説明

ニューロステロイド化合物

本発明は、神経系に作用し、抗アポトーシス特性、神経保護特性および神経原性特性を持つ新規なニューロステロイド誘導体と、それを作製する方法と、以下に限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性および網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDSおよび化学療法、脳外傷または虚血および脳卒中など、神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関係する神経変性疾患、あるいはアポトーシスに関係または起因する状態の処置および/または予防または寛解における、その応用とに関する。活性化合物は下記式(I)で表され:


式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、A、B、X、YおよびZは、本発明の説明で定義される。本発明はまた、1種以上の式(I)の化合物を含有する組成物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内分泌作用はないが、強い抗アポトーシス特性、神経保護特性および神経原性特性を持つスピロニューロステロイドアナログを含むニューロステロイド化合物と、以下に限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性および網膜剥離などの神経変性疾患の症状の処置、予防または寛解、ならびに良性健忘症、および老年認知症に見られたり、神経変性疾患に関連して見られたりする記憶障害の軽減におけるその使用とに関する。非限定的な例として、このステロイド化合物の、神経系に対する直接作用が示される。さらに、これらニューロステロイド化合物は、ニューロパチー、特に、遺伝子異常が原因の末梢神経障害および糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、化学療法、脳外傷または虚血および脳卒中の処置に適応がある。
【背景技術】
【0002】
本明細書で神経変性という語を使用した場合、それは、加齢と、以下に限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症およびハンチントン病などの神経変性障害と、脳卒中、頭部脊椎外傷とで起こる神経細胞の進行性消失をいう(Nature Rev. Mol. Cell. Biol. 1, 120 (2000))。主として、こうした疾患は、脳または末梢神経の限局された部位でのニューロンの慢性かつ進行的な消失を特徴とし、認知症、記憶喪失、感覚または運動能力の喪失、生活の質および健康状態の全体的な低下、機能障害などの衰弱性症状の原因となり、最終的に若年死を引き起こす。ほとんどの神経変性疾患では、処置法がほとんどないか、まったくないのが現状であり、せいぜい対症的性格の療法であり、疾患の進行を予防したり遅延させたりすることができない。
【0003】
本明細書でアポトーシスによる神経細胞死という語を使用した場合、それは、以下に限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病、脳卒中/外傷、多発性および筋萎縮性側索硬化症など、多くのヒトの神経障害の「終点」をいう(Trends Neurosci 28, 670 (2006))。海馬および皮質ニューロンのアポトーシス死はアルツハイマー病の症状に関与しており;神経伝達物質ドーパミンを使用する中脳ニューロンの死はパーキンソン病の根底にあり;身体の運動を制御する線条体のニューロンの死はハンチントン病に関与しており;下位運動ニューロンの死は筋萎縮性側索硬化症として現れる。さらに、脳虚血および外傷は、脳の小さな領域の壊死を引き起こし、その後、壊死細胞が放出する細胞毒物質によって、アポトーシスによる神経細胞消失が脳の大きな領域に拡がる。また、アポトーシス性の神経細胞消失は、生理的プロセスとして老化脳でも観察される。
【0004】
本明細書で天然のニューロステロイドという語を使用した場合、それは、脳で生成されるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)またはアロプレグナノロンなどのコレステロール骨格を持つ分子をいう(Proc Natl Acad Sci USA 95, 4089 (1998))。これまでの研究から、こうした天然由来の内因性ニューロステロイドは、神経栄養因子の欠乏によるアポトーシスに対してニューロンを保護しうることが明らかにされている(Proc Natl Acad Sci USA 101, 8209 (2004))。こうしたニューロステロイドの神経保護的で抗アポトーシス性の神経保護効果は、極低ナノモル濃度(1nM)で生じ、特異的膜受容体の活性化および、それに続く抗アポトーシス性のBcl−2タンパク質の生成により媒介される(FASEB J 20,577 (2006))。さらに、こうした天然のニューロステロイドはナノモル濃度で、神経保護作用があるドーパミンの分泌および生成を刺激する(Endocrinology146, 3309 (2005))。
【0005】
成人の中枢神経系(CNS)は、再生能力が非常に限られた構造であることが古くから知られている。しかしながら、虚血、癲癇および外傷など、いくつかの病態では、脳室下帯および歯状回の神経幹細胞の活性が上方制御されることが明らかになっている。こうした知見からは、成人の脳ではシグナルが存在し、限定的な神経細胞の再生が起こり得ることが示唆される。この基礎的な観察結果により我々の神経変性および脳の再生能力に対する考えが変わり、特定の脳領域を再生できるのではないかと考えた。このほど、2つの天然由来のニューロステロイド(DHEAおよびアロプレグナノロン)は、様々な実験モデルで神経発生を誘導することが明らかにされた(Proc Natl Acad Sci USA 101, 3202 (2004) and J Neurosci 25, 4706 (2005))。
【0006】
重度の神経変性疾患は有効な処置がないため、重篤な機能障害および死を招く神経機能の進行性消失を予防ないし処置できる神経保護手段の開発に大きな関心が向けられてきた。神経細胞の保護、修復および救出のための新規な化合物、神経細胞アポトーシスを標的とする新規な化合物、および生存または神経発生のための新規な化合物の開発が引き続き求められている。DHEAなどの天然のニューロステロイドは、実験動物のインビトロおよびインビボで重要な神経保護および神経原性特性を有する。しかしながら、天然由来のニューロステロイドは、ヒトでは、ホルモン依存性腫瘍など、全身性の重大な内分泌副作用を発現するエストロゲン、アンドロゲンまたはプロゲスチンに代謝され(Front Neuroendocrinol 21, 1 (2000))、したがって、臨床での使用が制限されている。
【0007】
GB1,079,840号(1966年)には、ある種のステロイドラクトン化合物の合成の中間体として3β−ヒドロキシ−17−スピロオキシラニル−アンドロスト−5−エンが開示されている。
【0008】
US3,320,242号(1967年)には、17β,20−エポキシステロイドおよびその製造方法が開示されている。17β,20−エポキシ−17α−メチルアンドロスト−5−エン−3β−オール(1)および17β,20−エポキシ−17α−メチルアンドロスト−4−エン−3−オン(2)が具体的に特許請求されている。
【0009】
【化1】

【0010】
US3,300,489号(1967年)には、ステロイドC−17スピロラクトンと、その調製方法と、調製に使用する中間体とが開示されている。以下の化合物3および4が中間体として開示されている。
【0011】
【化2】

【0012】
式中、XはC−C単結合またはメチレン基である。
US3,413,288号(1968年)およびUS3,506,652号には、下記式の、ステロイドエポキシド化合物を中間体として用いたステロイドC−17スピロラクトンの製造方法が開示されている。
【0013】
【化3】

【0014】
式中、Wがヒドロキシル基であるとき、Yは単結合を表す。
US3,365,475号(1968年)には、17α−(3’−ヒドロキシ−プロピル)−4−アンドロステン−3β,17β−ジオールの調製方法が開示されている。この化合物はアルドステロン阻害剤として有用な治療特性を有するステロイド17スピロテトラヒドロフランの調製に役立つ。
【0015】
US3,364,238号(1968年)には、3−酸素化スピロ[アンドロステン−17,1’−シクロプロプ−2’−エン]、および下記構造式で表されるその2’,3’−ジヒドロ誘導体が開示されている。
【0016】
【化4】

【0017】
式中、Rは水素でも低級アルカノイル基でもよく、R’およびR’’は水素でも低級アルキル基でもよく、点線は二重結合が任意に存在することを示す。
US4,026,918号(1977年)には、抗炎症性活性を持つとされるいくつかのD−ホモステロイドの調製が記載されている。化学中間体として(3β,11α,17α)−スピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’−オキシラン]−3,11−ジオールが開示されている。
【0018】
US4,054,563号(1977年)には、下記一般式の17−スピロ−(2’−オキサシクロペンタン)ステロイド化合物の製造方法が開示されている。
【0019】
【化5】

【0020】
式中、Rは水素原子または低級アルキル基を表し、5位に二重結合および10位にメチル基を含むか、または1,3および5(10)位に3つの二重結合を含み、9(11)位にさらに二重結合を含んでもよい。この化合物は、アルドステロンアンタゴニストの調製に有用な中間体とされている。
【0021】
WO98/33506号には、前立腺癌および良性の前立腺肥大の処置に有用とされる、アンドロゲン合成を阻害するいくつかの化合物の使用が開示されている。記載されている類似化合物の1つに17β,20β−アジリジニル−プレグン−5−エン−3β−オールがある。
【0022】
Helvetica Chimica Acta 34, 756-767 (1951)には、17,20−エポキシ−17α−アロプレグナン−3β,21−ジオールジアセテートの20α−および20β−立体異性体を形成できる反応スキームが開示されている。
【0023】
Journal of Medicinal Chemistry 10(4), 546-551 (1967)には、抗エストロゲン特性を持つステロイド化合物を調製する際の中間体として下記式5のステロイド環状エーテルが言及されている。
【0024】
【化6】

【0025】
Tetrahedron 29, 883-889 (1973)には、あるステロイド合成経路が開示されおり、その中間体は、(3β,17β)−3’−エチニルスピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’オキシラン]−3−オールアセテートおよび(3β,17β)−3’−[(トリメチルシリル)エチニル]スピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’オキシラン]−3−オールアセテートである。
【0026】
Tetrahedron 43, 631-641 (1987)には、下記式6および7の化合物およびその5α−Hアナログの調製が記載されている。
【0027】
【化7】

【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0028】
第1の態様では、本発明は、式Iの化合物およびその薬学的に許容されるエステル、塩および酸付加塩に関する。
【0029】
【化8】

