説明

ニードルパンチングしたガラスマット

本発明は、水を含む組成物によってサイズ処理されている無機ガラスから製造したストランドを含むニードルパンチングストランドから製造したマットであって、該組成物の固形分が1〜30質量%のカップリング剤と30〜99質量%のポリビニルピロリドンを含むことを特徴とするマットに関する。また、本発明は、下記の工程を含む、マットの製造方法にも関する:
a) サイジング処理ストランドを移動ベルト上に付着させまたは投射して、該ベルトによって推進される上記ストランドのブランケットを形成する工程;その後の、
b) 上記ブランケットを貫通し且つ貫通するとき上記ブランケットと実質的に同じ速度でブランケット方向に移動する棘付きニードルにより、1cm2当り1〜25個の穿孔範囲の穿孔密度でもってニードルパンチングする工程。
この方法は迅速且つ有効であり、得られたマットは、手で容易に変形させて、樹脂の注入による複合体の製造(RTM)用のモールド内に入れることができる。また、このマットは、前以って含浸させた材料(SMC)のシート中に組込み、圧力下に成形することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、とりわけ射出法(英語表記“resin transfer molding”に由来するいわゆるRTM法)によって製造するまたはシート成形用化合物(英語表記sheet molding compoundに由来するSMCと同義)から製造する複合材料の補強のために有用である新規なガラス繊維マットに関する。また、本発明に従うマットは、熱硬化性樹脂を直接含浸させて半透明なプレートを製造することができる。RTM法およびシート成形用化合物を使用する方法は、一般に、熱硬化性マトリックスを使用している。しかしながら、本発明に従うマットを熱可塑性マトリックス、とりわけRIM法(英語表示“reinforced injection molding”に由来する)による特にポリウレタンタイプを含む複合体の製造に関連して使用することを除外しない。
本発明によれば、製造する化合物は、とりわけ半透明であり、ストランドは、複合体中で透明的には全くまたはほんの僅かしか識別されない。
【0002】
(技術背景)
複合材料の補強用マットは、好ましくは、下記の特性を示さなければならない:
‐巻取り可能または巻き戻し可能であるための十分な凝集性(貯蔵および輸送);
‐切片に切断し、手で保持し、そして手でモールド内に入れるための十分な凝集性(RTM);
‐マットを取扱うまたはモールド内に入れるとき、手に刺さらないこと(RTM);
‐マット自体が、モールドに手で入れるとき、手で容易に変形させ得ること(RTM);
‐モールド内で手によって与えられた形状を正確に保持すること(RTM);
‐マット自体を注入樹脂(RTM)またはSMC(一般に、ポリエステルタイプ、ときにはエポキシタイプの)で可能な限り容易な形で含浸させ得ること;
‐可能な限り均質である、とりわけ、最終製品の表面上に痕跡を生じ得る孔または他の表面特徴のない構造体が得られること;
‐複合体を可能な限り補強すること。
さらに、マットは、下記のような形で製造することが望まれる:
‐可能な限り速い速度で;
‐可能な限り少ない工程で;および、
‐可能な限り少ない化学品(バインダーのような)を使用して。
最終複合体は、一般に、可能な限り良好な耐衝撃性、可能な限り少ない未制御有孔性(意に反して内包される気泡のないこと)、および可能な限り良好な表面外観、とりわけ最終切片の露出端(細面)を示さなければならず、さらに、最終複合体は、可能な限り透明でなければならない。
【0003】
WO 2005/054559号は、下記の工程を含むマットの製造方法を教示している:
a) 繊維を前進中の移動ベルト上に付着させまたは投射して、上記ベルトによって推進される上記繊維のブランケットを形成する工程;その後の、
b) 上記ブランケットを貫通し且つ貫通するとき上記ブランケットと実質的に同じ速度でブランケット方向に移動する棘付きニードルにより、1cm2当り1〜25個の穿孔範囲の穿孔密度でもってニードルパンチングする工程。
