説明

ネオニコチノイド耐性虫の制御方法

本発明は、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを用いて、ネオニコチノイド殺虫剤耐性である虫を制御する方法、並びにネオニコチノイド耐性虫を制御する前記化合物を含んでなる組成物の使用に関する。特に、方法は、ウンカ科及びヨコバイ科におけるネオニコチノイド耐性虫、特に、1又は複数のネオニコチノイド殺虫剤に耐性であるウンカ(例えば、Nilaparvate属、Sogatella属、及び/又はLaodelphax属の虫)、及び/又はヨコバイの制御に関する。本発明の方法は、有用植物の作物、特にコメ等の穀物における、ネオニコチノイド耐性虫の制御における具体的な使用を見出すものである。さらに本発明は、ネオニコチノイド耐性虫により伝播される植物ウイルスを制御する方法に及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオニコチノイド殺虫剤耐性である虫を、遊離形態又は農薬的に許容される塩形態である式Iの化合物
【0002】
【化1】

【0003】
を用いて制御する方法、及びネオニコチノイド耐性虫を制御するために当該化合物を含んでなる組成物の使用に関する。特に、当該方法は、ネオニコチノイド耐性であるウンカ科(Delphacidae)又はヨコバイ科(Cicadellidae)の虫、特に、1又は複数のネオニコチノイド殺虫剤に耐性であるウンカ(planthopper)(例えば、Nilaparvate属、Sogatella属、及び/又はLaodelphax属の虫)、及び/又はヨコバイ(leafhopper)の制御に関する。本発明の方法は、有用植物の作物、特にコメ等の穀物における、ネオニコチノイド耐性虫の制御における具体的な使用を見出すものである。さらに本発明は、ネオニコチノイド耐性虫により伝播される植物ウイルスを制御する方法に及ぶ。
【背景技術】
【0004】
ピレスロイド(Nauen & Denholm, 2005: Archives of Insect Biochemistry and Physiology 58:200-215)の商業化により、ネオニコチノイドは市場に導入された殺虫剤の最も速く成長する種の象徴であり、特にこれが従来の殺虫剤種に対して交差耐性がほとんどないか、全くないという性質を呈したため、非常に価値の有る虫制御剤である。しかしながら、ネオニコチノイド類殺虫剤に対する虫耐性の報告は増加傾向にあり、アブラムシ、コナジラミ(whitelfy)及びコロラドハムシ(上記の、Nauen & Denholm)における耐性の報告が確認されている。すなわち、かかるネオニコチノイド殺虫剤に対する虫の耐性の増加は、多数の商業的に重要な作物の栽培に対する重大な脅威をもたらすため、ネオニコチノイド耐性虫を制御できる代替的な殺虫剤を見出す(つまり、ネオニコチノイド類と全く交差耐性を呈しない殺虫剤を見出す)必要性がある。
【0005】
ウンカ(ウンカ科由来の虫)及びヨコバイ(ヨコバイ科由来の虫)は、商業的に重要な多くの作物、特に穀物に深刻な脅威をもたらす有害虫である。Nilaparvata lugens(トビイロウンカ;BPH)、Laodelphax striatellus(ヒメトビウンカ)及びSogatella furcifera(セジロウンカ)等のウンカは、アジアの多くの地域でコメにとっての主要な有害生物であり、様々な方法で損傷を引き起こす。例えば、これらの虫は、葉維管束システムからの樹液を吸引することによりコメ植物への損傷を引き起こし、ホッパー(hopper)の成虫は、木部及び師部を遮断して葉鞘の中央脈にその卵を産み、そして水及び栄養分の輸送を妨害する。ホッパーによる重度の侵入は植物の白化を引き起こし、最終的には植物が枯れる(「hopper−burn」として知られる)。ウンカはまた、植物ウイルスのベクターとなることが示されており、例えば、トビイロウンカは、経済的に損傷させる植物ウイルス:コメグラッシースタントテヌイウイルス(grassy stunt tenuivirus)、及びコメラギットスタントオリザウイルス(ragged stunt oryzavirus)を輸送し、一方、Laodelphaxは、コメストライプウイルス(stripe virus)の輸送に関与する。
【0006】
とりわけコメの主要有害生物という地位があるため、殺虫剤の応用は、ウンカ制御用に大きく依存しており、その結果、例えばトビイロウンカにおいて殺虫剤の多くの種類に対する耐性が進展し、ピレスロイド、オルガノホスフェート、オルガノクロリン、カルバメート、ブプロフェジン、及びより最近では、ネオニコチノイドベースの殺虫剤(例えば、Sone et al. 1995. J. Pestic Sci 20:541-543; Nagata et al. 2002, J. Asia-Pacific Entomol. 5(1):113-116、を参照されたい)への耐性の報告事例がある。すなわち、交差耐性及び/又は多耐性虫の出現は、ウンカ及びヨコバイに対する宿主であるコメ及びその他の作物の栽培にとって大きな脅威となる。
【0007】
式Iの化合物、(4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミン)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン;ピメトロジン)は、既知であり、例えば、EP 0314615に記載がある。EP 0314615は、有害生物、特に虫、より特には鞘翅目、双翅目、半翅類、膜翅目、等翅目、鱗翅類、直翅類、Phiraptera、チャタテムシ目、ノミ目、総翅目、総尾目の虫、特に半翅目に属するアブラムシ科の吸汁虫の制御における、遊離形態又は酸付加塩形態の式(II)の化合物
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R1は水素、C1−C12アルキル、C3−C6シクロアルキル、C1−C4アルコキシ−C1−C6アルキル、ハロ−C1−C2アルキル、フェニル、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチルもしくはフェニルペンチル、又はハロゲン、C1−C5アルキル、ハロ−C1−C2アルキル、メトキシ及び/又はエトキシにより1置換もしくは全て置換される、フェニル、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチルもしくはフェニルペンチル基であり、及びR2は、水素、C1−C6アルキル、又はC3−C6シクロアルキル、又は未置換であるか、もしくはC1−C12アルキル、ハロゲン、もしくはハロ−C1−C12アルキルにより置換されるフェニルであるか;又は
