説明

ヌクレアーゼプロドラッグの酵素アクチベーターとしてのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ

哺乳動物癌細胞またはウイルス感染細胞を阻害する方法は、トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素、またはテール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素を、前記癌性哺乳動物細胞またはウイルス感染細胞の近隣に提供する工程、ならびに酵素を切断基質に暴露して、細胞毒性プリンアナログを取得する工程を含む。前記方法は、ホスホリラーゼ酵素、またはホスホリラーゼ酵素をコードするDNA配列を細胞に導入する工程、ならびに、有効量の9-(β-D-アラビノフラノシル)-2-フルオロアデニン(F-araA)のような基質を細胞に送達する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年8月15日に提出した米国仮特許出願番号第61/089,235号、および2009年7月13日に提出した米国仮特許出願番号第61/225,012号の優先権を主張するものであり、両出願の内容のその全体が、引用として本明細書に取り込まれる。
【0002】
本願に関連して実行した研究は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)からのグラントCA119170により部分的に援助された。
【0003】
本発明は、プロドラッグ基質に対する酵素アクチベーターとしてのテール化(tailed)変異体および野生型トリコモナス・ヴァジナリス(Trichomonas vaginalis)プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、特に9-(β-アラビノフラノシル)-2-フルオロアデニン (F-araA, フルダラビン(fludarabine))、および2-Cl-2’-デオキシアデノシン(Cl-dAdo, クラドリビン(cladribine))に関する。
【背景技術】
【0004】
選択的に腫瘍細胞を取りこむためのプロドラッグ活性化戦略は、腫瘍細胞における外因性酵素をコードする遺伝子の発現、およびその酵素に対する基質の投与に関する。前記酵素は、基質に作用して、標的腫瘍細胞に毒性の物質を生じる。この技術は、リシン、ジフテリア毒素、または緑膿菌外毒素のような直接的な毒物遺伝子の発現に対して有利な点を有している。これらの有利な点は。1)細胞損傷を滴定する、2)プロドラッグのレベル、または組換え酵素発現のレベルのいずれかを調節することにより、治療指標を最適化する、ならびに3)前記プロドラッグの投与を省略することにより、毒性を阻害することができる能力を含む。さらに、この技術では、異なるタイプの細胞に異なる効果を有し、特異的な疾患状態に対して調節した治療を可能にするプロドラッグが使用される。
【0005】
プロドラッグ活性化アプローチに有用な酵素はこれまでに記載されており、米国特許番号第5,338,678号;5,552,311号;6,017,896号および6,207,150号に記載された、チミジンキナーゼ、サイトカインデアミナーゼ、およびプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)のような酵素を含む。しかし、プロドラッグ活性化技術を使用する腫瘍治療の有効性は、基質投与の副作用が存在する場合、限定される。例えば、チミジンキナーゼとしばしば組み合わせて使用されるプロドラッグガンシクロビル(ganciclovir)は、望ましくない免疫抑制作用を引き起こす可能性がある。
【0006】
重要な化学治療薬F-araAに対する切断活性を有する特定のプリンヌクレオシドホスホリラーゼに対する調査は、調査する必要があるPNP候補が膨大な数であること、および各PNPを単離および発現することにおける困難性のために、部分的にしか以前には成功していない。多くの微生物が、アデニン含有ヌクレオシドをアデニンに切断することができるPNPを生成する。説明のために、Leishmania donovani; Trichomonas vaginalis; Trypanosoma cruzi; Schistosoma mansoni; Leishmania tropica; Crithidia fasciculata; Aspergillis and Penicillium; Erwinia carotovora; Helix pomatia; Ophiodon elongates (lingcod); E. coli, Salmonella typhimurium; Bacillus subtilis; Clostridium; mycoplasma; Trypanosoma gambiense; およびTrypanosoma bruceiを含む、単独でPNPを発現することが報告されている、少なくとも17種類の微生物が存在する。
【0007】
そして、効果を改善し、副作用の問題を克服する、腫瘍を治療するためのプロドラッグ活性化法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願番号第61/089,235号
【特許文献2】米国仮特許出願番号第61/225,012号
【特許文献3】米国特許番号第5,338,678号
【特許文献4】米国特許番号第5,552,311号
【特許文献5】米国特許番号第6,017,896号
【特許文献6】米国特許番号第6,207,150号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌生細胞に近接して野生型トリコモナス・ヴァジナリスプリンヌクレオシドホスホリラーゼ (Tv-PNP)酵素を提供し、前記酵素を酵素により切断された基質に暴露して細胞毒性プリンアナログを回収することにより癌生細胞を阻害するための方法が提供され、ここで前記基質は、フルダラビン、クラドリビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(talo)-2’-デオキシ-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(allo)-6-メチルプリン-リボシド、2-F-5’-ジデオキシアデノシン、または2-F-α-Lyxo-アデノシンのアナログである。Tv-PNP酵素は、癌性細胞においてまたはそれに隣接した細胞において発現されることにより提供される、あるいは標的細胞に隣接した酵素の投与を介する。種々の生物に由来するテール化変異体プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(tm-PNP)酵素もまた、癌細胞阻害に作用しうる新規の組成物として提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
Tv-PNP酵素、tm-PNP酵素、あるいは癌性細胞において発現しうるDNA配列を含み、かつTv-PNP酵素、tm-PNP酵素、またはそれらの組み合わせコードするベクター;ならびにフルダラビン、クラドリビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(talo)-2’-デオキシ-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(allo)-6-メチルプリン-リボシド、2-F-5’-ジデオキシアデノシン、または2-F-α-Lyxo-アデノシンのアナログ、あるいはそのような基質の組み合わせをを含む、哺乳動物癌性細胞を阻害するための市販のキットが提供される。
【0011】
標的細胞溶解物、Tv-PNP/tm-PNP、Tv-PNP/tm-PNPにより切断される際に細胞毒性切断産物プリンアナログを生じるプロドラッグもまた提供される。この組成物は、特に後続治療に対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】大腸菌PNPおよびTv-PNPとのF-araAの動力学的パラメーターを示す。
【図2】細胞の10%のみがTv-PNPを発現するマウスにおける腫瘍キセノグラフ(xenograph)に対するF-araAMP (プロドラッグまたはF-araA)の有効性を示す。
【図3】pCR4blunt-TvPNPとして示される本発明のベクタークローンの制限部位マップである。
【図4】pACCMV-TvPNPとして示されるTv-PNPを発現する本発明のアデノウイルスベクター、ならびに図3のクローンの全体の制限部位マップである。
【図5】pWPI(+)-TvPNPとして示される、EGFPを共発現するTv-PNPを発現する、本発明のレンチウイルスベクター、ならびに図3のクローンの全体の制限部位マップである。
【図6】pHR’CMV-TvPNPとして示される、EGFPが存在しないTv-PNPを発現する、本発明のレンチウイルスベクター、ならびに図3のクローンの全体の制限部位マップである。
【図7】野生型大腸菌に対する、アデノウイルス発現tm-PNPヌクレオチド配列マッピングである。
【図8】結果生じるテール付加を示す、図7のヌクレオチド配列によりコードされるtm-PNPアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の主題は、T. vaginalisより単離されたプリンヌクレオシドホスホリラーゼである。プリンヌクレオシドホスホリラーゼおよびヌクレオシドヒドロラーゼは、ヒト、ならびにLeishmania donovani; Trichomonas vaginalis; Trypanosoma cruzi; Schistosoma mansoni; Leishmania tropica; Crithidia fasciculata; Aspergillis and Penicillium; Erwinia carotovora; Helix pomatia; Ophiodon elongatus; Salmonella typhimurium; Bacillus subtilis; Clostridium; mycoplasma; Trypanosoma gambiense; Trypanosoma brucei; Sulfolobus solfataricus; および大腸菌のような微生物を例示的に含む多様な生物存在する。
【0014】
ヌクレオシドホスホリラーゼは、
反応:プリンヌクレオシド + PO4 → リボース-1-PO4 (またはデオキシリボース-1-リン酸) + プリン塩基
を触媒する。本発明は、野生型トリコモナス・ヴァジナリスプリン切断酵素をコードするヌクレオチド配列およびアミノ酸配列、ならびに、それぞれ他の生物由来の構造的に関連する野生型PNP酵素に比べて驚くほど高い切断特異的基質における生物学的活性を有するtm-PNP配列、およびテール化酵素が由来する野生型配列を提供する。
【0015】
本明細書において、「生物学的活性」の語は、図2に示される適切な方法により測定される時間の間、基質の存在下における特定の量のプリン切断酵素の反応により生成する最終産物の量を測定することを意味することが意図される。
【0016】