【0030】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、A、B、X、YおよびZは以下の詳細な説明で定義される通りである。
別の態様では、本発明は、薬学的に許容されるキャリア、希釈液またはアジュバントと共に、活性成分としての式Iの少なくとも1種の化合物、またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩を含む組成物に関する。
【0031】
別の態様では、本発明は、神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態を予防ないし処置する方法であって、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩を、有効量患者に投与することを含む方法に関する。前記状態として、単に例示に過ぎないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症、網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、脳外傷、虚血および脳卒中のいずれかが挙げられる。
【0032】
別の態様では、本発明は、治療に使用される、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩に関する。
別の態様では、本発明は、神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態の予防ないし処置に使用される、式Iの化合物、またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩に関する。前記状態は、たとえば、上述の状態のいずれでもよい。
【0033】
別の態様では、本発明は、神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態を予防ないし処置する薬物を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩の使用に関する。前記状態は、たとえば、上述の状態のいずれでもよい。
【0034】
別の態様では、本発明は、中枢神経系および末梢神経系を含む様々な器官および組織の神経幹細胞および神経前駆細胞の増殖、分化、遊走および再生を制御するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩の使用に関する。
【0035】
別の態様では、本発明は、上皮細胞、内皮細胞、間葉系細胞、リンパ球細胞、赤血球細胞および単核細胞の増殖、分化、遊走および再生を制御するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩の使用に関する。
【0036】
別の態様では、本発明は、TrkAおよびp75NTR受容体などの神経成長因子(NGF)受容体に結合、活性化または阻害するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩の使用に関する。
【0037】
物品(article)、および所望の特徴、特性、特色に関する以下の詳細な説明と、その説明および例示的な実施形態に記載し例示する各要素およびプロセスステップの相互の関係とから、本発明の理解が深まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】アッセイ手法を用いた実験的研究における、神経冠由来のPC12細胞のアポトーシスに対するいくつかのステロイド化合物の作用を示す棒グラフである。
【図2】図2は、アッセイ手法を用いた実験的研究における、神経冠由来のPC12細胞のアポトーシスの、いくつかのステロイド化合物の濃度に対する依存性(比色計を使用して光学密度で測定)を示す複数のグラフからなる。
【図3】神経冠由来のPC12細胞のアポトーシスに対するいくつかのステロイド化合物の作用についての、FACS分析を用いた実験的研究の結果を示す。
【図4】神経冠由来のPC12細胞中の抗アポトーシス性Bcl−2タンパク質およびBcl−xlタンパク質のレベルに対する、いくつかのステロイド化合物の作用についての実験的研究の結果を示す。
【図5】ラットPC12交感神経副腎細胞から単離した膜に対するいくつかのステロイド化合物の結合についての、濃度依存性実験的研究の結果を示す。
【図6】神経冠由来のドーパミン作動性PC12細胞に対するいくつかのステロイド化合物の作用に関する実験的研究の結果を示す。
【図7】野生型マウスから生成された1次皮質神経球に対するいくつかの化合物の作用に関する実験的研究の結果を示す。
【図8】マウス胎仔脳から単離した神経前駆細胞に対する合成ニューロステロイドの、対照と比較した作用の実験的研究の結果を示す。
【図9】トランスフェクトHEK293細胞の神経成長因子に対する合成ニューロステロイドの結合能、活性化能または阻害能の実験的研究の結果を示す。
【0039】
図面のより詳細な考察は、下記の実施例7〜13に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、式Iの化合物に関する。
【0041】
【化9】