この方法は、複合材料補強用の優れた品質を有するマットを提供している。しかしながら、本出願人は、そのサイズ剤の性質がニードルパンチング中のマットの挙動に影響を与え得ることを見出した。無機繊維(とりわけガラス)の標準のサイズ剤はニードルパンチング中にストランドの破壊を生じ得るけれども、本発明に従うサイズ剤は、繊維をニードルパンチング中はるかに良好に保護し、より良好な可撓性およびより摺動性の表面をストランドに与え、はるかに少ないストランド破壊は残念(deplored)である。ニードルパンチング中のストランドの破壊は、製造現場に浮遊粒子の放出をもたらし、取扱い中に不愉快であり(ストランドが手に刺さる)、マットが満足性の低い抵抗性を示すという事態をもたらす。さらに、複合体の補強強度は低下する。
【0004】
(発明の開示)
本発明は、WO 2005/054559号の教示の改良法を提供する;WO 2005/054559号の内容は、参考として本明細書に含ませる。平坦コンベアー上のブランケット内の連続ストランドの付着方法は、とりわけUS3969171号およびUS4208000号に記載されている。とりわけ、そのガラスストランドのサイズ剤は、これらの装置による上記ストランドの取扱いを容易にする機能を有する。詳細には、上記サイズ剤は、ストランドを破壊から保護し、ストランドのこれらの装置のホイールへの接着を促進する。これらの接着は、強過ぎても弱過ぎてもいけない。ストランドは、その張力をこれらの装置(US3936558号の第4図の装置のような)のホイール間で最適にするように、あまり滑り過ぎてもいけない。
少量のポリビニルピロリドンを含有するサイズ剤組成物は、FR2349622号、US4140833号、FR2413336号、US5038555号、US4448911号、WO2005/012201号に教示されている。
【0005】
本発明は、先ずは、水を含む組成物によってサイズ処理されているガラスストランドのマットであって、該組成物の固形分が1〜30質量%のカップリング剤と30〜99質量%のポリビニルピロリドン(PVP)を含むマットに関する。本発明によれば、上記無機ストランド(とりわけ、ガラスストランド)をこのサイズ剤組成物によってサイジングする。また、上記組成物の固形分は、さらに、0〜79質量%の潤滑剤(非PVP)、好ましくは5〜70質量%の潤滑剤、さらにより好ましくは20〜70質量%の潤滑剤を含み得る。
とりわけ、上記カップリング剤は、上記固形分中に、2〜10質量%の量で存在し得る。PVPは、とりわけ30〜90質量%の量で存在し得る。とりわけ、潤滑剤(PVPタイプではない)は、5〜78質量%の量で存在し得る。
一般に、上記組成物(サイズ組成物として使用することのできる)は、エポキシ樹脂を含有しない。
上記カップリング剤は、通常、オルガノシランであり、その機能は、複合体の繊維とマトリックス間の結合性を改善することである。従って、カップリング剤は、マトリックス(一般的に、熱硬化性タイプである)の官能物として選択すべきである。
また、このオルガノシランは、無機繊維(とりわけ、ガラスから製造した)の表面ヒドロキシル基と、変性オルガノシラン(オルガノシランがその反応基と反応していて上記反応基の1部を喪失している点で変性させている)をフィラメント表面にグラフトさせる形で反応することのできる少なくとも1個の反応基を含む。サイズ処理中に使用するオルガノシランは、一般に、アルキルシランの加水分解誘導体であり、それ自体、一般に、トリアルコキシシラン基、即ち、-Si(OR)3を含み、式中、Rは、メチル、エチル、プロピルまたはブチル基のような炭化水素基を示す。従って、上記オルガノシランは、例えば、下記の化合物の1つの加水分解誘導体であり得る:
‐ガンマ-アミノプロピルトリエトキシシラン;
‐ガンマ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;
‐メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(多くの場合、A174と称する)。
【0006】
ポリビニルピロリドンは、6000〜3,000,000、好ましくは100,000〜2,000,000の質量平均分子量を有し得る。
潤滑剤は、手触りにおいて油状である。潤滑剤は、とりわけ、下記の目録から選択し得る:
‐ココトリメチルアンモニウムクロライド;
‐塩化リチウム;
‐第四級カチオン性アンモニウム塩;
‐アルキルフェノールエトキシル化エステル(とりわけCognis社からのStantex FT 504);
‐Arquad C35 (例えば、Akzo Nobel社)。
潤滑剤は、好ましくは、ポリエチレンエステルグリコール(多くの場合、PEGと称する)である。とりわけ、潤滑剤は、PEG 400 MLであり得る。
