続した適用によって、Tempolの沈着および透過レベルが1回の適用よりも高くなったことを示している。
【0123】
(実施例3)
脳腫瘍での予防処置
実施例IIの中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水製剤(製剤V)を、放射線療法前に脳腫瘍患者の頭皮に2回適用し、溶媒を蒸発させる。製剤を適用するごとに、頭皮に作用させる期間を30分間設ける。次いで、頭皮を通して腫瘍に従来型の放射線療法を施術する。処置後、患者は、皮膚の焼け、ならびにさもなければ1〜2週間以内に生じるはずの脱毛を経験しなかった。
【0124】
本明細書では教示を実施形態および実施例に即して論じてきたが、本発明の思想から逸脱することなく様々な変更を行ってよいことを理解されたい。したがって、本明細書の教示は、本願添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図2】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図3】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、拭いサンプル中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図4】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、拭いサンプル中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図5】製剤Iをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図6】製剤IIをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図7】製剤IIIをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図8】製剤IVをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図9】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片サンプル中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図10】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片サンプル中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図11】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、生存表皮および真皮上の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図12】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、生存表皮および真皮上の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図13】中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水局所用製剤をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図14】中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水局所用製剤をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、放射線療法に伴う有害な副作用を予防または治療する分野に関する。より詳細には、本発明は、放射線療法を受けている患者の皮膚および粘膜に適用することのできる新規な製剤、ならびにそれら製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線療法は、癌との闘いでの重要な手段であり、全癌患者のうち50%もの患者の治療に使用されている。したがって、毎年50万を超える癌患者が放射線療法を受けている。放射線療法の使用は、多くの種類の癌を治療するための有効な手段であるが、この手段は、数多くの複雑な合併症をもたらす。一般的な合併症には、患者の皮膚、毛嚢、および粘膜に対する有害作用を含めることができる。
【0003】
放射線療法の一般的な皮膚の合併症には、紅斑および毛嚢炎が含まれる。これらの障害は、どちらも皮膚の痒みと赤みを伴うので、患者を非常に苛立たせるものとなり得る。これらの合併症および他の皮膚合併症は、酸化によるストレスおよび放射線によって引き起こされる他のストレスによって起こり得る。放射線によって引き起こされる皮膚症状の他の例には、線維症、乾性落屑、および湿性落屑が含まれる。
【0004】
さらに、毛嚢は、放射線療法に対して実に敏感である。したがって、毛髪が放射線治療のビーム場にある場合、毛髪は成長が止み、抜けることがある。毛髪の喪失は、当惑し、自尊心を失う原因となりかねない。
【0005】
放射線療法は、目、鼻、口、膣、腸粘膜などの粘膜に対しても有害作用を及ぼし得る。たとえば、口内炎とも呼ばれる口腔粘膜炎は、口腔粘膜に対する放射線の局所作用の結果として起こる。粘膜炎は、口の粘膜の炎症を特徴とし、発赤から重度の潰瘍までの範囲に及ぶ。粘膜炎の症状は、痛みおよび不快感から、食物または液体を許容できなくなるに及ぶまで様々である。さらに悪いことに、口腔粘膜炎は、更なる放射線療法または化学療法を受け入れる能力を制限するほど重症になることもある。
【0006】
放射線療法によって口腔粘膜に損傷を受け、免疫が低下している患者は、口腔中に日和見感染を被りがちでもある。したがって、粘膜炎は、治療および/または緩和ケアに対する患者の応答をさらに弱めることもある。したがって、粘膜炎を可能な限り予防し、またはせめてその重症度および起こり得る合併症を低減すべく治療することは極めて重要である。
【0007】
放射線療法によって引き起こされる別の一般的な粘膜症状は、直腸炎である。直腸炎は、直腸の内層(直腸粘膜)の炎症である。最もよくある症状は、頻繁または継続的な便意または排便衝動である。他の症状には、便秘、直腸膨満感、左脇腹痛、直腸の粘液の通過、直腸出血、および肛門直腸痛が含まれる。
【特許文献1】米国特許第5,352,442号
【特許文献2】米国特許第5,462,946号
【特許文献3】国際公開第WO87/00427号
【非特許文献1】Hilderley、Oncology Nursing Forum、第10巻第1号、51〜56ページ(1983年)
【非特許文献2】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年
【非特許文献3】FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでに、Tempol、すなわち化学式4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-l-オキシルによって特徴付けられる安定なニトロキシドラジカルを、放射線療法の作用を改善する局所用製剤として使用することを提唱しているものがある(たとえば、Proctorの米国特許第5,352,442号およびMitchellの米国特許第5,462,946号を参照のこと)。これらの参照文献は、Tempolの局所への使用をクリーム、ローション、シャンプー、クリームリンス、および軟膏から選択された製剤に限定している。これらの種類の局所用製剤は、患者への実際の放射線療法の施術直前に投与するのに適さないことが現在わかっている。実際に、これらの製品形態は、放射線が当てられるときに、重症の火傷を含む局所の焼けをもたらし得る残渣を残す。したがって、放射線療法の実際の施術直前に患者に投与することのできる局所用製剤が当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態は、皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、溶媒、好ましくは濃厚にし、または低残渣ゲルの形にした溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含む薬剤組成物に関する。ある好ましい実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、TEMP0、すなわち2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、およびTEMPOL、すなわち4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0010】
薬剤組成物は、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択された溶媒を含んでいてよい。溶媒がアルコールの実施形態では、アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどからなる群から選択されると有利であろう。溶媒をグリコールとする実施形態では、グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールなどからなる群から選択されると有利であろう。ある実施形態では、粘膜に投与する製剤用の溶媒として、水または他の刺激性でない液体を使用することが好ましい。別の実施形態では、粘膜用製剤に使用する溶媒は、非刺激性である(たとえば、アルコール、尿素など)。
【0011】
特定の実施形態では、本明細書に記載の薬剤化合物は、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状などを含む、放射線療法によって引き起こされ、または増強される症状を改善することができる。特別な実施形態では、この薬剤組成物によって治療または予防することのできる特定の皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などが含まれる。ある実施形態では、本明細書に記載の薬剤組成物は、口腔粘膜炎や直腸炎などの粘膜症状を予防することができ、前立腺腫瘍など、その範囲の腫瘍の放射線療法を行う際の直腸粘膜の保護において特に価値を有する。さらに、他の実施形態では、この薬剤組成物は、脱毛症などの毛嚢症状を治療または予防することができる。
【0012】
