ネオサルトリア属真菌の検出方法
【課題】ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌を種レベルでかつ迅速に検出できる方法を提供する。
【解決手段】特定の10種の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドおよび前記オリゴヌクレオチドにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア属真菌の検出方法。
【解決手段】特定の10種の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドおよび前記オリゴヌクレオチドにおいて1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されたオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア属真菌の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の菌類(真菌)は自然界に広く分布し、野菜、果物等の農作物で繁殖し、これらの農作物を原材料とした飲食品を汚染する。しかも、耐熱性の菌類は通常の他の菌類に比べて高い耐熱性を有する子嚢胞子を生活環の中で形成する。例えば酸性飲料の加熱殺菌処理を行ったとしても耐熱性菌類が生存、増殖し、カビの発生原因となることがある。
加熱殺菌処理後の飲食品からも検出されることがある汚染事故の原因菌の主な耐熱性菌類の1つとして、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)等のネオサルトリア(Neosartorya)属に属する耐熱性真菌が知られている。飲食品及びこれらの原材料中の耐熱性真菌による事故防止のためには、ネオサルトリア属に属する耐熱性真菌の検出が重要である。
【0003】
従来のネオサルトリア属の真菌の検出及び同定法は、培養による形態学的な種分類が主である。この方法は形態学的な特徴が発生するまで培養を続ける必要があるため、最短でも14日以上の長期間を必要とする。また、形態学的な同定には極めて高い専門性を必要とするため、判定者によって同定結果が異なる危険性が否定できない。さらには加熱や薬剤などによる損傷菌体等は形態形成能を失うケースが存在し、それら菌体は長期間培養を行っても特徴的な形態を形成しないことから、同定結果の信頼性に問題があった。このように真菌の検出に長期間を要し、同定結果の信頼性に問題がある形態学的な検出・同定法は、飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるとは言いがたい。従って、迅速性及び信頼性の問題を解決した検出・同定方法の確立が求められてきた。
【0004】
特許文献1には、ネオサルトリア属真菌のゲノムDNA中のβ−チューブリン遺伝子の特定領域を増幅することにより、ネオサルトリア属真菌を検出する方法が記載されている。しかし、特許文献1記載の方法はネオサルトリア属真菌を属レベルで同定するものであり、これらの方法で検出される菌類はネオサルトリアピーシーズ(Neosartorya sp.)としか同定することができず、ネオサルトリア属真菌を種レベルで同定するにはさらなる検討が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−4879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐熱性を有するネオサルトリア属真菌の特徴として、菌種により耐熱性が異なることが知られている。例えば、ネオサルトリア属真菌各種のD値(耐熱性菌の耐熱性を表す指標の1つであり、初期の菌数を1/10にするのに必要な滅菌処理単位)及びZ値(耐熱性菌の耐熱性を表す指標の1つであり、前記滅菌処理単位を1/10に低減又は10倍増加させるのに必要な温度変化)を測定したところ、ネオサルトリア・スピノサ及びネオサルトリア・グラブラについてはD85℃=96分(ここで、「D85℃」とは、85℃で処理した場合に初期の菌数を1/10にするのに必要な時間)、Z=14℃(すなわち、85℃で処理した場合初期の菌数を1/10にするのには96分処理しなければならないので、処理時間9.6分(96分の1/10)で初期の菌数を1/10にするのには(85+14)=99℃での処理が必要であり、処理時間960分(96分の10倍)で初期の菌数を1/10にするのには(85−14)=71℃での処理が必要である)であり、ネオサルトリア・フィシェリのD85℃値は10分、Z値は10℃である。このように、同じネオサルトリア属真菌であっても耐熱性が異なるので、飲食品業界などにおいて、菌種によって異なる耐熱性のネオサルトリア属真菌の殺菌・滅菌処理条件が必要となる。
さらには、ネオサルトリア属真菌として、ネオサルトリア・オーストラレンシス(Neosartorya australensis)などが存在する。これらの菌種は他のネオサルトリア属真菌と同様高い耐熱性を有するが、前記ネオサルトリア・グラブラ等とは異なり飲食品の汚染事故の報告がほとんどない。
したがって、飲食品業界などにおいて危害菌の正確なリスク評価を行うには、ネオサルトリア属真菌を属レベルのみならず種レベルで同定することも重要となる。
【0007】
本発明は、飲食品汚染の主な原因菌の1種であるネオサルトリア属真菌を種レベルでかつ迅速に検出しうる方法を提供することを課題とする。また、本発明はこの方法に適用可能なオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題に鑑み、本発明者等は、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に検出・識別しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の中に、他の真菌類のものとは明確に区別しうる、特異的な塩基配列を有する部位(以下、「可変部位」ともいう)が存在することを見出した。また、これらの可変部位をターゲットとすることでネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的かつ迅速に検出できることを見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
本発明は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア属真菌の検出方法に関する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0010】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、ネオサルトリア属真菌の検出方法に関する。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0011】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド、又は前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなる、オリゴヌクレオチド対に関する。
【0012】
また、本発明は、前記(a)〜(j)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチドに関する。
【0013】
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むネオサルトリア属真菌検出キットに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検出方法は、飲食品の汚染事故の主な原因菌の1つであるネオサルトリア属真菌を種レベルでかつ迅速に検出することができる。また、本発明オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットは、前記方法に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ネオサルトリア・グラブラ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)を含む)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図2】ネオサルトリア・ヒラツカエ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図3】ネオサルトリア・シュードフィシェリ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図4】ネオサルトリア・フィシェリ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図5】ネオサルトリア・スピノサ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス及びその類縁菌を含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図6】実施例における、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図7】実施例における、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図8】実施例における、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図9】実施例における、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図10】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図11】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図12】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の特定の部分塩基配列、すなわち本遺伝子に存在するネオサルトリア属真菌の種にそれぞれ特異的な塩基配列部位(可変部位)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の検出を行い、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に識別・検出する方法である。ここで、「可変部位」とは、β−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中で塩基変異が蓄積しやすい部位であり、この部位の塩基配列はネオサルトリア属真菌の種の間で大きく異なる。
本明細書において、「β−チューブリン」とは微小管を構成するタンパク質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。また、「カルモジュリン」とは真核生物に広く分布するカルシウム結合タンパク質の1種で、カルシウムがカルモジュリンに結合することによりカルモジュリンキナーゼ、カルシニューリン等の酵素の活性を制御するタンパク質であり、「カルモジュリン遺伝子」とは、カルモジュリンをコードする遺伝子である。
【0017】
本発明における「ネオサルトリア属真菌」とは、マユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する不整子嚢菌類を意味する。ネオサルトリア属真菌は、75℃、30分間の加熱処理後であっても生存可能な子嚢胞子を形成する耐熱性菌類である。
また、「ネオサルトリア・グラブラ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面に微細な突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起が離れ、その間の溝に微細な突起が2列平行に並ぶ形態を有する菌種である。ネオサルトリア・グラブラは、果汁飲料、焼き菓子などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・ヒラツカエ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子が大型で、レンズ面が微細な網目構造を有し、2枚の赤道面の帯状隆起の幅が狭く互いに密着する形態を有する菌種である。ネオサルトリア・ヒラツカエは、果汁ゼリー、野菜飲料などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・シュードフィシェリ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子が大型で、レンズ面に三角形と短い筋状の突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起がある形態を有する菌種である。ネオサルトリア・シュードフィシェリは、飲料、缶詰などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・フィシェリ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面が網目構造であり、2枚の赤道面の帯状面隆起がほぼ密着する形態を有する菌種である。ネオサルトリア・フィシェリは、缶詰、ゼリーなどの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・スピノサ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面に刺状突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起がある形態の菌種である。ネオサルトリア・スピノサは、果汁飲料、缶詰などの汚染事故の原因菌として知られている。
【0018】
ネオサルトリア属真菌に限らず、真菌全般として、一般的に形態学的に別種に分類可能であっても、遺伝子レベルで識別することが困難な場合がある。例えば、前記ネオサルトリア・スピノサに極めて類縁な菌種として、ネオサルトリア・コレアナ(Neosartorya coreana)、ネオサルトリア・ラシニオサ(Neosartorya lacinosa)及びネオサルトリア・パウリステンシス(Neosartorya paulistensis)が存在する。これらの菌種は別種として報告されることもあるが、形態学的な違いがほとんど存在しない。さらには、系統分類の指標に用いられる遺伝子の相同性が極めて高く、遺伝子レベルでこれらの菌種を識別することが難しい。真菌の分類は、まず、形態的特徴によって菌種が提案される。したがって、培養条件等によって形態が変化した場合、本来は同一の菌種であるものが新種として提案されることがある。さらに、真菌は、細菌と比較して同物異名(1つの菌種が複数の学名をもつこと)が多いことも知られている。したがって、ネオサルトリア属真菌について、別種として提案された菌種間でも、実際は同種である場合が存在する。よって、それらの菌種は耐熱性等食品での危害性も同等であると考えられるとともに、同物異名である可能性も否定できない。
上記観点から、形態学的観点からは別種として分類されていても遺伝子レベルが同一の菌種について、本発明では同一の種として扱う。具体例を挙げて説明すると、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスは別種として提案されることもあるが、形態学的だけではなく、下記表1に示すように遺伝学的にも極めて類縁性が高いため、本発明では同一の種として扱われる。すなわち、本明細書において、「ネオサルトリア・スピノサ」には、遺伝子レベルが同一であるネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含むものである。なお、本明細書において「遺伝子レベルが同一」とは、遺伝的進化速度が速い複数の遺伝子(例えば、β−チューブリン遺伝子、カルモジュリン遺伝子、アクチン遺伝子等)の塩基配列の相同性を比較して、97%以上(好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上)の相同性を有することを意味する。塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,227,1435,1985等参照)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0019】
【表1】
【0020】
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0021】
本発明の検出方法は、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中の可変部位に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、図1〜5に示すように、ネオサルトリア属を含めた種々の真菌類のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定し、真菌種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法により各真菌のβチューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、β−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中に同一の種内では保存性が高いが異なる種間で塩基配列の保存性が低く、種によって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてネオサルトリア属真菌は種固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はネオサルトリア属真菌を種レベルで識別・同定するための遺伝学的な指標として有用である。
【0022】
