説明

ニンニク卵黄を含有する更年期障害の予防及び/又は治療用組成物

【課題】 本発明は、更年期障害の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【解決手段】 ニンニク卵黄を含有することを特徴とする、更年期障害の予防及び/又は治療用組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、更年期障害の予防及び/又は治療用の組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
更年期障害は、更年期に現れる不定愁訴症候群であり、更年期症状と称されることもある。症状としては、ほてり、のぼせ、発汗、冷え性、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠、しびれ、知覚麻痺、肩こり、腰痛、頻尿、疲労感、食欲不振など多岐にわたる。
日本をはじめとする先進国では高齢化が進み、更年期以降の女性の数も著しく増大しており、また女性の労働人口も増加していることから、更年期における健康管理は重要になってきた。
【0003】
更年期障害に対して、エストロゲンなどのホルモンを補充するホルモン補充療法が行われ、更年期障害の改善に役立っている。しかし、ホルモン補充療法は、エストロゲン非依存性の更年期障害に対して有効とはいえないし、また副作用の問題も抱えている。
【0004】
このような状況下で、ホルモン療法に代わる療法が求められている。例えば、特許文献1には更年期障害の予防及び/又は治療のためのコエンザイムQ10を有効成分とする医薬及び食品が、特許文献2には更年期におけるストレス負荷による情動行動の反応低下を軽減するカカオ豆抽出物を含有する飲食品が、特許文献3にはトウキエキスおよびコウジンエキスなどの生薬エキスとビタミンEとを含有する更年期障害による不定愁訴予防・治療用組成物組成物が、それぞれ記載されている。
【特許文献1】特開2004−26734号公報
【特許文献2】特開2001−69946号公報
【特許文献3】特開2004−26780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、更年期障害の予防及び/又は治療に有用な組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、ニンニク卵黄が更年期障害の予防又は治療に有用であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ニンニク卵黄を含有することを特徴とする、更年期障害の予防及び/又は治療用組成物に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物には、更年期障害の各症状を軽減又は治癒するなどして、更年期障害を改善する効果がある。また、その効果は、ニンニクと卵黄との相乗効果である。さらに、ニンニク卵黄は、化学物質と異なり、天然由来であるので、本発明によれば、安全で、長期に服用しても副作用などの心配の少ない組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明においてニンニク卵黄とは、ニンニクと卵黄とを混合したものをいう。ニンニク卵黄は慣用の方法で製造することができ、例えば、特開平4−158759号公報、特開平2−49560号公報、特開昭61−28361号公報、及び特開昭61−199757号公報などにその製法が記載されているが、これらに限定されない。
一例として、ニンニクをミキサーなどで破砕し、そこに卵黄を添加して、低温で混合し、次いで乾燥することにより、粉状物として、又はこれを造粒して顆粒物としてニンニク卵黄を得ることができる。
本発明において、生ニンニクの破砕物と生卵黄とを、低温で、例えば約50〜110℃で、特に約60〜100℃、とりわけ約80℃で、約8〜16時間、特に約10〜14時間、とりわけ約12時間混合して得たニンニク卵黄が、良好な更年期障害改善効果を得る上で好ましい。
【0009】
本発明において使用されるニンニクは、ネギ属ユリ科に属する植物(Allium sativum L.)の鱗茎部である。
ニンニクにはアリイン、γ−グルタミル−S−アリルシステイン、アリチアミン、スコルジニンA、シトラール、ゲラニオール、リナロール、α−及びβ−フェランドレン、プロピオンアルデヒド、イヌリン、アルギニン、並びにクエン酸などが含有される。
また、アリインは、ニンニクに含まれる酵素のアリイナーゼの作用により刺激性成分のアリシンに変化する。その他に、生ニンニクの加工処理により、ジアリル−ジスルフィドなどのアリルスルフィド類、ビニルジチイン、アホエン、S−アリルシステイン、又はS−アリルメルカプトシステインなどが生じてくる。
【0010】
