説明

ニューロン生存因子およびその使用

本発明は、神経変性疾病の検出および処置のための方法および組成物に関する。特に、本発明は、ニューロン変性を防御することができるポリペプチド、このようなポリペプチドをコードする核酸分子、および前記ポリペプチドを認識する抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、神経変性疾病の検出および処置のための方法および組成物に関する。特に、本発明は、ニューロンの変性を防御することができるポリペプチド、このようなポリペプチドをコードする核酸分子、および前記ポリペプチドを認識する抗体に関する。
【0002】
発明の背景
神経変性疾患は、ニューロンの変性によって特徴付けられる種々の重度に衰弱性の容態を包含する。
【0003】
このような神経変性疾患の一例として、色素性網膜炎(RP)は、桿体および錐体の光受容体に相当するニューロン集団の一連の変性によって特徴付けられる、遺伝子的に異種の網膜変性である。
【0004】
光受容体は、視覚に関与する網膜ニューロンの特殊化したサブセットである。光受容体は、網膜の光感受性細胞である桿体および錐体からなる。各々の桿体および錐体は、外節と呼ばれる、光伝達機構を備える特殊化した繊毛を産生する。桿体は、特異的な光を吸収する視色素であるロドプシンを含む。ヒトには3つのクラスの錐体が存在し、これらは異なる視色素(青錐体色素、緑錐体色素および赤錐体色素)の発現によって特徴付けられる。視色素タンパク質の各々のタイプは、異なる波長の光を最大限に吸収するように調整されている。桿体ロドプシンは、暗所視(薄暗い光における)に関与し、一方、錐体色素は明所視(明るい光における)に関与する。赤色、青色および緑色の色素はまた、ヒトにおける色覚の基礎を形成する。桿体および錐体における視色素は光に応答し、そして出力細胞である桿体双極ニューロンにおいて活動電位を発生させ、その後、これは網膜神経節のニューロンによって伝えられて、視覚野において視覚刺激をもたらす。
【0005】
ヒトにおいて、網膜のいくつかの疾病が、光受容体の進行性の変性、および無情にも盲目につながる最終的な光受容体の死滅に関与する。遺伝性網膜ジストロフィー(例えば網膜変性疾患)、加齢黄斑変性症および他の黄斑症または網膜剥離などによる、光受容体の変性は全て、光受容体外節の進行性萎縮および機能低下によって特徴付けられる。さらに、光受容体の死滅または光受容体の機能低下の結果、網膜ジストロフィー患者において二次網膜ニューロン(桿体双極細胞および水平細胞)の部分的分化が生じ、これにより光受容体が発生する電気信号の伝播の全体的な効率が低下する。光受容体変性に続発するグリア細胞および色素上皮の二次的な変化により、血管に変化が生じ、虚血およびグリオーシスに至る。
【0006】
細胞死から光受容体を救出することができ、そして/または機能障害(萎縮性またはジストロフィー性の)の光受容体の機能を回復することができる栄養因子は、このような容態の処置のための有用な治療法を示し得る。例えば、文書WO 02081513は、網膜変性疾患の処置のための桿体由来の錐体生存因子1および2(RdCVF1およびRdCVF2)の使用を記載している。チオレドキシン様6(Txnl6)さらに最近ではヌクレオレドキシン様(Nxnl1)とも呼ばれるRdCVF遺伝子は、チオレドキシンスーパーファミリーに対して限定的な類似性を有し、そして錐体光受容体に対して栄養活性を示す、Q8VC33ユニプロットタンパク質をコードする(LEVEILLARD et al., Nat. Genet. vol. 36(7), p:755-759, 2004)。
【0007】
しかしながら、変性疾患、特に網膜変性疾患の処置および診断を高める、ニューロン、特に錐体光受容体の栄養因子を同定する必要が依然としてある。
【0008】
発明の要約:
本発明者らは、今回、国際特許出願WO02081513に記載のRdCVF2ポリペプチドの新たなアイソフォーム(「RdCVF2v」と命名)を同定した。
【0009】
本発明は、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する)、および
b)配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する)、および
c)配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は、配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する)
を含むポリペプチドまたはそのフラグメントに関し、前記のそのフラグメントは、配列番号2に示されるアミノ酸配列、または配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するその変異体を含み、前記のそのフラグメントはニューロン救出活性を示す。
【0010】
本発明はまた、前記ポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする単離核酸分子にも関する。
【0011】
本発明はまた、神経変性疾患の処置にも関する。
【0012】
発明の詳細な説明
定義:
本明細書において使用する「RdCVF2」という用語は、桿体由来の錐体生存因子2の任意のアイソフォームを指す。
【0013】
本明細書において使用する「RdCVF2v」という用語は、配列番号4:
【0014】
【表1】


に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを指す。
【0015】
配列番号4は、N末端からC末端の順に、以下の配列:
− WO 02081513に記載のRdCVF2の長鎖および短鎖のアイソフォームの両方に対して共通であるアミノ酸配列:
【表2】


− この変異体アイソフォームに対して特有のアミノ酸配列:
【表3】


− RdCVF2の長鎖アイソフォームには存在するが短鎖アイソフォームには存在しないアミノ酸配列:
【表4】


の中にある。
【0016】
本明細書において使用する「本発明のポリペプチド」という用語は、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する)および
b)配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する)および
c)配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する)
を含むポリペプチドまたはそのフラグメントを指し、前記のそのフラグメントは、配列番号2に示されるアミノ酸配列または配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するその変異体を含み、そして前記のそのフラグメントはニューロン救出活性を示す。
【0017】
本明細書において使用する「本発明のポリペプチドに選択的に結合する化合物」という表現は、本発明のポリペプチドに結合するが、RdCVFの他のアイソフォームには結合しない、抗体またはアプタマーなどの化合物を指す。別の言葉で言えば、本発明のポリペプチドに選択的に結合する化合物は、少なくとも部分的には、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体に結合する。
【0018】
本明細書において使用する「本発明の核酸分子」という用語は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を指す。
【0019】
本明細書において使用する「対立遺伝子変異体」という用語は、所与の遺伝子座に存在するヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。本明細書において使用する「遺伝子」および「組換え遺伝子」という用語は、本発明のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含む核酸分子を指す。
【0020】
本明細書において使用する「ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする」という用語は、互いに少なくとも60%(65%、70%、好ましくは75%)同一であるヌクレオチド配列が典型的には互いにハイブリダイゼーションした状態で留まるハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明することを意図する。このようなストリンジェントな条件は当業者には公知であり、そしてCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に見出すことができる。1つの非制限的な例において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)で約45℃におけるハイブリダイゼーション、次いで0.1×SSC、0.2%SDS中の約68℃における1回以上の洗浄である。好ましい非制限的な例において、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、6×SSC中の約45℃におけるハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中の50〜65℃における1回以上の洗浄(すなわち、50℃、55℃、60℃または65℃での1回以上の洗浄)である。好ましくは、ストリンジェントな条件下で配列番号5の配列またはその相補体にハイブリダイゼーションする本発明の単離核酸分子は、天然に存在する核酸分子に相当する。
【0021】
「配列番号2をコードする核酸分子に選択的にハイブリダイゼーションする核酸分子」という表現は、ストリンジェントな条件下で、配列番号2をコードする核酸配列または配列番号2に対して少なくとも90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性を有するその変異体を含む核酸にハイブリダイゼーションする核酸を指す。
【0022】
本明細書において使用する「天然に存在する」核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド配列を有する(例えば天然タンパク質をコードする)RNA分子またはDNA分子を指す。
【0023】
「精製された」および「単離された」とは、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列を指す場合、指定の分子が、同じタイプの他の生体高分子の実質的な非存在下において存在することを意味する。本明細書において使用する「精製された」という用語は好ましくは、少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%の同じタイプの生体高分子が存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、対象のポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指すが;しかしながら、前記分子は、前記組成物の基本的特徴に悪影響を及ぼさないいくつかの追加の塩基または部分を含んでもよい。
【0024】
2つのアミノ酸配列または核酸配列は、前記アミノ酸配列または核酸配列の85%超、好ましくは90%超が同一である場合、あるいは約90%超、好ましくは95%超が類似する(機能的に同一である)場合、「実質的に相同」または「実質的に類似」する。2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一率を決定するために、配列を最適に比較するためにアラインメントさせる(例えば、ギャップを第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列に導入して、第2のアミノ酸配列または核酸配列と最適にアラインメントさせることができる)。次いで、対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、その分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一率は、配列によって共有される同一位置の数の関数である。1つの実施態様において、2つの配列は同じ長さである。2つの配列間の同一率の決定を、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。好ましくは、類似配列または相同配列を、例えばGCG(Genetics Computer Group、GCGパッケージのためのプログラムマニュアル、Version 7,、Madison、Wisconsin)パイルアッププログラム、またはBLSAT、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのいずれかを使用するアラインメントによって同定する。
【0025】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有し、そして本発明において区別なく使用する。抗体は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子(すなわち、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子)の免疫学的に活性な部分を指す。従って、抗体という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗体フラグメント並びに抗体および抗体フラグメントの変異体(誘導体を含む)も包含する。天然の抗体においては、2本の重鎖は互いにジスルフィド結合によって連結され、そして各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。ラムダ(λ)およびカッパ(κ)という2つのタイプの軽鎖が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖のクラス(またはアイソタイプ)、すなわち、IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各鎖は、異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VL)および定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち1つの可変ドメイン(VH)および3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3、まとめてCHと称する)を含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域が、抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインが、抗体鎖の会合、分泌、胎盤を通過する移動、補体結合、およびFcレセプター(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、そして1本の軽鎖の可変部分および1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原性決定基との間の構造的相補性から生じる。抗体結合部位は、主として超可変領域または相補性決定領域(CDR)に由来する残基から構成されている。時折、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)に由来する残基が全体的なドメイン構造に影響を及ぼし、従って結合部位に影響を及ぼす。相補性決定領域(CDR)は、ネイティブな免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖の各々が、それぞれL−CDR1、L−CDR2、L−CDR3およびH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3と称される3つのCDRを有する。それ故、抗原結合部位は、重鎖V領域および軽鎖V領域の各々からのCDRセットを含む6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、Kabat, et al (Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)によって定義されたような、CDR間に挿入されたアミノ酸配列、すなわち、単一の種における種々の免疫グロブリン間で比較的保存されている免疫グロブリン軽鎖可変領域および重鎖可変領域の部分を指す。本明細書において使用する「ヒトフレームワーク領域」は、天然に存在するヒト抗体のフレームワーク領域に実質的に同一(約85%以上、特に90%、95%または100%)なフレームワーク領域である。
【0026】
本明細書において使用する「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、特定の抗原に対して作られ、そしてB細胞もしくはハイブリドーマの単一クローンによって産生される、単一アミノ酸組成の抗体分子を指す。
【0027】
「キメラ抗体」という用語は、別の抗体、特にヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインと会合している、非ヒト動物に由来する抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む、遺伝子工学的に作製された抗体を指す。非ヒト動物として、任意の動物、例えばマウス、ラット、ハムスター、ウサギなどを使用することができる。