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0023】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の可変部位を図1及び配列番号11に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号11に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・グラブラCBS 111.55T株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図1は、ネオサルトリア・グラブラCBS 111.55T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・ヒラツカエNHL 3008T株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Ngl_F1ともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Ngl_R1ともいう)はそれぞれ、図1に示すように、配列番号11に記載の塩基配列のうち81位〜102位までの領域及び318位〜340位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・グラブラとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・グラブラが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・グラブラを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・グラブラに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・グラブラを同定することが可能となる。
【0024】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(k)及び/又は(l)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0025】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の可変部位を図2及び配列番号12に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号12に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図2は、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(c)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nhi_F1ともいう)及び前記(d)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nhi_R1ともいう)はそれぞれ、図2に示すように、配列番号12に記載の塩基配列のうち28位〜51位までの領域及び311位〜336位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・ヒラツカエとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・ヒラツカエが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・ヒラツカエを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・ヒラツカエに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・ヒラツカエを同定することが可能となる。
【0026】
本発明において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(m)及び/又は(n)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0027】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図3及び配列番号13に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号13に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図3は、ネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株、及びネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(e)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Npf_F2ともいう)及び前記(f)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Npf_R2ともいう)はそれぞれ、図3に示すように、配列番号13に記載の塩基配列のうち138位〜158位までの領域及び382位〜405位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・シュードフィシェリが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・シュードフィシェリを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・シュードフィシェリに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・シュードフィシェリを同定することが可能となる。
【0028】
本発明において、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(o)及び/又は(p)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0029】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図4及び配列番号14に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号14に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図4は、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株、ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(g)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nfi_F3ともいう)及び前記(h)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nfi_R3ともいう)はそれぞれ、図4に示すように、配列番号14に記載の塩基配列のうち24位〜46位までの領域及び363位〜385位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・フィシェリとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・フィシェリが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・フィシェリを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・フィシェリに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・フィシェリを同定することが可能となる。
【0030】
本発明において、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(q)及び/又は(r)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0031】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図5及び配列番号15に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号15に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・スピノサCBS 483.65T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図5は、ネオサルトリア・スピノサCBS 483.65T株、本発明においてネオサルトリア・スピノサと同一菌種として扱うネオサルトリア・コレアナ(KACC 41659T株)、ネオサルトリア・ラシニオサ(KACC 41657T株)及びネオサルトリア・パウリステンシス(CBM-FA-0690T株)並びにその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・アウレオラ(Neosartorya aureola)CBS 105.55T株、ネオサルトリア・ウダガワエCBM-FA-0702T株及びネオサルトリア・フィシェリCBS 544.65T株、並びにネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びその類縁菌(アスペルギルス・ビリジニュータンス(Aspergillus viridinutans)CBS 127.56T株、アスペルギルス・ノボフミガタス(Aspergillus novofumigatus)ITB 16806T株、アスペルギルス・フミシネマタス(Aspergillus fumisynnematus)IFM 42277T株、アスペルギルス・レンタス(Aspergillus lentulus)FH5T株))のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(i)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nspc_1Fともいう)及び前記(j)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nspc_1Rともいう)はそれぞれ、図5に示すように、配列番号15に記載の塩基配列のうち105位〜124位までの領域及び336位〜355位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・スピノサとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・スピノサが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・スピノサを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・スピノサに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネネオサルトリア・スピノサを同定することが可能となる。
【0032】
本発明において、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(s)及び/又は(t)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0033】
本発明の検出方法に用いる前記オリゴヌクレオチド(a)〜(j)は、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いることができるオリゴヌクレオチドには、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、置換、挿入又は付加されており、かつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0034】
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0035】
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、ネオサルトリア属真菌の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0036】
前記オリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の存在を確認し、ネオサルトリア属真菌を種レベルで同定する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0037】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、核酸プライマー及び核酸プローブとして用いることができる。
【0038】
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでネオサルトリア属真菌を検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標的核酸を標識して捕捉することもできる。
【0039】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属真菌を種レベルで検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。ネオサルトリア・グラブラを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・ヒラツカエを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・シュードフィシェリを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・フィシェリを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・スピノサを検出するためには、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。
【0040】
被検体中のネオサルトリア属真菌を種レベルで検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出法により検出すればよい。上記核酸プローブはネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のネオサルトリア属真菌を迅速かつ簡便に種レベルで検出することができる。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0041】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属真菌の検出/同定を行うため、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いネオサルトリア属真菌の検出を行う場合について詳しく説明する。
【0042】
本発明において、ネオサルトリア・グラブラを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(k)又は(l)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
また、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・グラブラ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0043】
本発明において、ネオサルトリア・ヒラツカエを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(m)又は(n)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・ヒラツカエ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0044】
本発明において、ネオサルトリア・シュードフィシェリを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(o)又は(p)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・シュードフィシェリ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0045】
本発明において、ネオサルトリア・フィシェリを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(q)又は(r)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・フィシェリ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0046】
本発明において、ネオサルトリア・スピノサを検出するためには、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(s)又は(t)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・スピノサ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0047】
PCRの条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜120秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を56〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(i)及び(j)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜61℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0048】
本発明において、遺伝子断片の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込まさせる方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にネオサルトリア・グラブラが含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・ヒラツカエが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約300bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・シュードフィシェリが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・フィシェリが含まれる場合、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約350bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・スピノサが含まれる場合、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。
このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
