説明

ニトロセルロースをバインダーとした高安全性ニトラミン発射薬

【課題】本発明は、着火が良好なニトロセルロースをバインダーとして使用し、銃弾の被弾等の激しい衝撃に対する安全性を有したニトラミン発射薬を提供することを目的とする。
【解決手段】ニトロセルロースを20〜35重量%、可塑剤を16〜30重量%、環状ニトラミン化合物を46〜64重量%、ニトログアニジンを0〜18重量%、固形添加剤を0〜18重量%含有してなり、かつ
〔(可塑剤の重量%)/(ニトロセルロースの重量%)〕/(環状ニトラミン化合物の重量%+ニトログアニジン重量%+固形添加剤の重量%)で計算される値が0.012〜0.030の範囲であることを特徴とする高安全性ニトラミン発射薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ニトラミン化合物を含有する発射薬に関する。本発明は更に銃弾等の衝撃に対し高い安全性を示すニトラミン発射薬に関する。
【背景技術】
【0002】
高エネルギー化、および/または高安全化を図るため、ニトラミン化合物を含有させた発射薬が研究されている。環状ニトラミン化合物は、一般的に火薬エネルギーが高く、熱的安定性に優れるといった利点を有する。しかし、その一方、環状ニトラミン化合物、ニトログアニジン、固形添加剤を高配合すると、発射薬が硬くなり、銃弾等の衝撃に対し脆くなる恐れがある。また、感度を低下させるため、不活性な成分、例えば不活性セルロース(CAB)、不活性可塑剤を高含有させると、発射薬の酸素バランスが大きく負になり、一酸化炭素の増大が懸念され、着火性が悪くなる恐れがある。
特許文献1に不活性セルロース(CAB)をニトロセルロースの代わりに用い、環状ニトラミンを高配合した発射薬の例が示されている。しかし、本組成は、機械強度が脆く、不活性セルロースを含有する為、着火性能が悪い。そのため、着火性能が要求される幅広い弾薬への応用が難しい。
【0003】
特許文献2には、高圧領域まで圧力指数変動の少ないニトラミン含有発射薬およびニトラミン含有発射薬を製造する方法について記載されているが、ニトロセルロースをバインダーとした衝撃に対する安全性については、具体的な記述がない。
特許文献3には、必須成分として、酸素含有粒子とバインダー高分子と可塑剤とからなる発射薬組成物において、組成範囲を記し、落つい感度、摩擦感度の安全性に対する記述はあるが、銃弾の被弾等の激しい衝撃に対する感度を低減させる組成配合の方法については記載されていない。
特許文献4には、芳香族ニトロ化合物を含有するニトラミンを用いた発射薬の例が示されているが、発射薬の安全化に対する具体例が示されていない。
【0004】
【特許文献1】特表平9−506853号公報
【特許文献2】特開2006−151791号公報
【特許文献3】特開2000−272989号公報
【特許文献4】米国特許第5500060号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、着火が良好なニトロセルロースをバインダーとして使用し、銃弾の被弾等の激しい衝撃に対する安全性を有したニトラミン発射薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために、国際規格であるSTANAG 4241や、防衛庁規格であるNDS K 4826等で記載されている安全性評価試験である銃撃感度試験と発射薬の配合割合の関係、発射薬の圧縮強度と発射薬の配合割合の関係について鋭意研究した結果、発射薬中の原材料の配合割合を制御することにより、前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)ニトロセルロースを20〜35重量%、可塑剤を16〜30重量%、環状ニトラミン化合物を46〜64重量%、ニトログアニジンを0〜18重量%、固形添加剤を0〜18重量%含有してなり、かつ
〔(可塑剤の重量%)/(ニトロセルロースの重量%)〕/(環状ニトラミン化合物の重量%+ニトログアニジン重量%+固形添加剤の重量%)で計算される値が0.012〜0.030の範囲であることを特徴とする高安全性ニトラミン発射薬、
【0007】
(2)環状ニトラミン化合物として、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)のいずれか1種以上を用いることを特徴とする前記(1)記載の高安全性ニトラミン発射薬、
(3)可塑剤が、ニトログリセリンと不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ、
(ニトログリセリンの重量%)/(ニトログリセリンの重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.40〜0.80であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高安全性ニトラミン発射薬、
【0008】
(4)可塑剤が、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤であるか、または、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ
(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%)/(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.40〜1.00であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の高安全性ニトラミン発射薬、
(5)可塑剤が、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤であるか、または、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ
(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%)/(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.77〜1.00であることを特徴とする前記(4)記載の高安全性ニトラミン発射薬、
【0009】
(6)ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤として、ブタントリオールトリナイトレート(BTTN)、トリメチロールエタントリナイトレート(TMETN)、トリメチロールプロパントリナイトレート(TMPTN)、ジエチレングリコールジナイトレート(DEGDN)、トリエチレングリコールジナイトレート(TEGDN)、ブタンジオールジナイトレート(BDDN)、メチルニトラトエチルニトラミン、エチルニトラトエチルニトラミンやブチルニトラトエチルニトラミンなどのニトラトエチルニトラミン類、ビスー2,2−ジニトロプロピルアセタールとビスー2,2−ジニトロプロピルホルマールの混合物(BDNPA/F)のいずれか1種以上を用いることを特徴とした前記(4)又は(5)に記載の高安全性ニトラミン発射薬、
【0010】
(7)不活性可塑剤として、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのフタル酸エステル類、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、クエン酸トリブチル(TBC)などのオキシ酸エステル類、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル、トリアセチンのいずれか1種以上を用いることを特徴とした前記(3)〜(6)のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬、
(8)発射薬の圧縮歪みを圧縮後の長さ/圧縮前の長さとし、その圧縮歪みと第一降伏点までの応力の傾きである応力/圧縮歪みの値が1〜40kN/cmであることを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬、
(9)発射薬の組成物の酸素バランスが、−0.50〜−0.17g/gであることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、銃弾等の激しい衝撃に対し、高い安全性を有する発射薬を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に詳細に説明する。
本発明にいうニトラミン発射薬とは、高エネルギー化、高安全化等の高性能化を目指すために、ニトロセルロースを20〜35重量%、可塑剤を16〜30重量%、環状ニトラミン化合物を46〜64重量%、ニトログアニジンを0〜18重量%、固形添加剤を0〜18重量%含有してなり、かつ
〔(可塑剤の重量%)/(ニトロセルロースの重量%)〕/(環状ニトラミン化合物の重量%+ニトログアニジン重量%+固形添加剤の重量%)で計算される値が0.012〜0.030の範囲であることを特徴とする高安全性ニトラミン発射薬である。計算された値が0.012を下回ると発射薬が硬くなり、銃撃に対する感度が上昇する恐れがあるため好ましくない。また、0.030を超えると、発射薬のバインダーに対して可塑剤の割合が増加しすぎ、発射薬を成型する際に孔つぶれを引き起こす恐れがあり、成型が大変難しくなる。さらに好ましい範囲として0.0125〜0.020が良い。
【0013】
環状ニトラミン化合物としては、例えばシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)のいずれか1種以上を用いることができる。また、環状ニトラミン化合物は、46重量%以上あれば、火薬力を十分に高めることができるため好ましい。64重量%以下であれば、固形分量が多すぎず、硬くなりすぎる恐れが無いため好ましい。64重量%を超えると、発射薬が硬くなり、銃撃に対する感度が上昇する恐れがある。
ニトロセルロースは、窒素量で12.0〜13.2%のものが好ましく、原材料を捏和し、発射薬形状に形作れるものであれば良い。また、ニトロセルロースは、20重量%以上であれば、機械強度が良好になるため好ましい。さらに、35重量%以下であれば、火薬のエネルギーを向上させる環状ニトラミンを高配合できるので好ましい。
【0014】