【0028】
「ヒト化抗体」という用語は、フレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が、改変されて、親の免疫グロブリンのCDRと比較して、異なる特異性のドナー免疫グロブリンからのCDRを含んでいる抗体を指す。好ましい実施態様において、マウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域に移植して、「ヒト化抗体」を作製する。
【0029】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、抗体フラグメントから形成されたダイアボディおよび多重特異的抗体が挙げられる。
【0030】
本明細書において使用する「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、異種ポリペプチド(すなわち、本発明の同じポリペプチド以外のポリペプチド)に作動可能に連結された本発明のポリペプチドの全てまたは一部(好ましくは生物学的に活性な)を含む。融合タンパク質内で、「作動可能に連結された」という用語は、本発明のポリペプチドおよび異種ポリペプチドが、インフレームで互いに融合していることを示すことを意図する。異種ポリペプチドを、本発明のポリペプチドのN末端またはC末端に融合させることができる。
【0031】
「ニューロン」という用語は、情報を処理および伝達することができる神経系における電気的に興奮可能な細胞を指す。典型的には、本発明によるニューロンは、脊椎動物ニューロン、好ましくは哺乳動物ニューロン、さらにより好ましくはヒトニューロンである。ニューロンという用語は、脳ニューロン(例えば、双極−偽単極−多極−錐体−プルキンエ−顆粒−皮質など)、光受容体、および嗅覚感受性ニューロンを含むがそれらに限定されない。
【0032】
「ニューロン救出活性」という表現は、ニューロンの生存を維持する本発明のポリペプチドの能力を指す。典型的には、ポリペプチドのニューロン救出活性を示す能力を評価するために、当業者は、ニューロン(例えばプルキンエ細胞、皮質ニューロン、光受容体、嗅覚感受性ニューロンなど)を、評価しようとするポリペプチドを発現する細胞に由来する馴化培地と共にインキュベートし、続いて、生存ニューロンの数を評価することができる。典型的には、ポリペプチドが以下の実施例に記載した以下のアッセイの少なくとも1つにおいて生存ニューロンの数を増加させるならば、前記ポリペプチドはニューロン救出活性を示すと想定される:錐体救出活性、嗅覚感受性ニューロン救出活性、プルキンエ細胞救出活性および皮質ニューロン救出活性。
【0033】
本発明の脈絡において、本明細書において使用する「処置する」または「処置」という用語は、このような用語を適用する疾患もしくは容態またはこのような疾患もしくは容態(例えば神経変性疾患)の1つ以上の症状の進行を改善させる、軽減する、阻止する、あるいは疾患もしくは容態またはこのような疾患もしくは容態の1つ以上の症状を予防することを意味する。
【0034】
本明細書において使用する「神経変性疾患」という表現は、ニューロンの変性に関連した疾病、例えば中枢神経系の変性疾患、網膜変性疾患、または嗅覚ニューロンの変性疾患を指す。典型的には、本発明による神経変性疾患としては、アルコール依存症、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症、血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病としても知られる)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ハンチントン病、HIV関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、レビー小体型認知症、マシャド・ジョセフ病(3型脊髄小脳失調症)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリツェウス・メルツバッヘル病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、進行性核上性麻痺、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する脊髄の亜急性連合変性症、シュピールマイアー・フォークト・シェーグレン・バッテン病(バッテン病としても知られる)、脊髄小脳失調症(様々な特徴を有する多くのタイプ)、脊髄性筋委縮症、スティール・リチャードソン・オルゼウスキー病、脊髄ろうおよび網膜変性疾患が挙げられるがそれらに限定されない。
【0035】
「網膜変性疾患」という用語は、錐体の変性に関連する全ての疾病を包含する。網膜変性疾患としては、色素性網膜炎、加齢黄斑変性症、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コーンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜欠如、脳回転状萎縮症、レーバー先天黒内障、レフサム病、シュタルガルト病またはアッシャー症候群が挙げられるがそれらに限定されない。
【0036】
本発明によると、「患者」または「それを必要とする患者」という用語は、網膜変性疾患に罹患または罹患する可能性があるヒトまたは非ヒト哺乳動物を意図する。
【0037】
「生物学的試料」という用語は、患者に由来する任意の生物学的試料を意味する。このような試料の例としては、体液、組織、細胞試料、臓器、生検などが挙げられる。好ましい生物学的試料は全血、血清または血漿である。
【0038】
本発明のポリペプチド:
本発明の1つの態様は、
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する)および
b)配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する)および
c)配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体(前記変異体は配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する)
を含むポリペプチドまたはそのフラグメントに関し、前記のそのフラグメントは、配列番号2に示されるアミノ酸配列または配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するその変異体を含み、前記のそのフラグメントはニューロン救出活性を示す。
【0039】
1つの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも91%、好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性を有する。
【0040】
1つの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体は、配列番号2に対して少なくとも91%、好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性を有する。
【0041】
1つの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3の変異体を含み、前記変異体は、それぞれ、配列番号1、配列番号2および配列番号3に対して少なくとも91%、好ましくは92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の同一性を有し、各々の数値は独立して選択される。
【0042】
本発明の1つの態様によると、本発明のポリペプチドは、500アミノ酸、好ましくは400アミノ酸、好ましくは350、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、20、198アミノ酸を超えない長さを有する。
【0043】
本発明の1つの態様によると、本発明のポリペプチドは、150、好ましくは145、さらにより好ましくは143アミノ酸を超えない長さを有する。
【0044】
本発明のポリペプチドは、配列番号1、配列番号2および配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体を任意の順番で含むポリペプチドを包含する。好ましい実施態様において、本発明は、前記したポリペプチドまたはそのフラグメントに関し、配列番号1に示される前記アミノ酸配列またはその変異体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体のN末端に位置し、配列番号2に示される前記アミノ酸配列またはその変異体は、配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体のN末端に位置する。
【0045】
特定の実施態様において、本発明は、前記したポリペプチドまたはそのフラグメントに関し、前記ポリペプチドまたはそのフラグメントは、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性を有し、前記ポリペプチドまたはそのフラグメントは、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0046】
典型的には、本発明のポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列(RdCVF2v)からなり得る。
【0047】
典型的には、本発明のポリペプチドは、ニューロン救出活性を示す。
【0048】
1つの実施態様において、ネイティブなポリペプチドを、標準的なタンパク質精製技法を使用する適切な精製スキームによって細胞源または組織源から単離することができる。別の実施態様において、本発明のポリペプチドは、組換えDNA技法によって産生される。組換え発現に代わる方法として、本発明のポリペプチドを標準的なペプチド合成技法を使用して化学的に合成することもできる。
【0049】
本発明はまたキメラタンパク質または融合タンパク質も提供する。1つの有用な融合タンパク質は、本発明のポリペプチドがGST配列のC末端に融合されたGST融合タンパク質である。このような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易にすることができる。
【0050】
別の実施態様において、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含む。例えば、本発明のポリペプチドのネイティブなシグナル配列を除去し、そして別のタンパク質に由来するシグナル配列で置き換えることができる。例えば、バキュロウイルスエンベロープタンパク質のgp67分泌配列を異種シグナル配列として使用することができる(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, 1992)。真核生物の異種シグナル配列の他の例としては、メリチンの分泌配列およびヒト胎盤性アルカリホスファターゼの分泌配列(Stratagene; La Jolla, Calif.)が挙げられる。さらに別の例において、有用な原核生物の異種シグナル配列としては、phoA分泌シグナル(Sambrook et al.、前記)およびプロテインA分泌シグナル(Pharmacia Biotech; Piscataway, N.J.)が挙げられる。
【0051】
本発明のキメラタンパク質および融合タンパク質を、標準的な組換えDNA技法によって作製することができる。別の実施態様において、融合遺伝子を、自動DNA合成機などに用いた従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子フラグメントのPCR増幅をアンカープライマーを使用して行なうことができ、これは、2つの連続した遺伝子フラグメント間に相補的なオーバーハングを生じさせ、これを続いてアニーリングし、そして再増幅するとキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えばAusubel et al.、前記を参照されたい)。さらに、融合部分(例えばGSTポリペプチド)をすでにコードしている多くの発現ベクターが市販されている。融合部分が本発明のポリペプチドにインフレームで連結されるように、本発明のポリペプチドをコードする核酸を、このような発現ベクター中にクローニングすることができる。
【0052】
シグナル配列を使用して、対象の分泌タンパク質または他のタンパク質の分泌および単離を容易にすることができる。シグナル配列は典型的には、1つ以上の切断における分泌の間に成熟タンパク質から一般的に切断される疎水性アミノ酸のコアによって特徴付けられる。このようなシグナルペプチドは、成熟タンパク質が分泌経路を通過する際に、成熟タンパク質からのシグナル配列の切断を可能とするプロセシング部位を含む。従って、本発明は、シグナル配列を有する記載のポリペプチド、並びにシグナル配列それ自体およびシグナル配列が存在しないポリペプチド(すなわち切断産物)に関する。1つの実施態様において、本発明のシグナル配列をコードする核酸配列を、発現ベクターにおいて、対象のタンパク質、例えば通常は分泌されないかまたはさもなければ単離するのが難しいタンパク質に作動可能に連結させることができる。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換されている真核生物の宿主などからのタンパク質の分泌を指令し、そしてシグナル配列はその後または同時に切断される。次いで、タンパク質を、当技術分野において認めらている方法によって細胞外培地から容易に精製することができる。あるいは、シグナル配列を、精製を容易にする配列、例えばGSTドメインを使用して対象のタンパク質に連結させることができる。
【0053】
典型的には、本発明による変異体を、突然変異誘発、例えば個別の点突然変異または切断短縮によって生成することができる。
【0054】
本発明のポリペプチドは、グリコシル化(例えばN結合またはO結合グリコシル化)、ミリスチル化、パルミチル化、アセチル化およびリン酸化(例えばセリン/トレオニンまたはチロシン)を含むがそれらに限定されない、翻訳後修飾を示すことができる。
【0055】
本発明のポリペプチドを、任意の化学的、生物学的、遺伝子学的または酵素的技法などのそれらに限定されるわけではない当技術分野においてそれ自体公知の任意の技法(単独でまたは組合せて)によって作製し得る。
【0056】
所望の配列のアミノ酸配列が分かっていれば、当業者は、容易に、ポリペプチドの作製のための標準的な技法によって、前記ポリペプチドを作製することができる。例えば、それらを、周知の固相法を使用して、好ましくは市販されているペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems, Foster City, Californiaによって製造されたもの)を使用して、製造業者の使用説明書に従って合成することができる。
【0057】
あるいは、本発明のポリペプチドを、当技術分野において現在では周知であるような組換えDNA技法によって合成することができる。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNA配列を発現ベクター中に組み込み、そして所望のポリペプチドを発現するであろう適切な真核生物または原核生物の宿主中にこのようなベクターを導入した後、これらのフラグメントをDNA発現産物として得ることができ、それから後に周知の技法を使用して所望のポリペプチドを単離することができる。
【0058】
本発明のポリペプチドは、単離(例えば精製)形態で使用しても、または例えば膜小胞もしくは脂質小胞(例えばリポソーム)などのベクターに含めてもよい。
【0059】
本発明の核酸分子:
本発明の1つの態様は、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子、並びに、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用するに十分な核酸分子、および核酸分子の増幅または突然変異のためのPCRプライマーとして使用するに適したこのような核酸分子のフラグメントに関する。
【0060】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする単離核酸分子に関する。
【0061】
特定の実施態様において、本発明は、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を有する単離核酸分子に関する。
【0062】
本発明の核酸分子を、標準的な分子生物学技法および本明細書において提供された配列情報を使用して単離することができる。ハイブリダイゼーションプローブとして本発明の核酸配列の全部または一部を使用して、本発明の核酸分子を、標準的なハイブリダイゼーション技法およびクローニング技法(例えば、Sambrook et al., eds., MolecularCloning : A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載のような)を使用して単離することができる。
【0063】
本発明の核酸分子を、標準に従って、鋳型としてのcDNA、mRNAまたはゲノムDNA、および適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅することができる。
