説明

ネガ型感光性組成物

【課題】感光性、耐熱性、透明性、保存安定性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は、多官能性シアネートエステルプレポリマー、(B)光酸発生剤を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板や半導体素子等に塗布し、永久保護膜、層間絶縁膜、バッファーコート膜、光導波路等に利用可能なレリーフパターンが形成できる感光性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、優れた感光特性を有し、かつ加熱硬化後のレリーフパターンが高い耐熱性を有する高性能なネガ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の絶縁材料や、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などには、ポリイミドをはじめとする耐熱性樹脂が、優れた耐熱性や電気特性、力学特性等を活かして広く利用されている。
【0003】
このような中、プリント基板上や半導体素子上のパターン形成は、基材表面へのレジスト材の製膜、所定箇所への露光、現像やエッチング等による不要箇所の除去、基板表面の洗浄等の多岐にわたる工程を経てパターン形成が行われることから、レジスト材としては、露光、現像によるパターン形成後も必要な部分をそのまま残して用いることが可能な感光性樹脂組成物が望まれている。
【0004】
前記感光性樹脂組成物として、耐熱性に優れた感光性ポリイミドが挙げられ、例えばポリイミド前駆体の酸官能基に対し、感光基を有する化合物を付加もしくは混合する方法などが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、ポリイミド前駆体あるいはその付加体を用いる場合は、パターン形成に際して300℃以上の高温でのキュアによるイミド化を必要とし、基板等がその温度に耐えられない場合は使用できないという問題を有している。
【0006】
また、加熱キュアにおいて、感光性化合物または感光性基が揮発するために、キュア後の硬化物は著しく収縮してしまうという問題もあった。
【0007】
前記感光性樹脂組成物として、エポキシ基を含有する化合物に、UVによって硬化可能な不飽和基を含有する化合物などを添加したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0008】
しかしながら、前記エポキシ基を含有する樹脂組成物に含まれるC=C二重結合は暗反応により重合する可能性があり、経時による粘度変化が起こるため保存性が悪く、初期の樹脂特性や感光特性を維持することが困難であった。
【0009】
シアネート樹脂は触媒の存在下、200℃程度の温度でも熱硬化可能であり、またその耐熱性も高く、更に硬化前後での寸法変化も極めて小さいことなどが特徴の熱硬化性樹脂であり、感光性シアネート樹脂として、多官能シアネートエステル化合物または該プレポリマーに光酸発生剤を添加したものが提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。
【0010】
しかしながら、前記光酸発生剤によって発生した酸のみでは、シアネートエステル樹脂の硬化触媒能は十分ではなく、現像時に露光部の溶解が起こることから鮮明なパターンが得られ難い、すなわち感光性が十分ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭59−52822号公報
【特許文献2】特開昭59−52823号公報
【特許文献3】特許3316015号公報
【特許文献4】特開2001−324810号公報
【特許文献5】特開2001−207057号公報
【特許文献6】特開平6−70712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、耐熱性、感光性、透明性、及び、保存安定性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、以上の問題を鑑み、鋭意検討を積み重ねた結果、多官能性シアネートエステル化合物、光酸発生剤を含有する樹脂組成物によって上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
1.(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は該シアネートエステルプレポリマー、(B)光酸発生剤を必須成分として含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
2.(A)成分100質量部に対し(B)の光酸発生剤の含有量が0.01〜20質量部の範囲である、1.のネガ型感光性樹脂組成物。
3.アクリレート、エポキシまたはマレイミドであるからなる群より選択される有機モノマもしくはポリマをさらに含有してなる、1.〜2.のいずれかのネガ型感光性樹脂組成物。
4.光ラジカル発生剤をさらに含有する、1.〜3.のいずれかのネガ型感光性樹脂組成物。
5.樹脂組成物を膜厚約30μmのフィルム状物としたとき、450nmで測定した吸光度が3.0×10−4/μm以下である1.〜4.のいずれかのネガ型感光性樹脂組成物。
6.1.〜5.のいずれかのネガ型感光性樹脂組成物を用いたドライフィルム。
7.1.〜5.のいずれかのネガ型感光性樹脂組成物または6.のドライフィルムを用いた光導波路、を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより、感光性、透明性、保存安定性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を得ることができ、これにより、感光性、耐熱性、及び、寸法安定性に優れたレリーフパターンを形成できる感光性樹脂(感光性樹脂組成物層)を提供することが可能になり有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらは本発明の実施形態の一例であり、これらの内容に限定されるものではない。
【0016】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は該シアネートエステルプレポリマー、(B)光酸発生剤を含有する。
【0017】
ここで用いる多官能性シアネートエステル化合物は、硬化物を形成する際、その強度や耐熱性、透明性などを確保するためのものであり、該目的を達成し得るものであれば特に限定されない。多官能性シアネートエステル化合物としては公知のものを含め特に限定はされないが、例えば、1,3−ジシアネートベンゼン、1,4−ジシアネートベンゼン、2−tert−ブチル−1,4−ジシアネートベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアネートベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアネートベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアネートベンゼン、4−クロロ−1,3−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、2,2’−ジシアネートビフェニル、4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートビフェニル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−2,2’−ジシアネートビフェニル、1,3−ジシアネートナフタレン、1,4−ジシアネートナフタレン、1,5−ジシアネートナフタレン、1,6−ジシアネートナフタレン、1,8−ジシアネートナフタレン、2,6−ジシアネートナフタレン、2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,6−トリシアネートナフタレン、4,4’−ビス〔(3−シアネート)フェノキシ〕ジフェニル、4,4’−ビス−〔(4−シアネート)フェノキシ〕ジフェニル、2,2’−ジシアネート−1,1’−ビナフチル、4,4’−ジシアネートジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートエーテル、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートフェニルエーテル、4,4’−ビス〔p−シアネートフェノキシ〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔p−シアネートフェニルイソプロピル〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔p−シアネートフェノキシ〕ベンゼン、4,4’−ビス〔m−シアネートフェノキシ〕ジフェニルエーテル、4,4’−ビス〔4−(4−シアネートフェノキシ)フェニルスルホン〕ジフェニルエーテル、4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔p−シアネートフェニルイソプロピル〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔(4−シアネート)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔(3−シアネート)−フェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔4−(4−シアネートフェニルイソプロピル)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔4−(4−シアネートフェニルスルホン)フェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ビス〔4−(4−シアネート)ジフェノキシ〕ジフェニルスルホン、4,4’−ジシアネートジフェニルメタン、4,4’−ビス(p−シアネートフェニル)ジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−シアネートフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジメチル−4−シアネートフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジクロロ−4−シアネートフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3,5−ジブロモ−4−シアネートフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニル)エタン、1,1’−ビス(p−シアネートフェニル)シクロヘキサン、ビス(2−シアネート−1−ナフチル)メタン、1,2−ビス(p−シアネートフェニル)−1,1,2,2−テトラメチルエタン、4,4’−ジシアネートベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−シアネート)フェノキシベンゾフェノン、1,4−ビス(p−シアネートフェニルフェニルイソプロピル)−ベンゼン、ジアリルビスフェノールAシアネートエステル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、2,2−ビス(4−シアネートフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、ノボラックフ型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等が挙げられ、中でも、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンや1,1−ビス(4−シアネートフェニル)エタンが透明性、取り扱い容易性、入手容易性などの点で、好ましい。また、これらの多官能性シアネートエステル化合物は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0018】
多官能性シアネートエステルプレポリマーは、多官能性シアネートエステル化合物を重合することにより得ることができる。多官能シアネートエステル化合物の重合反応とは、シアネート基が3量化し、トリアジン環を形成する反応のことである。シアネート基は約230℃以上の温度で反応することが知られているが、この反応を促進するために触媒を添加することができる。例えば、塩酸、リン酸に代表されるプロトン酸;塩化アルミニウム、塩化亜鉛に代表されるルイス酸;フェノール、ピロカテコール、ジヒドロキシナフタレンに代表される芳香族ヒドロキシ化合物;ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機金属塩;銅アセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、鉄アレーン錯体、ルテニウムアレーン錯体などに代表される有機金属錯体;トリエチルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン類;塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウムに代表される4級アンモニウム塩;イミダゾール類、水酸化ナトリウム、トリフェニルホスフィン、およびこれらの混合系などを挙げることができる。これらの触媒の中でも、触媒能、透明性を両立している点から、好ましくはオクチル酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの有機金属塩を挙げることができる。これらの触媒はシアネートエステル化合物に対して任意の割合で添加することができるが、好ましくは多官能性シアネートエステル化合物100重量に対して、0.005〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部である。重合反応温度は100〜250℃、好ましくは100〜200℃である。
【0019】
また、前記重合反応において必要に応じ、これらと共重合することが知られている化合物を添加し、シアネートエステル樹脂を変性することができる。例えば、エポキシ基含有化合物、ビスマレイミド化合物、フェノール基含有化合物、カルボン酸含有化合物、アミド基含有化合物などを挙げることができる。これらの化合物の添加量は特に限定されないが、例えば、前記多官能性シアネートエステル化合物に対して50mol%以下であることが好ましい。50mol%を超えると、感光性樹脂の耐熱性が低下したり、感光性樹脂組成物の硬化前後における寸法変化の増大につながり好ましくない。
【0020】
前記重合反応は(A)多官能シアネートエステル化合物のみでも可能であるが、有機溶媒中で重合することもできる。使用する有機溶媒は多官能シアネートエステル化合物を十分に溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテート、クロロホルムなどを挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーは、少なくともトリアジン環が1個以上形成した化合物、すなわちシアネートエステル化合物の3量体以上であることが好ましい。形成したトリアジン環数の上限は得られる多官能性シアネートエステルプレポリマーの特性が、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、特に限定されるものではないが、6個以下であることが好ましく、4個以下であることがより好ましい。6個を超えると、著しく重合が進行することになるため、有機溶媒に不溶となり、好ましくない。つまり、本発明における前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマーとは、特定の有機溶媒に可溶である必要がある。ここで使用する有機溶媒とは公知のものであれば特に限定はないが、例えば上記重合に使用できる有機溶媒を挙げることができ、これらは2種類以上を併用して用いることができる。
【0022】
前記(B)光酸発生剤は、公知のものを含め特に限定はないが、特に有効に用いられるものについて下記に説明する。
(1)トリハロメチル基が置換した下記一般式(1)で表されるオキサゾール誘導体または一般式(2)で表されるS−トリアジン誘導体。
【化1】

