説明

ネガ型レジスト組成物、パターン形成方法、ネガ型レジスト組成物の検査方法及び調製方法

【課題】 エッチング耐性および解像性に優れ、基板界面においても良好なパターン形状を与えるネガ型レジスト組成物、これを用いたパターン形成方法、ネガ型レジスト組成物の検査方法及び調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、(B)酸発生剤、(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物を含有し、50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物であって、アルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるものであることを特徴とするネガ型レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型レジスト組成物、それを用いたパターン形成方法、ネガ型レジスト組成物の検査方法及び調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が求められていることはよく知られている。これに伴って露光方法やレジスト材料も大きく変化しており、特に0.2μm以下のパターンのリソグラフィーを行う場合、露光光源にはKrFやArFエキシマレーザー光、あるいは電子線等が用いられ、フォトレジストにはそれらの高エネルギー線に良好な感度を示し、高い解像度を与える化学増幅型のものが使用されている。
【0003】
レジスト組成物には露光部が溶解するポジ型と露光部がパターンとして残るネガ型があり、それらは必要とするレジストパターンに応じて使いやすい方のものが選択される。化学増幅ネガ型レジスト組成物は、通常、水性アルカリ性現像液に溶解する高分子化合物と、露光光により分解して酸を発生する酸発生剤、及び酸を触媒として高分子化合物間に架橋を形成して高分子化合物を現像液に不溶化させる架橋剤(場合によっては高分子化合物と架橋剤は一体化している)を含有しており、更に通常露光で発生した酸の拡散を制御するための塩基性化合物が加えられる。
【0004】
上記水性アルカリ性現像液に溶解する高分子化合物を構成するアルカリ可溶性単位として、フェノール性水酸基を有する単位を使用するタイプのネガ型レジスト組成物は、特にKrFエキシマレーザー光による露光用として多数が開発された。これらは、露光光が150〜220nmの波長である場合、フェノール単位が光の透過性を持たないため、ArFエキシマレーザー光用のものとしては使用されなかったが、近年、より微細なパターンを得るための露光方法である、EB、EUV露光用のネガ型レジスト組成物として再び注目されており、特許文献1や特許文献2、特許文献3が報告されている。
【0005】
また、上述のようなEB、EUV露光で要求されるような微細加工を行う上では、レジスト膜は必然的に薄膜化されなければならない。なぜなら、パターン線幅に対するパターンの高さ、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎた場合、現像時のパターン剥がれ等の問題が避けられなくなるからである。一方、レジスト膜が薄膜化した場合には、該レジスト膜より得られたレジストパターンを用いて被加工膜にレジストパターンの転写を行う際、十分なエッチング選択比がとれるかということが問題となる。このエッチング耐性の問題に対しては、半導体装置の加工の場合には多層レジスト法(例えば特許文献4)や、フォトマスクの加工の場合には、エッチングマスク膜(例えば特許文献5)による方法が提案されており、膜厚が100nm以下といった薄膜のレジストを用いた場合にもエッチングコントラストが取れるような方法が得られてきている。
【0006】
上述のような100nm以下のレジスト膜によるリソグラフィー方法では、エッチング補助膜等を使用することにより、エッチング耐性の問題の一部は解決されているものの、使用するレジスト膜のエッチング耐性と高解像性との両立を図るためには、単にレジスト膜を薄くするという方法では、必ずしも要求に満足するものとならないことが分かってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−201532号公報
【特許文献2】特開2006−215180号公報
【特許文献3】特開2008−249762号公報
【特許文献4】特開2008−96684号公報
【特許文献5】特開2007−241060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題に加え、最近本発明者の検討により改めて問題であることが判明したのは、従来高解像性化学増幅ネガ型レジストとして使用されてきたレジスト組成物を、薄膜に適用させるために固形分の変更を行わずに溶剤のみを増量して用い、100nm以下の膜厚で使用して微細パターンの形成を試みると、レジストパターンと基板の界面におけるアンダーカットが生じやすくなり、微細なパターンが形成できないことである。特にフォトマスクブランクを加工する際、フォトマスクブランクの最表面の材料であるクロム酸化窒化物上で化学増幅ネガ型レジストを用いてパターン形成を行った場合、基板接触部でレジストパターンに切れ込みが入ってしまう、いわゆるアンダーカットが発生し、従来材料では十分な解決に至らなかった。このように、従来材料を用い、特に微細パターン形成を狙ってレジスト膜厚を100nm以下の薄膜とした場合、現像によりパターンが倒れ易くなり、微細なパターン形成が困難であった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、50〜100nmのレジスト膜を用いた微細加工のためのフォトリソグラフィー、特にKrFレーザー、極短紫外線、電子線、X線などを露光源とするリソグラフィーにおいて、解像性に優れ、基板界面においても良好なパターン形状を与えるネガ型レジスト組成物、これを用いたパターン形成方法、このネガ型レジスト組成物の検査方法及び調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明によれば、少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物であって、該ネガ型レジスト組成物は、前記パターン形成する際の成膜条件でレジスト膜を成膜した場合に、前記パターン形成する際の現像処理で用いるアルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるものであることを特徴とするネガ型レジスト組成物を提供する。
【0011】
このようなネガ型レジスト組成物を用いることにより、基板の表面を構成する材料がクロム系材料のような、ネガ型レジストパターンを形成した際にアンダーカットを生じやすく、パターン倒れ等を引き起こしやすい基板上であっても、アンダーカットの発生を防止し、かつ高い解像度で安定してパターンを得ることができる。
なお、ここでパターン形成する際の成膜条件とは、化学増幅型レジスト膜では、膜の成膜条件によってレジスト膜のマトリックスの状態、特に残存溶剤量や樹脂のパッキング状態が変化するため、それぞれのレジスト組成物は、成膜に用いることができる温度や時間等の成膜条件が、材料成分およびその組み合わせにより、個別に、範囲を持った値として特定される。また、この許容範囲を外れた場合には、解像性能やパターン形状の好ましい値が得られなくなるものであり、ここでのパターン形成する際の成膜条件とは、レジスト組成物が目的とする解像度やパターン形状を得ることができるよう膜を得るための条件を指す。
また、パターン形成する際の現像処理で用いるアルカリ現像液とは、アルカリ性成分の濃度等が場合によって変更されることがあり、ベース樹脂のアルカリ溶解特性に強い影響を与える因子が実際に使用する際の現像液と同じものを使用するとの意味であり、例えば現像液が界面活性剤を含むか否かというような差異をもってパターン形成する際の現像液であるか否かを判断するものではない。
【0012】
また、前記ベース樹脂が、アルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を持ち、前記ベース樹脂を構成する繰り返し単位の95モル%以上は芳香族骨格を有するモノマー構造を持つことが好ましい。
【0013】
このようなモノマー構造を有するベース樹脂を用いれば、高いエッチング耐性を得ることができる。
【0014】
更に具体的には、前記ベース樹脂を構成する繰り返し単位の95モル%以上が、下記一般式(1)〜(3)の繰り返し単位の組み合わせのいずれかであることが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

(式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルフォニル基、Rは炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基であり、R′は水素または、直鎖状、分岐状、または環状の炭素数2〜10のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基である。p、q、r、sは正の整数であり、tは0または正の整数である。また、aおよびbは1または2、cは0〜3の整数、dは0〜2である。)
【0015】
これらのいずれかの繰り返し単位の組み合わせより選ばれたベース樹脂を用いることにより、好ましい解像性とエッチング耐性を示すネガ型レジスト組成物を得ることができる。
【0016】
また、前記(B)成分の酸発生剤は、少なくとも、下記一般式(4)
【化4】

