説明

ネイルプリント装置及び印刷制御方法

【課題】複数回印刷ヘッドを走査して爪部に印刷を施す場合に、走査の途中で指が動いてしまった場合でも、走査ごとの画像のずれを防いで高品質の印刷を行うことのできるネイルプリント装置及び印刷制御方法を提供する。
【解決手段】爪部Tを複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する(S5)とともに、このn回目の走査における印刷状態とデザイン画像の印刷データ(元データ)とに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出し(S6,S7)、この検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正し(S8)、この補正後の印刷データに基づき爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように制御する(S2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルプリント装置及び印刷制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネイルプリント装置は、印刷しようとする爪の指を、装置本体に設けた指載置台上に位置決めし、この位置決めされた指の爪に色や絵柄等のデザイン画像を印刷するプリント装置であり、こうしたネイルプリント装置では、ユーザが自分の爪に印刷したいデザイン画像を選択し、選択されたデザイン画像が指の爪部に印刷される。
【0003】
そして、従来、ネイルプリント装置内等の記憶部に保持されているデザイン画像の印刷データの縮尺をユーザの爪領域のサイズや形状等に応じて調整して印刷する手法がとられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−534083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ネイルプリント装置では装置の小型化・軽量化等のため、小型の印刷ヘッドを搭載していることが多く、1回の走査によって印刷できる範囲が爪部の面積よりも狭い場合がある。
このような場合には、例えば爪部を複数の領域に分けて複数回印刷ヘッドを走査することにより1つのデザイン画像を印刷することとなるが、例えば1回目の走査の途中で指が印刷ヘッドの走査方向(すなわち移動方向)と同じ方向に移動してしまうと、当該1回目の走査で爪部に印刷された画像は本来印刷されるべき画像よりも印刷ヘッドの走査方向の長さ寸法が短く圧縮されてしまう。逆に、1回目の走査の途中で指が印刷ヘッドの走査方向(すなわち移動方向)と反対の方向に移動してしまうと、当該1回目の走査で爪部に印刷された画像は本来印刷されるべき画像よりも印刷ヘッドの走査方向の長さ寸法が長く伸張されてしまう。
【0006】
このように1回目の走査による1段目の印刷の際に指が動いて正しく印刷が行われなかった場合に、そのまま2回目の走査による2段目の印刷が行われると、1回目の走査により爪部に印刷された1段目の画像と2回目の走査により爪部に印刷された2段目の画像とが整合せず、1段目と2段目との境界が目立つ仕上がりの悪い画像となってしまうとの問題がある。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、複数回印刷ヘッドを走査して爪部に印刷を施す場合に、走査の途中で指が動いてしまった場合でも、走査ごとの画像のずれを防いで高品質の印刷を行うことのできるネイルプリント装置及び印刷制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のネイルプリント装置は、
デザイン画像の印刷データに基づいて爪部に印刷を施す印刷手段と、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査が終了すると、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得手段と、
この印刷状態取得手段によって取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出手段と、
この歪み検出手段による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正手段と、
この印刷データ補正手段によりn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づいて前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の印刷制御方法は、
デザイン画像の印刷データに基づき爪部に印刷を施す印刷手段を備えている印刷装置に用いられる印刷制御方法において、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得ステップと、
この印刷状態取得ステップにおいて取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出ステップと、
この歪み検出ステップにおける検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正ステップと、
この印刷データ補正ステップにおいてn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づき前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得するとともに、このn回目の走査における印刷状態とデザイン画像の印刷データ(元データ)とに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出し、この検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正し、この補正後の印刷データに基づき爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように制御するようになっているので、複数回印刷ヘッドを走査して爪部に印刷を施す場合に、走査の途中で指が動いてしまった場合でも、走査ごとの画像のずれを防いで高品質の印刷を行うことができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るネイルプリント装置の一実施形態を概念的に示した斜視図で、蓋体を開いた状態を示している。
【図2】図1のネイルプリント装置の装置本体を概念的に示した斜視図である。
【図3】図1のネイルプリント装置の印刷指固定手段を示した断面図で、印刷指として人差し指から小指を印刷指挿入部に挿入した際の固定態様を示している。
【図4】図1のネイルプリント装置の正面側の断面図である。
【図5】図1のネイルプリント装置の側断面図である。
【図6】印刷指挿入部に挿入された指と撮影部、印刷部との関係を模式的に示す要部断面図である。
