説明

ネットワーク構築方法

【課題】 設置物間のネットワーク構築を自動的に行うことができる機器を提供する。
【解決手段】 パケットの送受信を行う送受信部100と、受信した受信パケットからデータリンク層ヘッダを抽出する受信制御部101と、受信パケットを保持する受信情報保持部102と、データリンク層ヘッダを参照して受信パケットの型や要求を認識し、それに応じたパケットを自律的に生成するパケット送受信制御部103と、自律的に生成するパケットの送受信タイミングについて時間を計るタイマ部104と、データリンク層以外の上位レイヤのパケットの処理を行う上位レイヤ制御部107と、パケット送受信制御部103及び上位レイヤ制御部107から送られてくる送信パケットを保持する送信情報保持部106と、送信パケットの送信制御を行う送信制御部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明や空調、あるいは窓等の設置物をネットワーク構築するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場やビル内に設置されている設置物をオートメーション化するため、これらを接続してネットワークを構築している。今後、こうしたネットワークは、工場やビル内にだけでなく住宅内にも構築され、人々の日常生活に広く浸透していくことが予測されている。従来、ネットワークを構築する作業は手作業により行われ、設置者は各機器の論理アドレスの設定や機器間の通信設定等を行っている。
【0003】
また、ネットワークには、トークンパケットを用いたLAN(Local Area Network)システムが知られている(特許文献1参照)。このシステムは、ネットワーク上に存在する機器間で一つのトークンパケットを、予め設置者が定めた順番で巡回させるシステムであり、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたものである。トークンパケットを巡回させるため、ネットワーク上に存在する各機器の記憶部には次段の機器アドレスを記憶しており、各機器はトークンパケットを受け取った後、記憶エリアを参照して次段の機器へトークンパケットを送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−24109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の手作業で行うネットワーク構築は、専門的な知識を有する人でなければ困難であるという問題がある。今後、複数の設置物をオートメーション化させるネットワーク構築を浸透させるには、専門的な知識がない人でも簡単にネットワーク溝築できるようにすることが望ましい。
【0006】
また、上記のようなトークンパケットを用いたLANシステムにおいては、ネットワーク構築後に新たに機器を増設する場合には、増設する機器の前段の機器の記憶部に記憶されている次段の機器アドレスを増設する機器のアドレスに変更する必要がある。従来はこのような場合、増設する機器の前段の機器をリセットしてから変更を行うことや、増設する機器から運用中のネットワークに対してジャミング(妨害信号)を出力してトークンパケットを妨害することにより、ネットワーク全体を再構築している。
【0007】
しかしながら、前者はリセットを行うタイミングがトークンパケットを巡回させるタイミングとは無関係なので、リセットをシステム運用中に行うとデータが破壊してしまうおそれがある。また、後者もジャミング信号によりデータが破壊してしまうおそれがある。
【0008】
この他、ネットワーク構築後に機器を減設する場合にも、減設する機器の前段の機器に記憶されている次段の機器アドレスを次々段の機器アドレスに変更する必要があるので、上記と同様の問題が生じる。
【0009】
本発明は、このような問題に着目し、オートメーション化させる設置物間のネットワーク構築を自動的に行い、また、ネットワーク構築後に設置物の増設や減設等があった場合にもネットワークの再構築を自動的に行うことができるネットワーク構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の発明は、巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークの構築方法であって、回線ケーブルに接続された機器がネットワークのアイドル状態を検出する時間を計る工程と、所定回数のタイムアウトがあった場合、自身の機器以外がネットワークに接続されているか否かを問い合わせるプローブパケットを送信する工程と、前記プローブパケットに応答するプローブ応答パケットが受信できるまで、前記所定回数よりも少ない回数のタイムアウト毎に、前記プローブパケットを送信する工程とを有することを特徴とするネットワーク構築方法である。