(式中R、R、Rは水素または炭素数4〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはアルキルオキシ基を表し、すべてが水素になることはない。R、R、Rは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基を表し、同じでも異なってもよい。)
で表わされる化合物のうち少なくとも1種以上を含むものが好ましい。
【0017】
上記一般式(4)で表される酸発生剤はアルカリ現像液に対する溶解抑止効果が高く、これを用いることにより、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度の制御を容易に行うことができる。
【0018】
また、前記(C)成分の塩基性成分は、少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物を1種以上含むことが好ましい。
【0019】
このように、(C)成分の塩基性成分として、少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物を用いることにより、より効果的にアンダーカットの発生を防止することができる。
【0020】
前記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有さないアミン化合物又はアミンオキシド化合物として、下記一般式(5)〜(7)
【化5】

(式中、R10、R11はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR10、R11のいずれか2個が結合して環構造を形成してもよい。R12は水素、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、あるいはハロゲン基である。R13は炭素数0〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【化6】

(式中、R10、R11、R12、R13は前述の通りである。)
【化7】

(式中、R14は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R15は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。)
で表わされる化合物を挙げることができる。
【0021】
また、前記(C)成分の塩基性成分は、上記に加えて、更に、下記一般式(8)及び(9)
【化8】

(式中、R16、R17、R18はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR16、R17、R18の2個が結合して環構造もしくは芳香族環を形成してもよい。)
【化9】

(式中、R16、R17、R18は前述の通りである。)
で表されるアミン化合物及びアミンオキシド化合物のうち、少なくとも1種以上を含有するものとすることができる。
【0022】
このように、上記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有さないアミン化合物又はアミンオキシド化合物と、上記一般式(8)又は(9)で表されるアミン化合物又はアミンオキシド化合物の1種以上を組み合わせることもできる。
【0023】
また、リソグラフィーによりレジストパターンを形成する方法であって、少なくとも、前記ネガ型レジスト組成物を用いて被加工基板に膜厚50〜100nmのレジスト膜を形成し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ現像液を用いて現像してレジストパターンを得ることを特徴とするレジストパターンの形成方法を提供する。
【0024】
このような本発明のレジストパターンの形成方法を用いることにより、膜厚が50〜100nmといった薄膜のレジスト膜を用いて、最小線幅が50nm以下のパターンを形成した場合にも、アンダーカットの発生を抑制でき、高解像かつ好ましい形状のレジストパターンを得ることができる。
【0025】
前記被加工基板として、フォトマスクブランクを用いることができる。
【0026】
フォトマスク加工では、OPC(Optical Proximity Effect Correction(光学近接効果補正))などを適用したマスクパターン形状を形成するために、微細な線幅を持つパターンの形成が要求されるだけでなく、リソグラフィーを行う際の原板となることから、半導体装置を作製する際のパターン形成以上に剥がれ等による欠陥が発生しないことが要求される。そこで、アンダーカットによる剥がれ等の発生が抑制される本発明のレジストパターン形成方法が好適に適用される。
【0027】
また、前記フォトマスクブランクの最表層上に、クロム化合物膜が成膜されている場合にも、本発明のレジストパターン形成方法が有用に適用される。
【0028】
クロム化合物膜上でのパターン形成は、窒化チタンや窒化ケイ素のようなアンダーカットが生じやすい化合物よりも、更にアンダーカットが生じやすい。本発明のレジストパターンの形成方法を適用することで、このようなクロム化合物膜上でのパターン形成でもアンダーカットの発生を防止することができる。
【0029】
また、本発明は、少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物の検査方法であって、該ネガ型レジスト組成物を用いて、前記パターン形成する際の成膜条件でレジスト膜を成膜し、前記アルカリ現像液を用いて該レジスト膜の溶解速度を測定し、該溶解速度が0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下のネガ型レジスト組成物を合格と判定することを特徴とするネガ型レジスト組成物の検査方法を提供する。
【0030】
このような本発明の検査方法を適用することにより、検査に合格したレジスト膜形成用組成物を用いてパターン形成を行った際、アンダーカットの発生が起こり難いことが保証され、高解像かつ好ましい形状のレジストパターンを得ることができる。
【0031】
また、本発明は、少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物の調製方法であって、該ネガ型レジスト組成物より成膜されたレジスト膜の、前記アルカリ現像液に対して示す溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるように各材料を選択して調整することを特徴とするネガ型レジスト組成物の調製方法を提供する。
【0032】
このようなネガ型レジスト組成物の調製方法によって得られたネガ型レジスト組成物は、目的とする膜厚を持つレジスト膜として成膜された後、所定の工程に従いパターン露光、現像を行った場合、高解像かつアンダーカットの発生が抑制されたレジストパターンを与えることができる。
【0033】
また、前記材料の調製を、前記アルカリ現像液に対して示す溶解速度が異なる2種以上の前記ベース樹脂の種類及び混合比を選択することによって行うことができる。
【0034】
このように、ベース樹脂や酸発生剤の選択のみならず、アルカリ現像液に対して示す溶解速度が異なるベース樹脂の組み合わせによる溶解速度の制御は有用な本発明のレジスト組成物の調製方法である。
【発明の効果】
【0035】
本発明のネガ型レジスト組成物を用いることにより、従来、レジスト膜の膜厚を50〜100nmとした場合にアンダーカットの発生により実現することが困難であった高解像性を、エッチング耐性やパターン形状の要求性能を満たしつつ、大きく改善することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】横軸をレジスト膜の膜厚X、縦軸をレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度としたレジストパターンの評価結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
前述のように、ネガ型化学増幅型レジスト用樹脂として、水性アルカリ性現像液への可溶性を与える単位にヒドロキシスチレン単位を用いたベース樹脂を用い、アルカリ現像液に対して可溶性であるが、酸と反応した際には架橋反応を生じて現像液に難溶性とする方法は、最先端の紫外線によるリソグラフィー方法がArFにシフトした後も、電子線露光用や極短紫外線露光用のレジスト樹脂として用いられてきており、例えば特開2008−249762号公報のように、電子線によるパターン露光で240nmのレジスト膜厚で80nmといった良好な形状を持つ微細なパターン形成に成功している。
【0038】
しかし、本発明者らの検討により、上記のようなレジスト膜の膜厚が100nmより厚い場合に高解像性を達成した化学増幅型レジスト組成物を用いて、溶剤量のみを調整して100nm以下といった薄膜のレジスト膜を形成し最小線幅50nm以下のパターン形成を試みたところ、微細なパターンが倒壊し、高解像性が達成できないという問題が生じることが判明した。
【0039】
従来、上記のような従来100nmより厚い膜厚である場合に高解像性を与えていたレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度は、現像残りなど欠陥問題が懸念され、6nm/s以上に設計されている。
本発明者らは、この問題に対し、レジスト膜の膜厚を100nm以下とした場合の上記パターンの崩壊の原因はこの溶解速度設計にあるという作業仮説を立てた。
【0040】
すなわち、このような溶解速度では、レジスト膜厚が100nm以下の場合、スプレー現像では10秒以下で現像が終わることとなり、その後は形成されたパターンが現像終了まで、アルカリ現像液に曝されることになる。更に、酸の拡散により酸濃度が低下し易い基板付近では、パターンとして残存すべき部分の架橋密度が低くなることから、基板界面は侵食され易く、アンダーカットが顕著になる。一方、現像時間の短縮は、欠陥の問題から60秒より短くすることができないため、上記問題を解決するための現実的な解にはならない。
【0041】
そこで、本発明者らは、上記考えから膜厚が100nm以下のレジスト膜において、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度とアンダーカットの発生の関係に注目して多数のサンプルに対して電子線露光によるパターン形成を試みた。
上記検討により、溶解速度の制御はベース樹脂のアルカリ現像液に対して示す溶解速度、あるいは溶解禁止効果の高い酸発生剤の使用で制御できることがわかった。
【0042】
この結果、膜厚90nmのレジスト膜を形成した場合には、アルカリ現像液に対する溶解速度の上限を4.4nm/s以下とした場合には、アンダーカットの無い、線幅50nmのパターンが形成できることが判明した。また、膜厚60nmのレジスト膜を用いた場合には、アルカリ現像液に対する溶解速度が2.4nm/s以下で、アンダーカットの無い、線幅40nm以下のパターンが形成できることが判明し、膜厚100nm以下のネガ型レジスト膜よりパターン形成を行う際のアンダーカットの発生は、使用時(パターン形成時)の膜厚に依存することを見出した。
【0043】
また、溶解速度欠陥を生じることなく、かつ解像性を落とさない溶解速度は、膜厚90nmのレジスト膜を用いた場合、2.0nm/s以上であり、膜厚60nmのレジスト膜を用いた場合は1.0nm/s以上であり、この場合にも膜厚に依存することが見出された。
【0044】
上記で得られた膜厚と良好なパターンを与える溶解速度との関係を、単純な式によるモデル化をすることはできないが、一定の微小閉区間内、すなわち膜厚50nmから100nmの範囲であれば、直線で近似することで、良好なパターンを与える範囲を正しく推定することができる。
この結果、図1のように、50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜の良好なパターンを与える溶解速度の範囲が示され、その範囲はレジスト膜厚50nmから100nmの間において、溶解速度の上限値は0.0667X−1.6(nm/sec)であり、下限値は0.0333X−1.0(nm/sec)の間に含まれるネガ型レジスト組成物が、高解像性と良好なパターンを与えることが判明した。
【0045】
すなわち、本発明者らは、少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物であって、前記パターン形成する際の成膜条件でレジスト膜を成膜した場合に、前記パターン形成する際の現像処理で用いるアルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるネガ型レジスト組成物を用いれば、アンダーカットの発生を防止し、かつ高い解像度で良好なパターンを得ることができることを見出した。
【0046】
本発明は、レジスト膜のアルカリ現像液に対して示す物理特性(溶解速度)から得られる結果であり、少なくとも固形分として上記(A)〜(C)成分を含有する化学増幅型ネガ型レジスト組成物一般に適用可能なものであるが、特に好ましく適用されるレジスト組成物としては、下記の組成物を例示することができる。
【0047】
まず、(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせについて説明する。
【0048】
本発明の50〜100nmの膜厚X(nm)を有する薄膜で高いエッチング耐性を必要とするレジスト膜用に使用する(A)成分のベース樹脂として、芳香族骨格を持つ繰り返し単位を高い組成比で含有する樹脂が有用であり、特に、ベース樹脂を構成する繰り返し単位の95モル%以上が芳香族骨格を有するモノマー構造を持つことが好ましい。また、本発明の溶解速度を得るために適当なアルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基が有用である。
【0049】
上記のようなベース樹脂を構成する芳香族骨格を有する繰り返し単位の好ましい組み合わせとしては、下記構造式(1)〜(3)に示すように主にヒドロキシスチレン単位と電子吸引基が置換されたスチレン単位を繰り返し単位として含むベース樹脂を挙げることができる。
【化10】

