説明

ニューロパシーの疼痛を処置するためのニューブラスチンポリペプチドの使用

【課題】触覚異痛症を含むニューロパシーの疼痛の処置、およびニューロパシーに関連する疼痛感受性の損失を減少させるための処置の提供。
【解決手段】本発明の処置は、ニューブラスチン(NBN)ポリペプチドの使用を包含する。本発明の方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で被験体に投与する工程を包含する。ニューロパシーの疼痛は、例えば、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、または坐骨神経痛に関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ニューロパシーの疼痛(触覚異痛を含む)の処置、およびニューロパシーに関連する疼痛感受性の損失を低減するための処置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ニューロパシーの疼痛は、慢性疼痛のいくつかの形態、および身体組織ではなく神経の機能不全から生じる形態を含む疼痛のカテゴリーである。ニューロパシーの疼痛(中枢神経系または末梢神経系の機能不全に由来する疼痛)はまた、末梢神経もしくは中枢神経系の領域に対する損傷の結果であり得るか、疾患から生じるか、または特発性であり得る。ニューロパシーの疼痛の症状としては、灼熱感、刺痛感、電気の感覚、ピンおよび針の感覚、硬直、四肢のしびれ、身体がねじれる感覚、異痛(通常は無害の皮膚の刺激により誘発される疼痛)、痛覚過敏(hyperalgesia)(疼痛に対する異常な感受性)、ならびに痛覚過敏(hyperpathia)(疼痛刺激が止まった後長く続く過剰な疼痛応答)が挙げられる。
【0003】
ニューロパシーの疼痛のいくつかの一般的な原因は、糖尿病、癌の化学療法、帯状疱疹感染、変性脊椎疾患に起因する頚部または腰椎根の圧迫、神経叢または神経根の悪性病巣、神経変性(例えば、切断による)、HIV感染、および中枢疼痛経路(脊髄視床路、視床、または視床放線を含む)の病変である。ニューロパシーの疼痛のさらなる原因としては、薬物誘導ニューロパシー、または毒素誘導ニューロパシーが挙げられる。例えば、ddI、ddCおよびd4Tのような抗ウイルス剤は、一般的に、末梢ニューロパシーを引き起こし、フェニトイン(抗痙攣薬剤)、イソニアジド(結核用薬剤)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、タキソール、タキソテール(taxotere)およびシスプラチン(癌化学療法剤)、高用量ビタミン、および葉酸拮抗薬も同様である。
【0004】
ニューロパシーの疼痛の管理のための現在の治療は、多くの患者にとって利益が限られており、そして所望でない副作用または用量を制限する毒性を含む。さらに、現在の治療は、症候性であり、疾患を改善するものではない。ニューロパシーの疼痛の管理および処置のための改善された治療(特に、根本的な病理を標的とする治療)の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、ニューロパシーの疼痛を処置するための改善された方法、触覚異痛を処置するための改善された方法、およびニューロパシーに関連する疼痛感受性の損失を低減するための改善された方法を提供する。本発明の方法は、ニューブラスチン(neublastin)(「NBN」)ポリペプチドを使用し、このニューブラスチンポリペプチドには、全長ニューブラスチンポリペプチドまたは生物活性な短縮型ニューブラスチンポリペプチドが挙げられ、これらには例えば、少なくとも配列番号2、4、5および11〜27が含まれる。さらに、本発明は、薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁されるか、溶解されるか、または分散される、全長ニューブラスチンポリペプチドまたは短縮ニューブラスチンポリペプチドを含む薬学的組成物を提供する。
【0006】
特定の実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、配列番号2のAA−80〜AA140、配列番号2のAA−41〜AA140、配列番号2のAA〜AA140、配列番号2のAA25〜AA140、配列番号2のAA28〜AA140、配列番号4のAA−80〜AA144、配列番号4のAA〜AA144、配列番号5のAA〜AA224、または配列番号5のAA81〜AA224のいずれかのポリペプチド;配列番号2のAA107〜AA140または配列番号2のAA76〜AA140のいずれかに記載のC末端配列を含み、そしてGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーの7つのCys残基の特徴を維持している、少なくとも1つのポリペプチド;配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27を含む少なくとも1つのポリペプチド;あるいは上で列挙した配列に対して70%を超えるアミノ酸相同性を有する、少なくとも1つのポリペプチド配列であり得る。
【0007】
このニューブラスチンポリペプチドは、体内における延長された滞留時間または増加した濃度を有するように誘導体部分により改変され得る。ニューブラスチンポリペプチドは、N−グリコシル化ニューブラスチンポリペプチドであり得る。さらに、このニューブラスチンポリペプチドは、1つ以上の部分で誘導体化され得、この部分としては、ポリエチレングリコール部分、脂肪族エステル、アミド、N−アシル誘導体、またはO−アシル誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0008】
一実施形態において、本発明は、被験体におけるニューロパシーの疼痛を処置するための方法を特徴とし、この方法は、この被験体に、有効量のニューブラスチンポリペプチド(例えば、配列番号2、4、5および11〜27のいずれか1つを含む)を投与する工程を、単独で包含するか、または以下からなる群から選択される有効量の痛覚脱失誘導化合物もまたこの被験体に投与することによる:オピオイド、抗不整脈薬、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗うつ薬、コルチコステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)。好ましい実施形態において、痛覚脱失誘導化合物は、鎮痙薬である。別の好ましい実施形態において、痛覚脱失誘導化合物は、ガバペンチン(gabapentin)((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(pregabalin)(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、被験体における触覚異痛を処置するための方法を特徴とし、この方法は、有効量のニューブラスチンポリペプチド(例えば、配列番号2、4、5および11〜27の少なくとも1つを含む)をこの被験体に投与すること単独によるか、または以下からなる群から選択される痛覚脱失誘導化合物の有効量と共に、有効量のニューブラスチンポリペプチドをこの被験体に投与することによる:オピオイド、抗不整脈薬、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗うつ薬、コルチコステロイド、およびNSAIDS。好ましい実施形態において、この痛覚脱失誘導化合物は、鎮痙薬である。別の好ましい実施形態において、この痛覚脱失誘導化合物は、ガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である。
【0010】
ニューブラスチンポリペプチドは、治療剤に付随して投与され得、この治療剤としては、抗癌剤または抗ウイルス剤が挙げられるがこれらに限定されない。抗癌剤としては、タキソール、タキソテール、シスプラチン、ノコダゾール(nocodazole)、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビンブラスチンが挙げられるが、これらに限定されない。抗ウイルス剤としては、ddI、DDC、d4T、ホスカネット、ダプソン、メトロニダゾル、およびイソニアジドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
本発明は、被験体においてニューロパシーの疼痛を処置するための方法を包含する。特定の実施形態において、このニューロパシーの疼痛は、糖尿病性ニューロパシーに関連する。別の実施形態において、このニューロパシーの疼痛は、ウイルスによる被験体の感染に関連し、このウイルスとしては、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびパピローマウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ニューロパシーの疼痛は、帯状疱疹ウイルスによる感染、または特にヘルペス後神経痛に関連し得る。さらなる実施形態において、ニューロパシーの疼痛は、坐骨神経痛に関連する。別の実施形態において、本発明は、ニューロパシーに罹患した被験体における疼痛感受性の損失を調節するための方法を特徴とする。好ましい実施形態において、このニューロパシーは、糖尿病性ニューロパシーである。別の好ましい実施形態において、疼痛感受性の損失は、熱疼痛感受性の損失である。
【0012】
さらなる実施形態において、ニューロパシーの疼痛は、痛覚過敏、幻想痛、熱痛覚過敏であるか、または外傷に関連する損傷に起因する。さらに、ニューロパシーの疼痛はまた、以下に関連し得る:遺伝性ニューロパシー(フリートライヒ運動失調、家族性アミロイド多発性ニューロパシー、タンジアー病、ファブリー病が挙げられるが、これらに限定されない)、代謝障害(腎不全および甲状腺機能低下が挙げられるが、これらに限定されない)、ビタミン欠乏症(ビタミンB12欠乏症、ビタミンB6欠乏症、およびビタミンE欠乏症が挙げられるがこれらに限定されない)、中毒性ニューロパシーおよび医原性ニューロパシー(アルコール症、ビタミンB6中毒、ヘキサカーボン(hexacarbon)中毒、アミオダロン、クロラムフェニコール、ジスルフィラム、イソニアジド、金、リチウム、メトロニダゾル、ミソニダゾル(misonidazole)、ニトロフラントインが挙げられるがこれらに限定されない)、感染性ニューロパシー(らい病、ライム病が挙げられるがこれらに限定されない)、自己免疫ニューロパシー(ギヤン−バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、重要性未定の単一クローン性高ガンマグロブリン血症、および多発性ニューロパシーが挙げられるが、これらに限定されない)、三叉神経痛、エントラップメント症候群(手根管が挙げられるがこれに限定されない)、外傷後神経痛、幻肢痛、多発性硬化症の疼痛、複雑性局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギーが挙げられるがこれらに限定されない)、新形成、脈管炎/脈管障害性ニューロパシーおよび特発性ニューロパシー。
【0013】
前述の方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で被験体に、好ましくは全身に投与する工程を意図する。代替の実施形態において、この投薬量は、1用量あたり、被験体の体重1kgあたり10μg〜30,000μgの間;1用量あたり、被験体の体重1kgあたり10μg〜10,000μgの間;1用量あたり、被験体の体重1kgあたり25μg〜10,000μgの間;1用量あたり、被験体の体重1kgあたり25μg〜3,000μgの間;および1用量あたり、被験体の体重1kgあたり50μg〜3,000μgの間である。
【0014】
前述の方法において使用されるニューブラスチンポリペプチドは、任意の適切な送達系を介して投与され得、そして好ましくは、静脈内送達、筋内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群からの送達系を介して、最も好ましくは筋内送達または皮下送達を介して投与され得る。前述の方法において使用されるニューブラスチンポリペプチドはまた、髄腔内送達を介して投与され得る。
【0015】
本発明のNBNポリペプチド含有処方物は、時限放出(timed−released)組成物において投与され得る。
上記に加えて、本発明は、以下の手段を提供する:
(項目1)
被験体におけるニューロパシーの疼痛を処置するための方法であって、該方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2)
前記ニューロパシーの疼痛が、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、または坐骨神経痛に関連する、項目1に記載の方法。
(項目3)
被験体における触覚異痛症を処置するための方法であって、該方法は、ニューブラスチンポリペプチドを、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり10μg〜30,000μgの間の投薬量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目4)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系を使用して投与される、項目1ま
たは3に記載の方法。
(項目5)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、筋肉内送達または皮下送達を介して投与される、項目1または3に記載の方法。
(項目6)
前記投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり10μg〜10,000μgの間である、項目1または3に記載の方法。
(項目7)
前記投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり25μg〜3,000μgの間である、項目1または3に記載の方法。
(項目8)
前記ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列が、以下:
(a)配列番号2のAA−80〜AA140、配列番号2のAA−41〜AA140、配列番号2のAA〜AA140、配列番号2のAA25〜AA140、配列番号2のAA28〜AA140、配列番号4のAA−80〜AA144、配列番号4のAA〜AA144、配列番号5のAA〜AA224、または配列番号5のAA81〜AA224、を含む少なくとも1つのポリペプチド;
(b)配列番号2のAA107〜AA140または配列番号2のAA76〜AA140のいずれかに記載のC末端配列を含み、そしてGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つのCys残基を維持している、少なくとも1つのポリペプチド;
(c)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27を含む少なくとも1つのポリペプチド;および
(d)上記(a)〜(c)の配列のいずれか1つに対して70%を超えるアミノ酸相同性を有する、少なくとも1つのポリペプチド配列、
からなる群より選択されるポリペプチドを含む、項目1または3に記載の方法。
(項目9)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、時限放出組成物において投与される、項目1
または3に記載の方法。
(項目10)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、体液中において、延長された滞留時間および/または増加した濃度を有するように、誘導体部分で改変されている、項目1または3に
記載の方法。
(項目11)
前記誘導体部分が、ポリエチレングリコール部分である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記誘導体部分が、脂肪族エステル、アミド、N−アシル誘導体、またはO−アシル誘導体からなる群より選択される、項目10に記載の方法。
(項目13)
被験体においてニューロパシーの疼痛を処置するための方法であって、以下:
(a)該被験体に、有効量のニューブラスチンポリペプチドを投与する工程;ならびに
(b)オピオイド、抗不整脈剤、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗うつ薬、コルチコステロイドおよびNSAIDSからなる群より選択される、有効量の痛覚脱失症誘導化合物を、該被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目14)
前記ニューロパシーの疼痛が、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、または坐骨神経痛に関連する、項目13に記載の方法。
(項目15)
被験体における触覚異痛症を処置するための方法であって、該方法は、以下:
(a)該被験体に、有効量のニューブラスチンポリペプチドを投与する工程;ならびに
(b)オピオイド、抗不整脈剤、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗うつ薬、コルチコステロイドおよびNSAIDSからなる群より選択される、有効量の痛覚脱失症誘導化合物を、該被験体に投与する工程、
を包含する、方法。
(項目16)
(b)における前記痛覚脱失症誘導化合物が、鎮痙薬である、項目13または15に
記載の方法。
(項目17)
(b)における前記痛覚脱失誘導化合物が、ガバペンチン(1−(アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)ブタン酸)である、項目13または15に記載の方法。