【0049】
本発明において、ネオサルトリア属真菌の同定を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を決定し、該遺伝子の部分塩基配列が前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列に含まれるか否かを確認することで、前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しネオサルトリア属真菌を種レベルで検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しネオサルトリア属真菌の種レベルの同定を行うものである。例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い、得られる増幅産物の塩基配列と前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列とを比較する。増幅産物の塩基配列が、前記(k)又は(l)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・グラブラと同定することができ、前記(m)又は(n)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・ヒラツカエと同定することができ、前記(o)又は(p)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・シュードフィシェリと同定することができ、前記(q)又は(r)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・フィシェリと同定することができ、前記(s)又は(t)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・スピノサと同定することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0050】
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
【0051】
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
検体からDNAを調製する方法としては、ネオサルトリア属真菌の検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、未精製の状態でも使用できるが、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルム抽出を行って精製したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0052】
本発明のネオサルトリア属真菌検出用キットは、前記本発明の検出用オリゴヌクレオチド又は検出用オリゴヌクレオチド対を核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。本発明のキットは、前記核酸プローブ又は核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明の検出用オリゴヌクレオチド又は検出用オリゴヌクレオチド対によって検出反応が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
(1)ネオサルトリア属真菌に特異的なβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の解析
下記の方法により、ネオサルトリア属に属する真菌各種(ネオサルトリア・グラブラ、ネオサルトリア・ニシムラエ、ネオサルトリア・オーストラレンシス、ネオサルトリア・フェネリアエ、ネオサルトリア・ヒラツカエ、ネオサルトリア・ウダガワエ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・パウリステンシス、ネオサルトリア・ラシニオサ、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・シュードフィシェリ)及びネオサルトリア・フィシェリのアナモルフであるアスペルギルス・フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。
PDA(ポテトデキストロース寒天)斜面培地にて30℃で7日間暗所培養した菌体から、GenとるくんTM(タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号16)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号17)(Glass and Donaldson,Appl.,Environ.,Microbiol.,61,p.1323−1330,1995参照)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア属真菌各種や、各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア・グラブラ及びネオサルトリア・ヒラツカエにそれぞれ特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定部位を決定した。
【0055】
(2)ネオサルトリア属真菌に特異的なカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の解析
下記の方法により、ネオサルトリア属に属する真菌各種(ネオサルトリア・グラブラ、ネオサルトリア・ニシムラエ、ネオサルトリア・オーストラレンシス、ネオサルトリア・フェネリアエ、ネオサルトリア・ヒラツカエ、ネオサルトリア・ウダガワエ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・パウリステンシス、ネオサルトリア・ラシニオサ、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・シュードフィシェリ)並びにネオサルトリア・フィシェリのアナモルフであるアスペルギルス・フミガタス及びその類縁菌のカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定した。
PDA(ポテトデキストロース寒天)斜面培地にて30℃で3〜5日間暗所培養した菌体から、GenとるくんTM(タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとしてcmd5(5’-CCGAGTACAAGGAGGCCTTC-3’:配列番号18)、cmd6(5’-CCGATAGAGGTCATAACGTGG-3’:配列番号19)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度55℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア属真菌各種や、各種菌類の公知のカルモジュリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・スピノサにそれぞれ特異的な塩基配列を含有するカルモジュリン遺伝子の中の特定部位を決定した。
【0056】
(3)プライマーの設計
上記で決定したネオサルトリア属真菌各種に特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Ngl_F1プライマー)、配列番号2の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Ngl_R1プライマー)、配列番号3の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nhi_F1プライマー)、配列番号4の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nhi_R1プライマー)、配列番号5の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Npf_F2プライマー)、配列番号6の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Npf_R2プライマー)、配列番号7の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nfi_F3プライマー)、配列番号8の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nfi_R3プライマー)、配列番号9の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nspc_1Fプライマー)、及び配列番号10の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nspc_1Rプライマー)を設計し、シグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
前記の各プライマーは、図1〜5に示すように、ネオサルトリア・グラブラ及びネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の各特定領域並びにネオサルトリア・シュードフィシェリ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の各特定領域の塩基配列に基づき設計したものである。
【0057】
(4)ネオサルトリア・グラブラの検出
設計したNgl_F1プライマー及びNgl_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・グラブラとその他の真菌類としては、表2に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し管理ナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコアポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0058】
【表2】
【0059】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0060】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Ngl_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNgl_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0061】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図6に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0062】
その結果、ネオサルトリア・グラブラのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・グラブラ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・グラブラを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0063】
(5)ネオサルトリア・ヒラツカエの検出
設計したNhi_F1プライマー及びNhi_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・ヒラツカエとその他の真菌類としては、表3に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0064】
【表3】
【0065】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0066】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nhi_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNhi_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0067】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図7に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0068】
その結果、ネオサルトリア・ヒラツカエのゲノムDNAを含む試料では、約300bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・ヒラツカエ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・ヒラツカエを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0069】
(6)ネオサルトリア・シュードフィシェリの検出
設計したNpf_F2プライマー及びNpf_R2プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の真菌類としては、前記表3に記載した菌株を使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0070】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0071】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Npf_F2プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNpf_R2プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0072】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図8に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0073】
その結果、ネオサルトリア・シュードフィシェリのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・シュードフィシェリ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・シュードフィシェリを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0074】
(7)ネオサルトリア・フィシェリの検出
設計したNfi_F3プライマー及びNfi_R3プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の真菌類としては、前記表2に記載した菌株を使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0075】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0076】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nfi_F3プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNfi_R3プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0077】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図9に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0078】
その結果、ネオサルトリア・フィシェリのゲノムDNAを含む試料では、約350bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・フィシェリ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・フィシェリを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0079】
(8)ネオサルトリア・スピノサの検出
設計したNspc_1Fプライマー及びNspc_1Rプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・スピノサ(ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含む)とその他の真菌類としては、表4〜6に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し管理ナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0084】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nspc_1Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNgl_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)60℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0085】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図10〜12に示す。なお、図10は表4に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図11は表5に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図12は表6に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0086】
その結果、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ又はネオサルトリア・パウリステンシスのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・スピノサ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・スピノサ(ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含む)を特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0087】