【0064】
このように増幅した核酸を、適切なベクターにクローニングし、そしてDNA配列分析によって特徴付けることができる。さらに、本発明の核酸分子の全部または一部に相当するオリゴヌクレオチドを、標準的な合成技法によって、例えば自動DNA合成機を使用して作製することができる。
【0065】
別の好ましい実施態様において、本発明の単離核酸分子は、配列番号5のヌクレオチド配列の相補体である核酸分子を含む。所与のヌクレオチド配列に対して相補的な核酸分子は、所与のヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションし、これにより安定な二本鎖を形成することができる程に所与のヌクレオチド配列に対して十分に相補的である核酸分子である。
【0066】
さらに、本発明の核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列の一部のみ、例えば、プローブもしくはプライマーとして使用することができるフラグメント、または本発明のポリペプチドの生物学的に活性な部分をコードするフラグメントを含むことができる。1つの遺伝子のクローニングから決定されたヌクレオチド配列は、例えば他の組織に由来する他の細胞型における相同体、並びに他の哺乳動物に由来する相同体の同定および/またはクローニングに使用するために設計されるプローブおよびプライマーの生成を可能とする。プローブ/プライマーは典型的には、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドを含む。
【0067】
1つの実施態様において、オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、配列番号5のセンス配列またはアンチセンス配列の少なくとも約12、好ましくは約25、より好ましくは約50の連続したヌクレオチドにハイブリダイゼーションするヌクレオチド配列領域を含む。
【0068】
本発明の核酸分子の配列に基づいたプローブを使用して、選択された核酸分子によってコードされるものと同じタンパク質分子をコードする転写物またはゲノム配列を検出することができる。プローブは、それに付着した標識基、例えば放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補因子を含む。例えば、被験体由来の細胞の試料中におけるタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することによって、例えばmRNAレベルを検出することによって、またはタンパク質をコードする遺伝子が突然変異したかもしくは欠失しているかどうかを決定することによって、タンパク質を発現するまたは発現しない細胞または組織を同定するための診断試験キットの一部として、このようなプローブを使用することができる。
【0069】
本発明はさらに、遺伝子コードの縮重に因り配列番号5のヌクレオチド配列とは異なるが、配列番号5のヌクレオチド配列によってコードされるものと同じタンパク質をコードする核酸分子も包含する。
【0070】
配列番号5のヌクレオチド配列に加えて、アミノ酸配列の変化に至るDNA配列の多型が、1つの集団内に存在し得ることが当業者によって理解されるだろう。このような遺伝子多型は、天然の対立遺伝子の変異に因り1つの集団内の個体間に存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座において二者択一的に存在する一群の遺伝子の1つである。このような天然の対立遺伝子変異は典型的には、所与の遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%の相違をもたらし得る。いくつかの異なる個体において対象の遺伝子をシークエンスすることによって代替的な対立遺伝子を同定することができる。これは、ハイブリダイゼーションプローブを使用して、種々の個体における同じ遺伝子座を同定することによって容易に行なうことができる。天然の対立遺伝子の変異の結果でありそして機能的活性を変化させない、任意および全てのこのようなヌクレオチド変異並びに結果として生じたアミノ酸の多型または変異も、本発明の範囲内であることを意図する。
【0071】
1つの実施態様において、網膜変性疾患に関連する多型を、前記疾病または疾患を診断するためのマーカーとして使用する。
【0072】
さらに、本明細書において記載したラットタンパク質のヌクレオチド配列とは異なるヌクレオチド配列を有する、他の種に由来する本発明のタンパク質をコードする核酸分子(相同体)も、本発明の範囲内であることを意図する。
【0073】
本発明のcDNAの天然の対立遺伝子変異体および相同体に対応する核酸分子を、本明細書において開示したヒト核酸分子に対する同一性に基づいて、ハイブリダイゼーションプローブとしてヒトcDNAまたはその一部を使用して、標準的なハイブリダイゼーション技法に従って、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で単離することができる。
【0074】
従って、別の実施態様において、本発明の単離核酸分子は、少なくとも100、200、300、400または500の連続したヌクレオチド長であり、そしてストリンジェントな条件下で、配列番号5のヌクレオチド配列、好ましくはコード配列またはその相補体を含む核酸分子にハイブリダイゼーションする。
【0075】
集団内に存在し得る本発明の配列の核酸分子の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、変化を突然変異によって導入し、これによりコードされるタンパク質の生物学的活性を変化させることなく、前記タンパク質のアミノ酸配列を変化させることができることを当業者はさらに理解しているだろう。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸が置換されるようなヌクレオチド置換を行うことができる。「非必須」アミノ酸残基は、生物学的活性を変化させることなく野生型配列から変化させることのできる残基であり、一方、「必須」アミノ酸残基は生物学的活性に必要とされる。例えば、様々な種の相同体の間で保存されていないかまたは半分しか保存されていないアミノ酸残基は、活性にとって非必須であり得、よって改変のためのターゲットとなる可能性が高いだろう。あるいは、様々な種(例えばマウスおよびヒト)の相同体の間で保存されているアミノ酸残基は、活性にとって必須であり得、よって改変のためのターゲットとはならない可能性が高いだろう。
【0076】
突然変異を、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの標準的な技法によって導入することができる。好ましくは、保存的アミノ酸置換は、1つ以上の予測される非必須アミノ酸残基において行なわれる。
【0077】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。あるいは、突然変異を、コード配列の全部または一部に沿って無作為に、例えば飽和突然変異誘発によって導入することができ、そして得られた突然変異体を、生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することもできる。
【0078】
突然変異誘発後、コードされるタンパク質を組換え発現させることができ、そして前記タンパク質の活性を決定することができる。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明の変異体である突然変異体ポリペプチドを、ニューロン救出活性を示す能力についてアッセイすることができる。
【0080】
本発明は、アンチセンス核酸分子、すなわち、本発明のポリペプチドをコードするセンス核酸に対して相補的な分子、例えば二本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補的な分子、またはmRNA配列に対して相補的な分子を包含する。アンチセンス核酸は、全コード鎖またはその一部にのみ、例えばタンパク質コード領域(またはオープンリーディングフレーム)の全部または一部に対して相補的であり得る。アンチセンス核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード鎖の非コード領域の全部または一部に対してアンチセンスであってもよい。非コード領域(「5’および3’非翻訳領域」)は、コード領域にフランキングしそしてアミノ酸に翻訳されない5’および3’配列である。
【0081】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45または50以上のヌクレオチド長であり得る。本発明のアンチセンス核酸を、化学合成および酵素的ライゲーション反応を使用して当技術分野において公知の手順を使用して構築することができる。例えば、アンチセンス核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド)を、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を向上させるように、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を向上させるように設計された種々の修飾ヌクレオチドを使用して化学的に合成することができ、例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチドを使用することができる。アンチセンス核酸の生成に使用することのできる修飾ヌクレオチドの例としては、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4−アセチルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β−D−ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−アデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボキシメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸(v)、5−メチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−N−2−カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。あるいは、アンチセンス核酸を、核酸がアンチセンス方向でサブクローニングされている発現ベクターを使用して生物学的に作製することができる(すなわち、挿入された核酸から転写されるRNAは、対象のターゲット核酸に対してアンチセンス方向である、以下のサブセクションにおいてさらに記載)。
【0082】
組換え発現ベクターおよび宿主細胞:
本発明の別の態様は、本発明のポリペプチド(またはその一部)をコードする核酸を含む、ベクター、好ましくは発現ベクターに関する。
【0083】
本明細書において使用する「ベクター」という用語は、連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。1つのタイプのベクターが「プラスミド」であり、これはその中に追加のDNAセグメントをライゲーションすることのできる環状の二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲーションすることができる。特定のベクターは、それらが導入された宿主細胞中において自律的に複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ、これにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターである発現ベクターは、作動可能に連結された遺伝子の発現を指令することができる。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、しばしばプラスミド(ベクター)の形態である。しかしながら、本発明は、等価な機能を果たす、ウイルスベクター(例えば複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などのこのような他の形態の発現ベクターも含むことを意図する。
【0084】
本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞において核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含む。このことは、組換え発現ベクターが、発現のために使用しようとする宿主細胞に基づいて選択された1つ以上の調節配列を含むことを意味し、こうした調節配列は、発現しようとする核酸配列に作動可能に連結されている。組換え発現ベクター内に、「作動可能に連結された」は、対象のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現(例えば、in vitroでの転写/翻訳系において、またはベクターを宿主細胞に導入する場合には宿主細胞において)を可能とする様式で調節配列(群)に連結されていることを意味することを意図する。
【0085】
「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。調節配列は、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの、および特定の宿主細胞においてのみヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換しようとする宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどの因子に依存し得ることとが当業者によって理解される。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入し、これにより本明細書において記載した核酸によってコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含む、タンパク質またはペプチドを作製することができる。
【0086】
本発明の組換え発現ベクターを、原核細胞(例えばE.coli)または真核細胞(例えば(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞)における本発明のポリペプチドの発現のために設計することができる。適切な宿主細胞は、Goeddel、前記においてさらに考察されている。あるいは、組換え発現ベクターを、in vitroにおいて、例えばT7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して転写および翻訳することもできる。
【0087】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指令する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターを用いてE.coliにおいて行なわれることが最も多い。融合ベクターは、いくつかのアミノ酸を、ここにコードされるタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に付加する。このような融合ベクターは典型的には3つの目的を果たす:1)組換えタンパク質の発現を増加させる;2)組換えタンパク質の可溶性を増加させる;および3)アフィニティ精製においてリガンドとして作用することによって組換えタンパク質の精製を補助する。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性切断部位が、融合部分と組換えタンパク質との接合部に導入され、これにより、融合タンパク質の精製に続き、融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能となる。このような酵素、およびそれらの同族認識配列としては、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。典型的な融合発現ベクターとしては、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAをターゲットの組換えタンパク質に融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson (1988) Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, N.J.)が挙げられる。
【0088】
適切な誘導性の非融合E.coli発現ベクターの例としては、pTrc(Amann et al., (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studier et al., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 60-89)が挙げられる。pTrcベクターからのターゲット遺伝子の発現は、宿主RNAポリメラーゼによるハイブリッドtrp−lac融合プロモーターからの転写に依拠する。pET Idベクターからのターゲット遺伝子の発現は、同時発現されるウイルスRNAポリメラーゼ(T7gn1)によって媒介されるT7gn10−lac融合プロモーターからの転写に依拠する。このウイルスポリメラーゼは、宿主株のBL21(DE3)またはHMS174(DE3)によって、lacUV5プロモーターの転写制御下にあるT7gn1遺伝子を有する常在性プロファージから供給される。
