説明

ニューロトロフィン類似体を用いた細胞生存促進法

【課題】神経変性疾患及び他の疾患を治療するための化合物の提供。
【解決手段】p75NTR受容体分子に結合特異性のある下記化合物(II)。


(式中、nは0〜8の整数であり、L2は、アルキレン基など、R3は、水素原子、アルキル基など、A5は、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され、B4及びB5は、O原子、S原子及びNR4基(式中、R4は水素原子、アルキル基など)からなる群から選択され、D2はアミノ基などから選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:本出願は2005年4月15日出願の米国仮出願番号60/671,785に基づくものであり、またこれによる優先権を主張するものであり、当該出願内容は引用することにより本明細書に組み込まれているものとする。
助成金:本研究はNIH助成金番号NS30687による助成を受けた。従って、米国政府は本出願において開示された対象について特定の権利を有する。
この発明は、一般的に患者における神経変性疾患及び他の疾患の治療に関する。より具体的には、本出願で開示した対象の方法は、患者の神経変性疾患又は他の疾患を治療するために患者にp75NTR受容体分子と特異的に結合する有効量の化合物の投与に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロトロフィン(神経栄養因子)は、ニューロン(神経細胞)、希突起膠細胞、手腕細胞、毛嚢細胞及び他の細胞を含む特定の細胞の発生、機能及び/又は生存における役割を演ずるポリペプチドである。神経細胞及び他のタイプの細胞の死又は機能障害は多くの神経変性疾患に直接関係していると見なされている。ニューロトロフィン局在性、ニューロトロフィンの発現レベル及び/又は、ニューロトロフィンを結合する受容体の発現レベルの変化は、従って神経細胞の変性に関連すると示唆されてきた。変性は特にアルツハイマー、パーキンソン及びALS神経変性疾患に生ずる。希突起膠細胞の変性は、中枢神経システム傷害、多発性硬化症及び他の病理学的状態に生じうる。
【0003】
様々なニューロトロフィンが同定されており、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン−3(NT−3),ニューロトロフィン−4/5(NT−4/5)、ニューロトロフィン−6(NT−6)及び脳由来神経栄養因子(BDNF)等が挙げられる。ニューロトロフィンは、プロニューロトロフィンとして知られている前駆体型及び成熟型の両者で発見されている。成熟型は、約120アミノ酸長のタンパク質であり、生理的状態では安定な、近似的に25kDaの非共有結合性ホモダイマーとして存在する。各ニューロトロフィンモノマーは、ニューロトロフィンファミリーを通して比較的高程度のアミノ酸保存を示し、ループ1,2及び4と呼ばれる、3個の溶媒に露出したβ−ヘアピンループを持つ。
【0004】
成熟したニューロトロフィンは優先的に受容体Trk及びp75NTRと結合するが、成熟型ではタンパク質分解より除去されるN−末端領域を持つプロニューロトロフィンは、主にp75NTR受容体と相互作用し、またN−末端領域を介して選別受容体ソルティリン(Fahnestock,M.,Michalski,B.,Xu, B.,Coughlin,M.D.(2001)Mol Cell Neurosci 18,210-220;Harrington,A.W.他(2004)Proc Natl Acad Sci USA 101,6226-6230;Nykjaer,A.他(2004)Nature 427,843-848)と相互作用する。p75NTR受容体はTrksと相互作用し、Trkのシグナリングを修飾するが、独立してIRAK/TRAF6/NFκB、PI3/AKT等のプロ生存シグナル,及びNRAGE/JNK(Mamidipudi, V., Li, X., Wooten,M.W.(2002)J Biol Chem 277,28010-28018;Roux,P.P.,Bhakar,A.L.,Kennedy,T.E.,Barker,P.A.(2001)J Biol Chem 276,23097-23104;Salehi,A.H.,他(2000)Neuron 27,279-288)の様なプロアポトティックシグナル等の幾つかのシグナリングシステムと結合する。
【0005】
治療目的で投与されると、ニューロトロフィンは、低い血清中半減期を示す不安定性、恐らく低い経口生体利用性及び中枢神経系への制限された透過性(Podulso,J.F.,Curran,G.L.(1996)Brain Res Mol Brain Res 36,280-286;Saltzman,W.M.,Mak,M.W.,Mahoney,M.J.,Duenas, E.T.,Cleland,J.L.(1999)Pharm Res 16, 232-240;Partridge,W.M.(2002)Adv Exp Med Bio513,397-430)など、最適以下の薬理的特徴を示す。さらに、二重受容体シグナリングネットワークの作用を持つことで得られるニューロトロフィンの非常に多面的な効果は、不都合な効果の可能性を増す。
【0006】
非配位体型のp75NTRはプロアポトティックであり、ニューロトロフィン結合により誘導されるホモ2量体化はこの効果を除くと言うこと(Wang,J.J.,Rabizadeh,S.,Tasinato,A.,Sperandio, S.,Ye,X.,Green,M.,Assa-Munt,N.,Spencer,D.,及びBredesen,D.E.(2000)J Neurosci Res 60,587-593)が示唆されており、Fabs(Maliartchouk,S.,Debeir,T.,Beglova,N.Cuello,A.C.,Gehring,K,及びSaragovi,H.U.(2000)J Biol Chem 275,9946-9956)及び環状ヘ゜フ゜チト゛(Longo,F.M.,Manthorpe,M.,Xie,Y.M.,Varon,S. (1997J Neurosci Res 48,1-17)のようなp75NRTリガンド(配位体)は、二価の型で細胞生存を促進するのに対し、単量体p75NRTリガンドは、生存に効果がないことを示している、これらの研究と矛盾しない。しかしながら、これらの単量体リガンドは、天然のリガンドと同じように、受容体と結合しないかも知れない。活性型のNGFは、p75NTRと結合の可能性がある部位を2個の持つホモ二量体であるが、最近の構造的証拠によると、活性型NGFは1個のp75NTR分子と結合するだけであり、他の分子と結合しないと言うことが示唆されている(He,X.L.,Garcia,K.C.(2004)Science 304,870-875)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
不幸なことに、今までは、技術的及び倫理的考察が、ニューロトロフィンに基づく治療薬の開発を阻害した。例えば、組み換えDNA技術を用いて十分量の純粋なニューロトロフィンを生産することは技術的に困難である。さらに、ニューロトロフィンを生産するためにヒト胎児細胞を用いることは可能であるが、この様な細胞(通常流産胎児から得るが)を用いることについて生ずる倫理的派生問題は、このアプローチを用いることをほとんど不可能にした。従って、健康異常又は疾患の治療に用いる特異的ニューロトロフィン受容体をターゲットにできる、ニューロトロフィンに基づく好ましい薬剤類似の特徴を持つ小分子試薬の開発を求める、当技術分野において未対処のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、患者の神経変性疾患又は他の疾患を治療するために、患者にp75NTR受容体分子と特異的に結合する有効量の化合物を投与することからなる方法を開示する。
また、神経細胞(ニューロン)、希突起膠細胞又は他の細胞をp75NTR受容体分子に対して特異的に結合する化合物で処理することからなる、これらの細胞の生存を促進させる方法を本明細書で開示する。
また、p75NTR受容体分子に対して特異的に結合する化合物を本明細書で開示する。
【0009】
幾つかの実施態様において、神経変性疾患を、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、パーキンソン病、ピック病、脊髄損傷、脳梗塞、低酸素症、虚血症、脳損傷、糖尿病性神経障害、末梢性神経障害、神経移植、多発性硬化症、末梢神経障害、脱毛及びp75を発現する細胞の変性、又は機能不全を含む他の病気からなる群から選択した。
幾つかの実施態様において、患者はヒト患者である。
幾つかの実施態様において、p75NTR受容体分子に結合する化合物はニューロトロフィンβ−ターンループの類似体である。
幾つかの実施態様において、薬理作用団を構成する該化合物は図1cに示された薬理作用団と実質的に同一である。
幾つかの実施態様において、該化合物は小分子又はペプチドである。
【0010】
参考態様において、該化合物は下式
【化1】

の化合物から選択される。
【0011】
該化合物は、幾つかの実施態様において、下記化学式(II)、及び参考態様において、該化合物は下記化学式(I)
【化2】

(式中、nは0〜8の整数であり;L及びLは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;R、R及びRは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群からそれぞれ独立して選択され;A、A、A、A及びAは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B、B、B、B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;D及びDは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物から選択され、又はその医薬的に許容された塩である。
【0012】
幾つかの実施態様及び参考態様において、L及びLはそれぞれ独立して−(CH−基であり、ここでmは1〜8の整数である。
参考態様において、前記化合物は下記構造の化学式(I)
【化4】

(式中、mは1〜8の整数であり;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。)で表される。
【0013】
幾つかの実施態様において、前記化学式(I)の化合物は下式
【化5】

の構造を持つ。
【0014】
幾つかの実施態様において、前記化学式(II)で表される化合物は下式
【化6】

(式中、mは1〜8の整数であり;Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;R及びRは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。)の構造を持つ。
【0015】
幾つかの実施態様において、前記化学式(II)で表される化合物は下式
【化7】

の構造を持つ。
幾つかの実施態様において、前記ニューロトロフィンは神経成長因子(NGF)である。
幾つかの実施態様において、前記β−ターンループは前記NGFのループ1である。
【0016】
参考態様において、前記化合物は下式
【化8】

で表される。
幾つかの実施態様において、前記化合物は、p75NTR受容体分子のニューロトロフィン結合部位に対する結合特異性を持つ。
幾つかの実施態様において、前記化合物は、p75NTR受容体分子に対する結合特異性を持つ親化合物の誘導体からなり、この誘導体もp75NTR受容体に対する結合特異性を持つ。
幾つかの実施態様において、前記誘導体は、親化合物と比較して、親水性、親油性、両親媒性、溶解度、生体利用性及び肝臓での分解抵抗性からなる群から選択される特徴の少なくとも1つにおいて増強を示す。
【0017】
該化合物は、幾つかの実施態様において、下記化学式(II)、及び参考態様において、該化合物は下記化学式(I)
【化2】

(式中、nは0〜8の整数であり;L及びLは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;R、R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群からそれぞれ選択され;A、A、A、A及びAは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B、B、B、B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;D及びDは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物から選択され、又はその医薬的に許容された塩であり、ただし化学式(I)の化合物は下記化合物
【化5】