上記サイズ組成物は、好ましくは、発泡防止剤をさらに含有し、その固形分中の含有量は、5〜500質量ppmであり得る。
上記サイズ組成物は、水を含有する。水の量は、組成物の固形分が組成物の0.5〜10質量%、好ましくは0.8〜6質量%を示すような量である。本出願人は、とりわけ、上記サイズ組成物の固形分含有量が、操作装置の汚損をあまり生じない利点を提供する極めて低量、例えば、0.8〜2質量%程度であり得ることを見出している。
【0007】
連続ストランドの使用は、表面外観レベル、とりわけ、最終複合体の露出端および最終複合体中の繊維分布の均質性レベルにおける利点をもたらす。事実、成形片の露出端は、切断ストランドを使用したときよりもはるかに明瞭に平滑であり、良好に形状化されている。切断ストランドの使用は、切断ストランドの大量の端部を成形片の露出端の表面上にまたは表面の真下に位置させることを必要するようである。この現象の起原は、切断ストランドが複合体の主要面に対して平行な配向を本来的に有するという事実である。露出端での切断ストランド端部のこの集積は、加工開始時において露出端の気孔の存在を促進しているようである。形成された気泡は、その後、温度の作用により(熱硬化性樹脂の固化のための200℃程度で)拡大し、露出端表面の外観を変形させる性向を有する。連続ストランドの使用は、この現象を著しく低めているようである。事実、表面でのストランド端部(切断ストランドを使用した場合)の代りに、より平滑な表面を助長するより多くの連続ストランドの輪が得られるであろう。
【0008】
SMC用途においては、マットは、さらに、押圧下での成形中に容易にクリープし得なければならない。SMCは、成形前においては、熱硬化性樹脂を含有するプリプレグシートの形であり、このシートがその中央に補強用ストランドのブランケットを含んでいることを再認識されたい。従来技術によれば、これらのストランドは、系統的に切断されたストランドである。事実、モールド内では、SMCは、圧力を受け、圧力の作用下にモールドの容積全体を満たすように容易にクリープしなければならない。当業者にとっては、このクリープは、ストランドが切断されており互いに対して容易に移動し得るので可能である。プレスする前のSMC表面は、一般に、最終複合体の表面のおよそ30%を示すのみである。圧縮の作用による30%から100%への変化が存在する。従来技術によれば、SMCを製造するには、切断ストランドを樹脂系ペーストの移動中のブランケット上に投射し、ペーストのもう1つのブランケットを上部に付着させて切断ストランドをサンドイッチにおけるように囲い込む。その後、SMCを巻取り貯蔵する。SMCを巻き戻し、表面が最終断片の表面積の僅かに30%を示す断片(一般に、“プリプレグ材のフラップ”と称する)に切り取り、この断片をモールド内に入れ、押圧下に高温成形を進行させる。熱硬化性樹脂は、この処理中に硬化する。本発明においては、切断ストランドの代りに、SMC技術の関連において連続ストランドを使用し得る。事実、連続ストランドのブランケットは、SMCの圧縮中に十分にクリープし得る。本発明に従うマットストランド(切断または連続ストランド)は、SMC技術の関連において使用し得る。連続ストランドのSMCの使用は、表面、とりわけ最終複合体の露出端のレベルでの利点をさらにもたらす。事実、成形片の露出端は、切断ストランドを使用したときよりも、はるかに明確な平滑で良好に形状化されている。さらに、切断ストランドを使用した場合、成形中のSMCの必要なクリープは、表面波形を発生させ得るストランドの優越方位をもたらす。事実、各切断ストランドは独立しているので、各ストランドは、容易すぎるほど流れに従い、ストランド自体流れの線に沿って配向する。ストランドは、これらの流れに過度に従う結果として、凝結さえ或いは凝集物を形成しさえし得る。一方、連続ストランドは、圧縮中のSMCの拡大に十分従いながら、その長さ故に、如何なる配向にも抵抗する。従って、連続ストランドの使用は、複合体補強のより良好な均質性をもたらす。同一の繊維含有量においては、連続ストランドの使用は、一般に、切断ストランドの使用と比較して5〜12%良好である優れた剛性を有する複合体をもたらす。
【0009】
RTM法による複合体補強用のマットの製造は、新たにサイジングしたストランドを移動ベルト上に付着させまたは投射する工程を一般に通る。しかしながら、この段階のストランドの床は、コンシステンシーを有さず、取扱いできない。また、ストランド床は、その種々のストランド層が混合しているので、巻き取ることも巻き戻すこともできない。従って、ストランドは、化学的または機械的に結合させなければならない。
