説明

ネットワークブートシステム、ネットワークブート方法、ネットワークストレージ管理装置

【課題】複数台のネットワークストレージ装置を用いて大量のクライアント端末を管理するネットワークブートシステムを、効率よく運用管理する。
【解決手段】クライアント端末は、ネットワークストレージ装置から読み込んだボリュームに含まれるプログラムをメンテナンスし変更されたメンテナンスボリュームを、自身に対応するネットワークストレージ装置のメンテナンスボリュームに記憶させ、メンテナンスされたメンテナンスボリュームが記憶されたネットワークストレージ装置は、自身のメンテナンスボリュームを、他のネットワークストレージ装置に送信し、他のネットワークストレージ装置は、受信したメンテナンスボリュームを、運用ボリュームに切替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアント端末が、自身を動作させるプログラムをネットワークストレージ装置から読み込んで起動するネットワークブートシステム、ネットワークブート方法、ネットワークストレージ管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PC(パーソナルコンピュータ)等のクライアント端末にて動作するOS(Operating System)等の情報を、ネットワークストレージ装置に記憶させておき、クライアント端末が起動する際には、ネットワークを介してネットワークストレージ装置からOS等の情報を読み込んで起動するネットワークブートによるシンクライアントシステムが利用されている。
このようなネットワークブートでは、OSを始めとして、クライアント端末で利用されるアプリケーション等のプログラムや、クライアント端末で作成された全ての情報を含むクライアント端末の動作に必要な全ての情報をボリューム単位でネットワークストレージ装置に記憶させておくことが可能であり、各クライアント端末には、OSやアプリケーション等のプログラムを記憶させておく必要がない。これにより、各クライアント端末にはハードディスクなどのストレージが不要となり、クライアント端末は自身に搭載されたCPU、メモリ、グラフィックカードなどの資源を最大限に活用することが可能となるとともに、クライアント端末に情報が保存されないため、情報漏洩の防止にも効果的である。
【0003】
このようにネットワークストレージ装置から読み出されるOSやプログラムのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用などのメンテナンスを行う際の技術として、特許文献1には、ネットワークストレージ装置にバックアップ系、待機系、運用系のボリュームを用意し、メンテナンスを行う場合には、待機系のボリュームに対してメンテナンスを行い、後に系切替えを行うことで、クライアント端末による処理を停止させることなく、効率的にメンテナンス作業を行う技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、OSやアプリケーションデータ等の複数のクライアント間で共有される情報が格納されるシステム領域と、デスクトップ設定やドキュメントファイル等のユーザ毎に用意される情報が格納されるユーザ領域とを分離し、システム領域を複数のクライアント間で共有することで、1台のクライアント端末で行ったメンテナンスが、同一のネットワークストレージ装置に接続された他のクライアント端末にも反映されるようにして運用管理の効率化を図る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/095875号
【特許文献2】特開2006−252112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許技術1および特許文献2に開示された技術は、それぞれ1台のネットワークストレージ装置についてメンテナンスを行うことを前提とする技術であり、複数台のネットワークストレージ装置の管理を想定したものではない。ここで、1台のネットワークストレージ装置自体の処理能力、記憶容量や、1台のネットワークストレージ装置と複数のクライアント端末とを接続するネットワークの帯域容量には限界があるため、1台のネットワークストレージ装置で管理できるクライアント端末の台数には限界がある。そこで、大量のクライアント端末を管理する大規模なネットワークストレージシステムを構築するためには、複数のネットワークストレージ装置を導入する必要がある。
【0007】
複数のネットワークストレージ装置を導入する場合、上述の特許文献1および特許文献2に開示された技術を組み合わせ、複数台のネットワークストレージ装置のそれぞれにシステム領域とユーザ領域のボリュームを用意しても、メンテナンスの際には、ネットワークストレージ装置毎にメンテナンスを行う必要がある。例えば、20台のネットワークストレージ装置が存在する場合には、20台分のメンテナンス作業を行うこととなり、管理者が全てのネットワークストレージ装置に対してメンテナンス作業を行うのは面倒で時間がかかり、負担が大きい。これにより、セキュリティパッチの適用が遅れて脅威にさらされたり、アプリケーションのバージョンアップが遅れてクライアント端末のユーザに不便をかけたりする可能性が生じる場合があると考えられる。このような場合、効率的にメンテナンス作業を行えることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、複数台のネットワークストレージ装置を用いて大量のクライアント端末を管理するネットワークブートシステムにおいて、クライアント端末に読み込まれる情報のメンテナンスコストを減らし、効率よく運用管理することが可能なネットワークブートシステム、ネットワークブート方法、ネットワークストレージ管理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、ネットワークを介して接続された複数のクライアント端末のうち自身に対応するクライアント端末に、クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置と、ネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置とを備えたネットワークブートシステムであって、ネットワークストレージ装置は、複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられたクライアント端末を動作させるプログラムが含まれるボリュームが記憶される記憶部と、クライアント端末からの要求に応じてボリュームをクライアント端末に送信し、クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされたプログラムが含まれるボリュームを、記憶部に記憶させる通信部と、を備え、ネットワークストレージ管理装置は、ネットワークストレージ装置に命令を送信し、通信部によって記憶部に記憶されたボリュームを、複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、他のネットワークストレージ装置が備える記憶部に記憶させるネットワークストレージ制御部を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、通信部が、ネットワークストレージ管理装置から送信される命令を受信すると、クライアント端末から送信される運用ボリューム読み出