説明

ネガ型とポジ型を共通に処理できる感光性平版印刷版用現像液

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、感光性平版印刷版の現像液および現像方法に関するものであり、特に、ネガ型感光性平版印刷版とポジ型感光性平版印刷版を共通して、良好に現像することのできる現像液に関するものである。
〔従来技術〕
従来、ネガ型感光性平版印刷版(以下、ネガ型PS版という)とポジ型感光性平版印刷版(以下、ポジ型PS版という)とでは、現像液の組成が異なり、それぞれの現像液でのみ、好適に現像が可能であった。かりに専用現像液でない現像液を用いて現像ができたとしても十分な性能を有する平版印刷版は得られず、ネガ型PS版とポジ型PS版を同一処方の現像液で良好に共通処理することは実質的にはできないのが現状である。
特開昭60−64351号には、一台の自動現像機でネガ型PS版とポジ型PS版を共に現像処理する共通現像方法が記載されている。しかし、この技術はそれぞれの専用現像液による現像を別々の現像ゾーンで遂次行なうものであり、同一処方の現像液で現像するものではない。
従って、それぞれの専用現像液を使用するので、液管理が面倒であり、安定した現像を長時間行なうのが困難である。
1種の現像液で共通現像を行う現像液が特開昭60−237442号に開示されている。この現像液は、エチレングリコールモノフェニルエーテルまたはエチレングリコールモノベンジルエーテルの有機溶剤、珪酸塩、アルカリ金属水酸化物、アニオン界面活性剤および水溶性還元剤からなるものである。しかし、このような現像液は非常に発泡しやすいものであり、ネガ型PS版に対しては現像速度が十分なものではなかった。一方、ポジ型PS版を現像した場合には現像ラチチュードが現像結果がきわめて変動しやすいものであり、画像部の一部が現像時に浸されて欠落しやすい状態であった。この傾向は、現像時間が少し延びた場合や、現像温度が所定の温度よりもわずかに高くなった場合により顕著であり、その結果、画像の細部が欠けてしまったり、また、印刷時の耐刷性不良の原因になることがあった。
〔発明の目的〕
本発明の目的は、ネガ型およびポジ型PS版を一種の現像液で良好に現像することのできる現像液を提供することにある。
本発明の他の目的は、現像ラチチュードの広い現像液を提供することにある。
本発明の他の目的は、発泡の少ない現像液を提供することにある。
本発明の他の目的は、ネガ型およびポジ型PS版を迅速に現像することのできる現像液を提供することにある。
〔発明の構成〕
本発明者らは、鋭意検討の結果、ネガ型PS版とポジ型PS版を共通に処理する水系アルカリ性現像液において、該現像液がアルカリ剤、水溶性還元剤、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸若しくはその塩、またはベンゼン環もしくはナフタレン環にカルボキシル基が置換した芳香族カルボン酸もしくはその塩、および非イオン型またはカチオン型の界面活性剤を含有し、pHが11.5〜13.5の範囲である現像液によって上記本発明の目的を達成することができた。以下、本発明について詳述する。
本発明の現像液が含有するアルカリ剤としては、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどのような無機アルカリ剤、モノー、ジ−またはトリエタノールアミンおよび水酸化テトラアルキルアンモニウムのような有機アルカリ剤および有機珪酸アンモニウム等が有用である。これらのアルカリ剤のうち、アルカリ金属の珪酸塩が特に好ましい。
アルカリ剤の現像液中における含有量は0.05〜20重量%の範囲が好適であり、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲である。
本発明の現像液に用いる水溶性還元剤としては有機および無機の還元剤が含まれる。
有機の還元剤としては、例えばハイドロキノン、メトール、メトキシキノン等のフェノール化合物、フェニレンジアミン、フェニルヒドラジン等のアミン化合物があり、無機の還元剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等の亜硫酸塩、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸二水素ナトリウム、亜リン酸水素二カリウム等のリン酸塩、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム等を挙げることができるが、本発明において特に効果が優れている還元剤は亜硫酸塩である。
本発明で言う水溶性還元剤の水溶性という意味の中にはアルカリ可溶性をも含むものであり、これら水溶性還元剤は0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の範囲で含有される。