化学結合においては、熱可塑性または熱硬化性タイプの化学バインダーを一般に粉末形でストランドに適用し、その後、熱処理を進行させて熱可塑性材料を溶融するかまたは熱硬化性材料を重合させ、最後に、冷却後、ストランド間にブリッジを形成させる。しかしながら、このバインダーは、マットの構造に弾力性効果を与え、この効果は、段階的形状をあまり保たない傾向を有する(例えば、モールドの隅部において)。一方、環境を重視する精神においては、化学材料の使用を制限することが望まれている。さらに、熱可塑性材料の溶融熱処理は、比較的高温(220〜250℃)においてであり、サイズの重度の焼付けをもたらし、ストランドひいてはマットをより硬直化し変形するのをより困難にする(ガラス格子がそのとき阻害される)。
機械的結合をマットに与えるには、マットを通常のニードルパンチングに供し得る。しかしながら、これは、一般に、機械的性質の低下の原因となるストランドの破壊並びにマットの少なくとも1面から出現する先端部の形成をもたらす。その場合、これらの先端部は、取扱者の手に刺さる。さらに、マットは、マット内に植付けられたニードルが水平的には固定され垂直にのみ動きながら前進するので、このことは、ニードルの断面よりもはるかに大きい穿孔を生じ、ニードルを捻る性向を有する。これらの穿孔は、最終断片における表面欠陥を反映する表面を作り出す。事実、これらの孔は樹脂で詰り、重合後の樹脂の収縮により、くぼみが表面上で目に見え得るままで残る。
【0010】
ポリプロピレン(PP)の縮れ繊維から製造した中心コアと切断ガラスストランドの外部層を含み、これらの全てがポリエステル(PET)のような合成線の縫い目よって結合されている既知のマットが存在する。縮れ繊維は、マットに腰を与え、樹脂の浸透を容易にし且つモールドのギャップ(モールドの2つの金属部品間のスペース)を満たす性向を有する。しかしながら、PETまたはPP繊維のいずれも複合体を補強していない。さらに、縫い目は最終複合体中で目に見え、さらにまた、縫い目で使用したニードルは、表面に孔を生じさせる。これらの孔は樹脂で詰り、重合後の樹脂の収縮により、くぼみが表面上で目に見え得るままで残る。
本発明によれば、特定的なニードルパンチングをマットに施して、十分なコンシステンシーを、とりわけその特定的なサイジング故にストランドを破壊することなく或いはほんの僅かなストランドしか破壊することなく、また、何ら過度に大きい孔を形成させることなくマットに与える。本発明に従うマットは、周囲温度において手で十分に変形可能であり、樹脂に対して極めて浸透性である。本発明によれば、ニードルパンチングは、マットと同時に、マットと実質的に同じ速度で、マットの設置方向に平行な方向で移動するニードルによって達成される。さらに、ニードル穿孔数は低減される;ニードル穿孔数は、cm2当り多くても25個の穿孔、好ましくはcm2当り多くても15個の穿孔、さらにより好ましくはcm2当り多くても10個の穿孔である。一般に、ニードル穿孔数は、cm2当り少なくとも1個の穿孔、好ましくはcm2当り少なくとも2個の穿孔である。
マットとフェルトは、マットが補強材として使用し得る平坦な事物であり、一方、フェルトが体積を有し断熱において使用し得る事物である限りにおいて、明白に異なることを再認識されたい。マットが、0.8〜5mm、より一般的には1〜3mmの厚さを有するのに対し、フェルトは、はるかに厚く、一般に1cmよりも厚い厚さを有する。フェルトは、通常、85〜130kg/m3の密度を有する。マットは、その密度が300 kg/m3程度であり得るので、はるかに濃密である。しかしながら、マットの密度は、体積系密度に関してではなく平坦補強材として表面積系密度で表現する。
【0011】
従って、本発明は、とりわけ、下記の工程を含むマットの製造方法に関する:
a) 繊維を前進中の移動ベルト上に付着させまたは投射して、該ベルトによって推進される上記繊維のブランケットを形成する工程;その後の、
b) 上記ブランケットを貫通し且つ貫通するとき上記ブランケットと実質的に同じ速度でブランケット方向に移動する棘付きニードルにより、1cm2当り1〜25個の穿孔範囲の穿孔密度でもってニードルパンチングする工程。
