説明

ネットワーク評価方法、および、ネットワーク評価システム

【課題】パケットネットワークの信頼性評価を高精度で実現すること。
【解決手段】MPLS網9の入側エッジ装置1が、MPLS網9に流入したユーザ信号に対して、ユーザ信号の伝送誤りを検出するための誤り検出符号を複数種類分生成して、ユーザ信号にカプセル化したMPLSパケットであるユーザパケットを生成して出側エッジ装置3へと送信し、MPLS網9の出側エッジ装置3が、受信したMPLSパケットをデカプセル化して取り出した複数の誤り検出符号から複数種類それぞれの誤り検出回数を算出し、その算出した誤り検出回数と、受信したMPLSパケットのデータ量との比率に応じて、MPLS網9のエラーレートを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク評価方法、および、ネットワーク評価システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MPLS(Multi Protocol Label Switching)パケットネットワークのような、離散的にパケットが送信されるネットワークは今後も広がり続け、様々なサービスが考案、提供されている。MPLSで使用されるネットワークとして、品質面で優れたSDH(Synchronous Digital Hierarchy)/SONET(Synchronous Optical Network)や、低価格でサービスを提供できるイーサネット(登録商標)などが採用されている。さらに、SDH/SONETとイーサネットとが併用されるMPLSネットワークも存在し、異なる規格の信号に対して1つのネットワークで一元的に管理することが可能となる。
【0003】
パケットネットワークの保守機能として、そのパケットネットワークを通過するパケットの欠落数を検出することが、行われている。
【0004】
例えば、パケットネットワークの保守機能として、Ether OAM(Operation、 administration and maintenance)が勧告化されている(非特許文献1参照)。Ether OAMのLM(Loss Measurement)機能では、パケット送信装置でCCM(Continuity Check Message)フレーム内に送信パケット数を格納して送信し、パケット受信装置では受信したパケット数と受信したCCMフレーム内に格納された送信パケット数を比較し、パケット欠落数を監視する。
【0005】
また、特許文献1に記載された伝送路状態の診断方法では、ユーザ端末間のユーザトラフィックとして構成されるユーザパケットだけでなく、そのユーザパケットが流れていない空白期間に診断用のダミーパケットを流し続けることにより、これら2種類のパケットの合計送信数と合計受信数との差分から、パケット欠落数を監視する。
特許文献2でも、特許文献1と同様に、使用していない帯域にテストフレームを送信して、エラーレートの算出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−114380号公報
【特許文献2】特開2010−16654号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ITU-T Y.1731: Requirements for OAM functions in Ethernet-based networks and Ethernet services
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術では、パケットの欠落数からパケットネットワークの信頼性を評価するので、その評価精度が充分とは言えない。パケットネットワークの入口から出口まで流れるパケットは、そのパケットネットワーク上での通信品質の劣化などにより、損傷されることも多い。ここで、評価精度が充分ではない主要な理由として、パケットの損傷度合いが考慮されていないことが挙げられる。
【0009】
例えば、パケットの欠落とは、パケットが100%無くなることであるが、パケットの損傷度合いが1%であっても、99%であっても同じ「1回のパケットの欠落」とカウントするだけでは、パケットの損傷度合いの要因となるパケットネットワーク上での通信品質が反映されていない。
【0010】
