説明

ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスク

【課題】高感度、高解像性(例えば、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、スカムの低減、及び、現像欠陥の低減を同時に満足したパターンを形成できるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクを提供する。
【解決手段】(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物、並びに、(B)架橋剤を含有する、ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超LSIや高容量マイクロチップの製造などの製造プロセス、ナノインプリント用モールド作成プロセス及び高密度情報記録媒体の製造プロセス等に適用可能な超マイクロリソグラフィプロセス、及び、その他のフォトファブリケーションプロセスに好適に用いられる、電子線や極紫外線を使用して高精細化したパターンを形成しうるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクに関するものである。特に特定の下地膜を有する基板を使用するプロセスに用いられるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターン形成が要求されるようになってきている。それに伴い、露光波長もg線からi線に、更にエキシマレーザー光にというように短波長化の傾向が見られ、現在では、電子線やX線を用いたリソグラフィも開発が進んでいる。
【0003】
特に電子線や極紫外線リソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられており、また、高解像性のゆえに半導体露光に使用されるフォトマスク作成に広く使用されている。例えば、電子線リソグラフィーによる前記フォトマスク作成の工程では、透明基板にクロム等を主成分とする遮蔽層を設けた遮蔽基板の上にレジスト層を形成し、更に選択的に電子線露光を行った後、アルカリ現像してレジストパターンを形成する。ついで、このレジストパターンをマスクとして遮蔽層をエッチングして遮蔽層にパターンを形成することにより、透明基板上に所定のパターンを有する遮蔽層を備えたフォトマスクを得ることができる。
しかし、電子線は紫外線のような一括露光ができないため、処理時間短縮のため高感度なレジストが求められており、電子線リソグラフィーに適したレジストとしては、酸分解性高分子化合物と光酸発生剤とを組合せたいわゆるポジ型レジスト組成物や、架橋性高分子化合物と架橋剤とを組合せたいわゆるネガ型レジスト組成物が有効に使用されている。しかし、このようなレジスト組成物において更に高感度化しようとすると、解像性の低下やパターン形状の悪化やスカムの発生が起こりがちである。更にラインエッジラフネス(レジストパターンと基板界面のエッジがラインと垂直な方向に不規則に変動してエッジが凹凸となりこの凹凸がエッチング工程により転写され寸法精度を低下させる現象)の悪化も起こりがちである。ラインエッジラフネス向上は、線幅0.25μm以下の超微細領域では特に重要な課題となっている。
【0004】
これらの問題を解決する一つの方法として、例えば、特許文献1には、光酸発生基と酸分解によりアルカリ現像液への溶解性が増大する基とを同一分子内に有する樹脂が開示されている。このように光酸発生基を有する樹脂は、ポジ型のレジスト組成物中での使用が報告されてきたが、ネガ型のレジスト組成物中では従来利用されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−197718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが誠意検討した結果、後述の高分子化合物(A)と架橋剤(B)とを含有するネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により、上記の問題が解決されるだけでなく、架橋性高分子化合物と架橋剤とを組合せたネガ型レジスト組成物で起こりがちであった現像欠陥が良化されることが見出された。
すなわち、本発明の目的は、高感度、高解像性(例えば、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、スカムの低減、及び、現像欠陥の低減を同時に満足したパターンを形成できるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクを提供することにある。
本発明の目的は、特に、電子線や極紫外線を使用した露光による微細なパターンの形成において、高感度、高解像性(例えば、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、スカムの低減、及び、現像欠陥の低減を同時に満足したパターンを形成できるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
〔1〕
(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物、並びに、(B)架橋剤を含有する、ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔2〕
前記高分子化合物(A)が更に、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を有する、上記〔1〕に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔3〕
前記アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)の含有量が、前記高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、3〜50モル%である、上記〔2〕に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔4〕
前記高分子化合物(A)が、前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)として、活性光線又は放射線の照射により側鎖に酸アニオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位(a1)を有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔5〕
前記架橋剤(B)が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
〔6〕
前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)が下記一般式(I)で表される繰り返し単位であり、前記フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)が下記一般式(II)で表される繰り返し単位であり、前記アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)が下記一般式(III)で表される繰り返し単位である、上記〔2〕〜〔5〕のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
Aは、2価の連結基を表す。
Dは、スルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン又はスルホンメチド酸アニオンを表す。
Mは、オニウムカチオンを表す。
Bは、単結合又は2価の有機基を表す。
Arは、芳香環基を表す。
mは、1以上の整数を表す。
Eは、アルカリ不溶性の繰り返し単位を表す。
〔7〕
上記〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜。
〔8〕
膜厚が10〜150nmである、上記〔7〕に記載のレジスト膜。
〔9〕
上記〔7〕又は〔8〕に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
〔10〕
上記〔7〕又は〔8〕に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔11〕
上記〔9〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
〔12〕
前記露光が、電子線又は極紫外線を用いて行われる、上記〔10〕又は〔11〕に記載のレジストパターン形成方法。
〔13〕
上記〔9〕に記載のレジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスク。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高感度、高解像性(例えば、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))、スカムの低減、及び、現像欠陥の低減を同時に満足したパターンを形成できるネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに、それを用いたレジスト膜、レジスト塗布マスクブランクス、レジストパターン形成方法、及び、フォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に於ける基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本発明において「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0011】
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物、並びに、(B)架橋剤を含有する。
【0012】
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により、高感度、高解像性(例えば、優れたパターン形状、小さいラインエッジラフネス(LER))及びスカムの低減を同時に達成するとともに、更に、現像欠陥の低減が可能である理由は完全には明らかではないが、以下のように推測される。
高分子化合物(A)が活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)を有することにより、発生する酸が低拡散となり、解像性(例えば、LER)が向上するものと考えられる。また活性光線又は放射線の照射により酸を発生する部位が、高分子化合物に連結していることで酸の発生効率が向上し、高感度化するものと考えられる。また、従来のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、架橋性の高分子化合物と光酸発生剤(PAG)との相溶性や表面偏在性の問題があった。しかし、本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物では、高分子化合物(A)中に光酸発生剤(PAG)としての機能を発現する繰り返し単位(a)と、架橋反応に関る繰り返し単位(b)とを共に含有することにより、高分子化合物中に均一にPAGユニットが分布し、レジスト膜を形成した場合もPAGユニットが膜中に均一に存在することができる。このため、露光により酸が発生する際の酸発生の分布が均一になるため、架橋反応も均一に進行し、上述の問題が改良され、形状が改良されるものと考えられる。更に繰り返し単位(a)の存在により、高分子化合物の溶解性も親水的になることでスカムが改良するものと考えられる。また、従来の架橋性高分子化合物と架橋剤とを組み合わせた従来のブレンド系では、PAG起因の架橋性高分子化合物や架橋剤との凝集による現像欠陥が発生することが多かったが、光酸発生剤(PAG)としての機能を発現する繰り返し単位(a)が高分子化合物に連結することで、現像性が向上し、また、架橋剤との凝集も抑制され、現像欠陥が良化するものと考えられる。
【0013】
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的には、化学増幅型ネガ型レジスト組成物である。
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、電子線又は極紫外線露光用であることが好ましい。
【0014】
以下、本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0015】
〔1〕 (A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物(A)を含有する。
高分子化合物(A)は更に、後述のアルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を有することが好ましい。また、前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)が後述の一般式(I)で表される繰り返し単位であり、前記フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)が後述の一般式(II)で表される繰り返し単位であり、前記アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)が後述の一般式(III)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
以下に、繰り返し単位(a)及び(b)について最初に説明する。
【0016】
(活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a))
本発明の高分子化合物(A)が有する、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)(以下、適宜、繰り返し単位(a)と称する)は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位である限り特に限定されず、従来公知の繰り返し単位が使用可能である。繰り返し単位(a)としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生するイオン性構造部位を、高分子化合物(A)の側鎖に有する繰り返し単位が好ましく、該イオン性構造部位は酸アニオンとオニウムカチオンとがイオン対を形成してなること(いわゆるオニウム塩であること)が好ましい。このようなイオン性構造部位を高分子化合物(A)の側鎖に有する繰り返し単位の高分子化合物(A)中における形態としては、共有結合を介して高分子化合物(A)の側鎖に導入される部位が、酸アニオン及びオニウムカチオンのいずれか一方であるか又は両方であるかに応じて、以下の3つに大別される。
(1)高分子化合物(A)が、繰り返し単位(a)として、活性光線又は放射線の照射により側鎖に酸アニオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位(a1)のみを有する(すなわち、酸アニオンのみが共有結合を介して高分子化合物(A)の側鎖に導入された態様)
(2)高分子化合物(A)が、繰り返し単位(a)として、活性光線又は放射線の照射により側鎖にオニウムカチオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位(a2)のみを有する(すなわち、オニウムカチオンのみが共有結合を介して高分子化合物(A)の側鎖に導入された態様)
(3)高分子化合物(A)が、繰り返し単位(a)として、上記繰り返し単位(a1)及び(a2)の両方を有する(すなわち、酸アニオン及びオニウムカチオンのそれぞれが共有結合を介して高分子化合物(A)の側鎖に導入された態様)
【0017】
本発明の高分子化合物(A)は、繰り返し単位(a)として、活性光線又は放射線の照射により側鎖に酸アニオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位(a1)を有すること(すなわち、上記(1)又は(3)に記載の態様であること)が、良好な解像力が得られることから好ましい。高分子化合物(A)が繰り返し単位(a1)を有することにより、発生する酸が非常に低拡散となり、解像性(特に、解像力)が大きく向上するものと考えられる。
【0018】
上記酸アニオンとしては、スルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン、スルホンメチド酸アニオンが好ましく挙げられ、スルホン酸アニオンであることが、親水性が高く、現像欠陥の観点から最も好ましい。
上記オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ピリジニウムカチオンが好ましく挙げられ、より好ましくはスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオンであり、最も好ましくはスルホニウムカチオンである。
【0019】
上記繰り返し単位(a1)は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0020】
【化2】