し要求に応じて、通信部によって記憶部に記憶されたボリュームを運用ボリュームとして読み出してクライアント端末に送信することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、記憶部には、予め自身に対応付けられたクライアント端末を動作させるプログラムが含まれ、運用ボリューム読み出し要求に応じて送信する運用ボリュームと、クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされるプログラムが含まれ、メンテナンスボリューム読み出し要求に応じて送信するメンテナンスボリュームと、が記憶され、通信部は、クライアント端末からのメンテナンスボリューム読み出し要求に応じてメンテナンスボリュームをクライアント端末に送信し、クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされたプログラムが含まれるメンテナンスボリュームを、記憶部に記憶させ、ネットワークストレージ管理装置は、ネットワークストレージ装置に命令を送信し、メンテナンスボリュームをネットワークストレージ装置の記憶装置にコピーさせ、コピーさせたメンテナンスボリュームを運用ボリュームとして、クライアント端末から送信される運用ボリューム読み出し要求に応じて送信させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、ネットワークストレージ管理装置が、ネットワークストレージ装置に同期命令を送信し、通信部によって自身の記憶部に記憶されたメンテナンスボリュームと、他のネットワークストレージ装置に記憶されたメンテナンスボリュームとの差分を差分情報として抽出させ、抽出した差分情報を、他のネットワークストレージ装置に送信させることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、ネットワークストレージ装置が、他のネットワークストレージ装置から送信される差分情報を受信すると、受信した差分情報に基づいて、自身の記憶部に記憶されたメンテナンスボリュームを更新して記憶させる受信部を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様は、ネットワークストレージ管理装置が、ネットワークストレージ装置にボリュームコピー命令を送信し、通信部によって記憶部に記憶されたボリュームを、複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様は、複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられたクライアント端末を動作させるプログラムが含まれるボリュームが記憶される記憶部を有し、ネットワークを介して接続された複数のクライアント端末のうち自身に対応するクライアント端末に、クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置と、ネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置とを備えたネットワークブートシステムのネットワークブート方法であって、ネットワークストレージ装置が、クライアント端末からの要求に応じてボリュームをクライアント端末に送信し、クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされたプログラムが含まれるボリュームを、記憶部に記憶させるステップと、ネットワークストレージ管理装置が、ネットワークストレージ装置に命令を送信し、ネットワークストレージ装置の記憶部に記憶されたボリュームを、複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、他のネットワークストレージ装置が備える記憶部に記憶させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様は、ネットワークを介して接続された複数のクライアント端末のうち自身に対応するクライアント端末に、クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置であって、複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられたクライアント端末を動作させるプログラムが含まれるボリュームが記憶される記憶部と、クライアント端末からの要求に応じてボリュームをクライアント端末に送信し、クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされたプログラムが含まれるボリュームを、記憶部に記憶させる通信部とを備えるネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置であって、ネットワークストレージ装置に命令を送信し、通信部によって記憶部に記憶されたボリュームを、複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、他のネットワークストレージ装置が備える記憶部に記憶させるネットワークストレージ制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、クライアント端末は、ネットワークストレージ装置から読み込んだボリュームに含まれるプログラムをメンテナンスし変更されたメンテナンスボリュームを、自身に対応するネットワークストレージ装置のメンテナンスボリュームに記憶させ、メンテナンスされたメンテナンスボリュームが記憶されたネットワークストレージ装置は、自身のメンテナンスボリュームを、他のネットワークストレージ装置に送信し、他のネットワークストレージ装置は、受信したメンテナンスボリュームを、運用ボリュームに切替えるようにしたので、複数のネットワークストレージ装置を備えるネットワークブートシステムにおいても、1台のクライアント端末にボリュームのメンテナンスを行うことで、複数のネットワークストレージの全てにメンテナンス済のボリュームを反映させることができる。これにより、例えば、複数のネットワークストレージ装置のそれぞれに対してメンテナンス作業を行う必要がなくなり、作業者の作業負担を減らし、メンテナンスコストを減らして、ネットワークブートシステムを効率よく運用管理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態によるネットワークブートシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるクライアント情報記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるネットワークストレージ情報記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態によるボリュームの世代管理の概念を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態によるネットワークブートシステムの動作例を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第2の実施形態によるネットワークブートシステムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施形態によるボリュームの世代管理の概念を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態によるネットワークストレージ情報記憶部に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態によるネットワークブートシステムの動作例を示すシーケンス図である。