代謝、機能、または細胞の複製を損傷する、細胞毒性プリンアナログを生成する酵素に対する基質である化合物は、本明細書において互換的に「プロドラッグ」または「基質」として言及される。
【0017】
本明細書において、「病原性ウイルス感染」の語は、疾患または病原性効果を引き起こすウイルスによる感染を意味することが意図される。
【0018】
本明細書において、「薬学的に許容される」の語は、生物学的にまたは他の面で望ましくないものではなく、顕著に望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、または含まれる薬学組成物の他のいずれかの成分と有害に相互作用することなく、個体に投与することができる物質を意味することが意図される。
【0019】
本発明において、Tv-PNPまたはtm-PNPによるプロドラッグの切断により、癌性(またはウイルス感染性)標的細胞を阻害する細胞毒性プリンアナログが回収される。前記細胞毒性プリンアナログは、癌生細胞内で生成される必要はなく、その代わりに、場椅子単ダー効果が存在し、その効果において腫瘍細胞内で生成される細胞毒性プリンアナログは、隣接する腫瘍細胞に移動し、それらの破壊をもたらすことができる。ウイルス感染性または癌性標的細胞を阻害するために必要な細胞毒性プリンアナログの濃度は、細胞毒性プリンアナログの同一性、細胞内流体交換率(intercellular fluid exchange rate)、細胞毒性プリンアナログの細胞膜輸送速度、ならびにDNAまたはRNAへの取り込み速度、ならびにタンパク質合成のインヒビターとしての有効性に依存する。
【0020】
Tv-PNPまたはtm-PNPは、in vitro またはin vivoで、ヒトまたは非ヒト被験者において、哺乳動物癌性またはウイルス感染性標的細胞を阻害するように作用することができる。Tv-PNPまたはtm-PNPは、in vivoで、米国特許番号第6,958,318 B2号に詳細に記載されている方法にいずれかにより、本願明細書における大腸菌のPNPの代替物として送達される。これらの送達方法は、例示的に、組換えウイルスベクター;Clostridium, Salmonellaおよび大腸菌微生物ベクター;抗体接合リポソーム;Tv-PNPまたはtm-PNP酵素を発現するよう遺伝学的に改変された主題の細胞の再導入;リポフェクション;レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、はしかウイルス、アデノ関連ウイルス、またはバキュウイルス;ならびに哺乳動物癌性細胞の近隣へのTv-PNPまたはtm-PNP酵素の直接注入を含む。
【0021】
本発明は、以下の工程を介して、複製または非複製形質転換または形質導入哺乳動物細胞またはバイスタンダー細胞を少なくとも阻害する、典型的には殺す方法を提供する:
(a) Tv-PNPまたはtm-PNPをコードする核酸で標的哺乳動物細胞を形質転換または形質導入する、あるいは標的細胞の近隣に直接そのような酵素を提供する工程;
(b) Tv-PNP切断酵素を発現する、またはTv-PNP切断酵素を提供される標的細胞を、前記酵素に対する基質と接触させ、野生型または置換体大腸菌PNPおよび他のPNPよりも多量に毒性プリン塩基を生成し、それにより標的細胞および切断酵素を発現しないまたは切断酵素と接触しないバイスタンダー細胞を殺す工程。そして、基質の存在下で、Tv-PNPまたはtm-PNP切断酵素は毒性生成物を生成する。本発明の作用は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物、または他の細胞とともに、in vitroまたはin vivoで生じうる。
【0022】
本明細書において、「阻害する」の語は、通常の生理学的活性の改変である。特に、阻害するとは、溶菌する、増殖が減少する、成長が減少する、遺伝子、RNA、タンパク質、脂質、または他の代謝物の発現、あるいはそれらの分解を増大または減少させる、あるいは、タンパク質または核酸の機能を増大させる、減少させる、または他に改変すると規定される。
【0023】
本発明の一実施態様において、Tv-PNPまたはtm-PNP酵素は、酵素を細胞に標的化することにより提供される。より好ましくは、Tv-PNPまたはtm-PNP酵素は、酵素を抗体に接合することにより細胞に標的化される。
【0024】
前記酵素は、細胞に提供される遺伝子によりコードされていてよい。例えば、細胞に提供される遺伝子は、Tv-PNPまたはtm-PNPをコードし、チロシナーゼ遺伝子プロモーターに動作可能に連結されている。あるいは、前記遺伝子を、ポリマー性フィルム、ゲル、微粒子、およびリポソームのような担体分子中に提供する。
【0025】
別の実施態様において、本発明は、複製または非複製標的哺乳動物細胞またはバイスタンダー細胞の両方を溶菌することにより、少なくとも阻害する、典型的には殺す方法を提供する。前記方法は、(a) 標的哺乳動物細胞にTv-PNPまたはtm-PNPを送達する工程、ならびに(b) Tv-PNPまたはtm-PNPに対する有効な量のヌクレオシド基質と標的細胞を接触させる工程を含み、前記基質は哺乳動物細胞に対して相対的に非毒性であり、Tv-PNPまたはtm-PNPにより切断されて、標的哺乳動物細胞およびその近隣にあるバイスタンダー細胞に毒性であり、野生型または置換体大腸菌PNPにより提供されるものより多量であるプリン塩基を生じる。プリンアナログ基質の代表例は、フルダラビン、クラドリビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(talo)-2’-デオキシ-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(allo)-6-メチルプリン-リボシド、2-F-5’-ジデオキシアデノシン、または2-F-α-Lyxo-アデノシンのアナログを含む。
【0026】
本発明はまた、標的哺乳動物細胞を殺すための組成物、(a) プリンヌクレオシド基質を切断するTv-PNPまたはtm-PNP酵素、ならびに(b) 前記酵素により切断された場合に、前記標的細胞を殺すために十分な量のプリンヌクレオシド基質の全体を提供する。
【0027】
本発明はまた、Tv-PNPまたはtm-PNPタンパク質をコードするDNA配列を含むベクターに係るものであり、前記ベクターは、宿主中で複製可能であり、動作可能な連結:a) 複製の始原、b) プロモーター、およびc) 前記Tv-PNPまたはtm-PNPタンパク質をコードするDNA配列を含む。好ましくは、前記ベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスベクター、バキュウイルス、ウイルスベクター、またはプラスミドである。
【0028】
本発明はまた、ベクターがTv-PNPまたはtm-PNPタンパク質を発現するように、本発明のベクターで形質転換する宿主細胞に係るものである。好ましくは、そのような宿主細胞は、微生物細胞、哺乳動物細胞、および昆虫細胞からなる群より選択される。
【0029】
本発明の方法において、宿主細胞は、任意にベクターに ex vivo またはin vitroでベクターで形質転換または形質導入されていてよく、その後患者に、好ましくは腫瘍部位または腫瘍部位の近く、あるいはウイルス感染の位置に投与されてよい。任意に、細胞は全身的に送達されてもよい。
【0030】
本明細書で例示される複数の方法および組成物は、細胞をTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子で形質転換し、その後、毒性プリンアナログに転換される、比較的非毒性のプリンヌクレオシドで処理する工程に関する。特に好ましいプロドラッグはF-araAであるが、他のプロドラッグもまた、本発明で使用可能であることが理解される。
【0031】
Tv-PNPまたはtm-PNPは、アデニンおよび特定のグアニン含有ヌクレオシドアナログを基質としてより効率的に受容する点においてヒトPNPと異なっており、本明細書において、異なる微生物および寄生性始原の、構造的に類似したPNPに比較して、特定の基質を驚くべき効率で切断することが示される。腫瘍細胞中で発現したPNPはヌクレオシドを切断し、毒性プリンアナログを遊離化する。プリンアナログは、形成される細胞内に一般に留まるHSV Thdキナーゼを使用して生成されるもののようなヌクレオシドモノリン酸に比較して細胞膜を通過して自由に拡散する。Tv-PNPまたはtm-PNPにより、転換した後に形成される毒性アデニンアナログを、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼにより、毒性ヌクレオチドに転換し、すべての形質転換細胞を殺傷し、細胞外に拡散し、形質転換されていない周辺細胞(バイスタンダー細胞)を殺傷することができる。
【0032】
本発明の組成物は、標的癌性またはウイルス感染細胞の溶菌破壊のような破壊を生み出すよう作用できる生物学的機能系のような有用性を有する。例示的に、本発明の組成物および方法は、細胞膜を通過して、細胞溶解を引き起こすことができる細胞毒性プリンアナログを生成する、プロドラッグに対するTv-PNPの酵素的作用を使用する。例のために、そのような組成物は単位容量あたり存在するTv-PNPまたはtm-PNP酵素のコピー数に関する情報をもたらす一方、プロドラッグ:それに由来する細胞毒性生成物のモル比は、活性動態の指標である。これらのアッセイ結果は、慣用的なHPLCまたは他のアッセイにより容易に得られる。腫瘍標的細胞用に、時間微分腫瘍マススキャン(time differentiated tumor mass scan)に連結した場合、これらの結果は、Tv-PNPまたはtm-PNPを伴う後続治療、補助的な化学治療、外科または放射線治療、あるいはそれらの組み合わせの特性に関して非常に有用なデータを提供する。
【0033】
PNPコード配列の転写制御
好ましい実施態様において、Tv-PNPまたはtm-PNPは、哺乳動物細胞におけるTv-PNPまたはtm-PNPの発現が、PNPコード配列に連結した真核生物転写制御配列の存在により達成されるように、原核生物遺伝子上にコードされる。前記Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子は、例示的に、市販のプラスミド(例えば、SV40アーリープロモーター/エンハンサー (pSVK30 Pharmacia, Piscataway, NJ)、モロニーマウス腫瘍ウイルス長末端リピート(pBPV, Pharmacia)、マウス乳癌ウイルス長末端リピート(pMSG, Pharmacia)、およびサイトメガロウイルスアーリープロモーター/エンハンサー (pCMVβ, Clontech, Palo Alto, CA))内で得られる強力な構成的プロモーター/エンハンサーエレメントの制御下で発現される。
【0034】
選択される細胞集団をまた、特定のタイプの細胞に対して、Tv-PNPまたはtm-PNPコード配列の発現を制限する、遺伝学的転写制御配列を使用して阻害または破壊する、転写標的化として言及される戦略のために標的化することもできる。転写標的化用の候補制御配列は、好ましくは実験により確立されている、2つの重要な基準を満たす。
