説明

ニューマチックケーソン工法における減圧管理システム

【課題】 管理ミスを防止してより作業員の安全性を高めることができる、ニューマチックケーソン工法における減圧管理システムを提供すること。
【解決手段】 作業者を識別する識別情報、予め記録されている上記作業者の高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴、作業室3内の最高圧力に基づいて減圧管理情報を作業者毎に生成して報知し、マンロック10−1内の圧力と時間が上記減圧管理情報と一致しているか否かを監視し、かつ上記減圧管理情報に基づいて作業者毎に高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴を更新して管理装置11に記録する。上記作業者は圧力の経時変化を記録する携帯型端末19を携行して作業し、減圧終了後に、上記携帯型端末19に記録された圧力の経時変化と、上記管理装置11で生成した減圧管理情報と照合して実測値と理論値を比較することにより、適正な減圧プログラムが実施されたか否かを検証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニューマチックケーソン工法において高圧環境下で作業する作業員を減圧症等の健康障害から守り、安全を確保するための減圧管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーソン工法では、地上で構築して設置したケーソン躯体の作業室内の地山を、人力や遠隔操作の掘削機で掘削しながら自重で徐々にケーソンを沈下させ、目的の深さまで到達した後はケーソン躯体を基礎構造物などとする。ニューマチックケーソン工法では、掘削の際にケーソン下部に圧気可能な作業室を設け、この作業室に圧縮空気を送り込んで圧気することで地下水が作業室内へ侵入するのを防止している。このような圧気下で、作業員は種々の作業を行っている。
【0003】
したがって、高圧環境下で作業する作業員は、作業終了後に発症する減圧症等の健康障害を防ぐために、作業中に特殊な混合ガスで呼吸したり、マンロック内で段階的な減圧状態に身を置き、マンロック内を大気圧に戻さなければならない。特に、工事の大深度化等により作業室内の圧力がより高圧になると、減圧時における減圧症罹患の恐れが増大することが知られており、減圧方法の管理が重要になってきている。
【0004】
従来、ニューマチックケーソン工法における減圧管理は、減圧表(法に定められた減圧方法による高圧室内業務用時間表、および/または、医学的見地などから独自に算定された高圧室内業務用時間表)による指示と高気圧下作業に係わる本人からの自己申告により、圧力や減圧時間等を管理者が手作業で管理している。このため、自己申告漏れ、申告間違い、管理者の管理ミス等が発生する恐れがある。また、現在の作業室への入函者の把握は入函表(入場者リスト)によって行っているが、入函表の掲示してある位置まで行かないと入函者の把握ができない。
【0005】
特に、多数の作業員がそれぞれ時間差で出入りする大規模な作業現場では、減圧管理が煩雑化して管理ミスを起こしやすくなり、かつケーソン躯体の沈設によって作業室が深くなるにしたがって作業圧力も高くなるので作業員の危険性が増大する。しかも、作業者に適正な減圧プログラムが実行されたか否かを検証することが困難である。
【0006】
このような問題を回避するために、例えば特許文献1には、圧気潜函における高圧環境下での作業員の安全を一括して集中的に管理するシステムが開示されている。この特許文献1に開示されている技術は、管制室で圧気潜函のマンロックの圧力、ガス成分、作業員の状況をリアルタイムでモニタし、圧気潜函のマンロック内の圧力を自動加減圧することで、作業員の潜函内での作業時間及び潜函内の圧力に応じた減圧プログラムを実施するものである。
【0007】
しかしながら、作業員全体の減圧方法を一括して管理しているため、個人単位や同時に同一作業を行うパーティー(グループ)単位で、きめ細かく管理するのは困難である。すなわち、作業現場では多数の作業員が交代で作業しているため、各々の作業員の高気圧下の作業時の圧力、作業時間および呼吸に用いた使用ガスの履歴(高気圧下作業履歴)を把握しないと十分な安全管理ができない。また、使用したガス、あるいは、1日に1回高圧環境下で作業した作業員と複数回作業した作業員とでは、体内に溶け込んでいる窒素ガス圧が異なるため、高気圧下作業履歴と減圧履歴を考慮して異なる減圧プログラムを実施する必要がある。
【0008】
しかも、近年では、減圧をより安全かつ効率的に行うために、減圧時に酸素呼吸を行うことが不可欠になっているが、酸素は人体にとって毒性物質となり得るため、酸素分圧とその分圧での暴露時間の管理を確実に行い、必要以上の摂取を避ける必要がある。この際、酸素暴露限界は、1日当たりの許容量だけでなく、1週間に何日作業するか、あるいは1週間の合計許容量等も考慮して酸素吸入時間を設定並びに管理する必要があり、酸素暴露履歴も考慮しなければならない。このため、特許文献1に開示されているような一元的な管理では必ずしも十分に作業員の安全を確保できない、という課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−147776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のことに鑑み提案されたもので、その目的とするところは、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で過去の高圧室内業務履歴(高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴)を考慮して減圧方法を管理し、かつ所持させた携帯型端末に記録された実際の作業で受けた圧力履歴と、管理装置で生成した減圧管理情報とを照合することにより、管理ミスを防止してより作業員の安全性を高めることができる、ニューマチックケーソン工法における減圧管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明のニューマチックケーソン工法における減圧管理システムは、マンロック内に設けられ、高気圧下の作業開始時に少なくとも作