【図7】本実施形態に係るネイルプリント装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【図8】(A)は、デザイン画像の印刷データの一部を模式的に示す説明図であり、(B)は、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されている場合に2段目の印刷データを補正せずに印刷した場合の1段目と2段目との境界部分を模式的に示す説明図であり、(C)は、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されている場合に2段目の印刷データを補正して印刷した場合の1段目と2段目との境界部分を模式的に示す説明図である。
【図9】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図10】デザイン画像の理想的な印刷状態を示した図である。
【図11】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されて印刷された状態を示す説明図である。
【図12】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されて印刷された場合に2段目の印刷データを補正せずに印刷した状態を示す説明図である。
【図13】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されて印刷された場合に2段目の印刷データを走査方向の寸法が短くなるように圧縮する補正をして印刷した状態を示す説明図である。
【図14】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された状態を示す説明図である。
【図15】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された場合に2段目の印刷データを補正せずに印刷した状態を示す説明図である。
【図16】1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された場合に2段目の印刷データを走査方向の寸法が長くなるように伸長する補正をして印刷した状態を示す説明図である。
【図17】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるようにされて印刷された状態を示す説明図である。
【図18】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されて印刷された場合に2段目の印刷データを補正せずに印刷した状態を示す説明図である。
【図19】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が短くなるように圧縮されて印刷された場合に2段目の印刷データを走査方向の寸法が短くなるように圧縮する補正をして印刷した状態を示す説明図である。
【図20】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された状態を示す説明図である。
【図21】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された場合に2段目の印刷データを補正せずに印刷した状態を示す説明図である。
【図22】歪み検出の手法の一変形例を示す説明図であり、1段目の印刷済画像が走査方向の寸法が長くなるように伸長されて印刷された場合に2段目の印刷データを走査方向の寸法が長くなるように伸長する補正をして印刷した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図16を参照しつつ、本発明に係るネイルプリント装置の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるネイルプリント装置の外観を示す斜視図であり、図2は、ネイルプリント装置の内部構成を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、このネイルプリント装置1は、ケース本体2及び蓋体4を備えている。このケース本体2及び蓋体4は、ケース本体2の上面後端部に設けたヒンジ3を介して、互いに連結されている。
【0014】
上記ケース本体2は平面視で長円状に形成されている。このケース本体2には前側には開閉板2cが起倒可能に設けられている。この開閉板2cは、ケース本体2の前面下端部に設けたヒンジ(図示せず)を介して、ケース本体2に連結されている。この開閉板2cは、ケース本体2の前面を開閉するためのものである。
また、ケース本体2の天板2fには後述する操作部12が設置されており、天板2fのほぼ中央部には表示部13が設定されている。
なお、ケース本体2及び蓋体4の形状、構成はここに例示したものに限定されない。
【0015】
また、ケース本体2にはネイルプリント装置1の装置本体10が収容されている。この装置本体10は、図2に示す印刷指固定手段を構成している印刷指固定部20、撮影手段を構成している撮影部30、印刷手段を構成している印刷部40及び制御手段を構成している制御装置50(図7参照)を備えている。これら印刷指固定部20、撮影部30、印刷部40及び制御装置50は機枠11に設けられている。
なお、機枠11は下部機枠11a及び上部機枠11bによって構成されている。そして、下部機枠11aは箱状に形成され、ケース本体2の内部下方に設置され、上部機枠11bは下部機枠11aの上方で且つケース本体2の内部上方に設置されている。
【0016】
印刷指固定部20は、機枠11の中の下部機枠11aに設けられている。この下部機枠11aに設けられた印刷指挿入部20a、非印刷指挿入部20b及び掴み部20cによって印刷指固定部20が構成されている。
ここで、印刷指挿入部20aは、印刷しようとする爪Tに対応する指(以下「印刷指」という。)U1を挿入するめための指挿入部である(図3参照)。印刷指挿入部20aの底面(印刷指載置面)は、印刷指U1を載置する指載置手段として機能する。印刷指U1の撮影や印刷は、印刷指U1がこの指載置手段としての印刷指挿入部20aの印刷指載置面に載置された状態で行われる。
また、非印刷指挿入部20bは、印刷指以外の指(以下「非印刷指」という。)U2を挿入するための指挿入部である(図3参照)。
また、掴み部20cは、印刷指挿入部20aに挿入された印刷指U1と、非印刷指挿入部20bに挿入された非印刷指U2とで挟持することが可能な部分である。本実施形態において、この掴み部20cは印刷指挿入部20aと非印刷指挿入部20bとを仕切る隔壁21によって構成されている。
【0017】
この隔壁21の上面は平坦な印刷指載置面を構成している。この隔壁21の指挿入側端部には膨出部22が形成されている。この膨出部22は、印刷指挿入部20a及び非印刷指挿入部20bに印刷指U1及び非印刷指U2を深く挿入した際に、印刷指U1及び非印刷指U2の付け根U3が当接する部分に形成されている。膨出部22は、印刷指U1の腹全体が印刷指載置面に当接した状態で、印刷指U1と非印刷指U2とで隔壁21(掴み部20c)を強く挟持することができるように、指挿入方向の断面が、隔壁21の下面から下方に向けて膨出するように円形となっている。なお、膨出部22の形状は、断面円形に限定されることなく、断面楕円形,多角形等の非円形であってもよい。
【0018】
