説明

ネットワーク装置、ネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびプログラム

【課題】VLAN用のマルチプルスパニングツリープロトコルの管理が容易なネットワーク装置を提供する。
【解決手段】トポロジ構築部104とMSTPプロトコル情報作成部105とにより、通常のMSTPプロトコルのBPDUに、リージョンの同期化を有効とする同期機能表示情報と同一リージョンと看做せるかを識別するリージョン識別情報とを少なくとも含む情報にして対向装置に送受信し、対向装置からの同期機能表示情報が有効で、リージョン識別情報が同一リージョンと看做すことが可能で、かつ、対向装置よりも優先度が高い上位装置であった場合、リージョン同期情報作成部106で自装置のリージョンを特定するためのリージョン特定情報を含む情報を生成して同期メッセージとして送信し、下位装置側の対向装置は、MSTPプロトコル解析部102にて該同期メッセージのリージョン特定情報に基づき上位装置側と同一リージョンとなるように同期化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク装置、ネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムに関し、特に、仮想LAN(VLAN:Virtual Local Area Network)を使用したネットワーク装置および該ネットワーク装置を用いて構成されるネットワークシステムに好適に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
仮想LAN(VLAN:Virtual Local Area Network)を使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置においてデータ転送の経路にループが生じないネットワークを構築するために、例えば、特許文献1の特表WO2005/057863号公報「データ伝送装置」にも記載されているように、スパニングツリープロトコルとして、IEEE802.1D規格として規定されている従来のスパニングツリープロトコル(STP/RSTP:Spanning Tree Protocol/Rapid Spanning Tree Protocol)を基にして制定されたもので、VLAN環境用の機能拡張を行ったMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol:マルチプルスパニングツリープロトコル)がIEEE802.1Q規格として定義され、VLAN用のネットワーク装置において多く使用されるようになってきている。
【0003】
ここで、該MSTPにおいては、「リージョン」と称する概念があり、管理者は同一リージョンにしたいネットワーク装置すべてに対して複数の設定情報についてすべて同一の設定情報を正しく設定しなければ、意図しない状態にリージョンが分かれてしまい、管理者が所望するネットワーク構成とはならないという問題がある。
【0004】
特に、VLAN用の識別子であるVLAN−IDとマルチプルスパニングツリープロトコル用の識別子であるMST−ID(Multiple Spanning Tree ID)との関連情報が誤っていた場合、自ネットワーク装置からは、対向ネットワーク装置との間で設定情報が違っているということしか分からず、不具合の原因の特定や正しい設定情報への修正が困難であった。
【0005】
したがって、従来、管理者がMSTPを使用して、想定したネットワークを容易に構築するためには、各ネットワーク装置の設定情報を一元管理するために、ネットワークの規模の如何に関わらず、別途ネットワーク管理システムを使用する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第05/057863号公報(第8−11頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、LANネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置におけるデータの転送経路のループを回避するための手段として、IEEE802.1D規格として規定されたスパニングツリープロトコル(STP/RSTP)が広く採用されてきた。さらに、近年においては、前述のように、IEEE802.1Q規格として規定されている仮想LAN(VLAN:Virtual Local Area Network)を考慮したマルチプルスパニングツリープロトコル(MSTP:Multiple Spanning Tree Protocol)が採用されるようになってきている。しかし、MSTPにおいては、管理者がネットワークを構築するために必要とするパラメータ(設定情報)がSTP/RSTPと比較して増加しているため、以下のように、管理者(または保守者)の作業負荷が大きくなる状況下にある。
【0008】
1)各ネットワーク装置への各種情報の設定作業
2)意図通りのネットワーク構成にならない場合の不具合原因箇所の特定作業
3)2)の不具合原因箇所の調査結果に基づいて実施する設定修正作業
【0009】
かくのごときMSTP使用時における管理者の管理作業において、特に作業性を困難にしている要因の一つとして挙げられるのは、MSTPのリージョン設定作業である。すなわち、MSTPにおいてスパニングツリーを作成する際、前述したように、いくつか複数のネットワーク装置を一つのネットワーク装置に見せかけるための「リージョン」という概念が存在する。各ネットワーク装置が、自ネットワーク装置と同じリージョンに属しているか否かを判断するためには、自ネットワーク装置の設定情報と対向ネットワーク装置から送信されてくるプロトコルデータBPDU(Bridge Protocol Data Unit:プロトコル動作のためにネットワーク装置間でプロトコル情報を交換するデータおよびデータフォーマット)とを解析し、以下の3つのパラメータが同一であるか否かをチェックすることが必要である。
【0010】
a)Configuration Name(リージョン名を示す文字列。以降、「リージョン名」と称する)
b)Revision Level(リビジョン番号を示す数値。以降、「リビジョン番号」と称する)
c)Configuration Digest(ハッシュ情報を示すハッシュ値。以降、「ハッシュ情報」と称する)
【0011】
チェックした3つのパラメータすべてが自ネットワーク装置と同一でなければ、対向ネットワーク装置は別リージョンに属するネットワーク装置として判断される。例えば、リージョン名とリビジョン番号とがたとえ同じであっても、ハッシュ情報が異なれば、別リージョンと看做される。
【0012】