【0042】
式中
1はヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アミノカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり;
2は水素、任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルコキシアルキル、任意に置換されているアミノアルキル、シアノ、任意に置換されているシアノアルキル、任意に置換されているチオシアノアルキル、イソチオシアノ、任意に置換されているアジドアルキル、任意に置換されているアルカノイルオキシアルキル、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、任意に置換されているアリールアルケニル、任意に置換されているヘテロアリールアルケニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールキニル、任意に置換されているアリールキルアルキニル、任意に置換されているアルカノイルオキシアルキニル、任意に置換されているヘテロアリールオキシアルキニル、任意に置換されているオキソアルキニルまたはそのケタール、任意に置換されているシアノアルキニル、任意に置換されているヘテロアリールアルキニル、任意に置換されているヒドロキシアルキニル、任意に置換されているアルコキシアルキニル、任意に置換されているアミノアルキニル、任意に置換されているアシルアミノアルキニル、任意に置換されているメルカプトアルキニル、任意に置換されているヒドロキシアルキニル二酸ヘミエステルもしくはその塩、または任意に置換されているアルキニルオキシアルキニルであり;
あるいは
1は酸素であり、R2はR1に結合したアルキル基またはアルケニル基またはアルキニル基であり、任意に置換されていてもよい含酸素環を形成し;
3は水素であるか、あるいは、ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在する場合、R3は存在せず;
4は水素または低級アルキルであり;
5は水素、アミノ、任意に置換されているアルキルアミノ、任意に置換されているジアルキルアミノ、任意に置換されているアルケニルアミノ、任意に置換されているジアルケニルアミノ、任意に置換されているアルキニルアミノ、任意に置換されているジアルキニルアミノ、アミド、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルケニルオキシ、任意に置換されているアルキニルオキシアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルキニル、任意に置換されているアリール、アジド、任意に置換されているヘテロアリール、オキシム=N−O−R8、カルボキシメチルオキシム、カルボキシエチルオキシムまたはカルボキシプロピルオキシムであり;
6は水素、アミノ、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアルケニルまたは任意に置換されているアルキニルであり;
7は水素、アミノ、任意に置換されているアルキルアミノ、任意に置換されているジアルキルアミノ、任意に置換されているアルケニルアミノ、任意に置換されているジアルケニルアミノ、任意に置換されているアルキニルアミノ、任意に置換されているジアルキニルアミノ、アミド、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルケニルオキシ、任意に置換されているアルキニルオキシアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルキニル、任意に置換されているアリール、アジド、任意に置換されているヘテロアリール、オキシム=N−O−R8、カルボキシメチルオキシム、カルボキシエチルオキシムまたはカルボキシプロピルオキシムであり;
Xは原子価結合、メチレン基(−CH2−)または酸素、硫黄から選択されるヘテロ原子、または−NH、−S(O)、−SO2、−NR8、−NC(O)R8、−N−トルエン−4−スルホニルオキシであり;
Aは−(CH2n−、C2-5アルケニレン基またはC2-5アルキニレン基であり、nは整数であり、0または1または2または3または4または5の値をとることができ;
Bは−(CH2y−、C2-5アルケニレン基またはC2-5アルキニレン基であり、yは整数であり、1または2または3または4または5の値をとることができ;
Yは、ステロイド骨格のC17のスピロ環置換基の任意の炭素に結合していてもよく、独立にH、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリール、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、ホルミル、カルボキシ、−NC(O)R8、NC(S)R8、−NR89、任意に置換されているC(O)−W、任意に置換されているC(O)O−W、または任意に置換されているC(S)O−Wであり;
Zは、ステロイド骨格のC17のスピロ環置換基の任意の炭素に結合していてもよく、独立にH、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリール、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、ホルミル、カルボキシ、−NC(O)R8、NC(S)R8、−NR89、任意に置換されているC(O)−W、任意に置換されているC(O)O−W、任意に置換されているC(S)O−Wであり;
YおよびZは、C17のスピロ環置換基の同じ炭素に結合していてもよく
Wは、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されているヘテロシクロアルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているヘテロシクロアケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているヘテロシクロアルキニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているヘテロアリールであり;
8およびR9は独立に、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されているヘテロシクロアルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているヘテロシクロアケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているヘテロシクロアルキニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているヘテロアリールであり;
点線は、単結合または二重結合が存在することを示す。
【0043】
本発明はさらに、薬学的に許容されるキャリア、希釈液またはアジュバントと共に、活性成分としての式Iの少なくとも1種の化合物、またはその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩を含む組成物に関する。
【0044】
式Iの化合物およびその薬学的に許容されるエステル、塩または酸付加塩については、神経変性疾患の症状の処置、予防または寛解のために、老年性認知症に見られるか、または神経変性疾患に関連する良性の物忘れおよび記憶障害の緩和のために、いくつかの原因によるニューロパチーの処置のために、さらに脳外傷でのアポトーシスによるニューロン消失の予防のために使用することができる。処置できる状態として、単に例示に過ぎないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症、網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、虚血および脳卒中が挙げられる。
【0045】
本発明の実施形態は、上記の式I中、Xがメチレン基、酸素原子または−NHであることが好ましい。一層好ましくは、Xは酸素原子である。
また、本発明の実施形態は、上記の式I中、ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3が存在しないことが好ましい。
【0046】
さらに、本発明の実施形態は、上記の式I中、R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、R4=Meであることが好ましい。
本発明の実施形態は、上記の式I中、R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであることがより好ましい。なお一層好ましくは、式中、n=0、y=1である化合物である。
【0047】
本発明の実施形態では、その薬学的に許容されるエステル、塩および酸付加塩を含め、下記から選択される式Iの化合物であることが最も好ましい:
17β−スピロ−[5−アンドロステン−17,2’−オキシラン]−3β−オール;
(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン;
(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステン;および
3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−プレグネン。
【0048】
上記の式Iの以下の化合物はそれ自体既知であるため、本発明の範囲内に含まれない:
1)R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=1である化合物;
2)R1はヒドロキシまたはアルコキシであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R=Meであり;X=O、n=0、y=3であり;Xは17β位にある化合物;
3)3’,4’,5’,6’−テトラヒドロスピロ{アンドロスト−5−エン−17,2’−(2’H)−ピラン]3β−オール、すなわち、式Iにおいて、R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=4であり;Xは17β位にある化合物;
4)R1はヒドロキシまたはアルカノイルオキシであり;R2=R5=R6=R7=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=−CH2−であり、YおよびZは独立にHまたはC1〜C7アルキルであり、n=0、y=1である化合物;
5)R1=OAcであり;R2=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;R3はHであるか、または存在せずステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し;R4=Meであり;X=O、Y=2−ピリジル、n=0、y=1である化合物;
6)17β,20β−アジリジニル−プレグン−5−エン−3β−オール、すなわち、式Iにおいて、R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Z=Hであり;Y=CH3であり;A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=−NH−、n=0、y=1であり;Xは17β位にある化合物;
7)(3β,11α,17α)−スピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’−オキシラン]−3,11−ジオール、すなわち、式Iにおいて、R1=OHであり;R2=R5=R6=Y=Z=Hであり;R7=OHであり;A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=1であり;R1は11α位にあり、Xは、17α位にある化合物;
8)17,20−エポキシ−17α−アロプレグナン−3β,21−ジオールジアセテート、すなわち、式Iにおいて、R1=OAcであり;R2=R3=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在せず;R4=Meであり;X=O、Y=−CH2OAc、n=0、y=1である化合物;および
9)(3β,17β)−3’−エチニルスピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’オキシラン]−3−オールアセテートおよび(3β,17β)−3’−[(トリメチルシリル)エチニル]スピロ[アンドロスト−5−エン−17,2’オキシラン]−3−オールアセテート、すなわち、式Iにおいて、R1=OAcであり;R2=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、Y=−C≡CHまたは−C≡C−SiMe3、n=0、y=1であり;式中、Xは17β位にある化合物。
【0049】
こうした化合物はそれ自体既知ではあるが、それらがニューロン損傷または神経細胞死に関係した疾患もしくは状態または本明細書で言及する他の状態において使用されること、あるいはそれらと関連することについては知られていない。したがって、本発明の他の態様(組成物、方法、使用など)から、こうした化合物を排除するものではない。
【0050】
本明細書では、以下の個々の用語またはその組み合わせを以下の通り定義する。
本明細書では、「アルキル」という語は、直鎖または分枝鎖または環状飽和炭化水素基を指す。好ましいのは、C1〜C16アルキル基である。特に他に限定しない限り、アルキル基は、非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。特に他に限定しない限り、環状アルキル基は、たとえば、アダマンチル、ノルボルニルおよび関係するテルペン類のような単環式、二環式、三環式および多環式環を含む。
【0051】
本明細書では、「ヘテロシクロアルキル」という語は、1、2、3または4個のO、NまたはS原子あるいはO、N、S原子の組み合わせを含む環状炭化水素基を指し、たとえば、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ−2H−ピラニル、モルホリニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロ−2H−チオピラニルがある。特に他に限定しない限り、ヘテロシクロアルキル基は、非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。
【0052】
本明細書では、「ハロアルキル」という語は、1つ以上のハロゲンで置換されているアルキル基を指す。
本明細書では、「アルケニル」という語は、単独あるいは組み合わせて、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む直鎖または分枝鎖または環状の不飽和炭化水素基を指す。特に他に限定しない限り、アルケニル基は、非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。好ましいのはC2〜C16アルケニル基である。アルケニルは、2個の連続した二重結合を有するアレニル基を含むものとする。
【0053】
本明細書では、「ヘテロシクロアルケニル」という語は、1、2、3または4個のO、NまたはS原子あるいはO、N、S原子の組み合わせを含有し、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含む環状不飽和炭化水素基を指す。特に他に限定しない限り、ヘテロシクロアルケニル基は、非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。
【0054】
本明細書では、「アルキニル」という語は、単独あるいは組み合わせて、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖または分枝鎖または環状の不飽和基を指す。特に他に限定しない限り、アルキニル基は、非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。好ましいのはC2〜C16アルキニル基である。
【0055】
本明細書では、「アリール」という語は、単独あるいは組み合わせて、共役π電子を持つ少なくとも1個の環を含む芳香族基、炭素環式アリール基およびビアリール基を指し、これらは非置換であっても、任意の可能な位置で置換基にて単置換されていても、可能な場合には、複数置換されていてもよい。好ましいのはC2〜C10アリール基である。典型的なアリール基として、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントラシル基、インデニル基、アズレニル基、ビフェニル基、ビフェニレニル基およびフルオレニル基が挙げられる。
【0056】
「ビアリール」という語は、他のアリール基で置換されているアリール基を表す。
「炭素環式アリール」という語は、芳香族環の環原子が炭素原子である基をいう。
本明細書では、「チオ」という語は、−SR10を指し、R10は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリ、アリールアルキルまたはヘテロアリールであり、いずれも任意に置換されていてもよい。
【0057】
本明細書では、「スルフィニル」という語は、−SOR10を指し、R10は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールであり、いずれも任意に置換されていてもよい。
【0058】
本明細書では、「スルホニル」という語は、−SO210を指し、R10は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールであり、いずれも任意に置換されていてもよい。
【0059】
本明細書では、「スルホンアミド」という語は、−SO2NR1011を指し、R10およびR11は独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールであり、いずれも任意に置換されていてもよい。
【0060】
「任意に置換されている」または「置換されている」という語は、任意の可能な位置で以下に記載する置換基により置換されている基をいう。本発明に有用な上述の残基の置換基は、本発明の化合物の生物活性を大きく減弱しない基である。本発明の化合物の生物活性を大きく減弱しない置換基として、たとえば、低級アルキル(非環状および環状)、アリール(炭素環式アリールおよびヘテロアリール)、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、ニトロ、アルカノイル、アルカノイルオキシ、アルカノイルオキシアルカノイル、アルコキシカルボキシ、カルボアルコキシ、カルボキサミド、ホルミル、カルボキシ、ヒドロキシ、シアノ、アジド、イソシアノ、イソチオシアノ、オキシム、ケトおよびその環状ケタール、アルカノイルアミド、ヘテロアリールオキシ、O−アロイル、OアルキルOH、OアルケニルOH、OアルキニルOH、OアルキルNX12、OアルケニルNX12、OアルキニルNX12、NH−アシル、NH−アロイル、CF3、COOX3、SO3H、PO312、OPO312、、SO2NX12、CONX12が挙げられ、X1およびX2は各々独立にHまたはアルキルまたはアルケニルまたはアルキニルを指し、あるいはX1およびX2は共に、約4〜約7個の環原子、および任意にO、NまたはSから選択される1個の追加のヘテロ原子を持つ複素環の一部を含むか、あるいはX1およびX2は共に、約5〜6個の環原子を持つイミド環の一部を含み、X3は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロキシ−低級アルキルまたはアルキル−NX12を指す。
【0061】
本明細書では、「低級」という語は、1〜6個の炭素原子を含む有機基または化合物に関していう。こうした基は直鎖でも、分枝鎖でも、環状でもよい。
「ヘテロアリール」という語は、1、2、3または4個のO、NまたはS原子を含み、かつ1つ以上の環に非局在化している6、10または14個のπ電子を持つ5〜14員環状不飽和基を含む炭素をいい、たとえば、チエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフタ[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、2H−ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドイル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテルジニル、5aH−カルバゾイル、カルボゾイル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリンジニル、オキサゾリル、ピリミジニル、ベンズイミダゾリル、トリアゾリルがあり、各々は、上記で論じたように任意に置換されていてもよい。
【0062】
本発明はまた、酸付加塩を含め、式Iの化合物の薬学的に許容されるエステルおよび塩を含む。
当業者であれば、式Iの化合物に立体中心が存在することを認識するであろう。したがって、本発明は、混合物または純粋なジアステレオマーとして、式Iのあらゆる可能な立体異性体および幾何異性体を含む。式Iの化合物の単一のジアステレオマーが望ましい場合、最終生成物を分離するか、異性体的に純粋な出発原料あるいは任意の適切な中間体からの立体特異的合成により得ることができる。
【0063】
本明細書に定義する式Iの化合物の結晶体(たとえば、多形体)、エナンチオマー体および互変異性体およびその薬学的に許容される塩または酸付加塩は、本発明(化合物、医薬組成物、方法、使用など)の範囲内に含まれる。
【0064】
式Iの化合物は、当業者によく知られた従来の合成反応により、市販されているステロイド化合物から調製しうる。式中、Xが酸素原子である、好ましい本発明の実施形態は、適切な順序で一連の合成ステップを用いて、重要な中間体(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−21−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネンから調製することができる。前記合成ステップとしては、酸化、Wittig反応、還元、水素化、オキシム形成、ハロゲン化、炭素−炭素カップリング反応およびC3の保護基の除去があるが、これに限定されるものではない。t−ブチルジフェニルシリルオキシ以外の好適なヒドロキシル保護基を用いてもよい。以下の実施例は、好適に用いることができる調製技法の一部を説明する。
【0065】
本発明の化合物は、CNSおよび末梢神経系に作用する。本発明の医薬組成物および方法は、神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関係した神経変性疾患または障害の処置および/または予防を対象とすることが望ましい。そうした疾患または障害として、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症および筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症および網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDSおよび化学療法、脳外傷もしくは虚血および脳卒中、または中枢もしくは末梢神経系の神経細胞の変性および/またはアポトーシスを引き起こす他の任意の状態が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0066】
本明細書で使用する場合、「処置する」または「処置」という語は、被検体の神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関係した障害または疾患の任意の処置をいい、まだ障害または疾患があると診断されていない被検体に障害または疾患が発症することを予防すること、障害または疾患の発症を食い止めるなど、障害または疾患を抑制すること、障害または疾患を退行させるなど、障害または疾患を軽減すること、あるいは障害または疾患の症状を止めるなど、疾患または障害に起因する状態を緩和することが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
本発明の製剤については、以下に限定されるものではないが、経口投与、非経口投与、舌下投与、経皮投与、直腸投与または吸入投与もしくは頬粘膜投与など、上記した疾患の処置の標準的な方法で投与すればよい。加えて、本発明の組成物は、注射による非経口投与用にも持続注入用にも製剤化することができる。本発明にかかる組成物は、徐放型またはデポー製剤として製剤化してもよい。投与経路は、活性化合物が抗アポトーシス作用を発揮する所望の部位に効率的に送達されるならば、どの経路でもよい。当業者であれば、前述の説明を、被投与者に有害な影響が生じない任意の他の投与方法まで拡張しうる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、受け入れられた手順に従って、被検体、動物またはヒトにおいて所望の薬力学的活性を発揮するに足る無毒性量で、本発明の活性化合物またはそうした化合物の混合物を無毒の薬学的担体と組み合わせることで、従来の投薬単位形態で調製される。好ましくは、前記組成物は、活性量だが、無毒性量の活性成分を含み、その量は、具体的な所望の生物活性および患者の状態によって決まる。
【0069】
使用する薬学的担体は、たとえば、固体でも、あるいは、液体でもよい。代表的な固体担体には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、微結晶性セルロース、ポリマーヒドロゲルなどがある。典型的な液体担体には、プロピレングリコール、β−シクロデキストリンの水溶液、シロップ、ピーナッツ油およびオリーブ油および同種のエマルジョンがある。同様に、担体または希釈液は、グリセロールモノステアレートまたはグリセロールジステアレート単独、あるいは、ワックス、マイクロカプセル、ミクロスフェア、リポソームおよび/またはヒドロゲルとの組み合わせなど、当該技術分野で公知の任意の時間遅延材料を含んでもよい。
【0070】
固体担体の場合、製剤は、油中で単純粉砕化、微粉化またはナノサイズ化を行っても、微粉末またはペレット状のまま錠剤化しても、硬ゼラチンまたは腸溶性カプセルに加えても、あるいは、トローチ、薬用キャンディまたは坐剤の形態であってもよい。液体担体の場合、製剤は、アンプルなどの液体形態でも、薬学的に許容される防腐剤などと混合した水性または非水性液体懸濁液などの液体形態でもよい。少量の投薬量が求められる場合、鼻スプレー、舌下投与および時間放出性皮膚パッチも、局所投与に好適な医薬品形態である。
【0071】
以下に式Iのいくつかの具体的な化合物を示す。化合物の合成は、以下に記載する実施例セクションに従って行った。これらの実施例は、本発明の理解を深めるために記載するものであり、いかなる意味でも本発明の範囲を限定するものとみなしてはならない。
【0072】
1)17β−スピロ−[5−アンドロステン−17,2’−オキシラン]−3β−オール(「BNN−50」)
2)(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン(「BNN−124」)
3)(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステン
4)3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−プレグネン(「BNN−93」)。
【実施例】
【0073】
1H NMRスペクトルは、Bruker AC300分光計を用いて300MHzで記録し、13Cについては、75.43MHzで記録した。1H NMRスペクトルは、7.24ppmの内部CHCl3と比較したδ単位で報告してある。13C NMRシフトは、77.0ppmのCDCl3と比較したδ単位で表してある。13C NMRスペクトルは、プロトンノイズデカップリングを行った。NMRスペクトルはすべてCDCl3中で記録した。シリカゲルプレート(Merck F254)を薄層クロマトグラフィーに用いた。クロマトグラフィー精製は、シリカゲル(200〜400メッシュ)で行った。
【0074】
[実施例1]
17β−スピロ−[5−アンドロステン−17,2’−オキシラン]−3β−オールの調製
【0075】
【化10】