ニードル毎に少なくとも1個の棘、好ましくは2個の棘がパンチング毎にマットの厚さを貫通することが好ましい。ニードルの貫通深さ(マットを貫通した後のマットから突き出るニードル長)は5〜20mmであることが好ましい。ニードルは、好ましくは0.2〜3mm、さらにより好ましくは0.5〜1.5mmの直径(棘を含むニードルの断面全体を含む最小の円周)を有する。そのようなニードルパンチングは、取扱し、巻取りおよび巻き戻し、モールドから手で容易に取出すことができ、且つ手に刺さらず、表面上に孔の痕跡を示さないマットをもたらす。この特定的なニードルパンチングにより、マットを高速で、例えば、少なくとも2m/分で、少なくとも5m/分でさえも、さらに少なくとも8m/分でさえも前進させ得る。一般に、この速度は、最大35m/分または最大30m/分、或いは最大20m/分である。ニードルのマット内の通過中、ストランドは棘内に位置するようになり、ストランドは同伴され、ストランドは破壊されることなくマットの前面でループを形成する。これらのループはマットとつながっており、モールドに入れている間バインダーの機能を保持させながら容易に変形させ得る。これらのループは、ストランドの破壊がないので手に刺さらない。
そのようなニードルパンチングを達成するためには、例えば、Asselin社(NSCグループ)から販売されている、例えば、部品番号PA169、PA1500またはPA2000を有する装置のような、ポリマー繊維製のフェルトを加工するために標準的に設計されているシリンダーを有するある種の予備的ニードルパンチング装置を使用し得る。このタイプの装置においては、ニードルは、マット内のニードルをマットの移動に従わせることを可能にする水平コンポーネントによる楕円移動を示す。
【0012】
本発明に従うマットは、一般に、50〜3000g/m2の表面積系密度を有する。本発明に従うマットは、切断ストランドを含むマットまたは連続ストランドを含むマットであり得る。即ち、ニードルパンチング前に、ニードルパンチング装置の方向に前進する移動ベルト上に、一般に10〜600mm、とりわけ12〜100mmの長さを有する切断ストランドまたは連続ストランドを付着させまたは投射する。連続ストランドの場合、その数は5〜1200本であり得、ストランドを、移動ベルト上に、ベルトの前進方向に対して横方向に振動するアームを介して投射する。連続ストランドの投射方法については、例えば、WO 02084005号を挙げることができる。投射したストランドの各々は、20〜500単位の繊維(実際には、連続フィラメント)を含み得る。ストランドは、12.5〜100tex (g/km)の力価を有するのが好ましい。
繊維(連続フィラメント)ひいてはストランドを構成する材料は、無機質であり、ガラスE、FR2768144号に記載されているガラスまたはARガラスと称する耐アルカリ性ガラス(少なくとも5モル%のZrO2を含む)のような脆性ガラスを含み得る。とりわけ、ガラスARの使用は、セメント製のマトリックスを有効に補強する或いは腐蝕性環境と接触しなければならないマトリックスを含む熱硬化性複合体を補強し得るマットをもたらす。また、ガラスは、ホウ素を含まなくてもよい。さらにまた、ガラス繊維とポリプロピレン繊維のようなポリマー繊維との混合物、とりわけ、Saint-Gobain Vetrotex France社から商品名Twintex(商標)として販売されている混合繊維も使用し得る。そのようにしてマットを製造するのに使用するストランドは、ガラス繊維(フィラメント)を含む。
【0013】
また、本発明は、マットの製造方法にも関し、その方法は、既に説明したニードルパンチング工程を含む。ニードルパンチング前に、切断または連続ストランドを移動ベルト上に付着させまたは投射する。この段階では、ストランドは、ロービング(またはボビン)から発するか或いは本発明に従うサイジング後で且つニードルパンチング前で乾燥させているかのいずれか理由で乾燥している。しかしながら、本出願人は、ストランドが僅かに湿潤していてニードルパンチング装置に通るのが有利であることを観察している。過度の高湿度は、汚損に至り得る。
