説明

ネットワーク評価システム及びネットワーク評価装置

【課題】公衆ネットワークや企業内ネットワークを想定した模擬的なネットワーク環境において、ネットワーク中継機器の品質を確かめるための試験を行う。
【解決手段】ネットワーク評価装置1は、試験対象となる試験対象機器6,8,10,12,14,16に対してネットワークを構築させる。また、模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、構築されたネットワークを介してデータ通信を開始する。ネットワーク評価装置1は、模擬サーバ2及び模擬クライアント4がデータ通信を行う過程で、試験対象機器14に対して擬似障害を発生させたり、それを復旧させたりする。ネットワーク評価装置1は、障害の発生前後、及び復旧後における、試験対象機器6,8,10,12,14,16の通信状態、模擬サーバ2及び模擬クライアント4間の通信状態を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク評価システム及びネットワーク評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ルータやスイッチングハブ等のネットワーク中継機器の製造過程において、試験端末を用いてネットワーク中継機器の品質を確かめるための試験を行う先行技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この先行技術では、試験対象となる1台のネットワーク中継機器を試験端末に接続し、擬似障害の発生時にプロトコルに従ってネットワーク中継機器がデータの中継方向を切り替えられるか否かを確認する試験を行うことで、ネットワーク中継機器によるデータの中継処理が正確に実行されているか否かを評価する。
【0003】
上記の先行技術によれば、作業者が試験端末を操作することなく試験端末が自動的に各種の試験を実行するため、それだけ製造時の工数を削減することができると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−289403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した先行技術は、公衆ネットワークや企業内ネットワーク等にネットワーク中継装置が配置された状況を想定していないため、実際の使用環境で生じる不具合を試験する用途には適していない。すなわち、ネットワーク中継機器は、公衆ネットワークや企業内ネットワーク等の実環境において、他のネットワーク中継機器に接続された状態でクライアント端末やサーバから送信されたデータの中継を行っている。またネットワーク中継機器では、データの中継時に様々なプロトコルが同時に実行されている。このとき、ネットワーク中継機器には、各プロトコルごとの複雑なデータ処理の影響によってデータの中継に不具合が生じる可能性があるため、先行技術の試験では、実環境で生じる不具合を検出することができないという問題がある。
【0006】
また製造過程において、実環境を想定した擬似ネットワークを構築して試験を実施する場合、一度の試験で全てのネットワーク中継機器の品質を確かめるには、試験対象となるネットワーク中継機器の台数に合わせて試験端末を用意する必要があり、その分コストが余計に掛かってしまう。一方、1台の試験端末を用いて全てのネットワーク中継機器の品質を確かめるには、試験対象となるネットワーク中継機器の数だけ試験を行う必要があるため、台数に応じて試験工数が増大してしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、公衆ネットワークや企業内ネットワークを想定した模擬的なネットワーク環境において、効率的に試験対象となる複数のネットワーク中継機器の品質を確かめるための試験を行うことができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明のネットワーク評価システムは、ネットワーク内に配置され、データの中継に関する複数のプロトコルを実装した複数の試験対象機器と、ネットワークに接続され、ネットワークを介してデータ通信を行う少なくとも2つの模擬測定器と、各試験対象機器及び各模擬測定器の全てに対して接続されたネットワーク評価装置とを備え、ネットワーク評価装置は、各試験対象機器に対して各プロトコルに関する初期情報を通知することにより、ネットワーク内に初期情報に基づくデータの通信経路及び代替の冗長化経路を形成させた状態で各模擬測定器によるデータ通信を開始させる初期情報設定手段と、各模擬測定器がネットワークを介して相互にデータ通信を行う過程で、いずれかの試験対象機器に擬似障害を発生させる障害発生手段と、障害発生手段によりいずれかの試験対象機器に擬似障害が発生した場合、他の試験対象機器がプロトコルに従って通信経路を冗長化経路へ切り替えたことに伴い、各模擬測定器によるネットワークを介したデータ通信が可能か否かを判定する判定手段とを有する。
