説明

ネット回収装置及びこれを用いたネット回収方法、ネット展張方法

【課題】ネットの回収及び展開時の作業効率の向上と作業負担の軽減を図る。
【解決手段】ネット回収装置1は、逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレーム3と、この両端部間に回転自在に装着された巻取軸部30と、この一端部に連結されて巻取軸部30を回転させる操作ハンドル40とを有する。この回収装置を用いてネットを回収する場合には、巻取軸部30にネットの一端部を掛け止し、本体フレーム3を把持しながら操作ハンドル40で巻取軸部30にネットを巻き上げながら、畝に沿って歩いて本体フレーム3をネット他端側へ移動させる。ネットを展張する場合には、ネットが巻回された巻取軸部30を本体フレーム3に装着し、本体フレーム3を把持しながら操作ハンドル40で巻取軸部30から繰り出されたネットを畝の一端側に設置し、畝に沿って歩いて本体フレーム3をネットの他端側へ移動させるとともに、操作ハンドル40によって巻取軸部30からネットを繰り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝に生育される花きや野菜等の作物の倒伏等を防止するため畝に設けられたネットを作物の収穫後に回収するネット回収装置及びこれを用いたネット回収方法、ネット展張方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業資材の1つであるフラワーネットは、キクやカーネーション、トルコキキョウ等の花きをはじめ、ネギやアスパラガス等の野菜生産にも広く用いられており、生育途中の作物の倒伏や曲がりを防止して品質を確保するために不可欠な資材である。
【0003】
このフラワーネットは、一般に畝の天端に設置され、作物の植え付けから収穫に至るまで、作物の高さに合わせてネットの高さを適切に調節することで、作物の姿勢が保持される。作物を収穫した後には、マルチ、フラワーネット、支柱杭等の撤去すべき資材が多く残される。これらの撤去作業は、「杭の撤去→フラワーネットの回収→マルチの撤去」の順番で行われる。
【0004】
この撤去作業のうち杭やマルチの撤去作業は、複数の作業者や機械等によって短時間で行うことができる。しかしながら、繰り返し使用されるフラワーネットの回収作業は、1畝に対して1名又は2名の作業者がフラワーネットを畝の端から丁寧に巻き取る方法で行われ、撤去作業全体を効率的に進めていく上でネックとなっている。
【0005】
そこで、車輪を有して走行可能なフレームにエンジン等の動力源で駆動される巻き取り機構を有するネット巻き取り回収作業機(特許文献1参照)や、作物の収穫と同時にフラワーネットの回収作業を行うことができるフラワーネット回収装置を搭載した小ギク収穫機が開発されている(非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載の回収作業機は、フラワーネットに約2m間隔で横桟が設けられたものを回収対象とし、畝長が180mの場合、回収されるネットの重量が約30kgとなって作業者の負担が増大することから、同作業機が開発された。しかしながら、多くの花き栽培では、畝長が100m以上になる場合は少なく、導入コストの面で動力式の回収作業機の要望は少ない。
【0007】
また、非特許文献1に記載の収穫機に搭載された回収装置は、切り花収穫作業との同時作業を前提とするものであり、この回収装置のみを使用するために、この収穫機を使用するのは大がかりすぎる。
【0008】
従って、フラワーネットを回収する作業を省力化する簡易な器具は存在せず、フラワーネットの回収作業は、手作業で行われているが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−148585
【非特許文献1】奈良県農業研究センターニュース(2010)、“小ギク切り花の収穫機と収穫作業体系の開発”、[online]、2010年6月、[平成23年3月1日検索]、インターネット <URL:http://www.pref.nara.jp/secure/8307/136-pl.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この手作業によるフラワーネットの回収作業は、ネットを圃場に展張する際に使用される木の角材を作業者が回転させて行う作業であり、この角材の回転操作は、作業者が手首を返しながらフラワーネットを角材に巻き付ける操作である。このため、作業者がこの操作を継続して行うと、手首が疲労して苦痛となり、休憩を取りながらの作業となる。このため、ネットの回収作業が途中で中断する時間が長くなり、ネット回収作業の作業効率が低下する。またフラワーネットの展張時にも回収と同様の問題が生じており、回収時及び展開時の作業効率化と作業負担の軽減が求められている。