説明

ニューロトロフィン由来ペプチド配列

本発明は、神経細胞の分化、神経細胞の生存および記憶および学習に関連する神経可塑性を刺激することができるペプチド配列に関する。本発明のペプチド配列は、NGF、NT3、NT4/5およびBDNFなどの神経栄養因子に属するタンパク質に由来する。本発明はまた、それらのペプチドフラグメントを含む医薬組成物、および神経細胞の分化、神経細胞の生存を刺激する作用、学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激する作用が治療に有益な疾患または状態を処置するためのそれらの医薬組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経細胞の分化、神経細胞の生存ならびに記憶および学習に関連する神経可塑性を刺激することができるペプチド配列に関する。本発明のペプチド配列は、NGF、NT3、NT4/5およびBDNFなどの神経栄養因子に属するタンパク質に由来する。本発明はまた、それらのペプチドフラグメントを含む医薬組成物、ならびに、神経細胞の分化、神経細胞の生存を刺激する作用、学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激する作用が治療に有益である疾患または状態を処置するための、それら医薬組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞の成長、維持および再生は、少なくともその一部は、固有のチロシンキナーゼ活性を有する細胞表面受容体であるTrkファミリーに結合して活性化する、ニューロトロフィン(NT)として知られる特定のポリペプチド成長因子によって調節される。ニューロトロフィンが結合すると、これらの受容体は、1以上のアミノ酸残基が自己リン酸化し、その後シグナル伝達に重要な細胞内分子と連携すると考えられている(参考のため、Ulrich&Schlessinger, Cell 1990, 61:203-212;Chao, Neuron 1992, 9:583-593を参照のこと)。
【0003】
ニューロトロフィンは、あらゆる脊椎動物種の神経系の発達に深く影響する高塩基性の小さな(約13kDa)二量体タンパク質である。
【0004】
神経成長因子(NGF)は、最初に最もよく特性化されたニューロトロフィンファミリーのメンバーである。NGFは、CNS内にホモ二量体として存在し、その遺伝子は第1染色体上(p21-p22.1領域)に位置する。NGFは、前脳基底核の一次感覚神経および交感、コリン作動性神経の生存を促進することが示されている。またNGFは、軸索切断によって引き起こされた神経変性および加齢に関係する萎縮症に対する保護因子であることも実証されている。NGFは、アルツハイマー病のような神経変性疾患の病態生理学および薬物療法に役立つことが示唆されている。さらに、NGFは、毒性濃度のグルタミン酸塩に曝された海馬神経細胞における神経変性を有意に抑制し、細胞形態を保つことが示されている(参考:Salehi et al., 2004;Tuszynski MH, et al. Nat Med. 2005 Jun;11(6):551-5;Jakubowska-Dogru E, Gu-musbas U Neurosci Lett. 2005 Jul 1;382(1-2):45-50;Walz R, et al Neurochem Res. 2005 Feb;30(2):185-90;Hu Z et al. Neurobiol Dis. 2005 Feb;18(1):184-92)。
【0005】
脳に由来する神経栄養因子(BDNF)は、よく特性化された別のニューロトロフィンファミリーメンバーである。BDNF遺伝子は、第11染色体のバンドp13上に位置する。BDNFタンパク質の構造は、NGFの構造と類似している。BDNFは、NGFよりも、CNSにより広く分布している。NGFと同様に、BDNFは、学習および記憶に不可欠に関連している成熟脳における高度な神経可塑性を維持する脳域である海馬に豊富である。海馬におけるNGFおよびBDNFの両方の発現の調節が、少なくとも部分的には、コリン作動性およびグルタミン酸作動性系により制御されていることは、注目に値する。海馬の損傷はBDNF発現の上方調節を引き起こすことが示されている。さらに、BDNFは、NGFと同様に、前脳基底核の一次感覚神経およびコリン作動性神経に対する生存因子として作用する。さらに、BDNFは、NGFが重要な役割を果たさないようである他の広範囲の神経細胞種、例えば、黒質のドーパミン作動性神経細胞、小脳顆粒神経細胞、運動神経細胞、青斑核の神経細胞および網膜神経節細胞の生存を促進することが確認されている。
【0006】
ニューロトロフィン-3(NT-3)は、NGFおよびBDNFの両方と高度に類似した構造を持っているが、神経系におけるこの成長因子の発現は、NGFまたはBDNFとは幾分異なっている。NGFおよびBDNFとは対照的に、CNSにおけるNT-3のレベルは、胎児生育期および新生児脳において高く、成人の脳においては減少する。新生動物の海馬において、NT-3レベルは他のニューロトロフィン類のレベルよりも有意に高い。これらの知見に基づいて、NT-3は初期の神経細胞の発達に中心的な役割を持ち、脳の発達段階においてこのニューロトロフィンが機能不全となると、統合失調症などの海馬の病変が起こりうることが提唱されている。NGFおよびBDNFと同様に、NT-3は、一次感覚神経、特に神経堤細胞の生存を引き延ばし、またドーパミン作動性神経細胞の生存を促進する(参考のためShoval and Weizman, 2005を参照のこと)。
【0007】
4番目に報告されたニューロトロフィン成長因子ファミリーのメンバーは、ニューロトロフィン4/5(NT-4/5)である。NT-4/5は他のあらゆるニューロトロフィンのように、神経細胞に対する強力な生存因子であり、特に、神経堤およびプラコードの感覚神経細胞、運動神経細胞、前脳基底核および青斑核の神経細胞の生存を促進することが示されている。NT-4/5は前脳基底核の神経細胞および運動神経細胞のための分化因子としても働く。NT-4/5は、海馬神経細胞の神経再生およびシナプス活動の促進にも関与する(参考のためShoval and Weizman, 2005を参照のこと)。
【0008】
神経成長因子受容体(NGFR)は、その分子量からp75NTRとも呼ばれ、あらゆるニュートロフィン類に対する遍在性の受容体である。NGFRは、発見当時は、独自のタンパク質型と考えられていた。しかしながら後に、腫瘍壊死因子受容体の大きなスーパーファミリーが、NGFRと全体的構造を共有する(4つの細胞外リガンド結合、システインリッチリピートまたはCRs、および、細胞質相互作用因子(interactor)と結合する、または同因子から分離することによるシグナル伝達)ことが見出された。このスーパーファミリーとの共通点の発見は、NGFRの、核内因子カッパBおよびアポトーシス経路への最終的な関与を含めたいくつかの生物学的機能の解明に役立った。NGFR/p75NTRは主に細胞死と関連する。NGFRは単量体として低親和性にてあらゆるNT類と結合する。より高親和性のNT類の結合は、高分子量受容体のトロポミオシン受容体キナーゼファミリー(TRKファミリー)、TRKA(NTRK1)、TRKB(NTRK2)およびTRKC(NTRK3)とNT類との結合において起こる。TRKA、TRKBおよびTRKCはそれぞれ、NGF、NT-4/5およびBDNF、およびNT-3に対して特異的である。NT-3は、TRKAおよびTRKBとも結合するが、親和性が顕著に低い(NT類およびその受容体の参考のため、Bothwell, Science 272: 506-507, 1996, Carter and Lewin, Neuron 18: 187-190, 1997, Bibel and Barde, Genes Dev. 14: 2919-2937, 2000を参照のこと)。
【0009】
NT類のそれらの受容体への結合およびこの結合の調節は、発生段階および成体において非常に複雑であり且つ強力に調節されている。ニューロトロフィンおよびそれらの受容体は、神経系の通常機能の調節および病態の両方に関与する。ニューロトロフィンの機能および/またはそれらの受容体の活性を、促進および/または抑制することが可能な新規化合物を開発することが、非常に多数の神経系関連疾患の治療のための新規医薬を開発する観点から有益であろうことはずっと以前から明らかであった。しかしながら、このように長い間必要とされながらも、そのような化合物はよくても漠然としか捉えることができなかった。ニューロトロフィンは高分子であるので、有効レベルのニューロトロフィンそれ自体の治療的輸送は、かなりの、おそらく克服しがたい難題である。さらに、天然ニューロトロフィンは、神経細胞アポトーシスおよび成長円錐の退縮(collapse)に関連する、神経細胞のp75受容体のような、他の受容体と相互作用し得る。しかしながら、これまでの、ペプチド模倣アゴニストおよび/またはTrk受容体のアンタゴニストを設計する努力もまた成功しなかった。例えば、ニューロトロフィンNGFのループ1に由来する環状ペプチドは、NGFの生存活性を中程度に模倣することが報告されている。しかしながら、これらのペプチドは、Trk受容体よりむしろp75依存的に機能するようである(Long et al., J.Neurosci. Res. 1997,48:1-17)。いくつかのNGFループ4環状ペプチドは、TrkアンタゴニストによりブロックされるNGF様生存活性を示すといわれている。しかしながら、これらのペプチドにより誘導される最大生存反応は、NGFニューロトロフィン自体により促進される最大反応の10-15%のみであると報告されている(Xie et al., J. Biol. Chem. 2000,275 : 29868-29874;Maliartchouk et al., J. Biol. Chem. 2000,275 : 9946-9956)。
【0010】
BDNFループ2ペプチドの二環式および三環式二量体型は、BDNF様活性を有することが示されている。しかしながら、それらが誘導する最大生存反応も、天然ニューロトロフィンにより促進される最大反応の30%のみであると報告されている(O'Leary et al., J.Biol. Chem. 2003,278 :25738-25744)。こうして、神経細胞の成長および回復を調節する(すなわち、増大させるまたは抑制する)ことができる組成物が長く必要とされ続けている。神経細胞の成長および回復を効果的に調節する工程および方法(治療方法を含む)も必要とされている。
【0011】
参考文献
Bibel, M.;Barde, Y.-A.. Genes Dev. 14: 2919-2937, 2000.
Bothwell, M. Science 272: 506-507, 1996
Chao, Neuron 1992, 9:583-593
Carter, B. D.;Lewin, G. R. : Neuron 18: 187-190, 1997.
D'Mello S. R., Galli C., Ciotti T. and Calissano P. Proc. Natl Acad. Sci. USA, 1993, 90:10 989-10 993.
Jakubowska-Dogru E, Gumusbas U Neurosci Lett. 2005 Jul 1;382(1-2):45-50
Hu Z et al. Neurobiol Dis. 2005 Feb;18(1):184-92
Lee et al., Curr. Opin. Neurobiol. 2001,11 : 281-286
Long et al., J.Neurosci. Res. 1997,48 : 1-17
Maliartchouk et al., J. Biol. Chem. 2000,275 : 9946-9956
O'Leary et al., J.Biol. Chem. 2003,278 :25738-25744
Penkowa M, Giralt M, Lago N, Camats J, Carrasco J, Hernandez J, Molinero A, Campbell IL, Hidalgo J. Exp Neurol. 2003, 181:1301-48.
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Salehi A, Delcroix JD, Swaab DF. J Neural Transm. 2004, 111:323-45.
Shoval G and Weizman A. Eur. Neuropsychopharm. 2005, 15:319-329.
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Tuszynski MH, et al. Nat Med. 2005 Jun;11(6):551-5;)
Ulrich&Schlessinger, Cell 1990, 61:203-212
Walz R, et al Neurochem Res. 2005 Feb;30(2):185-90
Xie et al., J. Biol. Chem. 2000,275 : 29868-29874
【発明の開示】
【0012】
[発明の概要]
本発明は、ニューロトロフィン受容体により媒介される、神経細胞分化、神経細胞の生存ならびに学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激することについて非常に強力である、ニューロトロフィンに由来する短いペプチド配列に関する。本発明によると、本ペプチド配列は、そのペプチドの生物学的活性に重要な1以上の共通アミノ酸モチーフを含む。
【0013】
従って、第1の局面において、本発明は、アミノ酸モチーフxp1−D/E−T−xa1−C(モチーフI)を含む5から25の連続(contiguous)アミノ酸残基を含む、単離ペプチド配列に関し、
ここで、
xp1は疎水性アミノ酸残基であり、
xa1はK、R、S、Aである。
【0014】
本発明の別の局面において、モチーフ(I)を含むペプチド配列は、モチーフ(II)xp2−(xa)1−(xa)2−x+/−−xa2−Gおよび/またはモチーフ(III)R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa2−x+/−の両方/いずれかをさらに含んでもよく、
ここで、
xp2は、疎水性または塩基性アミノ酸残基であり、
(xa)はいずれかのアミノ酸残基または結合であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基であり、
xa2は、いずれかのアミノ酸残基である。
【0015】
本発明は、少なくとも1つの上記モチーフを含み、神経細胞の分化、神経細胞の生存および/または学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激することができるNGF、NT3、NT4/5およびBDNFに由来する特定ペプチド配列を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、少なくとも1つの上記モチーフを含むペプチド配列を含む化合物、特に、NGF、NT3、NT4/5またはBDNFに由来する配列を含む化合物に関する。
【0017】
本発明はまた、医薬を製造するための、および/または抗体を産生するための、それらのペプチド配列、およびそれらを含む化合物の使用に関する。本発明はまた、本発明のペプチド、化合物および/または抗体を含む医薬組成物に関する。
【0018】
神経突起細胞の分化、神経細胞の生存および/または学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激する方法であって、本発明のペプチド、化合物、抗体および/または医薬組成物を用いることを含む方法、ならびに有効量の本発明のペプチド、化合物、抗体または医薬組成物を必要とする個体へ投与することを含む治療方法も、本発明の保護の範囲にある。
【0019】
[発明の詳細な説明]
I ペプチド配列
本発明の一局面は、アミノ酸モチーフ(モチーフI)
xp1−D/E−T−xa1−C
を含む5から25の連続アミノ酸残基を含むペプチド配列に関し、
ここで、
xp1は疎水性アミノ酸残基であり、
xa1はK、R、SまたはAである。
【0020】
本発明によるモチーフ(I)のxp1残基は、いずれかの疎水性残基であり得るが、特定の態様において、xp1はY、FまたはIから選択される。従って、好ましい一態様において、xp1はYであり得、別の好ましい態様においてはFであり得、さらに別の好ましい態様においてはxp1はIであり得る。
【0021】
上記のモチーフを含む本発明のペプチド配列は、別のアミノ酸モチーフxp2−(xa1−(xa2−x+/−−xa2−G(モチーフII)をさらに含んでもよく、
ここで、
xp2は、疎水性または塩基性アミノ酸残基であり、
(xa)は、いずれかのアミノ酸残基または結合であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基であり、
xa2は、いずれかのアミノ酸残基である。
【0022】
従って、本発明の別の局面は、モチーフ(I)およびモチーフ(II)の両方を含む以下の式のペプチド配列に関する:
x1−xp1−D/E−T−xa1−C−(x)n−xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G−(x)n
ここで、
x1は、いずれかのアミノ酸残基であり、
(x)nは、ペプチド結合またはいずれかのアミノ酸残基の配列であり(ここでnは1から5までの整数である)、
xp1、xp2、xa1、xa2、(xa)、x+/−は、請求項1から9に規定する通りである。
【0023】
本発明によると、モチーフ(II)のxp2は、いずれかの疎水性アミノ酸残基であり得るが、xp2は、A、L、PまたはYから選択されるのが好ましい。別の態様において、xp2は荷電性アミノ酸残基であってもよく、好ましい態様において、正電荷残基、例えばK、RまたはHであり得る。本発明によると最も好ましい正電荷残基は、Kである。
【0024】
モチーフ(II)の(xa)位の残基は、本発明によると、いずれかのアミノ酸残基であるが、いくつかのアミノ酸残基がこの位置において好ましい場合があり、そのような好ましいアミノ酸残基は、A、E、F、I、L、R、S、TまたはVから選択され得る。いくつかの態様において、(xa)位における少なくとも1つのアミノ酸残基は存在しなくてもよく、よって本発明のモチーフ(II)は5または4アミノ酸残基を含み得る。そのような態様において、本発明は、(xa)位の1つに1ペプチド結合を含むモチーフxp2−(xa)−x+/−−xa2−Gを含むアミノ酸配列に関し、または、本発明は、両(xa)残基がペプチド結合に置換されているモチーフxp2−x+/−−xa2−Gを含むアミノ酸配列に関する。いくつかの態様においては、(xa)残基の1つは存在しないのが好ましい場合があり、他の態様においては、両方の(xa)がペプチド結合に置換されているのが好ましい場合がある。
【0025】
本発明によると、xa2はアミノ酸残基A、E、G、I、N、R、SまたはTから選択されてもよく、x+/−はD、E、K、RまたはHから選択されてもよい。
【0026】
さらに、本発明による上記のアミノ酸配列は、アミノ酸モチーフR/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−(モチーフIII)をさらに含んでもよく、
ここで、
xa3は、いずれかのアミノ酸残基であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基である。
【0027】
モチーフ(III)において、xa3残基はA、D、M、RまたはSから選択されてもよく、x+/−はD、E、K、RまたはHから選択される。
【0028】
従って、本発明の別の局面は、上記の3つのモチーフ全てを含む少なくとも15の連続アミノ酸残基のペプチド配列に関する。そのようなアミノ酸配列は、本発明によると、以下の式により規定され得る:
x1−xp1−D/E−T−xa1−C−(x)n−xp2−(xa)1−(xa)2−x+/−−xa2−G−(x)n−R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−−(x)n
(ここで、x1、xp1、xp2、xa1、xa2、xa3、(xa)、x+/−および(x)nは上記に論じた通りである)、または、
以下のモチーフの1つを含む少なくとも5アミノ酸残基を含む前記配列のフラグメントである:
xp1−D/E−T−xa1−C(モチーフI)、
xp2−(xa)1−(xa)2−x+/−−xa2−G(モチーフII)または
R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−(モチーフIII)
(ここで、xp1、xp2、xa1、xa2、xa3、(xa)、x+/−は、請求項1から14に規定する通りである)。
【0029】
上記のペプチド配列は、例えば以下の配列から選択される配列、またはそれらのフラグメント、変異体もしくは相同体を含み得る:
YETKCRDPNPVDSG(配列番号1)
FETRCKEARPVKNG(配列番号2)
YETRCKADNAEEGGPGAG(配列番号3)
FETKCNPMGYTKEG(配列番号4)
RIDTACV(配列番号5)
RIDTSCV(配列番号6)
CVLSRKAVRRA(配列番号7)
CALSRKIGRT(配列番号8)
VCTLLSRTGRA(配列番号9)
VCTLTIKRGR(配列番号10)
SSHPIFHRGEFS(配列番号11)
YAEHKSHRGEYS(配列番号12)
SETAPASRRGELA(配列番号13)
HSDPARRGELS(配列番号14)
TFVKALTMDGKQAAWR(配列番号15)
TYVRALTSENNKLVGWR(配列番号16)
SYVRALTADAQGRVGWR(配列番号17)
SYVRALTMDSKKRIGWR(配列番号18)
RGIDSKHWNSY(配列番号19)
RGIDDKHWNSQCKTSQ(配列番号20)
RGVDRRHWVSE(配列番号21)
RGIDKRHWNSQ(配列番号22)
RIDTACVCVLSRKAVRRA(配列番号23)
RIDTSCVCALSRKIGRT(配列番号24)
RIDTACVCTLLSRTGRA(配列番号25)
RIDTSCVCTLTIKRGR(配列番号26)。
【0030】
上記の配列番号1-26の配列は全て、モチーフ(I)、(II)または(III)の少なくとも1つを含むと解する。
【0031】
いくつかの態様において、本発明のペプチド配列は、配列番号5-22として同定された配列から選択された配列、例えば配列番号5または6、または例えば配列番号7-10として同定された配列から選択された配列、または配列番号11-14もしくは配列番号15-22として同定された配列から選択された配列、例えば配列番号15-18もしくは配列番号19-22から選択された配列を含み得る。
【0032】
本ペプチド配列はまた、配列番号5-22として同定された1つの配列にさらなる配列を含み得る。そのようなペプチド配列は、例えば配列番号1-4として同定された配列から選択される配列、または配列番号23-26として同定された配列から選択される配列であり得る。
【0033】
本発明によると、本ペプチド配列は好ましくは、5から25アミノ酸残基を含む。従って、一態様において、好ましいペプチド配列は、5から10アミノ酸残基の範囲の長さ、例えば6から9アミノ酸残基、例えば7または8アミノ酸残基長を有しいてもよく、またはペプチド配列の長さは、11から15アミノ酸残基の範囲、例えば12から14アミノ酸残基など、例えば13アミノ酸残基であってもよい。別の態様において、好ましいペプチド配列の長さは、16から25アミノ酸残基の範囲、例えば17から24アミノ酸残基、例えば18-23、例えば19から22アミノ酸残基であってもよく、また、20または21アミノ酸残基であってもよい。しかしながら、いくつかの態様において、本発明のペプチド配列の長さは、上述の長さより長くてもよく、例えば26-50アミノ酸残基の範囲であり得る。
【0034】
上述のように、本発明は、以下のように規定する、上記のペプチド配列のフラグメント、変異体および相同体に関する:
i) 本発明のモチーフを含む配列に相当する配列、特に配列番号1-26の配列から選択される配列の長さの、少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは 少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%を有する配列であるフラグメント。好ましくは、本発明のモチーフを含むフラグメント;
【0035】
ii) 変異体は、本発明のモチーフを含む配列、特に配列番号1-26の配列から選択される配列に対して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の相同性を有するアミノ酸配列であるか、または本発明のモチーフを含む配列、特に配列番号1-26の配列と比較して、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは95%の正のアミノ酸マッチを有するアミノ酸配列である。本明細書において、正のアミノ酸マッチは、2つの比較配列において同じ位置にあるアミノ酸の物理的および/または化学的特性により規定される同一性または類似性と定義する。本発明の好ましい正のアミノ酸マッチは、KとR、EとD、LとM、QとE、IとV、IとL、AとS、YとW、KとQ、SとT、NとSおよびQとRである。あるアミノ酸配列と別のアミノ酸配列との相同性は、照合した2配列における同一アミノ酸の割合と定義する。配列の相同性はBLO-SUM 30、BLOSUM 40、BLOSUM 45、BLOSUM 50、BLOSUM 55、BLO-SUM 60、BLOSUM 62、BLOSUM 65、BLOSUM 70、BLOSUM 75、BLO-SUM 80、BLOSUM 85またはBLOSUM 90のようなよく知られているアルゴリズムを用いて計算してもよい。好ましくは変異体は、本発明のモチーフを含む;
【0036】
iii) 相同体は、本発明のモチーフを含む配列、特に配列番号1-26の配列に対して、30%を超えるが60%未満の、例えば50-59%(55%など)、例えば40-49%(45%など)、例えば30-39%(35%など)の相同性を有するアミノ酸配列である。好ましくは相同体は、本発明のモチーフを含む。
【0037】
上記に規定のようなフラグメント、変異体および相同体は、例えば配列番号1-26の配列の生物学的活性のような、元の配列の少なくともいくつかの生物学的活性、例えば、神経細胞分化に関連する、および/または記憶および学習と関連する神経可塑性を刺激する能力、細胞の生存を刺激する能力、例えばアポトーシスを抑制する能力、またはTrkファミリーの受容体を活性化する能力を保持していると推定される。
【0038】
本発明によると、上記の配列は全て単離ペプチド配列である。
【0039】
「単離ペプチド配列」なる用語は、ペプチド配列が個々の化学物質であることを意味する。単離ペプチド配列は、天然、合成または組換えペプチド配列、またはより大きなポリペプチド/タンパク質の酵素学的/化学的切断によって調製された配列であり得る。「天然」なる用語は、身体の代謝系の一部であり、インビボにて産生されるペプチド配列を意味する。「組換え」なる用語は、組換え技術の方法により産生されるペプチド配列を意味する。そのような配列は、インビボおよびインビトロの両方において産生され得る。「合成」なる用語は、化学合成により産生される配列である。
【0040】
本発明によると、単離ペプチド配列は、タンパク質の配列に由来し得る。「由来する」なる用語は、当分野にて既知のいずれかの技術、例えば組換え体産生技術または化学合成を用いて単離ペプチド配列を作製するにあたり、プロトタイプとして用いたタンパク質のアミノ酸配列の内部フラグメントと、その単離ペプチド配列が、同一のアミノ酸配列を有することを意味する。
【0041】
このように、本発明のペプチド配列は、タンパク質の配列に由来する配列を含み得る。一態様において、本配列は、神経成長因子(NGF)、例えばSwissProt受入番号:NP_02497にて同定されるNGFポリペプチドの配列に由来し得る;別の態様にて、本配列は、ニューロトロフィン-3(NT-3)、例えばSwissProt受入番号:NP_002518にて同定されるNT-3ポリペプチドの配列に由来し得る;さらに別の態様において、本配列は、ニューロトロフィン-4/5(NT-4/5)、例えばSwissProt受入番号:AAAV38176にて同定されるNT-4/5ポリペプチドの配列に由来し得る;または本配列は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、例えばSwissProt受入番号:NP_733928において同定されるBDNFポリペプチドの配列に由来し得る。
【0042】
好ましい一態様において、本発明は、配列番号1、5、7、11、15、19または23として同定された配列から選択してもよいNGFに由来する配列に関する。別の好ましい態様において、本発明はNT3に由来する配列に関し、その配列は配列番号2、6、8、12、16、20または24の配列から選択され得る。さらに別の好ましい態様において、本発明は、NT4/5に由来する配列に関する。そのような配列は、配列番号3、5、9、13、17、21または25として同定された配列から選択され得る。さらに別の好ましい態様において、本発明は、BDNFの配列に由来する配列に関する。後者の配列は、配列番号4、6、10、14、18、22または26として同定された配列から選択され得る。
【0043】
本出願において、アミノ酸残基の標準的3文字コードに加え、標準的一文字コードも適用する。アミノ酸の略号は、生化学命名法のIUPAC-IUB合同委員会(IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature)の勧告に従っている(Eur. J. Biochem, 1984, vol. 184, pp 9-37)。明細書および特許請求の範囲を通して、天然アミノ酸についての3文字コードまたは1文字コードのいずれかを用いている。LまたはD型を特定していない場合、問題のアミノ酸は、天然のL型(Pure & Appl. Chem. Vol. (56(5) pp 595-624 (1984)を参照)またはD型を有し、形成されたペプチドがL型、D型のアミノ酸、またはL型とD型の混合配列で構成され得ると解釈されたい。
【0044】
何も特定されていない場合は、本発明のペプチドのC末端アミノ酸は遊離のカルボン酸として存在すると解されたく、またこれは「-OH」と示され得る。しかしながら、本発明の化合物のC末端アミノ酸はアミド化誘導体でもよく、その場合「-NH2」と示す。特に何も述べていない場合は、ポリペプチドのN末端アミノ酸は遊離のアミノ基を含み、またこれは「H-」と示され得る。
【0045】