可塑剤は、発射薬を所望の機械物性にできるものであれば、どのようなものでも良い。また、可塑剤は、16重量%以上あれば、発射薬を十分に可塑し、発射薬を成型することが出来る。30重量%以下であれば、発射薬を成型時に孔つぶれの少ない発射薬を成型することができる。さらに好ましい範囲は、19〜23重量%である。
ニトログアニジンは、燃焼温度を低下させる目的で使用することが出来る。ニトログアニジンは、必要により0〜18重量%の範囲で配合すると好ましい。
【0015】
固形添加剤は、必要により添加しても良く、その配合量は0〜18重量%、好ましくは0〜5重量%の範囲である。固形添加剤は、安定剤や、消炎剤、燃焼触媒、増粘剤、表面こう化剤、光沢剤などを単独、または2種以上の混合物として含む組成であっても良い。
安定剤は、発射薬を安定化させるものであれば、どのようなものでも良い。例として、メチルジフェニルウレア(AK2)、エチルセントラリット(ECL)、ジフェニルアミン(DPA)、2−ニトロジフェニルアミン(2−NDPA)のいずれかを単独、もしくは2種以上を配合したものが好ましい。
消炎剤は、消炎効果のあるものであれば、どのようなものを用いても良い。例として、硝酸カリウム、硫酸カリウム、氷晶石のいずれかを単独、もしくは2種以上を配合したものが好ましい。
【0016】
次に可塑剤の組み合わせについて記述する。
可塑剤としては、ニトログリセリンやニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤、不活性可塑剤がある。この可塑剤を幅広く組み合わせることで火薬力の高いものから火薬力の低い組成まで幅広い設計を行うことが出来る。エネルギー可塑剤としてニトログリセリンを用いる場合は、他の可塑剤より感度が高いため、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤や不活性可塑剤と組み合わせて使用することが望ましい。組み合わせ例は、ニトログリセリンと不活性可塑剤の組み合わせ、ニトログリセリンとニトログリセリンを除くエネ
ルギー可塑剤の組み合わせ、ニトログリセリンとニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤の組み合わせがある。この中で高安全化には、ニトログリセリンと不活性可塑剤の組み合わせが特に好ましい。
その配合比率は、(ニトログリセリンの重量%)/(ニトログリセリンの重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される値が、0.40〜0.80であると好ましい0.4を下回ると、不活性化可塑剤が多くなりすぎ、発射薬の酸素バランスが悪化し、射撃後の後ガスが悪化する為好ましくない。0.8を超えると、感度が上昇する恐れがあり好ましくない。
ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤を用いる場合、単独もしくは、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤を組み合わせることが好ましい。その配合比率は、(エネルギー可塑剤の重量%)/(エネルギー可塑剤の重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.40〜1.00であると好ましい。0.4を下回ると、不活性化可塑剤が多くなりすぎ、発射薬の酸素バランスが悪化し、射撃後の後ガスが悪化する為好ましくない。さらに好ましくは、0.77〜1.00の範囲である。
【0017】
ここで記述したニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の例として、ブタントリオールトリナイトレート(BTTN)、トリメチロールエタントリナイトレート(TMETN)、トリメチロールプロパントリナイトレート(TMPTN)、ジエチレングリコールジナイトレート(DEGDN)、トリエチレングリコールジナイトレート(TEGDN)、ブタンジオールジナイトレート(BDDN)、メチルニトラトエチルニトラミン、エチルニトラトエチルニトラミンやブチルニトラトエチルニトラミンなどのニトラトエチルニトラミン類、ビスー2,2−ジニトロプロピルアセタールとビスー2,2−ジニトロプロピルホルマールの混合物(BDNPA/F)のいずれか1種以上を用いることができる。
【0018】
また、不活性可塑剤の例としては、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのフタル酸エステル類、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、クエン酸トリブチル(TBC)などのオキシ酸エステル類、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル、トリアセチンのいずれか1種以上を用いることができる。
次に発射薬の物性について述べる。発射薬の圧縮歪みを圧縮後の長さ/圧縮前の長さとし、その圧縮歪みと第一降伏点までの応力の傾きである応力/圧縮歪みの値が1〜40kN/cmであることが好ましい。1kN/cmを下回ると燃焼初期に発射薬として形状を維持することが難しいため好ましくない。また40kN/cmを超えると、発射薬が硬くなり銃撃に対する感度が激しくなり好ましくない。さらに好ましい範囲は、5〜32kN/cmである。
