説明

ネガ型感光性平版印刷版

【課題】高い耐刷性を有し、且つ耐網絡み性の良好なネガ型感光性平版印刷版を与える。
【解決手段】支持体上に、側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位と側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位を有する重合体、および光重合開始剤を含有する感光層を有するネガ型感光性平版印刷版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はネガ型感光性平版印刷版に関する。詳しくは、高い耐刷性を有し且つ耐網絡み性の良好なネガ型感光性平版印刷版に関する。
【背景技術】
【0002】
製版システムのデジタル化に伴いコンピューター画面上で組版したデータを、直接平版印刷版に出力するコンピュータートゥープレートシステム(CTP)に適した平版印刷版の需要が高まっている。近年、画像形成技術の進歩に伴い、各レーザー種に対して高感度を示す感光性平版印刷版が求められるようになっており、例えば、青紫色半導体レーザー(バイオレットレーザー)、アルゴンレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、赤色LED、近赤外レーザー、赤外レーザー等を用いた出力機に対応した高画質の感光性平版印刷版の研究が活発に行われている。
【0003】
従来から知られている光重合性の感光層を有するネガ型感光性平版印刷版としては、例えば特開平9−134007号公報にはエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合可能な化合物と増感剤と重合開始剤を含有するネガ型感光性平版印刷版が開示されており、また特開2000−98603号公報等には、有機ホウ素アニオンと色素との組み合わせが開示されており、特開平4−31863号公報、特開平6−43633号公報等には色素とs−トリアジン系化合物との組み合わせが開示されており、特開2001−290271号公報(特許文献1)等には側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する重合体を用いたネガ型感光性平版印刷版が開示されている。
【0004】
上記した光重合性のネガ型感光性平版印刷版の現像工程には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸カリウム等の強アルカリ性化合物を溶解したpH値が10.0以上のアルカリ性現像液が一般的に使用される。また現像処理工程を安定にするため、自動現像機の各液は、液補充等により安定化を図っており、かかる処理液費用や廃液費用のコスト面、さらに環境負荷の観点からも大きな課題であった。
【0005】
このような課題を解決する方法として、pH9.5以下の実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルフリーの処理液で現像する印刷版システムの開発が近年活発に行われている。このようなシステムの中でレーザー光を利用した光重合系の印刷版システムの例として、特開2003−215801号公報(特許文献2)が挙げられる。これは実質的にアルカリ剤を含有しない現像液による現像が可能な感光性組成物として、側鎖にフェニル基を介してビニル基が結合したカチオン性重合体や、側鎖にフェニル基を介してビニル基が結合したスルホン酸基を有する重合体等の水溶性重合体を用いた系に関して記載されている。特開2010−164907号公報(特許文献3)では前述の重合体、光重合開始剤及びシアニン色素を用いた系について、特開2010−230715号公報(特許文献4)等では、前述の水溶性重合体、光重合開始剤及び重合性架橋剤を併せて用いた系に関して記載されている。しかしながらこのような水溶性重合体を光重合開始剤との組み合わせで用いる場合では、得られる画像の親水性が比較的高いために、画像部分が高い疎水性を保つことが困難であり、その結果高い耐刷性を保つことが困難であった。
【0006】
特開2010−168509号公報(特許文献5)には、感光層にポリオルガノシロキサンを添加することで高い耐刷性を得る方法が記載されている。また、特開2002−287380号公報(特許文献6)、特開2008−015504号公報(特許文献7)では、走査露光での製版後に後露光することで画像を強化する方法が開示されている。しかし、これらの方法によって耐刷性は改善されるものの、印刷時に網部分の非画像部にまでインキが着肉し、シャドー部がベタ画像となってしまう、いわゆる網絡みが発生する場合があり、改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−290271号公報
【特許文献2】特開2003−215801号公報
【特許文献3】特開2010−164907号公報
【特許文献4】特開2010−230715号公報
【特許文献5】特開2010−168509号公報
【特許文献6】特開2002−287380号公報
【特許文献7】特開2008−015504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高い耐刷性を有し、且つ耐網絡み性の良好なネガ型感光性平版印刷版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の上記課題は以下の発明により解決された。
(1)支持体上に、側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位と側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位を有する重合体、および光重合開始剤を含有する感光層を有するネガ型感光性平版印刷版。
【発明の効果】
【0010】
本発明により高い耐刷性を有し、且つ耐網絡み性の良好なネガ型感光性平版印刷版を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層は、側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位と側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位を有する重合体(以下本発明の重合体とも称す)を含有する。
【0012】
本発明の重合体が有する、側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位とは、下記一般式1の構造を有する繰り返し単位である。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、R、R、Rはそれぞれ同じであっても異なってもよく、R、Rは水素原子もしくはアルキル基を表し、Rはアルキル基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。中でもRは水素原子、メチル基であることが好ましく、Rは、水素原子、メチル基、エチル基であることが好ましく、Rは、メチル基、エチル基であることが好ましい。mは1〜3の整数を表し、mが1の場合にはmは0〜2の整数を表し、mが2の場合にはmは0もしくは1を表し、mが3の場合にはmは0を表す。
【0015】
一般式1式中、Lは水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群からなる連結基であり、具体的には下記に例示される構造単位1から、あるいは下記に例示される構造単位1の2つ以上の任意の基が組み合わされることで構成される連結基が挙げられる。中でもエステル構造を介して主鎖と結合するアルキレン基が連結基である場合あるいは、フェニレン基が連結基である場合が好ましく、エステル構造を介して主鎖と結合するアルキレン基が連結基である場合が特に好ましい。
【0016】
【化2】