また、パケットの損傷が発生したからといって、誤り訂正符号などにより、損傷されたパケットであっても経路上のルータ装置により修復されてしまう場合がある。この場合でも、「1回のパケットの通過」とカウントするだけでは、パケットの損傷度合いがパケットネットワークの信頼性評価には反映されていない。
【0011】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、パケットネットワークの信頼性評価を高精度で実現することを、主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明は、入側エッジ装置から出側エッジ装置まで検査用パケットを転送する評価対象網の信頼性を評価するネットワーク評価方法であって、
前記入側エッジ装置が、前記評価対象網に流入したユーザ信号に対して、前記ユーザ信号の伝送誤りを検出するための誤り検出符号を複数種類分生成して、それぞれ生成された誤り検出符号のフィールドと、前記評価対象網内の転送に使用される宛先を示すフィールドとを、前記ユーザ信号にカプセル化した前記検査用パケットであるユーザパケットを生成して前記出側エッジ装置へと送信し、
前記出側エッジ装置が、受信した前記検査用パケットをデカプセル化して取り出した複数の誤り検出符号それぞれについて、デカプセル化して取り出した前記ユーザ信号を対象とした誤り検出演算により、前記複数種類それぞれの誤り検出回数を算出し、その算出した誤り検出回数と、受信した前記検査用パケットのデータ量との比率に応じて、前記評価対象網のエラーレートを算出することを特徴とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パケットネットワークの信頼性評価を高精度で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に関する通信システムを示す構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に関する通信システムを流れるパケットを示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に関するダミーパケットの作成工程を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に関する通信システムの各エッジ装置を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に関する入側エッジ装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に関する出側エッジ装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、通信システムを示す構成図である。通信システムは、送信側クライアント装置7と、受信側クライアント装置8とを接続するMPLS網9(評価対象網)として構成される。このMPLS網9内部では、送信側クライアント装置7を収容する入側エッジ装置1と、受信側クライアント装置8を収容する出側エッジ装置3と、クライアント装置を収容しないコア装置2とがそれぞれ接続されている。
なお、通信システムを構成する各装置は、CPU(Central Processing Unit)とメモリとハードディスク(記憶手段)と通信インタフェースを有するコンピュータとして構成され、このコンピュータは、CPUが、メモリ上に読み込んだプログラムを実行することにより、各処理部を動作させる。
【0017】
MPLS網9は、時計回りのリング状に構成されており(入側エッジ装置1→上側のコア装置2→出側エッジ装置3→下側のコア装置2→入側エッジ装置1→…)、障害発生時に伝送路を切り替えるなどの冗長性も持ち合わせている。例えば、ユーザパケットは、上側のコア装置2を経由して出側エッジ装置3へ到達しているが、上側のコア装置2やそのコア装置2に接続するリンクに故障などの異常があれば、下側のコア装置2を経由する区間を、ユーザパケットの伝送路として選択することもできる。
なお、MPLS網9の代わりに、イーサネット網や、そのほかの規格、勧告または方式に沿った網として、クライアント装置間を接続する網を形成してもよい。
【0018】
通信システムには、離散的に信号を伝送するためのパケットとして、ユーザパケットとダミーパケットとが流れる。