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のネットワーク構築方法について、前記プローブ応答パケットを受信した場合、自身の機器の自己紹介をする自己紹介パケットをブロードキャストする工程を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークに新たな機器を増設する場合のネットワーク構築方法であって、ネットワークのマスタが参加できていない機器を勧誘する勧誘パケットをブロードキャストする工程と、前記勧誘パケットを受信した前記新たな機器は勧誘応答パケットを生成し、前記ネットワークのマスタに送る工程と、前記勧誘応答パケットを受信した前記ネットワークのマスタは、前記マスタの前段にある機器に対して、next hop 更新指示パケットを生成して送信する工程と、次段の機器アドレスを前記マスタから前記新たな機器に更新する工程とを有することを特徴とするネットワークの構築方法である。
【0013】
本発明の請求項4に記載の発明は、巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークから機器を減設した場合のネットワーク構築方法であって、前記ネットワークから機器が減設される工程と、前記減設された機器、あるいは前段にある機器がネットワークから機器が減設されたことを通知する減設通知パケットをブロードキャストする工程と、前記減設通知パケットを受け取った各機器は、それぞれで保持している減設された機器のアドレスを削除して更新する工程とを有することを特徴とするネットワークの構築方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、機器をオートメーション化させる複数の設置物に取り付けることで、設置物間のネットワーク構築を自動的に行い、また、ネットワーク構築後に設置物の増設や減設等があった場合にも自動的に再構築を行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のネットワーク接続するための機器の内部構成を示すブロック図(実施例1)
【図2】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図3】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図4】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図5】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図6】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図7】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図8】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図9】ネットワーク構築の手順を示す図(実施例2)
【図10】安定状態にあるネットワークに新たな設置物を増設する様子を示す図(実施例3)
【図11】安定状態にあるネットワークに新たな設置物を増設する場合の手順を示すシーケンス図(実施例3)
【図12】安定状態にあるネットワークから明示的な減設をする場合の手順を示すシーケンス図(実施例4)
【図13】安定状態にあるネットワークから暗示的な減設をする場合の手順を示すシーケンス図(実施例4)
【図14】本発明で使用するパケットのフォーマットを示す図
【図15】送信先フィールド識別子(DFI)による送信先IDの位置付けを示す図
【図16】パケットタイプを示す図
【図17】トークンパケットのフォーマットを示す図
【図18】プローブパケット及びプローブ応答パケットのフォーマットを示す図
【図19】勧誘パケット及び勧誘応答パケットのフォーマットを示す図
【図20】勧誘結果通知パケットのフォーマットを示す図
【図21】next hop更新指示パケットのフォーマットを示す図
【図22】自己紹介パケットのフォーマットを示す図
【図23】減設通知パケットのフォーマットを示す図
【図24】オペレーションコード(OPC)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明は以下の各実施例で説明する範囲に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲であれば、適宜に変更及び実施できる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の第1実施例について説明する。本実施例ではネットワーク構築するための機器について説明する。図1には本発明の対象である機器10と、機器10によって制御される設置物109とを示しており、これを基本構成単位とし、回線ケーブルによって複数台接続される。
【0018】
図1において、機器10の内部には、送受信部100、受信制御部101、受信情報保持部102、パケット送受信制御部103、タイマ部104、送信制御部105、送信情報保持部106、上位レイヤ制御部107、及び設置物制御部108を備え、これらを備えた機器10は設置物109と接続される。