【0009】
また、上記の課題を解決するために本発明のネットワーク評価装置は、ネットワーク内に配置され、データ中継に関する複数のプロトコルを実装した複数の試験対象機器と、ネットワークを介してデータ通信を相互に行う少なくとも2つの模擬測定器とに接続され、試験対象機器の品質を試験するネットワーク評価装置あって、各試験対象機器に対して、各プロトコルに関する初期情報を通知し、初期情報に基づいて、ネットワーク内にデータの通信経路及び代替の冗長化経路を形成させて、各模擬測定器によるネットワークを介したデータ通信を開始させる初期情報設定部と、各模擬測定器がネットワークを介して相互にデータ通信を行う過程で、いずれかの試験対象機器に擬似障害を発生させる障害発生部と、いずれかの試験対象機器に擬似障害が発生した場合、他の試験対象機器がプロトコルに従って通信経路を冗長化経路へ切り替えたことに伴い、各模擬測定器によるネットワークを介したデータ通信が可能か否かを判定する判定部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明のネットワーク評価システム及びネットワーク評価装置よれば、公衆ネットワークや企業内ネットワークを想定した模擬的なネットワーク環境において、試験対象となる複数のネットワーク中継機器の品質を効率的に試験することができる。また、一度の試験で複数のネットワーク中継機器に対してその品質を評価することができるため、ネットワーク中継機器の製造過程における作業工数を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態におけるネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】ネットワーク評価装置の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】試験対象機器の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】ネットワーク評価装置により実行される試験の手順を示すフローチャートである。
【図5】ネットワーク評価装置から初期情報が通知された際のネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【図6】ネットワーク評価装置から擬似障害を発生させる旨が通知された場合におけるネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【図7】ネットワーク評価装置により擬似障害を復旧させる旨を通知した後のネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態のネットワーク評価システムは、例えば、ネットワーク中継装置の製造過程におけるネットワーク中継機器の品質を確かめるための試験に用いることができる。このネットワーク評価システムでは、試験対象となる複数のネットワーク中継装置(試験対象機器)を用いてネットワークを構築し、このネットワークに対して試験用の模擬サーバや模擬クライアントを接続することで、公衆ネットワークや企業内ネットワークを想定した模擬的なネットワーク環境を構築している。
【0013】
図1は、本実施形態におけるネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。ネットワーク評価システムは、ネットワーク評価装置1、模擬測定器としての模擬サーバ2及び模擬クライアント4、及び試験対象機器6,8,10,12,14,16により構成されている。
【0014】
〔ネットワーク評価システムの概要〕
ネットワーク評価装置1には、模擬サーバ2、模擬クライアント4、及び試験対象機器6,8,10,12,14,16が接続されている。模擬サーバ2には、試験対象機器6,8が接続されている。また、模擬クライアント4には、試験対象機器10,12が接続されている。
【0015】
試験対象機器14及び試験対象機器16は相互に接続されている。また、試験対象機器14,16には、それぞれ試験対象機器6,8,10,12が接続されている。
【0016】