(項目18)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系を使用して投与される、項目13
または15に記載の方法。
(項目19)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、筋肉内送達または皮下送達を介して投与される、項目13または15に記載の方法。
(項目20)
前記ニューブラスチンポリペプチドの投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり10μg〜10,000μgの間である、項目13または15に記載の方法。
(項目21)
前記ニューブラスチンポリペプチドの投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり25μg〜3,000μgの間である、項目13または15に記載の方法。
(項目22)
前記ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列が、以下:
(a)配列番号2のAA−80〜AA140、配列番号2のAA−41〜AA140、配列番号2のAA〜AA140、配列番号2のAA25〜AA140、配列番号2のAA28〜AA140、配列番号4のAA−80〜AA144、配列番号4のAA〜AA144、配列番号5のAA〜AA224、または配列番号5のAA81〜AA224、を含む少なくとも1つのポリペプチド;
(b)配列番号2のAA107〜AA140または配列番号2のAA76〜AA140のいずれかに記載のC末端配列を含み、そしてGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つのCys残基を維持している、少なくとも1つのポリペプチド;
(c)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27を含む少なくとも1つのポリペプチド;および
(d)上記(a)〜(c)の配列のいずれか1つに対して70%を超えるアミノ酸相同性を有する、少なくとも1つのポリペプチド配列、
からなる群より選択されるポリペプチドを含む、項目13または15に記載の方法。
(項目23)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、時限放出組成物において投与される、項目1
3または15に記載の方法。
(項目24)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、体液中において、延長された滞留時間および/または増加した濃度を有するように、誘導体部分で改変されている、項目13または1
5に記載の方法。
(項目25)
前記誘導体部分が、ポリエチレングリコール部分である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記誘導体部分が、脂肪族エステル、アミド、N−アシル誘導体、またはO−アシル誘導体からなる群より選択される、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記ニューロパシーの疼痛が、ウイルスによる前記被験体の感染に関連している、請求項1または13に記載の方法。
(項目28)
前記ウイルスが、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パピローマウイルスからなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記ニューロパシーの疼痛が、治療剤の投与に関連するニューロパシーの疼痛である、項目1または13に記載の方法。
(項目30)
前記治療剤が、抗癌剤である、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記抗癌剤が、タキソール、タキソテール、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビンブラスチンからなる群より選択される、項目30に記載
の方法。
(項目32)
前記治療剤が、抗ウイルス剤である、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記抗ウイルス剤が、ddI、DDC、d4T、ホスカネット、ダプソン、メトロニダゾル、およびイソニアジドからなる群より選択される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記ニューロパシーの疼痛が、外傷に関連する損傷に起因する、項目1または13に
記載の方法。
(項目35)
前記ニューロパシーの疼痛が、異痛症である、項目1または13に記載の方法。
(項目36)
前記ニューロパシーの疼痛が、痛覚過敏の疼痛である、項目1または13に記載の方
法。
(項目37)
前記痛覚過敏の疼痛が、熱痛覚過敏である、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記ニューロパシーの疼痛が、幻想痛である、項目1または13に記載の方法。
(項目39)
前記ニューロパシーの疼痛が、遺伝性ニューロパシー(フリートライヒ運動失調、家族性アミロイド多発性ニューロパシー、タンジアー病、ファブリー病が挙げられるがこれらに限定されない)、代謝障害(腎機能不全および甲状腺機能低下症が挙げられるがこれらに限定されない)、ビタミン欠乏症(ビタミンB12欠乏症、ビタミンB6欠乏症、およびビタミンE欠乏症が挙げられるがこれらに限定されない)、中毒性または医原性のニューロパシー(アルコール症、ビタミンB6中毒、ヘキサカーボン中毒、アミオダロン、クロラムフェニコール、ジスルフィラム、イソニアジド、金、リチウム、メトロニダゾル、ミソニダゾル、ニトロフラントインが挙げられるがこれらに限定されない)、感染性ニューロパシー(らい病、ライム病が挙げられるがこれらに限定されない)、自己免疫性ニューロパシー(ギヤン−バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、重要性未定の単一クローン性高ガンマグロブリン血症および多発性ニューロパシーが挙げられるがこれらに限定されない)、三叉神経痛、エントラップメント症候群(手根管が挙げられるがこれに限定されない)、外傷後神経痛、幻肢痛、多発性硬化症の疼痛、複雑局所疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギーが挙げられるがこれらに限定されない)、新形成、脈管炎/脈管障害のニューロパシーならびに突発性ニューロパシーに関連している、項目1または13に記載の方法。
(項目40)
ニューロパシーに罹患した被験体において疼痛感受性の損失を低減するための方法であって、該方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目41)
前記ニューロパシーが、糖尿病性ニューロパシーである、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記疼痛感受性の損失が、熱性疼痛感受性の損失である、項目40に記載の方法。
(項目43)
項目40に記載の方法であって、前記ニューブラスチンポリペプチドが、静脈内送達
、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系を使用して投与される、方法。
(項目44)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、筋肉内送達または皮下送達を介して投与される、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり10μg〜10,000μgの間である、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記投薬量が、1用量あたり、前記被験体の体重1kgあたり25μg〜3,000μgの間である、項目40に記載の方法。
(項目47)
項目40に記載の方法であって、前記ニューブラスチンポリペプチドのアミノ酸配列
が、以下:
(a)配列番号2のAA−80〜AA140、配列番号2のAA−41〜AA140、配列番号2のAA〜AA140、配列番号2のAA25〜AA140、配列番号2のAA28〜AA140、配列番号4のAA−80〜AA144、配列番号4のAA〜AA144、配列番号5のAA〜AA224、または配列番号5のAA81〜AA224、を含む少なくとも1つのポリペプチド;
(b)配列番号2のAA107〜AA140または配列番号2のAA76〜AA140のいずれかに記載のC末端配列を含み、そしてGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つのCys残基を維持している、少なくとも1つのポリペプチド;
(c)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27を含む少なくとも1つのポリペプチド;および
(d)上記(a)〜(c)の配列に対して70%を超えるアミノ酸相同性を有する、少なくとも1つのポリペプチド配列、
からなる群より選択されるポリペプチドを含む、方法。
(項目48)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、時限放出組成物において投与される、項目4
0に記載の方法。
(項目49)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、体液中において、延長された滞留時間および/または増加した濃度を有するように、誘導体部分で改変されている、項目40に記載の
方法。
(項目50)
前記誘導体部分が、ポリエチレングリコール部分である、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記誘導体部分が、脂肪族エステル、アミド、N−アシル誘導体、またはO−アシル誘導体からなる群より選択される、項目49に記載の方法。
(項目52)
被験体においてニューロパシーの疼痛を処置、予防または遅延させるための方法であって、該方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で該被験体に投与する工程を包含し、該ニューブラスチンポリペプチドの投与が、予防的である、方法。
(項目53)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系を使用して投与される、項目52
に記載の方法。
(項目54)
被験体において糖尿病性ニューロパシーを処置するための方法であって、該方法は、ニューブラスチンポリペプチドを含有する処方物を、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量で該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目55)
前記ニューブラスチンポリペプチドが、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系を使用して投与される、項目54
に記載の方法。
(項目56)
項目52または54に記載の方法であって、前記ニューブラスチンポリペプチドのア
ミノ酸配列が、以下:
(a)配列番号2のAA−80〜AA140、配列番号2のAA−41〜AA140、配列番号2のAA〜AA140、配列番号2のAA25〜AA140、配列番号2のAA28〜AA140、配列番号4のAA−80〜AA144、配列番号4のAA〜AA144、配列番号5のAA〜AA224、または配列番号5のAA81〜AA224、を含む少なくとも1つのポリペプチド;
(b)配列番号2のAA107〜AA140または配列番号2のAA76〜AA140のいずれかに記載のC末端配列を含み、そしてGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つのCys残基を維持している、少なくとも1つのポリペプチド;
(c)配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26または配列番号27を含む少なくとも1つのポリペプチド;および
(d)上記(a)〜(c)の配列のいずれか1つに対して70%を超えるアミノ酸相同性を有する、少なくとも1つのポリペプチド配列、
からなる群より選択されるポリペプチドを含む、方法。
【0016】
他に規定されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似かまたは等価な方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書中に記述される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。矛盾する場合には、定義を含めて本明細書に従う。さらに、材料、方法、および実施例は、単に例示のみであり、限定を意味しない。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、L5/L6脊髄神経結紮(spinal nerve ligation)(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、触覚異痛症のほぼ完全な予防を示す折れ線プロットである。
【図2】図2は、L5/L6脊髄神経結紮(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、熱痛覚過敏(thermal hyperalgesia)のほぼ完全な予防を示す折れ線プロットである。
【図3】図3は、L5/L6脊髄神経結紮(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、完全に確立された触覚異痛症のほぼ完全な逆転を示す折れ線プロットである。
【図4】図4は、L5/L6脊髄神経結紮(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、完全に確立された熱痛覚過敏のほぼ完全な逆転を示す折れ線プロットである。
【図5】図5は、STZ(ストレプトゾトシン)誘導ニューロパシーを有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、熱痛感鈍麻のほぼ完全な正常化を示す棒グラフである。
【図6】図6Aおよび図6Bは、STZ(ストレプトゾトシン)処置後4週間目(図6A)および8週間目(図6B)での、STZ誘導ニューロパシーを有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、熱痛覚過敏の予防(図6A)、熱痛感鈍麻の予防(図6B)、および熱痛覚過敏の逆転(図6B)を示すグラフ表示である。
【図7】図7は、L5/L6脊髄神経結紮(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、完全に確立された触覚異痛症の用量依存ニューブラスチン逆転を示す、折れ線プロットである。
【図8】図8は、L5/L6脊髄神経結紮(SNL)を有するラットにおける皮下ニューブラスチン(NBN)による、完全に確立された熱痛覚過敏の用量依存ニューブラスチン逆転を示す、折れ線プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ニューブラスチンポリペプチドを、ニューロパシーの疼痛の危険性のある被験体またはニューロパシーの疼痛に罹患した被験体に投与することによる、ニューロパシーの疼痛を処置するための方法および組成物、触覚異痛症(tactile allodynia)を処置するための方法および組成物、ならびに疼痛感受性の損失を低下させるための方法および組成物に関する。
【0020】
ニューブラスチンポリペプチドは、生存を促進し、表現型の分化を維持し、変性を防止し、再生を促進し、そしてニューロン細胞およびニューロン組織の活性を回復するタンパク質である。あるいは、ニューブラスチン(例えば、WO 00/01815において初めて記載された)は、「アルテミン(artemin)」(例えば、WO 00/18799を参照のこと)および「エノビン(enovin)」(例えば、WO 00/04050を参照のこと)と呼ばれている。ニューブラスチンは、TGF−βスーパーファミリーの遠いメンバーとして分類されており(Massagueら、1994,Trends
in Cell Biology,4:172−178)、そしてGDNF、パーセフィン(persephin)(「PSP」;Milbrandtら、1998,Neuron 20:245−253(本明細書中で参考として援用される))およびニューツリン(neurturin)(「NTN」;WO 97/08196(本明細書中で参考として援用される))を含むファミリー内の、グリア細胞株由来の神経栄養因子リガンドファミリー(「GDNF」;WO 93/06116(本明細書中で参考として援用される))のメンバーである。GDNFのサブファミリーのリガンドは、RETレセプターであるチロシンキナーゼを介するシグナル伝達を誘導する能力を共通して有する。GDNFサブファミリーのこれらの3つのリガンドは、神経栄養性レセプターのファミリーであるGFRαレセプターに対する相対的アフィニティーにおいて異なる。ニューブラスチンは、好ましくは、GFRα3−RET複合体を通じて作用する。Baudetら、Development,127,4335−44頁(2000);Balohら、Neuron,21,1291−1302頁(1998);Airaksinenら、Mol.Cell.Neuroscience,13,313−325頁(1999)。
【0021】
GDNFサブファミリーのメンバーであるニューツリン(配列番号6)、パーセフィン(配列番号7)およびGDNF(配列番号8)に対するニューブラスチン(配列番号2)のアミノ酸配列比較を表1に示す。本発明において有用であるニューブラスチンポリペプチドは、好ましくは、GDNFサブファミリーフィンガープリント(すなわち、表1の下線を付したアミノ酸残基)を保持する。
【0022】
【表1】


