説明

ネット及びその製造方法

【課題】紐体に金属線を用いることでネットの強度を向上させつつ、製網機によってスムーズに製網することが可能なネットを提供すること。
【解決手段】複数本の線材8,9を撚って紐体5,6が構成されるとともに、複数本の紐体5,6を製網機によって結節することで製網されるネット3であって、複数本の線材8,9のうち、少なくとも1本の線材は、金属線8,9で構成されており、撚られた複数本の線材8,9の周囲には、樹脂材により形成された被覆部10が設けられ、複数の線材8,9と被覆部10により紐体5,6が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の線材を撚って紐体が構成されるとともに、複数本の前記紐体を製網機によって結節することで製網されるネット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農地や居住地等に間隔をあけて複数の支柱を立設させ、これら支柱間に架設された条体にネットを吊持させることで、農地や居住地等に鳥獣が侵入することを防止している防獣用柵があり、この防獣用柵に用いられるネットには、ポリアミド製のテグス(紐体)を製網した有結節網が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このようなネットを製網する製網機は、駆動源に糸振りと上鉤と下鉤アームとを連動させるとともに、上鉤と文銭との間で進退自在に配設された下鉤アームに下鉤を接続しており、糸振りの作用で上鉤に縦糸のループを形成するとともに、下鉤アームを前進させることによってループに下鉤を挿通し、糸振りの作用で下鉤に縦糸(紐体)を引掛けるとともに、下鉤アームを後退させることによって下鉤に引掛けた縦糸で横糸(紐体)を掬い、縦糸と横糸とを蛙又結びにより結節しており、この縦糸と横糸との結節を繰り返すことでネットを製網している(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−306940号公報(第3頁、第1図)
【特許文献2】特開2006−57201号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のネットにあっては、ネットが屋外に設置されることから、風雨や太陽熱、紫外線等による劣化の問題があるばかりか、鳥獣に対する耐久性に関して、ネットが十分な強度を保つことができずに破られてしまう場合があるため、ネットの縦糸及び横糸(紐体)を高耐候性・耐熱性そして高強度の金属線にして製網することでネットの耐候性、耐熱性及び強度を向上させることが要望されている。しかしながら、特許文献2に示した製網機によって金属線を製網しようとすると、製網機の上鉤及び下鉤と金属線によって構成された縦糸及び横糸との間に生じる摩擦抵抗が大きくなってしまい、金属線を用いて製網がし難くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、紐体に金属線を用いることでネットの耐候性、耐熱性及び強度を向上させつつ、製網機によってスムーズに製網することが可能なネット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のネットは、
複数本の線材を撚って紐体が構成されるとともに、複数本の前記紐体を製網機によって結節することで製網されるネットであって、
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、金属線で構成されており、前記撚られた複数本の線材の周囲には、樹脂材により形成された被覆部が設けられ、前記複数の線材と前記被覆部により前記紐体が形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、耐候性、耐熱性及び強度が高い金属線を紐体が有することで、この紐体により形成されるネットの耐候性、耐熱性及び強度を向上させることができるとともに、樹脂材により形成した被覆部により複数本の紐体の周面を低摩擦に構成することができるので、製網機によってネットを製網する際に、紐体と製網機の各部材との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑え、スムーズに製網を行うことができる。
【0008】
本発明のネットは、
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、なまし線で構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、紐体に金属線の耐候性、耐熱性及び強度と同時に可撓性を与えることができるので、複数の紐体の結節を容易に行うことができ、ネットの取り扱いを容易に行える。
【0009】
本発明のネットは、
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、鋼線で構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、高靭性を有するステンレス鋼などで形成された鋼線を線材に用いることで、ネットの耐候性、耐熱性及び強度を向上させて、ネットに衝突体が衝突しても紐体が破断することを防止することができる。
【0010】
本発明のネットは、
少なくとも1本の前記金属線は、前記紐体の中心部に配置されていることを特徴としている。
この特徴によれば、紐体が折り曲げられることで金属線に発生する折り曲げ応力を均一化することができるので、製網機がネットを製網する際には、製網機は、複数の紐体を結節するために、常に、安定した力で複数本の紐体を折り曲げることが可能となり、製網速度を安定させることができる。
【0011】
本発明のネットは、
少なくとも1本の前記金属線は、他の線材の径よりも大径に形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、紐体の折り曲げに対する強度を向上させ、紐体が金属疲労によって破断してしまうことを防ぐことができる。
【0012】
本発明のネットは、
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、樹脂線で構成されることを特徴としている。
この特徴によれば、線材に金属線よりも比重の軽い樹脂線を用いることで、ネットを軽量化することができる。
【0013】
本発明のネットの製造方法は、
複数本の線材を撚って紐体を構成するとともに、複数本の前記紐体を製網機によって結節することでネットを製網するネットの製造方法であって、