本発明ではニンニクとして、生のニンニクをそのままか、又は皮をむいたものを使用してもよく、あるいは生ニンニクを加工処理したものなどを使用してもよく、特に制限されない。ニンニクの加工処理方法としては、例えば、乾燥後粉末化したり、加熱したり、蒸したり、マイクロ波に照射させたり、酒若しくはアルコールに漬けたり、熟成させたりする方法が挙げられるが、これら方法を組み合わせて使用してもよい。あるいは、水蒸気蒸留などで得られた抽出物などを使用してもよい。また、これらのニンニクを2種以上併用してもよい。本発明では、熱を加えず自然に乾燥させたもの、例えば、収穫時よりも水分が30%程度減少したニンニクを使用してもよい。
【0011】
本発明で使用される卵黄は、例えば、鳥類、特に家禽の卵黄、例えば、ニワトリ、ウズラ、アヒル、カモ、シチメンチョウ、キジ、又はダチョウなどの卵黄、好ましくはニワトリなどの卵黄があるが、これらに制限されない。また、これらを2種以上混合してもよい。
本発明では、有精卵の卵黄も無精卵の卵黄も何れも使用できるが、良好な更年期障害改善効果が得られるという点から、有精卵の卵黄が好ましい。
卵黄に含まれる成分としてレシチンなどが挙げられる。
本発明で卵黄は、生卵黄、卵黄粉末、加糖卵黄及び加塩卵黄などのいずれの形態であってもよく、特に制限されない。また、これらを2種以上併用してもよい。良好な更年期障害改善効果が得られるという点から、生卵黄が好ましい。
【0012】
本発明の組成物中のニンニクと卵黄との配合比は、特に制限されないが、ニンニク100重量部に対して卵黄を5〜100重量部、特に5〜30重量部、とりわけ10〜30重量部含有するのが、良好な更年期障害改善効果を得る上で好ましい。
【0013】
本発明の組成物は、ニンニク卵黄以外に、他の成分、例えば更年期障害の予防及び/又は治療に有用な物質などを含んでいてもよい。例えば、大豆、黒ゴマ、黒豆、黒米、黒松の実、マカ、アントシアニン、及びイソフラボンであり、好ましくはアントシアニン及びイソフラボンである。
【0014】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、添加剤、例えば、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素又は乳化剤などを含有してもよい。
【0015】
本発明の組成物により改善される更年期障害の症状としては、例えば、熱感、冷え性、のぼせ、動悸、頻脈、及び徐脈などの血管運動系症状;頭痛、めまい、不眠、耳鳴、恐怖感、圧迫感、及び記憶力減退などの精神神経障害様症状;しびれ感、知覚過敏、知覚麻痺、及び蟻走感などの知覚障害症状;頻尿及び排尿痛などの泌尿器系障害症状;肩こり、腰痛、関節痛、脊柱痛、筋痛、及び座骨神経痛などの運動器官障害症状;発汗亢進、口内乾燥感、及び唾液分泌増加などの皮膚分泌線障害症状;食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、及び下痢などの消化器系障害症状;疲労感;並びに腹痛などが挙げられる。
【0016】
本発明に係る組成物は、食品として、特に健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品として使用することができる。これら食品は、例えばお茶、ジュースといった飲料水;ゼリー、あめ、チョコレート、チューインガムなどの形態であってもよい。また、本発明に係る食品は、栄養補助食品(サプリメント)として、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、錠剤の形で製造されてもよい。
【0017】
また、本発明に係る組成物は、医薬としても使用することができる。これら医薬は、例えば錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳剤又は懸濁剤の形態で経口投与することができるが、例えば坐剤の形態で直腸内に;あるいは、例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤又は液剤の形態で局部又は経皮的に投与するなど、非経口的に投与することもできる。
【0018】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、ニンニクと卵黄との混合比、投与経路、疾病の種類、剤型、摂取者の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、本発明の組成物を経口摂取する場合には、体重60kgの成人1日当たり有効成分量としてニンニク卵黄を100〜1000mg、好ましくは300〜800mg、より好ましくは300〜400mg摂取することが、良好な更年期障害改善効果を得る上で望ましい。また、摂取期間は、摂取者の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0019】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。また、実施例では%は特に規定されていない限り重量%を意味する。