【0076】
無水DMF(10mL)に溶かしたデヒドロエピアンドロステロン(500mg、1.73mmol)の溶液に、ヨウ化トリメチルスルホニウム(530mg、2.60mmol)およびt−BuOK(292mg、2.60mmol)を0℃で加え、得られた混合液を室温で2時間撹拌した。反応の終了後、水を加え、得られた混合液をジエチルエーテルで抽出した。有機層をかん水で洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル40°〜60℃/アセトン8:2)で精製して、実施例1の化合物を白色結晶性固体として得た。収量:310mg(59%);m.p.170〜173℃;
【0077】
【数1】

【0078】
1H NMR(CDCl3)δ:5.35(s,1H,6−CH),3.47−3.54(m,1H,3a−H),2.89(d,J=4.88Hz,1H),2.59(d,J=4.88Hz,1H),2.2−0.9(m,20H),1.00(s,3H,18−CH3),0.88(s,3H,19−CH3),13C NMR(CDCl3)δ:14.14,19.38,20.41,23.58,28.99,31.35,31.54,31.99,33.84,36.59,37.23,39.89,42.18,50.14,53.12,53.63,70.52,71.59,121.21,140.88。
【0079】
[実施例2]
(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネンの調製
17α−ビニル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオール
【0080】
【化11】

【0081】
無水テトラヒドロフラン(7mL)に溶かしたデヒドロエピアンドロステロン(250mg、0.87mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミドの溶液(テトラヒドロフランに溶解しており、1Μ、4.35mL、4.35mmol)を−78℃で滴下して加え、得られた混合液を室温で12時間撹拌した。反応の終了後、飽和塩化アンモニウムを加え、得られた混合液を酢酸エチルで抽出した。有機層をかん水で洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン/アセトン9:1)で精製して、17α−ビニル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオールを白色結晶性固体として得た。
収量:200mg(74%);m.p.180〜183℃;1H NMR(CDCl3)δ:6.01(q,J=10.99Hz,1H),5.31(s,1H,),5.09(t,J=10.99Hz,2H),3.47−3.51(m,1H,3a−H),1.18−2.48(m,21H),0.99(s,3H),0.90(s,3H);13C−NMR(CDCl3)δ:13.95,19.38,20.64,23.65,31.61,32.09,32.58,36.14,37.24,42.22,46.10,49.95,50.31,71.69,84.18,111.87,121.31,140.82,143.02。
【0082】
3β,17β−ジヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステン
【0083】
【化12】

【0084】
無水ジクロロメタン(5mL)に溶かした17α−ビニル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオール(150mg、0.47mmol)の溶液に、バナジウムアセチルアセトネート(2.5mg、0.01mmol)および70%t−ブチルヒドロペルオキシド(0.14mL、0.94mmol)を−10℃で連続的に加えた。得られた混合液を0℃で12時間撹拌した。反応の終了後、この混合液をジクロロメタンで希釈し、有機層をH2O、飽和Na2SO3およびかん水で抽出してから、無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル6:1)で精製して、3β,17β−ジヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステンを白色結晶性固体として得た。収量:50mg(32%);m.p.165〜168℃;
【0085】
【数2】

【0086】
1H NMR(CDCl3)δ:5.35(s,1H),3.08(t,J=4.27Hz,1H),2.87(q,J=3.05Hz,1H),2.76(d,J=3.05Hz,1H),1.24−2.29(m,19H),1.02(s,3H3),0.92(s,3H);13C NMR(CDCl3)δ:13.91,19.38,20.54,24.04,31.61,32.38,36.01,36.59,37.27,42.22,43.19,45.48,50.11,51.44,51.79,54.83,56.22,71.69,79.68,121.24,140.81。
【0087】
(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン
【0088】
【化13】

【0089】
無水MeOH(2mL)に溶かした3β,17β−ジヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステン(40mg、0.12mmol)の溶液に、K2CO3(41mg、0.3mmol)を加え、得られた混合液を室温で12時間撹拌した。反応の終了後、この混合液を酢酸エチルで希釈し、有機層をH2Oおよびかん水で抽出し、次いで無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧蒸発させ、残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル3:1)で精製して、(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−アンドロステンを白色結晶性固体として得た。収量:32mg(80%);
【0090】
【数3】

【0091】
1H NMR(CDCl3)δ:5.28(s,1H),3.63(q,J=4.27Hz,1H),3.40−3.49(m,2H),3.12(q,J=3.66Hz),1.36−2.21(m,21H),0.95(s,3H),0.81(s,3H)。
【0092】
[実施例3]
(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステンの調製
3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−5−アンドロステン−17−オン
【0093】
【化14】

【0094】
乾燥DMF(20mL)に溶かしたデヒドロエピアンドロステロン(1g、3.47mmol)の溶液にイミダゾール(591mg、8.981mmol)を0℃で加えた。得られた混合液を30分間撹拌し、t−ブチル−ジフェニルシリルクロリド(2.22mL、8.681mmol)を加え、反応液を50℃で一晩撹拌した。反応の終了後、20mLの飽和NH4Clを加え、得られた混合液を30分間撹拌し、溶媒を減圧蒸発させた。残留物に酢酸エチルを加え、有機層をH2Oおよびかん水で抽出し、次いで無水Na2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧蒸発させ、残留物を40〜60℃のEtOH/石油エーテルで再結晶した。この固体を濾過してから、母液をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン/EtOAc95:5)で精製した。収量:1282mg(70%);1H NMR(CDCl3)δ:7.80−7.74(m,4H),7.42−7.40(m,6H),5.22(bs,1H),3.62(bs,1H),2.50−0.90(m,19H),1.14(s,9H),1.07(s 3H),0.89(s,3H)。
【0095】
3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17α−ビニル−5−アンドロステン−17β−オール
【0096】
【化15】

【0097】
乾燥THF(30mL)に溶かした3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−5−アンドロステン−17−オン(861mg、1.635mmol)の溶液に、THFに溶かしたビニルマグネシウムブロミド1Mの溶液(16.35mL、16.35mmol)を−78℃で滴下して加えた。混合液を−20℃で2時間、次いで室温で一晩撹拌した。飽和NH4Cl(25mL)を反応槽に流し込み、この混合液を30分間撹拌し、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン/EtOAc95:5)で精製して、3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17α−ビニル−5−アンドロステン−17β−オールを収率60%で得た。
【0098】
1H NMR(CDCl3)δ:7.67−7.65(m,4H),7.39−7.25(m,6H),6.00(dd,J=10.98,17.70Hz,1H),5.14−5.05(m,3H),3.50−3.46(m,1H),2.32−0.87(m,19H),1.05(s,9H),0.99(s 3H),0.88(s,3H)。
【0099】
3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステン
【0100】
【化16】

【0101】
乾燥ジクロロメタン(3.7mL)に溶かした3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17α−ビニル−5−アンドロステン−17β−オール(191mg、0.345mmol)の溶液に、VO(acac)2(1.95mg、0.021当量)および0.2936mLのt−BuOOH(0.69mmol、1,2−ジクロロエタンに溶かした約2.35M溶液)を−10℃で連続的に加えた。この反応混合液を0℃で一晩撹拌し、次いで15mLのジクロロメタンで希釈し、水、Na2SO3およびかん水(1×10mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル:ジエチルエーテル95:5)で精製して、3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステンを得た。収量:127mg(65%);1H NMR(CDCl3)δ:7.73−7.69(m,4H),7.43−7.36(m,6H),5.17−5.15(m,1H),3.59−3.53(m,1H),3.09−3.07(m,1H),2.89−2.87(m,1H),2.76−2.73(m,1H),2.42−2.34(m,1H),2.21−0.84(m,18H),1.09(s,9H),1.04(s,3H),0.93(s,3H)。
【0102】
(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−21−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン
【0103】
【化17】

【0104】
乾燥MeOH:乾燥THF(1.5:1.5mL)の混合液に溶かした3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステン(51mg、0.0894mmol)の溶液に、K2CO3(31mg、0.2235mmol)を室温で加えた。この反応混合液を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAc(5mL)で希釈し、水およびかん水で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン:EtOAc8:2)で精製して(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−21−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−アンドロステンを収率80%で得た。
【0105】
1H NMR(CDCl3)δ:7.69−7.65(m,4H),7.42−7.33(m,6H),5.13−5.12(m,1H),3.76(dd,J=3.66,12,20Hz,1H)3.58−3.49(m,2H),3.17(dd,J=4.27,6.71Hz,1H),2.37−2.29(m,1H),2.17−2.11(m,1H),1.99−0.81(m,17H),1.05(s,9H),0.99(s 3H),0.85(s,3H)。
【0106】
(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β,20−エポキシ−5−アンドロステン−21−カルボキシアルデヒド
【0107】
【化18】

【0108】
乾燥ジクロロメタン(5mL)に溶かした3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−21−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−アンドロステン(51mg、0.0894mmol)の溶液に、デス−マーチンペロジナン(Dess-Martin Perodinane)(75.8mg、0.1782mmol)を0℃で加えた。この混合液を室温で1時間撹拌した。反応混合液をジエチルエーテル(10mL)で希釈し、飽和NaHCO3:飽和Na223 1:2の混合液(10mL)、飽和NaHCO3(10mL)およびかん水(10mL)で洗浄した。有機層を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン:EtOAc9:1)で精製して(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β,20−エポキシ−5−アンドロステン−21−カルボキシアルデヒドを得た。収量46.6mg(98%)。1H NMR(CDCl3)δ:9.26(d,J=5.49Hz,1H),7.69−7.67(m,4H),7.42−7.34(m,6H),5.14−5.12(m,1H),3.56−3.51(m,1H),3.33(d,J=4.88Hz,1H),2.37−2.29(m,1H),2.18−0.86(m,18H),1.06(s,9H),0.99(s 3H),0.91(s,3H)。
【0109】
3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−17α−(1,3,3−トリブロモアリル)−5−アンドロステン
【0110】
【化19】