別の実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤の予防もしくは治療有効量は、製剤1mlあたり約0.01〜約100mgの量である。企図される特定の量の具体例としては、約.02、.03、.04、.05、.10、.15、.20、.25、.30、.35、.40、.45、.50、.55、.60、.65、.70、.75、.80、.85、.90、.95、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100mg/ml、またはそれ以上が挙げられる。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0013】
別の実施形態は、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーを含む薬剤組成物を含む。
【0014】
別の実施形態は、薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する薬剤組成物を含む。
【0015】
本発明の実施形態は、溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含む、皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物も含み、この薬剤組成物は、カルボキシメチルセルロース、グアーガムなどのゴム、アルギン酸塩、または他の低残渣増粘剤などの増粘剤によって濃厚にされている、または低残渣ゲルの形態であることが好ましい。増粘剤またはゲル化剤は、放射線療法が適用される際に、皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な残渣が残らないように選択すべきである。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0016】
別の実施形態は、溶媒と、その溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、低残渣ゲルの形態をした、脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物を含む。
【0017】
他の実施形態は、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所に適用することを含み、そのニトロキシド放射線防護剤が溶媒の溶液になっている、患者の治療方法を含む。好ましい実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。他の有利な実施形態は、低残渣ゲルまたは濃厚にした液体の形態の溶液を含む。ある実施形態では、溶媒は、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択することができる。有害な副作用は、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、および湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎などの皮膚症状、口腔粘膜炎や直腸炎などの粘膜症状、脱毛症などの毛嚢症状、細胞毒性、ならびにポリ核酸の損傷からなる群から選択されることが好ましい。
【0018】
別の実施形態は、患者の治療方法であって、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用し、そのニトロキシド放射線防護剤が溶媒中の溶液になっている工程と、溶媒を蒸発させる工程と、その患者に放射線療法を適用する工程とを含む方法を含む。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0019】
別の実施形態は、患者の治療方法であって、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量のニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用する工程を含み、そのニトロキシド放射線防護剤が溶液になっており、かつ低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした方法を含む。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
放射線療法と癌
放射線療法は、癌性細胞の遺伝物質に損傷を与え、それによって癌性細胞の分裂を不可能にすることを目的として、治療する範囲に電離放射線を向けることによって機能する。したがって、放射線療法は、癌との闘いにおける重要な手段であり、全癌患者のうち50%もの患者の治療に使用されている。事実、毎年50万人を超える癌患者が、単独で、または外科手術、化学療法、もしくは他の形態の癌療法と共に放射線療法を受けている。放射線療法(radiotherapy)の他の用語には、放射療法(radiation therapy)、X線療法、電子ビーム療法、コバルト療法、または照射が含まれる。
【0021】
放射線療法は、癌を手術によって除去するのが不可能である場合、手術によって患者が衰弱するかもしれない場合、または手術による腫瘍の減量化によってすべての癌組織が完全に除去されていない場合に特に有用である。放射線療法は、手術によって除去されなかった癌細胞を破壊するために、外科手術の後に決まって使用される。放射線療法の別の使用は、手術前にあり、その場合、放射線療法によってそれまでは手術不能であった腫瘍を処理できる大きさに「縮小」させて、外科的切除を可能にすることができる。
【0022】
たとえ治癒することがあり得ないとしても、放射線療法を使用して、末期癌の症状(出血や痛みなど)の軽減を助けることができる。実施される放射線療法の3分の1以上は、姑息的である。姑息的治療の典型的な意図は、速やかに痛みを軽減し、患者が生存する間、症状の抑制を維持することである。したがって、治療は、通常は患者の臨床的状態および全般的な予後に合わせて行われる。姑息的治療はしばしば、痛みのもとを直接に標的にすることができるので、鎮痛薬療法を補足し、その有効性を高めることができる。
【0023】
詳細には、放射線療法は、皮膚、頭頚部、脳、乳、前立腺、子宮頚などの癌のような限局性の充実性腫瘍の治療に使用することができる。放射線療法は、それぞれ白血病およびリンパ腫を含む、造血細胞およびリンパ系の癌などの治療にも使用することができる。放射線の近くまたは放射線の通路にある粘膜または毛髪(たとえば、脳腫瘍の場合の頭毛、前立腺癌の場合の直腸粘膜)は、本発明を利用して保護することができる。
【0024】
放射線の形態および線量
外部ビーム放射線療法は、一般に、時に「エネルギーの束」と呼ばれる光子を癌治療のために使用する。本明細書では、X線、γ線、UV-A、UV-BおよびUV-Cを含む紫外線を含む光子または粒子;中性子;陽子;およびβ粒子を含む電子などといった形態に拘らず、全放射線療法の有害作用を改善することが目的である。
【0025】
X線は、放射線療法に使用される放射線の非常に一般的な形態である。γ線は、放射線療法に使用される別の形態の光子である。γ線は、分解または崩壊するにつれて放射線を放出するある種の元素(ラジウム、ウラン、およびコバルト60など)として自発放出的に発生させることができる。各元素は、特定の速度で崩壊し、γ線および他の粒子の形でエネルギーを放出することができる。通常、X線とγ線は、癌細胞に対する全般的な作用が同じである。
【0026】
外部ビーム放射線療法は、線形加速器によって送達することができる。通常、線形加速器は、外部ビーム放射線療法のための高エネルギー線の生成に強力な発電機を使用する。一般に、線形加速器は、様々なエネルギーのX線を生成することができる。線形加速器は、線を焦点に集めて腫瘍に向けるコリメーターと呼ばれる特別な鉛シャッター装備を含んでいてよい。線形加速器は、加速器が回転し、全角度から放射線を送達するのを可能にする大きな「L字型」の設計にすることができる。多様な角度によって、周囲の健康な組織への放射線送達を最小限に抑えながら、腫瘍に最大量の放射線を送達できるようになる。本明細書に記載製剤および方法は、コリメーターもしくは、正常細胞への放射線の曝露を制限する他の装置および方法と共に使用することができる。
【0027】
本明細書に記載の製剤および方法は、大抵の形の放射線療法による作用を改善することができる。たとえば、この組成物および方法によって、局所場放射線および広範囲場放射線の影響を改善することができる。局所場放射線とは、特定の転移性部位に向けられた放射線ナロービームを示す。習慣的に、局所場放射線は、予想余命が長く、転移性部位がほとんどない患者に使用される傾向がある。対照的に、広範囲場放射線は、より広い範囲に放射線を使用し、しばしば予想余命がより短く、痛みを引き起こす多数の転移性部位を有する患者の治療に使用される。
【0028】
放射線療法の線量は、照射を受けた材料1グラムあたり100エルグのエネルギーに等しい放射線エネルギー線量である、科学的単位ラド(放射線吸収線量)によって測定される。癌の治療として放射線療法を受ける患者は、非常に短い期間(数週間または数カ月)で数千ラドを受けることがある。対照的に、典型的な走査用X線は、はるかに少ないラドしか含まない。たとえば、胸部のX線像の撮影に使用される現代の乳房撮影装置は、X線について約0.1〜0.2ラドの線量を使用する。
【0029】
伝統的な放射線療法によれば、正常組織の許容度に限りがあるので、放射線の1日当たり線量が多いほど、与えることのできる合計線量は少なくなる。1日当たり放射線用量が多いときほど、その分より多くの腫瘍細胞が死滅する。通常、腫瘍の死滅と正常組織に対する有害な放射線作用とを、大抵は1日線量の関数で釣り合いを取る。特定の腫瘍の特性および正常組織の許容度を考慮に入れた、いくつかの各種スケジュールが開発されている。その文献は、原発性部位または転移性部位の腫瘍の退行および疾患の寛解を実現するのに最適な放射線スケジュールの点で区別される。しかし、一般に、放射線治療は、臨床的な状態に関して計画される。本発明では、主要な目的が、放射線療法の有害作用を改善することであるので、正常組織が放射線療法に対してより高い許容度をもつことができ、より多い線量の放射線を安全に与えることができる。
【0030】
放射線の副作用
一般に、放射線療法は、局所的な治療である。放射線療法は通常、治療部位の細胞に作用する。しかし、上述のように、放射線は、癌細胞に損傷を与えるだけでなく、治療部位にある正常細胞にも損傷を与え得る。治療部位にある正常細胞には、皮膚細胞、粘膜、毛嚢などが含まれ得る。
【0031】
