ネガ型パターン形成方法
【解決手段】酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を基板に塗布し、塗布後加熱処理をして作製したレジスト膜を高エネルギー線で露光し、露光後加熱処理を施した後に、有機溶剤を含有する現像液によりレジスト膜の未露光部分を選択的に溶解させるネガ型パターン形成方法。
【効果】本発明の特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物を有機溶剤ネガ現像と組み合わせることで表面難溶層の形成を防ぎ、微細トレンチパターンやホールパターンの広い焦点深度を得ることが可能となる。
【効果】本発明の特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物を有機溶剤ネガ現像と組み合わせることで表面難溶層の形成を防ぎ、微細トレンチパターンやホールパターンの広い焦点深度を得ることが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のレジスト組成物を用いて、成膜、露光後に加熱することにより、光酸発生剤より発生した酸を触媒とする脱保護反応を行い、未露光部分を溶解し、露光部分を溶解しない有機溶剤による現像を行うネガ型パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入され、これによって高速スキャンが可能となり、NA1.3級のレンズによって45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低エッジラフネス(LER、LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
32nmノードのもう一つの候補の高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
ラインパターンに比べてホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACSTM法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、ホールシュリンク法ではホールのサイズは縮小可能であるがピッチを狭くすることはできない。
ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明によりX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト組成物を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンの隙間よりホールパターンを形成する方法(非特許文献1:Proc. SPIE Vol. 5377, p.255(2004))が提案されている。高コントラストなダイポール照明によるX、Yラインを組み合わせることによって広いマージンでホールパターンを形成できるが、上下に組み合わされたラインパターンを寸法精度高くエッチングすることはむずかしい。X方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクとY方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクを組み合わせてネガ型レジスト膜を露光してホールパターンを形成する方法が提案されている(非特許文献2:IEEE IEDM Tech. Digest 61(1996))。但し、架橋型ネガ型レジスト膜は超微細ホールの限界解像度がブリッジマージンで決まるために、解像力がポジ型レジスト膜に比べて低い欠点がある。
【0008】
X方向のラインとY方向のラインの2回露光を組み合わせて露光し、これを画像反転によってネガパターンにすることによって形成されるホールパターンは、高コントラストなラインパターンの光を用いることによって形成が可能であるために、従来の方法よりもより狭ピッチでかつ微細なホールを開口できる。
【0009】
非特許文献3(Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N(2009))では、以下3つの方法による画像反転によるホールパターンの作製が報告されている。
即ち、ポジ型レジスト組成物のX、Yラインのダブルダイポールの2回露光によりドットパターンを作製し、この上にLPCVDでSiO2膜を形成し、O2−RIEでドットをホールに反転させる方法、加熱によってアルカリ可溶で溶剤不溶になる特性のレジスト組成物を用いて同じ方法でドットパターンを形成し、この上にフェノール系のオーバーコート膜を塗布してアルカリ現像によって画像反転させてホールパターンを形成する方法、ポジ型レジスト組成物を用いてダブルダイポール露光、有機溶剤現像による画像反転によってホールを形成する方法である。
【0010】
ここで、有機溶剤現像によるネガパターンの作製は古くから用いられている手法である。環化ゴム系のレジスト組成物はキシレン等のアルケンを現像液として用いており、ポリ−t−ブトキシカルボニルオキシスチレンベースの初期の化学増幅型レジスト組成物はアニソールを現像液としてネガパターンを得ていた。
【0011】
近年、有機溶剤現像が再び脚光を浴びている。ポジティブトーンでは達成できない非常に微細なトレンチパターンやホールパターンをネガティブトーンの露光で解像するために、解像性の高いポジ型レジスト組成物を用いた有機溶剤現像でネガパターンを形成するのである。更に、アルカリ現像と有機溶剤現像の2回の現像を組み合わせることにより、2倍の解像力を得る検討も進められている。
有機溶剤によるネガティブトーン現像用のArFレジスト組成物としては、従来型のポジ型ArFレジスト組成物を用いることができ、特許文献1〜6(特開2008−281974号公報、特開2008−281975号公報、特開2008−281980号公報、特開2009−53657号公報、特開2009−25707号公報、特開2009−25723号公報)にパターン形成方法が示されている。
【0012】
しかし、一般にアルカリ水溶液によるポジ型現像に比べて、有機溶剤によるネガ型現像の溶解コントラストは低く、アルカリ現像液の場合、未露光部と露光部のアルカリ溶解速度の割合は1,000倍以上の違いがあるが、有機溶剤現像の場合は10倍程度の違いしかない。ネガ型現像の場合、溶解コントラストの不足はレジスト膜表層の難溶化に繋がるため、トレンチパターンやホールパターンの閉口による焦点深度(DOF)の低下を招き易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−281974号公報
【特許文献2】特開2008−281975号公報
【特許文献3】特開2008−281980号公報
【特許文献4】特開2009−53657号公報
【特許文献5】特開2009−25707号公報
【特許文献6】特開2009−25723号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5377, p.255(2004)
【非特許文献2】IEEE IEDM Tech. Digest 61(1996)
【非特許文献3】Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、有機溶剤現像における表面難溶化を防ぐことができるレジスト組成物を用いることで、トレンチパターンやホールパターンについて広い焦点深度が得られるネガ型パターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物が、有機溶剤現像において高い解像性と良好なパターン形状を示し、トレンチパターンやホールパターンについて広い焦点深度特性を示すことを知見した。
【0017】
本発明は、下記のネガ型パターン形成方法を提供する。
〔1〕
酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を基板に塗布し、塗布後加熱処理をして作製したレジスト膜を高エネルギー線で露光し、露光後加熱処理を施した後に、有機溶剤を含有する現像液によりレジスト膜の未露光部分を選択的に溶解させることを特徴とするネガ型パターン形成方法。
〔2〕
高分子化合物[A]に含まれる酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする〔1〕に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。)
〔3〕
上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする〔2〕に記載のパターン形成方法。
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。)
〔4〕
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化3】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。)
〔5〕
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(4)で表される構造であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化4】
(式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。)
〔6〕
高分子化合物[A]が、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基から選ばれる極性官能基を有する繰り返し単位を含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔7〕
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上の有機溶剤を含有し、これら有機溶剤の総濃度が現像液総量に対して60質量%以上であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔8〕
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物を有機溶剤ネガ現像と組み合わせることで表面難溶層の形成を防ぎ、微細トレンチパターンやホールパターンの広い焦点深度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るパターニング方法を説明するもので、(A)は基板上にフォトレジスト膜を形成した状態の断面図、(B)はフォトレジスト膜に露光した状態の断面図、(C)は有機溶剤で現像した状態の断面図である。
【図2】波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。
【図3】同Y方向ラインの光学像を示す。
【図4】図3のY方向ラインと図2のX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージを示す。
【図5】格子状のパターンが配されたマスクを示す。
【図6】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状パターンの光学像である。
【図7】正四角形のドットパターンが配置されたマスクである。
【図8】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターン光学像コントラストである。
【図9】ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置したマスクを示す。
【図10】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図9のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図11】ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に太いドットを配置したマスクを示す。
【図12】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図11のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図13】格子状パターンが配列されていないマスクを示す。
【図14】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図13のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図15】X方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図16】Y方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図17】X方向とY方向の両方のラインのコントラストを向上させるクロスポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、記述中の一般式において、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得る場合があるが、その場合、一つの平面式あるいは立体異性体の式で立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0021】
本発明に使用されるレジスト組成物は、上述したようにカルボキシル基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)と、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]を含む。ここで、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)としては、カルボキシル基が保護された構造を1つ、又は2つ以上有し、酸の作用により保護基が分解し、カルボキシル基が発生するものであれば特に限定されるものではないが、下記一般式(1)で表される構造の繰り返し単位が好ましい。
【0022】
【化5】
上記式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。
【0023】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位として、以下の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化6】
【0024】
【化7】
(式中、R1、R2、R3の定義は上記と同様。)
【0025】
また、上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3は、酸の作用により分解し、カルボキシル基を発生させるものであれば何れであってもよく、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシメチル基、又は(L2)〜(L8)で示される3級アルキル基を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【化8】