例えば、左手の親指以外の4本の指(人差し指、中指、薬指及び小指)が印刷指U1となる場合には、図3に示すように、ユーザは印刷指挿入部20aに4本の印刷指U1を挿入し、非印刷指挿入部20bに非印刷指U2である親指を挿入する。この場合、ユーザが印刷指挿入部20aに挿入された印刷指U1と、非印刷指挿入部20bに挿入された非印刷指U2とで掴み部20cを挟持することにより、印刷指U1が掴み部20cの上で固定される。
また、親指のみが印刷指U1となる場合には、親指(印刷指U1)を印刷指挿入部20aに挿入さし、親指以外の4本の指(非印刷指U2)を非印刷指挿入部20bに挿入する。この場合にも、ユーザが印刷指U1と非印刷指U2とで掴み部20cを挟持することで印刷指U1が固定される。
【0019】
また、図4は、本実施形態に係るネイルプリント装置1の正面側の断面図であり、図5は、ネイルプリント装置1の側断面図である。
図4及び図5に示すように、撮影部30は、機枠11の中の上部機枠11bに設けられている。
すなわち、上部機枠11bに設置された基板31の中央部下面には、ドライバーを内蔵した200万画素程度以上の画素を有するカメラ32が設置されている。また、基板31には、カメラ32を囲むように白色LED等の照明灯33が設置されている。撮影部30は、このカメラ32及び照明灯33を備えて構成されている。
この撮影部30は、指載置手段である印刷指挿入部20aに載置された印刷指U1を照明灯33によって照明し、カメラ32によってその印刷指U1を撮影して、指画像を得る撮影手段であり、この撮影部30は、後述する制御装置50の撮影制御部511に接続され、該撮影制御部511によって制御されるようになっている。
【0020】
また、印刷部40は、デザイン画像の印刷データに基づいて爪部Tに印刷を施す印刷手段であり、主に上部機枠11bに設けられている。
すなわち、図4及び図5に示すように、上部機枠11bの両側板には、2本のガイドロッド41が平行に架設されている。このガイドロッド41には、主キャリッジ42が摺動自在に設置されている。また、図5に示すように、主キャリッジ42の前壁42aおよび後壁42bには2本のガイドロッド44が平行に架設されている。このガイドロッド44には、副キャリッジ45が摺動自在に設置されている。この副キャリッジ45の下面中央部には、印刷ヘッド46が搭載されている。
本実施形態において、この印刷ヘッド46は、インクを微滴化し、被印刷媒体(本実施形態では爪部T)に対し直接に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式の印刷ヘッドであり、印刷指U1が載置される印刷指載置面に対向する面にインクを吐出させるノズルが複数設けられたノズル面(図示せず)が形成されている。ノズル面は印刷ヘッド46の印刷指載置面21aに対向する面全体に設けられていてもよいし、印刷ヘッド46の印刷指載置面21aに対向する面の面積よりも小さい範囲に設けられていてもよい。
本実施形態の印刷ヘッド46のノズル面は、その長さ寸法(爪部Tの長さ方向の長さ寸法)が、標準的な爪部Tの長さ方向(指の延在方向)の寸法よりも小さい寸法となっている。このため、ノズル面の長さ寸法よりも大きい長さに亘ってデザイン画像の印刷を行う場合には、印刷ヘッド46は、爪部Tを複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷するようになっている。
なお、印刷ヘッド46の記録方式はインクジェット方式に限定されない。
【0021】
また、本実施形態において、副キャリッジ45の下面であって印刷ヘッド46と干渉しない位置には、n回目の走査において印刷部40により爪部T上に印刷されたデザイン画像を撮影して、n回目の走査における印刷状態である印刷済画像の画像データを取得する印刷済画像取得手段としての爪撮影用カメラ49が設けられている。
印刷済画像取得手段としての爪撮影用カメラ49は、爪部Tを複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査が終了すると、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得手段である。爪撮影用カメラ49によって撮影される範囲は特に限定されず、直前のn回目の走査によって印刷された部分のみを印刷済画像として取得してもよいし、n回目の走査によって印刷された部分を含むそれまでに印刷された画像全体を広く撮影して印刷済画像としてもよい。
爪撮影用カメラ49の構成は特に限定されないが、例えば、高精細なカラー画像を撮影することのできる精度の高いカメラが好ましい。
爪撮影用カメラ49は、後述する制御装置50の撮影制御部511に接続され、該撮影制御部511によって動作制御されるようになっている。
爪撮影用カメラ49によって撮影された印刷済画像の画像データは、記憶部51の印刷済画像保持領域522に記憶される。
【0022】
主キャリッジ42は動力伝達手段(図示せず)を介してモータ43に連結され、モータ43の正逆回転によって、ガイドロッド41に沿って左右方向に移動ように構成されている。また、副キャリッジ45は動力伝達手段(図示せず)を介してモータ47に連結され、モータ47の正逆回転によって、ガイドロッド44に沿って前後方向に移動するように構成されている。
また、下部機枠11aには、印刷ヘッド46にインクを供給するためのインクカートリッジ48が設けられている。インクカートリッジ48は、図示しないインク供給管を介して印刷ヘッド46と接続されており、適宜印刷ヘッド46にインクを供給するようになっている。なお、印刷ヘッド46自体にインクカートリッジを搭載する構成としてもよい。
【0023】
印刷部40は、これらガイドロッド41、主キャリッジ42、モータ43、ガイドロッド44、副キャリッジ45、印刷ヘッド46、モータ47及びインクカートリッジ48等を備えて構成されている。この印刷部40のモータ43、印刷ヘッド46、モータ47は、後述する制御装置50の印刷制御部514に接続され、該印刷制御部514によって制御されるようになっている。
【0024】
操作部12は、ユーザが各種入力を行うための入力手段である。
操作部12には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪部Tに印刷するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、印刷開始を指示する印刷開始釦、その他各種の入力を行うための操作釦121が配置されている。
本実施形態では、例えば表示部13にデザイン画像を選択するための図示しないデザイン選択画面が表示されるようになっており、ユーザは、所望のデザイン画像を操作釦121によって選択することにより、印刷されるデザイン画像が選択される。
【0025】
表示部13は、例えば液晶パネル(液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display))等で構成された表示手段である。
なお、表示部13の表面に、タッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、図示しないスタイラスペンや指先等によるタッチ操作により、表示部13の表面をタッチすることによっても各種の入力を行うことができるように構成される。
【0026】