【化2】

【0023】
式中、R1は置換もしくは未置換のアリール基、アルケニル基、R2は置換もしくは未置換のアリール基、アルケニル基、アルキル基、−CX3を示す。Xは塩素原子または臭素原子を示す。具体的には以下の化合物を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
(2)下記の一般式(3)で表されるヨードニウム塩、または一般式(4)で表されるスルホニウム塩。
【化6】

【化7】

【0028】
ここで式Ar1、Ar2は各々独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。好ましい置換基としては、アルキル基、ハロアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、ヒロドキシ基、メルカプト基およびハロゲン原子が挙げられる。
【0029】
3,R4,R5は各々独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。好ましくは炭素数6〜14のアリール基、炭素数1〜8のアルキル基およびそれらの置換誘導体である。好ましい置換基としては、アリール基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基、ニトロ基、カルボキシル基、ヒロドキシ基およびハロゲン原子であり、アルキル基に対しては炭素数1〜8のアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基である。
【0030】
-は対アニオンを示し、例えばBF4-、AsF6-、PF6-、SbF6-、SiF62-、ClO4-、CF3SO3-等のパーフルオロアルカンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、ナフタレン−1−スルホン酸アニオン等の縮合多核芳香族スルホン酸アニオン、アントラキノンスルホン酸アニオン、スルホン酸基含有染料等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0031】
またR3,R4,R5のうちの2つおよびAr1、Ar2はそれぞれの単結合または置換基を介して結合してもよい。
【0032】
具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
【化8】

