説明

ニューロメジンUの作用メカニズムおよびその用途

GLP−1および/またはPYYのレベルの増加を要する個体においてGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を記載する。更に、グルカゴンレベルの低下を要する個体においてグルカゴンのレベルを低下させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を記載する。したがって、ニューロメジンU受容体アゴニストおよび場合によっては1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターを含む組成物を個体に投与することにより、該個体においてGLP−1および/またはPYYを上昇させるための、ならびにグルカゴンレベルを低下させるための方法を記載する。NMU受容体アゴニストが投与後にGLP−1およびPYYレベルを上昇させグルカゴンレベルを低下させうることを考慮して、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を個体に投与することを含む代謝障害に対する治療方式の効力を評価するための方法が記載されており、該方法は、該治療方式の実施の前、途中および後に該個体におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)および/またはグルカゴンのレベルを測定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1)発明の分野
本発明は、GLP−1および/またはPYYのレベルの増加を要する個体においてGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇させるための、ニューロメジン(neuromedin)U受容体アゴニストの使用に関する。本発明は更に、グルカゴンレベルの低下を要する個体においてグルカゴンのレベルを低下させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用に関する。したがって、本発明は、ニューロメジンU受容体アゴニストおよび場合によっては1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターを含む組成物を個体に投与することにより、該個体においてGLP−1および/またはPYYを上昇させるための、ならびにグルカゴンレベルを低下させるための方法に関する。本発明は更に、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を個体に投与することを含む代謝障害に対する治療方式の効力を上昇させるための方法に関する。該方法は、該治療方式の実施の前、途中および後に該個体におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)および/またはグルカゴンのレベルを測定することを含む。
【背景技術】
【0002】
(2)関連技術の説明
ニューロメジンU(NMU)は最初は、それがラット子宮平滑筋を収縮させうることに基づいて、ブタ脊髄から単離されたが、それ以来、ストレス、侵害受容、炎症、心血管機能およびエネルギー恒常性を含む種々の他の生理的過程に関連づけられている。NMUの特徴づけは、類似した生物活性を有する3つのペプチド、すなわち、ヒト、ブタおよびイヌにおける完全長NMU(25マー(NMU−25))、ラットおよびマウスにおける23マー(NMU−23)、ならびに8マー(NMU−8)を特定している。NMU−8は完全長NMUの切断により得られ、該完全長前駆体と同じC末端を有する。NMU−8は脊椎動物間で高度に保存されており、調べられた全ての種において同一である7個のC末端残基を含有し、これらの残基は生物活性のために決定的に重要である(Brightonら,Pharmacol.Rev.56:231−248(2004))。
【0003】
エネルギー恒常性の調節におけるNMUの役割は薬理学的および遺伝学的データにより裏づけられている。NMUの特性には、該物質が中枢に投与された場合の食物摂取の抑制およびエネルギー消費の増加が含まれる(Howardら,Nature 406:70−74(2000);Nakazatoら,Biochem.Biophys.Res.Comm.277:191−194(2000);Ivanovら,Endocrinol.143:3813−3821(2002);およびWrenら,Endocrinol,143:4227−4234(2002))。NMU欠損マウスは、過食症およびエネルギー消費の減少により特徴づけられる肥満を発生し(Hanadaら,Nat.Med.,10:1067−1073(2004))、NMUを過剰発現するトランスジェニックマウスは痩せており、食欲低下を示す(Kowalskiら,J.Endocrinol.185:151−164(2005))。動物の内部エネルギー状態もNMUの発現および放出の状態に影響を及ぼす(Wrenら,同誌)。
【0004】
2つの高アフィニティNMU受容体であるNMUR1(国際特許出願番号PCT/US99/15941)およびNMUR2(米国特許第7163799号)が特定されている。NMUR1は主に末梢において発現され、NMUR2は主に脳において発現される。薬理学的実験は、エネルギー恒常性に対するNMUの短期および長期効果をより詳細に明らかにするのに、そしてどのNMU受容体がこれらの作用の媒介に関与するのかを確認するのに役立っている。NMUの急性投与は、中枢投与または末梢投与のいずれにおいても、マウスにおける食物摂取を用量依存的に減少させることが示されている。中枢投与されたNMUの食欲抑制作用はNMUR2欠損(Nmur2−/−)マウスには存在しないが、NMUR1欠損(Nmur1−/−)マウスには存在する。これとは対照的に、末梢投与されたNMUの食欲抑制作用はNmur1−/−マウスには存在しないが、Nmur2−/−マウスには存在する。また、NMUの急性末梢投与はマウスにおいて体の中心部(コア)の温度を用量依存的に上昇させ、このことは、NMUR1がエネルギー消費をもモジュレーションしうることを示唆している。NMUの慢性投与は、中枢投与または末梢投与のいずれにおいても、この場合も用量依存的に、マウスにおいて食物摂取、体重および脂肪過多を軽減する。Nmur2−/−トランスジェニックマウスにおいては、体重、身体組成、体温および食物摂取はラットNMU−23の慢性中枢投与によってはほとんど影響されない。Nmur1−/−トランスジェニックマウスにおいては、体重、身体組成および食物摂取はラットNMU−23の慢性末梢投与によってはほとんど影響されない。
【0005】
公開国際出願番号WO2007/109135は、NMUR1−およびNMUR2−選択的アゴニストならびにNMUR1/2非選択的アゴニストが共に、肥満のような代謝障害の治療に有用であることを開示している。しかし、NMUおよびその類似体は代謝障害の治療に有用であるが、NMUまたはその類似体を含む治療の効力を評価するための新規方法が常に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、GLP−1および/またはPYYのレベルの増加を要する個体においてGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇または増加させるための、ニューロメジン(neuromedin)U受容体アゴニストの使用を提供する。本発明は更に、グルカゴンレベルの低下を要する個体においてグルカゴンのレベルを低下させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を提供する。したがって、本発明は、ニューロメジンU受容体アゴニストおよび場合によっては1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターを含む組成物を個体に投与することにより、該個体においてGLP−1および/もしくはPYYを上昇させるための、ならびに/またはグルカゴンレベルを低下させるための方法に関する。本発明は更に、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を個体に投与することを含む代謝障害に対する治療方式の効力を評価するための方法を提供する。該方法は、該治療方式の実施の前、途中および後に該個体におけるグルカゴン様ペプチド(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)および/またはグルカゴンのレベルを測定することを含む。
【0007】
したがって、本発明は、GLP−1および/またはPYYを上昇または増加させる必要のある個体においてGLP−1および/またはPYYレベルを上昇または増加させるための方法を提供する。該方法は、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の治療的有効量を該個体に投与することを含む。さらに、グルカゴンのレベルを低下または減少させる必要のある個体においてグルカゴンレベルを低下または減少させるための方法を提供する。該方法は、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の治療的有効量を該個体に投与することを含む。さらにまた、GLP−1および/またはPYYのレベルを上昇または増加させるのと同時にグルカゴンレベルを低下または減少させる必要のある個体において、グルカゴンレベルを低下または減少させるのと同時にGLP−1および/またはPYY1レベルを上昇または増加させるための方法を提供する。該方法は、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の治療的有効量を該個体に投与することを含む。
【0008】
ニューロメジンU受容体アゴニストの治療的有効量は、個体へのニューロメジンU受容体アゴニストの投与の前の個体におけるGLP−1および/もしくはPYYならびに/またはグルカゴンの基底レベルと比較して個体の血漿中のGLP−1および/もしくはPYYのレベルを上昇もしくは増加させる、ならびに/またはグルカゴンのレベルを低下もしくは減少させる量である。特定の実施形態においては、該組成物は更に、1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターを含む。DPP−IVインヒビターの具体例には、イソロイシンチアゾリジド、バリンピロリジド、シタグリプチン(sitagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、NVP−DPP728、LAF237(ビルダグリプチン(vildagliptin))、P93/01、TSL 225、TMC−2A/2B/2C、FE 999011、P9310/K364、VIP 0177、SDZ 274−444、GSK 823093、E 3024、SYR 322、TS021、SSR 162369、GRC 8200、K579、NN7201、CR 14023、PHX 1004、PHX 1149、PT−630およびSK−0403ならびにそれらの医薬上許容される塩が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
ニューロメジンU受容体アゴニストがニューロメジンUまたはその類似体である実施形態においては、該ニューロメジンU受容体アゴニストは、式
−ペプチド−Z