表1に示されるアミノ酸配列整列から、ニューブラスチンが、TGF−βスーパーファミリー内で保存される位置に7つのシステイン残基を有することが見出され得る。この配列整列に基づいて、ニューブラスチンは、神経栄養性因子(LGLG−FR(Y/F)CSGSC−QxCCRP−SAxxCGC、GDNFサブファミリーフィンガープリント、表1において下線を付す)のGDNFサブファミリーのメンバーであることが示された。
【0023】
本明細書中で有用であるニューブラスチンポリペプチドは、プレ−プロ−タンパク質、プロ−タンパク質、成熟タンパク質、グリコシル化タンパク質、リン酸化タンパク質、短縮型形態、または任意の他の翻訳後に改変されたタンパク質の形態を含む、任意の生理活性形態で提供され得る。生理活性ニューブラスチンは、各NBN改変体について二量体化形態であることが想定される。なぜならば、二量体形成は、活性のために必要とされるからである。単量体NBNポリペプチドにおいて活性がほとんどまたは全く観察されない。生理活性ニューブラスチンポリペプチドは、補因子(例えば、GFRα3またはRET)の存在下で、GFRα3またはGFRα3とRETとの複合体に結合し、RETの二量体化およびRETの自己リン酸化を誘導する、二量体化ポリペプチドを含む。従って、本明細書中で用いられる場合、「ニューブラスチンポリペプチド」は、以下のような、(例えば、WO 00/01815に記載されるような)神経栄養活性を保有するポリペプチドである:
(1.野生型ニューブラスチン)
以下の「野生型」ニューブラスチンアミノ酸(「aa」または「AA」)配列は、本発明の方法および組成物において有用であるものの例である:
−−配列番号2のAA−80−AA140(「野生型」ヒトプレプロ)、
−−配列番号2のAA−41−AA140(プロヒト)、
−−配列番号2のAA−AA140(成熟140AA(配列番号11);本明細書中で以下「140NBN」)、
−−配列番号2のAA25−AA140(成熟116AA(配列番号12);本明細書中で以下「116NBN」)、
−−配列番号2のAA28−AA140(成熟113AA(配列番号13);本明細書中で以下「113NBN」)、
−−配列番号4のAA−80−AA144(マウスプレプロ)、
−−配列番号4のAA−AA144(マウス成熟−−144AA)、
−−配列番号5のAA−AA224(ラットプレプロ)、
−−配列番号5のAA81−AA224(ラット成熟−−144AA)、
−−配列番号2のAA107−AA140、より好ましくは、配列番号2のAA76−AA140に示されるC末端配列を有し、かつGDNFファミリーおよびTGF−βスーパーファミリーに特有の7つのCys残基を保持するペプチド。
【0024】
1つの実施形態では、好ましいニューブラスチンポリペプチドは、配列番号2の43位、70位、74位、107位、108位、136位および138位で保存される(7つの)システインを含む。これらの7つの保存されたシステイン残基は、3つの単量体内ジスルフィド結合(例えば、配列番号2において、システイン残基43−108、70−136、および74−138の間を意図する)および1つの単量体間ジスルフィド結合(例えば、配列番号2において、システイン残基107−107の間を意図する)(これらは、伸長したβ鎖領域と共に、TGF−βスーパーファミリーについての保存された構造的モチーフを構成する)を形成することが、TGF−βスーパーファミリー内で公知である。例えば、Daopinら、Proteins 1993,17:176−192を参照のこと。
【0025】
(2.短縮型ニューブラスチン(「NBN」))
本発明において有用なニューブラスチンポリペプチドはまた、全長ニューブラスチン分子の短縮型形態を含む。このような短縮型分子において、1つ以上のアミノ酸は、N末端またはC末端、好ましくは、N末端から欠失されている。短縮型ニューブラスチンポリペプチドは、成熟ニューブラスチンポリペプチドを提供し、そしてこの成熟ニューブラスチンポリペプチドを、短縮型ニューブラスチンポリペプチドを生成するのに十分な条件下で、少なくとも1つのプロテアーゼと接触させることにより得られ得る。好ましくは、少なくとも1つのプロテアーゼは、エキソプロテアーゼであり、そして成熟ニューブラスチンポリペプチドを接触させることは、ジペプチジルペプチダーゼを用いてさらに消化され得る、エキソペプチダーゼニューブラスチンポリペプチド消化産物の形成を生じる。
【0026】
本明細書中に記載される短縮型ニューブラスチンポリペプチドは、好ましくは、成熟ニューブラスチン配列において保存される7つのシステイン残基を含むポリペプチド配列を含む。特定の好ましい実施形態では、この短縮型ニューブラスチンポリペプチドは、成熟113NBNニューブラスチンポリペプチドの少なくとも85のカルボキシ末端アミノ酸を含む。
【0027】
ニューブラスチンの他の改変体は、短縮型NBN形態を含む。これらの例としては、以下の(i)〜(xiv)が挙げられる:
(i)本明細書中でNBN112として命名された112AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の112アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸29〜140(配列番号14))を有する。
(ii)本明細書中でNBN111として命名された111AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の111アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸30〜140(配列番号15))を有する。
(iii)本明細書中でNBN110として命名された110AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の110アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸31〜140(配列番号16))を有する。
(iv)本明細書中でNBN109として命名された109AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の109アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸32〜140(配列番号17))を有する。
(v)本明細書中でNBN108として命名された108AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の108アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸33〜140(配列番号18))を有する。
(vi)本明細書中でNBN107として命名された107AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の107アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸34〜140(配列番号19))を有する。
(vii)本明細書中でNBN106として命名された106AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の106アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸35〜140(配列番号20))を有する。
(viii)本明細書中でNBN105として命名された105AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の105アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸36〜140(配列番号21))を有する。
(ix)本明細書中でNBN104として命名された104AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の104アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸37〜140(配列番号22))を有する。
(x)本明細書中でNBN103として命名された103AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の103アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸38〜140(配列番号23))を有する。
(xi)本明細書中でNBN102として命名された102AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の102アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸39〜140(配列番号24))を有する。
(xii)本明細書中でNBN101として命名された101AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の101アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸40〜140(配列番号25))を有する。
(xiii)本明細書中でNBN100として命名された100AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の100アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸41〜140(配列番号26))を有する。
(xiv)本明細書中でNBN99として命名された99AAポリペプチド配列、この配列は、変異ニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の99アミノ酸(例えば、配列番号2のアミノ酸42〜140(配列番号27))を有する。
【0028】
本明細書中で開示されるニューブラスチンの短縮型形態(例えば、112AA〜99AA形態)が神経栄養性活性を有することが、理解される。
【0029】