放射線の副作用は、通常は放射線の入り口に限られ、放射線療法の過程の最中もしくは直後に起こる急性、または数カ月から数年の後に起こる後発性として分類することができる。急性の放射線作用は、合計線量の多い放射線を1日に少量ずつ送達する放射線スケジュールではより顕著であり、一般に、治療を始めて2週間の終わりに始まる。急性放射線作用は、主に皮膚および粘膜の表面で起こり、通常、皮膚の紅斑もしくは色素沈着や粘膜炎などの炎症性応答からなる。後発性放射線作用は、前述の急性の反応なしで現れることもある。線維症は、最もよくある種類の後発性放射線傷害であり、皮膚を含む多くの種類の組織で認めることができる。
【0032】
放射線療法によって引き起こされる他の皮膚症状には、乾性落屑および湿性落屑が含まれる。乾性落屑は、乾燥した薄片状の皮膚および照射範囲の痒みを特徴とする。湿性落屑は、表皮の脱落、皮膚の湿った赤剥けの真皮層の露出を特徴とする。
【0033】
特定の毛細胞が成長する速度と、放射線療法に対するその感受性は正比例する。したがって、放射線療法に対する特定の毛細胞の感受性を表すと、高いものから順に、頭毛、男性のひげ、眉毛、腋毛、陰毛、および最後に産毛となる。毛嚢上皮は、表皮に由来し、同様に放射線感受性である。その結果として、瀘胞細胞は、真皮中の他の細胞よりも早く急性皮膚炎または色素沈着過剰を発症し得る。毛嚢の放射線に対する感受性はしばしば、放射線療法を受けている患者に脱毛症をもたらし得る。
【0034】
本明細書に記載の一目的は、その作用が急性であろうと後発性であろうと、あるいはその作用が患者の皮膚、粘膜、毛嚢、または他の治療部位のいずれに関連していようと、正常細胞に対する放射線療法の有害作用を改善することである。
【0035】
ニトロキシド放射線防護剤
本明細書では、用語「ニトロキシド放射線防護剤」には、放射線療法の作用を改善することのできるいかなるニトロキシドも包含される。典型的には、ニトロキシドは安定なフリーラジカル化合物であり、OHやHなどの他のフリーラジカルを含む生物学的に重要な様々な化合物と反応することができる。一般に、ニトロキシド放射線防護剤は、細胞毒性、および、変異原性を含むポリ核酸(たとえば、DNA、RNA)損傷から保護することを含むがこれに限らず、放射線療法の作用の大部分を改善することができる。ニトロキシド放射線防護剤によって改善することのできる作用の別の例には、皮膚症状、粘膜症状、および毛嚢症状が含まれるがこれに限らない。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤には、たとえば抗酸化剤など、オキシ基と反応することのできるニトロキシドが含まれる。さらなる実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、超酸化物および過酸化水素を中和することができる。
【0036】
ある実施形態によれば、ニトロキシド放射線防護剤は、次式、すなわち、
【0037】
【化1】
【0038】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、COOH、CONH、CN、およびCH2NH2から選択される。]、
【0039】
【化2】
【0040】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、R1は、CH3およびスピロシクロヘキシルから選択され、R2は、C2H5およびスピロシクロヘキシルから選択される。]、
【0041】
【化3】
【0042】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、CONHから選択される。]、
【0043】
【化4】
【0044】
[式中、Xは、O・およびOHから選択され、Rは、H、OH、およびNH2から選択され、TはOから選択される。]、
の構造を有するものから選択することができる。
【0045】
適切なニトロキシド放射線防護剤は、Proctorの米国特許第5,352,442号およびMitchellらの米国特許第5,462,946号でも見ることができる。
【0046】
ニトロキシド放射線防護剤を非限定的に挙げれば、2-エチル-2,5,5-トリメチル-3-オキサゾリジン-1-オキシル(OXANO)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOL)、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(Tempamine)、3-アミノメチル-PROXYL、3-シアノ-PROXYL、3-カルバモイル-PROXYL、3-カルボキシ-PROXYL、および4-オキソ-TEMPOである。これらの材料は、単独の活性成分として使用してもよく、または「ニコランジル」や「ミノキシジル」などの毛髪成長促進剤と共に使用してもよい。
【0047】
本明細書では、ニトロキシド放射線防護剤は、適切な溶媒に溶解させた溶質である。これは、従来技術で使用されているようなニトロキシド放射線防護剤の分散液、懸濁液、または乳濁液と区別されるものである。
【0048】
本明細書等に記載の組成物中ではすべて、少なくとも1種のニトロキシド放射線防護剤を活性成分とするが、これらの組成物は、放射線療法または化学療法の有害作用を改善することのできる他の活性成分も含んでよい。したがって、ニトロキシド放射線防護剤は、単独で使用しても、他のニトロキシド放射線保護剤、毛髪成長刺激物質、または添加物(additament)と併用してもよい。他の毛髪成長刺激物質および添加物には、ヒドロキシルラジカル捕捉剤、抗酸化剤、および国際公開第WO87/00427号および欧州特許出願第89300785.6号に記載されている他の化合物が含まれる。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、グルタチオンなどの他の抗酸化剤と共に使用することができる。
【0049】
ニトロキシド放射線防護剤は、皮膚、粘膜、毛嚢などへの症状を含む、放射線療法の数多くの有害作用を改善することができる。ニトロキシド放射線防護剤が予防または治療の助けとなり得る皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎などが含まれる。ニトロキシド放射線防護剤が予防または治療の助けとなり得る粘膜症状には、口腔粘膜炎、直腸炎などが含まれる。ニトロキシド放射線防護剤は、毛髪の成長を刺激して、脱毛症などの予防または治療の助けともなり得る。毛髪成長の刺激には、成長速度を増大させること、毛髪直径を増大させること、毛嚢新生などを含めることができる。ニトロキシド放射線防護剤は、脱毛または脱毛症の進行を阻止することもできる。
【0050】
本明細書での別の実施形態は、その症状をもたらしたのが放射線療法であろうと他の手段であろうと、脱毛または脱毛症を予防または治療する方法を含む。たとえば、脱毛または脱毛症が、たとえば、遺伝的要因、加齢、局所の皮膚症状、全身性疾患、および化学療法によって起こることはよく知られている。当業者ならば、本明細書に記載の実施形態が、治療部位に望ましくない残渣を残さず、任意のタイプの脱毛を治療または予防する際に有効な製剤に関連した組成物および方法を包含することがわかるであろう。別の実施形態は、任意のタイプの脱毛を治療または予防する際に有効であり、患者に適用された後に治療部位から直ちに垂れ落ちないような十分な粘性を有する製剤に関連した組成物および方法を含む。
【0051】
低残渣製剤の開発は、ニトロキシド放射線防護剤が低残渣ゲル、濃厚液体、液体などの中に存在している溶液を調製して行うことができる。十分な粘性を有する低残渣製剤の開発は、ニトロキシド放射線防護剤を低残渣ゲルまたは濃厚液体に溶かした溶液を調製して行うことができる。
【0052】
ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液中に約5〜15重量%存在する。他の実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液中に約7〜12重量%存在する。より詳細な実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤は、局所用溶液の7重量%を占める。ニトロキシド放射線防護剤は、エタノール系溶液に溶解していることが好ましい。
【0053】
本発明におけるゲルは、通常、過半量の液相と半量未満の増粘剤またはゲル化剤とを含む。好ましい実施形態では、ゲル化剤が占めるのは、組成物の総体積または総重量の5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、またはそれ以下にすぎず、したがって、液体は、皮膚または粘膜に適用された場合、ゲル化剤および活性成分だけを残して、蒸発することができる。このようにして、薬物の担体の98%、99%、またはそれ以上が放射線療法の前に消失し、ボーラス効果による局所の焼けを大いに低減または解消することができる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、直腸用ゲル(または他の粘膜使用向けゲル)の液相は、特に、非刺激性の対粘膜特性があるかどうかで選択されることに留意されたい。したがって、水性媒体、ならびに非刺激性アルコール(グリコールやポリオールなど)および他の非刺激性溶媒が適切である。本発明の実施に際しては、有効な放射線防護量のニトロキシドゲルを直腸投与し、次いで、好ましくは放射線療法の際に直腸中にゲルを保っておき、またはそれほど好ましくはないが、放射線療法の前にゲルを除去することが望ましいであろう。
【0055】
Tempol
上述のように、本明細書等に記載の薬剤製剤に使用してよい好ましい一ニトロキシド放射線防護剤は、Tempolである。Tempolは、販売供給業者から用意に入手できる安定なニトロキシドラジカルである。Tempolは、化学式4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルによって特徴付けられる。
【0056】
Tempolは、皮膚、粘膜、毛嚢などへの症状を含む、放射線療法の数多くの有害作用を改善することができる。Tempolが予防または治療の助けとなり得る皮膚症状には、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などが含まれる。Tempolが予防および治療の助けとなり得る粘膜症状には、口腔粘膜炎、直腸炎などが含まれる。毛髪の成長を刺激することによって、Tempolが予防または治療の助けとなり得る毛嚢症状には、脱毛症などが含まれる。毛髪成長を刺激するとは、成長速度を増大させること、毛髪直径を増大させること、毛嚢新生などに関する。Tempolは、脱毛または脱毛症の進行を阻止することもできる。