【0034】
【化9】

【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
【化16】

【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
(3)下記一般式(5)で表されるジスルホン誘導体または一般式(6)で表されるイミノスルホネート誘導体。
【0046】
【化20】

【化21】

【0047】
式中Ar3、Ar4は各々独立に置換もしくは未置換のアリール基を示す。R6は置換もしくは未置換のアルキル基、アリール基を示す。Aは置換もしくは未置換のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基を示す。具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
【化22】

【0049】
【化23】

【0050】
【化24】

【0051】
【化25】

【0052】
【化26】

【0053】
(4)下記一般式(7)で表されるジアゾ化合物。
【0054】
【化27】

【0055】
7:炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基もしくはアラルキル基、を表す。具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
【化28】

【0057】
【化29】

8:炭素数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、又は置換もしくは非置換のアリール基もしくはアラルキル基、を表す。具体例としては以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
【化30】

【0059】
前記(B)光酸発生剤は一般式(2)、(6)、(8)が好ましく、中でも特に、PAG8−1、PAG2−4は露光部分と未露光部分の反応率コントラストが大きい点で、好ましい。
【0060】
前記(B)光酸発生剤の配合量は、前記(A)多官能性シアネートエステル化合物100質量部に対し0.01〜20質量部とすることが好ましい。0.01質量部より少ないと触媒能が不十分となり、十分な硬化反応が進まない。また20質量部よりも多いと硬化物の硬化密度が下がり、力学特性や耐熱性が低下するので好ましくない。以上の観点から、より好ましい光酸発生剤の配合量は1〜10質量部である。
【0061】
前記(B)光酸発生剤は増感剤と組み合わせて使用することもできる。増感剤は活性エネルギー線により励起状態となり、光酸発生剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、酸を効率的に発生することが可能である。増感剤は従来公知の化合物を含め、特に限定されることなく使用できる。例えばアントラセン、アントラキノン、ピレン、ペリレン、ビオランスレンなどといった芳香族多環式炭化水素(特に電子供与性置換基を有するもの)、アミノケトン、p−置換アミノスチリル、キサンテン、チオキサントン、ポリアリール化合物、ポリメチレン染料などが挙げられる。具体的には、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジクロロアントラセン、1−クロロアントラセン、2−メチルアントラセン、9−メチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、アントラセン、1,2−ベンズアントラセン、1,2,3,4−ジベンズアントラセン、1,2,5,6−ジベンズアントラセン、1,2,7,8−ジベンズアントラセン、9,10−ジメトキシジメチルアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、N−メチルフェノチアジン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等が挙げられる。これらの増感剤は単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0062】
前記増感剤の配合量は、(A)多官能性シアネートエステル化合物100質量部に対し0.001〜5質量部とすることが好ましい。0.001質量部より少ないと光が増感されず、(B)が十分に活性化されない。5質量部より多いと硬化物中の不純物として耐熱性を低下せしめるため好ましくない。以上の観点から、より好ましい増感剤の配合量は0.05〜1質量部である。
【0063】
前記(A)多官能シアネートエステル化合物は、有機モノマまたはオリゴマを含むポリマと混合することができる。このポリマは熱可塑性または熱硬化性であることができる。有機変性剤の例はエポキシ類、アリルエステル類、アセチレン端末樹脂類、多官能マレイミド類、フェノール類、単官能または多官能ポリオール類、ポリエーテルイミド類、ポリイミド類、シロキサンポリイミド類、フッ素含有ポリイミド類、ポリエステル類、ポリアクリレート類、ポリエーテルスルホン類、ポリカーボネート類、およびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンポリマー類などが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