[式中、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号27)を有し、ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在せず、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはL、G、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はF、NMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はR、K、AまたはLであり、アミノ酸X23はP、Sar、AまたはLであり、アミノ酸X24はR、HargまたはKであり、アミノ酸X25はN、任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aであり、Zは、場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、N末端アミノ基に結合しており、Zは、NH、または場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、C末端カルボキシ基に結合している]およびその医薬上許容される塩を有する。
【0010】
本発明は更に、代謝障害の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の効力を決定するための方法であって、該方法が、(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(b)該組成物を該個体に投与し、(c)ついで該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定することを含み、第1時点と比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少が該代謝障害の治療における該組成物の効力を示す、方法を提供する。
【0011】
もう1つの実施形態においては、代謝障害を軽減するために個体に対して行われているニューロメジンU受容体アゴニストに基づく治療方式の効力を決定するための方法であって、該方法が、(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(b)該個体からの第2血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し(ここで、第1時点と第2時点との間は該個人が該治療方式を続ける)、(c)第2時点におけるレベルを、(a)において決定したレベルと比較することを含み、第2時点におけるニューロメジンUアゴニストの投与の前の該個体におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンの基底レベルと比較した、GLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンの変化が、該治療方式の効力を示す、方法を提供する。
【0012】
さらにもう1つの実施形態においては、代謝障害の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の適当な投与量を決定するための方法であって、該方法が、(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(b)該組成物を該個体に投与し、(c)ついで該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(d)該組成物が適当な投与量で投与されたかどうかを決定し(ここで、第1時点と比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少が該投与量における該代謝障害の治療における該組成物の効力を示す)、(e)必要に応じて投与量を調節することを含む、方法を提供する。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体において用いる単数形は、文脈に明らかに矛盾しない限り、複数の対応物を含む。
【0014】
本明細書中で用いる「個体」なる語は、ヒト、げっ歯類、例えばラットまたはマウス、イヌおよび霊長類を含む任意の哺乳動物を含む。
【0015】
本明細書中で用いる「治療方式」は、医師または獣医により処方もしくは推奨される又は肥満の治療または抑制のために個体により続けられる療法の任意の経過を意味し、ここで、療法の経過は、少なくとも1つの食欲抑制物質の投与を含む。該治療方式は2以上の活性医薬化合物での組合せ治療を含むことが可能であり、あるいは単一の食欲抑制薬の投与でありうる。該治療方式は更に、医師もしくは獣医により推奨された治療計画または該個体により提案された治療計画に従う例えばダイエットおよび運動のような他の治療方法を含みうる。
【0016】
本明細書中で用いる「適当な投与量」は、食欲の抑制または満腹の誘発において有効である、既知医薬化合物または試験化合物の投与量を意味する。適当な投与量は、該個体の種および体重ならびに化合物のクラスを含む種々の要因に応じて変動しうる。
【0017】
「代謝障害」には、肥満、メタボリックシンドロームまたはX症候群、II型糖尿病、糖尿病の合併症、例えば網膜症、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、胆石、骨関節炎、および或る形態の癌が含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書における肥満関連障害は肥満に関連している、または肥満により引き起こされる、または肥満から生じる。
【0018】
「肥満」は、過剰な体脂肪が存在する状態である。肥満の実施上の定義は、メートル単位の身長の2乗当たりの体重(kg/m)として算出される体型指数(BMI)に基づく。「肥満」は、それ以外の点では健康な個体が30kg/m以上の体型指数(BMI)を有する状態、または少なくとも1つの同時罹患状態を有する個体が27kg/m以上のBMIを有する状態を意味する。「肥満個体」は、30kg/m以上の体型指数(BMI)を有するそれ以外の点では健康な個体、または27kg/m以上のBMIを有する少なくとも1つの同時罹患状態を有する個体である。「肥満のリスクを有する個体」は、25kg/m〜30kg/m未満のBMIを有するそれ以外では健康な個体、または25kg/m〜37kg/m未満のBMIを有する少なくとも1つの同時罹患状態を有する個体である。
【0019】
肥満に関連したリスクの増加は、アジアにおいては、より低い体型指数(BMI)で生じる。日本を含むアジア諸国においては、「肥満」は、体重減少を要する又は体重減少により改善されるであろう少なくとも1つの肥満誘発性または肥満関連同時罹患状態を有する個体が25kg/m以上のBMIを有する状態を意味する。日本を含むアジア諸国においては、「肥満個体」は、体重減少を要する又は体重減少により改善されるであろう少なくとも1つの肥満誘発性または肥満関連同時罹患状態を有する、25kg/m以上のBMIを有する対象を意味する。アジア諸国においては、「肥満のリスクを有する個体」は、23kg/m〜25kg/m未満のBMIを有する対象である。
【0020】
本明細書中で用いる「肥満」なる語は、肥満の前記定義の全てを含むと意図される。
【0021】
肥満誘発性または肥満関連同時罹患状態には、糖尿病、非インスリン依存性2型糖尿病、耐糖能障害、空腹時血糖障害、インスリン抵抗性症候群、脂質異常症、高血圧、過尿酸血症、痛風、冠状動脈疾患、心筋梗塞、狭心症、睡眠無呼吸症候群、ピクウィック症候群、脂肪肝、脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作、整形外科的障害、関節変形、腰痛、月経異常および不妊が含まれるが、これらに限定されるものではない。特に、同時罹患状態には、高血圧、高脂質血症、脂質異常症、糖不耐性、心血管疾患、睡眠無呼吸、糖尿病および他の肥満関連状態が含まれる。
【0022】
(肥満および肥満関連障害の)「治療」は、肥満個体の体重を減少させ又は維持するための化合物の投与を意味する。治療の結果の1つは、本発明の化合物の投与の直前の個体の体重と比較した場合の肥満対象の体重の減少でありうる。治療のもう1つの結果は、ダイエット、運動または薬物療法の結果として既に減少した体重の体重再増加の予防でありうる。治療のもう1つの結果は肥満関連疾患の発生および/または重症度の軽減でありうる。該治療は、適切には、該個体による食物またはカロリー摂取の減少、例えば、総食事摂取量の減少、または炭水化物もしくは脂肪のような食事の特定の化合物の摂取の減少、および/または栄養吸収の抑制、および/または代謝率の低下の抑制、および体重減少を要する患者における体重減少をもたらす。該治療は、代謝率の変化(例えば、代謝率の減少の抑制の代わりに又はそれに加えて代謝率の増加)および/または体重減少から通常生じる代謝抵抗性の最小化をももたらしうる。
【0023】
(肥満および肥満関連障害の)「予防」は、肥満のリスクを有する個体の体重を減少させ又は維持するための化合物の投与を意味する。予防の結果の1つは、本発明の化合物の投与の直前の個体の体重と比較した場合の、肥満のリスクを有する個体の体重の減少でありうる。予防のもう1つの結果は、ダイエット、運動または薬物療法の結果として既に減少した体重の体重再増加の予防でありうる。予防のもう1つの結果は、肥満のリスクを有する個体において肥満の発生開始の前に該治療を行った場合の、肥満の発生の予防でありうる。予防のもう1つの結果は、肥満のリスクを有する個体において肥満の発生開始の前に該治療を行った場合の、肥満関連障害の発生および/または重症度の軽減でありうる。さらに、既に肥満である個体において治療を開始する場合、そのような治療は、肥満関連障害、例えば動脈硬化、II型糖尿病、多嚢胞卵巣疾患、心血管疾患、骨関節炎、皮膚障害、高血圧、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症および胆石症(これらに限定されるものではない)の発生、進行または重症化を予防しうる。
【0024】
本明細書における肥満関連障害は肥満に関連している、または肥満により引き起こされる、または肥満から生じる。肥満関連障害の具体例には、過食および過食症、高血圧、糖尿病、上昇した血漿インスリン濃度およびインスリン抵抗性、脂質異常症、高脂質血症、子宮内膜、乳、前立腺および結腸癌、骨関節症、閉塞性睡眠時無呼吸、胆石症、胆石、心疾患、異常心臓律動および不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠状心疾患、急死、卒中、多嚢胞卵巣疾患、頭蓋咽頭腫、プレーダー・ウィリィ症候群、フレーリッヒ症候群、GH欠損個体、正常変異低身長、ターナー症候群、および代謝活性の低下または全除脂肪体重に対する百分率としての安静時エネルギー消費の減少を示す他の病態、例えば急性リンパ芽球性白血病を有する小児における病態が含まれる。肥満関連障害の他の具体例としては、X症候群としても公知のメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性症候群、性的および生殖機能不全、例えば不妊、男性における性機能低下および女性における多毛症、胃腸運動障害、例えば肥満関連胃食道逆流、呼吸器疾患、例えば肥満低換気症候群(ピクウィック症候群)、心血管障害、炎症、例えば脈管系の全身炎症、動脈硬化、高コレステロール血症、高尿酸血症、腰部痛、胆嚢疾患、痛風および腎癌が挙げられる。