本発明の現像液に含有させる炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸としては炭素数6〜20のアルカン酸が好ましく、具体的な例としては、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ベラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等があり、特に好ましいのは炭素数6〜12のアルカン酸である。また炭素鎖中に二重結合を有する脂肪酸でも、枝分れした炭素鎖のものでもよい。上記脂肪族カルボン酸は水溶性を高めるために、ナトリウムやカリウムの塩またはアンモニウム塩として用いられるのが好ましい。
芳香族カルボン酸の具体的な化合物としては、安息香酸、o−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸等であるが、これらの中でもヒドロキシナフトエ酸類は特に有効である。上記芳香族カルボン酸は水溶性を高めるためにナトリウムやカリウムの塩またはアンモニウム塩として用いるのが好ましい。
本発明に用いる現像液に添加する脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸の含有量は格別な制限はないが0.1重量%より低いと効果が十分でなく、また30重量%以上ではそれ以上の効果の改善が計れないばかりか、別の添加剤を併用する時に溶解をさまたげることがある。従って好ましくは0.1〜10重量%の添加量であり、より好ましくは0.5〜4重量%である。
さらに本発明に係わる現像液には非イオン型またはカチオン型界面活性剤を含有せしめる。
非イオン型界面活性剤としては各種の化合物を用いることができるが、大別するとポリエチレングリコール系化合物と多価アルコール系化合物に分けることができ、ポリエチレングリコール系化合物がより好ましく使用される。中でもオキシエチレン単位が3以上の繰返し構造を有し、かつHLB値(Hydrophile−Lipophile Balance)が5以上、さらに好ましくは10〜20の非イオン型界面活性剤が好適である。すなわち上記の好ましい非イオン型界面活性剤を一般式で表わすと下記の通りである。
R−O(CH2CH2O)nH







HO(C2H4O)a−(C3H5O)b−(C2H4O)cH

HO−(CH2CH2O)nH(ここでn,m,a,b,c,x,yは何れも1〜40の整数を表わす。)
上記一般式で表わされる化合物の具体例を挙げると下記の通りである。
例えばポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエイレンオクチルフェノルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンアビエチルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート、ポリオキシエチレンプロピレングリコールモノステアレート、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、ジスチレン化フェノールポリエチレンオキシド付加物、トリベンジルフェノールポリエチレンオキシド付加物、オクチルフェノールポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。
これら非イオン型界面活性剤の添加量は0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲である。
また、これら非イオン型界面活性剤の重量平均分子量は300〜50000が好ましく、特に好ましくは500〜5000の範囲である。
本発明において、非イオン型界面活性剤は単独で用いても、また2種以上を併用してもよい。
本発明に用いるカチオン型界面活性剤としては、各種の化合物があるが、有機アミン系化合物と第四級アンモニウム塩系化合物を挙げることができる。
有機アミン系化合物の例としては、ポリオキシエチレンアルキルアミン、N−アルキルプロピレンジアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミン、N−アルキルポリエチレンポリアミンジメチル硫酸塩、アルキルビグアニド、長鎖アミンオキシド、アルキルイミダゾリン、1−ヒドロキシエチル−2−アルキルイミダゾリン、1−アセチルアミノエチル−2−アルキルイミダゾリン、2−アルキル−4−メチル−4−ヒドロキシメチルオキサゾリン等がある。
第四級アンモニウム塩系化合物の例としては、長鎖第1アミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルビリジニルム塩、アルキルキノリニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、アルキルピリジニウム硫酸塩、ステアミドメチルピリジニウム塩、アシルアミノエチルジエチルアミン塩、アシルアミノエチルジエチルアンモニウム塩、アルキルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウム塩、脂肪酸ポリエチレンポリアミドアシルアミノエチルピリジニウム塩、アシルコラミノホルミルメチルピリジニウム塩、ステアロオキシメチルピリジニウム塩、脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸トリエタノールアミンギ酸塩、トリオキシエチレン脂肪酸トリエタノールアミン、脂肪酸ジブチルアミノエタノール、セチルオキシメチルピリジニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルベンジルアンモニウム塩等がある。