表示部13には、例えば、印刷指U1を撮影した指画像、印刷指U1の爪部Tに印刷すべきデザイン画像を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像等が表示されるようになっている。
なお、表示部13の表面にタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、表示部13の表面をユーザがタッチするだけで各種の入力操作等を行うことができるように構成される。
【0027】
また、制御装置50は、例えば上部機枠11bに配置された基板31等に設置されている。図7は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置50は、図7に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)等によって構成されている制御部51、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等で構成される記憶部52を備えるコンピュータである。なお、ネイルプリント装置1の記憶手段は、制御装置50内の記憶部52(ROM、RAM)に限定されず、他に記憶手段が設けられていてもよい。
【0028】
この制御部51は、機能的に見た場合、撮影制御部511、歪み検出部512、印刷データ補正部513、印刷制御部514等を備えている。これら撮影制御部511、歪み検出部512、印刷データ補正部513、印刷制御部514等としての機能は、CPUと記憶部52のROM等に記憶されたプログラムとの共働によって実現される。なお、制御部51に含まれる機能部はここに挙げたものに限定されず、例えば、指画像から爪部Tの領域を検出する爪領域検出部等の機能部を備えていてもよい。
【0029】
撮影制御部511は、爪部Tを複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、印刷済画像取得手段(印刷状態取得手段)としての爪撮影用カメラ49を制御して、n回目の走査が終了すると、少なくともn回目の走査において印刷部40により爪部T上に印刷されたデザイン画像を撮影して印刷済画像(印刷状態)を取得させる撮影制御手段である。
また、撮影制御部511は、ユーザの印刷指U1の指画像等を撮影するように、撮影部30の撮影動作を制御する。
撮影制御部511は、爪撮影用カメラ49や撮影部30によって取得された画像の画像データを記憶部52に記憶させるようになっている。
【0030】
歪み検出部512は、印刷済画像取得手段(印刷状態取得手段)である爪撮影用カメラ49によって取得されたn回目の走査における印刷済画像の画像データ(印刷状態)と記憶部52のデザイン画像保持領域521に記憶されているデザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出手段である。
本実施形態では、歪み検出部512は、爪撮影用カメラ49によって取得された印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データとを比較することにより、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する。
具体的には、印刷済画像の画像データを構成する各画素の色をデザイン画像の印刷データの各画素の色と比較して、印刷済画像の画像データの各画素がデザイン画像の印刷データのどの画素に対応するものであるかを判断し、印刷済画像の画像データの各画素がデザイン画像の印刷データの対応する画素が本来印刷されるべきであった位置からどの程度ずれているかを検出する。
また、本実施形態において、歪み検出部512は、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に印刷ヘッド40の走査方向(図11等の走査方向Y)の歪みが生じているか否かを検出するものである。なお、歪み検出部512によって検出される歪みは、走査方向Yに生じた歪みに限定されない。例えば、印刷ヘッド40の走査方向Yに直交する方向の歪み等を検出することができてもよい。
【0031】
ここで、歪み検出部512による歪み検出の手法を、図8(A)及び図8(B)を参照しつつ説明する。
図8(A)は、デザイン画像の印刷データ(元データ)のうち、n回目の走査により印刷されるべきn段目(図8(A)では、1回目の走査で印刷される1段目)の印刷データであって、n+1段目との境界に位置する部分と、n+1回目の走査により印刷されるべきn+1段目(図8(A)では、2回目の走査で印刷される2段目)の印刷データであって、n段目との境界に位置する部分とを部分的に切り出した様子を模式的に示す図である。なお、図8(A)〜図8(C)において、各枠(すなわち、k1−1、k2−1、d1−1、d2−1等)は、それぞれ1画素を表している。
図8(B)は、n回目の走査により印刷されたn段目(図8(B)では、1段目)の印刷済画像と、図8(A)に示すn+1段目(図8(A)では、2回目の走査で印刷される2段目)の印刷データをそのまま印刷した場合のn+1段目(図8(B)では、2段目)の印刷済画像とを示した図である。
例えば、n段目(図8(B)では、1段目)の印刷途中にユーザの印刷指U1が印刷ヘッド40の走査方向(図10等の走査方向Y)に等速で移動した場合、図8(B)に示すように、n段目(図8(B)では、1段目)の印刷済画像における各画素(図8(B)においてd1−1〜d1−8)は、本来印刷されるべき位置よりも図8(B)において左側に寄って印刷され、1段目の印刷済画像は全体的に走査方向Yの寸法が短くなるように圧縮されて印刷される。この場合に、n+1段目(2段目)の印刷データをそのまま印刷すると、図8(B)に示すように、n段目(1段目)とn+1段目(2段目)とで大きく画像がずれてしまう。
【0032】
歪み検出部512は、n段目(1段目)の印刷済画像を構成する各画素(図8(B)におけるd1−1〜d1−8)が、それぞれデザイン画像の印刷データ(元データ)を構成する画素(図8(A)におけるk1−1〜k1−8)のうちのどれに対応するものであるかを各画素の色等を比較することによって判断する。
n段目(1段目)の印刷済画像を構成する各画素(図8(B)におけるd1−1〜d1−8)及びデザイン画像の印刷データ(元データ)を構成する画素(図8(A)におけるk1−1〜k1−8)はそれぞれx,y座標等で示される位置情報を有しており、歪み検出部512は、それぞれ対応する画素同士の位置情報を比較することにより、印刷済画像の各画素が本来印刷されるべき位置からどの程度ずれているかを検出することができる。そして、これにより、n段目(1段目)の印刷済画像がどの程度歪んでいるかを検出する。
なお、歪み検出部512によって検出される歪み量は、各画素のずれ量として検出されてもよいし、n段目(1段目)の印刷済画像全体の圧縮率又は伸長率として検出されてもよい。
【0033】
印刷データ補正部513は、歪み検出手段である歪み検出部512による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正手段である。
