説明

ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの菌株との組合せを含む組成物

本発明は、ニワトコ抽出物(Sambucus nigra)とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの菌株との組合せを含み、免疫を刺激しおよび/または抗感染性および/または抗炎症応答を促進することを意図される組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ(L.paracasei)、L.カゼイ(L.casei)、L.ブルガリクス(L.bulgaricus)またはS.サーモフィルス(S.thermophilus)の少なくとも1つの菌株との組合せを含む、好ましくは、免疫を刺激しおよび/または抗感染性および/若しくは抗炎症応答を促進することを意図した組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニワトコ(elder)またはセイヨウニワトコ(Sambucus nigra L)は、レンプクソウ科の一部である。
【0003】
ニワトコ属は、世界中の温帯地域に分布した25の種を含む。黒ニワトコ、S.nigra ssp.nigraは、ヨーロッパ(デンマーク、イタリアおよびオーストリア)、北アフリカおよび西アジアに広く生育している。北アメリカの北東を起源とするカナダニワトコ、S.nigra ssp.canadensisは、オレゴン、ペンシルバニアおよびカンザスで生育するが、その選別はカナダで実施される。
【0004】
以下の種々のニワトコの器官、すなわちコルク組織、茎、花、葉および果実は、医薬、食品産業および道具および玩具の製作を含む種々の分野において伝統的に使用されている。その主要な工業的生産は、現在、栄養補助食品市場および着色剤産業に向けたニワトコ果粒抽出物(elderberry extract)の生産に関する。
【0005】
幾つかの刊行物は、サイトカインの産生に対するニワトコ果粒抽出物の効果を報告している(《The effect of Sambucol, a black elderberry−based, natural product, on the production of animal cytokines: I. Inflammatory cytokines 》 Eur. Cytokine Netw. 2001 April−June; 12(2): 290−296)。特に、インフルエンザウイルス(Aおよび/またはBおよび/またはC)によるインフルエンザ感染に関する症状の軽減に対するニワトコ果粒抽出物の効果は、1型単純ヘルペスウイルス、RSウイルスおよびパラインフルエンザウイルスに対するその抗ウイルス効果と同様に既に開示されている(《Randomized Study of the Efficacy and Safety of Oral Elderberry Extract in the treatment of Influenza A and B Virus Infections》 The Journal of Int. Med. Res. 2004; 32:132−140)。
【0006】
多くの科学的研究は、発酵食品、特に乳製品中に含まれるある種の微生物の健康に対する有利な効果を示している。これらの微生物は、通常《プロバイオティクス》と称される。広く受け入れられている現行の定義によれば、プロバイオティクスは、《適量で消費されるときに宿主の健康に対して有利な効果を有する、生きている微生物》である(FAO/WHO report on Evaluation of Health and Nutritional Properties of Probiotics in Food including Powder Milk with Live Lactic Acid Bacteria; Cordoba, Argentina; 1−4 October 2001を参照されたい)。
【0007】
プロバイオティクス細菌を含む食品の消費は、特に、腸内菌叢を均衡させ、感染に対する耐性を向上させ、および免疫応答を調節することにより、健康に対する望ましい効果を生じ得ることが、特許出願WO96/20607、EP0794707、EP1283714、およびFR2912657において示されている。
【0008】
ヒトの飲食物中で使用されるプロバイオティクス微生物は、一般に乳酸菌であり、主として乳酸桿菌属およびビフィズス菌の菌株、および特にラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種に属する。
【0009】
米国特許出願第2006/0233895号は、L−カゼイなどのプロバイオティクスと場合により組み合わせることができるニワトコ抽出物を含む組成物を開示している。しかしながら、この組成物は、キャッツクロー、パウダルコ、スクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis)およびアルテミシニンの混合物を必然的に含有する。さらに、この組成物は、免疫を刺激することは意図されず、細菌感染により惹起され、したがってインフルエンザ型ウイルス感染とは非常に異なるライム病を治療するためのものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、ニワトコ抽出物(elder extract)とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの少なくとも1つの菌株とを含む組合せの、末梢血単核細胞(PBMC)による非特異的な免疫メディエータ(サイトカイン)の産生に対するインビトロ効果を研究してきた。このタイプのインビトロモデルの結果は、インビボで得ることができる効果と高度に関連する(World J.Gastroenterol.2007;13(2):236−243)。
【0011】
PBMC細胞モデルは、ヒト免疫系の細胞応答能力を研究するために使用される。この応答はIL−10、IFN−γおよびIL−6サイトカイン産生により発現する。
【0012】
炎症性ストレスにおいては、IL−10がマクロファージにより産生されて、TNF−αなどの炎症誘発性サイトカインの産生を調節する。これは抗原発現の減少を助長し、T細胞増殖を減少させるが、IL−2、−4および7の存在下において細胞傷害性T細胞の分化因子として作用することができる。IL−10は抗体産生B細胞の生存を向上させる。
【0013】
IFN−γ即ちII型IFNは若干の抗ウイルス活性を有して、細胞増殖を阻害する。しかしながら、主として抗ウイルス活性を有するI型IFN(α−およびβ−IFN)に対して、IFN−γは本質的に免疫調節性である。IFN−γはマクロファージおよびNK細胞を活性化し、それ故細胞傷害性機構に影響する。それはT細胞増殖および分化を調節し、1型免疫応答を助長して2型を逆に阻害することが知られている。
【0014】
IL−6は、抗原特異的免疫応答および炎症性反応に影響する多面発現性サイトカインである。これは急性期反応の主要な生理学的メディエータの1つである。IL−6はB細胞分化因子およびT細胞に対する活性化因子である。IL−2の存在において、IL−6は、成熟および未成熟T細胞の細胞傷害性T細胞への分化を誘発する。IL−6およびIL−3は、インビトロでの多分化能の造血性前駆細胞の増殖の促進で相乗作用を示す。IL−6は巨核球の成熟をインビトロで誘発し、インビボで血小板数を増加させる血小板産生因子でもある。