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、フラワーネットの回収時及び展開時において、回収作業及び展開作業の作業効率化と作業負担の軽減が可能なネット回収装置、及びこの回収装置を用いたネット回収方法、ネット展張方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題を解決するため、本発明は、畝に生育される作物を支持するため畝に設けられたネット(実施の形態におけるフラワーネットN)を巻き上げて回収するネット回収装置であって、逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、巻取軸部の一端部に連結されて該巻取軸部を回転させる回転手段(実施の形態における操作ハンドル40、ソケット61)とを有してなることを特徴とする(請求項1)。
【0013】
また本発明の巻取軸部は、本体フレームの両端部に着脱可能に装着されていることを特徴とする(請求項2)。
【0014】
また本発明は、本体フレームの一方側端部(実施の形態における支持本体右10)には、該一方側端部に回転自在に支持されて巻取軸部の一端部を挿入可能な孔部(実施の形態における挿入孔部55)を有した一側支持部(実施の形態における右側支持部50)が設けられ、本体フレームの他方側端部(実施の形態における支持本体左20)には、巻取軸部の他端部を挿入可能な穴部(実施の形態における凹部75a)を有して、他方側端部に回転自在に支持されるとともに該他方側端部に対して巻取軸部の軸心方向に摺動自在に支持されて、一側支持部との間に巻取軸部を装着する他側支持部(実施の形態における左側支持部70)が設けられ、他側支持部は、弾性体(実施の形態における圧縮ばね78)を介して他方側端部に支持されて、弾性体によって、一側支持部及び他側支持部間に装着された巻取軸部を一側支持部側へ附勢することを特徴とする(請求項3)。
【0015】
また本発明の回転手段は、一側支持部の巻取軸部が挿入される側と反対側の端部に着脱可能に連結される手動式の操作ハンドル又は電動式のドライバであることを特徴とする(請求項4)。
【0016】
さらに本発明の他側支持部は、これに装着される巻取軸部の軸心方向に延びて他側支持部に摺動自在に支持される支軸(実施の形態におけるガイド軸部71)と、該支軸の一側支持部側の端部に設けられて穴部(実施の形態における凹部75a)を有する接続部と、他側支持部の一側支持部側の端部と接続部との間に延びる支軸に装着された弾性体(実施の形態における圧縮ばね78)と、他側支持部の一側支持部側と反対側の端部から延出する支軸に設けられ、接続部の穴部に挿入された巻取軸部を該穴部から抜脱させる際に操作される操作レバーとを有してなることを特徴とする(請求項5)。
【0017】
また本発明は、逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、該本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、該巻取軸部の一端部に連結されて巻取軸部を回転させる回転手段とを有し、畝に生育される作物を支持するため畝に設けられたネットを巻き上げて回収するネット回収装置によって、作物を収穫した後の畝に残されたネットを回収するネット回収方法であって、巻取軸部に畝に残されたネットの一端部を掛け止し、本体フレームを把持しながら回転手段によって巻取軸部を回転させてネットを巻き上げるとともに、本体フレームを畝に沿って前記ネットの他端側へ移動させることを特徴とする(請求項6)。
【0018】
また本発明は、逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、該本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、該巻取軸部の一端部に連結されて巻取軸部を回転させる回転手段とを有し、畝に生育される作物を支持するため畝に設けられたネットを巻き上げて回収するネット回収装置を使用して、作物を生育する畝にネットを展張するネット展張方法であって、ネット回収装置によって回収されたネットが巻回された巻取軸部を本体フレームに装着し、本体フレームを把持しながら回転手段によって巻取軸部を回転させて巻取軸部から繰り出されたネットを畝の長手方向一端側に設置し、本体フレームを畝に沿って長手方向他端側へ移動させるとともに、該本体フレームの移動に伴って巻取軸部を回転させ又は回転手段によって巻取軸部を回転させて、巻取軸部からネットを繰り出すことを特徴とする(請求項7)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係わるネット回収装置、及びこの回収装置を用いたネット回収方法、ネット展張方法は、前述した特徴を有することで、フラワーネットの回収時及び展開時において、回収作業及び展開作業の作業効率化と作業負担の軽減を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係わるネット回収装置の正面図を示す。