最も好ましい実施形態において、この短縮型ニューブラスチンポリペプチドは、変異113AAニューブラスチンポリペプチドのカルボキシ末端の、アミノ酸99aa、100aa、101aa、102aa、103aa、104aa、105aa、106aa、107aa、108aa、109aa、110aa、111aa、または112aa(すなわち、それぞれ、NBN99、NBN100、NBN101、NBN102、NBN103、NBN104、NBN105、NBN106、NBN107、NBN108、NBN109、NBN110、NBN111、またはNBN112)である。これらの配列はまた、配列番号4および5中のカルボキシ末端のそれぞれ99aa、100aa、101aa、102aa、103aa、104aa、105aa、106aa、107aa、108aa、109aa、110aa、111aa、または112aaとして、マウスおよびラットのニューブラスチンポリペプチドにおいても見出され得る。短縮NBN形態のこれらの最も好ましい例は、本明細書中で神経栄養性活性を有することが示された場合、生理活性である(「生理活性短縮型ニューブラスチンペプチド」という)。上記のように、NBN二量体は、活性がNBN単量体ポリペプチドでほとんどから全く観察されない場合、生理活性のために必要とされる。
【0030】
(3.実質的に類似または同一な変異体ニューブラスチン(「NBN」))
本発明において有用なNBNはまた、上記の種々のプレプロ、プロ、成熟、および短縮型「ニューブラスチン」ポリペプチドと実質的に類似または同一なアミノ酸配列を有する、これらのNBNポリペプチドを含む。好ましくは、使用されるニューブラスチンポリペプチドは、配列番号2、4、5または11〜27のニューブラスチンポリペプチドに対して、少なくとも70%、より好ましくは85%、なおより好ましくは90%、またはなおさらに好ましくは95%の同一性または類似性を有する。最も好ましくは、使用されるニューブラスチンポリペプチドは、配列番号2、4、5または11〜27のニューブラスチンポリペプチドに対して、少なくとも99%の同一性または類似性を有する。
【0031】
候補ポリペプチドが本発明のニューブラスチンポリペプチドとの相同性を共有する程度は、2種のアミノ酸配列間の類似性または同一性の程度として決定される。
【0032】
高いレベルの配列同一性は、第一の配列が第二の配列に由来する可能性を示す。アミノ酸配列の同一性は、2つの整列した配列間で同一のアミノ酸配列を必要とする。従って、参照配列と70%のアミノ酸同一性を共有する候補配列は、整列後に、候補配列のアミノ酸の70%が、参照配列中の対応するアミノ酸配列と同一であることを必要とする。同一性は、コンピューター分析によって決定され、例えば、限定されないが、ClustalXコンピューターアライメントプログラム(Thompson JD,Gibson TJ,Plewniak F,Jeanmougin F,およびHiggins DG:「The ClustalX windows interface:flexible
strategies for multiple sequence alignment aided by quality analysis tools」、Nucleic Acids Res.1997,25(24):4876〜82)、および本明細書中で示唆されるデフォルトパラメーターである。このプログラムを使用して、本発明のアナログDNA配列によってコードされるポリペプチドの成熟部分は、配列番号2(ヒトNBN)、配列番号4および5(げっ歯類)、または配列番号11〜27(成熟NBNおよび短縮型NBN)のような本明細書中で提供されるアミノ酸配列と、少なくとも70%、より好ましくは85%、さらにより好ましくは85%、なおより好ましくは90%、またはなおさらに好ましくは95%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性の程度を示す。
【0033】
他のアライメントツールは、公知であり、例えば、Needlemanら,J.Mol.Biol.48:443(1970)に記載されるダイナミックプログラミングアルゴリズム、およびAlign Program(DNAstar,Inc.によって製造される市販のソフトウェアパッケージ)であり、これらの教示は、本明細書中で参考として援用されている。一旦、候補配列と参照配列との間のアライメントがなされ、かつ、リファインされると、パーセント相同性スコアが計算される。各配列の個々のアミノ酸配列は、互いに対するそれらの類似性に従って、連続して比較される。
【0034】
類似性の因子としては、類似のサイズ、形状および電荷が挙げられる。アミノ酸の類似性を決定する一つの特に好ましい方法は、Dayhoffら,ATLAS OF PROTEIN SEQUENCE AND STRUCTURE 345〜352(1978および補遺)(これは、本明細書中で参考として援用されている)に記載されるPAM 250行列である。類似性スコアは、第一に、整列した一組のアミノ酸類似性スコアの合計として計算される。挿入および欠失は、パーセント相同性および同一性の目的のために無視される。従って、ギャップペナルティーは、この計算に使用されない。次いで、生スコアは、この生スコアをニューブラスチンポリペプチドの候補化合物および7種のシステイン骨格のスコアの相乗平均で除算することにより正規化される。この相乗平均は、これらのスコアの積の平方根である。この正規化した生スコアは、パーセント相同性である。
【0035】
上記のように、本発明のニューブラスチンポリペプチドは、改変体ポリペプチドを含む。本発明の文脈において、用語「改変体ポリペプチド」は、配列番号2(ヒトNBN)、配列番号4および5(げっ歯類)、または配列番号11〜27(成熟NBNおよび短縮型NBN)として提供される配列とは1つ以上のアミノ酸位置において異なるアミノ酸配列を有するポリペプチド(またはタンパク質)を含む。このような改変体ポリペプチドは、上記のような改変ポリペプチド、ならびに保存的置換、スプライス改変体、アイソフォーム、他の種由来のホモログ、および多型を含む。
【0036】
本明細書中で規定される場合、用語「保存的改変体」は、別の生物学的に類似する残基による、アミノ酸残基の置換を示す。代表的に、上で言及されたような生物学的類似性は、保存されたアミノ酸による野生型配列の置換を反映する。例えば、特に、置換がポリペプチドまたはタンパク質中の残基の総量の10%未満を示す場合、生物学的活性に対してほとんど、または全く影響を有さない保存的アミノ酸置換を予想する。好ましくは、保存的アミン酸置換は、ポリペプチドまたはタンパク質の5%未満、最も好ましくはポリペプチドまたはタンパク質の2%未満の変化を示す。例えば、ヒトの113NBNに従って計算した場合、最も好ましい保存的置換は、野生型成熟アミノ酸配列中で3つのアミノ酸置換より少ない置換を示す。特に好ましい実施形態において、成熟配列中で単一のアミノ酸置換が存在する。ここで、置換または交換されたアミノ酸の両方は非環状である。
【0037】
特定の保存的置換の他の例としては、1つの疎水性残基の別の疎水性残基への置換(イソロイシン、バリン、ロイシン、またはメチオニン)、または1つの極性残基の他の極性残基への置換(例えば、アルギニンのリジンへの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸への置換、またはグルタミンのアスパラギンへの置換など)が挙げられ得る。
【0038】
用語、保存的置換はまた、置換されたポリペプチドに対して惹起された抗体がまた非置換ポリペプチドと免疫反応するという条件で、置換されていない親アミノ酸残基の代わりの置換アミノ酸残基の使用を含む。
【0039】
この一次アミノ酸配列の改変により、改変されていない対応するポリペプチドと比較して実質的に等価な活性を有し、従って、この親タンパク質の機能的アナログであるとみなされ得るタンパク質が生成され得る。このような改変は、例えば、部位特異的変異誘発によるように、意図的であり得るか、またはそれらは、自然に生じ得、そしてそれらとしては、スプライス改変体、アイソフォーム、他の種由来のホモログ、および多型が挙げられる。このような機能的アナログもまた、本発明に従って意図される。
【0040】
さらに、一次アミノ酸配列の改変により、親タンパク質の生物学的活性を保持しないタンパク質(ドミナントネガティブ形態などが挙げられる)が生成され得る。ドミナントネガティブタンパク質は、通常このポリペプチドと機能的に相互作用する調節因子(例えば、上流成分または下流成分)と結合することによるか、そうでなければ調節因子を隔離することにより、野生型タンパク質と干渉し得る。このようなドミナントネガティブ形態もまた、本発明に従って意図される。
【0041】
(4.誘導体または改変NBN)
本発明のポリペプチドとして、キメラポリペプチドまたは切断可能な融合ポリペプチド(別のポリペプチドが、このポリペプチドまたはそのフラグメントのN末端またはC末端に融合されている)もまた挙げられる。キメラポリペプチドは、本発明の核酸配列(またはその一部)に別のポリペプチドをコードする核酸配列(またはその一部)を融合することにより生成され得る。キメラポリペプチドを生成する技術は、標準的な技術である。このような技術は、通常、同一のリーディングフレームになるように配列を連結すること、ならびに同一のプロモーターおよびターミネーターの制御下でこの融合されたポリペプチドを発現することを必要とする。
【0042】
ニューブラスチンポリペプチドは、N−グリコシル化されたポリペプチドであり得る。1つの実施形態において、配列番号2の122位のAsn残基がグリコシル化される。
【0043】
本発明はまた、米国特許第5,434,131号;同第5,565,335号;同第5,541,087号;および同第5,726,044号(各々が本明細書中に参考として援用される)に記載されるようなニューブラスチン融合タンパク質(例えばIg−融合体)、または好ましくは、血清アルブミン融合体を意図する。
【0044】
本発明で有用なニューブラスチンポリペプチドとしては、時限放出組成物ならびに延長された残留時間および/または体液中での増大した濃度を有するよう誘導体部分(好ましくは、ポリエチレングリコール部分)で改変されたニューブラスチンポリペプチドが挙げられる。さらに、ニューブラスチンポリペプチドは、脂肪族エステル、アミド、N−アシル−誘導体、またはO−アシル誘導体からなる群より選択される部分で誘導体化され得る。
【0045】
以下の表2は、ヒト(配列番号2)、マウス(配列番号4)、およびラット(配列番号5)プレプロ−ニューブラスチンの間のClustal W比較を示す。成熟NBNポリペプチドNBN140、NBN116、NBN113、およびNBN99を、「」で示す。NBN112〜NBN100のN末端を、連続する「:」記号で示す。以下の表3は、野生型ヒト、マウス、およびラットニューブラスチンポリペプチド(配列番号2、4、および5)の間の距離の比較を示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