【0019】
送受信部100は、ネットワークとなる回線ケーブルと接続され、パケットの送信時にパラレル・シリアル変換、受信時にシリアル・パラレル変換を行い、伝送路上の符号化・復号化も行う。受信制御部101は、送受信部100で受信したパケットを受信情報保持部102に送り、また、送受信部100で受信したパケットからデータリンク層ヘッダを抽出し、パケット送受信制御部103へ送る。パケットには、トークンパケット、プローブパケット、勧誘パケット、勧誘結果通知パケット、自己紹介パケット、減設通知パケット等がある。各種パケットの詳細については後述する。受信情報保持部102は、送受信部100で受信し、受信制御部101を介して送られるパケットを保持する。例えば、ネットワークに接続されている機器の自己紹介パケットを保持する。パケット送受信制御部103では、パケットのデータリンク層ヘッダを参照し、パケットの型や要求等を認識する。そして、認識した型や要求等に応じてデータリンク層で処理するパケットについては自律的にパケットを生成する。一方、データリンク層で処理しないパケットについては、上位レイヤ制御部107に送る。また、パケット送受信制御部103には、タイマ部104からタイム信号が送られ、このタイム信号にも従ってパケットの送受信タイミングが制御される。パケット送受信制御部103の内部には、データリンク層ヘッダの記述やタイム信号に応じたパケットを自律的に生成するパケット自律生成部131を備えている。
【0020】
パケット自律生成部131で自律的に生成される各種パケットには、トークンパケット、プローブパケット、プローブ応答パケット、勧誘パケット、勧誘応答パケット、勧誘結果通知パケット等がある。各種パケットの詳細については後述する。
【0021】
また、パケット送受信制御部103の内部には、自身の機器を基準に前段、次段及び次々段にある機器のアドレスを保持するアドレス保持部132を備えている。前段の機器アドレスは、自身の機器を基準に前段の機器が不意に減設された場合に用いる。具体的には、ネットワークのマスタ(以下、ドメインマスタという)が前段の機器であった場合、その機器が減設されると、ネットワークにドメインマスタがいなくなるので、自身の機器がドメインマスタ機能を引き継ぐようにする。また、前段の機器がドメインマスタでなくても、その機器を管理するようにし、前段の機器が不意に減設された時にはその旨をドメインマスタに通知する。これにより、前段の機器が減設されてもネットワークの再構築を自動的に行うことができる。また、次段の機器アドレスは、トークンパケットを次段の機器に渡す時に用いる。また、次々段の機器アドレスは、自身の機器を基準に次段の機器が減設された場合に用いる。これにより、次段の機器が不意に減設されても、次々段の機器にトークンパケットを送ることができるので、ネットワークを運用し続けることができる。
【0022】
タイマ部104は、ネットワークの状態を監視するために各種タイマを備えている。タイマ部104には、ネットワーク応答監視タイマ141、アイドル状態検出タイマ142、ネットワーク状態監視タイマ143、次段監視タイマ144、バックオフタイマ145の5種類のタイマがある。
【0023】
ここで各種タイマについて説明する。ネットワーク応答監視タイマ141は、相手からの応答が必要なパケットをある機器に送信した場合、応答があるか否かを監視するために用いるタイマである。アイドル状態検出タイマ142は、ネットワーク中でアイドル状態を検出するために用いるタイマである。ネットワーク接続監視タイマ143は、自身の機器がネットワークに接続されているか否かを監視するタイマである。次段監視タイマ144は、トークンパケットを渡した次段の機器が正常に機能しているかどうかを監視するタイマである。バックオフタイマ145は、プローブパケットあるいは勧誘パケットを受信して応答のパケットを送信する際に、他の機器からの応答パケットとの衝突を防止するために応答パケットの送信を一定時間待機するためのタイマである。ネットワーク応答監視タイマ141、アイドル状態検出タイマ142、ネットワーク状態監視タイマ143、次段監視タイマ144及びバックオフタイマ145の何れかがタイムアウトになった場合は、その旨のタイム信号をパケット送受信制御部103に通知する。
【0024】
送信制御部105はパケットの送信制御を行う。送信制御には自律モードと上位モードがある。自律モードは、パケット送受信制御部103から送られるパケットを元に送受信部100へ送信するモードである。また、上位モードは、パケット送受信制御部103及び上位レイヤ制御部107が予め送信情報保持部106に保持したパケットを元に送受信部100へ送信するモードである。送信情報保持部106では、パケット送受信制御部103及び上位レイヤ制御部107により送られてくるパケットを保持する。上位レイヤ制御部107は、パケット送受信制御部103で処理しない、例えば、自己紹介パケットや減設通知パケット等のパケットを制御する。設置物制御部108は、上位レイヤ制御部107から送られてくるパケットを元に設置物109の制御を行ったり、設置物109からの要求を上位レイヤ制御部107に通知する制御を行う。設置物109は、例えば、照明、空調、及び窓等があり、本ネットワークの制御対象となる設置物である。設置物は制御したいものであれば何でも良い。設置物109に機器10を設置し、各種パケットを生成及び制御することにより、自動的にネットワークを構築することができる。