特に定めのない場合は、アミノ酸は、天然または非天然を問わず、あらゆるアミノ酸、例えばアルファアミノ酸、ベータアミノ酸および/またはガンマアミノ酸から選択され得る。従って、そのグループには以下が含まれるがこれらに限定されない:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Phe、Trp、Met、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Gln、Asp、Glu、Lys、Arg、His Aib、Nal、Sar、Orn、リシン類似体、DAP、DAPAおよび4Hyp。
【0046】
また、本発明によると、化合物/ペプチドの修飾、例えばアミノ酸のグリコシル化および/またはアセチル化もなされ得る。
【0047】
本発明によると、塩基性アミノ酸残基は、アミノ酸残基Arg、LysおよびHisに代表され、酸性アミノ酸残基は、アミノ酸残基GluおよびAspに代表される。塩基性およびアミノ酸残基は荷電性アミノ酸残基のグループを構成する。疎水性アミノ酸残基のグループは、アミノ酸残基Leu、Ile、Val、Phe、Trp、TyrおよびMetに代表される。
【0048】
一実施態様において、変異体とは、挿入、欠失および保存的置換を含む置換の、数および範囲が増大するにつれ、好ましい既定の配列から徐々に異なっていくアミノ酸配列を示すと解することができる。この差異は、既定の配列と変異体との間の相同性の減少として測定される。
【0049】
一局面において、「ペプチド配列の変異体」なる用語は、ペプチドが、例えば1以上のアミノ酸残基の置換によって修飾されている可能性があることを意味する。L型およびD型の両アミノ酸が用いられ得る。他の修飾には、エステル、糖などの誘導体が含まれ得る。その例にはメチルおよびアセチルエステルなどがある。
【0050】
別の局面において、本発明によるペプチドフラグメントの変異体は、同じ変異体もしくはそのフラグメント中に、または別の変異体もしくはそのフラグメント間に、少なくとも1つの置換、例えば互いに独立して導入された複数の置換を含み得る。従って、複合体の変異体またはそのフラグメントは互いに独立して保存的置換を含んでもよく、ここで、複合体の変異体またはそのフラグメントの少なくとも1つのグリシン(Gly)はAla、Val、LeuおよびIleからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアラニン(Ala)はGly、Val、LeuおよびIleからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのバリン(Val)はGly、Ala、LeuおよびIleからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのロイシン(Leu)はGly、Ala、ValおよびIleからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのイソロイシン(Ile)はGly、Ala、ValおよびLeuからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン酸(Asp)はGlu、AsnおよびGlnからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのアスパラギン(Asn)はAsp、GluおよびGlnからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのグルタミン(Gln)はAsp、GluおよびAsnからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのフェニルアラニン(Phe)はTyr、Trp、His、Proからなるアミノ酸群から選択される、好ましくはTyrおよびTrpからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのチロシン(Tyr)はPhe、Trp、His、Proからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸、好ましくはPheおよびTrpからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体のフラグメントの少なくとも1つのアルギニン(Arg)はLysおよびHisからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのリシン(Lys)はArgおよびHisからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのプロリン(Pro)はPhe、Tyr、TrpおよびHisからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換され、それぞれ独立した変異体もしくはそのフラグメントが生じ、複合体の変異体もしくはそのフラグメントの少なくとも1つのシステイン(Cys)はAsp、Glu、Lys、Arg、His、Asn、Gln、Ser、ThrおよびTyrからなるアミノ酸群から選択されるアミノ酸により置換される。
【0051】
ペプチド配列の変異体についての他の基準は上記に記述している。
【0052】
従って上記から、ペプチドフラグメントの同じ機能を有する等価物またはその機能的等価物のフラグメントは、本明細書の上記に記載のような2以上の保存的アミノ酸群からの2以上の保存的アミノ酸置換を含み得るということになる。「保存的アミノ酸置換」なる用語は本明細書において「相同的アミノ酸置換」なる用語と同義に用いられる。
【0053】
保存的アミノ酸群は以下の通りである:
P、A、G(中性、弱疎水性)、
S、T(中性、親水性)
Q、N(親水性、酸アミン)
E、D(親水性、酸性)
H、K、R(親水性、塩基性)
A、L、I、V、M、F、Y、W(疎水性、芳香族性)
C(架橋結合形成)。
【0054】
保存的置換は本発明の好ましい既定のペプチドまたはそのフラグメントのいずれかの位置に導入され得る。しかしながら、非保存的置換、限定されないが具体的には1以上のいずれかの位置における非保存的置換を導入することが望ましい場合もある。
【0055】
本発明のペプチドの機能的に同等なフラグメントの形成を導く非保存的置換には、例えばi)極性が実質的に異なる置換、例えば非極性側鎖(Ala、Leu、Pro、Trp、Val、Ile、Leu、PheもしくはMet)を有する残基の、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、AsnもしくはGlnのような極性側鎖を有する残基またはAsp、Glu、ArgもしくはLysのような荷電性アミノ酸による置換、または、非極性残基の荷電性または極性残基への置換;および/またはii)ペプチド基本骨格の配向への影響が実質的に異なる置換、例えばProまたはGlyの別の残基による置換;および/またはiii)電荷が実質的に異なる置換、例えばLys、HisまたはArgのような正電荷残基からGluまたはAspのような負電荷残基への置換(およびその逆);および/またはiv)立体容積が実質的に異なるもの、例えばAla、GlyまたはSerのような小さな側鎖を有する残基からHis、Trp、PheまたはTyrのようなかさ高い残基への置換(およびその逆)があり得る。
【0056】
一実施態様において、アミノ酸置換は、疎水性および親水性の程度ならびにアミノ酸側鎖の置換基の電荷、大きさなどの相対的な類似性に基づいてなされ得る。上記の様々な特性を踏まえた代表的なアミノ酸置換は当業者によく知られるところであり、以下を含む:アルギニンとリシン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;およびバリンとロイシンとイソロイシン。
【0057】
本発明によると、上記のような単離ペプチド配列は化合物として形成され得る。
【0058】
化合物は上記のいずれかから選択される個々のアミノ酸配列の単一コピーを含有してもよく、またはそのようなアミノ酸配列の2以上のコピーを含有してもよい。このことは、本発明の化合物を、ペプチド配列の単量体として形成してもよく(単一の個々のペプチド配列を含有するような)、またはペプチド配列の多量体として形成してもよい(つまり2以上の個々のペプチド配列を含有する。ここで、個々のペプチド配列は、同じ配列の2以上のコピー、または2以上の異なる個々のペプチド配列であり得る)ということを意味する。多量体はまた、完全長配列およびその配列の1以上のフラグメントの組み合わせを含み得る。一実施態様において、化合物は2つのアミノ酸配列を含み得るが、そのような化合物は本明細書において二量体と記載し、別の実施態様において、化合物は2より多いアミノ酸配列、例えば3、4またはそれ以上の配列を含み得る。本発明は好ましくは、本発明の2または4のペプチド配列を含有する化合物に関する。しかしながら、3、5、6、7、8又それ以上の配列を含む化合物も本発明の範囲内にある。
【0059】
二量体または多量体として形成されたペプチドフラグメントは、同一アミノ酸配列を有していてもよく、または異なるアミノ酸配列を有していてもよい。そのような化合物の一例には配列番号1および配列番号2を含む化合物があり得、別の例には配列番号3および配列番号4を含む化合物があり得る。本発明の配列のあらゆる他の組み合わせも作製できる。その化合物における配列はペプチド結合によって互いに連結されていてもよく、またはリンカー分子またはグルーピングによって互いに連結していてもよい。
【0060】
本発明の化合物は、同じ配列の2以上の同一コピー、例えば配列番号1-26から選択される配列の2コピーを含んでもよく、ここで、その配列はリンカー分子またはグルーピングによって他方の配列と連結している。配列がリンカーグルーピングにより連結している化合物が好ましい。そのような連結グルーピングの一例は、アキラルなジ、トリまたはテトラカルボン酸であり得る。適切なアキラルなジ、トリまたはテトラカルボン酸およびそのような化合物の産生法(リガンド掲示構築法(ligand presentation assembly method)(LPA))は国際公開第00/18791号および国際公開第2005/014623号パンフレットに記載されている。可能性あるリンカーの別の例は、アミノ酸のリシンであり得る。個々のペプチド配列は例えばリシンのようなコア分子に結合してもよく、これにより個々のペプチド配列の樹状多量体(デンドリマー)が形成され得る。デンドリマーの産生はまた当分野においてよく知られており(国際出願第PCT/US90/02039号明細書、Lu et al., (1991) Mol Immunol. 28:623-630; Defoort et al., (1992) Int J Pept Prot Res. 40:214-221; Drijfhout et al. (1991) Int J Pept Prot Res. 37:27-32)、デンドリマーは研究および医薬用途に現在広く用いられている。リシンコア分子に結合した4つの個々のアミノ酸配列を含むデンドリマー化合物を提供することは、本発明の好ましい実施態様である。4つの個々のアミノ酸配列のうち少なくとも1つが上記の式のアミノ酸配列を含むことも好ましい。デンドリマー化合物の4つの個々のアミノ酸配列の全てが独立して上記の式のアミノ酸配列を含むと、さらにより好ましい。
【0061】
本発明の多量体化合物は好ましくは、LPA二量体またはリシンデンドリマーとして形成する。しかしながら、本発明の2以上の個々の配列を含む他種の多量体化合物も、実施態様によって好ましい場合がある。
【0062】
II 生物学的活性
本発明のペプチド配列および本発明の配列を含む化合物は、生物学的活性を有する。本発明は好ましくは、以下の能力から選択される生物学的活性に関する:
−神経細胞の分化(例えば神経突起の成長または神経細胞前駆体の分化)に関連する神経可塑性を刺激する、
−記憶および学習と関連する神経可塑性(例えば形態学的可塑性および/またはシナプス効力)を刺激する、
−細胞の生存を刺激する、例えばアポトーシスを抑制する、および、
−ニューロトロフィン受容体、例えばTRK受容体またはp75(NTR)の活性を調節する。
【0063】
従って、一態様において、上記のような単離ペプチド配列は、ニューロトロフィン受容体である、TRKA、TRKBおよびTRKCから選択されるTRK受容体と結合することができる。好ましい一態様において、受容体はTRKAであり得、別の好ましい態様において、受容体はTRKBであり得、さらに別の好ましい態様において、受容体はTRKCであり得る。
【0064】
本発明の発明者らは、全てのニューロトロフィン(NGF、NT-3、NT-4/5、BDNF)に存在するアミノ酸モチーフを同定し、本発明のペプチドフラグメントの生物学的活性と、それらの配列中のこれらのモチーフの存在とを関連づけた。本発明によるモチーフは、本発明のペプチド配列がTRK受容体すなわちTRKA、BまたはCと結合するのに不可欠である。TRK受容体すなわちTRK A、BまたはCは、神経細胞の分化を駆動する神経系における主要な受容体である。TRK受容体は、神経細胞の生存の促進においても重要であり、学習および記憶に関連する神経可塑性にも関与する。
【0065】
上述のように、ニューロトロフィン受容体は神経系の通常機能において重要な役割を持つが、それらの受容体は病態とも関連している。このように、TRKBの強力な発癌作用が実証されており、また特定の生存促進機能が明らかになっている:腫瘍細胞の転移能の一因となり得るTRKBのアノイキス(細胞マトリックスの相互作用の欠如に起因するアポトーシス)抑制能(これによりTRKBを過剰発現するヒト腫瘍の攻撃的性質の可能性ある説明ができる)(Douma, S.;van Laar, T.;Zevenhoven, J.;Meuwissen, R.;van Garderen, E.;Peeper, D. S. : Suppression of anoikis and induction of metastasis by the neurotrophic receptor TrkB. Nature 430: 1034-1040, 2004);特定のニューロトロフィン(例えばBDNF)の増加したレベルは、癲癇などの病状と関連している(Binder et al., Trends Neurosci. 2001,24 : 47-53)。
【0066】
従って、本発明のペプチド配列の、ニューロトロフィン受容体との結合能、およびその受容体の活性を調節する能力は、正常な状態および病態の両方における受容体の活性に依存するいずれかの生物学的反応を調節する働きがある。従って、本発明は、ニューロトロフィン受容体、例えばTRKファミリーの活性を調節する方法であって、本発明の単離ペプチド配列またはその配列を含む化合物を用いることを含む方法を提供する。「ニューロトロフィン受容体の活性を調節する」なる語句は、ニューロトロフィン受容体の活性を活性化するおよび抑制することの両方に関する。一態様において、本発明は、ニューロトロフィン受容体を活性化する方法に関し、別の態様において、本発明はニューロトロフィン受容体を阻害することに関する。ニューロトロフィン受容体は、一態様において、TRKAであり得、別の態様においてTRKBであり得、さらに別の態様においてTRKCであり得、さらに、ニューロトロフィン受容体はいくつかの態様においてp75(NTR)であり得る。
【0067】
本発明の単離ペプチド配列は、神経細胞の分化を刺激することができる。「神経細胞分化」なる用語は、神経前駆細胞または神経幹細胞の分化、および神経細胞の分化(例えば分化した神経細胞の成熟)の両方と解される。そのような分化の例は、未成熟神経細胞からの神経突起成長、神経突起の分枝、神経細胞の再生であり得る。好ましい一態様において、本発明は、神経前駆/幹細胞または未成熟神経細胞の分化を刺激することに関する場合があり、別の好ましい態様において本発明は、成熟神経細胞、例えば外傷を受けたが生存している神経細胞からの神経突起成長を刺激することに関する場合がある。従って、本発明は、神経細胞の分化を刺激する方法であって、本発明のペプチド配列またはその配列を含む化合物を用いる方法にも関する。
【0068】
いくつかの好ましい態様において、本発明は、学習および記憶に関連するペプチド配列の活性に関し得る。特に、好ましい一態様において、本発明は、神経細胞の形態学的可塑性、例えばスパイン形成を刺激する本ペプチド配列の能力に関し、別の好ましい態様において、本発明はシナプス効力を促進する本配列の能力に関し得る。従って、本発明はさらに、記憶および/または学習を刺激する方法であって、本発明のペプチド配列および/またはその配列を含む化合物を用いることを含む方法に関する。本発明は、短期間の記憶および長期間の記憶の両方に関する。
【0069】
本発明のペプチド配列は神経細胞の生存を刺激することもできる。本発明は、外傷および変性疾患の両方のために神経細胞の生存を刺激する能力に関する。従って、本発明はさらに、細胞の生存、好ましくは神経細胞の生存を刺激する方法であって、本発明のペプチド配列および/またはその配列を含む化合物を用いる方法に関する。
【0070】
本発明のペプチド配列およびそれを含む化合物は、細胞成長培地の可溶性/可動性物質および細胞成長基質の不動性物質の両方として、生物学的に活性である。いくつかの態様においては、ペプチド物質またはそれを含む化合物を細胞基質として用いるのが好ましい場合がある。しかしながら、可溶性ペプチド配列またはそれを含む化合物が最も好ましい。
【0071】
本発明のペプチド配列およびそれを含む化合物の生物学的活性の例を、適用(本発明の以下の明細書および実施例を参照のこと)に示すが、これらに限定されない。
【0072】
神経突起成長の刺激
神経突起成長を促進し、ならびに神経細胞の再生および/または分化を刺激する能力を持つ、ある種の内在性栄養因子のような物質は、例えば神経細胞の再生および他の形態の神経可塑性を促進する化合物を探索するにあたり第一標的となる。本発明の化合物の能力を評価するために、シグナル伝達に関連する神経突起成長を刺激する能力、細胞接着を干渉する能力、神経突起成長を刺激する能力、神経を再生する能力を調べることができる。本発明の化合物は、神経突起成長を促進することが示され、従って、神経連絡の再生、およびそれによる損傷後の機能的回復のための良好な促進剤であり、ならびにそのような効果が要求される他の症状における神経機能の促進剤であると考えられる。
【0073】
本文脈における「分化」は、神経細胞の成熟過程、およびその神経細胞の最後の細胞分裂後に起こる神経突起の成長に関する。本発明の化合物は、神経細胞分裂を止め、その細胞の成熟を開始させる、例えば神経突起の成長を開始させる能力を有し得る。あるいは、「分化」は、神経前駆細胞、未成熟神経細胞または胚幹細胞の遺伝学的、生化学的、形態学的および生理学的な形質転換過程を開始させ、当分野にて明らかにされているような正常な神経細胞の機能的特性を有する細胞の形成を導くことに関する。本発明において、「未成熟神経細胞」とは、当分野にて神経細胞に特徴的な性質として認められている神経細胞特性の少なくとも1つを有する細胞として定義する。