(i) 制御配列は、十分な遺伝子発現を引き起こし、標的細胞において治療のための量で酵素の生産をもたらす、
(ii) 制御配列は、非標的細胞において十分な量の酵素の生産を引き起こさず、治療アプローチを損なわない。
【0035】
標的化のこの形態において、制御配列をは、機能的にTv-PNP配列に連結し、制御配列が由来する遺伝子を発現する細胞においてのみ活性化される遺伝子を生成する。遺伝子治療において転写標的化の基準を満たすこと示されている制御配列は、分泌ロイコプロテアーゼインヒビター、サーファクタントタンパク質A、およびα-フェトプロテイン遺伝子を含む。この戦略のバリエーションは、誘導因子の局所投与が、局所遺伝子発現に至るように、「誘導性」をもたらす制御配列を利用することである。この戦略の一例として、放射線誘導配列が、遺伝子治療応用のために記載され、提唱されており(Weichselbaum, et al., Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., 24:565-567 (1992))、本明細書においても機能しうる。
【0036】
組織特異的エンハンサー/プロモーターが、Tv-PNPまたはtm-PNP発現の発揮、それにより、特定の組織に対するTv-PNPまたはtm-PNP仲介毒性において作用可能である。例えば、ヒトチロシナーゼ遺伝学的制御配列は、悪性メラノーマ細胞に対するTv-PNPまたはtm-PNP毒性を発揮させるために十分である。遺伝子の5-プライム隣接領域(転写開始部位から-769bp)からのマウスチロシナーゼ配列は、悪性メラノーマ細胞に対するレポーター遺伝子を発現させることができる。5-プライム隣接領域におけるマウス及びヒトチロシナーゼ配列は類似しているが、Shibata et al., Journal of Biological Chemistry, 267:20584-20588 (1992)には、VileとHartにより使用された同じ領域におけるヒト5-プライム隣接配列(転写開始部位から-616bp)が、組織特異的発現を示さなかったことが示された。Shibataらは、5-プライム隣接配列は、チロシナーゼ発現細胞(メラノーマまたはメラノサイト)を標的とする遺伝子発現に有用ではないことを示唆したが、Shibataらにより使用されたものと若干異なる上流フラグメントが、米国特許番号第 6,017,896号図3に示されるように、実際にメラノーマ細胞に特異的にレポーターまたは大腸菌PNP遺伝子を発現させることができ、同様にTv-PNPまたはtm-PNPと作用することができる。
【0037】
それゆえ、ヒトチロシナーゼ配列は、ヒトメラノーマ細胞においてTv-PNPまたはtm-PNPを発現させるために有用である。これらと同じ配列が、メラノーマ細胞またはメラノサイトにおける他の治療遺伝子を発現させるために有用である。他の組織特異的遺伝学的制御配列および要素を使用して、メラノーマ以外のタイプの細胞に特異的な、適切なプリンアナログヌクレオチド切断酵素をコードする遺伝子を発現させることができる。
【0038】
Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子の送達
適切な組換えウイルスの構築および、哺乳動物細胞へのTv-PNPまたはtm-PNPの転移のための、\アデノウイルスの使用が提供される。非ウイルス遺伝子送達もまた使用することができる。例として、担体または安定化剤の非存在下のDNA(「ネーキッドDNA(naked DNA)」)、薬学的安定化剤または担体の存在下のDNA(「配合したDNA」)、細胞中への導入を容易にするタンパク質と複合体化したDNA(「分子コンジュゲート」)、あるいは脂質へ複合体化したDANの分散を含む。哺乳動物細胞への微生物PNP遺伝子の脂質介在送達の使用が、本明細書で例示される。特に、非ヒトPNP遺伝子を含むプラスミドのカチオン性リポソーム介在転移が示される。Tv-PNP遺伝子を細胞に転移する特定の方法は、標的細胞阻害に成功したことの単なる提示ではないため、他の遺伝子転移方法はまた、一般的に適用可能である。そして、さらに下記で記載される、ウイルス由来転移ベクターを利用する遺伝子送達もまた使用できる。そのような方法は、よく知られており、本明細書に記載される遺伝子介在毒物治療における使用に容易に応用できる。
【0039】
Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子の送達方法は、その形態に依存し、適切な方法は、当業者に明らかであろう。そのような方法は、例示的に、注射、生物学的形質転換、およびリポフェクションを含む。哺乳動物細胞へのPNP遺伝子の脂質介在送達が、本明細書に例示される。特に、非ヒトPNP遺伝子を含むプラスミドのカチオン性リポソーム介在転移が示される。しかし、PNP遺伝子を細胞に転移する特定の方法は、腫瘍細胞損傷に成功したことの単なる提示ではないため、他の遺伝子転移方法はまた、一般的に適用可能である。そして、さらに下記で記載される、ウイルス由来転移ベクターを利用する遺伝子送達もまた使用できる。そのような方法は、よく知られており、本明細書に記載される遺伝子介在毒物治療における使用に容易に応用できる。さらに、これらの方法を使用して、Tv-PNPまたはtm-PNPのような適切なプリンアナログヌクレオチド切断酵素をコードする遺伝子の特定の担体の標的特性を使用して、特定の疾患および細胞集団を標的とすることができる。
【0040】
非病原性嫌気性微生物が、腫瘍細胞に外来遺伝子を選択的に送達するために使用されてきた。例えば、腫瘍を有するマウスに静脈内注射したClostridium acetobutylicum胞子は、低い酸素圧を有する腫瘍の壊死部分でのみ成長する。下記のPNP活性に対するアッセイを使用して、Clostridium perfringensは、MeP-dRをMePに変換することができる酵素活性を示すことが発見された。この発見は、壊死、嫌気中心を伴う腫瘍部分におけるPNP活性を選択的に発現するメカニズムを示唆する。そして、腫瘍を、Tv-PNPまたはtm-PNPを発現するClostridiumの株に感染させ、その後フルダラビンのような適切な基質に暴露することができる。腫瘍組織の嫌気性中心で成長するクロストリジウム微生物のPNP活性はその後、基質を毒性プリンアナログに変換し、それはその後局所的に放出されて腫瘍細胞を損傷する。さらに、大腸菌とサルモネラを含む他の微生物を任意に使用して、Tv-PNPまたはtm-PNPを腫瘍に送達することができる。
【0041】
本発明で作用しうる他の送達系は、例示的に、「ステルス(stealth)」のようなビヒクル、(大腸癌を標的とする脂質介在薬物を含む)他の抗体コンジュゲートリポソーム、細胞特異的リガンドを介するDNAのレセプター介在標的化、リンパ球介在腫瘍標的化、ならびにin vivoにおける高度に特異的なマウスグリオーマの治療レトロウイルス標的化を含む(S.K. Huang et al., Cancer Research, 52:6774-6781 (1992); R.J. Debs et al., Am. Rev. Respir. Dis., 135:731-737 (1987); K. Maruyama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:5744-5748 (1990); P. Pinnaduwage and L. Huang, Biochemistry, 31:2850-2855 (1992); A. Gabizon and Papahadjopoulas, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:6949-6953 (1988); S. Rosenberg et al., New England J. Med., 323:570-578 (1990); K. Culver et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:3155-3159 (1991); G.Y. Wu and C.H. Wu, J. Biol. Chem., 263, No. 29:14621-14624 (1988); Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:3410-3414 (1990); Curiel et al., Human Gene Ther., 3:147-154 (1992); Litzinger, Biochimica et Biophysica Acta, 1104:179-187 (1992); Trubetskoy et al., Biochimica et Biophysica Acta, 1131:311-313 (1992))。腫瘍細胞の分割または新血管形成のいずれかで方向付けられるメカニズムを標的とする遺伝子の文脈において、本願のアプローチは、成長する腫瘍部分内で腫瘍細胞の小さいサブセットを確立することができる改善した方法論を提供し、それは標的細胞中、または標的細胞に隣接して存在する、T. vaginalisプリンアナログヌクレオチド切断酵素またはtm-PNPに対する基質プロドラッグの投与後のような、適切なシグナルの後に、迅速な腫瘍退縮および壊死を仲介する。
【0042】
治療方法
治療方法は、例示的に、本発明のTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子またはタンパク質を有する細胞を適切な基質に暴露しつつ、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を細胞に、形質転換または他の方法で投与する工程を含む。基質は、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を発現する細胞、ならびにTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子発現細胞の近隣にあるバイスタンダー細胞を、細胞毒性プリンアナログ濃度に依存して、阻害するまたは殺す、毒性プリンアナログに変換される。Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子は、例示的に、直接標的細胞に投与される、あるいは、特定のウイルスベクターまたは送達配合物を介するような、標的組成物と組み合わせて全身投与される。好ましくは細胞は、治療する患者中in vivoで処理され、あるいはin vitroで処理され、その後患者に注射される。患者内の細胞へのTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子の導入後、Tv-PNPまたはtm-PNPによる標的細胞に対する細胞毒性プリンアナログへの変換に十分な量で、プロドラッグを全身または局所投与する。プロドラッグは、任意に、本発明のTv-PNPまたはtm-PNPの投与前、投与と一緒に、または投与の後に送達される。好ましくは、Tv-PNPまたはtm-PNPの投与に続いて、プロドラッグを投与する。
【0043】
多数の標的細胞を形質転換すること、またはTv-PNPまたはtm-PNP酵素を投与することの困難さより、他のPNPに対するこの酵素の切断動態は、F-araAのような臨床上重要な基質とともに驚くべき有利な治療結果をもたらす。