【0057】
発明の背景で述べたように、従来技術は、Tempolの局所的な使用を、クリーム、ローション、シャンプー、クリームリンス、および軟膏から選択される製剤に限定している。本発明は、Tempolの従来技術の局所形態は、患者に実際に放射線療法が施術される直前に使用すべきでないという発見に注目している。これら従来技術の製剤は、患者の治療部位(たとえば、皮膚、粘膜)に残渣または薄膜を残す。この残渣または薄膜は、放射線療法の前に治療部位に残っていると、放射線を増強または吸収することがあり、重症にもなりかねない焼けを引き起こし得る。残渣または薄層によって引き起こされるこの焼けは、ボーラス効果と呼ぶことができる(一般に、Hilderley、Oncology Nursing Forum、第10巻第1号、51〜56ページ(1983年)を参照のこと)。したがって、本明細書では、組成物および方法は、放射線療法を実際に施術する直前に患者に投与することのできる局所用製剤を含む。これは、Tempolを低残渣ゲル、濃厚液体、液体などに溶かした溶液を含むがこれに限らない低残渣製剤の形態にしたTempolを局所投与して行うことができる。
【0058】
適する溶媒
Tempolなどのニトロキシド放射線防護剤は、ある実施形態では、ニトロキシド放射線保護剤は、溶媒に溶解させ、低残渣ゲル、低残渣濃厚液体、低残渣液体などを含む製剤に製剤してよい。当分野の技術者ならば、グリセリン、PEG、ポリソルベートなどを含むがこれに限らない、水と混和性の任意の液体を適切な濃度で溶媒として使用してよいことが容易にわかるであろう。本明細書で提示される製剤および方法の主目的は、低残渣のニトロキシド放射線防護製剤を調製することであるので、本明細書の実施形態は、比較的揮発性である溶媒を含む。用語「比較的揮発性」とは、比較的低い温度で容易に気化する溶媒を示す。たとえば、ここでの実施形態は、約0〜38℃で容易に気化する溶媒を含む。このような液体は、たとえば、25℃で少なくとも50mmHgの蒸気圧、より好ましくは少なくとも75、90、100、150、200、250、または300mmHgの蒸気圧を有すると有利であろう。したがって、別の実施形態は、放射線療法を治療部位に適用する前に、溶媒が完全にまたは実質的に蒸発してしまう製剤および方法を含む。
【0059】
ニトロキシド放射線防護剤の溶媒として使用してよい溶媒を非限定的に挙げるとすれば、水、尿素、アルコール、およびグリコールである。本明細書等に記載の製剤および方法には、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させることのできる任意のアルコールを使用してもよく、その例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどが含まれる。同様に、本明細書に記載の製剤および方法には、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させることのできる任意のグリコールを使用してもよく、その例には、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが含まれる。好ましい一実施形態では、溶媒は、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるだけでなく、経皮送達を促進する。すなわち、経皮送達促進剤、とりわけ角質層の成分を破壊または可溶化するものが特に好ましい。我々は、たとえば、様々なアルコールが、ニトロキシド放射線防護剤の皮膚への浸透を促進することを発見した。さらなる実施形態は、患者の全身の治療を可能にする入手可能な経皮相乗剤を含む。
【0060】
本発明のある実施形態では、活性成分であるニトロキシド放射線防護剤の濃度は、溶解限度またはその付近の濃度でよい。たとえば、ニトロキシド放射線防護剤は、溶液中に飽和状態の約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%でよい。実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤が、治療部位に適用された後に所望の速度でその放出を促進するほど十分に溶媒に溶解性である製剤も含む。
【0061】
ある実施形態では、溶媒は、溶液の約70〜90%を占めていてよい。他の実施形態では、溶媒は、溶液の約75〜86%を占める。より詳細な実施形態では、溶媒は、溶液の約79%を占める。
【0062】
上述の溶媒はすべて、本明細書に記載の低残渣ゲル、濃厚液体、および液体のいずれについても使用してよい。
【0063】
ニトロキシド放射線防護剤製剤の特性
本明細書での実施形態は、溶液に溶解させたニトロキシド放射線防御剤を含有する局所用製剤を含む。上述の溶媒はすべて、本明細書等に記載の製剤に使用することができる。
【0064】
局所用製剤は、頭皮、顔面、首、胸部、腕、足、胴部、背中などを含む患者の皮膚の全範囲に容易に適用できるように調製することができる。局所用製剤は、目、口、鼻、膣、直腸などの部位を含む患者のすべての粘膜に適用できるように調製することもできる。ある実施形態では、粘膜の治療に使用する製剤は、水または別の非刺激性溶媒を含んでいることが好ましい。さらなる実施形態では、粘膜に適用しようとする製剤は、アルコール、尿素などの刺激性の溶媒を欠いている。
【0065】
局所用製剤では、吸収されるニトロキシド放射線防護剤または他の活性成分の総量は、適用範囲の大きさ、適用頻度および適用強度、適用する媒体の粘性もしくは濃度を含む、多くの要素に基づき大いに様々でよい。薬物の吸収に影響を及ぼす他の要因は、適用部位、年齢、および皮膚状態である。たとえば、角質化していない皮膚、老化した皮膚、痛んだ皮膚、または擦りむけた皮膚では、これらの皮膚タイプに活性成分がより浸透しやすいので、薬物の吸収がより高くなる。したがって、一実施形態は、低残渣製剤としたままで、治療を受ける患者によるニトロキシド放射線防護剤の吸収を最適化することである。
【0066】
本明細書の主目的は、ボーラス効果を増強することなく、放射線療法の有害作用を改善することであるので、局所用組成物の実施形態は、低残渣にすべきである。本明細書では、用語「低残渣」とは、治療部位に放射線療法の施術によってボーラス効果を増強し得る残渣を残さずに、放射線療法を受ける直前に患者に適用することのできる製剤を示す。本明細書に記載の方法によれば、どんな低残渣製剤を使用してもよい。低残渣製剤は、ゲル、液体、濃厚液体などを含むがこれに限らない。当業者ならば、本明細書に記載の方法に従って使用する低残渣ゲル、低残渣液体、および低残渣濃厚液体の調製方法は容易にわかるものである。
【0067】
他の実施形態は、適用された後に治療部位から直ちに垂れ落ちないような十分な粘性を有する局所用製剤を含む。ある実施形態では、薬剤組成物は、ニトロキシド放射線防護剤および他の活性成分を、治療部位への適度な吸収を可能にするのに十分な期間治療部位に接触させておく粘性を備えているべきである。ある実施形態では、ゲルおよび濃厚液体製剤は、製剤が治療部位から直ちに垂れ落ちないような適度な粘性を備えることができる。したがって、製剤をその場所に保つ方法が本発明に包含される。上述のように、組成物の粘性に拘らず、治療部位に放射線療法を施術するとき、危険なボーラス効果を生じるのに十分な残渣が存在すべきでない。
【0068】
代替の実施形態は、それだけに限らないが低残渣液体および低残渣濃厚液体などの、粘性の低い局所用製剤である。ある実施形態では、液体および濃厚液体は、治療部位にニトロキシド放射線防護剤を適切に適用するために、塗布具を用いて適用してよい。塗布具には、布、きれ、スポンジ、タオル、ガーゼ、および同様な吸収性材料を含めることができるがこれに限定するものではなく、また塗布具とニトロキシド放射線防護剤溶液の組合せは、本明細書に記載の方法の一態様である。
【0069】
本明細書の局所用組成物は、ニトロキシド放射線防護剤および溶媒を含むだけでなく、ポリマー、着色剤、抗菌剤、保存剤、抗酸化剤、アルコール、皮膚軟化薬、追加の活性成分、治療部位の透過性を高める成分、水、および低残渣局所用製剤に一般に使用される他の成分を含んでいてもよい。製剤が全体として低残渣のままである限り、本明細書の組成物中に追加の成分が含まれることは許容される。
【0070】
当業者ならば、ゲルであろうと液体であろうと、ポリマーを用い、ニトロキシド放射線防護剤製剤の濃度を容易に変更することができる。実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるのに使用する溶媒との相溶性が中程度から高度である1種または複数の適切なポリマーを含有する製剤を含む。ある実施形態では、ポリマーは、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、化工セルロースなどのセルロース系ポリマー、コラーゲンなどの天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、無機ポリマーなどから選択することができる。
【0071】
使用することのできるエチレン系ポリマーの例には、酸化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリエチレングリコールなどが含まれるがこれに限らない。
【0072】
使用することのできるアクリル系ポリマーの例には、アクリルエステル、メタクリルエステル共重合体、アクリルポリマー乳濁液、カルボマー、エチレンアクリレート、メタクリロイルエチルベタイン、メタクリル酸共重合体、オクチルアクリルアミド、アクリレート、ブチルアミノエチルメタクリレート共重合体、スルホン酸ポリアクリルアミドメチルプロパン、ポリクオタニウム-5、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-15などが含まれるがこれに限らない。
【0073】
ポリビニルピロリドン(PVP)の例には、ポリクオタニウム-11、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVP/ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、PVP/Elcosene共重合体、PVP/メタクリル酸エチル/メタクリル酸三元重合体、PVP/ヘキサデセン共重合体、PVP/VA共重合体、スチレン/PVP共重合体などが含まれるがこれに限らない。
【0074】