【0074】
本発明によると、少なくとも1つの上記ペプチド配列を含む化合物は、神経突起成長を刺激することができる。本発明は、神経突起成長の改善/刺激、例えば対照/非刺激細胞の神経突起成長値に対する約50%または75%の改善/刺激、またはより強い刺激、例えば100%-150%の間など、例えば約125%、150%-200%の間など、例えば約175%、250%-300%の間など、例えば約275%、300%-350%の間など、例えば約325%、350%-400%の間など、例えば約375%、400%-450%の間など、例えば約425%、450%-500%の間など、500%-600%または600%以上の改善/刺激に関する。
【0075】
候補化合物の神経突起成長を刺激する能力の評価は、例えば本明細書の実施例1に記載のような、神経突起成長を評価するための既知のいずれかの方法またはアッセイを用いて行うことができる。
【0076】
本発明によると、化合物は、細胞成長基質の不溶性の不動性成分としても、細胞成長培地の可溶性成分としても、神経突起生成活性を有する。本文脈において、「不動性」とは、化合物が水または水溶液に溶解しない物質に結合/付着し、それによりその溶液において同様に不溶性となることを意味する。医薬用途においては、不溶性および可溶性の両化合物がその用途に考えられるが、可溶性化合物が好ましい。「可溶性化合物」とは、水または水溶液に溶解する化合物と解する。
【0077】
神経細胞の生存の刺激
損傷からの神経細胞の生存を増強する、ならびに外傷および疾患時における神経細胞の変性および/またはアポトーシスを抑制する能力を有する物質は、例えばアルツハイマー病またはパーキンソン病のような神経変性疾患を治療するための新規な医薬の候補化合物の探索における第一標的である。本発明のペプチドの能力を評価するために、生存に関係するシグナル伝達を刺激する能力、アポトーシスに関係する細胞応答を干渉する能力、神経の再生を刺激する能力を調べることができる。本発明の化合物により、神経細胞生存の促進および細胞喪失の減少が示されるので、本発明の化合物は、脳および/または末梢神経系において神経連結の再生を促進し、これにより外傷または疾患による損傷後の機能回復を促進する良好な候補物質であり、ならびに神経機能を促進する効果を要する他のいずれかの状態における神経機能の促進剤であると考えられる。
【0078】
本文脈において「生存」は、細胞損傷後の細胞機能の維持および/または回復に関連する過程に関する。本発明の化合物は、細胞を死へ追いやる過程を止めるまたは減弱する、例えば外傷または疾患による細胞損傷によって開始した神経細胞のアポトーシスを抑制することが可能であり得る。あるいは、「生存」は、細胞の損傷と関連する細胞死を導く過程の阻害、および、細胞、特に神経細胞、例えば前駆細胞、未成熟神経細胞または胚性幹細胞または当分野にて規定される正常な機能特性を有する成熟神経細胞の、遺伝学的、生化学的、形態学的および生理学的な形質転換または再構築過程の開始に関する。本発明は「未成熟神経細胞」を、神経細胞に特徴的な性質として当分野において認められている神経細胞特性の少なくとも1つを有する細胞と定義する。
【0079】
本発明によると、少なくとも1つの上記ペプチド配列を含む化合物は、神経細胞の生存を刺激することができる。本発明は、神経細胞の生存の刺激、例えば対照/非刺激細胞の生存値に対して約75%の刺激、例えば50%の刺激(約150%など)、例えば100%の刺激(約250%など)、例えば200%の刺激(約350%など)、例えば300%の刺激(約450%など)、例えば400%の刺激(約500%など)に関する。
【0080】
候補化合物の神経細胞の生存を刺激する能力の評価は、例えば本明細書の実施例2に記載のような、神経細胞の生存を評価するための既知のいずれかの方法またはアッセイを用いて行うことができる。
【0081】
本発明によると、化合物は、不溶性および可溶性化合物の両方として、生存促進活性を有する。本文脈において、「不溶性」とは、化合物が水または水溶液に溶解しない物質に結合/付着し、それによりその化合物がその溶液において同様に不溶性となることを意味する。医薬用途においては、不溶性および可溶性の両化合物がその用途に考えられるが、可溶性化合物が好ましい。「可溶性化合物」とは、水または水溶液に溶解する化合物と解される。
【0082】
III 個々のペプチド配列の産生
本発明のペプチド配列は、あらゆる従来の合成法、組換えDNA技術、ペプチド配列が由来する完全長タンパク質の酵素的切断またはこれらの方法の組み合わせによって調製できる。
【0083】
組換え体の調製
従って、一態様において、本発明のペプチドは組換えDNA技術を用いて産生する。
【0084】
ペプチドまたはそのペプチドの起源である対応する完全長タンパク質をコードするDNA配列は、確立された標準法、例えばBeaucage and Caruthers, 1981, Tetrahedron Lett. 22:1859-1869に記載のホスホアミジン法(phosphoamidine method)、またはMatthes et al., 1984, EMBO J. 3:801-805に記載の方法によって合成的に調製することができる。ホスホアミジン法によると、オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成装置にて合成し、精製し、アニーリングし、適切なベクターにライゲートしてクローニングする。
【0085】
ペプチドをコードするDNA配列は、そのペプチドの起源である対応する完全長タンパク質をコードするDNA配列を、標準的プロトコル(Sambrookら、「Molecular cloning:A Laboratory manual」第2版、CSHL Press、Cold Spring Harbor, NY, 1989)に従ってDNAase Iを用いて断片化することにより調製することもできる。本発明は、上記のタンパク質群から選択される完全長タンパク質に関する。本発明の完全長タンパク質をコードするDNAは、あるいは、特異的制限エンドヌクレアーゼを用いて断片化されていてもよい。DNAフラグメントは、Sambrookら、「Molecular cloning:A Laboratory manual」第2版、CSHL Press、Cold Spring Harbor、NY、1989に記載の標準的手順を用いてさらに精製する。
【0086】
完全長タンパク質をコードするDNA配列はまた、ゲノムまたはcDNA起源であってもよく、例えば、標準的技術(Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor, 1989を参照)に従って、ゲノムまたはcDNAライブラリーを調製し、合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションにより完全長タンパク質の全部または一部をコードするDNA配列をスクリーングすることによって得られ得る。DNA配列はまた、例えば米国特許第4,683,202号明細書またはSaiki et al., 1988, Science 239:487-491に記載されているように、特異的プライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応によっても調製することができる。
【0087】
次いでDNA配列を組換え発現ベクターに挿入するが、このベクターには、組換えDNA技術に便利に用いられ得る、あらゆるベクターがあり得る。ベクターの選択はしばしば、ベクターを導入する宿主細胞に依拠する。従って、ベクターは、自己複製ベクター、つまりその複製が染色体の複製から独立している、染色体外物質として存在するベクター、例えばプラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入されると、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体とともに複製されるものであり得る。
【0088】
ベクターにおいて、ペプチドまたは完全長タンパク質をコードするDNA配列は、適切なプロモーター配列に作動可能に連結されているべきである。プロモーターは、選択した宿主細胞において転写活性を示し、宿主細胞に対して相同性または異種性のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子に由来し得る、あらゆるDNA配列であり得る。哺乳類細胞においてコードDNA配列の転写を導く適切なプロモーターの例には、SV40プロモーター(Subramani et al., 1981, Mol. Cell Biol. 1:854-864)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter et al., 1983, Science 222: 809-814)またはアデノウイルス2主要後期プロモーターがある。昆虫細胞に用いるのに適切なプロモーターには、ポリヘドリンプロモーター(Vasuvedan et al., 1992, FEBS Lett. 311:7-11)がある。酵母宿主細胞に用いるのに適切なプロモーターには、酵母の解糖系遺伝子からのプロモーター(Hitzeman et al., 1980, J. Biol. Chem. 255:12073-12080; Alber and Kawasaki, 1982, J. Mol. Appl. Gen. 1: 419-434)またはアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(「Genetic Engineering of Microor-ganisms for Chemicals」、Hollaenderら編、Plenum Press, New YorkのYoungら、1982)またはTPI1(米国特許第4,599,311号明細書)またはADH2-4c(Russell et al., 1983, Nature 304:652-654)プロモーターなどがある。糸状菌宿主細胞に用いるのに適切なプロモーターには、例えば、ADH3プロモーター(McKnight et al., 1985, EMBO J. 4:2093-2099)またはtpiAプロモーターがある。
【0089】
コードDNA配列はまた、適切なターミネーター、例えばヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter et al., op. cit.)または(真菌宿主のための)TPI1(Alber and Kawasaki, op. cit.)もしくはADH3(McKnight et al., op. cit.)プロモーターなどと作動可能に連結していてもよい。ベクターは、ポリアデニル化シグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5 Elb領域からの)、転写エンハンサー配列(例えばSV40エンハンサー)および翻訳エンハンサー配列(例えばアデノウイルスVA RNAをコードする配列)のような要素をさらに含んでもよい。
【0090】
組換え発現ベクターは、問題の宿主細胞においてベクターの複製を可能にするDNA配列をさらに含み得る。かかる配列の例(宿主細胞が哺乳類細胞の場合)にはSV 40の複製起点がある。ベクターは、選択可能マーカー、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子、またはネオマイシン、ハイグロマイシン(hydromycin)またはメトトレキサートなどの薬物に対する耐性を与える産物をコードする遺伝子のような、宿主細胞において欠けているものを補完する産物の遺伝子をさらに含み得る。
【0091】
ペプチドまたは完全長タンパク質をコードするDNA配列、プロモーターおよびターミネーターをそれぞれ連結し、複製に必要な情報を含む適切なベクターにそれらを導入するのに用いる方法は、当業者によく知られている(例えばSambrook et al., op.cit.を参照)。
【0092】
本発明の組換えペプチドを得るために、コードDNA配列を第2のペプチドコード配列およびプロテアーゼ切断部位コード配列と効果的に融合させて、融合タンパク質をコードするDNAコンストラクトを調製し(ここでプロテアーゼ切断部位コード配列はHBPフラグメントと第2のペプチドコードDNAの間に位置する)、組換え発現ベクターに挿入し、組換え宿主細胞において発現させてもよい。一態様において、第2のペプチドは、グルタチオン-S-レダクターゼ、仔ウシチモシン、細菌チオレドキシンまたはヒトユビキチンの天然もしくは合成変異体あるいはそれらのペプチドを含む群から選択されるがこれらに限定されない。別の態様において、プロテアーゼ切断部位を含むペプチド配列は、アミノ酸配列IEGRを有するXa因子、アミノ酸配列DDDDKを有するエンテロキナーゼ、アミノ酸配列LVPR/GSを有するトロンビン、またはアミノ酸配列XKXを有するアクロモバクターリティカス(Acharombacter lyticus)の切断部位であり得る。
【0093】
発現ベクターを導入する宿主細胞は、ペプチドまたは完全長タンパク質を発現することができ、好ましくは無脊椎動物(昆虫)細胞または脊椎動物細胞(例えばアフリカツメガエル(Xenopus laevis)卵母細胞もしくは哺乳類細胞)のような真核細胞である、あらゆる細胞があり得、特に昆虫および哺乳類細胞であり得る。適切な哺乳類細胞株の例は、HEK293(ATCC CRL-1573)、COS(ATCC CRL-1650)、BHK(ATCC CRL-1632、ATCC CCL-10)またはCHO(ATCC CCL-61)細胞株である。哺乳類細胞をトランスフェクトし、その細胞に導入されたDNA配列を発現させる方法は、例えばKaufman and Sharp, J. Mol. Biol. 159, 1982, pp. 601-621;Southern and Berg, 1982, J. Mol. Appl. Genet. 1:327-341;Loyter et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79: 422-426; Wigler et al., 1978, Cell 14:725;Somatic Cell Genetics 7, p. 603のCorsaroおよびPearson, 1981; Graham and van der Eb, 1973, Virol. 52:456;およびNeumann et al., 1982, EMBO J. 1:841-845に記載されている。
【0094】
あるいは、真菌細胞(酵母細胞など)を宿主細胞として用いてもよい。適切な酵母細胞の例には、サッカロミセス種(Saccharomyces spp.)または分裂酵母種(シゾサッカロミセス種)(Schizosaccharomyces spp.)、特に出芽酵母(サッカロミセス・セレビシエ)(Saccharomyces cerevisiae)株の細胞などがある。他の真菌細胞の例には、糸状菌、例えばアスペルギルス種(Aspergillus spp.)またはアカパンカビ種(ニューロスポラ種)(Neurospora spp.)、特にコウジカビ(アスペルギルス・オリザエ)(Aspergillus oryzae)またはクロコウジカビ(アスペルギルス・ニゲル)(Aspergillus niger)株の細胞がある。タンパク質発現のためにアスペルギルス種を使用することは、例えば欧州特許第238023号明細書に記載されている。
【0095】
細胞の培養に用いられる培地は、哺乳類細胞の成長に適したあらゆる従来の培地、例えば適切な補助剤を含有する血清含有もしくは無血清培地、または昆虫、酵母もしくは真菌細胞の成長に適切な培地であり得る。適切な培地は市場から入手可能であり、または公表されたレシピ(例えばアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Cul-ture Collection)のカタログ)従って調製してもよい。
【0096】
次いで、細胞から組換え技術により産生されたペプチドまたは完全長タンパク質は、遠心分離またはろ過により培地から宿主細胞を分離し、上清または濾液のタンパク質性成分を塩、例えば硫酸アンモニウムにより沈殿させ、様々なクロマトグラフィー方法、例えばHPLC、イオン交換クロマトフラフィー、アフィニティークロマトグラフィーにより精製することなどを含む従来法によって、培養培地から回収できる。
【0097】
合成的調製
ペプチドの合成的産生方法は当分野においてよく知られている。合成ペプチドを産生するための詳細な説明ならびに実施アドバイスは、「Synthetic Peptides:A User's Guide(Advances in Molecular Biology)」、Grant G. A.編、Oxford University Press、2002または「Pharmaceutical Formulation:Devel-opment of Peptides and Proteins」、FrokjaerとHovgaard編、Taylor and Francis、1999に見ることができる。
【0098】
ペプチドは、例えばFmoc化学およびAcm保護システインを用いて合成してもよい。ペプチドを逆相HPLCにより精製した後、ペプチドをさらに加工して例えば環状のCまたはN末端修飾アイソフォームを得ることができる。環化および末端修飾方法は当分野でよく知られており、上記に引用のマニュアルに詳細に記載されている。
【0099】
好ましい実施態様において、本発明のペプチド配列は、合成的に、特に配列補助ペプチド合成(Sequence Assisted Peptide Synthesis)(SAPS)法によって産生する。
【0100】
濾過のためにポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレンの容器においてバッチ式に、あるいは、完全自動ペプチド合成装置においてN-a-アミノ保護基としての9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)またはtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、および側鎖官能基のための適切な一般的保護基を用いた、ポリアミド固相法(Dryland, A. and Sheppard, R.C., (1986) J.Chem. Soc. Perkin Trans. I, 125 - 137)の連続流バージョンにおいて、SAPSによってペプチドを合成することができる。