【0111】
乾燥ジクロロメタン(2mL)に溶かした(20S)−3β−(t−ブチルジフェニル−シリルオキシ)−17β,20−エポキシ−5−アンドロステン−21−カルボキシアルデヒド(45mg、0.0792mmol)の溶液に、Ph3P(113.8mg、0.434mmol)を0℃で加えた。0℃で10分間撹拌した後、CBr4(70.78mg、0.213mmol)を加えた。この反応混合液を0℃で1時間撹拌した後、水(1mL)を加えた。反応混合液をジクロロメタンで抽出し、有機層を無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン:EtOAc98:2)で精製して3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−17α−(1,3,3−トリブロモ−アリル)−5−アンドロステンを得た。
【0112】
収量32.8mg(52%);1H NMR(CDCl3)δ:7.68−7.66(m,4H),7.41−7.36(m,6H),7.08(d,J=9.77Hz,1H),5.11(bs,1H),4.85(d,J=10.37Hz,1H),3.52(bs,1H),2.43−0.87(m,19H),1.06(s,9H),0.99(s 3H),0.95(s,3H)。
【0113】
(20S)−3β−(t−ブチルジフェニルシリルオキシ)−17β,20−エポキシ−20−(2,2−ジブロモビニル)−5−アンドロステン
【0114】
【化20】

【0115】
乾燥THF(1mL)に溶かした3β−(t−ブチルジフェニル−シリルオキシ)−17β−ヒドロキシ−17α−(1,3,3−トリブロモ−アリル)−5−アンドロステン(32.8mg、0.04136mmol)の溶液に、TBAF(THFに溶かした1M溶液0.08271mL、0.08271mmol)を0℃で加えた。0℃で1分間撹拌した後、この温度で反応液に水(2mL)を加えた。反応混合液をジエチルエーテルで抽出し、有機層を無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物は、さらに次の反応に用いるのに十分に純粋であった。収量:30mg(定量的);1H NMR(CDCl3)δ:7.69−7.65(m,4H),7.44−7.33(m,6H),6.19(d,J=6.71Hz,1H),5.14−5.12(m,1H),3.75(d,J=6.71Hz,1H),3.59−3.47(m,1H),2.38−2.29(m,1H),2.16−2.10(m,1H),1.99−1.92(m,1H),1.79−0.85(m,16H),1.05(s,9H),0.99(s 3H),0.85(s,3H)。
【0116】
(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステン
【0117】
【化21】

【0118】
乾燥THF(1mL)に溶かした(20S)−3β−(t−ブチルジフェニル−シリルオキシ)−17β,20−エポキシ−20−(2,2−ジブロモビニル)−5−アンドロステン(30mg、0.04212mmol)の0℃の溶液に、THFに溶かしたTBAFの1M溶液(0.08424mL、0.08424mmol)を加えた。反応液を室温で10時間撹拌し、水を加えた。この反応混合液をジエチルエーテルで抽出し、有機物を無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン:EtOAc98:2)で精製して(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステンを得た。収量:18mg(定量的);1H NMR(CDCl3)δ:5.37(bs,1H),3.60−3.46(m,1H),3.47(s,1H),2.38−0.86(m,19H),1.02(s,3H),0.89(s,3H)。
【0119】
[実施例4]
3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−プレグネンの調製
(3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−イリデン)−アセトニトリル
【0120】
【化22】

【0121】
乾燥THF(5mL)に溶かしたt−BuOK(4.14mmol、465mg)の0℃の溶液に、ジエチルシアノメチルホスホネート(2.76mmol、0.44mL)を加え、反応液を1時間撹拌した。上記混合液に、乾燥THF(5mL)に溶かしたDHEA(0.69mmol、200mg)の溶液を滴下して加え、反応が終了するまでこの混合液を室温で撹拌した。飽和NH4Clを添加して反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、有機層をかん水で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル:EtOAc6:4)で精製して上記の化合物を得た。収量:175mg(81.5%)。1H NMR(CDCl3)δ:5.28(bs,1H),5.06(s,0.3H),4.96(s,0.7H),3.49−3.41(m,1H),2.7−0.9(m,19H),0.99(s,3H),0.91(s),0.79(s,3H)。13C NMR(CDCl3)δ:180.9,179.2,141.1,140.9,120.9,120.8,117.4,116.6,87.9,87.8,71.3,60.4,55.2,54.1,49.9,46.4,45.9,42.1,37.2,36.5,34.5,32.4,31.5,31.4,30.2,23.8,20.8,20.7,19.4,17.7,16.6。
【0122】
(3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−イリデン)−アセトアルデヒド
【0123】
【化23】

【0124】
乾燥ジクロロメタン(15mL)に溶かした3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−イリデン)−アセトニトリル(150mg、0.48mmol)の溶液に、DIBAL−H(ジクロロメタンに溶解しており、1M、1.44mmol)の溶液を−78℃で加え、この反応混合液を−78℃で30分および室温で5時間撹拌した。反応混合液をジクロロメタンで希釈し、Na−K酒石酸溶液を加えた。有機層をかん水で抽出し、無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル:アセトン8:2)で精製して上記化合物を得た。収量:151mg(93%)。
【0125】
1H NMR(CDCl3)δ:10.02(d,J=8.54Hz,0.63H),9.74(d,J=7.93,0.37H),5.74−5.71(m,0.63H),5.67−5.64(m,0.37H),5.25−5.21(m,1H),3.44−3.39(m,1H),2.89−0.93(m,19H),0.99(s)および0.93(s)および0.78(s)(3つはすべて6H);13C NMR(CDCl3)δ:192.4,190.7,180.5,179.4,140.9,124.0,120.8,119.3,71.2,65.0,55.6,53.3,50.1,49.4,46.9,46.3,42.0,38.6,37.1,36.6,36.5,36.4,34.7,33.5,31.5,31.3,27.7,24.3,23.9,21.3,20.8,19.3,18.8,17.8。
【0126】
17−(2−ヒドロキシ−エチリデン)−5−アンドロステン−3β−オール
【0127】
【化24】

【0128】
MeOH(2.5mL)に溶かした3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17−イリデン)−アセトアルデヒド(0.24mmol、75mg)の溶液に、CeCl3−7H2O(0.24mmol、89mg)およびNaBH4(0.24mmol、10mg)を連続的に加えた。反応の終了後、飽和NH4ClをpH7まで加えた。この混合液を酢酸エチルで希釈し、有機層をかん水で抽出し、無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル:アセトン8:2)で精製して上記化合物を得た。収量:70mg(92%)。
【0129】
1H NMR(CDCl3)δ:5.36−5.24(m,2H),4.33−3.99(m,2H),3.42−3.39(m,1H),2.4−0.9(m,19H),1.02(s)および0.94(s)(共に3H),0.90(s)および0.77(s)共に3H。
【0130】
3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−プレグネン
【0131】
【化25】

【0132】
乾燥ジクロロメタン(2.2mL)に溶かした17−(2−ヒドロキシ−エチリデン)−5−アンドロステン−3β−オール(0.22mmol、70mg)の溶液に、K2CO3(0.26mmol、36mg)および55%m−クロロ過安息香酸(0.22mmol、61mg)を加え、反応が終了するまでこの混合液を室温で撹拌した。固体を濾別し、濾液を減圧蒸発させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル:酢酸エチル1:1)で精製して上記化合物を収率75%で得た。
【0133】
1H NMR(CDCl3)δ:5.36−5.34(m,1H),3.90−3.53(m,3H),3.15−3.11(m,1H),2.4−0.9(m,19H),0.99(s,3H),0.83(s,3H)。
【0134】
[実施例5]
3β,22−ジヒドロキシ−17β,21−オキセタニル−5−プレグネンの調製
17α−アリル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオール
【0135】
【化26】

【0136】
無水テトラヒドロフラン(4mL)に溶かした3β−アセチル−5−アンドロステン−17−オン(200mg、0.6mmol)の溶液に、アリルマグネシウムブロミド(テトラヒドロフランに溶解しており、1.7Μ、3.52mL、6mmol)の溶液を0℃で滴下して加え、得られた混合液を室温で12時間撹拌した。反応の終了後、飽和アンモニウムクロリドを加え、得られた混合液を酢酸エチルで抽出した。有機層をかん水で洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:シクロヘキサン/酢酸エチル85:15)で精製して、17α−アリル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオールを白色結晶性固体として得た。収量:190mg(95%)。
【0137】
3β,17β−ジヒドロキシ−21,22−エポキシ−5−アンドロステン
【0138】
【化27】

【0139】
無水ジクロロメタン(6mL)に溶かした17α−アリル−5−アンドロステン−3β,17β−ジオール(190mg、0.57mmol)の溶液に、バナジウムアセチルアセトネート(6.6mg、0.025mmol)および70%t−ブチルヒドロペルオキシド(0.74mL、1.7mmol)を−10℃で連続的に加えた。得られた混合液を0℃で12時間撹拌した。反応の終了後、この混合液をジクロロメタンで希釈し、有機層をH2O、飽和Na2SO3およびかん水で抽出し、次いで無水Na2SO4で乾燥させてから、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル6:1)で精製して、3β,17β−ジヒドロキシ−20,21−エポキシ−5−アンドロステンを白色結晶性固体として得た。収量:69mg(35%);1H NMR(CDCl3)δ:5.35(bs,1H),3.53(m,1H),3.26(m,1H),2.84−2.97(m,1H),2.52−2.49(m,1H),2.28−1.01(m,H),1.02(s,3H),0.90および0.89(s,3H)。
【0140】
3β,22−ジヒドロキシ−17β,21−オキセタニル−5−プレグネン
【0141】
【化28】

【0142】
無水塩化メチレン(12mL)に溶かした3β,17β−ジヒドロキシ−21,22−エポキシ−5−アンドロステン(40mg、0.12mmol)の溶液に、p−TsOH(0.6mmol、114mg)を加え、得られた混合液を室温で12時間撹拌した。反応の終了後、固体を濾過で除去し、濾液を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製して目的の17−スピロ−オキセタン誘導体を得た。
【0143】
[実施例6]
17β−スピロ−[3β−ヒドロキシ−5−アンドロステン−17,2’−オキシラン−7−イリデンアミノオキシ]−酢酸の調製
【0144】
【化29】