ユーザパケットは、クライアント装置でやりとりされるユーザトラフィックを構成するパケットである。例えば、図1(a)では、送信側クライアント装置7から発信されたSDHやイーサネットのフレームであるユーザ信号は、MPLS網9の入側エッジ装置1でMPLSパケット(検査用パケット)としてカプセル化され、コア装置2を経由して、出側エッジ装置3に転送される。そして、出側エッジ装置3は、MPLSパケットをデカプセル化したユーザ信号(SDHやイーサネットのフレーム)を、受信側クライアント装置8へと転送する。
【0019】
なお、MPLS網9内におけるユーザパケットのカプセル化/デカプセル化処理については、例えば、T−MPLS(Transport-Multi Protocol Label Switching)を用いればよい。T−MPLSは、文献「ITU-T (International Telecommunications Union Telecommunications Standardization Sector) G.8121/Y.1381:Characteristics of Transport MPLS equipment functional blocks」に記載されている。
【0020】
図1(b)は、MPLS網9を流れるパケットと、そのValid情報を示す説明図である。
ダミーパケットは、MPLS網9内にユーザパケットが流れておらず、かつ、パケット間の隙間期間であるIFG(Inter Frame Gap)にも該当しない空白期間に生成されてMPLS網9内を流れるパケットである。例えば、図1(a)では、入側エッジ装置1で作成され、上下それぞれのコア装置2を経由して、出側エッジ装置3に転送される。ダミーパケットは、ユーザパケットとは異なり、受信側クライアント装置8には送信されない。
入側エッジ装置1は、ユーザパケットが流れなくなってから、最小IFG長を確保した後にダミーパケットの生成を開始し、次のユーザパケットが到達するよりも最小IFG長分だけ前に、ダミーパケットの生成を終了する。なお、連続する2つのユーザパケットの間が、狭い(最小IFG長を確保できない)ときには、ダミーパケットの生成は省略してもよい。
【0021】
Valid情報は、MPLS網9内にユーザパケットが流れている期間を示す制御信号である。Valid情報が「ON」である期間は、MPLS網9内にユーザパケットが流れている。
このように、ユーザパケットだけでなく、ダミーパケットの送信度合い(エラーレート)をもとにして、MPLS網9内の信頼性を評価することで、MPLS網9内の信頼性を常時(ユーザパケットが流れていない期間であっても)測定できるので、MPLS網9内の障害を早期に発見することができる。
【0022】
図2は、通信システムを流れるパケットを示す説明図である。本実施形態では、パケット図において、左側をパケットの先頭とし、右側をパケットの末尾とする。
【0023】
図2(a)は、標準のMPLSパケットを示す。このMPLSパケットは、先頭から順に、パケットTOPのMAC(Media Access Control)ヘッダ、MPLSヘッダ、ユーザ信号、および、パケットENDのFCS(Frame Check Sequence)フッタの順に構成される。
MPLSヘッダは、MPLS網9内の宛先を示すT−LSPと、そのT−LSPに対する1bit誤り訂正符号であるHEC(Header Error Control)とで構成される。HECについては、例えば、特開2010−206741号公報に記載されている。このHECは、直前のフィールド(例えば、T−LSP)の誤り(例えば、T−LSPならパケットの送信先の誤り)を抑制するために付与される。
ユーザ信号は、SDH/SONETのフレームであってもよいし、イーサネットのフレームであってもよい。
【0024】
FCSは、1つの単位パケットがここで終了することを示し、パケットの前半部(MAC、MPLS、ユーザ信号)を対象にしたCRC(Cycle Redundancy Check)処理により生成されるエラー検出符号が格納されている。
そして、出側エッジ装置3によるFCSへのCRC処理により、パケットが送信される過程で発生した1bit以上のエラー、すなわちパケットの誤り検出することができる。出側エッジ装置3は、FCSで誤り検出されたユーザパケットを廃棄するとともに、入側エッジ装置1(送信側クライアント装置7でもよい)に対して、廃棄したユーザパケットの再送を要求してもよい。
【0025】