前記有機モノマまたはオリゴマを含むポリマとしてはポリアクリレート類、エポキシ類が良く、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、9.9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ビスフェノールA ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールA 型エポキシジ(メタ) アクリレート、テトラブロモビスフェノールA ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールA 型エポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるビスフェノールF 型エポキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールF ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエポキシ開環反応で得られるテトラブロモビスフェノールF 型エポキシジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物などのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのポリカプロラクトン変性物などのトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの四官能以上の(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、ビスフェノール・エピクロロヒドリン型エポキシ樹脂、グリセリン・エピクロルヒドリン付加物のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールAエポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられ、中でも特に分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含む化合物が透明性と高耐熱性を両立する点で好ましく、シアネートエステルプレポリマーとの相溶性が良好であるという点でイソシアヌル酸誘導体がより好ましい。これらは単独で用いることもできるし、2種類以上併用して用いることもできる。
【0065】
前記有機モノマまたはオリゴマを含むポリマの配合量は、前記(A)多官能性シアネートエステルプレポリマー100質量部に対して0〜100質量部とすることが好ましい。100質量部より多いと耐熱性、吸湿性を低下せしめるため好ましくない。
【0066】
前記有機モノマまたはオリゴマはラジカル開始剤と組み合わせて使用することもできる。ラジカル発生剤は活性エネルギー線または熱によりラジカルが発生し、有機モノマまたはオリゴマの反応開始剤として働く。ラジカル発生剤は従来公知の化合物を含め、特に限定されることなく使用できる。例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、3−メチルアセトフェノン、2 ,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノンなどのアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタールなどのベンゾイン系光ラジカル重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4 ’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4 ’−ジアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光ラジカル重合開始剤;メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのケトン系光ラジカル重合開始剤;2,2'−ビス(2−クロロフェニル)−4,4',5,5'−テトラフェニル−1,2'−イミダゾールなどのイミダゾール系光ラジカル重合開始剤;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(0−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)などのオキシムエステル系光ラジカル開始剤;ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウムなどのチタノセン系光ラジカル重合開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2 ,6−ジメトキシベンゾイル)−2 ,4 ,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤;2−(3,4−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリクロロメチルトリアジン系光ラジカル重合開始剤;カルバゾール系光ラジカル重合開始剤などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
前記ラジカル発生剤は有機モノマまたはオリゴマ100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましい。10質量部より多いと経済的でないばかりか、着色、耐熱性を低下せしめるので好ましくない。
【0068】
また、このほかに必要に応じて、本発明のネガ型感光性樹脂の組成の中に、酸化防止剤、黄変防止剤、紫外線吸収剤、可視光吸収剤、着色剤、可塑剤、安定剤、無機充填剤、内部離型剤、難燃剤、消泡剤、界面活性剤、シアネートエステル熱硬化触媒などの添加剤を本発明の効果に悪影響を及ぼさない割合で添加しても構わない。