【0145】
無水DMF(0.5mL)に溶かしたデヒドロエピアンドロステロン−7−カルボキシメチルオキシム(20mg、0.052mmol)の溶液に、ヨウ化トリメチルスルホニウム(32mg、0.16mmol)およびt−BuOK(18mg、0.16mmol)を0℃で加え、得られた混合液を室温で10時間撹拌した。反応の終了後、水を加え、この溶液を希HClでpH5まで酸性化し、得られた混合液をジクロロメタンで抽出した。有機層をかん水で洗浄し、次いで無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧蒸発させた。残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:石油エーテル40°〜60℃/アセトン8:2)で精製して表題の化合物を得た。
【0146】
[実施例7]
神経冠由来のPC12細胞を、血清除去により惹起された細胞アポトーシスから保護するための、合成スピロニューロステロイドの使用
方法
神経冠由来のPC12細胞を、5%CO2、37℃で、2mMのL−グルタミン、15mMのHEPES、100単位/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、10%ウマ血清および5%ウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地を用いて培養維持した。無血清培地に1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充した。様々な濃度で使用した複数のステロイドを、エタノールを用いて最初に希釈した。対照を含む各ウェルのエタノールの最終濃度は0.01%とした。コンジュゲートDHEA−BSAをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で最初に希釈した。
【0147】
細胞を血清の非存在下で12時間培養し、DHEAおよび10nMの様々な合成スピロニューロステロイドを補充した。細胞アポトーシスを以下の2通りの方法を用いて定量した。APOPercentageアポトーシスアッセイ(Biocolor社、Belfast、北アイルランド)を用いて、製造業者の指示書に従いアポトーシスを定量した。細胞溶解後に、カラーフィルターマイクロプレート比色計(Dynatech MicroElisa reader、Chantilly、バージニア州)を用いて550nm(参照フィルター620nm)でアポトーシス細胞に取り込まれた色素を測定して、アポトーシスを定量した(図1および図2を参照)。FACS分析:アポトーシス細胞のFACS分析を、我々のプロトコル(Proc Natl Acad Sci USA 101,8209 (2004))に従い行った。FACScan(Becton Dickinson、Heidelberg、ドイツ)を用いてフローサイトメトリーを行い、結果をFACScanおよびCell Questソフトウェアで解析した(図3を参照)。
【0148】
ApoPercentageアッセイ(図1)に示すように、血清の非存在下でのPC12細胞の培養では、血清を補充した細胞培養に比べてアポトーシスが強く誘導された。DHEA、非透過性DHEA−BSAコンジュゲートおよびスピロニューロステロイドは、血清除去により惹起されたアポトーシスをほぼ50%抑制し、アポトーシスからPC12細胞を保護し、そのIC50は0.15nMであった(図2)。また、合成17−スピロニューロステロイドも強力な抗アポトーシス作用による細胞保護効果を示し、BNN−50、BNN−93およびBNN−124のIC50はそれぞれ0.088、4.16および68.4nMであった(図2)。合成スピロニューロステロイドの抗アポトーシス作用はFACS分析でも確認された(図3)。
【0149】
[実施例8]
神経冠由来のPC12細胞中で、神経保護効果がある抗アポトーシス性のBcl−2タンパク質を誘導することによる、合成スピロニューロステロイドの神経保護・抗アポトーシス作用に関する研究
方法
神経冠由来のPC12細胞を、10nMの様々なニューロステロイドを補充し、血清の非存在下で8時間培養した。インキュベーションの終了時に、細胞のライセートを12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかけた。次いで、タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、それを標準的なウエスタンブロット手順に従い処理した。タンパク質レベルを検出するため、膜を適切な抗体、Bcl−2(Santa Cruz Biotechnology社、Santa Cruz、カリフォルニア州、希釈度1:100)、Bcl−xL(Cell Signalling Technology社、Beverly、マサチューセッツ州、希釈度1:100)とインキュベートした。PCベースの画像解析プログラムを用いて各バンドの強度を定量した(Image Analysis社)、Ontario、カナダ)。タンパク質量を標準化するため、ブロットを剥がし、抗アクチン抗体(Chemicon、Temecula、カリフォルニア州、希釈度1:400)で染色し、各標的タンパク質の濃度をアクチンに対して標準化した。
【0150】
こうした実験の結果を図4に示す。PC12細胞の血清除去(SF)により、抗アポトーシス性のBcl−2およびBcl−xLタンパク質のレベルが強く抑制された。DHEAと、3種類のすべての合成スピロニューロステロイド(BNN−50、BNN−93およびBNN−124)とはこの作用を阻止し、12時間で早くもタンパク質レベルが血清補充のレベル(S)と同程度になった。
【0151】
[実施例9]
DHEA特異的膜受容体への結合後における合成スピロニューロステロイドの神経保護的・抗アポトーシス性作用に関する研究
方法
ラットPC12交感神経副腎細胞を225cm2のフラスコで培養し、PBSで2回洗浄した後、激しく振盪してフラスコから剥離させた。1500gで遠心分離後、この細胞を、新たに加えたプロテアーゼ阻害剤(1mMのPMSFおよび1μg/mlのアプロチニン)を含むpH7.4、4℃の50mMトリス−HCl緩衝液中で超音波処理によりホモジナイズした。破砕されなかった細胞を1500gで遠心分離(4℃で10分)により除去し、102,000g、4℃で1時間遠心して膜を回収した。膜をトリス−HClで1回洗浄し、50mMのグリシン(pH5.0)で4℃にて短時間(3分間)で酸性化させ、同じ緩衝液に再懸濁した。タンパク質量をBio−Rad(Hercules、カリフォルニア州)社製の試薬を用いてBradford法でアッセイした。10-12〜10-6Mの様々な濃度で最終容量を100μlとした、トリス−HCl緩衝液(50mM、pH7.4)に加えた非標識のニューロステロイドおよびその合成スピロアナログの非存在下(全結合量の判定のため)または存在下で、膜(最終濃度2mg/ml)を5nMの[3H]DHEAとインキュベートした。水浴中にて37℃で30分インキュベーションした後、4℃の0.5%PEI溶液で予め湿らせたGF/Bフィルターで膜を回収した。フィルターを氷冷トリス−HClで3回洗浄し、乾燥させ、シンチレーション媒体(Sigma Hellas、Athens、ギリシャ)を補充し、β−シンチレーションカウンター(Perkin Elmer、Foster City、カリフォルニア州)でトリチウムの効率(efficiency)を60%としてカウントした。
【0152】
結果を図5に示す。非標識のDHEAは、単離したPC12細胞膜に結合している[3H]DHEAに対して競合し、そのKは1.1nMであった。1μMでは、ほぼ完全に競合した(図5)。合成スピロニューロステロイドBNN−50、BNN−93およびBNN−124では、顕著な置換(1μMの特異的結合の約60%)が実証され、見かけのKDはそれぞれ0.016、11.2および0.33nMであったことから、3種の合成ニューロステロイドはどれも膜DHEA結合と強く相互作用すると考えられる。
【0153】
[実施例10]
合成スピロニューロステロイドを用いて、神経冠由来ドパミン作動性細胞からのドーパミンの産生および分泌を刺激する研究
方法
神経冠由来のドパミン作動性PC12細胞を、106細胞/ウェルの濃度で、ポリ−L−リジンでコーティングした6ウェルプレート中で増殖させた。細胞をニューロステロイドまたはビヒクルと複数の時間枠でインキュベートした。短時間の実験のインキュベーション時間は5〜30分とし、長時間の場合は、3〜48時間とした。1mLの上清を、ドーパミン測定のため0.1MのHCl200μlを含むチューブに移し、125Iをトレーサーとしてラジオイムノアッセイ(TriCat(商標)RIA、RE29395、IBL Immuno Biological Lab.、Hamburg、ドイツ)で測定した。この方法の分析感度は30pg/mlであり、そのアッセイ内CVは9.5%で、そのアッセイ間CVは16.7%であった。ドーパミンとノルエピネフリンとの交差反応性は、<0.013%であった。
【0154】
チロシンヒドロキシラーゼ(TH)RT−PCR:ドパミン作動性PC12細胞からTrizol Reagent(Invitrogen Life technologies、カリフォルニア州)を用いて全RNAを抽出した。総容量20μlにて、ランダム六量体を用いたThermo−Script RT−PCRシステム(Invitrogen)により、1マイクログラムの全RNAを逆転写した。2マイクロリットルのRT産物をテンプレートとして使用し、最終反応容量50μlで2mMのMgCl2、1濃度(one strength)のPCR緩衝液、0.2mMのセンスおよびアンチセンスプライマー、0.2mMのdNTPおよび2.5UのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer ABD、Foster City、カリフォルニア州)を用いてPCRで増幅した。PCRは、Perkin Elmer DNA Thermal Cyclerで行った。THのプライマーは5’−TCGCCACAGCCCAAGGGCTTCAGAA−3’(センス)、および5−CCTCGAAGCGCACAAAATAC−3(アンチセンス)であり、G3PDHでは5’−TGAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGGT−3’(センス)、および5’−CATGTGGGCCATGAGGTCCACCAC−3’(アンチセンス)であった。オリゴヌクレオチドはMWG−Biotech AG(Munich、ドイツ)により合成した。逆転写後、cDNA産物をPCRで33サイクル増幅した。サイクル数(33)については、cDNAの投入量に対して産物の増幅が直線の範囲内になるように選択した。RNAおよびcDNA調製物の質が良好であることを保証するため、G3PDHのPCRを並行して行った。各サイクルは、変性に92℃で60秒、アニーリングに53℃で120秒、伸長に72℃で180秒(G3PDHではそれぞれ98℃で60秒、55℃で90秒、72℃で150秒)、からなる。10μlの増幅産物(THは368bp、G3PDHは983bp)を2%アガロースゲル上で分離し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。
【0155】
ドパミン作動性PC12細胞をDHEAまたは合成スピロニューロステロイドBNN−50およびBNN−93(10-7M)に短時間(5〜30分)曝露し、培養液中のドーパミンの濃度を、上記の通りラジオイムノアッセイで測定した。試験対象の3種のステロイドはどれも、速やかにかつ統計学的に有意にドーパミン分泌を刺激し、培養液中のレベルが10分以内に2倍になった(図6Aを参照)。我々はさらに、長時間のステロイドの作用も試験した。より具体的には、PC12細胞をDHEASまたは合成スピロニューロステロイドBNN−50およびBNN−93(10-7M)と3〜48時間インキュベートし、培養液中のドーパミンの濃度を測定した。PC12細胞とDHEASまたは合成ニューロステロイドとのインキュベーションの結果、ドーパミンレベルが上昇し、24時間でピークに達した(図6Bを参照)。こうしたDHEASおよび合成ニューロステロイドの長時間の作用から、それらが、ドーパミン分泌に対する急性作用(図6A)ばかりでなく、ドパミン作動性ニューロンにおけるドーパミンの新たな産生にも影響を与えることが示唆される。実際に、3種のニューロステロイドはどれも、ドーパミン生合成の律速酵素チロシンヒドロキシラーゼのmRNAを強力に誘導した(図6Cを参照)。
【0156】
[実施例11]
合成スピロニューロステロイドの神経原性特性
方法
野生型マウスから生成された皮質の1次神経球(21d)を、EGFおよびbFGF(最終濃度はそれぞれ20ng/ml)の存在下または非存在下で、無血清培地中でPLLおよびラミニンコートしたカバーガラスに付着させて培養した。スクリーニングのため、この培地に、10-7Mの最終濃度でエタノール、レチノイン酸(at−RA)、DHEAまたは合成スピロニューロステロイドBNN−93を補充した。
【0157】
BNN−93およびDHEAを補充した神経球では、培養から24〜48時間以内に、他の化合物およびエタノール対照に比べて神経細胞が神経球の周辺に広く遊走することが実証された(図7を参照)。この作用は、EGF/bFGF依存性のようであった。6日目までには、培養したすべての神経球で、カバーガラス上の神経細胞の遊走の程度が同じになった。培養液中の1日目の遊走の程度については、ほとんどの条件下で細胞が球(sphere)から周辺に遊走したため、大部分を標準化した。示した写真(図7)は、培養液の6日目のものであり、遊走作用はそれ程劇的でないものの、やはり明らかである。さらに、マウス胎仔脳から単離された神経前駆細胞を100nMのBNN−93またはビヒクル(対照)に24時間曝露した。BNN−93は、前駆細胞の神経発生および神経細胞への分化を刺激し、神経突起の形成を促進する(図8の矢印を参照)。
【0158】
[実施例12]
合成スピロニューロステロイドのエストロゲン特性
閉経後症候群を17β−エストラジオール(E2)で処置すると、乳癌および/または子宮内膜癌の発症リスクの上昇が認められる(Arch Intern Med. 166, 1027 (2006))。E2による癌細胞の増殖の刺激作用は、エストロゲン受容体α(ERα)により誘導される(Mol Endocrinol. 13, 969 (1999))。BNN−50、BNN−93およびBNN−124はO−O距離が10.9〜12.5Åで2個の水素結合を形成し、したがって、ERα結合部位(binding cavity)に結合しうるため(Chem. Biol. 11, 397 (2004))、レポーターとして乳房(MCF−7細胞)および子宮(Ishikawa細胞)由来のヒト腺癌細胞を用いて、これらのニューロステロイドのエストロゲンアゴニズム/アンタゴニズム特性を調べることは不可欠であった。完全なエストロゲンアゴニズム(E2≧0.1nM)およびアゴニズム無し(ビヒクルのみ)の対照を用いて、ニューロステロイドを、そのエストロゲン効力がE2のそれ(100と同じに設定)に対して、>100%、76〜100%、26〜75%、10〜25%および1〜10%であるかに応じて、スーパーアゴニスト、完全なアゴニスト、部分的なアゴニスト、弱いアゴニストおよび微弱なアゴニストに分類した。同様に、ICI182,780によるE2(0.1nM)作用の完全なアンタゴニズム(≧10nM)およびアンタゴニズム無し(ビヒクルのみ)の対照を用いて、ニューロステロイドを、そのE2作用の抑制が、ICI182,780のそれの76〜100%、26〜75%、10〜25%および1〜10%であるかに応じて、完全なアンタゴニスト、部分的なアンタゴニスト、弱いアンタゴニストおよび微弱なアンタゴニストに分類した。対照とニューロステロイド処置した細胞との差を、1元配置ANOVAを用いて評価した。p値が<0.05の場合に有意と判定した。
【0159】
方法
MCF−7ヒト乳腺癌細胞(ATCC由来)およびIshikawa子宮内膜腺癌細胞(ECACC由来)の増殖に対するニューロステロイドの作用を判定するため、10%ウシ胎仔血清(FBS、Biochrom製)を補充したダルベッコ最小基礎培地(DMEM)を用いて、37℃、5%CO2で細胞を培養し、トリプシン0.25%−EDTA0.02%溶液を使用して継代した。細胞増殖に対するニューロステロイドの作用をMTT[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]および標準的な手法(Chem. Biol. 11, 397 (2004))を用いて判定した。簡単に説明すると、96ウェル平底マイクロプレートの、1%デキストラン被覆チャコール処理FBS(DCC−FBS)を補充したフェノールレッド不含培地中に、細胞を10,000細胞/ウェルの密度で蒔いた。24時間後、被検化合物の希釈系列を加え(最初の希釈にはDMSOを用い、その後は培養液で希釈)、被検化合物を含む新鮮な培地を48時間ごとに加え、6日後、培地を除去し、無血清フェノールレッド不含培地で細胞を1mg/mlのMTT(Sigma製)と4時間インキュベートした。生成されたMTT−ホルマザンをイソプロパノールで可溶化し、Safireプレートリーダー(Tecan製)を用いて550nmと690nmの吸光度をモニターして測定した。培地のみを加えた細胞をアゴニズム無しの対照とし、ICI182,780(Tocris製)および/またはE2(Sigma製)で処理したものをそれぞれ完全なアンタゴニズムおよびアゴニズム対照とした。
【0160】
天然および商品化学物質の中からE2アゴニスト/アンタゴニストを検出するのに非常に感度の良い手段である(Planta Med. 72, 488 (2006))Ishikawa細胞のアルカリホスファターゼ活性を誘導するE2に対するニューロステロイドの作用を判定するため、上記のように細胞を培養し、継代した。次いで、96ウェル平底マイクロ培養プレートの、5%DCC−FBSを補充したフェノールレッド不含培地中に、1ウェル当たり12,000細胞の密度で細胞を蒔いた。24時間後、新鮮培地を加え、続いて被検化合物(最初の希釈にはDMSOを用い、その後は培養液で希釈)を加え、細胞を72時間培養し、次いでPBSで洗浄し、プレートを反転させ、ペーパータオル上に優しくブロットさせ、−80℃で少なくとも15分間置き、室温で5〜10分間解凍してから、氷上に移した。次いで、5mMのp−ニトロフェニルホスフェート、0.24mMのMgCl2および1Mのジエタノールアミン(pH9.8)を含む50μlの氷冷溶液を加え、細胞を室温まで昇温し(時間ゼロ)、黄色のp−ニトロフェノールを時間と共に蓄積させた。培地のみを加えた細胞をアゴニズム無しの対照とし、ICI182,780および/またはE2で処理した細胞をそれぞれ完全なアンタゴニズムおよびアゴニズムの対照とした。陽性対照が約1.2の吸光度(A405)を示すまで、Safireプレートリーダーを用いて30分ごとに405nmで色をモニターした。様々な試験系におけるスピロニューロステロイドのエストロゲンアゴニスト/アンタゴニスト特性を表1に報告する。
【0161】
【表1】