ではなく、かつ化学式(II)の化合物は下記化合物
【化7】

ではない。
【0018】
本明細書に開示した対象の目的は、ニューロトロフィン類似体を用いて、細胞生存を促進する方法を提供することである。
以下に説明されているように、本書に添付した実施例及び図と関係して、既述の及び本明細書に開示した、全体及び部分で扱われている対象の目的及び他の目的は、記載が進むにつれ明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1a】表示されたβ−ターンループ1,2及び4を持つヒトNGFのX−線結晶構造のリボン表現を示す。ループ1に対する平均側鎖部位を図示する。
【図1b】表示された動物種から得たNGF及びNT3からのループ1のペプチド配列(SEQ ID NO:1−3)の比較及び薬理作用団(ファーマコフォア)の指定を示す。正にイオン化可能な残基を"+"で表示する。"HBD"及び"HBA"はそれぞれ、水素結合供与体及び水素結合受容体である。
【図1c】薬理作用団の特徴を3Dループモデルに応用したものを示す。水素結合フィーチャー(Feature)は、受容体及び供与体の配置を示す相対部位をもつ球面体で表示されている。一つの球体は、モデルにおける推測上の受容体/供与体フィーチャーの中央に置かれ、その一方で、他方の球体は、相互作用可能な全ての分子上の相補的フィーチャーの標的配置を示す。球の直径は、3D配座ライブラリースキャンにおける化学的フィーチャーマッチングに対する、空間的許容度を示す。
【図1d】本明細書で開示したように、ライブラリースクリーニングによって活性であると分かった、新しい薬理作用団を適用して同定された2つの化合物の薬理作用団への代表的フィットを開示する3Dループモデルを示す。
【0020】
【図2a】培地のみ又はBDNF又は化合物1(図の中では"LM11A−28"又は"28"と呼ばれる)、2(図の中では"LM11A−7"又は"7"と呼ばれる)3,(図において"LM11A−24"又は"24"と呼ばれる)、4(図において"LM11A−31"又は"31"と呼ばれる)又は5(図において"LM11A−36"又は"36"と呼ばれる)を含む培地で処理した、E16−17マウス海馬神経細胞培養の一連の蛍光顕微鏡写真を示す。培養細胞は、処理48時間後の神経細胞特異的、生長関連タンパク質GAP43の発現のために染色された。各化合物の2D構造は、各画像に隣接して位置する。
【図2b】BDNF,NGF,及び化合物1〜5に対する神経細胞の一連の投与量応答の生存率曲線を示す。同程度の力価を得及び5nMまでNGF及び化合物1〜4の間で最大応答を得たが、化合物5では応答がなかった。BDNFは同様の力価を持つが、より高い最大応答を示す。各化合物1〜5は、5nM以上では減少する応答を示した。生存数は形態学的に無傷でまた青色ホルマザンMTT−変換生成物を含むウェル(穴)の中の全細胞数により測定した(Longo,F.M.,Manthorpe,M.,Xie,Y.M.,及びVaron,S.(1997)J Neurosci Res48,1-17)。計数を25ng/mlBDNF存在下の生存数又はベースライン生存数を使って標準化した。全ての測定についてnは4〜18である。標識記号及びバーは平均値+/−s.e.m.を示し、またラインはデーターを単純指数関数上昇モデルで近似したものである。各グラフの点線は、挿入したNGF応答を表す。
【0021】
【図3a】化合物4の濃度を増加させた場合の、NGF ELISAで測定した、一連のNGF/p75NTR−Fc結合曲線を示す。標識記号は平均値+/−標準誤差である。全ての測定について、n>10である。ラインは化合物4に対して、全体としてのR値が0.93である変法Gaddum/Schild式にフィットさせた。また、0nM化合物での結合曲線と、>500nM化合物4での曲線間の比較のための、ポストホックBonferroni/Dunn検定を持つANOVAによりP<0.0001である。化合物不在のNGFに対するKは0.8−0.9nM(Nykjaer,A.その他,(2004)Nature 427,843-848)であり、約1nMという以前の論文と合致する。標識記号"●"、"▽","■","◇","▲",及び"○"は、それぞれ化合物4濃度、ゼロ、125,500,1,500,4500及び10,000ナノモルを表す。
【図3b】化合物3の濃度を増加させた場合の、NGF ELISAで測定した、一連のNGF/p75NTR−Fc結合曲線を示す。標識記号は平均値+/−標準誤差である。全ての測定について、n10である。ラインは化合物3に対して、全体としてのR値が0.96である変法Gaddum/Schild式にフィットさせた。また、0nM化合物での結合曲線と、125nM化合物3での曲線の間の比較のための、ポストホックBonferroni/Dunn検定を持つANOVAによりP<0.0001である。化合物不在のNGFに対するKは0.8−0.9nM(Nykjaer,A.その他,(2004)Nature 427,843-848)であり、約1nMという以前の論文と合致する。標識記号"●"、"▽","■","◇","▲",及び"○"は、それぞれ化合物3濃度、ゼロ、125,500,1,500,4500及び10,000ナノモルを表す。
【0022】
【図3c】化合物5の濃度を増加させた場合の、一連のNGF/TrkA−Fc結合曲線を示す。10,000nMまで顕著な効果が見られない。標識記号は平均値+/−s.e.m.である。全ての測定についてn10である。標識記号"●"、"▽","■"は、それぞれ、化合物5の濃度0,4,500及び10,000ナノモルを表す。
【図3d】化合物4の濃度を増加させた場合の、一連のNGF/TrkA−Fc結合曲線を示す。10,000nMまで化合物の効果が見られない。標識記号は平均値+/−s.e.m.である。全ての測定についてn4である。標識記号"●"、"▽","■"は、それぞれ、化合物4の濃度0,4,500及び10,000ナノモルを表す。
【図3e】化合物3の濃度を増加させた場合の、一連のNGF/TrkA−Fc結合曲線を示す。10,000nMまで化合物の効果が見られない。標識記号は平均値+/−s.e.m.である。全ての測定についてn4である。標識記号"●"、"▽","■"は、それぞれ、化合物3の濃度0,4,500及び10,000ナノモルを表す。
【図3f】抗p75NTR発現3T3細胞から、化合物5ではなく、化合物4による抗p75NTRAb9651の排除を示すウェスタンブロットのディジタル画像を示す。上部のパネルはIgG重鎖を示し、下部のパネルはβ−アクチンを示す。このグラフは計量結果を示す。バーは結合抗体(レーン4)に標準化した平均値+/−s.e.m.を示す。各条件に対しn=4である。単一星印(*)は、化合物無しの場合の結合量と比較しての、ステューデントt−検定によるP<0.0005を示す。抗体及び化合物処理は、各レーンに示されている。Ab9651はp75NTR−ネガティブ細胞では結合しない(レーン1及び2)。Ab9651はp75NTR−ポジティブ(陽性)細胞に結合し(レーン4)、また化合物4により顕著に排除される(レーン5)が、化合物5は効果がない(レーン6)。
【0023】
【図3g】Ab9651がベースライン生存率(CM)に効果が無く、BDNFを部分的に阻害し、また化合物3及び化合物4による海馬神経細胞生存率の増加を完全に抑えることを示す棒グラフである。黒色の棒は非免疫血清処理を表す。灰色の棒はAb9651処理を示す。バーは平均値+/−s.e.m.を意味する。各条件に対しn26である。二重星印(**)は(Ab9651と非免疫の場合の間の比較に対し)P<0.00001を示す。NSはステューデントt−検定で顕著でないことを示す。BDNF+Ab9651存在下での生存率は、CM+Ab9651下での生存率よりも顕著に高い(P<0.00001)が、抗体存在下でのCMと化合物3,4及び5の間の差異は有意ではない。
【図3h】p75NTR欠失はBDNFを部分的に阻害し、またNGF,化合物3及び化合物4による海馬神経細胞生存率の増加を完全に阻害することを示す棒グラフである。ニューロトロフィンは1.8nMで適用され、化合物は5nMで適用された。黒色の棒はp75NTR+/+細胞を示す。灰色の棒は、p75NTR−/−細胞を示す。バーは平均値+/−s.e.m.を表す。各条件において、n5である。単一星印(*)はP<0.05を表し、二重星印(**)はP<0.005を示す。NSは(ノックアウト及び野生型の比較において)ステューデントt−検定により有意でないことを示す。p75NTR−/−培養細胞において、BDNF処理はNGF(P<0.05)、又は化合物3〜5(P<0.01)よりも高い生存率をもたらした。ゲノムタイプの間では、ベースライン生存率と有意な差異がなかった。
【図3i】全TrkBと比較した、抗リン酸化TrkY490を用いた、海馬神経培養細胞のウェスタンブロットのディジタル画像を示す。BDNFがTrkBを活性化したが、NGF及び化合物3〜5は、10分又は30分後に、検知できる活性化をもたらさなかった。
【図3j】全TrkAと比較した、抗リン酸化TrkY490を用いたTrkA発現3T3細胞のウェスタンブロットのディジタル画像を示す。NGFはTrkAを活性化することが示されているが、化合物4は測定できる活性化を示さなかった。TrkB及びTrkA活性化についての、2種の独立した検定結果は同一であった。
【0024】
【図4】図4a〜4dは、培地(C),50ng/mlのBDNF(B)、50ng/mlのNGF(N),又は20nMの化合物3〜5で処理した海馬神経培養細胞の抽出物のウェスタンブロットのディジタル画像を示し、リン酸化したシグナリング因子(白抜きの矢印)及び対応する全因子(黒色の矢印)に対応する代表的なバンドを示し、また活性化度を示す全因子に対するリン酸化因子の比の計量結果を示す。バーは平均値+/−s.e.m.を示す。黒色棒は10分後のサンプリングを表す。灰色棒は30分後のサンプリングを表す。各計量値は独立したn=6ブロットによる。単一星印(*)は、CMと比較した時の、ステューデントt−検定によるP<0.001を表わす。他の比較に関しては、各ブラケットの上に示すようにステューデントt−検定によるP値を示す。 図4aは、NFκB−p65活性化解析を示すウェスタンブロットのディジタル画像を示し、全ての生物学的活性化処理に対して同様の活性化速度を示す。 図4bは、AKT活性化解析を示すウェスタンブロットのディジタル画像を示し、NGFに比べて活性化合物による活性化には短いラグタイムがあることを示す。 図4cは、ERK44活性化解析を示すウェスタンブロットのディジタル画像を示し、NGFに比べ化合物は10分後では活性化度が低いことを示す。 図4dは、ERK42活性化解析を示すウェスタンブロットのディジタル画像を示し、NGF及び化合物3〜5に比べ、BDNF処理は活性化が持続することを示す。 図4eは、シグナリング経路阻害剤及びBDNF(25ng/ml)、NGF(25ng/ml)又は化合物3〜5(5nM)で処理した培養海馬神経細胞の生存率を示す棒グラフであり、NFκB及びP13K経路阻害剤による大幅な阻害、BDNF及びNGF活性化阻害へのERKの小効果及び化合物3〜5の活性化阻害へのERKの無効果を示す。SN50は、NFκB転位阻害剤である。LYは、P13K阻害剤であるLY294002を示す。PDは、ERK阻害剤である、PD98059を示す。平均値+s.e.m.を示す各バーについてn=18である。NSは、データが有意でないことを示す。各群の対照(阻害剤なし)に比較し、単一星印(*)はP<0.05,二重星印(**)はP<0.001を示す。白抜き、黒色、淡灰色及び深灰色棒は、それぞれ、対照、SN50,LY及びPDを表わす。 図4fは、NFκB経路活性化のシグナリング活性解析のウェスタンブロットのディジタル画像である。バーは平均値+/−s.e.m.を示す。各条件に対しN6.P値は示されている。活性化は0及び0.5nM NFκBの間で検知され、5nMでプラトーになる。 図4gは、AKT経路活性化のシグナリング活性解析のウェスタンブロットのディジタル画像である。バーは平均値+/−標準誤差を示す。各条件に対しn6.P値は示されている。活性化はAKTの0.5及び1nMの間で検知され、5nMでプラトーになる。 図4hは、p75NTR−/−細胞において、成長因子及び化合物によるAKT活性化を示すウェスタンブロットのディジタル画像である。各条件に対しn9である。培地のみと、NGF又は化合物3〜5の間には有意な差が無かった。
【0025】
【図5a】化合物3〜5が成熟した希突起膠細胞の死を促進せず、プロNGF誘導の死を阻害することを示す棒グラフである。成熟した希突起膠細胞は、指定されたように処理され、やはりTUNELポジティブであるMBP−ポジティブ細胞の割合を測定して、細胞死を検定した。プロNGFなしでは、化合物は細胞死を促進しなかった。2.8ng/ml(0.05nM)のプロNGF存在下で、化合物5ではなく、化合物3及び化合物4は、細胞死を阻害した。バーは平均値+s.e.m.を表わす。プロNGF存在下で1nM化合物5の場合(単一測定)を除き、各条件についてn2であった。化合物非存在下でプロNGF処理と比較し、ステューデントt−検定によりP<0.05であった。黒色、淡灰色及び深灰色棒はそれぞれ化合物3,4及び5を示す。