【0044】
腫瘍の治療
Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を任意に戦略の一部として使用して、メラノーマ、膵臓癌、肝臓癌または大腸癌のような、転移性固形腫瘍を治療する。この方法では、腫瘍特異的プロモーターの制御下にあるTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を含むプラスミドDNAを任意に使用する。例えば、チロシナーゼプロモーターは、メラノーマ細胞における発現の仲介に対して高度に特異的であり、ほとんどの組織タイプでは遺伝子発現を導かない。このプロモーターの制御コントロール下にあるTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子は、メラノーマ腫瘍において大部分で活性化されており、米国特許第6,017,896号で大腸菌PNPについて示されたように、患者内の他の部分では活性化しない。他の腫瘍タイプに特異的なプロモーター、例えば、全ての固形腫瘍に存在する、迅速に分裂する上皮細胞において活性なプロモーターを使用して、初期または転移性腫瘍においてのみTv-PNPまたはtm-PNPを特異的に活性化する。この方法では、腫瘍特異的プロモーターの制御下にあるTv-PNPまたはtm-PNPを含むプラスミドDNAを、カチオン性リポソームを使用して細胞に送達する。例えば、動物実験に基づいて、1200から3600マイクロモルの脂質DOTMA(1,2-ジオレイルオキシプロピール-3-トリメチルアンモニウムブロミド)とDOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)の1:1混合物と複合化した100mgから400 mgのプラスミドDNAを使用して、患者における腫瘍転移物にTv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を送達することができた。その後上記の量のプロドラッグを投与できる。腫瘍の医学的治療を、金銭的および治療的な有益性のために実行することができる。
【0045】
Tv-PNP遺伝子を任意に使用して、ヒト脳腫瘍を治療するためのプロドラッグを活性化する。この方法において、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を含むレトロウイルス粒子を生成する細胞系統を、患者内の中枢神経系(CNS)腫瘍に注入する。MRIスキャナーが、腫瘍部分内のレトロウイルスプロデューサー細胞系統を適切に注入するために作働しうる。レトロウイルスは、分裂細胞のみで完全に活性であり、癌患者の頭蓋中における分裂細胞のほとんどはは腫瘍におけるものであるために、レトロウイルスは、脳内の非悪性細胞よりも腫瘍自体で主に活性である。腫瘍のサイズおよび局在を含む、患者の臨床上特性により、注射するプロデューサー細胞の量を決定する。例えば、(注射される1ml当たりおよそ1 x 108個のプロデューサー細胞を有する総容量3mlの)各回100マイクロリットルの注射30回の範囲にある容量のプロデューサー細胞が、外科的にアクセスできない腫瘍のための定位固定ガイダンス下で与えられる。手術中にアプローチできる腫瘍に対して、100μlのアリコートが、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子転移を使用して10mlまでのそう注射量で(約1 x 108細胞/mlで)注射され、その後F-araAMP(F-araAのプロドラッグ)が投与される。この戦略を、バイスタンダー殺傷と、非分裂細胞に対する毒性との両方をもたらすように設計し、HSV dThdキナーゼおよびガンシクロビルを使用する以前の試みよりもはるかに大きい腫瘍退縮のために設計する。
【0046】
選択した細胞の集団の破壊を、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子の送達を標的化することにより達成する。ウイルスベクターの天然向性または生理を、特定の細胞タイプの標的化において開発する。例えば、レトロウイルスは、複製細胞における活性の増大を示す。正常(非悪性)細胞が複製しない部位内で増殖する複製癌細胞への選択的レトロウイルス介在遺伝子転移は、動物およびヒトの両方の臨床上研究における治療上強力な標的化である。あるいは、ウイルスベクターは、固形腫瘍のような特定の部位に直接投与され、それにより周辺組織に向かい合う腫瘍細胞へ遺伝子転移を濃縮する。この選択的送達の概念は、アデノウイルスベクターによるマウスにおける腫瘍への遺伝子の送達において示されている。肺癌のレクチン介在標的化に示されているように、レセプター結合リガンドが、選択的な細胞タイプにのみ結合するよう、分子コンジュゲートを開発することができる。
【0047】
Tv-PNPまたはtm-PNPをコードする遺伝子、あるいは腫瘍部分における細胞の小断片への遺伝子発現を標的化し、それに続き基質を投与することは、腫瘍の均衡状態の退縮または減退を仲介するために十分である。
【0048】
ウイルス感染細胞の処理
腫瘍細胞を阻害し、しばしば殺すことに加えて、本明細書に記載の方法を使用して、ウイルス感染細胞を殺すことができる。ウイルス殺傷実施態様において、ウイルス感染細胞における切断酵素の発現を標的化する能力に対して、選択的な遺伝子送達方法を選択する。例えば、ウイルス感染細胞は、ウイルス特異的プロモーターのような遺伝子発現を制御および許可する特別なウイルス遺伝子配列を利用する。そのような配列は、非感染細胞には存在しない。Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子は、ウイルス感染細胞における切断酵素の選択的発現を生み出すウイルスプロモーターのような点に関して適切に方向付けられる。それにより、ウイルス感染細胞は、毒性形態に変換されるように設計されるF-araAまたは他の基質の投与に感受性である。
【0049】
遺伝学的改変細胞の投与
本発明のベクターで形質転換した宿主細胞もまた提供される。
【0050】
特定の応用に対して、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子を受けとる細胞を選択し、患者に投与する。この方法は、最も一般的に、Tv-PNPまたはtm-PNP切断酵素をコードする遺伝子のex vivo転移に関する。F-araAのようなプロドラッグを投与して改変細胞を除去するまで、医薬タンパク質を生成する宿主患者に本発明の遺伝子を受け取る細胞を投与する。この方法は、脳内におけるチロシンヒドロキシラーゼを生成するよう改変された非複製筋芽細胞において使用されたもの(Jiao et al., Nature, 362:450 (1993))のように、細胞治療において有用である。
【0051】
PNP酵素の細胞への直接送達
プロドラッグを有する、または有さないTv-PNPまたはtm-PNPタンパク質は、任意に、Tv-PNPまたはtm-PNP遺伝子よりも標的細胞に直接送達される。例示的に、プリンアナログヌクレオチドを切断することができるTv-PNPまたはtm-PNP酵素を、市販のキットを使用する、利用可能な組換えタンパク質技術により製造する。微生物Tv-PNPタンパク質を生成する方法の一例として、Tv-PNPコード配列を、標準技術を使用してグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(GST)と「インフレーム(in frame)」となるように、pGEX-4T-1 (Pharmacia, Piscataway, NJ)のマルチクローニングサイトにライゲーションする(このベクターのクローニングサイトにより、3つの全ての可能な翻訳リーディングフレームにおいてコード配列を挿入するようにしてこの工程を容易とすることに注意)。得られるプラスミドは、IPTG誘導原核tacプロモーターの転写制御下にある配列をコードするGST-PNP融合を含む。T. vaginalis細胞を、組換えプラスミドで形質転換し、tacプロモーターをIPTGで誘導する。IPTG誘導細胞を溶菌し、GST-PNP融合タンパク質を、グルタチオンセファロース4Bカラム上のアフィニティクロマトグラフィにより精製する。GST-PNP融合タンパク質を溶出し、トロンビン切断異より分子のGST部分を除去する。これらの技術および試薬の全ては、市販されている(Pharmacia, Piscataway, NJ)。組換えタンパク質精製のための他の方法は、公開された研究室マニュアルに詳述されている。
【0052】
Tv-PNPまたはtm-PNPはプロドラッグを分散可能な毒物に活性化するため、プロドラッグの投与前にPNPタンパク質を標的細胞の外部に送達することは、治療効果を誘導するために有効である。Tv-PNPまたはtm-PNPタンパク質は、広範囲の技術により標的細胞に送達可能である。一例は、アクセス可能な部位内における腫瘍部分に直接注入するような、標的組織に対する、担体を有するまたは有さないタンパク質の直接適用である。他の例は、腫瘍部位における抗原を認識するモノクローナル抗体へのTv-PNPまたはtm-PNPタンパク質の接着である(Villa et al., “A high-affinity human monoclonal antibody specific to the alternatively spliced EDA domain of fibronectin efficiently targets tumor neo-vasculature in vivo." Int. J. Cancer. 2008 Jun 1;122(11):2405-13. Nissim et al., "Historical development of monoclonal antibody therapeutics." Handbook of Exp. Pharmacol. 2008;(181):3-18.)。
【0053】
モノクローナル抗体への機能性タンパク質の接着法は、以前に記載されている。Tv-PNPまたはtm-PNPコンジュゲートモノクローナル抗体を、例えば静脈内投与して(IV)、全身投与し、標的組織に特異的に接着させる。続くプロドラッグの全身投与により、腫瘍部異の近隣における分散可能な毒物の局所的な生成がもたらされるであろう。複数の研究により、腫瘍組織に対して特異的タンパク質を標的化するこの技術の使用が示される。モノクローナル抗体に加えて、他のリガンドを、標的細胞に対する特異性に対して選択し、本明細書で教唆される方法により試験することができる。
【0054】
特異的標的に対するタンパク質送達は、任意にリポソームを使用して達成される。リポソームを生成する方法は、記載されている(例えばLiposomes: A Practical Approach)。リポソームを、その該表面における特異的なリガンドまたは抗体の封入により、特異的部位に標的化することができる。例示的事例は、リポソーム表面におけるアシアルオレフィンの封入により標的化した特異的肝臓細胞集団である。特異的リポソーム配合物によりまた、選択的に移植腫瘍に薬物を送達するいわゆるステルスリポソームにより最もよく例示される標的化送達を達成することができる。リポソームを注射または移植した後、非結合リポソームを血液から除去し、患者を、標的部位においてTv-PNPにより切断される、F-araAのようなプリンアナログプロドラッグで処置する。再び、この手順は、適切な標的化ビヒクルの利用可能性のみを必要とする。広い意味で、標的化の戦略を、PNPタンパク質、または遺伝子送達のいずれかに続くプロドラッグの特異的な送達に拡大することができる。