(ニューブラスチンポリペプチドを生成する方法)
本明細書中で使用されるニューブラスチンポリペプチドは、哺乳動物細胞(好ましくは、ヒト細胞)またはマウス起源の細胞から単離され得る。最も好ましい実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、ヒト心臓組織、ヒト骨格筋、ヒト膵臓、またはヒト脳組織から(特に、尾状核または視床から)単離され得るか、あるいは以下でより詳細に記載されるように、哺乳動物起源のDNAから獲得され得る。
【0048】
あるいは、ニューブラスチンポリペプチドは、このようなニューブラスチンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現により獲得され得る。このようなポリヌクレオチドとしては、DNA配列、cDNA配列、およびRNA配列が挙げられ、そして当該分野で利用可能である。例えば、WO00/01815、WO00/04050、およびWO00/18799を参照のこと(これらは、本明細書中で参考として援用される)。特に有用なポリヌクレオチドは、配列番号1に示されるDNA配列(ヒトNBN cDNA)、および配列番号3に示されるDNA配列(マウスNBN cDNA)を有する。さらに、ヒトNBNのゲノム配列が使用され得る(GenBank登録番号AC005038を参照のこと)。
【0049】
より詳細には、本発明で有用なニューブラスチンポリペプチドは、ニューブラスチンポリペプチドの産生を許容する条件下で、ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸配列を含有する細胞を培養し、その後、培養培地からニューブラスチンポリペプチドを回収することにより獲得され得る。ニューブラスチンポリペプチドをコードする核酸配列は、通常はその細胞に対して内因性の核酸配列であるか、または「産生」細胞に導入された外来核酸配列であり得る。細胞が、ニューブラスチンポリペプチドを産生する目的で遺伝子改変されている場合、その細胞は、従来方法または遺伝子活性化により改変され得る。
【0050】
従来方法に従って、ニューブラスチンcDNAまたはゲノムDNA配列を含むDNA分子は、発現構築物中に含まれ得、そして標準的な方法(リポソーム媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、またはDEAEデキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、あるいは速度駆動微量投射(velocity driven microprojectile)(「微粒子銃」))により細胞中に移される。あるいは、ウイルスベクターによりDNAを送達する系が使用され得る。遺伝子転移に有用であることが公知のウイルスとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ポリオウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびワクシニアウイルス(例えば、カナリアポックスウイルス)、ならびに昆虫細胞(特に、Sf9昆虫細胞)のバキュロウイルス感染が挙げられる。
【0051】
あるいは、この細胞は、遺伝子活性化(「GA」)アプローチ(例えば、米国特許第5,733,761号および同第5,750,376号(各々、本明細書中に参考として援用される)に記載されるようなアプローチ)を用いてニューブラスチンポリペプチドを産生するよう改変され得る。
【0052】
従って、用語「遺伝子改変される」は、細胞に関して本明細書中で使用する場合、遺伝子産物および/または遺伝子産物のための内因性コード配列の発現を制御する調節エレメントをコードする核酸分子の導入後に、特定の遺伝子産物を発現する細胞を含むことを意味する。核酸分子は、遺伝子標的化により導入され得、特定のゲノム部位での核酸分子の導入を可能にする。
【0053】
1つの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、細菌細胞(好ましくは、E.coli)において産生される。異なる実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、昆虫由来細胞(特に、Sf9)において産生される。
【0054】
別の実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドは、例えば、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)、卵母細胞、または酵母細胞において産生され得る。本発明の細胞は、ヒト胚性腎臓(「HEK」)細胞(例えば、HEK293細胞、BHK21細胞、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞、Xenopus laevis卵母(「XLO」)細胞、またはPichia pastoris(酵母))であり得るがこれらに限定されない。1つの実施形態において、本発明の細胞は、真菌細胞(例えば、繊維状真菌細胞)である。さらに別の実施形態において、この細胞は、昆虫細胞であり、最も好ましくは、Sf9細胞である。本発明の別の哺乳動物細胞は、PC12細胞株、HiB5細胞株、RN33b細胞株、ヒト神経前駆細胞、およびヒト細胞(特に、神経細胞)由来の他の細胞である。
【0055】
一次細胞または二次細胞の例としては、線維芽細胞、上皮細胞(乳房上皮細胞および腸上皮細胞を含む)、内皮細胞、血液形成要素(リンパ球および骨髄細胞を含む)、グリア細胞、肝細胞、ケラチノサイト、筋肉細胞、神経細胞、またはこれらの細胞型の前駆体が挙げられる。本発明の方法において有用な不死化ヒト細胞株の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Bowes黒色腫細胞(ATCC登録番号CRL 9607)、Daudi細胞(ATCC登録番号CCL 213)、HeLa細胞およびHeLa細胞の誘導体(ATCC登録番号CCL 2、CCL 2.1およびCCL 2.2)、HL−60細胞(ATCC登録番号 CCL 240)、HT−1080細胞(ATCC登録番号 CCL121)、Jurkat細胞(ATCC登録番号TIB 152)、KB癌細胞(ATCC登録番号CCL 17)、K−562白血病細胞(ATCC登録番号 CCL 243)、MCF−7乳癌細胞(ATCC登録番号BTH 22)、MOLT−4細胞(ATCC登録番号1582)、Namalwa細胞(ATCC登録番号CRL 1432)、Raji細胞(ATCC登録番号CCL 86)、RPMI 8226細胞(ATCC登録番号CCL 155)、U−937細胞(ATCC登録番号CRL
1593)、WI−38VA13亜系統2R4細胞(ATCC登録番号CLL75.1)、および2780AD卵巣癌細胞(Van der Blickら、Cancer Res.48:5927−5932,1988)、ならびにヒト細胞と別の種の細胞との融合により生成されるヘテロハイブリドーマ細胞。二次ヒト線維芽細胞株(例えば、WI−38(ATCC登録番号CCL 75)およびMRC−5(ATCC登録番号CCL 171))もまた、使用され得る。
【0056】
細胞が真核生物細胞である場合、本発明の異種ポリヌクレオチドの組込みは、特に、(ウイルスベクターを用いる)感染によって、(プラスミドベクターを用いる)トランスフェクションによって、リン酸カルシウム沈降、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション、または当該分野で公知の他の物理化学的方法を使用して、実施され得る。
【0057】
NBNポリペプチドは、産生細胞培養物から、または産生細胞により馴化された培養培地から、適用可能な場合、標準的なタンパク質精製技術(再折り畳みを含む)を使用して、単離される。適切な技術は、以下の実施例に記載される。
【0058】
(処置のための被験体)
本発明は、ニューロパシーの疼痛(触覚異痛症を含む)の処置または予防のため、およびニューロパシーに関連した疼痛感受性の喪失を減少するために、これらに罹患しているかまたはその危険性のある哺乳動物被験体において使用され得る。ニューロパシーを発症する危険性およびこのようなニューロパシーに関連する疼痛感受性の喪失の危険性のある被験体としては、糖尿病を患った被験体、化学療法を受けている被験体、特定の外傷を受けた被験体、種々の毒物または薬物を摂取した被験体、特定のビタミン不足を被っている被験体、特定のウイルス病原体に感染している被験体、種々の自己免疫障害および代謝障害に罹患している被験体、ならびに特定の神経損傷または神経変性を被った被験体が挙げられる。哺乳動物被験体としては、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、ブタ、ウサギ、モルモット、ラット、ハムスター、スナネズミおよびマウスが挙げられ、最も好ましいのは、ヒトである。
【0059】
代表的には、ヒト被験体において、患者は、他の伝統的な疼痛治療に対して抗療性であるか、または被験体は、良好な疼痛制御を提供するための他のこのような疼痛治療に対して不十分にしか応答しない。
【0060】
一般に、本発明は、予防的処置プロトコルおよび治療的処置プロトコルの両方を特徴とする。予防的処置において、ニューブラスチンポリペプチドが、ニューロパシーの疼痛または疼痛感受性の喪失の危険性のある被験体に投与される;このような被験体は、初期のニューロパシーを有する被験体であると予想される。このような状況下でのニューブラスチンを用いる処置は、危険性のある患者を予防的に処置するのに役立つ。
【0061】
治療的処置において、ニューブラスチンポリペプチドを、ニューロパシーの疼痛を被った被験体またはニューロパシーの罹患の結果として疼痛感受性の喪失を被った被験体に投与される;このような被験体は、後期のニューロパシーを有する被験体であると予想される。このような状況下でのニューブラスチンを用いる処置は、ニューロパシーの疼痛を軽減しそして/または被験体における適切な疼痛感受性を助けるのに役立つ。このような後期の患者は、自己投薬(例えば、非ステロイド性抗炎症薬、例えば、イブプロフェン)で始まる多数の治療を受けていたのかもしれない。このような処置は、抗鬱薬(例えば、三環式抗鬱薬のバンラファキシン(vanlafaxine)、および選択的セロトニン再取込みインヒビター(特定のメディエータとしては、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミンおよびノルトリプチリンが挙げられる))、または鎮痙薬(例えば、ガバペンシン、カルバマゼピン、ラモトリジン、トピラマートおよびフェニトイン)にエスカレートし得る。他の医薬としては、局所鎮痛薬(例えば、カプサイシンおよびリドデルム(lidoderm))、抗不整脈薬およびオピオイドが挙げられる。重篤なニューロパシーの場合には、手術が行われ得る。研究により、50%より少ない患者しか、局所鎮痛薬、抗不整脈薬、オピオイドまたは手術に応答しないことが示される。
【0062】
(方法および薬学的組成物)
本発明は、ニューロパシーの疼痛を処置するため、触覚異痛症を処置するため、およびニューロパシーに関連する疼痛感受性の喪失を減少するための方法を提供する。本発明の方法は、ニューブラスチンポリペプチド(全長ニューブラスチンポリペプチドまたは生体活性短縮型ニューブラスチンポリペプチドを含む)を使用する。さらに、本発明は、全長ニューブラスチンポリペプチドまたは短縮型ニューブラスチンポリペプチドが、薬学的に受容可能なキャリアに懸濁、溶解または分散された、薬学的組成物を提供する。
【0063】
(1.ニューロパシーの疼痛の処置)
一実施形態において、本発明は、被験体におけるニューロパシーの疼痛を処置するための方法を特徴とし、この方法は、有効量のニューブラスチンポリペプチドをこの被験体に投与する工程を包含する。このニューブラスチンポリペプチドは、単独で投与され得る(単独治療)か、または組み合わせ治療レジメンの一部として投与され得る。好ましい組み合わせ治療は、オピオイド、抗不整脈薬、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗鬱薬、コルチコステロイドおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)からなる群から選択される有効量の痛覚脱失誘導化合物を、被験体に投与する工程を包含する。
【0064】
本発明のニューブラスチンポリペプチドおよびニューブラスチン核酸(および本明細書中に記載されるこれらのポリオペプチドおよび核酸を含む薬学的組成物)は、末梢性ニューロパシーに関連する疼痛の処置において使用される。本発明に従って処置され得る末梢性ニューロパシーには、外傷誘導性ニューロパシー(例えば、身体的損傷または疾患状態により引き起こされるニューロパシー)、脳への身体的損傷、脊髄への身体的損傷、脳損傷に関連する発作、および神経変性に関連する神経学的障害)がある。
【0065】
本発明はまた、化学療法誘導性ニューロパシー(例えば、化学療法剤(例えば、タキソールまたはシスプラチン)の送達により引き起こされるニューロパシー);毒素誘導性ニューロパシー、薬物誘導性ニューロパシー、病原体誘導性(例えば、ウイルス誘導性)ニューロパシー、ビタミン不足誘導性ニューロパシー;突発性ニューロパシー;および糖尿病性ニューロパシーの処置を提供する。例えば、米国特許第5,496,804号および同第5,916,555号(これらの各々は本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。本発明は、なおさらに、単独ニューロパシー、単独−多発性ニューロパシーおよび多発性ニューロパシー(軸索ニューロパシーおよび脱髄性ニューロパシーを含む)を、本発明のニューブラスチンヌクレオチドおよびニューブラスチンポリペプチドを使用して処置するために使用され得る。
【0066】
ニューロパシーの疼痛は、以下を含む多数の末梢性ニューロパシーに関連し得る:
(a)外傷誘導性ニューロパシー、
(b)化学療法誘導性ニューロパシー、
(c)毒素誘導性ニューロパシー(アルコール症、ビタミンB6中毒、ヘキサカーボン(hexacarbon)中毒、アミオダロン、クロラムフェニコール、ジスルフィラム、イソニアジド、金、リチウム、メトロニダゾル、ミソニダゾル、ニトロフラントインにより引き起こされるニューロパシーが挙げられるが、これらに限定されない)、
