説明

ニードルパンチ機における針留

【課題】パンチ針を容易に交換することができると共に、パンチ針の抜け落ちを確実に防止することができるようにしたニードルパンチ機の針留を提供することである。
【解決手段】針棒5の下端部に着脱自在に取付けられるホルダヘッド11と、そのホルダヘッド11が嵌合されるヘッド嵌合孔17を上側に有するニードルホルダ12とを結合ねじ20の締付けにより結合する。ニードルホルダ12には下面からヘッド嵌合孔17に貫通する複数のシャンク挿入孔18を形成し、そのシャンク挿入孔18に挿入されたパンチ針Nのヘッドnをホルダヘッド11とヘッド嵌合孔17の底面とで上下から挟持し、ホルダヘッド11に対するニードルホルダ12の結合解除により、パンチ針Nをニードルホルダ12の上方に抜き差しできるようにして、パンチ針Nの交換の容易化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布地から成る基材にフェルトや毛糸等の不織材を定着させるニードルパンチ機の針留に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ニードルパンチ機は、昇降動される針棒の下端に針留を取付け、その針留に植設された複数のパンチ針を針板上に載置された布から成る基材と、その上に載置されたフェルト等の不織材に刺通し、各パンチ針に形成されたバーブ(とげ)にかかる不織材の繊維を基材に絡ませて不織材の固定化を図るようにしている。
【0003】
ここで、パンチ針は、一般的に知られているフェルト針と同様に、シャンク部の先端にブレード部を設け、そのブレード部の長さ方向に複数のバーブを間隔をおいて形成した構成とされている。
【0004】
上記のパンチ針は、普通、台座に着脱自在に取付けられて、パンチ針が折損した場合に、折損したパンチ針を新しいパンチ針と交換し得るようにしている。
【0005】
パンチ針を着脱自在に取付けた針留として、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。この特許文献1に記載された針留は、台座の幅方向に等間隔に並ぶ複数の縦孔を台座の長さ方向に間隔をおいて形成し、前記台座の側面から台座の幅方向に並ぶ複数の縦孔を貫通するようにして閉塞端を有するねじ孔を設け、そのねじ孔に複数の縦孔と同数の止めねじをねじ込み、各止めねじの締付けによって各縦孔に挿入されたパンチ針を固定し、止めねじを弛めることによってパンチ針を交換し得るようにしている。
【0006】
ところで、上記針留においては、複数のパンチ針を止めねじの締付けによって個々に固定する構成であるため、パンチ針の交換に際しては、止めねじの取付け、取外しを行う必要があり、パンチ針の交換に手間がかかるという不都合がある。特に、ねじ孔の閉塞端側の縦孔に固定されたパンチ針の交換に際しては、その手前の止めねじおよびパンチ針を取外す必要があるため、非常に手間がかかっていた。
【0007】
そのような不都合を解消するため、本件の出願人は、特許文献2において、パンチ針の交換が容易な針留を提案している。この特許文献2に記載された針留においては、針棒の下端に取付けられる台座に、その下面において開口する複数の針挿入孔と、各針挿入孔を横切る横孔と形成し、各横孔内に弾性体を取付け、その弾性体に各針挿入孔に連通するシャンク挿入孔を形成し、上記針挿入孔からシャンク挿入孔内にパンチ針のシャンク部を圧入して、そのシャンク部を弾性体で弾性保持するようにしている。
【0008】
上記針留においては、パンチ針を引下げることによって引抜くことができるため、シャンク挿入孔に対してパンチ針を簡単に抜き差しすることができ、折損等によるパンチ針の交換を容易に行うことができるという特徴を有する。
【特許文献1】特開平11−350328号公報
【特許文献2】特開2004−308058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2に記載された針留においては、パンチ針のシャンク部を弾性体によって弾性保持する構成であるため、パンチ針に対する基材の摩擦抵抗が大きい場合に、基材および不織材への刺通後におけるパンチ針の上昇時に、パンチ針がシャンク挿入孔から抜け落ちるおそれがあり、改善すべき点が残されている。
【0010】