【0026】
上記式中、破線は結合手を示す(以下、同様)。また、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【化9】
【0027】
RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するRL01とRL02、RL01とRL03、又はR02とRL03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0028】
RL04、RL05、RL06はそれぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0029】
RL07は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、m’は0又は1、n’は0,1,2,3のいずれかであり、2m’+n’=2又は3を満足する数である。
【0030】
RL08は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、又はRL15とRL16は互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するRL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、又はRL15とRL16は、炭素数1〜15の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09とRL11、RL11とRL17、又はRL15とRL17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0031】
RL19は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
【0032】
RL20は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Xはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL21、RL22はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL21とRL22は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。pは1又は2を示す。
【0033】
RL23は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Yはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL24、RL25はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL24とRL25は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0034】
RL26は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Zはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL27、RL28はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL27とRL28は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。
【0035】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化10】
【0036】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0037】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基が例示できる。
【化11】
【0038】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0039】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化12】
【0040】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0041】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0042】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化13】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0043】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化14】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0044】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0045】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化15】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0046】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化16】
【0047】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化17】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化18】
【0048】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化19】
【0049】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】
【0050】
また、酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることが特に好ましい。
【化21】
上記式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。
【0051】
上記一般式(2)で表される酸不安定基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化22】
【0052】
本発明のレジスト組成物に含まれる高分子化合物[A]は、酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)のほか、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)を含有する。
【0053】
これらの含窒素単位は光酸発生剤より発生した酸を捕捉し、酸拡散を抑制するクエンチャーとしての機能を示す。更に、クエンチャーがベース高分子化合物に結合されていることにより、酸拡散のみならず、クエンチャー拡散も抑制され、潜像コントラストの劣化を防ぐことができる。また、ベース高分子化合物に結合しているクエンチャーはレジスト膜表層から揮発しないため、ネガ現像における表面難溶化を防ぐことができる。
【0054】
繰り返し単位(a2)として好ましい構造は、下記一般式(3)又は(4)で表される構造である。
【化23】
上記式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。
【化24】
上記式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。
【0055】
上記一般式(3)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化25】
(式中、R5の定義は上記と同様。)
【0056】
上記一般式(4)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化26】
(式中、R8の定義は上記と同様。)
【0057】
上記高分子化合物[A]は、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0058】
カルボキシル基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(1)の具体例として挙げた構造のカルボキシル基が酸不安定基で保護されていないものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
水酸基を有する繰り返し単位及びカルボキシル基を有する繰り返し単位としては、以下の構造を具体例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化27】
(式中、R14は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。)
【0060】
シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位の具体例として以下の構造を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化28】
【0061】
【化29】
(式中、R15は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。)
【0062】
高分子化合物[A]は、更に下記一般式(p1)、(p2)、(p3)のいずれかで表される構造のスルホニウム塩を含んでもよい。
【化30】
(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又は水酸基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又は水酸基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
【0063】
上記高分子化合物[A]を構成する上記の各繰り返し単位のモル比について、酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)の合計量を[a1]、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)の合計量を[a2]、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位の合計量を[a3]、上記一般式(p1)〜(p3)のいずれかで表される構造のスルホニウム塩単位の合計量を[p]とした場合、0.1≦[a1]≦0.995、0.005≦[a2]≦0.2、0≦[a3]≦0.8、0≦[p]≦0.2を共に満たすことが好ましく、0.2≦[a1]≦0.7、0.01≦[a2]≦0.1、0.2≦[a3]≦0.7、0≦[p]≦0.1を共に満たすことが特に好ましい(ここで、[a1]+[a2]+[a3]+[p]=1である。)。
【0064】
上記高分子化合物[A]の重量平均分子量Mwと数平均分子量との比、即ち分散度(Mw/Mn)は特に制限されないが、1.0〜3.0の狭い分子量分布の場合、酸拡散が抑制され、解像度が向上するために好ましい。また、上記高分子化合物[A]の分子量は、通常、重量平均分子量Mnが3,000〜100,000であり、好ましくは5,000〜50,000である。なお、本明細書において記載する数平均分子量及び重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0065】
本発明に用いられるレジスト組成物は、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)[B]、及び有機溶剤[C]を含む。
【0066】
光酸発生剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等があり、これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0067】
光酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されているものが挙げられる。
【0068】
有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類及びその混合溶剤が挙げられる。
【0069】
本発明に使用されるレジスト組成物は、上記高分子化合物[A]、光酸発生剤[B]、有機溶剤[C]を必須成分とするが、更に必要に応じて、クエンチャー成分、界面活性剤、溶解制御剤、アセチレンアルコール類から選ばれる1種又は複数種を含んでもよい。
【0070】
クエンチャー成分とは酸発生剤より発生した酸を捕捉し失活させる機能を有する成分であり、適量加えることにより、感度を調整でき、また、溶解コントラストの向上及び未露光部への酸拡散抑制により解像度が向上することが知られている。上記高分子化合物[A]に含まれる繰り返し単位(a2)がクエンチャーとして機能し得るが、これとは別に下記に例示されるクエンチャー成分を添加することにより、レジスト感度の制御やパターン形状の調整に有効な場合がある。
【0071】
クエンチャー成分の例としては、塩基性化合物を挙げることができ、具体的には特開2008−111103号公報の段落[0148]〜[0163]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する含窒素有機化合物を挙げることができる。これら塩基性化合物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部とすることが好ましい。
【0072】
また、弱酸を共役酸とするアニオンを有するオニウム塩化合物をクエンチャーとして用いることができ、そのクエンチ機構は、酸発生剤より発生した強酸が塩交換反応によりオニウム塩に変わるという現象に基づく。塩交換により発生した弱酸ではベース樹脂に含まれる酸不安定基の脱保護反応は進行しないため、この系における弱酸オニウム塩化合物はクエンチャーとして機能したことになる。オニウム塩クエンチャーとしては、例えば、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして挙げることができ、これらはα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸を発生する酸発生剤と併用した場合にクエンチャーとして機能し得る。また、オニウム塩クエンチャーがスルホニウム塩やヨードニウム塩のように光分解性を有する場合、光強度が強い部分のクエンチ能が低下し、これによって溶解コントラストが向上するため、有機溶剤現像によるネガ型パターン形成において、パターンの矩形性が向上する。オニウム塩化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.05〜20質量部、特に0.2〜10質量部とすることが好ましい。
【0073】