【0101】
合成した個々のペプチド配列は、次いで当分野においてよく知られている技術を用いて多量体として形成することができ、例えば、配列の二量体は国際公開第00/18791号パンフレットに記載されているLPA法によって、樹状ポリマー(denrimeric polymer)は国際特許出願第PCT/US90/02039号明細書に記載されているMAP合成によって得ることができる。
【0102】
IV 抗体
本発明の目的は、NGF、NT-3、NT-4/5、BDNF上の、本発明のモチーフまたは配列番号1-26から選択される配列またはその配列のフラグメントを含むエピトープを認識し、選択的に結合できる抗体、抗原結合フラグメントまたはその組換えタンパク質を提供することである。
【0103】
「エピトープ」なる用語は、(その抗原の)抗体により認識される(これにより免疫反応が引き起こされる)(抗原分子上の)特異的な原子団を意味する。「エピトープ」なる用語は「抗原決定基」なる用語と同等である。エピトープは、連続したアミノ酸配列内のように近接近して位置するか、または抗原のアミノ酸配列の遠隔部位に位置するがタンパク質の折り畳みにより互いに接近している、3以上のアミノ酸残基、例えば4、5、6、7、8アミノ酸残基を含み得る。
【0104】
抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質ファミリーに属し、基本構成要素である免疫グロブリン群またはドメインは、免疫系や他の生物学的認識系の多くの分子において様々な形態にて用いられている。典型的な免疫グロブリンは、可変領域として知られる抗原結合領域および定常領域として知られる非可変領域を含む4つのポリペプチド鎖を有する。
【0105】
天然の抗体および免疫グロブリンは通常、2つの同一軽(L)鎖および2つの同一重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は1つの共有ジスルフィド結合により重鎖と結合しているが、ジスルフィド結合の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖および軽鎖はまた、一定の間隔をおいて鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端に、いくつかの定常領域が附随する可変領域(VH)を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変領域(VL)を有し、他方の末端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の第1の定常領域とともに整列し、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域とともに整列している。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖の可変領域の間の界面を形成していると考えられている(Novotny J, & Haber E. Proc Natl Acad Sci U S A. 82(14):4592-6, 1985)。
【0106】
免疫グロブリンは、重鎖の定常領域のアミノ酸配列によって、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには少なくとも5つの主なクラスがある:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM。これらのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)に分けられる:例えば、IgG-1、IgG-2、IgG-3およびIgG-4;IgA-1およびIgA-2。各クラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常領域は、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)およびミュー(μ)と呼ばれている。抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる明らかに異なる2つのタイプの1方に割り当てることができる。各クラスの免疫グロブリンのサブユニットの構造および3次元立体配置は周知である。
【0107】
抗体の可変領域の文脈における「可変」なる用語は、可変領域の特定部分の配列が抗体間で大規模に異なることを意味する。可変領域は結合のためのもので、特定の抗原に対するそれぞれの特定の抗体の特異性を決定する。しかしながら、その可変性は抗体の可変領域を通して均一には分布していない。軽鎖および重鎖の両方の可変領域の、相補性決定領域(CDR)と呼ばれ超可変領域としても知られる3つのセグメントに可変性が集中している。
【0108】
可変領域の、より高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれている。天然の重鎖および軽鎖の可変領域はそれぞれ4つのFR領域を含み、大部分はβシートの配置をとり、3つのCDRにより連結されており、これらCDRはβシート構造を連結する、いくつかの場合はβシート構造の一部を成すループを形成している。各鎖のCDRはFR領域により互いに近接近してまとまっており、他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に貢献している。定常領域は、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与のような、様々なエフェクター機能を展開する。
【0109】
本発明における使用が考えられる抗体は、このように、全免疫グロブリン、抗体フラグメント(Fv、Fabおよび同様のフラグメントなど)、可変領域の相補性決定領域(CDR)を含む単鎖抗体、および同様の形態を含む、様々な形態のいずれかであり得、全て本明細書において用いる「抗体」なる広義語の分類に入る。本発明は、ポリクローナルまたはモノクローナルのような、あらゆる特異性の抗体の使用を考慮しており、特定の抗原を認識し反応する抗体に限定されない。好ましい態様において、以下に記載する治療方法およびスクリーニング方法の両方の文脈において、本発明の抗原またはエピトープに対して免疫特異的な抗体またはそのフラグメントを用いる。
【0110】
「抗体フラグメント」なる用語は、完全長抗体の一部分、一般に抗原結合領域または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvフラグメントなどがある。抗体のパパイン消化により、Fabフラグメントと呼ばれる2つの同一抗原結合フラグメント(それぞれ単一の抗原結合部位を有する)、および容易に結晶化する性質から「Fc」フラグメントと呼ばれる残りのフラグメントが産生される。ペプシンで処理すると、抗原と架橋結合可能な2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab')2フラグメント、および残りの他のフラグメント(pFc'と呼ばれる)が生じる。さらなるフラグメントには、二重特異性抗体、直線状(linear)抗体、単鎖抗体分子および複数の抗体フラグメントから形成される多選択性抗体などがあり得る。本明細書において用いられる、抗体に関する「機能的フラグメント」はFv、F(ab)およびF(ab')2フラグメントを意味する。
【0111】
「抗体フラグメント」なる用語は、本明細書において「抗原結合フラグメント」なる用語と互換的に用いられる。
【0112】
抗体フラグメントは、約4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、9アミノ酸、約12アミノ酸、約15アミノ酸、約17アミノ酸、約18アミノ酸、約20アミノ酸、約25アミノ酸、約30アミノ酸またはそれ以上と同じ程度に小さくてもよい。一般的に、本発明の抗体フラグメントは、本明細書において配列番号1-22として同定されたいずれかの配列またはそれらの配列のフラグメントから選択されるペプチド配列を含むエピトープに特異的に結合する抗体と同様の特性または前記抗体と関連する免疫学的特性を有する限りの、大きさの上限を有し得る。従って、本発明の文脈において、「抗体フラグメント」なる用語は「抗原結合フラグメント」なる用語と同義である。
【0113】
抗体フラグメントは、その抗原または受容体と選択的に結合する能力をある程度保持している。いくつかのタイプの抗体フラグメントを以下に規定する:
(1)Fabは、抗体分子の一価の抗原結合フラグメントを含むフラグメントである。Fabフラグメントは、酵素パパインによる完全抗体の消化によって無傷の軽鎖と1つの重鎖の一部を生じさせて産生することができる。
【0114】
(2)Fab'は、ペプシンによる完全抗体の処理およびそれに次ぐ還元によって無傷の軽鎖と重鎖の一部を生じさせて得ることができる抗体分子のフラグメントである。1抗体分子につき2つのFab'フラグメントが得られる。
【0115】
Fab'フラグメントは、重鎖のCH1ドメインのカルボキシル末端に、抗体のヒンジ領域からの1以上のシステインを含むいくつかの残基が加わっていることにより、Fabフラグメントとは異なる。
【0116】
(3)(Fab')2は、完全抗体を酵素ペプシンにより処理し、後の還元を行わないで得られる抗体のフラグメントである。
(4)F(ab')2は、2つのジスルフィド結合によりまとまっている2つのFab'フラグメントの二量体である。
【0117】
Fvは、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。この領域は、1つの重鎖および1つの軽鎖の可変領域の、強い非共有結合による二量体からなる(VH−VL二量体)。この立体配置において、各可変領域の3つのCDRが相互作用してVH−VL二量体の表面上の抗原結合部位を形成している。まとめると、6つのCDRによって抗体に抗原結合特異性が生じている。しかしながら、単一の可変領域(または抗原に特異的なただ3つのCDRを含むFvの半分)であっても、完全な結合部位より親和性は低いが、抗原を認識し結合する能力を有している。
【0118】
(5)単鎖抗体(「SCA」)は、適切なポリペプチドリンカーにより結合した軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含有する遺伝子融合単鎖分子である遺伝子操作により生じた分子として定義される。このような単鎖抗体は、「単鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントとも称する。一般に、Fvポリペプチドは、VHおよびVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これによりsFvは抗原結合のために望ましい構造を形成することができる。sFvの参考のために、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」113: 269-315、RosenburgとMoore編、Springer-Verlag、NY、1994のPluckthunを参照のこと。
【0119】
「二重特異性抗体」なる用語は、同じポリペプチド鎖内に軽鎖可変領域(VL)に連結した重鎖可変領域(VH)を含む(VH-VL)、2つの抗原結合部位を有する小抗体フラグメントを意味する。リンカーが短すぎるため同じ鎖上の2つのドメインが対合できないようなリンカーを用いて、そのドメインが別の鎖の相補的ドメインと対合するようにし、2つの抗原結合部位を生じさせる。二重特異性抗体は、例えば欧州特許第404,097号明細書;国際公開第93/11161号パンフレットおよびHollinger et al., Proc, Natl, Acad Sci, USA 90: 6444-6448 (1993)により完全に記載されている。
【0120】
本発明は、本発明によるエピトープと結合可能な、ポリクローナルおよびモノクローナル両抗体、抗原結合フラグメントおよびそれらの組換えタンパク質を考慮に入れている。
【0121】
ポリクローナル抗体の調製は当業者によく知られている。例えば、「Immunochemical Protocols」(Manson編)、(Humana Press)1-5頁のGreenら、1992、「Production of Polyclonal Antisera」;「Current Protocols in Immunology」2.4.1節のColiganら、「Production of Polyclonal Antisera in Rabbits, Rats Mice and Hamsters」(これらは参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0122】
同様にモノクローナル抗体の調製も慣習的である。例えば、Kohler & Milstein, Nature, 256:495-7 (1975);Coliganら、2.5.1-2.6.7節;および「Antibodies: A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Pub. (1988) 726頁のHarlowらを参照のこと。モノクローナル抗体は、確立された様々な技術によってハイブリドーマ培養物から単離、精製できる。そのような単離技術には、プロテインAセファロース(Protein-A Sepharose)によるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーなどがある。例えばColiganら、2.7.1-2.7.12節および2.9.1-2.9.3節;「Methods in Molecular Biology」、1992、10:79-104、Humana Press、NYのBarnesら、「Purification of Immunoglobulin G(IgG)」を参照のこと。
【0123】
モノクローナル抗体のインビトロおよびインビボ操作法は当業者によく知られている。例えば、本発明によって用いられるモノクローナル抗体は、Kohler and Milstein, 1975, Nature 256, 495-7に初めに記載されたハイブリドーマ法によって作製してもよく、または例えば米国特許第4,816,567号明細書に記載のような組換え方法によって作製してもよい。本発明に用いられるモノクローナル抗体はまた、Clackson et al., 1991, Nature 352: 624-628ならびにMarks et al., 1991, J Mol Biol 222: 581-597に記載の技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。別の方法に、組換え方法によりモノクローナル抗体をヒト化してヒト特異的および認識可能配列を含有する抗体を作製するといったものがある。参考のために、Holmes, et al., 1997, J Immunol 158:2192-2201およびVaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81:105-115を参照のこと。
【0124】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団(つまり、その集団を構成する個々の抗体は少量存在し得る潜在的な天然の変異を除いて同一である)から得られる抗体を意味する。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して方向付けられている。さらに、一般にそれぞれの決定基(エピトープ)に対して方向付けられた種々の抗体を含む従来のポリクローナル抗体調製物とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して方向付けられている。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体はハイブリドーマ培養により合成され、他の免疫グロブリンによって汚染されていないという利点がある。修飾語「モノクローナル」とは、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特性を指し、何らかの特定の方法による抗体の産生を要求すると解釈すべきでない。
【0125】
本明細書においてモノクローナル抗体は、望ましい生物学的活性を示す限り、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、一方、鎖の残りの部分が、別の種に由来する抗体、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体のフラグメントと同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)も含む(米国特許第4,816,567号明細書);Morrison et al., 1984, Proc Natl Acad Sci 81: 6851-6855。
【0126】
抗体フラグメントを作製する方法は当分野にてよく知られている(例えばHarlowとLaneの「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、NY、1988(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。本発明の抗体フラグメントは、抗体のタンパク質加水分解によって、またはフラグメントをコードするDNAを大腸菌(E. coli)において発現させることによって、調製することができる。抗体フラグメントは、従来法により完全抗体をペプシンまたはパパインにて消化することによって得ることができる。例えば、抗体フラグメントは、抗体をペプシンにより酵素的に切断してF(ab')2と表わされる5Sフラグメントを生じさせることによって産生できる。このフラグメントをチオール還元剤および必要に応じてジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の保護基を用いてさらに切断し、一価の3.5S Fab'フラグメントを産生することができる。あるいは、ペプシンを用いる酵素的切断により2つの一価のFab'フラグメントおよび1つのFcフラグメントを直接産生する。これらの方法は例えば、米国特許第4,036,945号および米国特許第4,331,647号明細書およびそこに含まれる参考文献に記載されている。これらの特許は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0127】
