説明

ニフェジピンの製造法

【課題】さらなる精製操作なしで薬剤における活性化合物として直接用いられるべきニフェジピンを得ることを可能にする、高純度及び高収率でそして同時に短い反応時間でニフェジピンを製造するための新規方法の提供。
【解決手段】溶媒としての少なくとも1種の(C2−C3)アルカノール中において2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルを、3−アミノクロトン酸メチルと反応させることを含んでなり、該反応を加圧下に70〜110℃の温度で行うことを特徴とするニフェジピンの製造法。好ましくは75〜95℃の温度、特に好ましくは約85℃においてメタノール中で反応を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニフェジピンの製造のための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】

【0003】
【化1】

【0004】
の化合物1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(2−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸ジメチルは製薬学的に活性な化合物ニフェジピンとして既知である(特許文献1)。
【0005】
ニフェジピンは世界中で薬用に多量に用いられている承認された製薬学的に活性な化合物である。そのような製薬学的に活性な化合物に関して、高純度及び高収率で活性化合物を与える経済的な製造法に特に興味がある。
【0006】
特許文献1は、アセト酢酸メチル、2−ニトロベンズアルデヒド及びアンモニアからのその製造を記載している。この場合は理論値の約72%という収率が達成される。
【0007】
しかしながら、この方法により得られるニフェジピンは製薬学的に活性な化合物として用いるために要求される純度を有していない。
【0008】
かくして、特許文献2及び特許文献3は、(I)のための特別な精製法を記載しており、その方法が初めて製薬学的に活性な化合物としての使用を可能にする。
そのような精製操作には収率の損失が伴い、純粋なニフェジピンの収率は合成法の収率より有意に低い。
【0009】
特許文献1の方法の欠点を見て、特許文献4(特許文献5)の発明者等は、1,4−ジヒドロピリジンがもっと高い純度で得られる1,4−ジヒドロピリジンの製造のための改良法を得られるようにすることを自らに課した。この目的で、特許文献4は、2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチル及び3−アミノクロトン酸メチルの反応によるニフェジピンの製造法を開示しており、この方法では出発物質である2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルが特定の触媒法により製造される。2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルと3−アミノクロトン酸メチルの反応は、実施例において還流下の(約65℃)メタノール中で行われている。高収率を達成するために、この方法に従うと非常に長い反応時間が必要である。かくして、ベンジリデン化合物及びアミノクロトン酸エステルが還流下で36時間加熱される。この場合、理論値の約80〜87%の収率が得られる。しかしながら、特許文献4に従って得られる(I)はまだ、製薬学的に活性
な化合物として用いるために要求される純度を示さない。かくして、HPLC分析手段により、パーセントの範囲の原子価異性体(valeuce isomer)(II)の存在を検出することができ、その除去/転位は追加の純粋な結晶化を必要なものとする。その場合の収率は理論値のわずか70〜75%である。
【0010】
【化2】