ここで、c)のハッシュ情報は、VLAN上およびマルチプルスパニングツリープロトコル上それぞれにおける自ネットワーク装置を特定するために自ネットワーク装置内に格納している情報である、図6に示すようなVLAN用識別子のVLAN−IDとマルチプルスパニングツリープロトコル用識別子のMST−ID(Multiple Spanning Tree ID)との関連情報を基にして、作成されるハッシュ値である。図6は、ネットワーク装置のVLAN用識別子VLAN−IDとマルチプルスパニングツリープロトコル用識別子MST−IDとの対応関係の一例を示すテーブルである。マルチプルスパニングツリープロトコル用識別子MST−IDは、MSTPのリージョン内に存在するMSTI(Multiple Spanning Tree Instance)の識別番号であり、MSTPにおいては、リージョン内に複数のインスタンス(最大64まで)を持つことができ、図6に示すように、各インスタンスに対して複数個のVLANに割り当てることができる。
【0013】
例えば、自ネットワーク装置と対向ネットワーク装置とを、同一のリージョンに属するものとして設定しようとしたにも関わらず、自ネットワーク装置を特定するための設定情報の一つである、自ネットワーク装置内にあらかじめ設定したVLAN−IDとMST−IDとから生成されたハッシュ情報と、対向ネットワーク装置からのプロトコルデータBPDUに含まれているハッシュ情報とが不一致であった場合、自ネットワーク装置と対向ネットワーク装置とは、同一リージョンではなく、別々のリージョンに属しているものと看做されることになる。
【0014】
この結果、ハッシュ情報が不一致となった不具合原因を特定するために、どのネットワーク装置(自ネットワーク装置または対向ネットワーク装置)のどのVLAN−IDとどのMST−IDとの関連が不一致であるかを特定しようとすると、管理者は、各ネットワーク装置(自ネットワーク装置および対向ネットワーク装置)のVLAN−IDとMST−IDとの関連情報をそれぞれ収集して、比較/照合して不具合箇所を調査することが必要であった。さらに、しかる後に、不具合箇所の調査結果を基にして、不具合原因となったネットワーク装置の設定内容を修正していくことになるので、管理者の作業負荷が非常に大きくなってしまうという問題がある。
【0015】
(本発明の目的)
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、マルチプルスパニングツリープロトコルの管理が容易になるネットワーク装置、それを用いたネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムを提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の課題を解決するため、本発明によるネットワーク装置、それを用いたネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムは、主に、次のような特徴的な構成を採用している。
【0017】
(1)本発明によるネットワーク装置は、VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置において、対向ネットワーク装置との間でリージョンの同期化を行う際に、IEEE規格の通常のMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)プロトコルに準拠したプロトコルデータBPDU(Bridge Protocol Data Unit)に、リージョンの同期化を有効とするか否かを示す同期機能表示情報と同一リージョンと看做すことが可能か否かを識別するためのリージョン識別情報とを少なくとも含んだ情報を前記対向ネットワーク装置との間で送受信することを特徴とする。
【0018】
(2)本発明によるネットワークシステムは、VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するVLAN用ネットワークシステムにおいて、ネットワークを構成するネットワーク装置として、少なくとも前記(1)に記載のネットワーク装置を用いることを特徴とする。
【0019】
(3)本発明によるマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法は、VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置においてIEEE規格の通常のMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)プロトコルに準拠したプロトコルデータBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を用いて、対向ネットワーク装置との間でリージョンの同期化を行うマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法であって、前記プロトコルデータBPDUにリージョンの同期化を有効とするか否かを示す同期機能表示情報と同一リージョンと看做すことが可能か否かを識別するためのリージョン識別情報とを少なくとも含んだ情報を前記対向ネットワーク装置との間で送受信することを特徴とする。
【0020】
(4)本発明によるマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムは、少なくとも前記(3)に記載のマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法を、ネットワーク装置に搭載したコンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のネットワーク装置、それを用いたネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムによれば、以下のような効果を奏することができる。
【0022】
第1に、仮想LAN(VLAN)を使用するネットワークシステムを構成するネットワーク装置においてデータの転送経路にループが発生しないネットワークを構築するためには、スパニングツリープロトコルとしてIEEE規格に準拠したMSTPを使用することになるが、該MSTPにはリージョンという概念があり、同リージョンにしたいネットワーク装置すべてに対して同じ設定情報を正しく設定しなければ、いずれか1ないし複数のネットワーク装置が意図しない別のリージョンに分離されてしまい、管理者が所望するネットワーク構成を形成することができないという問題があった。
【0023】
本発明においては、対向ネットワーク装置が、特定の情報(すなわちリージョンが同一か否かを識別するためのリージョン識別情報)を基にして自ネットワーク装置と同リージョンと看做せる場合には、代表となるネットワーク装置が自ネットワーク装置の設定情報をSyncメッセージ(同期メッセージ:リージョンを特定するためのリージョン特定情報を含む同期化指示メッセージ)として対向ネットワーク装置へ送信し、設定情報を受信した該対向ネットワーク装置側においては、受信したSyncメッセージ(同期メッセージ)の情報を当該対向ネットワーク装置自身の設定情報に自動的に反映させることによって、データの転送経路としてループが発生しない所望のネットワークを構築することができるとともに、管理者(または保守者)の各ネットワーク装置への設定作業を容易にすることができる。