また、上記の含窒素有機化合物やオニウム塩化合物等のクエンチャー成分を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0074】
界面活性剤としては特開2008−111103号公報の段落[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類としては特開2008−122932号公報の段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で任意とすることができる。
【0075】
また、スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この添加剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような添加剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報に例示されている。レジスト組成物に添加される撥水性向上剤は、有機溶剤を含む現像液に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、アルカリ水溶液に対する溶解性が良好なだけでなく、有機溶剤への溶解性も良好である。また、撥水性の添加剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、露光後加熱処理(ポストエクスポージャーベーク:以下、PEBと記す)中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。撥水性向上剤の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0076】
本発明のレジストパターン形成方法の説明図を図1に示す。この場合、図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、塗布後露光前に加熱処理(ポストアプライドベーク:以下、PABと記す)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0077】
次いで、図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUVが挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、PAB後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。
【0078】
液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するために露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、PAB後のレジスト膜上に保護膜を形成してもよい。
液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させたものが好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のモノマーから得られるものが挙げられる。保護膜は有機溶剤を含む現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤を含む現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0079】
保護膜形成用組成物にアミン化合物又はアミン塩を配合、あるいはアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物を用いることは、レジスト膜の露光部から発生した酸の未露光部分への拡散を制御し、ホールの開口不良を防止する効果が高い。アミン化合物を添加した保護膜材料としては特開2008−3569号公報に記載の材料、アミノ基又はアミン塩を共重合した保護膜材料としては特開2007−316448号公報に記載の材料を用いることができる。アミン化合物、アミン塩としては、上記レジスト組成物添加用の塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物、アミン塩の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。
【0080】
レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。PEB中に露光部から蒸発した酸が未露光部に付着し、未露光部分の表面の保護基を脱保護させると、現像後のホールの表面がブリッジして閉塞する可能性がある。特にネガティブ現像におけるホールの外側は、光が照射されて酸が発生している。PEB中にホールの外側の酸が蒸発し、ホールの内側に付着するとホールが開口しないことがある。酸の蒸発を防いでホールの開口不良を防ぐために保護膜を適用することは効果的である。更に、アミン化合物又はアミン塩を添加した保護膜は、酸の蒸発を効果的に防ぐことができる。
【0081】
このように、保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとしてアミノ基又はアミン塩を有する化合物を添加した材料、あるいは前記高分子化合物中にアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した材料をベースとして炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料を用いることが好ましい。
【0082】
炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル系溶剤としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0083】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、特に10〜100mJ/cm2程度とすることが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃で1〜5分間、好ましくは80〜120℃で1〜3分間PEBを施す。
【0084】
更に、図1(C)に示されるように、有機溶剤を含む現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンが基板上に形成される。
上記有機溶剤を含む現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等のエステル類などを好ましく用いることができる。
これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの有機溶剤の総量は、現像液総量の60質量%以上であり、好ましくは80〜100質量%である。なお、これらの有機溶剤の総量が現像液総量の100質量%未満である場合、その他の有機溶剤を含んでもよく、具体的にはオクタン、デカン、ドデカン等のアルカン類、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類などが挙げられる。
また、上記現像液は、界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤としては前述のレジスト組成物に添加してもよいものと同様の具体例が挙げられる。
【0085】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0086】
具体的には、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの溶剤に加えて、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【0087】
トレンチパターン形成において、ネガティブトーン現像は、ポジティブトーン現像よりも高コントラストの光学像を形成できる場合が多い。ここでトレンチパターンとは、ラインアンドスペースパターンにおけるスペース部分がライン部分の寸法幅より狭いパターンを指し、スペース部とスペース部の間隔が無限に離れた場合、即ちライン幅が無限に広い場合が孤立トレンチに相当する。特にトレンチ幅(スペース幅)が微細になるほど、マスク上のラインパターン像を反転しトレンチを形成させるネガティブトーン現像は解像性の点で有利となる。
【0088】
ネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する方法は、マスクデザインによる分類により、以下の3通りの方法に集約される。
(i)ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを用い、ドット部分をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(ii)格子状遮光パターンが配置されたマスクを用い、格子の交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(iii)ライン状の遮光パターンが配置されたマスクを用いて2回の露光を行う方法であって、1回目の露光と2回目の露光のライン配列の向きを変えることでラインが交差するように重ねて露光し、ラインの交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
【0089】
上記(i)の方法について、ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを図7に例示する。この方法において、露光時の照明条件は特に限定されないが、図17に示されるアパチャー形状のクロスポール照明(4重極照明)が狭ピッチ化のために好ましく、これにX−Y偏光照明又は円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせて更にコントラストを向上させることが可能である。
【0090】
上記(ii)の方法について、格子状遮光パターンが配置されたマスクを図5に例示する。(i)の方法と同様、クロスポール照明及び偏光照明と組み合わせることが狭ピッチの解像性向上の点で好ましい。
【0091】
図8にNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターンが配置されたマスクにおける光学像コントラストを示す。また、図6にNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状ラインパターンの光学像を示す。前者のドットパターンを利用する場合よりも後者の格子状パターンを利用する場合の方が、光の強度が低下するためにレジストの感度が低下する欠点があるものの、光学コントラストが向上するという利点がある。
【0092】
上記(ii)の方法において、更に透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクを用い、格子状のシフター格子の交点を現像後にホールパターンとする方法が、光学コントラストが向上することから好ましい。
【0093】
上記(iii)の方法について、図15、図16に示されるアパチャー形状のダイポール照明(2重極照明)を用い、X、Y方向のラインパターンを2回に分けて露光し、光学像を重ねることにより、上記(i)及び(ii)の方法に比べて、更に高いコントラストを得ることができる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。
【0094】
図2は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。また、図3は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのY方向ラインの光学像を示す。色が濃い方が遮光部分、白い方が光の強い領域であり、白と黒のコントラスト差がはっきりしており、特に強い遮光部分が存在することが示されている。図4は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い黒い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンとつながり易いが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上し、強く遮光された小さな円が存在することが示されている。
【0095】
上記(iii)の2回露光する方法は、(i)や(ii)の1回露光による方法に比べてスループットが低下するものの、光学コントラストが高いことから、微細なパターンを寸法均一性よく形成でき、狭ピッチ化においても有利である。1回目のラインと2回目のラインがなす角度は90度が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが1枚のマスクに有するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能である。また、1枚のマスクを用いてX方向とY方向のコントラストを強調した2回の連続した露光は、現在の市販のスキャナーで行うことが可能である。
【0096】
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成は困難である。密集パターンのコントラストは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によって向上させることができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0097】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはレジスト組成物の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、レジスト組成物の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。レジスト組成物の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p.171(2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ずれが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0098】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転の有機溶剤現像で形成するためには、格子状の遮光パターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いることが有効である。
【0099】
上記(ii)の方法において、図9に示すようなハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、あるいは図11に示すようなハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、ランダムピッチのホールパターンを形成することができる。
【0100】
ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、図9に示すようにパターンを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど太いライン(図9では幅40nm)、密集部分では幅30nmのラインが配置されている。密集パターンよりも孤立パターンの方が光の強度が弱くなるために、太いラインが用いられる。密集パターンの端の部分も光の強度がやや低下するために、密集部分の中心よりもやや幅広の32nmのラインが宛われている。
【0101】
図9のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを図10に示す。黒い遮光部分にポジネガ反転によってホールが形成される。ホールが形成されるべき場所以外にも黒点が見られるが、黒点のサイズは小さいために、実際には殆ど転写されない。不必要な部分の格子ラインの幅を狭くしたりする等の更なる最適化によって、不必要なホールの転写を防止することが可能である。
【0102】
同じく格子状の遮光パターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、図11に示すようにドットを形成したい部分に太いドットを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど大きなドット(図11では一辺90nm)、密集部分では一辺55nmの四角状のドットが配置されている。ドットの形状は正四角形でも、長方形、菱形、5角形、6角形、7角形、8角形以上の多角形、円形でも構わない。図11のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを図12に示す。図10に比べてもほぼ同等の黒い遮光部分が存在し、ポジネガ反転によってホールが形成されることが示されている。
【0103】
図13に示されるような格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合、図14に示されるように黒い遮光部分は現れない。この場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、下記例において、数平均分子量及び重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0105】
レジスト組成物の調製
本発明のレジスト組成物を下記表1に示す組成で配合して溶剤に溶解させ、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過したレジスト溶液を調製した(Resist−1〜15)。また、同様の方法で、下記表2に示す組成の比較例のレジスト組成物を調製した(Resist−16〜18)。表1,2中のベース樹脂(Polymer1〜18)の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を下記表3〜5に示す。表3〜5中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。
また、表1,2中の高分子添加剤(PA−1〜3)は液浸露光に適するレジスト膜表面の撥水性を得るために添加した。これら高分子添加剤の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をそれぞれ下記表6に示す。表6中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。
また、表1,2中の光酸発生剤(PAG−1〜4)の構造を下記表7に、表1,2中のクエンチャー成分(Q−1〜6)の構造を下記表8に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
なお、表1,2中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチロラクトン
また、界面活性剤A(0.1質量部)を表1,2中に示したいずれのレジスト組成物にも添加した。界面活性剤Aの構造を以下に示す。
界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化31】
【0115】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
レジストの評価
[評価方法]
上記表1,2に示したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベーク(PAB)し、レジスト膜の厚みを90nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.74、クロスポール開口35度)を用い、露光量とフォーカスを変化させながら露光を行い、その後任意の温度にて60秒間ベーク(PEB)し、その後任意の現像液により30秒間現像し、その後ジイソアミルエーテルでリンスした。使用した現像液DS−1〜3を下記に示す。
DS−1:酢酸ブチル
DS−2:2−ヘプタノン
DS−3:酢酸ブチル/安息香酸メチルの質量比1:1混合溶剤
【0116】
また、マスクはバイナリーマスクであり、マスク上デザインが55nmドット/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンについて、レジスト上に形成された反転パターンのホールパターンを電子顕微鏡にて観察した。ホール内径が50nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とし、最適露光量におけるパターン断面形状を電子顕微鏡にて観察し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン側壁の垂直性が高い。好ましい形状。
不良:表層部が閉塞気味(T−トップ形状)又はパターン側壁が傾斜した逆テーパー形状
(表層部に近いほどライン幅大)。好ましくない形状。
【0117】
また、最適露光量においてホールパターンが解像しているフォーカス範囲を求め、焦点深度(DOF(nm))とした。DOFの値が大きいほど、フォーカス変動に対する許容マージンが広く好ましい。
【0118】
また、比較例として、数種のレジスト組成物について、上記の有機溶剤ネガ現像と同様の方法にて露光、PEBまで行い、その後2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を現像液とするポジ型現像を行った。マスクは上記同様にバイナリーマスクであるが、マスク上デザインは55nmホール/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンであり、レジスト上に形成されたホールパターンを電子顕微鏡にて観察した。上記の有機溶剤ネガ現像と同様の基準において、パターン形状とDOFの評価を行った。
【0119】
[評価結果]
上記表1中の本発明のレジスト組成物を評価した際の条件(PEB温度及び現像液)及び評価結果を下記表9に示す。また、上記表2中の比較例のレジスト組成物を評価した際の条件(PEB温度及び現像液)及び評価結果を下記表10に示す。また、比較例プロセスとしてのTMAHポジ型現像時の評価結果も表10に示す。
【0120】
【表9】
【0121】
【表10】
【0122】
表9,10の結果より、特定の高分子化合物をベース樹脂として用い、光酸発生剤及び有機溶剤と組み合わせた本発明のレジスト組成物を有機溶剤ネガ型現像することによって、良好なパターン形状と広い焦点深度が得られることがわかった。
【0123】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0124】
10 基板
20 被加工基板
30 中間介在層
40 レジスト膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のレジスト組成物を用いて、成膜、露光後に加熱することにより、光酸発生剤より発生した酸を触媒とする脱保護反応を行い、未露光部分を溶解し、露光部分を溶解しない有機溶剤による現像を行うネガ型パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められている中、現在汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)もしくはi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトリソグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの検討が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのF2リソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF2単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、F2リソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入され、これによって高速スキャンが可能となり、NA1.3級のレンズによって45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低エッジラフネス(LER、LWR)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
32nmノードのもう一つの候補の高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。
【0006】
ここで最近注目を浴びているのは1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスである。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工して初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、下層のハードマスクをドライエッチングで加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光しハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0007】
ラインパターンに比べてホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACSTM法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、ホールシュリンク法ではホールのサイズは縮小可能であるがピッチを狭くすることはできない。
ポジ型レジスト膜を用いてダイポール照明によりX方向のラインパターンを形成し、レジストパターンを硬化させ、その上にもう一度レジスト組成物を塗布し、ダイポール照明でY方向のラインパターンを露光し、格子状ラインパターンの隙間よりホールパターンを形成する方法(非特許文献1:Proc. SPIE Vol. 5377, p.255(2004))が提案されている。高コントラストなダイポール照明によるX、Yラインを組み合わせることによって広いマージンでホールパターンを形成できるが、上下に組み合わされたラインパターンを寸法精度高くエッチングすることはむずかしい。X方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクとY方向ラインのレベンソン型位相シフトマスクを組み合わせてネガ型レジスト膜を露光してホールパターンを形成する方法が提案されている(非特許文献2:IEEE IEDM Tech. Digest 61(1996))。但し、架橋型ネガ型レジスト膜は超微細ホールの限界解像度がブリッジマージンで決まるために、解像力がポジ型レジスト膜に比べて低い欠点がある。
【0008】
X方向のラインとY方向のラインの2回露光を組み合わせて露光し、これを画像反転によってネガパターンにすることによって形成されるホールパターンは、高コントラストなラインパターンの光を用いることによって形成が可能であるために、従来の方法よりもより狭ピッチでかつ微細なホールを開口できる。
【0009】
非特許文献3(Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N(2009))では、以下3つの方法による画像反転によるホールパターンの作製が報告されている。
即ち、ポジ型レジスト組成物のX、Yラインのダブルダイポールの2回露光によりドットパターンを作製し、この上にLPCVDでSiO2膜を形成し、O2−RIEでドットをホールに反転させる方法、加熱によってアルカリ可溶で溶剤不溶になる特性のレジスト組成物を用いて同じ方法でドットパターンを形成し、この上にフェノール系のオーバーコート膜を塗布してアルカリ現像によって画像反転させてホールパターンを形成する方法、ポジ型レジスト組成物を用いてダブルダイポール露光、有機溶剤現像による画像反転によってホールを形成する方法である。
【0010】
ここで、有機溶剤現像によるネガパターンの作製は古くから用いられている手法である。環化ゴム系のレジスト組成物はキシレン等のアルケンを現像液として用いており、ポリ−t−ブトキシカルボニルオキシスチレンベースの初期の化学増幅型レジスト組成物はアニソールを現像液としてネガパターンを得ていた。
【0011】
近年、有機溶剤現像が再び脚光を浴びている。ポジティブトーンでは達成できない非常に微細なトレンチパターンやホールパターンをネガティブトーンの露光で解像するために、解像性の高いポジ型レジスト組成物を用いた有機溶剤現像でネガパターンを形成するのである。更に、アルカリ現像と有機溶剤現像の2回の現像を組み合わせることにより、2倍の解像力を得る検討も進められている。
有機溶剤によるネガティブトーン現像用のArFレジスト組成物としては、従来型のポジ型ArFレジスト組成物を用いることができ、特許文献1〜6(特開2008−281974号公報、特開2008−281975号公報、特開2008−281980号公報、特開2009−53657号公報、特開2009−25707号公報、特開2009−25723号公報)にパターン形成方法が示されている。
【0012】
しかし、一般にアルカリ水溶液によるポジ型現像に比べて、有機溶剤によるネガ型現像の溶解コントラストは低く、アルカリ現像液の場合、未露光部と露光部のアルカリ溶解速度の割合は1,000倍以上の違いがあるが、有機溶剤現像の場合は10倍程度の違いしかない。ネガ型現像の場合、溶解コントラストの不足はレジスト膜表層の難溶化に繋がるため、トレンチパターンやホールパターンの閉口による焦点深度(DOF)の低下を招き易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−281974号公報
【特許文献2】特開2008−281975号公報
【特許文献3】特開2008−281980号公報
【特許文献4】特開2009−53657号公報
【特許文献5】特開2009−25707号公報
【特許文献6】特開2009−25723号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Proc. SPIE Vol. 5377, p.255(2004)