【0015】
両方の構成要素(ニワトコ抽出物およびL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルス菌株)が、ヒト免疫系細胞に作用して免疫応答を増強し、その結果、身体は任意の感染性侵襲または任意の病的炎症性過程に対してよりよく備えられる。得られた結果は、非常に驚くべきことで且つ予想されずに、これらの構成要素は、同じ組成物中にあるとき、非特異的免疫応答に対して相乗的に作用することを示した。
【0016】
このように、本発明は、ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの少なくとも1つの菌株との組合せを含む組成物に関する。前記組成物は、特に米国特許第2006/0233895号に記載されたようなキャッツクローおよび/またはパウダルコおよび/またはスクテラリア・バイカレンシスおよび/またはアルテミシニンを含まないことが好ましい。特に、それはキャッツクロー、パウダルコ、スクテラリア・バイカレンシス、およびアルテミシニンの混合物を含まない。
【0017】
特定の一態様によれば、本発明による組成物は、ニワトコ抽出物とL.パラカゼイの少なくとも1つの菌株との組合せを含む組成物に関する。
【0018】
特定の一態様によれば、本発明による組成物は、以下のステップ:
a)ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの少なくとも1つの菌株との組合せを調製し、
b)本発明による組成物に対する前記組合せを添加すること
を含む方法により調製することができる。
【0019】
この場合は、この組合せは、それが組成物に添加される前に調製されることになる。しかしながら、組合せの構成要素の各々を別々に組成物に添加することにより、即ち、前以て組合せを調製せずに本発明による組成物を調製することも可能である。
【0020】
特定の一態様によれば、本発明による組成物は、ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスおよび/またはS.サーモフィルスの少なくとも1つの菌株との組合せを含む組成物に関する。
【0021】
好ましくは、本発明による組成物は経口投与用である。
好ましくは、本発明による組成物は、食品、栄養補助食品、医薬またはOTC(Over The Counter)製品である。
【0022】
好ましくは、本発明のニワトコ抽出物は、ニワトコの果粒および/または花から、好ましくはニワトコ果粒(elderberry)から得られる。有利には、本発明のニワトコ抽出物は水溶性抽出物である。
【0023】
本発明の範囲内で使用されるニワトコ抽出物は、一方でアントシアンおよび他方でタンパク質(特にレクチン)などの高分子の含有率により特徴づけすることができる。
【0024】
好ましくは、ニワトコ抽出物は、より好ましくはペラルゴニジンおよびシアニジン族に属するアントシアンを、抽出物の固体含有率を基準にして重量で約0.5%と約25%との間、より好ましくは約3%と約25%との間、および最も好ましくは約8%と約16%との間の量で含む。好ましくは、アントシアン含有率は、抽出物の固体含有率を基準にして約12重量%に等しい。これらの含有率は、J. Agric. Food Chem. 2004, 52, 7846−7856に記載されたHPLC法によりシアニジン−3−グルコシドとして表わされる。
【0025】
好ましくは、ニワトコ抽出物は、固体を基準にして2重量%と10重量%との間、好ましくは5重量%と10重量%との間、およびより好ましくは5重量%と7重量%との間の量でタンパク質を含有する(ケルダール法によりN×6.25:Proteines vegetales,Ed.B.Godon,Collection Sciences et Techniques Agro−alimentaires,Technique et Documentation Lavoisier,Paris,1985)。
【0026】
本発明の範囲内で、ニワトコ抽出物は市販されているかまたは以下の工程を含む方法により得ることができる:
【0027】
新鮮または冷凍ニワトコ果粒は、濾過後にジュースを得るために圧縮することができる。それは、濾過前にそれを清澄化するために、酵素による加水分解ステップ(ペクチナーゼまたはペクチンメチルエステラーゼとポリガラクツロナーゼとの混合物)にかけることができる(Girard B. and Fukumoto L.R. Membrane processing of fruit juices and beverages: a review. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 2000, 40(2):91−157)。乾燥して粉砕された果粒も水で抽出し、続いて濾過により固体/液体分離をすることができる。
【0028】
生じた抽出物は、そのまままたは濃縮して、または乾燥し粉末にして使用することができる。
【0029】
この段階で、アントシアン含有率は、抽出物の固体含有率を基準にして0.5重量%と3重量%の間であり、好ましくは約1%に等しい(HPLCアッセイ、シアニジン−3−グルコシドで表される)。
【0030】
ニワトコ抽出物は、特に、アントシアンおよび/または高分子量の分子(タンパク質、ポリフェノール、多糖類)で補完することができる。
【0031】
この目的のために、数通りの方法が可能であり、当業者に周知のことである:
限外濾過:予め希釈されたジュースを、続けて有機または無機膜により1kDaと20kDaとの間の、好ましくは3kDaと10kDaとの間のカットオフ閾値で一極集中させることに基づく透析濾過ステップ(Girard B. and Fukumoto L. R. Membrane processing of fruit juices and beverages: a review. Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 2000, 40(2):91−157);
Amberliteタイプの吸収剤ポリマー性樹脂XADのカラムに通す;
水性アルコール(任意の比率の水とC1からC4までのアルコールとの混合物)または酸性pH水溶液による抽出(Bronnum−Hansen K. and Flink J.M. Anthocyanin colorants from elderberry (Sambucus nigra L.) IV. Further studies on production of liquid extracts, concentrates and freeze dried powders. Int. J. Food Sci Tech 1986, 21(2):605−614; Lee J. and Wrolstad R.E. Extraction of Anthocyanins and polyphenolics from blueberry processing waste. J. Food Sci. 2004, 69(7):564−573)。この抽出は、好ましくは、乾燥して粉砕された果粒または新鮮果粒からの裏ごしに直接行うことができる。
【0032】