この発明の課題は、パンチ針を容易に交換することができると共に、パンチ針の抜け落ちを確実に防止することができるようにしたニードルパンチ機の針留を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明においては、ヘッド嵌合孔を上側に有し、下面からそのヘッド嵌合孔に貫通する複数のシャンク挿入孔が形成されたニードルホルダと、そのニードルホルダのヘッド嵌合孔に着脱自在に嵌合されたホルダヘッドと、前記ヘッド嵌合孔からシャンク挿入孔に挿入され、ヘッド嵌合孔の底面で支持される大径のヘッドを上部に有するパンチ針と、前記ヘッド嵌合孔に嵌合されたホルダヘッドがパンチ針のヘッドを押える状態でホルダヘッドとニードルホルダとを着脱自在に結合する結合手段とから成る構成を採用したのである。
【0012】
ここで、結合手段として、ニードルホルダの上部外周からヘッド嵌合孔に貫通するねじ孔を形成し、そのねじ孔にねじ係合された結合ねじの締付けによってホルダヘッドとニードルホルダとを結合するようにしたものを採用することができる。
【0013】
この場合、結合ねじの先端に円錐部を設け、ホルダヘッドの外周には前記円錐部が挿入可能とされ、その挿入時にホルダヘッドをヘッド嵌合孔の底面に向けて押圧する円錐形の凹部を設けておくと、結合ねじの締付けにより、ホルダヘッドが押し下げられ、ホルダヘッドとニードルホルダとでパンチ針のヘッドを上下から確実に挟持することができる。このため、パンチ針が上下に移動することのない安定した取付け状態を得ることができる。
【0014】
この発明に係る針留を昇降動される針棒の下端部に取付ける使用において、ヘッド嵌合孔をホルダヘッドの中心から針棒の後方に設けられた押え棒側に偏心させた位置に設けると、針棒の下端に対する針留の取付けにおいて、ヘッド嵌合孔の周壁の薄肉厚部が針棒の後方に設けられた押え棒と対向するよう取り付けることにより、ニードルホルダが押え棒と干渉するのを避けることができるため、ニードルホルダに対して径の大きなヘッド嵌合孔を形成することができる。その結果、ニードルホルダに数多くのシャンク挿入孔を形成することが可能となり、多数のパンチ針を保持することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成から成る針留においては、ホルダヘッドとニードルホルダの結合を解除してパンチ針を押し上げることにより、ニードルホルダの上方にパンチ針を引抜くことができるため、シャンク挿入孔に対して、パンチ針を簡単に着脱することができ、折損したパンチ針を新しいパンチ針と容易に交換することができる。
【0016】
また、ニードルホルダの上方からシャンク挿入孔にパンチ針を挿入した後、ヘッド嵌合孔にホルダヘッドを嵌合して、そのホルダヘッドとニードルホルダと結合することにより、ヘッド嵌合孔の底壁とホルダヘッドとでパンチ針のヘッドを上下から挟持することができるため、パンチ針を確実に固定することができる。
【0017】
このため、基材および不織材に対するパンチ針の刺通後の引抜き時に、そのパンチ針に大きな摩擦抵抗が負荷されたとしても、パンチ針が抜け落ちるという不都合の発生はない。
【0018】
さらに、パンチ針の取付けがヘッド嵌合孔の底壁とホルダヘッドとでパンチ針のヘッドを上下から挟持する取付けであってねじを使用しないため、パンチ針を高密度に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、ニードルパンチ機におけるベッド1には針板2が取付けられ、その針板2上において軸方向に移動自在に設けられた押え棒3の下端にセパレータ4が取付けられている。
【0020】
押え棒3は、図示省略した摘みの操作によって上下動される。その上下動によって、針板2上に載置される基材Aおよびその基材A上に重ね合わされた不織材aの厚みに応じてセパレータ4が高さ調整されるようになっている。このセパレータ4には、後述するパンチ針Nの挿通孔4aが設けられている。
【0021】
また、針板2上には昇降動可能な針棒5が設けられ、その針棒5の下端に針留10が取付けられている。針留10は針棒5と共に上下動し、下降時には、針留10に保持された複数のパンチ針Nが前記セパレータ4で押さえられる基材Aおよび不織材aに刺通するようになっている。このため、セパレータ4には各パンチ針Nが挿通される孔4aが形成されている。
【0022】