【化11】

【化12】

(式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルフォニル基、Rは炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基であり、R′は水素または、直鎖状、分岐状、または環状の炭素数2〜10のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基である。p、q、r、sは正の整数であり、tは0または正の整数である。また、aおよびbは1または2、cは0〜3の整数、dは0〜2である。)
【0050】
上記繰り返し単位は、重合により主鎖を構成するエチレン部分を持ち、それぞれのエチレン部分が公知のラジカル重合(例えば特開2008−249762号公報)等によって樹脂が得られる。この共重合体を得るにはエチレンに対する共役系の存在が必要となり、高い耐エッチング性を得るためには、この共役系として、エチレン部分に直接芳香環が結合されたモノマーが使用されることが好ましい。
【0051】
このようなモノマー骨格は、上記エチレン部分と芳香環が直接結合するものであれば種々のものが利用できるが、特に重合に常用されるスチレン骨格や、エチレン部分が更に環を形成しているインデン骨格、アセナフチレン骨格は、重合性が良く、高解像性も得ることができるため、有用である。
【0052】
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位の酸性によってアルカリ可溶性が得られ、この繰り返し単位の増加によって溶解速度が上昇する。また、4位に水酸基が置換したものに比較して3位に水酸基が置換したものは溶解速度を上げる効果が小さいため、必要に応じてこれらを使い分けることができる。
【0053】
塩素、臭素、ヨウ素、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルフォニル基等の電子吸引基が置換されたスチレンユニットの導入は、そのメカニズムは明らかでないが、架橋剤との反応性を高める役割を有するものと考えられ、現像時の膨潤を抑制する傾向を付与できる。
【0054】
フェノール性水酸基を持たない芳香環を有する繰り返し単位は、ベース樹脂のアルカリ現像液に対する溶解性を制御する役割を有すると同時に、レジストの剛直性を高め、現像時の膨潤を抑制し解像性とエッチング耐性の改善に寄与する。また、フェノール性水酸基をアルキル基またはオキソアルキル基でブロックした繰り返し単位はアルカリ現像液に対する溶解性を制御する役割を有する。オキソアルキル基によるブロックは、フェノール性水酸基のアシルクロライドや酸無水物の反応により容易にアシル化できるため、ベース樹脂のアルカリ溶解性を容易に制御できる利点がある。これらの具体的な例は、例えば特開2006−201532号公報、特開2006−215180号公報、特開2008−249762号公報等に記載がある。
【0055】
一般式(1)〜(3)で示される成分モノマーユニットの組み合わせのうちの、好ましいモノマーユニットの比率(モル比率)としては、一般式(1)において、好ましくは0.5<p/(p+q+t)<0.95、さらに好ましくは0.65<p/(p+q+t)<0.85である。好ましくは0<q/(p+q+t)<0.4、更に好ましくは0.05<q/(p+q+t)<0.3である。好ましくは0≦t/(p+q+t)<0.3である。
また、一般式(2)において、好ましくは0.5<p/(p+q+r+t)<0.95、さらに好ましくは0.65<p/(p+q+r+t)<0.85である。好ましくは0<q/(p+q+r+t)<0.4、更に好ましくは0.05<q/(p+q+r+t)<0.3である。好ましくは0<r/(p+q+r+t)<0.35である。好ましくは0≦t/(p+q+r+t)<0.3である。
また、一般式(3)において、好ましくは0.5<p/(p+q+s+t)<0.95、さらに好ましくは0.65<p/(p+q+s+t)<0.85である。好ましくは0<q/(p+q+s+t)<0.4、更に好ましくは0.05<q/(p+q+s+t)<0.3である。好ましくは0<s/(p+q+s+t)<0.3である。好ましくは0≦t/(p+q+s+t)<0.3である。
【0056】
pの比率が0.85未満であれば未露光部のアルカリ溶解速度が大きくならず、現像後のパターン形成に問題が生じる恐れがない。また、0.65より大きければ微細なパターンの形成が容易であり、現像残りを生じるなどの問題が生じる恐れがない。
qの比率は0.05より大きく、0.3より小さければ、解像度が悪くなったり、現像後に欠陥が発生する恐れがない。
r、sの割合を多くすることでアルカリ溶解性は低下し、エッチング耐性が向上する。rの比率が0.35未満、sの比率が0.3未満であれば、解像力が低下したり、欠陥が発生する恐れがない。
tはアルカリ溶解速度を制御するため、0以上0.3未満で使用するのが好ましい。
p、q、r、s、tはその値を上記範囲内で適宜選定することにより解像力、エッチング耐性、パターン形状コントロールを任意に行うことができる。
【0057】
上記本発明のネガ型レジスト組成物のベース樹脂(A)は、質量平均分子量(測定はポリスチレンを標準サンプルとしたゲルパーミエションクロマトグラフィー:HLC−8120GPC東ソー(株)によるもの)が1,000〜50,000であることが好ましい。
質量平均分子量が1、000以上50,000以下であれば、レジスト材料の耐熱性が十分であり、また、現像後レジストパターンの解像性の低下や欠陥が生じにくい。
【0058】
さらに、本発明のネガ型レジスト組成物のベース樹脂(A)においては、上記一般式(1)、(2)、(3)の共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が狭い場合、低分子量や高分子量のポリマーが存在することが原因となって露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりする恐れが少ない。パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、本発明のように微細なパターン寸法に用いられるレジスト組成物を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.5、特に1.0〜1.8と分散度が低いことが好ましい。
【0059】
重合により得られた上記ベース樹脂の溶解速度(ベース樹脂のみを固形分として成膜した膜が現像液に対して示す溶解速度)は、そのベース樹脂を用いて調製したネガ型レジスト組成物から成膜したレジスト膜の溶解速度を決定する重要な因子となる。そこで、上述のようにモノマー組成の選択によって重合体の溶解速度を制御することが重要であるが、異なる溶解速度を持つベース樹脂の種類や混合比を選択し、混合することによって、目的とする溶解速度を与えるネガ型レジスト組成物を調整することもできる。
【0060】
本発明のネガ型レジスト組成物において、架橋剤は場合によってはベース樹脂にエポキシ基を持つ繰り返し単位を加える等の方法で、ベース樹脂と一体化することも可能であるが、一般的には、本発明のネガ型レジスト組成物には下記のような架橋剤を別に添加する。
【0061】
架橋剤は、下記に詳述する酸発生剤より発生した酸を触媒として、上記ベース樹脂と反応して、ベース樹脂内及びベース樹脂間に架橋を形成し、レジスト膜をアルカリ不溶性とするものである。これは、通常上記ベース樹脂の構成単位に含まれる芳香環あるいは水酸基に対して求電子的に反応して結合を形成する複数の官能基を有する化合物であり、すでに多数の化合物が公知である。
【0062】
本発明のレジスト組成物が含有する架橋剤としては、基本的には公知の架橋剤の何れもが適用可能であるが、好適な架橋剤としてはアルコキシメチルグリコールウリル類、アルコキシメチルメラミン類を挙げることができ、具体的には、アルコキシメチルグリコールウリル類として、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレアが挙げられる。また、アルコキシメチルメラミン類として、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミンが挙げられる。
【0063】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト材料における架橋剤の添加量としては、レジスト組成物中の固形分100重量部に対して2〜40重量部、好ましくは5〜20重量部である。また、上記架橋剤は単独又は2種以上混合して用いることができる。
【0064】
本発明のネガ型レジスト組成物に含まれる(B)成分である酸発生剤は、基本的には化学増幅型レジストに用いることができる公知の酸発生剤(例えば特開2008−249762号公報等に記載されたもの)を使用することができる。
【0065】
好適な光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤等があり、それらは単独あるいは2種以上混合して用いることができる。また、上記塩あるいは化合物より発生するスルホン酸の持つ好適なカウンターアニオンは、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン等を挙げることができる。
【0066】
本発明のネガ型レジスト組成物における(B)成分である酸発生剤の添加量は特に制限されないが、(A)成分であるベース樹脂100質量部に対して好ましくは0.4〜20質量部、更に0.8〜15質量部添加することが好ましい。
酸発生剤添加量と下記に詳述する塩基性成分(C)の添加量を同時に増加させることで感度の確保と解像性の向上が期待できる。一般に(B)成分が20質量部以下であれば、効率的に感度向上効果が得られ、不経済となるおそれがない。また、0.4質量部以上である場合、要求感度を満たすために塩基性成分量を低く抑える必要がないため、形成されるレジストパターンの解像性が低下する恐れがない。
特に放射線照射用や電子線照射用のレジスト膜とする場合には、酸発生剤の添加によるレジスト膜中での照射線のエネルギー減衰が問題にならない一方、高感度が得難いため、酸発生剤の添加量はエキシマレーザー光を使用する場合に比べて高濃度に添加され、2.0〜20質量部程度加えられることが好ましい。
【0067】
上記酸発生剤のうち、下記一般式(4)
【化13】