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報を入力し、高気圧下の作業終了時に前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を出力する入出力手段20−1と、前記マンロック内の圧力を検出する第1の圧力検出手段22−1と、作業室内の圧気状態を検出する第2の圧力検出手段23と、前記入出力手段20−1から入力された識別情報を記録し、この識別情報、予め記録されている前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの過去の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴、および前記第2の圧力検出手段23で検出した作業室内の圧気データに基づいて減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に生成し、前記入出力手段20−1から減圧管理情報を出力して前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知し、前記第1の圧力検出手段22−1で検出したマンロック内の減圧方法が前記減圧管理情報と一致しているか否かを監視し、かつ前記減圧管理情報に基づいて前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴を更新して記録する管理装置11と、前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者によって携行され、圧力の経時変化を記録する携帯型端末19とを具備し、減圧終了後に、前記携帯型端末19に記録された圧力の経時変化を前記管理装置11に入力し、前記管理装置11で生成した前記減圧管理情報と照合することにより、減圧時の圧力および時間により指示された減圧プログラムが実施されたか否かを検証することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る本発明は、請求項1記載のニューマチックケーソン工法における減圧管理システムにおいて、前記第1の圧力検出手段22−1は、複数のマンロック内にそれぞれ設けられ、前記複数のマンロックは、異なる減圧プログラムに従って圧力と時間が制御され、前記管理装置11は、各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して各マンロックへ振り分ける指示を行う。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明では、各々の作業員の高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴を考慮して減圧プログラムを作成し、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で実施するので、被減圧者に応じたきめ細かい管理が可能になる。しかも、携帯型端末に記録された圧力の経時変化と、生成した減圧管理情報とを照合して実測値と理論値を比較することにより、被減圧者に適正な減圧プログラムが実行されたか否かを検証することができる。
【0014】
また、請求項2記載の本発明では、作業員または同時に同一作業を行うパーティーを高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴に応じた各減圧プログラムを複数のマンロックで効率的に減圧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るニューマチックケーソン工法における減圧管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用されるニューマチックケーソンの全体の概略構成を示す縦断正面図である。
【図3】本発明の実施例に係るニューマチックケーソン工法における減圧管理システムを示すもので、パーソナルコンピュータを利用したシステムの概略図である。
【図4】図3に示したシステムの管理方法を示すフローチャートである。
【図5】図3に示したシステムにおいて、マンロックへの入室時に管理装置に識別情報を入力する際の表示例を示しており、(a)図はマンロック入室者の会社名選択画面、(b)図はマンロック入室者の氏名選択画面、(c)図は確認画面である。
【図6】図3に示したシステムにおけるマンロック内のモニタの表示例を示しており、(a)図は加圧と減圧の選択の表示画面、(b)図は加圧中に示される表示画面、(c)図は減圧中に示されるグラフ表示の画面である。
【図7】図3に示したシステムにけるモニタの表示例を示しており、(a)図はマンロック内のモニタに減圧中に示される数値表の表示画面、(b)図は管理装置のモニタに表示される計測値一覧表の表示画面、(c)図は管理装置のモニタに表示される入退場情報の表示画面である。
【図8】図3に示したシステムにける管理装置のモニタの表示例を示しており、(a)図はマンロック内の圧力の経時変化をグラフ表示した画面、(b)図および(c)図は計測情報の表示画面、(d)図は減圧表のデータの表示画面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る減圧管理システムの概略構成を示すブロック図、図2は本システムが適用されるニューマチックケーソンの全体の概略構成を示す縦断正面図である。図2に示す如く、ケーソン1の下部には刃口2が形成されており、この刃口2の内面と作業室スラブ4の下面とに囲まれて作業室3が形成されている。この作業室3内には、少なくとも一以上の掘削機5−1、5−2が配置されている。作業室3の天井面から地上に向かってマテリアルシャフト7が延びており、上部にマテリアルロック8が設置される。また、作業室スラブ4の天井面から地上に向かって少なくとも一以上のマンシャフト9−1、9−2が延びており、上部にそれぞれマンロック10−1、10−2が設置されている。ここでは図示を省略するが、上記作業室3やマンロック10−1、10−2内に例えば圧縮空気を送り込んだり、排気したりする圧気設備等を装備している。
【0018】