【非特許文献2】IEEE IEDM Tech. Digest 61(1996)
【非特許文献3】Proc. SPIE Vol. 7274, p.72740N(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、有機溶剤現像における表面難溶化を防ぐことができるレジスト組成物を用いることで、トレンチパターンやホールパターンについて広い焦点深度が得られるネガ型パターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物が、有機溶剤現像において高い解像性と良好なパターン形状を示し、トレンチパターンやホールパターンについて広い焦点深度特性を示すことを知見した。
【0017】
本発明は、下記のネガ型パターン形成方法を提供する。
〔1〕
酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を基板に塗布し、塗布後加熱処理をして作製したレジスト膜を高エネルギー線で露光し、露光後加熱処理を施した後に、有機溶剤を含有する現像液によりレジスト膜の未露光部分を選択的に溶解させることを特徴とするネガ型パターン形成方法。
〔2〕
高分子化合物[A]に含まれる酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする〔1〕に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。)
〔3〕
上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする〔2〕に記載のパターン形成方法。
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。)
〔4〕
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化3】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。)
〔5〕
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(4)で表される構造であることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【化4】
(式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。)
〔6〕
高分子化合物[A]が、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基から選ばれる極性官能基を有する繰り返し単位を含有する〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔7〕
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上の有機溶剤を含有し、これら有機溶剤の総濃度が現像液総量に対して60質量%以上であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔8〕
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の特定の構造の高分子化合物と光酸発生剤と有機溶剤を含むレジスト組成物を有機溶剤ネガ現像と組み合わせることで表面難溶層の形成を防ぎ、微細トレンチパターンやホールパターンの広い焦点深度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るパターニング方法を説明するもので、(A)は基板上にフォトレジスト膜を形成した状態の断面図、(B)はフォトレジスト膜に露光した状態の断面図、(C)は有機溶剤で現像した状態の断面図である。
【図2】波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。
【図3】同Y方向ラインの光学像を示す。
【図4】図3のY方向ラインと図2のX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージを示す。
【図5】格子状のパターンが配されたマスクを示す。
【図6】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状パターンの光学像である。
【図7】正四角形のドットパターンが配置されたマスクである。
【図8】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターン光学像コントラストである。
【図9】ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置したマスクを示す。
【図10】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図9のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図11】ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、ドットを形成したい部分に太いドットを配置したマスクを示す。
【図12】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図11のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図13】格子状パターンが配列されていないマスクを示す。
【図14】NA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明での図13のマスクにおける光学像のコントラストイメージを示す。
【図15】X方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図16】Y方向のラインのコントラストを向上させるダイポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【図17】X方向とY方向の両方のラインのコントラストを向上させるクロスポール照明の露光機のアパチャー形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、記述中の一般式において、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得る場合があるが、その場合、一つの平面式あるいは立体異性体の式で立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0021】
本発明に使用されるレジスト組成物は、上述したようにカルボキシル基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)と、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]を含む。ここで、酸不安定基により水酸基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)としては、カルボキシル基が保護された構造を1つ、又は2つ以上有し、酸の作用により保護基が分解し、カルボキシル基が発生するものであれば特に限定されるものではないが、下記一般式(1)で表される構造の繰り返し単位が好ましい。
【0022】
【化5】
上記式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。
【0023】
上記一般式(1)で表される繰り返し単位として、以下の具体例を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化6】
【0024】
【化7】
(式中、R1、R2、R3の定義は上記と同様。)
【0025】
また、上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3は、酸の作用により分解し、カルボキシル基を発生させるものであれば何れであってもよく、具体的には下記一般式(L1)で示されるアルコキシメチル基、又は(L2)〜(L8)で示される3級アルキル基を挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【化8】
【0026】
上記式中、破線は結合手を示す(以下、同様)。また、RL01、RL02は水素原子又は炭素数1〜18、好ましくは1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、アダマンチル基等が例示できる。RL03は炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の酸素原子等のヘテロ原子を有してもよい1価の炭化水素基を示し、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基等に置換されたものを挙げることができ、具体的には、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基としては上記RL01、RL02と同様のものが例示でき、置換アルキル基としては下記の基等が例示できる。
【化9】
【0027】
RL01とRL02、RL01とRL03、RL02とRL03とは互いに結合してこれらが結合する炭素原子や酸素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合には、環の形成に関与するRL01とRL02、RL01とRL03、又はR02とRL03は、それぞれ炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。
【0028】
RL04、RL05、RL06はそれぞれ独立に炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基等が例示できる。
【0029】
RL07は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、置換されていてもよいアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの、又はこれらのメチレン基の一部が酸素原子又は硫黄原子に置換されたもの等が例示でき、置換されていてもよいアリール基としては、具体的にはフェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基等が例示できる。式(L3)において、m’は0又は1、n’は0,1,2,3のいずれかであり、2m’+n’=2又は3を満足する数である。
【0030】
RL08は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。RL09〜RL18はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15の1価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基等の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、これらの水素原子の一部が水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、オキソ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基等に置換されたもの等が例示できる。RL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、又はRL15とRL16は互いに結合して環を形成していてもよく、その場合、環の形成に関与するRL09とRL10、RL09とRL11、RL09とRL12、RL10とRL12、RL11とRL12、RL13とRL14、又はRL15とRL16は、炭素数1〜15の2価の炭化水素基を示し、具体的には上記1価の炭化水素基で例示したものから水素原子を1個除いたもの等が例示できる。また、RL09とRL11、RL11とRL17、又はRL15とRL17は、隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。
【0031】
RL19は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
【0032】
RL20は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Xはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL21、RL22はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL21とRL22は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。pは1又は2を示す。
【0033】
RL23は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Yはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL24、RL25はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL24とRL25は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。qは1又は2を示す。
【0034】
RL26は炭素数1〜10の置換されていてもよい直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示し、具体的にはRL07と同様のもの等が例示できる。
Zはこれが結合する炭素原子と共に置換又は非置換のシクロペンタン環、シクロヘキサン環、又はノルボルナン環を形成する2価の基を示す。RL27、RL28はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状の1価の炭化水素基を示す。RL27とRL28は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、その場合、置換又は非置換のシクロペンタン環、又はシクロヘキサン環を形成する2価の基を示す。
【0035】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち直鎖状又は分岐状のものとしては、具体的には下記の基が例示できる。
【化10】
【0036】
上記式(L1)で示される酸不安定基のうち環状のものとしては、具体的にはテトラヒドロフラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロピラン−2−イル基、2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル基等が例示できる。
【0037】
上記式(L2)の酸不安定基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基、及び下記の基が例示できる。