ネットワーク評価装置1は、試験対象機器6,8,10,12,14,16に対して試験を実施したり、模擬サーバ2及び模擬クライアント4の通信状態を確認したりする。またネットワーク評価装置1は、結果ファイル18を備えており、試験結果を結果ファイル18に出力する。なお、結果ファイル18は、外部の記憶装置であっても、ネットワーク評価装置1に内蔵されていてもよい。また、ネットワーク評価装置1の構成、及びネットワーク評価装置1により実施される試験対象機器の品質を確認する試験については別の図面を用いてさらに詳しく後述する。
【0017】
模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、それぞれ一般に周知のサーバやクライアント端末であり、模擬サーバ2は、模擬クライアント4からの要求に対して所定の情報を提供する。本実施形態における模擬サーバ2として、例えばDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバやマルチキャストサーバを用いることができる。
【0018】
試験対象機器6,8,10,12,14,16は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルのレイヤ2及びレイヤ3等のデータ転送機能を備えたスイッチングハブやルータ等のネットワーク中継装置である。試験対象機器6,8,10,12,14,16には、レイヤ2に基づくSTP(Spanning Tree Protocol)や、RSTP(Rapid STP)等の冗長化プロトコル、レイヤ3に基づくRIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open Shortest Path First)等のルーティングプロトコルや、リンクアグリゲーションプロトコル等、データ中継に関する複数のプロトコルが実装されている。本実施形態において試験対象機器10,12,14,16は、リンクアグリゲーションプロトコルに基づいてそれぞれ試験対象機器10,12,14,16を接続するポート(図示しない)に、リンクアグリゲーショングループが設定されている。
【0019】
本実施形態において試験対象機器6,8,14,16は、例えばレイヤ3に基づくパケットの中継を行う。また、試験対象機器10,12は、レイヤ2に基づくフレームの中継を行う。
【0020】
〔ネットワーク評価装置の構成〕
図2は、ネットワーク評価装置1の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。ネットワーク評価装置1は、結果ファイル18、送受信部20、評価試験制御部22、設定部24、ステータス確認部26、通信確認部28、擬似障害部30、及び結果出力部32
を備えている。
【0021】
送受信部20は、図示しない複数のポートを備えており、各ポートには、図1中に示す模擬サーバ2、模擬クライアント4、及び各試験対象機器6,8,10,12,14,16が接続されている。送受信部20は、模擬サーバ2、模擬クライアント4、及び各試験対象機器6,8,10,12,14,16から送信されたデータを評価試験制御部22へ転送したり、評価試験制御部22から転送されたデータを模擬サーバ2、模擬クライアント4、及び各試験対象機器6,8,10,12,14,16へ転送したりする。
【0022】
評価試験制御部22は、初期情報設定部(初期情報設定手段)としての設定部24、ステータス確認部26、判定部(判定手段)としての通信確認部28、障害発生部(障害発生手段)及び障害復旧部(障害復旧手段)としての擬似障害部30、及び結果出力部32で実行される動作を制御する。
【0023】
〔初期情報設定部(初期情報設定手段)〕
設定部24には、試験対象機器6,8,10,12,14,16に実装された各プロトコルや、模擬サーバ2及び模擬クライアント4に実装されたプロトコルに関する初期情報を格納されている。評価試験制御部22は、試験を開始する前に予め設定部24に格納された初期情報を各試験対象機器6,8,10,12,14,16、模擬サーバ2及び模擬クライアント4へ送信する。
【0024】
例えば、初期情報には、IP(Internet Protocol)アドレスや、MACアドレス等のアドレス情報が含まれる。試験対象機器6,8,10,12,14,16、模擬サーバ2、及び模擬クライアント4は、受信した初期情報に基づいてアドレス情報を設定する。また、試験対象機器6,8,10,12,14,16は、アドレス情報を設定すると冗長化プロトコルや、ルーティングプロトコル、リンクアグリゲーションプロトコルに従って、ネットワークを構築する。模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、構築されたネットワークを介してデータ通信を開始する。