1及びR2は、3〜7員の飽和型もしくは不飽和型の炭素環を一緒に形成し;
3は、水素又はC1−C6アルキルであり;及び
Zは−N=CH−、又は−NH−CH2−である)
の活性について概説を提供する。
【0010】
US 5,646,124は、半翅目の特定の虫、特にコナジラミ科、ヨコバイ科、及びウンカ科由来の虫を制御するためのピメトロジンの使用についての記載がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、ピメトロジンが、トビイロウンカのネオニコチノイド耐性群を制御するためにうまく使用できることの発見に基づく。これは、ネオニコチノイド殺虫剤とピメトロジン殺虫剤との間の交差耐性が、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)を含むその他の虫において発生することが知られているように(Aguilar-Medel et al. 2007 lnterciencia 32(4):266-269; Wyss et al. 2001 Poster "Pymetrozine-new Whitefly Product in Spain" presented at European Whitefly Symposium held in Ragusa, Italy, 27th Feb-3rd March)非常に驚くべきことである。このコナジラミにおける交差耐性は、モノオキシゲナーゼ解毒により引き起こされることが知られ(Karunker et al., 2008 Insect Biocehmistry and Molecular Biology 38(6):634-644)、これはBPHにおけるネオニコチノイドに対する耐性について少なくとも部分的に妥当であると考えられる。すなわち、トビイロウンカのネオニコチノイド耐性群における、ピメトロジン殺虫剤とネオニコチノイド殺虫剤との間の交差耐性の発見は、非常に驚くべきことである。
【0012】
すなわち、本発明の第一の態様によれば、ネオニコチノイド殺虫剤耐性である、ウンカ科又はヨコバイ科由来の虫を制御する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを前記ネオニコチノイド殺虫剤耐性である虫に施用することを含んでなる方法を提供する。
【0013】
かかるネオニコチノイド耐性虫を制御する、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンの驚くべき能力のおかげで、本発明は、かかる虫から攻撃を受け易い、及び/又は攻撃を受ける、有用植物の作物を保護する方法も提供する。かかる方法には、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを当該作物及び/又は当該虫に施用することが必要である。
【0014】
活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンは、ネオニコチノイド耐性ウンカに対する交差耐性を呈していないので、殺虫剤のネオニコチノイド種類に対する耐性の制御を目的とする耐性管理戦略において使用されてよい。かかる戦略には、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン、及びネオニコチノイド殺虫剤の交互の施用が必要であってもよく、施用毎に交互の施用、又は季節/作物に基づく交互の施用(例えば、第一作物/第一生育期における制御のために、ピメトロジンの使用、そして続く作物/生育期のためにネオニコチノイドの使用、逆も同様)があり、これがさらなる本発明の態様を形成する。
【0015】
本明細書に記載されるように、多数の商業的に重要な作物のウンカ科及びヨコバイ科の有害生物由来の虫だけでなく、これらの虫はウイルスという脅威をもたらす。ネオニコチノイド殺虫剤に対する耐性の出現により、この脅威の重大性は増している。すなわち、本発明のさらなる態様は、植物ウイルスを運搬し、ネオニコチノイド殺虫耐性である、ウンカ科又はヨコバイ科由来の虫による攻撃を受け易い、及び/又は当該攻撃を受ける有用植物の作物を保護する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを当該作物及び/又は当該虫に施用することを含んでなる方法を提供する。本発明の態様により制御されてよい植物ウイルスの例には、ラギットスタントオリザウイルス、グラッシースタントテヌイウイルス、及びコメストライプウイルスがある。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に記載される場合、本発明の方法には、虫がネオニコチノイド殺虫剤に対して耐性であるか否か、及び/又は当該虫が植物ウイルスを運搬するか否かを評価するステップも必要である。一般的にこのステップには、実際に、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンが施用される前に、処理される領域(例えば、作物、野原、生息地)から虫のサンプルを回収し、且つ耐性/感受性、及び/又はウイルスの存否を検査する(例えば、任意に好適な表現型の、生化学的、又は分生物学的に利用可能な技術を用いる)。
【0017】
本明細書において使用される場合、ネオニコチノイド殺虫剤とは、虫ニコチンアセチルコリン受容体で作用する任意の殺虫化合物のことを言い、且つYamamoto(1996, Agrochem Jpn 68:14-15)によるネオニコチノイド殺虫剤として分類される化合物のことを言う。ネオニコチノイド殺虫剤の例には、作用分類スキームのIRAC(殺虫剤耐性作用委員会、Crop Life)様式の4A群、例えば、アセタミプリド、クロチアニジン、ジノテフラン、イミダクロプリド、ニテンピラン、チアクロプリド、及びチアメトキサム、並びに同じ作用様式を有する任意の化合物がある。
【0018】
虫に対して「制御する」又は「制御すること」なる用語が適用されると、それは、標的とする虫が、保護される作物からはね返されるか、又は当該作物に引き付けられないことを意味する。
【0019】
さらに、虫に適用される場合、「制御する」又は「制御すること」なる用語は、虫が摂食する能力もしくは産卵する能力を無くすか、又は低減することも意味する。これらの用語は、さらに、標的とする虫を殺すことも含んでよい。
【0020】