少なくとも1本の線材が金属線で構成された複数本の線材を撚り、該撚られた複数本の線材の周囲を樹脂材により被覆して被覆部を設けて紐体を形成し、複数本の前記紐体を製網機によって結節することでネットを製網することを特徴としている。
この特徴によれば、耐候性、耐熱性及び強度が高い金属線を紐体が有することで、この紐体により形成されるネットの耐候性、耐熱性及び強度を向上させることができるとともに、樹脂材により形成した被覆部により複数本の紐体の周面を低摩擦に構成することができるので、製網機によってネットを製網する際に、紐体と製網機の各部材との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑え、スムーズに製網を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ビルの屋上に設けられた庭園の周囲に張設されたネットを示す斜視図である。
【図2】ネットを示す正面図である。
【図3】紐体の構造を示すA−A断面図である。
【図4】紐体の構造の変形例を示す断面図である。
【図5】紐体の構造の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るネット及びその製造方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0016】
実施例に係るネットにつき、図1から図5を参照して説明する。図1の符号1は、農作物の栽培を行っているビルの屋上に設けられた庭園である。この庭園1の周囲には、複数本の支柱2が立設されており、これら隣り合う支柱2,2間には、本発明の適用されたネット3が張設されている。これらネット3は、庭園1の周囲及び上部に張設されることによって、庭園1内への鳥や猫等の鳥獣4の侵入を防止する防護用ネットである。
【0017】
また、これらネット3は、上下方向に配置された複数の紐体5,6を互いに結節することで構成されている。具体的には、複数の紐体5,6は、互いに製網機(図示略)によって一般的な蛙又結びで結節されることで複数の結節部7を形成しており、ネット3を正面視で菱形状の網目の有結節網として構成している。
【0018】
尚、本実施例では、ネット3の網目の寸法は、防鳥・防獣の用途を考慮して一辺を25mm〜200mm程度とすることが望ましいが、ネット3の網目は、防鳥・防獣の他、漁網等の用途によって適宜変更することが望ましい。
【0019】
次に、本実施例における紐体5,6の構造について説明する。尚、これら紐体5,6は同一の構造につき紐体5の構造のみについて説明し、紐体6の構造の説明は省略する。
【0020】
図3に示すように、この紐体5は、高靭性を有している線材である第1鋼線8(金属線)及び第2鋼線9(金属線)と、これら第1鋼線8と第2鋼線9との周囲を被覆する被覆部10と、により構成されている。これら両鋼線8,9のうち、第1鋼線8は、クロムを約11%以上含有した高耐候性、耐熱性又は強度のばね用ステンレス鋼線であり、紐体5の中心部に配置され芯材として用いられている。
【0021】
一方、第2鋼線9は、焼鈍処理(なまし加工)が施されたことにより第1鋼線8よりも軟質に構成された本発明におけるなまし線としての軟質ステンレス鋼線であり、第1鋼線8の周面に沿って複数本(本実施例では6本)が配置されている。
【0022】
また、これら第2鋼線9は、第1鋼線8の周面に沿って配置された状態で、第1鋼線8の長手方向に向けて撚られることで第1鋼線8を被覆している。尚、第1鋼線8は、第2鋼線9よりも大径に形成されており、鳥獣4によって破断されない強度を確保している。
【0023】
ネット3を製造する際には、先ず、第1鋼線8と第2鋼線9とを撚り、次に、この撚られた第1鋼線8と第2鋼線9との周囲を樹脂材により被覆して被覆部10を設けて紐体5を形成し、そして、複数本の紐体5を製網機によって結節することでネット3を製網する。
【0024】
前述のように構成された紐体5の周囲は、フッ素樹脂等の低摩擦特性を有する樹脂材によって構成された被覆部10によって被覆されている。このため、本実施例におけるネット3では、製網機による製網時に、製網機の各部材が直接第2鋼線9に当接することがないので、紐体5と製網機との各部材との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑えることができる。また、紐体5,6同士との間に発生する摩擦抵抗も小さく抑えることができる。
【0025】
加えて、図1に示すように、ネット3は、農地1の周囲に張設されることで日光から紫外線を受けるが、第1鋼線8と第2鋼線9とがステンレス鋼で構成されているため、紐体5,6が殆ど劣化することがない。このため、本実施例のネット3は、長期に渡って防獣用ネットとしての耐候性、耐熱性及び強度を保って使用可能となっている。
【0026】
尚、本実施例では、線材を第1鋼線8と第2鋼線9とで構成したが、例えば、図4に示すように、線材を全て略同一径のステンレス鋼材の鋼線11とポリエチレン等の樹脂材の樹脂線12により構成してもよい。具体的には、1本の鋼線11を紐体5の中心に配置するとともに、この紐体5の中心である鋼線11の周囲に各3本の鋼線11と樹脂線12とを周方向に交互に配置する。この場合には、鋼線よりも比重の軽い樹脂材を線材の一部として用いることで、ネット3の軽量化を図ることができる。
【0027】
また、本実施例では、線材を第1鋼線8と第2鋼線9とで構成したが、例えば、図5に示すように、線材を全て同一組成のステンレス鋼材の鋼線13で構成してもよい。特に、これら鋼線13を前述のばね用ステンレス鋼材とすることで、ネット3の耐候性、耐熱性及び強度を更に強固とすることができる。
【0028】
以上、本実施例におけるネット3は、複数本の線材を撚って紐体5,6が構成されるとともに、複数本の紐体5,6を製網機によって結節することで製網されるネット3であって、複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、金属線で構成されており、撚られた複数本の線材の周囲には、樹脂材により形成された被覆部10が設けられ、複数の線材と被覆部10により紐体5,6が形成されることによって、耐候性、耐熱性又は強度が高い金属線を紐体5,6が有することで、この紐体5,6により形成されるネット3の耐候性、耐熱性又は強度を向上させることができるとともに、樹脂材により形成した被覆部10により複数本の紐体5,6の周面を低摩擦に構成することができるので、製網機によってネット3を製網する際に、紐体5,6と製網機の各部材との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑え、スムーズに製網を行うことができる。