【図5b】化合物3及び4によるp75NTRからのプロNGFの排除を示す線グラフである。100ng/mlプロNGFを表示した濃度の化合物と共にインキュベートし、ELISAにより検知した。各条件についてn=4である。標識記号は平均値+/−s.e.m.を示す。全ての化合物処理の試料からのシグナルは、プロNGF単独の結果より、ステュデントt−検定によるP<0.01を持って、顕著に低かった。標識記号"Δ"及び"●"はそれぞれ化合物4及び化合物3を表わす。
【図6a】Aβ1−42(10μM又は30μM)添加後の海馬神経細胞の生存率を示す棒グラフを示す。Aβ1−42を添加して3日間処理後、神経細胞は約40%失われた。NGF(100pg/ml)の添加により、Aβ1−42に対する防護効果はなかった。
【図6b】テスト化合物と共にAβ1−42(10μM)添加した後の海馬神経細胞の生存率を示す棒グラフを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書では以下の略語を用いる。
2D:2次元の;3D:3次元の;Aβ:アミロイド−β;Ab:抗体;AD:アルツハイマー病;BCA:ビシンコニン酸;BDNF:脳由来の神経栄養因子;b.i.d.:1日2回;cm:センチメートル;d:日;D:ダルトン;DMEM:ダルベッコ変法イーグル培地;ECL:電気発生化学発光;EDTA:エチレンジアミン4酢酸;ELISA:固相酵素免疫測定法;ERK:細胞外シグナル制御タンパク質キナーゼ;FBS:仔牛胎児血清;g:グラム;h:時間;HBA:水素結合受容体;HBD:水素結合供与体;HEPES:4−2−ヒドロキシエチル−1−ピペラジンエタンスルホン酸;HRP:セイヨウワサビペルオキシダーゼ;IgG:免疫グロビンG;IP:腹腔内の;IV:静脈内;K32:32番目リジン残基;kcal:キロカロリー;kg:キログラム;MBP:ミエリン塩基性タンパク質;mg:ミリグラム;min:分;ml:ミリリットル;mM:ミリモル;mol:モル;MTT:3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物;MW:分子量;NaCl:塩化ナトリウム;ng:ナノグラム;nM:ナノモル;NS:有意でない;NMR:核磁気共鳴;NGF:神経成長因子;nM:ナノモル;P:確率;p75NTR:p75神経栄養受容体;PBS:リン酸緩衝塩;pmol:ピコモル;PMSF:フェニルメチルスルホニルフッ化物;PO:経口の(口から);pro−NGF:NGFの非処理の前駆体;PVDF:ポリビニリジンジフッ化物;SDS:ドデシル硫酸ナトリウム;SE:標準誤差;s.e.m.:測定の標準誤差;Tris:2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール;TUNEL:末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介デオキシウリジン3リン酸ニック−エンドラベリング;μg:マイクログラム;μl:マイクロリットル;μM:マイクロモル;%:パーセント;℃:摂氏度;:と等しく又はより大きく;>:より大きく;:と等しく又はより小さく;<:より小さく
【0027】
神経変性疾患及び他の疾患に関わる患者では、ニューロトロフィン局在性、ニューロトロフィン発現レベル、ニューロトロフィンと結合する受容体の発現レベル及び/又は受容体シグナリングの変化及び機能的転帰が生ずる。従って、細胞変性又は機能障害を防ぐために、上記の疾患に罹る患者に、p75NTR機能又はプロNGF/NGF結合を変化させる、対応するニューロトロフィン因子、又はこの類似体を提供することで、この様な神経変性疾患は緩和されるか、又は予防できる。本明細書に初めて開示したように、神経変性疾患又は他の疾患を治療する方法及び/又はp75NTR受容体分子に結合特異性をもつ化合物を投与することにより細胞生存を促進する方法を提供する。
【0028】
本明細書において開示した対象物の方法及び化合物は、p75NTR受容体分子に対する結合特異性を有する化合物に関する。本明細書で用いたように、p75NTR受容体に結合特異性を有する化合物のコンピューターによるスクリーニングによる発見は、神経及び他の細胞の生存をポジティブに制御するに適している。詳しくは、ニューロトロフィンに対し栄養性応答を示す細胞、又は構成的又は障害又は疾患に応答してp75NTRを発現する細胞において、上記化合物は生存シグナリングを促進する。ニューロトロフィン誘導による細胞死を起こしやすい細胞には、上記化合物はアポトーシスを誘導せず、ニューロトロフィンが介する細胞死を阻害する。
【0029】
I.定義
本明細書で用いる用語は詳細な実施態様を記載する目的のためであり、制限付きでないことを理解されたい。
もし別に定義されなければ、本明細書で用いた全ての技術的及び科学的用語は、本明細書で開示した対象物に関わる同業者の1人に通常理解される意味と同じである。本明細書に記載した事柄と同様又は等価な全ての方法及び物質は、本明細書に開示した対象物の実施又は試験において用いることができるが、本明細書では代表的な方法及び物質を記載する。
長年にわたる特許法協定に従い、原文の"不定冠詞−ある(a, an)""定冠詞−その(the)"は、クレイムを含む本出願で用いられる場合、"1又は2以上"を意味する。従って、例えば、"ある担体"は、1又は2以上の担体の混合物、2又は3以上の担体の混合物、等々を表す。
もし別途示されなければ、明細書及び請求の範囲で用いられる構成要素の量、反応条件、等々を表す全ての数は、用語"約"で全ての事例において修正されると理解すべきである。従って、それと反対に示されない場合は、本明細書及び添付した請求の範囲に述べられた数字的なパラメーターは、本明細書に開示された対象物により見出された好ましい特性によって変わりうる近似的なものである。
重さ、時間、投与量、その他の量のような測定しうる値に関して、本明細書で用いられた、用語"約"は、特定の値から、或る例では±20%又は±10%、他の例では±5%、更に他の例では±1%、更にまた他の例では±0.1%の変化量を含み、この様なものとして、この様な変化量は開示した方法を実行する上で適切である。
【0030】
本明細書に使用されているように、用語"神経変性疾患"は、神経障害により特徴付けられる全ての疾患を含み、また制限付けることなく、次のアルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、パーキンソン病、脊髄損傷、脳梗塞、低酸素症、虚血症、脳障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性神経障害、神経移植、多発性硬化症、末梢神経障害、p75を発現する細胞の変性又は機能不全を伴う病気及び脱毛症のようなp75NTR発現細胞の変性を伴う他の病気を含む。
【0031】
本明細書で用いるように、用語"アルキル基"は、線状の(即ち"直鎖の")、分枝状の、又は環状の("シクロアルキル基")、飽和又は少なくとも部分的にまたある場合は完全に不飽和な(即ち、アルケニル基及びアルキニル基)炭化水素鎖を包含するC1〜20を表し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tertブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル機、ブタジエニル基、プロピニル基、メチルプロペニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル機、ヘプチニル基及びアレニル基が挙げられる。"分枝した"とは、メチル基、エチル基、又はプロピル基のような、低級アルキル基が直鎖状のアルキル鎖に付加したアルキル基を表す。"低級アルキル基"は、例えば、1,2,3,4,5,6,7,又は8炭素原子のような、1〜約8までの炭素原子、を有するアルキル基(即ち、C1−8アルキル基)を表す。"高級アルキル基"は、例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,又は20炭素原子、の様な約10〜約20の炭素原子を持つアルキル基を表す。或る実施態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8直鎖アルキル基を表す。別な実施態様において、"アルキル基"は、特に、C1〜8分岐鎖アルキル基を表す。
【0032】
アルキル基は、任意に、1又は2以上の、同一又は異なってもよいアルキル基置換基により置換できる("置換アルキル基")。"アルキル基の置換基"としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、水酸基、アリールオキシル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基及びシクロアルキル基が挙げられるが、これらに制限されない。任意に、アルキル鎖にそって1又は2以上の酸素原子、イオウ原子又は置換又は非置換の窒素原子を挿入できるが、ここで窒素置換基は、水素原子、低級アルキル基(以下"アルキルアミノアルキル基"と呼ぶ)又はアリール基である。
この様に、本明細書で用いられるように、用語"置換アルキル基"は、ここで定義されたように、1又は2以上の原子又はアルキル基の官能基が、他の原子又は官能基で置き換えられたアルキル基を含み、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基が挙げられる。
【0033】
さらに、本明細書で用いるように、用語アルキル基及び/又は"置換アルキル基"には、"アリル基"又は"アリル型基"が含まれる。用語"アリル型基"又は"アリル基"は、−CHHC=CH基及び置換により作られたその誘導体を表わす。用語アルキル基及び/又は"置換アルキル基"は、アリル基、メチルアリル基、ジメチルアリル基、等々のようなアリル基を含むが、これらに制限されない。用語"アリル位"又は"アリル部位"は、アリル型基の飽和した炭素原子を表す。従って、アリル位に付加する水酸基又は他の置換基のような官能基は、"アリル型基"と表わす。
【0034】
本明細書で用いる用語"アリール基"は、互いに縮合し、共有結合で連結した、又はメチレン基又はエチレン基部分のような、しかしこれらに制限されない、共通の官能基に結合した単一の芳香族環、又は、多環の芳香族環であることができる芳香族置換基を指す。共通の連結基はまた、ベンゾフェノンの場合のようなカルボニル基、又はジフェニルエーテルにおけるような酸素分子、又はジフェニルアミンにおけるような窒素分子でもあることができる。用語"アリール基"は、特に、複素環式芳香族化合物を含む。芳香族環は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基、ジフェニルアミン基及びベンゾフェノン基からなる。特別な実施態様において、用語"アリール基"は、約5〜約10の炭素原子、例えば、5,6,7,8,9又は10炭素原子、からなる環状芳香族を意味し、また5−及び6−員環炭化水素及び複素環式芳香族環を含む。
【0035】
アリール基は同一又は異なる1又は2以上のアリール基置換基で任意に置換しうる("置換アリール基")。"アリール基の置換基"としては、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル機、水酸基、アルコキシル基、アリールオキシル基、アラルキルオキシル基、カルボキシル基、アシル基、ハロ基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルコキシカルボニル基、アシルオキシル基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基、ジアルキルカルバモイル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アルキレン基及び−NR'R''基を含み、ここでR'及びR''は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基及びアラルキル基であってもよい。
【0036】
従って、本明細書で用いられたように、用語"置換アリール基"は、本明細書で定義されたようなアリール基を含み、前記アリール基の1又は2以上の原子又は官能基は、他の原子又は、例えば、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子、アリール基、置換アリール基、アルコキシル基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、硫酸塩基及びメルカプト基を含む、官能基と置き換えうる。
アリール基の特別な例としては、シクロペンタジエニル基、フェニル基、フラン基、チオフェン基、ピロール基、ピラン基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンジミダゾール基、イソチアゾール基、イソキサゾール基、ピラゾール基、ピラジン基、トリアジン基、ピリミジン基、キノリン基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、等々が挙げられるが、これらに制限されない。
【0037】
本明細書で用いる、次のような化学式で表される構造:
【化9】