なお、図示例では、マンロック10−1、10−2は、マンシャフト9−1、9−2の上部に設けた例について示したが、マンロック10−1、10−2は作業室スラブ4の上部に設けても良い。また、マンロック10−1、10−2の数は、小規模ケーソンの場合一つでも良い。大規模ケーソンの場合、必要数設けられる。
【0019】
さらに、ケーソン1に近接する地上には中央監視室6が設けられている。中央監視室6では、上記掘削機5−1、5−2、マテリアルシャフト7とマテリアルロック8を介した資材の搬入と掘削した土砂の搬出、マンシャフト9−1、9−2とマンロック10−1、10−2を介した作業員の入退室、マンロック10−1、10−2内での減圧、圧気設備の制御等、全体の制御と監視が行われる。
【0020】
上記中央監視室6内には、図1に示すように、減圧方法を管理する管理装置11が設けられている。この管理装置11は、減圧方法を管理するための種々の管理情報や制御情報を入力するための入力装置12と、管理者に情報を報知、あるいは用紙に印刷して記録に残すための出力装置13と、減圧方法を管理するための制御を行う制御プログラム、および種々の管理情報や制御情報を記憶する記憶装置14と、各情報を処理する処理装置15とを備えている。この処理装置15は、例えば制御装置16と演算装置17で構成される。そして、これら入力装置12、出力装置13および処理装置15が信号線18に共通接続されて相互にデータの授受が行われる。
【0021】
上記入力装置12は、例えば操作パネルや入力ポート、受信装置等で構成され、上記出力装置13は、例えばモニタやプリンタ、出力ポート、送信装置等で構成される。また、上記記憶装置14には、現在行われている作業での圧力と加圧時間、作業者の会社名、作業者名、高気圧下作業履歴、減圧履歴、酸素暴露履歴等の作業者毎の管理情報と、これらの管理情報に基づいて減圧プログラムを作成するための減圧テーブル(減圧表)や酸素暴露限界の数値データ等が記憶されている。
【0022】
また、この中央監視室6では、圧力の経時変化を記録する携帯型端末19を管理しており、マンロック10−1および/または10−2への入室時に、作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者に携行させ、退室時に回収して記録された圧力の経時変化を入力装置12で読み込み、記憶装置14に記憶させて実際に作業者が受けた圧力履歴を記録するようになっている。
【0023】
上記携帯型端末19に記録された圧力の経時変化は、当該携帯型端末19を識別する情報とともに、例えば有線により入力装置12の入力ポートに接続、あるいは無線や赤外線により入力装置12の受信装置に読み込まれる。この際、必要に応じて、例えば有線により出力装置13の出力ポートから、あるいは無線や赤外線により出力装置13の送信装置から記録された情報をリセットする。
【0024】
上記各マンロック10−1、10−2内には、作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報を入力し、減圧時の減圧方法を指示するための減圧管理情報を上記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知するための入出力装置20−1、20−2が設けられている。また、各マンロック10−1、10−2内にはそれぞれ圧力センサ22−1、22−2が設けられている。
【0025】
上記入出力装置20−1(または20−2)から、高気圧下の作業の開始時と終了時に、作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報が入力されると、この識別情報は管理装置11に供給され、入力装置12および信号線18を介して記憶装置14に記憶される。一方、高気圧下の作業の終了時には、管理装置11で生成した当該作業者または同時に同一作業を行うパーティーの減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報(減圧プログラム)が、この入出力装置20−1(または20−2)から出力される。また、上記圧力センサ22−1、22−2で検出した圧力データは管理装置11に供給され、入力装置12および信号線18を介して記憶装置14に記憶されて、処理装置15による減圧管理情報の生成や確認に用いられる。
【0026】
さらに、作業室3内には、作業室3内の圧気状態を検出する圧力センサ23が設けられており、この圧力センサ23で検出した圧力データは管理装置11に供給され、入力装置12および信号線18を介して記憶装置14に記憶されて、処理装置15による減圧管理情報の生成や確認に用いられる。
【0027】
上記のように構成された減圧管理システムにおける管理方法について説明する。作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者は、上記携帯型端末19を携行してマンロック10−1(または10−2)に入る。以降は、説明を簡単にするために一人の作業者がマンロック10−1から入室し、マンロック10−1から退室する場合を例に取る。
【0028】
まず、作業者は入出力装置20−1から識別情報を入力して管理装置11内の記憶装置14に記憶し、マンロック10−1内が作業室3内の圧力と等しくなるまで加圧する。この際、制御装置16の制御により、高気圧下の作業開始時刻も記憶装置14に記憶される。加圧の状況は、携帯型端末19では圧力データの経時変化として記録される。
【0029】
作業者は、マンロック10−1内の圧力と作業室3内の圧力が均衡した時点で、ハッチを通って作業室3に移動して高圧環境下で作業する。作業室3内の圧力の変化は圧力センサ23で検出され、入力装置12および信号線18を介して記憶装置14に作業圧力と時間が記憶されるとともに、出力装置13としてのモニタに表示され、作業室3内の環境が管理者に報知される。そして、所定の高気圧下の作業終了後、上記マンロック10−1に戻って作業者の識別情報を入出力装置20−1から入力することで管理装置11内の記憶装置14に記憶する。この際、制御装置16の制御により、高気圧下の作業終了時刻も記憶装置14に記録される。
【0030】