【0024】
第2に、特に、VLAN−IDとMST−IDとの関連情報が誤っていた場合、自ネットワーク装置においては、対向ネットワーク装置の設定情報が自ネットワーク装置の設定情報と違っているということしか分からず、不具合原因の特定や設定情報の修正が困難であるという問題があった。
【0025】
本発明においては、誤っている個所を特定するのではなく、意図した設定情報を代表となるネットワーク装置(上位装置)にあらかじめ設定しておき、代表となる当該ネットワーク装置の設定情報を同リージョンとしたい他のネットワーク装置(下位装置)に伝搬して、他のネットワーク装置の設定情報を代表のネットワーク装置の設定情報に同期化させることによって、自動的に同リージョンの設定を行うことが可能であり、他のネットワーク装置における設定誤りを容易に解消させることができる。
【0026】
第3に、従来、管理者がMSTPを使用して想定したネットワークシステムを容易に構築するためには、ネットワークの規模の如何に関わらず、別途、各ネットワーク装置の設定情報を一元管理するためのネットワーク管理システムを使用することが必須になっていた。
【0027】
本発明においては、ネットワークシステムを構成するネットワーク装置間において設定情報を同期化させる機能を備えることによって、ネットワーク管理システムを別途導入することなく、MSTPを使用して想定したネットワークを容易に構築することができ、システムコストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるネットワーク装置の内部構成の一例を示すブロック構成図である。
【図2】図1の構成からなる2つのネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例を説明するための説明図である。
【図3】IEEE802.1Q規格に定義されているMSTのプロトコルデータBPDUおよびMSTI Config Messageのフォーマットを示すテーブルである。
【図4】図1の構成からなる複数のネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例を説明するための説明図である。
【図5】図4のネットワーク構成においてネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作を実施した後のネットワーク構成の一例を説明するための説明図である。
【図6】ネットワーク装置のVLAN用識別子VLAN−IDとマルチプルスパニングツリープロトコル用識別子MST−IDとの対応関係の一例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明によるネットワーク装置、それを用いたネットワークシステム、マルチプルスパニングツリープロトコル管理方法およびマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムの好適な実施形態について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明によるネットワーク装置、それを用いたネットワークシステムおよびマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法について説明するが、かかるマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法をネットワーク装置に搭載したコンピュータにより実行可能なマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、マルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。
【0030】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、VLANを使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置においてデータ転送経路に生じる可能性があるループ構造を回避するためのプロトコルとして、各ネットワーク装置の設定情報の同期機能(すなわちリージョン同期機能)を提供することによって、各ネットワーク装置の設定情報を一元管理するためのネットワーク管理システムを別途設ける必要もなく、ネットワーク装置においてデータの転送経路にループが発生することを確実に回避することが可能になり、初期導入時および構成変更時における管理者(または保守者)の管理負荷を軽減することを可能としている。
【0031】
より具体的には、次の通りである。対向ネットワーク装置が、自ネットワーク装置内における特定の情報(すなわちリージョンが同一か否かを識別するためのリージョン識別情報)を基にして同一リージョンと看做すことができる場合、同一リージョン内の代表となるネットワーク装置(上位装置)から自ネットワーク装置の設定情報(リージョンを特定するためのリージョン特定情報)を含むSyncメッセージ(同期メッセージ)をリージョン同期化指示として対向ネットワーク装置(下位装置)へ送信し、当該Syncメッセージ(同期メッセージ)を受信した対向ネットワーク装置側においては、当該Syncメッセージ(同期メッセージ)に含まれている上位装置のリージョン特定情報を基にして、対向ネットワーク装置自身のリージョン特定情報を生成して、生成したリージョン特定情報を対向ネットワーク装置自身のリージョンを特定するための設定情報に反映させるというリージョン同期機能を実現することによって、同一リージョンに属する各ネットワーク装置の設定情報の同期化を図ることを特徴としている。
【0032】
而して、管理者(または保守者)は、例えば、リージョン名等の最小限の情報(すなわちリージョンが同一か否かを識別するためのリージョン識別情報)を各ネットワーク装置に正しく設定することによって、一部のネットワーク装置へのリージョンを特定するための設定情報(すなわちリージョン特定情報)に誤った情報が設定されていたような場合があったとしても、管理者(または保守者)は、設定対象のネットワーク装置すべての設定情報(すなわちリージョン特定情報)を詳細に把握しなくても、該管理者(または保守者)が意図した通りに設定を行うことが可能になり、データの転送経路にループが発生しない所望のネットワークシステムを構築することができる。
【0033】
また、管理者(または保守者)は、ネットワークシステム全体の管理を行うネットワーク管理システムを使用することなく、MSTPを使用して、管理者(または保守者)自身が想定したネットワークシステムを容易に構築することができる。
