説明

ネックウェア

【課題】高い意匠性を実現しつつ、夜間等での安全性を高めることができるネックウェアを提供する。
【解決手段】ネクタイ1は、表地2と裏地3により芯材4を挟んで形成される。芯材4の表地側の面を、光反射面または発光面とし、表地2には、芯材4の光反射面または発光面の位置に1つ以上の透かし2aが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネックウェアに関し、より詳細には、ネクタイ、ストール、スカーフなどのネックウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布帛の意匠性を向上させる手段の一つとして、耐薬品性の異なる繊維を混用して製布し、耐薬品性の劣る繊維を除去して模様を付与するオパール加工(抜食加工ともいう)が知られている。例えば、比較的耐酸性であるポリエステル繊維と、綿繊維やレーヨン繊維のように酸に弱いセルロース系繊維とを交織あるいは交編した織編物、もしくはこれらの繊維を混紡あるいは交撚した糸条を用いて製布した織編物を酸で処理することで、セルロース系繊維を除去し、織編物に透かし模様を付与し、意匠性を増強することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このようなオパール加工を施した衣類は一般に販売されており、特に、Tシャツ、ハンカチ、婦人用ブラウスなど幅広く採用され、透かし模様によってファッション性を向上させている。また、オパール加工は、透かしを入れることで通気性を良好にすると共に、見た目にも涼感を演出できるため、夏場に着る浴衣などにも用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−303305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記のオパール加工をネクタイに施した場合、透かし模様によって、他のネクタイにはない独特の見た目や風合いなどを付与することができるものと考えられる。そしてさらに、ネクタイの場合、透かしを入れた部分は中の芯材が透けて見えるため、この芯材を光反射面にすることで、あたかも透かし模様が光って見え、見た目にきらきらした今までのネクタイにはないファッション性を付与することができる。
【0006】
一方、通勤帰り等に夜間に徒歩あるいは自転車で会社等から帰宅する場合、多くは車道の近くを通らなければならないため、自動車やバイクの運転者から視認されないと大変危険である。この場合、歩行者あるいは自転車の運転者は危険防止の観点から夜間に目立つものを身に付けることが望ましい。例えば、上記のネクタイの場合、芯材が光反射面になっているため、ファッション性のみならず、夜間の危険防止の観点からも有効と考えられるが、このようなネクタイ等のネックウェア、すなわち、透かし模様が光って見えるようなネックウェアはこれまで考案されていない。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、高い意匠性を実現しつつ、夜間等での安全性を高めることができるネックウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、表地と裏地により芯材を挟んで形成されたネックウェアであって、前記芯材の前記表地側の面を、光反射面または発光面とし、前記表地には、前記光反射面または前記発光面の位置に1つ以上の透かしが形成されていることを特徴としたものである。
【0009】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記表地は、ポリエステル繊維とセルロース系繊維との組み合せからなり、前記表地の透かしは、前記セルロース系繊維がオパール加工により除去されることで形成されていることを特徴としたものである。
【0010】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、前記セルロース系繊維は、レーヨンまたは綿であることを特徴としたものである。
【0011】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記芯材は基材にアルミ箔が貼り合わされてなり、前記芯材の光反射面は前記アルミ箔により形成されていることを特徴としたものである。
【0012】
第5の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記芯材は基材に発光性塗料が塗布されてなり、前記芯材の発光面は前記発光性塗料により形成されていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表地と裏地により芯材を挟んで形成されたネックウェアにおいて、芯材の表地側の面を光反射面または発光面にすることで、表地に形成された透かし部分が光って見えるようになるため、高い意匠性を実現しつつ、夜間等での安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るネックウェアの一例を示す図である。
【図2】図1に示す芯材の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明に係るネックウェアの一例を示す図で、図中、1はネックウェアの一例であるネクタイを示す。図1(A)はネクタイ1を表から見た状態を示し、図1(B)はネクタイ1を裏から見た状態を示す。ネクタイ1は、表地2と裏地3により芯材4を挟んで形成されている。そして、芯材4の少なくとも表地2側の面を、後述の図2に示すように光反射面または発光面としている。また、表地2には、芯材4の光反射面または発光面の位置に1つ以上の透かし2aが形成されている。この透かし2aは、従来のオパール加工(抜食加工)により形成される。
【0016】
オパール加工による透かし2aの形成方法について以下に説明する。まず、2つの異なる繊維を組み合わせた混用布帛として、例えば、ポリエステル繊維とセルロース系繊維とを組み合せたものを準備する。セルロース系繊維としては、例えば、レーヨンや綿などを用いることができる。また、この混用布帛に着色するための染料を含む捺染糊と、オパール加工するための抜食糊(オパール糊ともいう)とを準備する。抜食糊の処方例としては、例えば、糊剤(メイプロガムNP10%)を50、抜食剤(硫酸アルミニウム14〜18水塩)を24、浸透剤を1、湿潤剤を5、温湯を20として、合計100部とする。
【0017】