本発明に従うマットは、場合にもよるが、少なくとも1回の乾燥工程に供し得る。使用するストランドが出発時に乾燥しており、ストランドを何ら液体によって含浸させない場合、乾燥は必要でない。乾燥は、ストランドを本発明に従うマットの製造時に液体で含浸させる場合に必要である。一般に、ストランドは、本発明に従う方法において使用するときに新たにサイジングする。従って、ストランドを移動ベルト上でニードルパンチングする前に乾燥させることができる。しかしながら、既に指摘したように、含浸状態をニードルパンチングにおいて保持することが好ましく、従って、ストランドのシートをニードルパンチングの後のみで乾燥させることが好ましい。乾燥は、移動ベルトを40〜170℃、とりわけ50〜150℃の温度のオーブン中に通すことによって実施し得る。そのような温度処理は、ストランドのサイズ剤の過度に強い乾燥を生じず、可撓性をインタクトに保つ。
【0014】
本発明に従うマットは、数層の並置層を含む複合体中に組込み得る。とりわけ、本発明に従うマットは、その連続ストランドを使用する変形においては、WO 03/060218号の対象である繊維構造体のランダムに分布させた連続ストランドを含む層を構成し得る;上記出願の内容は、参考として本明細書に合体させる。さらに詳細には、本発明に従うマットは、以下の構造を有する多層複合体中に組込み得る:本発明に従うマット+本発明に従うマットの1面で切断したストランドの層または本発明に従うマット+上記マットの2面上の切断ストランドの層(2層または3層を有する複合体)。従って、移動ベルト上に第1の繊維層(例えば、例えば12〜100mmの長さに切断したストランド)を付着させ、次いで、ストランドをこの層上に付着させて本発明に従うマットを形成させて、本発明に従うニードルパンチングに進行させて、2つの層を互いにニードルパンチングによって結合させることが可能である。また、第3層(例えば、例えば12〜100mmの長さに切断したストランド)を本発明に従うニードルパンチング前に加えることもできる。
マットの製造終了時には、必要に応じて、形成させたマットのリボン端部の切断を行い得る;これは、端部が中心部分と僅かに異なる構造または密度を示し得ることによる。
下記の方法の1つで進行させる場合は、本発明の範囲に属する:
a) マットの繊維を水溶性バインダー(例えば、ポリビニルアルコール)によりニードルパンチング前に結合させ、その後、バインダーを水中または水溶液中に溶解させることによってニードルパンチング前に除去することによる;
b) マットの繊維を水溶性バインダー(例えば、ポリビニルアルコール)によりニードルパンチング前に結合させ、その後、バインダーを水中または水溶液中に溶解させることによって上記結合後に除去することによる;
c) ストランドをフィルム(フィルム自体は移動ベルト上にある)上に付着させまたは投射し、次いで、ストランドの未結合ブランケットを、必要に応じての中間貯蔵のために、フィルムと同時に巻取り(フィルムが種々の巻取り層が混合するのを防止する)、その後、2重層フィルム/ブランケットを、フィルムを除去することによって巻き戻し、ブランケットを、本発明に従う方法を続行するために移動ベルト上に置き戻すことによる。
【0015】
本発明に従う方法によって得られたマットは、バインダーを含有していない。本発明に従うマットは、平行面に対して対称であり、その中央を通る。本発明に従うマットは、ロール形に巻取り使用のために巻き戻すに十分な凝結性を有する。
本発明は、とりわけ、必要に応じてサイズ処理した無機繊維(とりわけ、ガラス)からなり、肉眼に見え得るニードル孔を示さない連続ストランドまたは切断ストランド(好ましくは、連続ストランド)のニードルパンチングマットを提供する。このマットは、そのように、複合体を可能な限り補強する最高の無機繊維を、繊維の必要に応じてのサイズ剤の有機成分を除いて、複合体に対して補強性のないポリマー系合成材料(PP、ポリエステル等)の不存在下に含有する。このマットは、有利には、密閉モールド射出法(RTM)におけるまたはSMC技術に関連する複合体を補強するのに或いは直接樹脂を含浸させてプレート、とりわけ半透明プレートを製造するのに使用する。
本発明に従う方法によって得られたマットは、プリプレグシート(SMC)中に組込み得る。本発明に従うマットは、その場合、熱硬化性ペーストの2つの層間に連続して挿入する。上記マットを巻き戻し、樹脂ペーストの2つの層間にゆっくり組入れる。本発明に従うマット以外に、例えば、切断ストランド、とりわけガラスストランドのような他の補強層をSMCに加えることを、除外するものではない。例えば、下記のように進行させ得る:
‐本発明に従うマットの樹脂ペースト層上での水平巻き戻し;その後の、
‐マット上への切断ストランドの投射;その後の、
‐樹脂ペースト層の切断ストランド上への巻き戻し。
また、切断ストランドの層を、本発明に従うマットの巻き戻し前に置くこともできる。