【図10】本発明の第2の実施形態によるネットワークブートシステムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施形態:構成>
図1は、本発明の第1の実施形態によるネットワークブートシステムのブロック構成を示す図である。
本実施形態におけるネットワークブートシステムは、複数のネットワークストレージ装置100(ネットワークストレージ装置100−1、ネットワークストレージ装置100−2、・・・)と、ネットワークストレージ管理装置200と、システム管理端末300と、複数のクライアント端末400(クライアント端末400−1、クライアント端末400−2、・・・)とを備えている。本実施形態では、クライアント端末400−1の端末名を「Client1」とし、クライアント端末400−2の端末名を「Client2」とし、クライアント端末400−3の端末名を「Client3」とし、クライアント端末400−4の端末名を「Client4」とする。また、ネットワークストレージ装置100−1のストレージ名を「Storage1」とし、ネットワークストレージ装置100−2のストレージ名を「Storage2」とする。ここで、図1に示される各装置、各端末は、それぞれ図1に示される台数に限られるものではなく、本実施形態によるネットワークブートサービスの提供環境、ネットワーク環境などによりそれぞれ任意の台数として良い。
【0020】
ネットワークストレージ装置100は、ネットワークを介して、自身に対応付けられて帰属する複数のクライアント端末400と接続されており、自身に帰属するクライアント端末400を動作させるプログラムが記憶される記憶部120を有するコンピュータ装置である。ネットワークストレージ装置100は、例えば、iSCSI(Internet Small Computer System Interface)によりクライアント端末400と通信を行う。ネットワークストレージ装置100は、差分送受信部110と、記憶部120と、クライアント通信部140とを備えている。
【0021】
記憶部120は、自身に帰属するクライアント端末400を動作させるプログラムが含まれるボリュームが格納されている記憶部であり、メンテナンスボリューム121と、運用ボリューム122と、旧運用ボリューム123とのボリュームが記憶されている。ここで、ボリュームとは、クライアント端末400が動作するためのOSプログラムや各種アプリケーションプログラム等の情報の管理単位である。ネットワークストレージ装置100は、クライアント端末400からのボリューム読み出し要求に応じてこれらのいずれかのボリュームを読み出し、クライアント端末400に送信する。
【0022】
メンテナンスボリューム121は、自身に帰属するクライアント端末400から送信されるメンテナンスボリューム読み出し要求に応じてクライアント端末400に送信され読み出されるボリュームである。メンテナンスボリューム121は、読み出されたクライアント端末400によってプログラムのメンテナンスが行われ、メンテナンスされ変更されてメンテナンスボリューム121として記憶される。
【0023】
運用ボリューム122は、自身に帰属するクライアント端末400から送信される運用ボリューム読み出し要求に応じてクライアント端末400に送信され読み出されるボリュームである。
旧運用ボリューム123は、クライアント端末400によってプログラムのメンテナンスが行われ、メンテナンスされたメンテナンスボリューム121が運用段階に移行し運用ボリューム122として取り扱われることとなった場合に、それまで運用ボリューム122として取り扱われていたボリュームである。
【0024】
差分送受信部110は、クライアント端末400によって、記憶部120のメンテナンスボリューム121がメンテナンスされ更新して記憶された場合に、ネットワークストレージ管理装置200から送信される同期命令に応じて、自身のメンテナンスボリューム121と他のネットワークストレージ装置100のメンテナンスボリューム121との差分を抽出し、抽出した差分情報を他のネットワークストレージ装置100に送信する。一方、差分送受信部110は、他のネットワークストレージ装置100の差分送受信部110から、差分情報が送信された場合は、送信された差分情報を受信し、受信した差分情報と自身のメンテナンスボリューム121とに基づいて自身の記憶部120のメンテナンスボリューム121を更新して記憶させる。このように、差分送受信部110は、他のネットワークストレージ装置100の差分送受信部110と通信を行って、記憶部120のメンテナンスボリューム121に記憶されるボリュームの同期処理を行う。ここで、差分送受信部110が抽出する差分情報は、例えば、LBA(Logical Block Addressing)によるセクタ毎に抽出する。
【0025】
クライアント通信部140は、クライアント端末400から送信されるボリューム読み出し要求を受信し、受信したボリューム読み出し要求に対応するボリュームを記憶部120の運用ボリューム122から読み出し、読み出したボリュームをクライアント端末400に送信する。クライアント通信部140は、ボリューム読み出し要求に応じてクライアント端末400とセッションを張り、クライアント端末400との間でボリュームに含まれるプログラム等の情報の送受信を行う。
【0026】
システム管理端末300は、ネットワークを介してネットワークストレージ管理装置200に接続され、インターネットブラウザ機能やディスプレイ等を備えるコンピュータ端末であり、本ネットワークブートシステムの管理者に利用される。システム管理端末300は、通信部310と、入力部320とを備えている。入力部320は、キーボードやマウス等の入力デバイスであり、管理者からの情報入力を受付ける。通信部310は、入力部320に入力される情報に応じて、ネットワークを介してネットワークストレージ管理装置200と通信を行う。本実施形態では、システム管理端末300は、入力部320から入力される情報に応じて、通信部310がネットワークストレージ管理装置200に提供されるウェブサービスにアクセスし、インターネットブラウザによってシステム管理端末300が備えるディスプレイにネットワークストレージ管理装置200から送信される情報が表示される。
【0027】
ネットワークストレージ管理装置200は、システム管理端末300と、クライアント端末400と、ネットワークストレージ装置100とネットワークを介して接続されたコンピュータ装置であり、ウェブサービス部210と、起動サービス部220と、記憶部230と、ネットワークストレージ制御部240とを備えている。
ウェブサービス部210は、ネットワークを介してシステム管理端末300と情報通信を行い、記憶部230に記憶された情報を参照、更新する等のサービスを提供する。
【0028】
記憶部230は、クライアント端末400とネットワークストレージ装置100との帰属関係を表す対応情報等が記憶される記憶部であり、ネットワークストレージ情報記憶部231と、クライアント情報記憶部232と、起動情報記憶部233とを備えている。