本実施形態において、印刷データ補正部513は、歪み検出部512による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを走査方向Yに圧縮又は伸長する補正を行うようになっている。なお、歪み検出部512が印刷ヘッド40の走査方向Yに直交する方向の歪みを検出するような場合には、この方向のずれについても印刷データを補正するようになっていてもよい。
【0034】
具体的には、例えばn段目(1段目)の印刷済画像に図8(B)に示すような歪みが生じている場合には、この歪み量に応じてn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを走査方向Yに圧縮又は伸長する補正(すなわち、走査方向Yの寸法が短くなるように圧縮する補正又は走査方向Yの寸法が長くなるように伸長する補正)を行う。
すなわち、n段目(1段目)の印刷済画像を構成する画素d1−1の下にn+1段目(2段目)の印刷済画像を構成する画素k2−1が印刷されるようにし、d1−2の下にk2−2が印刷されるようにするというように、n+1段目(2段目)の印刷データを補正する。これにより、図8(C)に示すように、n+1段目(2段目)の印刷済画像を構成する各画素(d2−1〜d2−8)は、n段目(1段目)の印刷済画像を構成する各画素(d1−1〜d1−8)の位置と整合する位置に印刷され、歪みのない高品質な画像を得ることができる。
【0035】
印刷制御部514は、デザイン画像の印刷データに基づいて爪部Tに印刷を施すように、印刷手段である印刷部40の印刷動作を制御する印刷制御手段である。
本実施形態において、印刷制御部514は、印刷データ補正手段である印刷データ補正部513によりn+1回目の走査において印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときには、補正後の印刷データに基づいて爪部Tにn+1回目の走査による印刷を行うように印刷部40を制御する。
【0036】
記憶部52には、印刷済画像の歪みを検出するための歪み検出プログラム、歪み検出部512による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正するための印刷データ補正プログラム、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御装置50はこれらのプログラムを実行してネイルプリント装置1の各部を制御するようになっている。
【0037】
本実施形態において記憶部52には、撮影部30によって取得されたユーザの印刷指U1の指画像等が記憶される。
また、記憶部52には、デザイン画像の印刷データ(元データ)を記憶するデザイン画像保持領域521が設けられている。このデザイン画像の印刷データには、各画素ごとに色や輝度等の情報及びx,y座標等で示される各画素の位置情報等が含まれている。
また、記憶部52には、印刷済画像取得手段(印刷状態取得手段)である爪撮影用カメラ49によって取得されたn回目の走査における印刷済画像の画像データ(印刷状態)を記憶する印刷済画像保持領域522が設けられている。
【0038】
次に、図9から図16を参照しつつ、本実施形態におけるネイルプリント装置1による印刷制御方法について説明する。
このネイルプリント装置1により印刷を行う場合、ユーザはまず、電源スイッチを入れて制御装置50を起動させる。
本体制御部52は、表示部13にデザイン選択画面を表示させ、ユーザは操作部12の操作釦121等を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のデザイン画像の中から所望のデザイン画像を選択することにより、操作部12から選択指示信号が出力されて一つのデザイン画像が選択される。本実施形態では、図10に示すようなひまわりのデザイン画像が選択された場合を例として説明する。
【0039】
印刷すべきデザイン画像が選択され、操作部12から印刷開始指示が入力されると、図9に示すように、制御部51は、n=1と置き(ステップS1)、n回目(すなわち1回目)の走査によるn段目(すなわち1段目)の印刷を行う(ステップS2)。すなわち、印刷制御部514は、デザイン画像のn段目(すなわち1段目)の印刷データを記憶部52のデザイン画像保持領域522から読み出して、印刷部40に出力する。そして、この印刷データに基づいて印刷部40による爪部Tへのn回目(すなわち1回目)の走査によるn段目(すなわち1段目)の印刷が行われる(図11及び図14参照)。
制御部51は、このn回目の走査によってデザイン画像の印刷が全て終了したか否かを判断し(ステップS3)、デザイン画像の印刷が終了していると判断される場合(印刷待ちの印刷データが残っていないと判断される場合、ステップS3;YES)には、印刷制御処理を終了する。
【0040】
他方、デザイン画像の印刷が終了していないと判断される場合(印刷待ちの印刷データが残っていると判断される場合、ステップS3;NO)には、制御部51は、印刷ヘッド46をn+1段目(ここでは2段目)に移動させる(ステップS4)。本実施形態では、図11及び図14等に示すように、爪部Tを2つの領域(上下2段の領域)に分けて、1つのデザイン画像を2回の走査により印刷する場合を例としているため、図11及び図14に示すように、n段目(すなわち1段目)の印刷終了後、制御部51は、印刷ヘッド46をn+1段目(ここでは2段目)に移動させる(図11及び図14参照)。
そして、撮影制御部511は、爪部撮影用カメラ49を制御して爪部Tに印刷されたn段目(すなわち1段目)の印刷済画像を撮影し、その画像データを印刷済画像保持領域522に記憶させる(ステップS5)。
【0041】
次に、歪み検出部512は、n段目(すなわち1段目)の印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データ(元データ)とを比較して(ステップS6)、n段目(すなわち1段目)の印刷済画像に歪みがあるか否かを判断する(ステップS7)。例えば図11、図12に示す場合には、n段目(すなわち1段目)の印刷済画像に走査方向Yの歪み(圧縮)が生じている。このため、元の印刷データのままn+1段目(すなわち2段目)の印刷を行うと、図12に示すようにn+1段目(すなわち2段目)に印刷される画像の方が走査方向Yに長くなり、n段目(すなわち1段目)の画像とn+1段目(すなわち2段目)の画像とが整合せず、ずれを生じてしまう。また、例えば図14、図15に示す場合には、n段目(すなわち1段目)の印刷済画像に走査方向Yの歪み(伸長)が生じている。このため、元の印刷データのままn+1段目(すなわち2段目)の印刷を行うと、図15に示すようにn+1段目(すなわち2段目)に印刷される画像の方が走査方向Yに短くなり、n段目(すなわち1段目)の画像とn+1段目(すなわち2段目)の画像とが整合せず、ずれを生じてしまう。
このため、歪み検出部512によってn段目(すなわち1段目)の印刷済画像に歪みがあると判断された場合(ステップS7;YES)には、印刷データ補正部513は、検出された歪み量に応じてn+1回目(すなわち2回目)の走査におけるn+1段目(すなわち2段目)の印刷データを補正する(ステップS8)。例えば、図12に示すようにn段目(すなわち1段目)の印刷済画像が本来印刷されるべき状態よりも走査方向Yに圧縮されて印刷されている場合には、印刷データ補正部513は、n+1段目(すなわち2段目)の印刷データを走査方向Yに圧縮する補正を行う。また、例えば、図15に示すようにn段目(すなわち1段目)の印刷済画像が本来印刷されるべき状態よりも走査方向Yに伸長されて印刷されている場合には、印刷データ補正部513は、n+1段目(すなわち2段目)の印刷データを走査方向Yに伸長する補正を行う。