は、環状構造を表し、例えば、置換基Rを含む、3−炭素、4−炭素、5−炭素、6−炭素等々の脂肪族及び/又は芳香族環状化合物を表わすが、ここでR基は、存在しても、存在しなくともよく、存在する場合は、1又は2以上のR基は各々、環状構造の1又は2以上の可能な炭素原子上で置換されるものであるが、上記の環状化合物に制限されない。R基が存在するか否か及びR基の数は、整数n値で決められる。各R基は、もし1以上ならば、他のR基上ではなく、環状構造の可能な炭素原子上で置換される。例えば、nが0〜2の整数である構造:
【化10】

は、以下の化合物群:
【化11】

等々を含むが、これらに制限されない。
【0038】
nが1である、構造:
【化12】

は、以下のような化合物:
【化13】

を含み、ここで、1つのR置換基は、他の表示された置換基により占領されてないベンゾフラン親構造上のどの炭素原子にも付加することができて、上記の場合は、炭素原子6はXで置換され、また炭素原子2はYで置換されている。
【0039】
環状(環)構造において結合を表す破線は、その結合が環上に存在しても、しなくとも良いことを示す。環状構造において結合を表す線が破線であることは、環状構造が飽和環状構造、部分飽和環状構造及び不飽和環状構造からなる群から選択されることを意味する。
幾つかの実施態様において、本出願で開示された対象物により記述された化合物は、連結基を持つ。本明細書に用いられるように、用語"連結基"は、2又は3以上の他の化学分子を結合させて安定した構造をもたらす化学的構成部分からなる。代表的な連結基としては、2又は3以上のアリール基を連結させるフラニル基、フェニレン基、チエニル基、又はピローリル基が挙げられるが、これらに制限されない。
芳香族環又は複素環式芳香族環の指定された原子が"存在しない"と規定された場合、指定された原子は直接結合により置き換えられる。連結基又はスペーサー基が存在しないと規定された場合、連結基又はスペーサー基は直接結合により置き換えられる。
【0040】
"アルキレン基"は、例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,又は20個の炭素原子である、1〜約20個の炭素原子を持つ、直鎖型又は分枝型の2価の脂肪族炭化水素群を表わす。アルキレン基は直鎖、分枝又は環状であることができる。アルキレン基もまた、任意に、不飽和であり、及び/又は1又は2以上の"アルキル基置換基"により置換されていてもよい。アルキレン基に沿って、任意に、1又は2以上の酸素原子、イオウ原子、又は置換又は非置換窒素原子(これはまた"アルキルアミノアルキル基"とも呼ばれる)とが挿入され、ここで窒素置換基は既述のようにアルキル基でアラルキレン基の例としては、メチレン(−CH−)基;エチレン(−CH−CH−)基、プロピレン(−(CH−)基;シクロへキシレン(−C10−)基;−CH=CH−CH=CH−基;−CH=CH−CH−基;−(CH)q−N(R)−(CH)r−基があり、ここでq及びrの各々は、独立して0〜約20の整数であり、例えば、0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,又は20であり、またRは水素原子又は低級アルキル基:メチレンジオキシル(−O−CH−O−)基;及びエチレンジオキシル(−O−(CH−O−)基でアラルキレン基は、約2〜3個の炭素原子を持ち、またさらに6〜20個の炭素原子を持つことができる。
【0041】
本明細書で用いるように、用語"アシル基"は、そのカルボキシル基の−OH基が他の置換基に置き変えられた有機酸基を表す(例えば、RCO−で代表されるように、Rは、本明細書で定義されたようなアルキル基又はアリール基である)。従って、用語"アシル基"は、特に、アセチルフラン基及びフェナシル基のようなアリールアシル基を含む。アシル基の特別な例は、アセチル基及びベンゾイル基である。
【0042】
"環状"及び"シクロアルキル"は、例えば、3,4,5,6,7,8,9又は10個の炭素原子のような、約3〜約10個の炭素原子の非芳香族型モノ又はマルチ環状系を指す。シクロアルキル基は任意に部分的に不飽和であることができる。シクロアルキル基は、また任意に、本明細書で定義したようにアルキル基置換基で置換することができる。環状アルキル鎖に沿って、1又は2以上の酸素原子、イオウ原子、又は、窒素置換基が水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、又は置換アリール基である置換、又は非置換の窒素原子を任意に挿入でき、このようにして複素環式基を提供する。代表的なモノサイクリックなシクロアルキル環としてはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、等々があるが、これらに制限されない。更に、シクロアルキル基は、任意に既述のように定義されたアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等々、のような、連結基で、任意に、置換できる。この様な場合、シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピルメチル基及びシクロブチルメチル基等々を指す。更に、多環シクロアルキル環としては、アダマンチル基、オクタヒドロナフチル基、デカリン、樟脳、カンファン及びノラダマンチルがある。
【0043】
"アルコキシル基"又は"アルコキシアルキル基"はアルキル−O−基を指し、ここでアルキル基は既述の通りである。本明細書で用いる"アルコキシル基"は、炭素数が1〜20であってもよく、直鎖型、分枝型、又は環状、飽和又は不飽和オキソ炭化水素鎖を含むことができ、例えば、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、イソプロポキシル基、ブトキシル基、t−ブトキシル基及びペントキシル基が挙げられる。
"アリールオキシル基"はアリール−O−基を指し、ここでアリール基は、既述の通りであり、置換アリール基を含む。本明細書で用いる"アリールオキシル基"という語は、フェニルオキシル基、又はヘキシルオキシル基及びアルキル基、置換アルキル基、ハロ基又はアルコキシル置換フェニルオキシル基又はヘキシルオキシル基を指すことができる。
"アラルキル基"はアリール−アルキル−基を指し、ここでアリール基及びアルキル基は既述の通りであり、置換アリール基及び置換アルキル基を含む。アラルキル基の例としては、ベンジル基、フェニルエチル基、又はナフチルメチル基がある。
"アラルキルオキシル基"は、アラルキル−O−基を指し、ここでアラルキル基は既述の通りでアラルキルオキシル基の例としては、ベンジルオキシル基がある。
【0044】
"ジアルキルアミノ基"は−NRR'基を指し、各R及びR'は、独立して既述の通りのアルキル基及び/又は置換アルキル基でアラルキルアミノ基の例としては、エチルメチルアミノ基、ジメチルアミノ基及びジエチルアミノ基がある。
"アルコキシカルボニル基"はアルキル−O−CO−基を指す。アルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基及びt−ブチルオキシカルボニル基がある。
"アリールオキシカルボニル基"はアリール−O−CO−基を指す。アリールオキシカルボニル基の例としては、フェノキシ−及びナフトキシ−カルボニル基がある。
"アラルコキシカルボニル基"はアラルキル−O−CO−基を指す。アラルコキシカルボニル基の例としては、ベンジルオキシカルボニル基がある。
"カルバモイル基"はHN−CO−基を指す。
【0045】
"アルキルカルバモイル基"はR'RN−O−基を指し、ここでR及びR'の一つは水素原子であり、またR及びR'の他の一つは、既述の通りのアルキル基及び/又は置換アルキル基である。
"ジアルキルカルバモイル基"はR'RN−CO−基を指し、ここでR及びR'の各々は独立して既述の通りのアルキル基及び/又は置換アルキル基を表わす。
"アシルオキシル基"はアシル−O−基を指し、ここでアシル基は既述の通りである。
"アシルアミノ基"は、アシル−NH−基を指し、ここでアシル基は既述のとおりである。
用語"アルケニレン基"は、炭素−炭素二重結合を持つ非環式炭素鎖(即ち、開かれた鎖構造)を示し、1又は2以上の回数、任意に、置換できる、CnH2nー2という化学式で表される。代表的なアルケニレン基としては、エテニレン基、プロペニレン基、1−又は2−ブテニレン基、1−又は2−ペンチレン基等々があるが、これらに制限されない。
"アロイルアミノ基"はアロイル−NH−基を指し、ここでアロイル基は既述の通りである。
【0046】
用語"アミノ基"は、−NH基を指す。
用語"カルボニル基"は、−(C=O)−基を指す。
用語"カルボキシル基"は、−COOH基を指す。
用語"シアノ基"は、−CN基を指す。
本明細書で用いられる用語"ハロ基"、"ハロゲン化物"又は"ハロゲン原子"は、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基を指す。
用語"水酸基"は、−OH基を指す。
用語"ヒドロキシアルキル基"は、1個の−OH基で置換されたアルキル基を指す。
用語"メルカプト基"は、−SH基を指す。
用語"オキソ基"は、1個の炭素原子が一個の酸素原子で置き換えられた、本明細書で既述の、化合物を指す。
用語"ニトロ基"は、−NO基を指す。
用語"チオ基"は、1個の炭素原子又は酸素原子が、1個のイオウ原子で置き換えられた、本明細書に既述の、化合物である。
用語"硫酸塩基"は、−SO基を指す。
【0047】
用語"シクロアルケニル基"は、例えば、環当たり、3,4,5,6,7又は8炭素原子のように、環当たり3又は4以上の炭素原子を有する、1環、2環、3環又は4環を持つ、1又は2以上の環を有する部分的に不飽和な環状炭化水素基を指す。典型的なシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等々があるが、これらに制限されない。
用語"置換シクロアルケニル基"は、可能な付加部位に1又は2以上の置換基で、好ましくは1,2,3又は4置換基で、置換されたシクロアルケニル基を指す。典型的な置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロ基、アリールアミノ基、アシル基、水酸基、アリールオキシル基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルオキシル基、アラルキルチオ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基及びシクロアルキル基があるが、これらに制限されない。
【0048】
用語"独立して選択される"が用いられる場合、指定された置換基(例えば、R及びR基のようなR基又はX基及びY基)は同一又は異なる。例えば、R及びRともに置換アルキル基である、又はRは水素原子であり、Rは置換アルキル基である等々。
"R"、"R'"、"X"、"Y"、"Y'"、"A"、"A'"、"B"、"L"、又は"Z"基は、本明細書において特に特定しない場合、名前を持つ官能基として当業者に認識される構造を一般的に持つ。表示の目的のために、上述のある代表的"R","X"及び"Y"基は、以下のように定義される。これらの定義は、本開示を閲覧する通常の技術者にとって自明である定義を、補助し例示することを意図しており、除外するものではない。
【0049】
本明細書で用いる用語"治療"は、動物又は哺乳動物、特にヒトの病気及び/又は(不健康)状態について全ての治療をカバーしており、また以下3点を含む:即ち(i)病気、疾患及び/又は状態に罹りやすい、又は病気、疾患及び/又は状態を引き起こしうる作用因子に曝される危険性のあるヒトが病気、疾患及び状態に罹ることを防止すること;だが、この作用因子を持つと診断されてない;(ii)病気、疾患及び/又は状態を阻害すること、即ち、病気の伸展を止めること;
及び(iii)病気、疾患及び/又は状態を軽減すること、即ち、病気、疾患及び/又は状態からの回復を起こすこと。
【0050】
用語"類似物"は、他の既知の化合物と同様な機能及び/又は構造特性を有する化合物、又は生物原料、即ちポリペプチド又はその断片、の既知の化合物のような、既知の化合物の断片を表わす。
"結合特異性"は、他のタンパク質又は他の種類の分子の相補的部位を認識し、相互作用することができる、蛋白質又は他の種類の分子の活性を表わす。
本明細書で用いる用語"薬理作用団"は、選択された生物効果、即ち、酵素の阻害、受容体への結合、イオンのキレーション等々、を発揮することができる分子部分の特別なモデル又は表現を指す。選択された薬理作用団は、1以上の生化学的効果を持つことができる、即ち一つの酵素の阻害剤であり、また第2の酵素の作用剤であることができる。治療薬は1又は2以上の薬理作用団を含み、これらは同一又は異なる生化学的活性を有する。
【0051】
本明細書で用いられる用語"誘導体"は、親化合物と差異をつけるために化学的に修飾した化合物を指す。この様な化学的な修飾としては、例えば、水素原子をアルキル基、アシル機、又はアミノ基での置き換えを挙げることができる。誘導体は、例えば、グリコシル化、ペグ化、又は類似した工程で修飾可能であり、親化合物の少なくとも1個の生物学的又は免疫学的機能を保持する。
用語"親水性"は、水に対して親和性を持つ;水を直ちに吸収する及び/又は水に溶ける、の様にこの分野の共通のやり方で用いられる。
用語"親油性"は、脂質に対する親和性、脂質と結合する傾向、又は脂質に溶解可能であるとして、この分野共通のやり方で用いられる。
本明細書で用いられる用語"両親媒性"は、別々に、疎水性領域と、親水性領域を有する構造を表す。従って、構造の一部は水性媒体及び他の極性媒体と有利に相互作用し、構造の他の部分が非極性媒体と有利に相互作用する。
【0052】
本明細書で用いられる用語"溶解度"は、特定の温度で、指定量の溶媒に溶ける溶質の最大量を表す。
本明細書で用いられる"生体利用性"は患者に投与された指定量の化合物の全体的利用度(即ち、血液/血漿中濃度)を指す。この用語は更に、作用部位に到達する化合物の速度及び、吸収率を含む。
【0053】
II.化合物
本出願で開示した対象物は、p75NTR受容体分子に対する結合特異性を有する化合物を提供する。これらの化合物は、関係する医薬化合物及び方法と同様に、神経変性疾患及び他の疾患の治療及び予防に有用である。
開示した化合物を本明細書では下記のように標識する:
化合物1〜7の構造
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
II.A.構造
本出願に開示した対象物に従い、p75NTR受容体分子に対する結合特異性を持つ、ニューロトロフィンβ−ターンループの参考化合物又は類似体は、下式
【化1】

の化合物から選択される。
【0057】
幾つかの実施態様において、下記化学式(II)、及び参考態様において、下記化学式(I)
【化2】

(式中、nは0〜8の整数であり;L及びLは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;R、R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群からそれぞれ選択され;A、A、A、A及びAは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B、B、B、B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;D及びDは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物が開示される。
【0058】
化学式(I)又は(II)の典型的化合物の特別な群は、L及びLが独立して、mが1〜8の整数である−(CH)m−基である。
参考化合物として、下記化学式(I)で表される化合物が挙げられる。
【化4】

(式中、mは1〜8の整数であり;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。)
【0059】
化学式(I)で表される参考化合物として、下記化合物が挙げられる。
【化5】

【0060】
化学式(II)で表される典型的化合物として、下記化合物が挙げられる。
【化6】

(式中、mは1〜8の整数であり;Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;R及びRは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群からそれぞれ独立して選択される。)
【0061】
化学式(II)で表される更なる典型的化合物として、下記化合物が挙げられる。
【化7】