【0016】
SMCシートは、シートをその主要面に対する圧力により成形して、樹脂の固化前にモールド内でシートを拡大することによる複合体材料の製造において有用である。マットが連続ストランドを含む場合、切断したSMCシートは、圧力下での成形前で、好ましくは、モールドの表面積(即ち、最終成形片の表面積)の50〜80%を示す表面積を有する。
本発明に従うマットを製造するのに何ら化学バインダーを使用していないという事実は、とりわけ半透明複合体の製造を可能にする。本出願人は、バインダーの無いことが最終複合体の半透明性をとりわけ改善していることを実際に観察している。そのような半透明複合体を製造するには、とりわけWO2005/054559号の第4図に示されている方法を使用することができる。
組成物の固形分含有量は、110℃のオーブン内で12時間蒸発させることによって測定し得る。純粋PVPは、100%の固形分を有する。PEG 400MLは、100%の固形分を有する。当業者においては、シランの場合、当然ながら、加水分解後で水分の蒸発後のシランの残留物を参照する。また、当業者であれば、活性物質なる用語も使用する。A174シランは、82質量%の固形分を有する。10gの未加水分解シランから出発し、このシランを加水分解し、加水分解物を110℃のオーブン内で12時間処理した後、最終的に、8.2gの固形物を集める。サイズ剤組成物の固形分が1〜30%のカップリング剤を含むと言う場合、当業者であれば、この固形分は、製造業者が供給した生成物を正確に含有しているのではなく、この生成物のその後脱水した加水分解残留物であることを直ちに理解するであろう。従って、組成物の固形分は、1〜30質量%のカップリング剤の由来物を含むと同様に言うことができる。
【0017】
(実施例)
実施例1〜5
以下の実施例においては、本発明に従うサイズ剤を通常のサイズ剤およびPVPを含まないサイズ剤と比較する。
通常のサイズ剤(実施例1における)は、その固形分(サイズ剤組成物の4%を示す)において、下記を含有していた:
‐5質量%のA174シラン、
‐91質量%のNeoxylフィルム形成剤、
‐3.9質量%のAntarox潤滑剤。
他のサイズ剤組成物は、1.3質量%の固形分を含有しており、固形分自体は、6.4質量%のA174シランおよび50質量ppmの発泡防止剤(Munzing Chemie社から販売されている商品名Agitan 295)を含んでいた。この固形分の他の成分は、下記の表1の第2欄に示しており、900,000の質量平均分子量を有するPVP、PEG 400 MLまたはこれら2つの成分の混合物のいずれかであった。即ち、PVP 100%は、シランおよび発泡防止剤を除いた固形分の残りが100%PVPからなることを示す。
これらの組成物でサイジングした連続ガラスストランドを使用して、連続ストランドを含むマットを、移動ベルト上のブランケットに投射することによって製造する。投射は、US3969171号の第4図の原理に基づく装置を使用して実施した。ニードルパンチングは、WO2005/054559号の第3図に従い、cm2当り3個の穿孔の穿孔密度でもって実施した。
その後、複合体を、上記種々のマットを熱硬化性樹脂で含浸することにより且つRTM手法に従い製造した。
下記の表1は、結果をまとめている。比較を、上記方法の種々の工程におけるストランドまたはマットの挙動並びに最終複合体の特性レベルに関して、上記種々のサイズ剤間
で行っている。これらは、相対評価である。この挙動を、- - (最低ランク)および+ + (最高ランク)で格付けした。下記の挙動が観察された:
‐ブランケット内の連続ストランドの付着中の挙動:実施例3の場合、付着は、困難であった;ストランドが投射装置のホイール上で過度に滑って、充填物の延伸を制御するのが困難であったことによる;
‐ニードルパンチング中の挙動:2通りの不具合、即ち、実施例1の場合のストランドの破壊および実施例3の場合のニードルパンチングの実施不能が観察された;後者の場合、ストランドが滑り過ぎであることが判明し、ストランドは、ニードルがマットから出るとき、あまりにも頻繁に戻りすぎ、ニードルパンチングが殆ど無いことに等しく、マットが十分な抵抗性を示さない理由であった;
‐含浸モールド内での手による変形性:全ての実施例において許容し得ている;しかしながら、実施例2の場合の僅かに劣っている。
‐最終製品の半透明性:



