説明

ニューマチックパネル

【課題】ランニングコストおよび初期コストを低く抑えることができ、しかもメンテナンスが容易なニューマチックパネルを提供する。
【解決手段】2枚の膜材2aの間に空気が封入された二重膜構造の膜パネル2と、膜パネルの周縁部を保持する外周フレーム3と、膜パネルの表面に弾性力を作用させて、膜パネルの内圧に応じて膜パネルの容積を可変とすることにより、膜パネルの内圧の変動を抑制する圧力調整機構5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根ふき材等の仕上げ材、あるいは外被材として用いて好適なニューマチックパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、2枚の膜材の間に空気を封入しその周縁部をフレームで保持した構造の建築用パネルとして、ニューマチックパネルが知られている。このニューマチックパネルには、ブロア等の加圧装置を使用して膜材間に空気を送り込んで初期内圧を与えた後に、上記加圧装置との縁を切り気密状態とする密封方式のものや、例えば特許文献1に示すように、初期内圧を与えた後も上記加圧装置を切り離さずに、気圧変動等による内圧変動に対して、上記加圧装置の送風量を調整することにより一定内圧を維持する加圧方式のものが提案されている。
【0003】
しかしながら、上記密封方式のニューマチックパネルにおいては、外気圧や気温の影響を受けて内圧が変動するという問題点や、長期間に亘って気密性を維持することが難しい等の問題点があった。
一方、加圧方式のニューマチックパネルでは、外気圧や気温が変動してもパネルの内圧を一定に維持することができる反面、加圧装置を常時稼働させる必要があるため維持費用がかかり、その上、内圧を一定に保つために、圧力センサを使用した自動制御装置などが必要になることから、密封方式と比較して初期コストが格段に高くなるという問題点があった。
【特許文献1】特開昭62−137372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、ランニングコストおよび初期コストを低く抑えることができ、しかもメンテナンスが容易なニューマチックパネルを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明に係るニューマチックパネルは、2枚の膜材の間に空気が封入された二重膜構造の膜パネルと、上記膜パネルの周縁部を保持する外周フレームと、上記膜パネルの表面に弾性力を作用させて、上記膜パネルの内圧に応じて上記膜パネルの容積を可変とすることにより、上記膜パネルの内圧の変動を抑制する圧力調整機構とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のニューマチックパネルにおいて、上記圧力調整機構は、上記膜パネルの下面に沿って張り渡されたケーブルと、上記ケーブルをその一端または両端から引張って、上記ケーブルが上記膜パネルの下面を押し上げる方向に、弾性力を作用させるバネ機構とにより構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のニューマチックパネルにおいて、上記圧力調整機構は、上記膜パネルの下面に当接する押えプレートと、上記押えプレートに上方向の弾性力を付与するバネ機構と、上記バネ機構を支持する支持部材とにより構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、密封方式でありながらも、外気圧や気温の変化に伴う内圧の変動を抑制することができ、長期に亘ってほぼ一定の内圧を維持することができる。
しかも、加圧方式のように加圧装置を常時稼働させる必要がないため、ランニングコストを低く抑えることができる上に、圧力センサや自動制御装置などが不要になることから、初期コストを大幅に縮減することができる。また、上記加圧装置などの機械的な装置を用いていないため、メンテナンスも容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1の実施形態]
図1〜図6は、本発明に係るニューマチックパネルの第1の実施形態を示すもので、このニューマチックパネル1は、膜パネル2および外周フレーム3等からなるパネル本体4と、膜パネル2の内圧の変動を抑制する圧力調整機構5とにより概略構成されている。
【0010】
膜パネル2は、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)フィルム等の透明なプラスチック系フィルム材料からなる矩形状の膜材2aを2枚重ね合わせて、その周縁部を接合した二重膜構造の膜パネルで、膜材2a間には空気が封入されている。なお、膜材2a間に膜材を追加し、三重、四重とすることにより断熱性等の効果を高めることができる。
【0011】
