説明

ヌメリ防除剤

【課題】塩素臭や腐食の問題もなく、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持した、台所流し台や風呂場の排水口等のように雑菌やカビ等の代謝物によりヌメリが発生する箇所に設けられる、ヌメリ防除剤を提供すること。
【解決手段】5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等の非さらし粉系抗菌剤又は非さらし粉系抗菌剤とテトラキスフェノ−ル類等の多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物と、硫酸カルシウム0.5水和物を含有する基材とを加圧成形して非さらし粉系ヌメリ防除剤を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所流し台や風呂場の排水口等のように雑菌やカビ等の代謝物によりヌメリが発生する箇所に設け、ヌメリを取り、ヌメリの発生を防止するヌメリ防除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台所流し台や風呂場の排水口のヌメリの主成分は、食材、界面活性剤、石鹸、人の垢等が細菌の栄養源となり、そのとき細菌から分泌されるポリサッカライドである。
【0003】
このようなヌメリ成分の除去方法として、市販のヌメリ取りには酸化剤が広く用いられ、中でも塩素系さらし粉を用いてヌメリを化学的に分解除去する方法や、雑菌やカビ等を殺菌する方法が用いられている。また、非塩素系の酸化剤として一般に使用されている過炭酸ナトリウムを用い、同様な効果を得ている場合が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなさらし粉系ヌメリ取り剤では、有効成分の次亜塩素酸系物質は強力な酸化力を有しており、流し台やその周辺の金属を腐食に追いやる危険性があり、かつ有毒性の塩素ガスを発生する。特に食酢等の酸性物質と反応すると塩素ガスの発生量が増加し危険な状態となる。また、トリクロロイソシアヌル酸などを有効成分とするイソシアヌル酸系薬剤にあってはアルカリ性の洗剤や次亜塩素酸ナトリウム系の洗剤と接触すると爆発性を有する三塩化窒素ガスを発生する可能性がある。
【0005】
また、非塩素系の酸化剤である過炭酸ナトリウムは溶解度が高く、水と接触すると速やかに溶解してしまうことから、効果の持続性の面から期待はできない。本発明の課題は、上記のような危険性がなく、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持したヌメリ防除剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、抗菌剤、特に抗菌剤と多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物と特定の基材との加圧成形物が、上記のような危険性がなく、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持し、ヌメリ防除効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等の抗菌剤とテトラキスフェノ−ル類等の多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物、有機ヨード系抗菌剤等の非さらし粉系抗菌剤と、硫酸カルシウム0.5水和物を含有する基材とを加圧成形してなることを特徴とするヌメリ防除剤に関する。
【0008】
また本発明は、上記硫酸カルシウム0.5水和物がβ型の硫酸カルシウム0.5水和物であることを特徴とする上記ヌメリ防除剤や、これらヌメリ防除剤が溶解調節剤としてステアリン酸等のC14〜C24の飽和脂肪酸を含有することを特徴とするヌメリ防除剤や、最大長が30mm以下である錠剤に加圧成形されたことを特徴とする上記ヌメリ防除剤や、基材がさらに乳糖を含有することを特徴とする上記ヌメリ防除剤に関する。
【0009】
本発明のヌメリ防除剤は、塩素臭や腐食の問題もなく、安全性や取扱い性に優れ、安定した有効成分の溶出が可能となり、台所流し台や風呂場の排水口等のように雑菌やカビ等の代謝物によりヌメリが発生する箇所に設け、ヌメリを除去するとともに、ヌメリの発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明における非さらし粉系抗菌剤としては、その使用時に酸性物質等と反応して塩素ガスを発生しないものであればどのようなものでも使用することができ、例えば、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物及び抗菌作用を有するとして知られている天然製油類等を例示することができる。
防黴剤又は抗細菌剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−3−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メトキシカルボニルベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メタンスルホニルピリジン、2−チオシアノメチベンゾチアゾール、2,2−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)、3,3,4,4−テトラハイドロチオフェン−1,1−ジオキサイド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン、5−クロロ−4−フェニル−1,2−ジチオラン−3−オン、N−メチルピロリドン、フェニル−(2−シアノ−2−クロロビニル)スルホン、メチレンビスチオシアネート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−エタノール、2−ブロモ−4′−ヒドロキシアセトフェノン、ジブロモニトリルプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタルニトリル、過炭酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過ほう酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、パラヒドロキシ安息香酸n−ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロロへキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′−(テトラメチレンジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)等を具体的に挙げることができる。