【実施例】
【0020】
本発明の組成物の更年期障害に対する作用を試験した。試験は二重盲検平行群間比較試験で行った。
【0021】
(1)試験食の調製
ニンニク卵黄は株式会社健康家族製(ニンニク100重量部に卵黄を25重量部含む)を使用した。試験食1としてニンニク卵黄を1カプセル当たり94mg含む軟ゼラチンカプセル剤を、試験食2としてニンニク卵黄を1カプセル当たり188mg含む軟ゼラチンカプセル剤を、それぞれ調製した。またプラセボ食としてニンニク卵黄の代わりにデキストリンを1カプセル当たり188mg含む軟ゼラチンカプセル剤を調製した。
【0022】
(2)被験者
閉経周辺期にあり、事前調査及びクッパーマンの質問表の調査にてほてりの症状を呈することが認められた40〜59歳の女性であって、以下の除外基準に該当しない39名を被験者とした。
除外基準:
ア)既にニンニク卵黄を常用している者
イ)ホルモン補充療法又はホルモンに関係する医薬品を摂取している者
ウ)卵巣又は子宮の摘出手術を受けた者
エ)精神神経系作用薬(抗不安薬、就眠薬、睡眠導入薬、抗うつ薬、抗てんかん薬等)を服用している者
オ)自律神経作用薬(高血圧薬、自律神経調整薬等)を服用している者
カ)血栓溶解に関する医薬品(ワーファリン等)又は血液凝固に関する医薬品(ビタミンK等)を常用している者
キ)食物アレルギー(特に卵又はニンニク)のある者
ク)喘息の疾患のある者
ケ)ニンニク又は卵黄を主成分とする医薬品又は健康補助食品を常用している者
コ)ニンニクを毎日多量に摂取している者
サ)糖尿病、肝疾患、腎疾患、心疾患などの重篤な疾患を有している者
シ)本試験開始時に他の臨床試験に参加中の者
ス)授乳期、妊娠中または試験期間中に妊娠を希望する者
セ)経口避妊薬を常用している者
コ)その他、試験担当医師が不適当と判断した者
【0023】
(3)検査項目
本試験では、問診、身体計測、血液検査・血液生化学検査、尿検査、更年期障害重症度評価を行った。各検査又は評価方法は以下のとおりであった。また、各検査又は評価で得られた値は、各群ごとに平均値±標準誤差で表した。
ア)問診
疾患の有無、ほてり症状の有無、その他自他覚症状の有無を問診した。
イ)身体計測
身長、体重、血圧及び脈拍数を計測した。
ウ)血液検査・血液生化学検査
白血球数、赤血球数、ヘマトクリット値、ヘモグロビン、血小板数、空腹時血糖、GOT、GPT、γ−GTP、ALP、LDH、総コレステロール、中性脂肪、総蛋白、BUN、クレアチニン、尿酸を測定した。
エ)尿検査
蛋白定性、糖定性、pH、潜血を測定した。
オ)更年期障害重症度評価
更年期障害をPOMS(気分プロフィール検査)及びクッパーマン指数により評価した。
POMS(気分プロフィール検査):
POMSは、被験者の気分、感情、情緒などの精神状態を数値で評価したものである。本試験では「診断・指導に活かすPOMS事例集(編者:横山和仁、下光輝一、野村忍、初版第2刷2003年7月10日発行、株式会社金子書房、東京)に記載の方法に準じて測定した。
検査日前1週間における気分に関する65項目の質問に対する回答から被験者の一時的な気分や感情などの精神状態を評価し点数をつけた。そして、これら65項目のうちダミーとして用意した7項目以外の58項目を「緊張−不安」「抑うつ−落ち込み」「怒り−敵意」「活気」「疲労」及び「混乱」の6尺度に分類して、尺度ごとの合計点を算出した。「緊張−不安」「抑うつ−落ち込み」「怒り−敵意」「疲労」及び「混乱」の5尺度では数値が低下した場合、精神状態が改善されたことを示し、「活気」の尺度では数値が上昇した場合、精神状態が改善されたことを示す。
クッパーマン指数:
本試験では「KKSI クッパーマン更年期障害指数(安部変法)使用手引き」(原作者:H.S.Kuppermanら、構成者:安部徹良、森塚威次郎、1996年発行、株式会社三京房、京都)に記載の方法に準じて測定した。
測定日前2、3日における更年期障害に関する17の症状についての質問に対する回答から、各症状の重症度を評価し点数をつけた。そして、これら17症状を「血管運動神経障害」「知覚異常」「不眠」及び「神経質」などの11の症状群に分類し、症状群ごとの合計点を算出し、これをクッパーマン指数とした。これら11症状群のクッパーマン指数を総計して、更年期障害全体の重症度を表すクッパーマン更年期障害指数を求めた。クッパーマン指数及びクッパーマン更年期障害指数の低下は症状が改善されたことを示す。
カ)日誌
プラセボ食又は試験食1若しくは2の摂取状況、自覚症状、及び他の医薬品の服薬状況を被験者に記載させた。
【0024】
(4)試験スケジュール