【0025】
本明細書中で用いる「糖尿病」なる語はインスリン依存性糖尿病(IDDM;I型糖尿病としても公知)および非インスリン依存性糖尿病(NIDDM;II型糖尿病としても公知)の両方を含む。I型糖尿病、すなわち、インスリン依存性糖尿病は、グルコース利用を調節するホルモンであるインスリンの絶対的な欠損により生じる。II型糖尿病、すなわち、インスリン非依存性糖尿病(すなわち、非インスリン依存性糖尿病)は、しばしば、インスリンのレベルが正常または高い場合にも生じ、インスリンに対して組織が適切に応答できないことによるようである。II型糖尿病患者のほとんどは肥満でもある。
【0026】
「個体」なる語は、ヒトおよび同伴動物または家畜、例えばイヌ、ネコ、ウマなどを含むと意図される。したがって、式Iを含む組成物はネコおよびイヌにおける肥満および肥満関連障害の治療または予防にも有用である。したがって、「哺乳動物」なる語は同伴動物、例えばネコおよびイヌを含む。
【0027】
「医薬上許容される」なる語は、動物、より詳しくはヒトにおける使用に関して連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認された又は米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方に収載されている有効成分の生物活性の有効性を妨げない無毒性物質を意味する。「担体」なる語は、治療用物質と共に投与される希釈剤、補助剤(アジュバント)、賦形剤またはビヒクルを意味し、水および油のような無菌液体を含むが、これらに限定されるものではない。担体の特性は投与経路に左右されるであろう。該ニューロメジンU受容体アゴニストはそれ自体または他のペプチドとの多量体(例えば、ヘテロ二量体またはホモ二量体)または複合体として存在しうる。その結果、本発明の医薬組成物はそのような多量体または複合体中に1以上のニューロメジンU受容体アゴニストを含みうる。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明者らは、ニューロメジンU受容体アゴニストが、個体において、該個体への該アゴニストの投与後短時間のうちに、基底レベルと比べてGLP−1およびPYYレベルの増加をもたらすことを見出した。グルカゴンのレベルの減少も観察された。GLP−1、PYYおよびグルカゴンレベルに対するニューロメジンU受容体アゴニストの効果は投与後わずか2時間で該個体において観察されうる。
【0029】
一般に、L細胞によるGLP−1の分泌は小腸の内腔における栄養素の存在に左右される。このホルモンの分泌促進物質(分泌を引き起こす又は刺激する物質)には、炭水化物、タンパク質および脂質のような主要栄養素が含まれる。GLP−1はグルコース依存的な膵臓からのインスリン分泌の増加、ベータ細胞質量およびインスリン遺伝子発現の増加、酸分泌の抑制、胃における胃排出の遅延、満腹感の増強による食物摂取の減少、ならびに膵臓からのグルカゴン分泌の減少をもたらす。グルカゴンは、膵臓の内分泌部分に位置するランゲルハンス島のアルファ細胞(α細胞)で合成され、該アルファ細胞から分泌される。げっ歯類では該アルファ細胞は該島の外縁に位置するが、ヒトでは島構造体はそれほど隔離されておらず、該アルファ細胞は該島の全体に分布している。一般に、グルカゴンの分泌は血漿グルコースの減少により引き起こされる。グルカゴンの効果は、血中のグルコースレベルを上昇させることである。PYYはNPY受容体を介してその作用を発現し、胃運動性を抑制し、結腸における水および電解質の吸収を増加させる。PYYはまた、膵分泌を抑制しうる。それは食事に応答して回腸および結腸における神経内分泌細胞により分泌され、食欲を減少させることが示されている。レプチンも摂食に応答して食欲を減少させるが、肥満者はレプチンに対する抵抗性を示し、肥満者は正常者より少量のPYYを分泌するが、加えられたPYYに応答して、肥満者は食物摂取を減少させるであろう。
【0030】
したがって、糖尿病または肥満のような代謝障害を治療するために個体におけるGLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇させること、ならびに/またはグルカゴンレベルを減少させることの重要性は、科学界および医学界においてよく知られている(例えば、Holstら,Trends Mol.Med.14:161−8(2008);Holst,Physiol.Rev.87:1409−39(2007);Uenoら,Regul.Pept.145:12−6(2007)を参照されたい)。GLP−1および/もしくはPYYのレベルを増加させるための、ならびに/またはグルカゴンのレベルを低下させるための、あるいはGLP−1および/またはPYYの治療効果を模擬するための、あるいはグルカゴン作用に拮抗するための種々の手段が、多数の特許および特許出願の目的となっている。
【0031】
したがって、前記知見を考慮して、本発明は、GLP−1および/またはPYYのレベルの増加を要する個体においてGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇または増加させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を提供する。本発明は更に、グルカゴンレベルの低下を要する個体におけるグルカゴンのレベルを低下または減少させるための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を提供する。一般に、これらの2つの効果は該アゴニストの投与後の個体において同時に生じるであろう。したがって、個体においてGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇または増加させ、同時に、該個体においてグルカゴンのレベルの減少または低下をもたらすための、ニューロメジンU受容体アゴニストの使用を提供する。したがって、本発明は、ニューロメジンU受容体アゴニストおよび場合によっては1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターを含む組成物を個体に投与することを含む、GLP−1および/またはPYYレベルを上昇または増加させる、ならびにグルカゴンレベルを低下または減少させるための方法を提供する。
【0032】
本発明は更に、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を個体に投与することを含む代謝障害に対する治療方式の効力を評価するための方法を提供する。該方法は、該治療方式の実施の前、途中および後に該個体におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)および/またはグルカゴンのレベルを測定することを含む。例えば、本明細書に開示されている方法を用いて、代謝障害の治療においてニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の効力の確定を該組成物の投与の数時間以内に行うことが可能である。これは、無効な組成物または投与を治療方式から排除するのに必要な時間を有意に減少させうる。したがって、該方法は、代謝障害に対する有効な治療方式が短時間のうちに個体のために計画されるのを可能にする。該方法は、個体に対して行われる治療方式の日常的なモニターを促進し、これは、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の投与が、該治療を受けている個体においてGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンの特定のレベルを維持して該治療方式の効力の特定のレベルを維持するために、必要に応じて調節されることを可能にする。また、薬物開発において、本発明における方法は、資源および資金が、個体におけるGLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇させるのに、ならびに/またはグルカゴンレベルを減少させるのに有効でない組成物または治療方式に消費されるのを節約する。
【0033】
したがって、代謝障害、例えば糖尿病または肥満の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の効力を決定するための方法を提供する。該方法は以下の工程を含む。該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定する。ついで該ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を該個体に投与する。該組成物の投与後、第2時点において、該個体からの血漿サンプルを得、GLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定する。第1時点におけるレベルと比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンの減少は、該組成物が該代謝障害の治療において有効であることを示す。
【0034】
前記方法は、代謝障害(例えば、糖尿病または肥満)に対するニューロメジンUアゴニストを含む組成物の使用を含む投与方式の有効性を以下のとおりに経時的にモニターするために用いられうる。該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定する。ついで該ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物を該個体に投与する。該組成物の投与後、第2時点において、該個体からの血漿サンプルを得、GLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定する。第1時点におけるレベルと比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少は、該組成物が該代謝障害の治療において有効であることを示す。該組成物の第2投与の後、第3時点において、該個体からの血漿サンプルを得、GLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定する。第1時点におけるレベルと比較した場合の第3時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少は、該組成物が該代謝障害の治療において有効であることを示す。該組成物の個々の投与が、GLP−1および/もしくはPYYレベルの上昇ならびに/またはグルカゴンレベルの低下をもたらし続けるかどうかを決定することが望ましい場合には、この方法を反復することが可能である。なぜなら、特に、場合によっては、該組成物の投与は、該個体におけるGLP−1および/もしくはPYYの上昇および/またはグルカゴンの減少の効果を維持するために時々変更される必要があるからである。
【0035】
代謝障害の治療のための及び臨床開発における、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む医薬組成物は、有効となるために適当な投与量で該個体に投与されなければならない。適当な投与量は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療すべき状態の重症度;投与経路;患者の腎、肝および心血管機能;ならびに使用するその個々の化合物を含む種々の要因に応じて選択される。通常の知識を有する医師または獣医は、該状態の進行を予防、阻止または停止するために必要な該医薬組成物の有効量を決定し処方することが可能である。毒性を伴うことなく効力を与える範囲内の医薬組成物の濃度を得る際の最適な精度は、標的部位に対する該ニューロメジンU受容体アゴニストのアベイラビリティの動力学に基づく方法を要する。これは該ニューロメジンU受容体アゴニストの分布、平衡および消失の考慮を含む。