【0011】
また、天然製油類としては、例えば、シネオール、ヒノキチオール、メントール、テルピネオール、ボルネオール、ノポール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ジメチルオクタノール、チモール等を例示することができる。
【0012】
さらに、本発明における非さらし粉系抗菌剤として、ヨード系抗菌剤も例示することができ、その中でも特に固体のものが望ましい。ヨード系抗菌剤としては、例えば、2,3,3−トリヨードアリルアルコール類、2,3,3−トリヨードアリルエーテル類、2,3,3−トリヨードアリルアゾール類、3−ヨード−2−プロパギルブチルカルバミン酸、4−クロロフェニル(3−ヨードプロパギル)ホルマール、ヨードプロパギルアゾール類、ジヨード−パラ−トリスルホン、ポピドンヨード、ベンジルヨード酢酸エステル及びパラニトロベンジルヨード酢酸エステルを挙げることができる。
【0013】
これら非さらし粉系抗菌剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。また、これら非さらし粉系抗菌剤は、多分子系ホスト化合物のゲスト化合物とすることができ、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等をゲスト化合物として包接化合物を形成させ、これらを非さらし粉系抗菌剤として使用することができる。
【0014】
本発明において非さらし粉系抗菌剤とともに使用される基材は、硫酸カルシウム0.5水和物であり、単独で使用することも、あるいは他の例えば、燐酸水素カルシウム2水和物、燐酸3カルシウム無水物、燐酸水素マグネシウム3水和物、燐酸水素マグネシウム8水和物、乳糖、バニリン、クエン酸カルシウム4水和物、硫酸カルシウム2水和物、アセト酢酸アニリド、アセト酢酸−o−トルイダイド、アセト酢酸−p−トルイダイド、アセト酢酸−o−アニシダイド、ソルビトール、アルキルソルビタンエステル(HLB14以下)、グリセリンモノ脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤、蔗糖脂肪酸エステル(HLB14以下)等との2種以上の混合物して使用することもできるが、加圧形成した時の打錠性、水に対する溶解性、崩壊性、抗菌剤の安定性への影響を考慮して決定することが望ましい。
【0015】
また、硫酸カルシウム0.5水和物は成形性や溶解性を容易にコントロールすることができるが、硫酸カルシウム0.5水和物としては、常圧焼成により製造されるβ型のものが、加圧焼成することにより製造されるα型のものよりも、吸水による成形体の型崩れを起こしにくい点で好ましく、このβ型の硫酸カルシウム0.5水和物を用いる場合は、乳糖と併用することが上記成形性や溶解性のコントロールの点でより好ましい。
【0016】
本発明において多分子系ホスト化合物とは、ゲストとなる抗菌剤と水素結合等の分子間力により相互作用を持ち、規則的配列を有する、結晶性錯体(包接化合物)を形成する化合物をいい、上記の性質を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば以下の化合物を例示することができる。
(1)テトラキスフェノ−ル類
(2)1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(3)1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニルヘキサン−2,4−ジイン−1,6−ジオール
(4)1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール
(5)2,5−ビス(2,4,ジメチルフェニル)ハイドロキノン
(6)1,1−ビス(2,4,ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール
(7)1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール
(8)1,1′−ビ−2−ナフトール
(9)9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(10)1,1,6,6−テトラ(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(11)9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(12)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
(13)N,N,N′,N′−テトラキス(シクロヘキシル)−(1,1′−ビフェニル)−2−2’−ジカルボキシアミド
(14)4,4′−スルホニルビスフェノール
(15)4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(16)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(17)4,4′−チオビス(4−クロロフェノール)
(18)2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)
(19)デオキシコール酸
(20)コール酸
(21)α,α,α′,α′−テトラフェニル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジメタノール
(22)t−ブチルヒドロキノン
(23)2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
(24)顆粒状コーンスターチ
(25)1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン
【0017】
上記多分子系ホスト化合物におけるテトラキスフェノ−ル類としては、例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン等テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類を具体的に例示することができる。
【0018】
本発明に使用される包接化合物は、通常、ゲストとなる非さらし粉系抗菌剤とホスト化合物とを、場合によっては水あるいは有機溶媒存在下に、常温〜100℃で数分間〜数時間攪拌して反応させることにより容易に得られる。