【0069】
本発明の感光性樹脂組成物は、前記(A)多官能性シアネートエステル化合物、(B)光酸発生剤を有機溶媒に溶解、分散して用いることが好ましい。ここで用いる有機溶媒としては該樹脂組成物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテートなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。樹脂溶液中の樹脂分濃度としては、20〜80質量%であることが好ましい。
【0070】
このようにして作製したワニスは、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、インクジェット法等の方法を用いて、シリコンウェハー、金属基板、セラミック基板、高分子材料基板等に塗布され、乾燥機等を用いて溶剤を飛散させることにより、塗膜とすることができる。基板に塗布する膜厚は目的に応じ適宜選択すればよいが、通常、0.1μm〜1000μmの範囲が好ましい。乾燥は常圧でも減圧雰囲気でもよく、有機溶剤を飛散させる温度条件は50〜150℃である。
乾燥後に残留する有機溶媒の含有量は、有機溶剤を完全に飛散させた後の感光性樹脂組成物を100質量部として、10質量部以下であることが好ましい。10質量部を超えると保存安定性に悪影響を与えたり、露光によるパターン形成の精度を悪化させるなどの問題があり好ましくない。
乾燥後の感光性樹脂組成物層の膜厚は、通常、0.1〜250μmである。
このようにして得られたドライフィルムは、例えばロール状に巻き取ることによって容易に貯蔵、保管することが出来るようになる。
【0071】
次に、本発明の光導波路形成用樹脂組成物からなるドライフィルムを用いて光導波路を形成する方法について述べる。
本発明の光導波路は上部クラッド/コア/下部クラッドから構成され、本発明の光導波路形成用樹脂組成物からなるドライフィルムはこれらコアを形成する材料である。コアの屈折率はクラッドの屈折率よりも高い必要があり、比屈折率差は少なくとも0.5%以上、より好ましくは1.0%以上である。上部クラッド組成は下部クラッド組成と同一であることが望ましい。コア層の厚みは20〜60μmが好ましく、クラッド層の(アンダークラッド、コア上オーバークラッド)厚みは10〜200μmが好ましい。
【0072】
得られた感光性樹脂組成物層に所望のパターンが描かれたマスクを通して活性エネルギー線を照射する露光処理を行なう。
活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、電子線、α線、β線、γ線のような電離放射線を挙げることができるが、特に紫外線が好ましい。紫外線の光源としては公知のものを含め特に限定されるものではないが、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ、LEDなどを挙げることができる。
【0073】
活性エネルギー線を照射した後、加熱処理(以下、「ポストベーク」と言う。)を行なう。このポストベーク条件は樹脂組成、添加剤の種類、配合量等によって異なるが、通常、50〜200℃、好ましくは80〜180℃で、例えば5分間〜5時間の加熱条件とすれば良い。本発明の感光性樹脂組成物において、前記(B)光酸発生剤は活性エネルギー線の照射によりプロトン酸を発生せしめる。そしてポストベークにおいて、該プロトン酸が前記(A)シアネートエステル化合物の硬化触媒として働く。そのためポストベークにおいては、活性エネルギー線が照射された部分は、照射されていない部分に比べシアネートエステル化合物の熱硬化反応が速やかに進行する。ポストベーク後に現像を行ない、活性エネルギー線が照射されていない部分を現像液で溶解除去することにより、レリーフパターンを形成することができる。なお、シアネート基反応率としては、未露光条件下で20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、露光条件下では45%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。前記範囲内にあるとレリーフパターンの形成が良好となり、好ましい。
【0074】
前記現像液に用いる有機溶媒としては感光性樹脂組成物を分散、溶解するものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ―ブチロラクトン、エチレンカーボネート、スルホラン、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルグリコールアセテート、ヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。また引火防止のため、これらの有機溶剤に0.5〜20質量%の範囲で水を添加することもできる。
【0075】
前記現像方法としては、静置浸漬法、揺動浸漬法、パドル法、スプレー法、ブラッシング法、スクラッピング法、超音波法等の公知の方法により現像を行なうが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記現像時における現像時間としては、通常5〜600秒である。必要に応じ、現像後に洗浄を行なっても構わない。洗浄液に特に限定はないが、水を含め現像に用いた上記有機溶媒を挙げることができる。これらは2種類以上併用して用いることができる。
【0077】