【0021】
は、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
Aは、2価の連結基を表す。
Dは、スルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン又はスルホンメチド酸アニオンを表す。
Mは、オニウムカチオンを表す。
【0022】
についてのアルキル基は、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキル基であり、好ましくは置換基を有していてもよい、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ドデシル基など炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、特に好ましくは炭素数3以下のアルキル基が挙げられる。
【0023】
上記アルキル基における好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、ニトロ基、シアノ基、アミド基、スルホンアミド基、Rで挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、ブチリルオキシ基等のアシルオキシ基、カルボキシ基が挙げられる。特に、水酸基、ハロゲン原子が好ましい。
についてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が特に好ましい。
【0024】
一般式(I)におけるRとしては、水素原子、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基(−CF)、ヒドロキシメチル基(−CH−OH)、クロロメチル基(−CH−Cl)、フッ素原子(−F)がより好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
【0025】
Aについての2価の連結基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−S(=O)―、−S(=O)−、−OS(=O)−及び−NR−から選択されるいずれか又はそれらの内の2以上を組み合わせた基が挙げられる。ここでRは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
【0026】
Aについてのアルキレンとしては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
Aについてのシクロアルキレン基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10であり、例えば、1,4−シクロヘキシレン基等が挙げられる。Aについてのシクロアルキレン基は、環を構成する炭素原子の一部が、窒素原子等のヘテロ原子に置き換わったものであってもよい。
Aについてのアルキレン基及びシクロアルキレン基は炭素に結合している水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていても良い。
Aについてのアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン、ナフチレン)であり、炭素に結合している水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。
【0027】
Aについてのアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基;メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、p−トリルオキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキル又はシクロアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、パーフルオロアルキル基、トリアルキルシリル基等が挙げられる。
Aについての2価の連結基としては、アリーレン基を有することが好ましく、アリーレン基を2つ以上有することがより好ましい。Aについての2価の連結基としてアリーレン基を有することにより、ガラス転移温度(Tg)が高くなり、酸拡散性が抑制されるため好ましい。
【0028】
についてのアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
についてのシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数3〜10であり、例えば、シクロヘキシル基等が挙げられる。Rについてのシクロアルキル基は、環を構成する炭素原子の一部が、窒素原子等のヘテロ原子に置き換わったものであってもよい。
についてのアルキル基及びシクロアルキル基は炭素に結合している水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていても良い。
についてのアリール基としては、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)であり、炭素に結合している水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。
についてのアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜10のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基)であり、炭素に結合している水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。
についてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が有していてもよい置換基としては、上述のAについてのアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0029】
Dは、スルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン又はスルホンメチド酸アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオンである。
Dは、Mで表されるオニウムカチオンとイオン対を形成するアニオン部位であって、活性光線又は放射線の照射により前記オニウムカチオンから解離して、遊離のスルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン又はスルホンメチド酸アニオンとなる。Dとしては、下記一般式(DI)〜(DIII)で表される構造であることが好ましい。
【0030】
【化3】

【0031】
D1、RD2及びRD3は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。これらの基は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又はフルオロアルキル基(より好ましくはペルフルオロアルキル基)で置換された態様がより好ましく、水素原子数の30〜100%がフッ素原子で置換された態様が更に好ましい。
*は一般式(I)中のAとの結合位置を表す。
【0032】
上記アルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜8個のアルキル基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキル基が特に好ましい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など炭素数3〜10のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3〜6のシクロアルキル基がより好ましい。
【0033】
アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
アラルキル基としては、炭素数1〜8のアルキレン基と上記アリール基が結合したアラルキル基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6のアルキレン基と上記アリール基が結合したアラルキル基がより好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基と上記アリール基が結合したアラルキル基が特に好ましい。
一般式(DII)又は(DIII)におけるRD1、RD2及びRD3としては、各々独立に、アルキル基であることがより好ましく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子又はフルオロアルキル基(より好ましくはペルフルオロアルキル基)で置換されたアルキル基が更に好ましく、水素原子数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキル基が特に好ましく、ペルフルオロアルキル基であることが最も好ましい。RD1、RD2及びRD3としてのペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数1〜8個のペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜6個のペルフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4個のペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0034】
一般式(I)で表される繰り返し単位中のMで表されるオニウムカチオンは、好ましくは以下の一般式(IV)又は(V)で表されるオニウムカチオンである。
【0035】
【化4】

【0036】
一般式(IV)及び(V)において、
b1、Rb2、Rb3、Rb4及びRb5は、各々独立に、有機基を表す。
【0037】
以下、一般式(IV)で表されるスルホニウムカチオンを更に詳述する。
【0038】
上記一般式(IV)のRb1〜Rb3は、各々独立に、有機基を表すが、好ましくはRb1〜Rb3の少なくとも1つがアリール基であり、アリールスルホニウムカチオンであることが好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
アリールスルホニウムカチオンは、Rb1〜Rb3の全てがアリール基でもよいし、Rb1〜Rb3の一部がアリール基で残りがアルキル基でもよく、例えば、トリアリールスルホニウムカチオン、ジアリールアルキルスルホニウムカチオン、アリールジアルキルスルホニウムカチオン、ジアリールシクロアルキルスルホニウムカチオン、アリールジシクロアルキルスルホニウムカチオンを挙げることができる。
アリールスルホニウムカチオンのアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。2つ以上のアリール基を有する場合、アリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウムカチオンのアリール基以外の基は、アルキル基の場合、炭素数1〜15の直鎖、分岐状アルキル基、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
b1〜Rb3のアリール基、アルキル基は置換基を有してもよく、好ましい置換基は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。Rb1〜Rb3がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
一般式(IV)に於けるRb1〜Rb3は、そのうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。
【0039】
次に、一般式(V)で表されるヨードニウムカチオンを詳述する。
上記一般式(V)のRb4及びRb5は、各々独立に、有機基を表すが、好ましくは各々独立に、アリール基、アルキル基を表し、更に好ましくは、一般式(V)で表されるヨードニウムカチオンは、Rb4及びRb5の少なくとも1つがアリール基であるアリールヨードニウムカチオンである。
前記Rb4及びRb5のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
b4及びRb5としてのアルキル基は、直鎖、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
b4及びRb5が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
【0040】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、より具体的には、下記一般式(VI)又は(VII)で表される繰り返し単位であることが解像性の観点から好ましい。更に、これら繰り返し単位は、酸アニオンとしてのDに隣接するL11及びL22が特定の電子求引性の基で置換されることが好ましく、発生する酸の酸強度が高くなり、これにより架橋反応が良好に進行するため、露光部と未露光部との間でのコントラストが高くなり、解像性の更なる向上に寄与するものと考えられる。
【0041】
【化5】

【0042】
一般式(VI)及び(VII)において、R、D及びMは、前記一般式(I)におけるR、D及びMとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。特に、一般式(VI)及び(VII)において、Dは一般式(DI)で表される構造であることが、現像液に対する親和性が良好であり、現像欠陥の観点から好ましい。
【0043】
一般式(VI)において、X11、X12、X13は、各々独立に、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又は、これらのうち2つ以上を組み合わせた基を表す。
−NR−において、Rにより表わされるアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキル基であり、上記Rにおけるアルキル基と同様の具体例が挙げられる。Rとして、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
また、2価の窒素含有非芳香族複素環基とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、好ましくは3〜8員の非芳香族複素環基を意味し、具体的には、例えば、下記構造の2価の連結基が挙げられる。
【0044】
【化6】

【0045】
11としては、単結合、−COO−、−CONR−(Rは水素原子又はアルキル基)がより好ましく、単結合、−COO−が特に好ましい。
12としては、単結合、−O−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、単結合、−OCO−、−OSO−が特に好ましい。
13としては、単結合、−O−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、及び、これらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、単結合、−OCO−、−OSO−が特に好ましい。
【0046】
11は、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0047】
11におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
【0048】
アルケニレン基としては上記L11で説明したアルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであってもよく、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数5〜12のシクロアルキレン基がより好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキレン基が特に好ましい。
【0049】
2価の芳香環基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜14の置換基を有していてもよいアリーレン基、又は、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を挙げることができる。
【0050】
また、−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX11における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
11としては、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基がより好ましく、単結合、アルキレン基が特に好ましい。
【0051】
12は、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表し、これらの基は、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、フッ化アルキル基、ニトロ基、又はシアノ基から選択される置換基で置換されていることが好ましい。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0052】
12としては、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子又はフッ化アルキル基(より好ましくはペルフルオロアルキル基)で置換された、アルキレン基、2価の芳香環基、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、少なくとも一部又は全部がフッ素原子で置換された、アルキレン基が特に好ましい。L12として、水素原子数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が最も好ましい。
【0053】
12におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
アルケニレン基としては、上記アルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
【0054】
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであってもよく、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。
【0055】
2価の芳香環基としては、先に記載したL11における連結基としての2価の芳香環基において挙げた具体例と同様の基が挙げられる。
また、L12における連結基の−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX11における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
以下に、L12の好ましい具体例を示すが、特にこれらに限定されない。具体例中、*はX13(X13が単結合の場合にはL11)又はDとの結合手を表す。
【0056】
【化7】

【0057】
Arは、2価の芳香環基又は2価の芳香環基とアルキレン基とを組み合わせた基を表す。
2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、又は、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0058】
上記各基における好ましい置換基としてはRで挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0059】
2価の芳香環基とアルキレン基とを組み合わせた基としては、上述した2価の芳香環基と、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基(直鎖状であっても分岐状であってもよい)を組み合わせたアラルキレン基が好ましい例として挙げられる。
【0060】
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基がより好ましく、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フェニル基で置換されたフェニレン基が特に好ましい。
【0061】
更に、一般式(VI)で表される繰り返し単位は、下記一般式(VIII)で表される繰り返し単位であることが解像性の観点からより好ましい。
【0062】
【化8】