【0055】
あるいは、化合物は、被験者に投与されるTv-PNPタンパク質の生物学的活性ポリペプチドフラグメントである。生物学的活性ペプチドまたはペプチドフラグメントは、任意にTv-PNPの変異体である。いずれかの特定の部位における保存アミノ酸の変異は、好ましくはグリシンまたはアラニンへの変異である。他のいずれかの中和電荷、電荷、疎水性、親水性、合成、非天然、非ヒト、または他のアミノ酸への変異もまた同様に有効であることがさらに理解される。さらにより好ましい変異体は、終結ストップコドンTAAを除去し、その代わりにテール化変異体Tv-PNP (tmTv-PNP)を発現するフレームシフト変異に関する。
【0056】
改変および変化は、任意に、本明細書に開示される例示的なポリペプチドに類似した特性を有する分子をもたらしてよい、またはもたらさなくてよい、本発明の化合物中に包含されるTv-PNPタンパク質の構造(一次、二次、または三次)においてなされる。保存アミノ酸残基における変化が、得られるタンパク質の活性に最も影響を及ぼすようであることが理解される。しかし、リガンド相互作用、タンパク質分解に対する抵抗性または促進性、細胞内または細胞外輸送、分泌、タンパク質‐タンパク質相互作用、翻訳後修飾、例えば糖化、リン酸化、スルホン化など、に対して有効なアミノ酸における変化が、本発明の化合物の活性を上昇または低下させる一方、生理学的な活性を、改変または保持する能力を残していることもさらに理解される。配列におけるあるアミノ酸の他のアミノ酸への置換は、理解可能な活性欠失を伴わずに発生することが知られている。
【0057】
そのような変化を実行する際に、アミノ酸のハイドロパシーインデックスが考慮される。本発明により、あるアミノ酸を、類似のハイドロパシーインデックスを有する他のアミノ酸に置換し、なお同様な生物学的活性を有するポリペプチドをもたらすことができる。各アミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて、ハイドロパシーインデックスを示す。そのインデックスは、イソロイシン(+4.5); バリン(+4.2); ロイシン(+3.8); フェニルアラニン(+2.8); システイン/システイン (+2.5); メチオニン (+1.9); アラニン(+1.8); グリシン(-0.4); スレオニン(-0.7); セリン(-0.8); トリプトファン(-0.9); チロシン(-1.3); プロリン(-1.6); ヒスチジン(-3.2); グルタミン酸(-3.5); グルタミン(-3.5); アスパラギン酸(-3.5); アスパラギン(-3.5); リジン(-3.9); およびアルギニン(-4.5)である。
【0058】
特定の論理に限定されることを意図することなく、アミノ酸の相対的ハイドロパシー特性により、生じるポリペプチドの二次構造が決定され、その結果他の分子とのポリペプチドの相互作用が規定されると考えられている。アミノ酸を、類似のハイドロパシーインデックスを有する他のアミノ酸により置換しても、機能的に同等のポリペプチドが得られることが当業者に知られている。そのような変化において、ハイドロパシーインデックスが±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内であるものが特に好ましく、±0.5以内であるものがさらに特に好ましい。
【0059】
上記で概説したように。アミノ酸置換は、一般的にアミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えば、その疎水性、電荷、サイズなどに基づく。種々の前記特性を考慮する例示的な置換は、当業者によく知られており、(Ala: Gly, Ser), (Arg: Lys), (Asn: Gln, His), (Asp: Glu, Cys, Ser), (Gln: Asn), (Glu: Asp), (Gly: Ala), (His: Asn, Gln), (Ile: Leu, Val), (Leu: Ile, Val), (Lys: Arg), (Met: Leu, Tyr), (Ser: Thr), (Thr: Ser), (Tip: Tyr), (Tyr: Trp, Phe), および (Val: Ile, Leu)を含む(もとの残基:例示的置換)。そして本開示の実施態様は、上述のポリペプチドの機能的または生物学的同等物を考慮する。特に、ポリペプチドの実施態様は、関心のあるポリペプチドに、約50%, 60%, 70%, 80%, 90%および95%の配列同一性を有するバリアントを含むことができる。
【0060】
上述のアミノ酸置換のいずれかを生成する、あるいは同義コドンを生成するような、サイレント変異として作用するように働きうる、Tv-PNPまたはtm-PNPをコードする遺伝子、あるいはその断片におけるいずれかの核酸置換が、本明細書において同様に作用しうる。それらの生成用のそのような置換と方法は、当業者に容易に認識される。
【0061】
tm-PNPは、驚くべきことに、所与の生物に対して、対応する野生型PNPに比較してより大きい切断活性を有することが発見されている。本発明のtm-PNPは、好ましくは、既知の全てのPNP野生型配列に共通する末端コドンが、フレームシフトにより抑制され、末端テールが発現したtm-PNPアミノ酸配列に付加されるようなPNPヌクレオチド配列に関する末端150核酸塩基内のフレームシフト変異に関するものであり、前記テールは、10から50の付加アミノ酸残基を有する。野生型PNPヌクレオチド配列におけるフレームシフト変異は、ヌクレオチド塩基挿入または削除が、末端コドンの3の倍数分上流ではないという条件で、1つ以上のヌクレオチド塩基の挿入または削除により容易に生成される。得られるテールは、野生型ヌクレオチド配列ストップコドンに対して隣接するPNPヌクレオチド配列領域由来のアミノ酸に相当し、付加される。tm-PNPのテールのハイドロパシーインデックス値、ならびに10から50アミノ酸残基長のテールの長さは、そのようなtm-PNPが、MeP-dRに対するF-araAの臨床上重要なプロドラッグ基質に影響を及ぼす選択的切断において重要な因子であるように思われる。特定の論理に限定されることなく、本発明のtm-PNPのテールは、野生型酵素に比較して、tm-PNPプロドラッグ結合部位へのリガンドのアクセスを改変すると考えられる。
【0062】
基質の投与
Freidenreich et al., Cancer Chemother. Rep., 50:219-244, (1966)の式を任意に使用して、ヒト被験者に対する基質の最大許容投与量を決定する。例えば、1日あたり、1kgあたり25mg(MeP-dR)の全身投与を9日間(9総ドーズ(dose))行うことにより、いくぶんかの毒性がもたらされるが、致死ではない。この結果より、75 mg MeP-dR/m2のヒト用量が、式:25 mg/kg x 3=75 mg/m2により決定された。この量または少し少ない量は、被験者を殺すことなく、ヒトにおける腫瘍細胞殺傷を最大化し、それにより安全プロフィールに好ましい薬効を生み出すと期待される。この有効性の標準は、癌治療の分野で受容されている。より好ましくは、最大許容用量の約10%から1%の範囲(例えば、7.5 mg/m2から0.75 mg/m2)の薬剤レベルで投与する。基質を、腫瘍の部位で、またはその近辺で局在し続けさせる投与モードは、全身投与基質よりもより低い容量で有効であることが理解される。
【0063】
基質を、経口で、非経口(例えば静脈内)で、筋肉内注射により、腫瘍内注射により、腹腔内注射により、または経皮的に投与してよい。必要とされる基質の正確な量は、被験者ごとに、年齢、体重、被験者の一般的状態、治療する疾患の重篤度、腫瘍の部位およびサイズ、使用される特定の化合物、その投与モードなどに応じて変動するであろう。適切な量を、本明細書に示されるルーチンの実験のみを使用して、当業者は決定してよい。一般的に、例えばMeP-dRまたは機能的同等物を考慮した場合、投与量は、約0.5-50 mg/m2の範囲であることが好ましいであろう。フルダルビンのようなプロドラッグに対して、用量は、典型的には、被験者において安全であることが知られている用量以下であろう。
【0064】
投与の意図するモードに応じて、基質を、好ましくは正確な用量の一回投与に適した単位剤形にある、固体、半固体または液体投与剤形、例えば、錠剤、坐薬、ピル、カプセル、粉末、液体、または懸濁物の形態にある薬剤組成物中において投与することができる。組成物は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせた、有効量の選択基質を含むであろうし、他の医薬、薬剤、担体、または希釈剤を含んでもよい。本明細書において「薬学的に許容可能な」の語は、生物学的にまたは他に望ましくないものではなく、顕著に望ましくない生物学的効果をもたらさない、または含まれる薬剤組成物の他のいずれかの成分、と有害な相互作用をしない選択基質と個体に投与することができる物質を指す。
【0065】
固体組成物のために、慣用的な非毒性担体は、例えば、薬剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、グルコース、スクロースおよびカルボン酸マグネシウムを含む。液体薬剤投与組成物を、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノールなどのような賦形剤中で最適な薬剤アジュバントと活性化合物を溶解または分散させ、それにより溶液または懸濁物を形成することにより調製することができる。望まれれば、投与する薬剤組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、例えば酢酸ナトリウムまたはオレイン酸トリエタノールアミンのような付加的な非毒性基質を微量含んでもよい。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に既知である、または明らかであり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesを参照せよ。
【0066】
経口投与用に、微細な粉末または顆粒は、希釈剤、分散剤、および/または表面活性剤を含んでよく、水中またはシロップ中、乾燥状態のカプセルまたは小袋中、懸濁剤が含まれてよい非水性溶液または懸濁物中、結合剤または滑剤が含まれてよい錠剤中、あるいは水またはシロップ中の懸濁物中に調製されてよい。望ましい場合または必要な場合、芳香剤、保存剤、懸濁剤、増粘剤、または乳化剤を含んでよい。錠剤または顆粒が好ましい経口投与形態であり、これらはコーティングされていてよい。
【0067】
経皮投与は、一般的に注射による。注射物質を、慣用的な形態、液体溶液または懸濁物のいずれか、溶液または注射前に適する固体形態で、あるいは注射前の駅体中の懸濁物としてまたはエマルジョンとして調製することができる。