【0025】
なお、特に図示はしていないが、機器10内にはネットワーク構築プログラムを格納した記憶媒体を備えている。機器10内のコンピュータ(図示しない)が記憶媒体に格納されたネットワーク構築プログラムを実行することにより、上記の各構成を機能させ、各構成はそれぞれの処理を行う。
【0026】
つづいて本実施例で扱うパケットのフォーマットについて説明する。
図14に示すように、パケットは、送信先フィールド識別子(DFI)1401、送信先ドメインIDあるいは設置場所コード(DDID)1402、送信先機器(ノード)IDあるいは機器コード(DNID)1403、送信元ドメインID(SDID)1404、送信元機器(ノード)ID(SNID)1405、パケットタイプ(PT)1406、オペレーションコード(OPC)1407、及びデータ部の長さ(LEN)1408からなるデータリンク層ヘッダと、データ部(DATA)1409、及びパケットの信頼性を示すCRC1410を備えている。受信制御部101で抽出されるデータリンク層ヘッダは、符号1401乃至1408である。
【0027】
送信先フィールド識別子(DFI)1401は、送信先の場所を識別するものであり、網管理モードと通常モードとがある。図15に示すように、網管理モードは、送信先ドメインIDあるいは設置場所コード(DDID)1402と送信先ノードIDあるいは機器コード(DNID)1403を関連付けて送信先を識別するモードである。一方、通常モードは、ロケーションコードと機器コードを関連付けて送信先を識別するモードである。本来、ユーザは、機器の論理的なIDを気にすることなく、「この部屋の空調の温度を下げたい」とか、「この部屋の照明を暗くしたい」というように要求をするのが自然である。ロケーションコードと機器コードは仕様として定義済みであるので、これらの値をヘッダに使用して送信先情報を「どこにある+どんな機器」という形式でも送信先を指定できるようにする。図網管理モードは「0x01」とし、通常モードは「0x00」とする。
【0028】
送信先及び送信元のドメインIDやノードID1402乃至1405は、それらが定義されていない時は「0x00」とする。送信先ドメインIDが「0x00」の時は、当該ドメイン内の機器とだけ通信できる。また、パケットをブロードキャストする時は、送信先のドメインIDやノードIDを「0xFF」とする。
【0029】
パケットタイプ1406は、パケットの型を認識するものであり、図16に示すように、データリンク層で処理するパケットタイプは、「0x00」乃至「0x06」があり、上位レイヤにパケットを渡すパケットタイプは、「0x10」乃至「0xA2」がある。その他、OPCの値に従って、データリンク層で処理するパケットタイプもあり、「0x20」乃至「0x22」がある。以下、ネットワークの構築に必須の各種パケットについて説明する。
【0030】
パケットタイプが「0x00」のパケットはトークンパケットである。トークンパケットは、ネットワーク上に存在する機器間で巡回させるパケットであり、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できる。トークンパケットのフォーマットを図17に示す。
【0031】
パケットタイプが「0x01」のパケットはプローブパケットである。プローブパケットは、ネットワーク構築の最初の段階で使用するパケットであり、プローブパケットを受け取った機器はプローブパケットに対して応答するプローブ応答パケットを生成する。プローブパケット及びプローブ応答パケットのフォーマットを図18に示す。
【0032】
パケットタイプが「0x02」のパケットは勧誘パケットである。勧誘パケットは、ネットワークに参加したい機器がいるかどうかを、ドメイン内で構築されたネットワークのマスター(ドメインマスター)が探りを入れるパケットであり、勧誘パケットを受け取った機器は勧誘パケットに対して応答する勧誘応答パケットを生成する。勧誘パケット及び勧誘応答パケットのフォーマットを図19に示す。
【0033】
パケットタイプが「0x03」のパケットは勧誘結果通知パケットである。勧誘結果通知パケットは、勧誘応答パケットを送った機器に対して、その結果を通知するパケットであり、データ部1409には、uID値、ノードID値、次段の機器アドレス(next hop)が付与されている。勧誘結果通知パケットのフォーマットを図20に示す。
【0034】