膜材2aの隅部には、図2に示すように、給気口6が設けられ、この給気口6には開閉自在な切替バルブ7が装着されている。すなわち、この膜パネル2においては、切替バルブ7にダクト9の一端を接続して、ダクト9の他端をブロア8の吐出口に接続した状態で、切替バルブ7を開放してブロア8を作動させることにより、膜パネル2内に空気を送り込むことができる。そして、初期内圧を与えた後には、切替バルブ7を閉じてブロア8の作動を停止させることにより、ブロア8との縁を切り気密状態とすることができる。このように、本実施形態のニューマチックパネル1は、密封方式のニューマチックパネルであり、初期内圧を与えた後は、切替バルブ7からダクト9およびブロア8を取り外した状態で用いられる。なお、膜パネル2の内圧は、上記ブロア8の代わりに内圧計を取り付けることによって、或いは上記送風系統とは別に内圧確認用の系統を設けることによって、計測することが可能であり、その計測の結果、例えば内圧の低下が検出された際には、上記と同様の手順で、再度加圧することも可能である。また、膜パネル2内部へ送る空気に替えて炭酸ガスあるいはヘリウム等の気体を封入することも可能である。さらに、グラスウール等の固形材料を封入することも可能である。
【0012】
膜パネル2は、図1に示すように、その周縁部全体がファスナ10により狭持され、ファスナ10は、鉄骨等からなる外周フレーム3に取り付けられている。
外周フレーム3は、例えば図3に示すように、ジョイント部材11を介して構造部材12に取り付けられている。この図3の例では、外周フレーム3はウェブプレート3aとその両端に設けられたフランジプレート3bとにより構成され、ウェブプレート3aの一方の面(下面)がジョイント部材11の先端面に溶接等で固着されている。ウェブプレート3aの他方の面(上面)には、ファスナ10を構成する一方の定着プレート10aが固着され、その上から、他方の定着プレート10bがボルト14等で着脱自在に取り付けられている。すなわち、定着プレート10a,10b間に膜パネル2の周縁部を挟んだ状態で、定着プレート10bと外周フレーム3とをボルト14等で締結することにより、膜パネル2を外周フレーム3に装着することが可能となっている。定着プレート10a,10bと膜パネル2の間には、膜パネル2を保護するためにゴムシート15が介装されている。また、この図3の例では、ウェブプレート3a上に定着プレート10aが2つ並設されて、その各々に膜パネル2を装着することが可能となっている。
【0013】
なお、例えば図4に示すように、上部に水平面を有する構造部材12aの場合には、ジョイント部材11を用いずに、外周フレーム3を構造部材12aに直接取り付けるようにしてもよい。この図4の例では、外周フレーム3が帯状のプレート3cにより構成され、その一方の面(下面)が構造部材12aの上面に固着されている。また、ファスナ10を構成する定着部材10c,10dの各々が何れもボルト14等でプレート3cに着脱自在に取り付けられている。この場合も、図3の場合と同様に、定着部材10c,10dの間に膜パネル2の周縁部を挟んだ状態で、定着部材10c,10dどうしをボルト14で締結することにより、膜パネル2を外周フレーム3に装着することが可能となっている。
【0014】
ところで、膜パネル2は、図1および図6に示すように、内部の空気の圧力により膨らんで、上下両面とも凸状の曲面となっている。この膜パネル2の下面には、その対角線に沿って一対のケーブル20が張り渡され、両者が膜パネル2の下面中心部で交差している。各ケーブル20の端部にはそれぞれバネ機構21が設けられ、それらバネ機構21の弾性力によって、各ケーブル20が両側から引張られて膜パネル2の下面を若干持ち上げる形となっている。
バネ機構21は、例えば図5に示すように、ケーブル20を通す貫通孔22aが設けられた取付金具22と、ケーブル20の先端に取り付けられたフランジ部材23と、ケーブル20に外挿されて取付金具22とフランジ部材23との間に配置されたバネ部材24と、バネ部材24の外周部を覆うフレキシブルチューブ25とにより構成され、取付金具22がジョイント部材11または外周フレーム3に取り付けられている。本実施形態では、このバネ機構21と一対のケーブル20によって、膜パネル2の内圧の変動を抑制する圧力調整機構5が構成されている。
【0015】
この圧力調整機構5においては、常時は(例えば、気温20℃、外気圧1013hPaの条件下では)、図6(a)に示すように、ケーブル20が当接する部分に沿って、溝状の窪みD1が膜パネル2の下面に形成された状態となっている。例えば、この状態から気温が上昇するなどして、膜パネル2の内圧が上昇すると、図6(b)に示すように、ケーブル20に作用する張力が大きくなることにより、バネ部材24が伸びて、ケーブル20全体が押し出される方向(下方向)に移動する結果、その分、膜パネル2の容積が増える。これにより、膜パネル2の内圧の上昇が抑制されることとなる。