【0029】
また、複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、なまし線である第2鋼線9で構成されることで、紐体5,6に金属線の耐候性、耐熱性及び強度と同時に可撓性を与えることができるので、複数の紐体5,6の結節を容易に行うことができ、ネット3の取り扱いを容易に行える。
【0030】
また、複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、高靭性を有するステンレス鋼などで形成された第1鋼線8を線材に用いることで、ネット3の耐候性、耐熱性及び強度を向上させて、ネット3に衝突体が衝突しても紐体5,6が破断することを防止することができる。
【0031】
また、少なくとも1本の第1鋼線8は、紐体5,6の中心部に配置されているので、紐体5,6が折り曲げられることで第1鋼線8に発生する折り曲げ応力を均一化することができるので、製網機がネット3を製網する際には、製網機は、複数の紐体5,6を結節するために、常に、安定した力で複数本の紐体5,6を折り曲げることが可能となり、製網速度を安定させることができる。
【0032】
また、少なくとも1本の第1鋼線8は、第2鋼線9の径よりも大径に形成されるので、紐体5,6の折り曲げに対する耐候性、耐熱性及び強度を向上させ、紐体5,6が金属疲労によって破断してしまうことを防ぐことができる。
【0033】
また、複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、樹脂線12で構成されるので、線材に鋼線11よりも比重の軽い樹脂線12を用いることで、ネット3を軽量化することができる。
【0034】
本実施例におけるネット3の製造方法は、複数本の線材を撚って紐体5,6を構成するとともに、複数本の紐体5,6を製網機によって結節することでネット3を製網するネット3の製造方法であって、少なくとも1本の線材が金属線で構成された複数本の線材を撚り、撚られた複数本の線材の周囲を樹脂材により被覆して被覆部10を設けて紐体5,6を形成し、複数本の紐体5,6を製網機によって結節することでネット3を製網するので、耐候性、耐熱性及び強度が高い金属線を紐体5,6が有することで、この紐体5,6により形成されるネット3の耐候性、耐熱性及び強度を向上させることができるとともに、樹脂材により形成した被覆部10により複数本の紐体5,6の周面を低摩擦に構成することができるので、製網機によってネット3を製網する際に、紐体5,6と製網機の各部材との間に発生する摩擦抵抗を小さく抑え、スムーズに製網を行うことができる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0036】
例えば、前記実施例では、ネット3を庭園1の周囲に張設することによって、庭園1内への鳥、猫等の鳥獣4の侵入を防止する防護用ネットとして使用したが、本発明のネット3は、漁網等にも使用可能である。
【0037】
また、前記実施例では、ネット3を、紐体5,6同士を製網機による蛙又結びで結節した有結節網として構成したが、紐体5,6同士の結節は、前述の蛙又結びや二重蛙又結び等の製網に用いられる結びであれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1 庭園
2 支柱
3 ネット
4 鳥獣
5,6 紐体
7 結節部
8 第1鋼線(線材,金属線)
9 第2鋼線(線材,金属線)
10 被覆部
11 鋼線(線材)
12 樹脂線(線材)
13 鋼線(線材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線材を撚って紐体が構成されるとともに、複数本の前記紐体を製網機によって結節することで製網されるネットであって、
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、金属線で構成されており、前記撚られた複数本の線材の周囲には、樹脂材により形成された被覆部が設けられ、前記複数の線材と前記被覆部により前記紐体が形成されることを特徴とするネット。
【請求項2】
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、なまし線で構成されることを特徴とする請求項1に記載のネット。
【請求項3】
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、鋼線で構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のネット。
【請求項4】
少なくとも1本の前記金属線は、前記紐体の中心部に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のネット。
【請求項5】
少なくとも1本の前記金属線は、他の線材の径よりも大径に形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のネット。
【請求項6】
前記複数本の線材のうち、少なくとも1本の線材は、樹脂線で構成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のネット。
【請求項7】
複数本の線材を撚って紐体を構成するとともに、複数本の前記紐体を製網機によって結節することでネットを製網するネットの製造方法であって、
少なくとも1本の線材が金属線で構成された複数本の線材を撚り、該撚られた複数本の線材の周囲を樹脂材により被覆して被覆部を設けて紐体を形成し、複数本の前記紐体を製網機によって結節することでネットを製網することを特徴とするネットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63908(P2011−63908A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215892(P2009−215892)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(594060082)日本ミニチュアロープ株式会社 (1)
【出願人】(508270082)岡本漁網株式会社 (1)
【Fターム(参考)】