上記の混用布帛に対して、予めデザインされた印捺模様に従って、捺染糊、抜食糊を一定の厚さで置いていき、印捺を行う。この印捺方法としては、手工捺染、機械捺染のいずれの方法であってもよい。この際、抜食糊に、耐酸性の染料を添加しておき、オパール加工によりセルロース系繊維を除去する共に、残ったポリエステル繊維に着色を行うようにしてもよい。
【0018】
次に、印捺後の混用布帛を乾燥させた後に、染料の場合、高温で所定時間の湿熱処理により、また、顔料の場合、高温で所定時間の乾熱処理により、固着処理を行うと共に、抜食糊の置かれた部分について抜食処理を行う。この抜食処理の条件は、特に限定されるものではないが、湿熱処理の場合、例えば、高熱蒸気によるスチーミングを行うためのスチーマを用いて、140〜180℃で5〜30分間程度処理する。なお、上記の抜食糊は、混用布帛の組成繊維であるセルロース系繊維の炭化すなわち分解に寄与する硫酸水溶液等の酸(本例では、硫酸アルミニウム)を含有する。この抜食糊中の酸は、これに接する混用布帛のセルロース系繊維に化学作用を及ぼし、セルロース系繊維の分解を生じさせるが、セルロース系繊維の分解はオパール加工を施した部分を加熱することにより促進される。
【0019】
次に、抜食処理後の混用布帛に対して、水洗い、湯洗い、ソーピング(洗剤で洗う)が順に施され、これにより、上記で分解されたセルロース系繊維、余分な染料、薬剤、糊剤等が除去される。なお、ソーピング処理については、従来公知の方法で行えばよく、例えば、アニオンまたはノニオン系界面活性剤を1〜5g/L含むソーピング浴中で、50〜85℃、5〜20分間処理すればよい。またこのときに、必要に応じて、中和(酸洗い)を組み合わせてもよい。そしてさらに、湯洗い、水洗いが施されて、最後に乾燥処理が実施される。これにより表地2が製造される。
【0020】
上記により製造された表地2に、裏地3及び芯材4を組み合わせて縫製し、図1に示すようなネクタイ1が製造される。表地2には、芯材4の光反射面または発光面の位置にオパール加工により透かし2aが形成されており、図1(A)に示すように、この透かし2aを介して芯材4の光反射面または発光面が透けて見えている。なお、図1(B)に示すように、表地2はネクタイ1の裏側に折り曲げられて縫製されているが、芯材4はネクタイ1の幅Wに合わせて裁断されているため、ネクタイ1の裏側に折り曲げられた表地2からは透かし2aを介して芯材4は見えず、裏地3が見える。
【0021】
図2は、図1に示す芯材4の断面を示す図である。上述したように、芯材4の表地側の面は、光反射面または発光面としている。例えば、芯材4を構成する基材4bに、アルミ箔4aが貼り付けられ、このアルミ箔4aにより光反射面が形成されている。この基材4bとしては、例えば、一般的な綿製の不織布などを用いることができる。また、アルミ箔4aの面は、表地2側に向いているため、図1(A)に示すように、アルミ箔4aが表地2の透かし2aから透けて見える。このため見た目には透かし2aの部分が光って見えることになる。このように、芯材4の表地2側の面を光反射面にすることで、表地2の透かし2aの部分(透かし模様)が光って見え、見た目にきらきらした今までのネクタイにはないファッション性を付与することができる。さらに、ファッション性のみならず、夜間等に自動車のヘッドライトに対して透かし2aの部分が反射するため、歩行時あるいは自転車運転時の危険防止にも役立つ。
【0022】
また、図2において、芯材4の別の形態として、基材4bに、発光性塗料4a′を塗布するようにしてもよい。この場合、発光性塗料4a′により発光面が形成される。発光性塗料4a′としては、大きく自発光型と蓄光型とに分けることができ、自発光型は、蛍光体または燐光(りんこう)体を主要顔料とし、微量の放射性元素を刺激源として加えて、暗所で発光するようにしたものであり、夜光塗料とも呼ばれる。また、蓄光型は、太陽光や蛍光灯などの光エネルギー(紫外線)を吸収して、暗闇で徐々に光を放出するものである。吸収する光エネルギーが強ければ強いほど、より明るく、長時間発光を続け、弱ければ発光も暗く、時間も短くなる。現在主流となっているアルミナ系酸化物では有害物質が全く含まれず、極めて安全な材料であるため、自発光型と比べ望ましいといえる。
【0023】
これまでネックウェアとしてネクタイを例示して説明してきたが、本発明は、ネクタイに限定されるものではなく、表地と裏地により芯材を挟んで形成されたスカーフなど、他のネックウェアにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1…ネクタイ、2…表地、2a…透かし、3…裏地、4…芯材、4a…アルミ箔、4a′…発光性部材、4b…基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地により芯材を挟んで形成されたネックウェアであって、
前記芯材の前記表地側の面を、光反射面または発光面とし、
前記表地には、前記光反射面または前記発光面の位置に1つ以上の透かしが形成されていることを特徴とするネックウェア。
【請求項2】
請求項1に記載のネックウェアにおいて、前記表地は、ポリエステル繊維とセルロース系繊維との組み合せからなり、前記表地の透かしは、前記セルロース系繊維がオパール加工により除去されることで形成されていることを特徴とするネックウェア。
【請求項3】
請求項2に記載のネックウェアにおいて、前記セルロース系繊維は、レーヨンまたは綿であることを特徴とするネックウェア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のネックウェアにおいて、前記芯材は基材にアルミ箔が貼り合わされてなり、前記芯材の光反射面は前記アルミ箔により形成されていることを特徴とするネックウェア。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のネックウェアにおいて、前記芯材は基材に発光性塗料が塗布されてなり、前記芯材の発光面は前記発光性塗料により形成されていることを特徴とするネックウェア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64212(P2013−64212A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204390(P2011−204390)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(592004600)株式会社たまき (8)