【0036】
本発明は、先行技術方法より高い信頼性を有するニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の適当な投与量を決定するための定量可能な新規方法を提供する。この目的のために、代謝障害の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の適当な投与量を決定するための方法を提供する。該方法は、(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(b)該組成物を該個体に投与し、(c)ついで該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを決定し、(d)該ニューロメジンU受容体アゴニストが適当な投与量で投与されたかどうかを決定し(ここで、第1時点と比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルの増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少が該投与量における該代謝障害の治療における該医薬組成物の効力を示す)、(e)必要に応じて投与量を調節することを含む。
【0037】
本発明における方法は、代謝障害(例えば、糖尿病または肥満)に対する有望な組成物を決定するために、および薬物開発過程において、通常の方法を用いた場合より早期に、開発から無効な組成物を排除するために、臨床治験中に使用されうる。効力の通常の測定、例えば視覚的アナログ目盛評価、質問票または自己申告が、本発明における方法の使用により得られたデータを補足するために、本発明における方法と共に用いられることが可能であり、あるいは本発明における方法は単独で用いられうる。
【0038】
本発明における方法においては、第1時間と第2時間との間の長さは、評価されている治療試験期間を定める。該治療試験期間は約2時間〜約30日間であることが可能であり、食後に、または1〜24時間の絶食の後で測定されうる。現在用いられている治療試験期間は、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の急性末梢投与の場合には2時間、4時間および18時間、そしてニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の慢性末梢投与の場合には少なくとも2週間までである。慢性投与の場合、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物は1日1回、または分割量で1日2回以上投与されうる。また、該投与方式は、ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の週1回の投与を含むことが可能であり、あるいは個々の治療方式に要求される任意の投与計画でありうる。
【0039】
該治療試験期間の開始の前に個体が一晩絶食する必要はないが、本発明における方法は、所望により、一晩の又はそれより長い絶食期間の後で行われうる。しかし、単一臨床治験における全ての個体は一定の絶食期間またはその欠如を維持することが好ましい。
【0040】
循環GLP−1、PYYおよびグルカゴンは、ヒトだけでなくげっ歯類の血漿中にも存在する。したがって、本発明の方法は、循環GLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンが血漿において検出されうるヒト個体またはいずれかの他の動物個体からの血漿サンプルを使用して行われうる。この目的のために、本発明における方法は、調べられている代謝障害治療用ニューロメジンU受容体アゴニストを含む医薬組成物の効力を客観的に決定するために、動物またはヒト個体を含む臨床治験中に用いられうる。
【0041】
GLP−1、PYYおよびグルカゴンの検出は任意の手段により行われうる。GLP−1、PYYおよびグルカゴンを検出するための方法は当技術分野でよく知られている。例えば、イムノアッセイには、例えばウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降L0反応、免疫拡散アッセイ、蛍光イムノアッセイなどのような技術を用いる競合および非競合アッセイ系が含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなアッセイは常套手段であり、当技術分野においてよく知られている(例えば、Ausubelら編,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley & Sons,Inc.,New York(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。
【0042】
さらに、個体、特に、GLP−1および/またはPYYの上昇ならびにグルカゴンの低下が望まれる代謝障害を有する個体において、GLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇もしくは増加させ、ならびに/またはグルカゴンレベルを減少もしくは低下させるための医薬組成物を提供する。したがって、治療的有効量のニューロメジンU受容体アゴニストおよびその塩の1以上と医薬上許容される担体とを含む医薬組成物は、GLP−1および/もしくはPYYのレベルの上昇もしくは増加ならびに/またはグルカゴンのレベルの減少もしくは低下が望まれる個体における代謝障害の治療に使用されうる。そのような障害は既に定義されているが、少なくとも、肥満、メタボリックシンドロームまたはX症候群、II型糖尿病、糖尿病の合併症、例えば網膜症、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、胆石、骨関節炎、および或る形態の癌(これらに限定されるものではない)を含む。本発明における肥満関連障害は肥満に関連している、または肥満により引き起こされる、または肥満から生じる。
【0043】
代謝障害を有する個体のために多数の治療方式が設計されるが、本発明における方法は、代謝障害を有さないが特定のレベルでのグルコースレベルの維持を要する個体において、あるいは高血糖および/または低血糖のリスクがある場合に用いられうる。そのような個体には、栄養の非経口運搬を受けている個体が含まれる。手術患者、昏睡患者、ショック状態の患者、胃腸疾患を有する患者、消化ホルモン疾患を有する患者、動脈硬化症患者、血管疾患を有する患者、肝疾患を有する患者、肝硬変を有する患者および慢性膵炎を有する患者は全て、栄養の非経口運搬を要しうる個体の例である。
【0044】
一般に、栄養の非経口運搬を受けている個体は、食物摂取経路の正常機能が迂回されているため、高血糖を発現するリスクを有する。これらの個体においては、高血糖を発現する該個体のリスクを最小にするために、栄養の非経口運搬中に医療専門家が該個体にインスリンを投与する。したがって、栄養の非経口投与中にインスリンレベルがモニターされる必要があるが、これは高い経費と長時間を要し、栄養の非経口運搬を受けている個体において高血糖または低血糖を誘発するリスクを伴う。米国特許第6,852,690号は、GLP−1の外的投与が、正常(非糖尿病性)血糖値を有する場合の正常個体において、インスリン放出を実質的に増強しなかったことを開示している。したがって、該特許は、個体への栄養の非経口投与におけるインスリンの代替物としてのGLP−1の使用を示している。
【0045】
ニューロメジンUアゴニストが個体におけるGLP−1レベルの上昇または増加をもたらすという本明細書における知見を考慮すれば、ニューロメジンUアゴニストは個体への栄養の非経口投与の方法において使用されうると想定される。ニューロメジンUアゴニストは該個体におけるGLP−1の上昇または増加をもたらし、そしてこれは該個体におけるインスリンのレベルの上昇をもたらすであろう。このようにして、非経口的に栄養を投与されている個体におけるグルコースレベルは、高血糖または低血糖を発現する該個体のリスクの減少を伴って、正常レベルに維持されうる。したがって、栄養的に有効な量の栄養の1以上またはそれらのいずれかの組合せと1以上のニューロメジンU受容体アゴニストとを、栄養の代謝の増強を要する非糖尿病患者に非経口経路により投与することを含む、栄養の代謝を増強するための方法を提供する。治療に特に適している個体には、明白な糖尿病を有さないがインスリン抵抗性を示す個体のようなグルコース代謝(糖代謝)が損なわれている個体、および何らかの理由で経口的に(消化管を介して)栄養を摂取できない個体が含まれる。そのような個体には、手術患者、昏睡患者、胃腸疾患を有する患者、消化ホルモン疾患を有する患者などが含まれる。特に、肥満患者、動脈硬化症患者、血管疾患患者、妊娠糖尿病を有する患者、肝疾患、例えば肝硬変を有する患者、先端巨大症を有する患者、グルココルチコイド過多、例えばコルチゾール治療またはクッシング病を有する患者、外傷、事故および手術などの後で生じる活性化対抗調節性(counterregulatory)ホルモンを有する患者、高トリグリセリド血症を有する患者、および慢性膵炎を有する患者は、低血糖または高血糖にさらされることなく、本発明に従い容易かつ適切に栄養投与されうる。
【0046】
該医薬組成物はまた、(ニューロメジンU受容体アゴニストおよび担体に加えて)希釈剤、充填剤、塩、バッファー、安定剤、可溶化剤、および当技術分野でよく知られた他の物質から構成されうる。ニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物は、所望により、その塩が医薬上許容されるものである限り、そのような塩の形態で投与されうる。塩は、合成有機化学の当業者に公知の標準的な方法を用いて製造されうる。
【0047】
「医薬上許容される塩」は、無機または有機塩基および無機または有機酸を含む医薬上許容される無毒性塩基または酸から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩には、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜マンガン酸、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウム塩である。医薬上許容される有機無毒性塩基から誘導される塩には、第一級、第二級および第三級アミン、置換アミン、例えば、天然に存在する置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が含まれる。「医薬上許容される塩」なる語は更に、溶解度もしくは加水分解特性を改変するために剤形として使用されうる又は徐放もしくはプロドラッグ製剤において使用されうる全ての許容される塩、例えば酢酸塩、ラクトビオン酸、ベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸、炭酸水素塩、マレイン酸塩、硫酸水素塩、マンデル酸塩、重酒石酸塩、メシル酸塩、ホウ酸塩、メチルブロミド、ブロミド、メチル硝酸塩、エデト酸カルシウム、メチル硫酸塩、カムシラート、炭酸塩、ナプシラート、クロリド、硝酸塩、クラブラン酸塩、N−メチルグルカミン、クエン酸塩、アンモニウム塩、二塩酸塩、オレイン酸塩、エデト酸塩、シュウ酸塩、エジシラート、パモ酸塩(エンボナート)、エストラート、パルミチン酸塩、エシラート、パントテン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、グルセプタート、ポリガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩、ステアリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、硫酸塩、ヘキシルレゾルシナート、スバセタート、ヒドラバミン、コハク酸塩、臭化水素酸塩、タンニン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、テオクラート、ヨージド、トシル酸塩、イセチオン酸塩、トリエチオジド、乳酸塩、パノアート、吉草酸塩などを含む。本明細書中で用いる一般式(I)のニューロメジンU受容体アゴニストに対する言及はその医薬上許容される塩をも含むと意図されると理解されるであろう。