(式中R、R、Rは水素または炭素数4〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはアルキルオキシ基を表し、すべてが水素になることはない。R、R、Rは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基を表し、同じでも異なってもよい。)
で表される酸発生剤を、単独あるいは一般式(4)で表わされるもののみの2種類以上の混合、場合によっては添加する酸発生剤のうちの目安として80モル%以上となるような組み合わせで用いた場合には、上記(A)成分との組み合わせにおいて特に高い解像度で好適なパターンを得ることができる。これは、特に一般式(4)で表わされる酸発生剤単独あるいは一般式(4)で表わされるもののみの2種類以上の混合においてより好ましい結果が得られる。
【0068】
上記一般式(4)の酸発生剤は溶解禁止効果が高く、レジスト膜のアルカリ現像液に対して示す溶解速度を大きく低下させるため、従来のネガ型レジスト組成物として使用した場合、矩形のパターンが形成できる利点はあるが、現像残りなどの欠陥が起こりやすい問題があった。しかし、本発明のように50〜100nmのレジスト膜を成膜するために用いる場合には、欠陥が生じないようレジスト膜の溶解速度を上手く制御することによりアンダーカットの発生を防止できた微細の矩形のパターンが形成できることがわかった。
【0069】
上記一般式(4)において、R、R、Rを3級アルコキシ基としたものも溶解禁止効果が大きいが、露光・現像後はアルコキシ基が水酸基に変わり溶解禁止効果が小さくなる問題がある。このため、R、R、Rはアルキル基または1〜2級アルコキシ基の選択がより好ましい。
【0070】
レジスト膜のアルカリ現像液に対して示す溶解速度を制御するには、構造式(1)〜(3)に示すベース樹脂との組み合わせ、あるいは他の酸発生剤との混合で、一般式(4)で表わされる酸発生剤を使用すると、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度を容易に制御でき、欠陥のない微細で矩形のパターンが得られる。
【0071】
また、一般式(4)のカウンターアニオンであるベンゼンスルホン酸部は、ベンゼン核に導入されるアルキル基により、酸の拡散制御とパターン形状制御の目的間で適宜調整される。導入されるアルキル基は、メチル基<エチル基<イソプロピル基の順に酸の拡散が抑制されるが、この時同時にレジストの感度は低下する。基本的には酸の拡散を抑制したほうが解像性は向上する傾向にあるが、反応性は低下する場合がある。
【0072】
本発明の(C)成分である塩基性成分として窒素を含有する化合物は、上述した酸発生剤と同様、基本的には化学増幅型レジストに用いることができる公知の塩基性成分を使用することができる。その例としては、特開2008−249762号公報に挙げられているような、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0073】
(C)成分である塩基性成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜2質量部、特に0.01〜1質量部を混合したものが好適である。0.01〜2質量部であると、配合効果が表れ、感度が低下しすぎる恐れがない。
【0074】
上記(C)成分として配合される塩基性成分のうち、少なくともカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、(A)成分であるベース樹脂を含有するネガ型レジスト組成物に用いた場合、他の塩基性成分を使用した場合には、基板付近のパターン端部に未反応部が発生(所謂アンダーカット)してしまうような場合に、その解消を可能にすることから、特に有利な材料である。
このようなアンダーカットを発生し易い基板としては、TiN、SiN、SiON等の窒素化材料基板等があるが、特に表面が金属クロムや窒素および/または酸素を含有するクロム化合物膜の場合には極めて発生し易く、その解消に強い効果を示す。
【0075】
上記少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物の具体的な化学構造例としては、好ましいものとして、下記一般式(5)〜(7)で表される化合物を挙げることができるが、これに限られない。
【化14】