【0042】
印刷データ補正部513による印刷データの補正後、又は、歪み検出部512によってn段目(すなわち1段目)の印刷済画像に歪みがないと判断された場合(ステップS7;NO)には、制御部51は、nを新たにn+1と置いて(ステップS9)、印刷部40を制御し、印刷データ(補正された場合には補正後の印刷データ)に基づいて爪部T上にn+1回目(すなわち2回目)の走査によるn+1段目(すなわち2段目)の印刷を行わせる(ステップS2)。
制御部51は爪部Tに対するデザイン画像の印刷が終了するまで、このステップS2からステップS9までの処理を繰り返す。本実施形態では、2回の走査によりデザイン画像の印刷が完了するため、補正後の印刷データに基づいてn+1回目(すなわち2回目)の走査によるn+1段目(すなわち2段目)の印刷を行うことにより印刷処理が終了する。そして、n+1段目(すなわち2段目)の印刷データを圧縮する補正をした場合には、図13に示すように走査方向Yの長さ寸法が多少小さくなり、n+1段目(すなわち2段目)の印刷データを伸長する補正をした場合には、図16に示すように走査方向Yの長さ寸法が多少大きくなるものの、いずれの場合も、n段目(すなわち1段目)とn+1段目(すなわち2段目)の境界にずれ等が生じない高品質な画像を印刷することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態におけるネイルプリント装置1によれば、爪部Tを複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態として印刷済画像の画像データを取得するとともに、このn回目の走査における印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データ(元データ)とに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出し、この検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正するようになっている。このため、複数回印刷ヘッド46を走査して爪部Tに印刷を施す場合に、走査の途中で印刷指U1が動いてしまった場合でも、走査ごとの画像のずれを防いで高品質の印刷を行うことができる。
また、本実施形態では、印刷状態取得手段は、n回目の走査において印刷部40により爪部T上に印刷されたデザイン画像を撮影して印刷済画像を取得する爪撮影用カメラ49(印刷済画像取得手段)であり、歪み検出部512は、この爪撮影用カメラ49によって取得された印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データとを比較することにより、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出するものである。このように端的に印刷済画像と元データとのずれを見ることにより印刷済画像の歪みを検出するため、確実に歪み検出を行うことができ、各走査において印刷される画像間にずれが生じるのを効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、歪み検出部512は、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に走査方向Yの歪みが生じているか否かを検出するものであり、印刷データ補正部513は、この歪み検出部512による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを走査方向に圧縮又は伸長する補正(すなわち、走査方向の寸法が短くなるように圧縮する補正又は走査方向の寸法が長くなるように伸長する補正)を行う。このため、印刷指U1が、印刷中に印刷指挿入部20a内で走査方向Yにスライド移動してしまった場合にも、全体として整合のとれたデザイン画像を印刷することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、歪み検出手段としての歪み検出部512が、爪撮影用カメラ49によって取得された印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データ(元データ)とを1画素ごとに比較することによって、歪み量を検出する例を挙げて説明したが、歪み検出部512が歪み量を検出する手法はこれに限定されない。
例えば、デザイン画像の印刷データから予めデザイン画像の中の特徴となる点(以下「特徴点ra」という。図17から図22参照)を抽出しておき、印刷済画像の画像データからこれに対応する「特徴点ra」を検出して、各特徴点raについて印刷済画像の画像データとデザイン画像の印刷データとにずれがあるか否かを判断することにより歪み量を検出してもよい。
【0045】
すなわち、この場合には、例えば図17から図22に示すように、1段目の印刷済画像における2段目との境界部分に位置するデザイン画像を構成する画素であって、印刷ヘッド46の走査方向Yにおけるデザイン画像の最端部(エッジ部分)にあたる画素(ra1及びra4)と、デザイン画像においてある程度走査方向Yに連続する色がある場合の当該色の切れ目となる部分にあたる画素(ra2及びra3)とを予め特徴点raと定めておき、歪み検出部512は、各特徴点ra1〜ra4の位置が本来印刷されるべき位置からずれていないか否かを判断する。
図17の場合には、特徴点ra2〜ra4が本来あるべき位置よりも図17において左側に寄っており、1段目の画像に歪み(走査方向Yに沿った圧縮)が生じている。このため、2段目にデザイン画像の印刷データ(元データ)をそのまま印刷すると、1段目の画像と2段目の画像との整合が取れず、図18に示すように、1段目と2段目との境界に走査方向Yに沿ってずれが生じてしまう。このため、2段目を印刷する際に、2段目の印刷データについて走査方向Yに沿って圧縮する補正をし、この補正後の印刷データに基づいて2段目の印刷を行う。これにより、図19に示すように、画像全体としては走査方向Yに沿ってやや圧縮されているが、1段目と2段目との境界が目立たない高品質な画像を印刷することができる。
また、図20の場合には、特徴点ra2〜ra4が本来あるべき位置よりも図20において右側に寄っており、1段目の画像に歪み(走査方向Yに沿った伸長)が生じている。このため、2段目にデザイン画像の印刷データ(元データ)をそのまま印刷すると、1段目の画像と2段目の画像との整合が取れず、図21に示すように、1段目と2段目との境界に走査方向Yに沿ってずれが生じてしまう。このため、2段目を印刷する際に、2段目の印刷データについて走査方向Yに沿って伸長する補正をし、この補正後の印刷データに基づいて2段目の印刷を行う。これにより、図22に示すように、画像全体としては走査方向Yに沿ってやや伸長されているが、1段目と2段目との境界が目立たない高品質な画像を印刷することができる。
【0046】