【化11】
【0038】
上記式(L3)の酸不安定基としては、具体的には1−メチルシクロペンチル、1−エチルシクロペンチル、1−n−プロピルシクロペンチル、1−イソプロピルシクロペンチル、1−n−ブチルシクロペンチル、1−sec−ブチルシクロペンチル、1−シクロヘキシルシクロペンチル、1−(4−メトキシ−n−ブチル)シクロペンチル、1−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−(7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)シクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−エチルシクロヘキシル、3−メチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−エチル−1−シクロペンテン−3−イル、3−メチル−1−シクロヘキセン−3−イル、3−エチル−1−シクロヘキセン−3−イル等が例示できる。
【0039】
上記式(L4)の酸不安定基としては、下記式(L4−1)〜(L4−4)で示される基が特に好ましい。
【化12】
【0040】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)中、破線は結合位置及び結合方向を示す。RL41はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示できる。
【0041】
前記一般式(L4−1)〜(L4−4)には、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在しえるが、前記一般式(L4−1)〜(L4−4)は、これらの立体異性体の全てを代表して表す。これらの立体異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0042】
例えば、前記一般式(L4−3)は下記一般式(L4−3−1)、(L4−3−2)で示される基から選ばれる1種又は2種の混合物を代表して表すものとする。
【化13】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0043】
また、上記一般式(L4−4)は下記一般式(L4−4−1)〜(L4−4−4)で示される基から選ばれる1種又は2種以上の混合物を代表して表すものとする。
【化14】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0044】
上記一般式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)は、それらのエナンチオ異性体及びエナンチオ異性体混合物をも代表して示すものとする。
【0045】
なお、式(L4−1)〜(L4−4)、(L4−3−1)、(L4−3−2)、及び式(L4−4−1)〜(L4−4−4)の結合方向がそれぞれビシクロ[2.2.1]ヘプタン環に対してexo側であることによって、酸触媒脱離反応における高反応性が実現される(特開2000−336121号公報参照)。これらビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格を有する3級exo−アルキル基を置換基とする単量体の製造において、下記一般式(L4−1−endo)〜(L4−4−endo)で示されるendo−アルキル基で置換された単量体を含む場合があるが、良好な反応性の実現のためにはexo比率が50%以上であることが好ましく、exo比率が80%以上であることが更に好ましい。
【化15】
(式中、RL41は前述と同様である。)
【0046】
上記式(L4)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化16】
【0047】
上記式(L5)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化17】
上記式(L6)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化18】
【0048】
上記式(L7)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化19】
【0049】
上記式(L8)の酸不安定基としては、具体的には下記の基が例示できる。
【化20】
【0050】
また、酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることが特に好ましい。
【化21】
上記式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。
【0051】
上記一般式(2)で表される酸不安定基の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化22】
【0052】
本発明のレジスト組成物に含まれる高分子化合物[A]は、酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)のほか、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)を含有する。
【0053】
これらの含窒素単位は光酸発生剤より発生した酸を捕捉し、酸拡散を抑制するクエンチャーとしての機能を示す。更に、クエンチャーがベース高分子化合物に結合されていることにより、酸拡散のみならず、クエンチャー拡散も抑制され、潜像コントラストの劣化を防ぐことができる。また、ベース高分子化合物に結合しているクエンチャーはレジスト膜表層から揮発しないため、ネガ現像における表面難溶化を防ぐことができる。
【0054】
繰り返し単位(a2)として好ましい構造は、下記一般式(3)又は(4)で表される構造である。
【化23】
上記式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。
【化24】
上記式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。
【0055】
上記一般式(3)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化25】
(式中、R5の定義は上記と同様。)
【0056】
上記一般式(4)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【化26】
(式中、R8の定義は上記と同様。)
【0057】
上記高分子化合物[A]は、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0058】
カルボキシル基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(1)の具体例として挙げた構造のカルボキシル基が酸不安定基で保護されていないものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
水酸基を有する繰り返し単位及びカルボキシル基を有する繰り返し単位としては、以下の構造を具体例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化27】
(式中、R14は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。)
【0060】
シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位の具体例として以下の構造を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【化28】
【0061】
【化29】
(式中、R15は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を表す。)
【0062】
高分子化合物[A]は、更に下記一般式(p1)、(p2)、(p3)のいずれかで表される構造のスルホニウム塩を含んでもよい。
【化30】
(式中、R20、R24、R28は水素原子又はメチル基、R21は単結合、フェニレン基、−O−R33−、又は−C(=O)−Y−R33−である。Yは酸素原子又はNH、R33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又は水酸基を含んでいてもよい。R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、R31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R32−、又は−C(=O)−Z1−R32−である。Z1は酸素原子又はNH、R32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又は水酸基を含んでいてもよい。M-は非求核性対向イオンを表す。)
【0063】
上記高分子化合物[A]を構成する上記の各繰り返し単位のモル比について、酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)の合計量を[a1]、アミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)の合計量を[a2]、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基等の極性官能基を有する繰り返し単位の合計量を[a3]、上記一般式(p1)〜(p3)のいずれかで表される構造のスルホニウム塩単位の合計量を[p]とした場合、0.1≦[a1]≦0.995、0.005≦[a2]≦0.2、0≦[a3]≦0.8、0≦[p]≦0.2を共に満たすことが好ましく、0.2≦[a1]≦0.7、0.01≦[a2]≦0.1、0.2≦[a3]≦0.7、0≦[p]≦0.1を共に満たすことが特に好ましい(ここで、[a1]+[a2]+[a3]+[p]=1である。)。
【0064】
上記高分子化合物[A]の重量平均分子量Mwと数平均分子量との比、即ち分散度(Mw/Mn)は特に制限されないが、1.0〜3.0の狭い分子量分布の場合、酸拡散が抑制され、解像度が向上するために好ましい。また、上記高分子化合物[A]の分子量は、通常、重量平均分子量Mnが3,000〜100,000であり、好ましくは5,000〜50,000である。なお、本明細書において記載する数平均分子量及び重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0065】
本発明に用いられるレジスト組成物は、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)[B]、及び有機溶剤[C]を含む。
【0066】
光酸発生剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等があり、これらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0067】
光酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0123]〜[0138]に記載されているものが挙げられる。
【0068】
有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等のアルコール類及びその混合溶剤が挙げられる。
【0069】
本発明に使用されるレジスト組成物は、上記高分子化合物[A]、光酸発生剤[B]、有機溶剤[C]を必須成分とするが、更に必要に応じて、クエンチャー成分、界面活性剤、溶解制御剤、アセチレンアルコール類から選ばれる1種又は複数種を含んでもよい。
【0070】
クエンチャー成分とは酸発生剤より発生した酸を捕捉し失活させる機能を有する成分であり、適量加えることにより、感度を調整でき、また、溶解コントラストの向上及び未露光部への酸拡散抑制により解像度が向上することが知られている。上記高分子化合物[A]に含まれる繰り返し単位(a2)がクエンチャーとして機能し得るが、これとは別に下記に例示されるクエンチャー成分を添加することにより、レジスト感度の制御やパターン形状の調整に有効な場合がある。
【0071】
クエンチャー成分の例としては、塩基性化合物を挙げることができ、具体的には特開2008−111103号公報の段落[0148]〜[0163]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する含窒素有機化合物を挙げることができる。これら塩基性化合物の配合量は、ベース樹脂100質量部に対し0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部とすることが好ましい。
【0072】
また、弱酸を共役酸とするアニオンを有するオニウム塩化合物をクエンチャーとして用いることができ、そのクエンチ機構は、酸発生剤より発生した強酸が塩交換反応によりオニウム塩に変わるという現象に基づく。塩交換により発生した弱酸ではベース樹脂に含まれる酸不安定基の脱保護反応は進行しないため、この系における弱酸オニウム塩化合物はクエンチャーとして機能したことになる。オニウム塩クエンチャーとしては、例えば、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及びカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして挙げることができ、これらはα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸を発生する酸発生剤と併用した場合にクエンチャーとして機能し得る。また、オニウム塩クエンチャーがスルホニウム塩やヨードニウム塩のように光分解性を有する場合、光強度が強い部分のクエンチ能が低下し、これによって溶解コントラストが向上するため、有機溶剤現像によるネガ型パターン形成において、パターンの矩形性が向上する。オニウム塩化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.05〜20質量部、特に0.2〜10質量部とすることが好ましい。
【0073】
また、上記の含窒素有機化合物やオニウム塩化合物等のクエンチャー成分を単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0074】
界面活性剤としては特開2008−111103号公報の段落[0166]、溶解制御剤としては特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類としては特開2008−122932号公報の段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で任意とすることができる。
【0075】