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の存在を確認することができ、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、種レベルで簡便、迅速かつ特異的にネオサルトリア属真菌を検出することが可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性の菌類(真菌)は自然界に広く分布し、野菜、果物等の農作物で繁殖し、これらの農作物を原材料とした飲食品を汚染する。しかも、耐熱性の菌類は通常の他の菌類に比べて高い耐熱性を有する子嚢胞子を生活環の中で形成する。例えば酸性飲料の加熱殺菌処理を行ったとしても耐熱性菌類が生存、増殖し、カビの発生原因となることがある。
加熱殺菌処理後の飲食品からも検出されることがある汚染事故の原因菌の主な耐熱性菌類の1つとして、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)等のネオサルトリア(Neosartorya)属に属する耐熱性真菌が知られている。飲食品及びこれらの原材料中の耐熱性真菌による事故防止のためには、ネオサルトリア属に属する耐熱性真菌の検出が重要である。
【0003】
従来のネオサルトリア属の真菌の検出及び同定法は、培養による形態学的な種分類が主である。この方法は形態学的な特徴が発生するまで培養を続ける必要があるため、最短でも14日以上の長期間を必要とする。また、形態学的な同定には極めて高い専門性を必要とするため、判定者によって同定結果が異なる危険性が否定できない。さらには加熱や薬剤などによる損傷菌体等は形態形成能を失うケースが存在し、それら菌体は長期間培養を行っても特徴的な形態を形成しないことから、同定結果の信頼性に問題があった。このように真菌の検出に長期間を要し、同定結果の信頼性に問題がある形態学的な検出・同定法は、飲食品の衛生管理、原材料の鮮度確保、流通上の制約など観点から、必ずしも満足できるとは言いがたい。従って、迅速性及び信頼性の問題を解決した検出・同定方法の確立が求められてきた。
【0004】
特許文献1には、ネオサルトリア属真菌のゲノムDNA中のβ−チューブリン遺伝子の特定領域を増幅することにより、ネオサルトリア属真菌を検出する方法が記載されている。しかし、特許文献1記載の方法はネオサルトリア属真菌を属レベルで同定するものであり、これらの方法で検出される菌類はネオサルトリアピーシーズ(Neosartorya sp.)としか同定することができず、ネオサルトリア属真菌を種レベルで同定するにはさらなる検討が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−4879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
耐熱性を有するネオサルトリア属真菌の特徴として、菌種により耐熱性が異なることが知られている。例えば、ネオサルトリア属真菌各種のD値(耐熱性菌の耐熱性を表す指標の1つであり、初期の菌数を1/10にするのに必要な滅菌処理単位)及びZ値(耐熱性菌の耐熱性を表す指標の1つであり、前記滅菌処理単位を1/10に低減又は10倍増加させるのに必要な温度変化)を測定したところ、ネオサルトリア・スピノサ及びネオサルトリア・グラブラについてはD85℃=96分(ここで、「D85℃」とは、85℃で処理した場合に初期の菌数を1/10にするのに必要な時間)、Z=14℃(すなわち、85℃で処理した場合初期の菌数を1/10にするのには96分処理しなければならないので、処理時間9.6分(96分の1/10)で初期の菌数を1/10にするのには(85+14)=99℃での処理が必要であり、処理時間960分(96分の10倍)で初期の菌数を1/10にするのには(85−14)=71℃での処理が必要である)であり、ネオサルトリア・フィシェリのD85℃値は10分、Z値は10℃である。このように、同じネオサルトリア属真菌であっても耐熱性が異なるので、飲食品業界などにおいて、菌種によって異なる耐熱性のネオサルトリア属真菌の殺菌・滅菌処理条件が必要となる。
さらには、ネオサルトリア属真菌として、ネオサルトリア・オーストラレンシス(Neosartorya australensis)などが存在する。これらの菌種は他のネオサルトリア属真菌と同様高い耐熱性を有するが、前記ネオサルトリア・グラブラ等とは異なり飲食品の汚染事故の報告がほとんどない。
したがって、飲食品業界などにおいて危害菌の正確なリスク評価を行うには、ネオサルトリア属真菌を属レベルのみならず種レベルで同定することも重要となる。
【0007】
本発明は、飲食品汚染の主な原因菌の1種であるネオサルトリア属真菌を種レベルでかつ迅速に検出しうる方法を提供することを課題とする。また、本発明はこの方法に適用可能なオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題に鑑み、本発明者等は、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に検出・識別しうる新たなDNA領域を探索すべく、鋭意検討を行った。その結果、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の中に、他の真菌類のものとは明確に区別しうる、特異的な塩基配列を有する部位(以下、「可変部位」ともいう)が存在することを見出した。また、これらの可変部位をターゲットとすることでネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的かつ迅速に検出できることを見出した。本発明はこの知見に基づき完成するに至った。
【0009】
本発明は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア属真菌の検出方法に関する。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0010】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、ネオサルトリア属真菌の検出方法に関する。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0011】
また、本発明は、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド、又は前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなる、オリゴヌクレオチド対に関する。
【0012】
また、本発明は、前記(a)〜(j)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチドに関する。
【0013】
また、本発明は、前記オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むネオサルトリア属真菌検出キットに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の検出方法は、飲食品の汚染事故の主な原因菌の1つであるネオサルトリア属真菌を種レベルでかつ迅速に検出することができる。また、本発明オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド対及び検出キットは、前記方法に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ネオサルトリア・グラブラ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)を含む)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図2】ネオサルトリア・ヒラツカエ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図3】ネオサルトリア・シュードフィシェリ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図4】ネオサルトリア・フィシェリ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタスを含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図5】ネオサルトリア・スピノサ及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフ(無性世代)に形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス及びその類縁菌を含む)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す図である。
【図6】実施例における、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図7】実施例における、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図8】実施例における、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図9】実施例における、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図10】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図11】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【図12】実施例における、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を用いて増幅したPCR産物の電気泳動図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の特定の部分塩基配列、すなわち本遺伝子に存在するネオサルトリア属真菌の種にそれぞれ特異的な塩基配列部位(可変部位)にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌の検出を行い、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に識別・検出する方法である。ここで、「可変部位」とは、β−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中で塩基変異が蓄積しやすい部位であり、この部位の塩基配列はネオサルトリア属真菌の種の間で大きく異なる。
本明細書において、「β−チューブリン」とは微小管を構成するタンパク質であり、「β−チューブリン遺伝子」とは、β−チューブリンをコードする遺伝子である。また、「カルモジュリン」とは真核生物に広く分布するカルシウム結合タンパク質の1種で、カルシウムがカルモジュリンに結合することによりカルモジュリンキナーゼ、カルシニューリン等の酵素の活性を制御するタンパク質であり、「カルモジュリン遺伝子」とは、カルモジュリンをコードする遺伝子である。
【0017】
本発明における「ネオサルトリア属真菌」とは、マユハキタケ科(Trichocomaceae)に属する不整子嚢菌類を意味する。ネオサルトリア属真菌は、75℃、30分間の加熱処理後であっても生存可能な子嚢胞子を形成する耐熱性菌類である。
また、「ネオサルトリア・グラブラ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面に微細な突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起が離れ、その間の溝に微細な突起が2列平行に並ぶ形態を有する菌種である。ネオサルトリア・グラブラは、果汁飲料、焼き菓子などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・ヒラツカエ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子が大型で、レンズ面が微細な網目構造を有し、2枚の赤道面の帯状隆起の幅が狭く互いに密着する形態を有する菌種である。ネオサルトリア・ヒラツカエは、果汁ゼリー、野菜飲料などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・シュードフィシェリ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子が大型で、レンズ面に三角形と短い筋状の突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起がある形態を有する菌種である。ネオサルトリア・シュードフィシェリは、飲料、缶詰などの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・フィシェリ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面が網目構造であり、2枚の赤道面の帯状面隆起がほぼ密着する形態を有する菌種である。ネオサルトリア・フィシェリは、缶詰、ゼリーなどの汚染事故の原因菌として知られている。
また、「ネオサルトリア・スピノサ」とはネオサルトリア属真菌の1種であり、子嚢胞子のレンズ面に刺状突起を有し、2枚の赤道面の帯状隆起がある形態の菌種である。ネオサルトリア・スピノサは、果汁飲料、缶詰などの汚染事故の原因菌として知られている。
【0018】
ネオサルトリア属真菌に限らず、真菌全般として、一般的に形態学的に別種に分類可能であっても、遺伝子レベルで識別することが困難な場合がある。例えば、前記ネオサルトリア・スピノサに極めて類縁な菌種として、ネオサルトリア・コレアナ(Neosartorya coreana)、ネオサルトリア・ラシニオサ(Neosartorya lacinosa)及びネオサルトリア・パウリステンシス(Neosartorya paulistensis)が存在する。これらの菌種は別種として報告されることもあるが、形態学的な違いがほとんど存在しない。さらには、系統分類の指標に用いられる遺伝子の相同性が極めて高く、遺伝子レベルでこれらの菌種を識別することが難しい。真菌の分類は、まず、形態的特徴によって菌種が提案される。したがって、培養条件等によって形態が変化した場合、本来は同一の菌種であるものが新種として提案されることがある。さらに、真菌は、細菌と比較して同物異名(1つの菌種が複数の学名をもつこと)が多いことも知られている。したがって、ネオサルトリア属真菌について、別種として提案された菌種間でも、実際は同種である場合が存在する。よって、それらの菌種は耐熱性等食品での危害性も同等であると考えられるとともに、同物異名である可能性も否定できない。
上記観点から、形態学的観点からは別種として分類されていても遺伝子レベルが同一の菌種について、本発明では同一の種として扱う。具体例を挙げて説明すると、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスは別種として提案されることもあるが、形態学的だけではなく、下記表1に示すように遺伝学的にも極めて類縁性が高いため、本発明では同一の種として扱われる。すなわち、本明細書において、「ネオサルトリア・スピノサ」には、遺伝子レベルが同一であるネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含むものである。なお、本明細書において「遺伝子レベルが同一」とは、遺伝的進化速度が速い複数の遺伝子(例えば、β−チューブリン遺伝子、カルモジュリン遺伝子、アクチン遺伝子等)の塩基配列の相同性を比較して、97%以上(好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上)の相同性を有することを意味する。塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,227,1435,1985等参照)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0019】
【表1】
【0020】
なお、本明細書において、「ストリンジェントな条件」としては、例えばMolecular Cloning−A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook,David W.Russell.,Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられ、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
【0021】
本発明の検出方法は、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中の可変部位に対応する核酸で表されるオリゴヌクレオチド対を用いることを特徴とする。
発明者等は、図1〜5に示すように、ネオサルトリア属を含めた種々の真菌類のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定し、真菌種間での遺伝的距離と塩基配列の相同性の解析を行った。すなわち、シークエンシング法により各真菌のβチューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定し、アライメント解析により一致する塩基領域の検討を行った。その結果、β−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子中に同一の種内では保存性が高いが異なる種間で塩基配列の保存性が低く、種によって固有の塩基配列を有する可変部位を見い出した。この可変部位においてネオサルトリア属真菌は種固有の塩基配列を有している。そのため、当該領域はネオサルトリア属真菌を種レベルで識別・同定するための遺伝学的な指標として有用である。
【0022】