生じた抽出物は、ブリックス度を増大させ、微生物汚染に関して安定化するために、(50℃を超えない温度で真空下に)熱的に濃縮することができる。単独でまたは支持体(例えばマルトデキストリン、ラクトース等)を用いて乾燥することもできる。
【0033】
得られた補完後のジュースは、好ましくはブリックス度が40°と60°との間であり、アントシアンが固体含有率を基準にして3重量%と25重量%の間、およびタンパク質(ケルダール法、N×6.25)は5重量%と10重量%の間である。
【0034】
好ましくは、組成物中における単位用量当たりのニワトコ固形分(elder solid)の量は、本発明によれば、約100mgと約1gとの間である。より好ましくは、組成物は、単位用量当たり約150mgと約500mgとの間のニワトコ固形分、より好ましくは、単位用量当たり約150mgと300mgとの間のニワトコ固形分、特に好ましくは単位用量当たり200mgと250mgとの間のニワトコ固形分を含む。
【0035】
本発明の範囲内で、《単位用量》という用語は1回の用量で投与される本発明による組成物の量を指す。好ましくは、本発明による単位用量は、例えば100または125mlのヨーグルト、1gのカプセル、または2gの錠剤に相当することができる。したがって、単位用量当たりの組成物の重量に関わらず、ニワトコ固体および/またはL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルス菌株の量は一定のままである。好ましくは、投与計画は1日当たり2単位の用量である。
【0036】
本発明の範囲内で最も適当な1つのL.パラカゼイ菌株は、1994年12月30日に、CNCM(Collection Nationale de Cultures of Microorganisms、28 rue du Docteur Roux、Paris)に参照番号I−1518で寄託したL.パラカゼイ菌株である。参照番号DN−114 001またはL.casei defensis(登録商標)(商品名)としても知られるこの菌株は、特許EP0794707の主題でもある。気道病原性微生物(インフルエンザウイルスを含む)に特異的な全身性免疫応答の増強におけるこの菌株の効果は、特許EP1283714に記載されており、ワクチン接種後のインフルエンザに対する防護の増強におけるその効果は、特許出願FR2912657に記載されている。
【0037】
ラクトバチルス・カゼイおよびパラカゼイの学名は、これまで、改良に対する要求の主題であって、それは現在も未だ論争されている。文献でL.カゼイまたはL.パラカゼイ亜種パラカゼイと称される菌株の大部分は、現行の学名に合わせるにはラクトバチルス・パラカゼイ亜種パラカゼイと命名できる、現行では同じ種の構成員である。
【0038】
これらの細菌の菌株は、他の乳酸菌と組み合わせて、またはヨーグルト発酵物、即ちラクトバチルス・ブルガリクスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスと組み合わせて使用することができる。
【0039】
したがって、L.パラカゼイがヨーグルト発酵物と組み合わせて使用されるとき、前記組成物は、1ml当たり少なくとも10、および好ましくは5×10と2×10との間のS.サーモフィルス細胞、および1ml当たり少なくとも5×10、および好ましくは10と5×10との間のL.ブルガリクス細胞をさらに含むことができる。
【0040】
本発明の範囲内で最も適当な1つのL.ブルガリクス菌株は、参照番号I−2787でCNCMに寄託されたL.ブルガリクス菌株である。
【0041】
本発明の範囲内で最も適当な1つのS.サーモフィルス菌株は、参照番号I−2130でCNCMに寄託されたS.サーモフィルス菌株である。
【0042】
これら菌株からの細菌は、生きているまたは生きていない細菌の菌体の形態で、および細菌溶解産物の形態でも、または細菌画分の形態でも使用することができる。
【0043】
これらの細菌は、それらの生存を向上させるために、特許出願WO2005/070221に記載されたように、植物性脂肪で被覆することもできる。
【0044】
好ましくは、組成物は、単位用量当たり1×10CFUから1×1011CFUのL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスを含むであろう。
【0045】
L.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの毎日の用量は10CFUと1010CFUとの間が有利である。
好ましくは、毎日の投与計画は1日当たり2単位の用量である。
【0046】
本発明の特定の一態様によれば、組成物は、単位用量当たり、
100mgから1g、好ましくは150mgから500mg、有利には150mgから300mg、およびより好ましくは200mgから250mgのニワトコ固体;および
1×10から1×1011のL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルス;
を含む。
【0047】
本発明の特定の一態様によれば、組成物は、単位用量当たり、
3mgから200mg、好ましくは10から100mgおよびより好ましくは20mgから50mgのニワトコアントシアン;
2mgから100mg、好ましくは10mgから20mgのニワトコタンパク質;および
1×10から1×1011のL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルス;
を含む。
それと共に、有利なことに相乗効果が記録されている。
【0048】
ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの菌株との本発明による組合せは、非特異的免疫応答を誘発/刺激する優れた能力を示し、したがって食品および/または薬剤分野におけるその利点を示す。
【0049】
本発明による組成物は、食品および/または薬剤分野において、経口または舌下投与用に普通に使用されるいかなる生薬の形態で好ましく見出され得る。
【0050】
食品の場合には、これは、特に新鮮な乳製品、発酵乳製品、ヨーグルト、発酵乳、乳幼児用ミルク、粉末、飴、野菜ジュース、飲料、および、好ましくは新鮮な乳製品、フルーツおよび/または野菜ジュース、またはフルーツピューレからなる群から選択されるそれらの混合物であり得る。
【0051】
フルーツは、リンゴ、オレンジ、レッドベリー、イチゴ、モモ、アンズ、スモモ、ラズベリー、ブラックベリー、アカフサスグリ、レモン、グレープフルーツ、バナナ、パイナップル、キーウィー、セイヨウナシ、サクランボ、ココナツ、パッションフルーツ、マンゴー、イチジク、ルバーブ、メロン、エキゾチックフルーツ、ライチー、ブドウ、ブルーベリー、またはそれらの混合物からなる群から選択するのが有利である。
【0052】
好ましくは、本発明による食品は新鮮な乳製品である。発酵乳製品であることが有利である。特に有利なのは、新鮮なフルーツに基づく乳製品である。
【0053】
新鮮なフルーツに基づく乳製品に関して、ニワトコ抽出物は、フルーツ製剤による最終製品に添加されることが好ましい。L.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルス菌株は、発酵物として順に乳製品基剤中に混合される。
【0054】