すなわち、本発明の方法には、虫をはね返すために十分な量の活性成分(すなわち、活性成分のはね返し有効量)、虫が摂食をやめるために十分な量の活性成分の使用が含まれてよく、又は活性成分の殺虫有効量(すなわち、虫を殺すために十分な量)、又は上記の効果の任意の組み合わせの使用が含まれてよい。「制御する」又は「制御すること」がウイルスに適用されると、それは、有用植物の作物のウイルス感染レベルが、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンの任意の施用が無い場合に観察されるはずのウイルス感染レベルより低いことを意味する。
【0021】
「施用する」又は「施用」なる用語は、制御される虫に対する直接的施用、及び例えば、虫が有害生物として作用する作物又は植物へ、又は作物又は虫の場所への施用を介して、虫への間接的施用を意味すると解される。すなわち、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンは、殺有害生物化合物を施用する任意の既知の手法により施用されてよい。例えば、有害生物又は有害生物の場所に(例えば、有害生物又は有害生物により侵入されやすい生育植物の生育場所に)、又は葉、茎、枝もしくは根を含む植物の任意の部分に、植えられる前の種子に、又は植物が生育しているか、もしくは植えられるその他の媒体(例えば、根を囲む土壌、土壌は一般的に、水田又は水耕栽培システム)に、製剤化されるか又は製剤化されずに、直接的に施用されてよく、又は土壌又は水性環境において、噴霧され、まぶされ、浸漬により施用され、クリームもしくはペースト製剤として施用され、蒸気として施用され、又は組成物(例えば、顆粒組成物又は水溶性袋に包装された組成物)の分散又は組み込みを介して施用されてよい。
【0022】
本発明の方法は、ネオニコチノイド耐性ウンカ又はヨコバイ虫、すなわち、ウンカ科及び/又はヨコバイ科由来の虫の制御が特に可能である。より具体的には、本発明によりピメトロジンを使用し、Laodelphax、Nilaparacata、及び/又はSogatellaの、及び特にNilaparavata lugens、Laodelphax stratellus、及び/Sogatella furciferaのネオニコチノイド耐性虫(及び虫におけるネオニコチノイド耐性)を制御する。
【0023】
本発明の方法は、有用植物の作物における虫有害生物又はウイルス侵入を制御する効果を有し、当該方法はまた、前記作物における植物の繁栄を改良及び/又は維持する方法として、又は作物の良好な状態を増進/維持する方法として見てもよい。
【0024】
本発明により保護される可能性のある有用植物の作物、及び本発明により4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンが施用される作物には、穀物、例えば、コムギ、オオムギ、ライ、オーツ、コメ、トウモロコシの作物;果実、例えば、ナシ状化果、核果、及びソフトフルーツ(特に、リンゴ、西洋ナシ、プラム、ピーチ、アーモンド、チェリー、及びベリー);例えばマメ科植物の作物がある。好ましい実施態様によれば、有用植物の作物は穀物であり、特にコメの作物である。
【0025】
有用植物の作物は、除草剤又は除草剤類への耐性を作るか、又は作ったもの(例えば、Clearfield(登録商標)Riceの事例で示されるようなイマザモックス等のイミダゾリノン)及び/又は殺虫剤又は殺虫剤類、及び/又は従来の植物繁殖又は遺伝子操作法により、いわゆる「アウトプット」特質を獲得したもの(例えば、向上した保存安定性、より高い栄養価、向上した収率等)が含まれると解される。
【0026】
有用植物には、植物が遺伝子組換えであるか、又は植物がその系統における少なくとも1つの導入遺伝子の導入の結果として遺伝的特質を有するものが含まれる。化合物4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン及びその農薬として許容される塩は、例えば、EP 0314615に記載の通りに作製されてよい。あるいは、製剤化組成物として商業的に得られてもよく、例えば、商標名、FULFILL(登録商標)、CHESS(登録商標)、及びPLENUM(登録商標)のものがある。式Iの化合物の農薬として許容される塩は、例えば、酸付加塩である。これらの塩は、例えば、鉱物酸、例えば、過塩素酸、硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、又はハロゲン化水素酸等の無機強酸と一緒に、未置換もしくは置換された、例えばハロゲン置換された、C1−C4アルカンカルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、又はトリフルオロ酢酸、不飽和型もしくは飽和型のジカルボンサン、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、又はフタル酸、ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸、又は安息香酸等の有機強酸であるカルボン酸と一緒に、又は未置換もしくは置換された、例えばハロゲン置換された、C1−C4アルカン−もしくはアリル−スルホン酸、例えば、メタン−もしくはp−トルエン−スルホン酸等の有機スルホン酸と一緒に形成される。遊離形態及びその農薬として許容される塩の形態である式Iの化合物間の緊密な関係を考慮して、本明細書ではこれ以前及び以後、式Iの遊離化合物、又はその農薬として許容される塩は、適切且つ便宜的な場合に、それぞれ対応する農薬として許容される塩、又は式Iの遊離化合物である。好ましい実施態様によれば、本発明の方法は、遊離形態の4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを使用する。
【0027】
遊離形態又は農薬として許容される塩形態である式Iの化合物は、上で開示される構造式において示される2つのヘテロ環が結合する(−N=C(H)−)部分構造が(E)又は(Z)立体配置を有することに依存して、(E)又は(Z)異性体の形態である。したがって、本明細書ではこれ以前及び以後、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である化合物Iは、対応する(E)又は(Z)異性体であり、各々の場合において、個別の場合に特に言及しない限り、純粋な形態、又は(E)/(Z)混合物の形態であると解される。好ましくは、式Iの化合物は(E)形態である。
【0028】