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む組成物でサイズ処理した無機ガラスから製造されたストランドを含むニードルパンチングストランドから製造したマットであって、前記組成物の固形分が1〜30質量%のカップリング剤と30〜99質量%のポリビニルピロリドンを含むことを特徴とするマット。
【請求項2】
前記ストランドが連続している、請求項1記載のマット。
【請求項3】
前記組成物の固形分が、2〜10質量%のカップリング剤を含む、請求項1又は2記載のマット。
【請求項4】
前記組成物の固形分が、30〜90質量%のポリビニルピロリドンを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のマット。
【請求項5】
前記組成物の固形分が、79質量%未満の潤滑剤成分を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
前記潤滑剤成分が、前記固形分の5〜70%である、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤成分が、前記固形分の20〜70%である、請求項6記載のマット。
【請求項8】
前記組成物の固形分が、5〜500質量ppmの発泡防止剤を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のマット。
【請求項9】
前記組成物が、エポキシ樹脂を含有していない、請求項1〜8のいずれか1項記載のマット。
【請求項10】
前記組成物の固形分が、前記組成物の0.5〜10質量%を示す、請求項1〜9のいずれか1項記載のマット。
【請求項11】
前記組成物の固形分が、前記組成物の0.8〜6質量%を示す、請求項10記載のマット。
【請求項12】
前記組成物の固形分が、前記組成物の0.8〜2質量%を示す、請求項11記載のマット。
【請求項13】
ロールの形である、請求項1〜12のいずれか1項記載のマット。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項記載のマットの製造方法であって、下記の工程、
a) 前記組成物によってサイズ処理した無機ガラスのストランドを移動ベルト上に付着させまたは投射して、該ベルトによって推進される前記ストランドのブランケットを形成する工程;次いで、
b) 前記ブランケットを貫通し且つ貫通するとき前記ブランケットと実質的に同じ速度でブランケット方向に移動する棘付きニードルにより、1cm2当り1〜25個の穿孔範囲の穿孔密度でもってニードルパンチングする工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記マット請求項1〜14のいずれか1項記載のマットを熱硬化性樹脂で含浸させる工程を含むことを特徴とする、熱硬化性マトリックスを含む複合材料の製造方法。
【請求項16】
前記方法が、密閉モールド中への注入による方法(RTM)である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記マット請求項のいずれか1項記載のマットを熱硬化性樹脂ペーストの2つの層間に連続挿入する工程を含むことを特徴とする、プリプレグシート(SMC)の製造方法。
【請求項18】
前記マット請求項のいずれか1項記載のマットと熱硬化性樹脂を含むことを特徴とする、プリプレグシート。
【請求項19】
請求項18記載のシートを、前記樹脂を固化させる前に、その主要面上への加圧により成形してシートの拡大を生じさせることによる、複合材料の製造方法。
【請求項20】
前記マット請求項のいずれか1項記載のマットによって補強した、熱硬化性マトリックスを含む複合材料。

【公表番号】特表2009−531556(P2009−531556A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502162(P2009−502162)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050968
【国際公開番号】WO2007/113425
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508076428)オーシーヴィー インテレクチュアル キャピタル リミテッド ライアビリティ カンパニー (43)
【Fターム(参考)】