【0068】
Tv-PNPコード核酸を含むベクター
本発明は、Tv-PNPをコードするDNA配列を含むベクターを提供する。前記ベクターは、さらに、前記核酸配列が、宿主中で転写および翻訳されるような核酸配列に連結して作用する制御因子を含む。好ましくは、ベクターはウイルスまたはプラスミドである。適切なウイルスベクターの例示的事例は、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス、および化学的ウイルス構造体、例えばアデノレトロウイルスベクターを含む。有用なアデノウイルスベクターは、2型または5型のようなヒトアデノウイルス、例示的にトリ、ウシ胎仔、イヌ、マウス、ヒツジ、ブタまたはサル始原のような、動物始原のアデノウイルスである。
【0069】
in vitroおよび in vivoにおける遺伝子の転移用アデノ関連ウイルスに由来するベクターの使用が、例えば米国特許番号第4,797,368号、および米国特許番号第5,139,941号に詳細に記載されている。一般的に、repおよび/またはcap遺伝子は、削除される、または転移する遺伝子により置換される。組換えウイルス粒子を、ヒトヘルパーウイルスに感染した細胞系統に2個のプラスミドを共形質転換することにより調製する。感染したプラスミドは、ウイルスの2個の逆繰り返し領域に隣接する、本発明のPNPをコードする核酸配列を含む第一のプラスミド、ならびにウイルスのカプシド包含遺伝子(repおよびcap)を保持する第二のプラスミドを含む。その後組換えウイルス粒子を、標準的な方法で精製する。
【0070】
PNP発現
本発明のTv-PNP酵素を、in vitroおよびin vivoにおいて転写および翻訳する。in vivoにおいて前記タンパク質を生成するために、特異的Tv-PNPをコードする核酸を含むベクターを、in vivoまたはex vivoにおいて細胞に導入する。これは、本明細書に概説されるベクターを介する、動物へ細胞を戻す再導入を含む。別の実施態様において、興味のあるタンパク質を細胞内または無細胞系において、in vitroで生成する。この方法で生成したタンパク質を、in vitroで使用して、あるいは細胞または動物に導入して、所望の結果を生み出す。
【0071】
哺乳動物細胞におけるTv-PNPの発現は、Tv-PNPコード配列に連結した真核生物転写制御配列を必要としてよい。Tv-PNP遺伝子を、市販のプラスミド(例えば、SV40アーリープロモーター/エンハンサー(pSVK30 Pharmacia, Piscataway, NJ)、モロニーマウス腫瘍ウイルス長末端リピート(pBPV, Pharmacia)、マウス乳癌ウイルス長末端リピート(pMSG, Pharmacia)およびサイトメガロウイルスアーリープロモーター/エンハンサー (pCMVβ, Clontech, Palo Alto, CA))内で得られる強力な構成的プロモーター/エンハンサーエレメントの制御下で発現することができる。
【0072】
他の組織特的遺伝学的制御配列および因子、例えば、アルブミン、小腸脂肪酸結合タンパク質、ミルクホエー、神経線維、ピルビン酸キナーゼ、平滑筋アルファアクチンおよびビリンのプロモーターを例示的に含む組織特異的プロモーターを、メラノーマ以外の特異的細胞タイプに、適切なプリンアナログヌクレオチド切断酵素をコードする遺伝子を直接発現させる。
【0073】
以下の非限定的例は、特異的反応スキームおよび特異的な本発明の化合物、ならびに本発明の中間体を示す。本明細書において慣用的な生物学的技術に関する方法が記載される。そのような技術は、一般的に当業者に公知であり、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, ed. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989およびCurrent Protocols in Molecular Biology, ed. Ausubel et al., Greene Publishing and Wiley-Interscience, New York, 1992(定期的にアップデートされる)のような方法論に詳細に記載される。免疫学的方法(例えば、抗原特異的抗体の調製、免疫沈降、およびイムノブロッティング)は、例えばCurrent Protocols in Immunology, ed. Coligan et al., John Wiley & Sons, New York, 1991および Methods of Immunological Analysis, ed. Masseyeff et al., John Wiley & Sons, New York, 1992に記載される。
【0074】
本発明の種々の態様が、以下の非限定的実施例に示される。実施例は例示の目的であり、本発明の実行のいずれかを制限するものではない。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、変化および改変を行うことができることが理解されるであろう。実施例は一般的に、哺乳動物細胞、組織、液体または被験者を対象とする一方、当業者は、同様の技術および他の公知の技術を、ヒトのような他の哺乳動物に対する例に容易に変換することを理解する。本明細書に示される試薬は、一般に哺乳動物種の間でクロス反応する、あるいは同様の特性を有する試薬が市販されており、そのような試薬をどこで取得するかは、当業者は容易に理解する。
【0075】
基質選択
適切な基質は、細胞毒性切断プリン塩基アナログに比較して、哺乳動物細胞に比較的非毒性であることを特徴とする。基質のいくつかの例として以下を列記する。複数の化合物の後に、一般的な略号が含まれ、セミコロンで補足される。
9-(β-D-アラビノフラノシル)-2-フルオロアデニン;F-araA、フルダラビン
9-(2-デオキシ-β-D-リボフラノシル]-6-メチルプリン;MeP-dR
9-(β-D-リボフラノシル)-2-アミノ-6-クロロ-1-デアザプリン;ACDP-R
7-(β-D-リボフラノシル)-3-デアザグアニン
2-フルオロ-2’-デオキシアデノシン
9-(5-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
2-フルオロ-5’-デオキシアデノシン
2-クロロ-2’-デオキシアデノシン;Cl-dAdo、クラドリビン
5’-アミノ-5’-デオキシ-2-フルオロアデノシン
9-(5-アミノ-5-デオキシ-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
9-(α-D-リボフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,3-ジデオキシ-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
2’,3’-ジデオキシ-2-フルオロアデノシン
9-(3-デオキシ-β-D-リボフラノシル]-6-メチルプリン
2-フルオロ-3’-デオキシアデノシン
9-(α-L-リキソフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(α-L-リキソフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6-デオキシ-β-D-アロフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6-デオキシ-β-D-アロフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(6-デオキシ-α-L-タロフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6-デオキシ-α-L-タロフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6-ジデオキシ-β-D-アロフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6-ジデオキシ-β-D-アロフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6-ジデオキシ-α-L-タロフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6-ジデオキシ-α-L-タロフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(6,7-ジデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6,7-ジデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(6,7-ジデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6,7-ジデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6,7-トリデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6,7-トリデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6,7-トリデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6,7-トリデオキシ-β-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,3-ジデオキシ-3-ヒドロキシメチル-α-D-リボフラノシル)-6-チオグアニン
9-(2,6-ジデオキシ-α-L-タロフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6-ジデオキシ-α-L-タロフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(6,7-ジデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6,7-ジデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(6,7-ジデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(6,7-ジデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6,7-トリデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6,7-トリデオキシ-α-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,6,7-トリデオキシ-β-D-ヘプタ-6-イノフラノシル)-6-メチルプリン
9-(2,6,7-トリデオキシ-β-L-ヘプタ-6-イノフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(2,3-ジデオキシ-3-ヒドロキシメチル-α-D-リボフラノシル)-6-チオグアニン