これによって、管理装置11による当該作業者に対する減圧プログラムの作成が開始される。上記管理装置11では、作業者が行った作業中の圧力と作業時間および呼吸に用いた使用ガスの履歴と、上記記憶装置14に予め記録されている上記作業者の過去の高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴とに基づいて、減圧テーブルや酸素暴露限界の数値データ等を参照しつつ減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を生成する。この減圧管理情報の生成は、例えば制御装置16の減圧管理用プログラムに基づく制御により、記憶装置14に記憶されている管理情報を読み出し、減圧テーブルや酸素暴露限界の数値データ等を参照し、管理情報の中から条件に合致するものを選択することで行う。あるいは、記憶装置14に記憶されている計算式に、作業者が行った作業中の圧力および作業時間と、上記作業者の過去の高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴を入力して算出することもできる。そして、演算装置17で生成した減圧管理情報に基づく減圧プログラムに従って、マンロック10−1内の減圧方法を作業者に入出力装置20−1から出力して指示する。
【0031】
作業者は、入出力装置20−1で指示された減圧方法にしたがって、マンロック10−1内で減圧する。この際、必要に応じて指示されたタイミングで酸素吸入を行う。減圧終了後、マンロック10−1から退室して、中央監視室6の管理者に携帯型端末19を返却する。管理者は、返却された携帯型端末19に記録されている圧力の経時変化を入力装置12から読み込み、生成した減圧管理情報と照合することにより、減圧時の減圧方法により指示された減圧プログラムが実施されたか否かを検証する。そして、指示された減圧プログラムが確実に実施されていない場合には、本人に通知すると共に健康状態の重点的な経過観察をし、その症状に応じて医師の指導による適切な処置を行い、減圧症等の健康障害を防止する。
【0032】
なお、上述した説明では、マンロック10−1に一人の作業員が入る場合を例に取って説明したが、他のマンロックから入っても同様な管理が可能であり、過去の高圧室内業務履歴が同じで、かつ同時に同一作業を行うパーティーの代表者に携帯型端末19を携行させることにより、複数の作業員の同時管理も可能となる。
【0033】
また、同時に同一作業を行う作業員であっても過去の高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴等が異なる場合には、複数のマンロックを異なる減圧プログラムに従って圧力と時間を制御するようにし、上記減圧プログラムに適する作業員を選択して振り分けることで効率的に減圧できる。
【0034】
上記のような減圧管理システムによれば、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で過去の高圧室内業務履歴を考慮した減圧方法を管理し、かつ携帯型端末に記録された実際の作業で受けた圧力履歴と、管理装置11で生成した減圧管理情報と照合することにより、管理ミスを防止してより作業員の安全性を高めることができる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例を、管理装置11にパーソナルコンピュータ(PC)を用い、イーサネット(登録商標)通信を利用するシステムを例にとって図3により詳しく説明する。すなわち、上述した実施形態における入力装置12として、管理用PC30のキーボード31やマウス、USB(Universal Serial Bus)ポート、無線通信ユニット、赤外線通信ユニット等を用い、出力装置13としてモニタ32やプリンタ33、USBポート、無線通信ユニット、赤外線通信ユニット等を用いる。また、記憶装置14として管理用PC30内のハードディスクや半導体メモリ、処理装置15としてCPU(Central Processing Unit)やALU(Arithmetic and Logic Unit)を対応させ、減圧管理用プログラムをインストールすることで管理装置11として機能させる。
【0036】
上記各マンロック10−1、10−2にはそれぞれ、外部にシーケンサ34−1、34−2、シリアル通信ユニット35−1、35−2および圧力計測ユニット36−1、36−2が収容されたキャビネット37−1、37−2が設けられている。上記キャビネット37−1内にはハブ(HUB)38が設けられており、管理用PC30とハブ38、ハブ38とシーケンサ34−1、ハブ38とシーケンサがそれぞれLAN(Local Area Network)ケーブル39を介して接続され、イーサネット(Ethernet)通信で結ばれている。
【0037】
上記各マンロック10−1、10−2内には高気圧下の作業開始時に少なくとも作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報、例えば作業者が属する会社名や氏名を入力し、高気圧下の作業終了時に当該作業者または同時に同一作業を行うパーティーの減圧時の減圧方法、すなわち減圧プログラムを指示する減圧管理情報を出力する入出力装置(入出力手段)として、例えばタッチパネル付きのモニタ38−1、38−2が設けられている。これらのモニタ38−1、38−2はそれぞれ、シリアル通信ユニット35−1、35−2に接続されており、タッチパネルから入力された識別情報はシリアル通信ユニット35−1、35−2、シーケンサ34−1、34−2、およびハブ38を介して管理用PC30にイーサネット通信で伝達されて記録される。
【0038】
また、上記各マンロック10−1、10−2内にはそれぞれ、圧力を検出するための圧力計(第1の圧力検出手段)40−1、40−2が設けられている。これらの圧力計40−1、40−2は、圧力計測ユニット36−1、36−2にそれぞれ接続されており、これらの圧力計測ユニット36−1、36−2で計測した圧力はそれぞれ、シーケンサ34−1、34−2、およびハブ38を介して管理用PC30にLANケーブル39を介してイーサネット通信で伝達されて記録される。
【0039】
さらに、上記作業室3内には、圧力を検出するための圧力計(第2の圧力検出手段)41が設けられている。この圧力計41で計測された圧気状態は、中央監視室6に設けた函内圧表示器42で表示されるとともに、例えばアナログ電圧のデータがデータロガー43に記録され、ディジタルデータに変換されて管理用PC30に供給されて記録される。