パケットタイプが「0x06」のパケットはnext hop 更新指示パケットである。next hop 更新指示パケットは、ネットワークに対して機器が増設される時に使用するパケットである。増設された機器へトークンパケットを送信する機器に対して、次段の機器アドレスを(next hop)を更新するよう指示をするパケットである。当該パケットを受信した機器は、次段の機器アドレスを増設された機器アドレスに更新する。next hop 更新指示パケットのフォーマットを図21に示す。
【0035】
パケットタイプが「0x11」のパケットは自己紹介パケットである。自己紹介パケットは、機器がネットワークに正常に接続された段階で使用するパケットである。自己紹介パケットは、全ドメインまたは全ノードにブロードキャストする。また、一定周期でブロードキャストすることもある。自己紹介パケットのフォーマットを図22に示す。パケットのデータ部には、座標及び設置場所等の位置情報を示すコード、ユーザのID情報(uID)、及び機器の情報を示す機器コード等がある。例えば、ID情報は、ethernetのMACアドレスやユビキタスIDセンターのucode等、世界中で唯一性が保証されているIDである。また位置情報は、座標であれば設計図面の座標原点を基準として当該空間内の3次元座標をx軸・y軸・z軸それぞれ表記し、設置場所名であれば「玄関」や「廊下」といった人間にわかりやすい属性で場所を定義して表記する。また、機器の情報は、照明やドアといった当該機器が持っている機能を表記する。
【0036】
パケットタイプが「0x12」のパケットは減設通知パケットである。減設通知パケットは、ネットワークにおいて、機器が減設するときに使用するパケットである。当該パケットをネットワーク内でブロードキャストすることにより、他の機器に対して明示的な減設を行うことができる。減設通知パケットのフォーマットを図23に示す。
【0037】
オペレーションコード(OPC)1407は、パケットについて、通知、要求、及び応答の何れかであることを認識するコードである。オペレーションコードを参照することにより、当該パケットが通知、要求、及び応答の何れかを示していることを認識できる。オペレーションコードを図24に示す。
【0038】
データ部の長さ(LEN)1408は、データ部(DATA)1409に記憶された容量を示すものであり、バイト数で表す。
【0039】
データ部(DATA)1409は、上位レイヤで処理するデータが記憶される記憶部である。
【0040】
パケットの信頼性を示すCRC1410は、送信先フィールド識別子(DFI)乃至データ部(DATA)1409に対してCRC16の演算を行った結果が格納される。CRC16は線形符号の一種で、複数ビットの連続(バースト)誤り検出に強い符号方式である。CRC16は、通信やディスクの誤り検出に広く利用されている。
【0041】
以上、本実施例によれば、上記のように構成された機器を用いて、上記設定された各種パケットを生成及び制御することにより、機器間でネットワークを自動的に構築することができ、また、機器に接続された設置物をオートメーション化することができる。
【実施例2】
【0042】
以下、本発明の第2実施例について説明する。本実施例では、上記実施例1で説明した機器及び各種パケットを用いて、機器間でネットワークを自動的に構築する手順について、図2乃至図9を用いて説明する。なお、設置物には機器10を取り付けておくことを前提とする。
【0043】
Alphaはネットワーク構築に用いる回線ケーブルに接続する最初の設置物とする。Alphaが回線ケーブルに接続されると、Alphaに備えられているタイマ部104のアイドル状態検出タイマ142はタイムアウトを繰り返す(図2参照)。アイドル状態検出タイマ142がタイムアウトを7回行った場合、その旨はパケット送受信制御部103へ通知され、パケット送受信制御部103のパケット自律生成部131では自身がネットワークに接続されているか否かを問い合わせるプローブパケットが自律的に生成され、Alphaから送信される(図3参照)。
【0044】
しかしながら、この場合はAlpha以外の設置物はネットワーク上にまだ存在していないので、プローブパケットに応答するプローブ応答パケットは当然受信できない。Alphaはプローブ応答パケットが受信できるまで、Alpha内のアイドル状態検出タイマ142がタイムアウトを3回繰り返す毎にプローブパケットを送信し続ける(図4参照)。また、この場合、プローブ応答パケットが受信できなかったので、AlphaはノードIDを0x01に設定する。なお、以前使用していたノードIDがあれば、そのIDを優先して使用することもできる。
【0045】
Alpha以外の設置物となるBravoがネットワーク接続されると(図5参照)、BravoもAlphaと同様、Bravo内のタイマ部104のアイドル状態検出タイマ142はタイムアウトを繰り返す。そして、Bravoもアイドル状態検出タイマ142がタイムアウトを7回行った場合は自身がネットワークに接続されているか否かを問い合わせるプローブパケットが生成されるが、Alphaが既にネットワークに接続されているので、BravoはAlphaが送信しているプローブパケットを受信する(図6参照)。
【0046】