【化15】

【化16】

(式中、R10、R11はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR10、R11のいずれか2個が結合して環構造を形成してもよい。R12は水素、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、あるいはハロゲン基である。R13は炭素数0〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。R14は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R15は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【0076】
上記構造式中、炭素数6〜20のアリール基として具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ナフタセニル基、フルオレニル基を、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、デカヒドロナフタレニル基を、炭素数7〜20のアラルキル基として具体的には、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、アントラセニルメチル基を、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基としては具体的には、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基を、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基として具体的には、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基、t−アミロキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基を、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基として具体的には、ホルミルオキシメチル基、アセトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、ブチリルオキシメチル基、ピバロイルオキシメチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、デカノイルオキシメチル基を、炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基として具体的には、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、プロピルチオメチル基、イソプロピルチオメチル基、ブチルチオメチル基、イソブチルチオメチル基、t−ブチルチオメチル基、t−アミルチオメチル基、デシルチオメチル基、シクロヘキシルチオメチル基を、炭素数1〜20のアルキレン基として具体的には、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、ジメチルエチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、デカニル基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、メチレンシクロヘキシレン基、デカヒドロナフタレニレン基を、炭素数6〜20のアリレーン基として具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基、ピレニレン基、ナフタセニレン基、フルオレニレン基を、それぞれ例示できるが、これらに限定されない。
【0077】
一般式(5)で示されるアミン化合物の好ましい具体例として、o−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸、m−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸、p−ジプロピルアミノ安息香酸、p−ジイソプロピルアミノ安息香酸、p−ジブチルアミノ安息香酸、p−ジペンチルアミノ安息香酸、p−ジヘキシルアミノ安息香酸、p−ジエタノールアミノ安息香酸、p−ジイソプロパノールアミノ安息香酸、p−ジメタノールアミノ安息香酸、2−メチル−4−ジエチルアミノ安息香酸、2−メトキシ−4−ジエチルアミノ安息香酸、3−ジメチルアミノ−2−ナフタレン酸、3−ジエチルアミノ−2−ナフタレン酸、2−ジメチルアミノ−5−ブロモ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−クロロ安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヨード安息香酸、2−ジメチルアミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、4−ジメチルアミノフェニル酢酸、4−ジメチルアミノフェニルプロピオン酸、4−ジメチルアミノフェニル酪酸、4−ジメチルアミノフェニルリンゴ酸、4−ジメチルアミノフェニルピルビン酸、4−ジメチルアミノフェニル乳酸、2−(4−ジメチルアミノフェニル)安息香酸、2−(4−(ジブチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
一般式(6)で示されるアミンオキシド化合物の好ましい具体例としては、上記一般式(5)の具体的に例示されたアミン化合物を酸化したものを挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
一般式(7)で示されるアミン化合物の好ましい具体例としては、1−ピペリジンプロピオン酸、1−ピペリジン酪酸、1−ピペリジンリンゴ酸、1−ピペリジンピルビン酸、1−ピペリジン乳酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
一般式(6)で示されるアミンオキシド構造を有する化合物は、化合物の構造に応じた最適な方法を選択して製造される。例として、窒素含有化合物の酸化剤を使用した酸化反応を用いる方法、あるいは窒素含有化合物の過酸化水素水希釈溶液中での酸化反応を用いる方法を例示できるが、これらに限定されない。以下、詳しく説明する。
【0081】
窒素含有アルコール化合物のエステル化反応による製造法は、例えば下記に示すとおりであり、一般式(6)で示されるアミンオキシド化合物の合成へも適用可能である。
【化17】


(R10、R11、R12、R13は前述の通りである。)
【0082】
上記反応は、酸化剤(m−クロロ過安息香酸)を用いたアミンの酸化反応であり、酸化反応の常法となる他の酸化剤を用いて反応を行うこともできる。反応後は、反応混合物を必要に応じて蒸留、クロマトグラフフィー、再結晶などの常法により精製することができる。
【0083】
これらの分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物において、窒素原子に置換された官能基の存在により発生酸の速やかな捕捉を実現せしめ、一方カルボキシル基が基板側に配列され発生酸が基板へ拡散して失活することを防止する効果があると予想され、これらの結果として高解像性と基板界面での垂直性に優れたパターン形状を達成可能にするものと考えられる。
そこで、上記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物を、揮発性、塩基性度、酸の捕捉速度、レジスト中での拡散速度などの物性に従い、用いる(A)ベース樹脂及び(B)酸発生剤の組み合わせに応じて適当に調節することで、より好ましいパターン形状を得ることができるネガ型レジスト組成物を調整できる。
【0084】
このように、最大限にアンダーカットの改善効果を得るためには、カルボキシル基を有していても、第1級アミンのように塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有するアミン化合物又はアミンオキシド化合物よりも、塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含まない第3級アミンが好ましい。
【0085】
また、弱塩基である2−キノリンカルボン酸やニコチン酸のような塩基性中心である窒素が芳香環に含まれるアミン化合物又はアミンオキシド化合物以外の、塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含まない塩基性成分であれば、カルボキシル基が基板側にうまく配列され、発生酸が基板へ拡散して失活することを防止することができる。
【0086】
また、上記分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物のアンダーカット形状抑制効果は、上述のように、カルボキシル基によって基板付近により偏在するようにしたものであることから、このアンダーカット形状抑制効果を得るためには、(C)の塩基性成分全てが分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物である必要は必ずしもなく、上述の分子内にカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物ではない常用される塩基性成分と組み合わせて用いることができる。
【0087】
上述のようにカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物と、常用のカルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物でないアミン化合物又はアミンオキシド化合物とを混合して用いる場合、上述のカルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物と、その他のアミン化合物又はアミンオキシド化合物との配合比(質量比)は100:0〜10:90の範囲であることが好ましい。
【0088】
また、カルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物とその他のアミン化合物又はアミンオキシド化合物とを混合する場合、その他のアミン化合物又はアミンオキシド化合物としては、下記一般式(8)又は(9)で表されるアミン化合物又はアミンオキシド化合物が好ましく用いられる。
【化18】