【0011】
特許文献6は、上記の特許文献4(特許文献5)の欠点を克服するという目的に基づいていた。特許文献6は、溶媒としてのメタノール中で40〜100℃の温度における2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチル及び3−アミノクロトン酸メチルの反応によるニフェジピンの製造法を記載しており、触媒量の低級カルボン酸の存在下で反応を行うことを特徴としている。特許文献6の実施例では、反応を煮沸メタノール(64.5℃)中で行い、ニフェジピンの単離を約0℃で行っている。
【0012】
特許文献6の方法は、触媒の使用により、明白に反応時間の短縮に導くが、得られる生成物はやはり製薬学的に活性な化合物として用いるには不十分な純度を示す。かくして得られる生成物中に、上記の原子価異性体(II)の他に、ピリミジン誘導体及びラクトン類が存在し、それは純粋な結晶化を必要とし、理論値の約80%未満という全収率に導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第3 485 847号明細書
【特許文献2】東独国特許第294 392号明細書
【特許文献3】東独国特許第290 878号明細書
【特許文献4】西独国特許出願公開第33 12 216号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 124 742号明細書
【特許文献6】西独国特許出願公開第44 23 445号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、発明者等は、さらなる精製操作なしで薬剤における活性化合物として直接用いられるべきニフェジピンを得ることを可能にする高純度及び高収率でそして同時に短い反応時間でニフェジピンを製造するための方法を得られるようにする目的で徹底的研究を行った。この経過で、本発明者らは、特許文献6の方法で用いられる触媒が、ニフェジピンを与える反応の所望の促進に加えて、副生成物の生成の増加にも導くことを見いだした。さらに、本発明者らは、驚くべきことに、(C−C)アルカノール、特にメタノールの沸点より高い温度で、すなわち加圧において触媒の不在下で反応を行うと、所望の生成物であるニフェジピンの生成が促進されるが副生成物の生成は促進されず、短い反応時間の後にさらなる精製なしでそれを単離することができ、製薬学的配合物中の活性化合物として用いることができるような純粋な形態でニフェジピンが得られることを見いだした。
本発明はこれらの発見に基づいて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶媒としての少なくとも1種の(C−C)アルカノール中における2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチル及び3−アミノクロトン酸メチルの反応を含んでなり、70〜110℃の温度で加圧下において反応を行うことを特徴とするニフェジピンの製造法を得られるようにするものである。加圧下で反応を行うとは大気圧より高い、すなわち約1バールより高い圧力を意味する。
【0016】
本発明のニフェジピンの製造法は触媒量の低級カルボン酸の不在下で、好ましくはいずれの触媒も不在の下で行われる。
【0017】
本発明のニフェジピンの製造法は、溶媒としての少なくとも1種の(C−C)アルカノール中で行われる。(C−C)−アルカノールにはメタノール、エタノール、n−及びイソ−プロパノールならびにそれらの混合物が含まれる。大気圧より高い圧力で反応を行うので、(C−C)アルカノールに関する反応の温度範囲は適宜にそれに従う。
【0018】
好ましくは75〜95℃の温度、特に好ましくは約85℃においてメタノール中で反応を行う。常圧における溶媒(メタノール)の沸点は約65℃なので、大気圧より上の加圧において反応を行わなければならない。この場合、70〜100℃の温度範囲は大体、約1バール〜約3バールの圧力範囲に対応する。
【0019】
本発明のニフェジピンの製造法は、好ましくは、2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルと3−アミノクロトン酸メチルを、1〜1.5の2−(2−ニトロベンジリデン)セアト酢酸メチル/3−アミノクロトン酸メチルのモル比で反応させるような方法で行われる。
【0020】
本発明のニフェジピンの製造法は、好ましくは、2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルの濃度が反応の開始時において最高で反応塊の55重量%であるように行われる。
【0021】
本発明のニフェジピンの製造法は、好ましくは、2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチル及び3−アミノクロトン酸メチルの反応の反応時間が2〜20時間であるように行われる。
【0022】
本発明の特に好ましい態様の場合、反応で生成するニフェジピンを室温(25℃)より高い温度、好ましくは30℃〜50℃、特に好ましくは35℃〜45℃そして特別に好ましくは約40℃で単離する。
【0023】
本発明のニフェジピンの製造法により生成するニフェジピンは1000ppm未満、好ましくは700ppm未満の副生成物を含有する。
【0024】
本発明はさらに、本発明の方法により製造されるニフェジピンの薬剤の製造のための使用に関する。
【0025】
本発明の方法により製造されるニフェジピンをさらなる精製なしで薬剤の製造に用いるのは、本明細書における好ましい態様である。
【0026】
本発明の反応混合物は90℃より高い温度で透明な溶液を形成し、これらの条件下で製
薬学的に活性な化合物の合成において通常行われる濾過を行うことができ、それは示した温度範囲において加圧下で反応させることのさらなる利点を与える。
【0027】
加圧下に、示した温度枠(temperature window)内で、本発明の方法は予想外にも反応時間における有意な短縮に導いた。反応は8〜12時間、好ましくは8〜10時間後にでも完了する。同時に、先行技術に記載されている方法において副生成物として存在する原子価異性体(II)ももう検出できないことは、この場合全く驚くべきことであった。
【0028】
さらに、驚くべきことに、25℃より高い温度における懸濁液からの結晶性の(I)の単離の後、製薬学的に活性な化合物に課せられる要求を完全に満たす純度でニフェジピンが得られることが見いだされた。本発明の方法に従うニフェジピンの製造に精製操作がないことは、先行技術に記載の方法と比較して重要な経済的因子である。特に、特許文献6の生成物がもっと低い全収率で得られ、したがって、本発明の方法は精製操作がないこと及びより高い全収率の両方の故により経済的であることは、ここで考慮に入れられるべきである。
【0029】
本発明に従うと、理論値の85%の収率で、以前から既知の合成法に従うと追加の純粋な結晶化を行い、この純粋な結晶化で起こる収率の損失を伴って初めて得ることができる品質で、ニフェジピンが得られる。
【実施例】
【0030】
実施例
1185g(4.76モル)の2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルを密閉された撹拌容器において、600g(5.22モル)の3−アミノクロトン酸メチルと一緒に1900mlのメタノール中で85℃に加熱し、85℃で10時間撹拌する。次いで混合物を40℃に冷却する。結晶を吸引濾過し、メタノール及び水で洗浄する。真空中で乾燥した後、1400g(=理論値の85%)のニフェジピンが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒としての少なくとも1種の(C−C)アルカノール中において2−(2−ニトロベンジリデン)アセト酢酸メチルを3−アミノクロトン酸メチルと反応させることを含んでなり、反応を加圧下に70〜110℃の温度で行うことを特徴とするニフェジピンの製造法。

【公開番号】特開2010−65051(P2010−65051A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256191(P2009−256191)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【分割の表示】特願平11−505248の分割
【原出願日】平成10年6月15日(1998.6.15)
【出願人】(309020976)バイエル・シエリング・フアーマ・アクチエンゲゼルシヤフト (6)
【Fターム(参考)】