これらの化合物の中では、特に水溶性の第四級アンモニウム塩のカチオン型界面活性剤が効果に優れ、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、エチレンオキシド付加アンモニウム塩等を挙げることができる。またカチオン成分をくり返し単位として有する重合体も一般的にはカチオン型界面活性剤であり、効果的である。特に、親油性モノマーと共重合して得られた第四級アンモニウム塩を含む重合体は好適に用いることができる。上記カチオン型界面活性剤の添加量は非イオン型界面活性剤と同じく0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜0.3重量%の範囲である。また重量平均分子量は300〜50,000の範囲で特に好ましくは500〜5,000の範囲である。
これらのカチオン型界面活性剤を単独で用いられるが、2種以上を併用してもよい。
さらに本発明において、非イオン型界面活性剤とカチオン型界面活性剤とを併用しても本発明の効果を得ることができる。
本発明の現像液には更に添加剤を加えることがであるが、その中でも水に対する溶解度が10重量%以下の有機溶剤は特に効果的である。
水に対する溶解度が10重量%以下の有機溶剤としては、例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノブチルアセテート、乳酸ブチル、レブリン酸ブチルのようなカルボン酸エステル;エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコールのようなアルコール類;キシレンのようなアルキル置換芳香族炭化水素;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、モノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素などがある。これら有機溶媒は一種以上用いてもよい。これらの有機溶媒の中では、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテルが特に好ましい。
該有機溶剤は、ネガ型とピジ型の両PS版に対して現像性を向上するためのすぐれた添加剤であるが、同時にポジ型PS版に対しては画像部の皮膜を劣化させる欠点をも有している。ポジ型PS版は露光時にネガ型PS版のような架橋反応を起こさないため、もともと現像が過度になった場合の皮膜の劣化が大きく、有機溶剤の存在下ではさらに劣化の程度が大きくなる。本発明者らは、鋭意検討の結果、上記のごとき、ポジ型PS版の現像時の皮膜の劣化を防ぎ、かつネガ型PS版を良好に現像するために、現像液中に非イオン型又はカチオン型界面活性剤を好ましくは0.001〜10重量%の範囲で含有せしめることを見い出した。
本発明に係る現像液のpHは11.5から13.5の範囲である。このような高いpH(pH11.5以上)でネガ型PS版を現像した場合、ある品種の版では現像されていながら印刷時に汚れを生じることがある。その汚れの程度はpHに依存性がありpHが高いほど汚れやすい。このような高pHでネガ型PS版を良好に現像し、印刷時の汚れをなくすためには、現像液に亜硫酸塩を含有させることが非常に効果的であり、また、アニオン型界面活性剤の添加は、特に酸価の低い重合体を用いたネガ型PS版の現像促進に大きな効果を示す。
このような組成を持つ本発明の現像液は、前述したようにpHが11.5乃至13.5であり、これ以外のpH領域では、ネガ型PS版およびポジ型PS版に対して共通現像を行うときに、効果的な成果を得ることができない。すなわち、pHが11.5より低いとポジ型PS版の現像が不足になりがちで、またpHが13.5を越えると、ネガ型PS版の現像性が劣化する。そして残膜が生じ易くなったり、印刷時のインキ汚れの原因になることが多い。ポジ型PS版の場合には、現像が過多になり、画像細部の欠落や砂目表面の腐食を起し易くなる。
本発明の現像液の特に好ましい態様は、アルカリ剤としてアルカリ金属の珪酸塩を用い、水溶性還元剤として亜硫酸塩を用い、有機カルボン酸として炭素数6〜20のn−アルカン酸およびヒドロキシナフトエ酸から選ばれる少なくとも1種を用い、非イオン型又はカチオン型界面活性剤としてエチレンオキシド基を含む非イオン型界面活性剤及び四級アンモニウム塩を含むカチオン型界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用い、かつ該界面活性剤の含有量を0.01〜1.0重量%の範囲とする態様であり、この態様において特に本発明の効果が顕著である。