【0062】
参考態様において、p75NTR受容体分子に対する結合特異性を有する代表的化合物として、次の化学式で表される化合物が挙げられる。
【化8】

【0063】
本出願で開示した対象物に従い、代表的ニューロとフィンは、NGFを含めることができるが、これに限らない。より具体的には、P75NTR受容体分子に結合特異性を有するニューロトロフィンβ−ターンループとしては、NGFのループ1があるが、これに限らない。
本明細書で開示したように、p75NTR受容体分子に対して結合特異性を有する化合物、又は類似体の代表的構造は、p75NTR受容体分子のニューロトロフィン結合部位に対して結合できる。
本明細書で開示した化合物は、また、p75NTR受容体分子に結合特異性を有する、親化合物の誘導体を含んで居り、これらの誘導体もp75NTR受容体分子に結合特異性を有する。誘導体は、親化合物と比較して、疎水性、親油性、両溶媒性、溶解度、生体利用度及び肝臓での分解抵抗性からなる群から選択された特性の少なくとも一つについて増大を示すことができる。
幾つかの実施態様において、本明細書で開示した化合物は、図1cに表示した薬理作用団と実質的に同一の薬理作用団を含むことができることを理解すべきである。
その様な化合物の代表例としては、化学式(I)及び(II)が挙げられるが、これらに制限されない。
【0064】
II.B.製剤
本明細書で開示した化合物は、好ましい投与ルートに適応したルーティン手順に従い製剤化できる。従って、本明細書で開示した化合物は、油性又は水性の媒体を使った懸濁液、溶液、又は乳状液の様な形をとることができ、また浮遊剤、安定剤及び/又は分散剤を含むことができる。本明細書で開示した化合物は、埋め込み、又は注射のための調整品として製剤化できる。従って、例えば、上記化合物は、適切な高分子又は疎水性材料(例えば、許容可能な油のなかの乳濁液)、又はイオン交換樹脂、又は発泡溶解誘導体(例えば、発泡溶解塩)と共に製剤化できる。又は、活性な構成要素は、例えば、無菌の発熱物質不含の水のような、適切な媒体と使用前に混合するための粉末状であることができる。各々の投与方法に対する適切な製剤については、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,編,第20版,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.に、見出すことができる。
【0065】
例えば、非経口投与のための製剤は共通の添加物として、無菌水又は無菌生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物由来の油、水和化したナフタレン等々が含まれる。特に、生体許容性、生体分解可能ラクチド重合体、ラクチド/グリコール・コポリマー 、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・コポリマーは活性化合物の放出を制御するための有用な添加物となることができる。他の潜在的に有用な非経口の運搬システムとしては、エチレン−酢酸ビニル・コポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み輸液システム及びリポソームが挙げられる。吸入投与に対する製剤は、例えば、ラクトースを添加物として含み、又は、例えば、ポリオキシエチレン−9−アウリルエーテル、グリココレート及びデオキシコレートを含む水溶液であることができて、又は点鼻液の形での投与に対する油性溶液であることができて、又は鼻腔内に作用させるゲルとして含む。非経口性投与の製剤は、また、舌下錠投与のためのグリココレート、直腸投与のためのメトキシサリチル酸塩、又は膣投与のためのクエン酸を含むことができる。
【0066】
静脈内投与のための製剤は、無菌の等張緩衝液による溶液からなることができる。必要な場合、この製剤は、また、溶解補助剤及び注射部位の苦痛緩和のための局所麻酔を含むことができる。一般的に、構成要素は単一投薬形態において、例えば、活性試薬の量を示すアンプル又は小袋のような密封した容器の中に、凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として、別々に、又は混合して提供される。化合物が輸液として投与される場合、無菌の医薬用級の水、生理食塩水、又はデキストローズ/水を入れた輸液ビンを伴う製剤として調剤できる。化合物が注射で投与される場合、注射のための無菌水アンプル、又は生理食塩水のアンプルが提供され、構成成分を投与に先立って混合できる。
適切な製剤としては、更に抗酸化剤、緩衝、靜菌薬、殺菌性抗生物質及び意図されている受容者の体液と等張な調整液にさせる溶質を含む、水性及び非水性無菌注射溶液;懸濁剤及び増粘剤を含む水性及び非水性の無菌懸濁液がある。
【0067】
この化合物は更に、局所投与のために調剤される。適切な局所製剤としては、液体、ローション、クリーム、又はゲル状態の1又は2以上の化合物がある。局所投与は、治療領域に直接処理することによって行うことができる。例えば、治療領域の皮膚に(ローション又はゲル状の)製剤をすり込むこと、又は治療領域に液体製剤を噴霧適用して、その様な処理が行われる。
幾つかの製剤では、生体埋め込み材料は、上記化合物で覆われることができて、細胞と埋め込み物の相互作用は改善される。
上記化合物の製剤は、少量の湿潤剤又は乳化剤、又はpH緩衝剤を含むことができる。上記化合物からなる製剤は、液体溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、ピル、カプセル、持続放出製剤、又は粉末であることができる。
上記化合物は座薬として、伝統的結合剤及びトリグリセリドのような担体と共に調剤できる。
経口調剤は医薬品級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルローズ、炭酸カルシウム等々のような標準的担体を含むことができる。
本出願で開示した化合物からなる医薬品調剤は、化合物の放出を制御し、それによって、化合物を指定時刻に、又は持続した放出を行う、試薬を含むことができる。
【0068】
II.C 担体
医薬的に許容される担体は、当業者にはよく知られており、約0.01〜約0.1M及び好ましくは0.05Mリン酸緩衝液及び0.8%生理食塩水を含むが、これに制限されない。そのような医薬的に許容された担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液及び乳濁液である。
本出願で開示された対象物の使用に適した、非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油及びオレイン酸エチルの様な注射可能有機エステルを含むが、これらに制限されない。
本出願で開示した対象物への使用に適した水性担体としては、生理食塩水及び緩衝液媒体を含め、水、エタノール、アルコール性/水性溶液、グリセロール、乳濁液又は懸濁液が挙げられるが、これらに制限されない。経口担体は、エリクシル剤、シロップ、カプセル、錠剤、等々であることができる。
本出願で開示した対象物への使用に適した液性担体は、溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリクシル及び与圧化合物を調製して用いることができる。活性な構成成分は、水、有機溶媒、両者の混合物、又は医薬的に許容される油又は脂肪の様な、医薬的に許容可能な液性担体に溶解又は懸濁できる。液性担体は、溶解補助剤、乳化剤、緩衝液、保存液、甘味、芳香試薬、懸濁剤、濃縮剤、着色剤、粘性制御剤、安定剤、又は浸透圧制御因子のような、他の適切な医薬的な添加物を含みうる。
【0069】
本出願で開示した対象物への使用に適した液性担体として、水(部分的に上記のような添加物、例えば、セルローズ誘導体、好ましくは、カルボキシメチルセルローズナトリウム溶液を部分的に含む)、アルコール(1水酸基を有するアルコール及び例えば、グリコールのような、多価水酸基アルコールを含む)及びこれらの誘導体及び油(例えば、分画されたココナッツ油及びラッカセイ油)が挙げられるが、これらに制限されない。非経口投与のためには、担体はまたエチルオレイン酸塩及びイソプロピルミリスチン酸塩のような、油性エステルを含むことができる。無菌の液性担体は、非経口の投与の為の化合物からなる無菌の液性形態で有用である。本明細書で開示された、与圧化合物のための液性担体は、ハロゲン化した炭化水素又は多の医薬的に許容された噴射剤であることができる。
【0070】
本出願で開示した対象物への使用に適した固体担体として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチル−セルローズ、ステアリン酸マグネシウム、リン酸2カルシウム、マンニトール等々のような不活性物質が挙げられるが、これらに制限されない。固体担体はさらに、芳香剤、潤滑剤、可溶剤、懸濁剤、充填剤、滑走剤、圧縮補助剤、結合剤、又は錠剤―粉砕剤のような、1又は2以上の物質を含み;これはカプセル化した材料でもあることができる。粉末状の担体は、細かく分割した固体で、細かく分割した活性化合物との混合物である。錠剤として、活性化合物は、必要な圧縮特性を持つ担体と適切な割合に混ぜられ、望みの形、大きさに圧縮される。粉末及び錠剤は、好ましくは、99%までの活性化合物を含む。適切な固体担体としては、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、砂糖、ラクトース、デクストリン、デンプン、ゲラチン、セルローズ、ポリビニルピロリジン、低融点ワックス及びイオン交換樹脂が挙げられる。
【0071】
本出願で開示した対象物への使用に適した非経口担体として、塩化ナトリウム溶液、リンゲル−デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル及び不揮発油が挙げられるが、これらに制限されない。静脈内担体としては、流動性及び栄養補強剤、リンゲル−デキストロース等に基づく電解質補強剤がある。保存剤及び他の添加物も存在可能であり、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、等々がある。
本出願で開示した対象物への使用に適した担体は、必要に応じて、技術上従来の技術で用いられる、錠剤分解物質、稀釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合材等々と、混合される。担体はまた、技術上既知であるが、反応により化合物に悪影響を与えない方法を用いて無菌化できる。
【0072】
II.D.塩
開示した化合物は、更に医薬上許容される塩からなることができること、を理解すべきである。
この様な塩としては、医薬上許容される酸添加による塩、医薬上許容される塩基添加による塩、医薬上許容される金属塩、アンモニウム及びアルキル化したアンモニウム塩が挙げられるが、これらに制限されない。
酸添加塩としては、有機酸のみならず、無機酸の塩が含まれる。適切な無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、等々がある。適切な有機酸の代表的な例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパルチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA,グリコール酸、p−アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、硼酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、グリセロリン酸塩、ケトグルタール酸塩等々が挙げられる。
【0073】
塩基添加塩としては、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、テトラメチルアンモニウムヒロロキシド、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N−エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、例えば、リジン及びアルギニンジシクロヘキシルアミンのような塩基性アミノ酸、等々が挙げられるが、これらに制限されない。
金属塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム塩等々が挙げられる。
アンモニウム及びアルキル化アンモニウム塩の例としては、アンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム塩等々が挙げられる。有機塩基の例としては、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミン、コリン等々がある。
【0074】
III.使用の方法
本出願で開示した対象物は、患者の神経変性疾患及び他の疾患又は状態を治療する新しい方法を提供する。より具体的には、本出願で開示した対象物の方法は、神経変性疾患又は他の疾患、又は状態を治療するために、患者のp75NTR受容体分子に対して結合特異性を持つ化合物の投与を含む。上記化合物は、生存シグナルの誘導及び/又はプロNGF−誘導の細胞死の阻害を引き起こすために有効量を投与できて、この有効量は神経変性疾患及び他の疾患との関わりで決定される。
治療される病気は、少なくとも部分的に、ニューロトロフィンのp75NTR受容体への結合を介する全ての病気である。その様な病気としては、アルツハイマー病、ハンチントン病、ピック病、筋萎縮性側索硬化症、癲癇、パーキンソン病、脊髄損傷、脳梗塞、低酸素症、虚血症、脳損傷、糖尿病性神経障害、末梢神経障害、神経移植、多発性硬化症、末端神経障害、脱毛、p75発現細胞の変性又は機能喪失を含む状態があるが、これらに制限されない。
【0075】
p75NTR受容体分子に対する結合特異性を持つ化合物は、例えば、化学療法を原因とする髪毛嚢細胞生存の誘導のような他の容態ばかりではなく、化学療法及び/又は神経変性疾患に原因する神経変性疾患のような神経変性疾患の予防を含む、神経変性疾患の治療に用いることができる。
本出願で開示した対象物は、更に、細胞生存を促進する新しい方法を提供する。代表的な細胞としては、中隔細胞、海馬細胞、皮質細胞、感覚細胞、交感神経細胞、運動神経細胞、髪毛嚢細胞、前駆細胞及び幹細胞があるが、これらに制限されない。特異的には、上記方法は、p75NTR受容体分子に対し結合特異性を持つ化合物で細胞を処理することからなり、ここで上記化合物は、生存シグナリングを誘導し、またプロNGF誘導細胞死を阻害する。
【0076】
IIIA.投与
本出願で開示した対象物は、患者におけるp75NTR結合を介する病気を改善するために、p75NTR受容体化合物に対する結合特異性を有する化合物を投与する方法を開示する。上記方法は、本明細書で開示した全ての化合物のように、p75NTRに対する結合特異性を有する、有効量の化合物を患者に投与するステップからなる。
本明細書で用いるように、投与は当業者に知られている様々な方法の中のどの方法を用いても、達成又は行うことができる。上記化合物を、例えば、皮下に、静脈内に、非経口的に、腹腔内に、皮内に、筋肉内に、局所的に、腸内に(例えば、経口的に)、直腸に、鼻腔内に、口内に、舌下に、膣内に、吸入スプレイで、医薬ポンプ又は埋め込んだリザーバーを通して、通常の非毒性の生理的に許容される担体又は媒体を含む投薬投与量を投与できる。
【0077】
更に、本出願で開示された化合物は、処置の必要に応じて、局所的領域に投与されうる。これは、例えば、シアラスチックメンブレン又は繊維のような膜も含め、手術の間の局所的輸液、局所的適用、経皮パッチ、注射、カテーテル、座薬、埋め込み(埋め込みは、任意に、多孔性、非多孔性、又はゼラチン性の材料である)によって行われるが、これらに制限されない。
上記化合物が投与される状態(例えば、シロップ、エリクシル、カプセル、錠剤、溶液、発泡体、乳濁液、ゲル、ゾル)は、化合物が投与される経路に部分的に依存するであろう。例えば、粘膜(例えば、口内粘膜、直腸、小腸粘膜、気管粘膜)投与のために、鼻ドロップ、噴霧質、吸入物、ネブライザー、点眼又は座薬が用いられる。上記化合物は、また、神経突起の成長、神経細胞生存、又は埋め込み物表面と細胞の相互作用を、促進するために、生体埋め込み可能材料を被覆するために用いることができる。本出願で開示した上記化合物及び薬剤は、鎮痛剤、抗炎症剤、麻酔剤及びp75NTRを介する病気の1又は2以上の症状又は原因を制御する他の薬剤のような、生物学的に活性な薬剤と共に投与できる。
【0078】
更に、投与は、適切な期間、複数の投薬量を患者に投与することからなることができる。この様な投与療法は日常業務の方法に従い、本明細書に開示の総説に基づき決定できる。
本出願で開示した対象材料の化合物は、製剤における唯一の活性薬剤として用いる;又はこの化合物は、他の活性な構成要素とのコンビネーション(例えば、互いにほとんど同時の投与、又は同一製剤の中で)として用いることができるが、他の活性な構成要素としては、例えば、(i)ニューロトロフィン;又は、(ii)神経変性病における、神経細胞生存又は軸索の生存を促進する他の因子又は薬剤であり、これらの薬剤としてはアミロイド−β阻害剤、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、ブチリルコリンエステラーゼ阻害剤及びグルタミン酸受容体アンタゴニスト、N−メチル−D−アスパラギン酸塩サブタイプが挙げられるが、これらに制限されない。
【0079】
III.B.投与量
本明細書で開示した化合物の投与のために、齧歯動物モデルに投与する投与量に基づく、ヒト投与量に外挿する従来の方法は、マウス投与量をヒト投与量に換算する換算因子を用いて行うことができる:kgあたりのヒト投与量=kg当たりのマウス投与量x12(Freireich他、(1966)Cancer Chemotherapy Rep.50,219-244)。また、薬剤投与量は、体重よりも体表面積平方メートル当たりのミリグラムでも与えられるが、その理由は、この方法がある種の代謝的及び排出機能に対し、良い相関を与えるからである。更に、体表面積は、異なる動物種のみならず、成人及び子供の投薬量のための共通分母として用いられる(Freireich他、(1966)Cancer Chemotherapy Rep.50,219-244)。要約すると、すべての与えられた動物種におけるmg/kg投与量を等価なmg/sqm投与量として表すために、投薬量に適切なkm因子を掛ける。ヒト成人では、100mg/kgは100mg/kgx37kg/sqm=3700mg/mである。
【0080】