また、スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この添加剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような添加剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報に例示されている。レジスト組成物に添加される撥水性向上剤は、有機溶剤を含む現像液に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、アルカリ水溶液に対する溶解性が良好なだけでなく、有機溶剤への溶解性も良好である。また、撥水性の添加剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、露光後加熱処理(ポストエクスポージャーベーク:以下、PEBと記す)中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。撥水性向上剤の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0076】
本発明のレジストパターン形成方法の説明図を図1に示す。この場合、図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、塗布後露光前に加熱処理(ポストアプライドベーク:以下、PABと記す)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0077】
次いで、図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUVが挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、PAB後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。
【0078】
液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するために露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、PAB後のレジスト膜上に保護膜を形成してもよい。
液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させたものが好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のモノマーから得られるものが挙げられる。保護膜は有機溶剤を含む現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤を含む現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0079】
保護膜形成用組成物にアミン化合物又はアミン塩を配合、あるいはアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物を用いることは、レジスト膜の露光部から発生した酸の未露光部分への拡散を制御し、ホールの開口不良を防止する効果が高い。アミン化合物を添加した保護膜材料としては特開2008−3569号公報に記載の材料、アミノ基又はアミン塩を共重合した保護膜材料としては特開2007−316448号公報に記載の材料を用いることができる。アミン化合物、アミン塩としては、上記レジスト組成物添加用の塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物、アミン塩の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。
【0080】
レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。PEB中に露光部から蒸発した酸が未露光部に付着し、未露光部分の表面の保護基を脱保護させると、現像後のホールの表面がブリッジして閉塞する可能性がある。特にネガティブ現像におけるホールの外側は、光が照射されて酸が発生している。PEB中にホールの外側の酸が蒸発し、ホールの内側に付着するとホールが開口しないことがある。酸の蒸発を防いでホールの開口不良を防ぐために保護膜を適用することは効果的である。更に、アミン化合物又はアミン塩を添加した保護膜は、酸の蒸発を効果的に防ぐことができる。
【0081】
このように、保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとしてアミノ基又はアミン塩を有する化合物を添加した材料、あるいは前記高分子化合物中にアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した材料をベースとして炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料を用いることが好ましい。
【0082】
炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル系溶剤としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0083】
露光における露光量は1〜200mJ/cm2程度、特に10〜100mJ/cm2程度とすることが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃で1〜5分間、好ましくは80〜120℃で1〜3分間PEBを施す。
【0084】
更に、図1(C)に示されるように、有機溶剤を含む現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンが基板上に形成される。
上記有機溶剤を含む現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等のエステル類などを好ましく用いることができる。
これらの有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの有機溶剤の総量は、現像液総量の60質量%以上であり、好ましくは80〜100質量%である。なお、これらの有機溶剤の総量が現像液総量の100質量%未満である場合、その他の有機溶剤を含んでもよく、具体的にはオクタン、デカン、ドデカン等のアルカン類、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類などが挙げられる。
また、上記現像液は、界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤としては前述のレジスト組成物に添加してもよいものと同様の具体例が挙げられる。
【0085】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0086】
具体的には、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチン等が挙げられる。炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等が挙げられる。炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらの溶剤に加えて、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
【0087】
トレンチパターン形成において、ネガティブトーン現像は、ポジティブトーン現像よりも高コントラストの光学像を形成できる場合が多い。ここでトレンチパターンとは、ラインアンドスペースパターンにおけるスペース部分がライン部分の寸法幅より狭いパターンを指し、スペース部とスペース部の間隔が無限に離れた場合、即ちライン幅が無限に広い場合が孤立トレンチに相当する。特にトレンチ幅(スペース幅)が微細になるほど、マスク上のラインパターン像を反転しトレンチを形成させるネガティブトーン現像は解像性の点で有利となる。
【0088】
ネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する方法は、マスクデザインによる分類により、以下の3通りの方法に集約される。
(i)ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを用い、ドット部分をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(ii)格子状遮光パターンが配置されたマスクを用い、格子の交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
(iii)ライン状の遮光パターンが配置されたマスクを用いて2回の露光を行う方法であって、1回目の露光と2回目の露光のライン配列の向きを変えることでラインが交差するように重ねて露光し、ラインの交点をネガ現像後にホールパターンとする方法。
【0089】
上記(i)の方法について、ドット状の遮光パターンが配置されたマスクを図7に例示する。この方法において、露光時の照明条件は特に限定されないが、図17に示されるアパチャー形状のクロスポール照明(4重極照明)が狭ピッチ化のために好ましく、これにX−Y偏光照明又は円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせて更にコントラストを向上させることが可能である。
【0090】
上記(ii)の方法について、格子状遮光パターンが配置されたマスクを図5に例示する。(i)の方法と同様、クロスポール照明及び偏光照明と組み合わせることが狭ピッチの解像性向上の点で好ましい。
【0091】
図8にNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、一辺の幅が60nmの正四角形のドットパターンが配置されたマスクにおける光学像コントラストを示す。また、図6にNA1.3レンズ、クロスポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Azimuthally偏光照明でのピッチ90nm、幅30nmの格子状ラインパターンの光学像を示す。前者のドットパターンを利用する場合よりも後者の格子状パターンを利用する場合の方が、光の強度が低下するためにレジストの感度が低下する欠点があるものの、光学コントラストが向上するという利点がある。
【0092】
上記(ii)の方法において、更に透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクを用い、格子状のシフター格子の交点を現像後にホールパターンとする方法が、光学コントラストが向上することから好ましい。
【0093】
上記(iii)の方法について、図15、図16に示されるアパチャー形状のダイポール照明(2重極照明)を用い、X、Y方向のラインパターンを2回に分けて露光し、光学像を重ねることにより、上記(i)及び(ii)の方法に比べて、更に高いコントラストを得ることができる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。
【0094】
図2は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのX方向ラインの光学像を示す。また、図3は、波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたNA1.3レンズ、ダイポール照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、s偏光でのピッチ90nm、ラインサイズ45nmのY方向ラインの光学像を示す。色が濃い方が遮光部分、白い方が光の強い領域であり、白と黒のコントラスト差がはっきりしており、特に強い遮光部分が存在することが示されている。図4は、Y方向ラインにX方向ラインの光学像を重ねたコントラストイメージである。XとYのラインの組み合わせで格子状のイメージができ上がるように思われるがそうではなく、光の弱い黒い部分のパターンは円形である。円形のサイズが大きい場合は菱形形状で隣のパターンとつながり易いが、円のサイズが小さいほど円形度合いが向上し、強く遮光された小さな円が存在することが示されている。
【0095】
上記(iii)の2回露光する方法は、(i)や(ii)の1回露光による方法に比べてスループットが低下するものの、光学コントラストが高いことから、微細なパターンを寸法均一性よく形成でき、狭ピッチ化においても有利である。1回目のラインと2回目のラインがなす角度は90度が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが1枚のマスクに有するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能である。また、1枚のマスクを用いてX方向とY方向のコントラストを強調した2回の連続した露光は、現在の市販のスキャナーで行うことが可能である。
【0096】
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成は困難である。密集パターンのコントラストは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によって向上させることができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0097】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはレジスト組成物の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、レジスト組成物の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。レジスト組成物の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p.171(2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ずれが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0098】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転の有機溶剤現像で形成するためには、格子状の遮光パターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いることが有効である。
【0099】
上記(ii)の方法において、図9に示すようなハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、あるいは図11に示すようなハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列された点を現像後にホールパターンとする方法により、ランダムピッチのホールパターンを形成することができる。
【0100】
ピッチ90nmで、20nmラインの格子状パターン上に、図9に示すようにパターンを形成したい部分に十字の太い交差ラインを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど太いライン(図9では幅40nm)、密集部分では幅30nmのラインが配置されている。密集パターンよりも孤立パターンの方が光の強度が弱くなるために、太いラインが用いられる。密集パターンの端の部分も光の強度がやや低下するために、密集部分の中心よりもやや幅広の32nmのラインが宛われている。