【0025】
ステータス確認部26は、初期情報に基づいて試験対象機器6,8,10,12,14,16に実装されたプロトコルが正常に動作しているか否かを確認する。なお、プロトコルが正常に動作しているか否かを確認する手法については、別の図面を用いてさらに詳しく後述する。
【0026】
〔判定部(判定手段)〕
通信確認部28は、構築されたネットワークを介して模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。なお、データ通信が可能か否かを確認する手法については、別の図面を用いてさらに詳しく後述する。
【0027】
〔障害発生部(障害発生手段)及び障害復旧部(障害復旧手段)〕
また、擬似障害部30は、いずれかの試験対象機器に対して、擬似障害を発生させたり、発生した擬似障害を復旧させたりする旨の信号を通知する。
【0028】
結果出力部32は、ステータス確認部26及び通信確認部28で確認した結果を結果ファイル18に出力する。
【0029】
〔試験対象機器の構成〕
図3は、試験対象機器6,8,10,12,14,16の機能的な構成を概略的に示すブロック図である。試験対象機器6,8,10,12,14,16は、送受信部34、プロトコル制御部36、IPアドレス割り当て部38、トラフィック制御部40、IPパケットルーティング部42、レイヤ2冗長化部44、ゲートウェイ冗長化部46、及びループ検出部48を備えている。
【0030】
送受信部34は、図示しない複数のポートを備えており、各ポートには、図1中に示す模擬サーバ2及び模擬クライアント4や、ネットワーク評価装置1及び他の試験対象機器6,8,10,12,14,16が接続されている。送受信部34は、模擬サーバ2、模擬クライアント4や、ネットワーク評価装置1、及び各試験対象機器6,8,10,12,14,16から受信したデータをプロトコル制御部36へ転送したり、プロトコル制御部36から転送されたデータを模擬サーバ2及び模擬クライアント4や、ネットワーク評価装置1、及び各試験対象機器6,8,10,12,14,16へ転送したりする。
【0031】
IPアドレス割り当て部38、トラフィック制御部40、IPパケットルーティング部42、レイヤ2冗長化部44、ゲートウェイ冗長化部46、及びループ検出部48には、データ中継に関するプロトコルがそれぞれ実装されている。またこれらは、ネットワーク評価装置1により送信された初期情報を設定し、それぞれに実装されたプロトコルを実行する。
【0032】
プロトコル制御部36は、IPアドレス割り当て部38、トラフィック制御部40、IPパケットルーティング部42、レイヤ2冗長化部44、ゲートウェイ冗長化部46、及びループ検出部48を制御している。
【0033】
IPアドレス割り当て部38は、例えば、模擬クライアント4に対してIPアドレスを割り当てたり、DHCPサーバを用いた模擬サーバ2により転送されたIPアドレスを模擬クライアント4へ転送したりする。
【0034】
トラフィック制御部40は、例えば、マルチキャストサーバを用いた模擬サーバ2により送信されたマルチキャストフレームのトラフィック量を測定したり、制限したりする。
【0035】
IPパケットルーティング部42は、ルーティングプロトコルに基づいてルーティングテーブルを作成したり、作成したテーブルに基づいて受信したパケット形式のデータを中継したりする。
【0036】
レイヤ2冗長化部44は、冗長化プロトコルに基づいてフレーム形式のデータを中継する。また、ゲートウェイ冗長化部46は、例えばリンクアグリゲーションプロトコルに基づいて送受信部34の図示しない複数のポートに対してリンクアグリゲーショングループを設定する。
【0037】
ループ検出部48は、冗長化プロトコルに基づいて構成されたネットワーク内でフレーム形式のデータが永遠に転送され続けてしまうループを検出する。
【0038】
図4は、ネットワーク評価装置1により実行される試験の手順を示すフローチャートである。以下、手順に沿って説明する。
【0039】
ステップS100:ネットワーク評価装置1は、初期情報を模擬サーバ2、模擬クライアント4及び、試験対象機器6,8,10,12,14,16へ送信する。なお、初期情報を受信した試験対象機器6,8,10,12,14,16は、初期情報を設定してそれぞれに実装されたルーティングプロトコル、冗長化プロトコル及びリンクアグリゲーションプロトコルを実行し、データの通信経路とその代替用の冗長化経路を備えたネットワークを構築する。また、模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、初期情報を設定して、構築されたネットワークを介してデータ通信を開始する。