【0089】
E.coliにおける組換えタンパク質の発現を最大にするための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれた宿主細菌において前記タンパク質を発現させることである(Gottesman, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990) 119-128)。別の戦略は、発現ベクターに挿入しようとする核酸の核酸配列を、各アミノ酸に対する個々のコドンがE.coliにおいて優先的に使用されるものとなるように改変させることである(Wada et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20:2111-2118)。本発明の核酸配列のこのような改変を、標準的なDNA合成技法によって行なうことができる。
【0090】
別の実施態様において、発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母S.cerivisaeにおける発現のためのベクターの例としては、pYepSec1(Baldari et al. (1987) EMBO J. 6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultz et al. (1987) Gene 54:113-123)、pYES2(Invitrogen Corporation, San Diego, Calif.)、およびpPicZ(Invitrogen Corp, San Diego, Calif.)が挙げられる。
【0091】
あるいは、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)におけるタンパク質の発現のために利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklow and Summers (1989) Virology 170:31-39)が挙げられる。
【0092】
さらに別の実施態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞において発現される。哺乳動物発現ベクターの例としてはpCDM8(Seed (1987) Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195)が挙げられる。哺乳動物細胞において使用する場合、発現ベクターの制御機能は、ウイルス調節エレメントによってもたらされることが多い。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40に由来する。原核細胞および真核細胞の両方のための他の適切な発現系については、Sambrook et al.、前記の第16章および第17章を参照されたい。
【0093】
別の実施態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指令することができる(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して核酸を発現させる)。ニューロン特異的調節エレメントは当技術分野において公知である(例えばニューロフィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477)。
【0094】
本発明は、アンチセンス方向で発現ベクターにクローニングされた本発明のDNA分子を含む組換え発現ベクターもさらに提供する。すなわち、本発明のポリペプチドをコードするmRNAに対してアンチセンスであるRNA分子の発現(DNA分子の転写による)を可能とする様式で、DNA分子が調節配列に作動可能に連結されている。種々の細胞型においてアンチセンスRNA分子の連続的な発現を指令する、アンチセンス方向でクローニングされた核酸に作動可能に連結された調節配列、例えばウイルスプロモーターおよび/またはエンハンサーを選択しても、あるいは、アンチセンスRNAの構成的、組織特異的または細胞型特異的な発現を指令する調節配列を選択してもよい。アンチセンス発現ベクターは、アンチセンス核酸が高効率の調節領域の制御下で産生される組換えプラスミド、ファージミドまたは弱毒化ウイルスの形態をとることができ、それらの活性は、ベクターが導入される細胞型によって決定され得る。アンチセンス遺伝子を使用する遺伝子発現の調節の考察については、Weintraub et al. (Reviews-Trends in Genetics, Vol. 1(1) 1986)を参照されたい。
【0095】
本発明の別の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。
【0096】
「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書において互換的に使用される。このような用語は、特定の対象の細胞だけでなく、このような細胞の子孫または潜在的な子孫も指すことを理解されたい。突然変異または環境の影響に因り後代に特定の改変が発生する可能性があるので、このような子孫は、実際には、親細胞と同一ではない可能性があるが、依然として本明細書において使用する用語の範囲内に含められる。
【0097】
宿主細胞は、任意の原核細胞(例えばE.coli)または真核細胞(例えば昆虫細胞、酵母、または哺乳動物細胞)であり得る。
【0098】
ベクターDNAを、慣用的な形質転換技法またはトランスフェクション技法を介して原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書において使用する「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈降、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、または電気穿孔法などの宿主細胞への外来核酸の導入のための多種多様な当技術分野において認められている技法を指すことを意図する。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法を、Sambrook, et al.(前記)および他の実験マニュアルにおいて見出すことができる。
【0099】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのためには、使用する発現ベクターおよびトランスフェクション技法にも依存するが、ほんの僅かな細胞のみが、そのゲノム中に外来DNAを組み込むことができることが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、選択マーカー(例えば抗生物質耐性のための)をコードする遺伝子が、一般に、対象の遺伝子と共に宿主細胞に導入される。好ましい選択マーカーとしては、薬物に対して耐性を付与するもの、例えばG418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートが挙げられる。導入核酸で安定にトランスフェクションされた細胞を、薬物による選択によって同定することができる(例えば、選択マーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、その他の細胞は死滅する)。
【0100】
別の実施態様において、細胞、細胞株または微生物内の内因性遺伝子の発現特性を、対象の内因性遺伝子に対して異種であるDNA調節エレメントを、細胞、安定な細胞株またはクローニングされた微生物のゲノム中に挿入することによって改変することができ、これにより、挿入された調節エレメントは内因性遺伝子に作動可能に連結され、そして制御、モデュレーション、または活性化を行なう。例えば、通常は「転写的にサイレント」である内因性遺伝子、すなわち細胞株または微生物において通常は発現されないか、または非常に低いレベルでしか発現されない遺伝子を、その細胞株または微生物において通常発現される遺伝子産物の発現を促進することのできる調節エレメントを挿入することによって活性化し得る。あるいは、転写的にサイレントな内因性遺伝子を、細胞型を越えて作用する広宿主域の調節エレメントの挿入によって活性化してもよい。
【0101】
異種調節エレメントを、当業者には周知であり、そして例えば、Chappel, U.S. Pat. No. 5,272,071;1991年5月16日公開のPCT publication No. WO 91/06667に記載されている標的化相同的組換えなどの技法を使用して、安定な細胞株またはクローニングされた微生物に挿入することができ、これによりそれは内因性遺伝子と作動可能に連結され、そして内因性遺伝子の発現を活性化する。
【0102】
本発明の宿主細胞、例えば培養液中で原核生物または真核生物の宿主細胞を使用して、本発明のポリペプチドを産生することができる。従って、本発明は、本発明の宿主細胞を使用して本発明のポリペプチドを産生するための方法をさらに提供する。1つの実施態様において、前記方法は、本発明の宿主細胞(本発明のポリペプチドをコードする組換え発現ベクターが導入されている)を適切な培地中で培養することを含み、これにより前記ポリペプチドが産生される。別の実施態様において、前記方法は、培地または宿主細胞から前記ポリペプチドを単離することをさらに含む。
【0103】
本発明はまた、本発明によるポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を産生するための方法にも関し、前記方法は、(i)in vitroまたはex vivoにおいて、前記した組換え核酸またはベクターをコンピテントな宿主細胞に導入し、(ii)in vitroまたはex vivoにおいて、得られた組換え宿主細胞を培養し、そして(iii)場合により、前記ポリペプチドを発現および/または分泌する細胞を選択することからなる工程を含む。このような組換え宿主細胞を、前記したように、本発明によるポリペプチドの産生のために使用することができる。
【0104】
本発明はさらに、本発明によるポリペプチドを産生するための方法にも関し、前記方法は、(i)本発明による形質転換宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現を可能とするのに適した条件下で培養し;そして(ii)発現されたポリペプチドを回収することからなる工程を含む。
【0105】
本発明の宿主細胞はまた、非ヒトトランスジェニック動物の産生にも使用することができる。例えば、1つの実施態様において、本発明の宿主細胞は、本発明のポリペプチドをコードする配列が導入された受精卵母細胞または胚幹細胞である。次いで、このような宿主細胞を使用して、本発明のポリペプチドをコードする外来性配列がそのゲノム中に導入された非ヒトトランスジェニック動物、または本発明の配列のポリペプチドをコードする内因性配列が改変されている相同的組換え動物を作製することができる。このような動物は、前記ポリペプチドの機能および/または活性を研究するのに、そしてポリペプチド活性のモデュレーターを同定および/または評価するのに有用である。
【0106】
本明細書において使用する「トランスジェニック動物」は、動物の細胞の1つ以上が導入遺伝子を含む、非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはげっ歯類、例えばラットまたはマウスである。
【0107】
トランスジェニック動物の他の例としては、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、両生類などが挙げられる。導入遺伝子は、細胞のゲノムに組み込まれた外来性のDNAであり、このゲノムからトランスジェニック動物が発生し、そして成熟動物のゲノム内に留まり、これにより、トランスジェニック動物の1つ以上の細胞型または組織において、コードされる遺伝子産物の発現を指令する。
【0108】
本明細書において使用する「相同的組換え動物」は、内因性遺伝子と、動物細胞、例えば動物の胚細胞に動物の発生前に導入した外来性DNA分子との間の相同的組換えによって、内因性遺伝子が改変された、非ヒト動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはマウスである。
【0109】
本発明のトランスジェニック動物を、本発明のポリペプチドをコードする核酸を受精卵母細胞の雄性前核に、例えばマイクロインジェクション、レトロウイルス感染などによって導入し、そして卵母細胞を偽妊娠雌里親動物において発達させることによって作製することができる。イントロン配列およびポリアデニル化シグナルも導入遺伝子に含めて、導入遺伝子の発現効率を向上させることができる。組織特異的調節配列(群)を導入遺伝子に作動可能に連結させて、特定の細胞に本発明のポリペプチドの発現を指令することができる。胚操作およびマイクロインジェクションを介してトランスジェニック動物、特にマウスなどの動物を作製するための方法は、当技術分野において慣用的となっており、例えば、U.S. Pat. Nos. 4,736,866および4,870,009, 4,873,191並びにHogan, Manipulating the Mouse Embryo, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)に記載されている。類似の方法が、他のトランスジェニック動物の作製のために使用される。トランスジェニック創始動物を、そのゲノム中における導入遺伝子の存在および/または動物の組織もしくは細胞における導入遺伝子をコードするmRNAの発現に基づいて同定することができる。次いで、トランスジェニック創始動物を使用して、導入遺伝子を有する動物をさらに繁殖させることができる。さらに、導入遺伝子を有するトランスジェニック動物を、他の導入遺伝子を有する他のトランスジェニック動物とさらに交配することもできる。
【0110】
相同的組換え動物を作製するために、欠失、付加または置換が導入され、これにより遺伝子が改変、例えば遺伝子が機能的に破壊された、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも一部を含むベクターを調製する。好ましい実施態様において、ベクターは、相同的組換えの際に、内因性遺伝子が機能的に破壊されるように設計されている(すなわち、もはや機能的タンパク質をコードしない:「ノックアウト」ベクターとも称される)。あるいは、ベクターは、相同的組換えの際に、内因性遺伝子が突然変異するかまたは別様に改変されるが依然として機能的タンパク質をコードするように設計することもできる(例えば、上流調節領域を改変して、これにより内因性タンパク質の発現を変化させることができる)。相同的組換えベクターにおいては、遺伝子の改変された部分は、その5’末端および3’末端において、遺伝子の追加の核酸によってフランキングされており、これにより、ベクターによって運ばれる外来性遺伝子と胚性幹細胞中の内因性遺伝子との間で相同的組換えが起こることが可能となる。追加のフランキング核酸配列は、内因性遺伝子との相同的組換えが成功するのに十分な長さである。典型的には、数キロベースのフランキングDNA(5’末端および3’末端の両方において)がベクターに含まれる(例えば、相同的組換えベクターの説明については、Thomas and Capecchi (1987) Cell 51:503を参照されたい)。ベクターを胚性幹細胞株に導入し(例えば電気穿孔法によって)、そして導入された遺伝子が内因性遺伝子と相同的に組換えられた細胞を選択する(例えば、Li et al. (1992) Cell 69:915を参照されたい)。次いで、選択した細胞を、動物(例えばマウス)の胚盤胞に注入して、凝集キメラを形成する(例えば、Bradley in Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A Practical Approach, Robertson, ed. (IRL, Oxford, 1987) pp. 113-152を参照されたい)。次いで、キメラ胚を、適切な偽妊娠雌里親動物に移植し、そして胚を出産させた。その生殖細胞中に相同的に組換えられたDNAを有する子孫を使用して、動物の全細胞が、導入遺伝子の生殖細胞系列伝達によって相同的に組換えられたDNAを含む動物を繁殖させることができる。相同的組換えベクターおよび相同的組換え動物を構築するための方法は、Bradley (1991) Current Opinion in Biotechnology 2:823-829並びにPCT Publication Nos. WO 90/11354、WO 91/01140、WO 92/0968およびWO 93/04169においてさらに記載されている。
【0111】