【0019】
本発明において非さらし粉系抗菌剤と基材との混合割合は、使用状況が様々であることから非さらし粉系抗菌剤1〜99重量部、基材99〜1重量部の間で任意に混合比率を変化させることができるが、好ましくは非さらし粉系抗菌剤5〜20重量部、基材95〜80重量部である。また、非さらし粉系抗菌剤として包接化合物を用いる場合、該包接化合物2〜30重量部、基材98〜70重量部の混合割合が好ましい。
【0020】
本発明のヌメリ防除剤は、非さらし粉系抗菌剤と基材とを加圧成形することにより得られるが、加圧成形する際には、必要に応じてステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、オルトほう酸等の滑沢剤を、全ヌメリ防除剤100重量部に対して0.1〜5重量部の割合で、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の結合剤を、全ヌメリ防除剤100重量部に対して1〜15重量部の割合で添加することにより、加圧成形を容易にすることができる。
【0021】
成形時の滑沢性を付与するのと同時に剤の水中での安定性(膨潤、崩壊防止性)を向上させる目的でステアリン酸などのC14〜C24の飽和脂肪酸を添加することができる。特に硫酸カルシウムを基材として使用した場合、溶解調節剤としてC14〜C24の飽和脂肪酸を添加することが好ましい。C14〜C24の飽和脂肪酸の添加量は、全ヌメリ防除剤100重量部に対して1〜10重量部の割合で用いられる。10重量部以上添加することもできるが溶解速度が遅くなる。また、C14〜C24の飽和脂肪酸としてはステアリン酸を具体的に挙げることができるが、上記滑沢剤としてのステアリン酸カルシウム等のC14〜C24の飽和脂肪酸の金属塩は、全ヌメリ防除剤100重量部に対して1重量部以上の割合で用いると成形性が損なわれることがあるので、溶解調節剤としての使用は適していない。さらに、目的に応じてアルキルチオ尿素系やトリアゾール系等の腐食防止剤を添加し配管などの金属部分の腐食を抑制することもできる。また、ケイソウ土、硫酸白土などを加えることにより、成形の際、帯電防止効果を付与することもできる。また、各種界面活性剤を添加することにより有効成分を広くヌメリ発生面に拡散させることができる。その他、苦味付与成分を添加することにより乳幼児の誤食を防止したり、消臭剤や芳香剤を添加することにより台所生ゴミや排水口の悪臭を防止することもできる。
【0022】
本発明のヌメリ防除剤の一態様として、加圧成形により最大長が30mm以下である錠剤とした小型のヌメリ防除剤を例示することができる。かかる小型ヌメリ防除剤は各種公知の形状をとることが可能であるが、加圧成形が容易であることや狭い場所への設置の容易さの面から円板形状、角落し四角形状、楕円形状、偏平球形、球状等の形状が好ましく選択される。またその大きさは、各種排水管や台所のゴミ受け容器等狭い容器内に設置可能なように、最長部分で30mm以下、好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。
【0023】
本発明の小型ヌメリ防除剤は溶解によりさらに小型化した際の流出を防止するために、通水性の容器に収納した形態で使用することができる。通水性の容器としては、各種公知の通水性を有する材質で形成された容器や、非通水性の材質で形成された容器であっても小型化した錠剤の流出を防止可能で適当な通水性を有する開口部の設置された容器であれば使用可能であり、不織布や細孔を有する樹脂フィルム等が好ましく使用される。
【0024】
上記通水性の容器は、排水管内や台所のゴミ受け容器等のヌメリ防除目的部に容器を設置するために、糸や紐、金属線、樹脂製止め具、粘着材等の各種公知の係止具、好ましくは粘着テープ部等の係止具を備えたものが好ましい。また、2つの錠剤収納部の間に、錠剤が存在しない載置部を設けた通水性の容器とし、かかる載置部を台所のゴミ受け容器(通称三角コーナー)の周縁上端に載置することによりヌメリを防除することができる形態とすることもできる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例
(試料の調製)
表1に示される配合割合の各混合物から加圧成形により、直径30mmの円柱状の成形物からなる各試料を調製した。表1中、「TEP・CMI」はゲスト化合物となる抗菌剤として、2モルの5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、多分子系ホスト化合物として、1モルの1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとの反応により得られた包接化合物を表し、「ブロノポール」は抗菌剤2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオールを表し、「HPC」は結合材ハイドロオキシプロピルセルロースを表わす。
【0026】
【表1】

【0027】
(打錠・崩壊試験)
Φ30mm金型を設置した連続油圧打錠機に設置し、打錠圧8t/cm2で重量12gの錠剤を打錠し、胴割れ、キャッピング、滑沢性、付着性などについての「打錠性」試験を行ったところ、すべての試料についての打錠性評価は「○」で、打錠不良を起こしたものはなかった。また、これら試料の成形物1錠を200mlのポリカップに入れ、蒸留水200mlを添加し、室温で24時間放置後の成形物の崩壊状態を観察したところ、いずれの試料においても崩壊したものはなかった。
【0028】
(溶解試験)
成形物1錠を市販のヌメリ取り用収納ケースに入れ、直径18cm、高さ58cmの市販ピペット洗浄器(洗浄水量:14.75L、洗浄水温:35〜40℃、洗浄水接触時間:3分間、洗浄間隔:6.6分間/回)の水深25〜29cmの位置に収納ケースごと紐で吊して設置し、連続的に洗浄して溶解速度を測定した。表1中の数値は、成型物が完全に溶解するまでの時間を表している。
【0029】
(性能テスト)
市販のヌメリ取り用収納ケースに各試料(成形物)を入れ、一般家庭の台所の排水口に紐で引っかけて固定し設置した。使用時の臭気(サラシ粉臭)及びヌメリの付着度合いを目視により1ヶ月後に観察した。その結果を表1に示す。表1からもわかるように、比較例2の試料を除いてはサラシ粉臭がするものはなかった。また、1ヶ月後のヌメリ付着量は、実施例2のものが評価「△」でわずかにヌメリの付着が認められたが、他のものは評価「○」でヌメリの付着が認められなかった。
【0030】
(次亜塩素酸系洗浄剤との混合時の塩素ガス発生試験)