【化19】

(式中、R16、R17、R18はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR16、R17、R18の2個が結合して環構造もしくは芳香族環を形成してもよい。)
【0089】
本発明のネガ型レジスト組成物の調整に使用される有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、塩基性成分、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。
このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもネガ型レジスト組成物中の酸発生剤の溶解性が最も優れている乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0090】
有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して1,000〜10,000質量部、特に1400〜9700質量部が好適である。このような濃度に調整することにより、回転塗布法を用い、膜厚が50〜100nmのレジスト膜を安定して平坦度良く得ることができる。
【0091】
本発明のネガ型レジスト組成物には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤(D)を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0092】
界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステリアルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171,F172,F173,R08,R30、R90、R94(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−430,FC−431,FC−4430,FC−4432(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,S−386,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106,サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業(株)製)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)が挙げられる。また、フッ素化オキセタン開環重合物系の界面活性剤は添加量が変化してもレジストの塗布性への影響が小さい利点があり、好ましく用いられる。たとえば、PF−636(オムノバ社製)がある。これらの界面活性剤は単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
本発明のネガ型レジスト組成物中の界面活性剤の添加量としては、ネガ型レジスト組成物中のベース樹脂(A)100質量部に対し2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
【0093】
本発明のパターン形成方法では、少なくとも、上記のネガ型レジスト組成物を用いて被加工基板に膜厚50〜100nmのレジスト膜を成膜し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ現像液を用いて現像してレジストパターンを得る。
【0094】
まず、本発明のネガ型レジスト組成物を使用した被加工基板上へのレジスト膜の成膜は、被加工基板上への本発明のネガ型レジスト組成物の塗付工程、ついでプリベーク工程を経て行うが、これらはいずれも公知の方法を用い、目的に応じて、膜厚が50〜100nmのレジスト膜を成膜することができる。
【0095】
塗付工程は、スピンコーティング以外にもいくつかの方法が知られているが、レジスト膜厚が50〜100nmである薄い膜を成膜する場合、均一な膜厚を得るためはスピンコーティングを用いることが好ましい。
【0096】
被加工基板が半導体ウエハである場合、スピンコーティング時の塗布条件はウエハの大きさ、目標の膜厚、ネガ型レジスト組成物の組成等により条件を調整する必要があるが、8インチウエハを用いて、レジスト膜厚が100nm程度のものを得る場合には、ネガ型レジスト組成物をウエハ上にキャストした後、回転数4000〜5000rpmで40秒間回転させることで、均一性の高いレジスト膜が得られる。ここで、ネガ型レジスト組成物を調製する際に使用する溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して1,400〜1,600質量部である。
【0097】
さらに、上記の方法で成膜されたレジスト膜は、膜中に残存する過剰の溶剤を除去するため、プリベークが行われる。プリベークの条件は、ホットプレート上で行った場合、通常80〜130℃で1〜10分間、より好ましくは90〜110℃で3〜5分間行われる。
【0098】
また、被加工基板がフォトマスクブランクである場合、同様に塗布条件はブランクの大きさ、目標の膜厚、レジスト組成物の組成等により条件を調整する必要があるが、15.2cmx15.2cmの角型ブランク上でレジスト膜厚が100nm程度のものを得る場合には、レジスト組成物をブランク上にキャストした後、回転数1000〜3000rpmで2秒間その後800rpm以下で30秒間回転させることで均一性の高い膜が成膜される。ここで、ネガ型レジスト組成物を調製する際に使用する溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対して2000〜9,700質量部である。
【0099】
さらに、上記の方法で成膜されたレジスト膜は、膜中に残存する過剰の溶剤を除去するため、プリベークが行われる。プリベークの条件はホットプレート上で行った場合、通常80〜130℃で4〜20分間、より好ましくは90〜110℃で8〜12分間行われる。
【0100】
次いで上記で得たレジスト膜に対し、目的のレジストパターンを形成するために露光を行う。露光方法としては、半導体加工を行う場合には、目的のパターンを形成するためのマスクを上記レジスト膜上にかざし、遠紫外線、エキシマレーザー、X線等の高エネルギー線又は電子線を露光量1〜100μC/cm、好ましくは10〜100μC/cmとなるように照射する。露光は通常の露光法の他、必要に応じて投影レンズとレジスト膜の間を液浸するImmersion法を用いることも可能である。
【0101】
また、フォトマスクブランクの加工を行う場合には、加工によって同一のものを多数製造するものではないため、通常ビーム露光によってパターン露光が行われる。使用される高エネルギー線は一般的には電子線であるが、上述のその他の光源をビームとしたものも同様に使用可能である。
【0102】
通常露光後に、酸を拡散させて化学増幅反応を行うため、必要に応じて例えばホットプレート上で、60〜150℃、0.1〜5分間、好ましくは80〜140℃、0.5〜3分間ポストエクスポージャーベーク(PEB)する。
【0103】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは、2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、0.1〜3分間好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像して、基板上に目的のパターンが形成される。また必要に応じて現像後に更に加熱処理を行ってパターンサイズの調整を行うこと(thermal flow)も可能である。
【0104】
この際、本発明のパターン形成方法では、50〜100nmの膜厚(X)を有するレジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるものとされており、このようなレジストパターンの形成方法を用いれば、膜厚が50〜100nmといった薄膜のレジスト膜を用いて、最小線幅が50nm以下のパターンを形成した場合にも、アンダーカットの発生を抑制でき、高解像かつ好ましい形状のレジストパターンを得ることができる。
【0105】
なお、本発明のネガ型レジスト組成物は、特に高エネルギー線の中でも250〜120nmの遠紫外線又はエキシマレーザー、極短紫外線、X線及び電子線による微細パターニングに最適である。
【0106】
本発明のネガ型レジスト組成物を用いたパターンの形成方法を適用するリソグラフィーの対象となる被加工基板は、例えば半導体ウエハや半導体製造中間体基板、フォトマスク基板等のフォトレジストによるリソグラフィーを用いるものであれば何れでも良いが、特に金属化合物をスパッタリング等の方法で成膜した基板においては本発明の効果を有利に得ることができる。
【0107】
中でも最表面に遮光膜あるいはエッチングマスク膜として、クロム化合物膜を成膜したフォトマスクブランクでは、レジストパターンの基板界面における形状制御が難しいため、本発明の効果が顕著に現れる。本発明が有用に適用される基板最表面材料のクロム化合物の例としては、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム、炭化クロム、酸化窒化クロム、酸化炭化クロム、窒化炭化クロム、酸化窒化炭化クロム等が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、(B)エネルギー線照射で酸を生じる酸発生剤及び(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物を含有する化学増幅ネガ型レジスト組成物について、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0109】
実施例及び比較例で使用した(A)ベース樹脂(Polymer1〜10)、(B)酸発生剤(PAG−1、2)の構造を以下に示す。
ベースポリマの分子量(Mw)はゲル浸透クロマトグラフフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算でいずれも5,000(Mw/Mn=1.5)である。
ここでベース樹脂のアルカリ現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)に対する溶解速度は次のように決定した。すなわち、固形分としてベース樹脂10質量部のみをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート30質量部に溶解した溶液を調製して、Si基板上に回転塗布し、150℃で90秒間加熱して約2000nm膜厚のベース樹脂膜を得た。次に、この膜上にアルカリ現像液を供給して10秒間パドル現像し、現像前後の膜厚を膜厚測定装置「ラムダエース」(VM−1210)で測定して減膜量を求め、溶解速度が非常に速い膜に対する初期溶解速度を求める経験式([溶解速度]=([減膜量]/10+17.6)/0.73(nm/s))を用いてベース樹脂の溶解速度を算出した。
【0110】
Polymer−1は下記一般式(1’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=75、q=12、t=13である。アルカリ現像液に対する溶解速度は45nm/sである。
Polymer−2は下記一般式(1’)において、Xはクロル基、Rはナフトイル基を示す。また、p=75、q=12、t=13である。アルカリ現像液に対する溶解速度は40nm/sである。
【0111】
【化20】

【0112】
Polymer−3は下記一般式(2’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=74、q=12、r=12、t=2である。アルカリ現像液に対する溶解速度は32nm/sである。
Polymer−4は下記一般式(2’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=76、q=12、r=12、t=0である。アルカリ現像液に対する溶解速度は36nm/sである。
Polymer−5は下記一般式(2’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基をを示す。また、p=73、q=12、r=15、t=0である。アルカリ現像液に対する溶解速度は28nm/sである。
【0113】
【化21】

【0114】
Polymer−6は下記一般式(3’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=74、q=12、s=12、t=2である。アルカリ現像液に対する溶解速度は30nm/sである。
Polymer−7は下記一般式(3’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=76、q=12、s=12、t=0である。アルカリ現像液に対する溶解速度は34nm/sである。
Polymer−8は下記一般式(3’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=73、q=12、s=15、t=0である。アルカリ現像液に対する溶解速度は26nm/sである。
Polymer−9は下記一般式(3’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=70、q=12、s=15、t=3である。アルカリ現像液に対する溶解速度は20nm/sである。
Polymer−10は下記一般式(3’)において、式中Xはクロル基、Rはアセチル基を示す。また、p=70、q=12、s=18、t=0である。アルカリ現像液に対する溶解速度は16nm/sである。
【0115】
【化22】

【0116】
PAG―1は下記一般式(4’)において、R=ターシャリブチル基、R,R=水素、R、R,R=イソプロピル基である。
【0117】
【化23】

PAG―2はトリフェニルスルフォニウムパラキシレンベンゼンスルホン酸である。
【0118】
実施例及び比較例で使用した有機溶剤を以下に示す。
溶剤(A)プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)
溶剤(B)乳酸エチル(EL)
溶剤(C)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0119】
また、実施例及び比較例で使用した(C)塩基性成分として用いる、カルボキシル基を有し、かつ活性な水素を含有しないアミン化合物又はカルボキシル基を含有しない塩基性化合物(Quencher1〜6)は、以下の化合物である。
【0120】
Quencher−1:p−ジエチルアミノ安息香酸
Quencher−2:p−ジブチルアミノ安息香酸
Quencher−3:1−ピペリジンプロピオン酸
Quencher−4:トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミン
Quencher−5:トリス(2−(メトキシメトキシ)エチル)アミンの酸化物
Quencher−6:N−2−(アセトキシ)エチル−イミダゾール
【0121】
また、(D)界面活性剤としては下記のものを用いた。
界面活性剤A:PF−636(オムノバ社製)
また、架橋剤は下記のものを使用した。
架橋剤:テトラメトキシメチルグリコールウリル
【0122】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
上記ベース樹脂、酸発生剤、塩基性成分、有機溶剤、界面活性剤、架橋剤を下記表1のように調整して実施例1〜6、比較例1〜3のネガ型レジスト組成物を得た。
【0123】
【表1】