ポリビニル系コポリマーの例には、エチレン酢酸ビニル共重合体、PVM/MA共重合体エステル、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸/メタクリルオキシベンゾフェノン-1共重合体、酢酸ビニル/コトン酸(cotonic acid)/ネオデカン酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、PEGセルロース、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10などが含まれるがこれに限らない。
【0075】
天然ポリマーの例には、アラビアゴム、寒天、アルギン酸塩、カラゲナン、ファーセレラン、ゼラチン、ガティ(ghatti)ゴム、グリコサミノグリカン、グアーガム、グアーガム誘導体、ヒドロキシプロピルグアー、ヒアルロン酸、インドゴム、ローカストビーンガム、マルトデキストリン、ペクチン、トラガカントゴム、キサンタンなどが含まれるがこれに限らない。
【0076】
ポリスチレン系ポリマーの例には、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムが含まれるがこれに限らない。
【0077】
シリコーン系ポリマーの例には、アミノビスプロピルジメチコーン、シクロメチコーン、ジメチコーン、ジメチコーンコポリオール、ヘキサメチルジシロキサン、メチコーン、オクタデシルジメチコーン、フェニルジメチコーン、ステアロキシジメチコーンなどが含まれる。
【0078】
無機ポリマーの例には、ベントナイト、改質ベントナイト、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、改質ヘクトライト、ケイ酸ナトリウムマグネシウムなどが含まれるがこれに限らない。
【0079】
上で挙げたポリマーは、本明細書等に記載のすべての組成物に使用することができる。たとえば、これらポリマーを低残渣ゲル中に使用することができる。これらポリマーは、低残渣濃厚液体中に増粘剤として使用することもできる。
【0080】
ゲル
以上で開示したように、ある実施形態では、薬剤組成物は、低残渣ゲルの形の局所用製剤である。本明細書では、「ゲル」は、液体を浸透させた小さな無機粒子または大きな有機分子のいずれから構成される半固体系も示す。一般に、ゲルは、しばらくそのままにしておけば、半固形状またはゼラチン状になることができる。ある種のゲルでは、放置しておくと少量の水が分離することもある。
【0081】
当業者ならば、低残渣ゲルの調製方法は容易にわかるであろう。このようなゲルの調製方法についての詳細は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年に載っている。一実施形態では、ゲルは、1種または複数の適切なポリマーを必要量の適切な溶媒中にゆっくりと分散させて調製することができる。適切な溶媒およびポリマーについての議論は、上に示してある。一調製方法によれば、ポリマーと溶媒を、ポリマーが完全に溶解するまで攪拌してよい。攪拌する際、ポリマー/溶媒溶液に水を加えることができる。この攪拌した混合物に、ニトロキシド放射線防護剤が十分に溶解するまで、十分な量のニトロキシド放射線防護剤を加えてよい。
【0082】
ゲルは、一相系でも多相系でもよい。小さなばらばらの粒子の網目からなるゲル塊は一般に二相系と呼ばれ、単相ゲルは、通常、有機巨大分子が、分散した巨大分子と液体との間にはっきりとした境界が存在しないような形で液体中に均質に分散したものからなる。
【0083】
ある実施形態では、低残渣ゲルは、水性アルコールゲルでよい。ある実施形態では、ニトロキシド放射線防護剤を溶解させるのに、エタノールなどのアルコールを使用することができるが、PEG40、硬化ヒマシ油、ポリソルベート20、または同様の成分など、可溶化剤の使用は避ける。これらの可溶化剤が存在しないと、粘着性およびゴムのような感触が実質的になくなり得るので、製品の表面上の感触を大いに向上させることができる。薬剤組成物がかなりのアルコール(たとえば、エタノール)含有量を有する実施形態では、追加の保存処置が必要でないこともある。
【0084】
当業者ならば、数多くの方法を使用して、本明細書に記載の製剤特性を有する水性アルコールゲルを容易に調製することができる。水性アルコールゲルを調製する一方法によればニトロキシド放射線防護剤をエタノールに溶解させて、溶液を調製することができる。このニトロキシド放射線防護剤の溶液をヒドロゲルに加えてよい。ある実施形態によれば、放射線防護剤/エタノール溶液は、アンカーミキサーをゆっくりと動かして使用しながら既製のヒドロゲルに加えることができ、これによって、水性アルコールゲル中での気泡生成を低減することができる。
【0085】
水素結合が減少するため、水性アルコールゲルの粘性は、対応するヒドロゲルの粘性よりも一般に低い。それでも、当業者は、水性アルコールゲルの成分の調整を行って、所望の特性に合った適切な粘性を有する組成物を調製することができる。たとえば、上で論じた増粘剤またはポリマーを使用して、特定の製剤の粘性を上昇させることができる。
【0086】
ある実施形態では、低残渣ゲルは、噴霧可能にすることができる。噴霧可能なゲルの調製方法は、当業界でよく知られている。噴霧可能なゲルの一調製方法によれば、適切なポリマーを水に加えることができる。水和し、構造ができた後、濃厚ポリマー/水混合物をニトロキシド放射線防護剤/溶媒に加えることができる。
【0087】
液体製剤
本明細書の別の実施形態は、ニトロキシド放射線防護剤含有液体製剤を含む。たとえば、ニトロキシド放射線防護剤を、上で論じた適切な溶媒のいずれかに溶解させることができる。Tempolの溶媒として使用することのできる溶媒を非限定的に挙げるとすれば、水、尿素、アルコール、グリコールなどである。これらの液体製剤は、その必要のある患者に製剤を塗布するために、タオル、布、きれ、スポンジ、ガーゼ、または同様の吸収性材料などの塗布具を用いて使用してよい。
【0088】
別の実施形態は、ポリマーを加えて、ニトロキシド放射線防護剤含有液状溶液を濃厚にすることを含む。上述のポリマーのいずれかを、これらの製剤のための増粘剤として使用することができる。たとえば、次のポリマー、すなわち、エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、無機ポリマーなどを増粘剤として使用してよい。
【0089】
当業者ならば、本明細書に記載の方法に従う、濃厚液状溶液の調製方法がすぐにわかるであろう。そのような液体の調製方法についての詳細は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、第18版、1990年に載っている。
【0090】
本発明を、濃厚液体を用いて実施する場合、液体を20〜100,000センチポアズ、またはそれ以上の粘度にまで濃厚にすると有利である。ある実施形態では、本明細書等で提示する製剤は、400〜2000cps、またはより詳細には900〜1500cpsの粘性を備えていてよい。より詳細な実施形態では、製剤は、約1215cpsの粘性を備えていてよい。
【0091】
組成物の使用方法
方法実施形態は、放射線療法を受けている患者への本明細書等に記載の低残渣製剤のいずれかの使用を含む。ある実施形態で、製剤を放射線療法の直前に適用することができる。低残渣製剤を適用するのに適する範囲には、皮膚および粘膜のすべての範囲が含まれる。方法には、頭皮、顔面、首、胸部、腕、足、胴部、背中などへの製剤の適用が含まれるがこれに限らない。別の方法には、口腔、鼻、目、膣、直腸などの部位が含まれるがこれに限らない粘膜に製剤を適用することが含まれるがこれに限らない。
【0092】
ある実施形態は、放射線療法を受けている患者のある部位に、低残渣ニトロキシド放射線防護剤含有製剤を擦込むことを含む。擦込みは、通常は手袋をはめた施術者の手を用いて実施することもでき、あるいは布、タオル、スポンジ、きれ、ガーゼなどの塗布具を用いて行ってもよい。他の実施形態は、放射線療法を受けている患者の治療部位に低残渣製剤を噴霧することを含む。製剤を、治療部位に噴霧した後、そのままにして吸収されるようにしてもよいし、またはニトロキシド放射線防護剤が吸収されやすくするために擦込んでもよい。
【0093】
別の実施形態は、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量の、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルなどのニトロキシド放射線防護剤を局所的に適用することを含み、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルは、溶液とし、かつ低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態とする。
【0094】
ある実施形態では、本明細書に記載の製剤および方法を使用して、皮膚症状、粘膜症状、および毛嚢症状から選択される放射線療法の有害な副作用を治療または予防することができる。ある実施形態では、本明細書の方法を使用して、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、皮膚炎などを含む皮膚症状を治療または予防することができる。別の実施形態は、口腔粘膜炎、直腸炎などの粘膜症状の治療方法を含む。別の実施形態は、脱毛症などの毛嚢症状の治療方法を含む。
【実施例】
【0095】
以下の実施例では、ニトロキシド放射線防護剤製剤の製造法および使用法を教示する。これら実施例は、例示的なものに過ぎず、本明細書の教示の範囲を限定する意図のものではない。
【0096】
(実施例I)
序論
選択的手術で得たヒトの切除皮膚を使用する以下の調査を実施し、Tempol(4-ヒドロキシTempo)の4種の媒体からのin vitroでの経皮吸収を評価した。この調査は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)に記載の手順を使用して実施した。
【0097】
方法
このin vitro経皮吸収調査で使用したTempol製剤は、Dow Pharmaceutical Sciences、米カリフォルニア州ペタルーマによって製剤されたものである。これらの製剤の組成を表1にまとめて示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示したように、4種のTempol含有製剤を調製した。製剤Iを基準エタノール溶液とし、製剤IIを軽度にゲル化したエタノール/水溶液とし、製剤IIIを中程度にゲル化したエタノール/水溶液とし、製剤IVを噴霧可能なエタノール/水ゲルとした。
【0100】