【0017】
また上述した連結基は置換基を有していてもよく、そのような置換基としては例えば、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0018】
本発明の重合体に、上記した側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位を導入するために用いられるモノマーとして、市販されているシランカップリング剤を利用することが可能である。このようなモノマーとしては例えば、信越シリコーン(株)製KBM−5103(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBM−502(3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−502(3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)、KBE−503(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM−1403(p−スチリルトリメトキシシラン)等が挙げられる。これらのモノマーを重合することでアルコキシシリル基を側鎖に導入した重合体を得た後さらにモノマーユニットが有するアルコキシシリル基を、重合の前後の過程において加水分解し、シラノール基にすることで、本発明の化合物を得ることができる。アルコキシシリル基は完全に加水分解されずにアルコキシシリル基として残存していてもよい。シラノール化される比率は30〜100%であることが好ましく、60〜95%であることが特に好ましい。また、シラノール基同士は溶解性を確保できる程度になら縮合することも可能であるが、シラノールの縮合が進行し過ぎると、ゲル化し溶媒への溶解性が確保できないため、シラノール基の縮合率は30%以下であることが好ましく、10%以下が特に好ましい。
【0019】
本発明の重合体中における、側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位構造が占める割合は、共重合体トータル組成100質量%中における各繰り返し単位の1〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0020】
次に本発明の重合体が有する、側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位について説明する。この重合性二重結合基は主鎖から任意の連結基を介して(この連結基はあってもなくてもよい)側鎖に結合しており、具体的には下記一般式2の構造を側鎖に有する繰り返し単位である。
【0021】
【化3】

【0022】
式中、Lは連結基を表し、Rは重合性二重結合基を有する構造単位を表す。pは0または1の整数を表す。pが0の場合、qは1を表し、pが1の場合、qは1〜4の整数を表す。
【0023】
式中、Rで表される構造単位が有する重合性二重結合基としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、及び後述するビニル基が置換したフェニル基等が挙げられる。中でもビニル基が置換したフェニル基、もしくはアクリル基もしくはメタクリル基を重合性二重結合基として有する繰り返し単位が好ましく用いられ、ビニル基が置換したフェニル基を重合性二重結合基として有する繰り返し単位が特に好ましく用いられる。
【0024】
式中、Lは水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群からなる多価の連結基であり、具体的には前述した一般式1のLと同様、前記した構造単位1から、あるいは構造単位1の2つ以上の任意の基が組み合わされることで構成される連結基が挙げられる。またこれらの連結基は置換基を有していても良い。
【0025】
本発明の重合体において、特に好ましい側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位としては、連結基Lが複素環を含む繰り返し単位が好ましい。連結基を構成する複素環の例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環は置換基を有していても良い。
【0026】
上述した連結基Lが置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
【0027】
重合性二重結合基であるビニル基が置換したフェニル基は、詳細には下記一般式3で表される。
【0028】
【化4】