抗体を切断して、例えば重鎖を分離して一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成し、フラグメントをさらに切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的もしくは遺伝学的技術も、無傷の抗体により認識される抗原にそのフラグメントが結合するならば、用いてもよい。例えば、Fvフラグメントは対合したVHおよびVL鎖を含む。この対合は非共有結合であり得る、または可変鎖が分子間ジスルフィド結合によって連結し得る、もしくはグルタルアルデヒドのような化合物により架橋結合し得る。好ましくは、Fvフラグメントはペプチドリンカーにより連結されたVHおよびVL鎖を含む。これらの単鎖抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドにより連結されたVHおよびVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製する。構造遺伝子は発現ベクターに挿入し、次いで大腸菌などの宿主細胞に導入する。生じた組換え宿主細胞により、2つのVドメインを架橋するリンカーペプチドを有する単鎖ポリペプチド鎖が合成される。sFvを産生する方法は、例えば「Methods:A Companion to Methods in Enzymology」の2:97のWhitlowら、1991;Bird et al., 1988, Science 242:423-426;米国特許第4,946,778号明細書;およびPack, et al., 1993, BioTechnology 11:1271-77に記載されている。
【0128】
抗体フラグメントの別の形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRペプチド(「最小認識単位」)はしばしば抗原の認識および結合に関与する。CDRペプチドは、目的の抗体のCDRをコードする遺伝子をクローニングまたは構築することにより得ることができる。そのような遺伝子は、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて抗体産生細胞のRNAからの可変領域を合成することにより調製する。例えばLarrickら、「Methods:a Companion to Methods in Enzymology」第2巻、106頁(1991)を参照のこと。
【0129】
本発明は、ヒト抗体および非ヒト(例えばマウス)抗体のヒト化型も考慮に入れる。そのようなヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列、例えば配列を認識するエピトープを含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2または抗体の他の抗原結合サブ配列など)である。大部分において、ヒト化抗体は、レピシエントの相補的決定領域(CDR)からの残基が、望ましい特異性、親和性および能力を有する、ヒト以外の種(ドナー抗体)、例えばマウス、ラットまたはウサギのCDRからの残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レピシエント抗体)である。本発明の抗体の最小配列、例えば本明細書に記載のエピトープを認識する配列を含むヒト化抗体は、本発明の好ましい実施態様の1つである。
【0130】
いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レピシエント抗体にも、移入したCDRもしくはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改良し最適化するために行う。一般に、ヒト化抗体は、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、全てまたは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、実質的に全ての、少なくとも1つの、典型的には2つの可変領域を含むであろう。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含むであろう。さらなる詳細については、Jones et al., 1986, Nature 321, 522-525;Reichmann et al., 1988, Nature 332, 323-329;Presta, 1992, Curr Op Struct Biol 2:593-596;Holmes et al., 1997, J Immunol 158:2192-2201およびVaswani, et al., 1998, Annals Allergy, Asthma & Immunol 81:105-115を参照のこと。
【0131】
抗体の産生は、配列番号1-26から選択される配列を含む、ヒトNGF、NT-3、NT-4/5、BDNFの天然または組換えフラグメントを抗原として用いて、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を産生する当分野のいずれかの標準的方法により行うことができる。そのような抗体は、配列番号1-26のペプチド配列の変異体、相同体またはフラグメントを用いても産生することができ、これらの変異体、相同体およびフラグメントは以下の基準を満たす免疫原生ペプチド配列である:
(i)少なくとも5つのアミノ酸の連続アミノ酸配列である;
(ii)本発明のモチーフを含む。
【0132】
抗体は、例えば、本発明による免疫原生フラグメントを処置すべき個体に投与することにより、その個体によってインビボにて産生することもできる。従って、本発明はさらに、上記の免疫原生フラグメントを含むワクチンに関する。
【0133】
本発明はまた、本発明の抗体を産生する方法であって、上記の免疫原生フラグメントを供与する工程を含む方法に関する。
【0134】
本発明は、NGF、NT-3、NT-4/5、BDNFの生物学的機能、特に神経細胞の分化、生存および/または可塑性に関連する機能を調節する、例えば促進するまたは減弱することができる抗体と、前記タンパク質を認識し、その生物学的活性を改変せずに特異的に結合することができる抗体の両方に関する。
【0135】
本発明は、以下のために上記抗体を用いることに関する:1)ヒトNGF、NT-3、NT-4/5、BDNFの活性の調節が処置に有益な場合の治療に適用する、2)診断を目的として前記タンパク質をインビトロおよび/またはインビボにおいて検出および/またはモニターする、3)研究目的。
【0136】
V 医薬組成物
本発明はまた、神経突起成長および/または神経細胞の分化、神経細胞の生存を刺激する、および/または学習および/または記憶を刺激することができる1以上の上記化合物を含む医薬組成物に関する。従って、本発明は、神経細胞の分化を刺激する、および/または神経細胞の再生を刺激する、および/または学習および記憶に関連する神経細胞の可塑性を刺激する、および/または神経細胞の生存を刺激することができる医薬組成物に関する。
【0137】
本発明の文脈において、「医薬組成物」なる用語は、「医薬」なる用語と同義に用いられる。
【0138】
組成物において、ペプチド配列は、個々の単離ペプチドフラグメントまたはそれらの上記で論じたような多量体もしくは二量体を含むように製剤化することができる。
【0139】
対象に投与した医薬組成物は、インビトロまたはインビボにおいて細胞に対して上記の効果を有し得る。
【0140】
本発明の医薬は、有効量の1以上の上記化合物を含む、または上記組成物を製薬的に許容される添加物と組み合わせて含む。そのような医薬は、経口、経皮、筋肉内、静脈内、頭蓋内、くも膜下腔内、脳室内、鼻腔内または肺投与のために適切に製剤化することができる。
【0141】
本発明の化合物に基づく医薬および組成物の製剤開発の方法は、一般にあらゆる他のタンパク質に基づく薬物生産の製剤方法に対応する。潜在的な問題およびこれらの問題の解決に必要なガイドラインは、いくつかの教科書、例えば「Therapeutic Peptides and Protein Formulation. Processing and Delivery Systems」、A.K. Banga編、Technomic Publishing AG、Basel、1995において扱われている。
【0142】
注射剤は通常、溶液もしくは懸濁液として、または注射前に溶液または懸濁液といった液体にするのに適する固体形態として調製する。その調製物は乳化されていてもよい。活性成分はしばしば、その活性成分に適合性の製薬的に許容される賦形剤と混合する。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノールなど、およびそれらの組み合わせである。さらに、必要であれば、その調節物は、少量の補助剤、例えば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、または調製物の有効性または輸送を促進する物質を含有してもよい。
【0143】
本発明の化合物の組成物は当業者に既知の技術によって調製することができる。組成物は、微粒子、リポソーム、マイクロカプセル、ナノ粒子などの製薬的に許容される担体および賦形剤を含有し得る。
【0144】
調製物は、注射によって、必要であれば活性成分が効果を発揮すべき部位に、適切に投与され得る。他の投与様式に適するさらなる組成物には、坐剤、経鼻、肺、および場合により経口製剤が含まれる。坐剤においては、伝統的な結合剤および担体に、ポリアルキレングリコールおよびトリグリセリドなどがある。そのような坐剤は0.5%から10%、好ましくは1-2%の範囲の活性成分を含有する混合物から形成できる。経口製剤は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような通常用いられる賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放性製剤または散剤の形態を取り、一般に10-95%、好ましくは25-70%の活性成分を含有する。
【0145】
他の剤形には、例えば吸入器およびエアロゾルのような経鼻および肺投与に適するものがある。
【0146】
活性化合物は、中性または塩の形態として製剤化してもよい。製薬的に許容される塩には、酸付加塩(ペプチド化合物の遊離アミノ基により形成される)、および例えば塩酸もしくはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのような有機酸により形成される塩などがある。遊離カルボキシル基により形成される塩は、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄のような無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどのような有機塩基から由来してもよい。
【0147】
調製物は投与剤形に適合する方法にて、治療的に有効な量を投与する。投与すべき量は、処置すべき対象、例えば対象の体重および年齢、処置すべき疾患および疾患段階に依拠する。適切な用量の範囲は、1投与、体重1キロにつき通常数百μgのオーダー、好ましくは約0.1μgから5000μgの範囲の活性成分である。単量体型の化合物を用いる場合、適切な用量はしばしば体重1キロにつき0.1μgから5000μgの範囲、例えば約0.1μgから3000μgの範囲、特に約0.1μgから1000μgの範囲である。多量体型の化合物を用いる場合、適切な用量はしばしば体重1キロにつき0.1μgから1000μgの範囲、例えば約0.1μgから750μgの範囲、特に約0.1μgから500μgの範囲、例えば約0.1μgから250μgの範囲である。特に経鼻投与する場合は、他の経路で投与する時よりも少ない用量が用いられる。投与は1回だけ行っても、続いて複数回投与してもよい。用量は投与経路にも依拠し、処置すべき対象の年齢や体重によって変化するであろう。多量体型の好ましい用量は体重70kgにつき1mgから70mgの間であり得る。
【0148】
適応症によっては、局在化または実質的に局在化して適用するのが好ましい。
【0149】
本発明の化合物は、そうでない場合を除いて充分に活性であり、調製物が製薬的に許容される添加剤および/または担体をさらに含むと効果は増大されるであろう。そのような添加物および担体は当分野において既知である。場合によっては、活性物質の標的への輸送を促進する化合物を含むと有利となる。
【0150】
多くの場合、組成物を複数回投与する必要があろう。投与は、連続的な注入であってもよく(例えば脳室内注入)、または複数回投与することであってもよい(例えば1日数回、毎日、週に数回、毎週など)。医薬の投与は、細胞死を引き起こし得る因子に個体が接触する前またはその直後に始めるのが好ましい。好ましくは、因子の接触から8時間以内、例えば因子の接触から5時間以内に医薬を投与する。多くの化合物は長期効果を示すので、1週間または2週間のような長い間隔で化合物の投与を行えばよい。
【0151】
神経ガイドへの使用に関しては、活性化合物の放出の制御に基づいて、投与は連続的にまたはごく少しにしてもよい。さらに、放出速度および/または放出部位を制御するために前駆体を用いてもよい。そのほか移植や経口投与も同様に放出の制御および/または前駆体の使用に基づいて行えばよい。
【0152】
上記に論じたように、本発明は、インビトロまたはインビボにおける神経細胞の分化の誘導、神経細胞の再生、可塑性および生存の刺激のために、個体を処置することに関し、この処置には有効量の1以上の上記化合物を投与することが含まれる。
【0153】
別の投与方法に、問題の化合物を発現し分泌することができる細胞を移植または注射する方法がある。これにより化合物を作用する場所で産生することができる。
【0154】
VI 処置
さらなる局面において、本発明は、神経細胞の分化の誘導および/または神経細胞の再生、可塑性および/または生存の刺激に用いる、前記ペプチド、それらのフラグメントまたは変異体に関する。それらは、中枢および末梢神経系および筋または様々な器官の疾患や症状を防ぐ処置のために用いる。
【0155】
本発明による化合物/組成物を使用する処置は、移植(implantまたはtransplant)した細胞の分化の誘導、増殖の調節、再生、神経可塑性および生存の刺激に有用な態様である。この処置は長期効果を有する化合物を用いると特に有用である。
【0156】
従って、処置には、以下のような中枢および末梢神経系の疾患または状態に関連する細胞死の治療および/または予防が含まれる:術後神経損傷、外傷性神経損傷(例えば脊椎損傷による)、神経線維の髄鞘形成障害、虚血後の損傷(例えば卒中による)、多発梗塞性認知症、多発性硬化症、糖尿病に伴う神経変性、神経−筋変性、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病。
【0157】
また、遺伝性または外傷性の萎縮性筋疾患のような神経−筋連絡機能障害を有する状態を含む、筋の疾患または状態に関して;あるいは様々な器官の疾患または状態、例えばI型およびII型糖尿病などの生殖腺、膵臓の変性状態、ネフローゼなどの腎臓の変性状態などの処置において、本発明による化合物は、分化の誘導、増殖の調節、再生、神経可塑性および生存の刺激のために、すなわち生存を刺激するために用いることができる。
【0158】
さらなる態様において、学習能力および/または短期間および/または長期間の記憶を刺激するために本化合物および/または医薬組成物を使用する。
【0159】
特に、本発明の化合物および/または医薬組成物は、例えば以下のような臨床症状の処置に用いることができる:精神病(老年期および初老期の器質性精神病症状、アルコール精神病、薬物性精神病、一過性の器質性精神病症状、アルツハイマー病など)、脳リピドーシス(cerebral lipidoses)、癲癇、進行麻痺(梅毒)、肝レンズ核変性症、ハンチントン舞踏病、ヤーコプ−クロイツフェルト病、多発性硬化症、脳のピック病、梅毒、統合失調症、感情病(affective psychoses)、神経症性障害、性格神経症、器質性脳症候群に関連する非精神病性の人格障害、妄想性人格障害、狂信者(fanatic personality)、妄想性人格(障害)、妄想性基質(paranoid traits)、性的倒錯および疾患などの人格障害、精神遅滞、神経系および感覚器の疾患、認知異常(cognitive anomalies)、中枢神経系の炎症性疾患(髄膜炎、脳炎など);脳変性(アルツハイマー病、ピック病、脳の老年性変性など)、交通性水頭症、閉塞性水頭症、パーキンソン病(他の錐体外路障害および異常運動障害を含む)、脊椎小脳疾患、小脳性運動失調、マリー運動失調、サンガー・ブラウン失調、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、原発性小脳変性症(primary cerebellar degeneration)(脊椎性筋萎縮症、家族性、若年性、成人型脊椎性筋萎縮症、運動神経疾患、筋萎縮性側索硬化症、運動神経疾患、進行性球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症、他の前角細胞疾患、前角細胞疾患、詳細不明の、他の脊椎の疾患、脊髄空洞症および延髄空洞症など)、血管性脊髄症(myelopathy)、急性脊髄梗塞(塞栓性)(非塞栓性)、脊髄動脈血栓症、脊髄浮腫、亜急性壊死脊髄症、他に分類される疾患における亜急性脊髄連合変性症、脊髄症、薬物性、放射線誘発性骨髄炎、自律神経系疾患、末梢自律神経系、交感神経、副交感神経または植物性系の疾患、家族性自律神経失調症(ライリー・デイ症候群)、突発性末梢自律神経障害(neuropathy)、頚動脈洞性失神または症候群、頚部交感神経ジストロフィまたは麻痺;他に分類される疾患における末梢自律神経障害、アミロイド症、末梢神経系疾患、上腕神経叢の病変、頚肋症候群、肋骨鎖骨症候群、前斜角筋症候群、胸郭出口症候群、腕神経炎または神経根炎(新生児を含む)、炎症性および毒性神経障害(急性感染性多発神経炎、ギラン・バレー症候群、感染後多発神経炎、膠原病性脈管疾患における多発神経障害(polyneuropathy)を含む)、眼の多重構造に影響する疾患、化膿性内眼球炎、耳および乳様突起の疾患、新生児における器官および軟部組織の異常(神経系を含む)、分娩(labor)および出産(delivery)における麻酔剤または他の鎮静剤の投与の合併症、肌の疾患(感染、不十分な循環の問題、術後、圧力による損傷(crushing injury)、火傷などの損傷を含む)、神経および脊髄への損傷(神経断裂、持続的な損傷(lesion in continuity)(開放創のある場合またはない場合)、外傷性神経腫(開放創のある場合またはない場合)、外傷性一過性麻痺(開放創のある場合またはない場合)、医学的手技過程での偶発的穿刺または裂傷を含む)、視神経および視覚経路への損傷、視神経の損傷、第II脳神経、視交叉への損傷、視覚経路への損傷、視覚野への損傷、詳細不明の失明、他の脳神経への損傷、他のおよび詳細不明の神経への損傷、薬物中毒、医学および生物学的物質、遺伝性または外傷性萎縮性筋疾患;