【0063】
一般式(VIII)において、Ar、L11、L12、X13、D及びMは、前記一般式(VI)におけるAr、L11、L12、X13、D及びMとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
11’は、−O−、−OCO−、又は、−OSO−を表す。X11’は、−OSO−を表すことが最も好ましい。
【0064】
次に、一般式(VII)について説明する。
【0065】
21は、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を表す。
【0066】
−NR−において、Rにより表わされるアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキル基であり、上記Rにおけるアルキル基と同様の具体例が挙げられる。Rとして、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0067】
また、2価の窒素含有非芳香族複素環基とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、好ましくは3〜8員の非芳香族複素環基を意味し、具体的には、上述した一般式(VI)におけるX11〜X13において例示した構造が挙げられる。
【0068】
21としては、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、−COO−、−CONR−(Rは水素原子又はアルキル基)が特に好ましい。
【0069】
21は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、2価の芳香環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0070】
21におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個を好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
アルケニレン基としては上記L21で説明したアルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
【0071】
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであってもよく、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数5〜12のシクロアルキレン基がより好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキレン基が特に好ましい。
【0072】
連結基としての2価の芳香環基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜14の置換基を有していても良いアリーレン基、又は、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を挙げることができる。
また、−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX21における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
【0073】
21としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は−OCO−、−O−、−CONH−を介してアルキレン基、シクロアルキレン基を組み合わせた基(例えば、−アルキレン基−O−アルキレン基−、−アルキレン基−OCO−アルキレン基−、−シクロアルキレン基−O−アルキレン基−、−アルキレン基−CONH−アルキレン基−等)が特に好ましい。
【0074】
22、X23は、各々独立に、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を表す。
22、X23における−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX21における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
22としては、単結合、−S‐、−O−、−CO−、−SO−、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、単結合、−S−、−OCO−、−OSO−が特に好ましい。
23としては、−O−、−CO−、−SO−、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、−OSO−が特に好ましい。
【0075】
Arは、2価の芳香環基又は2価の芳香環基とアルキレン基を組み合わせた基を表す。
2価の芳香環基は、置換基を有していても良く、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基などの炭素数6〜18のアリーレン基、又は、例えば、チオフェン、フラン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、ベンゾピロール、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、トリアゾール、チアジアゾール、チアゾール等のヘテロ環を含む2価の芳香環基を好ましい例として挙げることができる。
【0076】
上記各基における好ましい置換基としてはRで挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0077】
2価の芳香環基とアルキレン基を組み合わせた基としては、上述した2価の芳香環基と、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基(直鎖状であっても分岐状であってもよい)を組み合わせたアラルキレン基が好ましい例として挙げられる。
【0078】
Arとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基、炭素数6〜18のアリーレン基と炭素数1〜4のアルキレンを組み合わせたアラルキレン基がより好ましく、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フェニル基で置換されたフェニレン基が特に好ましい。
【0079】
22は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、2価の芳香環基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表し、これらの基は、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、フッ化アルキル基、ニトロ基、又はシアノ基から選択される置換基で置換されている。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0080】
22としては、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子又はフッ化アルキル基(より好ましくはペルフルオロアルキル基)で置換された、アルキレン基、2価の芳香環基、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、少なくとも一部又は全部がフッ素原子で置換された、アルキレン基、2価の芳香環基が特に好ましい。L22として、水素原子数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基、2価の芳香環基が最も好ましい。
【0081】
22におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であっても良く、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
アルケニレン基としては、上記アルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
【0082】
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであっても良く、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。
2価の芳香環基としては、先に記載したL21における連結基としての2価の芳香環基において挙げた具体例と同様の基が挙げられる。
【0083】
また、L22における連結基の−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX21における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
22の好ましい具体例としては、上述した一般式(VI)におけるL12において例示した構造が挙げられる。
【0084】
また、繰り返し単位(a)は、他の態様において、一般式(I)、(VI)、(VII)又は(VIII)以外で表される前記側鎖に芳香環を含有する繰り返し単位であってもよい。
このような繰り返し単位(a)に対応する重合性モノマー単位について、活性光線又は放射線の照射によりオニウムカチオンから離脱して生成するスルホン酸、イミド酸、メチド酸単位として、以下に例示する。
【0085】
【化9】

【0086】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、下記一般式(IX)で表される繰り返し単位であることも解像性の観点から好ましい。この繰り返し単位も、前述の一般式(VI)及び(VII)で説明した様に、酸アニオンとしてのDに隣接するL32が特定の電子求引性の基で置換されているため、前述と同様の理由で解像性の向上に寄与するものと考えられる。
【0087】
【化10】

【0088】
一般式(IX)において、R、D及びMは、前記一般式(I)におけるR、D及びMとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。特に、一般式(IX)において、Dは一般式(DI)で表される構造であることが、現像液に対する親和性が良好であり、現像欠陥の観点から好ましい。
【0089】
31、X32は、各々独立に、単結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を表す。
【0090】
−NR−において、Rにより表わされるアルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状又は分岐状アルキル基であり、上記Rにおけるアルキル基と同様の具体例が挙げられる。Rとして、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
また、2価の窒素含有非芳香族複素環基とは、少なくとも1個の窒素原子を有する、好ましくは3〜8員の非芳香族複素環基を意味し、具体的には、上述した一般式(VI)におけるX11〜X13において例示した構造が挙げられる。
【0091】
31としては、単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、−COO−、−CONR−(Rは水素原子又はアルキル基)が特に好ましい。
【0092】
32としては、単結合、−O−、−CO−、−SO−、2価の窒素含有非芳香族複素環基、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた基がより好ましく、単結合、−OCO−、−OSO−、2価の窒素含有非芳香族複素環基と−SO−を組み合わせた基が特に好ましい。
31は、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基又はこれらの2以上を組み合わせた基を表す。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0093】
31におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個を好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
アルケニレン基としては上記L31で説明したアルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
【0094】
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであってもよく、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数5〜12のシクロアルキレン基がより好ましく、炭素数6〜10のシクロアルキレン基が特に好ましい。
【0095】
また、−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX31における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
【0096】
31としては、単結合、アルキレン基、シクロアルキレン基、又は−OCO−、−O−、−CONH−を介してアルキレン基、シクロアルキレン基を組み合わせた基(例えば、−アルキレン基−O−アルキレン基−、−アルキレン基−OCO−アルキレン基−、−シクロアルキレン基−O−アルキレン基−、−アルキレン基−CONH−アルキレン基−等)が特に好ましい。
【0097】
32は、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、又はこれらの2以上を組み合わせた基を表し、これらの基は、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、フッ化アルキル基、ニトロ基、又はシアノ基から選択される置換基で置換されている。組み合わせた基において、組み合わされる2以上の基は同じであっても異なっていてもよく、また、連結基として−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−(Rは水素原子又はアルキル基)、2価の窒素含有非芳香族複素環基、又はこれらのうち2つ以上を組み合わせた基を介して連結されていてもよい。
【0098】
32としては、水素原子の一部又は全部が、フッ素原子又はフッ化アルキル基(より好ましくはペルフルオロアルキル基)で置換された、アルキレン基がより好ましく、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された、アルキレン基が特に好ましい。L32として、水素原子数の30〜100%がフッ素原子で置換されたアルキレン基が最も好ましい。
【0099】
32におけるアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であっても良く、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の炭素数1〜8個のアルキレン基が好ましい例として挙げられる。炭素数1〜6個のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜4個のアルキレン基が特に好ましい。
アルケニレン基としては、上記アルキレン基の任意の位置に、二重結合を有する基が挙げられる。
【0100】
シクロアルキレン基としては、単環型又は多環型のいずれであっても良く、例えば、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、ノルボルナニレン基、アダマンチレン基、ジアマンタニレン基等の炭素数3〜17のシクロアルキレン基が好ましい例として挙げられる。
また、L32における連結基の−NR−及び2価の窒素含有非芳香族複素環基としては、上述したX31における各々と同様の具体例が挙げられ、好ましい例も同様である。
32の好ましい具体例としては、上述した一般式(VI)におけるL12において例示した構造が挙げられる。
【0101】
上記一般式(VI)〜(IX)で表される繰り返し単位に対応する重合性前駆体は、一般的なスルホン酸エステル化反応又はスルホンアミド化反応を用いることで合成できる。例えば、ビススルホニルハライド化合物の一方のスルホニルハライド部を選択的にアミン、アルコールなどと反応させて、スルホンアミド結合、スルホン酸エステル結合を形成した後、もう一方のスルホニルハライド部分を加水分解する方法、あるいは環状スルホン酸無水物をアミン、アルコールにより開環させる方法により一般式(VI)〜(IX)で表される繰り返し単位に対応する重合性前駆体である有機酸のリチウム、ナトリウム、カリウム塩、アンモニウム塩を得ることができる。また、US5554664、J.Fluorine Chem.105(2000)129−136、J.Fluorine Chem.116(2002)45−48に記載されている方法を用いても容易に合成することができる。
【0102】
一般式(I)で表される繰り返し単位は、より具体的には、下記一般式(X)で表される繰り返し単位であることも解像性の観点から好ましい。この繰り返し単位を有することにより、高分子化合物(A)のガラス転移温度(Tg)が上がり、酸の拡散を抑制しつつも、部位L21及び部位Ar22のスペーサーの存在により、反応に必要な最小限の拡散を維持することができ、酸拡散距離を最適に維持できることで、解像性の向上に寄与するものと考えられる。また一般式(X)で表される繰り返し単位は、現像液に対する親和性が良好であり、現像欠陥の観点からも好ましい。
【0103】
【化11】

【0104】
一般式(X)において、R及びMは、前記一般式(I)におけるR及びMとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
Ar21は、アリーレン基を表す。
21は、2価の有機基を表す。
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。
【0105】
前記一般式(X)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい化合物を以下に記述する。
一般式(X)で表される繰り返し単位におけるAr21は、アリーレン基を表し、置換基を有していてもよい。Ar21のアリーレン基は、炭素数6〜18の、置換基を有していてもよいアリーレン基であることが好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基又はナフチレン基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニレン基が最も好ましい。またAr21が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(X)で表される繰り返し単位において、Ar21がフェニレン基の時、−O−L21−Ar22−SOのAr21のベンゼン環に対する結合位置は、ベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもかまわないが、メタ位及びパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。一方で、高分子化合物(A)が後述のアルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を有さない場合には、前記結合位置はメタ位が特に好ましい。これにより適度な溶解性が維持される。
【0106】
一般式(X)におけるL21の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、−O−、−CO−、−NR14−、−S−、−CS−及びこれらの組み合わせが挙げられる。ここで、R14は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。L21の2価の有機基の総炭素数は1〜15が好ましく、より好ましくは1〜10である。
上記アルキレン基として、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基又はオクチレン基が挙げられる。
上記アルケニレン基は、好ましくは炭素数2〜8、より好ましくは炭素数2〜4のアルケニレン基である。
14で表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(I)のAにおけるRで表されるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
【0107】
21として好ましい基は、カルボニル基、メチレン基、−CO−(CH−O−、−CO−(CH−O−CO−、−(CH−COO−、−(CH−CONR−、又は−CO−(CH−NR−であり、特に好ましくは、カルボニル基、−CH−COO−、−CO−CH−O−、−CO−CH−O−CO−、−CH−CONR−、又は−CO−CH−NR−である。ここで、前記Rは水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、前記nは、1〜10の整数を表す。
【0108】
で表されるアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲は、前記一般式(I)におけるRで表されるアルキル基、アリール基、アラルキル基の具体例及び好ましい範囲と同様である。
nは、1〜6の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、1が最も好ましい。
【0109】
Ar22は、無置換の芳香族環又はアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環を表す。Ar22が無置換の芳香族環であるとは、Ar22と連結している−L21−及び−SO以外に、置換基を有さないことを意味する。また、Ar22がアルキル基若しくはアルコキシ基で置換された芳香族環であるとは、Ar22と連結している−L21−及び−SO以外に、置換基としてアルキル基若しくはアルコキシ基を有することを意味する。このように、Ar22は、フッ素原子等の電子求引性基を置換基として有さない芳香族環であり、これにより発生する酸の強度が上がり過ぎることが抑制され、発生する酸を適度な強度とすることができる。
Ar22が、アルキル基を有する場合のアルキル基は、好ましくは炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜4である。Ar22が、アルコキシ基を有する場合のアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜8であり、より好ましくは炭素数1〜4である。Ar22の芳香族環は、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)であっても、芳香族複素環(例えば、キノリン環)であってもよく、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12である。
Ar22は、無置換又はアルキル基若しくはアルコキシ基が置換した芳香族環であり、該芳香族環が芳香族炭化水素環であることがより好ましく、芳香族炭化水素環がベンゼン環又はナフタレン環であることが更に好ましい。またAr22は、無置換の芳香族環であることがより好ましい。
Mは、オニウムカチオンを表し、好ましくはスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであり、より好ましくはスルホニウムカチオンである。
【0110】
上述したように、一般式(X)において、側鎖中に部位L21及び部位Ar21が存在することによって、酸拡散距離が最適に維持される。但し、上記連結長が長過ぎると、発生した酸が拡散し易くなる為、ラフネス特性及び解像性が低下する。上記連結長を表す指標として、(L21−Ar22)の最小連結原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜15であることが更に好ましく、3〜10であることが特に好ましい。
【0111】
なお、最小連結原子数は、以下のようにして定められる数である。即ち、まず、L21−Ar22を構成している原子のうち、Ar21と結合する酸素原子に結合している原子と、−SOと結合している原子とを結ぶ原子の列を考える。次に、これら列の各々に含まれる原子数を求める。そして、これら原子数のうち最小のものを、最小連結原子数とする。
例えば、下記一般式(N−1)の場合は3であり、(N−2)の場合は7である。
【0112】
【化12】