図2(b)は、識別子を拡張したMPLSパケット(ユーザパケット)を示す。図2(b)のMPLSパケットは、図2(a)のMPLSパケットと比較すると、ユーザ信号の後にBIP(Bit Interleaved Parity)フィールドを設ける点と、MPLSヘッダ内に識別子フィールドとそのHECとの組を設ける点が、拡張されている。
【0026】
BIPフィールドには、パリティ符号が格納されている。このパリティ符号は、例えば、SDHネットワークで125us周期送信されるSDHフレーム内のBIPフィールドと同じように生成される。例えば、SOH(Section Over Head)のB1バイトであればBIP−8演算によるパリティチェック(ビット誤り検出方式)により、1フレームごとに最大8bitまでの誤りを検出することができるBIPのパリティ符号が生成される。
【0027】
なお、BIP−8の「8」とは、1つのパケット内のチェック対象データを8つの部分領域データに分割し、それぞれの部分領域データについてのパリティビットを1つずつ付加するという意味である。
FCSを参照することで、パケットの1bit誤りを検出でき、BIPを参照することで、パケットの複数bit誤り(例えば、BIP−8なら1bitから8bitまでの誤り)を検出できる。
ここで、BIPのパリティ符号を偶数パリティ符号として構成し、部分領域データに偶数個のbit誤りが存在してしまったときには、その部分領域データの誤りはパリティチェックでも未検出となる。
【0028】
識別子フィールドは、その識別子フィールドの後に続くデータがダミー信号(値「1」)かユーザ信号(値「0」)かを区別するためのダミー識別子と、その各信号の後(FCSの前)にBIPを付与しているか否かを示すBIP識別子と、後にダミー信号を連結させていることを示す連結識別子と(連結については、図3で後記)、を含めて構成される。
BIP識別子を含めることとしたので、ユーザパケットやダミーパケットは、BIPを含むパケットとしてもよいし、BIPを含まないパケットとしてもよい。また、ユーザ信号を格納するユーザパケットには、複数連結されないので、連結識別子は不要である。
そして、識別子フィールドの後には、その識別子フィールドに対するHECを付与する。
【0029】
一方、図2(c)に示すダミーパケットには、後にダミー信号を連結させることもできる。ダミーパケットとユーザパケットとの違いは、ユーザ信号がダミー信号に置き換わったことと、ダミー識別子として値「1」が格納されることである。
ダミー信号は、信頼性の計測用データであるため、送信側クライアント装置7や受信側クライアント装置8には送信されない。よって、ダミー信号として、0と1とが交互に続く信号や、PN(Pseudorandom Noise)符号などの任意の信号を採用してもよい。
【0030】
ダミーパケットは、MPLS網9内ではユーザパケットと同じように処理され(MPLSヘッダのT−LSPを参照したラベルスイッチング処理など)、エラーレートの計算に使用された後は、出側エッジ装置3で識別され廃棄される。このダミーパケットの大きさ(パケット長)は、最小パケット長である64byte以上であれば任意としてもよい。
【0031】
図3は、ダミーパケットの作成工程を示す説明図である。1つのダミーパケットは、1つのMACヘッダとMPLSヘッダとを先頭にして、その後に1つ以上の「64byte長のダミー信号、BIP、および、FCS」の組を次々に連結するように構成してもよい。
図1(b)で説明したように、ダミーパケットの目的はユーザパケットの空白期間を埋めることなので、このように連結可能な可変長のパケットとすることが、望ましい。複数のダミーパケットを作成する代わりに、1つの可変長の連結パケットを生成することにより、MACヘッダ、MPLSヘッダ、および、IFGをそれぞれダミーパケットの個数分だけ用意する必要がなくなり、MPLS網9のダミーパケット(ダミー信号)による回線使用率を高めることで、エラーレートの算出精度を向上させることができる。
【0032】
図4は、通信システムの各エッジ装置を示す構成図である。
入側エッジ装置1は、パケット認識部11と、ダミーパケット挿入部12と、セレクタ13と、パケット長計測部14と、アドレス制御部15と、バッファ16と、ヘッダ挿入部17と、BIP付与部18と、FCS付与部19とを含めて構成される。
【0033】
パケット認識部11は、受信したユーザパケットの到達期間をValid情報としてダミーパケット挿入部12に通知するとともに、受信したユーザパケットを後段のセレクタ13へと転送する。