本発明の検出方法は、下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いる。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【0023】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の可変部位を図1及び配列番号11に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号11に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・グラブラCBS 111.55T株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図1は、ネオサルトリア・グラブラCBS 111.55T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・ヒラツカエNHL 3008T株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(a)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Ngl_F1ともいう)及び前記(b)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Ngl_R1ともいう)はそれぞれ、図1に示すように、配列番号11に記載の塩基配列のうち81位〜102位までの領域及び318位〜340位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・グラブラとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・グラブラが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・グラブラを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・グラブラに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・グラブラを同定することが可能となる。
【0024】
本発明において、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(k)及び/又は(l)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0025】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の可変部位を図2及び配列番号12に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号12に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図2は、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列における前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(c)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nhi_F1ともいう)及び前記(d)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nhi_R1ともいう)はそれぞれ、図2に示すように、配列番号12に記載の塩基配列のうち28位〜51位までの領域及び311位〜336位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・ヒラツカエとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・ヒラツカエが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・ヒラツカエを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・ヒラツカエに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・ヒラツカエを同定することが可能となる。
【0026】
本発明において、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(m)及び/又は(n)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0027】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図3及び配列番号13に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号13に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図3は、ネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株、及びネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(e)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Npf_F2ともいう)及び前記(f)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Npf_R2ともいう)はそれぞれ、図3に示すように、配列番号13に記載の塩基配列のうち138位〜158位までの領域及び382位〜405位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・シュードフィシェリが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・シュードフィシェリを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・シュードフィシェリに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・シュードフィシェリを同定することが可能となる。
【0028】
本発明において、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(o)及び/又は(p)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0029】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図4及び配列番号14に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号14に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図4は、ネオサルトリア・フィシェリ CBS 544.65T株及びその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株、ネオサルトリア・オーストラレンシス CBS 112.55T株、ネオサルトリア・ヒラツカエ NHL 3008T株、ネオサルトリア・フェネリアエ CBS 598.74T株、ネオサルトリア・グラブラ CBS 111.55T株、ネオサルトリア・ニシムラエ CBS 116047株、ネオサルトリア・ウダガワエ CBM-FA-0702T株、ネオサルトリア・コレアナ KACC 41659T株、ネオサルトリア・パウリステンシス CBM-FA-0690T株、ネオサルトリア・ラシニオサ KACC 41657T株、ネオサルトリア・スピノサ CBS 483.65T株、及びネオサルトリア・シュードフィシェリ CBS 208.92T株)のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(g)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nfi_F3ともいう)及び前記(h)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nfi_R3ともいう)はそれぞれ、図4に示すように、配列番号14に記載の塩基配列のうち24位〜46位までの領域及び363位〜385位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・フィシェリとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・フィシェリが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・フィシェリを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・フィシェリに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネオサルトリア・フィシェリを同定することが可能となる。
【0030】
本発明において、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(q)及び/又は(r)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0031】
ネオサルトリア属真菌の1種である、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の可変部位を図5及び配列番号15に記載の塩基配列に基づき説明する。なお、配列番号15に記載の塩基配列は、ネオサルトリア・スピノサCBS 483.65T株のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を示す。また、図5は、ネオサルトリア・スピノサCBS 483.65T株、本発明においてネオサルトリア・スピノサと同一菌種として扱うネオサルトリア・コレアナ(KACC 41659T株)、ネオサルトリア・ラシニオサ(KACC 41657T株)及びネオサルトリア・パウリステンシス(CBM-FA-0690T株)並びにその他のネオサルトリア属真菌類(ネオサルトリア・アウレオラ(Neosartorya aureola)CBS 105.55T株、ネオサルトリア・ウダガワエCBM-FA-0702T株及びネオサルトリア・フィシェリCBS 544.65T株、並びにネオサルトリア・フィシェリのアナモルフに形態学的に極めて類似したアスペルギルス・フミガタス IAM 13869 ex type株及びその類縁菌(アスペルギルス・ビリジニュータンス(Aspergillus viridinutans)CBS 127.56T株、アスペルギルス・ノボフミガタス(Aspergillus novofumigatus)ITB 16806T株、アスペルギルス・フミシネマタス(Aspergillus fumisynnematus)IFM 42277T株、アスペルギルス・レンタス(Aspergillus lentulus)FH5T株))のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列、並びにネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の塩基配列における前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが認識する塩基配列の位置関係を示す。
前記(i)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nspc_1Fともいう)及び前記(j)のオリゴヌクレオチド(本明細書において、Nspc_1Rともいう)はそれぞれ、図5に示すように、配列番号15に記載の塩基配列のうち105位〜124位までの領域及び336位〜355位までの領域にストリンジェントな条件でハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドである。これらの領域は種間での塩基配列の保存性が低い可変領域であり、ネオサルトリア・スピノサとその他の種間での塩基配列の保存性が特に低い領域であること、これらの領域の塩基配列はネオサルトリア・スピノサが固有に有する塩基配列であること、を本発明者らが見出した。したがって、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを用いて、ネオサルトリア・スピノサを種レベルで特異的に識別・同定することができる。具体的には、本領域にポリメラーゼによるDNAの伸長方向であるプライマーの3’末端5塩基以上がハイブリダイズするように設計すればネオサルトリア・スピノサに特異的なプライマーに用いることが可能であり、それらのプライマーを用いたPCRによる同定が可能となる。また、本領域を10塩基以上ハイブリダイズするように設計したプローブは、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子と特異的にハイブリダイズするため、ハイブリダイズの有無によりネネオサルトリア・スピノサを同定することが可能となる。
【0032】
本発明において、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを用いて、下記(s)及び/又は(t)の塩基配列で表される核酸(好ましくは、前記可変部位)の存在を確認することが好ましい。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個(好ましくは1〜25個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜15個、特に好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個)の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサの種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【0033】
本発明の検出方法に用いる前記オリゴヌクレオチド(a)〜(j)は、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドが好ましい。また、本発明の検出方法に用いるオリゴヌクレオチドは、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列に対して70%以上の相同性を有する塩基配列又はその相補配列で表されるオリゴヌクレオチドであってもよく、相同性が80%以上であることがさらに好ましく、相同性が85%以上であることがさらに好ましく、相同性が90%以上であることがさらに好ましく、相同性が95%以上であることが特に好ましい。また、本発明で用いることができるオリゴヌクレオチドには、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列において1又は数個、好ましくは1から5個、より好ましくは1から4個、さらに好ましくは1から3個、よりさらに好ましくは1から2個、特に好ましくは1個の塩基の欠失、置換、挿入又は付加されており、かつネオサルトリア属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチドも包含される。また、配列番号1〜10のいずれかに記載の塩基配列に、適当な塩基配列を付加してもよい。
塩基配列の相同性については、Lipman-Pearson法(Science,227,1435,1985)等によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発製)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、パラメーターであるUnit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出することができる。
【0034】
前記オリゴヌクレオチドの結合様式は、天然の核酸に存在するホスホジエステル結合だけでなく、例えばホスホロアミデート結合、ホスホロチオエート結合等であってもよい。
【0035】
前記オリゴヌクレオチドは、例えばDNA自動合成機等を用いた化学合成等の通常の合成方法により調製することができる。また、ネオサルトリア属真菌の遺伝子から制限酵素等を用いて直接切り出したり、また遺伝子をクローニングして単離精製した後、制限酵素などを用いて切り出して調製することも可能である。操作の容易さ、大量かつ安価に一定品質のオリゴヌクレオチドを得られる点から化学合成により調製するのが好ましい。
【0036】
前記オリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の存在を確認し、ネオサルトリア属真菌を種レベルで同定する方法として特に制限はなく、シークエンシング法、ハイブリダイゼンション法、PCR法、LAMP法など通常用いられる遺伝子工学的手法で行うことができる。
【0037】
本発明の検出用オリゴヌクレオチドは、核酸プライマー及び核酸プローブとして用いることができる。
【0038】
核酸プローブは、前記オリゴヌクレオチドを標識物によって標識化することで調製することができる。前記標識物としては特に制限されず、放射性物質や酵素、蛍光物質、発光物質、抗原、ハプテン、酵素基質、不溶性担体などの通常の標識物を用いることができる。標識方法は、末端標識でも、配列の途中に標識してもよく、また、糖、リン酸基、塩基部分への標識であってもよい。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。かかる標識の検出手段としては、例えば核酸プローブが放射性同位元素で標識されている場合にはオートラジオグラフィー等、蛍光物質で標識されている場合には蛍光顕微鏡等、化学発光物質で標識されている場合には感光フィルムを用いた解析やCCDカメラを用いたデジタル解析等が挙げられる。このようにして標識化されたオリゴヌクレオチドを、通常の方法により検査対象物から抽出された核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズさせた後、ハイブリダイズした検出用オリゴヌクレオチドの標識を測定することでネオサルトリア属真菌を検出することができる。核酸とハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
また、前記オリゴヌクレオチドは、固相担体に結合させて捕捉プローブとして用いることもできる。この場合、捕捉プローブと、標識核酸プローブの組み合わせでサンドイッチアッセイを行うこともできるし、標的核酸を標識して捕捉することもできる。
【0039】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属真菌を種レベルで検出するために、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに/又は前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いたハイブリダイゼーションを行うことが好ましい。ネオサルトリア・グラブラを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・ヒラツカエを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・シュードフィシェリを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・フィシェリを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。ネオサルトリア・スピノサを検出するためには、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対を核酸プローブとして用いるのが好ましい。