試料1gを100mlのビーカーに入れて蒸留水100mlを添加し、溶解した液についてpHメーターでpHを測定し、pH5以下のものを市販次亜塩素酸系洗浄剤との混合により塩素ガスが発生する目安とした。その結果を表1に示す。表1からもわかるように、実施例1〜3の試料は評価「○」で塩素ガス発生の恐れがなく、比較例のものは共にpH5以下を示し、評価「×」で塩素ガス発生の恐れがあることがわかった。
【0031】
(包接化合物を使用する場合の包接化合物の崩壊試験:包接化合物からの抗菌剤溶出性試験)
基材が包接化合物の安定性に及ぼす影響をみるために、以下の包接化合物の崩壊試験を行った。表2に示された各種基材1gと蒸留水98gを200mlのビーカーに入れ、3時間マグネチックスターラーで攪拌し、飽和状態まで溶解させた後、包接化合物として1gの上記TEP・CMIを添加し、24時間マグネチックスターラーで攪拌を行い、その後溶解液を0.2μのメンブランフィルターで濾過して包接化合物中の抗菌剤の溶出量を測定した。またブランクとしては、基材無添加の水を用いた。結果を表2に示す。表2中、「包接崩壊度(%)」とは包接化合物からの抗菌剤の溶出割合を意味する。そして、表2からわかるように、本発明において用いられる基材は、ブランクと同程度の包接崩壊度であったが、比較のために用いたポリエチレンオキサイドは、包接化合物を高い割合で崩壊させており、この包接崩壊度の点からも本発明において用いられる基材が優れていることがわかった。
【0032】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非さらし粉系抗菌剤と、硫酸カルシウム0.5水和物を含有する基材とを加圧成形してなることを特徴とするヌメリ防除剤。
【請求項2】
非さらし粉系抗菌剤が、抗菌剤と多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物であることを特徴とする請求項1記載のヌメリ防除剤。
【請求項3】
多分子系ホスト化合物が、次の(1)から(25)の化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物であることを特徴とする請求項2記載のヌメリ防除剤。
(1)テトラキスフェノ−ル類
(2)1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(3)1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニルヘキサン−2,4−ジイン−1,6−ジオール
(4)1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール
(5)2,5−ビス(2,4,ジメチルフェニル)ハイドロキノン
(6)1,1−ビス(2,4,ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール
(7)1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール
(8)1,1′−ビ−2−ナフトール
(9)9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(10)1,1,6,6−テトラ(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(11)9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(12)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
(13)N,N,N′,N′−テトラキス(シクロヘキシル)−(1,1′−ビフェニル)−2−2′−ジカルボキシアミド
(14)4,4′−スルホニルビスフェノール
(15)4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(16)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(17)4,4′−チオビス(4−クロロフェノール)
(18)2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)
(19)デオキシコール酸
(20)コール酸
(21)α,α,α′,α′−テトラフェニル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジメタノール
(22)t−ブチルヒドロキノン
(23)2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
(24)顆粒状コーンスターチ
(25)1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン
【請求項4】
非さらし粉系抗菌剤が、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであることを特徴とする請求項2又は3記載のヌメリ防除剤。
【請求項5】
非さらし粉系抗菌剤が、有機ヨード系抗菌剤であることを特徴とする請求項1記載のヌメリ防除剤。
【請求項6】
硫酸カルシウム0.5水和物が、β型の硫酸カルシウム0.5水和物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のヌメリ防除剤。
【請求項7】
ヌメリ防除剤が、溶解調節剤としてC14〜C24の飽和脂肪酸を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載のヌメリ防除剤。
【請求項8】
14〜C24の飽和脂肪酸が、ステアリン酸であることを特徴とする請求項7記載のヌメリ防除剤。
【請求項9】
最大長が30mm以下である錠剤に加圧成形することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載のヌメリ防除剤。
【請求項10】
基材が、さらに乳糖を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載のヌメリ防除剤。

【公開番号】特開2011−201920(P2011−201920A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134274(P2011−134274)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【分割の表示】特願2003−124406(P2003−124406)の分割
【原出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】