【0048】
本明細書中で用いる「治療的有効量」なる語は、有意な患者の利益、すなわち、関連医学的状態の治療、治癒、予防または改善、あるいはそのような状態の治療、治癒、予防または改善の率の増加を示すのに十分である、該医薬組成物または方法の各有効成分の全量を意味する。該用語は、単独で投与される個々の有効成分に適用される場合には、単独の成分に関するものである。該用語は、組合せ体に適用される場合には、組合せて投与されたか連続的に投与されたか同時に投与されたかには無関係に、治療効果をもたらす該有効成分の組合せ量に関するものである。
【0049】
個体におけるGLP−1および/もしくはPYYのレベルを上昇させるために、ならびに/またはグルカゴンのレベルを減少させるために該個体において使用するための医薬組成物は、1以上のニューロメジンU受容体アゴニスト、1以上のニューロメジンU受容体アゴニスト、および代謝障害を治療するための1以上の他の物質を含むことが可能であり、あるいはそのような1以上のニューロメジンU受容体アゴニストを含む医薬組成物は、代謝障害を治療するための物質を含む医薬組成物と共に使用されうる。
【0050】
該医薬組成物が、個体におけるGLP−1および/もしくはPYYの上昇もしくは増加ならびに/またはグルカゴンの低下もしくは減少が望まれる代謝障害を治療するための別の物質を含む場合、あるいは該治療が、個体におけるGLP−1および/もしくはPYYの上昇もしくは増加ならびに/またはグルカゴンの低下もしくは減少が望まれる代謝障害を治療するための物質を含む第2の医薬組成物を含む場合、該物質には、カンナビノイド(CB1)受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)受容体アゴニスト、GPR119受容体アゴニスト、リパーゼインヒビター、レプチン、テトラヒドロリプスタチン、2−4−ジニトロフェノール、アカルボース、シブトラミン、フェンタミン、脂肪吸収ブロッカー、シンバスタチン(simvastatin)、メバスタチン(mevastatin)、エゼチミベ(ezetimibe)、アトルバスタチン(atorvastatin)、シタグリプチン(sitagliptin)、メトフォルミン(metformin)、オルリスタット(orlistat)、Qnexa、トピラメート(topiramate)、ナルトレキソン(naltrexone)、ブプリオピオン(bupriopion)、フェンテルミン(phentermine)、ロサルタン(losartan)、ヒドロクロロチアジドを伴うロサルタン(losartan)、グルカゴン受容体アンタゴニストなど(これらに限定されるものではない)が含まれる。望ましい組成物の一例は、ニューロメジンU受容体アゴニストと1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターとを含むであろう。DPP−IVインヒビターの具体例には、イソロイシンチアゾリジド、バリンピロリジド、シタグリプチン(sitagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、NVP−DPP728、LAF237(ビルダグリプチン(vildagliptin))、P93/01、TSL 225、TMC−2A/2B/2C、FE 999011、P9310/K364、VIP 0177、SDZ 274−444、GSK 823093、E 3024、SYR 322、TS021、SSR 162369、GRC 8200、K579、NN7201、CR 14023、PHX 1004、PHX 1149、PT−630およびSK−0403が含まれるが、これらに限定されるものではない。ニューロメジンU受容体アゴニストと共に使用される適当な物質の一覧には、公開国際出願番号WO2007/109135(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されている化合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ペプチドに基づくニューロメジンU受容体アゴニストは公開国際出願番号WO2007/109135(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。簡潔に説明すると、これらのニューロメジンU受容体アゴニストは、一般式(I)
−ペプチド−Z
[式中、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号27)を有し、ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在せず、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはL、G、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はF、NMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はR、K、AまたはLであり、アミノ酸X23はP、Sar、AまたはLであり、アミノ酸X24はR、HargまたはKであり、アミノ酸X25はN、任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aであり、Zは、場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、N末端アミノ基に結合しており、Zは、NH2、または場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、C末端カルボキシ基に結合している]およびその医薬上許容される塩を有する。
【0052】
特定の実施形態においては、該ペプチドは、アミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−F−L−F−R−P−R−N(配列番号1)(ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在しない)を含む。前記アミノ酸配列を有する個々のニューロメジンU受容体アゴニストのアミノ酸配列を表1に示す。
【0053】
他の実施形態においては、該ペプチドはアミノ酸配列F−R−V−D−E−E−F−Q−S−P−F−A−S−Q−S−R−G−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号7)[ここで、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはG、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はNMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はK、AまたはLであり、アミノ酸X23はSar、AまたはLであり、アミノ酸X24はHargまたはKであり、アミノ酸X25は任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aである]を含む。前記アミノ酸配列を有するペプチドの具体例を表2に示す。
【0054】
さらにもう1つの実施形態においては、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X(配列番号8)[ここで、アミノ酸Xは存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸XはA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸Xは存在しないか、またはG、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸XはNMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、XはK、AまたはLであり、アミノ酸XはSar、AまたはLであり、アミノ酸XはHargまたはKであり、アミノ酸Xは任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aである]を含む。前記アミノ酸配列を有するペプチドの具体例を表2に示す。
【0055】
特定の態様においては、該ニューロメジンU受容体アゴニストは、場合によっては、N末端アミノ基に共有結合した保護基を含む。ニューロメジンU受容体アゴニストのN末端アミノ基に共有結合した保護基はインビボ条件下のアミノ末端の反応性を低下させる。アミノ保護基には、−C1−10アルキル、−C1−10置換アルキル、−C2−10アルケニル、−C2−10置換アルケニル、アリール、−C1−6アルキルアリール、−(CH1−6−COOH、−C(O)−C1−6アルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−O−C1−6アルキルまたは−C(O)−O−アリールが含まれる。特定の実施形態においては、アミノ末端保護基は、アセチル、プロピル、スクシニル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニルおよびt−ブチルオキシカルボニルよりなる群から選択される。N末端アミノ酸の脱アミノ化は、インビボ条件下のアミノ末端の反応性を低下させるために想定されるもう1つの修飾である。
【0056】
ニューロメジンU受容体アゴニスト誘導体が重合体に連結されている、ニューロメジンU受容体アゴニストの化学修飾組成物も、本発明の範囲内に含まれる。選択される重合体は、通常、本発明において提供されるとおりに重合度が制御されうるよう、例えばアシル化のための活性エステルまたはアルキル化のためのアルデヒドのような単一の反応性基を有するよう修飾される。重合体の混合物も本発明の範囲内に含まれる。好ましくは、最終産物製剤の治療的使用のためには、該重合体は医薬上許容される。
【0057】
該重合体またはその混合物は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の炭水化物系重合体、ポリ−(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモ重合体、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)およびポリビニルアルコールよりなる群から選択されうる。