【0040】
つぎに、上述した減圧管理システムの管理方法について、図4のフローチャートにより詳しく説明する。作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者は、圧力の経時変化を記録する携帯型端末19を携行してマンロック10−1または10−2に入室する(STEP1)。ここでは、説明を簡単にするために一人の作業者がマンロック10−1に入る場合を例に取って説明するが、過去の高圧室内業務履歴(高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴)が同じで、かつ同時に同一作業を行うパーティーであれば同じ減圧プログラムを採用できる。
【0041】
まず、モニタ38−1のタッチパネルから作業者の識別情報を入力する。管理用PC30の制御により、例えばモニタ38−1には図5(a)に示すようにメニューとして会社名の一覧が表示されている。作業者が属する会社名にタッチするとこの情報がシリアル通信ユニット35−1、シーケンサ34−1、ハブ38およびLANケーブル39を介して管理用PC30に伝達され、図5(b)に示すように氏名の一覧が表示される。作業者が氏名にタッチするとこの情報が同様にシリアル通信ユニット35−1、シーケンサ34−1、ハブ38およびLANケーブル39を介して管理用PC30に伝達され、図5(c)に示すように会社名と氏名の確認画面が表示される。そして、「OK」がタッチされると同様にして管理用PC30に伝達され、高気圧下の作業開始時刻と作業者の識別情報である会社名と氏名が管理用PC30に記録される(STEP2)。
【0042】
続いて、モニタ38−1には図6(a)に示すように加圧か減圧かの選択画面が表示され、作業者(または管理者でも良い)が加圧を選択した後、加圧を開始する(STEP3)。携帯型端末19へは圧力の経時変化が記録される。マンロック10−1内の圧力が作業室3内と同じ圧力になるまで加圧する。加圧中は、モニタ38−1には図6(b)に示すようにマンロック内の圧力、作業室内の圧力(函内圧力)および加圧開始からの経過時間等が表示されている。
【0043】
マンロック10−1内の圧力が作業室3内と同じ圧力になると、マンロック10−1のハッチを開けて作業室3へ入って作業を行う(STEP4)。
【0044】
作業終了後、マンロック10−1に移動し(STEP5)、入室時と同様な操作を行うことにより、作業者の識別情報と高気圧下の作業終了時刻を管理用PC30に記録する(STEP6)。すなわち、モニタ38−1には図5(a)に示したように会社名の一覧が表示されており、作業者が属する会社名にタッチするとこの情報が管理用PC30に伝達され、図5(b)に示したように氏名の一覧が表示される。作業者が氏名にタッチするとこの情報が管理用PC30に伝達され、図5(c)に示したように確認画面が表示される。「OK」がタッチされると高気圧下の作業終了時刻と作業者の識別情報である会社名と氏名が管理用PC30に記録される。
【0045】
そして、管理用PC30で減圧時の減圧方法を含む減圧管理情報が作成され(STEP7)、作業者に最適な減圧プログラムがモニタ38−1を通して指示される(STEP8)。この減圧プログラムの作成にあたっては、作業者の加圧時間、作業中に圧力計40で計測した最高圧力と作業時間、予め記録されている作業者の高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴に基づいて減圧時の減圧方法を含む減圧管理情報を生成し、この生成した減圧管理情報に基づく減圧プロクラムに従ってマンロック10−1内の減圧方法を減圧管理図等を用いて作業者に指示する。また、作業者の高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴等の減圧管理情報を更新して記録する。
【0046】
上記減圧管理情報を生成する際には、体内に溶け込んでいる窒素ガス圧を考慮し、1日の作業回数や作業日数等の高気圧下作業履歴と減圧履歴に基づいて減圧プログラムを補正する。また、酸素暴露限界も考慮に入れ、1日当たりの許容量や1週間の合計許容量等も考慮して酸素吸入時間を設定並びに管理する。これによって、酸素暴露許容量(UPTD)の管理もできる。
【0047】
続いて、モニタ38−1には図6(a)に示したように加圧か減圧かの選択画面が表示され、作業者(または管理者)が減圧を選択した後、マンロック10−1内の減圧を開始する(STEP9)。マンロック10−1内の圧力と減圧方法等は中央監視室6の管理者によって、当該マンロック10−1内の圧力計40−1の圧力を測定しつつ制御される。この際、中央監視室6のモニタ32には、例えば図8(a)に示すようにマンロック圧力の経時変化を示すグラフ(減圧表のデータを破線24で示し、マンロック内の圧力を実線25で示す)、図8(b)および(c)に示すような計測情報、図8(c)に示すような減圧表などが表示される。マンロック圧力の経時変化は、減圧表のデータが破線24で、マンロック内の圧力が実線25でそれぞれ示されるように、理論値と実測値を対比して表示することにより、容易に異常を認識できるようになっている。また、計測情報としては、計測時間(最新データの計測時間)、マンロックNo(表示している経時図のマンロックの番号)、現在の状況(待機中、加圧中、減圧中等)、マンロックの圧力、函内圧力等を表示することで、管理者に減圧時の減圧方法だけでなく作業全体の状況を把握できるように各種の情報を報知し、かつ注意を喚起するようになっている。さらに、減圧表を表示することで、管理者の状況の把握を補助するようになっている。
【0048】
この減圧中、モニタ38−1では、図6(c)に示すように減圧プログラムのグラフ表示、または図7(a)に示すように減圧プログラムの数値表示が行われ、作業者により一方の表示が選択可能になっている。
【0049】
また、酸素呼吸を併用する場合には、モニタ38−1に酸素吸入開始時刻、酸素吸入時間、休止時間および酸素吸入終了時刻等の情報が表示され、作業者はこの情報に従ってマンロック10−1内のマスクを用いて酸素吸入を行う。酸素吸入を行った場合、酸素暴露履歴は管理装置11に記録並びに更新され、減圧管理情報の生成の際に用いられる。
【0050】