【0040】
被検体中のネオサルトリア属真菌を種レベルで検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を標識化して核酸プローブとし、得られた核酸プローブをDNA又はRNAとハイブリダイズさせ、ハイブリダイズしたプローブの標識を適当な検出法により検出すればよい。上記核酸プローブはネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の可変部位と特異的にハイブリダイズするので、被検体中のネオサルトリア属真菌を迅速かつ簡便に種レベルで検出することができる。DNA又はRNAとハイブリダイズした核酸プローブの標識を測定する方法としては、通常の方法(FISH法、ドットブロット法、サザンブロット法、ノーザンブロット法等)を用いることができる。
【0041】
本発明の検出方法において、ネオサルトリア属真菌の検出/同定を行うため、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、増幅産物の有無を確認することが好ましい。DNA断片を増幅する方法として特に制限はなく、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、LCR(Ligase Chain Reaction)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-based Amplification)法、RCA(Rolling-circle amplification)法、LAMP(Loop mediated isothermal amplification)法など通常の方法を用いることができる。本発明においては、PCR法を用いるのが好ましい。
本発明において、PCR法により増幅反応を行いネオサルトリア属真菌の検出を行う場合について詳しく説明する。
【0042】
本発明において、ネオサルトリア・グラブラを検出するためには、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(k)又は(l)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
また、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・グラブラ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0043】
本発明において、ネオサルトリア・ヒラツカエを検出するためには、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(m)又は(n)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・ヒラツカエ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0044】
本発明において、ネオサルトリア・シュードフィシェリを検出するためには、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(o)又は(p)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・シュードフィシェリ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0045】
本発明において、ネオサルトリア・フィシェリを検出するためには、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(q)又は(r)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・フィシェリ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0046】
本発明において、ネオサルトリア・スピノサを検出するためには、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド及び配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド)をそれぞれ核酸プライマーとして用いてPCR法を行い、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列(好ましくは、前記(s)又は(t)の塩基配列の一部)を増幅し、増幅産物の有無を確認するのが好ましい。
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対をネオサルトリア属真菌(具体的には、ネオサルトリア・スピノサ)検出用オリゴヌクレオチド対とすることができる。
【0047】
PCRの条件は、目的のDNA断片を検出可能な程度に増幅することができれば特に制限されない。
例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜120秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を56〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を57〜63℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。また、前記(i)及び(j)オリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いてPCR法を行う場合、2本鎖DNAを1本鎖にする熱変性反応を95〜98℃で約5〜60秒間行い、プライマー対を1本鎖DNAにハイブリダイズさせるアニーリング反応を55〜61℃で約5〜60秒間行い、DNAポリメラーゼを作用させる伸長反応を約72℃で約10〜60秒間行い、これらを1サイクルとしたものを約30〜35サイクル行う。
【0048】
本発明において、遺伝子断片の確認は通常の方法で行うことができる。例えば増幅産物について電気泳動を行い増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法、増幅産物量を経時的に計測する方法、増幅産物の塩基配列を解読する方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、遺伝子増幅処理後に電気泳動を行い、増幅した遺伝子の大きさに対応するバンドの有無を確認する方法が好ましい。また、本発明において、増幅産物の検出は通常の方法で行うことができる。例えば増幅反応時に放射性物質などで標識されたヌクレオチドを取り込ませる方法、蛍光物質などで標識されたプライマーを用いる方法、増幅したDNA2本鎖の間にエチジウムブロマイドなどのDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込まさせる方法等が挙げられるが、本発明はこれらの方法に限定されるものではない。本発明においては、増幅したDNA2本鎖の間にDNAと結合することにより蛍光強度が強くなる蛍光物質を入り込ませる方法が好ましい。
検体に検出対象真菌が含まれる場合、本発明のオリゴヌクレオチド対をプライマーセットとして使用してPCRを行い、得られたPCR産物について電気泳動を行うと、特定のサイズでDNA断片が確認される。具体的には、検体にネオサルトリア・グラブラが含まれる場合、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・ヒラツカエが含まれる場合、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約300bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・シュードフィシェリが含まれる場合、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・フィシェリが含まれる場合、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約350bpのサイズでDNA断片が確認される。検体にネオサルトリア・スピノサが含まれる場合、前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチド対を核酸プライマーとして用いて得られたPCR産物の電気泳動を行うと、約250bpのサイズでDNA断片が確認される。
このような操作を行うことにより、検体に検出対象真菌が含まれているかを確認することができる。
【0049】
本発明において、ネオサルトリア属真菌の同定を行うために、前記オリゴヌクレオチド対を用いて被検体のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を決定し、該遺伝子の部分塩基配列が前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列に含まれるか否かを確認することで、前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しネオサルトリア属真菌を種レベルで検出することもできる。すなわち、本発明の検出方法は、被検体の有するβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を解析・決定し、決定した塩基配列と前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列とを比較し、その一致又は相違に基づいて前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認しネオサルトリア属真菌の種レベルの同定を行うものである。例えば、前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対をプライマーとして用いてPCRを行い、得られる増幅産物の塩基配列と前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列とを比較する。増幅産物の塩基配列が、前記(k)又は(l)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・グラブラと同定することができ、前記(m)又は(n)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・ヒラツカエと同定することができ、前記(o)又は(p)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・シュードフィシェリと同定することができ、前記(q)又は(r)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・フィシェリと同定することができ、前記(s)又は(t)の塩基配列で表される核酸の一部として含まれていれば検体に含まれる微生物をネオサルトリア・スピノサと同定することができる。
塩基配列を解析・決定する方法としては特に限定されず、通常行われているRNA又はDNAシークエンシングの手法を用いることができる。
具体的には、マクサム−ギルバート法、サンガー法等の電気泳動法、質量分析法、ハイブリダイゼーション法等が挙げられる。サンガー法においては、放射線標識法、蛍光標識法等により、プライマー又は、ターミネーターを標識する方法が挙げられる。
【0050】
本発明において、増幅反応に用いられるプライマーは、設計した配列を基にして化学合成したり、試薬メーカーから購入することができる。具体的には、オリゴヌクレオチド合成装置等を用いて合成することができる。また、合成後、吸着カラム、高速液体クロマトグラフィーや電気泳動法を用いて精製したものを用いることもできる。また、1ないし数個の塩基が置換、欠失、挿入若しくは付加された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドについても、通常の方法を使用して合成できる。
【0051】
本発明において使用される検体としては特に制限はなく、飲食品自体、飲食品の原材料、単離菌体、培養菌体等を用いることができる。
検体からDNAを調製する方法としては、ネオサルトリア属真菌の検出を行うのに十分な精製度及び量のDNAが得られるのであれば特に制限されず、未精製の状態でも使用できるが、さらに分離、抽出、濃縮、精製等の前処理をして使用することもできる。例えば、フェノール及びクロロホルム抽出を行って精製したり、市販の抽出キットを用いて精製して、核酸の純度を高めて使用することができる。また、被検体中のRNAを逆転写して得られるDNAを用いることもできる。
【0052】
本発明のネオサルトリア属真菌検出用キットは、前記本発明の検出用オリゴヌクレオチド又は検出用オリゴヌクレオチド対を核酸プローブ又は核酸プライマーとして含有するものである。本発明のキットは、前記核酸プローブ又は核酸プライマーの他に、目的に応じ、標識検出物質、緩衝液、核酸合成酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素等)、酵素基質(dNTP,rNTP等)等、菌類の検出に通常用いられる物質を含有する。本発明のキットには、本発明の検出用オリゴヌクレオチド又は検出用オリゴヌクレオチド対によって検出反応が可能であることを確認するための陽性対照(ポジティブコントロール)を含んでいてもよい。陽性対照としては、例えば、本発明の方法により増幅される領域を含んだDNAが挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
(1)ネオサルトリア属真菌に特異的なβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列の解析
下記の方法により、ネオサルトリア属に属する真菌各種(ネオサルトリア・グラブラ、ネオサルトリア・ニシムラエ、ネオサルトリア・オーストラレンシス、ネオサルトリア・フェネリアエ、ネオサルトリア・ヒラツカエ、ネオサルトリア・ウダガワエ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・パウリステンシス、ネオサルトリア・ラシニオサ、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・シュードフィシェリ)及びネオサルトリア・フィシェリのアナモルフであるアスペルギルス・フミガタスのβ−チューブリン遺伝子の塩基配列を決定した。
PDA(ポテトデキストロース寒天)斜面培地にて30℃で7日間暗所培養した菌体から、GenとるくんTM(タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとしてBt2a(5’-GGTAACCAAATCGGTGCTGCTTTC-3’:配列番号16)、Bt2b(5’-ACCCTCAGTGTAGTGACCCTTGGC-3’:配列番号17)(Glass and Donaldson,Appl.,Environ.,Microbiol.,61,p.1323−1330,1995参照)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度59℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア属真菌各種や、各種菌類の公知のβ−チューブリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア・グラブラ及びネオサルトリア・ヒラツカエにそれぞれ特異的な塩基配列を含有するβ−チューブリン遺伝子の中の特定部位を決定した。
【0055】
(2)ネオサルトリア属真菌に特異的なカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の解析
下記の方法により、ネオサルトリア属に属する真菌各種(ネオサルトリア・グラブラ、ネオサルトリア・ニシムラエ、ネオサルトリア・オーストラレンシス、ネオサルトリア・フェネリアエ、ネオサルトリア・ヒラツカエ、ネオサルトリア・ウダガワエ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・パウリステンシス、ネオサルトリア・ラシニオサ、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・シュードフィシェリ)並びにネオサルトリア・フィシェリのアナモルフであるアスペルギルス・フミガタス及びその類縁菌のカルモジュリン遺伝子の塩基配列を決定した。
PDA(ポテトデキストロース寒天)斜面培地にて30℃で3〜5日間暗所培養した菌体から、GenとるくんTM(タカラバイオ社製)を使用し、DNAを抽出した。目的とする部位のPCR増幅は、PuRe TaqTM Ready-To-Go PCR Beads(GE Health Care UK LTD)を用いて、プライマーとしてcmd5(5’-CCGAGTACAAGGAGGCCTTC-3’:配列番号18)、cmd6(5’-CCGATAGAGGTCATAACGTGG-3’:配列番号19)を使用した。増幅条件は、変性温度95℃、アニーリング温度55℃、伸長温度72℃、35サイクルで実施した。PCR産物は、Auto SegTM G-50(Amersham Pharmacia Biotech)を使用し精製した。PCR産物は、BigDye terminator Ver.3.1(商品名、Applied Biosystems社製)を使用してラベル化し、ABI PRISM 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で電気泳動を実施した。電気泳動時の蛍光シグナルからの塩基配列の決定には、ソフトウエアー‘ATGC Ver.4’(Genetyx社製)を使用した。
シークエンシング法により決定したネオサルトリア属真菌各種や、各種菌類の公知のカルモジュリン遺伝子の塩基配列情報をもとに、Clustal W(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top-j.html)を用いてアライメント解析を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・スピノサにそれぞれ特異的な塩基配列を含有するカルモジュリン遺伝子の中の特定部位を決定した。
【0056】
(3)プライマーの設計