遊離形態又は農薬として許容される塩形態である式Iの化合物は、互変異性体の形態であってもよい。例えば、[−N=(H)−C(=O)−]部分構造を有する上で開示された構造式による化合物Iは、[−N=(H)−C(=O)−]部分構造の代わりに、[−N=C(OH)−]部分構造を有する互変異性体と平衡状態であってよい。したがって、本明細書においてこれ以前及び以後は、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である式Iの化合物の任意の言及はまた、適切ならば、個別の場合において特に言及しない限り対応する互変異性体を含むと解される。
【0029】
遊離形態である式Iの化合物(及びその全ての異性体及び/又は互変異性体)は、国際特許公開番号WO 00/68222に記載されるような任意の1つの溶媒和物又は水和物の形態であってもよい。特に、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンの二水和物が、本発明における使用について好ましい。
【0030】
活性成分を虫(特に、ネオニコチノイド耐性虫)及び/又は本発明の方法により要請されるような有用植物の作物に施用するために、当該活性成分は、純粋な形態で使用されても、又はより典型的には、前記活性成分に加えて、好適な不活性希釈剤又は担体、そして任意に界面活性剤(SFA)を含む組成物として製剤化されてもよい。SFAは、界面張力を低下し、これにより他の特性(例えば分散、乳化及び湿潤)の変化を導くことにより、界面(例えば、液/固界面、液/気界面又は液/液界面)の特性を変更することができる化学物質である。SFAには、非イオン性、カチオン性、及び/又はアニオン性界面活性剤、及び界面活性剤混合物がある。
【0031】
すなわち、これ以前に記載される発明の任意の態様によるさらなる実施態様によれば、活性成分は、農薬として許容される担体又は希釈剤をさらに含んでなる組成物の形態であるはずである。
【0032】
本発明における使用のための、全ての組成物(固形及び液体の両製剤)は、活性成分を、0.0001〜95重量%(含有)、より好ましくは1〜85重量%(含有)、例えば5〜60重量%(含有)で含んでなることが好ましい。本組成物は一般に、活性成分が、濃度0.1〜1000ppm、好ましくは0.1〜500ppmで施用されるような、本発明の方法において使用される。特に、活性成分濃度が50、100、200、300又は500pp、である噴霧用混合物が使用される。1ヘクタール当たりの施用比率は、一般的に1ヘクタール当たり活性成分が1〜2000g、特に10〜1000g/ha、好ましくは20〜600g/ha、より好ましくは12.5〜300g/haである。1ヘクタール当たり活性成分が50、100、150、200、250、300、又は400の施用比率が好ましい。
【0033】
組成物は、多数の剤型から選択でき、例えば、粉剤(DP)、水溶剤(SP)、顆粒水溶剤(SG)、顆粒水和剤(WG)、水和剤(WP)、粒剤(GR)(徐放性又は即放性)、液剤(SL)、油剤(OL)、超低量液剤(UL)、乳剤(EC)、濃厚粉剤(DC)、エマルション製剤(水中油(EW)及び油中水(EO)の両方)、マイクロエマルション製剤(ME)、濃厚懸濁剤(SC)、エアゾル製剤、薫蒸/燻煙剤、カプセル懸濁剤(CS)及び種子処理用製剤がある。任意の例において選択される剤型は、特定の想定される目的、式(I)の化合物の物理的、化学的及び生物学的特性に依存することになる。
【0034】
粉剤(DP)は、活性成分を、1種又は複数の固形希釈剤(例えば、天然クレイ、カオリン、葉ろう石、ベントナイト、アルミナ、モンモリロナイト、キーゼルグール、チョーク、珪藻土、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウム、硫黄、石灰、小麦粉、タルク、並びに他の有機及び無機の固形担体)と混合し、この混合物を細かい粉末へ機械的に粉砕することにより調製することができる。
【0035】
水溶剤(SP)は、水への分散性/溶解性を改善するために、式(I)の化合物を、1種もしくは複数の水溶性無機塩(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム又は硫酸マグネシウム)又は1種もしくは複数の水溶性有機固形物(例えば多糖)、並びに任意に1種もしくは複数の湿潤剤、1種もしくは複数の分散剤又はこれらの物質の混合物と混合することにより調製することができる。その後この混合物は、細かい粉末へ粉砕される。同様の組成物を造粒し、顆粒水溶剤(SG)を形成してもよい。
【0036】
水和剤(WP)は、液体中の分散を促進するために、活性成分を、1種又は複数の固形希釈剤又は担体、1種又は複数の湿潤剤、並びに好ましくは1種又は複数の分散剤、及び任意に1種又は複数の懸濁化剤と混合することにより調製することができる。その後この混合物は、細かい粉末へ粉砕される。同様の組成物を造粒し、顆粒水和剤(WG)を形成してもよい。
【0037】
粒剤(GR)は、活性成分及び1種又は複数の粉末化された固形の希釈剤又は担体の混合物を造粒することによるか、又は式(I)の化合物(又は好適な物質中のそれらの溶液)を、多孔性顆粒物質(例えば、軽石、アタプルガイトクレイ、フラー土、キーゼルグール、珪藻土又は粉砕したトウモロコシの穂軸)中に吸収することによるか、もしくは式(I)の化合物(又は好適な物質中のそれらの溶液)を、硬質コア材(例えば砂、ケイ酸塩、無機の炭酸塩、硫酸塩もしくはリン酸塩)上に吸着し、必要ならば乾燥することにより、予め形成されたブランク顆粒(blank granule)から造粒することによるか、のいずれかにより、形成されてよい。吸収又は吸着を補助するために通常使用される試薬は、溶媒(例えば脂肪族及び芳香族石油系溶媒、アルコール、エーテル、ケトン及びエステル)並びに固着剤(例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、デキストリン、糖質及び植物油)を含む。その他の1種又は複数の添加剤(例えば、乳化剤、湿潤剤又は分散剤)も、顆粒中に含まれてよい。
【0038】
濃厚粉剤(DC)は、活性成分を、水、又はケトン、アルコールもしくはグリコールエーテルなどの有機溶媒中に溶解することにより調製されてよい。これらの溶液は、界面活性剤を含んでよい(例えば、水希釈を改善するか、又は噴霧タンク中での結晶化を防止するため)。
【0039】