減圧が終了すると、終了したことがモニタ38−1に表示され、携帯型端末19で圧力データの記録が終了する(STEP10)。減圧終了後、作業者はマンロック10−1から退室し(STEP11)、中央監視室6に携帯型端末19を返却する。管理者は、作業者が携行した携帯型端末19に記録された圧力の経時変化を管理用PC30に読み込み、生成した減圧管理情報と照合し、実測値と理論値を比較することにより、減圧時の減圧方法により指示された減圧プログラムが実施されたか否かを検証する(STEP12)。そして、指示された減圧プログラムが確実に実施されていない場合には、本人に通知すると共に健康状態の重点的な経過観察をし、その症状に応じて医師の指導による適切な処置を行い、減圧症等の健康障害を防止する。このように、携帯型端末19に記録された、作業者が実際に受けた圧力およびその時間と、管理用PC30で生成して指示した減圧管理情報と比較することにより、適正な減圧プログラムが実施されたか否かを容易に検証できる。
【0051】
なお、上述した高気圧下の作業開始から減圧が終了するまでの工程において、中央監視室6内の函内圧表示器42で作業室3内の圧気状態が表示されており、モニタ32には図7(b)に示すような各マンロック内の圧力、シーケンサ34−1、34−2やデータロガー43からの各種データ等が表示されており、管理者の安全管理を補助するようになっている。また、図7(c)に示すように作業者の入退場者一覧(入函表)も表示可能になっており、作業中の作業員の把握や入出函の管理もリアルタイムでかつ容易にできる。
【0052】
さらに、必要に応じて、各種データの計測値一覧、入退場者一覧、各作業者の減圧管理情報や実施した減圧プログラム等をプリンタ33で印刷することで、人手による記録が不要となり、省力化できるとともに記録ミスも低減できる。
【0053】
上記のような減圧管理システムによれば、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で過去の高圧室内業務履歴を考慮して減圧方法を管理し、かつ携帯型端末に記録された実際の作業で受けた高気圧下作業履歴と、管理装置で生成した減圧管理情報と照合することにより、管理ミスを防止してより作業員の安全性を高めることができる。
【0054】
なお、上記実施例では作業者(または同時に同一作業を行うパーティー)を同じマンロック10−1から入退室する場合を例に取って説明した。しかしながら、大規模なニューマチックケーソンでは多数の作業員が複数のマンロックから出入りするので、複数のマンロックを異なる減圧プログラムに従って減圧方法を制御し、管理装置11で各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して各マンロックへ振り分ける指示を行うようにすれば、より効率的に減圧ができる。
【0055】
また、上記実施例では、タッチパネル付きのモニタ38−1、38−2から作業者が会社名や氏名等の識別情報を入力するようにしたが、タッチパネルに代えて入力ポート、無線通信や赤外線通信により接触または非接触でデータを読み込むデータ読み取り装置を設けても良い。そして、管理者が作業者に携帯型端末19を渡すときに、作業者を識別する識別情報、例えば会社名や氏名等を予め記憶させておき、入室時や退室時に上記データ読み取り装置で携帯型端末19に記憶された識別情報を読み込むようにすれば、入力操作を省略でき、誤入力も防止して、より簡単で確実な管理が可能になる。
【0056】
さらに、複数のマンロック10−1、10−2がある場合に、携帯型端末19に通信機能を持たせ、各マンロック10−1、10−2で異なる減圧プログラムを実施し、管理用PC30から各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して指示し振り分けるようにすれば、減圧を効率的に行うことができる。また、作業員が誤った減圧プログラムを実施しようとしている場合等にそれを携帯型端末19で報知することで作業員の安全を確保できる。もちろん、管理用PC30で作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択し、他の通信手段で指示して振り分けることもできる。
【0057】
携帯型端末19がいわゆるPDA(Personal Digital Assistant)型のものを例にとって説明したが、例えば腕時計型でも良く、圧力の経時変化を管理用PC30に読み込めるものであれば市販のダイビングコンピュータ等も流用できる。
【0058】
上述したように、本減圧管理システムによれば、管理者は減圧表による手作業での煩雑な管理が不要になり、かつ作業者毎の高気圧下作業履歴、減圧履歴、酸素暴露履歴等を考慮して減圧方法を一元管理できるので、管理ミスを防止するとともに正確な減圧方法の管理ができる。また、予め定められた減圧方法と実際の減圧方法との整合性を確認し、作業者が正しい減圧を行っているか否かの検証もできる。しかも、リアルタイムで入函者、マンロック内の圧力経時変化、計測データ、減圧表データ等を把握できる。
【0059】
また、作業者は自己申告漏れや申告間違いによる健康障害などのリスクを低減でき、安全性を向上できる。
【0060】
以上のように、本発明のニューマチックケーソン工法における減圧管理システムは、マンロック内に設けられ、高気圧下の作業開始時に少なくとも作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報を入力し、高気圧下の作業終了時に前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を出力する入出力手段20−1と、前記マンロック内の圧力を検出する第1の圧力検出手段22−1と、作業室内の圧気状態を検出する第2の圧力検出手段23と、前記入出力手段20−1から入力された識別情報を記録し、この識別情報、予め記録されている前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの過去の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴、および前記第2の圧力検出手段23で検出した作業室内の圧気データに基づいて減