説明

ネクタイ及び該ネクタイのファスナ・スライダ保持部材

【課題】 ファスナタイプのネクタイにおいて、ファスナ・スライダ保持部材それ自体にもファッション機能を持たせ、更には、該ファスナ・スライダ保持部材にバッジ、ブローチ、スカーフ等の装飾品を装着可能にする。
【解決手段】 ファスナ・スライダ保持部材50内に設けられたファスナ・スライダによって接離される2条の帯状半体601,602とからなり、該2条の帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材50の一端側においてループを形成し、他端側において一体的に係止され、かつ、該帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材50の両側の開放部を通して外部に食み出している。帯状半体がファスナ・スライダ保持部材50の側部から食み出し可能となっているので、該帯状半体をネクタイとして使用することができ、更には、ファスナ・スライダ保持部材を装飾体として使用できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ファスナ・スライダを用いたネクタイ、及び、該ファスナ・スライダを保持するためのファスナ・スライダ保持部材に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は、従来のネクタイの一例を説明するための要部構成図で、該ネクタイは、図4(A)に示すような、上端が斜めに切断されている幅広帯部1と、図4(B)に示すような細帯部2とからなるもので、該細帯部2は、下端から一定範囲を帯状半体部20a,20bとしたループ状部2aとその下端に連続する単一帯部2bとから形成されている。前記幅広帯部1は、出来上がり時に結び目の下方に1本の溝が生じる格好の良い結び具合が形成されるように、幅広帯部1の中央よりもやや上方域に、中央の両側の生地を摘んで縫いつけることにより縦長の溝10が形成されている。一方、細帯部2は、下端部近傍の単一帯部2bを除いてはループ状に構成され、前記単一帯部2bとの連設部から一定範囲がファスナの歯31を具備する帯状半体部20a,20bとなっている。これら帯状半体部20a,20b相互を接離自在とするため、前記ファスナの歯31,31相互を係脱させる為の滑り金具(ファスナ・スライダ)32を具備する芯体4が設けてある。
【0003】芯体4は、図4(C)に示すように、後方開放の1つの箱体とした中央片40と、該中央片40の両側から斜め上方に連設されている一対の挿通管41,42とからなる略Y字状体であり、前記中央片40内には前記ファスナの滑り金具32が嵌合せしめられており、該挿通管41,42には前記帯状半体部20a,20bがそれぞれ挿通せしめられている。前記挿通管41,42は、芯体4の前後方向に細長い断面を有する管で、前記帯状半体部20a,20bはこの形状に応じて立ち上げられる。
【0004】細帯部2を上述のような構成に仕上げるには、ループ状部2aの帯状半体部20a,20bそれぞれを、挿通管41,42の上方から挿通させるとともにファスナの歯31,31を具備させ、該ファスナの滑り金具32を前記芯体の中央片40内にその後方開放部から嵌合させて固定させ、その後、帯状半体部20a,20bの下端に、前記単一帯部2bを縫い付けるようにしている。
【0005】上記ネクタイは、幅広帯部1と細帯部2から成るもので、芯体4にネクタイの幅広帯部を取り付けるとともに、ファスナの滑り金具32を固定し、該滑り金具によってループ状部のループの大きさを調節してネクタイの締め付け具合を調節するようにしたものであり、ネクタイの締め付け作業が非常に楽になるものであるが、ネクタイ締め上げ後は、従来のネクタイと何ら変わることのないものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のごときファスナを用いたネクタイに関するものであるが、上記芯体(ファスナ・スライダ保持部材)4を改良することによって、上述のごとき従来のネクタイと同様の使い方ができるだけでなく、前述のごとき幅広帯部を使用することなく、例えば、細帯部をループタイとして使用することができ、更には、それ自体を装飾体として使用することができ、更には、バッジ、ブローチ、スカーフ等の装飾体を取り付けるための保持具としても使用できるファスナ・スライダ保持部材、更には、該ファスナ・スライダ保持部材を用いたネクタイを提供するものである。
【0007】而して、図4に示した従来の芯体(ファスナ・スライダ保持部材)4は、細帯部20a,20bが挿通される挿通管41,42を有し、このため、細帯部20a,20bの幅や厚さが制限され、例えば、該細帯部の幅を広くしたり厚くしたりし、更には、装飾品を付加したりして、該細帯部にファッション機能を持たせるようにすることはできなかった。換言すれば、上記従来技術において、前記細帯部は幅広帯部の裏(陰)側になるものであるから、該細帯部にファッション機能をもたせようとする考えは全くなく、同様に、芯体も陰に隠れてしまうものであるから、この芯体にもファッション機能を持たせるようにする考えはなかった。
【0008】本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、前述のごとき細帯部にファッション機能を持たせて、該細帯部をネクタイそのもの(つまり、ネクタイの表面に出る部分)として使用可能にするファスナ・スライダ保持部材を提供し、更には、該ファスナ・スライダ保持部材それ自体にもファッション機能を持たせ、更には、該ファスナ・スライダ保持部材にバッジ、ブローチ、スカーフ等の装飾品を装着可能にすることを目的としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、着脱自在に重ねることのできる2枚の板状体とから成り、少なくとも一方の板状体の他方の板状体に対向する面に、ファスナ・スライダを収容する凹部を有し、かつ、前記両板状体を重ねた時に、前記ファスナ・スライダを中心とする両側にファスナが通過可能な溝を有し、該溝の外側が前記ファスナが取り付けられている帯状体の厚さ以上の隙間をもって外部に開放されていることを特徴としたものである。