【0034】
なお、通常のプロトコルにおいては無視されるプロトコルデータBPDU上の領域またはユーザ定義可能なプロトコルデータBPDU上の領域に、リージョン同期機能の有無を示す情報を設定することにすれば、リージョン同期機能を備えていない対向ネットワーク装置と接続された場合であっても、互いの相互接続を維持することも可能になる。
【0035】
(実施形態の構成例)
次に、本発明によるネットワーク装置の構成例について、その一例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明によるネットワーク装置の内部構成の一例を示すブロック構成図であり、VLANを使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置の一例を示している。
【0036】
図1に示すネットワーク装置は、データ受信部101、MSTPプロトコル解析部102、MSTPプロトコル情報記憶領域103、トポロジ構築部104、MSTPプロトコル情報作成部105、リージョン同期情報作成部106、データ送信部107およびユーザ設定入力部108を少なくとも含んで構成されている。
【0037】
データ受信部101は、自ネットワーク装置以外からのデータを受信する機能部であり、MSTPプロトコル解析部102は、他のネットワーク装置から受け取ったMSTPプロトコル情報に関する情報を解析して、MSTPプロトコル情報記憶領域103に格納する機能と、MSTPプロトコル情報記憶領域103の保存情報を更新する機能として、次の2つの機能を備えた機能部である。
1)データ受信部101にて受信されたプロトコルデータBPDUのうち、MSTPに関わるデータを解析し、MSTPプロトコル情報として、MSTPプロトコル情報記憶領域103に該当する情報を格納する機能を備えている。
2)他のネットワーク装置からSyncメッセージ(同期メッセージ:リージョンを特定するためのリージョン特定情報を含む同期化指示メッセージ)を受信した場合、該Syncメッセージに含まれているリージョン特定情報を基にして、必要に応じて、自ネットワーク装置自身のリージョン特定情報を生成して、生成したリージョン特定情報によってMSTPプロトコル情報記憶領域103に設定済みの情報(例:ユーザ設定入力部108から指定された設定情報)を更新する機能を備えている。
【0038】
MSTPプロトコル情報記憶領域103は、MSTPプロトコル解析部102において解析された他のネットワーク装置からのMSTPプロトコル情報に関する情報、同期化処理結果として生成された設定情報およびユーザ設定入力部108から指定されたMSTPに関連するプロトコル設定情報を保存する領域である。
【0039】
トポロジ構築部104は、MSTPプロトコル情報記憶領域103に保存されたMSTPプロトコル情報を基にして、自ネットワーク装置の状態、接続されている他のネットワーク装置を含めたスパニングツリー状態、および、送信するMSTPプロトコル情報に関する情報などを管理する機能部である。また、必要であれば、リージョン同期情報作成部106に対して、リージョンの同期化を指示するSyncメッセージ(同期メッセージ)として他のネットワーク装置に送信されるリージョン同期化指示情報の作成を指示する機能部でもある。
【0040】
MSTPプロトコル情報作成部105は、トポロジ構築部104からの情報を基にして接続された他のネットワーク装置へ送信する、通常のMSTPプロトコルに関わるデータ(ただし、リージョン同期化を行う対象となるネットワーク装置であるか否かを示す同期機能有無の表示情報すなわち同期機能表示情報も含む)を作成し、作成したデータをデータ送信部107へ渡す機能部である。リージョン同期情報作成部106は、リージョンを同期化するためのMSTPプロトコル情報(自ネットワーク装置のVLAN−IDとMST−IDとの関連情報を少なくとも含む情報:リージョン同期化情報)を、リージョンを特定するためのリージョン特定情報として作成し、リージョンの同期化を指示するSyncメッセージ(同期メッセージ)として他のネットワーク装置に送信するためにデータ送信部107へデータを渡す機能部である。
【0041】
データ送信部107は、自ネットワーク装置と対向する対向ネットワーク装置に対してデータを送信する機能部であり、ユーザ設定入力部108は、ユーザ(すなわち、管理者や保守者)からネットワーク装置に対する設定情報を受け付けて、MSTPプロトコル情報記憶領域103に情報を格納する機能部である。
【0042】
ネットワーク装置を、かくのごとき各構成要素を少なくとも備えた構成とすることにより、同一リージョンに属するネットワーク装置間においてリージョン同期機能を実現することができる。
【0043】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示したネットワーク装置からなるVLANを使用するネットワークシステムの動作例として、2つのネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例について、図2を用いて説明する。図2は、図1の構成からなる2つのネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例を説明するための説明図であり、リージョン同期機能を備えた2つのネットワーク装置を、それぞれ、ネットワーク装置(NW装置)X、ネットワーク装置(NW装置)Yとして表示し、2つのネットワーク装置X、ネットワーク装置Y同士でデータ転送経路にループが発生しない構造のネットワークシステムを構築する際の簡単な動作例を示している。
【0044】
なお、ここでは、ネットワーク装置Xがネットワーク装置Yよりも優先度の高いネットワーク装置(すなわち上位装置)であるものとし、両方のネットワーク装置X,Yの双方とも、リージョン同期化を行う対象装置として、プロトコルデータBPDUに同期機能表示情報を有効な状態に設定して、リージョン同期機能が有効になっているものとする。
【0045】
また、図2の例においては、ネットワーク装置Xとネットワーク装置Yとの双方のリージョン名、リビジョン番号は同一になっているが、ハッシュ情報だけが異なる状態になっているものと仮定し、リージョン名が同一であった場合には、同リージョンに同期させるように、ハッシュ情報を同一化するものとする。つまり、ネットワーク装置X,Yが同リージョンと看做すことができるリージョン識別情報としてネットワーク装置X,Yに設定されている最低限の特定の情報がリージョン名(あるいはリビジョン番号をさらに含めても良い)であるものとし、該リージョン名がネットワーク装置X,Yにおいて同一であれば、同一のリージョンに属しているものと看做すものとする。
【0046】