(d)治療薬誘導性ニューロパシーの疼痛を含む薬物誘導性ニューロパシー(例えば、抗癌剤、特に、タキソール、タキソテール、シスプラチン、ノコダゾール、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビンブラスチンからなる群から選択される抗癌剤により引き起こされるニューロパシー;および抗ウイルス薬、特に、ddI、DDC、d4T、ホスカネット、ダプソン、メトロニダゾルおよびイソニアジドからなる群から選択される抗ウイルス薬により引き起こされるニューロパシー)、
(e)ビタミン不足誘導性ニューロパシー(ビタミンB12不足、ビタミンB6不足、およびビタミンE不足が挙げられるが、これらに限定されない)、
(f)突発性ニューロパシー、
(g)糖尿病性ニューロパシー、
(h)病原体誘導性神経損傷、
(i)炎症誘導性神経損傷、
(j)神経変性、
(k)遺伝性ニューロパシー(フリートライヒ運動失調、家族性アミロイドニューロパシー、タンジアー病、ファブリー病が挙げられるが、これらに限定されない)、
(l)代謝障害(腎不全および甲状腺機能低下症が挙げられるが、これらに限定されない)、
(m)感染およびウイルス性ニューロパシー(らい病、ライム病に関連するニューロパシーの疼痛、ウイルス(特に、ヘルペスウイルス(例えば、ヘルペス後神経痛に至り得る帯状ヘルペス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびパピローマウイルスからなる群から選択されるウイルス)による感染に関連するニューロパシーの疼痛が挙げられるが、これらに限定されない)、
(n)自己免疫性ニューロパシー(ギヤン−バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、重要性未定の単一クローン性高ガンマグロブリン血症および多発性ニューロパシーが挙げられるが、これらに限定されない)、
(o)三叉神経痛およびエントラップメント症候群(手根管が挙げられるが、これに限定されない)、
(p)他のニューロパシーの疼痛症候群(外傷後神経痛、幻想肢痛、多発性硬化症性疼痛、複雑な局所性疼痛症候群(反射性交感神経性ジストロフィー、カウザルギーが挙げられるが、これらに限定されない)、新形成関連疼痛、脈管炎/脈管障害性ニューロパシー、および坐骨神経痛を含む)。
【0067】
ニューロパシーの疼痛は、異痛症、痛覚過敏疼痛、熱痛覚過敏または幻想痛として現れ得る。
【0068】
(2.触覚異常の処置)
用語「触覚異常」は、典型的には、通常では無害の皮膚刺激(例えば、触診)によって疼痛が誘発される被験体における状態をいう。本発明は、被験体における触覚異常を処置する方法を特徴とする。
【0069】
1つの実施形態において、触覚異常は、有効量のニューブラスチンポリペプチドを単独でその被験体に投与することによって処置される。
【0070】
第二の実施形態において、触覚異常は、有効量のニューブラスチンポリペプチドを、オピオイド、抗不整脈剤、局所鎮痛薬、局所麻酔薬、鎮痙薬、抗うつ薬、コルチコステロイドおよびNSAIDSからなる群より選択される有効量の痛覚脱失誘導性化合物と組み合わせてその被験体に投与することによって処置される。好ましい実施形態において、痛覚脱失誘導性化合物は、鎮痙薬である。別の好ましい実施形態において、痛覚脱失誘導性化合物は、ガバペンチン((1−アミノメチル)シクロヘキサン酢酸)またはプレガバリン(S−(+)−4−アミノ−3−(2−メチルプロピル)酪酸)である。
【0071】
(3.痛覚感受性喪失の軽減のための処置)
別の実施形態において、本発明は、ニューロパシーに罹患する被験体における痛覚感受性喪失を軽減するための方法を特徴とする。好ましい実施形態において、ニューロパシーは、糖尿病性ニューロパシーである。好ましい実施形態において、痛覚感受性喪失は、熱性の痛覚感受性の喪失である。本発明は、予防処置および治療処置の両方を企図する。
【0072】
予防処置において、ニューブラスチンポリペプチドは、痛覚感受性損失を発症する危険性のある被験体に投与される;このような被験体は、初期段階のニューロパシーを有する被験体であることが予期される。このような環境下におけるニューブラスチンでの処置は、危険性のある患者を予防的に処置するように働く。
【0073】
治療処置において、ニューブラスチンポリペプチドは、ニューロパシーの苦痛の結果として痛覚感受性損失を経験した被験体に投与される;このような被験体は、後期段階のニューロパシーを有する被験体であることが予期される。このような状況下におけるニューブラスチンでの処置は、被験体における適当な痛覚感受性を救うように働く。
【0074】
(4.ウイルス感染およびウイルス関連ニューロパシーの処置)
感染性ニューロパシーおよびウイルス性ニューロパシーの予防処置が、企図される。予防処置は、ウイルス感染の確定後およびニューロパシーの疼痛の開始前に示される。処置の間、NBNポリペプチドは、ニューロパシーの疼痛(らい病、ライム病に関連するニューロパシーの疼痛、ウイルス(特に、ヘルペスウイルス(より特定には、ヘルペス後神経痛を導き得る帯状ヘルペスウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびパピローマウイルスからなる群より選択されるウイルス)による感染に関連するニューロパシーの疼痛を含むが、これらに限定されない)の出現を予防するために投与される。代替の実施形態において、NBNポリペプチドは、出現した場合、ニューロパシーの疼痛の重篤度を軽減するために投与される。
【0075】
急性のウイルス感染の症状は、しばしば発疹の出現を含む。他の症状としては、例えば、身体の罹患した領域における持続性の疼痛の発症が挙げられ、これは、帯状ヘルペス感染(帯状ヘルペス)の通常の合併症である。ヘルペス後神経痛は、一月以上にわたって持続し得、そして発疹様症状のいずれもが消失した数ヶ月後に現れ得る。ヘルペス後神経痛は、非常に重症かつ持続性であり、そして処置に対して非常に耐性であり得る。
【0076】
(5.糖尿病性ニューロパシーの処置)
糖尿病関連ニューロパシーの予防処置が、企図される。糖尿病性ニューロパシーの予防処置は、糖尿病または糖尿病関連症状の最初の診断の確定後、およびニューロパシーの疼痛の開始前に、始まる。糖尿病性ニューロパシーの予防処置はまた、被験体が糖尿病または糖尿病関連症状の発症の危険性があることを決定する際に始まる。処置の間、NBNポリペプチドは、ニューロパシーの疼痛の出現を予防するため、または出現した場合、ニューロパシーの疼痛の重篤度を軽減するために、投与される。
【0077】
図6Aおよび図6Bにおける結果は、このような処置の必要のあるヒト患者における糖尿病性ニューロパシーの処置に関連する。実施例6に記載されるように、熱性の痛感鈍麻の予防、ならびに熱性の痛覚過敏の予防および逆転が、企図される。
【0078】
(6.投薬量)
前述の方法は、1用量当たり1μg/kg〜30,000μg/kg被験体体重の間の投薬量のニューブラスチンポリペプチドを含む処方物を、被験体に、好ましくは、全身性に投与することを企図する:好ましくは、この投薬量は、1用量当たり10μg/kg〜10,000μg/kg被験体体重の間であり;最も好ましくは、1用量当たり25μg/kg〜3,000μg/kg被験体体重の間である。
【0079】
触覚異常の処置または予防のための種々の投薬レジメンが、企図される。1つの実施形態において、ニューブラスチンポリペプチドを含む処方物を被験体に投与する方法は、1用量当たり1μg/kg〜30,000μg/kg被験体体重の間でNBNを投与することを含む。別の実施形態において、この投薬量は、1用量当たり10μg/kg〜30,000μg/kg被験体体重の間である。さらなる実施形態において、この投薬量は、1用量当たり10μg/kg〜10,000μg/kg被験体体重の間である。異なる実施形態において、この投薬量は、1用量当たり25μg/kg〜10,000μg/kg被験体体重の間である。なお別の実施形態において、この投薬量は、1用量当たり25μg/kg〜3,000μg/kg被験体体重の間である。最も好ましい実施形態において、この投薬量は、1用量当たり50μg/kg〜3,000μg/kg被験体体重の間である。
【0080】
同様に、疼痛感受性喪失を調節するための処置についての種々の投薬スキームが、企図される。ニューブラスチンポリペプチドを含む処方物を被験体に投与する方法は、1用量当たり1μg/kg〜30,000μg/kg被験体体重の間でNBNを投与することを含み;好ましくは、この投薬量は、1用量当たり10μg/kg〜10,000μg/kg被験体体重の間であり;最も好ましくは、この投薬量は、1用量当たり25μg/kg〜3,000μg/kg被験体体重の間である。
【0081】
(7.送達)
前述の方法において使用されるニューブラスチンポリペプチドは、任意の適切な送達系、好ましくは、静脈内送達、筋肉内送達、肺内送達、皮下送達、および腹腔内送達からなる群より選択される送達系、最も好ましくは、筋肉内送達、静脈内送達または皮下送達を介して投与され得る。前述の方法において使用されたニューブラスチンポリペプチドはまた、髄腔内注射送達を介して投与され得る。
【0082】
(8.処方)
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリア中に懸濁、溶解または分散された治療的有効量のニューブラスチンポリペプチドを含む新規な薬学的組成物を提供する。
【0083】
治療において使用するために、本発明のポリペプチドは、任意の都合よい形態で投与され得る。好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、1つ以上のアジュバント、賦形剤、キャリアおよび/または希釈剤とともに薬学的組成物中に組み込まれ、そしてこの薬学的組成物は、当該分野において公知の慣用的な方法を使用して、当業者によって調製される。処方および投与のための技術についてのさらなる詳細は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Maack Publishing Co.,Easton,PA)の最新版に見出され得る。受容可能な希釈剤、キャリアおよび賦形剤は、典型的には、レシピエントのホメオスタシス、特に、電解質バランスに悪い影響を与えない。受容可能なキャリアは、生体適合性の塩、不活性な塩または生物吸収性の塩、緩衝化剤、オリゴ糖または多糖、ポリマー、粘性改善剤、保存剤などを含み得る。1つの例示的なキャリアは、正常な生理学的生理食塩水(0.15M NaCl(pH7.0〜7.4))を含む。別の例示的なキャリアは、50mM リン酸ナトリウム、100mM 塩化ナトリウムを含む。
【0084】
(9.レジメン)
本発明のニューブラスチンポリペプチドについての投薬頻度は、医師の技量および臨床判断の範囲内である。典型的には、投与レジメンは、最適な投与パラメータを達成し得る臨床試験により確立される。しかし、開業医は、被験体の年齢、健康、体重、性別および医学的状態に従って、このような投与レジメンを変え得る。投薬頻度はまた、ニューロパシーの急性処置と慢性処置との間で異なり得る。さらに、投薬頻度は、その処置が予防的であるか治療的であるかに依存して変更され得る。
【実施例】
【0085】
(実施例1:ニューブラスチンポリペプチドの発現)
(A.E.coliにおける発現)
細菌における発現および精製について、ラットニューブラスチンをコードするプラスミドを、成熟113アミノ酸NBN配列の開始部位にすぐ隣接するエンテロキナーゼ切断部位を有するHisタグ化融合タンパク質としてE.coliにおいて発現させた。E.coli細胞を、500Lの発酵槽中で増殖させ、そして凍結細胞ペーストを提供した。E.coli細胞を、Manton Gaulin Press中で溶解させ、そしてラットNBNを不溶性洗浄ペレット画分から回収した。
【0086】
NBNを、グアニジン塩酸塩を用いてペレットから抽出し、再び折り畳んで、そしてエンテロキナーゼを用いてHisタグを除去した。さらなる精製のため、次いで、産物をNi NTAアガロース(Qiagen)でのクロマトグラフィーにかけ、そしてBakerbond WP CBXカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィーにかけた。
【0087】
得られた産物を、SDS−PAGE、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、逆相HPLC、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化質量分析法(MALD/IMS)、ペプチドマッピングによる分析、KIRA ELISAにおける活性の評価、およびエンドトキシン含有量の決定を含む広範な特徴付けに供した。SDS−PAGEおよびSECによって測定したNBN産物の純度は、95%より高かった。NBN産物は、ダイマーとして非還元条件下で移動し、その予期される構造と一致した。この物質のエンドトキシン含有量は、慣用的に1EU/mg未満である。KIRA ELISAにおけるNBNの比活性は、約10nMである。産物を、PBS中1mg/mL(pH6.5)で処方した。この物質は凍結液体として供給され得、これは、−70℃で保存される。
【0088】
類似の発現系もまた、ヒトNBNについて構築された。これらの構築物から、ヒトNBNは、E.coliにおいて発現された。
【0089】
(B.哺乳動物細胞における発現)
(プラスミドpJC070.14の構築)チャイニーズハムスター卵巣細胞においてニューブラスチンcDNAを発現させるために、ヒトニューブラスチンのプレプロ形態をコードするcDNAフラグメントを、哺乳動物発現ベクターpEAG347に挿入して、プラスミドpJC070.14を作製した。pEAG347は、タンデムSV40初期およびアデノウイルス主要後期プロモーター(プラスミドpAD2β由来;Norton and Coffin、Mol.Cell.Biol.5:281(1985))、独特なNotIクローニング部位、続くSV40後期転写終結およびポリAシグナル(プラスミドpCMVβ由来;MacGregor and Caskey、Nucl.Acids.Res.17:2365(1989))を含む。さらに、pEAG347は、pUC19由来プラスミド骨格およびpSV2dhfr由来dhfr(MTX選択およびトランスフェクトされたCHO細胞における増幅のため)を含む。
【0090】
プラスミドpJC070.14を、2工程で作製した。第一に、ヒトニューブラスチンのプレプロ形態をコードするフラグメントを、プラスミドpUbilZ−NBNから、オリゴヌクレオチド
【0091】
【数1】