BravoはAlphaからのプローブパケットを受信すると、その旨はパケット送受信制御部103へ送られ、パケット送受信制御部103のパケット自律生成部131ではプローブパケットに応答するプローブ応答パケットが生成され、Bravoから送信される(図7参照)。また、この場合、Bravoはプローブ応答パケットを送信すると同時に、ノードIDを0x02に設定し、また、パケット送受信制御部03のアドレス保持部32で保持する次段のアドレスにAlpha(0x01)を保持する。なお、以前使用していたノードIDがAlphaのノードIDと重複していなければ、そのIDを優先して設定することもできる。
【0047】
一方、AlphaはBravoからのプローブ応答パケットを受信すると、ネットワーク上に自身以外の設置物が接続されていることを認識すると同時に、パケット送受信制御部103のアドレス保持部132で保持する次段のアドレスにBravo(0x02)を保持する。その後、Alphaのパケット送受信制御部103のパケット自律生成部131ではトークンパケット及び自己紹介パケットが自律的に生成され、Bravoに送信する(図8参照)。BravoはAlphaからのトークンパケット及び自己紹介パケットを受信すると、受信情報保持部102にAlphaの自己紹介情報を保持し、パケット送受信制御部103のパケット自律生成部131では、自己紹介パケットが自律的に生成され、トークンパケットと一緒にAlphaに送信する(図9参照)。以上により、2つの設置物Alpha及びBravoとの間でネットワークが構築されると安定状態になる。
【0048】
以上、本実施例によれば、設置物に機器を取り付け、これを回線ケーブルに接続するだけで、機器間でネットワークを自動的に構築することができる。
【実施例3】
【0049】
以下、本発明の第3実施例について説明する。本実施例では、上記実施例2で構築されたネットワークに新たな設置物を増設する場合に、機器間でネットワークを自動的に再構築する手順について図10及び図11を用いて説明する。
【0050】
Charlieがネットワークに増設される新たな設置物とする(図10参照)。Charlieが回線ケーブルに接続されると、Charlieのタイマ部104のアイドル状態検出タイマ142はタイムアウトを繰り返す。しかし、既にAlpha及びBravoによりネットワークは構築されて安定状態になっているので、Charlieが7回タイムアウトした後に送信するプローブパケットは受けつけられず、このままでは、Charlieはネットワークに参加することができない。
【0051】
一方、既に安定状態となっているネットワーク上のAlpha及びBravoのどちらかが、ネットワークのマスタ(以下、ドメインマスタ)になり、まだネットワークに参加できていない設置物を勧誘する勧誘パケットをパケット送受信制御部103のパケット自律生成部131で自律的に生成し、ネットワークにブロードキャストする。本実施例では最初にネットワーク接続したAlphaがドメインマスタになり、Alphaは勧誘パケットをブロードキャストする(STEP1)。
【0052】
ブロードキャストされた勧誘パケットをCharlieが受信すると、パケット送受信制御部103のパケット自律生成部131で勧誘応答パケットが自律的に生成され、勧誘パケットをブロードキャストしたAlphaに勧誘応答パケットが送信される(STEP2)。この時、Charlieは自身が保持しているノードIDをAlphaに送信しても良い。Charlieからの勧誘応答パケットをAlphaが受信することにより、AlphaはCharlieがネットワークに参加したいことを認識する。
【0053】
Alphaは、勧誘パケットをブロードキャストしてから勧誘応答パケットを受信するまでの間、トークンパケットを保持している。勧誘応答パケットを受信したAlphaは、next hop 更新指示パケットを自律的に生成し、トークンパケットと一緒にBravoに送信し、次段のアドレスをCharlieにするよう指示をする(STEP3)。その指示を受けたBravoのパケット送受信制御部103内のアドレス保持部132は、次段のアドレスをCharlieのアドレスに更新する。Bravoは次段のアドレスを更新したことをトークンパケットと一緒にAlphaに通知する(STEP4)。Alphaは、CharlieのノードIDがネットワーク上で重複しないようにノードIDを決定し、勧誘結果通知パケットをパケット送受信制御部103のパケット自律生成部131で自律的に生成してブロードキャストする。Charlieは勧誘結果通知パケットを受信すると、Alphaから通知されたノードIDを受信情報保持部102に保持し、また、パケット送受信制御部103のアドレス保持部132で保持する次段のアドレスにAlpha(0x01)を保持する。この処理が終わった後、Alphaに確認応答コードを通知する(STEP5)。
【0054】