【0029】
式中、R、R及びRは、同じであっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表し、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。これらの基の中でも、R、Rが水素原子であり、Rが水素原子もしくは炭素数5以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)であるものが特に好ましい。
【0030】
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表す。また、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。式中、mは0〜4の整数を表す。
【0031】
本発明の重合体における重合性二重結合基の連結した繰り返し単位構造が占める割合は、共重合体トータル組成100質量に対して、5〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。
【0032】
本発明の重合体は、後の現像工程における非画像部の溶解除去性の観点から、上述した側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位、及び側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位に加え、さらにカルボキシル基、スルホン酸基、及び四級アンモニウム基から選ばれる基を少なくとも有する繰り返し単位を有する重合体であることが好ましい。中でも現像性の高さからスルホン酸基を導入することが特に好ましい。スルホン酸基を有する繰り返し単位を導入することで、実質的にアルカリ剤を含有しないpHが9.5以下のケミカルフリー現像液で現像した際の、良好な非画像部の溶解除去性を付与することが可能となる。さらに上記したカルボキシル基及びスルホン酸基は塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アミン塩等)を形成することが溶解性の観点からより好ましい。
【0033】
本発明の重合体において好ましく導入される、カルボキシル基、スルホン酸基、及び四級アンモニウム基から選ばれる基を少なくとも有する繰り返し単位が占める割合は、共重合体トータル組成100質量に対して、20〜80質量%であることが好ましく、35〜65質量%であることが特に好ましい。
【0034】
本発明の重合体は、上述した側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位、側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位、及びカルボキシル基、スルホン酸基、四級アンモニウム基から選ばれる基を少なくとも有する繰り返し単位に加え、本発明の効果を妨げない限り、さらに他の繰り返し単位を導入した重合体であっても良い。他の繰り返し単位を導入した重合体の場合、導入する他のモノマーは1種で用いても良いし、任意の2種類以上であっても良い。
【0035】
本発明の重合体の具体例を以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例示された構造式の中の数字は共重合体トータル組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。また、シラノール基の横に記載するパーセンテージは加水分解することでシラノール基になっている比率を表す。
【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
本発明の重合体の重量平均分子量は、1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から60万の範囲にあることが特に好ましい。本発明の重合体は1種のみの単独で用いても良いし、任意の2種以上を混合して用いても良い。
【0040】
本発明の重合体は感光層の総固形分量の5〜70質量%の範囲で含まれていることが好ましく、30〜60質量%の範囲で含まれていることがさらに好ましい。
【0041】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層は光重合開始剤を含有する。かかる光重合開始剤としては、従来から知られる公知の化合物を用いることができる。例えば、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、有機ホウ素塩、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特にトリハロアルキル置換化合物、有機ホウ素塩が好ましく用いられる。さらに好ましくは、トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせて用いることである。トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせることで発生したラジカル種が安定し、高感度化を達成することができる。
【0042】
光重合開始剤であるトリハロアルキル置換化合物は、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられる。
【0043】
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物の特に好ましい例を以下に示す。
【0044】
【化8】