ダミーパケット挿入部12は、Valid情報が「OFF」である期間にダミーパケットを生成し、後段のセレクタ13へと転送する。
セレクタ13は、前段から受信した送信用パケット(ユーザパケットとダミーパケット)を、伝送路に向かう後段(パケット長計測部14)に挿入する。
【0034】
パケット長計測部14は、セレクタ13からの送信用パケットのパケット長を計測し、その結果をアドレス制御部15に通知する。さらに、パケット長計測部14は、送信用パケットをバッファ16に書き込む。
アドレス制御部15は、バッファ16の書き込み用ポインタ(ライトアドレス)を制御することで、バッファ16内の各送信用パケットについて、コア装置2に送信するか否かを決定する。
バッファ16は、送信用パケットを一時的に格納する送信用バッファである。
【0035】
ヘッダ挿入部17は、バッファ16内の送信用パケットに、MPLSラベルを付与する。
BIP付与部18は、バッファ16内の送信用パケットに、図2(b)で説明したBIPの演算結果を付与する。ただし、BIP演算としてどのような演算を用いるかについては、ユーザの必要に応じて任意に設定してもよい。
FCS付与部19は、バッファ16内の送信用パケットに、図2(a)で説明したFCSの演算結果を付与する。
【0036】
出側エッジ装置3は、ヘッダ解析部31と、エラー検出部32と、エラーレート算出部33と、アドレス制御部34と、ヘッダ削除部36と、FCS削除部37と、BIP削除部38と、バッファ39とを含めて構成される。
【0037】
ヘッダ解析部31は、受信パケットのMPLSヘッダ情報を解析し、ダミーパケットかユーザパケットかの識別、および、BIP有無の識別を行う。
エラー検出部32は、受信パケットのエラー検出を行うため、FCSエラー検出部32aと、BIPエラー検出部32bとで構成される。
FCSエラー検出部32aは、受信パケットのFCSを参照し、エラーを検出する。
BIPエラー検出部32bは、受信パケットのBIPを参照し、エラーを検出する。なお、BIP無しパケットは、BIPエラー検出処理は省略される。
【0038】
エラーレート算出部33は、エラー検出部32で検出されたエラー数から、エラーレートを算出する(計算式の詳細は、図6のフローチャートの説明で明らかにする)。
アドレス制御部34は、バッファ39の書き込み用ポインタ(ライトアドレス)を制御することで、ダミーパケットを廃棄するとともに、ユーザパケットからデパケットしたユーザ信号を、後段の受信側クライアント装置8へと転送する。
【0039】
ヘッダ削除部36は、エラー検出部32を通過してバッファ39に書き込まれた受信パケットについて、MACヘッダとMPLSヘッダとを削除(デパケット)する。
FCS削除部37は、ヘッダ削除部36が処理した受信パケットのFCSフッタを削除する。
BIP削除部38は、FCS削除部37が処理した受信パケットのBIPフィールドを削除する。
バッファ39は、後段の受信側クライアント装置8へと転送されるユーザパケット(ユーザ信号)を格納する送信用バッファである。
【0040】
図5は、入側エッジ装置1の処理を示すフローチャートである。
S101として、パケット認識部11は、現在がユーザパケットが到着している期間か否かを判定する。ユーザパケットのTOP(開始)であるMACヘッダから、END(終了)であるFCSフッタまでの転送期間が、ユーザパケットが到着している期間(Valid情報が「ON」の期間)に該当する。S101でYesならS111に進み、NoならS102に進む。
【0041】
S102として、ダミーパケット挿入部12は、パケット認識部11からValid情報「OFF」の通知を受け、ダミーパケットの作成を開始(ヘッダ作成)する。なお、図1(b)で説明したように、連続する2つのユーザパケットの期間が狭いときには、ダミーパケットを生成せずに、S101に戻ってもよい。
S103として、パケット認識部11は、S101と同様に、Valid情報からユーザパケットが到着している期間か否かを判定する。S103でYesならS105に進み、NoならS104に進む。
S104として、ダミーパケット挿入部12は、ダミーパケットの作成を継続する。なお、生成を継続したダミーパケットが64byte以上となると、図3に示すような連結パケットとして作成を継続する。
S105として、ダミーパケット挿入部12は、パケット認識部11からValid情報「ON」の通知を受け、ダミーパケットの作成を終了し、S112へ進む。
【0042】