本明細書に開示している化合物がこの類似体又は断片の形をとることができる範囲で、活性及び有効量の投与量は変わりうることを理解しなければならない。しかしながら、当業者は本出願で開示した対象物により想定されるタイプの化合物の活性を容易に検定できる。
本明細書で開示した化合物は、単位投与量で用いることができて、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.,Easton,PA,1980)に記載されているように、製剤技術でよく知られている如何なる方法によっても製造できる。
本出願で開示された化合物の代表的な投与量は、齧歯動物モデルに対し10〜100μg/グラム体重である。投与量範囲は特定の化合物及びその活性に依存することは当業者に理解されるだろう。投与量範囲は、神経変性疾患又は神経変性が関わる他の疾患及び症状が改善される及び/又は細胞が生存する上で、期待する効果をもたらすに充分なほど大投与量であるが、扱いにくい様々な副作用を起こす程は大投与量でないと理解すべきである。治療上の有効性に対する適切な範囲は、投与の経路、年齢及び治療を受ける患者の状態に応じて、当業者により直ちに決定される。個々の治療者は、様々な複雑さに応じて、投与量を調整する。本明細書で開示した化合物が、開示した対象物に従って用いられるならば、予期しうる許容できない毒性効果はない。
【0081】
本明細書で開示された化合物の有効量は、測定できる生物学的応答をもたらすに充分な量からなる。本明細書で開示した対象物の治療化合物中の活性構成成分の実際の薬用濃度は、特定の患者及び/又は使用に対する好ましい治療効果を達成するために有効な、活性化合物の量を投与するために変わりうる。好ましくは、最小薬用量を投与することであり、また薬用量は、薬用量規定毒性がない場合、最小有効薬用量まで上げられる。通常の当業者は、治療上有効薬用量の決定及び調整について及び何時またどの様にその様な調整を行うかという事と共に、熟知している。
更に、本出願で開示した対象物の方法に関して、好ましい患者は、脊椎動物の患者である。好ましい脊椎動物は、温血動物であり;好ましい温血脊椎動物は、哺乳動物である。本出願で開示した対象物の原理は、用語"患者"に含まれている、全ての脊椎動物に関して有効であることを示すが、本出願で開示した方法により治療される患者は、好ましくはヒトである。この文脈では、脊椎動物とは、神経変性疾患の治療が望まれる全ての脊椎動物種であると理解すべきである。本明細書で用いるように、用語"患者"は、ヒト及び動物患者を含む。従って、獣医の治療上の使用は、本出願で開示された対象物に基づき提供される。
【0082】
従って、本出願で開示された対象物は、ヒト及び、シベリアタイガーのような、絶滅の危機にあるために重要な哺乳類;ヒトによる消費のために農場で飼育される経済的に重要な哺乳類;及び/又は、ペット又は動物園で飼われている動物のような、ヒトにとって社会的に重要な動物などの、哺乳類の治療に提供される。この様な動物の例としては、ネコ及び犬のような肉食動物;ピッグ、ホッグ及び野生イノシシのような豚及び/又は牛、雄牛、羊、キリン、鹿、山羊、バイソン及びラクダ;馬のような反芻動物及び/又は有蹄類が含まれるが、これらに限らない。また、絶滅危惧種の及び/又は動物園のトリ類及びニワトリ及びより具体的には、七面鳥、鶏、アヒル、ガチョウ、ホロホロ鳥等々の家禽の治療を含め、トリの治療が提供されるが、これらのトリ類はまた、ヒトにとっても経済的にも重要である。従って、また家畜としての豚、反芻動物、有蹄類、馬(競走馬も含め)、家禽類等々、の治療も提供される。
【実施例】
【0083】
以下、実施例にて本発明を例証する。本開示及び当業者の一般レベルを考慮して、以下の実施例は例示だけが目的であり、本出願で開示した対象物の精神及び範囲から離れることなく、無数の変化、修正、変換を用いることができることは、当業者に理解されるだろう。
【0084】
実施例の材料及び方法
計算的研究
計算研究は、Accelrys(San Diego,California,USA)から得たAccelrys Catalyst(R)及びInsightIIシステムを用いて行った。
抗体及びタンパク質
ポリクロナルラビット抗−NGF抗体はChemicon(Temecula, California, USA)から得た。モノクローナル抗−リン酸−ERKT202/Y204、ポリクローナル抗−ERK42/44,モノクローナル抗−リン酸−AKTS473,ポリクローナル抗−AKT,ポリクローナル抗−リン酸−NFκB−p65(Ser563),及び部位特異的ポリクローナル 抗−TrkY490は、Cell Signaling Technology,Inc.(Beverly, Massachusetts, USA)より得たモノクローナル抗NFκB−p65抗体はSanta Cruz Biotechnology,Inc.(Santa Cruz,California,USA)より得た。モノクローナル抗−アクチン抗体はSigma-Aldrich Corp.(St.Louis,Missouri,USA)より得た。ポリクローナルTrkA及びTrkB抗体は、Upstate USA,Inc.(Charlottesville,Virginia,USA)より得た。抗−pan−Trk1087及び1088抗体は、以前に特性が報告され(Zhou,Holtzman,D.M.,Weiner,R.I., Mobley,W.C.(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91,3824)、またWilliam C.Mobley 博士(Stanford University,California,USA)より得た。組み換えp75NTRの細胞外領域のニューロトロフィン結合領域(残基43−161,システイン繰り返し領域II,III,及びIV)に対して得たp75NTRポリクローナルうさぎ抗体9651(Huber,L.J.,Chao,M.V.(1995)Dev Bio 167,227-238)及び9650は、Moses Chao博士(Skirball Inst.,NYU,New York,USA)より提供された。組み換えヒトNGFは、Invitrogen(Carlsbad,California,USA)から得た、またBDNFをSigma-Aldrich(St.Louis,Missouri,USA)より得た。p75NTR/Fc及びTrkA/Fcキメラは、R&D Systems(Minneapolis, Minnesota,USA)より得た。フリン抵抗性プロ−NGFは、前述(Beattie,M.S.他(2002)Neuron 36,375-386)のように作成した。
【0085】
神経バイオアッセイ
海馬神経細胞はE16−17マウス胎児より前述(Yang,T.他(2003)J Neurosci 23,3353-3363)の様に調整した。低密度培養は、各ウェルにポリ−L−リジン−塗布A/2プレートに25μlの細胞懸濁液(2000神経細胞/ウェル;12,500細胞/cm)、25μlの10%FBS含有DMEM及び様々な濃度の組み換えBDNF,NGF,又はp75−結合性化合物を加えて、開始した。p75NTR+/+及びp75NTR−/−ニューロンを使う研究には、p75NTR遺伝子のエクソン3に突然変異を有するマウス(Lee.K.F.他(1992)Cell 69.737-749)をB6コンジェニック(類似遺伝子系)バックグランドに掛け合わせた(>10B6バッククロス)。
【0086】
培養48時間後に、与えられた細胞がMTTを青色ホルマザン産物に変換するか否かの視覚的測定による標準的な形態学的基準のコンビネーションを用いて、生存細胞を、前述(Longo,F.M.,Manthorpe,M.,Xie,Y.M.,Varon,S. 1997)J Neurosci Res 48,1-17)のように検定した。神経細胞の生存数は、各ウェル中の形態学的に原形を保ち、青色産物(LongoF.M.,Manthorpe,M., Xie,Y.M.,Varon,S.(1997)J Neurosci Res48,1-17)で満たされた全細胞数を計数することにより測定した。ニューロトロフィン及び化合物の各濃度に対して、デュプリケート(二重)のウェルを計数し、結果値を平均化した。各化合物の活性は、盲検計数で確認した。計数は25ng/mlBDNFによる生存数又はベースライン生存数により規格化した。用量依存性曲線のフィッティングは、SYSTAT software Inc.(Richmond,California,USA)から得たSigmaplotにより行った。
【0087】
シグナリング経路阻害研究のために、LY294002,PD98059(EMD Biosciences/Calbiochem,SanDiego, California, USAより得た)及びSN50(Alexis Corp.,Lausen,Switzerland)を、それぞれ最終濃度25μM,50μM,及び2.5μg/ml培養細胞に加え、同時にBDNF,NGF,又はp75-結合性化合物を加えた。抗体阻害研究のために、BDNF,NGF,又はp75-結合性化合物存在下に、p75NTR抗血清及び対照非免疫性血清を最終稀釈1:100にして用いた。シグナリング阻害剤、p75NTR抗体又はp75NTR−/−神経細胞に適用する全ての研究のために、生存数は48時間後に検定した。
【0088】
タンパク質抽出及びウェスタンブロット解析
Trk、AKT,NFκB,及びERK活性化の検定のために、E16−17マウス由来の海馬神経細胞をポリ−L−リジン塗布6ウェルプレート(Corning,Inc.,Corning,New York,USA)中10%FBSを含むDMEM培地で培養し、その後ニューロトロフィン又は化合物添加前に、2時間無血清DMEM中でインキュベートした。表示した時点で、神経細胞を、20mMトリス、pH8.0,137mM NaCl,1%IgepalCA−630,10%グリセロール、1mM PMSF,10μg/mlアプロチニン、1μg/mlロイペプチン、500μM オルトバナデート(Zhou,J.,Valletta,J.S.,Grimes,M.L.,Mobley,W.C.(1995)J Neurochem 65,1146-1156)からなる溶解緩衝液中に採取した。
細胞溶解液を遠心し、上清を集め、タンパク質濃度をPierce(Rockford, Illinois,USA)より得たBCAタンパク質アッセイ試薬を用いて測定した。ウェスタンブロットは前述(Yang,T.他(2003)J Neurosci 23,3353-3363)の様に行った。ウェスタンブロットシグナルは、Amersham(Piscataway,New Jersey,USA)から得たECL化学発光システムを用いて測定した(Yang,T.他(2003)J Neurosci 23,3353-3363)。
【0089】
p75NTR及びTrkAからのNGF排除
NGF ELISAを前述(Longo,F.M.他(1999)J Neurosci Res 55,230-237)のように行った。要約すると、96−ウェルプレートに、R&D System(Minneapolis,Mineasota,USA)から得た0.1pmol(1nM)のp75/Fc又はTrkA/Fc組み換えタンパク質を加え4℃で一晩インキュベートし、その後ブロッキング緩衝液を加え室温で1時間インキュベートした。100ng/mlのプロNGF又は様々な濃度のNGF及びp75−結合性化合物を試料緩衝液で稀釈し、各ウェルに加え、室温で6時間振とうしながらインキュベートした。その後、プレートを0.05%Tween−20を含むトリス緩衝液塩液(TBS)で5回洗浄し、抗−NGFうさぎポリクローナル抗体を加え4℃で一晩インキュベートした。TBDで5回洗浄後、ウェルに抗−うさぎIgG HRP共役体を加え、室温で2.5時間インキュベートし、5回洗浄した。3,3'、5,5'−テトラメチル−ベンジジン基質を加え、450nmの吸光度を測定した。
【0090】
p75NTR抗体競合
空ベクター又はp75NTR(Huang,C.S.他(1999)J Biol Chem 274,36707-36714)を発現するNIH3T3繊維芽細胞は、William Mobley博士(Stanford University,California,USA)より供与を受けた。細胞を単層に増殖し、2mM EDTAを含むPBS中に採取し、沈殿にさせ、1mg/mlBSAを含む氷冷したDMEM HEPESに再懸濁した。各実験ポイントに対し、密集成長した1個の6ウェルプレートから得た6〜9x10細胞を用いた。
結合解析のために、p75NTR抗体(1:100)を100nMのp75−結合性化合物の存在下又は非存在下に、ゆっくり回転させながら4℃で90分間結合させ、その後PBSで4回洗浄した。最終的な細胞沈殿物を溶解緩衝液に再懸濁した。
ウェスタンブロットは、前述のように行った。p75NTR抗体の存在を測定するために、ブロットをAmersham/Pharmacia Biotech(Piscataway,NewJersey,USA)から得たセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合のヤギの抗−うさぎIgGをプローブとして検査した。シグナルは、Amersham Biosciences(Piscataway,NewJersey,USA)から得たECL化学発光システムにより測定した。負荷したタンパク量変化を補正するために、ブロットを切り出し、Sigma(St.Louis.Missouri,USA)から得たβ−アクチンモノクローナル抗体によるプローブで再検査した。
【0091】
希突起膠細胞培養、プロ−ニューロトロフィン処理及び細胞死検定
子ラットから得た皮質の希突起膠細胞は前述(Yoon他(1998)J Neurosci 18,3273-3281, Harrington,A W., Kim,J.Y.,Yoon,S.O.(2002)J Neurosci 22,156-166)のように調整した。細胞を0.05nM(2.8ng/ml)の組み換え型、開裂抵抗性プロNGFで処理した。対照として、350mMイミダゾールを含む等容積のプロNGF精製緩衝液で細胞を処理した。処理24時間後、細胞を固定し、前述(Beattie,M.S.他(2002)Neuron 36,375-386)のようにMBP及びTUNEL染色のために加工した。実験条件毎に最少600細胞のために、ウェルあたり200〜250個の細胞をカウントした。
【0092】
実施例1
計算によるモデリング、薬理作用団の生成、仮想的及び機能的スクリーニング
受容体と相互作用する可能性が高いループ構造を模倣し、化合物産出性の薬理作用団を作り出すために、次の2条件を仮定した:(1)リガンド(配位子)ペプチド構造の自由度はタンパク質中に存在することにより制限を受ける;(2)標的とした受容体サブサイト(副部位)においてループ構造の変化を伴う"誘導適合"は殆どない、又はその構造変化は小分子リガンドの柔軟性により対応する。これらの2条件を適用した場合、天然のリガンドに似た様態で、受容体と相互作用する小分子コンフォメーションの相互作用/活性化が可能となる。
NGFβ−ヘアピンループに類似した、活性な二量体の環状ペプチドの計算研究によると、エネルギー的及び構造的な制約により、両ペプチドサブユニットのβ―ヘアピン折りたたみが同時に行われることは不可能だと言うことを示唆し、このことは、ペプチドはモノマー的に働くことを意味する。更に、3D配座ライブラリーの初期の仮想的スクリーニングに基づき、多くの機能的に二量体の、分子量が500D以下の、非ペプチド分子が存在する可能性はない。
【0093】
従って、単一のループ1構造を模倣する化合物を発見することに努力は絞られた。化合物が選択され、図1にまとめた手順を用いて細胞生存検定によりスクリーニングが行われた。計算研究の結果によると、原位置(インサイチュ)で、繋がれたループ1骨組み及び側鎖構造の近位部分は、自由度を制約する、またループ分子動力学シミュレーションで得たサンプル集合から選んだ中間構造を抽出し、新しい薬理作用団モデルを作り上げるために用いた(図1a)。薬理作用団の特徴の置き換えについての手引を、ループ系統学、側鎖化学及び合成の活性ペプチドについての発明者の経験、を考察することで得た。
【0094】
第1近似として、異なる動物種のニューロトロフィン及び異なるニューロトロフィンファミリーメンバーからの類似したループ1領域は、同様にp75NTRと結合すると仮定した。BDNFループ1の1次構造は、NGF及びNT−3と顕著に異なっており、薬理作用団の複雑性を減らすために、後者2構造のみ用いた。水素結合供与体として働くヒスチジンの特性(McDonald,I, Thornton,J.M.,(1994)WWW Edition December 1994)から、部位34での使用が示唆され、一方、部位32でのKからRへの変異から、この部位での正にイオン化可能なフィーチャーの使用が示唆される(図1b及び1c)。
800,000以上の化合物の各々の、平均35配座が、新しい薬理作用団に対してスクリーニングされ、計算した内部エネルギー値10kcal/mol以下とフィットする約800化合物を得た(図1d)。この数は、仮想的な浅い受容体結合ポケットと折り合える立体的な適合性及び官能基の最大柔軟性、を基にして、目視検査により約60にまで減少した。最初、35化合物が得られ、その中、23化合物が水に可溶であった。
【0095】
ニワトリDRG神経細胞生存検定を用いた予備的研究により、テストした23化合物中4化合物が顕著に活性であった。更なる研究を、胎児マウス海馬神経細胞を用いて行った。低密度及びグリア細胞の補助無しという条件で、これらの神経細胞の生存は、培地へのニューロトロフィン添加に、部分的に依存した。
前もってテストした23化合物を、これらの海馬細胞培養においてスクリーニングした結果、これらの化合物のうち3化合物(化合物2〜4)はDRG培養を用いて活性を有すると同定され、また4番目及び5番目の活性化合物(化合物1及び7)をDRG及び海馬検定により同定した。これらの結果は、スクリーニング過程の収率17%に対応する。この方法は更に支持されて、NGFループ4(LM14A)のモデルに基づく予備的研究において、同定された活性化合物について高い陽性率が得られた(スクリーニングした8化合物中3陽性(37%))。
【0096】
p75−結合性化合物存在下の、NGF−p75NTR結合の回帰分析を行った。Sigmaplotの非線形回帰分析モジュールを用いて、修正したGaddum/Schild式(adapted from Motulsky,H.J.,及びChristopoulos,A.(2003) A Practical Guide to Curve Fitting, 第2版. (San Diego,California,GraphPad Software,Inc.):
【数1】