およびPFUポリメラーゼを用いるポリメラーゼ連鎖反応を使用して単離した。このフラグメントを、pPCR−Script Amp SK(+)のSrf−1部位にクローン化して、プラスミドpJC069を作製した。第二工程において、部分Not−1消化を、プラスミドpJC069において実行して、685bpフラグメント(ニューブラスチン遺伝子を含む)を作製し、これを、プラスミドpEAG347のNot−1部位にクローン化して、プラスミドpJC070.14を作製した。プラスミドpJC070.14におけるニューブラスチン遺伝子の転写を、アデノウイルス主要後期プロモーターによって制御する。
【0092】
(ニューブラスチンを発現するCHO細胞株の作製)200μgのpJC070.14を、制限エンドヌクレアーゼMlu−1を用いる消化によって直鎖化した。このDNAを、フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)で抽出し、そしてエタノールで沈殿させた。直鎖化DNAを、20mM Hepes(pH7.05)、137mM NaCl、5mM KCl、0.7mM NaHPO、6mMデキストロース(HEBS)中に再懸濁させ、そしてエレクトロポレーション(280Vおよび960μF)によって〜4E7 CHO dukx B1(dhfr−)細胞(p23)に導入した。エレクトロポレーションに続いて、細胞を、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充されたα+改変イーグル培地(MEM)中の培養物に、2日間、戻した。次いで、細胞をトリプシン処理し、そして10%透析FBSを補充した、α−MEM(リボ−およびデオキシリボヌクレオシドを欠く)中の100mmディッシュ中に、5日間、再プレートした(100,000細胞/プレート)。引き続いて、この細胞を、100,000細胞/100mmプレートの密度にて分け、そして200nMメトトレキサート中で選択した。耐性コロニーを拾い、そして6ウェルプレートにまでスケールアップし;各クローン由来の馴化培地を、以下に記載されるニューブラスチンについての特異的アッセイを使用してスクリーニングした。最も高いレベルのニューブラスチンを発現する12個のクローンを、T162フラスコにスケールアップし、そして引き続いて、再アッセイした。これらのCHO細胞株は、25〜50ng/ml/日の範囲でニューブラスチンを産生した。
【0093】
(ニューブラスチンについての三重複合系アッセイ)ニューブラスチンの存在を、Sanicolaら(Proc Natl Acad Sci USA 94:6238(1997)によって記載される三重複合系アッセイの改変形態を使用して、CHO細胞株上清の培地において評価した。
【0094】
類似の哺乳動物発現構築物を作製し、そして類似の研究を、ヒトNBNおよびラットNBNの両方について実行した。ラットにおけるNBN活性のインビボ試験を実行した。ラット研究は、ほとんど排他的に、ラットNBNを用いて実行した。
【0095】
(実施例2:ニューロパシーの疼痛の神経結紮動物モデルにおける全長ニューブラスチンの効力−ニューロパシーの疼痛の予防)
触覚異痛症および熱痛覚過敏に対するニューブラスチンの予防効果を、Chung L5/L6脊髄神経結紮(「SNL」)モデル(Kim and Chung(1992)、Pain 50:355−363)において研究した。Spargue−Dawley雄性ラット(250〜300g)を、4つの群に分けた。第一群のラット(n=7)は、偽手術を受け、そして皮下注射によってビヒクルを投与された。第二群のラット(n=7)は、偽手術を受け、そして皮下注射によってラットニューブラスチン(1mg/kg)を投与された。第三群のラット(n=7)は、脊髄神経結紮を受け、そして皮下注射によってビヒクルを投与された。第四群のラット(n=7)は、脊髄神経結紮を受け、そして皮下注射によってニューブラスチン(1mg/kg)を投与された。ビヒクルは、5mMホスフェートおよび150mM塩化ナトリウム(pH6.5)からなった。ニューブラスチンまたはビヒクルを、脊髄神経結紮または偽手術の30分前に注射し、次いで、結紮または手術後(SNL後)、2日目、4日目、7日目、9日目、11日目および14日目に注射した。Von Frey行動試験(Chaplanら(1994)、J.Neurosci.Meth.53:55−63)およびHargreave行動試験(Hargreavesら(1998)、Pain 32:77−88)を使用して、触覚応答および熱応答をそれぞれモニターした。これらの疼痛応答を、ベースラインの応答を確立するために、脊髄神経結紮または偽手術の前にモニターし、次いで、手術後の2週間、毎日モニターした。
【0096】
結果を、平均±平均の標準誤差として、図1および2に示す。ニューブラスチンの皮下投与(図1および2において下向きの矢印で示される)は、脊髄神経結紮を有するラットにおいて、両方の型のニューロパシーの疼痛(触覚、図1および熱、図2)のほぼ完全な正常化を導いた。偽手術ラットにおいて、ニューブラスチンの皮下投与は、触覚(図1)も熱感受性(図2)も有意に変化させなかった。脊髄神経結紮ラットにおいて、熱感受性に対するニューブラスチンの効果は、最初に、ニューブラスチン投与の開始3日後に明らかになったが、触覚異痛症に対する効果は、最初に、ニューブラスチン投与の開始4〜5日後に、わずかに遅く明らかになった。熱感受性に対するニューブラスチンの効果は、ニューブラスチン投与の開始約7〜8日後にプラトーに達したが、触覚異痛症に対する効果は、ニューブラスチン投与の開始約10〜11日後にプラトーに達した。ニューブラスチンの効果は、2〜3日間の投与間隔の間、減少しなかった。実際、5日目および6日目に測定されるように、4日目および7日目のニューブラスチンの投与間の両方の疼痛行動の実質的な正常化が存在した。11日目のニューブラスチンの投与後、両方の疼痛行動の残存している最大正常化は、一定のままであり、これは、ニューロパシーの疼痛に対するニューブラスチンの正常化効果が、少なくとも3日間維持されることを示唆した。
【0097】
(実施例3:短縮型ニューブラスチンポリペプチドを用いるニューロパシーの処置)
触覚異痛症および熱痛覚過敏(2つの末梢ニューロパシー状態)を処置することにおける、成熟ラットニューブラスチンのカルボキシ末端102アミノ酸を含むポリペプチドの予防効果を、Chung L5/L6脊髄神経結紮(「SNL」)モデルにおいて示す。
【0098】
Sprague−Daley雄性ラット(約250〜300g)を、4つの群に分ける。第一群のラット(n=6)は、偽手術を受け、そして皮下注射によってビヒクルを投与される。第二群のラット(n=6)は、偽手術を受け、そして皮下注射によって短縮型ニューブラスチン(1mg/kg)を投与される。第三群のラット(n=6)は、脊髄神経結紮を受け、そして皮下注射によってビヒクルを投与される。第四群(n=6)は、脊髄神経結紮を受け、そして皮下注射によって短縮型ニューブラスチン(1mg/kg)を投与される。ビヒクルは、5mMホスフェートおよび150mM塩化ナトリウム(pH6.5)を含む。短縮型ニューブラスチンまたはビヒクルを、0日目、2日目、4日目、7日目、9日目、11日目および14日目に投与する。0日目に、短縮型ニューブラスチンを、脊髄神経結紮または偽手術の30分前に注射する。疼痛応答を、Chaplanら(1994)、J.Neurosci.Meth.53:55−63およびHargreavesら(1998)、Pain 32:77−88に記載される行動試験を使用して決定する。これらの試験は、触覚応答および熱応答をそれぞれモニターする。これらの疼痛応答を、ベースラインの応答を確立するために、脊髄神経結紮または偽手術の前にモニターする。次いで、疼痛応答を、手術後の2週間、毎日モニターする。
【0099】
短縮型ニューブラスチンの皮下投与は、脊髄神経結紮を有するラットにおいて、両方の型のニューロパシーの疼痛の正常化を導くと期待される。偽手術ラットにおいて、短縮型ニューブラスチンの皮下投与は、触覚感受性も熱感受性も有意に変化させるとは期待されない。熱感受性に対するニューブラスチンの効果は、ニューブラスチンの投与の約3日後に明らかになると予期されるが、触覚異痛症に対する効果は、わずかに遅く最初に明らかになると期待される。
【0100】
(実施例4:ニューロパシーの疼痛の神経結紮動物モデルにおけるニューブラスチンの効力−ニューロパシーの疼痛の逆転)
触覚異痛症および熱痛覚過敏に対するニューブラスチンの逆転効果を、Chung L5/L6脊髄神経結紮(「SNL」)モデルにおいて研究した。Sprague−Dawley雄性ラット(270〜275g)を、4つの群に分けた。第一の群のラット(n=8)は、偽手術を受け、そして皮下注射によってビヒクルを投与された。第二の群のラット(n=8)は、偽手術を受け、そしてラットニューブラスチン(1mg/kg)を皮下注射によって投与された。第三の群のラット(n=8)は、脊髄神経結紮を受け、そしてビヒクルを皮下注射によって投与された。第四の群のラット(n=8)は、脊髄神経結紮を受け、そしてラットニューブラスチン(1mg/kg)を皮下注射によって投与された。このビヒクルは、5mMホスフェートおよび150mM塩化ナトリウム(pH6.5)からなっていた。Von Frey行動試験(Chaplanら(1994),J.Neurosci.Meth.53:55−63)およびHargreave行動試験(Hargreavesら(1988),Pain 32:77−88)を用いて、それぞれ、触覚応答および熱応答をモニタリングした。これらの疼痛応答を、脊髄神経結紮または偽手術の前にモニタリングして、ベースライン応答を確立し、次いで、この手術後2週間にわたって毎日モニタリングした。ニューブラスチンまたはビヒクルを、結紮または手術(SNL後)後3日目、5日目、7日目、10日目、12日目および14日目に、行動試験の60分前に注射した。
【0101】