【0016】
一方、気温が下がるなどして、膜パネル2の内圧が低下すると、ケーブル20に作用する張力が小さくなることにより、バネ部材24が収縮して、ケーブル20全体が奥に押し込まれる方向(上方向)に移動する結果、上記窪みD1が深くなり、その分膜パネル2の容積が減少する。これにより、膜パネル2の内圧の低下が抑制されることとなる。
【0017】
このように、上記構成からなるニューマチックパネル1によれば、密封方式でありながらも、外気圧や気温の変化に伴う内圧の変動を抑制することができ、長期に亘ってほぼ一定の内圧を維持することができる。
しかも、加圧方式のように加圧装置を常時稼働させる必要がないため、ランニングコストを低く抑えることができる上に、圧力センサや自動制御装置などが不要になることから、初期コストを大幅に縮減することができる。また、上記加圧装置などの機械的な装置を用いていないため、メンテナンスも容易となる。
さらに、透明なプラスチック系フィルムを膜材2aに用いるようにしたので、軽量で割れる心配の無い、ガラスに代わる有効な材料として当該ニューマチックパネル1を使用することができる。
【0018】
因みに、外周フレーム3の形状を一辺の長さが約2mの正方形、ライズ(パネル中央部の膨らみ)を20cmとし、年間を通じ外気圧が930hPa(9500mmAq)から1030hPa(10500mmAq)まで100hPa(1000mmAq)変動したとき、圧力調整機構5を設けない場合(従来の密封方式の場合)には、内圧が5hPa(50mmAq)変動するが、圧力調整機構5を設けた場合には、内圧変動を2hPa(20mmAq)に抑制することが可能である。
【0019】
なお、本実施形態では、一対のケーブル20とバネ機構21とによって圧力調整機構5を構成するようにしたが、例えば、弾性を有するゴム等の伸縮自在なケーブルによって圧力調整機構を構成することも可能である。この場合、バネ機構21を省略することができる。
また、ニューマチックパネル1の取付方法としては、膜パネル2、外周フレーム3および圧力調整機構5を個別に取り付ける方法と、それらを予めユニット化したものを構造部材に取り付ける方法とがあるが、何れを採用するようにしてもよい。例えば、地組みされた構造部材に取り付けてから、構造部材ごと吊り上げる方法を採ることも可能である。また、膜パネル2の加圧は、構造部材への取付前に行うようにしても、取付後に行うようにしてもよい。
【0020】
[第2の実施形態]
図7〜図9は、本発明に係るニューマチックパネルの第2の実施形態を示すもので、上述した第1の実施形態と同一構成部分については、同一符号を付してその説明を簡略化する。
上記第1の実施形態では、膜パネル2の下面を押し上げる部材として、互いに交差する一対のケーブル20を用いるようにしたが、この第2の実施形態では、フィルム押えプレート(押えプレート)30を用いるようにしている。
【0021】
すなわち、第2の実施形態においては、図7に示すように、膜パネル2の中心部の下方にバネ機構31が配置され、当該バネ機構31が外周フレーム3の四隅から延びる支持ロッド(支持部材)32により支承されている。バネ機構31には、鉛直方向に伸縮するバネ部材33が設けられるとともに、このバネ部材33の上端部にはフィルム押えプレート30が取り付けられ、このバネ部材33の弾性力によって、フィルム押えプレート30が上方向に押圧されて膜パネル2の下面中心部を若干持ち上げるようになっている。フィルム押えプレート30は、例えば図8に示すように、円盤状に形成され、その周縁部が面取り加工されている。このフィルム押えプレート30の下面の中心部には、下方に向かってシャフト34が立設され、このシャフト34の先端部には、当該シャフト34の上方向への移動を規制する係止ブロック35が取り付けられている。一方、バネ機構31は、中心部にシャフト34を通す貫通孔36aが設けられ外周部に各支持ロッド32の先端部が接続された取付金具36と、シャフト34に外挿されて取付金具36とフィルム押えプレート30との間に配置されたバネ部材33と、バネ部材33の外周部を覆うフレキシブルチューブ37とにより構成されている。本実施形態では、これらバネ機構31、フィルム押えプレート30および支持ロッド32によって、膜パネル2の内圧の変動を抑制する圧力調整機構が構成されている。
【0022】
この圧力調整機構においては、常時は、図7(a)に示すように、膜パネル2の下面がフィルム押えプレート30に押圧されて、膜パネル2の下面の中心部に窪みD2が形成された状態となっている。例えば、この状態から気温が上昇するなどして、膜パネル2の内圧が上昇すると、図9に示すように、フィルム押えプレート30に作用する膜材2aの張力が増して、その鉛直成分が大きくなることにより、バネ部材33が収縮して、フィルム押えプレート30が押し下げられる。その結果、図7(b)に示すように、上記窪みD2が浅くなり、膜パネル2の容積が増える。これにより、膜パネル2の内圧の上昇が抑制されることとなる。