クライアント情報記憶部232には、本実施形態のネットワークブートシステムによりネットワークブートを行うクライアント端末400の情報が記憶されている。図2は、クライアント情報記憶部232に記憶されるクライアント情報のデータ例を示す図である。図2に示されるように、クライアント情報には、クライアント端末名に対応付けて、MACアドレスと、IPアドレスと、OS領域グループ名と、ストレージ名と、メンテナンスフラグとの情報が含まれる。
【0029】
クライアント端末名は、複数のクライアント端末400に予め付与された名称であり、クライアント端末400を識別する。MACアドレスは、対応するクライアント端末に付与されたMACアドレスを示す情報である。IPアドレスは、対応するクライアント端末に付与されるIPアドレスを示す情報である。OS領域グループ名は、対応するクライアント端末に対応するメンテナンスボリューム121、運用ボリューム122、旧運用ボリューム123から構成される概念の名称であり、例えば、OSプログラム、インストールされたアプリケーション等によって異なる。ストレージ名は、対応するクライアント端末を動作させるプログラムが含まれるボリュームが記憶されるネットワークストレージ装置100の名称である。メンテナンスフラグは、システム管理端末300から送信されるメンテナンス端末を指定する情報に対応するクライアント端末に対応付けられて記憶される情報であり、チェックされることで、そのクライアント端末がプログラムのメンテナンスを行うクライアント端末として選択されたことが示される。
【0030】
ネットワークストレージ情報記憶部231には、本実施形態のネットワークブートシステムによりクライアント端末400に読み込まれるボリュームが記憶されたネットワークストレージ装置100の情報が記憶されている。図3の(a)は、ネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されるネットワークストレージ装置100のデータ例を示す図である。図3の(a)に示されるように、ネットワークストレージ情報には、ストレージ名に対応付けて、親マスタフラグ、OS領域グループ名、また系統名として、メンテナンスボリューム、運用ボリューム、旧運用ボリュームの3系統のそれぞれの名称を示す情報が含まれる。
【0031】
親マスタフラグは、クライアント端末400によりプログラムのメンテナンスが行われるストレージであることを示す情報であり、チェックされることで、そのネットワークストレージ装置に帰属するクライアント端末400によってプログラムのメンテナンスが行われる対象として選択されたことを示す情報である。OS領域グループ名は、対応するクライアント端末に対応するメンテナンスボリューム121、運用ボリューム122、旧運用ボリューム123から構成される概念の名称であり、例えば、OSプログラム、インストールされたアプリケーション等によって異なる。ストレージ名は、複数のネットワークストレージ装置100のそれぞれに予め付与された名称であり、ネットワークストレージ装置100を識別する。系統名には、メンテナンスボリュームと、運用ボリュームと、旧運用ボリュームとの3系統の名称が含まれる。ここで、メンテナンスボリュームは、クライアント端末400によってプログラムのメンテナンスが行われた場合に、メンテナンスされ変更されるボリュームの名称である。運用ボリュームは、自身に帰属するクライアント端末400から送信されるボリューム読み出し要求に応じて送信されるボリュームの名称である。旧運用ボリュームは、クライアント端末400によってプログラムのメンテナンスが行われ、メンテナンスされたボリュームが運用段階に移行し、運用ボリュームとされた場合に、それまで運用ボリュームであったボリュームが世代管理として保存されているボリュームの名称である。
【0032】
起動情報記憶部233には、クライアント端末400毎に対応付けられた起動情報が記憶される。起動情報記憶部233には、クライアント端末400から送信される起動情報要求に応じて送信する起動情報が記憶される。起動情報には、例えば、ブートファイルなどの情報が含まれる。
ネットワークストレージ制御部240は、システム管理端末300からウェブサービス部210に送信される情報に応じて、ネットワークストレージ装置100に同期命令を送信するなどの処理を行う制御部である。
【0033】
起動サービス部220は、クライアント端末400から送信される起動情報要求を受信し、その起動情報要求を送信したクライアント端末400に対応する起動情報を、記憶部230の起動情報記憶部233から読み出し、読み出した起動情報を、クライアント端末400に送信する。また、起動サービス部220は、クライアント端末400に起動情報を送信する際、そのクライアント端末400に対応するクライアント情報を、クライアント情報記憶部232から読み出し、読み出したクライアント情報に含まれるメンテナンスフラグが、チェックされているか否かを判定する。メンテナンスフラグがチェックされている場合には、起動サービス部220は、そのクライアント情報に含まれるOS領域グループ名に対応するメンテナンスボリューム121のボリューム名を、ネットワークストレージ情報記憶部231から読み出し、読み出したメンテナンスボリューム121のボリューム名をアクセス先とする起動情報を、クライアント端末400に送信する。一方、メンテナンスフラグがチェックされていない場合には、起動サービス部220は、そのクライアント情報に含まれるOS領域グループ名に対応する運用ボリューム122のボリューム名を、ネットワークストレージ情報記憶部231から読み出し、読み出した運用ボリューム122のボリューム名をアクセス先とする起動情報を、クライアント端末400に送信する。
【0034】
クライアント端末400は、ユーザに利用されるコンピュータ端末であり、ストレージを持たないディスクレスPCである。クライアント端末400は、起動時には、ネットワークストレージ管理装置200から起動情報を取得し、取得した起動情報に基づいて、自身に対応するネットワークストレージ装置100のストレージにアクセスしてボリューム読み出し要求を送信し、ボリューム読み出し要求に応じてネットワークストレージ装置100から読み出したプログラムに基づいて起動する。ここで、起動情報には、メンテナンスボリューム121か運用ボリューム122かのいずれかのボリューム名がアクセス先として含まれており、クライアント端末400は、そのアクセス先にボリューム読み出し要求を送信する。クライアント端末400は、アクセス先がメンテナンスボリューム121である場合は、メンテナンスボリューム読み出し要求を送信し、アクセス先が運用ボリューム122である場合は、運用ボリューム読み出し要求を送信する。
【0035】
クライアント端末400は、メンテナンスボリューム読み出し要求を送信してメンテナンスボリューム121から読み出すと、ユーザからの操作に従って、自身のクライアント端末400を動作させているOSプログラム、アプリケーションプログラムなどのメンテナンスを行う。メンテナンスされたプログラムが含まれるメンテナンスボリューム121は、ネットワークストレージ装置100の記憶部120に、メンテナンスボリューム121として更新され記憶される。ここで、メンテナンスには、クライアント端末400が自身に読み込んだ各プログラムのバージョンアップ、セキュリティパッチの適用などの情報更新が含まれる。また、本実施形態では、クライアント端末400−1とクライアント端末400−2とがネットワークストレージ装置100−1に対応付けられて帰属し、クライアント端末400−1とクライアント端末400−2とがネットワークストレージ装置100−1に対応付けられて帰属する。