【0040】
ステップS102:ネットワーク評価装置1のステータス確認部26は、初期情報に基づいて試験対象機器6,8,10,12,14,16に実装されたプロトコルが正常に動作しているか否かを確認する。
【0041】
ステップS104:ネットワーク評価装置1の通信確認部28は、試験対象機器6,8,10,12,14,16により構築されたネットワークを介して模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。
【0042】
ステップS106:ネットワーク評価装置1の擬似障害部30は、例えば図1中に示す試験対象機器14に対して、擬似障害を発生させる旨の信号を送信する。試験対象機器14は、この信号を受信すると、例えば電源を落として、データの中継を中止する。
【0043】
ステップS108:ネットワーク評価装置1は、擬似障害が発生した後にステータス確認部26及び通信確認部28による確認が実行されていない場合(No)、次のステップS110へ進む。一方、擬似障害が発生した後にステータス確認部26及び通信確認部28による確認が実行された場合(Yes)、ネットワーク評価装置1の擬似障害部30は、擬似障害を発生させた試験対象機器14に対して、擬似障害を復旧させる旨の信号を送信する(ステップS112)。このとき各試験対象機器6,8,10,12,14,16は、試験対象機器14が電源を起動させて擬似障害から復旧した場合、プロトコルに従って通信経路を冗長化経路から元の通信経路へ戻す。次に、ネットワーク評価装置1は、ステップS110へ進む。
【0044】
ステップS110:ネットワーク評価装置1のステータス確認部26は、試験対象機器6,8,10,12,14,16に実装されたプロトコルが正常に動作しているか否かを確認する。
【0045】
ステップS114:ネットワーク評価装置1の通信確認部28は、ネットワーク内のデータの通信経路が冗長化経路へ切り替わっても、模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。
【0046】
ステップS116:ネットワーク評価装置1の評価試験制御部22は、ステップS102、ステップS104、ステップS110、及びステップS114において、ステータス確認部26及び通信確認部28で確認した情報を結果出力部32から結果ファイル18へ出力する。
【0047】
ステップS118:ネットワーク評価装置1は、障害の復旧後において、ステータス確認部26及び通信確認部28による確認を実行していない場合(No)、ステップS108へ戻る。一方、障害の復旧後において、ステータス確認部26及び通信確認部28による確認を実行した場合(Yes)、この処理を終了する。
【0048】
〔初期設定〕
図5は、ネットワーク評価装置1から初期情報が通知された際のネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。なお、図5中に実線で示す矢印は、初期情報が転送される方向を示している。また点線で示す矢印は、データが転送される方向を示している。
【0049】
ネットワーク評価装置1は、模擬サーバ2、模擬クライアント4、及び試験対象機器6,8,10,12,14,16に対して、初期情報を送信する。
【0050】
試験対象機器6,8,10,12,14,16は、初期情報を受信すると、各プロトコルに従ってネットワークを構築する。具体的に、試験対象機器6,8,14,16は、図3中に示すIPパケットルーティング部42により、ルーティングプロトコルに従って、パケット形式のデータを中継する。試験対象機器10,12は、図3中に示すレイヤ2冗長化部44により、冗長化プロトコルに従ってフレーム形式のデータを中継する。
【0051】
このとき、模擬サーバ2及び模擬クライアント4の間には、試験対象機器6,14,10を経由する通信経路と、試験対象機器8,16,12を経由する通信経路とが形成されている。また、例えば試験対象機器6,16,10を経由する通信経路が、試験対象機器8,16,12を経由する通信経路の代替用の冗長化経路として形成されている。
【0052】
試験対象機器10,12,14,16はまた、ゲートウェイ冗長化部46により、送受信部34の複数のポートに対してリンクアグリゲーショングループを設定する。
【0053】
模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、ネットワークが構築されると初期情報に基づいてデータ通信を開始する。