乳剤(EC)又は水中油型エマルション製剤(EW)は、式(I)の化合物を、有機溶媒(任意に1種又は複数の湿潤剤、1種又は複数の乳化剤もしくはこれらの物質の混合物を含有する)中に溶解することにより調製されてよい。ECにおける使用に好適な有機溶媒は、芳香族炭化水素(例えばアルキルベンゼン又はアルキルナフタレン、例としてSOLVESSO 100、SOLVESSO 150及びSOLVESSO 200;SOLVESSOは登録商標である)、ケトン(例えばシクロヘキサノン又はメチルシクロヘキサノン)、及びアルコール(例えばベンジルアルコール、フルフリルアルコール又はブタノール)、N−アルキルピロリドン(例えばN−メチルピロリドン又はN−オクチルピロリドン)、脂肪酸のジメチルアミド(例えばC8−C1O脂肪酸ジメチルアミド)、及び塩素化された炭化水素がある。EC製品は、水への添加時に、自発的に乳化し、適当な装置による散布を可能にするのに十分な安定性を伴う乳液を作製することができる。EWの調製は、液体として(それが室温では液体ではない場合、これは妥当な温度、典型的には70℃未満で融解することができる)、又は溶液中(適当な溶媒中にこれを溶解することにより)のいずれかで式(I)の化合物を得ること、次に得られた液体もしくは溶液を、高剪断下で、1種もしくは複数のSFAを含有する水へ乳化し、エマルションを作製することが必要である。EWにおける使用に好適な溶媒は、植物油、塩素化された炭化水素(例えばクロロベンゼン)、芳香族溶媒(例えばアルキルベンゼン又はアルキルナフタレン)及び他の適当な水中の溶解度が低い有機溶媒を含む。
【0040】
マイクロエマルション製剤(ME)は、水を、1種又は複数のSFAを伴う1種又は複数の溶媒の配合物と混合し、自発的に熱力学的に安定した等方(isotropic)液体製剤を作製することにより調製されてよい。活性成分は最初、水又は溶媒/SFA配合物のいずれかの中に存在する。MEにおける使用に好適な溶媒は、先にEC又はEWにおける使用について説明されたものを含む。MEは、水中油又は油中水システムのいずれかであってよく(どのシステムが存在するかは、伝導度測定により決定することができる)、並びに同じ製剤中で水溶性及び油溶性殺虫剤と混合するのに適することがある。MEは、水へ希釈するのに適しており、マイクロエマルションとして残存するか、又は通常の水中油型エマルションを形成するかのいずれかである。
【0041】
濃厚懸濁剤(SC)は、活性成分の微粉化された不溶性固体粒子の水性及び非水性懸濁液を含んでよい。SCは、化合物の細粒懸濁剤を作製するために、好適な媒体中で、固形の活性成分を、任意に1種又は複数の分散剤と共に、ボールミル粉砕又はビーズミル粉砕で調製してよい。1種又は複数の湿潤剤が、本組成物中に含まれてよく、並びに粒子が沈降する速度を遅くするために、懸濁化剤が含まれてよい。あるいは活性成分は、乾式ミル粉砕され、先に説明された物質を含有する水へ添加され、所望の最終生成物を作製してよい。
【0042】
エアゾル製剤は、活性成分及び好適な噴射剤(例えばn−ブタン)を含有する。活性成分は、好適な媒体(例えば水又はn−プロパノールのような水混和性液体)中に溶解又は分散され、非加圧式手動噴霧ポンプにおいて使用するための組成物を提供することもできる。
【0043】
閉鎖された空間において活性成分を含有する煙を発生するために適した組成物を形成するために、この化合物は、火工品(pyrotechnic)混合物中に乾燥状態で混合されてよい。
【0044】
カプセル懸濁剤(CS)は、EW製剤の調製に類似しているが、その中に各油滴が高分子シェルにより封入され、かつ活性成分及び任意にそれらの担体又は希釈剤を含む、油滴の水性分散を得るための追加の重合工程を伴う方法で調製されてよい。この高分子シェルは、界面重縮合反応によるか、又はコアセルベーション手順のいずれかにより作製することができる。当該組成物は、活性成分の化合物の制御された放出を提供できる。活性成分はまた、化合物の遅い制御された放出を提供するために、生分解性高分子マトリックス中に製剤されてもよい。
【0045】
組成物は、組成物の生物学的性能を改善するために(例えば表面上の湿潤性、保持もしくは分布;処理された表面上の雨水への抵抗;又は、活性成分の取り込みもしくは移動を改善することによる)、1種又は複数の添加剤を含んでよい。このような添加剤は、界面活性剤、油分をベースにした噴霧添加剤、例えばある種の鉱物油又は天然植物油(ダイズ油及びナタネ油など);並びに、これらの物質の他の生体内増強(bio-enhancing)補助剤(活性成分の作用を補助又は修飾する成分)との配合物を含む。
【0046】
本発明の方法における使用のための好ましい組成物は、具体的には以下の構成要素で構成される(全て重量による割合である)。
【0047】
乳剤(EC):
活性成分:1〜90%、好ましくは5〜20%
SFA:1〜30%、好ましくは10〜20%
溶媒:5〜98%、好ましくは70〜85%
【0048】
粉剤(DP):
活性成分:0.1〜10%、好ましくは0.1〜1%
固形担体/希釈剤:99.9〜90%、好ましくは99.9〜99%
【0049】
濃厚懸濁剤(SC):
活性成分:5〜75%、好ましくは10〜50%
水:94〜24%、好ましくは88〜30%
SFA:1〜40%、好ましくは2〜30%
【0050】
水和剤(WP):
活性成分:0.5〜90%、好ましくは1〜80%、より好ましくは20〜30%
SFA:0.5〜20%、好ましくは1〜15%
固形担体:5〜99%、好ましくは15〜98%
【0051】
顆粒(GR、SG、WG):
活性成分:0.5〜60%、好ましくは5〜60%、より好ましくは50〜60%
固形担体/希釈剤:99.5〜40%、好ましくは95〜40%、より好ましくは50〜40%
【0052】
好ましい実施態様によれば、組成物は、DP、GR、WG、又はWP製剤であり、より好ましくはWG又はWP製剤(例えば、CHESS(登録商標)WG、PLENUM(登録商標)WG、HULFILL(登録商標)WG)である。ピメトロジンは、当業者が習熟している任意の標準的施用方法を用いて、ネオニコチノイド耐性虫又は有用植物の作物に施用してよい。同様に、虫耐性の制御方法について、ネオニコチノイド殺虫剤は、任意の既知の施用方法を用いて、虫/有用植物の作物に施用できる。さらに、例えば商業的に利用可能な製品の標識に提供される施用についてのアドバイスが含まれる指針が、当業界において存在してもよい。
【0053】
本発明の様々な態様及び実施態様を、実施例により、より詳細にここで例示する。当然ながら、細部の修正は本発明の範囲から逸脱しない。
【0054】
誤解を避けるために、参考文献、特許出願、又は特許が本出願の文章中に引用される場合、当該引用の全部の文章が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0055】
製剤例(全て重量による割合である)
【0056】
【表1】