またはI型およびII型糖尿病などの生殖腺、膵臓の変性状態、ネフローゼなどの腎臓の変性状態など、様々な器官の疾患または状態の処置のために用いることができる。
【0160】
本発明のさらなる局面は、有効量の1以上の本発明の化合物を混合することを含む医薬組成物の生産方法、または1以上の製薬的に許容される添加剤もしくは担体を含む本発明による医薬組成物の生産方法、および有効量の少なくとも1つのそれらの化合物または医薬組成物を対象に投与する方法である。
【0161】
上述の方法の一態様において、本化合物は、人工神経ガイドである人工器官と組み合わせて用いる。従って、さらなる局面において、本発明は、1以上の上記のような化合物または医薬組成物を含むことを特徴とする人工神経ガイドに関する。神経ガイドは当分野で知られている。
【0162】
本発明の別の局面は、上記のような化合物の使用に関する。特に、医薬組成物の生産のために本発明による化合物を用いる。医薬組成物は好ましくは、上記の疾患および状態のいずれかの治療または予防のために用いる。
【0163】
さらなる別の局面において、本発明は、本明細書に記載のような化合物を投与することによって上記のような疾患または状態を処置する方法に関する。
【実施例】
【0164】
方法
培養における初代神経細胞の神経突起成長
7日齢のラットから解離小脳神経細胞を単離した。氷冷した改変クレブス・リンゲル液中の脳から小脳を単離し、血管を取り除き、荒く切り刻んでホモジナイズし、次いでトリプシン処理した。解離した細胞をDNAse 1およびダイズトリプシン阻害剤の存在下で洗浄した。被覆していない8ウェルpermanox Lab-Tekチャンバースライド上の、0.4%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA;Sigma-Aldrich)、2%(v/v)B27 Neurobasal supplement、1%(v/v)glutamax、100 U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンおよび2% 1M HEPES(全てGibco, BRLより)を補足したNeurobasal培地中に、出生後の海馬神経細胞または小脳顆粒神経細胞(CGN)を10,000細胞/cm2の密度にて蒔いた。24時間後、神経細胞を4%(v/v)ホルムアルデヒドにより20分間固定し、その後GAP-43に対する一次ウサギ抗体およびAlexa Fluorヤギ抗ウサギ二次Ig抗体を用いて免疫染色した。先に報告されているようにコンピュータ援用蛍光顕微鏡により、各個体の実験において各群について少なくとも200神経細胞の画像を体系的に得た(Roenn et al., 2000)。簡単に述べると、ビデオカメラ(Grundig Electronics, Germany)に連結させたNikon Plan 20x対物レンズ(Nikon、東京、日本)を付けたNikon Diaphot倒立顕微鏡を記録に用いた。Protein Laboratory(Copenhagen, Denmark)にて開発されたソフトウェアパッケージPrimaを用いて、立体解析学に基づいた神経突起長の測定を行った(Roenn et al., 2000)。
【0165】
初代培養における神経細胞の生存
ポリ-L-リシン被覆8ウェルpermanoxスライド上の、2%(v/v)B27、0.5%(v/v)glutamax、100ユニット/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよびKClを補足し、培地中のKClの最終濃度を40mmにしたNeurobasal-A medium(Gibco BRL)中に、CGNの初代培養物を100 000細胞/cm2の密度にて蒔いた。蒔いてから24時間後、グリア細胞の増殖を避けるためにシトシン-D-アラビノフラノシド(Ara-C;Sigma-Aldrich)を最終濃度が10μmになるように加え、その後、神経細胞を37℃にてさらに6日間分化させた。2回洗浄し、1%(v/v)グルタミン、100U/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシン、3.5 g d-グルコース/Lおよび1%(v/v)ピルビン酸ナトリウム(Gibco BRL)とともに様々な濃度のペプチドを補足したイーグル基礎培地(BME;Gibco BRL)へ培地を換えることにより、アポトーシス細胞死を誘導した。これにより、培養物中のカリウム濃度は5 mm KClへ減少した。アポトーシスの誘導後2日目に、細胞を4%(v/v)ホルムアルデヒドにより固定し、Hoechst 33258により染色した(D'Merllo et al., 1993)。
【0166】
外傷性脳損傷モデル
先に詳細に報告されているように(Penkowa et al., 2003)、ひとかけのドライアイス(−78℃)を、マウスには30秒、ラットには60秒、頭蓋骨に直接載せることによって、右の前頭頂皮質(fronto-parietal cortex)上に局所性脳損傷を作り出した。
【0167】
組織処理
関心の動物から採取した器官から切り取った切片上にて組織化学および免疫組織化学実験を行った。ラットとマウスをBrietalにより深く麻酔し、ヘパリン含有生理食塩水(0.9% NaCl、3 ml/L 5000IUヘパリン)による2分間の心灌流によって洗い流し、その後、動物のサイズに応じて4-8分間Zamboniの固定液(pH 7.4)により固定した。免疫組織化学実験のために、脳を解剖し、2-3時間Zamboniの固定液により後固定し、等級付きアルコール、次いでキシロール中にて脱水し、その後パラフィンに包埋し、凍結(cryo)病変領域の全体にわたって3μmの前額断の切片に切断した。熱によりエピトープの修復を誘導するために、それらの切片を、クエン酸緩衝液(pH 6または9)中にて電子レンジにより10分間煮沸し、トリス緩衝食塩水(TBS)/Nonidet P-40(0.01%)中10%ヤギ血清(In Vitro, Fredensborg, DK)またはロバ血清(コードBP 005.1;The Binding Site, Birmingham, UK)とともに室温にて30分間インキュベートした。また、マウス由来モノクローナル抗体とのインキュベーションに用いるマウス組織の切片を、内因性マウスIgGをクエンチするためのHistoMouse-SPキットのBlocking Solutions A+B(Zymed, CA, USA)とともにインキュベートした。
【0168】
免疫組織化学及び組織化学
上記のように処理した後、以下の一次抗体の1つとともに切片を5℃にて一晩インキュベートした:1:250の割合にてヤギ血清に希釈したポリクローナルウサギ抗ウシグリア線維酸性タンパク質(GFAP)(アストロサイトのマーカー;DakoCytomation);1:100の割合にてヤギ血清に希釈したモノクローナルマウス抗-8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)(DNA酸化のマーカー;Chemicon, Temacula, CA, USA)。一次抗体をビオチン化二次抗体により検出し、ストレプトアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体とともに30分間インキュベートした。ビオチン化トマトレクチン(Sigma, Vallensbaek, DK)をミクログリア/マクロファージのマーカーとして用いた。ストレプトアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(StreptABComplex/HRP;DakoCytomation, Glostrup, DK)を用いて、製造者の説明書に従って、室温(RT)にて30分間レクチン染色をさらに現像した。3,3'-ジアミノベンジジン/TBS(DAB/TBS)中0.015% H2O2を用いてDABを色素原としてレクチン反応産物を可視化した。
【0169】
NGF由来ペプチド:
NGF−C2 CVLSRKAVRRA 配列番号7
NGF−D ETKCRDPNPVDSG 配列番号27
(配列番号1の1aa N-切断型)
NGF−E RGIDSKHWNSY 配列番号19
NGF−C1 RIDTACV 配列番号5
NGF−EE TFVKALTMDGKQAAWR 配列番号15
NGF−N SSHPIFHRGEFS 配列番号11
BDNF−由来ペプチド
BDNF−E RGIDKRHWNSQ 配列番号22
BDNF−EE SYVRALTMDSKKRIGWR 配列番号18
【0170】
結果
実施例1:神経突起成長の刺激
上記のように調製したCGNを種々の濃度(3-81μg/ml)のペプチドNGF-C2、NGF-D、NGF-E、NGF-C1、NGF-EE、BDNF-EまたはBDNF-EEにより処理した。
【0171】
図1、2、4および5から、括弧内に記した構造モチーフを含むペプチドNGF-C2(モチーフII)、NGF-E(モチーフIII)、NGF-C1(モチーフI)、NGF-EE(モチーフIII)、BDNF-E(モチーフIII)またはBDNF-EE(モチーフIII)は全て、培養における初代神経細胞からの神経突起の成長を有意に刺激することが分かる。対照的に、モチーフIに不可欠な疎水性残基が欠損したペプチドNGF-Dは、神経突起生成活性を持たない(図1)。
【0172】
実施例2:神経細胞の生存の刺激
神経細胞の生存に対する種々のペプチドの効果についての試験をインビボおよびインビトロの両方において行った。
【0173】
インビトロ実験において、CGR神経細胞の培養物を上記のように調製し、種々の濃度のNGF-E、NGF-EEまたはNGF-Nにより処理した。
【0174】
図3から、試験したペプチドは全て、培養におけるCGNの生存を有意に促進することが分かる。
【0175】
インビボ実験について− 先に詳細に報告されているように(Penkowa et al., 2003)、ひとかけのドライアイス(-78℃)を、マウスには30秒、ラットには60秒、頭蓋骨に直接載せることによって、右の前頭頂皮質上に局所性脳損傷を作り出した。処置の後に、以下に記載のように、以下の一次抗体の1つとともに切片を5℃にて一晩インキュベートした:1:250の割合にてヤギ血清に希釈したポリクローナルウサギ抗ウシグリア線維酸性タンパク質(GFAP)(アストロサイトのマーカー;DakoCytomation);1:100の割合にてヤギ血清に希釈したモノクローナルマウス抗-8-ヒドロキシデオキシグアノシン(8-OH-dG)(DNA酸化のマーカー;Chemicon, Temacula, CA, USA)。一次抗体をビオチン化二次抗体により検出し、ストレプトアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体とともに30分間インキュベートした。ビオチン化トマトレクチン(Sigma, Vallensbaek, DK)をミクログリア/マクロファージのマーカーとして用いた。ストレプトアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体(StreptABComplex/HRP;DakoCytomation, Glostrup, DK)を用いて、製造者の説明書に従って、室温(RT)にて30分間レクチン染色をさらに現像した。3,3'-ジアミノベンジジン/TBS(DAB/TBS)中0.015% H2O2を用いてDABを色素原としてレクチン反応産物を可視化した。動物を、損傷後(−1)日目、1日目および3日目にペプチド(10mg/kg/注射)を皮下注射して処置した。
【0176】
損傷させたラットをBDNF-EEペプチドにより処理した結果、DNA酸化のマーカーである8-ヒドロキシデオキシグアノシンについての免疫染色に反映されているように酸化ストレスが抑制され、活性化ミクログリアのマーカーであるトマトレクチンの結合に反映されているようにミクログリアの活性化が抑制され、また、GFAPについての免疫染色に反映されているように皮質アストロサイトが活性化する。
【0177】
実施例3:NGFおよびBDNF由来ペプチドのTrkA、TrkB、TrkCおよびP75への結合。
表面プラズモン共鳴(SPR)解析
NGF由来ペプチドNGF-C2、NGF-E、NGF-EEおよびNGF、およびBDNF由来ペプチドBDNF-C1、BDNF-C2、BDNF-E、BDNF-EEおよびBDNFのTrk-受容体TrkA、TrkB、TrkCおよびP75受容体への結合について、25℃にてBIAlite装置(Biacore AB, Uppsala, Sweden)を用い、10mM Hepes、pH 7.4、150mM NaCl、3mM EDTAおよび0.005% P20を含有するHBS-EPランニング緩衝液を用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により解析を行った。以下の通りにアミンカップリングキットを用いて、TrkA、TrkBおよびTrkC受容体およびp75NTRをセンサーチップCM4上に固定化した:チップをN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびN-エチル-N'-(3-ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)の活性化溶液20μlにより活性化し、タンパク質(0.5μg/ml)4μlを10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)50μlに混合させたもののうち30μlを用いてタンパク質を固定化し;ブロッキング溶液(エタノールアミン-HCl)35μlによりチップをブロックした。リガンド注射とリガンド注射の間に、2mM NaCl 15μlまたは10mMグリシン-HCl, pH 2.5 15μlにより受容体の表面を再生した。本実験において、流速は5μl/分を採用した。
Trk受容体またはp75NTR受容体への結合と空のチップへの結合の間の差異に対応する曲線を、解析に用いた。
【0178】
算出した親和定数(KD)を表1に示す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、NGF由来ペプチドであるNGF-C2、NGF-DおよびNGF-Eの、小脳顆粒神経細胞(CGN)からの神経突起成長に対する効果を実証する。
【図2】図2は、NGF由来ペプチドであるNGF-C1およびNGF-EEの、CGNからの神経突起成長に対する効果を実証する。
【図3】図3は、NGF由来ペプチドであるNGF-E、NGF-EEおよびNGF-Nの、CGNの生存に対する効果を実証する。
【図4】図4は、BDNF由来ペプチドであるBDNF-Eの、CGNからの神経突起成長に対する効果を実証する。
【図5】図5は、BDNF由来ペプチドBDNF-EEの、CGNからの神経突起成長に対する効果を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸モチーフを含む5から25の連続アミノ酸残基を含む単離ペプチド配列:
xp1−D/E−T−xa1−C(モチーフI)
ここで、
xp1は、疎水性アミノ酸残基であり、
xa1は、K、R、S、Aである。
【請求項2】
xp1がY、FまたはIである、請求項1に記載の単離ペプチド配列。
【請求項3】
以下のアミノ酸モチーフを含む、請求項1または2に記載の単離ペプチド配列:
xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G(モチーフII)
ここで、
xp2は、疎水性または塩基性アミノ酸残基であり、
(xa)は、いずれかのアミノ酸残基または結合であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基であり、
xa2は、いずれかのアミノ酸残基である。
【請求項4】
xp2がA、L、PまたはYである、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項5】
xp2がKである、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項6】
(xa)がA、E、F、I、L、R、S、TまたはVから選択されるアミノ酸残基である、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項7】
少なくとも1つの(xa)残基が結合である、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項8】
xa2がA、E、G、I、N、R、SまたはTから選択されるアミノ酸残基である、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項9】
x+/−がD、E、K、RまたはHから選択される、請求項3に記載の単離ペプチド配列。
【請求項10】
以下の式のアミノ酸配列を含む、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列またはそれらのフラグメント:
x1−xp1−D/E−T−xa1−C−(x)n−xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G−(x)n
ここで、
x1は、いずれかのアミノ酸残基であり、
(x)nは、結合またはいずれかのアミノ酸残基配列であり、ここでnは1から5までの整数であり、
xp1、xp2、xa1、xa2、(xa)、x+/−は、請求項1から9に規定の通りである。
【請求項11】
以下のアミノ酸モチーフを含む、請求項1から10のいずれかに記載の単離ペプチド配列:
R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−(モチーフIII)
ここで、
xa3は、いずれかのアミノ酸残基であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基である。
【請求項12】
xa3がA、D、M、RまたはSから選択される、請求項11に記載の単離ペプチド配列。
【請求項13】
x+/−がD、E、K、RまたはHから選択される、請求項11または12に記載の単離ペプチド配列。
【請求項14】