【0019】
次に発射薬の酸素バランスについて述べる。酸素バランスは、一般式Cの化合物1gが爆発的に分解して化学量論的に炭素は、COに、水素はHOに、窒素は、Nになった場合の酸素の過不足量をグラム(g)で表したものである。
→xCO+(y/2)HO+(u/2)N−(1/2)(2x+y/2−z)O
酸素バランスO.B=−16×(2x+y/2−z)/(分子量)
発射薬の原材料の酸素バランスは、例えば、ニトログリセリンは、+0.035(g/g)、DEGDNは、−0.408(g/g)である。不活性可塑剤であるDBPは、−2.242(g/g)、DEPは、−1.944(g/g)、TBCは、−2.079(g/g)である。このため、不活性可塑剤を高配合すれば、酸素バランスは大きく負になる。発射薬全体の酸素バランスは、(各原材料の酸素バランス)×(各原材料の重量割合)の総和で算出することができる。
【0020】
例えば以下のようである。
ニトロセルロース(12.6%)の含有率が20重量%、DEGDNの含有率が20重量%、RDXの含有率が58.5重量%、ECLの含有率が1.5重量%で示される発射薬の酸素バランスは、(各原材料の酸素バランス)×(各原材料の重量割合)の総和で算出する。
ニトロセルロース:−0.345(g/g)
DEGDN :−0.408(g/g)
RDX :−0.216(g/g)
ECL :−2.511(g/g)
(発射薬の酸素バランス)=(−0.345×0.2)+(−0.408×0.2)+(−0.216×0.585)+(−2.511×0.015)=−0.315
【0021】
発射薬の酸素バランスが、−0.50(g/g)よりマイナスの場合、燃焼で発生する一酸化炭素の割合が高くなる傾向にあり好ましくない。また、ニトログリセリンを多く配合する場合は、−0.17(g/g)よりもプラスになると銃撃感度が激しくなる恐れがあり、好ましくない。
本発明の発射薬の使用範囲は、戦車砲、りゅう弾砲、中口径等のあらゆる火砲、小火器に使用可能である。また、発射薬の形状は、性能面から求められるあらゆる形状のものが使用できる。例えば、柱状発射薬、単孔発射薬、7孔管状発射薬、6角7孔発射薬、19孔管状発射薬、6角19孔発射薬、37孔管状発射薬、6角37孔発射薬、ロゼッタ7孔発射薬、ロゼッタ19孔発射薬、ロゼッタ37孔発射薬、棒状火薬、スリットを入れた火薬である。
【実施例】
【0022】
(製造例1)
RDX(環状ニトラミン)が76重量%、ニトロセルロース(窒素量12.6%)23.5重量%、エチルセントラリット(安定剤)0.5重量%よりなる粉を周知の方法(例えば、日本特許第2802388号公報に記載の方法)で製造した。
(実施例1〜7、比較例1〜6)
製造例1で作成した粉を使用し、表1〜2の組成となるよう原材料を溶剤とともに捏和機に仕込み均質になるまで混合、捏和し、それ以降は周知の溶剤圧伸方法を用いて実施例1〜7、比較例1〜6の薬径1cm、長さ約1cmの6角19孔発射薬を製造した。
(比較例7)
比較例7は、表2の組成となるよう原材料を溶剤とともに捏和機に仕込み均質になるまで混合、捏和し、それ以降は公知の溶剤圧伸方法を用いて、薬径1cm、長さ約1cmの6角19孔発射薬を製造した。
次いで実施例1〜7、比較例1〜7の発射薬を、薬径、長さがほぼ等しくなるよう調整し、ミネベア社製 万能引張り圧縮試験機(TCM−1000)にセットし、2mm/minのスピードで荷重をかけ圧縮し、荷重に対する圧縮長さのデータを取得した。本データを解析し、図1に示す第1降伏点までの圧縮歪みと応力(単位面積あたりの力)の傾きを求めた。この値を表1〜2に示す。
【0023】
実施例1〜7、比較例1〜7の発射薬を、NDS K 4826の火薬類安全性試験方法記載の火薬類銃撃感度試験法に準拠し、銃撃に対する感度評価を行った。評価は、安全性試験方法の判定基準である感度試験容器の破片数で行った。試験は、図2に示した配置で実施した。容器は、規格に準拠したものを使用した。材質は、C2600(真鍮)、容器容積約907cmである。この容器に発射薬を845g入れ、口径12.7mmの徹甲弾を容器に830−900m/s程度で射撃し、射撃による銃弾の被弾衝撃による容器の破壊状況を破片数で評価した。この試験で取得した破片数の値を表1及び表2に示す。
図3にニトラミン組成の前記(1)の式と破片数の関係を示す。前記(1)の式により算出した値が、0.012以上であれば、破片数も少なく銃撃に対する感度が低い。
また、図4にニトラミン組成の応力/圧縮歪みと破片数の関係を示す。図4より、応力/圧縮歪みが40kN/cm以下であると破片数も少なく、銃撃感度が低い。さらに、32kN/cm以下であるとさらに破片数が少なく好ましい。また、従来から知られるトリプルベース組成・比較例組成7は、ニトログリセリンの濃度が高く、破片数は16と多く、感度は高かった。
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】物性試験の解析例を示すグラフ。
【図2】銃撃感度試験図。
【図3】請求項1の式と銃撃感度の破片数の関係を示すグラフ。