【0113】
一般式(I)の具体例を、Mで表されるオニウムカチオンから離脱した状態のスルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン、スルホンメチド酸アニオン単位として、以下に例示する。
【0114】
【化13】

【0115】
【化14】

【0116】
【化15】

【0117】
【化16】

【0118】
【化17】

【0119】
【化18】

【0120】
【化19】

【0121】
【化20】

【0122】
【化21】

【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
上記繰り返し単位(a2)は、活性光線又は放射線の照射により側鎖にスルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はピリジニウムカチオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位であることが好ましい。
中でも下記一般式(XI)又は(XII)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0126】
【化24】

【0127】
上記一般式(XI)中、
は、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
は、2価の連結基を表す。
a1、Ra2及びRa3は、各々独立に、1価の置換基を表す。Ra1が複数ある場合には、同じであっても異なっていてもよく、複数のRa1が互いに結合して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成していてもよい。Ra2が複数ある場合には、同じであっても異なっていてもよく、複数のRa2が互いに結合して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成していてもよい。Ra3が複数ある場合には、同じであっても異なっていてもよく、複数のRa3が互いに結合して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成していてもよい。Ra1、Ra2及びRa3のうちの2つが共同して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成してもよい。
n1は0〜4の整数を表す。
n2及びn3は、各々独立に0〜5の整数を表す。
は、酸アニオンを表す。
上記一般式(XII)中、
’は、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
’は、2価の連結基を表す。
a1’及びRa2’は、各々独立に、1価の置換基を表す。Ra1’が複数ある場合には、同じであっても異なっていてもよく、複数のRa1’が互いに結合して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成していてもよい。Ra2’が複数ある場合には、同じであっても異なっていてもよく、複数のRa2’が互いに結合して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成していてもよい。Ra1’及びRa2’が共同して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成してもよい。
n1’は0〜4の整数を表す。
n2’は0〜5の整数を表す。
’は、酸アニオンを表す。
【0128】
は、前記一般式(I)のRと同義であり、Rについての具体例及び好ましい例としては、前記一般式(I)のRについて具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
は、前記一般式(I)のAと同義であり、Aについての具体例及び好ましい例としては、前記一般式(I)のAについて具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
についての2価の連結基としては−COO−又は−CONH−が好ましく、−COO−がより好ましい。
【0129】
a1、Ra2及びRa3についての1価の置換基の具体例及び好ましい例としては、一般式(XIII)のR1a〜R12aについて後述する1価の置換基の具体例及び好ましい例と同様なものが挙げられる。
n1は0〜2の整数であることが好ましい。n2、n3は0〜4の整数であることが好ましい。
は、酸アニオンを表し、Xについての酸アニオンの具体例及び好ましい例としては、後述の酸発生剤(C)において説明する一般式(1)及び(2)中のXの有機アニオンの具体例及び好ましい例と同様なものが挙げられる。
’、A’、Ra1’、Ra2’、n1’、n2’、X’は、それぞれ、R、A、Ra1、Ra2、n1、n2、Xと同義であり、具体例及び好ましい例についても同様のものが挙げられる。
【0130】
上記繰り返し単位(a2)のより好ましい構造としては、アウトガスの問題(EUV光のような高エネルギー線を照射した場合、レジスト膜中の化合物がフラグメンテーションにより破壊され、露光中に低分子成分として揮発して露光機内の環境を汚染するという問題)の抑制の観点から一般式(XIII)であることが好ましい。
【0131】
【化25】

【0132】
一般式(XIII)中、R1a〜R12aは、各々独立に、水素原子又は1価の置換基を表し、互いに結合して環を形成していてもよい。Zは、単結合又は2価の連結基である。R、A及びXは、それぞれ、一般式(XI)におけるR、A及びXと同義であり、具体例及び好ましい例についても同様のものが挙げられる。
【0133】
1a〜R12aとしては各々独立に水素原子又は1価の置換基であり、1価の置換基としては、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基、ヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が例として挙げられる。
【0134】
1a〜R12aは、好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、シリル基、ウレイド基である。
【0135】
1a〜R12aは、更に好ましくは水素原子又はハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、シアノ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、スルファモイル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基である。
【0136】
1a〜R12aは、特に好ましくは水素原子又はアルキル基(シクロアルキル基を含む)、ハロゲン原子、アルコキシ基である。
【0137】
また、R1a〜R12aのうちの2つが共同して環(例えば、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、又は複素環)を形成してもよい。環形成するR1a〜R12aのうちの2つ以上の組み合わせとしては、例えば、R2aとR3a、R6aとR7aが挙げられる。
形成する環は多環縮合環であってもよい。環の具体例としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。
【0138】
1a〜R12aとしての1価の置換基、及び、R1a〜R12aのうちの2つが形成しても良い環は、更に、置換基を有していてもよく、このような更なる置換基の具体例は、前記の1価の置換基の具体例と同様である。
【0139】
1a〜R12aとしての1価の置換基は炭素数20以下が好ましく、炭素数15以下がより好ましい。
【0140】
Zは単結合又は2価の連結基を表し、2価の連結基としては例えば、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホニルアミド基、アミノ基、ジスルフィド基、アシル基、アルキルスルホニル基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基等であり、置換基を有しても良い。これらの置換基としては上のR1a〜R12aに示した置換基と同様である。Zとして好ましくは単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アリーレン基、アミノ基、−CH=CH−、−C≡C−、アミノカルボニルアミノ基、アミノスルホニルアミノ基など電子求引性を持たない置換基であり、更に好ましくは単結合、エーテル基、チオエーテル基であり、特に好ましくは単結合である。
繰り返し単位(a2)の具体例を、酸アニオンから離脱した状態のカチオン単位として、以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
【化26】

【0142】
【化27】

【0143】
繰り返し単位(a2)に対応する重合性前駆体は、一般的なエステル化、エーテル化、スルホニル化反応を用いることで合成できる。例えば、水酸基含有オニウム塩と、(メチル)アクリル酸無水物若しくは(メチル)アクリル酸ハライドとを反応させてエステル化する方法、水酸基含有オニウム塩と、重合性基含有ハライド化合物とを反応させてエーテル化する方法等により繰り返し単位(a2)に対応する重合性前駆体のオニウム塩の水酸化物、臭化物、塩化物などを得ることができる。
【0144】
上記(3)に記載の態様において、高分子化合物(A)は繰り返し単位(a1)及び(a2)の両方を有する。この際に、繰り返し単位(a1)と繰り返し単位(a2)とがイオン対を形成していてもよい。例えば、上記一般式(I)で表される繰り返し単位におけるMのオニウムカチオンが、上記一般式(XI)又は(XII)で表される繰り返し単位におけるカチオンであってもよい(すなわちこの場合、一般式(XI)又は(XII)で表される繰り返し単位におけるX又はX’の酸アニオンは、上記一般式(I)で表される繰り返し単位における酸アニオンである)。繰り返し単位(a1)と繰り返し単位(a2)とのイオン対形成は、高分子化合物(A)中のポリマーの単一分子内のイオン対形成のみならず、複数のポリマー分子間のイオン対形成をも包含することを意味する。
【0145】
繰り返し単位(a2)に対応する重合性前駆体のカチオンと一般式(VI)〜(IX)で表される繰り返し単位に対応する重合性前駆体のアニオンとのイオン対の形成は、上記で合成した一般式(VI)〜(IX)で表される繰り返し単位に対応する有機酸のリチウム、ナトリウム、カリウム塩などと、上記で合成した繰り返し単位(a2)に対応する前駆体のオニウム塩の水酸化物、臭化物、塩化物などとから、特表平11−501909号公報又は特開2003−246786号公報に記載されている塩交換法や、特開平10−232490号公報又は特許第4025039号公報等に記載されている塩交換法を用いて容易にイオン対を形成できる。
以上のようにイオン対形成されてなる繰り返し単位(a2)に対応するモノマーと一般式(VI)〜(IX)で表される繰り返し単位に対応するモノマーとのモノマー対は、後述の重合反応に供することで高分子化合物(A)の製造に好適に使用することができる。
【0146】
本発明の高分子化合物(A)における、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、0.5〜30モル%の範囲が好ましく、1〜25モル%の範囲であることがより好ましく、2〜20モル%の範囲であることが更に好ましい。
【0147】
また、上記(3)に記載の態様において、繰り返し単位(a1)と繰り返し単位(a2)とがイオン対を形成する場合、本発明における高分子化合物(A)中の繰り返し単位(a1)及び(a2)の含有量は、高分子化合物(A)合成時における繰り返し単位(a1)及び(a2)に対応するモノマー対の仕込み量として、高分子化合物(A)合成時の全重合性化合物に対して、0.5〜50モル%の範囲が好ましく、1〜40モル%の範囲であることがより好ましく、2〜30モル%の範囲であることが更に好ましい。
本発明における高分子化合物(A)中、繰り返し単位(a1)及び(a2)の含有モル比ないしは仕込み量比は、20:80〜80:20であることが好ましく、30:70〜70:30であることがより好ましく、40:60〜60:40であることが更に好ましい。
【0148】
(フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b))
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)は、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位である限り特に限定されず、従来公知の繰り返し単位が使用可能である。本願におけるフェノール性水酸基とは、芳香環基の水素原子を水酸基で置換してなる基である。該芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環やナフタレン環等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0149】
【化28】