「発酵乳製品」により、それはより具体的にヒト消費用に準備された発酵乳製品、即ち、発酵乳製食品と理解されるべきである。本出願において、発酵乳およびヨーグルトはより特定して提供される。前記発酵乳製食品は、あるいは「白チーズ」または「プティ・スイス」であってもよい。
【0055】
本明細書中で使用される、「発酵乳」および「ヨーグルト」という用語は、乳製品産業の分野におけるそれらの通常の意味、即ちヒト消費用を意図した、乳製基質の酸性乳酸発酵から生じる製品という意味を有する。これらの製品は、果物、植物、糖などの第2の成分を含むことができる。例えば、1988年12月31日にJournal Officiel de la Republique Francaiseで公布された発酵乳およびヨーグルトに関する1988年12月30日のFrench Order No.88−1203を参照されたい。「国際食品規格(Codex Alimentarius)」(FAOおよびWHOの援助の下に国際食品規格委員会(Commission of the Codex Alimentarius)により作成され、FAOのInformation Divisionによって公開された。http://www.codexalimentarius.netでオンライン利用が可能)も参照されたい;より具体的には国際食品規格「Codex Standards for milk and dairy products」の12巻、および規格「CODEX STAN A−11(a)−1975」を参照されたい)。
【0056】
したがって、本出願において、「発酵乳」という用語は、低温殺菌と少なくとも同等な工程にかけられて、各製品に特徴的な種に属する微生物を接種された乳製基質で調製された乳製品を示すためにだけ使用される。「発酵乳」は、使用される乳製基質の構成要素を減ずる如何なる工程にもかけられておらず、および特に凝塊の排出にかけられていない。「発酵乳」の凝集は使用される微生物の活性から生じるもの以外の他の手段により得られるべきではない。したがって実際には、「発酵乳」という用語は、一般にヨーグルト以外の他の発酵乳を示すのに使用されて、国により、例えば、「ケフィア」、「クミス」、「ラッシー」、「ダヒ」、「レーベン」、「フィルミョルク」、「ヴィリ(Villi)」、「アシドフィルスミルク」と称することができる。
【0057】
「ヨーグルト」という用語に関しては乳部分を基準にして1グラム当たり少なくとも1000万個の細菌数が完成製品中に生きて残るはずの前記ラクトバチルス・ブルガリクスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスに特定される好熱性乳酸菌の開発により、伝統的におよび一貫して得られる発酵乳を指して使用される。幾つかの国においては、ヨーグルトの生産における他の乳酸菌の添加、および特にビフィズス菌および/またはラクトバチルス・アシドフィルス菌株の追加使用が法規で認可されている。これらの追加の乳酸菌株は完成製品に、腸内菌叢の均衡を助長する、または免疫系を制御する性質などの種々の性質を付与することを狙っている。
【0058】
発酵乳基質中に含有される遊離の乳酸の量は、消費者に販売される時点で100g当たり0.6g未満であるべきではなく、且つ乳部分に提供されるタンパク質分含有率は通常乳のそれ未満であるべきではない。本出願における「白チーズ」または「プティ・スイス」という名は、熟成させない、無塩の、乳酸菌のみを用いて発酵させた(乳酸発酵に他ならない発酵)チーズだけを指して使用される。白チーズ中の固体含有率は、完全に乾燥させたときに、白チーズ100g当たり15g若しくは10gまで、またはその脂肪含有率が20gより25%高いかどうかにより、最大で丁度20gにまで下げることができる。白チーズの固体含有率は、13%と20%との間である。プティ・スイスの固体含有率に関しては、プティ・スイス100g当たり23g以上である。一般には25%と30%との間である。白チーズおよびプティ・スイスは、通常共通して、本発明の技術分野において伝統的に使用される《コテージチーズ》と称される。
【0059】
好ましくは、新鮮な乳製品は、攪拌ヨーグルト、飲むヨーグルト、コテージチーズおよび発酵乳を含むヨーグルトから選択される。
【0060】
本発明の意味の内で、《栄養補助食品》は通常の食事を補完することを意図し、且つ単独若しくは組合せで食餌療法のまたは生理学的効果を有する栄養分または他の物質が濃縮された供給源である食品を指す。
【0061】
好ましくは、栄養補助食品はビタミンおよび/またはミネラルおよび/または微量元素を含むことができる。
【0062】
これらのビタミンは、特にビタミンA、E、C、およびB群ビタミン、特にビタミンB6を含む。有利には、これらはビタミンC、EおよびB6である。
【0063】
ビタミンA(レチノールまたはカルテノイド)、ビタミンEおよびビタミンCは、3種の主要な抗酸化性ビタミンである。実際に、これらの抗酸化性ビタミンは、過剰な産生が多くの病態、特に心血管、免疫、癌、皮膚、加齢の加速、神経変性疾患などの原因となる、酸素代謝から生じるフリーラジカルの産生を制御する能力を有する。
【0064】
特に、ビタミンCはよく知られた抗酸化剤であり、水に可溶である。ヒトは必要なビタミンC補給を外部供給源に依存している。したがって、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、またはそれらの混合物は、ビタミンCの供給源である。
【0065】
ビタミンEもよく知られた抗酸化剤である。ビタミンEは、通常の酸化剤に対して生命維持に必要な細胞機能を保護するために、ビタミンCと相乗的に機能することができる。α−トコフェリルアセテート、トリメチル−トコフェリルアセテートおよび/またはビタミンEスクシネートはビタミンEの供給源である。
【0066】
ビタミンBは、ビタミンB1またはチアミン、ビタミンB2またはリボフラビン、ビタミンB3(PP)またはニコチンアミド、ビタミンB5またはパントテン酸、ビタミンB6またはピリドキシン、ビタミンB8(H)またはビオチン、ビタミンB9または葉酸、ビタミンB12またはシアノコバラミンを含む水溶性ビタミン群を形成する。
【0067】
好ましくは、ミネラルは、鉄、亜鉛、セレン、クロム、銅およびそれらの混合物から選択される。
【0068】
亜鉛は、酸化剤に対する防御に直接関与するこれらの酵素の補助因子として抗酸化作用を有する。酸化亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、乳酸亜鉛または硫酸亜鉛は、本発明による組成物に、単独でまたは混合物として使用することができる。グルコン酸亜鉛が好ましい。
【0069】
セレンも、酸化剤に対する防御に直接関与するこれらの酵素(グルタチオンペルオキシダーゼなど)の補助因子として抗酸化作用を有する。
【0070】
栄養補助食品または医薬の場合に、以下の生薬形態(galenic form)を考えることができる。すなわち、内服用錠剤、チュアブル錠、発泡錠、カプセル剤、トローチ剤、丸薬、散剤、顆粒剤、経口液剤または懸濁剤および舌下およびバッカルの投与形態である。好ましい生薬の形態は錠剤またはカプセル剤である。
【0071】
固体組成物が錠剤の形態で調製されるとき、主要な有効成分は、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはアラビアゴムなどの薬剤担体と混合することができる。錠剤は、スクロース若しくは他の適当な材料で被覆することができ、または持続する若しくは遅延する作用を有するように加工して、所定量の有効成分を連続的に放出することができる。