【0036】
ここで、図4を参照して、本実施形態によるネットワークストレージ装置100の記憶部120に含まれる各領域の世代遷移の概念を説明する。「Storage1」には、メンテナンスボリューム「AA」と、運用ボリューム「AB」と、旧運用ボリューム「AC」とが存在しており、「Storage2」には、メンテナンスボリューム「BA」と、運用ボリューム「BB」と、旧運用ボリューム「BC」とが存在しているとする。ここで、「Storage1」に帰属するクライアント端末400によって、メンテナンスボリューム「AA」に記憶されたボリュームに含まれる情報がメンテナンスされ、変更されると、「Storage1」の変更された情報が含まれるメンテナンスボリューム「AA」と、「Storage2」のメンテナンスボリューム「BA」との差分情報が差分送受信部110によって抽出される。抽出された差分情報は、「Storage2」に送信され、送信された差分情報を用いて、メンテナンスボリューム「BA」が更新され記憶される。そして、ネットワークストレージ制御部240から、系切替え命令が送信されると、「Storage1」の旧運用ボリューム「AC」および「Storgae2」の旧運用ボリューム「BC」が削除される。その後、「Storage1」のメンテナンスされたメンテナンスボリューム「AA」がコピーされて「AD」が生成され、同様に、「Storage1」のメンテナンスされたメンテナンスボリューム「BA」がコピーされて「BD」が生成される。
その後に、ネットワークストレージ情報記憶部231のテーブルを更新することにより、運用ボリューム「AB」および「BB」は旧運用ボリュームに切り替わり、メンテナンスボリューム「AD」および「BD」は運用ボリュームに切り替わる。
【0037】
<第1の実施形態:動作例>
次に、本実施形態によるネットワークブートシステムにおいてネットワークストレージ装置100に記憶されたボリュームが、クライアント端末400によってメンテナンスされ、他のネットワークストレージ装置100に同期がとられて系切替えが行われる動作例について説明する。
【0038】
図5は、本実施形態によるネットワークブートシステムの動作例を示すシーケンス図である。
まず、システム管理端末300の通信部310は、320管理者に入力される操作情報に従って、複数のクライアント端末400のうち、プログラムのメンテナンスを行うクライアント端末400の名称を示す情報を、ネットワークストレージ管理装置200に送信する(ステップS1)。ここでは、クライアント端末400−1(Client1)が、メンテナンス端末として指定される。
【0039】
ネットワークストレージ管理装置200のウェブサービス部210は、システム管理端末300から送信されるメンテナンス端末の指定を受信すると、記憶部230のクライアント情報記憶部232に記憶されたクライアント情報の、「Client1」に対応するメンテナンスフラグをチェックする(ステップS2)。そして、管理者は、クライアント端末400−1の電源を入れる(ステップS3)。クライアント端末400が、ネットワークストレージ管理装置200に起動情報要求を送信すると(ステップS4)、起動サービス部220は、送信された起動情報要求を受信し、クライアント端末400−1に対応する起動情報を、記憶部230の起動情報記憶部233から読み出す(ステップS5)。ここで、起動サービス部220は、クライアント情報記憶部232に記憶されたクライアント端末400−1に対応するクライアント情報を読出し、メンテナンスフラグがチェックされていると判定すると、メンテナンスボリューム121−1をアクセス先とする起動情報を生成する。
【0040】
起動サービス部220は、メンテナンスボリューム121−1をアクセス先とする起動情報を、クライアント端末400−1に送信する(ステップS6)。クライアント端末400−1は、ネットワークストレージ管理装置200から送信される起動情報を受信し、受信した起動情報に基づいて、自身が帰属するネットワークストレージ装置100−1にメンテナンスボリューム読み出し要求を送信し、ネットワークストレージ装置100−1へのネットワークアクセスを開始する(ステップS7)。ここで、ネットワークストレージ装置100−1のクライアント通信部140−1は、クライアント端末400−1から送信されるメンテナンスボリューム読み出し要求を受信すると、クライアント端末400−1に対応するプログラム等が含まれるメンテナンスボリューム121−1を、記憶部120−1から読み出し、読み出したメンテナンスボリューム121−1をクライアント端末400に送信する。
【0041】
クライアント端末400−1は、ネットワークストレージ装置100−1から読み出した、自身に対応するメンテナンスボリューム121−1に対するメンテナンス処理を行う(ステップS8)。そして、メンテナンスが完了し、クライアント端末400−1がシャットダウンされると(ステップS9)、クライアント端末400−1からネットワークストレージ装置100−1へのストレージアクセスが終了する(ステップS10)。この時点で、記憶部120−1のメンテナンスボリューム121−1には、ステップS8でクライアント端末400によってメンテナンスされ変更されたプログラムが含まれる。
【0042】
そして、システム管理端末300は、ウェブサービス部210に、同期命令を送信する(ステップS11)。ネットワークストレージ管理装置200のネットワークストレージ制御部240は、ウェブサービス部210を介して同期命令を受信すると、ネットワークストレージ装置100−1と、ネットワークストレージ装置100−2とに、同期命令を送信する(ステップS12)。ネットワークストレージ装置100−1の差分送受信部110−1と、ネットワークストレージ装置100−2の差分送受信部110−2とは、ステップS12でネットワークストレージ管理装置200から送信される同期命令を受信すると、同期処理を行う(ステップS13)。
【0043】
ネットワークストレージ管理装置200は、同期処理の結果要求を、ネットワークストレージ装置100−1とネットワークストレージ装置100−2とに送信する(ステップS14)。ネットワークストレージ装置100−1またはネットワークストレージ装置100−2は、同期処理の結果要求を受信し、同期処理が正常に完了していれば、同期処理が正常に完了したことを示す同期結果情報を、ネットワークストレージ管理装置200に送信する(ステップS15)。ここで、ネットワークストレージ管理装置200は、ネットワークストレージ装置100−2から送信される同期結果情報を受信する。
【0044】
ネットワークストレージ管理装置200のネットワークストレージ制御部240は、ネットワークストレージ装置100−1から送信される同期結果情報を、システム管理端末300に転送する(ステップS16)。ここで、システム管理端末300は、同期結果情報を受信すると、自身が備えるディスプレイに、同期処理が正常に完了したことを示す情報を表示させるようにしても良い。そして、システム管理端末300は、管理者から入力部320に入力される操作情報に従って、ネットワークストレージ管理装置200に系切替え命令を送信する(ステップS17)。
【0045】