【0162】
[実施例13]
神経成長因子受容体TrkAおよびp75NTRに対する合成スピロニューロステロイドの結合能、活性化能または阻害能の研究
方法
神経成長因子(NGF)の高親和性受容体TrkAおよび低親和性受容体p75NTRのcDNAをHEK293細胞にトランスフェクトした(Ann Rev Biochem 72:604, 2003)。この2つのNGF受容体サブタイプを発現している形質移入体をフラスコで培養し、PBSで2回洗浄した後、フラスコから剥離させた。1500gで遠心分離後、それらを、新たに加えたプロテアーゼ阻害剤(1mMのPMSFおよび1μg/mlのアプロチニン)を含むpH7.4、4℃の50mMトリス−HCl緩衝液中で超音波処理によりホモジナイズした。破砕されなかった細胞を1500gで遠心分離(4℃で10分)により除去し、膜を、102,000g、4℃で1時間遠心して回収した。膜をトリス−HClで1回洗浄し、50mMのグリシン(pH5.0)で4℃にて短時間(3分間)酸性化させ、同じ緩衝液に再懸濁した。タンパク質量をBio-Rad(Hercules、カリフォルニア州)製の試薬を用いてBradford法でアッセイした。10-12〜10-6Mの様々な濃度の非標識のBNN−124の非存在下(全結合量の判定のため)または存在下で、最終容量100μlで、トリス−HCl緩衝液(50mM、pH7.4)中で、膜(最終濃度2mg/ml)を5nMの[3H]DHEAとインキュベートした。水浴中にて37℃で30分インキュベーション後、4℃の0.5%PEI溶液で予め湿らせたGF/Bフィルター上に膜を回収した。フィルターを氷冷トリス−HClで3回洗浄し、乾燥させ、β−シンチレーションカウンター(Perkin Elmer、Foster City、カリフォルニア州)でトリチウムの効率(efficiency)を60%としてカウントした。
【0163】
結果を図9に示す。非標識のBNN−124は、TrkA NGF受容体を発現するHEK293 TrkA細胞から単離した膜に結合している[3H]DHEAに対して競合した。この結合の親和性は、K:0.29nM、すなわち、NGFと類似していた。同様に、非標識のBNN−124は、p75NTR NGF受容体を発現するHEK293 p75NTR細胞から単離した膜に結合している[3H]DHEAに対して競合した。この結合の親和性は、K:1.0nM、すなわち、NGFと類似していた。TrkAのcDNAを含まないベクターをトランスフェクトしたHEK293細胞または非トランスフェクト細胞では結合が見られなかった。さらに、TrkA cDNAをトランスフェクトしたHEK293細胞の膜染色は、膜不透過性DHEA−BSA−フルオレセインコンジュゲートにおいて認められた。こうした知見から、合成スピロニューロステロイドとNGF膜受容体との結合および相互作用が強いことが示唆される。
【0164】
神経冠由来のPC12細胞を、20ng/mlのNGFの合成ニューロステロイド10nMを補充し、血清の非存在下で8時間培養した。インキュベーションの終了時に、細胞ライセートを12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動にかけた。次いで、タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、標準的なウエスタンブロットの手順に従い処理した。タンパク質レベルを検出するため、膜を適切な抗体、Bcl−2(Santa Cruz Biotechnology社、Santa Cruz、カリフォルニア州、希釈度1:100)、リン酸化ERK1/2(Cell Signalling Technology社、Beverly、マサチューセッツ州、希釈度1:100)とインキュベートした。タンパク質量に標準化するため、このブロットを剥がし、抗アクチンまたは抗総ERK1/2抗体(Chemicon、Temecula、カリフォルニア州、希釈度1:400)で染色した。
【0165】
BNN−124の挙動は、血清除去PC12細胞中において、NGFのそれと類似しており、抗アポトーシス性のBcl−2タンパク質を誘導し、ERK1/2キナーゼをリン酸化した。実際に、10nMのBNN−124は、Bcl−2にもERK1/2にも20ng/mlのNGFと同じ作用を発揮した(図9)。NGFによるBcl−2活性化は、ニューロンをアポトーシスから救出する。この作用には、ERK1/2キナーゼシグナル伝達のリン酸化を介した活性化が関与している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に許容される担体、希釈液またはアジュバントと共に、活性成分としての下記式Iで表される少なくとも1種の化合物、その薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩を含む組成物:
【化1】