また、図2中に示すRegionX、RegionYは、リージョン名ではなく、リージョン名、リビジョン番号、ハッシュ情報により決定される意味上のリージョンの違いを示すものである。つまり、ネットワーク装置X,Yは、ハッシュ情報が誤って異なった状態に設定されていたために、それぞれが別リージョンに属しているものと判定され、RegionX、RegionYに分離してしまっていることを示している。
【0047】
図2(A)において、ネットワーク装置Xとネットワーク装置Yとが接続されると、双方のネットワーク装置X,YからProposalビットがセットされたプロトコルデータBPDUが相手側のネットワーク装置に送付される(シーケンスSeq.21)。この時、送付するプロトコルデータBPDUには、ネットワーク装置X,Yがリージョン同期化の対象であることを示す同期機能表示情報として、通常のMSTPで使用するプロトコルデータBPDU中に同期機能のサポート状態を示す情報を有効な状態にして付している。図1に示すデータ受信部101にて相手側のネットワーク装置から受信したプロトコルデータBPDUは、MSTPプロトコル解析部102により解析され、MSTPプロトコル情報としてMSTPプロトコル情報記憶領域103に格納される。
【0048】
ここで、同期機能のサポート状態を示す情報すなわち同期機能表示情報は、MSTのプロトコルデータBPDUの各領域のうち、MSTPの規格上は無視される領域を用いて示すようにしている。例えば、図3のプロトコルデータBPDUフォーマットに示すように、プロトコルデータBPDUの第5Byte目のCIST(Common & Internal Spanning Tree) Flags中の第7ビット目にあるTopology Change Acknowledge Flagをセットするなどによって、同期機能のサポート状態を示すようにしている。図3は、IEEE802.1Q規格に定義されているMSTのプロトコルデータBPDUおよびMSTI Config Messageのフォーマットを示すテーブルであり、MSTのプロトコルデータBPDUは、2ByteのProtocol IDから1ByteのCIST Remaining Hopsまで102Bytesの情報からなっており、MSTI Config Messageは、MSTIからMSTI Remaining Hopsまで16×64Bytesの情報からなっている。
【0049】
また、MSTPの規格上無視される領域であるTopology Change Acknowledge Flagを同期機能表示情報として流用した以外の領域については、通常のMSTPに規定されているプロトコルデータBPDUであるので、該プロトコルデータBPDUには、リージョン名、リビジョン番号、ハッシュ情報が含まれている。よって、該プロトコルデータBPDUの交換時点で、双方のネットワーク装置X,Yは、図1のトポロジ構築部104において、接続先のネットワーク装置が、現在、同リージョンに属しているか他リージョンに属しているかを判別することができる。
【0050】
また、同時に、接続先のネットワーク装置が同リージョンとすべきネットワーク装置であるか否かについても、同リージョンに属していると看做すか否かを識別するための特定の情報すなわちリージョン識別情報(例えばリージョン名)に関して、接続先から受け取ったプロトコルデータBPDUの情報と自ネットワーク装置内に保存している自ネットワーク装置に関する設定情報とを比較して判断する。具体的には、相手先から受け取ったプロトコルデータBPDUの情報と自ネットワーク装置内に保存している情報との比較結果として、リージョン名が同一であれば、たとえハッシュ情報が異なっていても、同一リージョンとすべきネットワーク装置であると判断する。
【0051】
次に、図2(B)に示すように、接続先から受信したプロトコルデータBPDUの情報と自ネットワーク装置の設定情報との比較結果から、双方のネットワーク装置の優先度を判別し、優先度が低いと判別したネットワーク装置Yは、接続先のネットワーク装置Xに対するポートロールを、Designated PortからRoot Port(上位装置向けポート)に切り替えて設定するとともに、MSTPの規格に従って、優先度の低いネットワーク装置YからAgreementビットがセットされたプロトコルデータBPDUをMSTPプロトコル情報作成部105にて作成して、データ送信部107から優先度の高いネットワーク装置Xに対して送付する(シーケンスSeq.22)。
【0052】
通常のMSTPであれば、この時点で、データ転送動作を開始するために、ポート状態をDiscarding StateからForwarding Stateに切り替えて、データ通信を開始することになる。しかし、本実施形態の動作例においては、交換したプロトコルデータBPDUの情報の比較結果から、リージョン同期機能が有効であり、かつ、同一リージョンとすべき装置であるにも関わらず、リージョンが異なっていたことが判明しているため、リージョンに関する情報を同期化させるまでの間、ポート状態をDiscarding Stateのままにする。
【0053】
しかる後、図2(C)に示すように、通常のMSTPにおいて、Root Bridge(上位装置)と判断されるネットワーク装置Xは、リージョン同期化の指示となるSyncメッセージ(同期メッセージ:リージョンを特定するためのリージョン特定情報を含む同期化指示メッセージ)として、自ネットワーク装置Xのリージョン名、リビジョン番号およびVLAN−IDとMST−IDとの関連情報(すなわちハッシュ情報生成の元データ)を含むプロトコルデータBPDUをリージョン同期情報作成部106にて作成して、下位装置であるネットワーク装置Yに対して、データ送信部107から送信する(シーケンスSeq.23)。
【0054】
つまり、本発明においては、該プロトコルデータBPDUを、リージョンに関する情報の同期化を行うためのSyncメッセージ(同期メッセージ)と呼称している。ネットワーク装置Yは、データ受信部101にてネットワーク装置Xから受信したSyncメッセージ(同期メッセージ)に含まれているリージョン特定情報を基にして、接続先の上位装置のネットワーク装置Xと同一のリージョンに設定するために、RegionYからRegionXに自ネットワーク装置Yの設定情報を変更することになる。つまり、MSTPプロトコル解析部102によりデータ受信部101にて受信したSyncメッセージ(同期メッセージ)に含まれているリージョン特定情報が解析されて、ネットワーク装置Y自身に関する設定情報が生成され、MSTPプロトコル情報記憶領域103に格納されていた設定情報が上位装置のネットワーク装置Xと同一のリージョンになるように更新される。
【0055】
次いで、図2(D)に示すように、ネットワーク装置Yは、ネットワーク装置Xに対して、リージョン情報(リージョン名、リビジョン番号、ハッシュ情報)が同期したことと、ネットワーク装置XがRegionX内での上位装置であることを認識したことと(Synced+Agreement)を示すBDPUを送信する(シーケンスSeq.24)。該BDPUの送受信が完了したこの時点で、各ネットワーク装置X,Yのポート状態を、Discarding StateからForwarding Stateに切り替えて、通常フレームの転送を開始する。