ネットワークストレージ管理装置200は、ネットワークストレージ装置100−1と、ネットワークストレージ装置100−2とに、系切替え命令を送信する(ステップS18)。ネットワークストレージ装置100−1とネットワークストレージ装置100−2とのネットワークストレージ装置100は、ネットワークストレージ管理装置200から送信される系切替え命令を受信すると、系切替えを行い、以降、帰属するクライアント端末400から運用ボリューム読出し要求を受信した際には、ステップS8でメンテナンスされ、ステップS13で同期処理が行われ更新されて記憶されたボリュームが運用ボリューム122−1として扱われ、その運用ボリューム122から読み出したボリュームを送信することとなる。
【0046】
また、ネットワークストレージ管理装置200は、記憶部230のネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されたネットワークストレージ情報の系情報の更新を行う(ステップS19)。ここでは、ネットワークストレージ制御部240が、ネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されたネットワークストレージ情報を、図3の(b)に示されるように、「Storage2」に対応する運用領域の系統名「BB」を、メンテナンス領域の系統名「BD」に書き換えて記憶させる。
【0047】
ネットワークストレージ管理装置200は、記憶部230に記憶されたネットワークストレージ情報の系情報を更新して記憶させると、系切替えが完了したことを示す系切替え結果情報を、システム管理端末300に送信する(ステップS20)。ここで、システム管理端末300は、同期結果情報を受信すると、自身が備えるディスプレイに、系切替えが完了したことを示す情報を表示させるようにしても良い。
【0048】
なお、上述のステップS12、S14、S15、S18等で送受信される同期命令、同期結果要求、同期結果送信、系切替え命令や、S13で行われる同期処理などは、ネットワークストレージ装置100−1とネットワークストレージ装置100−2との2台を例として説明したが、ボリュームの差分情報を受信して同期処理を行い、系切替えを行うネットワークストレージ装置100は、ネットワークストレージ装置100−2の他に複数台存在して良い。
【0049】
また、本実施形態の説明では、いずれのクライアント端末400をメンテナンス端末とし、いずれのネットワークストレージ装置100が親マスタであるかを、ステップS1で、管理者がシステム管理端末300に入力することにより定められることとしたが、例えば、ネットワークストレージ管理装置200のネットワークストレージ制御部240が、ネットワークストレージ装置100のクライアント通信部140が、他のクライアント端末400との通信が継続中でありセッションが張られているか否かに基づいて、適切なメンテナンス端末または親マスタを判定するようにしても良い。このようにすれば、セッションが大量に張られているようなネットワークストレージ装置100に対してメンテナンス作業を行うと時間がかかるため、このようなネットワークストレージ装置100を避けてメンテナンス作業を行うことが可能である。
【0050】
また、ネットワークストレージ管理装置200のネットワークストレージ制御部240が、ネットワークストレージ装置100に対応付けられたクライアント端末400の数に基づいて、適切なメンテナンス端末または親マスタを判定するようにしても良い。このようにすれば、例えば、対応付けられたクライアント端末の数が少ないネットワークストレージ装置100によってメンテナンス作業を行い、ネットワーク負荷を低減することが可能となる。このようなメンテナンス端末または親マスタの判定処理は、クライアント端末400のメンテナンス部410が行うようにしても良い。
【0051】
また、ステップS13の同期処理において、ネットワークストレージ装置100−1の差分送受信部110−1は、複数のネットワークストレージ装置100−2に、同時に前記差分情報を送信しても良いし、順次差分情報を送信するようにしても良いし、予め定められた時間に、差分情報を送信するようにしても良い。このようにすれば、ネットワークの混雑状況や、クライアント端末400によるネットワークストレージ装置100の利用状況などによって、システムに負荷が少ない時間や方法を選んでメンテナンス作業を行うことが可能となる。
【0052】
<第2の実施形態:構成>
次に、本発明の第2の実施形態によるネットワークブートシステムについて説明する。第2の実施形態によるネットワークブートシステムは、第1の実施形態によるネットワークブートシステムと略同様の構成を備えており、第1の実施形態と同一の構成・処理については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6は、本発明の第2の実施形態によるネットワークブートシステムの構成を示す図である。
【0053】
第2の実施形態によるネットワークブートシステムは、図6に示されるように、ネットワークストレージ装置100−3がボリューム送信部130−3を備え、一方、ネットワークストレージ装置100−4がボリューム受信部130−4を備え、また、ネットワークストレージ装置100−4が、記憶部120−4にメンテナンスボリュームを備えない点で、第1の実施形態と異なっている。
【0054】
ボリューム送信部130−3は、クライアント端末400−1によってプログラムのメンテナンスが行われ、ネットワークストレージ装置100−3のメンテナンスボリューム121−3がメンテナンスされ変更された場合、システム管理端末300から系切替え命令を受信すると、メンテナンスボリュームを、ネットワークストレージ装置100−4に送信する。
【0055】
ボリューム受信部130−4は、ネットワークストレージ管理装置500のネットワークストレージ制御部540から送信される旧運用削除命令を受信すると、旧運用ボリューム123−4を削除する。そして、ネットワークストレージ装置100−3から送信されるメンテナンスボリュームを、記憶部120−4の空き領域に記憶させ、ここで空き領域に記憶させたメンテナンスボリュームを運用ボリューム122−4とし、それまで運用ボリューム122−4であった領域を旧運用ボリューム123−4とする。
【0056】
ここで、図7を参照して、本実施形態によるネットワークストレージ装置100−3の記憶部120−3に含まれるメンテナンスボリューム121−3が、ネットワークストレージ装置100−4の記憶部120−4にコピーされる概念を説明する。「Storage1」には、メンテナンスボリューム「AA」と、運用ボリューム「AB」と、旧運用ボリューム「AC」とが存在しており、「Storage2」には、メンテナンスボリュームは存在せず、運用ボリューム「BB」と、旧運用ボリューム「BC」とが存在しているとする。ここで、「Storage1」に帰属するクライアント端末400によって、メンテナンスボリューム「AA」に記憶されたボリュームがメンテナンスされ変更される。その後、系切り替え命令が送信されると、「Storage1」の旧運用ボリューム「AC」および「Storage2」の旧運用ボリューム「BC」が削除される。その後、「Storage1」のメンテナンスボリューム「AA」がコピーされてボリューム「AD」が生成され、同時にメンテナンスボリューム「AA」は「Storage1」に転送されてボリューム「BD」が生成される。
その後に、ネットワークストレージ情報記憶部231のテーブルを更新することにより、運用ボリューム「AB」および「BB」は旧運用ボリュームに切り替わり、メンテナンスボリューム「AD」および「BD」は運用ボリュームに切り替わる。
【0057】