先ず、前述の被験者を試験期間の初日(試験第1日目)に来院させて、問診、身体計測、血液検査・血液生化学検査、尿検査、及び更年期障害重症度評価を行った。
その2週間後(試験第14日目)に、再度被験者を来院させ、13名ずつプラセボ群、試験食1群及び試験食2群の3群に無作為に割り付けた。
続いて、プラセボ群の被験者にはプラセボ食を、試験食1群の被験者には試験食1を、試験食2群の被験者には試験食2を、それぞれ毎日1回、4カプセル、6週間摂取させた。このようにして摂取されたプラセボ食、試験食1及び試験食2の組成を表1に示した。
また、摂食中は被験者に日誌も付けさせた。
摂食を開始させてから2週間後(試験第28日目)及び6週間後(試験第56日目)に問診、身体計測、血液検査・血液生化学検査、尿検査、及び更年期障害重症度評価を行った。
【0025】
【表1】

【0026】
(5)試験結果
ア)被験者の背景
プラセボ群、試験食1群、及び試験食2群で、それぞれ13名の被験者(計39名)が試験に参加したが、中途で脱落・中止した者はいなかった。試験に参加した被験者の背景を表2に示した。年齢及び身長において群間に不均衡はみられなかった。また、表には示さなかったが、体重、血圧、及び脈拍数においても群間に不均衡はみられなかった。なお、統計解析は一元配置分散分析で行った。
【0027】
【表2】

【0028】
イ)有効性
試験第1日目、第28日目、及び第56日目における、被験者の更年期障害重症度から試験食1及び2の更年期障害に対する有効性を評価した。
統計解析は、同一群内で試験第1日目と、試験第28日目又は第56日目とを比較する場合は群内の対応のあるt検定により、プラセボ群と、試験食1群又は2群とを比較する場合は2標本t検定により、それぞれ検定した。有意水準は両側5%とした。
【0029】
【表3】

【0030】
表3に示したとおり、POMSでは、試験食1群及び試験食2群において「緊張−不安」「抑うつ−落ち込み」及び「怒り−敵意」の各尺度で数値の低下がみられた。特に試験食1群では、プラセボ群と比較しても「緊張−不安」及び「抑うつ−落ち込み」の尺度で有意に数値が低下した。
また、表には示さなかったが、試験食1群及び試験食2群において、摂食前と比較して、「活気」では数値の増加が、「疲労」及び「混乱」では数値の低下が、それぞれみられた。
クッパーマン試験においても、試験食1及び2は、「血管運動神経障害」「知覚異常」「不眠」及び「神経質」の各症状群のクッパーマン指数、並びにクッパーマン更年期障害指数を摂食前より低下させた。
以上の結果から、試験食1及び2は、更年期障害に関する精神状態や症状を改善し、更年期障害の改善に有効であることが示された。
【0031】
ウ)安全性
体重や脈拍は異常を示さなかった。日誌にも特に異常を示す所見は認められなかった。また、本試験期間中に試験食品と関連のある有害事象は見られなかった。
以上から、試験食1及び2は安全性であることが認められた。
【0032】
上記の方法と同様にして、試験食1摂取群と、ニンニク及び卵黄をそれぞれ単独で摂取させた群とを比較した試験も行った。その結果、試験食1はニンニク単独の効果と卵黄単独の効果とを合わせたものよりも優れた更年期障害改善効果を示し、相乗効果を発揮することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明によれば、更年期障害の予防及び/又は治療用組成物を得ることができる。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品又は栄養補助食品などの食品に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニク卵黄を含有することを特徴とする、更年期障害の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
ニンニク卵黄が、ニンニク100重量部に対して卵黄を5〜100重量部含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
食品である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
医薬である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
ニンニク卵黄の経口摂取量が、体重60kgの成人1日当たり100〜1000mgである、請求項3又は4記載の組成物。

【公開番号】特開2006−160614(P2006−160614A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349882(P2004−349882)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(398013554)株式会社健康家族 (9)
【Fターム(参考)】