S111として、セレクタ13は、パケット認識部11から通知されたユーザパケットを、パケット長計測部14に通過させる。
S112として、セレクタ13は、S105で作成を終了したダミーパケットを、パケット長計測部14に挿入する。
【0043】
S121として、パケット長計測部14は、送信用パケット(S111のユーザパケットやS112のダミーパケット)について、そのパケット長を計測し、そのパケット長が正常なパケット長(例えば、最小パケット単位である64byte以上)であるか否かを判定する。ここで、パケット長計測部14は、連結されたパケットについても1つのパケットとしてそのパケット長を計測する。
S121でYesなら、アドレス制御部15は、送信用パケットをバッファ16に書き込み、以下の送信用パケットの各処理(S122〜S125)を実行させる。S121でNoなら、S126に進む。
【0044】
S122として、ヘッダ挿入部17は、S121で書き込まれた送信用パケットにヘッダを付与する。
S123として、BIP付与部18は、S122の送信用パケットにBIPを付与する。
S124として、FCS付与部19は、S123の送信用パケットにFCSを付与する。
S125として、アドレス制御部15は、S124の送信用パケットを、出側エッジ装置3に向かうコア装置2へと送信する。
【0045】
S126として、アドレス制御部15は、送信用パケットを廃棄する。ここで、アドレス制御部15は、送信用パケットをバッファ16に書き込まないことで廃棄してもよいし、送信用パケットをバッファ16に書き込んだあと、バッファ16への書き込み用ポインタ(ライトアドレス)を書き込んだ送信用パケットのパケット長だけ前に戻すことにより、次に書き込む予定の送信用パケットが、今回書き込んだ送信用パケットのメモリ領域を上書きする形で、今回の送信用パケットを廃棄してもよい。
【0046】
図6は、出側エッジ装置3の処理を示すフローチャートである。図6(a)のフローチャートは、出側エッジ装置3がMPLSパケットを送信側から受信することを契機として、開始される。
S201として、ヘッダ解析部31は、ヘッダ解析し、ダミーパケット識別子を確認することでパケットがユーザパケットか否か(ダミーパケットか)を判定する。S201でYesならS202およびS203を実行し、S201でNoならS202およびS204を実行する。
【0047】
S202として、出側エッジ装置3は、パケットごとの出側処理をする(詳細は、後記する図6(b)参照)。このS202の処理は、S201の判定結果にかかわらず、実行される。
S203として、アドレス制御部34は、ユーザパケットから取り出されたユーザ信号をバッファ39に書き込む。
S204として、アドレス制御部34は、ダミーパケットを廃棄する。なお、パケットの廃棄手法については、S126と同様に、ダミー信号をバッファ39に書き込まないことで廃棄してもよいし、ダミー信号をバッファ39に書き込んだあとに、書き込み用ポインタ(ライトアドレス)を書き込んだダミー信号分だけ前に戻すことにより、廃棄してもよい。
【0048】
図6(b)のフローチャートは、図6(a)のS202から呼び出される。
S211として、FCSエラー検出部32aは、図2(a)で説明したCRC処理により、FCSエラー(1bitエラー)を検出する。
S212として、BIPエラー検出部32bは、図2(b)で説明したパリティチェック処理により、BIPエラー(複数bitエラー)を検出する。
なお、ダミーパケットが連結されていた場合は、連結されていたパケットを連結前のダミーパケット群にばらした後、そのダミーパケット群を構成する各ダミーパケットについて、S211,S212のエラー算出処理を行う。
【0049】
S213として、エラーレート算出部33は、S211のFCSのエラー数と、S212のBIPのエラー数とをもとに、エラーレートを算出する。エラーレートの算出式には、以下に示す第1式または第2式を利用する。
まず、BIPが無いパケットについてのエラーレート算出式(第1式)の一例を示す。
エラーレート=Σ(FCSのエラー数)/Σ(パケット長[bit])
ここで、記号「Σ」は、S213の処理が複数回(複数のパケット)行われたときに、その各処理結果の総和演算を示す。
【0050】
次に、BIPがあるパケットについてのエラーレート算出式(第2式)の一例を示す。
エラーレート=Σ(FCSのエラー数またはBIPのエラー数)/Σ(パケット長[bit])