【0150】
一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
Bは、単結合又は2価の有機基を表す。
Arは、芳香環基を表す。
mは、1以上の整数を表す。
【0151】
は上記一般式(I)におけるRと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。Rは水素原子であることが特に好ましい。
Bとして好ましくは、単結合、カルボニル基、アルキレン基、スルホニル基、−O−、−NH−若しくはこれらを組合せた基であり、単結合、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)、−C(=O)−NH−がより好ましく、単結合、カルボニルオキシ基(−C(=O)O−)が特に好ましく、単結合が最も好ましい。
【0152】
Arの芳香環基における芳香環は単環又は多環の芳香環であり、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの炭素数6〜18の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環ヘテロ環を挙げることができる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環が解像性の観点で好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
mは1〜5の整数であることが好ましく、1が最も好ましい。mが1でArがベンゼン環の時、―OHの置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、メタ位又はパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。一方で、高分子化合物(A)が後述のアルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を有さない場合には、前記結合位置はメタ位が特に好ましい。これにより適度な溶解性が維持されると共に、架橋反応が進行しやすくなる。
【0153】
Arの芳香環基における芳香環は、上記−OHで表される基以外にも置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールカルボニル基が挙げられる。
【0154】
本発明の高分子化合物(A)における、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、10〜99モル%であることが好ましく、30〜97モル%であることがより好ましく、40〜95モル%であることが更に好ましい。これにより、特に、レジスト膜が薄膜である場合(例えば、レジスト膜の厚みが、10〜150nmである場合)、高分子化合物(A)を用いて形成された本発明のレジスト膜における未露光部のアルカリ現像液に対する溶解速度をより確実に低減できる(即ち、高分子化合物(A)を用いたレジスト膜の溶解速度を、より確実に最適なものに制御できる)。その結果、感度をより確実に向上させることができる。
【0155】
以下、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)の例を記載するが、これに限定されるものではない。
【0156】
【化29】

【0157】
高分子化合物(A)は、上記繰り返し単位以外の繰り返し単位として、更に、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を含有することが好ましい。アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を含有することにより、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が適度に調整され、解像性が良好となるので好ましい。特に微細パターン化するに伴い、薄膜化する傾向にあり、従来よりも溶解性の制御が重要である。なお本願において“アルカリ不溶性”とは、酸基、酸分解性基又はオニウムカチオンを有しないことを意味する。
酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、フェノール性水酸基等の酸性基(レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、又はアルコール性水酸基等が挙げられる。
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいう。
酸分解性基としては、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基等が挙げられる。
オニウムカチオンとしては、前述の一般式(I)におけるMと同様のものが挙げられる。
【0158】
以下、本発明の高分子化合物(A)に好ましく含有される、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)について説明する。
【0159】
(アルカリ不溶性の繰り返し単位(c))
アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)としては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0160】
【化30】

【0161】
一般式(III)中、Eは、アルカリ不溶性の繰り返し単位を表す。
【0162】
Eで表されるアルカリ不溶性の繰り返し単位を形成するための重合性モノマーの例としては、スチレン、アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、O−アルキル化スチレン、O−アシル化スチレン、アクリル酸エステル誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、N−置換マレイミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、置換基を有しても良いインデン、置換基を有しても良いアセナフチレン等を挙げることができる。中でもO−アシル化スチレンが好ましく、多環炭化水素構造で置換されたO−アシル化スチレンが好ましい。
【0163】
Eで表されるアルカリ不溶性の繰り返し単位としては、下記一般式(XIV)で表される繰り返し単位であることが更に好ましい。
【0164】
【化31】

【0165】
(式中、RC1は水素原子又はメチル基を表し、Xは非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。Arは芳香族環を表す。mは1以上の整数である。)
【0166】
一般式(XIV)におけるRC1は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(XIV)のArの芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環などの炭素数6〜18の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、又は、例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環ヘテロ環を挙げることができる。中でも、ベンゼン環、ナフタレン環が解像性の観点で好ましく、ベンゼン環が最も好ましい。
Arの芳香族環は、上記−OXで表される基以外にも置換基を有していてもよく、置換基としては例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
は非酸分解性の多環脂環炭化水素構造を有する基を表す。本発明において、非酸分解性とは、上述の繰り返し単位(a)又は後述の(C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物が発生する酸により、分解反応が起こらない性質を意味する。
【0167】
本発明において、多環脂環炭化水素構造を有する基とは、多環脂環炭化水素構造を有する一価の基である限り特に限定されないが、総炭素数が5〜40であることが好ましく、7〜30であることがより好ましい。
多環脂環炭化水素構造を有する基における多環脂環炭化水素構造は、単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造、若しくは、多環型の脂環炭化水素構造を意味し、有橋式であってもよい。単環型の脂環炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができ、単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造はこれらの基を複数有する。単環型の脂環炭化水素基を複数有する構造は、単環型の脂環炭化水素基を2〜4個有することが好ましく、2個有することが特に好ましい。多環型の脂環炭化水素構造としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を挙げることができ、炭素数6〜30の多環シクロ構造が好ましく、例えば、アダマンタン構造、デカリン構造、ノルボルナン構造、セドロール構造、イソボルナン構造、ボルナン構造、ジシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造、α−ピネン構造、トリシクロデカン構造、テトラシクロドデカン構造、あるいはアンドロスタン構造を挙げることができる。なお、単環若しくは多環のシクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0168】
上記の多環脂環炭化水素構造の好ましいものとしては、アダマンタン構造、デカリン構造、ノルボルナン構造、セドロール構造、シクロヘキサン構造、シクロヘプタン構造、シクロオクタン構造、シクロデカン構造、シクロドデカン構造、トリシクロデカン構造があげられ、アダマンタン構造がドライエッチング耐性の観点で最も好ましい。これらの多環脂環炭化水素構造の化学式を以下に表示する。
【0169】
【化32】

【0170】
更に上記多環脂環炭化水素構造は置換基を有してもよく、置換基としては例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0171】
は1〜5の整数であることが好ましく、1が最も好ましい。mが1でArがベンゼン環の時、―OXの置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位が好ましい。
【0172】
本発明において、前記一般式(XIV)で表される繰り返し単位が、下記一般式(XV)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(XV)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物を使用すると、高分子化合物のTgが高くなり、非常に硬いレジスト膜を形成するため、酸の拡散性やドライエッチング耐性をより確実に制御できる。
【0173】
【化33】

【0174】
(式中、RC1は水素原子又はメチル基を表し、Yは単結合又は2価の連結基を表し、XC2は非酸分解性の多環脂環炭化水素基を表す。)
【0175】
前記一般式(XV)で表される繰り返し単位で、本発明に用いられる好ましい例を以下に記述する。
一般式(XV)におけるRC1は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(XV)において、Yは2価の連結基であることが好ましい。Yの2価連結基として好ましい基は、カルボニル基、チオカルボニル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)、スルホニル基、−COCH−、−NH−又はこれらを組合せた2価の連結基(好ましくは総炭素数1〜20、より好ましくは総炭素数1〜10)であり、より好ましくはカルボニル基、スルホニル基、−CONH−、−CSNH−であり、特に好ましくはカルボニル基である。
【0176】
C2は多環脂環炭化水素基を表し、非酸分解性である。このような多環脂環炭化水素基は、単環型の脂環炭化水素基を複数有する基、若しくは、多環型の脂環炭化水素基であり、有橋式であってもよい。単環型の脂環炭化水素基としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロオクチル基等を挙げることができ、これらの基を複数有する。単環型の脂環炭化水素基を複数有する基は、単環型の脂環炭化水素基を2〜4個有することが好ましく、2個有することが特に好ましい。多環型の脂環炭化水素基としては、炭素数5以上のビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ構造等を有する基を挙げることができ、炭素数6〜30の多環シクロ構造を有する基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトシクロドデシル基、あるいはアンドロスタニル基を挙げることができる。なお、単環若しくは多環のシクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0177】
上記XC2の多環脂環炭化水素基としては、好ましくはアダマンチル基、デカリン基、ノルボルニル基、セドロール基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデカニル基、シクロドデカニル基、トリシクロデカニル基であり、アダマンチル基がドライエッチング耐性の観点で最も好ましい。これらの好ましいXC2の化学式としては、前述の多環脂環炭化水素構造を有する基における多環脂環炭化水素構造の化学式と同様のものが挙げられる。
更に上記脂環炭化水素基は置換基を有してもよく、置換基としては例えば、アルキル基、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
一般式(XV)における―O―Y―XC2の置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位が好ましい。
【0178】
本発明において、前記一般式(XIV)で表される繰り返し単位が、下記一般式(XV’)で表される繰り返し単位であることが最も好ましい。
【0179】
【化34】

【0180】
(式中、RC1は水素原子又はメチル基を表す。)
【0181】
一般式(XV’)におけるRC1は水素原子又はメチル基を表すが、水素原子が特に好ましい。
一般式(XV’)におけるアダマンチルエステル基の置換位置はベンゼン環のポリマー主鎖との結合位置に対して、パラ位でもメタ位でもオルト位でもよいが、パラ位が好ましい。
【0182】
一般式(XIV)又は一般式(XV)で示される繰り返し単位の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0183】
【化35】

【0184】
【化36】

【0185】
【化37】

【0186】
本発明の高分子化合物(A)は、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を含有しても、含有しなくてもよいが、含有する場合、本発明の高分子化合物(A)における、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)の含有量は、高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、3〜50モル%であることが好ましく、5〜40モル%であることがより好ましく、10〜30モル%であることが更に好ましい。
【0187】
また、上記繰り返し単位(a)〜(c)以外の繰り返し単位として、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位を更に有することもできる。
アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位としては、例えば、ラクトン構造、フェニルエステル構造を有する繰り返し単位などがあげられ、好ましくは5〜7員環ラクトン構造を有する繰り返し単位であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環した構造を有する繰り返し単位がより好ましい。以下に、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位の具体例を示す。式中、Rxは、H,CH,CHOH,又はCFを表す。
【0188】
【化38】

【0189】
【化39】

【0190】
高分子化合物(A)は、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、アルカリ現像液の作用で分解しアルカリ現像液中への溶解速度が増大する基を有する繰り返し単位の含有量は、高分子化合物(A)中の全繰り返し単位に対し、3〜50モル%が好ましく、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは10〜30モル%である。
【0191】
以下に本発明で使用される上記高分子化合物(A)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0192】
【化40】