(式中
1はヒドロキシル、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アミノカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシであり;
2は水素、任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルコキシアルキル、任意に置換されているアミノアルキル、シアノ、任意に置換されているシアノアルキル、任意に置換されているチオシアノアルキル、イソチオシアノ、任意に置換されているアジドアルキル、任意に置換されているアルカノイルオキシアルキル、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、任意に置換されているアリールアルケニル、任意に置換されているヘテロアリールアルケニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールキニル、任意に置換されているアリールキルアルキニル、任意に置換されているアルカノイルオキシアルキニル、任意に置換されているヘテロアリールオキシアルキニル、任意に置換されているオキソアルキニルもしくはそのケタール、任意に置換されているシアノアルキニル、任意に置換されているヘテロアリールアルキニル、任意に置換されているヒドロキシアルキニル、任意に置換されているアルコキシアルキニル、任意に置換されているアミノアルキニル、任意に置換されているアシルアミノアルキニル、任意に置換されているメルカプトアルキニル、任意に置換されているヒドロキシアルキニル二酸ヘミエステルもしくはその塩、または任意に置換されているアルキニルオキシアルキニルであり;
あるいは、
1は酸素であり、R2はR1に結合したアルキル基またはアルケニル基またはアルキニル基であり、任意に置換されていてもよい含酸素環を形成し;
3は水素であるか、あるいは、ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在する場合、Rは存在せず;
4は水素または低級アルキルであり;
5は水素、アミノ、任意に置換されているアルキルアミノ、任意に置換されているジアルキルアミノ、任意に置換されているアルケニルアミノ、任意に置換されているジアルケニルアミノ、任意に置換されているアルキニルアミノ、任意に置換されているジアルキニルアミノ、アミド、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルケニルオキシ、任意に置換されているアルキニルオキシアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルキニル、任意に置換されているアリール、アジド、任意に置換されているヘテロアリール、オキシム=N−O−R8、カルボキシメチルオキシム、カルボキシエチルオキシムまたはカルボキシプロピルオキシムであり;
6は水素、アミノ、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルキル、任意に置換されているアルケニルまたは任意に置換されているアルキニルであり;
7は水素、アミノ、任意に置換されているアルキルアミノ、任意に置換されているジアルキルアミノ、任意に置換されているアルケニルアミノ、任意に置換されているジアルケニルアミノ、任意に置換されているアルキニルアミノ、任意に置換されているジアルキニルアミノ、アミド、チオ、スルフィニル、スルホニル、スルホンアミド、ハロゲン、ヒドロキシル、任意に置換されているアルコキシ、任意に置換されているアルケニルオキシ、任意に置換されているアルキニルオキシアルキル、任意に置換されているアルケニル、任意に置換されているアルキニル、任意に置換されているアリール、アジド、任意に置換されているヘテロアリール、オキシム=N−O−R8、カルボキシメチルオキシム、カルボキシエチルオキシムまたはカルボキシプロピルオキシムであり;
Xは原子価結合、メチレン基(−CH2−)または酸素、硫黄から選択されるヘテロ原子または−NH、−S(O)、−SO2、−NR8、−NC(O)R8、−N−トルエン−4−スルホニルオキシであり;
Aは−(CH2n−、C2-5アルケニレン基またはC2-5アルキニレン基であり、nは整数であり、0または1または2または3または4または5の値をとることができ;
Bは−(CH2y−、C2-5アルケニレン基またはC2-5アルキニレン基であり、式中、yは整数であり、1または2または3または4または5の値をとることができ;
Yは、ステロイド骨格のC17のスピロ環置換基の任意の炭素に結合していてもよく、独立にH、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリール、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、ホルミル、カルボキシ、−NC(O)R8、NC(S)R8、−NR89、任意に置換されているC(O)−W、任意に置換されているC(O)O−Wまたは任意に置換されているC(S)O−Wであり;
Zは、ステロイド骨格のC17のスピロ環置換基の任意の炭素に結合していてもよく、独立にH、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているアリール、任意に置換されているアリールアルキル、任意に置換されているヘテロアリール、任意に置換されているヘテロアリールアルキル、ホルミル、カルボキシ、−NC(O)R8、NC(S)R8、−NR89、任意に置換されているC(O)−W、任意に置換されているC(O)O−W、任意に置換されているC(S)O−Wであり;
YおよびZは、C17のスピロ環置換基の同じ炭素に結合していてもよく
Wは、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されているヘテロシクロアルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているヘテロシクロアケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているヘテロシクロアルキニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているヘテロアリールであり;
8およびR9は独立に、任意に置換されているC1-10アルキル、任意に置換されているヘテロシクロアルキル、任意に置換されている縮合二環式環系、任意に置換されている架橋二環式環系、任意に置換されている架橋三環式環系、任意に置換されているC2-10アルケニル、任意に置換されているヘテロシクロアケニル、任意に置換されているC2-10アルキニル、任意に置換されているヘテロシクロアルキニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているヘテロアリールであり;
点線は、単結合または二重結合が存在することを示す。)。
【請求項2】
Xは酸素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Xはメチレン基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Xは−NHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、Rは存在しない、先行するいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項6】
1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、R4=Meである、先行するいずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項7】
1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;n=0、y=1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
式Iの化合物は、その薬学的に許容されるエステル、塩および酸付加塩を含む、以下のものから選択される、請求項1に記載の組成物:
17β−スピロ−[5−アンドロステン−17,2’−オキシラン]−3β−オール;
(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン;
(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステン;
3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−プレグネン。
【請求項9】
請求項1で定義された式Iで表される化合物であって、
式Iにおいて、
1)R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=1である化合物;
2)R1がヒドロキシまたはアルコキシであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=3であり;Xは17β位にある化合物;
3)R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=4であり;Xは17β位にある化合物;
4)R1がヒドロキシまたはアルカノイルオキシであり;R2=R5=R6=R7=H、A=−(CH2n−およびB=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=−CH2−であり、YおよびZは独立にHまたはC1〜C7アルキルであり、n=0、y=1である化合物;
5)R1=OAcであり;R2=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;R3がHであるか、または存在せず、ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し;R4=Meであり;X=O、Y=2−ピリジル、n=0、y=1である化合物;
6)R1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Z=Hであり;Y=CH3であり;A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=−NH−、n=0、y=1であり;Xは17β位にある化合物;
7)R1=OHであり;R2=R5=R6=Y=Z=Hであり;R7=OHであり;A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、n=0、y=1であり;R1は11α位にあり、Xは、17α位にある化合物;
8)R1=OAcであり;R2=R3=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在せず;R=Meであり;X=O、Y=−CHOAc、n=0、y=1である化合物;および
9)R1=OAcであり;R2=R5=R6=R7=Z=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;X=O、Y=−C≡CHまたは−C≡C−SiMe3、n=0、y=1であり;Xは17β位にある化合物
以外の化合物、またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩。
【請求項10】
Xは酸素原子である、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
Xはメチレン基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
Xは−NHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、Rは存在しない、請求項9〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、R4=Meである、請求項9〜13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
1=OHであり;R2=R5=R6=R7=Y=H、A=−(CH2n−、B=−(CH2y−であり;ステロイド環系のC1とC2の間に二重結合が存在せず;ステロイド環系のC5とC6の間に二重結合が存在し、R3は存在せず;R4=Meであり;n=0およびy=1である、請求項9〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
その薬学的に許容されるエステル、塩および酸付加塩を含む、以下の1つから選択される請求項9に記載の化合物:
(20S)−3β,21−ジヒドロキシ−17β,20−エポキシ−5−プレグネン;
(20S)−3β−ヒドロキシ−17β,20−エポキシ−20−(2−ブロモエチニル)−5−アンドロステン;
3β,21−ジヒドロキシ−17α,20−エポキシ−5−アンドロステン。
【請求項17】
神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態を予防ないし処置する方法であって、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩を、有効量患者に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記状態は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症、網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、脳外傷、虚血および脳卒中からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療に使用される、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩。
【請求項20】
神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態の予防ないし処置に使用される、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩。
【請求項21】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症、網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、脳外傷、虚血または脳卒中、あるいは中枢もしくは末梢神経系の神経細胞の変性および/またはアポトーシスを引き起こす任意の他の状態の予防ないし処置に使用される、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩。
【請求項22】
神経細胞アポトーシスまたはニューロン損傷に関連した神経変性状態を予防ないし処置する医薬を製造するための、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩の使用。
【請求項23】
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、網膜変性症、網膜剥離、遺伝子異常が原因の末梢神経障害、糖尿病、ポリオ、疱疹、AIDS、脳外傷、虚血または脳卒中、あるいは中枢もしくは末梢神経系の神経細胞の変性および/またはアポトーシスを引き起こす任意の他の状態を予防ないし処置する薬物を製造するための、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩の使用。
【請求項24】
中枢神経系および末梢神経系を含む様々な器官および組織の神経幹細胞および神経前駆細胞の増殖、分化、遊走および再生を制御するための、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩の使用。
【請求項25】
上皮細胞、内皮細胞、間葉系細胞、リンパ球細胞、赤血球細胞および単核細胞の増殖、分化、遊走および再生を制御するための、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩の使用。
【請求項26】
TrkAおよびp75NTR受容体などの神経成長因子(NGF)受容体に結合、活性化または阻害することで、NGF関連の状態または疾患を予防、寛解または処置するための、請求項1〜8のいずれか1項にて定義された式Iの化合物またはその薬学的に許容されるエステル、塩もしくは酸付加塩の使用。
【請求項27】
実質的に本明細書の実施例のいずれかに記載されている通りの、17β−スピロ−[5−アンドロステン−17,2’−オキシラン]−3β−オール以外の請求項1にて定義された式Iの化合物。
【請求項28】
実質的に本明細書の実施例のいずれかに記載されている通りの、請求項1にて定義された式Iの化合物の調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−530404(P2010−530404A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512762(P2010−512762)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002067
【国際公開番号】WO2008/155534
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505196897)バイオネイチャー・イー・エイ・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】BIONATURE E.A. LIMITED
【Fターム(参考)】