【0124】
得られたネガ型レジスト組成物を0.04μmのナイロン樹脂製フィルターで濾過した後、このレジスト液を152mm角の最表面が酸化窒化クロム膜であるフォトマスクブランク上へ1700rpmの回転数でスピンコーティングし、厚さ90nmに塗布した。
【0125】
次いで、このフォトマスクブランクを110℃のホットプレートで10分間ベークしレジスト膜を得た。
ここで、膜厚(X)の測定を光学式測定器ナノスペック(ナノメトリックス社製)を用いて行った。測定はブランク外周から10mm内側までの外縁部分を除くブランク基板の面内81ケ所で行い、膜厚平均値と膜厚範囲を算出した。
【0126】
更に、電子線露光装置(NuFLARE社製 EBM5000 加速電圧50keV)を用いて露光し、120℃で10分間ベーク(PEB:post exposure bake)を施し、2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液でスプレー現像を行うと、ネガ型のレジストパターンを得ることができた。
【0127】
得られたレジストパターンを次のように評価した。
200nmのライン・アンド・スペースのトップとボトムを1:1で解像する露光量を最適露光量(感度:Eop)として、この露光量における分離しているライン・アンド・スペースの最小線幅を評価レジストの解像度とした。また、解像したレジストパターンの形状は、特に基板界面におけるアンダーカットの有無を走査型電子顕微鏡を用いてレジストパターン断面を観察した。
【0128】
また、各ネガ型レジスト組成物から成膜されるレジスト膜のアルカリ現像液(2.38%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシドの水溶液)に対する溶解速度は、表1のネガ型レジスト組成物をSi基板に塗付し110℃でベークしたのち、10秒間パドル現像を行い、現像前後のレジスト膜厚を膜厚測定装置「ラムダエース」(VM−1210)で測定して、算出した。即ち、現像後の膜べり量を10秒で割り、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度(nm/s)とした。
【0129】
解像度およびパターンの断面形状、アルカリ現像液に対するレジスト膜の溶解速度の評価結果を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度が2.0nm/s以上で4.4nm/s以下であれば、50nmのパターンがアンダーカットなく形成できた。溶解速度が2.0nm/s未満の比較例1と比較例2においては、アンダーカットは認められないが50nmのパターン間には現像残りが認められ、50nmのパターンは解像困難であった。
比較例3のように溶解速度が4.4nm/sを超えた場合には、パターンにアンダーカットが認められ、50nmのパターンは倒壊した。
なお、比較例3の溶質成分(ベース樹脂、酸発生剤、塩基性成分、界面活性剤)をそのままで、溶剤量のみを調整したレジスト組成物で、膜厚が150nmのレジスト膜とした場合にはアンダーカットのないパターンが得られている。これは上述のようにスカム発生防止のため溶解速度が4.4nm/sを大きく超えるよう調整されていた従来のレジスト組成物を用いた場合、100nm以下のレジスト膜厚ではアンダーカットが顕著になる例である。
実施例4と比較例3のレジスト膜の溶解速度を比較するとPAG−1はPAG−2よりも溶解禁止効果が大きいことがわかる。
【0132】
(実施例7〜10)
ネガ型レジスト組成物の酸発生剤として、PAG−1とPAG−2を下記表3のように混合して、レジスト膜のアルカリ現像液対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下になるよう本発明のネガ型レジスト組成物を調製し、上記実施例1〜6と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った結果を、アリカリ現像液に対するレジスト膜の溶解速度の結果も含めて、下記表4に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
【表4】

【0135】
アルカリ現像液に対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下となるように調整することにより、何れの実施例においてもアンダーカットの無い50nmのパターンが形成できた。
【0136】
(実施例11〜14)
ネガ型レジスト組成物のベース樹脂として、アルカリ現像液に対する溶解速度の異なるベース樹脂を下記表5のように混合して、レジスト膜のアルカリ現像液対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下になるように本発明のネガ型レジスト組成物を調製し、実施例1〜6と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った結果を、アルカリ現像液に対するレジスト膜の溶解速度の結果も含めて、下記表6に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
【表6】

【0139】
アルカリ現像液に対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下となるように調整することにより、何れの実施例においてもアンダーカットの無い50nmのパターンが形成できた。
【0140】
(実施例15〜20)
ネガ型レジスト組成物の塩基性成分として、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物と、カルボキシ基含有しないアミン化合物とを下記表7に示すように配合した。尚、ベース樹脂としてはpolymer−4を、酸発生剤としてはPAG−1を下記表7のように配合し、レジスト膜のアルカリ現像液対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下になるように本発明のネガ型レジスト組成物を調製し、実施例1〜6と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った。また、レジスト膜の電子線感度も表7に示した。
【0141】
【表7】

【0142】
上記実施例15〜20の組成物により得られたレジスト膜は、いずれも実施例4と等しい溶解速度を与えたが、解像性テストではいずれの実施例においてもアンダーカットの無い50nmのパターンが形成できた。アミン化合物が増加した場合(実施例18〜20)、感度は低下したが、解像性を損なうことはなかった。従って、プロセスで要求される感度を塩基性成分の量で調整できることが判った。
【0143】
(実施例21〜26、比較例4〜7)
実施例及び比較例で用いるネガ型レジスト組成物について、レジスト組成物の濃度を低くした下記表8に示すように配合されたレジスト組成物を調製し、実施例1から8と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成し、その解像性及びパターン形状の評価を行った。レジスト組成物の濃度が低下したため、実施例1〜6と同じ塗布条件で膜厚は60nmと薄くなった。
解像性およびパターンの断面形状、アルカリ現像液に対するレジスト膜の溶解速度の評価結果を表9に示す。
【0144】
【表8】

【0145】
【表9】

【0146】
レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度が1.0nm/s以上2.4nm/s以下であれば、40nmのパターンがアンダーカットなく解像できた。膜厚が90nmの場合、溶解速度が2.0nm/s未満の比較例1と比較例2において、50nmのパターン間には現像残りが認められたが、膜厚が60nmの場合では、溶解速度が2.0nm/s未満の実施例22(1.8nm/s)と実施例25(1.3nm/s)においても現像残りがなく40nmのパターンが解像できた。
溶解速度が1.0nm/s未満の比較例7において、アンダーカットはないが、40nmのパターン間に現像残りが認められ、40nmパターンが解像出来なかった。
比較例4、比較例5、比較例6のように溶解速度が2.4nm/sを超えた場合には、パターンにアンダーカットが認められ、40nmのパターンは倒壊した。膜厚が90nmではアンダーカットが認められなかったが、膜厚が60nmと薄くなることによりアンダーカットが起こりやすくなることが分かる。
【0147】
(実施例27〜32)
ネガ型レジスト材料のベース樹脂として、アルカリ現像液に対する溶解速度の異なるベース樹脂を下記表10のように混合して、レジスト膜のアルカリ現像液対する溶解速度を1.0nm/s以上2.4nm/s以下となるよう本発明のネガ型レジスト組成物を調製し、実施例21〜26と同様にして、ネガ型のレジストパターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った結果を、アルカリ現像液に対するレジストの溶解速度の結果も含めて、下記表11に示す。
【0148】
【表10】