【0023】
一方、気温が下がるなどして、膜パネル2の内圧が低下すると、フィルム押えプレート30に作用する膜材2aの張力が低下して、その鉛直成分が小さくなることにより、バネ部材33が伸張して、フィルム押えプレート30が押し上げられる。その結果、上記窪みD2が深くなり、膜パネル2の容積が減少する。これにより、膜パネル2の内圧の低下が抑制されることとなる。
【0024】
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、気温や外気圧の変化に伴う膜パネル2の内圧変動を抑制することができる。なお、この第2の実施形態では、バネ機構31を支持する部材として、支持ロッド32を用いるようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、バネ機構31を膜パネル2の下方位置で支持することが可能であれば、例えばケーブル等を用いるようにしてもよい。また、第1の実施形態のように、膜パネル2の下面にその対角線に沿って一対のケーブル等を張り渡し、バネ機構31で上方向に押圧するようにすると、膜パネル2の下面のモードが変わり、より効果的に内圧変動を抑制することができる。なお、このときの上記ケーブル等にはバネやゴム機構は必要ない。
【0025】
また、以上の各実施形態では、膜材としてプラスチック系フィルム材料からなる膜材2aを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、気密性を有するものであれば、その他の材料からなる膜材を使用することも可能である。また、膜材は透明のものに限られるものではなく、例えば、上下両方とも不透明な膜材を用いるようにしたり、或いは一方に透明な膜材、他方に不透明な膜材を用いるようにしてもよい。
【0026】
また、以上の各実施形態で示したバネ機構には、ダンパーを取り付けるようにしてもよく、そうすることで、風のような短周期の変動に対しては抵抗しつつも、気圧変動や温度変動等のゆっくりとした変動に対しては適切に対応することができる圧力調整機構を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るニューマチックパネルの第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】膜パネルの加圧方法を説明するための模式図である。
【図3】図1のニューマチックパネルの取付構造を示す断面図である。
【図4】図3の変形例を示す断面図である。
【図5】図1の圧力調整機構の構成を示す断面図である。
【図6】図5の圧力調整機構の作用を説明するための模式図である。
【図7】本発明に係るニューマチックパネルの第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図8】図7の圧力調整機構の構成を示す断面図である。
【図9】図8の圧力調整機構の作用を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 ニューマチックパネル
2 膜パネル
2a 膜材
3 外周フレーム
5 圧力調整機構
21,31 バネ機構
20 ケーブル
30 フィルム押えプレート(押えプレート)
32 支持ロッド(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の膜材の間に空気が封入された二重膜構造の膜パネルと、
上記膜パネルの周縁部を保持する外周フレームと、
上記膜パネルの表面に弾性力を作用させて、上記膜パネルの内圧に応じて上記膜パネルの容積を可変とすることにより、上記膜パネルの内圧の変動を抑制する圧力調整機構とを備えることを特徴とするニューマチックパネル。
【請求項2】
上記圧力調整機構は、上記膜パネルの下面に沿って張り渡されたケーブルと、上記ケーブルをその一端または両端から引張って、上記ケーブルが上記膜パネルの下面を押し上げる方向に、弾性力を作用させるバネ機構とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のニューマチックパネル。
【請求項3】
上記圧力調整機構は、上記膜パネルの下面に当接する押えプレートと、上記押えプレートに上方向の弾性力を付与するバネ機構と、上記バネ機構を支持する支持部材とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のニューマチックパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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