図8の(a)は、本実施形態においてネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されるネットワークストレージ情報のデータ例を示す図である。ネットワークストレージ情報が有する項目は第1の実施形態と同様であるが、「Storage2」のメンテナンスボリュームの系統名が存在しない(図8では「−」として図示する)点で異なる。なお、本実施形態では、ネットワークストレージ装置100−4は記憶部120−4にメンテナンスボリュームを持たず、メンテナンスはネットワークストレージ装置100−3に対して行われるから、ネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されるネットワークストレージ情報には、「親マスタ」の項目は設けないこととしても良い。
【0058】
<第2の実施形態:動作例>
図9は、本実施形態によるネットワークシステムの動作例を示すシーケンス図である。ステップS1〜ステップS10の処理は、第1の実施形態と同様である。
ステップS10で、クライアント端末400−1からネットワークストレージ装置100−3へのストレージアクセスが終了すると、記憶部120−3のメンテナンスボリューム121−3には、クライアント端末400−1によってメンテナンスされ変更されたメンテナンス済ボリュームが記憶される。
【0059】
そして、システム管理端末300は、ウェブサービス部210に、系切替え命令を送信する(ステップS30)。ネットワークストレージ管理装置500のネットワークストレージ制御部540は、ネットワークストレージ装置100−3とネットワークストレージ装置100−4とに、ボリュームコピー命令と旧運用削除命令とを送信する(ステップS31)。ネットワークストレージ装置100−3は、ネットワークストレージ管理装置500から送信される旧運用削除命令を受信すると、記憶部120−3の旧運用ボリューム123−3に記憶されたボリュームを削除する(ステップS32)。同時に、ネットワークストレージ装置100−4は、ネットワークストレージ管理装置500から送信される旧運用削除命令を受信すると、記憶部120−4の旧運用ボリューム123−4に記憶されたボリュームを削除する(ステップS33)。
【0060】
そして、ネットワークストレージ装置100−3は、メンテナンスボリューム121−3に記憶されたボリュームを自身の記憶部120−3内にコピーする(ステップS34)。また、ネットワークストレージ装置100−3のボリューム送信部130−3は、メンテナンスボリューム121−3を、ネットワークストレージ装置100−4に送信する(ステップS35)。ネットワークストレージ装置100−4のボリューム受信部130−4は、ネットワークストレージ装置100−3から送信されるメンテナンスボリュームを受信し、記憶部120−4の空き領域に記憶させる。
【0061】
ネットワークストレージ装置100−3は、旧運用ボリュームの削除とボリュームコピーとの処理が完了すると、コピー終了通知をネットワークストレージ管理装置500に送信する(ステップS36)。ネットワークストレージ管理装置500が、ネットワークストレージ装置100−3から送信されるコピー終了通知を受信すると、ネットワークストレージ制御部540は、記憶部230のネットワークストレージ情報記憶部231に記憶されたネットワークストレージ情報の系統名の更新を行う。ここでは、図8の(b)に示されるように、運用ボリューム「AB」および「BB」は旧運用ボリュームに切り替わり、「Storage1」の運用ボリュームの系統名が「AB」から「AD」に更新され、「Storage2」の運用ボリュームの系統名が「BB」から「BD」に更新される(ステップS37)。ここで、「Storage2」の運用ボリューム「BD」の実体は、ステップS35でネットワークストレージ装置100−3のメンテナンスボリューム「AA」からネットワークストレージ装置100−4に送信され、記憶部120−4の空き領域にコピーされ記憶されたボリュームである。このようにして、記憶部120−3と記憶部120−4とのそれぞれに記憶されたボリュームの系切り替えが行われる。
【0062】
ネットワークストレージ管理装置500は、記憶部230に記憶されたネットワークストレージ情報の系統名を更新して記憶させると、系切替えが完了したことを示す系切替え結果情報を、システム管理端末300に送信する(ステップS38)。ここで、システム管理端末300は、系切替え結果情報を受信すると、自身が備えるディスプレイに、系切替えが終了したことを示す情報を表示させるようにしても良い。
【0063】
なお、本実施形態では、ステップS32で旧運用ボリューム123−3を削除し、メンテナンスボリューム121−3をコピーした後に、「Storage1」のメンテナンスボリューム121−3を「Storage2」に転送することとしているが、図10に示されるように、旧運用系ボリューム削除命令に先立って、予め「Storage1」のメンテナンスボリューム121−3を「Storage2」に転送することとしても良い。
【0064】
このように、本実施形態では、ネットワークストレージ装置100−3の記憶部120−3だけにメンテナンスボリューム121−3が存在すれば良く、その他のネットワークストレージ装置100−4の記憶部120−4にはメンテナンスボリュームを確保する必要がないから、ネットワークストレージ装置100−4のストレージ資源を有効に活用することができる。
以上説明したように、本発明によれば、複数のネットワークストレージ装置のそれぞれに対してメンテナンス作業を行う必要がなくなり、作業者の作業負担を減らし、メンテナンスコストを減らして、ネットワークブートシステムを効率よく運用管理することが可能となる。
【0065】
なお、本発明における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりネットワークブートを行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0066】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
100 ネットワークストレージ装置
110 差分送受信部
120 記憶部
121 メンテナンスボリューム
122 運用ボリューム
123 旧運用ボリューム
130−3 ボリューム送信部
130−4 ボリューム受信部
140 クライアント通信部
200 ネットワークストレージ管理装置
210 ウェブサービス部
220 起動サービス部
230 記憶部
231 ネットワークストレージ情報記憶部
232 クライアント情報記憶部
233 起動情報記憶部
240 ネットワークストレージ制御部
300 システム管理端末
310 通信部
320 入力部
400 クライアント端末
410 メンテナンス部
500 ネットワークストレージ管理装置
540 ネットワークストレージ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された複数のクライアント端末のうち自身に対応する前記クライアント端末に、当該クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置と、当該ネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置とを備えたネットワークブートシステムであって、
前記ネットワークストレージ装置は、