Franz型静的拡散セルFDC-400(開口部直径15mm、O型環接合部、Crown Bio Scientific、米ニュージャージー州Clinton)を9セル型集合体上に取り付け、再循環型水浴を使用して32℃の一定温度に保った。これらのセルは、1.767cm2のわずかな面積の開口部と、体積12〜14mLの範囲のレセプター区画とを有する。切除した単一ドナー由来のヒト腹部皮膚を、真皮側を下にして置き、次いでTeflon(登録商標)製O型環(レセプター側、すなわち、拡散セルの下半分の溝に入っている)を置いて、各拡散セルの組み立てを行った。次いで、拡散セルのドナー側、すなわち上半分を、皮膚上に置かれたO環の上部に置き、ピンチクランプによってその場所に保った。各セルのドナー区画とレセプター区画の間の接合部をPARAFILM(登録商標)で包んで、レセプター溶液が蒸発しないようにした。
【0101】
次いで、各セルを、0.1%のアジ化ナトリウムおよび1.5%のOleth-20を加えた脱気したPBSからなるレセプター溶液で満たした。気泡を皮膚の下から消散させた。レセプター液を、Teflon製磁気攪拌棒を使用して絶えず攪拌し、接種ループをループ上部から約5.0cmに切断した。製剤を適用する前に1時間かけて、皮膚がレセプター溶液と平衡に達するようにした。
【0102】
シリンジを使用して、有限用量(0.1mL/cm2)の各製剤を皮膚に適用した。各製剤を、セル1個につき製剤0.18MLとして6個の拡散セルに交互に適用した。拡散セルのサンプル採取口をPARAFILM(登録商標)で封じて蒸発を防いだ。15分間の曝し期間の後、レセプター液の全部をシンチレーションバイアル中に集めた。皮膚を綿棒で続けて2回拭き、セルのキャップを取り外した。皮膚からそれ以上材料が除去されなくなるまで、残留している製剤を多数のセロハンテープ片で角質層から取り除いた。ピンセットを使用して表皮を真皮から物理的に引き離した。各皮膚切片を別々のバイアルに入れ、ラベルを貼った。すべてのレセプター、拭取り具拭いサンプル、テープ片、表皮、および真皮サンプルを分析のために分析試験所に発送した。Tempol含有量は「標準型」および「酸化型」として報告された。
【0103】
結果
Tempolの皮膚透過は、4種の製剤において適用量の0.003〜0.01パーセントの範囲であった。生存表皮および真皮のレベルは、標準型分析では適用量の0.2〜2.8パーセントであり、酸化型分析では1.1〜6.6パーセントの適用量であった。中程度にゲル化したエタノール/水製剤、すなわち製剤IIIは、生存表皮/真皮レベルが最も高く、標準型分析では適用量の2.8%であり、酸化型分析では適用量の6.6%であった。噴霧可能なエタノール/水ゲル製剤、すなわち製剤IVでは、標準型分析で適用量の2.1%という結果が得られた。基準エタノール溶液、すなわち製剤Iでは、酸化型分析で適用量の4.4%という結果が得られた。皮膚沈着および皮膚浸透、ならびに回収用量を表2および3にまとめて示す。より詳細な結果は、図1〜12に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
結論
皮膚を透過してレセプター液に至ったTempolの、適用量に対する百分率および量は、非常に低く、皮膚に15分間作用させた後、それぞれ0.003%〜0.01%および0.32ug/皮膚1.77cm2〜0.78ug/皮膚1.77cm2の範囲であった。この調査は、中程度にゲル化したエタノール/水製剤、すなわち製剤IIIが、基準エタノール製剤、すなわち製剤Iよりも高い皮膚(表皮/真皮)レベル(標準型分析で適用量の2.8%、酸化型分析で適用量の6.6%)を実現したが、皮膚透過はそれよりも高くなかったことを示している。この最初の調査の結果は、製剤IIIが、頭部に局所的に適用されたならば、同等またはより良好な臨床効力を実現し得ることを示唆している。さらに、製剤IIIは、製剤Iよりも皮膚に対する保持力が良好である(垂れ落ちが少ない)はずである。
【0107】
(実施例II)
序論
この調査では、実施例Iで用いたものと同様の試験手順を使用して、中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水製剤(製剤V)の複数回の適用が、Tempolのin vitro経皮吸収に及ぼす影響を評価した。これらの試験手順は、FDA and AAPS Report of the Workshop on Principles and Practices of In Vitro Percutaneous Penetration Studies: Relevance to Bioavailability and Bioequivalence (Pharm.Res.第4巻:265ページ、1987年)に準拠した。
【0108】
このin vitro経皮吸収調査で使用した試験製剤は、Dow Pharmaceutical Sciences、米カリフォルニア州ペタルーマによって調製されたものである。製剤の組成を表4にまとめて示す。BrooKfield RVDV-1+粘度計を使用して、製剤Vの粘性を測定した。重量8.4134グラムのサンプルで測定した粘度は、22.9℃で1215cpsであった。
【0109】
【表4】
【0110】
次の4種の適用療法を、それぞれ6個のセルで実施した。(1)Tempol製剤(製剤V)の1回の適用、(2)Tempol製剤(製剤V)の2回の適用、(3)Tempol製剤(製剤V)の3回の適用、および(4)Tempol製剤(製剤V)の1回の適用の後に媒体製剤(製剤VI)の1回の適用。製剤は、適用ごとに皮膚表面に30分間曝した。
【0111】
皮膚を、適用後に毎回2本の乾燥綿棒で拭いた。最後の適用および皮膚の拭取りが完了した後、角質を皮膚から除去した。すべての角質層サンプル、ならびに調査中に収集された残りの皮膚(生存表皮/真皮)、レセプター液、および皮膚表面拭いサンプルのTempol含有量の分析を実験室で行った。Tempol含有量は、「標準型」、「酸化型」、および「還元型」として報告された。
【0112】
方法
Franz型静的拡散セル(開口部直径15mm、O型環接合部、Crown Bio Scientific、米ニュージャージー州Clinton)を9セル型集合体上に取り付け、再循環型水浴を使用して32℃の一定温度に保った。これらのセルは、1.77cm2のわずかな面積の開口部と、体積12〜14mLの範囲のレセプター区画とを有する。切除した単一ドナー由来のヒト腹部皮膚を、真皮側を下にして置き、次いでTeflon(登録商標)製O型環(ドナー側、すなわち、拡散セルの上半分の溝に入っている)を置いて、各拡散セルの組み立てを行った。次いで、拡散セルのドナー側(上半分)を、皮膚上に置かれたO環の上部に置き、ピンチクランプによってその場所に保った。各セルのドナー区画とレセプター区画の間の接合部をParafilm(登録商標)で包んで、レセプター溶液が蒸発しないようにした。
【0113】
次いで、各セルを、0.1%のアジ化ナトリウムおよび1.5%のOleth-20を加えた脱気したPBSからなるレセプター溶液で満たした。気泡を皮膚の下から消散させた。レセプター液を、Teflon製磁気攪拌棒を使用して絶えず攪拌し、接種ループをループ上部から約3.0cmに切断した。製剤を適用する前に1時間かけて、皮膚がレセプター溶液と平衡に達するようにした。
【0114】
置換ピペットを使用して、有限用量(0.1mL/cm2)の製剤を皮膚に適用した。製剤を、セル1個につき製剤0.18mLとして6個の拡散セルに交互に適用した。拡散セルのサンプル採取口をPARAFILM(登録商標)で包んで蒸発を防いだ。30分間の曝し期間の後、レセプター液の中身全部をシンチレーションバイアル中に集めた。適宜、2本の綿棒を使用して皮膚表面を拭いて前の分を取り除いた後、セルに試験製剤を盛り直してもよい。試験製剤を最後に適用した後、皮膚を乾燥綿棒で続けて2回拭いた。セルのキャップを除去した。皮膚からそれ以上材料が除去されなくなるまで、残留製剤を、多数のセロハンテープ片を用いて角質層から取り除いた。残りの生存表皮/真皮を集めた。すべてのレセプター、拭いサンプル、テープ片、および生存表皮/真皮サンプルを、分析のために分析試験所に発送した。
【0115】
分析試験所から、標準型および酸化型Tempol濃度の形のデータを得た。還元型Tempolは、分析的方法によって検出できないので、存在するすべてのTempolが酸化型になるように、サンプル中のTempolを酸化させた。酸化型Tempolは、回収されたTempolの総量を表す。還元型Tempolは、酸化型Tempolから標準型Tempolを引いて算出した。
【0116】
30分間の皮膚への曝し期間の後、還元型Tempolの皮膚透過は、0μg/皮膚1.77cm2〜0.62μg/皮膚1.77cm2の範囲であった。Tempolの2回目を適用し、さらに30分間皮膚表面に作用させておくと、2.94μg/皮膚1.77cm2〜3.80μg/皮膚1.77cm2の累積量範囲になった。Tempol製剤(製剤V)を1回盛った後、媒体製剤(製剤VI)を適用しても、皮膚を透過する還元型Tempolの量は増大しなかった。Tempolの3回目を適用し、さらに30分間皮膚表面に作用させておくと、還元型Tempolの累積量が8.8μg/皮膚1.77cm2になった。
【0117】
生存表皮および真皮のレベルは、標準型分析で153.7μg/1.77cm2〜496.5μg/1.77cm2、酸化型分析で248.0μg/1.77cm2〜595.5μg/1.77cm2、還元型の結果で57.3μg/1.77cm2〜96.9μg/1.77cm2であった。最も高い生存表皮/真皮レベルは、Tempolの2回の適用で見られ、184.1μgの還元型Tempol/皮膚1.77cm2であった。皮膚透過および皮膚沈着を表5(aおよびb)と表6(aおよびb)にまとめて示す。他の結果を図13および14に示す。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
対応のないt検定(p値<0.05をもって製剤間の有意差とする)を行って、薬物の沈着および透過を統計学的に評価した。皮膚に作用させて30分間経過後、4種の適用療法は、酸化型Tempolの試験2対試験3(p=0.033)を除き、酸化型および標準型Tempolの透過が統計学的に互いに同等である(p<0.05)。試験2の標準型、酸化型、および還元型Tempolの量は、2回目のTempolを適用し、さらに30分間皮膚に作用させた後では、試験3と統計学的に同等であった。標準型分析および酸化型分析では、2回目のTempolを適用した後の試験2が、媒体を適用し、さらに30分間皮膚に作用させた後の試験4よりも有意に高かった。試験2、3、および4では、2回目および追加の期間の後に還元型Tempolのレベルが同等になった。試験3の3回目の適用の結果のレベルは、2回目の時点のレベルの2倍であった。このことは、Tempolが安定な吸収状態に到達していることを示唆する。