なお、特徴点raの定め方はここに例示したものに限定されず、例えばデザイン画像の中の主要な絵柄のエッジ部分のみを特徴点としてもよい。また、デザイン画像の種類等に応じて特徴点raの抽出の仕方を変えてもよい。
例えば同じ色が連続しているデザインの場合等は、全ての画素について本来ある位置からどのくらいずれているかを判断しなくても、連続している色の切れ目の部分や絵柄全体の輪郭部分(エッジ部分)において各段の印刷位置が揃っていれば画像の歪みはそれほど印刷画像の質に影響しない。したがって、このような場合には、歪み検出において比較する画素の数を少なく絞った場合でも、高品質な画像を印刷することができる。
そして、このように比較する画素の数を少なく絞ることにより、全画素についてそれぞれ比較する場合と比べて処理速度の向上を図ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、n段目(例えば1段目)の印刷済画像の画像データのうち、n+1段目との境界に位置する画素について、それぞれデザイン画像の印刷データ(元データ)における対応する各画素と比較することにより、n段目の画像に歪みが生じているか否かを判断し、歪みが生じている場合には、n+1段目の印刷データにおける各画素の配置を、n段目の印刷済画像の画像データの歪みに応じて補正することによりn+1段目の印刷データを全体として圧縮又は伸長する場合を例としたが、n+1段目の印刷データを圧縮又は伸長する手法はこれに限定されない。
例えば、前述のように、デザイン画像の印刷データのうち、絵柄のエッジ部分等の特徴点raにあたる画素についてのみ印刷済画像の画像データと比較する場合には、デザイン画像の印刷データと印刷済画像の画像データとで特徴点ra間の距離を比較し、特徴点ra間の距離が本来あるべきはずの距離よりどの程度短くなり、又は長くなっているかを検出することにより、印刷済画像の画像データの圧縮率又は伸長率を求めて、この圧縮率又は伸長率に基づいてn+1段目の印刷データを全体として圧縮又は伸長する。
なお、各特徴点ra間の圧縮率又は伸長率が異なる場合には、n+1段目の印刷データについても部分ごとに異なる圧縮率又は伸長率で圧縮又は伸長する補正を行ってもよい。例えば図17において、特徴点ra1と特徴点ra2の間の距離、特徴点ra2と特徴点ra3の間の距離、特徴点ra3と特徴点ra4の間の距離がそれぞれ本来あるべき距離よりも走査方向Yに沿って10%圧縮されていた場合には、n+1段目の印刷データについても走査方向Yに沿って10%圧縮する補正を行う。また、例えば、特徴点ra1と特徴点ra2の間の距離が、本来あるべき距離よりも走査方向Yに沿って10%圧縮されており、特徴点ra2と特徴点ra3の間の距離が、本来あるべき距離よりも走査方向Yに沿って5%圧縮されており、特徴点ra3と特徴点ra4の間の距離が、本来あるべき距離よりも走査方向Yに沿って7%圧縮されていた場合には、n+1段目の印刷データについても特徴点ra1と特徴点ra2の間については走査方向Yに沿って10%圧縮し、特徴点ra2と特徴点ra3の間については走査方向Yに沿って5%圧縮し、特徴点ra3と特徴点ra4の間については走査方向Yに沿って7%圧縮する補正を行うようにする。
【0048】
また、本実施形態では、印刷状態取得手段としての爪撮影用カメラ49が高精細なカラー画像を撮影することのできるカメラであって、爪撮影用カメラ49によって取得された印刷済画像の画像データの1画素ごとの色とデザイン画像の印刷データ(元データ)の1画素ごとの色とを比較することによって、デザイン画像の印刷データにおける各画素が印刷済画像の画像データのどの画素に対応しているかを判断して、実際に印刷された各画素が本来印刷されるべき位置からどの程度離れているかを判断する場合を例示したが、爪撮影用カメラ49はカラー画像を撮影できるカメラに限定されない。
例えば白黒画像を撮影可能なカメラを爪撮影用カメラ49として用いてもよく、この場合には、歪み検出手段としての歪み検出部512は、印刷済画像の画像データの1画素ごとの輝度とデザイン画像の印刷データ(元データ)の1画素ごとの輝度とを比較することによって、元のデザイン画像の印刷データにおける各画素が、n回目の走査により印刷された印刷済画像の画像データにおけるどの画素に対応するかを判断し、各画素が実際には爪部T上のどこに印刷され、本来印刷されるべき位置からどの程度ずれているかを判断することにより、n回目の走査により印刷されたデザイン画像の歪みの有無や歪み量を検出する。
【0049】
また、本実施形態では、印刷状態取得手段が印刷済画像取得手段としての爪撮影用カメラ49である場合を例示したが、印刷状態取得手段は印刷済画像を取得するものに限定されない。
例えば、爪撮影用カメラ49によって、n回目の走査における印刷を行う前に、印刷指U1や爪部Tを撮影部30等で撮影することにより、n回目の印刷前の印刷指U1や爪部Tの位置を予め取得しておき、n回目の走査における印刷後に再び印刷指U1や爪部Tを撮影し、印刷状態として記憶部52に記憶させてもよい。
この場合には、歪み検出部512は、例えば、n回目の印刷前後の印刷指U1や爪部Tの画像を比較することにより、両者の位置のずれ量からn回目の走査における印刷により印刷された画像が本来印刷されるべき位置からどの程度ずれているかを推測し、これにより、歪み量を検出する。
なお、n回目の印刷前後の印刷指U1や爪部Tの画像から画像の歪み量を検出する場合、その手法は特に限定されず、例えば、印刷指U1や爪部Tの輪郭(エッジ)を検出してその位置のずれ量に基づいて画像の歪み量を検出してもよいし爪部Tの輪郭のうち、爪部Tの幅方向(図11等において走査方向Y)の端部が指(皮膚)から離れる部分(これを「ストレスポイント」という。)の位置をn回目の印刷前後の画像で比較して、その位置のずれ量に基づいて画像の歪み量を検出してもよい。
【0050】
また、本実施形態では、撮影部30とは別に印刷状態取得手段として爪撮影用カメラ49を備える構成としたが、撮影部30が印刷状態取得手段としての機能を果たしてもよい。
【0051】
さらに、印刷状態取得手段はカメラ等の印刷済画像取得手段に限定されない。
印刷状態取得手段は、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得可能な手段であればよく、例えば、印刷指U1の動きを検知可能なセンサ(例えば、感圧センサや接触センサ等)を印刷指U1が載置される印刷指載置面に配置して、n回目の走査における印刷中の印刷指U1自体の動きをこのセンサで検知してもよい。
この場合には、歪み検出部512は、例えば、センサによって検知された印刷指U1の移動量からn回目の走査における印刷により印刷された画像が本来印刷されるべき位置からどの程度ずれているかを推測することにより、歪み量を検出する。
【0052】
また、本実施形態では、デザイン画像保持領域521、印刷済画像保持領域522が制御装置50の記憶部52内に設けられている場合を例としたが、デザイン画像保持領域521、印刷済画像保持領域522は制御装置50の記憶部52に設けられている場合に限定されず、別途記憶部が設けられていてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、4本の指に対して同時に印刷を行うことのできるネイルプリント装置1を例としたが、指を1本ずつ装置に挿入して順次印刷を行う装置に本発明を適用することも可能である。