以下の式のアミノ酸配列を含む、請求項11から13のいずれかに記載の単離ペプチド配列またはそれらのフラグメント:
x1−xp1−D/E−T−xa1−C−(x)n−xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G−(x)n−R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−−(x)n
ここで、
x1、xp1、xp2、xa1、xa2、xa3、(xa)、x+/−および(x)nは、請求項1から13に規定の通りである。
【請求項15】
前記フラグメントが以下のアミノ酸モチーフのいずれかを含む、請求項10または14に記載の単離ペプチド配列:
xp1−D/E−T−xa1−C(モチーフI)、
xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G(モチーフII)または
R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−(モチーフIII)、
ここで、xp1、xp2、xa1、xa2、xa3、(xa)、x+/−は、請求項1から14に規定の通りである。
【請求項16】
神経突起の成長を刺激することができる、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項17】
学習および/または記憶に関連する神経可塑性を含む、神経可塑性を刺激することができる、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項18】
神経幹細胞の分化または腫瘍細胞の分化を含む、細胞の分化を刺激することができる、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項19】
ニューロトロフィン受容体の活性を調節することができる、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項20】
ニューロトロフィン受容体を活性化することができる、請求項20に記載の単離ペプチド配列。
【請求項21】
ニューロトロフィン受容体を阻害することができる、請求項20に記載の単離ペプチド配列。
【請求項22】
ニューロトロフィン受容体がTrk A、Trk BまたはTrk Cである、請求項19または20に記載の単離ペプチド配列。
【請求項23】
ニューロトロフィン受容体がp75Trkである、請求項19または21に記載の単離ペプチド配列。
【請求項24】
細胞の生存を刺激することができる、請求項19から22のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項25】
以下のアミノ酸配列またはそれらのフラグメントもしくは変異体から選択される、上記請求項のいずれかに記載の単離ペプチド配列:
YETKCRDPNPVDSG(配列番号1)、
FETRCKEARPVKNG(配列番号2)、
YETRCKADNAEEGGPGAG(配列番号3)、
FETKCNPMGYTKEG(配列番号4)、
RIDTACV(配列番号5)、
RIDTSCV(配列番号6)、
CVLSRKAVRRA(配列番号7)、
CALSRKIGRT(配列番号8)、
VCTLLSRTGRA(配列番号9)、
VCTLTIKRGR(配列番号10)、
SSHPIFHRGEFS(配列番号11)、
YAEHKSHRGEYS(配列番号12)、
SETAPASRRGELA(配列番号13)、
HSDPARRGELS(配列番号14)、
TFVKALTMDGKQAAWR(配列番号15)、
TYVRALTSENNKLVGWR(配列番号16)、
SYVRALTADAQGRVGWR(配列番号17)、
SYVRALTMDSKKRIGWR(配列番号18)、
RGIDSKHWNSY(配列番号19)、
RGIDDKHWNSQCKTSQ(配列番号20)、
RGVDRRHWVSE(配列番号21)、
RGIDKRHWNSQ(配列番号22)、
RIDTACVCVLSRKAVRRA(配列番号23)、
RIDTSCVCALSRKIGRT(配列番号24)、
RIDTACVCTLLSRTGRA(配列番号25)または
RIDTSCVCTLTIKRGR(配列番号26)。
【請求項26】
前記フラグメントが、配列番号1-26として同定されたいずれかの配列の少なくとも5アミノ酸残基を含むアミノ酸配列である、請求項25に記載の単離ペプチド配列。
【請求項27】
前記変異体が、配列番号1-26として同定されたいずれかの配列に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列である、請求項25に記載の単離ペプチド配列。
【請求項28】
前記アミノ酸配列が、請求項25に同定されたいずれかの配列から選択されるペプチド配列の少なくとも1つの生物学的活性を有する、請求項26または27に記載の単離ペプチド配列。
【請求項29】
生物学的活性が、細胞分化を刺激する能力、学習および記憶に関連する神経可塑性を刺激する能力、細胞の生存を刺激する能力、ニューロトロフィン受容体の活性を調節する能力から選択される、請求項28に記載の単離ペプチド配列。
【請求項30】
神経成長因子(NGF)に由来する、請求項1から29のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項31】
配列番号1、5、7、11、15、19、23として同定された配列から選択される、請求項30に記載の単離ペプチド配列。
【請求項32】
ニューロトロフィン−3(NT−3)に由来する、請求項1から29のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項33】
配列番号2、6、8、12、16、20、24として同定された配列から選択される、請求項32に記載の単離ペプチド配列。
【請求項34】
ニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)に由来する、請求項1から29のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項35】
配列番号3、5、9、13、17、21、25として同定された配列から選択される、請求項34に記載の単離ペプチド配列。
【請求項36】
脳由来神経栄養因子(BDNF)に由来する、請求項1から29のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項37】
配列番号4、6、10、14、18、22、26として同定された配列から選択される、請求項36に記載の単離ペプチド配列。
【請求項38】
以下のアミノ酸モチーフを含む5から25の連続アミノ酸残基の単離ペプチド配列:
xp2−(xa)−(xa)−x+/−−xa2−G(モチーフII)、
ここで、
xp2は、疎水性または塩基性アミノ酸残基であり、
(xa)は、いずれかのアミノ酸残基または結合であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基であり、
xa2は、いずれかのアミノ酸残基である。
【請求項39】
xp2がA、L、PまたはYである、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項40】
xp2がKである、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項41】
(xa)がA、E、F、I、L、R、S、TまたはVから選択されるアミノ酸残基である、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項42】
少なくとも1つの(xa)残基が結合である、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項43】
xa2がA、E、G、I、N、R、SまたはTから選択されるアミノ酸残基である、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項44】
x+/−がD、E、K、RまたはHから選択される、請求項38に記載の単離ペプチド配列。
【請求項45】
配列番号1-4、7-14または23-26として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項38から43のいずれかに記載の単離ペプチド配列。
【請求項46】
配列番号1-4として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項47】
配列番号7-10として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項48】
配列番号11-14として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項49】
配列番号23-26として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項50】
配列番号1、7、11または23として同定された配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項51】
配列番号2、8、12または24として同定された配列から選択される、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項52】
配列番号3、9、13または25として同定された配列から選択される、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項53】
配列番号4、10、14または26として同定された配列から選択される配列である、請求項45に記載の単離ペプチド配列。
【請求項54】
以下のアミノ酸モチーフを含む6から25の連続アミノ酸残基の単離ペプチド配列:
R/K−A/G−L/V/I−T/D−xa3−x+/−(モチーフIII)
ここで、
xa3は、いずれかのアミノ酸残基であり、
x+/−は、荷電性アミノ酸残基である。
【請求項55】
xa3がA、D、M、RまたはSから選択される、請求項54に記載の単離ペプチド配列。
【請求項56】
x+/−がD、E、K、RまたはHから選択される、請求項54または55に記載の単離ペプチド配列。
【請求項57】
配列番号15-22として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項54、55または56に記載の単離ペプチド配列。
【請求項58】
配列番号15-18として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項59】
配列番号19-22として同定されたいずれかの配列から選択される配列である、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項60】
配列番号15または19として同定された配列から選択される、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項61】
配列番号16または20として同定された配列から選択される、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項62】
配列番号17または21として同定された配列から選択される、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項63】
配列番号18または22として同定された配列から選択される、請求項57に記載の単離ペプチド配列。
【請求項64】
以下のアミノ酸モチーフを含む6から25の連続アミノ酸残基の単離ペプチド配列:
xp1−D/E−T−xa1−C(モチーフI)
ここで、
xp1は、疎水性アミノ酸残基であり、
xa1は、K、R、S、Aである。
【請求項65】
xp1がY、FまたはIである、請求項64に記載の単離ペプチド配列。
【請求項66】
配列番号1-6または23-26として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項67】
配列番号1-6として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項66に記載の単離ペプチド配列。
【請求項68】
配列番号23-26として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項66に記載の単離ペプチド配列。
【請求項69】
配列番号1-4として同定されたいずれかの配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項70】
配列番号5または配列番号6として同定された配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項71】
配列番号1、5または23として同定された配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項72】
配列番号2、6または24として同定された配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項73】
配列番号3、5または25として同定された配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項74】
配列番号4、6または26として同定された配列から選択される、請求項65に記載の単離ペプチド配列。
【請求項75】
請求項1から74のいずれかの単離ペプチド配列を含む化合物。
【請求項76】
前記ペプチド配列が個々のペプチド配列の単一コピーからなる単量体として形成される、請求項75に記載の化合物。
【請求項77】
前記ペプチド配列が、個々のペプチド配列の2以上のコピーからなる、二量体または四量体を含む多量体として形成される、請求項75に記載の化合物。
【請求項78】
多量体がデンドリマーである、請求項77に記載の化合物。
【請求項79】
医薬を製造するための、請求項1から74のいずれかに記載の個々のペプチド配列または請求項73から77のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項80】
請求項1から74のいずれかに記載の個々のペプチド配列および/または請求項75から78のいずれかに記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項81】
神経突起成長、神経細胞の生存を刺激する、および/または細胞の運動性を抑制する方法であって、請求項1−74のいずれかに記載のペプチド、請求項75−78のいずれかに記載の化合物または請求項80に記載の医薬組成物を用いることを含む方法。
【請求項82】
細胞分化、細胞の生存、神経細胞の可塑性を刺激する、および/または細胞アポトーシスを誘導するための、請求項1から74のいずれかに記載の個々のペプチド配列、請求項75から78のいずれかに記載の化合物または請求項80に記載の医薬組成物の使用。
【請求項83】
細胞分化、細胞の生存、神経細胞の可塑性を刺激する、または細胞アポトーシスを誘導することが治療に有益な状態または疾患を治療するための、請求項1から74のいずれかに記載の個々のペプチド配列、請求項75から78のいずれかに記載の化合物または請求項80に記載の医薬組成物の使用。
【請求項84】
状態または疾患が、中枢および末梢神経系の状態または疾患である、請求項83に記載の使用。
【請求項85】
状態または疾患が、術後の神経損傷、外傷性神経損傷、神経線維の髄鞘形成障害、卒中後を含む虚血後の損傷、糖尿病に伴う神経変性、概日時計または神経筋伝達に影響する疾患から選択される、請求項84に記載の使用。
【請求項86】
状態または疾患が、器官移植後を含む、または遺伝的もしくは外傷性萎縮性筋疾患を含む、神経−筋連結の機能障害を有する状態を含む、筋肉の状態または疾患から選択される、請求項83に記載の使用。
【請求項87】
状態または疾患が癌である、請求項86に記載の使用。
【請求項88】
癌が血管新生を伴ういずれかの癌である、請求項87に記載の使用。
【請求項89】
癌が神経系の癌である、請求項87に記載の使用。
【請求項90】
状態または疾患が、学習能力障害および/または記憶障害である、請求項84に記載の使用。
【請求項91】
状態または疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病または多発梗塞性認知症を含む認知症である、請求項90に記載の使用。
【請求項92】
状態または疾患が、思考および/または気分障害、双極性(BPD)、遺伝子関連性単極性感情障害、妄想性障害、パラフレニー、妄想性精神病、統合失調症、統合失調症型障害、統合失調感情障害、統合失調感情双極性および遺伝子関連性単極性感情障害、心因性精神病、緊張病、周期性双極性および遺伝子関連性単極性感情障害、循環型精神病、統合失調質人格障害、妄想性人格障害、双極性および遺伝子関連性単極性感情障害に関係する感情障害および単極性感情障害のサブタイプを含む精神神経疾患を含む精神疾患である、請求項84に記載の使用。
【請求項93】
状態または疾患がアルコール消費による身体障害である、請求項83に記載の使用。
【請求項94】
状態または疾患がプリオン病である、請求項83に記載の使用。
【請求項95】
抗体を産生するための、請求項1から74のいずれかに記載のペプチド配列の使用。
【請求項96】
請求項1、38、54または64に記載のアミノ酸モチーフを含むエピトープを認識し結合することができる抗体。
【請求項97】
配列番号1-26として同定されたいずれかの配列を含む、または該配列に含まれるエピトープを認識することができる、請求項96に記載の抗体。
【請求項98】
有効量の、請求項1から74のいずれかに記載のペプチド配列、請求項75から78のいずれかに記載の化合物、請求項80に記載の医薬組成物および/または請求項96または97に記載の抗体を、必要とする個体に投与することを含む治療方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−514904(P2009−514904A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−539247(P2008−539247)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000612
【国際公開番号】WO2007/051477
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(506354755)ユニバーシティ オブ コペンハーゲン (5)
【Fターム(参考)】