【0058】
さらに他の実施形態においては、該ニューロメジンU受容体アゴニストはPEG化(PEGylation)、コレステロイル化またはパルミトイル化により修飾される。該修飾は該ニューロメジンU受容体アゴニストにおける任意のアミノ酸残基に対するものでありうるが、現在好ましい実施形態においては、該修飾は、N末端アミノ酸に対して直接的に、あるいはN末端に付加されたシステイン残基のチオール基へのカップリングにより又はTtdsのようなN末端に付加されたリンカーを介して、該ニューロメジンU受容体アゴニストのN末端アミノ酸に対するものである。他の実施形態においては、該ニューロメジンU受容体アゴニストのN末端は、システイン残基のN末端アミノ基に保護基が結合した該システイン残基を含み、この場合、該システインチオラート基はN−エチルマレイミド、PEG基、コレステロール基またはパルミトイル基で誘導体化されている。さらに他の実施形態においては、アセチル化システイン残基が該ニューロメジンU受容体アゴニストのN末端に付加されており、該システインのチオール基はN−エチルマレイミド、PEG基、コレステロール基またはパルミトイル基で誘導体化されている。
【0059】
該ニューロメジンU受容体アゴニストは、他の非配列修飾、例えばグリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、カルボキシル化、メチル化または任意の他の操作もしくは修飾、例えば標識成分の結合を含みうる。特定の態様においては、本発明におけるニューロメジンU受容体アゴニストは、天然に存在するアミノ酸または天然に存在するアミノ酸のD異性体、非天然アミノ酸、例えばメチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム、ノルロイシン、イプシロン−アミノカプロン酸、4−アミノブタン酸、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸、8−アミノカプリル酸、4−アミノ酪酸、Lys(N(イプシロン)−トリフルオロアセチル)または合成類似体、例えばo−アミノイソ酪酸、pもしくはy−アミノ酸および環状類似体での置換を用いる。さらに他の態様においては、該ニューロメジンU受容体アゴニストは、ニューロメジンU受容体アゴニストである第1部分と異種ペプチドである第2部分とを有する融合タンパク質を含む。
【0060】
該ニューロメジンU受容体アゴニストは、未修飾ニューロメジンU受容体アゴニストと実質的に同じ活性を有する及び/又は他の望ましい特性を有する誘導体を得るための種々の化学技術により修飾されうる。C末端カルボキシ基に共有結合した保護基はインビボ条件下でのカルボキシ末端の反応性を低下させる。例えば、該ペプチドのカルボキシル酸基は、カルボキシル末端であっても側鎖であっても、医薬上許容されるカチオンの塩の形態で提供されるか、またはC1−6エステルを形成するようエステル化され、あるいは式NRR2(式中、RおよびR2は、それぞれ独立して、HまたはC1−6アルキルであり、あるいは一緒になって、複素環、例えば5または6員環を形成している)のアミドに変換される。該カルボキシ末端保護基は、好ましくは、最終アミノ酸のα−カルボニル基に結合している。カルボキシ末端保護基には、アミド、メチルアミドおよびエチルアミドが含まれるが、これらに限定されるものではない。該ペプチドのアミノ基は、N末端であっても側鎖であっても、医薬上許容される酸付加塩(例えば、HCl、HBr、酢酸、安息香酸、トルエンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸および他の有機酸)の形態であることが可能であり、あるいはC1−6アルキルまたはジアルキルアミノへと修飾されることが可能であり、さらに、アミドへと変換されることが可能である。
【0061】
該ニューロメジンU受容体アゴニスト側鎖のヒドロキシル基は、よく知られた技術を用いてC1−6アルコキシまたはC1−6エステルへと変換されうる。該ペプチド側鎖のフェニルおよびフェノール環は、1以上のハロゲン原子、例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、またはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、カルボン酸およびそのエステルまたはそのようなカルボン酸のアミドで置換されうる。該ニューロメジンU受容体アゴニスト側鎖のメチレン基は同類のC2−4アルキレンへと伸長されうる。チオールは、多数のよく知られた保護基(例えば、アセトアミド基)のいずれか1つで保護されうる。本発明のペプチド内に環状構造を導入して、安定性の増加をもたらす、該構造へのコンホメーション的拘束を選択しそれを付与するための方法も、当業者に認識されるであろう。例えば、カルボキシル末端またはアミノ末端のシステイン残基が該ペプチドに付加されることが可能であり、その結果、酸化された場合に、該ペプチドはジスルフィド結合を含有することとなり、それにより環状ペプチドを生成するであろう。他のペプチド環化方法はチオエーテルならびにカルボキシルおよびアミノ末端のアミドおよびエステルの形成を含む。
【0062】
多糖重合体は、タンパク質修飾に使用されうるもう1つのタイプの水溶性重合体である。デキストランは、主にα1−6結合により連結されたグルコースの個々のサブユニットから構成される多糖重合体である。デキストラン自体は多数の分子量範囲で入手可能であり、約1kDa〜約70kDaの分子量で容易に入手可能である。デキストランは、ビヒクル自体として又は別のビヒクルと共に使用するための適当な水溶性重合体である(例えば、WO96/11953およびWO96/05309を参照されたい)。治療用または診断用免疫グロブリンに結合したデキストランの使用は既に報告されている。例えば、欧州特許公開第0 315 456号を参照されたい。本発明におけるビヒクルとしてデキストランを使用する場合には、約1kDa〜約20kDaのデキストランが好ましい。
【0063】
ニューロメジンU受容体アゴニストの具体例を表1に示す。
【表1】


【0064】
表1に示されているニューロメジンU受容体アゴニストは、配列番号25のアミノ酸配列を含むニューロメジンU受容体アゴニストを除き、それらがNMUR1またはNMUR2受容体のいずれにも結合しそれらを活性化しうる点で二重特異性である。配列番号25を含むニューロメジンU受容体アゴニストはNMUR1特異的であることが判明している。表1に示されているニューロメジンU受容体アゴニストのPEG化は該ニューロメジンU受容体アゴニストの血清半減期を延長し、重要なことに、NMU12のような特定のニューロメジンU受容体アゴニストを、血液脳関門を通過しうるものにするらしい。例えば、実施例4ならびに図6Aおよび6Bに示されているとおり、NMU12はNmur1ノックアウトマウスにおいて食物摂取を減少させ体重を減少させうることが示された。結果は、末梢に投与されたPEG化ペプチドNMU12が血液脳関門を通過することが可能であったことを示している。PEG化は、NMU1、NMU19およびNMU20の血清半減期を3日延長し、NMU11およびNMU18の血清半減期を2日延長するようであった。NMU9とNMU12とは、N末端システイン残基のチオール基に結合している(PEG)240kDaの起源が異なる。
【0065】
ニューロメジンU受容体アゴニストの具体例には、アミノ酸配列F−R−V−D−E−E−F−Q−S−P−F−A−S−Q−S−R−G−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号7)またはX−X−X−X−X−X−X−X(配列番号8)[ここで、アミノ酸X18またはXは存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19またはXはA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20またはXは存在しないか、またはG、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21またはXはNMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22またはXはK、AまたはLであり、アミノ酸X23またはXはSar、AまたはLであり、アミノ酸X24またはXはHargまたはKであり、アミノ酸X25またはXは任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aである]が含まれる。前記アミノ酸配列を有するペプチドの具体例を表2に示す。一般に、配列番号7または配列番号8を含むペプチドはNMUR1受容体に特異的であるが、実施例に示されているとおり、ニューロメジンU受容体アゴニストN、OおよびPは二重特異性である。
【表2】


【0066】
個体においてGLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇させ、ならびに/またはグルカゴンレベルを減少させるための医薬組成物の投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。該組成物は、いずれかの簡便な経路、例えば注入またはボーラス注射、上皮または粘膜粘膜裏打ち層(例えば、経口粘膜、直腸および腸粘膜など)、眼などを介した吸収により投与されることが可能であり、他の生物学的に活性な物質と共に投与されることが可能である。投与は全身投与または局所投与でありうる。また、脳室内および髄腔内注射を含むいずれかの適当な経路により、該組成物を中枢神経系内に投与することが有利かもしれない。脳室内注射は、貯留槽(例えば、オンマイヤ貯留槽)に接続された脳室内カテーテルにより促進されうる。吸入器またはネブライザーおよびエアゾール化剤含有製剤の使用により、肺投与も用いられうる。また、治療を要する領域に局所的に該組成物を投与することが望ましいかもしれない。これは、限定的ではないが例えば、手術による局所注入、局所適用、注射、カテーテル、坐剤またはインプラントにより達成されうる。
【0067】
種々の運搬系が公知であり、個体においてGLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇させ並びに/又はグルカゴンレベルを減少させるための組成物を投与するために用いられうる。そのような運搬系には、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内の封入;ミニ細胞;高分子;カプセル;錠剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。1つの実施形態においては、該組成物は、小胞、特にリポソーム中で運搬されうる。リポソームにおいては、該組成物は、他の医薬上許容される担体のほかに、水溶液中のミセル、不溶性単層、液晶または薄板状層としての凝集形態で存在する例えば脂質のような両親媒性物質と組合される。リポソーム製剤のための適当な脂質には、モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サポニン、胆汁酸などが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなリポソーム製剤の製造は、例えば米国特許第4,837,028号および米国特許第4,737,323号に開示されているとおり、当技術分野の技術水準の範囲内である。さらにもう1つの実施形態においては、該組成物は、運搬ポンプ(例えば、Saudekら,New Engl.J.Med.321:574(1989)を参照されたい)および半透性高分子(例えば、Howardら,J.Neurosurg.71:105(1989)を参照されたい)(これらに限定されるものではない)を含むコントロールリリース系内で運搬されうる。また、該コントロールリリース系は治療標的(例えば、脳)の近位に配置されることが可能であり、したがって、全身投与用量のごく一部で済む可能性がある。例えば、Goodson,In:Medical Applications of Controlled Release,1984.(CRC Press,Bocca Raton,FIa.)を参照されたい。