【0056】
以上のような動作を、他のネットワーク装置(あるいは他のポート)との間でも同様に実施していくことによって、同じリージョン名であるべきネットワーク装置のリージョン情報の設定が、上位装置(Root Bridge)であるネットワーク装置XのRegionXのリージョン情報の設定に順次同期化していくことになる。
【0057】
しかる後、構築されたスパニングツリーが、あらかじめ定めた一定時間の間、変化しない状態(すなわち、ネットワーク装置のポート状態とポートロールとが変化しない状態)が継続した後は、同期機能表示情報をリセットして、リージョンに関する同期機能を無効化することによって、ネットワーク運用中は、通常のMSTPが有する経路切り替えおよびスパニングツリー再構築時間を維持することができるようにする。
【0058】
次に、VLANを使用するネットワークシステムとして複数のネットワーク装置が存在する場合のネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例について、図4を用いて説明する。図4は、図1の構成からなる複数のネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作の一例を説明するための説明図であり、各ネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作を実施する前のネットワーク構成例を示している。
【0059】
図4のネットワーク構成例においては、それぞれのネットワーク装置404〜410に設定されている設定情報として、7つのネットワーク装置404〜410のうち、ネットワーク装置404,406、ネットワーク装置405、ネットワーク装置407〜410の3つのグループそれぞれが別々のリージョンに分かれて属し、3つの意味上のリージョン401,402,403に分割されているネットワーク構成を示している。以下では、所望するネットワーク構成として、ネットワーク装置404〜406を同一のリージョンとし、ネットワーク装置407〜410を別の同一のリージョンとして同期化する場合の動作について説明している。
【0060】
なお、図4において、符号401,402,403は、リージョン名、リビジョン番号、ハッシュ情報により決定される意味上のリージョン境界を示しており、通常のMSTPで本来はリージョン401と同一リージョンとしたいネットワーク装置405が、設定ミスにより、リージョン401ではなく、別のリージョン402に分割されてしまった様子を示している。
【0061】
また、ネットワーク装置404〜410は、意味上のリージョン401,402,403のそれぞれにおいて番号の小さいものが高優先のネットワーク装置であるものとする。つまり、リージョン401においては、ネットワーク装置404が上位装置(Root Bridge)であり、リージョン402においては、ネットワーク装置405が上位装置(Root Bridge)であり、リージョン403においては、ネットワーク装置407が上位装置(Root Bridge)であるものと判定される。また、図4におけるネットワーク装置404は、図2に示す2つのネットワーク装置X,Yのうち、上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置Xに相当し、図4におけるネットワーク装置405が、図2において意味上のリージョンが上位装置のネットワーク装置Xと異なるリージョンに誤って設定してしまった下位装置のネットワーク装置Yに相当している。
【0062】
また、図4の黒丸は、現在使用していないDisableポート、代替ポートまたはバックアップポートのいずれかを示している(簡単のため、ここでは、これらのいずれであるかを区別していない)。図4の太線は、現在のネットワークトポロジにおいて、通常のMSTPによって決定されるデータの転送経路を示している。すなわち、通常のMSTPによって、現在、意味上のリージョン401の上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置404は、同リージョンのネットワーク装置406および異なるリージョン402のネットワーク装置405との間の経路が設定され、意味上のリージョン401の下位装置のネットワーク装置406は、異なるリージョン403の上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置407との間の経路が設定されている。また、意味上のリージョン403の上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置407は、同リージョンのネットワーク装置408およびネットワーク装置409との間の経路が設定され、リージョン403のネットワーク装置408は、同リージョンのネットワーク装置410との間の経路が設定されている。
【0063】
前述のように、本来は、意味上のリージョン402のネットワーク装置405は、リージョン401と同一のリージョンに属するべきネットワーク装置であり、リージョン401とリージョン403との間は、ネットワーク装置406ではなくネットワーク装置405を使って、ネットワーク装置405とリージョン403のネットワーク装置407との間に経路が設定されるはずであった。しかし、ネットワーク装置405に設定ミスがあって、ネットワーク装置405が、リージョン401のネットワーク装置404とはハッシュ情報が異なる状態に設定されていたため、通常のMSTPによって、本来のリージョン401とは異なる別リージョン402と看做されてしまっている。
【0064】
その結果、リージョン403のネットワーク装置407は、リージョン401とのリージョン間のパスコストが少なくなるネットワーク装置406への経路を設定することになり、所望するネットワーク構成になっていない状態が発生している。
【0065】
そこで、図2において説明したようなネットワーク装置間の設定情報の同期機能すなわちネットワーク装置間のリージョン同期機能を、意味上のリージョン401のネットワーク装置404とリージョン402のネットワーク装置405との間で実施することにすれば、ネットワーク装置405よりも優先度が高い上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置404のハッシュ情報が、Syncメッセージ(同期メッセージ)として、ネットワーク装置405に伝えられ、ネットワーク装置405を、ネットワーク装置404と同一のリージョン401に属するように構成を変更させることが容易に可能になる。その結果、リージョン403のネットワーク装置407は、リージョン401との間のパスコストがより少なくなるネットワーク装置405への経路を設定することになり、所望するネットワーク構成を形成することができる。