【0121】
複数回適用(試験2および3)後の標準型および酸化型Tempolの皮膚沈着は、単一の適用(試験1および4)よりも有意に高かった(p<0.05)。還元型Tempolは、4種のすべての適用試験で統計学的に同等であった。試験4では、媒体の適用は、ウォッシュイン(washing-in)作用を確かにもたらし、標準型および酸化型Tempolのレベルを増大させたが、活性製剤の複数回の投与ほど大きいものではなかった。
【0122】
結論
この調査は、中程度にゲル化したエタノール/水製剤の2回の連続した適用によって、Tempolの沈着および透過レベルが1回の適用よりも高くなったことを示している。
【0123】
(実施例3)
脳腫瘍での予防処置
実施例IIの中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水製剤(製剤V)を、放射線療法前に脳腫瘍患者の頭皮に2回適用し、溶媒を蒸発させる。製剤を適用するごとに、頭皮に作用させる期間を30分間設ける。次いで、頭皮を通して腫瘍に従来型の放射線療法を施術する。処置後、患者は、皮膚の焼け、ならびにさもなければ1〜2週間以内に生じるはずの脱毛を経験しなかった。
【0124】
本明細書では教示を実施形態および実施例に即して論じてきたが、本発明の思想から逸脱することなく様々な変更を行ってよいことを理解されたい。したがって、本明細書の教示は、本願添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図2】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図3】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、拭いサンプル中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図4】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、拭いサンプル中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図5】製剤Iをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図6】製剤IIをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図7】製剤IIIをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図8】製剤IVをヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片中の標準型Tempolと酸化型Tempolの測定濃度を比較する線グラフである。
【図9】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片サンプル中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図10】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、テープ片サンプル中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図11】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、生存表皮および真皮上の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図12】4種の異なる局所用Tempol製剤(製剤I〜IV)をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、生存表皮および真皮上の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図13】中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水局所用製剤をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の標準型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【図14】中程度にゲル化した7%のTempolエタノール/水局所用製剤をヒトの皮膚に15分間in vitro経皮吸収させた後の、レセプター液中の酸化型Tempolの測定濃度を示す棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項2】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択されている、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択されたアルコールである、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記グリコールが、エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記の放射線療法の作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
ニトロキシド放射線防護剤の前記の予防もしくは治療有効量が、全組成物に対し約0.01〜約100mg/mlの量である、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーをさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、前記ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
放射線療法が適用されるときに皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な量の残渣を残さない低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした薬剤組成物。
【請求項14】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項16】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記の投与が、溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防またな治療するのに十分な量で局所的に適用することを含む使用。
【請求項17】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記溶液が、低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記の有害な副作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記投与が、
溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防またな治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
溶媒を蒸発させる工程と、
前記患者に放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【請求項25】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記投与が、
溶媒中の溶液としてあり、前記患者のしかるべき場所に保持されるような十分な粘性を有するニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
前記患者に放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項2】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択されている、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択されたアルコールである、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記グリコールが、エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記の放射線療法の作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
ニトロキシド放射線防護剤の前記の予防もしくは治療有効量が、全組成物に対し約0.01〜約100mg/mlの量である、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーをさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、前記ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
皮膚または粘膜に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
放射線療法が適用されるときに皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な量の残渣を残さない低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした薬剤組成物。
【請求項14】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項16】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記医薬が、十分量のニトロキシド放射線防護剤を溶媒中の溶液の形態で局所適用のために含む使用。
【請求項17】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記溶液が、低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記の有害な副作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記予防または治療が、
溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
溶媒を蒸発させる工程と、