【0054】
ネットワーク評価装置1は、試験対象機器6,8,10,12,14,16へアクセスし、これらに設定された初期情報から冗長化プロトコルやルーティングプロトコルに従ってデータの通信経路及び冗長化経路が構成されているか否かを確認する。
【0055】
またネットワーク評価装置1は、試験対象機器6,8,10,12,14,16により構築されたネットワークを介して模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。具体的に、ネットワーク評価装置1は、DHCPサーバを模擬サーバ2として用いる場合、予め初期情報に基づくIPアドレスが模擬クライアント4に通知されているか否かを確認する。また、マルチキャストサーバを模擬サーバ2として用いる場合、ネットワーク評価装置1の通信確認部28は、模擬クライアント4へアクセスしてマルチキャストフレームの受信を許可、若しくは、拒否する設定がされているか否かを確認する。
【0056】
〔擬似障害の発生〕
図6は、ネットワーク評価装置1から擬似障害を発生させる旨が通知された場合におけるネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【0057】
図5中に示す試験対象機器6,8,10,12,14,16によりネットワークが構築され、模擬サーバ2及び模擬クライアント4が相互にデータ通信を行うことが可能となった場合、ネットワーク評価装置1は、試験対象機器14に対して擬似障害を発生させる旨の信号を通知する。試験対象機器14は、この信号を受信すると、例えば、電源を落としてデータの中継を中止する。
【0058】
各試験対象機器6,8,10,12,16は、試験対象機器14に発生した擬似的な障害を検知すると、ルーティングプロトコルや冗長化プロトコル、リンクアグリゲーションプロトコルに従って、データの通信経路を試験対象機器6,14,10を経由する通信経路から試験対象機器6,16,10を経由する冗長化経路へ切り替える。一方、各試験対象機器6,8,10,12,16は、試験対象機器8,16,12を経由する通信経路上には障害が発生していないため、ここでの通信経路の切り替えは行われない。
【0059】
模擬サーバ2及び模擬クライアント4は、試験対象機器6,14,10を経由する冗長化経路へ切り替わるまでの間、上記の試験対象機器6,14,10を経由していたデータ通信を行うことができないが、切り替えが完了すると再びデータ通信を行うことができる。
【0060】
ネットワーク評価装置1は、試験対象機器6,8,10,12,14,16へアクセスし、これらに設定された情報から冗長化プロトコルやルーティングプロトコルに従ってデータの通信経路が冗長化経路へ切り替わったか否かを確認する。また、試験対象機器8,16,12を経由する通信経路に切り替わりが発生しているか否かを確認する。
【0061】
ネットワーク評価装置1はまた、模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。具体的には、DHCPサーバを模擬サーバ2として用いる場合、予め初期情報に基づくIPアドレスが障害の発生後も模擬サーバ2に設定されているか否かを確認する。また、マルチキャストサーバを模擬サーバ2として用いる場合、ネットワーク評価装置1の通信確認部28は、模擬クライアント4へアクセスして障害復旧後も初期情報に基づいてマルチキャストフレームの受信を許可、若しくは、拒否する設定がされているか否かを確認する。
【0062】
〔擬似障害の復旧〕
図7は、ネットワーク評価装置1により擬似障害を復旧させる旨を通知した後のネットワーク評価システムの構成を概略的に示す図である。
【0063】
ネットワーク評価装置1は、擬似障害が発生している試験対象機器14に対して、擬似障害を復旧させる旨の信号を送信する。試験対象機器14は、この信号を受信すると電源を起動してデータ中継が可能な状態に復帰する。
【0064】
試験対象機器6,8,10,12,14,16は、ルーティングプロトコルや冗長化プロトコル、リンクアグリゲーションプロトコルに従って、通信経路を冗長化経路から元の通信経路へ戻す。具体的に、通信経路は、試験対象機器6,16,10を経由する冗長化経路から試験対象機器6,14,10を経由する元の通信経路へ切り替わる。
【0065】
ネットワーク評価装置1は、試験対象機器6,8,10,12,14,16へアクセスし、これらに設定された情報から冗長化プロトコルやルーティングプロトコルに従ってデータの通信経路が試験対象機器6,16,10を経由する冗長化経路から試験対象機器6,14,10を経由する元の通信経路へ切り替わったか否かを確認する。