【0066】
つまり、図4の現在のネットワーク構成において、経路変更を実施したいネットワーク装置404とネットワーク装置405との間で、図2に示したようなネットワーク装置間のリージョン同期機能を実施することによって、図5に示すようなネットワーク構成に更新することが容易に可能になる。図5は、図4のネットワーク構成においてネットワーク装置間のリージョン同期機能に関する動作を実施した後のネットワーク構成の一例を説明するための説明図である。
【0067】
図5のネットワーク構成においては、前述したように、ネットワーク装置405の設定ミスにより形成されていた別のリージョン402は、上位装置(Root Bridge)のネットワーク装置404と同一のリージョン401に更新され、2つのリージョン401,403からなるネットワーク構成に変更されて、2つのリージョンリージョン401,403間には、図4のネットワーク装置406とネットワーク装置407との間の経路に代わって、所望するネットワーク装置405とネットワーク装置407との間の経路が形成されることになる。
【0068】
なお、以上の説明においては、本発明において、同リージョンと判定する基になるリージョン識別情報として、リージョン名やリビジョン番号というMSTPプロトコルにおいて使用される範囲内の情報を用いている例を示したが、本発明は、かかる場合のみに限るものではなく、MSTPプロトコルで使用される範囲内の他の情報を使用しても良いし、さらには、MSTPプロトコルの範囲外の情報を使用しても良い。
【0069】
また、リージョン同期化を指示するSyncメッセージ(同期メッセージ)に含まれるリージョン同期化用のリージョン特定情報として送受信するデータは、ハッシュ情報(VLAN−IDとMST−IDの関連情報)以外の情報(リージョン名、リビジョン番号)を含めても良いし、MSTPプロトコルの範囲外の情報を付与しても良い。例えば、ネットワーク装置の装置名に特定の文字列"ABC"が含まれているものをすべて同リージョンの対象とすべきネットワーク装置であるものと看做して、リージョン同期化を指示するSyncメッセージ(同期メッセージ)にリージョン名、リビジョン番号、ハッシュ情報のリージョン特定情報を含ませて送受信するようにしても良い。また、必要であれば、さらに、装置設定を行うユーザ情報などMSTPプロトコル範囲外の情報も合わせて送受信することによって、MSTPプロトコル範囲外の情報も用いて同期化させるようにしても良い。
【0070】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、以下に示すような効果を発揮することができる。
【0071】
第1に、仮想LAN(VLAN)を使用するネットワークシステムを構成するネットワーク装置においてデータの転送経路にループが発生しないネットワークを構築するためには、スパニングツリープロトコルとしてIEEE規格に準拠したMSTPを使用することになるが、該MSTPにはリージョンという概念があり、同リージョンにしたいネットワーク装置すべてに対して同じ設定情報を正しく設定しなければ、いずれか1ないし複数のネットワーク装置が意図しない別のリージョンに分離されてしまい、管理者が所望するネットワーク構成を形成することができないという問題があった。
【0072】
本実施形態においては、対向ネットワーク装置が、特定の情報(すなわちリージョンが同一か否かを識別するためのリージョン識別情報)を基にして自ネットワーク装置と同リージョンと看做せる場合には、代表となるネットワーク装置(上位装置)が自ネットワーク装置の設定情報をSyncメッセージ(同期メッセージ:リージョンを特定するためのリージョン特定情報を含む同期化指示メッセージ)として対向ネットワーク装置(下位装置)へ送信し、設定情報を受信した該対向ネットワーク装置側においては、受信したSyncメッセージ(同期メッセージ)の情報を当該対向ネットワーク装置自身の設定情報に自動的に反映させることによって、データの転送経路としてループが発生しない所望のネットワークを構築することができるとともに、管理者(または保守者)の各ネットワーク装置への設定作業を容易にすることができる。
【0073】
第2に、特に、VLAN−IDとMST−IDとの関連情報が誤っていた場合、自ネットワーク装置においては、対向ネットワーク装置の設定情報が自ネットワーク装置の設定情報と違っているということしか分からず、不具合原因の特定や設定情報の修正が困難であるという問題があった。
【0074】
本実施形態においては、誤っている個所を特定するのではなく、意図した設定情報を代表となるネットワーク装置(上位装置)にあらかじめ設定しておき、代表となる当該ネットワーク装置の設定情報を同リージョンとしたい他のネットワーク装置(下位装置)に伝搬して、他のネットワーク装置の設定情報を代表のネットワーク装置の設定情報に同期化させることによって、自動的に同リージョンの設定を行うことが可能であり、他のネットワーク装置における設定誤りを容易に解消させることができる。
【0075】
第3に、従来、管理者がMSTPを使用して想定したネットワークシステムを容易に構築するためには、ネットワークの規模の如何に関わらず、別途、各ネットワーク装置の設定情報を一元管理するためのネットワーク管理システムを使用することが必須になっていた。
【0076】
本実施形態においては、ネットワークシステムを構成するネットワーク装置間において設定情報を同期化させる機能を備えることによって、ネットワーク管理システムを別途導入することなく、MSTPを使用して想定したネットワークを容易に構築することができ、システムコストを低減することが可能である。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態の構成を説明した。しかし、かかる実施形態は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。
【符号の説明】
【0078】
101 データ受信部
102 MSTPプロトコル解析部
103 MSTPプロトコル情報記憶領域
104 トポロジ構築部
105 MSTPプロトコル情報作成部
106 リージョン同期情報作成部
107 データ送信部
108 ユーザ設定入力部
401〜403 意味上のリージョン
404〜410 ネットワーク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置において、対向ネットワーク装置との間でリージョンの同期化を行う際に、IEEE規格の通常のMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)プロトコルに準拠したプロトコルデータBPDU(Bridge Protocol Data Unit)に、リージョンの同期化を有効とするか否かを示す同期機能表示情報と同一リージョンと看做すことが可能か否かを識別するためのリージョン識別情報とを少なくとも含んだ情報を前記対向ネットワーク装置との間で送受信することを特徴とするネットワーク装置。