【0057】
これらの溶液は、マイクロドロップ形成の適用に適する。
【0058】
【表2】

【0059】
活性成分は、ジクロロメタンに溶解され、溶液は、担体に噴霧され、そしてその後溶液は真空中で蒸発される。
【0060】
【表3】

【0061】
担体と活性成分を最初に混合することにより、すぐに使用できる状態の粉剤を得る。
【0062】
【表4】

【0063】
活性成分を、その他の製剤成分と混合し、混合物を好適なミルで粉砕し、水で希釈できる湿潤な水和剤から、所望の濃度の懸濁物を得る。
【0064】
【表5】

【0065】
活性成分を担体と混合し、当該混合物を好適なミルで粉砕することにより、すぐに使用できる粉剤を得る。
【0066】
【表6】

【0067】
活性成分を混合し、その他の製剤成分と共に粉砕し、当該混合物を水で湿らせる。当該湿った混合物を押し出し、造粒し、そして、顆粒を大気流中で乾燥させる。
【0068】
【表7】

【0069】
微粉砕した活性成分を、混合物中で、ポリエチレングリコールで湿らせたカオリンに均一にアプライする。非ダストの被覆顆粒をこの手法で得る。
【0070】
【表8】

【0071】
微粉砕した活性成分を、他の製剤成分と最初に混合し、懸濁物が得られ、これを水で希釈することにより任意の所望の濃度の懸濁物が得られる。
【0072】
【表9】