ここで、パンチ針Nは、図2(I)および(II)に示すように、シャンク部nの先端に小径のブレード部nを設け、かつシャンク部nの後端に大径のヘッドnを形成し、上記ブレード部nに複数のバーブ(図示省略)を設けた構成とされている。
【0023】
ヘッドnの形成に際して、ここでは、図4(I)に示すように、シャンク部nにカラーを嵌合して接着等の手段により一体化し、そのカラーをヘッドnとしているが、図4(II)に示すように、シャンク部nにキャップを嵌合し、接着あるいは圧入により一体化し、そのキャップをヘッドnとしてもよい。また、シャンク部nの後端をプレス成形して大径のヘッドを設けるようにしてもよい。
【0024】
図2(I)および(II)に示すように、針留10は、針棒5の下端に取付けられる円柱状のホルダヘッド11と、そのホルダヘッド11に結合されるニードルホルダ12とからなり、上記ホルダヘッド11には、針棒5の下端部が挿入される挿入孔13と、外周面の上部から挿入孔13に貫通するねじ孔14とが形成されている。また、ホルダヘッド11の外周面には、ねじ孔14の下方に円錐形の凹部15が設けられている。
【0025】
上記ホルダヘッド11は、針棒5の下端部に嵌合され、ねじ孔14にねじ係合される止ねじ16の締付けによって針棒5の下端部に着脱自在に取付けられる。この場合、ホルダヘッド11は、止ねじ16が正面に位置するよう針棒5の下端部に取付けられる。
【0026】
ニードルホルダ12は、円柱状をなし、その上面には、中心に対する偏心位置にヘッド嵌合孔17が形成されている。また、ニードルホルダ12には、下面からヘッド嵌合孔17に貫通する複数のシャンク挿入孔18が形成されている。
【0027】
シャンク挿入孔18は、パンチ針Nのシャンク部nが少しの余裕をもって挿入される大きさとされている。複数のシャンク挿入孔18は、図3に示すように、ヘッド嵌合孔17の底面中央と、その底面中央を中心とする2つの径の異なる仮想円上のそれぞれに等間隔に形成され、ヘッド嵌合孔17の径方向および周方向で隣接するシャンク挿入孔18間には、パンチ針Nのヘッドnの外径より少し大きな間隔が設けられている。
【0028】
ヘッド嵌合孔17の周壁における厚肉部には、ホルダヘッド11に形成された前記凹部15に対応してねじ孔19が形成され、そのねじ孔19に対してねじ係合される結合ねじ20の先端には、上記凹部15に対して嵌合可能な円錐部21が設けられている。
【0029】
ここで、ねじ孔19と凹部15とは、ヘッド嵌合孔17にホルダヘッド11を嵌合し、そのホルダヘッド11がシャンク挿入孔18に挿入されたパンチ針Nのヘッドnを押える状態で凹部15がねじ孔19より少し上位に位置する高さ関係とされている。
【0030】
ホルダヘッド11とニードルホルダ12の相互間には、ヘッド嵌合孔17に対するホルダヘッド11の嵌合時に、ねじ孔19と凹部15とを周方向に位置決めする位置決め手段22が設けられている。
【0031】
図2および図3に示すように、位置決め手段22は、ヘッド嵌合孔17の周壁にニードルホルダ12の上面で開口する切欠部23を形成し、ホルダヘッド11には半径方向に貫通するピン24を設け、そのピン24の両端部を切欠部23に嵌合して、ねじ孔19と凹部15とを周方向に位置決めするようにしている。
【0032】
実施の形態で示す針留は上記の構成からなり、パンチ針Nの取付けに際しては、ニードルホルダ12の上方からシャンク挿入孔18にパンチ針Nを挿入する。このとき、パンチ針Nバーブレード部n2を先にしてシャンク挿入孔18に挿入し、そのパンチ針Nのヘッドnがヘッド嵌合孔17の底面で支持される位置までパンチ針Nを挿入したのち、切欠部23にピン24が嵌り込むようにしてヘッド嵌合孔17にホルダヘッド11を嵌合し、ねじ孔19に結合ねじ20をねじ込んで締付ける。
【0033】
ここで、ヘッド嵌合孔17にホルダヘッド11を嵌合し、そのホルダヘッド11でパンチ針Nのヘッドnを押える状態では、ホルダヘッド11に形成された凹部15がねじ孔19より少し上位に配置されるため、結合ねじ20の締付けを行うと、結合ねじ20の先端の円錐部21が凹部15の内面を下向きに押圧することになる。
【0034】
このため、ホルダヘッド11は押下げられてパンチ針Nのヘッドnをヘッド嵌合孔17の底面に押付けることになり、パンチ針Nのヘッドnはホルダヘッド11とヘッド嵌合孔17の底面とで上下から挟持され、上下方向に移動することのない極めて安定した取付け状態を得ることができる。
【0035】