に対し、データーを適合(フィット)させた。ここで、トップ=最大シグナル;ボトム=バックグランドシグナル;[C]=化合物濃度;S=Schild係数;Hill勾配=Hill係数;[NGF]=NGF濃度、EC50=最大結合(トップ−ボトム)の50%をもたらすNGFの濃度;及びA=非シフト曲線のEC50の2倍をもたらす化合物濃度。本明細書では、1.0〜1.6の範囲の計算したHill勾配は、一般的に1と顕著に差がない。
【0097】
実施例2
海馬神経細胞生存を促進する化合物
強力な神経栄養性活性をもつ化学的に様々な化合物を同定するために、ニュロトロフィンループ1及び小規模インビトロ生物検定に基づく高効率仮想スクリーニングを用いた(図1)。約800,000化合物をコンピューター内でスクリーニングし、インビトロ検定に付した23化合物のうち4ポジティブという高効率(17%)をもたらした。
選択した化合物の作用機序を理解し、これらの化合物が標的となった受容体p75NTRを介して働くという予測をテストするために、NGF及びBDNFと比較しての、p75−結合性化合物の生存促進活性の用量依存関係を、NGFが神経細胞の生存を促進する培養条件における胎児海馬神経細胞を用いて調べた。培養系において、これらの細胞はほとんどTrkAを発現しないので(Brann,A.B.,他(1999)J Neurosci 19,8199-8206;Bui,N.T.,他(2002)J Neurochem 81,594-605)、神経栄養性活性は主にTrkB及びp75NTRを経たBDNF及び主にp75NTRを経たNGFにより媒介される。
【0098】
化合物1〜4(図2a、構造)を加えると、神経細胞生存率増大(図2a、顕微鏡写真)と一致して、GAP−43陽性の神経突起を有する細胞の数が増加した。活性化合物(図2b)の用量応答プロフィルによって、EC50値は、100−300pMであり、またNGF応答の80〜100%の内部活性が示された。これとは別に、化合物3及び4の合成加工物も同様の結果を示した。構造的に化合物3に類似した化合物5は、神経栄養活性を全く、又は殆ど持たなかった。化合物1〜5の構造を表1に示す。
各化合物5nM以上の濃度に対し、p75NTRに無関係な機序、又は受容体多量体形成及び高受容体占有による生存シグナルの変化により神経栄養活性を持たない化合物(例えば、化合物5)によっても、生存率は、ベースライン又はそれ以下に減少した(図2b)。海馬神経細胞システムにおける応答曲線が、NGFの応答曲線に似たことは、生存シグナルの活性化が、p75NTRのNGF結合領域を介するという結論と一致する。
【0099】
最初同定した4化合物のうち、2化合物(カフェインの誘導体である化合物3及びアミノ酸誘導体である化合物4)は、リピンスキー基準(Lipinski,C.A.(2000)J Pharm Toxicol Methods 44,235-249)で、最も"薬剤類似の"特性を持つと予想され、また詳細な機序研究のために血液脳関門計算(Fu,X.C.,Chen,C.X.,Liang,W.Q.,Yu,Q.S.(2001)Acta Pharmacol Sin 22,663-668;Clark,D.E.(2002)J Pharm Sci 88,815-821)が選ばれた。予備的研究によると、化合物4は顕著な経口摂取及び血液脳関門透過性を示したので、化合物4が優先された。比較的に不活性型の化合物5は化合物3に構造的に似ていたのでネガティブ(陰性)対照として選ばれた(図2a)。
【0100】
実施例3
Trk受容体とではなく、p75NTR受容体と相互作用し及びこれを経由して働く化合物
p75−結合性化合物とニューロトロフィン受容体との相互作用を検定するために、組み換えキメラタンパク質p75NTR−Fc及びTrkA−Fcに対するNGFの結合に及ぼす、化合物の効果を濃度を上昇させて調べた。これらの実験において、化合物5(図3c)ではなく、化合物4(図3a)及び化合物3(図3b)は、NGF/p75NTR−Fc結合曲線を顕著に右側にシフトさせた。各活性化合物によるNGF結合の阻害は、NGF濃度を上げることにより元に戻り、このことは、少なくとも部分的に、事実上競合であるという機序と矛盾しない。データを阻害剤存在下でのリガンド結合を記述するGaddum−Schild式に適合させ(Motulsky,H.J.,及びChristopoulos,A.(2003)A Practical Guide to Curve Fitting,第2版(San Diego,California,GraphPad Software,Inc.))、得られたSchild係数は両活性化合物に対して著しく1.0より小さく(化合物4,0.58+/−0.04;化合物3,0.26+/−0.01)、例えば、多重リガンド−受容体結合部位(Lutz,M.,及びKenakin,T.(1999)定量的分子薬学及び新薬発見における情報科学(Quantitative Molecular Pharmacology and Informatics in Drug Discovery)(Hoboken,New Jersey: John Wiley & Sons);Neubig,R.R.,Spedding,M,Kenakin, T.,及びChristopoulos, A.(2003)Pharmacol Rev 55,597-606)のような、より複雑なモデルを示唆する。
【0101】
これらの結果は、化合物の効果は、受容体のNGF結合表面の一部だけとの相互作用及び/又は間接的にNGF結合に影響のあるアロステリック効果に依るというモデルと矛盾しない。Gaddum−Schild解析により、Schild係数が1の場合、化合物のKdと同等であることができるA2(即ち、EC50を右方向に2倍シフトさせる化合物の濃度)として知られている効力の尺度が与えられる。化合物4及び3に対して導かれたA2値は、それぞれ1192+/−1.2及び31.6+/−1.3nMであった。しかしながら、Schild係数は顕著に1とは異なるので、真のKd値を決めることはできない。
【0102】
化合物4の場合、その生物効果に対するEC50値は約150pMであり、他方、そのA値は約4桁ほど大きい。小分子の生物効力とリガンド排除により見積もられる結合の間の大きな差異は、よく見られ(Lutz,M.,及びKenakin,T.(1999)定量的分子薬学及び新薬発見における情報科学(Quantitative Molecular Pharmacology and Informatics in Drug Discovery)(Hoboken, New Jersey: John Wiley & Sons)),幾つかの原因が考えられ:結合における受容体部位と機能検定の間の差異;最大の生物効果は非常に低い受容体占有率で見られる等の、リセプター後のシグナル増幅;より小さな拮抗剤による多価リガンドの部分的な排除;及び標的リセプターとは無関係の機序により化合物が働く等が挙げられる。後者の可能性については、p75NTR依存性を見積もるために、p75NTRブロッキング抗体及びp75NTR+/−神経細胞を用いて対処した。更に、p75NTRに対するp75−結合性化合物の特異性は、活性化合物は、TrkAに対するNGF結合性に効果がないという知見によって支持された(図3d、3e)。
【0103】
次に、化合物のp75−結合活性は、p75NTR−依存性であることが確定できた。マウス背根神経節神経細胞においてNGF及びNGFループ1ペプチド類似体の神経栄養活性を抑制することが前に示された(Longo,F.、M.,Manthorpe,M.,Xie,Y.M.,Varon,S.(1997)J Neurosci Res 48,1-17)、Ab9651は、BDNFの神経栄養活性を部分的に抑制し(図3g)、また化合物3及び4の神経栄養活性を完全に抑制するが、非免疫抗体は効果がなかった。他の、別に得られた、ウサギポリクローナル抗−p75NTR抗体(Ab9650)を用いて、殆ど同一の結果が得られ、p75NTR抑制の特異性を確認した。作成されたいずれの抗体もベースライン生存率を変化させなかったことは、これらの培養において、抗体作成は生存率を促進も、阻害もしないことを示唆する。これらの結果は、BDNFはTrkB及びp75NTRを介して働くが、NGF及びp75−結合性化合物は主に、p75NTRを介して働くということと一致する。
【0104】
さらに、ニューロトロフィン及びp75−結合性化合物に対するp75NTR−欠損(−/−)細胞の応答を調べた(図3h)。これらの培養条件でベースライン生存率は、野生株と欠損細胞の間で同等であったが、p75NTR−欠損細胞では、BDNFに対する応答は部分的で、またNGF及びp75−結合性化合物に対しては応答せず、p75NTR−抗体研究において見出した知見と類似したパターンであった。最後に、各化合物が最大の応答を引き起こす濃度である、50ng/mlNGFと共に5nMの化合物3又は4を処理すると、生存率に対する相加効果は見られず、p75−結合性化合物は直接p75NTRとの結合を介して働くという仮説をさらに支持する。
【0105】
化合物3及び4は、NGF−TrkA/Fc結合に対して効果がなかったが、TrkA及びBの活性化は生存を促進する主要な機序であるので、p75−結合性化合物が、海馬神経細胞の主要なTrkである、TrkBを活性化するかどうか、又は僅かに発現したTrkAを活性化するかどうか、についての疑問が残る。また、p75NTRに結合するリガンドは、Trk活性化に影響を与える。これらのことを考慮すると、p75−結合性化合物がTrk活性化を促進するかどうかを確認することは興味深い。TrkY490リン酸化について示したように、Trk活性化のよく確立されたマーカーである、Trk自働リン酸化の活性化能について、化合物3及び4を吟味した。海馬細胞培養において、BDNF処理により、強いTrk活性化がもたらされた(図3i)が、NGF又はp75−結合性化合物処理では活性化は見られなかった。NGFでシグナルがないことは、これらの培養では、殆ど又は全くTrkAが作られないことを確認し、またNGFの栄養効果は主にp75NTRを介するという考察が支持された。3T3−TrkA細胞において、NGF処理により、期待されたTrkA自働リン酸化反応が行われたが、p75−結合性化合物はまた活性化を示さなかった(図3j)。これらの結果により、Trk受容体の活性化は、p75−結合性化合物による細胞生存の促進において、主要な働きをしてないことが、示唆される。
【0106】
実施例4
p75NTRを介して働く化合物
非活性な化合物にはなく、活性な化合物によるp75NTRからのNGFの排除、生物機能の塞がれてないp75NTR存在依存性、Trk相互作用及び活性化の欠如、NGF及び化合物間の相加効果の欠如、を総合すると、p75−結合性化合物は直接p75NTRと相互作用し、p75NTRを介して働くことが強く示唆される。
このことは、p75−結合性化合物を選択するために、本明細書で用いた薬理作用団モデルと一致する。主要な初期の選択基準、インビトロ(試験管内)でテストした小群から化学的に多様なポジティブ化合物の高率な同定及び様々な生化学及び生物学的検定における類似した作用としてこのモデルに適合するとすると、p75−結合性化合物は、受容体の他の部位ではなく、受容体のp75NTRニューロトロフィン結合部位で相互作用するということを示唆する証拠がある。
【0107】
p75NTR作用と結びついたプロ生存シグナルとしては、P13K及びAKT活性化(Roux,P.P.,Bhakar,A.L.,Kennedy,T.E.,Barker,P.A.(2001)J Biol Chem 276,23097-23104;Lachyankar,M.B.,他(2003)J Neurosci Res 71,157-172)、NFκB(Mamidipudi,V.,Li,X.,Wooten,M.W.(2002)J Biol Chem 277,28010-28018;Carter,B.D.,他(1996)Science 272,542-545;Gentry,J.J.,Casaccia-Bonnefil,P.,Carter,B.D.(2000)J Biol Chem 275,7558-7565;Foehr,E.D.,他(2003)J Neurosci Res 73,7556-7563),及びERK(Lad,S.P.,Neet,K.E.(2003)J Neurosci Res 73,614-626)が挙げられる。これらの各シグナル中間体は、様々な程度のオーバーラップ及び混線を伴い、また異なる反応速度を伴う経路を介して、Trk及びp75NTRによって独立して制御され得ることが示された。海馬神経細胞を20nM化合物3及び4(急速なシグナル活性化のための平坦域の濃度)で処理すると、NFκB経路(Sakurai,H.,Chiba,H.,Miyoshi,H.,Sugita,T.,Toriumi,W.(1999)J Biol Chem 274,30353-30356)の活性化の指標である、NFκB−p65リン酸化の約1.5倍の増加(図4a)が導かれ、これは両ニューロトロフィンタンパク質により誘導される結果と同程度であり、また同じ時間的経過である。
【0108】
同一濃度の化合物5は、NFκB−p65リン酸化を誘導しなかった。化合物3及び4によるNFκBの活性化と一致して、NFκB転位の特異的ペプチド阻害剤である、SN50(Lin,Y.Z.,Yao,S.Y., Veach,R.A.,Torgerson,T.R.,Hawiger,J.(1995)J Biol Chem 270,14255-14258)は、ベースライン生存率には影響をせずに、化合物3及び4及びニューロトロフィンにより促進される細胞生存率を顕著に下げた(図4e)。
AKT活性化の研究に於いて、化合物3及び4は、20nMにおいて、NGFを用いて30分で見られた活性化と同じ程度の活性化を示したが、BDNFはかなり大きな応答を示した。さらに、化合物3及び4によって促がされた活性化の開始は、NGFによる開始よりも遅かった(図4b)。これらの知見と一致して、AKT活性化を阻害する、P13キナーゼ阻害剤LY294002は、化合物処理なしの場合、又は化合物5処理の場合のベースライン生存率を含め、全ての場合に著しく生存率を低下させた(図4e)。
【0109】
ERKシグナリングの研究により、ERK44活性化は、有意ではあるが小さな応答を示すp75−結合性化合物より大きな割合でニューロトロフィンにより誘導されることが分かった(図4c)。ERK42活性化は、全体的により強く、またp75−結合性化合物を伴うより、BDNF及びNGFを伴ってより大きい。30分までにシグナルは大きく減少するが、BDNF処理の後では、活性化状態はより長時間持続する(図4d)。NGF及びp75−結合性化合物と比較して、BDNFにより誘導されたERK活性化が大きいという発見と一致して、ERK阻害剤PD98059は、BDNFによる生存率促進を顕著に減少させ、一方NGF活性に対しては、小さくはあるが有意の影響を持ち、化合物3又は4による生存率促進に対して有意な減少をもたらさなかった。
これらの観察結果より、NFκB及びP13Kとは異なり、ERK活性化は、p75−結合性化合物による生存促進に対して重要な因子ではないことが示唆される。この差異は恐らく、P75−結合性化合物と共に観察されたERK活性化のレベルが、蛋白質リガンドと比べ、低いことに関係するのであろう。P13K活性化は、AKTを介する経路及び介しない経路(Zhang,Y., 他(2003)J Neurosci 23,7385-7394)を通して生存を促進させることができて、またこの系におけるP13Kの下流域の本質的な機序は決まってないままである。BDNFによるAKT及びERKsのより強い活性化は恐らく、TrkBの影響を表すのであろう。
【0110】
化合物を介するAKT及びNFκB活性化と、神経細胞生存率の間の関係をさらに調べるために、化合物の用量−活性化研究を行った(図4f、4g)。この結果、化合物4はAKT及びNFκBの活性化を濃度範囲0.5nM〜3nMで誘導し、この濃度は生存率を促進するに必要な濃度に類似することを示し、また化合物誘導の生存を媒介するシグナリング機序での役割と一致する。
さらに、p75NTR−/−培養神経細胞では、NGF及び化合物によるAKTシグナリングの活性化は完全に欠けていることが分かり(図4h)、NGF及びp75−結合性化合物はp75NTRを介してAKT生存シグナリングを活性化するという仮説と一致する。化合物誘導の生存がp75NTR依存的であるという事実(図3g、3h)を考慮すると、これらの発見により、p75−結合性化合物は、培養海馬神経細胞の生存を、少なくとも部分的には、AKT及びNFκBを介する生存−促進シグナリング経路の活性化をもたらすp75NTRとの相互作用を通して誘導することが示唆される。
【0111】
実施例5
化合物3及び4は成熟した希突起膠細胞の細胞死を促進せず、プロNGF−誘導死を阻害する。
NGF及びp75−結合性化合物は、本明細書の研究で用いた培養海馬神経細胞の細胞生存を、促進するが、成熟NGF又はプロNGFのp75NTR配位は、ある種の細胞の生存を促進するよりむしろ細胞死と結びつけられてきた(Lee, R.,Kermani,P,Teng, K.K.,Hempstead,B.L.(2001)Science 294,1945-1948;Casaccia-Bonnefil,P.,Carter,B.D.,Dobrowsky,R.T.,Chao,M.V.(1996)Nature 386,716-719)。本明細書で開示したp75−結合性化合物が、ニューロトロフィンが細胞死を促進する系において、生存を促進するか、又は死を引き起こすか確認するために、p75−結合性化合物及びプロNGF処理した成熟希突起膠細胞の生存率を調べた。
成熟希突起膠細胞は、p75NTRを発現するが、TrkAを発現せず、NGF又はプロNGF処理によりアポトティック細胞死を起こす(Beattie, M.S.,他(2002)Neuron 36,375-386;Casaccia-Bonnefil,P.,Carter,B.D.,Dobrowsky,R.T.,Chao,M.V.(1996)Nature 386,716-719;Yoon,S.O.,Casaccia-Bonnefil,P., Carter,B.,Chao,M.V.(1998)J Neurosci 18,3273-3281)。NGF又はプロNGFとは異なり、化合物3,4及び5単独では、細胞死を促進しなかった(図5a)。さらに、プロNGF誘導の細胞死は化合物3及び4により、濃度1〜10nMの範囲で、著しく阻害されたが、化合物5では阻害されず、10nMでは、生存率を下げるようであった(図5a)。
【0112】
p75−結合性化合物がp75NTRへのプロNGF結合を抑えるかどうか確認するために、p75NTRへのプロNGF結合を濃度1500nM〜10、000nMの範囲で検定した。化合物3及び4は、プロNGF結合を同等に、最高濃度では約30%減少まで、阻害した(図5b)。プロNGF誘導による細胞死抑制と比べ、プロNGF結合阻害には高い濃度が必要と言うことは、以下の可能性を示唆する:1)共受容体(例えば、ソルティリン)存在下で天然の受容体コンフォメーションを持つ細胞ベースの検定では、プロNGF−p75NTR相互作用は、インビトロ検定と比べて、p75−結合性化合物によって壊されやすいかも知れない;2)低濃度では、化合物は定量的にプロNGF結合を変化させ、細胞死の誘導を減少するが、プロNGF結合全量を減少させない;又は3)化合物は、プロNGF結合に影響を与えることなしに、p75NTRによるプロ(親)生存的なシグナリングを優先的に活性化する。生存経路の優先的な活性化は、希突起膠細胞に発現されている、ソルティリンの様な、共受容体への結合を欠くばかりでなく、化合物による受容体構造の変え方に違いがあることに拠るかも知れない。実際、予備的な研究によると、プロNGFがソルティリン及びp75NTRの両者へ関与すると、効率的なリガンド結合、受容体複合体活性化及びアポトティック細胞死への作用が促進される(Nykjaer, A.,Willnow,T.E.,及びPetersen,C.M.(2005)Curr Opin Neurobiol 15,49-57)。
【0113】
実施例6
化合物3はAβ−誘導の神経変性を抑制する
既によく確立された手順を用いて、Aβを3日間水の中でプレインキュベートしオリゴマーを形成させた。E17海馬神経細胞を5日間インキュベートし、テスト化合物と共にAβを添加する前に成熟させた。成熟した神経細胞は高いAβ脆弱性を示す。
ネガティブ対照として加えたAβ42−1(30μM)は、細胞死を起こさなかった。Aβ1−42を10μM又は30μM加えると、3日間の処理で、神経細胞の約40%の損失を引き起こした(図6a)。これらの結果は、既に報告されたインビトロAβ誘導細胞死レベル(Michaelis,M.L.,他(2006)J Pharm Exp Ther 312:659-668)と似ている。以前報告した発見(Yankner,B.A.,他(1990)PNAS 87:9020-9023)であるが、NGF(100pg/ml)を添加しても、Aβ1−42の効果を阻止できなかった。
化合物(NC)なしにAβ1−42を添加すると、40%の神経細胞の損失をもたらした(図6b)。不活性な化合物5及び6の存在は、Aβ1−42の毒性を抑えなかった。しかしながら、化合物3を添加すると、用量応答的な効果及び約10nMのEC50値を示して、Aβ誘導の細胞死を抑制した。与えられた測定領域にある全細胞数当たりの、生存細胞の割合でデータを表示する。多数の生物検定のうち、条件当たり少なくとも20領域について平均値+/−SEを示す。低いナノモル濃度で、好ましい分子量(500以下)で、また好ましいLipinskiスコアで、化合物4が、完全にAβ誘導の変性を抑制する活性を持つと言うことは、インビボ(生体内)ADモデルにおいて、前臨床開発のための高い優先度をリードする化合物であることを示す。化合物4はまた、Aβ誘導による皮質及び中隔神経細胞の変性を抑えることが示された。
【0114】
実施例7
化合物4は中高年のマウスの脱毛を阻害する
3ヶ月間の毒性試行において、加齢性の脱毛があることが5匹の媒体処理マウスのうち3匹に、また5化合物4処理雄マウスのうち0匹に示された。追跡研究に於いて、2ヶ月間の、10匹の媒体処理マウスのうち4匹、また9化合物4処理中高年雄マウスのうち0匹が、脱毛を示した。
これらの研究を総合すると、15匹の媒体処理マウスのうち7匹及び14匹の化合物4処理マウスのうち0匹が、脱毛を示した。得られた結果のp値は、0.001(Fisherの直接確率検定)であり、前臨床研究において、顕著な効果があることを支持する。これらのデータによると、p75NTRは毛嚢細胞の細胞死、またそれにより、脱毛過程(カタゲン(中間期)として知られる)を調節することを示す。これらの発見は、加齢又は円形脱毛症のような病理学的状態における脱毛の抑制に対する、p75NTRを標的とする小分子化合物の投与の有効性を初めて示す。
【0115】
実施例のまとめ
与えられたリガンドと相互作用する受容体群の1部分を標的とすることで、自然に又は人工的に発生する、受容体を介する効果の一部分が活性化することが期待される。Trkの活性化を最小にすることを含め、この様なシグナリングパターンの差異が、臨床的に有用となることが証明されそうである。例えば、実施例に開示した化合物は、ニューロトロフィンが細胞死を促進する条件で生存を促進し、またニューロトロフィン処理によって発生し、恐らくTrkシグナリングを介した、過剰な交感神経繊維発芽及び痛み伝達の増強調節を誘導する可能性を減少させる(Wash,G.S.,Krol,K.M.,Kawaja,M.D.(1999)J.Neurosci19,258-273)。
【0116】
参考文献
以下に記載する参考文献及び本明細書に引用した全ての参照文献は、これらが補足し、説明し、背景を提供し、又は方法、技術及び/又は本明細書で使用される化合物を教示する限り、本明細書に参照文献として取り込まれている。
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【0119】
以前に権利主張された対象物の様々な詳細については、本明細書で権利主張した対象物の観点から離れない限り変更されうることは理解されるであろう。さらに、前述の記載は、例示の目的だけに行われ、限定を目的にしたものではない。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
p75NTR受容体分子に対する結合特異性を有する化合物であって、この化合物が下記化学式(II)
【化20】