別の実施態様において、導入遺伝子の調節された発現を可能とする選択された系を含む、トランスジェニック非ヒト動物を産生することができる。このような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である。cre/loxPリコンビナーゼ系の説明については、例えば、Lakso et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:6232-6236を参照されたい。リコンビナーゼ系の別の例は、Saccharomyces cerevisiaeのFLPリコンビナーゼ系である(O'Gorman et al. (1991) Science 251:1351-1355)。cre/loxPリコンビナーゼ系を使用して導入遺伝子の発現を調節する場合、Creリコンビナーゼおよび選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が必要とされる。このような動物は、「ダブル」トランスジェニック動物の構築を通して、例えば2種のトランスジェニック動物(一方は選択されたタンパク質をコードする導入遺伝子を含み、他方はリコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む)を交配することによって提供され得る。
【0112】
本明細書において記載する非ヒトトランスジェニック動物のクローンもまた、Wilmut et al. (1997) Nature 385:810-813並びにPCT Publication Nos. WO 97/07668およびWO 97/07669に記載の方法に従って産生することができる。
【0113】
本発明の別の目的は、本発明のポリペプチドに選択的に結合する化合物に関する。このような化合物は、本発明の方法を実施する際に特に有用である。本発明のポリペプチドに選択的に結合する化合物の例は、抗体およびアプタマーである。
【0114】
本発明の抗体:
従って、1つの態様において、本発明は、実質的に精製された抗体またはそのフラグメント、および非ヒト抗体またはそのフラグメントを提供し、前記抗体またはフラグメントは本発明のポリペプチドに特異的に結合する。
【0115】
種々の実施態様において、本発明の実質的に精製された抗体またはそのフラグメントは、ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であり得る。このような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、またはラットの抗体であり得る。さらに、本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、またはモノクローナル抗体であってもよい。
【0116】
さらに他の態様において、本発明はモノクローナル抗体またはそのフラグメントを提供する。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体および/または非ヒト抗体であり得る。
【0117】
本発明による抗体を、任意の化学的、生物学的、遺伝子学的または酵素的技法などのそれらに限定されるわけではない当技術分野において公知の任意の技法(単独でまたは組合せて)によって作製し得る。
【0118】
ポリクローナル抗体は、適切な被験体を、免疫原として本発明のポリペプチドを用いて免疫化することによって作製することができる。好ましいポリクローナル抗体組成物は、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド群に対して作られた抗体について選択されたものである。特に好ましいポリクローナル抗体作製物は、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド群に対して作られた抗体しか含まないものである。特に好ましい免疫原組成物は、他のヒトタンパク質を全く含まないもの、例えば、本発明のポリペプチドの組換え発現のために非ヒト宿主細胞を使用して作製された免疫原組成物である。このような様式では、この免疫原に対して結果として生じる抗体組成物によって認識されるヒトエピトープまたはエピトープ群のみが、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド群の一部として存在する。
【0119】
免疫化された被験体における抗体価を、標準的な技法によって、例えば固定化ポリペプチドを使用する酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて長時間にわたりモニタリングすることができる。所望であれば、抗体分子を哺乳動物から(例えば血液から)単離し、そして周知の技法、例えばプロテインAクロマトグラフィーによってさらに精製し、IgG画分を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドに対して特異的な抗体を、選択(例えば部分精製)または例えばアフィニティクロマトグラフィーによって精製することができる。例えば、組換え発現されそして精製された(または部分精製された)本発明のタンパク質を本明細書において記載のように作製し、そして例えばクロマトグラフィーカラムなどの固相支持体に共有結合的にまたは非共有結合的に結合させる。次いで、カラムを使用して、多くの異なるエピトープに対して作られた抗体を含む試料から、本発明のタンパク質に対して特異的な抗体をアフィニティ精製し、これにより、実質的に精製された抗体組成物、すなわち、実質的に夾雑抗体を含まない抗体組成物を生成することができる。実質的に精製された抗体組成物とは、この脈絡において、抗体試料が、本発明の所望のタンパク質またはポリペプチド上のエピトープ以外のエピトープに対して作られた夾雑抗体を最大で僅か30%(乾燥重量として)しか含まないこと、そして好ましくは試料の最大で20%、さらにより好ましくは最大で10%、最も好ましくは最大で5%(乾燥重量として)が夾雑抗体であることを意味する。精製された抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が、本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドに対して作られたことを意味する。
【0120】
免疫化後の適切な時期に、例えば特定の抗体価が最も高い時に、抗体産生細胞を被験体から得、そしてこれを使用して、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497によって最初に記載されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al. (1983) Immunol. Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al. (1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)またはトリオーマ技法などの標準的な技法によってモノクローナル抗体を作製することができる。ハイブリドーマを産生するための技術は周知である(一般に、Current Protocols in Immunology (1994) Coligan et al. (eds.) John Wiley & Sons, Inc., New York, N.Y.を参照されたい)。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準的なELISAアッセイを使用して、対象のポリペプチドに結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
【0121】
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマの作製の代わりに、対象のポリペプチドを用いて組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることによって、本発明のポリペプチドに対して作られたモノクローナル抗体を同定および単離することができる。ファージディスプレイライブラリーを生成およびスクリーニングするためのキットは市販されている(例えば、the Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(TM)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。さらに、抗体ディスプレイライブラリーの生成およびスクリーニングにおいて使用する際に特に受け入れられる方法および試薬の例を、例えば、U.S. Pat. No. 5,223,409; PCT Publication No. WO 92/18619; PCT Publication No. WO 91/17271; PCT Publication No. WO 92/20791; PCT Publication No. WO 92/15679; PCT Publication No. WO 93/01288; PCT Publication No. WO 92/01047; PCT Publication No. WO 92/09690; PCT Publication No. WO 90/02809; Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372; Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85; Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281; Griffiths et al. (1993) EMBO J. 12:725-734に見出すことができる。
【0122】
さらに、標準的な組換えDNA技法を使用して作製できる、ヒト部分および非ヒト部分の両方を含む、組換え抗体、例えばキメラ抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、本発明の範囲内である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子、例えば、マウスmAb由来の可変領域およびヒト免疫グロブリン定常領域を有する分子である。(例えばCabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567;およびBoss et al., U.S. Pat. No. 4,816397を参照されたい。これらはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。)ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する、非ヒト種由来の抗体分子である。(例えば、Queen, U.S. Pat. No. 5,585,089を参照されたい。これはその全体が参照により本明細書に組み入れられる。)このようなキメラ抗体およびヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野において公知の組換えDNA技法によって、例えば、PCT Publication No. WO 87/02671; European Patent Application 184,187; European Patent Application 171,496; European Patent Application 173,494; PCT Publication No. WO 86/01533; U.S. Pat. No. 4,816,567; European Patent Application 125,023; Better et al. (1988) Science 240:1041-1043; Liu et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443; Liu et al. (1987) J. Immunol. 139:3521-3526; Sun et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218; Nishimura et al. (1987) Canc. Res. 47:999-1005; Wood et al. (1985) Nature 314:446-449; and Shaw et al. (1988) J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559); Morrison (1985) Science 229:1202-1207; Oi et al. (1986) Bio/Techniques 4:214; U.S. Pat. No. 5,225,539; Jones et al. (1986) Nature 321:552-525; Verhoeyan et al. (1988) Science 239:1534;およびBeidler et al. (1988) J. Immunol. 141:4053-4060に記載の方法を使用して作製することができる。
【0123】
完全ヒト抗体を、例えば、内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することはできないが、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現することはできるトランスジェニックマウスを使用して作製することができる。トランスジェニックマウスを、選択された抗原、例えば本発明のポリペプチドの全部または一部を用いて通常の様式で免疫化する。抗原に対して作られたモノクローナル抗体を、従来のハイブリドーマ技術を使用して得ることができる。トランスジェニックマウスによって保有されるヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再編成され、続いてクラススイッチおよび体細胞突然変異を受ける。従って、このような技法を使用して、治療的に有用なIgG抗体、IgA抗体およびIgE抗体を作製することが可能である。ヒト抗体を作製するためのこの技術の概説については、LonbergおよびHuszar (1995, Int. Rev. Immunol. 13:65-93)を参照されたい。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのこの技術の詳細な考察並びにこのような抗体を作製するためのプロトコルについては、例えば、U.S. Pat. No. 5,625,126; U.S. Pat. Nos. 5,633,425; 5,569,825; 5,661,016;および5,545,806を参照されたい。さらに、Abgenix, Inc. (Fremont, Calif.)などの会社も、前記したのと類似した技術を使用して、選択された抗原に対して作られたヒト抗体を提供することでかかわっている。
【0124】
本発明のポリペプチドに対して作られた抗体(例えばモノクローナル抗体)を使用して、アフィニティクロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的な技法によって前記ポリペプチドを単離することができる。さらに、このような抗体を使用してタンパク質(例えば細胞溶解液または細胞上清中の)を検出して、前記ポリペプチドの発現量および発現パターンを評価することもできる。また、抗体を臨床試験手順の一部として診断的に使用して、組織中のタンパク質レベルをモニタリングして、これにより例えば所与の処置レジメンの効力を決定することもできる。抗体を検出可能な物質に結合させることによって検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例としては、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料および放射性材料が挙げられる。適切な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光材料の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられ;発光材料の例としては、ルミノールが挙げられ;生物発光材料の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;そして適切な放射性材料の例としては125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
【0125】
本発明は、本発明の抗体の抗体フラグメントを包含する。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、抗体フラグメントから形成されたダイアボディおよび多重特異的抗体が挙げられる。
【0126】
「Fab」という用語は、約50,000の分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントを意味し、この抗体フラグメントにおいては、プロテアーゼのパパインでIgGを処理することによって得られたフラグメントのうち、H鎖のN末端側の約半分およびL鎖全体が、ジスルフィド結合を介して一緒に結合している。
【0127】
「F(ab’)2」という用語は、約100,000の分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントを指し、これは、プロテアーゼのペプシンでIgGを処理することによって得られたフラグメントのうち、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合しているFabよりも僅かに大きい。
【0128】
「Fab」という用語は、約50,000の分子量および抗原結合活性を有する抗体フラグメントを指し、これは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる。
【0129】
単鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、共有結合によって連結したVH::VLヘテロ二量体であり、これは通常、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVHおよびVLをコードする遺伝子を含む遺伝子融合から発現される。本発明のヒトscFvフラグメントは、好ましくは、遺伝子組換え技法を使用することによって、適切なコンフォメーションに保たれたCDRを含む。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH::VLヘテロ二量体である。二価sc(Fv)2などの、二価および多価抗体フラグメントは、一価scFvの会合によって自発的に形成するか、または一価scFvをペプチドリンカーによって結合させることによって生成するかのいずれも可能である。
【0130】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、このフラグメントは、同じポリペプチド鎖中の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VH−VL)。同じ鎖上の2つのドメイン間で対形成を可能とするには短過ぎるリンカーを使用することによって、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対を形成することを強いられ、そして2つの抗原結合部位を作り出す。
【0131】
本発明のアプタマー:
別の実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドに対して作られたアプタマーに関する。
【0132】
アプタマーは、分子認識の点で抗体の代替物を示すクラスの分子である。アプタマーは、高い親和性および特異性でもって実質的にあらゆるクラスのターゲット分子を認識する能力を有するオリゴヌクレオチド配列またはオリゴペプチド配列である。このようなリガンドを、Tuerk C. 1997に記載のように、ランダム配列ライブラリーの試験管内進化法(Systematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment、SELEX)を通して単離し得る。ランダム配列ライブラリーを、DNAのコンビナトリアル化学合成によって得ることができる。このライブラリーにおいては、各メンバーが、独特な配列の、最終的に化学的に修飾される、直鎖オリゴマーである。このクラスの分子の可能な修飾、使用および利点が、Jayasena S.D., 1999に概説されている。ペプチドアプタマーは、E.coliチオレドキシンAなどの、プラットフォームタンパク質によって示されるコンフォメーション的に制約された抗体可変領域からなり、これは、コンビナトリアルライブラリーからツーハイブリッド法によって選択される(Colas et al., 1996)。
【0133】
スクリーニング法:
本発明は、本発明のポリペプチドに結合するか、または例えば、本発明のポリペプチドの発現もしくは活性に対して刺激をもたらす、モデュレーター、すなわち候補化合物または試験化合物または物質(例えばペプチド、ペプチド模倣体、小分子または他の薬物)を同定するための方法(本明細書において「スクリーニング法」とも称される)を提供する。
【0134】
1つの実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分の活性を向上させる候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。より詳しく述べると、本発明は、本発明のポリペプチドの発現を刺激することのできる候補化合物または試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。
【0135】
候補化合物または試験化合物を、本発明のポリペプチドの発現を刺激する能力についてアッセイし得る。例えば、レポーティング系アッセイ(reporting system assay)を使用して、本発明のポリペプチドの発現を測定し得る。その目的において本発明の宿主細胞を使用し得る。特定の実施態様において、ベクターは、本発明のポリペプチドおよび蛍光タンパク質を含む融合タンパク質をコードし得る。天然の蛍光タンパク質、生物発光タンパク質またはリン光タンパク質としては、オワンクラゲ(Aequorea Victoria)由来のGFP、および多くの有用な特性を有するGFPの配列変異体が挙げられる。また、リストは、Discosomaに由来する赤色蛍光タンパク質(RFP):およびAnemonia由来のキンドリング(kindling)蛍光タンパク質(KFP1)も含む。これらのタンパク質は全て、コアのアミノ酸残基のエンド環化の結果として、高い可視能をもち効率的に発光する内部フルオロフォアを発生することができる自己触媒酵素である。蛍光タンパク質の別の一般的な特徴は、シグナルが安定であり、種に依存せず、そしてシグナルの発生のために全く基質または補因子を必要としないことである。目視観察(例えば広域スペクトルのUV光下での)による直接的な蛍光の検出を使用して、候補化合物または試験化合物の存在下または非存在下において産生される融合タンパク質の量を定量することができる。
【0136】
次いで、候補化合物または試験化合物を、錐体光受容体変性を阻害する能力についてアッセイすることができる。当業者に公知の任意の適切なアッセイを使用して、このような効果をモニタリングすることができる(例えば実施例に記載のアッセイ)。
【0137】
本発明の試験化合物を、生物学的ライブラリー;空間的にアドレス可能な平行固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティクロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法などの当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における数多くのアプローチのいずれかを使用して得ることができる。生物学的なライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリーまたは小分子化合物ライブラリーに適用可能である。
【0138】
本発明の診断法:
本発明はまた、診断アッセイ、予知アッセイ、およびモニタリングアッセイにも関する。
【0139】
従って、本発明の1つの態様は、生体試料(例えば血液、血清、細胞、組織)について、本発明のポリペプチドもしくは核酸の発現および/または本発明のポリペプチドの活性を決定し、これにより、個体が、本発明のポリペプチドの異常な発現もしくは活性に関連する疾病もしくは疾患(例えば神経変性疾患)に罹患しているか、または疾患を発症するリスクがあるかどうかを決定するための診断アッセイに関する。
【0140】
本発明はまた、個体が、本発明のポリペプチドの異常な発現または活性に関連する疾患(例えば神経変性疾患)を発症するリスクがあるかどうかを決定するための予知(または予測)アッセイも提供する。例えば、生体試料中の本発明の核酸分子における突然変異をアッセイすることができる。このようなアッセイを予知または予測の目的で使用して、これにより、本発明のポリペプチドの異常な発現または活性によって特徴付けられるかまたはそれに関連する疾患を発症する前に個体を予防的に処置することができる。
【0141】
本発明のさらに別の態様は、臨床試験または処置において、本発明のポリペプチドの発現または活性に対する物質(例えば薬物または他の化合物)の影響をモニタリングすることに関する。
【0142】
本発明は、
a)試料を、本発明のポリペプチドに選択的に結合する化合物と接触させる工程;および
b)前記化合物が、試料中の前記ポリペプチドに結合するかどうかを決定する工程
を含む、試料中の本発明のポリペプチドの存在を検出するための方法に関する。
【0143】
本発明はまた、
a)試料を、配列番号2をコードする核酸分子に選択的にハイブリダイゼーションする核酸プローブまたはプライマーと接触させる工程;および
b)前記核酸プローブまたはプライマーが、試料中の前記核酸分子に結合するかどうかを決定する工程
を含む、試料中の本発明の核酸分子の存在を検出するための方法に関する。
【0144】
生体試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸の有無を検出するための例示的な方法は、生体試料を試験被験体から得、そして生体試料を、本発明のポリペプチドまたは核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出することができる化合物または物質と接触させることを含み、これにより生体試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸の存在を検出する。本発明のポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAを検出するための好ましい物質は、本発明のポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAにハイブリダイゼーションできる標識された核酸プローブである。核酸プローブは、例えば、配列番号2の核酸またはその一部、例えば少なくとも15、30、または50のヌクレオチド長であり、そして、ストリンジェントな条件下で本発明のポリペプチドをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイゼーションするに十分であるオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断アッセイにおいて使用するための他の適切なプローブは本明細書に記載されている。
【0145】
本発明のポリペプチドを検出するための好ましい物質は、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体、好ましくは検出可能な標識を有する抗体である。抗体は、前記した方法に従って調製され得る。
【0146】
プローブまたは抗体に関する「標識された」という用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体に結合(すなわち物理的に連結)させることによるプローブまたは抗体の直接的な標識、並びに、直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識も包含すると意図される。間接的な標識の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用した一次抗体の検出、およびDNAプローブを蛍光標識されたストレプトアビジンを用いて検出できるようにビオチンを用いてDNAプローブを末端標識することが挙げられる。
【0147】
本発明の検出方法を使用して、in vitro並びにin vivoにおいて、生体試料中のmRNA、タンパク質またはゲノムDNAを検出することができる。例えば、mRNAの検出のためのin vitroにおける技法としては、ノザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションが挙げられる。本発明のポリペプチドの検出のためのin vitroにおける技法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光が挙げられる。ゲノムDNAの検出のためのin vitroにおける技法には、サザンハイブリダイゼーションが挙げられる。さらに、本発明のポリペプチドの検出のためのin vivoにおける技法としては、被験体に、ポリペプチドに対して作られた標識抗体を導入することが挙げられる。例えば、被験体におけるその存在および位置を標準的な画像処理の技法によって検出することができる放射性マーカーを用いて、抗体を標識することができる。
【0148】
別の実施態様において、前記方法はさらに、対照被験体から対照の生体試料を得、対照試料を、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAを検出することができる化合物もしくは物質と接触させ、これにより、生体試料中の前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在を検出し、そして、対照試料中の前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在を、試験試料中の前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするmRNAもしくはゲノムDNAの存在と比較することを含む。
【0149】
本発明はまた、生体試料中の本発明のポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。このようなキットを使用して、被験体が、本発明のポリペプチドの異常な発現に関連する疾患(例えば網膜変性疾患)に罹患しているか、または前記疾患を発症する高リスクがあるかどうかを決定することができる。キットは、例えば、生体試料中の前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするmRNAを検出することができる標識された化合物または物質、および試料中の前記ポリペプチドまたはmRNAの量を決定するための手段(例えば、前記ポリペプチドに結合する抗体、または前記ポリペプチドをコードするDNAもしくはmRNAに結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含むことができる。キットはまた、前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードするmRNAの量が正常レベルより上または下である場合には、試験される被験体が、前記ポリペプチドの異常な発現に関連する疾患に罹患しているか、または前記疾患を発症するリスクがあるかを観察するための説明書も含むことができる。
【0150】
キットはまた、例えば、(1)本発明のポリペプチドに結合する、(例えば固相支持体に付着した)第1の抗体;および場合により、(2)前記ポリペプチドまたは第1の抗体のいずれかに結合し、そして検出可能な物質にコンジュゲートされた、第2の異なる抗体を含むことができる。
【0151】
キットは、例えば、(1)本発明のポリペプチドをコードする核酸配列にハイブリダイゼーションするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、または(2)本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を増幅するのに有用な一対のプライマーを含むことができる。
【0152】
キットはまた、例えば、緩衝化剤、保存剤、またはタンパク質安定化剤を含むことができる。キットはまた、検出可能な物質(例えば酵素または基質)を検出するのに必要な成分も含むことができる。キットはまた、アッセイし、そして含まれる試験試料と比較することができる対照試料または一連の対照試料も含むことができる。キットの各成分は、通常、個々の容器内に封入され、そして種々の容器の全てが、1つの包装内に、試験被験体が、前記ポリペプチドの異常な発現に関連する疾患に罹患しているか、または前記疾患を発症するリスクがあるかどうかを観察するための説明書と共に入っている。
【0153】
本明細書において記載した方法をさらに、診断アッセイまたは予知アッセイとして使用して、本発明のポリペプチドの異常な発現もしくは活性に関連する疾病もしくは疾患(例えば網膜変性疾患)を有するかまたはそれを発症するリスクのある被験体を同定することができる。例えば、本明細書において記載したアッセイ、例えば先行の診断アッセイまたは以下のアッセイを使用して、本発明のポリペプチドの異常な発現もしくは活性に関連する疾患を有するか、または前記疾患を発症するリスクのある被験体を同定することができる。あるいは、予知アッセイを使用して、このような疾病もしくは疾患を有するか、または前記疾病もしくは疾患を発症するリスクのある被験体を同定することができる。
【0154】
従って、本発明は、被験体から試験試料を得、そして本発明のポリペプチドまたは核酸(例えばmRNA、ゲノムDNA)を検出する方法を提供し、前記ポリペプチドまたは核酸の存在によって、前記ポリペプチドの異常な発現もしくは活性に関連する疾病もしくは疾患を有するか、またはそれを発症するリスクのある被験体を診断する。本明細書において使用する「試験試料」とは、対象の被験体から得られた生体試料を指す。例えば、試験試料は、体液(例えば血清)、細胞試料、または組織であり得る。
【0155】
さらに、本明細書において記載する予知アッセイを使用して、被験体に、本発明のポリペプチドの異常な発現または活性に関連する疾病または疾患(例えば網膜変性疾患)を処置するための物質(例えばアゴニスト、ポリペプチド、核酸、小分子、または他の薬物候補)を投与することができるかどうかを決定することができる。例えば、このような方法を使用して、被験体を、特定の物質またはクラスの物質(例えば、前記ポリペプチドの活性を増加させるタイプの物質)を用いて効果的に処置できるかどうかを決定することができる。従って、本発明は、本発明のポリペプチドの異常な発現または活性に関連する疾患のための物質を用いて被験体を効果的に処置できるかどうかを決定するための方法を提供し、ここで、試験試料を得、そして前記ポリペプチドまたは前記ポリペプチドをコードする核酸を検出する(例えば、前記ポリペプチドまたは核酸の非存在によって、前記ポリペプチドの異常な発現または活性に関連する疾患を処置するための物質を投与することができる被験体について診断する)。