【0101】
図9のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを図10に示す。黒い遮光部分にポジネガ反転によってホールが形成される。ホールが形成されるべき場所以外にも黒点が見られるが、黒点のサイズは小さいために、実際には殆ど転写されない。不必要な部分の格子ラインの幅を狭くしたりする等の更なる最適化によって、不必要なホールの転写を防止することが可能である。
【0102】
同じく格子状の遮光パターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。ピッチ90nmで、15nmラインの格子状パターン上に、図11に示すようにドットを形成したい部分に太いドットを配置する。色の黒い部分がハーフトーンのシフター部分である。孤立性の所ほど大きなドット(図11では一辺90nm)、密集部分では一辺55nmの四角状のドットが配置されている。ドットの形状は正四角形でも、長方形、菱形、5角形、6角形、7角形、8角形以上の多角形、円形でも構わない。図11のマスクを用いて得られた光学像のコントラストイメージを図12に示す。図10に比べてもほぼ同等の黒い遮光部分が存在し、ポジネガ反転によってホールが形成されることが示されている。
【0103】
図13に示されるような格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合、図14に示されるように黒い遮光部分は現れない。この場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
【実施例】
【0104】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、下記例において、数平均分子量及び重量平均分子量は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたポリスチレン換算でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
【0105】
レジスト組成物の調製
本発明のレジスト組成物を下記表1に示す組成で配合して溶剤に溶解させ、0.2μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過したレジスト溶液を調製した(Resist−1〜15)。また、同様の方法で、下記表2に示す組成の比較例のレジスト組成物を調製した(Resist−16〜18)。表1,2中のベース樹脂(Polymer1〜18)の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を下記表3〜5に示す。表3〜5中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。
また、表1,2中の高分子添加剤(PA−1〜3)は液浸露光に適するレジスト膜表面の撥水性を得るために添加した。これら高分子添加剤の構造、分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)をそれぞれ下記表6に示す。表6中の( )内の数値は各繰り返し単位の構成比率(モル%)を示す。
また、表1,2中の光酸発生剤(PAG−1〜4)の構造を下記表7に、表1,2中のクエンチャー成分(Q−1〜6)の構造を下記表8に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
なお、表1,2中に示した溶剤は以下の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
GBL:γ−ブチロラクトン
また、界面活性剤A(0.1質量部)を表1,2中に示したいずれのレジスト組成物にも添加した。界面活性剤Aの構造を以下に示す。
界面活性剤A:3−メチル−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)オキセタン・テトラヒドロフラン・2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール共重合物(オムノバ社製)(下記式)
【化31】
【0115】
[実施例1〜15、比較例1〜5]
レジストの評価
[評価方法]
上記表1,2に示したレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベーク(PAB)し、レジスト膜の厚みを90nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.74、クロスポール開口35度)を用い、露光量とフォーカスを変化させながら露光を行い、その後任意の温度にて60秒間ベーク(PEB)し、その後任意の現像液により30秒間現像し、その後ジイソアミルエーテルでリンスした。使用した現像液DS−1〜3を下記に示す。
DS−1:酢酸ブチル
DS−2:2−ヘプタノン
DS−3:酢酸ブチル/安息香酸メチルの質量比1:1混合溶剤
【0116】
また、マスクはバイナリーマスクであり、マスク上デザインが55nmドット/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンについて、レジスト上に形成された反転パターンのホールパターンを電子顕微鏡にて観察した。ホール内径が50nmとなる露光量を最適露光量(Eop、mJ/cm2)とし、最適露光量におけるパターン断面形状を電子顕微鏡にて観察し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン側壁の垂直性が高い。好ましい形状。
不良:表層部が閉塞気味(T−トップ形状)又はパターン側壁が傾斜した逆テーパー形状
(表層部に近いほどライン幅大)。好ましくない形状。
【0117】
また、最適露光量においてホールパターンが解像しているフォーカス範囲を求め、焦点深度(DOF(nm))とした。DOFの値が大きいほど、フォーカス変動に対する許容マージンが広く好ましい。
【0118】
また、比較例として、数種のレジスト組成物について、上記の有機溶剤ネガ現像と同様の方法にて露光、PEBまで行い、その後2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を現像液とするポジ型現像を行った。マスクは上記同様にバイナリーマスクであるが、マスク上デザインは55nmホール/90nmピッチ(1/4倍縮小投影露光のためマスク上実寸法は4倍)のパターンであり、レジスト上に形成されたホールパターンを電子顕微鏡にて観察した。上記の有機溶剤ネガ現像と同様の基準において、パターン形状とDOFの評価を行った。
【0119】
[評価結果]
上記表1中の本発明のレジスト組成物を評価した際の条件(PEB温度及び現像液)及び評価結果を下記表9に示す。また、上記表2中の比較例のレジスト組成物を評価した際の条件(PEB温度及び現像液)及び評価結果を下記表10に示す。また、比較例プロセスとしてのTMAHポジ型現像時の評価結果も表10に示す。
【0120】
【表9】
【0121】
【表10】
【0122】
表9,10の結果より、特定の高分子化合物をベース樹脂として用い、光酸発生剤及び有機溶剤と組み合わせた本発明のレジスト組成物を有機溶剤ネガ型現像することによって、良好なパターン形状と広い焦点深度が得られることがわかった。
【0123】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0124】
10 基板
20 被加工基板
30 中間介在層
40 レジスト膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を基板に塗布し、塗布後加熱処理をして作製したレジスト膜を高エネルギー線で露光し、露光後加熱処理を施した後に、有機溶剤を含有する現像液によりレジスト膜の未露光部分を選択的に溶解させることを特徴とするネガ型パターン形成方法。
【請求項2】
高分子化合物[A]に含まれる酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。)
【請求項3】
上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。)
【請求項4】
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化3】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項5】
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(4)で表される構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化4】
(式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。)
【請求項6】
高分子化合物[A]が、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基から選ばれる極性官能基を有する繰り返し単位を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上の有機溶剤を含有し、これら有機溶剤の総濃度が現像液総量に対して60質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項1】
酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)とアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)とを含有する高分子化合物[A]と、光酸発生剤[B]と、有機溶剤[C]とを共に含むレジスト組成物を基板に塗布し、塗布後加熱処理をして作製したレジスト膜を高エネルギー線で露光し、露光後加熱処理を施した後に、有機溶剤を含有する現像液によりレジスト膜の未露光部分を選択的に溶解させることを特徴とするネガ型パターン形成方法。
【請求項2】
高分子化合物[A]に含まれる酸不安定基によりカルボキシル基が保護された構造を有する繰り返し単位(a1)が、下記一般式(1)で表される構造であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示す。R2、R3は酸不安定基を示す。k1は0又は1であり、k1が0の場合、Ln1は単結合、又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の2価の炭化水素基を示す。k1が1の場合、Ln1はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の3価の炭化水素基を示す。)
【請求項3】
上記一般式(1)中の酸不安定基R2、R3のいずれか一方又は両方が、下記一般式(2)で表される構造であることを特徴とする請求項2に記載のパターン形成方法。
【化2】
(式中、破線は結合手を示す。R4は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基である。nは0又は1である。)
【請求項4】
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(3)で表される構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化3】
(式中、R5は水素原子又はメチル基を示す。X1は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R6、R7はそれぞれ独立に水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R6、R7が相互に結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。また、R6、R7のどちらか一方又は両方がX1と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項5】
高分子化合物[A]に含まれるアミノ基、アミド結合、カルバメート結合、含窒素複素環から選ばれる構造を1つ以上含む繰り返し単位(a2)が、下記一般式(4)で表される構造であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【化4】
(式中、R8は水素原子又はメチル基を示す。X2は単結合又は酸素原子を含んでよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の2価炭化水素基である。R9は水素原子であるか、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状の1価炭化水素基を表し、1価炭化水素基上の水素原子の1つ又は複数がフッ素原子で置換されていてもよい。また、R9がX2と結合し、これらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよい。R10はヘテロ原子を含んでもよい炭素数3〜15の1価炭化水素基である。)
【請求項6】
高分子化合物[A]が、更に密着性基として水酸基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、炭酸エステル基、スルホン酸エステル基から選ばれる極性官能基を有する繰り返し単位を含有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項7】
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、2’−メチルアセトフェノン、4’−メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上の有機溶剤を含有し、これら有機溶剤の総濃度が現像液総量に対して60質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
高エネルギー線による露光が、波長193nmのArFエキシマレーザーによる液浸リソグラフィー、又は波長13.5nmのEUVリソグラフィーであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【図1】
【図9】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図9】
【図11】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−105165(P2013−105165A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251229(P2011−251229)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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