【0072】
カプセル製剤は、有効成分を希釈剤と混合して、生じた混合物を軟質または硬質のカプセル中に充填することにより調製される。
【0073】
シロップ剤またはエリキシル剤の形態の製剤は、有効成分を、甘味剤、防腐剤、並びに着香剤および適当な着色剤と一緒に含むことができる。
【0074】
水分散性散剤または顆粒剤は、有効成分を、分散剤または湿潤剤、または懸濁剤、並びに味覚矯正剤または甘味剤との混合物として含むことができる。
【0075】
本発明の他の目的は、医薬として用いられる本発明による組成物である。
【0076】
本発明の他の目的は、免疫を刺激しおよび/または免疫防御を増強し、および/または抗感染性および/または抗炎症応答を促進するための本発明による組成物である。
【0077】
本発明の他の目的は、呼吸器および/または腸感染の治療および/または予防に用いられる組成物である。
【0078】
本発明の他の目的は、特に1型単純ヘルペスウイルス、RSウイルス、およびインフルエンザ(Aおよび/またはBおよび/またはC)およびパラインフルエンザウイルスによる感染により引き起こされる症状、好ましくは、特にインフルエンザ(Aおよび/またはBおよび/またはC)ウイルスにより引き起こされるインフルエンザ病態の症状の治療および/または予防に用いられる組成物である。
【0079】
本発明による組成物は、インフルエンザウイルス(オルトミクソウイルス、インフルエンザA、BまたはC)による感染により引き起こされるインフルエンザ病態の症状の治療および/または予防に特に適する。これらの症状には、感冒、鼻炎、咳、鼻粘膜の炎症(鼻漏、鼻腔閉塞、くしゃみ)、咽喉炎(種々の発現:痛み、嚥下困難)、発熱、頭痛、筋痛、疲労が含まれる。
これらの《冬の病気》は、我々の免疫防御の弱体化に関連する。
【0080】
本発明の他の目的は、食品、栄養補助食品または医薬を製造するための組成物の使用である。
【0081】
本発明の他の目的は、呼吸器および/または腸感染の治療および/または予防を意図する医薬を製造するための組成物の使用である。
【0082】
本発明の他の目的は、1型単純ヘルペスウイルス、RSウイルスおよびインフルエンザ(Aおよび/またはBおよび/またはC)ウイルスおよびパラインフルエンザウイルスによる感染の症状、好ましくは特にインフルエンザ(Aおよび/またはBおよび/またはC)ウイルスにより引き起こされるインフルエンザ病態の症状の治療および/または予防を意図する医薬を製造するための組成物の使用である。
【0083】
本発明の他の目的は、免疫の刺激および/または抗感染性および/または抗炎症応答の助長に用いられる医薬を製造するための組成物の使用である。
【0084】
さらに、本発明の他の目的は、ニワトコ抽出物とL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスの少なくとも1つの菌株との組合せに基づく、経口投与を含む免疫防御を増強するための方法を提供することである。
添付図を参照して説明する:
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】ニワトコ抽出物単独により、またはL.パラカゼイ:PBMCの比が4.5:1のL.パラカゼイとの組合せにより誘発されたIL−10の産生を示す。 図1の凡例 / 黒丸(●)− ニワトコ抽出物 / 白丸(○)− ニワトコ+L.パラカゼイCNCM I−1518)、理論値 / 黒菱形(◆)− ニワトコ+L.パラカゼイCNCM I−1518)、実験値
【図2】L.パラカゼイ単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIFN−γの産生を示す。 図2の凡例 / 黒丸(●)−L.パラカゼイCNCM I−1518/ 白丸(○)−(L.パラカゼイCNCM I−1518+ニワトコ)、理論値 / 黒菱形(◆)−(L.パラカゼイCNCM I−1518+ニワトコ)、実験値
【図3】L.パラカゼイ単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生を示す。 図3の凡例 / 黒丸(●)−L.パラカゼイCNCM I−1518 / 白丸(○)−(L.パラカゼイCNCM I−1518+ニワトコ)、理論値 / 黒菱形(◆)−(L.パラカゼイCNCM I−1518+ニワトコ)、実験値
【図4】L.カゼイ菌株単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生を示す。 図4の凡例 / 黒丸(●)− L.カゼイ/ 白丸(○)−(L.カゼイ+ニワトコ)、理論値/ 黒菱形(◆)−(L.カゼイ+ニワトコ)、実験値
【図5】L.ブルガリクス単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生を示す。 図5の凡例 / 黒丸(●)−L.ブルガリクスCNCM I−2787 / 白丸(○)−(L.ブルガリクスCNCM I−2787+ニワトコ)、理論値 / 黒菱形(◆)−L.ブルガリクスCNCM I−2787+ニワトコ)、実験値
【図6】S.サーモフィルス単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生を示す。 図6の凡例 / 黒丸(●)−S.サーモフィルスCNCM I−2130 / 白丸(○)−(S.サーモフィルスCNCM I−2130+ニワトコ)、理論値 / 黒菱形(◆)−(S.サーモフィルスCNCM I−2130+ニワトコ)、実験値
【図7】L.ブレビス菌株単独によりまたは10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生を示す。 図7の凡例 / 黒丸(●)−L.ブレビス / 白丸(○)−(L.ブレビス+ニワトコ)、理論値 / 黒菱形(◆)−(L.ブレビス+ニワトコ)、実験値
【図8】担体(緑)、完全剤形(1500mg/kg;赤)、L.パラカゼイDN−114 001+乳製品ミックス(393mg/kg;青)、ニワトコ果粒抽出物(296mg/kg;紫)またはビタミン+ミネラル(282mg/kg;灰色)を投与されたマウスからのNK細胞の細胞傷害活性を現す。P値:担体と完全剤形の比較。 図8の凡例 / 黒四角−完全剤形 / 黒三角(▲)−ビタミン+ミネラル / 黒菱形(◆)−ニワトコ果粒抽出物 / 点線(…)− 担体 / 黒丸(●)−L.パラカゼイ+乳製ミックス
【0086】
本発明は、本発明による組成物の特定の実施形態である、非限的的な以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【実施例】
【0087】
実施例1:本発明の範囲内で使用されるニワトコ抽出物の調製
ニワトコ抽出物は、アントシアンを富化したニワトコ果粒ジュースから得て、マルトデキストリンに加えて乾燥する。富化は下記の方法による膜濾過工程を使用して実施した:26リットルの清澄化されたニワトコジュースを284リットルの水(1容量のジュース当たり11容量の水)で希釈する。生じた310リットルを攪拌して45℃に加熱し、次にジュース1容量当たり7容量の水(即ち181L)を添加しながら第1の5kDa膜で透析濾過する。続いて透析透過液を限外濾過により5kDa膜(5.8mの単位表面積を有する5/10kDのパイロット膜)で濃縮する。限外濾過濃縮水を真空下に50℃を超えない温度で加熱濃縮し、次にマルトデキストリン支持体にマルトデキストリンの量が30%(w/w)以下になるように加えて微細化する。生じる抽出物の特性は:
アントシアン含有率:抽出物の固体含有率を基準にして10〜14重量%(J Agric Food Chem 2004、52、7846−7856)に記載されたHPLC法によりシアニジン−3−グルコシドとして表される)
タンパク質含有率:抽出物の固体含有率を基準にして5〜7重量%(ケルダール法によるN×6.25)。
【0088】
実施例2:末梢血単核細胞(PBMC)におけるニワトコ抽出物と組み合わせたL.パラカゼイ菌株CNCM I−1518の免疫調節剤効果のインビトロの検討
【0089】
材料および方法
末梢血単核細胞(PBMC)は、健常被験者から単離して再懸濁し、24ウェルのプレート中に0.5×l0細胞/ウェルで分配する。これらのPBMCを、種々の濃度のニワトコ抽出物(3、10、30、100μg/mlのPBMC細胞培養上清)と共に、ある量のL.パラカゼイ(PBMC1細胞当たり4.5細胞のL.パラカゼイ)を存在させ若しくは存在させずに、またはこれとは別に異なるL.パラカゼイ:PBMC比(0.5:1、1:1、2:1、4.5:1)でニワトコ抽出物を10μg/ml(PBMC細胞培養上清)で存在させ若しくは存在させずにのいずれかで、終夜37℃でインキュベートする。
【0090】
使用されるニワトコ抽出物は実施例1により調製した。
【0091】
培養上清はサイトカイン(IL−10およびIFN−γ)をフローサイトメトリーにより測定するために回収した。
【0092】
この組合せにおいて、組み合わされたニワトコとL.パラカゼイとは同じ測定単位を有さず、即ちそれぞれμg/mlでの濃度および細菌:PBMCの数の比である。
【0093】
ニワトコ抽出物+L.パラカゼイの組合せが相乗効果を生じるかを決定するために、本発明者らは、Etievant C、Kruczynski A、Barret J Mらの報告《F 11782, a dual inhibitor of topoisomerases I and II with an original mechanism of action in vitro, and markedly superior in vivo antitumour activity, relative to three other dual topoisomerase inhibitors, intoplicin, aclarubicin and TAS−103》Cancer Chemother.Pharmacol.2000;46:101−113に記載された方法を使用した。
【0094】
この報告は、理論曲線のプロットと比較して実験結果の比較および解釈を教示する。
【0095】
解釈は1つの化合物についての可変実験データ(例えば、増大するニワトコ抽出物濃度)および第2の化合物についての固定した実験データ(例えば細菌:PBMC数の固定した比)に基づく。
【0096】
図1中の理論曲線は、比を4.5:1に固定したL.パラカゼイ:PBMCと組み合わせたある範囲のニワトコ抽出物用量により誘発されたIL−10の産生を示し、ニワトコ単独に対する曲線の各実験の点(●)に、比が4.5:1のL.パラカゼイ:PBMCの寄与を加えることによりプロットされた。実験的に決定されたこの寄与は、2.4pg/mlのIL−10である。
【0097】
図1についてのデータの表
【表1】

【0098】
図2中の理論曲線は、10μg/mlに固定された濃度のニワトコ抽出物と組み合わされたある範囲のL.パラカゼイ用量により誘発されたIFN−γの産生を示し、L.パラカゼイ単独に対する曲線の各実験点(●)に、10μg/mlのニワトコ抽出物の寄与を加えることによりプロットされた。実験的に決定されたこの寄与は、5pg/mlのIFN−γである。
【0099】
図2についてのデータの表
【表2】

【0100】
結果
図1および2は得られた結果を示す:
− 図1は、単独のまたは4.5:1の比のL.パラカゼイ:PBMCと組み合わせたニワトコ抽出物により誘発されたIL−10産生を示す。
− 図2は、単独のまたは10μg/mlのニワトコ抽出物と組み合わせたL.パラカゼイより誘発されたIFN−γ産生を示す。
【0101】
単独のまたは特定の比(4.5:1)のL.パラカゼイ:PBMCと組み合わせたニワトコ抽出物により誘発された非特異的免疫応答に対する効果を検討した。
【0102】
4.5:1の比のL.パラカゼイ:PBMCで得られたサイトカイン濃度は2.4pg/mlである。
【0103】
実験的に得られた結果と理論曲線値との比較は、L.パラカゼイがニワトコ抽出物単独の効果を増強することを示す。すなわちこの組合せは、2つの効果(一方はニワトコ抽出物および他方はL.パラカゼイ)の合計よりもはるかに高いIL−10産生を生じる。
【0104】
本発明者らは、種々の比のL.パラカゼイ:PBMCのγ−インターフェロン産生に対する効果も、単独でまたは固定された濃度(10μg/ml)のニワトコ抽出物との組合せで検討した。
【0105】
10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は5pg/mlである。
【0106】
得られた種々の曲線の比較はニワトコ抽出物がL.パラカゼイの効果を増強することを示す。すなわち、この組合せは、2つの効果(一方はニワトコ抽出物および他方はL.パラカゼイ)の合計よりもはるかに高いIFN−γ産生を生じる。
【0107】
結論:
ニワトコ抽出物とL.パラカゼイCNCM I−1518(DN−114 001)とは非特異的免疫応答に対して相乗的に作用し、したがってヒト免疫系細胞を感染性侵襲または病的炎症性過程に対して、より反応しやすくする。
【0108】
実施例3:菌株特異性のインビトロの検討
材料および方法
末梢血単核細胞(PBMC)は健常被験者から単離し、再懸濁して24ウェルプレート中に0.5×l0細胞/ウェルで分配した。これらのPBMCを、異なった菌株:PBMC比(0.5:1、1:1、2:1、4.5:1)で、ニワトコ抽出物を10μg/ml(PBMC細胞培養上清)で存在させまたは存在させずに、終夜37℃でインキュベートする。
【0109】
使用したニワトコ抽出物は実施例1により調製した。5つの菌株をこのインビトロの検討のために試験した:即ちラクトバチルス・パラカゼイ(CNCM I−1518)菌株、ラクトバチルス・カゼイ菌株、ラクトバチルス・ブルガリクス(CNCM I−2787)菌株、ストレプトコッカス・サーモフィルス(CNCM I−2130)菌株およびラクトバチルス・ブレビス菌株である。
【0110】
培養上清を、ELISAによりサイトカインIL−6を測定するために回収した。
ニワトコ抽出物/菌株の組合せが相乗効果を生じるかを決定するために、Etievant C.らの報告(上記を参照されたい)に記載された方法を使用した。この報告は、理論曲線のプロットと比較して実験結果の比較および解釈を教示する。
【0111】
解釈は、増加する数の細菌:PBMC比についての可変実験データとニワトコ抽出物濃度について固定された実験データとに基づく。
【0112】
図3〜7中の理論曲線は、10μg/mlに固定された濃度のニワトコ抽出物との組合せで、ある範囲の菌株用量により誘発されたIL−6の産生を示し、菌株単独についての曲線の各実験の点(●)に10μg/mlのニワトコ抽出物の寄与を加えることによりプロットされた。この寄与は各実験について実験的に決定した。