9-(5,5-ジ-C-メチル-β-D-リボフラノシル)-2-フルオロ-アデニン
9-(5,5-ジ-C-メチル-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
9-(5-デオキシ-5-ヨード-β-D-リボフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(5-デオキシ-5-ヨード-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
9-(5-デオキシ-5-メチルチオ-β-D-リボフラノシル)-2-フルオロアデニン
9-(5-デオキシ-5-メチルチオ-β-D-リボフラノシル)-6-メチルプリン
さらなる例が、Ichikawa E.およびKato K., Curr. Med. Chem. 2001 Mar; 8(4): 385-423にみられる。
【0076】
複数の基質が、他のものよりもより良好な寛容性を有することが期待されることが理解される。例えば、F-araAは、他の既知の酵素に比較してより速い速度でTv-PNPにより切断され、より大きい治療選択肢を提供する。
【0077】
実施例1:Tv-PNP発現ベクターの合成
T. vaginalisゲノムDNAを、メトロニダゾール抵抗株(R: CDC955)由来の第一のDNAクローン、および感受性株(S3: CDC520)由来の第二のDNAクローンとともに取得する。TvPNP遺伝子を、AccuPrime Pfx supermix (Invitrogen)を使用して、両方のサンプルから以下のプライマーを使用するPCRにより増幅する。TIGRトリコマナスゲノムプロジェクトウェブサイトからダウンロードしたTvPNP配列に基づき、プライマーを設計する。配列は、GenBank (XM_001323400)で現在利用可能である。本明細書で使用するTv-PNPプライマーは、その中に括弧の制限酵素部位を有するものを含む:
フォワードプライマーTvPNP-F: 5’-GTTAACGGATCCATGGCAACACCCCATAACTCTGCT -3’ (HpaI & BamHI) (配列番号1)
Tv-PNPリバースプライマーTvPNP-R: 5’ -TCTAGAGTTAACGTCCTTATAATTTGATTGCTGCTTC -3’ (XbaI & HpaI) (配列番号2)、および
TvPNP-R1: 5’- ATAGTTTAGATCCGAGGACCAATCAT- 3’ (配列番号3)
野生型Tv-PNPのヌクレオチド配列が、配列番号4として示される。野生型Tv-PNPのアミノ酸配列は配列番号5である。
【0078】
第1ラウンドのPCRを、TvPNP-FおよびTv-PNPR1プライマーを使用して実行する。その後、ネスティド(nested)PCR(第2ラウンド)を、第1ラウンドのPCRからの生成物と、プライマーTvPNP-Fおよび TvPNP-Rとを使用して実行する。PCR産物を、pCR4Blunt-Topo vector (Invitrogen)にクローニングし、図3に示すように配列解読する(クローンID = pCR4 Blunt-TvPNP)。S株は、TIGR配列から1塩基の変化を含むが、それはコドンArg102を変更しない (CGC -> CGT)。RクローンはTIGR配列に一致するため、TvPNP(R)クローンをさらなるクローニングに使用する。TvPNPを発現するアデノウイルスを製造するために、図3のTvPNP(R)を、EcoRIおよびXbaIを有するよう設計し、pACCMV.pLpAアデノウイルストランスファーベクターのEcoRIおよびXbaI部位にクローニングする。図4に示すpACCMV-TvPNPを、pJM17 (Microbix)に共形質転換し、293細胞において相同組換えを介して組換えAd-TvPNPを取得する。得られるAd-TvPNPを、Tv-PNP特異的PCRおよびTv-PNP活性アッセイにより同定する。
【0079】
2つの異なるベクターを使用して、レンチTvPNPウイルスを製造する。図3に示すTvPNP(R)を、改変pWPIベクター(もともとAddgene.org由来であり、クローニングの目的のために、より多い制限酵素部位を含むよう改変される(pWPI-linker(+)))にクローニングする。pWPIベクターは、内部リボソームエントリー部位(IRES)制御下で増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する。TvPNP(R)を、PmeIおよびXbaIを使用してpCR4Blunt-TvPNPから単離して、その後図5のpWPI-リンカー(+) ベクターのSnaBIおよびSpeI部位にクローニングする。PmeIおよびSnaBIはブラントエンドカットであり、XbaIおよびSpeIはいくらかの突出を生成する。
【0080】
ルシフェラーゼ遺伝子の部分で、TvPNP(R)を別に pHR’CMV Luc W Sin-18ベクター(J. Bio. Chem., Published on October 1, 文献M410370200として2004年10月1日出版されたJ. Bio. Chem.による)にクローニングし、EGFPを共発現しないでTvPNPを発現する細胞を生成する。BamHIおよびHpaIを使用してTvPNP(R)をpCR4Blunt-TvPNPより単離し、その後、図6に示すpHR’CMV Luc W Sin-18ベクターの(クレノーフラグメントを使用してブラントエンド化した)BamHIおよびXhoI部位にクローニングする。
【0081】
実施例2:Tv-PNP酵素用の酵素プロドラッグの同定
以下の方法は、野生型大腸菌PNPまたは他のPNPよりも、野生型Tv-PNPによって、より有効に切断される基質を同定するために有用である。その後、この方法により同定されたプロドラッグを、動物実験において、毒性の決定、種々の薬剤担体を投与するための適性、ならびに他の薬学的特性において検査することができる。
【0082】
前記方法は、in vitroにおける基質の切断を定量的に測定する。プリンアナログヌクレオチド(500 μlの100 mM HEPES, pH 7.4, 50 mMリン酸カリウムにおける0.1 mM)を、100 μg/ml Tv-PNPまたは野生型大腸菌PNPと組み合わせる。反応混合物を25°Cで1時間インキュベートし、その後反応を2分間各サンプルをボイルすることにより停止させる。タンパク質濃度とアッセイの時間は、特定の基質に対する酵素の活性に応じて変動する。各サンプルを、逆相HPLCにより解析し、基質から生成物への変換を測定する。ヌクレオチドおよびプリンアナログを、Spherisorb ODSI (5 μm)カラム(Keystone Scientific, Inc., State College, PA)から、50 mMのリン酸二水素アンモニウム(95%)とアセトニトリル(5%)を含む溶媒で溶出する。生成物を254 nmの吸光度で検出し、その保持時間と吸光度を信憑性のある対照サンプルと比較することにより同定する。
【0083】
表1は、種々の基質の存在下における野生型Tv-PNPと比較した野生型大腸菌PNPの活性を示す。大腸菌PNPとの並行的な比較において、無数の化合物を、Tv-PNPに対する基質としての効率について試験した。前記化合物は、アデノシンの、イノシンの、MeP-dRの、およびフルオロまたはクロロ置換アデノシンの種々のアナログを含む。前記酵素を、表に列記された化合物それぞれ100マイクロモルとインキュベートし、酵素的切断の速度を、ヌクレオシドから塩基のHPLC分離により決定する。表1に示すように、Tv-PNPは、F-araAを、大腸菌PNPがF-araAを切断する速度(1時間あたり1,250ナノモル/ミリグラム)のおよそ23倍である速度(1時間あたり32,000ナノモル/ミリグラム)で切断する。さらに、F-araAに対するTv-PNPの触媒効率が、大腸菌PNPのF-araAに対する触媒効率の25倍である(944対38のVmax/Km)という図1に示される結果が確認される。プロドラッグ基質としてF-araAを使用する生理学的条件の治療用にTv-PNPを使用する場合、より大きいTv-PNP酵素の生物学的活性により、異常細胞の増殖を損傷する活性をより大きくできることが理解される。F-araAは、野生型大腸菌PNP酵素を発現する腫瘍における完全な応答を引き起こすため、野生型Tv-PNPとF-araAの組み合わせを使用する、少なくとも23倍増大した毒性F-Adeの生成により、抗腫瘍活性が改善する。
【0084】
表1からまた、大腸菌PNPに比較して、Tv-PNPは2-Cl-2’-デオキシアデノシン(Cl-dAdo, クラドリビン)に対してより大きい活性を有することも注意すべきである。Tv-PNPは、1時間あたり320,000ナノモル/ミリグラムの特異的な活性を有する一方、複数のCl-dAdoは、大腸菌により1時間あたり39,000ナノモル/ミリグラムのみの特異的な活性で切断される。
【0085】
【表1】

【0086】
Tv-PNPと野生型大腸菌PNPは、構造と機能正の両方において実質的に類似している。Tv-PNPと大腸菌が、細胞毒性化合物へのプロドラッグの切断の効率において大きく異なるという本願の発見および定量化は、Tv-PNPはF-araAに対して感知できる活性を有していないというこれまでの理解(すなわちWang et al.)に矛盾しており、本発明の新規性を示している。
【0087】
この解析により、Tv-PNPは、野生型大腸菌PNPに比較して、フルダラビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリンリボシド、2-F-5’-デオキシアデノシン、または2-F-α-L-lyxo-アデニンに対してより活性が高い。そして、これらの基質は、本明細書において病理的状態を処置するための方法および組成物において使用するためのさらなる査定にふさわしい、好ましい候補プロドラッグ、特にUSPグレードで市販のプロドラッグである。
【0088】
実施例3:MeP-dRおよびF-araAを切断する、種々のPNPの能力の比較
実施例2の手順ににより、種々の始原のPNPの相対的な切断活性を比較して、重要な化学治療剤であるMeP-dRおよびF-araAの切断に対して最適な酵素を決定する。種々の純度の酵素を、100μMのMeP-dRまたはF-araAとインキュベートし、切断速度を、実施例2に記載されたHPLCによる生成物(MePまたはF-Ade)の生成を測定することにより決定する。結果は、表2に示される。
【0089】
【表2】

【0090】
実施例4:30残基末端テール化大腸菌PNP(tm-PNP)発現およびプロドラッグ切断