【0156】
また、本発明の方法を使用して、本発明の遺伝子中における遺伝子の障害または突然変異を検出し、これにより、障害のある遺伝子を有する被験体について、本発明のポリペプチドの異常な発現または活性を特徴とする疾患(例えば網膜変性疾患)のリスクがあるかどうかを決定することができる。好ましい実施態様において、前記方法は、被験体由来の細胞の試料中において、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の完全性に影響を及ぼす少なくとも1つの変化、または本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の異所性発現によって特徴付けられる、遺伝子の障害もしくは突然変異の有無を検出することを含む。例えば、このような遺伝子の障害または突然変異を、1)遺伝子からの1つ以上のヌクレオチドの欠失;2)遺伝子への1つ以上のヌクレオチドの付加;3)遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの置換;4)遺伝子の染色体再編成;5)遺伝子のメッセンジャーRNA転写物レベルの変化;6)遺伝子の異常な改変、例えばゲノムDNAのメチル化パターンの改変;7)遺伝子のメッセンジャーRNA転写物の非野生型スプライシングパターンの存在;8)遺伝子によってコードされるタンパク質の非野生型レベル;9)遺伝子の対立遺伝子の欠失;および10)遺伝子によってコードされるタンパク質の不適切な翻訳後修飾、の少なくとも1つの存在を確認することによって検出することができる。本明細書において記載したように、遺伝子中の障害を検出するために使用することができる、当技術分野において公知である多数のアッセイ技法が存在する。
【0157】
特定の実施態様において、障害の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、U.S. Pat. Nos. 4,683,195および4,683,202を参照されたい)、例えばアンカーPCRまたはRACE PCRにおける、または、あるいは、ライゲーション連鎖反応(LCR)(例えば、Landegran et al. (1988) Science 241:1077-1080;およびNakazawa et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:360-364を参照されたい)におけるプローブ/プライマーの使用を含み、後者は、遺伝子中の点突然変異の検出に特に有用であり得る(例えば、Abravaya et al. (1995) Nucleic Acids Res. 23:675-682を参照されたい)。この方法は、患者から細胞の試料を回収する工程、試料の細胞から核酸(例えばゲノム、mRNAまたはその両方)を単離する工程、核酸試料を、選択された遺伝子に特異的にハイブリダイゼーションする1つ以上のプライマーと、遺伝子(存在する場合)のハイブリダイゼーションおよび増幅が起こるような条件下において接触させる工程、そして増幅産物の有無を検出するか、または増幅産物のサイズを検出する工程、および長さを対照試料と比較する工程を含むことができる。本明細書において記載した突然変異を検出するために使用される技法のいずれかと併用して、予備増幅工程としてPCRおよび/またはLCRを使用することが望ましい場合があることが予測される。
【0158】
代替的な実施態様において、試料細胞から選択された遺伝子中の突然変異を、制限酵素切断パターンの変化によって同定することができる。例えば、試料DNAおよび対照DNAを単離し、増幅し(場合により)、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼで消化し、そしてフラグメント長サイズをゲル電気泳動によって決定し、そして比較する。試料DNAと対照DNAとの間のフラグメント長サイズの差異は、試料DNAにおける突然変異を示す。
【0159】
さらに別の実施態様において、当技術分野において公知の種々のシークエンス反応のいずれかを使用して、選択された遺伝子を直接的にシークエンスし、そして、試料核酸の配列を、対応する野生型(対照)配列と比較することによって突然変異を検出することができる。シークエンス反応の例としては、MaximおよびGilbert ((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:560)またはSanger ((1977) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74:5463)によって開発された技法に基づいたものが挙げられる。診断アッセイ((1995) Bio/Techniques 19:448)を実施する場合に、質量分析法によるシークエンス(例えば、PCT Publication No. WO 94/16101; Cohen et al. (1996) Adv. Chromatogr. 36:127-162;およびGriffin etal. (1993) Appl. Biochem. Biotechnol. 38:147-159を参照されたい)を含む、種々の自動化シークエンス手順のいずれかを使用することができることも考えられる。
【0160】
他の実施態様において、電気泳動移動度の変化を使用して、遺伝子中の突然変異を同定する。例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)を使用して、突然変異体と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差異を検出することができる(Orita et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:2766;また、Cotton (1993) Mutat. Res. 285:125-144; Hayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73-79も参照されたい)。試料の核酸および対照の核酸の一本鎖DNAフラグメントを変性し、そして再生させる。一本鎖核酸の二次構造は配列により変化し、そして結果として生じる電気泳動移動度の変化は、1塩基の変化さえも検出することを可能とする。DNAフラグメントを標識しても、または標識されたプローブを用いて検出してもよい。アッセイの感度を、二次構造が配列の変化に対してより感受性であるRNA(DNAよりもむしろ)を使用することによって増強させることができる。好ましい実施態様において、対象の方法はヘテロ二本鎖分析を使用して、電気泳動移動度の変化に基づいて二本鎖のヘテロ二本鎖分子を分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet. 7:5)。
【0161】
さらに別の実施態様において、変性剤の濃度勾配を含むポリアクリルアミドゲル中の突然変異体または野生型のフラグメントの移動を、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)(Myers et al. (1985) Nature 313:495)を使用してアッセイする。DGGEを分析法として使用する場合、DNAに、例えばPCRによって約40bpの高融点のGCに富むDNAのGCクランプを付加することによってDNAを改変して、DNAが完全に変性しないようにする。さらなる実施態様において、変性剤濃度勾配の代わりに温度勾配を使用して、対照DNAと試料DNAの移動度の差異を同定する(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265:12753)。
【0162】
点突然変異を検出するための他の技法の例としては、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられるがそれらに限定されない。例えば、公知の突然変異が中心に配置されたオリゴヌクレオチドプライマーを調製し得、次いで、完全な一致が見られる場合にしかハイブリダイゼーションを許容しない条件下でターゲットDNAにハイブリダイゼーションさせ得る(Saiki et al. (1986) Nature 324:163); Saiki et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。このような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドを、PCR増幅させたターゲットDNAまたはいくつかの異なる突然変異にハイブリダイゼーションさせると、前記オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション用のメンブレンに付着し、そして標識されたターゲットDNAとハイブリダイゼーションする。
【0163】
あるいは、選択的PCR増幅に依存する対立遺伝子特異的増幅技術を、本発明と併用して使用し得る。特異的増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、対象の突然変異を、分子の中心部に有しても(よって、増幅は、ディファレンシャルハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbs et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17:2437-2448)、またはミスマッチがポリメラーゼによる伸長を、適切な条件下において防止もしくは減少させることができる場所である、1つのプライマーの3’最末端に有していてもよい(Prossner (1993) Tibtech 11:238)。さらに、突然変異の領域に新たな制限酵素部位を導入して、切断に基づいた検出を作り出すことが望ましい場合がある(Gasparini et al. (1992) Mol. Cell Probes 6: 1)。特定の実施態様において、増幅のためのTaqリガーゼを使用して増幅を実施し得ることも予測される(Barany (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:189)。このような場合、5’配列の3’末端において完全な一致が存在する場合にのみライゲーションが起こり、これにより、増幅の有無を調べることによって、特定の部位における公知の突然変異の存在を検出することが可能となる。
【0164】
本明細書において記載する方法は、例えば、本明細書において記載する少なくとも1つのプローブ核酸または抗体試薬を含む、予め梱包された診断キットを使用することによって実施され得、前記キットは、例えば臨床現場において簡便に使用され、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の関与する疾病もしくは病気の症状または前記疾病もしくは病気の家族歴を示す患者を診断することができる。
【0165】
本発明は、以下の図面および実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例および図面は、いずれにしても、本発明の範囲を制限するものとは捉えるべきではない。
【0166】
治療法および医薬組成物:
本発明のポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞は、治療目的に特に適し得る。例えば、本発明のポリペプチド、核酸分子、ベクター、宿主細胞は、神経変性疾患の処置に適し得る。
【0167】
中枢神経系の神経変性疾患の一例として、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病/舞踏病を挙げることができる。
【0168】
特定の実施態様において、神経変性疾患は網膜変性疾患である。典型的には、前記の網膜変性疾患は、色素性網膜炎、加齢黄斑変性症、バルデ・ビードル症候群、バッセン・コーンツヴァイク症候群、ベスト病、脈絡膜欠如、脳回転状萎縮症、レーバー先天黒内障、レフサム病、シュタルガルト病またはアッシャー症候群からなる群より選択される。好ましい実施態様において、前記の変性疾病は色素性網膜炎である。
【0169】
1つの実施態様において、本発明は、本発明のポリペプチドまたは核酸分子の治療有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、神経変性疾患を処置するための方法を提供する。
【0170】
「治療有効量」の本発明のポリペプチドまたは核酸分子とは、任意の医学的処置に適用可能である、妥当な利益/リスクの比で神経変性疾患を処置するのに十分な量の核酸分子またはポリペプチドを意味する。しかしながら、本発明のポリペプチドまたは核酸分子および組成物の1日あたりの全使用量は、適切な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されることを理解されたい。任意の特定の患者についての具体的な治療有効量のレベルは、処置する疾患および疾患の重症度;使用する特定のポリペプチドの活性;使用する特定の組成物;患者の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食事;投与時刻、投与経路、および使用する特定のポリペプチドの排泄速度;処置の持続時間;使用する特定のポリペプチドと組み合わせてまたは同時に使用される薬物;並びに医学分野において周知の同様の因子を含む、種々の因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、そして所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは十分に当技術分野の技術範囲内である。
【0171】
本発明のポリペプチド、核酸分子、ベクターまたは宿主細胞を、薬学的に許容される賦形剤、および場合により生分解性ポリマーなどの持続放出性マトリックスと組み合わせて、治療組成物を形成してもよい。
【0172】
「薬学的に」または「薬学的に許容される」は、適宜、哺乳動物、特にヒトに投与した場合に、有害反応、アレルギー反応、または他の望ましくない反応を生じない分子群および組成物を指す。薬学的に許容される担体または賦形剤は、無毒性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、被包材料または任意のタイプの製剤化補助剤を指す。
【0173】
経口投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、経皮投与、局所投与または直腸投与のための本発明の医薬組成物において、活性成分を単独でまたは他の活性成分と組み合わせて、単位投与剤形で、従来の薬学的支持体との混合物として、動物およびヒトに投与することができる。適切な単位投与剤形は、錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤および経口用の懸濁剤または液剤などの経口経路の剤形、舌下および頬側への投与剤形、エアゾール剤、インプラント、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、クモ膜下腔内、および鼻腔内への投与剤形および直腸への投与剤形を含む。
【0174】
好ましくは、医薬組成物は、注射可能な製剤のための薬学的に許容されるビヒクルを含む。これらは、特に、等張性で無菌の生理食塩水(リン酸一ナトリウムもしくは二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなど、またはこのような塩の混合物)であっても、あるいは場合に応じて、滅菌水または生理食塩水を添加すると、注射用液剤を構成できる乾燥状態の、特に凍結乾燥された組成物であってもよい。
【0175】
注射用途に適した薬学的剤形は、無菌の水性の液剤または分散剤;ゴマ油、ピーナッツ油または水性プロピレングリコールを含む製剤;および、無菌注射用液剤または分散剤の即時調製のための無菌の散剤を含む。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、そしてシリンジで容易に扱える程度に流動性でなければならない。それは製造および保存の条件下において安定でなければならず、そして細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対しても保存されていなければならない。
【0176】
遊離塩基または薬学的に許容される塩としての本発明のポリペプチドまたは核酸分子の液剤を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水で調製することができる。分散剤もまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物、並びに油で調製することができる。保存および使用の通常の条件下において、これらの調製物は、微生物の増殖を防止する保存剤を含む。
【0177】
本発明のポリペプチドを、中和形態または塩の形態の組成物へと製剤化することができる。薬学的に許容される塩には、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と形成される)が挙げられ、これらは、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などのこのような有機酸と形成される。遊離カルボキシル基と形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基から、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのこのような有機塩基から誘導することができる。