なお、パンチ針Nは、基材A上に載置される不織材aの大きさおよびデザインに応じてその取付け数を決定する。
【0036】
パンチ針Nの取付け後、ホルダヘッド11を図1に示す針棒5の下端部に嵌合し、止ねじ16の締付けにより針留10を固定した後、針棒5を昇降動させると、その下降時、複数のパンチ針Nがセパレータ4で押えられた基材Aおよび不織材aに刺通し、その刺通時、不織材aの繊維がバーブに係合して基材Aに押込まれ、上記基材Aに対する繊維の絡みによって不織材aが基材Aに固定される。
【0037】
基材Aおよび不織材aの刺通後におけるパンチ針Nの上昇時、基材Aおよび不織材aはセパレータ4によって引上げられるのが防止される。また、パンチ針Nの上昇時、パンチ針Nには摩擦抵抗が負荷されるが、パンチ針Nのヘッドnはホルダヘッド11とヘッド嵌合孔17の底面とで上下から挟持される取付けであるため、シャンク挿入孔18から抜け落ちるという不都合の発生は全くない。
【0038】
ここで、パンチ針Nのブレード部n2は極めて細く、そのブレード部n2に形成されたバーブの形成位置での厚みは薄肉厚であるため、基材Aおよび不織材aに対するブレード部n2の繰り返しの刺通によってパンチ針Nが折損する場合がある。この場合、折損したパンチ針Nを新しいパンチ針Nと交換する必要がある。
【0039】
パンチ針Nの交換に際しては、結合ねじ20を弛め、ホルダヘッド11に対するニードルホルダ12の結合を解除した後、折損したパンチ針Nを押し上げてニードルホルダ12上に取出し、新しいパンチ針Nをニードルホルダ12上からシャンク挿入孔18に挿入する。パンチ針Nの交換後は、ホルダヘッド11にニードルホルダ12を嵌合し、結合ねじ20を締付けてニードルホルダ12を固定する。
【0040】
このように、ホルダヘッド11に対するニードルホルダ12の結合を解除することによって、シャンク挿入孔18に対してパンチ針Nを抜き差しすることができるため、パンチ針Nを極めて容易に交換することができる。
【0041】
実施の形態では、針棒5の下端部に針留を取付け、その針棒5の昇降動によりパンチ針Nを基材および不織材に刺通させるようにしたが、握り棒の下端部に針留を取付けて、パンチ針Nを基材および不織材に手差しするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明に係る針留を取付けたニードルパンチ機の側面図
【図2】(I)針留の縦断正面図、(II)図2(I)のイ−イ線に沿った断面図
【図3】図2(I)のロ−ロ線に沿った断面図
【図4】(I)パンチ針のヘッドを示す断面図、(II)ヘッドの他の例を示す断面図
【図5】針留の分解斜視図
【符号の説明】
【0043】
11 ホルダヘッド
12 ニードルホルダ
15 凹部
17 ヘッド嵌合孔
18 シャンク挿入孔
19 ねじ孔
20 結合ねじ
21 円錐部
N パンチ針
ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド嵌合孔を上側に有し、下面からそのヘッド嵌合孔に貫通する複数のシャンク挿入孔が形成されたニードルホルダと、
そのニードルホルダのヘッド嵌合孔に着脱自在に嵌合されたホルダヘッドと、
前記ヘッド嵌合孔からシャンク挿入孔に挿入され、ヘッド嵌合孔の底面で支持される大径のヘッドを上部に有するパンチ針と、
前記ヘッド嵌合孔に嵌合されたホルダヘッドがパンチ針のヘッドを押える状態でホルダヘッドとニードルホルダとを着脱自在に結合する結合手段と、
から成るニードルパンチ機における針留。
【請求項2】
前記結合手段が、ニードルホルダの上部外周からヘッド嵌合孔に貫通するねじ孔と、そのねじ孔にねじ係合された結合ねじとから成る請求項1に記載のニードルパンチ機における針留。
【請求項3】
前記結合ねじの先端に円錐部を設け、ホルダヘッドの外周には前記円錐部が挿入可能とされ、その挿入時にホルダヘッドをヘッド嵌合孔の底面に向けて押圧する円錐形の凹部を設けた請求項2に記載のニードルパンチ機における針留。
【請求項4】
前記ヘッド嵌合孔をホルダヘッドの中心から針棒の後方に設けられた押え棒側に偏心させた位置に設けた請求項1乃至3のいずれかに記載のニードルパンチ機における針留。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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