【0193】
【化41】

【0194】
【化42】

【0195】
【化43】

【0196】
【化44】

【0197】
【化45】

【0198】
【化46】

【0199】
【化47】

【0200】
【化48】

【0201】
【化49】

【0202】
【化50】

【0203】
【化51】

【0204】
【化52】

【0205】
【化53】

【0206】
【化54】

【0207】
【化55】

【0208】
【化56】

【0209】
【化57】

【0210】
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)は、例えば、各繰り返し単位に対応する不飽和モノマーを、ラジカル、カチオン又はアニオン重合させることにより合成することができる。また各繰り返し単位の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いてポリマーを重合した後に、高分子反応により合成したポリマーに低分子化合物を修飾し、所望の繰返し単位へ変換することによって合成することも可能である。いずれの場合も、リビングアニオン重合等のリビング重合を用いることで、得られる高分子化合物の分子量分布が均一となり、好ましい。
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)の重量平均分子量は、好ましくは1000〜200000であり、更に好ましくは2000〜50000であり、更により好ましくは2000〜15000である。上記高分子化合物(A)の好ましい分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は、1.0以上1.7以下であり、より好ましくは1.0以上1.3以下であり、感度の観点から更に好ましくは1.0以上1.2以下である。上記高分子化合物(A)の重量平均分子量及び分散度は、GPC測定によるポリスチレン換算値として定義される。
【0211】
また、これらの高分子化合物(A)は2種以上を混合して使用してもよい。
本発明に用いられる上記高分子化合物(A)の添加量は組成物の全固形分を基準として、30〜95質量%とすることが好ましく、50〜90質量%とすることがより好ましく、70〜85質量%とすることが特に好ましい。
【0212】
〔2〕 (B)架橋剤
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、架橋剤(B)を含有する。本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、架橋剤(B)として、酸の作用により高分子化合物(A)を架橋する化合物(以下、適宜、酸架橋剤又は単に架橋剤と称する)を含有することが好ましい。
架橋剤は、架橋性基としてヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましい。
【0213】
好ましい架橋剤としては、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化系フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物が挙げられ、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化系フェノール化合物、アルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類がより好ましく、ヒドロキシメチル化又はアルコキシメチル化系フェノール化合物がパターン形状の観点から最も好ましい。
特に好ましい架橋剤(B)としては、分子内にベンゼン環を3〜5個含み、更にヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。
アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基が好ましい。
【0214】
上記架橋剤のうち、ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。また、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体とアルコールを酸触媒下で反応させることによって得ることができる。
このようにして合成されたフェノール誘導体のうち、アルコキシメチル基を有するフェノール誘導体が感度、保存安定性、パターン形状の点から特に好ましい。
【0215】
別の好ましい架橋剤の例として、更にアルコキシメチル化メラミン系化合物、アルコキシメチルグリコールウリル系化合物類及びアルコキシメチル化ウレア系化合物のようなN−ヒドロキシメチル基又はN−アルコキシメチル基を有する化合物を挙げることができる。
【0216】
このような化合物としては、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルグリコールウリル、1,3−ビスメトキシメチル−4,5−ビスメトキシエチレンウレア、ビスメトキシメチルウレア等が挙げられ、EP0,133,216A、西独特許第3,634,671号、同第3,711,264号、EP0,212,482A号に開示されている。
これら架橋剤の中で特に好ましいものを以下に挙げる。
【0217】
【化58】

【0218】
式中、L〜Lは、各々独立に、水素原子、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。
【0219】
本発明において架橋剤は、ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分中、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%の添加量で用いられる。架橋剤の添加量を3〜40質量%とすることにより、残膜率及び解像力が低下することを防止するとともに、レジスト液の保存時の安定性を良好に保つことができる。
【0220】
本発明において、架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよく、パターン形状の観点から2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
例えば、上記のフェノール誘導体に加え、他の架橋剤、例えば上述のN−アルコキシメチル基を有する化合物等を併用する場合、上記のフェノール誘導体と他の架橋剤の比率は、モル比で100/0〜20/80、好ましくは90/10〜40/60、更に好ましくは80/20〜50/50である。
また異なる2種以上のフェノール誘導体を組み合わせて用いることも好ましく、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体を2種以上組み合わせて用いることで、適度な溶解速度に調整することが可能となり、スカムの低減の観点から好ましい。更に、4官能以上のアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体と、2官能以上のアルコキシメチル基を有するフェノール誘導体とを少なくとも含む、2種以上のフェノール誘導体の組み合わせが架橋効率の観点で最も好ましい。
【0221】
〔3〕 (C)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記高分子化合物(A)以外の、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(C)(以下、適宜、これらの化合物を「酸発生剤(C)」と略称する)を含有してもよい。
酸発生剤(C)の好ましい形態として、オニウム化合物を挙げることができる。そのようなオニウム化合物としては、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また、酸発生剤(C)の別の好ましい形態として、活性光線又は放射線の照射により、スルホン酸、イミド酸又はメチド酸を発生する化合物を挙げることができる。その形態における酸発生剤は、例えば、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、オキシムスルホネート、イミドスルホネートなどを挙げることができる。
【0222】
本発明に用いることができる酸発生剤(C)としては、低分子化合物に限らず、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基を高分子化合物の主鎖又は側鎖に導入した化合物も用いることができる。
【0223】
酸発生剤(C)は、電子線又は極紫外線の照射により酸を発生する化合物であることが好ましい。
【0224】
好ましいオニウム化合物として、下記一般式(1)で表されるスルホニウム化合物、若しくは一般式(2)で表されるヨードニウム化合物を挙げることができる。
【0225】
【化59】

【0226】
一般式(1)及び(2)において、
a1、Ra2、Ra3、Ra4及びRa5は、各々独立に、有機基を表す。
は、有機アニオンを表す。
以下、一般式(1)で表されるスルホニウム化合物及び一般式(2)で表されるヨードニウム化合物を更に詳述する。
【0227】
上記一般式(1)のRa1〜Ra3、並びに、上記一般式(2)のRa4及びRa5は、各々独立に有機基を表すが、好ましくはRa1〜Ra3の少なくとも1つ、並びに、Ra4及びRa5の少なくとも1つがそれぞれアリール基である。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
上記一般式(1)及び(2)におけるXの有機アニオンは、例えばスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンなどが挙げられ、好ましくは、下記一般式(3)、(4)又は(5)で表される有機アニオンであり、より好ましくは下記一般式(3)で表される有機アニオンである。
【0228】
【化60】

【0229】
上記一般式(3)、(4)及び(5)に於いて、Rc、Rc、Rc及びRcは、それぞれ、有機基を表す。
【0230】
上記Xの有機アニオンが、電子線や極紫外線などの活性光線又は放射線の照射により発生する酸であるスルホン酸、イミド酸、メチド酸などに対応する。
上記Rc1〜Rc4の有機基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はこれらの複数が連結された基を挙げることができる。これら有機基のうちより好ましくは1位がフッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたシクロアルキル基、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。上記Rc2〜Rc4の有機基の複数が互いに連結して環を形成していてもよく、これら複数の有機基が連結された基としては、フッ素原子又はフロロアルキル基で置換されたアルキレン基が好ましい。フッ素原子又はフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。ただし、末端基は置換基としてフッ素原子を含有しないことが好ましい。
【0231】
そして、前記酸を発生する化合物(C)は、露光で発生した酸の非露光部への拡散を抑制し解像性やパターン形状を良好にする観点から、体積130Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが好ましく、体積190Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることがより好ましく、体積230Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが更により好ましく、体積270Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることが特に好ましく、体積400Å以上の大きさの酸(より好ましくはスルホン酸)を発生する化合物であることがとりわけ好ましい。ただし、感度や塗布溶剤溶解性の観点から、上記体積は、2000Å以下であることが好ましく、1500Å以下であることが更に好ましい。上記体積の値は、富士通株式会社製の「WinMOPAC」を用いて求めた。すなわち、まず、各例に係る酸の化学構造を入力し、次に、この構造を初期構造としてMM3法を用いた分子力場計算により、各酸の最安定立体配座を決定し、その後、これら最安定立体配座についてPM3法を用いた分子軌道計算を行うことにより、各酸の「accessible volume」を計算することができる。
以下に、特に好ましい酸発生剤(C)を以下に例示する。なお、例の一部には、体積の計算値を付記している(単位Å)。なお、ここで求めた計算値は、アニオン部にプロトンが結合した酸の体積値である。
【0232】
【化61】