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に生成し、前記入出力手段20−1から減圧管理情報を出力して前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知し、前記第1の圧力検出手段22−1で検出したマンロック内の圧力と時間が前記減圧管理情報と一致しているか否かを監視し、かつ前記減圧管理情報に基づいて前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴を更新して記録する管理装置11と、前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者によって携行され、圧力の経時変化を記録する携帯型端末19とを具備し、減圧終了後に、前記携帯型端末19に記録された圧力の経時変化を前記管理装置11に入力し、前記管理装置11で生成した前記減圧管理情報と照合することにより、減圧時の圧力および時間により指示された減圧プログラムが実施されたか否かを検証することを特徴とする。
【0061】
このように本発明では、各々の作業員の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴を考慮して減圧プログラムを作成し、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で実施するので、被減圧者に応じたきめ細かい管理が可能になる。しかも、携帯型端末に記録された圧力の経時変化と、生成した減圧管理情報とを照合して実測値と理論値を比較することにより、被減圧者に適正な減圧プログラムが実行されたか否かを検証することができる。
【0062】
また、本発明の減圧管理システムにおいて、前記減圧管理情報は酸素暴露履歴をさらに含み、減圧時に前記入出力手段20−1から酸素吸入開始時刻、酸素吸入時間、休止時間および酸素吸入終了時刻が前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知される。
【0063】
これによって、減圧管理情報として酸素暴露履歴による酸素暴露限界も考慮することで、酸素呼吸を行う際の減圧をより安全かつ効率的に行うことができる。
【0064】
さらに、本発明の減圧管理システムにおいて、前記第1の圧力検出手段22−1は、複数のマンロック内にそれぞれ設けられ、前記複数のマンロックは、異なる減圧プログラムに従って圧力と時間が制御され、前記管理装置11は、各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して各マンロックへ振り分ける指示を行う。
【0065】
従って、作業員または同時に同一作業を行うパーティーを高圧室内業務履歴に応じた減圧プログラムを複数のマンロックで効率的に減圧することができる。
【0066】
さらにまた、本発明の減圧管理システムにおいて、前記携帯型端末19は、前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報が予め記憶され、高気圧下の作業開始時に前記入出力手段により前記識別情報を読み込んで前記管理装置11に記録し、高気圧下の作業終了時に前記入出力手段により前記識別情報と記録された圧力の経時変化を読み込んで前記管理装置11に記録する。
【0067】
携帯型端末に作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報を予め記憶しておき、入出力手段からこの識別情報を読み込むことで、識別情報の入力作業の簡単化が図れ、入力ミスも防止できる。
【0068】
本発明の減圧管理システムにおいて、前記携帯型端末19は通信手段をさらに具備し、前記管理装置11は、各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して各マンロックへ振り分ける指示を行う。
【0069】
携帯型端末に通信手段を持たせて指示を行うことで、各被減圧者に適した減圧プログラムを効率良く実施できる。また、被減圧者が誤った減圧プログラムを実施しようとしている場合等に、それを携帯型端末で報知することで被減圧者の安全も確保できる。
【0070】
また、本発明のニューマチックケーソン工法における減圧管理方法は、圧力の経時変化を記録する携帯型端末19を携行してマンロックに入り(STEP1)、作業者または同時に同一作業を行うパーティーの識別情報と高気圧下の作業開始時刻を管理装置11に記録して(STEP2)作業室内の圧力と等しくなるまで加圧し(STEP3)、マンロックから作業室に移動して高圧環境下で作業し(STEP4)、高気圧下の作業終了後、前記マンロックに戻って(STEP5)前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの識別情報と高気圧下の作業終了時刻を前記管理装置11に記録し(STEP6)、前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーが行った作業中の圧力および作業時間と、前記管理装置11に予め記録されている前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの過去の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴に基づいて減圧時の減圧方法を含む減圧管理情報を前記管理装置11で生成し(STEP7)、生成した減圧管理情報に基づく減圧プロクラムに従ってマンロック内の圧力と時間を前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに指示し(STEP8)、指示された圧力と時間、マンロックで減圧し(STEP9)、減圧終了後(STEP10)に、前記携帯型端末19に記録された圧力の経時変化と、生成した前記減圧管理情報とを照合して実測値と理論値を比較することにより、適正な減圧プログラムが実施されたか否かを検証する(STEP12)ことを特徴とする。
【0071】