また、本発明に用いる現像液には更に現像性能を高めるために以下のような添加剤を加えることができる。例えば特開昭58−75152号公報記載のNaCl、KCl、KBr等の中性塩、特開昭59−190952号公報記載のEDTA,NTA等のキレート剤、特開昭59−121336号公報記載の〔Co(NH3)〕6Cl3等の錯体、特開昭56−142528号公報記載のビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子電解質、特開昭58−59444号公報記載の塩化リチウム等の無機リチルム化合物、特公昭50−34442号公報記載の安息香酸リチウム等の有機リチウム化合物、特開昭59−75255号公報記載のSi,Ti等を含む有機金属界面活性剤、特開昭59−84241号公報記載の有機硼素化合物が挙げられる。
本発明に使用されるPS版の感光性組成物は必須成分として感光性物質を含んでおり、感光性物質として露光またはその後の現像処理により、その物理的、化学的性質が変化するもので、例えば露光により現像液に対する溶解性に差が生じるもの、露光の前後で分子間の接着力に差が生じるもの、露光またはその後の現像処理により水および油に対する親和性に差が生じるもの、更に電子写真方式により画像部を形成できるもの、また特開昭55−166645号に記載されている多層構成のもの等が使用できる。
感光性物質の代表的なものとしては、例えば感光性ジアゾ化合物、感光性アジド化合物、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物、酸触媒で重合を起こすエポキシ化合物、酸に分解するC−O−C−基を有する化合物等が挙げられる。露光によりアルカリ可溶性に変化する代表的なポジ型のものとしてo−キシンジアジド化合物や酸分解性のエーテル化合物、エステル化合物が挙げられる。露光により溶解性が減少するネガ型のものとして芳香族ジアゾニウム塩等が挙げられる。
o−キノンジアジド化合物の具体例としては、例えば特開昭47−5303号、同48−63802号、同48−63803号、同49−38701号、同56−1044号、同56−1045号、特公昭41−11222号、同43−28403号、同45−9610号、同49−17481号、米国特許2,797,213号、同3,046,120号、同3,188,210号、同3,454,400号、同3,544,323号、同3,573,917号、同3,674,495号、同3,785,825号、英国特許1,227,602号、同1,251,345号、同1,267,005号、同1,329,888号、同1,330,932号、ドイツ特許854,890号があり、酸分解性化合物の例としては特開昭60−37549号、同60−10247号、同60−3625号などに記載されているものを挙げることができ、これらの化合物を単独あるいは組合せて感光成分として用いたPS版に対して少なくとも本発明を好ましく適用することができる。
これらの感光成分には芳香族ヒドロキシ化合物のo−キノンジアジドカルホン酸エステルまたはo−キノンジアジドカルボン酸エステルおよび芳香族アミノ化合物のo−キノンジアジドスルホン酸またはo−キノンジアジドカルボン酸アミドが包含され、また、これらo−キノンジアジド化合物を単独で使用したもの、およびアルカリ可溶性樹脂と混合し、この混合物を感光層として設けたものが含有される。
アルカリ可溶性樹脂には、ノボラック型フェノール樹脂が含まれ、具体的にはフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノールクレゾール混合ホルムアルデヒド樹脂、クレゾールキシレノール混合ホルムアルデヒド樹脂、などが含まれる。更に特開昭50−125806号に記載されているように、上記のようなフェノール樹脂に共に、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような炭素数3〜8のアルキル基で置換されたフェノールまたはクレゾールとホルムアルデヒドとの縮合物とを併用したものも適用できる。o−キノンジアジド化合物を感光成分とする感光層には、必要に応じて更に染料、可塑剤、プリントアウト性能を与える成分などの添加剤を加えることができる。
o−キノンジアジド化合物を感光成分とする感光層の単位面積当りの量は好ましくは約0.5〜7g/m2の範囲について本発明を適用できる。
本発明の方法を適用するポジ型PS版の画像露光は特に変える必要はなく常法に従えばよい。
ネガ型感光層の感光成分の代表的なものはジアゾ化合物であり、例えばジアゾニウム塩および/またはp−ジアゾフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物であるジアゾ樹脂、特公昭52−7364号に記載されているp−ジアゾフェニルアミンのフエノール塩またはフルオロカプリン酸塩等、特公昭49−48001号に記載されている3−メトキシジフェニルアミン−4−ジアゾニウムクロライドと4−ニトロジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの共重縮合物の有機溶媒可溶性塩からなるジアゾ樹脂、p−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物の2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゼンスルホン酸塩、p−ジアゾフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物のテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩等が挙げられる。これらを感光成分とするネガ型感光性平版印刷版に対して少なくとも本発明を好ましく適用できる。