上記で決定したネオサルトリア属真菌各種に特異的な塩基配列部位をもとに、配列番号1の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Ngl_F1プライマー)、配列番号2の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Ngl_R1プライマー)、配列番号3の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nhi_F1プライマー)、配列番号4の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nhi_R1プライマー)、配列番号5の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Npf_F2プライマー)、配列番号6の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Npf_R2プライマー)、配列番号7の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nfi_F3プライマー)、配列番号8の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nfi_R3プライマー)、配列番号9の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nspc_1Fプライマー)、及び配列番号10の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー(Nspc_1Rプライマー)を設計し、シグマ アルドリッチ ジャパン社に合成依頼し(脱塩精製品、0.02μmolスケール)、購入した。
前記の各プライマーは、図1〜5に示すように、ネオサルトリア・グラブラ及びネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の各特定領域並びにネオサルトリア・シュードフィシェリ、ネオサルトリア・フィシェリ及びネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の各特定領域の塩基配列に基づき設計したものである。
【0057】
(4)ネオサルトリア・グラブラの検出
設計したNgl_F1プライマー及びNgl_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・グラブラとその他の真菌類としては、表2に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し管理ナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコアポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0058】
【表2】
【0059】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0060】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Ngl_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNgl_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0061】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図6に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0062】
その結果、ネオサルトリア・グラブラのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・グラブラ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・グラブラを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0063】
(5)ネオサルトリア・ヒラツカエの検出
設計したNhi_F1プライマー及びNhi_R1プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・ヒラツカエとその他の真菌類としては、表3に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、独立行政法人製品評価技術基盤機構が保管しNBRCナンバーにより管理されている株、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管しIFMナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0064】
【表3】
【0065】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0066】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nhi_F1プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNhi_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを30サイクル行った。
【0067】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図7に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0068】
その結果、ネオサルトリア・ヒラツカエのゲノムDNAを含む試料では、約300bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・ヒラツカエ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・ヒラツカエを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0069】
(6)ネオサルトリア・シュードフィシェリの検出
設計したNpf_F2プライマー及びNpf_R2プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の真菌類としては、前記表3に記載した菌株を使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0070】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0071】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Npf_F2プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNpf_R2プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0072】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図8に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0073】
その結果、ネオサルトリア・シュードフィシェリのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・シュードフィシェリ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・シュードフィシェリを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0074】
(7)ネオサルトリア・フィシェリの検出
設計したNfi_F3プライマー及びNfi_R3プライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・シュードフィシェリとその他の真菌類としては、前記表2に記載した菌株を使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0075】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0076】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nfi_F3プライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNfi_R3プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)98℃、5秒間の熱変性反応、(ii)61℃、5秒間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、10秒間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0077】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図9に示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0078】
その結果、ネオサルトリア・フィシェリのゲノムDNAを含む試料では、約350bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・フィシェリ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・フィシェリを特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0079】
(8)ネオサルトリア・スピノサの検出
設計したNspc_1Fプライマー及びNspc_1Rプライマーの有効性の評価に用いる真菌類、すなわちネオサルトリア・スピノサ(ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含む)とその他の真菌類としては、表4〜6に記載した菌株を使用した。これらの菌株に関しては、千葉大学医学部真菌医学研究センターが保管し管理ナンバーにより管理されている株、The Centraalbureau voor Schimmelculturesが保管しCBSナンバーにより管理されている株、及び財団法人発酵研究所が管理しIFOナンバーで管理されている株等を入手し、使用した。
各菌株を至適条件下で培養した。培養条件についてはポテトデキストロース培地(商品名:パールコア ポテトデキストロース寒天培地、栄研化学株式会社製)を用いて25〜30℃で3〜5日間培養した。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
培養した各菌体を白金耳を用いて回収し、ゲノムDNA調製用キット(アプライドバイオシステムズ社製PrepMan ultra(商品名))を用いて、ゲノムDNA溶液を調製した。DNA溶液の濃度は5ng/μLに調製した。
【0084】
DNAテンプレートとして上記で調製したゲノムDNA溶液1μL、Pre Mix Taq(商品名、タカラバイオ社製)13μL及び無菌蒸留水10μLを混合し、Nspc_1Fプライマー(20pmol/μL)0.5μL及びNgl_R1プライマー(20pmol/μL)0.5μLを加え、25μLのPCR溶液を調製した。
PCR溶液について、自動遺伝子増幅装置サーマルサイクラーDICE(タカラバイオ)を用いて遺伝子増幅処理を行った。PCR条件は、(i)97℃、1分間の熱変性反応、(ii)60℃、1分間のアニーリング反応、及び(iii)72℃、1分間の伸長反応を1サイクルとしたものを35サイクル行った。
【0085】
PCR後、PCR溶液から2μLを分取してローディングバッファーと十分に混和し、2%アガロースゲルを用いて電気泳動(135V、25分間)を行った。電気泳動終了後、アガロースゲルをSYBR Safe DNA gel stain in 1×TAE(インビトロジェン)でDNAを染色後、増幅されたDNA断片の有無を確認した。その結果を図10〜12に示す。なお、図10は表4に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図11は表5に示す菌類の試料についての電気泳動図を示し、図12は表6に示す菌類の試料についての電気泳動図を示す。図中の番号は表記載の対応する試料番号の試料から抽出したDNAを用いて反応を行ったサンプルであることを示している。なお、分子量マーカーとして、EZ LoadTM 100bp Molecular Ruler(商品名、BIO RAD社製)を用いた。
【0086】
その結果、ネオサルトリア・スピノサ、ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ又はネオサルトリア・パウリステンシスのゲノムDNAを含む試料では、約250bpのサイズで遺伝子断片が確認された。一方、ネオサルトリア・スピノサ以外の真菌のゲノムDNAを含む試料では、遺伝子断片は確認されなかった。したがって、特定のオリゴヌクレオチド対を用いることによって、ネオサルトリア・スピノサ(ネオサルトリア・コレアナ、ネオサルトリア・ラシニオサ及びネオサルトリア・パウリステンシスを含む)を特異的に検出し、種レベルで同定することができる。
【0087】
上記の結果から、本発明のオリゴヌクレオチドを用いることによって、ネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列の存在を確認することができ、ネオサルトリア属真菌を種レベルで特異的に検出できることがわかる。したがって、本発明の方法によれば、種レベルで簡便、迅速かつ特異的にネオサルトリア属真菌を検出することが可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項2】
同定を行うために、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅し、増幅産物の有無を確認する、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う、請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
前記ネオサルトリア属真菌が、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の少なくともいずれか1種である、請求項1〜3のいずれか記載の検出方法。
【請求項5】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項6】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項7】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項8】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項9】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項10】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項11】
前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、請求項10記載の検出方法。
【請求項12】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う、請求項11記載の検出方法。
【請求項13】
前記ネオサルトリア属真菌が、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の少なくともいずれか1種である、請求項7〜9のいずれか記載の検出方法。
【請求項14】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(k)又は(l)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・グラブラの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項15】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(m)又は(n)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・ヒラツカエの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項16】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(o)又は(p)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・シュードフィシェリの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項17】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(q)又は(r)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・フィシェリの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項18】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(s)又は(t)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・スピノサの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項19】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド、又は下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなる、オリゴヌクレオチド対。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーである、請求項19記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項21】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(k)及び/又は(l)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項22】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(m)及び/又は(n)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項23】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(o)及び/又は(p)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項24】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(q)及び/又は(r)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項25】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(s)及び/又は(t)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項26】