Alphaは、勧誘結果通知パケットをブロードキャストしてから確認応答コードを受信するまでの間、トークンパケットを保持している。確認応答コードを受信したAlphaはBravoにトークンパケットを送信し、BravoはCharlieにトークンパケットを送信する(STEP6)。CharlieはBravoからトークンパケットを受信することにより、自身の前段のアドレスはBravoであることを認識し、パケット送受信制御部103内のアドレス保持部132で保持する前段のアドレスにBravo(0x02)を保持する。CharlieはBravoからトークンパケットを受信した後、パケット送受信制御部103内のパケット自律生成部131で自己紹介パケットを自律的に生成してブロードキャストする。Alpha及びBravoはCharlieの自己紹介パケットを受信情報保持部102で保持する。自己紹介パケットをブロードキャストした後、CharlieはAlphaにトークンパケットを送信する。これにより、安定状態にあるネットワークに設置物が増設でき、機器間でネットワークを自動的に再構築することができる。
【0055】
以上、本実施例によれば、安定状態にあるネットワークをリセットしたり、ジャミング(妨害信号)を出力せずに、機器間でネットワークを自動的に再構築し、新たに設置物を増設することができる。
【実施例4】
【0056】
以下、本発明の第4実施例について説明する。本実施例では、上記実施例2または実施例3で構築されたネットワークから設置物が減設される場合に、それ以外の機器間でネットワークを自動的に再構築する手順について図12及び図13を用いて説明する。
【0057】
ネットワークは、Alpha、Bravo、Charlie、Deltaで構築され、安定状態になっている。この状態で、Charlieが減設される場合について説明する。減設には、明示的な減設と暗示的な減設がある。
【0058】
はじめに明示的な減設について説明する。明示的な減設とは、減設する設置物が自らネットワークに対して減設を通知するものである。安定状態では、機器Alpha、Bravo、Charlie、Delta、Alpha…と順番にトークンパケットを送信している。各機器ではタイマ部104のアイドル状態検出タイマ142でタイムアウトするか否かを監視している。これは自身の機器がネットワークから切断されているか否かを監視するためである。安定状態であれば、アイドル状態検出タイマ42がタイムアウトすることはない(ステップ1)。
【0059】
あるとき、Charlieに取り付けられている機器10を交換するため、設置物109を使用しているユーザが機器10に対して減設指示を与えたものとする(ステップ2)。CharlieはBravoからトークンパケットを受信した後、パケット自律生成部131で減設通知パケットを自律的に生成してネットワーク全体にブロードキャストする(STEP3)。Charlieの前段にあるBravoは、Charlieが減設されることを認識し、パケット送受信制御部103のアドレス保持部132で保持する次段のアドレスをCharlieからDeltaに更新する。また、その他の設置物のAlpha、Delta内のアドレス保持部132も更新される(ステップ3)。Charlieは減設通知パケットをブロードキャストした後、Deltaにトークンパケットを送信する。この時点で、Charlieの明示的な減設処理は完了する。トークンパケットはその後、DeltaからAlpha、AlphaからBravoへと送信され、Bravoは更新したDeltaにトークンパケットを送信する(ステップ5)。以上、ステップ1乃至5により、安定状態にあるネットワークから設置物が明示的な減設をした時に、残った機器間でネットワークを自動的に再構築することができる。
【0060】
次に、暗示的な減設について説明する。暗示的な減設とは、減設する設置物が自らネットワークに対して減設を通知せず、不意に減設を行うものである。例えば、突然電源が落ちたり、通信ケーブルが抜かれたりする場合には不意に設置物が減設される。また、明示的な減設が失敗した場合、つまり、減設通知パケットをブロードキャストしたものの前段の設置物が通知を認識できなかった場合にも行う。安定状態では、設置物Alpha、Bravo、Charlie、Delta、Alpha…と順番にトークンパケットを送信している。各機器ではタイマ部104のアイドル状態検出タイマ142でタイムアウトするか否かを監視している。安定状態であれば、アイドル状態検出タイマ142がタイムアウトすることはない(ステップ1)。
【0061】
あるとき、何らかの理由により不意にCharlieが減設されたものとする。この時点ではネットワークに接続されている、Alpha、Bravo及びDeltaは減設通知を受けていないので、トークンパケットは通常どおりネットワークを巡回する(ステップ2)。しかし、Bravoがネットワークから切断されているCharlieへトークンパケットを送信しても、Charlieは存在しないため一定時間後にBravoの次段監視タイマ144がタイムアウトする。(ステップ3)この時点でBravoは、Charlieがネットワークからいなくなったことを判断し、送信元のIDにCharlieのIDを使用してCharlieになり代わって減設通知パケットを自律的に生成して、ブロードキャストする。