このような本発明方法では、各々の作業員の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴を考慮して減圧プログラムを作成し、作業員単位や同時に同一作業を行うパーティー単位で実施するので、被減圧者に応じてきめ細かく管理できる。しかも、携帯型端末に記録された圧力の経時変化と、生成した減圧管理情報とを照合して実測値と理論値を比較することにより、被減圧者に適正な減圧プログラムが実行されたか否かを検証することができる。
【0072】
さらにまた、本発明の減圧管理方法において、減圧管理情報を前記管理装置11で生成した後、前記減圧管理情報に基づいて前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に高気圧下作業履歴、減圧履歴および酸素暴露履歴を更新して前記管理装置11に記録することを特徴とする。
【0073】
上記方法では、高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴を更新して管理装置に記録することで、つぎに高気圧下作業を行う際に修正された正しい高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴に基づいて適正な減圧プログラムを作成できる。
【0074】
さらに、本発明の減圧管理方法において、前記減圧管理情報は酸素暴露履歴をさらに含み、減圧時に酸素吸入開始時刻、酸素吸入時間、休止時間および酸素吸入終了時刻が前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知され、更新して前記管理装置11に記録することを特徴とする。
【0075】
このような方法では、減圧管理情報として酸素暴露履歴による酸素暴露限界も考慮することで、酸素呼吸を行う際の減圧をより安全かつ効率的に行うことができる。
【0076】
さらに、本発明の減圧管理方法において、前記管理装置11は、異なる減圧プログラムに従って圧力と時間が制御される複数のマンロックから、前記減圧プログラムに適する前記作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して振り分ける指示を行うことを特徴とする。
【0077】
上記方法では、作業員または同時に同一作業を行うパーティーを高圧室内業務履歴に応じた減圧プログラムで効率的に減圧することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 ケーソン
2 刃口
3 作業室
4 作業室スラブ
5−1、5−2 掘削機
6 中央監視室
7 マテリアルシャフト
8 マテリアルロック
9−1、9−2 マンシャフト
10−1、10−2 マンロック
11 管理装置
12 入力装置
13 出力装置
14 記憶装置
15 処理装置
16 制御装置
17 演算装置
18 信号線
19 携帯型端末
20−1、20−2 入出力装置(入出力手段)
22−1、22−2、23 圧力センサ(圧力検出手段)
30 管理用PC
31 キーボード
32 モニタ
33 プリンタ
34−1、34−2 シーケンサ
35−1、35−2 シリアル通信ユニット
36−1、36−2 圧力計測ユニット
37−1、37−2 キャビネット
38 ハブ(HUB)
38−1、38−2 モニタ
39 LANケーブル
40−1、40−2、41 圧力計
42 函内圧表示器
43 データロガー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンロック内に設けられ、高気圧下の作業開始時に少なくとも作業者または同時に同一作業を行うパーティーを識別する識別情報を入力し、高気圧下の作業終了時に前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を出力する入出力手段(20−1)と、
前記マンロック内の圧力を検出する第1の圧力検出手段(22−1)と、
作業室内の圧気状態を検出する第2の圧力検出手段(23)と、
前記入出力手段(20−1)から入力された識別情報を記録し、この識別情報、予め記録されている前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの過去の高気圧下作業履歴と減圧履歴と酸素暴露履歴、および前記第2の圧力検出手段(23)で検出した作業室内の圧気データに基づいて減圧時の減圧方法を指示する減圧管理情報を前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に生成し、前記入出力手段(20−1)から減圧管理情報を出力して前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーに報知し、前記第1の圧力検出手段(22−1)で検出したマンロック内の減圧方法が前記減圧管理情報と一致しているか否かを監視し、かつ前記減圧管理情報に基づいて前記作業者または同時に同一作業を行うパーティー毎に高気圧下作業履歴と減圧履歴および酸素暴露履歴を更新して記録する管理装置(11)と、
前記作業者または同時に同一作業を行うパーティーの代表者によって携行され、圧力の経時変化を記録する携帯型端末(19)とを具備し、
減圧終了後に、前記携帯型端末(19)に記録された圧力の経時変化を前記管理装置(11)に入力し、前記管理装置(11)で生成した前記減圧管理情報と照合することにより、減圧時の圧力および時間により指示された減圧プログラムが実施されたか否かを検証することを特徴とするニューマチックケーソン工法における減圧管理システム。
【請求項2】
前記第1の圧力検出手段(22−1)は、複数のマンロック内にそれぞれ設けられ、前記複数のマンロックは、異なる減圧プログラムに従って圧力と時間が制御され、前記管理装置(11)は、各減圧プログラムに適する作業員または同時に同一作業を行うパーティーを選択して各マンロックへ振り分ける指示を行うことを特徴とする請求項1記載のニューマチックケーソン工法における減圧管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−132179(P2012−132179A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284145(P2010−284145)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000207780)大豊建設株式会社 (77)