前記現像後に100〜250℃の加熱処理を行なうことで、感光性樹脂組成物の硬化度を高めることができる。このとき、450nmにおける吸光度は、3×10−4/μm以下が好ましく、2×10−4/μm以下がより好ましい。前記範囲内にあると、ネガ型樹脂組成物層による光の吸収が小さく、好ましい。また、熱分解温度としては、ネガ型感光性樹脂組成物として使用するにあたり、高耐熱性を得るためには、250℃以上が好ましく、290℃以上がより好ましい。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。
[(A)多官能シアネートエステルプレポリマーの合成例]
還流器の付いたフラスコに2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンを20g、4−クミルフェノール0.0076g、Zn(C16 0.0096gをテトラヒドロフラン8.55gに溶解させて入れ、150℃で5.5時間、攪拌しながら反応させた。フラスコより反応物を回収し、薄黄色の多官能シアネートエステルプレポリマーを得た。
【0079】
(実施例1)
<塗膜の作製と評価>
表1に示す、A成分として、前記多官能性シアネートエステルプレポリマー、B成分として、光酸発生剤であるPAG2−4を、メチルエチルケトン(A成分100重量部に対して、70重量部として換算)に溶解して、ネガ型感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を得た。
【0080】
前記ネガ型感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を、スライドガラス上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間、常圧で乾燥し、次いで80℃で20分間、減圧乾燥した。このとき、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが約30μmになるようにアプリケーターの間隔を調整し、塗膜(ネガ型感光性樹脂組成物)を得た。
【0081】
(実施例2)
表1記載の配合内容・調整条件で行ったこと以外は、実施例1と同様の処理を行った。
【0082】
(実施例3)
<塗膜の作製と評価>
表1に示す、A成分として、前記多官能性シアネートエステルプレポリマー、B成分として、光酸発生剤であるPAG8−1、増感剤として9,10−ジブトキシアントラセンを、メチルエチルケトン(A成分100重量部に対して、70重量部として換算)に溶解して、ネガ型感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を得た。
【0083】
前記ネガ型感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)を、スライドガラス上にアプリケーターを用いて塗布し、80℃で10分間、常圧で乾燥し、次いで80℃で20分間、減圧乾燥した。このとき、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが約30μmになるようにアプリケーターの間隔を調整し、塗膜(ネガ型感光性樹脂組成物)を得た。さらにフォトマスク(凸版印脱社製、ネガマスク、L/S=50μm/250μm)を介して、紫外線露光機(ルミナス社製、マスクアライナ)にて、波長360nm、照度10mW/cmの紫外線を300秒照射した。ついで、135℃×120分間、ポストベークを行なった。これをN−メチル−2−ピロリドン溶媒中で90秒間揺動浸漬処理して現像を行なった後、エタノールで洗浄した。顕微鏡観察により、50μm幅ラインが形成されていることを確認した。
【0084】
さらに、現像後、180℃で1時間、230℃で1時間加熱(キュア)したサンプルを用いて熱分解開始温度を測定したところ、334℃と、高い耐熱性を示した。つまり、高い感光性と耐熱性の両方を満足していることがわかる。
【0085】
(比較例3)
表1記載の配合内容・調整条件で行ったこと以外は、実施例1と同様の処理を行った。
その結果、ネガ型感光性樹脂組成層は現像液にすべて溶解し、50μmの幅ラインの形成は確認されなかった。別途、紫外線照射後にポストベークを行った試料を現像することなく180℃で60分、230℃で60分加熱(キュア)し、熱分解開始温度を測定したところ298℃と高い耐熱性を示した。つまり、レリーフパターンを形成できず、つまりは感光性と耐熱性の両立を満足できなかった。
【0086】
得られた塗膜(ネガ型感光性樹脂組成層)については、下記の特性結果を評価した。
【0087】
[シアネート基反応率]
紫外線露光機にて波長360nm、照度10mW/cmの紫外線を180秒間照射(露光)またはそのまま(未露光)条件下において、実施例および比較例のそれぞれにおいて、所定の条件(温度、時間)でポストベークを行い、FT−IR[装置名:FT/IR−6100、日本分光株式会社製]を用いてシアネート基(OCN基)のピーク(2237cm−1)と芳香環ピーク(1502cm−1)からOCN基反応率を算出した。
OCN基反応率(%)=100×(a−b)/a
a: ポストベーク前のOCN基ピーク面積/ポストベーク前の芳香環ピーク面積
b: ポストベーク後のOCN基ピーク面積/ポストベーク後の芳香環ピーク面積
【0088】
[透明性]
上記露光条件下で作成したネガ型感光性樹脂層を180℃で1時間、230℃で1時間加熱(キュア)を行い、UV−Vis(島津社製、UV−2450)を用いて450nmの吸光度を測定した。
【0089】
[パターン形成性]
マスク露光後に現像処理を行い、50μm幅ラインの形成有無を顕微鏡(キーエンス社製、マイクロスコープ)観察にて、判定した。
【0090】
熱重量測定装置TGA(島津社製、TGA−50)を用いて、昇温速度10℃/分、窒素雰囲気中で測定を行い、5wt%質量減少温度を熱分解開始温度(℃)と規定した。
【0091】
【表1】