第2式では、BIPとFCSとで補完しあう形でエラーレート算出を行うので、BIPで同一レールの偶数bitエラーのためにエラーを検出できなかったとしても、FCSでパケットにエラーが存在することを確認することができる。
ここで、第2式の分子である(FCSのエラー数またはBIPのエラー数)とは、例えば、双方のエラー数のうちの検出した(非0である)エラー数が1種類であれば(例えば、FCSのエラー数=1、BIPのエラー数=0)、その検出したエラー数を採用するとともに(分子=1)、検出したエラー数が2種類であれば(例えば、FCSのエラー数=1、BIPのエラー数=4)、BIPのエラー数を採用する(分子=4)演算である。
【0051】
S221として、ヘッダ削除部36は、バッファ39に書き込まれた受信パケットから、MACヘッダとMPLSヘッダとを削除する。
S222として、FCS削除部37は、バッファ39に書き込まれた受信パケットから、FCSを削除する。
S223として、BIP削除部38は、バッファ39に書き込まれた受信パケットから、BIPを削除する。これにより、ユーザパケットからユーザ信号が取り出される。そして、ユーザ信号は、出側エッジ装置3から受信側クライアント装置8へと転送される。
【0052】
以上のような本実施形態により、エラー検出部32は、MPLSパケットのFCSを参照した1bitごとのエラー検出処理と、BIPを参照したパリティチェックによるパケットの部分領域ごとの(複数bitの)エラー検出処理とを併用することにより(2種類の併用だが、3種類以上でもよい)、MPLS網9のネットワーク品質に起因するMPLSパケットの損傷度合いを高精度で検出することができる。
その結果、エラーレート算出部33は、エラー検出部32の検出結果を活用した高精度なエラーレートを計算することで、パケットネットワークの信頼性評価を高精度で実現することができる。
【0053】
さらに、ダミーパケット挿入部12は、ユーザパケットが流れていない期間にダミーパケットを挿入することで、ユーザパケットとダミーパケットとの両方を用いて、エラーレート算出部33によるエラーレートの計算処理を実行させる。
これにより、エラーレート算出部33による高精度なエラーレートの計算結果を、細かい時間密度で(常時に)得ることができる。
【0054】
以上のように、MPLS網9のネットワーク品質の評価精度と評価頻度とをそれぞれ向上させることにより、例えば、伝送路の状態が著しく悪い箇所だけを補強したり修理したりしつつ、伝送路の状態がよい箇所に対して過剰投資を抑止するような、低価格で高品質なパケットネットワークを構築できる。
よって、同じネットワークの設備コストの投資効率が向上するため、ネットワーク品質の高いパケットネットワークを実現できる。そして、そのパケットネットワーク上に、ネットワーク品質を要求されるサービスも収容することができるようになり、多様なサービスを提供できる。
【符号の説明】
【0055】
1 入側エッジ装置
2 コア装置
3 出側エッジ装置
7 送信側クライアント装置
8 受信側クライアント装置
9 MPLS網(評価対象網)
11 パケット認識部
12 ダミーパケット挿入部
13 セレクタ
14 パケット長計測部
15 アドレス制御部
16 バッファ
17 ヘッダ挿入部
18 BIP付与部
19 FCS付与部
31 ヘッダ解析部
32 エラー検出部
32a FCSエラー検出部
32b BIPエラー検出部
33 エラーレート算出部
34 アドレス制御部
36 ヘッダ削除部
37 FCS削除部
38 BIP削除部
39 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入側エッジ装置から出側エッジ装置まで検査用パケットを転送する評価対象網の信頼性を評価するネットワーク評価方法であって、
前記入側エッジ装置は、前記評価対象網に流入したユーザ信号に対して、前記ユーザ信号の伝送誤りを検出するための誤り検出符号を複数種類分生成して、それぞれ生成された誤り検出符号のフィールドと、前記評価対象網内の転送に使用される宛先を示すフィールドとを、前記ユーザ信号にカプセル化した前記検査用パケットであるユーザパケットを生成して前記出側エッジ装置へと送信し、
前記出側エッジ装置は、受信した前記検査用パケットをデカプセル化して取り出した複数の誤り検出符号それぞれについて、デカプセル化して取り出した前記ユーザ信号を対象とした誤り検出演算により、前記複数種類それぞれの誤り検出回数を算出し、その算出した誤り検出回数と、受信した前記検査用パケットのデータ量との比率に応じて、前記評価対象網のエラーレートを算出することを特徴とする