(式中、nは0〜8の整数であり;Lは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;Aは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;Dは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基及びヒドロキシシクロアルキル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物から選択され、又はその医薬的に許容された塩であり、ただし化学式(II)の化合物は下記化合物
【化7】

ではない化合物。
【請求項2】
は−(CH−基(式中、mは1〜8の整数である)である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が下記構造
【化6】

(式中、mは1〜8の整数であり;Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;Rは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基及びヒドロキシシクロアルキル基からなる群から選択される。)で表される化合物、又はその医薬的に許容された塩である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
p75NTR受容体分子に対する結合特異性を有する化合物から成る神経変性疾患を治療する又は神経細胞の生存を促進するための薬剤であって、この化合物が下記化学式(II)
【化20】

(式中、nは0〜8の整数であり;Lは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;Aは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B、B、B、B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;Dは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物から選択され、又はその医薬的に許容された塩である薬剤。
【請求項5】
が−(CH−基(式中、mは1〜8の整数である)である請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
前記化合物が下式
【化6】

(式中、mは1〜8の整数であり;Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択される。)の構造を持つ化合物、又はその医薬的に許容された塩である請求項4又は5に記載の薬剤。
【請求項7】
前記化合物が下式
【化7】

の構造を持つ化合物、又はその医薬的に許容された塩である請求項4又はに記載の薬剤。
【請求項8】
前記化合物が下記化学式(II)
【化20】

(式中、nは0〜8の整数であり;Lは、アルキレン基、及び置換アルキレン基から成る群から選択される連結基であり;R、水素原子、アルキル基、及び置換アルキル基からなる群から選択され;AはN原子であり;B及びBはO原子であり;は下
【化18】

(式中、各R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、又は置換アルキル基を表す。)で表される。)で表されるいずれかの化合物から選択される請求項4に記載の薬剤。
【請求項9】
前記化合物が下記化学式
【化7】

で表されるいずれかの化合物から選択される請求項に記載の薬剤。
【請求項10】
前記疾患が、アルツハイマー病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、パーキンソン病、ピック病、脊髄損傷、脳梗塞、低酸素症、虚血症、脳損傷、糖尿病性神経障害、末梢性神経障害、神経移植、多発性硬化症、末梢神経障害、脱毛及びp75を発現する細胞の変性又は機能不全を含む病気からなる群から選択される請求項4〜のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項11】
前記細胞の生存が、ニューロン(神経細胞)、希突起膠細胞、手腕細胞、毛嚢細胞又はこれらの組み合わせの生存である請求項4〜10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
単位用量の活性成分と医薬グレードの担体から成る医薬調合物であって、該活性成分が下記化学式(II)
【化20】

(式中、nは0〜8の整数であり;Lは、アルキレン基、置換アルキレン基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、シクロアルケン基、置換シクロアルケン基、アリール基、置換アリール基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基から成る群から選択される連結基であり;Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;Aは、それぞれ独立して、N原子及びCH基からなる群から選択され;B及びBは、それぞれ独立して、O原子、S原子及びNR基(式中、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び置換アリール基からなる群から選択される。)からなる群から選択され;Dは下記群
【化3】

(式中、各R、R、R及びR10は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、ヒドロキシルアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基及びヒドロキシシクロアルキル基からなる群から選択され;各Rは独立して水素原子、水酸基、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アシルオキシル基及びアルコキシル基からなる群から選択され;又はR及びR若しくはR及びRは共にC〜C10のアルキル基、C〜C10の水酸化アルキル基又はC〜C10のアルケン基を表す。)から選択される。)のいずれかの化合物から選択され、又はその医薬的に許容された塩である医薬調合物。
【請求項13】
が−(CH−基(式中、mは1〜8の整数である)である請求項12に記載の医薬調合物。
【請求項14】
前記活性成分が下式
【化6】

(式中、mは1〜8の整数であり;Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、ハロ基、水酸基、アルコキシル基、アリール基、アリールオキシル基、置換アリール基及びアラルキルオキシル基からなる群から選択され;Rは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシシクロアルキル基、アルコキシシクロアルキル基、アミノアルキル基、アシルオキシル基、アルキルアミノアルキル基及びアルコキシカルボニル基からなる群から選択され、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基及びヒドロキシシクロアルキル基からなる群から選択される。)で表される化合物、又はその医薬的に許容された塩である請求項12に記載の医薬調合物。
【請求項15】
前記活性成分が下式
【化7】

の構造を持つ化合物、又はその医薬的に許容された塩である請求項12に記載の医薬調合物。
【請求項16】
前記調合物が、非経口又は経口の投与のための調合物である請求項1215のいずれか一項に記載の医薬調合物。
【請求項17】
更に第二活性成分を含む請求項1216のいずれか一項に記載の医薬調合物。

【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47236(P2013−47236A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220524(P2012−220524)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2008−506498(P2008−506498)の分割
【原出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【出願人】(507340706)
【Fターム(参考)】