【0010】請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記2枚の板状体が略同一形状に形成され、両者を重ねた時に、両者が協力して、前記ファスナ・スライダを収容する凹部、前記ファスナが通過する溝、及び、前記帯状体が食み出す隙間を形成することを特徴としたものである。
【0011】請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記板状体の対向面の一方に突起を有し、他方に該突起に係合する凹部を有し、該突起と凹部とにより前記2枚の板状体を着脱自在に係合するようにしたことを特徴としたものである。
【0012】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記2枚の板状体を貫通する孔を有することを特徴としたものである。
【0013】請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記2枚の板状体は、概略三角形状をなし、その1頂点部に前記ファスナ・スライダを収容する凹部を有し、該頂点部を挟む両側に前記溝及び隙間が形成されていることを特徴としたものである。
【0014】請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のファスナ・スライダ保持部材を具備したネクタイであって、該ネクタイは、前記ファスナ・スライダによって接離されるファスナが取り付けられた2条の帯状半体とからなり、該2条の帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材の一端側においてループを形成し、他端側において一体的に係止され、かつ、該帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材の前記開放部を通して外部に食み出していることを特徴としたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明によるファスナ・スライダ保持部材を用いたネクタイの一例を説明するための全体構成図で、図中、50は本発明によるファスナ・スライダ保持部材、60は該ファスナ・スライダ保持部材50内に設けられたファスナ・スライダ(図2に70にて示す)によって接離されるネクタイ本体部で、該ネクタイ本体部60は、周知のように、ファスナ・スライダの上方では601,602に離脱されてループ状部を形成し、下方では相互に係止されて一体的になっているが、帯状体を矢印A方向に引き上げるとループの大きさが大きくなり、該ループを頭から通してYシャツの上側から首に巻きつけてから、B方向に引き下げることによって、ループを小さくし、首に締めつけることができる。
【0016】ネクタイ本体60(帯状体601,602)は、一方の側にファスナ60a1,60a2を有する帯状半体60b1,60b2から成り、ファスナ・スライダ70(図2に拡大して示す)により該ファスナ60a1,60a2を接離するものであるが、本発明において、ファスナ・スライダ保持部材50は、帯状半体60b1,60b2が、該ファスナ・スライダ保持部材50の側部から食み出すように構成されており、従って、該帯状半体60b1,60b2の幅に何ら制限はなく、この幅を広くし、更には、該帯状半体60b1,60b2部に装飾を施したりすることが可能であり、更には、図1に示した状態で、そのまま直ちに、例えば、ループネクタイとして使用することができる。その場合、ファスナ・スライダ保持部材50も、図1に示すように、表面に露出しているので、このファスナ・スライダ保持部材50の表面に装飾を施し、或いは、該ファスナ・スライダ保持部材50に、例えば、図示のように、貫通孔51を設けておき、該貫通孔51を利用して、バッジやブローチを取り付け、更には、該貫通孔51を通して補助金具を取り付け、その補助金具にスカーフ等の装飾品を取り付けるようにすることもできる。
【0017】図2は、図1に示したファスナ保持部材50を取り外した時のネクタイ本体60を示す図、図3は、スライダ保持部材50の分解図((A),(B))及び組立て後の斜視図((C))で、図3(A),(B)に示すように、ファスナ・スライダ保持部材50は、2枚の平板状のファスナ・スライダ保持半体501,502とから成り、これらを図3(C)に示すように、着脱自在に重ね合せて使用するが、その重ね合せ時に、これら2枚の間に、図2に示したネクタイ本体60のファスナ60a1,60a2を片側に取り付けた帯状半体60b1,60b2を有し、かつ、該ファスナ60a1,60a2を接離するファスナ・スライダ(ファスナすべり金具)70を有するネクタイ60を挟んで重ね合せる。図3において521,522は、ファスナ・スライダ70を収容する凹部,551a,552a:551b,552bは、該凹部内に収容されたファスナ・スライダ70によって分離されたファスナ60a1,60a2が通過する溝、561a,562a:561b,562bは帯状半体部60b1,60b2がファスナ・スライダ保持部材50の外部へ食み出すための隙間部、531,532は、これらファスナ・スライダ保持半体501と502を重ね合せた時に、前記溝551a,551b,552a,552b及び隙間561a,561b,562a,562bが形成されるように設けられた凸部、541と542は、前記ファスナ・スライダ保持部材を着脱自在に係合するための突起と凹部で、いずれが突起で、いずれが凹部であってもよい。