【0113】
結果
図3から7は得られた結果を示す:
− 図3は、L.パラカゼイ単独または10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生(10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は7.7ng/mlである)を表し;
− 図4は、L.カゼイ単独または10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生(10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は2.2ng/mlである)を表し;
− 図5は、L.ブルガリクス単独または10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生(10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は2.0ng/mlである)を表し;
− 図6は、S.サーモフィルス単独または10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生(10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は2.4ng/mlである)を表し;
− 図7は、L.ブレビス単独または10μg/mlのニワトコ抽出物との組合せにより誘発されたIL−6の産生(10μg/mlの濃度のニワトコ抽出物で得られたサイトカイン濃度は6.0ng/mlである)を表す。
【0114】
固定されたニワトコ抽出物濃度(10μg/ml)と組み合わせないかまたは組み合わせた、種々の菌株:PBMC比のIL−6産生に対する効果を、5種の異なった菌株について検討した。
【0115】
L.パラカゼイを用いて実施した実験(図3)は、ニワトコ抽出物がL.パラカゼイの効果を増強することを確証する。すなわち、この組合せは2つの効果(一方はL.パラカゼイおよび他方はニワトコ抽出物)の合計よりもはるかに高いIL−6産生を生じる。
【0116】
このタイプの相乗効果は、L.カゼイ、L.ブルガリクス、またはS.サーモフィルスについても観察されたが、L.ブレビスについては観察されず、相乗的効果は菌株特異的であることを示した。
【0117】
結論:
ニワトコ抽出物とL.パラカゼイとは非特異的免疫応答に対して相乗的に作用し、したがってヒト免疫系細胞を感染性侵襲または病的炎症性過程に対して、より反応しやすくすることが確認された。
【0118】
さらに相乗的効果は菌株特異的であることが観察された。ニワトコ抽出物とL.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスとは、非特異的免疫応答に対して相乗的に作用する。
【0119】
反対に、ニワトコ抽出物とL.ブレビスとの関係について相乗効果は観察されなかった。したがって、この菌株は他の研究のために陰性対照として役立ち得る。
【0120】
実施例4:完全剤形を投与されるマウスの脾細胞の細胞傷害活性のインビボにおける検討

実施例2および3で示したように、ニワトコ果粒抽出物およびL.パラカゼイDN−114 001などのプロバイオティクスはインビトロにおいて、増大したサイトカイン産生を生じるように相乗的に作用する。この検討の目的は免疫機能に対する完全剤形のインビボでの効果を評価して、その活性を各成分群:
− L.パラカゼイ+乳製ミックス;
− ニワトコ果粒抽出物;
− ビタミンおよび無機塩のミックス=ビタミン+ミネラル;
と比較することであった。
【0121】
使用したニワトコ抽出物は実施例1により調製した。
完全剤形は以下の成分の組合せ、すなわちL.パラカゼイ+乳製品ミックス、ニワトコ果粒抽出物、ビタミンと無機塩と賦形剤とのミックスである。成分の3群の各成分についての投与量は、完全剤形中に存在する成分の対応する量に等しい。
【0122】
この目的のために、本発明者らはナチュラルキラー(NK)細胞の機能をモニターすることを選定する。実際に、NK細胞を含む生来の免疫応答は、呼吸器ウイルスに対する宿主の防御にとって決定的に重要である。NK細胞は、細胞傷害性機能を示すことにより、ある種のウイルス、寄生虫、および微生物病原体に対する免疫応答の初期相において重要な役割を演ずる(3)、他と全く別なリンパ球亜集団を現す。その上、適応性の免疫応答の性質に影響することにおいてNK細胞が重要な機能を有するという証拠が増加している(1;2)。
【0123】
材料および方法
動物および処置
7週齢のBALB/c雌マウスを、5群の1群に無作為に割り当てた:
第1群→担体(滅菌水)
第2群→完全剤形(1500mg/kg)
第3群→L.パラカゼイDN−114 001+乳製品ミックス(393mg/kg)
第4群→ニワトコ果粒抽出物(296mg/kg)
第5群→ビタミン+ミネラル(282mg/kg)
【0124】
第0日、第1日および第2日に、10ml/kgの試験製品を経口的に処置した。第9日に、マウスを屠殺して脾臓を取り出した。
【0125】
細胞傷害性アッセイ
標的に対する細胞溶解活性はCytoTox 96非放射性細胞傷害性アッセイを使用して決定した。脾細胞をマウスから捕集して、YAC−1細胞(マウスTリンパ腫細胞ライン)を標的細胞として、適当なエフェクター対標的細胞の計数比で、96ウェルV底プレート中で共培養した。37℃で4時間インキュベートした後、放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の量を上清中で測定した。放出されたLDH量はLDH基質を使用して測定し、490nmで評価した。各マウスについて、3通りのエフェクター/標的比(100:1、50:1、および25:1)における平均のNKの細胞傷害性(%)を以下の式を使用して決定した:
[A490実験放出−(A490エフェクター細胞自発放出+A490標的細胞自発放出)×100]/(A490標的細胞最大放出−A490標的細胞自発放出)。
【0126】
統計分析
統計分析はWindows用のSigmaStat3.5パッケージを使用して実施した。結果は一元配置分散分析を用いて、続いてHolm−Sidak法を使用する多重比較群(multiple comparison group)により評価した。前例において、P<0.05で統計的に有意と見なした。
【0127】
結果
完全剤形または各成分を投与されたマウスの脾細胞の細胞傷害活性を研究した。完全剤形で免役されたマウスの脾細胞は、担体(水)を投与されたマウスに比較して、YAC−1標的細胞に対して有意に増大した細胞傷害活性を発揮した(図8)。対照的に、個々の成分で免役されたマウスは、YAC−1標的細胞に対する細胞傷害活性を増大することはなかった。
【0128】
結論
これらのデータは、NK細胞の活性化に対して個々では効率の悪い成分の組合せが、適当な量で組み合わされると十分有効になることを明確に示す。
【0129】
参考文献
1.Di Santo, J.P. Natural killer cell developmental pathways: a question of balance. Annu. Rev. Immunol. 24, 257−286 (2006)