【図4】応力/圧縮歪みと銃撃感度の破片数の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロセルロースを20〜35重量%、可塑剤を16〜30重量%、環状ニトラミン化合物を46〜64重量%、ニトログアニジンを0〜18重量%、固形添加剤を0〜18重量%含有してなり、かつ
〔(可塑剤の重量%)/(ニトロセルロースの重量%)〕/(環状ニトラミン化合物の重量%+ニトログアニジン重量%+固形添加剤の重量%)で計算される値が0.012〜0.030の範囲であることを特徴とする高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項2】
環状ニトラミン化合物として、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)のいずれか1種以上を用いることを特徴とする請求項1記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項3】
可塑剤が、ニトログリセリンと不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ、
(ニトログリセリンの重量%)/(ニトログリセリンの重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.40〜0.80であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項4】
可塑剤が、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤であるか、または、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ
(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%)/(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.40〜1.00であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項5】
可塑剤が、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤であるか、または、ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤と不活性可塑剤を組み合わせた可塑剤であり、かつ
(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%)/(ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤の重量%+不活性可塑剤の重量%)で計算される組み合わせ比率が、0.77〜1.00であることを特徴とする請求項4記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項6】
ニトログリセリンを除くエネルギー可塑剤として、ブタントリオールトリナイトレート(BTTN)、トリメチロールエタントリナイトレート(TMETN)、トリメチロールプロパントリナイトレート(TMPTN)、ジエチレングリコールジナイトレート(DEGDN)、トリエチレングリコールジナイトレート(TEGDN)、ブタンジオールジナイトレート(BDDN)、メチルニトラトエチルニトラミン、エチルニトラトエチルニトラミンやブチルニトラトエチルニトラミンなどのニトラトエチルニトラミン類、ビスー2,2−ジニトロプロピルアセタールとビスー2,2−ジニトロプロピルホルマールの混合物(BDNPA/F)のいずれか1種以上を用いることを特徴とした請求項4又は5に記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項7】
不活性可塑剤として、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)などのフタル酸エステル類、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、クエン酸トリブチル(TBC)などのオキシ酸エステル類、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル、トリアセチンのいずれか1種以上を用いることを特徴とした請求項3〜6のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項8】
発射薬の圧縮歪みを圧縮後の長さ/圧縮前の長さとし、その圧縮歪みと第一降伏点まで
の応力の傾きである応力/圧縮歪みの値が1〜40kN/cmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬。
【請求項9】
発射薬の組成物の酸素バランスが、−0.50〜−0.17g/gであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の高安全性ニトラミン発射薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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