【0178】
担体もまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、適切なその混合物および植物油を含む、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの種々の抗細菌剤および抗真菌剤によってもたらすことができる。多くの場合、等張化剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期的な吸収は、組成物中に、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を使用することによってもたらすことができる。
【0179】
無菌注射用液剤は、必要量の活性ポリペプチドを、適切な溶媒中に、必要に応じて、前記に列挙した種々の他の成分と共に加え、その後、滅菌ろ過することによって調製される。一般に、分散剤は、種々の滅菌した活性成分を、基本分散媒体と前記に列挙した成分からの必要な他の成分とを含む無菌ビヒクル中に加えることによって調製される。無菌注射用液剤の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製法は、以前に滅菌ろ過したその溶液から活性成分と任意の所望の追加成分の粉末が得られる、真空乾燥技法および凍結乾燥技法である。
【0180】
直接注射のためのより濃縮されたまたは高度に濃縮された液剤の調製も企画され、この場合、溶媒としてのDMSOの使用が、極めて迅速な浸透をもたらし、高濃度の活性物質を小領域に送達すると想定されている。
【0181】
製剤化したら、液剤を、投与製剤に適した様式で、そして治療的に有効であるような量で投与する。製剤は、前記した注射用液剤のタイプなどの種々の投与剤形で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。
【0182】
水性液剤で非経口投与するためには、例えば、液剤を必要であれば適切に緩衝化すべきであり、そして液体の希釈剤をまず十分な食塩水またはグルコースを用いて等張とすべきである。これらの特定の水性液剤は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用することのできる無菌水性媒体は本開示に照らして当業者には公知であろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液に溶解し、そして1000mlの皮下点滴療法用液体に添加するか、または予定されている注入部位に注射するかのいずれかを行なうことができる。用量の何らかの変更が、処置する被験体の容態に依存して必然的に行なわれるであろう。いずれの事例においても、投与責任者が個々の被験体についての適切な用量を決定するだろう。
【0183】
前記ポリペプチドを、治療用混合物内に製剤化して、1用量あたり約0.0001〜1.0mg、または約0.001〜0.1mg、または約0.1〜1.0、またはさらには約10mg含ませることができる。複数の用量を投与してもよい。
【0184】
静脈内または筋肉内注射などの非経口投与のために製剤化されたポリペプチドに加えて、他の薬学的に許容される剤形には、例えば経口投与用の錠剤または他の固形剤;リポソーム製剤;徐放性カプセル剤;および現在使用されている任意の他の剤形が挙げられる。
【0185】
本発明のポリペプチド、核酸分子またはベクターを、薬学的に許容される眼科用ビヒクルに加え投与することができ、これにより前記ポリペプチドは、角膜領域および眼の内部領域、例えば前眼房、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜および強膜に浸透することができる。薬学的に許容される眼科用ビヒクルは、例えば、軟膏、植物油または被包材料であり得る。あるいは、本発明のポリペプチド、核酸分子またはベクターを、直接、硝子体、眼房水、毛様体組織(群)もしくは細胞および/または外眼筋に電気穿孔手段によって注射してもよい。
【0186】
また、本発明のポリペプチド、核酸分子またはベクターを、ニューロン栄養活性を示すことが知られる他の化合物と組合せてもよい。例えば、本発明のポリペプチドを、神経変性疾患、特に網膜変性疾患(例えば色素性網膜炎)の処置のために桿体由来の錐体生存因子(RdCVF)と組合せてもよい。RdCVF1およびRdCVF2のポリペプチドおよび遺伝子は、WO 02081513およびWO 2005/113586の出願番号で公開された国際特許出願並びにLEVEILLARD et al., Nat. Genet. vol. 36(7), p:755-759, 2004およびChalmel et al., BMC Molecular Biology, 2007, 8:74に記載されている。従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドまたは核酸分子からなる群より選択される第1の化合物と、RdCVF1またはRdCVF2をコードする核酸配列およびRdCVF1またはRdCVF2それ自体からなる群より選択される第2の化合物とを含む、医薬組成物に関する。
【0187】
典型的には、本発明はまた、
a)本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする単離核酸、および
b)桿体由来の錐体生存因子(例えばRdCVF1またはRdCVF2)
を含む、神経変性疾患の処置のための組成物に関する。
【0188】
本発明はまた、
a)本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする単離核酸、および
b)桿体由来の錐体生存因子(例えばRdCVF1またはRdCVF2)
を含む神経変性疾患の処置のためのキットに関する。
【0189】
典型的には、キットの2つの成分は、別々に患者に投与されてもよい。
【0190】
実施例:
新規なアイソフォームRdCVF2vが、標準化された網膜マウスcDNAライブラリーの大規模シークエンスによって同定された。このアイソフォームは、RdCVF2の既知のアイソフォームと比較して非常に稀であった。
【0191】
ニューロン救出活性
RdCVF2vを、in vitroにおいて一次培養物におけるニューロン救出活性について、すなわち、ニューロンの死滅を防止する能力について試験する。
【0192】
簡潔に述べると、RdCVF2vをコードする発現ベクターを、複数の細胞(COS−1細胞)にトランスフェクションする。トランスフェクションから48時間後、トランスフェクションされた細胞からの馴化培地を収集し、そしてニューロンの一次培養物(光受容体、嗅覚感受性ニューロンなど)と共にインキュベーションする。培養期間後、ニューロンを固定および標識し、そして計測する。
【0193】
1)錐体救出活性
一次培養物は、Fintz et al. (Invest. Ophtamol. Vis. Sci, vol 44(2): 818-825, 2003.)に記載のようにニワトリ胚に由来する錐体に富む一次細胞培養系(60〜80%の錐体)である。
【0194】
これらの有糸分裂後の細胞変性期間である7日間のインキュベーションの後、培養物中の細胞の生存度を、生存/死滅アッセイ(Molecular Probes)および細胞計測プラットフォームを以前に記載(Leveillard et al., 2004)されているように使用してカウントした。
【0195】
RdCVF2v(本発明のポリペプチド)の栄養活性を、他の栄養因子の栄養活性と比較した:
【0196】
【表5】

【0197】
本発明のポリペプチドは、RdCVFおよびRdCVF2の栄養活性よりも大きな栄養活性を示す。
【0198】
2)嗅覚感受性ニューロン救出活性
成体マウスを断頭によって殺滅する。鼻中隔の後部を切開して鼻腔から切り離し、そして、50μg/mlのゲンタマイシン(Eurobio; Gibco)および10(v/v)のウシ胎児血清(eurobio)を含む氷冷DMEM中に直ちに入れる。隔壁の軟骨を除去し、そして嗅粘膜を30分間37℃で2.4U/MIディスパーゼII溶液(Roche)中でインキュベーションする。嗅上皮を、解剖顕微鏡下で直下にある粘膜固有層から注意深く分離し、そして約20分間かけて穏やかに粉砕して細胞を分離する。得られる細胞懸濁液を、50mlのコニカルチューブに移し、そしてカルシウムおよびマグネシウムを含まない40mlのHBSSの添加によってディスパーゼを不活性化する。細胞懸濁液を、700rpmで5分間遠心分離にかけ、そして細胞を含むペレットを、インシュリン(10μg/ml、Sigma)、トランスフェリン(10μg/ml、Sigma)、セレニウム(10μg/ml、Sigma)、ウシ胎児血清(5%)、アスコルビン酸(200μM)を含むDMEMからなる培地中に再懸濁する。細胞を、5μg/cmヒトコラーゲンIV(Sigma)でコーティングされた12mmの滅菌ガラスカバースリップ上に蒔き;これにより、嗅覚感受性ニューロン(OSN)の一次培養物を得る。
【0199】
RdCVF2vの存在下または非存在下における4日間の培養後、細胞を固定し、チューブリンIIIで標識し、そして計測する。
【0200】
3)プルキンエ細胞救出活性
生後1〜3日目におけるマウスの断頭後、脳を切り分け、5mg/mlのグルコースを含む冷グレイ(Grey)平衡塩溶液に入れ、そして髄膜を除去する。小脳傍天状スライス(35°または250μmの厚さ)をMcIIwain組織チョッパーで切断し、そして0.4μm孔径の30mm Millipore培養用インサート(Millicel; Millipore, Bedford, MA)のメンブレンに移す。スライスを、35°で加湿5%COの雰囲気で3mlの培地を含む6ウェルプレート中の培養液中に維持する。培地は、Earle塩(Invitrogen)、25%HBSS(Invitrogen)、25%ウマ血清(Invitrogen)、L−グルタミン(1mM)および5mg/mlのグルコースを含む50%基礎培地からなる(Stoppini et al., J Neurosci Methods, vol 37(2), p173-82, 1991)。
【0201】
RdCVF2vの存在下または非存在下における4日間の培養後、細胞を固定し、チューブリンIIIで標識し、そして計測する。
【0202】
4)皮質ニューロン救出活性
無血清のマウス皮質一次培養物の調製を、生後1日目のマウスを用いて行なう。髄膜の除去後、全皮質を、二価カチオンの添加されていないリン酸緩衝生理食塩水グルコース溶液(100mM NaCl、3mM KCl、1.5mM KHPO、7.9mM NaHPO、33mMグルコース、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン)中で機械的に切り分け、そして2%B27サプリメント(Gibco)、0.5mMグルタミン;および25μMグルタメートを含む神経細胞培養用基礎培地(Invitrogen)中に再懸濁する。次いで、細胞をポリオルニチンでコーティングされたカバースリップ上で培養して、皮質ニューロンを多く含む培養物を産生する。
【0203】
RdCVF2vの存在下または非存在下における4日間の培養後、細胞を固定し、チューブリンIIIで標識し、そして計測する。
【0204】
神経変性の動物モデル
RdCVF2vの活性を、in vivoにおいて、神経変性の動物モデル(rd1マウス、P23Hトランスジェニックラットなど)でアデノ随伴ウイルスによるRdCVF2vの送達後に試験する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号1に示されるアミノ酸配列またはその変異体であって、前記変異体は、配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有し、および
b)配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体であって、前記変異体は、配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有し、および
c)配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体であって、前記変異体は、配列番号3に対して少なくとも90%の同一性を有する
を含むポリペプチドまたはそのフラグメントであって、前記のそのフラグメントは、配列番号2に示されるアミノ酸配列、または配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するその変異体を含み、前記のそのフラグメントはニューロン救出活性を示す、前記ポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項2】
前記ポリペプチドまたはそのフラグメントが、250以下のアミノ酸長を有する、請求項1記載のポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項3】
配列番号1に示される前記アミノ酸配列またはその変異体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列またはその変異体のN末端に位置し、そして配列番号2に示される前記アミノ酸配列またはその変異体が、配列番号3に示されるアミノ酸配列またはその変異体のN末端に位置する、請求項1または2記載のポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項4】
前記ポリペプチドまたはそのフラグメントが、配列番号4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、そして前記ポリペプチドまたはそのフラグメントが配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項5】
配列番号4のアミノ酸配列からなる、請求項1〜4記載のポリペプチドまたはそのフラグメント。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする単離核酸分子。
【請求項7】
前記核酸分子が、配列番号5に示されるヌクレオチド配列を有する、請求項6記載の単離核酸分子。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドまたはそのフラグメントに選択的に結合する抗体であって、前記抗体は、配列番号2に示されるアミノ酸配列内または配列番号2の変異体内のエピトープを認識し、前記変異体は配列番号2に対して少なくとも90%の同一性を有する、前記抗体。
【請求項9】
a)試料を、請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドまたはそのフラグメントに選択的に結合する化合物と接触させる工程;および
b)前記化合物が試料中の前記ポリペプチドまたはそのフラグメントと結合するかどうかを決定する工程を含む、試料中の請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドまたはそのフラグメントの存在を検出するための方法。
【請求項10】
a)試料を、配列番号2をコードする核酸分子に選択的にハイブリダイゼーションする核酸プローブまたはプライマーと接触させる工程;および
b)前記核酸プローブまたはプライマーが試料中の前記核酸分子に結合するかどうかを決定する工程を含む、試料中の請求項6または7記載の核酸分子の存在を検出するための方法。
【請求項11】
神経変性疾病の処置のための請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは請求項6もしくは7記載の単離核酸分子。
【請求項12】
a)請求項1〜5のいずれか1項記載のポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは請求項6もしくは7記載の単離核酸分子、および
b)桿体由来の錐体生存因子1(RdCVF1)および桿体由来の錐体生存因子2(RdCVF2)からなる群より選択される桿体由来の錐体生存因子
を含む、神経変性疾患の処置のための組成物。
【請求項13】
前記神経変性疾患が網膜変性疾患である、請求項11記載のポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは単離核酸分子あるいは請求項12記載の組成物。
【請求項14】
前記網膜変性疾病が色素性網膜炎である、請求項11記載のポリペプチドもしくはそのフラグメントまたは単離核酸分子あるいは請求項12記載の組成物。

【公表番号】特表2012−501665(P2012−501665A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526491(P2011−526491)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061764
【国際公開番号】WO2010/029130
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(591100596)アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル (59)
【Fターム(参考)】