(ステップ4)その後Bravoは、アドレス保持部132に保持している次々段のアドレスDeltaにトークンパケットを送信し、同時にアドレス保持部132で保持する次段のアドレスをCharlieからDeltaに更新する。また、その他の設置物のAlpha、Delta内のアドレス保持部132も更新される。Bravoは減設通知パケットをブロードキャストした後、Deltaにトークンパケットを送信する。この時点で、Charlieの暗示的な減設処理は完了する。トークンパケットはその後、DeltaからAlpha、AlphaからBravoへと送信され、Bravoは更新したDeltaにトークンパケットを送信する(ステップ5)。以上、ステップ1乃至5により、安定状態にあるネットワークから設置物が暗示的な減設をした時に、残った機器間でネットワークを自動的に再構築することができる。
【0062】
以上、本実施例によれば、ネットワーク構築後に機器がいかなる理由により減設される場合でも、残った機器間でネットワークを自動的に再構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、工場やビル内はもとより、住宅内に設置されている設置物間をネットワーク構築してオートメーション化することができ、人々の日常生活に広く浸透していくことが予測される。
【符号の説明】
【0064】
10 機器
100 送受信部
101 受信制御部
102 受信情報保持部
103 パケット送受信制御部
131 パケット自律生成部
132 アドレス保持部
104 タイマ部
141 ネットワーク応答監視タイマ
142 アイドル状態検出タイマ
143 ネットワーク状態監視タイマ
144 次段監視タイマ
145 バックオフタイマ
105 送信制御部
106 送信情報保持部
107 上位レイヤ制御部
108 設置物制御部
109 設置物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークの構築方法であって、
ネットワークとなる回線ケーブルに接続された機器がネットワークのアイドル状態を検出する時間を計る工程と、
所定回数のタイムアウトがあった場合、自身の機器以外がネットワークに接続されているか否かを問い合わせるプローブパケットを送信する工程と、
前記プローブパケットに応答するプローブ応答パケットが受信できるまで、前記所定回数よりも少ない回数のタイムアウト毎に、前記プローブパケットを送信する工程と、
を有することを特徴とするネットワーク構築方法。
【請求項2】
前記プローブ応答パケットを受信した場合、自身の機器の自己紹介をする自己紹介パケットをブロードキャストする工程を有することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク構築方法。
【請求項3】
巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークに新たな機器を増設する場合のネットワーク構築方法であって、
ネットワークのマスタが参加できていない機器を勧誘する勧誘パケットをブロードキャストする工程と、
前記勧誘パケットを受信した前記新たな機器は勧誘応答パケットを生成し、前記ネットワークのマスタに送る工程と、
前記勧誘応答パケットを受信した前記ネットワークのマスタは、前記マスタの前段にある機器に対して、next hop 更新指示パケットを生成して送信する工程と、
次段の機器アドレスを前記マスタから前記新たな機器に更新する工程とを有することを特徴とするネットワークの構築方法。
【請求項4】
巡回ネットワーク上に存在する複数の機器間で一つのトークンパケットを、予め定められた順番で巡回させ、トークンパケットを受け取った機器のみがネットワーク上にデータを送出できるようにしたネットワークから機器を減設した場合のネットワーク構築方法であって、
前記ネットワークから機器が減設される工程と、前記減設された機器、あるいは前段にある機器がネットワークから機器が減設されたことを通知する減設通知パケットをブロードキャストする工程と、
前記減設通知パケットを受け取った各機器は、それぞれで保持している減設された機器のアドレスを削除して更新する工程とを有することを特徴とするネットワークの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−74843(P2010−74843A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260650(P2009−260650)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2004−243512(P2004−243512)の分割
【原出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(397065136)株式会社横須賀テレコムリサーチパーク (28)
【出願人】(593084801)株式会社エイ・ティ・シィ (2)
【出願人】(593084797)
【Fターム(参考)】