【0149】
【表11】

【0150】
アルカリ現像液に対する溶解速度を1.0nm/s以上2.4nm/s以下となるようにネガ型レジスト組成物を調整することにより、何れの実施例においてもアンダーカットの発生が無い40nmのパターンが形成できた。
【0151】
(実施例33〜39)
ネガ型レジスト組成物として、準備したベース樹脂のうち、アルカリ現像液に対する溶解速度が低めのベース樹脂と、レジスト膜の溶解速度低下効果の小さい酸発生剤であるPAG−2を使用して、下記表12に示すようにレジスト膜のアルカリ現像液対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下になるよう本発明のネガ型レジスト組成物を調製し、実施例1から実施例6と同様に膜厚90nmで、ネガ型のレジストパターンを形成した。その解像性及びパターン形状の評価を行った結果を、アルカリ現像液に対するレジストの溶解速度の結果も含めて、下記表13に示す。
【0152】
【表12】

【0153】
【表13】

【0154】
溶解速度が低いベース樹脂を選択してネガ型レジスト組成物を調整することによって、PAG−1を使用しないで、レジスト膜のアルカリ現像液に対する溶解速度を2.0nm/s以上4.4nm/s以下に制御することができる。
何れの実施例においてもアンダーカットの無い50nmのパターンが形成できた。
【0155】
上記実施例及び比較例から得られたレジストパターンの評価結果を、横軸をレジスト膜の膜厚とし、縦軸をアルカリ現像液に対する溶解速度として図1に示す。
図1からも明らかであるように、レジスト膜を成膜した場合に、アルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるネガ型レジスト組成物を用いてパターンを形成を行えば、膜厚が50〜100nmといった薄膜のレジスト膜を用いて最小線幅が50nm以下のパターンを形成した場合にも、アンダーカット等を生じることなく高解像かつ好ましい形状のレジストパターンを得ることができる。
【0156】
また、上記結果により、50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜し、アルカリ現像液を用いてこのレジスト膜の溶解速度を測定し、この溶解速度が0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値のネガ型レジスト組成物を合格と判定する検査方法を適用することにより、検査に合格したレジスト膜形成用組成物を用いてパターン形成を行うと、アンダーカットの発生が起こり難いことが保証され、高解像かつ好ましい形状のレジストパターンを得ることができることが判った。
【0157】
また、成膜された50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜のアルカリ現像液に対して示す溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるように各材料(ベース樹脂、酸発生剤、塩基性成分等)を選択してネガ型レジスト組成物を調整すると、このネガ型レジスト組成物を用いて目的とする膜厚X(nm)のレジスト膜を成膜し、所定の工程に従いパターン露光、現像を行った場合、高解像かつアンダーカットの発生が抑制されたレジストパターンを与えることができることが判った。また、この際、特に、実施例11〜14、実施例27〜32のように、アルカリ現像液に対して示す溶解速度が異なるベース樹脂の種類及び混合比を選択することによる溶解速度の制御は、有用な本発明のレジスト組成物の調製方法であることが判った。
【0158】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物であって、
該ネガ型レジスト組成物は、前記パターン形成する際の成膜条件でレジスト膜を成膜した場合に、前記パターン形成する際の現像処理で用いるアルカリ現像液に対する溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるものであることを特徴とするネガ型レジスト組成物。
【請求項2】
前記ベース樹脂が、アルカリ可溶性基としてフェノール性水酸基を持ち、前記ベース樹脂を構成する繰り返し単位の95モル%以上は芳香族骨格を有するモノマー構造を持つことを特徴とする請求項1に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項3】
前記ベース樹脂を構成する繰り返し単位の95モル%以上が、下記一般式(1)〜(3)の繰り返し単位の組み合わせのいずれかであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネガ型レジスト組成物。
【化24】

【化25】

【化26】

(式中Xは塩素、臭素、ヨウ素、カルボニル基、ニトロ基、シアノ基、スルフィニル基、スルフォニル基、Rは炭素数2〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基であり、R′は水素または、直鎖状、分岐状、または環状の炭素数2〜10のアルキル基またはオキソアルキル基、置換または非置換のベンゾイル基、ナフトイル基である。p、q、r、sは正の整数であり、tは0または正の整数である。また、aおよびbは1または2、cは0〜3の整数、dは0〜2である。)
【請求項4】
前記(B)成分の酸発生剤は、少なくとも、下記一般式(4)
【化27】

(式中R、R、Rは水素または炭素数4〜10の直鎖状、分岐状、または環状のアルキル基またはアルキルオキシ基を表し、すべてが水素になることはない。R、R、Rは水素、メチル基、エチル基、イソプロピル基を表し、同じでも異なってもよい。)
で表わされる化合物のうち少なくとも1種以上を含むものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の塩基性成分は、少なくとも、カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有しないアミン化合物又はアミンオキシド化合物を1種以上含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項6】
前記カルボキシル基を有し、かつ塩基性中心である窒素原子に共有結合で結合する水素を有さないアミン化合物又はアミンオキシド化合物は、下記一般式(5)〜(7)
【化28】

(式中、R10、R11はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR10、R11のいずれか2個が結合して環構造を形成してもよい。R12は水素、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基、あるいはハロゲン基である。R13は炭素数0〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。)
【化29】

(式中、R10、R11、R12、R13は前述の通りである。)
【化30】

(式中、R14は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状の置換可アルキレン基であり、ただしアルキレン基の炭素−炭素間にカルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィドを1個あるいは複数個含んでいてもよい。また、R15は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基である。)
で表わされる化合物のうち少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項5に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項7】
前記(C)成分の塩基性成分は、更に、下記一般式(8)及び(9)
【化31】

(式中、R16、R17、R18はそれぞれ水素原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基、炭素数3〜10のアシルオキシアルキル基、又は炭素数1〜10のアルキルチオアルキル基である。またR16、R17、R18の2個が結合して環構造もしくは芳香族環を形成してもよい。)
【化32】

(式中、R16、R17、R18は前述の通りである。)
で表されるアミン化合物及びアミンオキシド化合物のうち、少なくとも1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のネガ型レジスト組成物。
【請求項8】
リソグラフィーによりレジストパターンを形成する方法であって、少なくとも、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のネガ型レジスト組成物を用いて被加工基板に膜厚50〜100nmのレジスト膜を形成し、該レジスト膜に高エネルギー線を露光し、その後アルカリ現像液を用いて現像してレジストパターンを得ることを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項9】
前記被加工基板として、フォトマスクブランクを用いることを特徴とする請求項8に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項10】
前記フォトマスクブランクの最表層上に、クロム化合物膜が成膜されていることを特徴とする請求項9に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項11】
少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物の検査方法であって、
該ネガ型レジスト組成物を用いて、前記パターン形成する際の成膜条件でレジスト膜を成膜し、前記アルカリ現像液を用いて該レジスト膜の溶解速度を測定し、該溶解速度が0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下のネガ型レジスト組成物を合格と判定することを特徴とするネガ型レジスト組成物の検査方法。
【請求項12】
少なくとも、
(A)アルカリ可溶性であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となるベース樹脂、及び/又は、アルカリ可溶性であり、酸の作用により架橋剤と反応してアルカリ不溶性になるベース樹脂と架橋剤の組み合わせ、
(B)酸発生剤、
(C)塩基性成分として窒素を含有する化合物
を含有し、レジストパターンを形成するために露光処理、アルカリ現像液による現像処理を施す50〜100nmの膜厚X(nm)を有するレジスト膜を成膜するためのネガ型レジスト組成物の調製方法であって、
該ネガ型レジスト組成物より成膜されたレジスト膜の、前記アルカリ現像液に対して示す溶解速度が、0.0333X−1.0(nm/sec)以上0.0667X−1.6(nm/sec)以下の値となるように各材料を選択して調整することを特徴とするネガ型レジスト組成物の調製方法。
【請求項13】
前記材料の調製を、前記アルカリ現像液に対して示す溶解速度が異なる2種以上の前記ベース樹脂の種類及び混合比を選択することによって行うことを特徴とする請求項12に記載のネガ型レジスト組成物の調製方法。


【図1】
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