【0068】
個体においてGLP−1および/もしくはPYYレベルを上昇させ並びに/又はグルカゴンレベルを減少させるのに有効となる該組成物の量は、該個体を冒している障害または状態の性質に左右され、標準的な臨床技術により当業者により決定されうる。本明細書に開示されている方法は、最適投与量範囲の特定を補助するために用いられる。また、製剤中で使用すべき厳密な用量は投与経路、および疾患または障害の全体的な重症度に左右され、実施者の判断および各個体の状況に応じて決定されるべきである。最終的には、担当医師が、本明細書に開示されている方法に基づいて、各個の患者を治療するための該組成物の量を決定することとなろう。まず、担当医師は該組成物の低用量を投与し、投与の2時間後またはそれ以降に該個体の血漿中のGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンのレベルを測定する。ついで該担当医師は、該レベルを、該用量の投与前の該個体におけるレベルと比較する。該患者にとってのGLP−1および/またはPYYおよび/またはグルカゴンの最適レベルが得られるまで、より高い用量の該組成物を投与することが可能であり、該最適レベルが得られた時点で、投与量はそれ以上は増加させない。一般に、1日量の範囲は、1回量または分割量として、約0.001mg〜約100mg/kg/体重(哺乳動物の体重)、好ましくは、0.01mg〜約50mg/kg、最も好ましくは、0.1〜10mg/kgの範囲内である。一方、場合によっては、これらの範囲外の投与量を用いることが必要かもしれない。しかし、該組成物の静脈内投与の場合の適当な投与量範囲は、一般に、活性化合物約5〜500マイクログラム(μg)/キログラム(Kg)体重である。鼻腔内投与の場合の適当な投与量範囲は、一般に、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系において得られた用量反応曲線から外挿されうる。坐剤は、一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の有効成分を含有し、経口製剤は、好ましくは、10%〜95%の有効成分を含有する。最終的には、担当医師が、該組成物を使用する療法の適当な持続期間を決定することになろう。投与量は個々の患者の年齢、体重および応答に応じて変動するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1Aは、NMUの急性末梢投与が肥満マウスにおけるPYYの血漿レベルを増加させることを示している。10mpkのNMUは投与の4時間後にPYYレベルを増加させた。図1Bは、10mpkのNMUが投与の2時間後および4時間後にPYYレベルを増加させたことを示している。
【図2】図2Aは、NMUの急性末梢投与が肥満マウスにおける総GLP−1の血漿レベルを増加させたことを示している。10mpkのNMUは投与の4時間後にGLP−1レベルを増加させた。図2Bは、2週間皮下投与されたNMU(3mpk/日)の慢性治療が総GLP−1における有意な増加を招いたことを示している。
【図3】図3は、GLP−1レベルの変化がNMUR1によりもたらされることを示している。
【図4】図4Aは、PEG化(PEGylated)NMU類似体NMU12の急性末梢投与が肥満マウスにおけるPYYの血漿レベルを増加させたことを示している。該NMU12類似体は、食物の存在下、投与の18時間後に血漿中のPYYレベルを用量依存的に増加させた。図4Bは、10mpkのNMU12が、食物の非存在下、投与の18時間後にPYYレベルを増加させなかったことを示している。
【図5】図5Aは、NMU12の急性末梢投与が肥満マウスにおける総GLP−1の血漿レベルを増加させたことを示している。10mpkのNMU12は、食物の存在下、投与の18時間後にGLP−1レベルを増加させた。図5Bは、10mpkのNMU12が、食物の非存在下、投与の18時間後にGLP−1レベルを増加させたことを示している。
【図6】図6Aは、0.1mpkおよび1mpkのNMU12が、経口グルコース負荷試験の15分後に血漿グルコースレベルを減少させたことを示している。図6Bは、0.1mpkおよび1mpkのNMU12が、経口グルコース負荷試験の15分後にグルカゴンレベルを減少させたことを示している。
【0070】
以下の実施例は、本発明の更に詳細な理解を促すことを意図したものである。
【実施例1】
【0071】
本実施例は、野生型、天然NMUおよびPEG化NMU類似体(NMU12)が、マウスにおいてPYYおよびGLP−1の基底レベルを上昇させるのに、ならびにグルコース負荷試験において該マウスにおいてグルカゴンレベルを減少させるのに有効であったことを示す。これらのペプチドは表1に示されている。
【0072】
動物への投与は以下のとおりであった。任意に給餌された食餌誘発肥満雄マウスを秤量し、光周期の暗期の開始の約30分前に皮下投与した。治療中、動物には食餌を与えないか、または摂食を可能にした。NMU研究では、投与の2時間後または4時間後に心穿刺により血漿を集めた。PEG化NMU類似体での研究では、投与後18時間までの複数の時点で血漿を集めた。
【0073】
経口グルコース負荷試験(OGTT)を以下のとおりに行った。任意に給餌された食餌誘発肥満雄マウスを秤量し、光周期の暗期の開始の約30分前に皮下投与した。投与後は、動物に食餌を与えなかった。翌日、投与の約18時間後、尾部の血液により動物の基底グルコースレベルを測定した。ついで経口ガバージュにより動物にグルコース用量(1.5g/kg)を投与し、グルコースの投与の約15分後、グルカゴンおよびグルコースレベルを評価するために血漿を集めた。
【0074】
Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MDのTotal GLP−1キットを使用して、血漿中のGLP−1レベルを測定した。Meso Scale Discovery,Gaithersburg,MDのMetabolic Multiplexキットを使用して、グルカゴンレベルを測定した。Millipore,Billerica,MAのPYY Luminexアッセイを使用して、PYYレベルを測定した。示されているデータはpg/mLとしてのグルカゴン、PYYおよびGLP−1レベルを示している(全ての値は平均±SEMとして示されており、データは、両側不対スチューデントt検定を用いて解析された;p値0.05が、有意なものとして示されており、星印で示されている)。
【0075】
食餌誘発肥満マウス(DIO)はTaconic Farmsから購入した。標準的な相同組換え技術を用いて、NMUR1ノックアウト(Nmur1−/−)マウスを作製した。米国公開出願第20080172752号はNMUR1ノックアウトマウスを開示している。NMUR2ノックアウト(Nmur2−/−)マウスはDeltagen Inc.,San Mateo,CAから実施許諾され、ついでTaconic Farmsに移された。通常のSPF施設内のTecniplast檻内にマウスを個別に収容した。マウスを、まず、通常食で維持し、ついで、若い間に高脂肪食(D12492:脂肪から60%kcal;Research Diets,Inc.,New Brunswick,NJ)に切り換え、この場合、12時間の明期/12時間の暗期の周期で、自由に水に接近できるようにした。
【0076】
該動物投与の結果は、NMUおよびNMU類似体が共に、該マウスにおけるPYYおよびGLP−1の血清レベルの経時的増加をもたらすことを示している。
【0077】
NMUの急性末梢投与は肥満マウスにおけるPYYの血漿レベルを増加させた。図1Aは、10mpkのNMUが投与の4時間後にPYYレベルを約2倍増加させたことを示している。図1Bは、10mpkのNMUが投与の2時間後および4時間後にPYYレベルを増加させたことを示している。
【0078】
NMUの急性末梢投与は肥満マウスにおける総GLP−1の血漿レベルを増加させた。図2Aは、10mpkのNMUが投与の4時間後にGLP−1レベルを増加させたことを示している。図2Bは、2週間皮下投与されたNMU(3mpk/日)の慢性治療が総GLP−1の増加を招いたことを示している。
【0079】
図3に示されているとおり、GLP−1レベルの増加はNMUR1によりもたらされる。野生型、Nmur1欠損およびNmur2欠損マウスから、食物の非存在下、投与の4時間後に血漿を集めた。GLP−1のレベルの増加は野生型およびNmur2欠損マウスでは観察されたが、Nmur1欠損マウスでは観察されなかった。この結果は、NMUR1が、血漿GLP−1レベルの、観察された増加に関与していることを示している。
【0080】
PEG化NMU類似体の急性末梢投与は肥満マウスにおけるPYYの血漿レベルを増加させた。図4Aは、該PEG化NMU類似体が、食物の存在下、投与の18時間後に血漿中のPYYレベルを用量依存的に増加させたことを示している。しかし、図4Bに示されているとおり、食物の非存在下では、10mpkの該PEG化NMU類似体は投与の18時間後にPYYレベルを増加させなかった。
【0081】
該PEG化NMU類似体の急性末梢投与は肥満マウスにおける総GLP−1の血漿レベルを増加させた。図5Aは、10mpkの該PEG化NMU類似体が、食物の存在下、投与の18時間後にGLP−1レベルを増加させたことを示している。しかし、PYYに関して観察された効果とは対照的に、図5Bは、該PEG化NMU類似体が、食物の非存在下でも、GLP−1レベルの増加をもたらした。
【0082】
図6Aに示されているとおり、経口グルコース負荷試験中に、該PEG化NMU類似体の急性末梢投与はグルコース移動を改善した。また、図6Bに示されているとおり、OGTT中に、肥満マウスにおいて、該PEG化NMU類似体の急性末梢投与はグルカゴンの血漿レベルを減少させた。
【0083】
本明細書において本発明は例示実施形態に関して記載されているが、本発明はそれらに限定されないと理解されるべきである。当技術分野における通常の知識を有する及び本明細書中の教示を利用できる者は、その範囲内の追加的な修飾および実施形態を認識するであろう。したがって、本発明は、本明細書に添付されている特許請求の範囲のみにより限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
代謝障害の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の効力を決定するための方法であって、該方法が、
(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)のレベルを決定し、
(b)該組成物を該個体に投与し、
(c)ついで該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYのレベルを決定することを含み、