【0045】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式4で表される。
【0046】
【化9】

【0047】
式中、R、R10、R11及びR12は各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらのうちで、R、R10、R11及びR12のうちの一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0048】
有機ホウ素塩を構成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン及びオニウム化合物が挙げられるが、好ましくはオニウム塩であり、例えばテトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
上述したような光重合開始剤の含有量は、感光層の総固形分質量に対して1〜50質量%の範囲で使用することが好ましく、さらには3〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0052】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層には前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大する化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報等に記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報等に記載されるスチリル系色素、あるいは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらのうち、シアニン系色素またはクマリン系化合物あるいは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。
【0053】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層は、重合性二重結合基を有する低分子化合物を含有することが架橋効率の上から好ましい。この場合の重合性二重結合基を有する低分子化合物とは、上記の光重合性開始剤の光分解により発生するラジカルにより重合を行う化合物であればいずれも好ましく用いることができる。さらには、分子内に2個以上の重合性二重結合基を有する化合物を含んで用いた場合には、効率よく架橋し、より堅い画像部皮膜を形成することから耐刷性及びインキ乗り性に優れた印刷版を与えるため極めて好ましく用いることができる。こうした目的で用いることのできる重合性二重結合基を有する化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー等を挙げることができ、あるいはアクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。こうした重合性二重結合基を有する低分子化合物を用いる場合には、感光層の総固形分量に対して10〜50質量%の範囲で含まれていることが好ましい。重合性二重結合基を有する低分子化合物の重量平均分子量は、2000以下であることが好ましい。
【0054】
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層を構成するその他の要素として、視認性を高める目的で種々の着色剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で添加される着色剤として着色顔料の水系分散物が最も好ましく用いることができる。こうした顔料の水系分散物の例として各種、黒色、青色、赤色、緑色、黄色等の着色した顔料が水溶性である各種分散剤の存在下に水中で分散された任意の素材が使用可能である。顔料として特に、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等は入手が容易であり水中での分散も比較的容易であるため特に好ましく用いることができる。また、こうした顔料を水中で分散させるために用いることのできる分散剤の例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン基を有する水溶性であるノニオン系界面活性剤や、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ポリスチレン−マレイン酸共重合体、その他各種水溶性高分子が挙げられる。こうした分散剤は着色顔料100質量部に対して5〜50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。さらに着色顔料を用いる場合には、感光層の総固形分量に対して0.1〜30質量%の範囲で含まれていることが好ましい。
【0055】
感光層を構成するその他の要素として、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、感光層の総固形分量に対して0.01〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0056】
本発明のネガ型感光性平版印刷版が有する支持体としてはアルミニウム支持体、各種プラスチックフィルム、各種プラスチックによりラミネートされた紙が挙げられる。中でも柔軟性があり、張力による変形の少ない素材である各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。好ましいプラスチックフィルム支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。これらのプラスチックフィルム支持体の感光層を塗布する面には、例えば特開2008−250195号公報や特開2008−265297号公報等に記載される水溶性重合体、コロイダルシリカ及び架橋剤から構成される親水性層を有することが好ましい。また、親水性層を設ける前に、プラスチックフィルム支持体表面に親水化加工が施されていることが好ましく、こうした親水化加工としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。更なる親水化加工として支持体上に設ける親水性層との接着性を高めるため支持体上に下引き層を設けても良い。
【0057】
支持体としてアルミニウム板を使用する場合には、粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が好ましく用いられる。さらに、表面をシリケート処理したアルミニウム板も好ましく用いることができる。あるいは、さらに表面に上記の親水性層を形成したアルミニウム板を用いることもできる。
【0058】
感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3〜10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらに0.5〜3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。
【0059】
本発明のネガ型感光性平版印刷版においては、感光層の上に、さらに保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光感度をさらに向上させる好ましい効果を有する。さらには感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素や低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、さらに、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光硬化性感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
【0060】
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等のような水溶性ポリマーが知られているが、これらのうち、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1〜10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、さらには0.2〜2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて感光層上に塗布、乾燥される。
【0061】
本発明のネガ型感光性平版印刷版における下引き層、親水性層、感光層、保護層等を塗布する場合は、支持体上に、上述した要素から構成される組成物の塗液を塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、バーコーター塗布、カーテン塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。
【0062】
本発明のネガ型感光性平版印刷版における感光層は、ケミカルフリー現像液によって溶解できることが好ましい。これに用いられる現像液は、従来から一般に用いられているアルカリ剤を多量に含有する強アルカリの現像液(通常pH9.5を超える)とは異なり、実質的にアルカリ剤は含まない。従って、本発明のケミカルフリー現像に用いられる現像液のpHは9.5以下であり、好ましくはpH8以下である。pHの下限は3程度である。本発明のケミカルフリー現像に用いられる現像液は、水が現像液全体の70質量%以上、さらには80質量%以上を占めるものであり、他に添加剤として、エタノール、イソプロパノール、n−ブチルセルソルブ、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種有機溶剤、あるいは、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の界面活性剤等を添加することもできる。これらの添加剤は現像液総質量に対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は断りのない限り質量基準である。
<本発明の重合体及び比較例の化合物の合成>
・本発明の重合体1(SP−1)
グリシジルメタクリレート26.5g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0g、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸40.0g、トリエチルアミン24.3g及びN,N−ジメチルホルムアミド200gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら、温度65℃に加温した。2,2′−アゾビスイソブチロニトリル(略称AIBN)1.0gを加え8時間攪拌した後、一度冷却しAIBNの失活を待った。次に、この反応混合物にアクリル酸27.0g、t−ブチルハイドロキノン0.5g、テトラブチルアンモニウムクロライド5.0gを加え、温度90℃にて、5時間攪拌した後、純水50gを添加し50℃で3時間攪拌した。酢酸エチルに移し沈殿した固形分をデカンテーションにより回収し、乾燥することで本発明の重合体を得た。収率は80%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は5.5×10であった。
【0064】
・本発明の重合体2(SP−4)
特開2001−290271号公報に記載される合成例に従って、p−クロロメチルスチレン(AGCセイミケミカル株式会社製CMS−14)とビスムチオールから下記(M−1)で示される化合物(以下M−1と称する)を得た。
【0065】
【化12】