結果を、平均±平均の標準誤差として、図3および図4に示す。両方の型のニューロパシーの疼痛行動(触覚異痛症を図3に示し、そして熱痛覚過敏を図4に示す)は、予想された通り、3日目までに充分に発症した。ニューブラスチンの皮下投与(図3および図4において下向きの矢印で示す通り)は、脊髄神経結紮したラットにおいて両方の型のニューロパシーの疼痛(触覚を図3に、そして熱を図4に)のほぼ完全な逆転をもたらし、その結果、触覚応答および熱応答は正常化された。偽手術ラットでは、ニューブラスチンの皮下投与は、触覚感受性(図3)も熱感受性(図4)も有意には変更しなかった。脊髄神経結紮したラットでは、熱感受性および触覚異痛症に対するニューブラスチンの効果は、ニューブラスチン投与の開始の2日後〜3日後に最初に明らかになった。熱感受性および触覚異痛症に対するニューブラスチンの効果は、ニューブラスチン投与の開始の約7〜8日後にプラトーに達した。ニューブラスチンの効果は、投与の間の2〜3日の間隔の間減少しなかった。実際、3日目、5日目、7日目および10日目のニューブラスチンの投与の間、両方の疼痛行動の実質的な正常化が存在した。
【0102】
(実施例5:ニューロパシーの疼痛のストレプトゾトシン動物モデルにおけるニューブラスチン効力−疼痛感受性の損失の予防)
熱感受性の損失(熱痛感鈍麻)に対するニューブラスチンの予防効果を、糖尿病性ニューロパシーのストレプトゾトシン(streptozotocin)(「STZ」)モデルにおいて研究した。Sprague−Dawley雌性ラット(250〜275g)を、4つの群に分け、各々は、10匹の動物からなっていた。1つの群のラットは、STZを受けなかった;これらのラットは、ビヒクルを皮下注射によって受けた。3つの群のラットは、STZ(滅菌生理食塩水中50mg/kg)の1回の注射を受け、続いて、血液サンプルの分光光度アッセイ(spectophotometric assay)によって高血糖であることが確認された。3群の高血糖ラットのうち、第一の群は、ビヒクルを皮下注射によって受け、第二の群は、ラットニューブラスチン(0.1mg/kg)が皮下注射によって投与され、そして第三の群のラットは、ラットニューブラスチン(1mg/kg)が皮下注射によって投与された。このビヒクルは、5mMホスフェートおよび150mM塩化ナトリウム(pH6.5)からなっていた。ニューブラスチンまたはビヒクルを、1週間に3回(月曜日、水曜日、金曜日のスケジュール)、8週間にわたって投与し、そして高血糖のSTZ誘導の時点で開始した。熱応答の潜伏時間を、Calcuttら(2000),Anesthesiology 93:1271−1278に記載される通りに8週間後に評価した。手短に述べると、放射熱源を、足の足底表面に適用し、その結果、その表面温度が20秒間に30℃から38.5℃まで上昇し、そして加熱開始と足の引っ込めとの間の潜伏時間を測定して、熱応答潜伏を評価した。足の引っ込めの潜伏時間の増大は、熱感受性の損失(熱痛感鈍麻)を示す。
【0103】
結果を、図5に、平均±平均の標準誤差として示す。予想した通り、STZ後8週間目には、足の引っ込めの潜伏時間は、正常ラットと比較して、ビヒクル処置STZラット(STZビヒクル)において増大し、STZ注射によって熱痛感鈍麻が誘導されたことを示した。ニューブラスチンの投与は、高血糖(STZ)ラットにおける熱応答潜伏時間の増大を予防した。両方の用量のニューブラスチン(1mg/kgおよび0.1mg/kg)は、1週間に3回の8週間の投与後に、熱感受性をほぼ完全に正常化した。これらの結果は、ニューブラスチンが、糖尿病性ニューロパシーのSTZラットモデルにおいて生じる熱感受性の損失である熱痛感鈍麻を予防することを実証する。
【0104】
(実施例6:ストレプトゾトシンラットにおけるニューブラスチンによる、熱痛感鈍麻の予防、ならびに熱痛覚過敏の予防および逆転)
ラットNBN113を、実施例1に記載の通りに、E.coliにおいて準備した。熱感受性の損失(熱痛感鈍麻)に対するニューブラスチンの予防効果、ならびに増大した熱感受性(熱痛覚過敏)のニューブラスチンによる予防および逆転を、実施例5に記載の通りに、糖尿病性ニューロパシーのストレプトゾトシン(「STZ」)ラットモデルにおいて研究した。実施例5に記載の投薬量研究を確認し、そして拡大した。結果を図6Aおよび図6Bに示す。
【0105】
図6Aおよび図6Bにおける結果を、平均±平均の標準誤差として示す。予想した通り、STZ後4週間で、足の引っ込めの潜伏時間は、正常ラットと比較して、ビヒクル処置STZラットにおいて減少し、熱痛覚過敏がSTZ注射によって誘導されたことを示した。全ての用量の皮下ニューブラスチン(0.03mg/kgおよび0.1mg/kg)は、図6Aに示す通り、1週間に3回の4週間にわたる投与後にSTZラットにおいて熱痛覚過敏を予防した。全ての用量の皮下ニューブラスチン(0.03mg/kgおよび0.1mg/kg)は、図6Bに示す通り、1週間に3回の8週間にわたる投与後にSTZラットにおいて熱痛感鈍麻を予防した。さらに、図6Bに示す通り、8週間の処置研究(veh;0.1mg/kg NBN)のうちの2回目の4週間の間に投与された皮下ニューブラスチン(0.1mg/kg)は、STZ処置後4週間に明らかな熱痛覚過敏を逆転させただけでなく、8週間の時点で、STZラットにおいて熱痛感鈍麻が発症することをも予防した。これらの結果は、ニューブラスチンが糖尿病性ニューロパシーのSTZラットモデルにおける熱痛覚過敏を予防および逆転すること、ならびにニューブラスチンが糖尿病性ニューロパシーのSTZラットモデルにおいて生じる熱感受性の損失(熱痛感鈍麻)を予防することを実証する。
【0106】
(実施例7:ニューロパシーの疼痛の神経結紮動物モデルにおけるニューブラスチン効力−ニューロパシーの疼痛の逆転は、用量依存性である)
ラットNBN113を、実施例1に記載の通りに、E.coliにおいて準備した。触覚異痛症および熱痛覚過敏のNBN113による用量依存性逆転の分析を、実施例4に記載の通りに、ラットにおいて、0.03mg/kg、0.1mg/kg、0.6mg/kgおよび2mg/kgのNBN用量を用いて、Chung L5/L6脊髄神経結紮(「SNL」)動物モデルを用いて行った。図3および4に示す実験結果を確認し、そして拡大した。結果を、図7および図8に示す。
【0107】
図7および図8における結果を、平均±平均の標準誤差として示す。BLは、ベースライン応答を示す。両方の型のニューロパシーの疼痛行動(触覚異痛症を図7に示し、そして熱痛覚過敏を図8に示す)は、予想通り、2日目までに充分に発症した。1週間に3回(矢印によって示す通り)の2mg/kgニューブラスチン(NBN)の皮下投与は、脊髄神経結紮をしたラットにおいて、両方の型のニューロパシーの疼痛(触覚を図7に、そして熱を図8に)のほぼ完全な逆転をもたらし、その結果、触覚および熱応答が正常化した。図7に示す通り、脊髄神経結紮誘導性触覚異痛症のニューブラスチン逆転は、用量応答性であった。0.1mg/kg s.c.または0.6mg/kg s.c.で投与したニューブラスチン(NBN)は、1週間に3回の9(ならびに11)日間の投与後に触覚異痛症を部分的に逆転させ、一方、2mg/kg s.c.のNBNは、1週間に3回の7(ならびに9および11)日間の投与後に触覚異痛症を有意に逆転させ、1週間に3回の9日間および11日間の投与後に触覚異痛症をほぼ完全に逆転させた。さらに、SNL後14日目の脊髄神経結紮誘導性触覚異痛症の平均逆転はニューブラスチンの皮下用量が0.1mg/kgから0.6mg/kgへと、そして2mg/kgへと増加するにつれて大きかった。0.03mg/kg s.c.のニューブラスチン(NBN)は、1週間に3回の11日間の投与の間、脊髄神経結紮誘導性触覚異痛症を有意には逆転させなかった。
【0108】
図8に示すように、脊髄神経結紮(SNL)誘導性熱痛覚過敏のニューブラスチン(NBN)逆転もまた、用量依存性であった。0.1mg/kgのNBN投与は、1週間に3回の9(ならびに11)日間の投与後に熱痛覚過敏を有意に逆転させ、0.6mg/kgのNBNは、1週間に3回の7(ならびに9および11)日間の投与後に熱痛覚過敏を有意に逆転させ、そして2mg/kgのNBNは、1週間に3回の4(ならびに7、9および11)日間の投与後に熱痛覚過敏を有意に逆転させた。さらに、SNL後14日目の脊髄神経結紮誘導性熱痛覚過敏の平均逆転は、ニューブラスチンの皮下用量が0.1mg/kgから0.6mg/kgへと、そして2mg/kgへと増加するにつれて大きかった。0.03mg/kg s.c.のNBNは、1週間に3回の11日間の投与の間、脊髄神経結紮誘導性熱痛覚過敏を有意には逆転させなかった。
【0109】
(等価物)
特定の実施形態を本明細書中に詳細に開示したが、これは、例示の目的のために例として開示したのであって、添付の特許請求の範囲の範囲に関して限定することを意図するのではない。特に、種々の置換、変更および改変は、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく本発明に対してなされ得る。
(配列表)
【表A−1】


【表A−2】


【表A−3】


【表A−4】


【表A−5】


【表A−6】



【表A−7】




【表A−8】


【表A−9】


【表A−10】


【表A−11】


【表A−12】


【表A−13】


【表A−14】


【表A−15】


【表A−16】


【表A−17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるニューロパシーの疼痛を処置するための組成物であって、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり1μg〜30,000μgの間の投薬量のニューブラスティンポリペプチドを含む、組成物。
【請求項2】
被験体における触覚異痛症を処置するための組成物であって、1用量あたり、該被験体の体重1kgあたり10μg〜30,000μgの間の投薬量のニューブラスティンポリペプチドを含む、組成物。
【請求項3】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−167119(P2012−167119A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115400(P2012−115400)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2008−306855(P2008−306855)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】