放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【請求項25】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記予防または治療が、
溶媒中の溶液としてあり、患者のしかるべき場所に保持されるような十分な粘性を有するニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【請求項1】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項2】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択されている、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択されたアルコールである、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記グリコールが、エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記の放射線療法の作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
ニトロキシド放射線防護剤の前記の予防もしくは治療有効量が、全組成物に対し約0.01〜約100mg/mlの量である、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーをさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、前記ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
放射線療法が適用されるときに皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な量の残渣を残さない低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした薬剤組成物。
【請求項14】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項16】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記の投与が、溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防またな治療するのに十分な量で局所的に適用することを含む使用。
【請求項17】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記溶液が、低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記の有害な副作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記投与が、
溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防またな治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
溶媒を蒸発させる工程と、
前記患者に放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【請求項25】
患者に投与するための医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記投与が、
溶媒中の溶液としてあり、前記患者のしかるべき場所に保持されるような十分な粘性を有するニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
前記患者に放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚、粘膜、または毛嚢に対する放射線療法の作用を改善するのに使用する薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項2】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択されている、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、およびブタノールからなる群から選択されたアルコールである、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記グリコールが、エチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項3に記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記の放射線療法の作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項9】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項6に記載の薬剤組成物。
【請求項10】
ニトロキシド放射線防護剤の前記の予防もしくは治療有効量が、全組成物に対し約0.01〜約100mg/mlの量である、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項11】
エチレン系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニル系コポリマー、セルロース系ポリマー、天然ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、および無機ポリマーからなる群から選択されたポリマーをさらに含む、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項12】
薬理学的に有効な量が治療部位に吸収されるのに十分な期間、前記ニトロキシド放射線防護剤が治療部位と接触したままとなるような粘性を有する、請求項1に記載の薬剤組成物。
【請求項13】
皮膚または粘膜に対する放射線療法の作用を改善するのに使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量のニトロキシド放射線防護剤とを含み、
放射線療法が適用されるときに皮膚または粘膜に対する焼けを促進するのに十分な量の残渣を残さない低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態をした薬剤組成物。
【請求項14】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項13に記載の薬剤組成物。
【請求項15】
脱毛症の予防または治療に使用するための薬剤組成物であって、
溶媒と、
前記溶媒中の溶液にした予防もしくは治療有効量の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルとを含み、
低残渣ゲルの形態をした薬剤組成物。
【請求項16】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記医薬が、十分量のニトロキシド放射線防護剤を溶媒中の溶液の形態で局所適用のために含む使用。
【請求項17】
前記ニトロキシド放射線防護剤が4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記溶液が、低残渣のゲルまたは濃厚液体の形態である、請求項16に記載の使用。
【請求項19】
前記溶媒が、水、尿素、アルコール、およびグリコールからなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項20】
前記の有害な副作用が、皮膚症状、粘膜症状、毛嚢症状、細胞毒性、およびポリ核酸の損傷からなる群から選択される、請求項16に記載の使用。
【請求項21】
前記皮膚症状が、紅斑、毛嚢炎、線維症、乾性落屑、湿性落屑、色素沈着過剰、および皮膚炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記粘膜症状が、口腔粘膜炎および直腸炎から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記毛嚢症状が脱毛症である、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記予防または治療が、
溶媒中の溶液としたニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
溶媒を蒸発させる工程と、
放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【請求項25】
放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療する医薬の製造におけるニトロキシド放射線防護剤の使用であって、前記予防または治療が、
溶媒中の溶液としてあり、患者のしかるべき場所に保持されるような十分な粘性を有するニトロキシド放射線防護剤を、放射線療法によって引き起こされる有害な副作用を予防または治療するのに十分な量で局所的に適用する工程と、
放射線療法を適用する工程と
を含む使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−501303(P2006−501303A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541884(P2004−541884)
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/030781
【国際公開番号】WO2004/030623
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(305041256)ミトス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/030781
【国際公開番号】WO2004/030623
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(305041256)ミトス・ファーマシューティカルズ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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