【0066】
M−1 27.9g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0g、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸40.0g、トリエチルアミン24.3g及びテトラヒドロフラン200gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら、温度65℃に加温した。AIBN1.0gを加え8時間攪拌した後、一度冷却しAIBNの失活を待った。次に、この反応物にp−クロロメチルスチレン15.6g、t−ブチルハイドロキノン0.5g、純水50gを加え、温度50℃にて3時間攪拌した。酢酸エチルに移し沈殿した固形分をデカンテーションにより回収し、乾燥することで本発明の重合体を得た。収率は80%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は5.5×10であった。
【0067】
・本発明の重合体3(SP−5)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0gを3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン10.0gに変え合成した。収率は72%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は4.7×10であった。
【0068】
・本発明の重合体4(SP−6)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0gを3.0gに変え、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸50.0gを57.0gに変え合成した。収率は67%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は5.2×10であった。
【0069】
・本発明の重合体5(SP−7)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0gをp−スチリルトリメトキシシラン10.0gに変え合成した。収率は55%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は6.3×10であった。
【0070】
・本発明の重合体6(SP−9)
M−1 27.9g、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0g、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸40.0g、トリエチルアミン24.3g及びテトラヒドロフラン200gの混合溶液を、窒素気流下攪拌しながら、温度65℃に加温した。AIBN1.0gを加え8時間攪拌した後、一度冷却しAIBNの失活を待った。次に、この反応物に、p−クロロメチルスチレン15.6g、t−ブチルハイドロキノン0.5g、純水10gを加え、温度50℃にて3時間攪拌した。メタノールに移し沈殿した固形分をデカンテーションにより回収し、乾燥することで本発明の重合体を得た。収率は80%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は5.5×10であった。
【0071】
・比較の重合体(CP−1)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0gをアクリル酸n−オクチル10.0gに変え合成した。収率は72%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は5.2×10であった。
【0072】
・比較の重合体(CP−2)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10.0gを添加せず合成した。収率は68%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は6.2×10であった。
【0073】
・比較の重合体(CP−3)
前述の本発明の重合体2と同じ合成方法で、M−1を添加せず合成した。収率は65%であった。NMRで構造を確認し、GPCにより測定された重量平均分子量は6.4×10であった。
【0074】
なおこれらの重合体の加水分解率は反応時と同溶媒、温度条件における、アクリロキシシリル基を有するモノマーの加水分解挙動をGCにより分析し、参考にした。
【0075】
以下に前述のCP−1〜CP−3の構造を示す。
【0076】
【化13】