これらのジアゾ化合物を単独で使用したもののほかに感光層の物性を向上させるため、種々の樹脂と混合して用いたものに対しても本発明を適用できる。かかる樹脂としては、シェラック、ポリビニルアルコールの誘導体のほかに特開昭50−118802号中に記載されている側鎖にアルコール性水酸基を有する共重合体、特開昭55−155355号に記載されているフェノール性水酸基を側鎖に持つ共重合体が挙げられる。
これらの樹脂には下記一般式で示される構造単位を少なくとも50重量%含む共重合体、 一般式

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は水素原子、メチル基、エチル基またはクロルメチル基を示し、nは1〜10の整数である。)および芳香族性水酸基を有する単量体単位を1〜80モル%、ならびにアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル単量体単位を5〜90モル%有し、10〜200の酸価を持つ高分子化合物が包含される。
本発明の現像液及び現像方法が適用されるネガ型感光性平版印刷版の感光層には、更に染料、可塑剤、プリントアウト性能を与える成分等の添加剤を加えることができる。
上記感光層の単位面積当りの量は少なくとも0.1〜7g/m2の範囲について本発明を適用できる。
前記の感光性平版印刷版に使用される支持体としては、紙、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)ラミネート紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などのような金属の板、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックのフィルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはクロームメッキが施された鋼板などが挙げられ、これらのうち特にアルミニウムおよびアルミニウム被覆された複合支持体が好ましい。
また、アルミニウム材の表面は、保水性を高め感光層と密着性を向上おさせる目的で粗面化処理されていることが望ましい。
粗面化方法としては、一般に公知のブラシ研磨法、ボール研磨法、電界エッチング、化学的エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト等の方法およびこれらの組合せが挙げられ、好ましくはブラシ研磨法、電界エッチング、化学的エッチングおよび液体ホーニングが挙げられ、これらのうちで特に電界エッチングの使用を含む粗面化方法が特に好ましい。また、電界エッチングの際に用いられる電解浴としては、酸、アルカリまたはそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられ、これらのうちで特に塩酸、硝酸またはそれらの塩を含む電解液が好ましい。さらに粗面化処理の施されたアルミニウム板は必要に応じて酸またはアルカリの水溶液にてデスマット処理される。
こうして得られたアルミニウム板は陽極酸化処理されることが望ましく、特に好ましくは、硫酸またはリン酸を含む浴で処理する方法が挙げられる。また、さらに必要に応じて封孔処理、その他弗化ジルコニウム酸カリウム水溶液への浸漬などによる表面処理を行うことができる。
また、本発明に係る現像液を用いる現像処理方法は現像処理工程の他に必要ならば現像処理工程後、現像停止処理工程(停止処理液は使い捨て方式や循環使用の方式を含む)、不感脂化処理工程の各々個々の処理工程、現像停止処理工程とそれに引き継ぐ不感脂化処理工程、現像処理工程と不感脂化処理と組合せた処理工程、或いは現像停止処理工程と不感脂化処理工程とを組合せた例えば特開昭54−8001号公報の処理工程等を含んでいてもよい。
なお、本発明におけるネガ型とポジ型PS版を同じ現像液で共通に現像する場合、現像液組成以外の条件(例えば現像温度、現像時間等)はネガ型とポジ型とで変える等任意である。
〔実施例〕
以下、具体的実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
実施例1 窒素気流下にエチレングリコールモノメチルエーテル300重量部を100℃に加熱し、この中へ2−ヒドロキシエチルメタクレート150重量部、アクリロニトリル90重量部、メチルメタクリレート79.5重量部、メタクリル酸10.5重量部及び過酸化ベンゾイル1.2重量部の混合液を2時間かけて滴下した。