【0054】
その他、本発明が本実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0055】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
デザイン画像の印刷データに基づいて爪部に印刷を施す印刷手段と、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査が終了すると、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得手段と、
この印刷状態取得手段によって取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出手段と、
この歪み検出手段による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正手段と、
この印刷データ補正手段によりn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づいて前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えることを特徴とするネイルプリント装置。
<請求項2>
前記印刷状態取得手段は、n回目の走査において前記印刷手段により前記爪部上に印刷されたデザイン画像を撮影して印刷済画像の画像データを取得する印刷済画像取得手段であり、
前記歪み検出手段は、前記印刷済画像取得手段によって取得された印刷済画像の画像データと前記デザイン画像の印刷データとを比較することにより、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載のネイルプリント装置。
<請求項3>
前記歪み検出手段は、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に走査方向の歪みが生じているか否かを検出するものであり、
前記印刷データ補正手段は、前記歪み検出手段による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを走査方向に圧縮又は伸長する補正を行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネイルプリント装置。
<請求項4>
デザイン画像の印刷データに基づき爪部に印刷を施す印刷手段を備えている印刷装置に用いられる印刷制御方法において、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得ステップと、
この印刷状態取得ステップにおいて取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出ステップと、
この歪み検出ステップにおける検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正ステップと、
この印刷データ補正ステップにおいてn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づき前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【符号の説明】
【0056】
1 ネイルプリント装置
2 ケース本体
20a 印刷指挿入部
30 撮影部
40 印刷部
49 爪撮影用カメラ
50 制御装置
51 制御部
52 記憶部
511 撮影制御部
512 歪み検出部
513 印刷データ補正部
514 印刷制御部
521 デザイン画像保持領域
522 印刷済画像保持領域
T 爪部
U1 印刷指
U2 非印刷指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザイン画像の印刷データに基づいて爪部に印刷を施す印刷手段と、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査が終了すると、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得手段と、
この印刷状態取得手段によって取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出手段と、
この歪み検出手段による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正手段と、
この印刷データ補正手段によりn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づいて前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えることを特徴とするネイルプリント装置。
【請求項2】
前記印刷状態取得手段は、n回目の走査において前記印刷手段により前記爪部上に印刷されたデザイン画像を撮影して印刷済画像の画像データを取得する印刷済画像取得手段であり、
前記歪み検出手段は、前記印刷済画像取得手段によって取得された印刷済画像の画像データと前記デザイン画像の印刷データとを比較することにより、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出するものであることを特徴とする請求項1に記載のネイルプリント装置。
【請求項3】
前記歪み検出手段は、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に走査方向の歪みが生じているか否かを検出するものであり、
前記印刷データ補正手段は、前記歪み検出手段による検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを走査方向に圧縮又は伸長する補正を行うものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネイルプリント装置。
【請求項4】
デザイン画像の印刷データに基づき爪部に印刷を施す印刷手段を備えている印刷装置に用いられる印刷制御方法において、
前記爪部を複数の領域に分けて複数回の走査により1つのデザイン画像を印刷する場合に、n回目の走査の終了後に、少なくともn回目の走査における印刷状態を取得する印刷状態取得ステップと、
この印刷状態取得ステップにおいて取得されたn回目の走査における印刷状態と前記デザイン画像の印刷データとに基づいて、n回目の走査により印刷されたデザイン画像に歪みが生じているか否かを検出する歪み検出ステップと、
この歪み検出ステップにおける検出結果に基づいて、n+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データを補正する印刷データ補正ステップと、
この印刷データ補正ステップにおいてn+1回目の走査により印刷されるデザイン画像の印刷データが補正されたときは、補正後の印刷データに基づき前記爪部にn+1回目の走査による印刷を行うように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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