【0077】
<支持体>
厚みが100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記の親水性層処方にてワイヤーバーで乾燥質量が2.0g(1平方メートル当たり)になるように親水性層の塗布を行い、60℃の乾燥機にて3分間乾燥を行い、さらに乾燥物を40℃の乾燥機にて2日間加熱を行い、親水性層を有する支持体を得た。
【0078】
<親水性層処方>
水溶性重合体 下記構造(重量平均分子量20万) 1質量部
コロイダルシリカ分散液
スノーテックスS (日産化学工業(株))固形分濃度30% 1.5質量部
架橋剤 下記構造 0.3質量部
pH調整剤(水酸化ナトリウム水溶液もしくは硫酸水溶液にてpH5.0に調整)
イオン交換水 20質量部
【0079】
【化14】

【0080】
<感光層>
下記感光層処方に従い、塗布液を作製し、前記親水性層を塗布した支持体の親水性層上に固形分量が1.5g/mになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて10分間乾燥を行った。
<感光層処方>
本発明の重合体もしくは比較例の化合物 表1記載
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 1質量部
光重合開始剤 BC−6 0.1質量部
光重合開始剤 T−8 0.1質量部
増感剤 下記構造 0.05質量部
着色剤 ピグメントブルー15 0.2質量部
アセトン 5質量部
エタノール 5質量部
テトラヒドロフラン 10質量部
【0081】
【表1】

【0082】
【化15】

【0083】
<保護層>
下記保護層処方に従い、塗布液を作製し、前記感光層上に固形分量が1.5g/mになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて10分間乾燥を行いネガ型感光性平版印刷版を得た。
【0084】
<保護層処方>
ポリビニルアルコール PVA−105((株)クラレ製) 1質量部
イオン交換水 9質量部
【0085】
<ネガ型感光性平版印刷版の製版>
得られた上記ネガ型感光性平版印刷版について、露光装置として、405nmに発光する青紫半導体レーザー(出力50mW)を用いて、版面露光エネルギー200μJ/cmに設定してテストパターンを描画した。描画したネガ型感光性平版印刷版について、25℃のイオン交換水に15秒漬けてセルローススポンジで感光層を有する側の面を擦り、現像し乾燥したものを下記耐刷性の評価を行った。なお比較例1及び比較例4では画像が形成されなかったため、以下の試験を実施しなかった。
【0086】
<耐刷性の評価>
印刷機RYOBI3200CCD、インキはスペースカラーフュージョン(N)(DICグラフィックス(株)製)及び市販のPS版用給湿液(SLM−OD50 三菱製紙(株)製)2%水溶液を用いて8000枚印刷を行った。印刷開始から8000枚の印刷終了した刷了版のインキをプレートプリザーバー(光陽化学工業(株)製)で除去し、DM−620(大日本スクリーン製造(株)製)で測定し、印刷前のベタ部分の反射濃度と比較することで、耐刷性を評価した。
5:8000枚刷了後の印刷版の反射濃度値が印刷前の80%以上。
4:8000枚刷了後の印刷版の反射濃度値が印刷前の70%以上80%未満。
3:8000枚刷了後の印刷版の反射濃度値が印刷前の60%以上70%未満。
2:8000枚刷了後の印刷版の反射濃度値が印刷前の50%以上60%未満。
1:8000枚刷了後の印刷版の反射濃度値が印刷前の50%未満。
【0087】
<耐網絡み性の評価>
耐刷性評価と同印刷条件で印刷を行った。製版物の80%網点部が印刷物で90%未満になった枚数を下記の基準で評価した。
5:10枚以下印刷時に上記条件を達成した。
4:11〜20枚印刷時に上記条件を達成した。
3:21〜30枚印刷時に上記条件を達成した。
2:31〜50枚印刷時に上記条件を達成した。
1:51枚以上印刷時に上記条件を達成した。
【0088】
【表2】

【0089】
以上の結果より、本発明の重合体を添加した系で高い耐刷性が得られ、且つ良好な耐網絡み性が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、側鎖に重合性二重結合基を有する繰り返し単位と側鎖にシラノール基を有する繰り返し単位を有する重合体、および光重合開始剤を含有する感光層を有するネガ型感光性平版印刷版。

【公開番号】特開2013−20103(P2013−20103A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153484(P2011−153484)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】