2.Vivier, E., Tomasello, E., Baratin, M., Walzer, T. & Ugolini, S. Functions of natural killer cells. Nat. Immunol. 9, 503−510 (2008)
3.Lodoen, M. B. & Lanier, L.L. Natural killer cells as an initial defense against pathogens. Curr. Opin. Immunol. 18, 391−398 (2006)
【0130】
実施例5:栄養補助食品
如何なるタイプの栄養補助食品も考慮に入れることができた。例として、単位用量は1gのカプセルまたは2gの錠剤にすることができた。一般的組成物は以下の通りである:
ニワトコ固体(実施例1による) 30%
L.パラカゼイDN−114 001を含む発酵乳粉末 40%
ビタミンミックス(ビタミンC、EおよびB6) 24〜27%
グルコン酸亜鉛(亜鉛) 2〜5%
セレン酸ナトリウム(セレン) 0.1〜0.5%
それ故、調製工程の終了時の錠剤またはカプセルのL.パラカゼイDN−114 001の個体数は、2×1010CFUである。
【0131】
この栄養補助食品は、当業者によく知られた方法により作製される。例として錠剤またはカプセルを得るために、特に、L.パラカゼイ菌株とニワトコ抽出物とは、互いに独立に組成物に添加される。
【0132】
実施例6:発酵乳製品
単位用量は100mlの発酵乳製品に相当する。しかしながら、例えば、100gのActimel(登録商標)は、考慮されるレシピが低カロリーかまたは標準かに依存して94〜97mlの製品に相当することは注意すべきである。
【0133】
発酵乳製品は(重量%で):
− L.パラカゼイDN−114 001菌株(CNCM I−1518)(Actimel(登録商標)タイプの製品)により、およびラクトバチルス・ブルガリクスおよびストレプトコッカス・サーモフィルスの市販の菌株により発酵した95%の乳製品;
− 実施例1に記載したような濃縮されたニワトコ抽出物ジュースを5%含有する、5%の伝統的な赤色フルーツ製剤;
を含有する。
【0134】
発酵乳製品の固体含有率は、乾燥前で約17%である。
【0135】
発酵乳製品の組成(標準成分、重量%):
− 標準的スキムミルク77%(乳タンパク質3.64%)
− 低温殺菌されたクリーム9.6%
− 濃縮されたスキムミルク5.7%
− スキムミルクタンパク質0.6%
− スクロース6.6%
− デキストロ−ス(Cargill)0.5%
− DN−114 001(CNCM I−1518)発酵物:10〜10CFU/ml
− 全体的に10CFU/mlから10CFU/mlの個体数のL.ブルガリクスおよびS.サーモフィルスの数種の市販の菌株からなる発酵物。
【0136】
ニワトコ抽出物の濃縮ジュースで補完された伝統的なフルーツ製剤は、熱処理後に発酵乳製品に添加される。
【0137】
完成製品の特性:
この製品100g当たり250mgのニワトコ固体、即ち単位用量に対して、単位用量の固体重量を基準にして1.47重量%のニワトコ固体である。
【0138】
アントシアン含有率:25mg/100g、即ち単位用量に対して、単位用量の固体重量を基準にして0.147重量%のアントシアンである。
L.パラカゼイ個体数:100mlの発酵製品に対して10CFU/mlである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニワトコ抽出物と、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ブルガリクスまたはストレプトコッカス・サーモフィルスの少なくとも1つの菌株との組合せを含み、キャッツクロー、パウダルコ、スクテラリア・バイカレンシスおよびアルテミシニンの混合物を含まない組成物。
【請求項2】
ニワトコ抽出物と、ラクトバチルス・パラカゼイの少なくとも1つの菌株との組合せを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ニワトコ抽出物が、該抽出物の固形分を基準にして0.5重量%と25重量%との間のアントシアン、および抽出物の固形分を基準にして2重量%と10重量%との間のタンパク質を含有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1×10CFU/単位用量と1×1011CFU/単位用量との間の量のL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスを含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
食品、栄養補助食品または医薬である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
乳製品、発酵乳製品、ヨーグルト、発酵乳、乳幼児用ミルク、散剤、トローチ剤、野菜ジュース、飲料およびそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは新鮮な乳製品、果物および/または野菜ジュース、またはフルーツピューレからなる群から選択される食品である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
内服用錠剤、チュアブル錠、発泡錠、カプセル剤、トローチ剤、丸薬、散剤、顆粒剤、経口液剤または懸濁剤、ならびに、舌下およびバッカルの投与形態からなる群から選択される生薬の形態である栄養補助食品または医薬である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
単位用量当たり150mgと300mgとの間、好ましくは200mgと250mgとの間のニワトコ固形分、および単位用量当たり1×10CFUと1×1011CFUとの間のL.パラカゼイ、L.カゼイ、L.ブルガリクスまたはS.サーモフィルスを含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
医薬として用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
免疫を刺激しおよび/または免疫防御を増強しおよび/または抗感染性および/または抗炎症応答を促進するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
特にインフルエンザウイルスによる感染によって引き起こされるインフルエンザ病態の症状の治療および/または予防に用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2012−505862(P2012−505862A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531498(P2011−531498)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063534
【国際公開番号】WO2010/043696
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(500033483)ピエール、ファーブル、メディカマン (73)
【出願人】(500223925)
【氏名又は名称原語表記】COMPAGNIE GERVAIS DANONE
【Fターム(参考)】