【0066】
またネットワーク評価装置1は、模擬サーバ2及び模擬クライアント4によるデータ通信が可能か否かを確認する。具体的に、ネットワーク評価装置1は、DHCPサーバを模擬サーバ2として用いる場合、予め初期情報に基づくIPアドレスが模擬サーバ2に設定されているか否かを確認する。また、マルチキャストサーバを模擬サーバ2として用いる場合、ネットワーク評価装置1の通信確認部28は、模擬クライアント4へアクセスしてマルチキャストフレームの受信を許可、若しくは、拒否する設定がされているか否かを確認する。
【0067】
ネットワーク評価装置1は、障害発生前、障害発生時、及び復旧時に確認した試験対象機器6,8,10,12,14,16におけるプロトコルの実行状況や、模擬サーバ2及び模擬クライアント4間におけるデータ通信の状況等を確認した情報を結果ファイル18へ出力する。また、結果ファイル18に入力された情報は、例えば、作業者により上記の結果ファイル18に登録された情報に基づいて、各試験対象機器6,8,10,12,14,16の品質が評価される。
【0068】
このように、本実施形態のネットワーク評価システムでは、試験対象となるネットワーク中継機器を用いてネットワークを構築し、さらにこのネットワークに試験用の模擬サーバ2や模擬クライアント4を接続することで、公衆ネットワークや企業内ネットワーク等の実環境を想定した模擬的なネットワーク環境を構築することができる。また、本実施形態のネットワーク評価システムでは、模擬的なネットワーク環境においてネットワーク中継機器の品質を試験することができる。このため作業者は、実環境において様々な通信方式に基づいて実行されるクライアント端末及びサーバ間のデータ通信に対して、各ネットワーク中継機器の品質を確かめることができる。
【0069】
また、本実施形態のネットワーク評価システムでは、一度の試験で複数のネットワーク中継機器に対してその品質を確かめる試験を行うことができるため、ネットワーク中継機器の製造過程における作業工数の大幅な削減に寄与することができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく種々に変形して実施することができる。一実施形態では模擬サーバ2及び模擬クライアント4を用いているが、例えば、模擬模擬サーバ2の代わりに模擬クライアント4を用いてもよい。また、複数の模擬クライアント4をネットワークに接続してもよい。
【0071】
また、ネットワーク評価装置1の設定部26は、試験対象機器6,8,10,12,14に実装された複数のプロトコルのうち、試験に必要なプロトコルを組み合わせた設定情報を初期情報として通知してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 ネットワーク評価装置
2 模擬サーバ(模擬測定器)
4 模擬クライアント(模擬測定器)
6,8,10,12,14,16 試験対象機器
24 設定部(初期情報設定部(初期情報設定手段))
28 通信確認部(判定部(判定手段))
30 擬似障害部(障害発生部(障害発生手段),障害復旧部(障害復旧手段))

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク内に配置され、データの中継に関する複数のプロトコルを実装した複数の試験対象機器と、
前記ネットワークに接続され、前記ネットワークを介してデータ通信を行う少なくとも2つの模擬測定器と、
前記各試験対象機器及び前記各模擬測定器の全てに対して接続されたネットワーク評価装置とを備え、
前記ネットワーク評価装置は、
前記各試験対象機器に対して前記各プロトコルに関する初期情報を通知することにより、前記ネットワーク内に前記初期情報に基づくデータの通信経路及び代替の冗長化経路を形成させた状態で前記各模擬測定器によるデータ通信を開始させる初期情報設定手段と、
前記各模擬測定器が前記ネットワークを介して相互にデータ通信を行う過程で、いずれかの前記試験対象機器に擬似障害を発生させる障害発生手段と、
前記障害発生手段によりいずれかの前記試験対象機器に擬似障害が発生した場合、他の前記試験対象機器が前記プロトコルに従って前記通信経路を前記冗長化経路へ切り替えたことに伴い、前記各模擬測定器による前記ネットワークを介した前記データ通信が可能か否かを判定する判定手段と
を有するネットワーク評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワーク評価システムにおいて、
前記ネットワーク評価装置は、
前記障害発生手段により擬似障害が発生した前記試験対象機器に対して、擬似障害を復旧させる障害復旧手段をさらに有し、