ネットワーク評価方法。
【請求項2】
前記入側エッジ装置は、誤り検出符号を前記複数種類分生成するときに、
前記複数種類のうちの一方として、前記ユーザ信号全体に対して1bit単位の誤りを検出するFCS(Frame Check Sequence)を生成し、
前記複数種類のうちの他方として、前記ユーザ信号を複数区間に分割した各部分領域に対して、その部分領域ごとの誤りを検出するBIP(Bit Interleaved Parity)を生成することを特徴とする
請求項1に記載のネットワーク評価方法。
【請求項3】
前記入側エッジ装置は、前記出側エッジ装置へと送信する前記検査用パケットについて、前記ユーザパケットに加えて、そのユーザパケットが伝送されていない空白期間において、前記評価対象網外には流出させないダミー信号をパケット化したダミーパケットも送信し、
前記出側エッジ装置は、前記評価対象網のエラーレートを算出するときに、その計算対象となる前記検査用パケットとして、前記ユーザパケットに加えて、前記ダミーパケットも用いることを特徴とする
請求項2に記載のネットワーク評価方法。
【請求項4】
前記入側エッジ装置は、空白期間に前記ダミーパケットを送信するときに、1つの前記ダミーパケット用ヘッダに続いて、複数の所定長の前記ダミー信号を連結させた前記ダミーパケットを、送信することを特徴とする
請求項3に記載のネットワーク評価方法。
【請求項5】
前記入側エッジ装置は、前記検査用パケットが前記ユーザパケットか前記ダミーパケットかいずれかを示す識別子を付加して、前記検査用パケットをカプセル化し、
前記出側エッジ装置は、受信した前記検査用パケットからデカプセル化して取り出した識別子を参照して、受信した前記検査用パケットが前記ユーザパケットか前記ダミーパケットかを特定し、前記ユーザパケットであるときには、デカプセル化して取り出した前記ユーザ信号を前記評価対象網外に流出させるとともに、前記ダミーパケットであるときには、デカプセル化して取り出した前記ダミー信号を廃棄することを特徴とする
請求項3または請求項4に記載のネットワーク評価方法。
【請求項6】
前記入側エッジ装置は、前記出側エッジ装置へと送信する前記検査用パケットについて、そのパケット長を計測し、計測結果が最小パケット長未満の異常な前記検査用パケットが作成されたときには、その異常な前記検査用パケットを送信せずに廃棄することを特徴とする
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のネットワーク評価方法。
【請求項7】
入側エッジ装置から出側エッジ装置まで検査用パケットを転送する評価対象網の信頼性を評価するネットワーク評価システムであって、
前記評価対象網に流入したユーザ信号に対して、前記ユーザ信号の伝送誤りを検出するための誤り検出符号を複数種類分生成して、それぞれ生成された誤り検出符号のフィールドと、前記評価対象網内の転送に使用される宛先を示すフィールドとを、前記ユーザ信号にカプセル化した前記検査用パケットであるユーザパケットを生成して前記出側エッジ装置へと送信する前記入側エッジ装置と、
受信した前記検査用パケットをデカプセル化して取り出した複数の誤り検出符号それぞれについて、デカプセル化して取り出した前記ユーザ信号を対象とした誤り検出演算により、前記複数種類それぞれの誤り検出回数を算出し、その算出した誤り検出回数と、受信した前記検査用パケットのデータ量との比率に応じて、前記評価対象網のエラーレートを算出する前記出側エッジ装置とを有することを特徴とする
ネットワーク評価システム。
【請求項8】
前記入側エッジ装置は、誤り検出符号を前記複数種類分生成するときの一方として、前記ユーザ信号全体に対して1bit単位の誤りを検出するFCS(Frame Check Sequence)を生成し、他方として、前記ユーザ信号を複数区間に分割した各部分領域に対して、その部分領域ごとの誤りを検出するBIP(Bit Interleaved Parity)を生成し、それぞれ生成された誤り検出符号を前記検査用パケットに付加する検出符号付与部を有すること
請求項7に記載のネットワーク評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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