【0073】
任意の所望の濃度のエマルションは、水での希釈によりかかる濃度から作製することができる。
【0074】
【表10】

【0075】
活性成分を他の製剤成分と混合し、当該混合物を好適なミルで粉砕し、水で希釈できる水和剤から、所望の濃度の懸濁物を得る。
【0076】
【表11】

【0077】
任意の所望の濃度のエマルションは、水での希釈によりこの濃縮物から得ることができる。
【0078】
生物学的実施例
実施例B1 ウンカのピメトロジン感受性の決定
以下に概説する、IRAC(殺虫剤耐性作用委員会)感受性検査方法シリーズ(www.irac-online.orgを参照されたい)の方法5の修正バージョンを用いて、残存葉ディップアッセイを行い、トビイロウンカ(BPH、Nilaparvata lugens)の感受性があり、且つネオニコチノイド耐性群のL5若虫(20日齢)に対して試験した場合の、ピメトロジンについての致死値の平均割合を決定した。さらに、BPHによる産卵の低減も、侵入後18日目の若虫出現の平均低減割合を測定することにより計算した。
【0079】
以下の虫群を試験した。
(i)2005年インドの平野から採取したNilaparvata lugensの群で、ネオニコチノイド殺虫剤イミダクロリド対して5200倍の耐性が実証されている(インドNNI−R BPH)。
(ii)2006年ベトナムの平野から採取したNilaparvata lugensの群で、イミダクロリドに対して1900倍の耐性が実証されている(ベトナム NNI−R BPH)。
(iii)実験室Nilaparvata lugensの群で、イミダクロリドに感受性であることが実証されている(感受性BPH)。
【0080】
B1.1 アッセイ手順:
コメの苗を9cm直径のプラスティック容器に植え、栽植用培地として土を用いて生育させた。土に植えてから8週後、全てのコメの苗の最上部をハサミで切ることにより除去し、芽を25cmの高さにした。その後、各々のポットにおける土を、融解した寒天で覆い、その後それをセットとした。
【0081】
ピメトロジンの連続的希釈物(Plenum(登録商標)、25%WPの状態)を、0.05%のextravon水和剤を含有する脱イオン水中で調製した。
【0082】
コメの苗を逆さにし、そして(苗の根元が確実に溶液に到達するようにして)適切な殺虫剤溶液に20秒間浸漬することによりコメ葉にピメトロジン溶液を施用した。その後、当該試験ポットを元の状態に戻し、乾燥させた。
【0083】
試験ポットを、保持ラックに置き、プラスチック蒸気チューブで多い、その後、10匹の麻酔をかけたBPH若虫(L5期、孵化後20日)を侵入させた。その後、試験容器を25℃、16時間の光周期でインキュベートした。
【0084】
BPH若虫/成虫の致死率を、侵入から7日後に評価した。刺激を与えた後にBPHが歩いたりジャンプしたりできない場合は、死骸としてカウントした。致死率評価の直後に、全てのBPH成虫及び若虫を各々の植物から除去した。任意の新規な植物生育は、ハサミで葉を切断することにより除去された。
【0085】
その後、試験容器を25℃で16時間の光周期でインキュベートし、最初の侵入から18日後に、植物に存在するL1/L2若虫の数をカウント及び記録し、コントロールと比較した平均若虫出現率を得た。
【0086】
B1.2 結果
得られたデータを以下の表1に要約する。
表1.ネオニコチノイド感受性及び耐性BPH群の第一及び第二世代に対するピメトロジンの有効性
【0087】
【表12】

【0088】
* Abottの式(Abbott, W. S., 1925 "A method of computing the effectiveness of an insecticide." J. of Economic Entomology. 18:265-267)を用いてコントロール致死率に適合させた。
** コントロール処理に対する、若虫の平均制御%。
【0089】
ピメトロジンによる後期齢(L5)Nilaparvata lugensの制限された制御が観察され(最高試験濃度で処理後、7日で最大40%の致死率)、BPHの秀逸な制御は、BPHが産卵の阻害まで達成する。これは、処理後18日の若虫出現制御の平均割合に関するデータが示す。
【0090】
ピメトロジンとネオニコチノイドとの間の交差耐性がないことを示す、感受性群とネオニコチノイド耐性群との間のL5若虫致死率における大きな差異の証拠は存在しない。
【0091】
第二世代若虫の制御において、感受性群とネオニコチノイド耐性群との間で大きな差異は観察されない。これはまた、ネオニコチノイドとピメトロジンとの間の交差耐性がないことを示す。
【0092】
要約すると、トビイロウンカのネオニコチノイド耐性群におけるピメトロジン殺虫剤とネオニコチノイド殺虫剤との間の交差耐性は存在しにことを示す強力な証拠があり、したがって、ネオニコチノイド耐性群が存在することが知られている場合に、ピメトロジンを、この有害生物に対する制御剤として使用することができる。
【0093】
実施例B2 ネオニコチノイドに対するピメトロジン代謝交差耐性の決定
ネオニコチノイド感受性及びネオニコチノイド耐性トビイロウンカ(BPH、Nilaparvata lugens)群の代謝能力を比較し、ピメトロジンに対する代謝交差耐性の可能性を見積もった。以下の虫群を試験した。
【0094】
(i)2005年インドの平野から採取したNilaparvata lugensの群で、ネオニコチノイド殺虫剤イミダクロリド対して5200倍の耐性が実証されている(インドNNI−R BPH)。
(ii)2006年ベトナムの平野から採取したNilaparvata lugensの群で、イミダクロリドに対して1900倍の耐性が実証されている(ベトナム NNI−R BPH)。
(iii)実験室Nilaparvata lugensの群で、イミダクロリドに感受性であることが実証されている(感受性BPH)。
【0095】
B2.1 アッセイ手順
湿潤化剤として0.001%のSynperoic10/5を添加し、工業グレードのピメトロジン及びイミダクロリドを100ppmの浸漬水溶液とした。混合した生育期のホッパー群(25〜125mg)を<10秒で1mlに十分に沈め、15mlファルコンチューブに移し、採取まで回復させた。ホッパーを、利用できる食事がない状態で実験台に置いたままにし、その期間生存させた。浸漬から1、5.5、及び17時間の時点で定量化し、1処理当たり3重に各々3回実験を反復した。各々のサンプル採取時点で、1mlの50:50 アセトニトリル:水を添加し、ホッパーを洗浄し、これを2回以上反復して、ストリンジェント洗浄を確保した、その後、ホッパーを即時調製用チューブに添加し、50:50 アセトニトリル:水で均質化し、遠心分離し、そしてLCMSのため、HPLCチューブに上清を添加した。
【0096】
ピメトロジン及びイミダクロリドでの校正及びヒドロキシイミダクロリド一次代謝産物が作製され、既知の重さによりLCMSピーク面積に変換される。ヒドロキシピメトロジン一次代謝産物は、真性化合物が利用できないのでピーク面積に現れない。
【0097】
B2.2 結果
B2.2.1 イミダクロリド代謝産物
表1に示される感受性と比較して以下の倍数の差異を有し、感受性種及び耐性種は、イミダクロリド一次代謝産物の作製により明確に記述される。
【0098】
表2.量がng/ホッパーmg単位である場合、BPH種により産生されるヒドロキシイミダクロリド一次代謝物の相対量は、感受性種と比較できる比率に変換される。
【0099】
【表13】