【0092】
上記表1の結果より、実施例1〜3は、露光条件では、光酸発生剤から露光により発生した酸がシアネートエステル硬化触媒として働くことで、OCN基の反応が十分進行していることが確認できた。一方、未露光条件では、光酸発生剤から酸が発生しないため、OCN基の反応は不十分であることが確認できた。また、450μmの波長における吸収の増大は小さく透明性が高かった。
【0093】
比較例1は加熱のみによるOCN基の反応を確認しているものであるが、反応はほとんど進行していないことが、確認された。
【0094】
また、実施例3の結果から、優れた感光性、透明性、高耐熱性のレリーフパターンを提供できることが確認できた。一方、比較例1の結果から、50μm幅のラインの形成は確認できず、感光性に劣り、感光性と耐熱性の両立を満足できるものを得られないこと、が確認できた。
【0095】
(実施例4)
<ドライフィルムの作製>
実施例3のネガ型感光性樹脂組成物溶液(樹脂ワニス)をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)にアプリケーターを用いて塗布し、常圧乾燥(80℃で10分間)、次いで減圧乾燥(80℃で30分間)した。このとき、乾燥後のドライフィルムの樹脂組成物層の厚さが30μmになるようにアプリケーターの間隔を調整した。
【0096】
得られたドライフィルムについては、ラミネート性を評価した。光導波路形成用ドライフィルムを熱ロール圧着法(100℃)にて基板へ転写したところ、基板に均一に転写できた。
【0097】
<スラブ型光導波路の作製と評価>
(実施例5)
実施例4を支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムの上から紫外線露光機にて波長360nm、照度10mW/cm2の紫外線を360秒間照射した。次いで窒素雰囲気中で段階的な加熱処理(120℃で20分、150℃で30分、180℃で60分、230℃で60分)を行い膜を硬化させ、ガラス基板をクラッドとするスラブ型光導波路を作製したところ、高い耐熱性を維持しつつ、850nmにおける伝搬損失は0.1dB/cmと実用レベル上、問題ない低い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明によれば、感光性、耐熱性、透明性を両立することができ、また、不飽和二重結合を有する化合物を使用しないため、経時で粘度変化を生じたりすることがないため、保存安定性に優れたネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。また、前記ネガ型感光性樹脂は、プリント配線板や半導体素子等に形成し、永久保護膜、層間絶縁膜、バッファーコート膜、光導波路等としても、利用でき、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)多官能性シアネートエステル化合物、及び/又は該シアネートエステルプレポリマー、(B)光酸発生剤を必須成分として含有することを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分100質量部に対し(B)の光酸発生剤の含有量が0.01〜20質量部の範囲である、請求項1記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
アクリレート、エポキシまたはマレイミドであるからなる群より選択される有機モノマもしくはポリマをさらに含有してなる、請求項1〜2のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
光ラジカル発生剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物を膜厚約30μmのフィルム状物としたとき、450nmで測定した吸光度が3.0×10−4/μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いたドライフィルム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物または請求項6に記載のドライフィルムを用いた光導波路。

【公開番号】特開2012−159590(P2012−159590A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17909(P2011−17909)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】