前記判定手段は、
前記試験対象機器に発生していた擬似障害が復旧した場合、前記各試験対象機器が前記プロトコルに従って前記冗長化経路から前記通信経路へ切り戻したこと伴い、前記各模擬測定器による前記ネットワークを介した前記データ通信が可能か否かを判定することを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のネットワーク評価システムにおいて、
前記初期情報通知手段は、
前記複数のプロトコルのうち、個々の前記プロトコルに関する初期情報を組み合わせて通知することを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のネットワーク評価システムにおいて、
前記判定手段は、
前記各模擬測定器による前記データ通信として、一方の前記模擬測定器から他方の前記模擬測定器に対して所定のアドレス情報を通知している場合、他方の前記模擬測定器に前記アドレス情報が設定されているか否かを確認することを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のネットワーク評価システムにおいて、
前記判定手段は、
前記各模擬測定器による前記データ通信として、マルチキャスト通信を行っている場合、前記各前記模擬測定器による前記マルチキャスト通信が可能か否かを判定することを特徴とするネットワーク評価システム。
【請求項6】
ネットワーク内に配置され、データ中継に関する複数のプロトコルを実装した複数の試験対象機器と、前記ネットワークを介してデータ通信を相互に行う少なくとも2つの模擬測定器とに接続され、前記試験対象機器の品質を試験するネットワーク評価装置あって、
前記各試験対象機器に対して、前記各プロトコルに関する初期情報を通知し、前記初期情報に基づいて、前記ネットワーク内にデータの通信経路及び代替の冗長化経路を形成させて、前記各模擬測定器による前記ネットワークを介した前記データ通信を開始させる初期情報設定部と、
前記各模擬測定器が前記ネットワークを介して相互に前記データ通信を行う過程で、いずれかの前記試験対象機器に擬似障害を発生させる障害発生部と、
いずれかの前記試験対象機器に擬似障害が発生した場合、他の前記試験対象機器が前記プロトコルに従って前記通信経路を前記冗長化経路へ切り替えたことに伴い、前記各模擬測定器による前記ネットワークを介した前記データ通信が可能か否かを判定する判定部と
を備えたネットワーク評価装置。
【請求項7】
請求項6に記載のネットワーク評価装置において、
擬似障害が発生した前記試験対象機器に対して、擬似障害を復旧させる障害復旧部をさらに備え、
前記判定部は、
前記試験対象機器に発生していた擬似障害が復旧した場合、前記各試験対象機器が前記プロトコルに従って前記冗長化経路から前記通信経路へ切り戻したこと伴い、前記各模擬測定器による前記ネットワークを介した前記データ通信が可能か否かを判定することを特徴とするネットワーク評価装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のネットワーク評価装置において、
前記初期情報設定部は、
前記複数のプロトコルのうち、個々の前記プロトコルに関する初期情報を組み合わせて通知することを特徴とするネットワーク評価装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれかに記載のネットワーク評価装置において、
前記判定部は、
前記各模擬測定器による前記データ通信として、一方の前記模擬測定器から他方の前記模擬測定器に対して所定のアドレス情報を通知している場合、他方の前記模擬測定器に前記アドレス情報が設定されているか否かを確認することを特徴とするネットワーク評価装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれかに記載のネットワーク評価装置において、
前記判定部は、
前記各模擬測定器による前記データ通信として、マルチキャスト通信を行っている場合、前記各前記模擬測定器による前記マルチキャスト通信が可能か否かを判定することを特徴とするネットワーク評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119954(P2012−119954A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268120(P2010−268120)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】