【0233】
【化62】

【0234】
【化63】

【0235】
【化64】

【0236】
また、本発明に用いることができる酸発生剤(C)(好ましくはオニウム化合物)としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基(光酸発生基)を高分子化合物の主鎖又は側鎖に導入した高分子型酸発生剤も用いることができ、その具体例としては、前述の高分子化合物(A)の具体例において、本願の繰り返し単位(b)に相当する繰り返し単位を除いたものが挙げられる。
【0237】
本発明に係るネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は酸発生剤(C)を含有しても、含有しなくても良いが、含有する場合、酸発生剤(C)の組成物中の含有量は、組成物の全固形分を基準として、好ましくは0.1〜25質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%であり、更に好ましくは1〜18質量%である。
酸発生剤(C)は、1種単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0238】
〔4〕塩基性化合物
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、前記成分の他に、塩基性化合物を酸補足剤として含有することが好ましい。塩基性化合物を用いることにより、露光から後加熱までの経時による性能変化を小さくすることできる。このような塩基性化合物としては、有機塩基性化合物であることが好ましく、より具体的には、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシル基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。アミンオキサイド化合物(メチレンオキシ単位及び/又はエチレンオキシ単位を有するものが好ましく、例えば特開2008−102383に記載の化合物が挙げられる。)、アンモニウム塩(好ましくはヒドロキシド又はカルボキシレートである。より具体的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドに代表されるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドがLERの観点で好ましい。)も適宜用いられる。
更に、酸の作用により塩基性が増大する化合物も、塩基性化合物の1種として用いることができる。
アミン類の具体例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリイソデシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ジデシルアミン、メチルオクタデシルアミン、ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、メチルジオクタデシルアミン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、2,6−ジイソプロピルアニリン、2,4,6−トリ(t−ブチル)アニリン、トリエタノールアミン、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミンや、米国特許第6040112号明細書のカラム3、60行目以降に例示の化合物、2−[2−{2―(2,2―ジメトキシ−フェノキシエトキシ)エチル}−ビス−(2−メトキシエチル)]−アミンや、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。含窒素複素環構造を有する化合物としては、2−フェニルベンゾイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、N−ヒドロキシエチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ジメチルアミノピリジン、アンチピリン、ヒドロキシアンチピリン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−ウンデカ−7−エン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
また、光分解性塩基性化合物(当初は塩基性窒素原子が塩基として作用して塩基性を示すが、活性光線あるいは放射線の照射により分解されて、塩基性窒素原子と有機酸部位とを有する両性イオン化合物を発生し、これらが分子内で中和することによって、塩基性が減少又は消失する化合物。例えば、特許3577743、特開2001−215689号、特開2001−166476、特開2008−102383に記載のオニウム塩)、光塩基発生剤(例えば、特開2010−243773に記載の化合物)も適宜用いられる。
これら塩基性化合物の中でもLERの観点でアンモニウム塩又は光分解性塩基性化合物が好ましい。
本発明において、塩基性化合物は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明で使用される塩基性化合物の含有量は、ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.03〜5質量%がより好ましく、0.05〜3質量%が特に好ましい。
【0239】
〔5〕界面活性剤
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、更に、塗布性を向上させるため界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の例としては、特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、メガファックF171(大日本インキ化学工業製)やフロラードFC430(住友スリーエム製)やサーフィノールE1004(旭硝子製)、OMNOVA社製のPF656及びPF6320、等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、組成物の全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
【0240】
〔6〕有機カルボン酸
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物には、前記成分の他に、有機カルボン酸を含有することが好ましい。このような有機カルボン酸化合物として、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族カルボン酸、オキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、ケトカルボン酸、安息香酸誘導体、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸などを挙げることができるが、電子線露光を真空化で行なう際にはレジスト膜表面より揮発して描画チャンバー内を汚染してしまう恐れがあるので、好ましい化合物としては、芳香族有機カルボン酸、その中でも例えば安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸が好適である。
有機カルボン酸の配合量としては、高分子化合物(A)100質量部に対し、0.01〜10質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量部、更により好ましくは0.01〜3質量部である。
【0241】
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて、更に、染料、可塑剤、酸増殖剤(国際公開第95/29968号公報、国際公開第98/24000号公報、特開平8−305262号公報、特開平9−34106号公報、特開平8−248561号公報、特表平8−503082号公報、米国特許第5,445,917号明細書、特表平8−503081号公報、米国特許第5,534,393号明細書、米国特許第5,395,736号明細書、米国特許第5,741,630号明細書、米国特許第5,334,489号明細書、米国特許第5,582,956号明細書、米国特許第5,578,424号明細書、米国特許第5,453,345号明細書、米国特許第5,445,917号明細書、欧州特許第665,960号明細書、欧州特許第757,628号明細書、欧州特許第665,961号明細書、米国特許第5,667,943号明細書、特開平10−1508号公報、特開平10−282642号公報、特開平9−512498号公報、特開2000−62337号公報、特開2005−17730号公報、特開2008−209889号公報等に記載)等を含有してもよい。これらの化合物については、いずれも特開2008−268935号に記載のそれぞれの化合物を挙げることができる。
【0242】
〔カルボン酸オニウム塩〕
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有してもよい。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明においては、カルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環若しくは多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。更に好ましくはこれらのアルキル基の一部又は全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。またアルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0243】
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に使用される溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、トルエン、キシレン、酢酸シクロヘキシル、ジアセトンアルコール、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが好ましい。これらの溶剤は単独若しくは組合せて用いられる。
ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分は、上記溶剤に溶解し、固形分濃度として、1〜30質量%で溶解することが好ましい。より好ましくは1〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%である。
【0244】
本発明は、本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜にも関し、このようなレジスト膜は、例えば、該ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が基板等の支持体上に塗布されることにより形成される。このレジスト膜の厚みは、10〜150nmであることが好ましく、10〜120nmであることがより好ましい。基板上に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により基板上に塗布されるが、スピン塗布が好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。塗布膜は60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間プリベークして薄膜を形成する。
【0245】
被加工基板及びその最表層を構成する材料は、例えば半導体用ウエハの場合、シリコンウエハを用いることができ、最表層となる材料の例としては、Si,SiO,SiN,SiON,TiN,WSi,BPSG,SOG,有機反射防止膜等が挙げられる。
【0246】
また、本発明は、上記のようにして得られるレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクスにも関する。このようなレジスト塗布マスクブランクスを得るために、フォトマスク作製用のフォトマスクブランクス上にレジストパターンを形成する場合、使用される透明基板としては、石英、フッ化カルシウム等の透明基板を挙げることができる。一般には、該基板上に、遮光膜、反射防止膜、更に位相シフト膜、追加的にはエッチングストッパー膜、エッチングマスク膜といった機能性膜の必要なものを積層する。機能性膜の材料としては、ケイ素、又はクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等の遷移金属を含有する膜が積層される。また、最表層に用いられる材料としては、ケイ素又はケイ素に酸素及び/又は窒素を含有する材料を主構成材料とするもの、更にそれらに遷移金属を含有する材料を主構成材料とするケイ素化合物材料や、遷移金属、特にクロム、モリブデン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、チタン、ニオブ等より選ばれる1種以上、又は更にそれらに酸素、窒素、炭素より選ばれる元素を1以上含む材料を主構成材料とする遷移金属化合物材料が例示される。
遮光膜は単層でも良いが、複数の材料を塗り重ねた複層構造であることがより好ましい。複層構造の場合、1層当たりの膜の厚みは、特に限定されないが、5nm〜100nmであることが好ましく、10nm〜80nmであることがより好ましい。遮光膜全体の厚みとしては、特に限定されないが、5nm〜200nmであることが好ましく、10nm〜150nmであることがより好ましい。
【0247】
これらの材料のうち、一般にクロムに酸素や窒素を含有する材料を最表層に持つフォトマスクブランク上でネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いてパターン形成を行った場合、基板付近でくびれ形状が形成される、いわゆるアンダーカット形状となりやすいが、本発明を用いた場合、従来のものに比べてアンダーカット問題を改善することができる。
次いで、このレジスト膜には活性光線又は放射線(電子線等)を照射し、好ましくはベーク(通常80〜150℃、より好ましくは90〜130℃で、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間)を行った後、現像する。これにより良好なパターンを得ることができる。そして、このパターンをマスクとして用いて、適宜エッチング処理及びイオン注入などを行い、半導体微細回路及びインプリント用モールド構造体やフォトマスク等を作成する。
なお、本発明の組成物を用いてインプリント用モールドを作成する場合のプロセスについては、例えば、特許第4109085号公報、特開2008−162101号公報、及び「ナノインプリントの基礎と技術開発・応用展開―ナノインプリントの基板技術と最新の技術展開―編集:平井義彦(フロンティア出版)」に記載されている。
【0248】
本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の使用形態及びレジストパターン形成方法を次に説明する。
本発明は、上記レジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、該露光されたレジスト膜又はレジスト塗布マスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法にも関する。本発明において、前記露光が電子線又は極紫外線を用いて行われることが好ましい。
精密集積回路素子の製造などにおいてレジスト膜上への露光(パターン形成工程)は、まず本発明のレジスト膜にパターン状に電子線又は極紫外線(EUV)照射を行うことが好ましい。露光量は電子線の場合0.1〜20μC/cm程度、好ましくは3〜15μC/cm程度、極紫外線の場合0.1〜20mJ/cm程度、好ましくは3〜15mJ/cm程度となるように露光する。次いで、ホットプレート上で60〜150℃で1〜20分間、好ましくは80〜120℃で1〜10分間、露光後加熱(ポストエクスポージャベーク)を行い、ついで現像、リンス、乾燥することによりレジストパターンを形成する。現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)等の好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは2〜3質量%アルカリ水溶液で、好ましくは0.1〜3分間、より好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像する。アルカリ現像液には、アルコール類及び/又は界面活性剤を、適当量添加してもよい。アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。特に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%質量の水溶液が望ましい。
【0249】
現像液には、必要に応じてアルコール類及び/又は界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0250】
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は好ましくは2mL/sec/mm以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm以下、更に好ましくは1mL/sec/mm以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm以上が好ましい。
吐出される現像液の吐出圧を上記の範囲とすることにより、現像後のレジスト残渣に由来するパターンの欠陥を著しく低減することができる。
このメカニズムの詳細は定かではないが、恐らくは、吐出圧を上記範囲とすることで、現像液がレジスト膜に与える圧力が小さくなり、レジスト膜・レジストパターンが不用意に削られたり崩れたりすることが抑制されるためと考えられる。
なお、現像液の吐出圧(mL/sec/mm)は、現像装置中の現像ノズル出口における値である。
【0251】
現像液の吐出圧を調整する方法としては、例えば、ポンプなどで吐出圧を調整する方法や、加圧タンクからの供給で圧力を調整することで変える方法などを挙げることができる。
【0252】
また、現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
【0253】
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0254】
こうして、本発明のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物から形成されるレジスト膜について、未露光部分のレジスト膜は溶解し、露光された部分は高分子化合物が架橋しているので現像液に溶解され難く、基板上に目的のパターンが形成される。
【0255】
また本発明は、レジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスクにも関する。露光及び現像としては、上記に記載の工程が適用される。該フォトマスクは半導体製造用として好適に使用される。
本発明におけるフォトマスクは、ArFエキシマレーザー等で用いられる光透過型マスクであっても、EUV光を光源とする反射系リソグラフィーで用いられる光反射型マスクであっても良い。
【実施例】
【0256】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定はされない。以下の合成例、実施例において、化合物の構造はH−NMR測定で確認した。
【0257】
(I)ネガ型レジストとしての例(電子線、アルカリ現像)
1.高分子化合物(A)((A)成分)の合成例
<合成例1:高分子化合物(A1)の合成>
プロピレングリコールモノメチルエーテル9.5質量部を窒素気流下、85℃に加熱した。この液を攪拌しながら、下記構造のモノマー(B−1)3.69質量部、下記構造のモノマー(B−2)14.42質量部、下記構造のモノマー(B−3)2.34質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル38.2質量部、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル〔V−601、和光純薬工業(株)製〕2.42質量部の混合溶液を2時間かけて滴下した。滴下終了後、85℃で更に4時間攪拌した。反応液を放冷後、多量のヘプタン/酢酸エチル(=90/10(体積比))で再沈殿を実施し、得られた固体を再度アセトンに溶解させ、多量の水/メタノール(=90/10(体積比))で再沈殿・真空乾燥を行うことで、本発明の高分子化合物(A1)を15.5質量部得た。
【0258】
得られた高分子化合物のGPC(キャリア:N−メチル−2−ピロリドン(NMP))から求めた重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は、Mw=7500であり、分散度(Mw/Mn)は、1.31であった。
以下、同様にして、高分子化合物(A2)〜(A5)、(A8)及び(A10)〜(A15)を合成した。
【0259】
<合成例2:高分子化合物(A6)の合成>
下記構造のポリマー(C−1)45gをN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)120gに溶解し、ピリジン19.75g、スルホ化剤として2−スルホ安息香酸無水物2.76g、N,N−ジメチルアミノピリジン366mgを加え、室温で5時間攪拌した。反応液を酢酸エチル300mLの入った分液ロートに移し、有機層を飽和食塩水300mLで5回洗浄し、有機層をエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを除去した。
得られたポリマーをテトラヒドロフラン(THF)90mL及びメタノール30mLに溶解し、PAG前駆体として臭化トリフェニルスルホニウム5.14gを加え、室温で3時間攪拌した。反応液をエバポレーターで濃縮した後、酢酸エチル300mLに再溶解して有機層を蒸留水300mLで5回洗浄した。有機層を濃縮し、アセトン150mLに溶解した後、蒸留水:メタノール=15:1(体積比)の混合溶液2L中に滴下した。上澄み液を除去して得られた固体を酢酸エチル150mLに溶解し、ヘキサン2L中に滴下した。上澄みを除去して得られた沈殿を真空乾燥を行うことで、本発明の高分子化合物(A6)を46.5g得た。
以下、同様にして、高分子化合物(A7)及び(A9)を合成した。
【0260】
得られた高分子化合物につき、H−NMR測定により、高分子化合物の組成比(モル比)を算出した。また、GPC(溶媒:THF)測定により、高分子化合物の重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn、以下「PDI」ともいう)を算出した。これらを以下の表中に示した。
また比較用の高分子化合物として、下記表1に示す構造、組成比、重量平均分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)を有する比較高分子化合物(A1)及び(A2)を用意した。
【0261】
【表1】