前記複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられた前記クライアント端末を動作させるプログラムが含まれる前記ボリュームが記憶される記憶部と、
前記クライアント端末からの要求に応じて前記ボリュームを当該クライアント端末に送信し、当該クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされた前記プログラムが含まれる前記ボリュームを、前記記憶部に記憶させる通信部と、を備え、
前記ネットワークストレージ管理装置は、
前記ネットワークストレージ装置に命令を送信し、前記通信部によって前記記憶部に記憶された前記ボリュームを、前記複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、当該他のネットワークストレージ装置が備える前記記憶部に記憶させるネットワークストレージ制御部
を備えることを特徴とするネットワークブートシステム。
【請求項2】
前記通信部は、前記ネットワークストレージ管理装置から送信される命令を受信すると、前記クライアント端末から送信される運用ボリューム読み出し要求に応じて、前記通信部によって前記記憶部に記憶された前記ボリュームを運用ボリュームとして読み出して前記クライアント端末に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のネットワークブートシステム。
【請求項3】
前記記憶部には、予め自身に対応付けられた前記クライアント端末を動作させるプログラムが含まれ、前記運用ボリューム読み出し要求に応じて送信する運用ボリュームと、前記クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされる前記プログラムが含まれ、メンテナンスボリューム読み出し要求に応じて送信するメンテナンスボリュームと、が記憶され、
前記通信部は、前記クライアント端末からのメンテナンスボリューム読み出し要求に応じて前記メンテナンスボリュームを当該クライアント端末に送信し、当該クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされた前記プログラムが含まれる前記メンテナンスボリュームを、前記記憶部に記憶させ、
前記ネットワークストレージ管理装置は、
前記ネットワークストレージ装置に命令を送信し、前記メンテナンスボリュームを当該ネットワークストレージ装置の記憶装置にコピーさせ、コピーさせた当該メンテナンスボリュームを運用ボリュームとして、前記クライアント端末から送信される運用ボリューム読み出し要求に応じて送信させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のネットワークブートシステム。
【請求項4】
前記ネットワークストレージ管理装置は、
前記ネットワークストレージ装置に同期命令を送信し、前記通信部によって自身の前記記憶部に記憶された前記メンテナンスボリュームと、他の前記ネットワークストレージ装置に記憶された前記メンテナンスボリュームとの差分を差分情報として抽出させ、抽出した差分情報を、前記他のネットワークストレージ装置に送信させる
ことを特徴とする請求項3に記載のネットワークブートシステム。
【請求項5】
前記ネットワークストレージ装置は、
前記他のネットワークストレージ装置から送信される前記差分情報を受信すると、受信した前記差分情報に基づいて、自身の前記記憶部に記憶された前記メンテナンスボリュームを更新して記憶させる受信部
を備えることを特徴とする請求項4に記載のネットワークブートシステム。
【請求項6】
前記ネットワークストレージ管理装置は、
前記ネットワークストレージ装置にボリュームコピー命令を送信し、前記通信部によって前記記憶部に記憶された前記ボリュームを、前記複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させる
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のネットワークブートシステム。
【請求項7】
複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられた前記クライアント端末を動作させるプログラムが含まれるボリュームが記憶される記憶部を有し、ネットワークを介して接続された前記複数のクライアント端末のうち自身に対応する前記クライアント端末に、当該クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置と、当該ネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置とを備えたネットワークブートシステムのネットワークブート方法であって、
前記ネットワークストレージ装置が、
前記クライアント端末からの要求に応じて前記ボリュームを当該クライアント端末に送信し、当該クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされた前記プログラムが含まれる前記ボリュームを、前記記憶部に記憶させるステップと、
前記ネットワークストレージ管理装置が、
前記ネットワークストレージ装置に命令を送信し、当該ネットワークストレージ装置の前記記憶部に記憶された前記ボリュームを、前記複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、当該他のネットワークストレージ装置が備える前記記憶部に記憶させるステップと、
を備えることを特徴とするネットワークブート方法。
【請求項8】
ネットワークを介して接続された複数のクライアント端末のうち自身に対応する前記クライアント端末に、当該クライアント端末に対応するボリュームを読み込ませて起動させる複数のネットワークストレージ装置であって、前記複数のクライアント端末のうち、予め自身に対応付けられた前記クライアント端末を動作させるプログラムが含まれる前記ボリュームが記憶される記憶部と、前記クライアント端末からの要求に応じて前記ボリュームを当該クライアント端末に送信し、当該クライアント端末から入力される操作指示に応じてメンテナンスされた前記プログラムが含まれる前記ボリュームを、前記記憶部に記憶させる通信部とを備える前記ネットワークストレージ装置に接続されるネットワークストレージ管理装置であって、
前記ネットワークストレージ装置に命令を送信し、前記通信部によって前記記憶部に記憶された前記ボリュームを、前記複数のネットワークストレージ装置のうち他のネットワークストレージ装置に送信させ、当該他のネットワークストレージ装置が備える前記記憶部に記憶させるネットワークストレージ制御部
を備えることを特徴とするネットワークストレージ管理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−238326(P2012−238326A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166174(P2012−166174)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−93101(P2008−93101)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000102728)株式会社エヌ・ティ・ティ・データ (438)
【Fターム(参考)】