下記(a)〜(j)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項27】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プローブ又は核酸プライマーである、請求項26記載の検出用オリゴヌクレオチド。
【請求項28】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーである、請求項26又は27記載の検出用オリゴヌクレオチド。
【請求項29】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(k)及び/又は(l)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項30】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(m)及び/又は(n)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項31】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(o)及び/又は(p)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項32】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(q)及び/又は(r)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項33】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(s)及び/又は(t)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項34】
請求項19〜33のいずれか記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むネオサルトリア(Neosartorya)属真菌検出キット。
【請求項1】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの同定を行う工程を含む、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項2】
同定を行うために、前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いてネオサルトリア属真菌のβ−チューブリン遺伝子及び/又はカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅し、増幅産物の有無を確認する、請求項1記載の検出方法。
【請求項3】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う、請求項2記載の検出方法。
【請求項4】
前記ネオサルトリア属真菌が、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の少なくともいずれか1種である、請求項1〜3のいずれか記載の検出方法。
【請求項5】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・グラブラのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項6】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・ヒラツカエのβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項7】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・シュードフィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項8】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・フィシェリのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項9】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、ネオサルトリア・スピノサのカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列を増幅する、請求項3又は4記載の検出方法。
【請求項10】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対、並びに下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチド対からなる群より選ばれる少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて、下記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、ネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の検出方法。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項11】
前記少なくとも1種のオリゴヌクレオチド対を用いて前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列の一部を増幅し、増幅産物の有無を確認し、前記(k)〜(t)のいずれかの塩基配列で表される核酸の存在を確認する、請求項10記載の検出方法。
【請求項12】
前記増幅反応をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって行う、請求項11記載の検出方法。
【請求項13】
前記ネオサルトリア属真菌が、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)及びネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の少なくともいずれか1種である、請求項7〜9のいずれか記載の検出方法。
【請求項14】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(k)又は(l)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・グラブラの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項15】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(m)又は(n)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・ヒラツカエの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項16】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(o)又は(p)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・シュードフィシェリの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項17】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(q)又は(r)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・フィシェリの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項18】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドを核酸プライマーとして用いて前記ポリメラーゼ連鎖反応法を行い、前記(s)又は(t)の塩基配列の一部を増幅し、ネオサルトリア・スピノサの同定を行う、請求項10〜13のいずれか記載の検出方法。
【請求項19】
下記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチド、下記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチド、下記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチド、下記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチド、又は下記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドからなる、オリゴヌクレオチド対。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーである、請求項19記載のオリゴヌクレオチド対。
【請求項21】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(k)及び/又は(l)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項22】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(m)及び/又は(n)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項23】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(o)及び/又は(p)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項24】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(q)及び/又は(r)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項25】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって下記(s)及び/又は(t)の塩基配列の一部を増幅でき、ネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)を種レベルで特異的に検出するための核酸プライマーとして機能し得る、請求項19又は20記載のオリゴヌクレオチド対。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項26】
下記(a)〜(j)のオリゴヌクレオチドからなる群より選ばれるオリゴヌクレオチド。
(a)配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(b)配列番号2に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号2に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(c)配列番号3に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(d)配列番号4に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号4に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(e)配列番号5に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号5に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(f)配列番号6に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号6に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(g)配列番号7に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号7に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(h)配列番号8に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号8に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(i)配列番号9に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号9に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
(j)配列番号10に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチド、又は配列番号10に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入若しくは付加されておりかつネオサルトリア(Neosartorya)属真菌の種レベルでの検出に使用できるオリゴヌクレオチド
【請求項27】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プローブ又は核酸プライマーである、請求項26記載の検出用オリゴヌクレオチド。
【請求項28】
前記オリゴヌクレオチドが核酸プライマーである、請求項26又は27記載の検出用オリゴヌクレオチド。
【請求項29】
前記(a)及び(b)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(k)及び/又は(l)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(k)配列番号11に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(l)配列番号11に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・グラブラ(Neosartorya glabra)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項30】
前記(c)及び(d)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(m)及び/又は(n)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(m)配列番号12に記載のβ−チューブリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(n)配列番号12に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・ヒラツカエ(Neosartorya hiratsukae)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項31】
前記(e)及び(f)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(o)及び/又は(p)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(o)配列番号13に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(p)配列番号13に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・シュードフィシェリ(Neosartorya pseudofischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項32】
前記(g)及び(h)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(q)及び/又は(r)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(q)配列番号14に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(r)配列番号14に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項33】
前記(i)及び(j)のオリゴヌクレオチドがそれぞれ、下記(s)及び/又は(t)の塩基配列で表される核酸にハイブリダイズすることができ、ネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)を種レベルで特異的に検出するための核酸プローブ又は核酸プライマーとして機能し得る、請求項26〜28のいずれか記載のオリゴヌクレオチド。
(s)配列番号15に記載のカルモジュリン遺伝子の部分塩基配列又はその相補配列
(t)配列番号15に記載の塩基配列において1又は数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加されておりかつネオサルトリア・スピノサ(Neosartorya spinosa)の種レベルでの検出に使用できる塩基配列、又はその相補配列
【請求項34】
請求項19〜33のいずれか記載のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド対を含むネオサルトリア(Neosartorya)属真菌検出キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−34447(P2013−34447A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174677(P2011−174677)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
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