第1時点と比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/またはPYYのレベルの増加が該代謝障害の治療における該組成物の効力を示す、方法。
【請求項2】
該個体がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該個体がげっ歯類である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該個体が霊長類である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
GLP−1および/またはPYYのレベルをラジオイムノアッセイにより決定する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
GLP−1および/またはPYYのレベルをELISAにより決定する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
GLP−1および/またはPYYのレベルを放射性リガンド結合アッセイにより決定する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
GLP−1および/またはPYYのレベルを液体クロマトグラフィーにより決定する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第1時点と第2時点との間の時間の長さが少なくとも2時間である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
代謝障害を軽減するために個体に対して行われているニューロメジンU受容体アゴニストに基づく治療方式の効力を決定するための方法であって、該方法が、
(a)個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)のレベルを決定し、
(b)該個体からの第2血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYのレベルを決定し(ここで、第1時点と第2時点との間は該個人が該治療方式を続ける)、
(c)第2時点におけるレベルを、(a)において決定したレベルと比較することを含み、
第2時点におけるGLP−1および/またはPYYの増加が該治療方式の効力を示す、方法。
【請求項11】
代謝障害の治療のために個体に投与されるニューロメジンU受容体アゴニストを含む組成物の適当な投与量を決定するための方法であって、該方法が、
(a)該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第1時点におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)のレベルを決定し、
(b)該組成物を該個体に投与し、
(c)ついで該個体からの血漿サンプルをアッセイして、第2時点におけるGLP−1および/またはPYYのレベルを決定し、
(d)該組成物が適当な投与量で投与されたかどうかを決定し(ここで、第1時点と比較した場合の第2時点におけるGLP−1および/またはPYYのレベルの増加が該投与量における該代謝障害の治療における該組成物の効力を示す)、(e)必要に応じて投与量を調節することを含む、方法。
【請求項12】
個体におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)レベルを上昇または増加させるための方法であって、式
−ペプチド−Z
[式中、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号27)を有し、ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在せず、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはL、G、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はF、NMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はR、K、AまたはLであり、アミノ酸X23はP、Sar、AまたはLであり、アミノ酸X24はR、HargまたはKであり、アミノ酸X25はN、任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aであり、Zは、場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、N末端アミノ基に結合しており、Zは、NH、または場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、C末端カルボキシ基に結合している]を有するニューロメジンU受容体アゴニストおよびその医薬上許容される塩を含む組成物を該個体に投与することを含む方法。
【請求項13】
該組成物が更に、1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターおよびその医薬上許容される塩を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該DPP−IVインヒビターがイソロイシンチアゾリジド、バリンピロリジド、シタグリプチン(sitagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、NVP−DPP728、LAF237(ビルダグリプチン(vildagliptin))、P93/01、TSL 225、TMC−2A/2B/2C、FE 999011、P9310/K364、VIP 0177、SDZ 274−444、GSK 823093、E 3024、SYR 322、TS021、SSR 162369、GRC 8200、K579、NN7201、CR 14023、PHX 1004、PHX 1149、PT−630またはSK−0403である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
個体におけるGLP−1および/またはPYYのレベルを上昇させるための医薬の製造における、請求項12記載の組成物の使用。
【請求項16】
個体におけるグルカゴンのレベルを低下または減少させるための方法であって、式
−ペプチド−Z
[式中、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号27)を有し、ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在せず、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはL、G、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はF、NMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はR、K、AまたはLであり、アミノ酸X23はP、Sar、AまたはLであり、アミノ酸X24はR、HargまたはKであり、アミノ酸X25はN、任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aであり、Zは、場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、N末端アミノ基に結合しており、Zは、NH、または場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、C末端カルボキシ基に結合している]を有するニューロメジンU受容体アゴニストおよびその医薬上許容される塩を含む組成物を該個体に投与することを含む方法。
【請求項17】
個体におけるグルカゴン様ペプチド1(GLP−1)および/またはペプチドYY(PYY)レベルを上昇または増加させ、グルカゴンレベルを低下または減少させるための方法であって、式
−ペプチド−Z
[式中、該ペプチドはアミノ酸配列X−X−X−X−X−X−X−X−X−X10−X11−X12−X13−X14−X15−X16−X17−X18−X19−X20−X21−X22−X23−X24−X25(配列番号27)を有し、ここで、アミノ酸1〜17は任意のアミノ酸であるか又は存在せず、アミノ酸X18は存在しないか、またはY、W、F、デス−アミノ酸もしくはアシル基であり、アミノ酸X19はA、W、Y、Fまたは脂肪族アミノ酸であり、アミノ酸X20は存在しないか、またはL、G、サルコシン(Sar)、D−Leu、NMe−Leu、D−AlaもしくはAであり、アミノ酸X21はF、NMe−Phe、脂肪族アミノ酸、芳香族アミノ酸、AまたはWであり、X22はR、K、AまたはLであり、アミノ酸X23はP、Sar、AまたはLであり、アミノ酸X24はR、HargまたはKであり、アミノ酸X25はN、任意のD−もしくはL−アミノ酸、NleまたはD−Nle、Aであり、Zは、場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、N末端アミノ基に結合しており、Zは、NH、または場合によって存在する保護基であり、これは、存在する場合には、C末端カルボキシ基に結合している]を有するニューロメジンU受容体アゴニストおよびその医薬上許容される塩を含む組成物を該個体に投与することを含む方法。
【請求項18】
該組成物が更に、1以上のジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)インヒビターおよびその医薬上許容される塩を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該DPP−IVインヒビターがイソロイシンチアゾリジド、バリンピロリジド、シタグリプチン(sitagliptin)、サキサグリプチン(saxagliptin)、NVP−DPP728、LAF237(ビルダグリプチン(vildagliptin))、P93/01、TSL 225、TMC−2A/2B/2C、FE 999011、P9310/K364、VIP 0177、SDZ 274−444、GSK 823093、E 3024、SYR 322、TS021、SSR 162369、GRC 8200、K579、NN7201、CR 14023、PHX 1004、PHX 1149、PT−630またはSK−0403である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
栄養的に有効な量の栄養の1以上またはそれらのいずれかの組合せと1以上のニューロメジンU受容体アゴニストとを、栄養の代謝の増強を要する非糖尿病患者に非経口経路により投与することを含む、栄養の代謝を増強するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−507558(P2012−507558A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534789(P2011−534789)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/062660
【国際公開番号】WO2010/053830
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(390023526)メルク・シャープ・エンド・ドーム・コーポレイション (924)
【Fターム(参考)】