【0262】
【表2】

【0263】
【表3】

【0264】
【表4】

【0265】
2.実施例
〔実施例1E〕
(1)支持体の準備
酸化Cr蒸着した6インチウェハー(通常のフォトマスクブランクスに使用する遮蔽膜処理を施した物)を準備した。
(2)レジスト塗布液の準備
(ネガ型レジスト組成物N1の塗布液組成)
高分子化合物(A1) 0.72g
架橋剤CL−1(構造式は下記) 0.08g
架橋剤CL−4(構造式は下記) 0.04g
テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(塩基性化合物) 0.002g
2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸(有機カルボン酸) 0.012g
界面活性剤PF6320(OMNOVA(株)製) 0.001g
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(溶剤) 4.0g
プロピレングリコールモノメチルエーテル(溶剤) 5.0g
【0266】
【化65】

【0267】
上記組成物溶液を0.04μmの孔径を有するメンブレンフィルターで精密ろ過して、レジスト塗布溶液を得た。
【0268】
(3)レジスト膜の作成
上記6インチウェハー上に東京エレクトロン製スピンコーターMark8を用いてレジスト塗布溶液を塗布し、110℃、90秒間ホットプレート上で乾燥して、膜厚100nmのレジスト膜を得た。すなわち、レジスト塗布マスクブランクスを得た。
【0269】
(4)ネガ型レジストパターンの作製
このレジスト膜に、電子線描画装置((株)エリオニクス社製;ELS−7500、加速電圧50KeV)を用いて、パターン照射を行った。照射後に、120℃、90秒ホットプレート上で加熱し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて60秒間浸漬した後、30秒間、水でリンスして乾燥した。
【0270】
(5)レジストパタ−ンの評価
得られたパターンを下記の方法で、感度、解像力(LS解像力及びIS解像力)、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)、スカム及び現像欠陥について評価した。
【0271】
〔感度〕
得られたパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。線幅100nm(ライン:スペース=1:1)のレジストパターンを解像するときの露光量(電子線照射量)を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0272】
〔LS解像力〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)が分離解像する最小の線幅)をLS解像力(nm)とした。
【0273】
〔IS解像力〕
線幅100nmの孤立スペースパターン(スペース:ライン=1:>100)を解像する際の最小照射量における限界解像力(スペースとライン(スペース:ライン=1:>100)が分離解像する最小の線幅)をIS解像力(nm)とした。
【0274】
〔パタ−ン形状〕
上記の感度を示す露光量(電子線照射量)における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0275】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す照射量(電子線照射量)で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmに含まれる任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0276】
〔スカム評価〕
上記〔パターン形状〕と同様の方法でラインパターンを形成した。その後、走査型電子顕微鏡S4800(日立ハイテク社(株)製)により断面SEMを取得し、スペース部分の残渣を観察して以下のように評価した。
× スカムが見られ、パターン間が一部つながっている。
○ スカムが見られるがパターン間はつながっていない。
◎ スカムは見られない。
【0277】
〔現像欠陥〕
上記〔パターン形状〕と同様の方法で形成したラインパターンを、KLA2112機(KLAテンコール社製)により、現像欠陥数を測定した(Threshold=20,ピクセルサイズ=0.16)。評価結果を、単位面積(1cm)あたりの欠陥の個数で示した。
【0278】
〔実施例2E〕〜〔実施例22E〕、〔比較例1E〕、〔比較例2E〕
レジスト液処方で、下表2に記載の成分以外は実施例1Eと同様にしてレジスト溶液(ネガ型レジスト組成物N2〜N22、ネガ型レジスト比較組成物N1、N2)の調製、ネガ型パターン形成及びその評価を行った。
【0279】
【表5】

【0280】
【表6】

【0281】
上記及び下記実施例/比較例で用いた前掲以外の素材の略称を以下に記載する。
【0282】
〔架橋剤(B)〕
【0283】
【化66】

【0284】
〔酸発生剤(C)〕
【0285】
【化67】

【0286】
〔塩基性化合物〕
B1:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
B2:トリ(n−オクチル)アミン
B3:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
【0287】
【化68】

【0288】
〔溶剤〕
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)
S3:2−ヘプタノン
S4:乳酸エチル
S5:シクロヘキサノン
S6:γ−ブチロラクトン
S7:プロピレンカーボネート
【0289】
評価結果を表3に示す。
【0290】
【表7】

【0291】
表3に示す結果から、本発明に係る組成物は、感度、パターン形状、ラインエッジラフネス(LER)、スカムの低減及び現像欠陥の低減に優れることが分かる。また、繰り返し単位(a1)に相当する繰り返し単位を含有する高分子化合物を使用した組成物は、LS解像力及びIS解像力にも優れることが分かる。
【0292】
(II)ネガ型レジストとしての例(EUV、アルカリ現像)
〔実施例1F〜6F並びに比較例1F及び2F〕
(レジスト溶液の調製)
下記表4に示したネガ型レジスト組成物をポアサイズ0.04μmのポリテトラフルオロエチレンフィルターによりろ過して、ネガ型レジスト溶液を調製した。
【0293】
(レジスト評価)
調製したネガ型レジスト溶液を、スピンコーターを用いて、ヘキサメチルジシラザン処理を施したシリコン基板上に均一に塗布し、100℃で60秒間ホットプレート上で加熱乾燥を行って、0.05μmの膜厚を有したレジスト膜を形成させた。
得られたレジスト膜に関し、下記の方法で、感度、LS解像力、IS解像力、パタ−ン形状、ラインエッジラフネス(LER)、スカム及び現像欠陥について評価した。
【0294】
〔感度〕
得られたレジスト膜に、EUV光(波長13nm)を用いて、露光量を0〜20.0mJ/cmの範囲で0.1mJ/cmずつ変えながら、線幅100nmの1:1ラインアンドスペースパターンの反射型マスクを介して、露光を行った後、110℃で90秒間ベークした。その後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液を用いて現像した。
線幅100nmのラインアンドスペース(L/S=1/1)のマスクパターンを再現する露光量を感度とした。この値が小さいほど、感度が高い。
【0295】
〔LS解像力〕
上記の感度を示す露光量における限界解像力(ラインとスペース(ライン:スペース=1:1)とが分離解像する最小の線幅)をLS解像力(nm)とした。
【0296】
〔IS解像力〕
線幅100nmの孤立スペースパターン(スペース:ライン=1:>100)を解像する際の最小照射量における限界解像力(スペースとライン(スペース:ライン=1:>100)が分離解像する最小の線幅)をIS解像力(nm)とした。
【0297】
〔パターン形状〕
上記の感度を示す露光量における線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)の断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察した。ラインパターンの断面形状において、[ラインパターンのトップ部(表面部)における線幅/ラインパターンの中部(ラインパターンの高さの半分の高さ位置)における線幅]で表される比率が1.5以上のものを「逆テーパー」とし、該比率が1.2以上1.5未満のものを「やや逆テーパー」とし、該比率が1.2未満のものを「矩形」として、評価を行った。
【0298】
〔ラインエッジラフネス(LER)〕
上記の感度を示す露光量で、線幅100nmのラインパターン(L/S=1/1)を形成した。そして、その長さ方向50μmにおける任意の30点について、走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−9220)を用いて、エッジがあるべき基準線からの距離を測定した。そして、この距離の標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほど良好な性能であることを示す。
【0299】
〔スカム評価〕
上記〔パターン形状〕と同様の方法でラインパターンを形成した。その後、走査型電子顕微鏡S4800(日立ハイテク社(株)製)により断面SEMを取得し、スペース部分の残渣を観察して以下のように評価した。
× スカムが見られ、パターン間が一部つながっている。
○ スカムが見られるがパターン間はつながっていない。
◎ スカムは見られない。
【0300】
〔現像欠陥評価〕
上記〔パターン形状〕と同様の方法で形成したラインパターンを、KLA2112機(KLAテンコール社製)により、現像欠陥数を測定した(Threshold=20,ピクセルサイズ=0.16)。評価結果を、単位面積(1cm)あたりの欠陥の個数で示した。
【0301】
以上の評価結果を表4に示す。
【0302】
【表8】

【0303】
表4に示す結果から、本発明に係る組成物はEUV露光においても、感度、パターン形状、ラインエッジラフネス(LER)、スカムの低減及び現像欠陥の低減に優れることが分かる。また、繰り返し単位(a1)に相当する繰り返し単位を含有する高分子化合物を使用した組成物は、LS解像力及びIS解像力にも優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)、及び、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)を有する高分子化合物、並びに、(B)架橋剤を含有する、ネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
前記高分子化合物(A)が更に、アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)を有する、請求項1に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)の含有量が、前記高分子化合物(A)の全繰り返し単位に対して、3〜50モル%である、請求項2に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記高分子化合物(A)が、前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)として、活性光線又は放射線の照射により側鎖に酸アニオンを生じるイオン性構造部位を有する繰り返し単位(a1)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(B)が、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
前記活性光線又は放射線の照射により酸を発生する繰り返し単位(a)が下記一般式(I)で表される繰り返し単位であり、前記フェノール性水酸基を有する繰り返し単位(b)が下記一般式(II)で表される繰り返し単位であり、前記アルカリ不溶性の繰り返し単位(c)が下記一般式(III)で表される繰り返し単位である、請求項2〜5のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子を表す。
Aは、2価の連結基を表す。
Dは、スルホン酸アニオン、スルホンイミド酸アニオン又はスルホンメチド酸アニオンを表す。
Mは、オニウムカチオンを表す。
Bは、単結合又は2価の有機基を表す。
Arは、芳香環基を表す。
mは、1以上の整数を表す。
Eは、アルカリ不溶性の繰り返し単位を表す。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のネガ型感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により形成されたレジスト膜。
【請求項8】
膜厚が10〜150nmである、請求項7に記載のレジスト膜。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のレジスト膜を塗布した、レジスト塗布マスクブランクス。
【請求項10】
請求項7又は8に記載のレジスト膜を露光すること、及び、前記露光された膜を現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項11】
請求項9に記載のレジスト塗布マスクブランクスを露光すること、及び、前記露光されたマスクブランクスを現像することを含む、レジストパターン形成方法。
【請求項12】
前記露光が、電子線又は極紫外線を用いて行われる、請求項10又は11に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項13】
請求項9に記載のレジスト塗布マスクブランクスを、露光及び現像して得られるフォトマスク。

【公開番号】特開2013−54196(P2013−54196A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191955(P2011−191955)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】