2,134ヌクレオチド塩基に相当する、野生型大腸菌PNP由来のヌクレオチド配列を、pACCMV.plpAアデノウイルストランスファーベクターのEcoRIおよびXbaI部位にクローニングした。この配列は、野生型大腸菌PNPから、他で残基1634として存在するアデノシン残基を欠く点で異なっている。野生型大腸菌PNPにおいて“GGTAA”を生み出すこの塩基削除は、“GAG”(グルタミン酸に相当する239番目のコドン)および終結コドンに相当する“TAA”であった。得られるフレームシフトにより、野生型大腸菌PNPにおいてみられるグルタミン酸の末端(239番目の残基)として、グルタミン酸の位置に30アミノ酸テールを生じる。このテール変異PNPに相当する認識配列(cogenics sequence)が、ハイライトされたテール変異PNPの開始(atg)および終結(taa)コドン、ならびにアデノウイルストランスファーベクター配列のフレームシフト領域として、図7に示される。あるいは、図7の塩基919から1632の間に伸長するヌクレオチド配列は、野生型PNPヌクレオチド配列に相当する。
【0091】
図7のヌクレオチド配列の発現により生成されるtm-PNPのアミノ酸配列が、図8に示される。野生型大腸菌PNPにおいて末端グルタミン酸の位置に与えられる30アミノ酸テールが、図8にハイライトされ、配列番号8として示される。アデノウイルストランスファーベクター(配列番号6)にクローニングされるヌクレオチド配列は、野生型大腸菌PNPにおいて末端グルタミン酸残基の位置に30アミノ酸テール変異(配列番号8)を含む、塩基919から1722の間に伸長するヌクレオチド配列(配列番号7)を含む。
【0092】
得られるtm-PNPを、実施例3に詳述されるMeP-dRおよびF-araAを切断する能力について試験した。このtm-PNPは、198のMeP-dR/F-araAを有する。これは、野生型大腸菌PNPの比率422(表2)に対応し、2.3倍のF-araAの切断の選択性を表す。従って、tm-PNPは、固形腫瘍の治療におけるプロドラッグF-araAMPを伴う使用のための好ましい酵素を表す。
【0093】
tm-PNPは、好ましくは、大腸菌PNPのの置換変異体に伴う切断能力に匹敵する。多数の置換変異大腸菌PNPは、国際公開第WO 03/035012号に詳述され、野生型大腸菌PNPタンパク質配列の位置65(fMETからカウントする)におけるメチオニンの位置のアミノ酸残基バリンへの置換(M65V)を含む。精製酵素に対する本発明のアミノ酸テールを欠くM65Vに対する、EcoRIおよびXbaI部位のpACCMV.pLpAアデノウイルストランスファーウイルス比率は593であり、置換変異大腸菌PNPをコードするアデノウイルスベクターで注射した腫瘍において発現する酵素は、469±52であった。全ての切断結果のように、これらの結果を、等モル量の基質に基づいてノーマライズする。
【0094】
In vivo有効性実験により、tm-PNPは、pACCMV.pLpAアデノウイルストランスファーベクター切断比率の差分EcoRIおよびXbaI部位に寄与するこれらの違いを有するM65Vに対してかなり大きい抗腫瘍活性を示すことがわかった。
【0095】
実施例5:24残基末端テール化大腸菌PNP(tm-PNP)発現およびプロドラッグ切断
図7のヌクレオチドを改変して、塩基1705の後のアデノシン残基を挿入し、野生型大腸菌PNPの末端のグルタミン酸の位置に、24アミノ酸テールを有する終結コドン(TAA)を作り出した。tm-PNPに付加したこの24アミノ酸テールは、図4に詳述したようなpACCMV.pLpAアデノウイルストランスファーベクターにクローニングした配列であり、配列番号9に示される。発現するアミノ酸配列を、配列番号10に示す。
【0096】
実施例6:30残基末端テールを有するtmTv-PNP
実施例4の手順を、Tv-PNPからTAA削除を繰り返し、アデノウイルス発現ベクターにおけるポリペプチドテールを付加した。この30残基末端テール化tmTv-PNPは、図4に詳述したようなpACCMV.pLpAアデノウイルストランスファーベクターにクローニングした配列であり、配列番号11に示される。発現するアミノ酸配列を、配列番号12に示す。
【0097】
本明細書において言及するいずれの特許または文献も、本発明に関連する当業者のレベルの指標である。これらの特許または文献は、各文献が、言及することにより参照するよう、特異的かつ個別に示されたような程度に、言及することにより本明細書に取り込まれる。
【0098】
当業者は、本発明が対象を実行し、目的物および言及される有利性、ならびにそれに固有のものを取得するようよく適応することを容易に理解するであろう。本明細書に記載される、本発明の方法、手順、処置、分子、および特異的化合物は、現在好ましい実施態様の代表であり、例示的であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。その中の変化および他の使用は、当業者が実行するであろうし、それは特許請求の範囲により規定される本発明の精神に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物癌細胞またはウイルス感染細胞を阻害する方法であって、トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素、またはテール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素を、前記哺乳動物癌細胞またはウイルス感染細胞の近隣に提供する工程、ならびに酵素を切断基質に暴露して、細胞毒性プリンアナログを得る工程を含む、方法。
【請求項2】
前記基質が、9-(β-D-アラビノフラノシル)-2-フルオロアデニン(フルダラビン)、クラドリビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(talo)-2’-デオキシ-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(allo)-6-メチルプリン-リボシド、2-F-5’-ジデオキシアデノシン、または2-F-α-L-リキソ-アデノシンのアナログである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素の提供が、前記細胞において発現可能な前記酵素のためのヌクレオチド配列をコードするウイルスベクターを投与することによるものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵素の提供が、前記細胞において発現可能な酵素のためのヌクレオチド配列の直接注入、感染、リポフェクション、または微粒子的投与によるものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵素の提供が、前記細胞に近傍における前記酵素の直接注入によるものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酵素の提供が、トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ、またはテール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼを発現するよう改変した被験者または被験者細胞への投与によるものである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
提供が、前記酵素をコードする発現可能なヌクレオチド配列の細胞内送達によるものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物癌細胞またはウイルス感染細胞の溶解物;
トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素、またはテール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素;ならびに
前記酵素により細胞毒性プリンアナログを得るよう切断可能である基質
を含む、請求項1に記載の方法により生産される組成物。
【請求項9】
前記テール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素が、10から50アミノ酸残基のテールを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記テールが、対応する野生型プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素の0から10アミノ酸残基を切除する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記基質が、フルダラビン、クラドリビン、コルディセピンのアナログ、2’,3’-ジデオキシアデノシン、5’-メチル(talo)-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(talo)-2’-デオキシ-6-メチルプリン-リボシド、5’-メチル(allo)-6-メチルプリン-リボシド、2-F-5’-ジデオキシアデノシン、または2-F-α-L-リキソ-アデノシンのアナログを含む群より選択される、請求項8から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ウイルスタンパク質をさらに含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から7のいずれか一項に規定される哺乳動物癌細胞またはウイルス感染細胞を阻害するための市販キットであって、
トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素、またはテール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素をコードする、発現可能なヌクレオチド配列を含有するベクター、ならびに
前記トリコモナス・ヴァジナリスのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素、または前記テール変異プリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素を発現するための細胞へ前記ベクターを導入し、その後細胞毒性プリンアナログを取得するためのプリンヌクレオシドホスホリラーゼ酵素の切断基質を投与するための説明書
を含む、キット。
【請求項14】
前記ベクターが、レトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、はしかウイルス、アデノ関連ウイルス、またはバキュロウイルスである、請求項14に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−500224(P2012−500224A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523217(P2011−523217)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/054058
【国際公開番号】WO2010/019954
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(511040746)ザ ユーエイビー リサーチ ファンデイション (1)
【出願人】(511040791)サザン・リサーチ・インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】