【0100】
感受性と比較すると、代謝産物は5.5時間で、ベトナム種及びインド種における一次代謝産物の産生物よりそれぞれ27倍及び20倍の高さで最大となる。17時間後に落ちたレベルの説明として、一次代謝産物のさらなる代謝が起きる可能性がある。典型的には、これは、排出のためのより極性のある化合物を形成する、ヒドロキシル基でのグルコース結合の可能性がある。
【0101】
B2.2.2 ピメトロジン代謝産物産生
文献によると、植物、土、及び動物において、主要な代謝産物は、ヒドロキシル基の付加(+16)に起因する。したがって、この代謝産物の存在又は不存在は、ピメトロジン代謝について決定的であると考えられる。
【0102】
感受性種とピメトロジンに対して耐性種との間で、代謝産物産生の比率、又は産生される代謝産物の量に顕著な差異はなかった。これは、ネオニコチノイド感受性とピメトロジンに対して耐性種との間で差異がないバイオアッセイと相補的である。
【0103】
全ての種において、代謝産物の量は経時的に増加し、且つホッパーと洗浄(示していない)の両方において内在的に見出されたが、おそらくこれは排出によるものである。
【0104】
要約すると、分析的方法を用いて、ピメトロジンの一次代謝物の安定性におけるホッパー種間での顕著な差異は決定できなかった。反対に、感受性種と耐性種との間で、イミダクロリド一次代謝産物産生の顕著な差異が現れ、5.5時間で最大となり、典型的には>20倍であった。これは、代謝が、観察されたトビイロウンカにおける平野ネオニコチノイド耐性についての実行可能なメカニズムを作り、これはピメトロジンに対する耐性メカニズム全体を作るものではないという仮説をサポートするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネオニコチノイド殺虫剤耐性である、ウンカ科(Delphacidae)又はヨコバイ科(Cicadellidae)由来の虫を制御する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを前記ネオニコチノイド耐性虫に施用することを含んでなる方法。
【請求項2】
ネオニコチノイド殺虫耐性である、ウンカ科又はヨコバイ科由来の虫による攻撃を受け易い、及び/又は当該攻撃を受ける有用植物の作物を保護する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを当該作物及び/又は当該ネオニコチノイド耐性虫に施用することを含んでなる方法。
【請求項3】
ウンカ科又はヨコバイ科由来の虫における、1又は複数のネオニコチノイド殺虫剤への耐性を制御する方法であって、活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン及びネオニコチノイド殺虫剤を交互に、当該虫に、又は当該虫からの攻撃を受け易い、及び/又は当該攻撃を受ける有用植物の作物に施用することを含んでなる方法。
【請求項4】
前記虫が、Laodelphax属、Nilaparvata属、及び/又はSogatella属である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記虫が、Nilaparvata lugens、Laodelphax striatellus、又はSogatella furciferaである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有用植物の作物がコメである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記活性成分が、4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン二水和物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記活性成分が、農業的に許容される希釈剤又は担体をさらに含んでなる組成物の形態である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記活性成分又は組成物が、水分散性顆粒として製剤化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ネオニコチノイド耐性であるウンカ科又はヨコバイ科由来の虫を制御するための、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンの使用。
【請求項11】
前記ネオニコチノイド耐性虫が、ネオニコチノイド耐性Nilaparvata lugensである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ウンカ科又はヨコバイ科由来の虫により伝播される植物ウイルスを制御する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを、当該植物ウイルスを運搬するウンカ科又はヨコバイ科のネオニコチノイド耐性虫に施用することを含んでなる方法。
【請求項13】
植物ウイルスを運搬し、ネオニコチノイド耐性であるウンカ科又はヨコバイ科由来の虫による攻撃を受け易い、及び/又は当該攻撃を受ける有用植物の作物における、植物ウイルスを制御する方法であって、遊離形態又は農薬として許容される塩形態である活性成分4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オンを当該作物及び/又は当該虫に施用することを含んでなる方法。
【請求項14】
前記ウイルスが、ラギットスタントオリザウイルス(ragged stunt oryzavirus)又はグラッシースタントテヌイウイルス(grassy stunt tenuivirus)である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記虫が、Nilaparvata lugens、Laodelphax striatellus、又はSogatella furciferaである、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2011−524886(P2011−524886A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514108(P2011−514108)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001401
【国際公開番号】WO2009/153539
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】