【0018】上述のように、本発明によるファスナ・スライダ保持部材50は、略平板な2枚のファスナ・スライダ保持半体501,502を、その間にファスナ・スライダ70を一体的に有するネクタイ60を、該ファスナ・スライダ70が前記凹部521,522内に収容されるようにして挟み込み、突起541(又は542)と凹部542(又は541)とを係合させて一体的に組み合せる。このようにすると、図1に示した状態となり、前述のように、ループの大きさを調整して、ネクタイとして使用することができる。なお、図示例の場合、ファスナ・スライダ保持半体501,502の両方に凸部531,532を設けたり、ファスナ・スライダ収容凹部521,522を設けた例を示したが、いずれか一方、あるいは、それぞれ、つまり、凸部と凹部を分担して設けてもよい。また、図示例では、これらファスナ・スライド保持半体501,502を重ねた時にできる隙間に広挟の段差を設け、該隙間から食み出す帯状体を適度に押さえるようにした例を示したが、図3(C)に点線にて示すように、必ずしも、段差を設ける必要はない。
【0019】更に、本発明によるファスナ・スライダ保持部材50は、該保持部材50を貫通する孔51(511,512)を有してもよく、この孔51を通して、バッジやブローチ等のアクセサリーを取り付けるようにしてもよいし、更には、該ファスナ・スライダ保持部材50にスカーフ等を巻きつけてもよいし、更には、前述の従来技術と同様、ネクタイの幅広部を取り付けるようにしてもよい。更には、ファスナ・スライダ保持部材50の表面自体に装飾を施し、該ファスナ・スライダ保持部材50自身を装飾品としてもよい。
【0020】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、非常にシンプルで、しかも、ファッション性に満ちたファスナタイプのネクタイ、或いは、該ファスナタイプのネクタイを構成するファスナ・スライダ保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるネクタイの一実施形態を示す図である。
【図2】 図1に示したネクタイのファスナ・スライダ保持部材を取り外した時のファスナタイプのネクタイ本体部の様子を示す図である。
【図3】 本発明によるファスナ・スライダ保持部材の分解図及び組立図である。
【図4】 従来のファスナタイプのネクタイの一例を説明するための図である。
【符号の説明】
50…ファスナ・スライダ保持部材、60…ファスナネクタイ本体部、70…ファスナ・スライダ、501,502…ファスナ・スライダ保持半体、51(511,512)…孔、521,522…ファスナ・スライダ収容凹部、531,532…凸部、541,542…凸凹部、551a,551b,552a,552b…ファスナ通過溝、56a1,56a2,562a,562b…帯状体食み出し用隙間、60a1,60a2…ファスナ、60b1,60b2…帯状半体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 着脱自在に重ねることのできる2枚の板状体とから成り、少なくとも一方の板状体の他方の板状体に対向する面に、ファスナ・スライダを収容する凹部をし、かつ、前記両板状体を重ねた時に、前記ファスナ・スライダを中心とする両側にファスナが通過可能な溝を有し、該溝の外側が前記ファスナが取り付けられている帯状体の厚さ以上の隙間をもって外部に開放されていることを特徴とするファスナ・スライダ支持部材。
【請求項2】 前記2枚の板状体が略同一形状に形成され、両者を重ねた時に、両者が協力して、前記ファスナ・スライダを収容する凹部、前記ファスナが通過する溝、及び、前記帯状体が食み出す隙間を形成することを特徴とする請求項1に記載のファスナ・スライダ支持部材。
【請求項3】 前記板状体の対向面の一方に突起を有し、他方に該突起に係合する凹部を有し、該突起と凹部とにより前記2枚の板状体を着脱自在に係合するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のファスナ・スライダ支持部材。
【請求項4】 前記2枚の板状体を貫通する孔を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のファスナ・スライダ支持部材。
【請求項5】 前記2枚の板状体は、概略三角形状をなし、その1頂点部に前記ファスナ・スライダを収容する凹部を有し、該頂点部を挟む両側に前記溝及び隙間が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のファスナ・スライダ支持部材。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載のファスナ・スライダ保持部材を具備したネクタイであって、該ネクタイは、前記ファスナ・スライダによって接離されるファスナが取り付けられた2条の帯状半体とからなり、該2条の帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材の一端側においてループを形成し、他端側において一体的に係止され、かつ、該帯状半体は前記ファスナ・スライダ保持部材の前記開放部を通して外部に食み出していることを特徴とするネクタイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−95606(P2001−95606A)
【公開日】平成13年4月10日(2001.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−278109
【出願日】平成11年9月30日(1999.9.30)
【出願人】(592004600)株式会社たまき (8)
【Fターム(参考)】