【請求項2】
前記対向ネットワーク装置からの前記プロトコルデータBPDUを受信した際に、該プロトコルデータBPDUに含まれている前記同期機能表示情報が有効な状態に設定されており、かつ、前記リージョン識別情報が自ネットワーク装置と同一リージョンと看做すことが可能であることを示していた場合であって、かつ、自ネットワーク装置が前記対向ネットワーク装置よりも優先度が高い上位装置であった場合には、自ネットワーク装置にあらかじめ設定されている設定情報から自ネットワーク装置のリージョンを特定するために必要とするリージョン特定情報を取り出し、該リージョン特定情報を含むプロトコルデータBPDUを、同期化を要求する同期メッセージとして前記対向ネットワーク装置に対して送信し、前記同期メッセージを受信した下位装置側の前記対向ネットワーク装置は、該同期メッセージに含まれている前記リージョン特定情報に基づいて、当該下位装置側のリージョンが上位装置側と同一リージョンとなるように当該下位装置側の前記リージョン特定情報を生成して先に設定されていた設定情報を更新することを特徴とする請求項1に記載のネットワーク装置。
【請求項3】
前記プロトコルデータBPDUに含まれる前記リージョン特定情報は、ハッシュ情報を作成するための元情報となるVLAN用識別子VLAN−IDとマルチプルスパニングツリープロトコル用識別子MST−ID(Multiple Spanning Tree ID)との関連情報を含む情報、または、該関連情報と前記ハッシュ情報とを含む情報、または、該関連情報とリージョン名とリビジョン番号とを含む情報、または、該関連情報と前記ハッシュ情報とリージョン名とリビジョン番号とを含む情報、あるいは、MSTPプロトコルの範囲内にある前記いずれかの情報の他にさらにMSTPプロトコルの範囲外の任意の情報を含む情報、のいずれかからなっていることを特徴とする請求項2に記載のネットワーク装置。
【請求項4】
前記プロトコルデータBPDUに含まれる前記同期機能表示情報は、通常のMSTPプロトコルにおいては無視される領域を利用して設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のネットワーク装置。
【請求項5】
前記プロトコルデータBPDUに含まれる前記リージョン識別情報は、MSTPプロトコルで使用されるリージョン名、または、リージョン名とリビジョン番号、または、MSTPプロトコルの範囲内か否かに関わらず、同一リージョンに属すると看做すことが可能となる任意の情報、のいずれかをあらかじめ定義して用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のネットワーク装置。
【請求項6】
各ネットワーク装置との同期動作が終了し、MSTPプロトコルに準拠したマルチプルスパニングツリーが構築された以降、あらかじめ定めた一定時間が経過するまで、構築されたマルチプルスパニングツリーの状態が変化しない場合、前記プロトコルデータBPDUに含まれている前記同期機能表示情報を無効な状態に設定し、リージョンの同期化動作を無効にし、通常のMSTPが有する経路切替およびスパニングツリー再構築時間を維持することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のネットワーク装置。
【請求項7】
VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するVLAN用ネットワークシステムにおいて、ネットワークを構成するネットワーク装置として、請求項1ないし6のいずれかに記載のネットワーク装置を用いることを特徴とするVLAN用ネットワークシステム。
【請求項8】
VLAN(Virtual Local Area Network)を使用するネットワークシステムを構成するためのネットワーク装置においてIEEE規格の通常のMSTP(Multiple Spanning Tree Protocol)プロトコルに準拠したプロトコルデータBPDU(Bridge Protocol Data Unit)を用いて、対向ネットワーク装置との間でリージョンの同期化を行うマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法であって、前記プロトコルデータBPDUにリージョンの同期化を有効とするか否かを示す同期機能表示情報と同一リージョンと看做すことが可能か否かを識別するためのリージョン識別情報とを少なくとも含んだ情報を前記対向ネットワーク装置との間で送受信することを特徴とするマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法。
【請求項9】
前記対向ネットワーク装置からの前記プロトコルデータBPDUを受信した際に、該プロトコルデータBPDUに含まれている前記同期機能表示情報が有効な状態に設定されており、かつ、前記リージョン識別情報が自ネットワーク装置と同一リージョンと看做すことが可能であることを示していた場合であって、かつ、自ネットワーク装置が前記対向ネットワーク装置よりも優先度が高い上位装置であった場合には、自ネットワーク装置にあらかじめ設定されている設定情報から自ネットワーク装置のリージョンを特定するために必要とするリージョン特定情報を取り出し、該リージョン特定情報を含むプロトコルデータBPDUを、同期化を要求する同期メッセージとして前記対向ネットワーク装置に対して送信し、前記同期メッセージを受信した下位装置側の前記対向ネットワーク装置は、該同期メッセージに含まれている前記リージョン特定情報に基づいて、当該下位装置側のリージョンが上位装置側と同一リージョンとなるように当該下位装置側の前記リージョン特定情報を生成して先に設定されていた設定情報を更新することを特徴とする請求項8に記載のマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載のマルチプルスパニングツリープロトコル管理方法を、ネットワーク装置に搭載したコンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とするマルチプルスパニングツリープロトコル管理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−110522(P2013−110522A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253001(P2011−253001)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】