滴下終了15分後にエチレングリコールモノメチルエーテル300重量部と過酸化ベンゾイル0.3重量部を加えて、そのまま4時間反応させた。反応終了後メタノールで希釈して水中に投じて共重合体を沈澱させ、70℃で真空乾燥させた。この2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(1)の酸価は21であった。
厚さ0.15mmの2Sアルミニウム板を80℃に保たれた第3りん酸ナトリウムの10%水溶液に3分間浸漬して脱脂し、ナイロンブラシで砂目立て後、60℃のアルミン酸ナトリウム3%水溶液でデスマットした。このアルミニウム板を20%硫酸中で2A/dm2の電流密度で2分間陽極酸化し、その後70℃の珪酸ナトリウムの25%水溶液で1分間処理した。
このアルミニウム板につぎの感光液を塗布し、100℃で2分間乾燥してネガ型PS版を得た。
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(1)……87重量部・p−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドの縮合物の2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゼンスルホン酸塩 ……10重量部・オイルブルー#603(オリエント科学工業株式会社製、トリフェニルメタン系油溶性染料) ……3重量部 ・2−メトキシエタノール ……600重量部・メタノール ……600重量部・エチレンジクロライド ……600重量部 乾燥塗布重量は2.5g/m2であった。
このPS版にステップウェッジと網点の入ったネガ原画を密着させ30アンペアのカーボンアーク灯で70cmの距離から40秒間画像露光した。
一方ポジ型PS版として米国特許第3,635,709号明細書の実施例1に記載されているアセトンとピロガロールの縮重合によって得られるポリヒドロキシフェニルのナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸エステル1重量部とノボラック型クレゾールホルムアルデヒド樹脂2重量部、オイルブルー#603の0.03重量部を20重量部の酢酸−2−メトキシエチレンと20重量部のメチルエチルケトンに溶解して作成した感光液を砂目立て後陽極酸化されたアルミニウム板に塗布し80℃で2分間乾燥させ乾燥塗布重量2.5g/m2のPS版を得た。このポジ型PS版にステップウェッジ原画を密着させ30アンペアのカーボンアーク灯で70cmの距離から60秒間画像露光した。
上記のごとく、露光したネガ型及びポジ型PS版を下記現像液(A)を用い、自動現像機PSP−860(小西六写真工業(株)製)で27℃,20秒の現像処理を行なった。
なお、現像液のpHは使用時にNaOHで12.90に調整した。
現像液(A)(本発明)
・珪酸ソーダJIS 3号 3.0重量部・亜硫酸カリウム 0.5重量部・3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 2.0重量部・ニッコールBO−20(日光ケミカルズ(株)社製ノニオン型界面活性剤ポリエチレンジオキシオレイルエーテル) 0.1重量部・フェニルセロソルブ 1.0重量部・水酸化カリウム 1.0重量部・水 92.5重量部 上記現像液(A)で無差別に前記ネガ型PS版及びポジ型PS版を処理したところ、何ら問題のない良好な印刷版が得られた。また、自動現像機の現像槽、水洗槽及び各液タンクにおいてほとんど発泡が見られなかった。
実施例2〜7、比較例1〜5 厚さ0.24mmのアルミニウム板を20%リン酸ナトリウム水溶液に浸漬して脱脂し、これを0.2N塩酸浴中で3A/m2の電流密度で電解研磨したのち、硫酸浴中で陽極酸化した。このとき陽極酸化量は4g/m2であった。更にメタ珪酸ナトリウム水溶液で封孔処理し、平版印刷版に用いるアルミニウム板を作製した。次に、このアルミニウム板上に次の感光液Aを塗布して、ネガ型PS版を、感光液Bを塗布してポジ型PS版を得た。塗布は回転塗布機により行い100℃で4分間乾燥した。塗布膜厚重量はどちらの版も2.5g/m2であった。
(感光液A)
・N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド:アクリロニトリル:エチルアクリルレート:メタクリル酸=27:33:41:6(重量比)の共重合体(酸価80)……5.0g・p−ジアゾジフェニルアミンのパラホルムアルデヒド縮合物のヘキサフルオロリン酸塩 ……0.5g・ジュリマーAC−10L(商品名、日本純薬(株)製、アクリル酸ポリマー) ……0.05g・酒石酸 ……0.05g・ビクトリアピュアブルーBOH(商品名、保土ヶ谷科学工業(株)製、染料)……0.1g・ノボラック樹脂(pp−3121)
(郡栄化学(株)製) ……0.15g・プルロニックL−64(商品名、旭電化(株)製、界面活性剤) ……0.005g・メチルセロソルブ ……100ml(感光液B)
・ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−(2)−5−スルホン酸クロライドとレゾルシン−ベンズアルデヒド樹脂との縮合物 ……3.5g・m−クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂“MP−707"(郡栄化学工業(株)製) ……9g・ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−(2)−4−スルホン酸クロライド ……0.15g・ビクトリアピュアブルーBOH(商品名、保土ヶ谷科学工業(株)製、染料)……0.2g・メチルセロソルブ ……100g このようにして得られた版を濃度差0.15のステップウェッジを通して2Kwメタルハライドランプを用いて露光した。その後、表1の現像液を用い自動現像機にて30℃で現像時間を変化させて現像処理したところ表2の結果を得た。
なお、現像液のpHは添加剤を加えた後、使用直前に10%NaOHあるいはIN−HClで12.85に調整した。
表2において、N版はネガ型PS版を、P版はポジ型PS版を表し、また階調性は現像インキSPO−1(小西六写真工業(株)製)をのせてベタ段数とクリアー段数の差を評価した結果である。また、オーバー現像性は、ポジ型PS版に対して、標準現像(ここではクリアー5段)の倍の時間で現像した場合の画像を評価したものである。






表2に示す結果から明らかなように、本発明の現像液は、従来の現像液よりもネガ型PS版、ポジ型PS版とも迅速に現像することができ、しかも現像のラチチュードが広く、発泡が少ない。また、本発明の現像液のうち、有機カルボン酸として3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を含有する現像液が特に優れている。
一方、比較例(1)の現像液では有機カルボン酸を含まないためネガ型PS版の現像性が極端に不良であった。比較例(2)の現像液では有機カルボン酸と非ニオン型界面活性剤を含まないかわりに、アニオン型界面活性剤を含有するものであるが、このものはネガ型PS版に対してやや現像不良であり、ポジPS型に対してはオーバー現像時に細部の画像が欠落しやすいものであった。比較例(3)の現像液では印刷時にネガのPS版が汚れた生じ、実用上問題を生じた。
〔発明の効果〕
本発明により、ネガ型PS版とポジ型PS版を一つの現像液で現像する場合(例えば、自動現像機を用いて同じ現像液でネガ型とポジ型のPS版を無差別に現像する場合)の現像性、印刷性能及び現像速度が改良される。しかも、本発明の現像液はほとんど発泡がないため作業性にすぐれている。
なお、通常、迅速現像には現像液を濃くしたり、処理温度を高くして行なうか、あるいは、有機溶剤のような現像促進効果のある添加剤を加える方法があるが、どの方法をとっても現像ラチチュードが狭く、安定した良好な画像を得るのが従来は困難であった。しかし、本発明では迅速現像を行なっても安定して良好な画像を得ることができる。
また、ポジ型PS版の現像において画像部が侵されることがしばしばあり、わずかな現像過多においても画像が欠落したり皮膜がうすくなったりすることが起こり、このような現像は特に現像液が有機溶剤を含有するときに顕著であるが、本発明によれば、有機溶剤の存在下でさえも良好に共通現像することが可能にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ネガ型感光性平版印刷版およびポジ型感光性平版印刷版を共通に処理する水系アルカリ性現像液において、該現像液がアルカリ剤、水溶性還元剤、炭素原子数6〜20の脂肪族カルボン酸若しくはその塩、またはベンゼン環もしくはナフタレン環にカルボキシル基が置換した芳香族カルボン酸もしくはその塩、および非イオン型またはカチオン型の界面活性剤を含有し、pHが11.5〜13.5の範囲であることを特徴とする感光性平版印刷版用現像液。
【請求項2】前記アルカリ剤がアルカリ金属の珪酸塩であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の現像液。
【請求項3】前記還元剤が亜硫酸塩であることを特徴とする特許請求の範囲第1項または第2項記載の現像液。
【請求項4】前記非イオン型またはカチオン型の界面活性剤の添加量が0.001〜5重量%の範囲であることを特徴とする特許請求の範囲第1項、第2項または第3項記載の現像液。
【請求項5】前記現像液が有機溶剤を含有することを特徴とする特許請求の範囲第1項、第2項、第3項または第4項記載の現像液。

【特許番号】第2514350号
【登録日】平成8年(1996)4月30日
【発行日】平成8年(1996)7月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−33887
【出願日】昭和62年(1987)2月16日
【公開番号】特開昭63−200154
【公開日】昭和63年(1988)8月18日
【出願人】(999999999)コニカ株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭60−237442(JP,A)
【文献】特開昭61−109052(JP,A)
【文献】特開昭58−9143(JP,A)
【文献】特開昭61−18944(JP,A)