【図2】このネット回収装置の右側に配設された支持本体右とこれに支持される右側支持部の正面図を示す。
【図3】支持本体右に支持された右側支持部とこれに装着される操作ハンドルの正面図を示す。
【図4】同図(a)は、右側支持部の側面図を示し、同図(b)は支持本体右に支持された右側支持部に操作ハンドルが装着されたネット回収装置の部分正面図を示す。
【図5】支持本体右に支持された右側支持部に電動式のドライバの先端部に挿着されるソケットの正面図を示す。
【図6】同図(a)は、本発明の一実施形態に係わるネット回収装置の左側に配設された支持本体左に支持された左側支持部の正面図を示し、同図(b)は左側支持部の側面図を示す。
【図7】左側支持部の作動を説明するための左側支持部の正面図を示す。
【図8】本発明のネット回収方法を説明するための説明図を示す。
【図9】本発明の他のネット回収方法を説明するための図を示し、同図(a)は複数段のフラワーネットが設けられた畝の斜視図であり、同図(b)は複数段のフラワーネットが設けられた畝の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係わるネット回収装置、ネット回収方法及びネット展張方法の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。先ず、本願発明のネット回収方法及びネット展張方法を説明する前に、これらの方法に用いられるネット回収装置について説明する。
【0022】
ネット回収装置は、図1(正面図)に示すように、作業者が把持可能な本体フレーム3と、本体フレーム3の両端部間に回転自在に装着された巻取軸部30と、巻取軸部30の左右方向右側端部に連結されて巻取軸部30を回転させる手動式の操作ハンドル40とを有してなる。
【0023】
本体フレーム3は、左右方向に直線状に延びるフレーム上部4と、フレーム上部4の両端部から下方に直線状に延びるフレーム側部右5及びフレーム側部左6とを有して、正面視において逆U字状に形成されている。フレーム側部右5及びフレーム側部左6は略同じ長さを有している。これらのフレーム側部5,6はフレーム上部4の延びる方向に対して略90°の角度を有して延びている。なお、本体フレーム3は逆U字状であれば、フレーム上部4とフレーム側部右5とのなす角度及び、フレーム上部4とフレーム側部左6とのなす角度は鈍角でもよく、またフレーム上部4、フレーム側部右5、フレーム側部左6が連続して屈曲して全体で湾曲する又は、直線と曲線が連続して繋がるように形成されてもよい。
【0024】
フレーム側部右5及びフレーム側部左6の各下端には、筒状の支持本体右10及び支持本体左20が設けられている。これら支持本体右10及び支持本体左20は、各内部の貫通孔10a、20aの中心軸線が略同一軸線上になるように配設されている。
【0025】
支持本体右10は、図2に示すように、その右側端部に支持本体右10の貫通孔10aの内径φAよりも小さい内径φBを有した孔部12aを備える平座金12が溶接等によって固着されている。平座金12はその孔部12aの中心軸線が支持本体右10の貫通孔10aの中心軸線と略同一直線上になるように配設されている。平座金12の詳細については後述する。
【0026】
この支持本体右10に右側支持部50が挿着される。右側支持部50は、左右方向に延びる円筒状の軸部51と、軸部51の左端に設けられ軸部51に対して直交する方向に延びる円板状のガイド板57と、軸部51の右端に固着された六角ナット59とを有してなる。
【0027】
軸部51は、大径部52と大径部52の右端に繋がって延びる小径部53とを有してなる。大径部52は、支持本体右10の貫通孔10aに嵌合可能な外径を有している。大径部52の外径φCは平座金12の孔部12aの内径φBよりも大きな寸法を有している。このため、軸部51が支持本体右10の貫通孔10aに挿入されると、大径部52の右端が平座金12の内面に接触して支持本体右10に対する右側支持部50の右側への移動が規制される。
【0028】
大径部52の軸の長さLは、大径部52の右端が平座金12に接触した状態で支持本体右10の左端面から延出する長さを有している。この大径部52の長さLは、巻取軸部30(図1参照)の長さや本体フレーム3の長さ等から決定される。
【0029】
小径部53の大径部側の端部には、環状の凹溝53aが設けられている。この凹溝53aには止め輪54(図3参照)が装着されて支持本体右10に対する右側支持部50の支持本体左側への抜脱を規制している。凹溝53aの幅Dは止め輪54と平座金12の厚さを合算した値よりも僅かに大きな寸法を有している。
【0030】
軸部51には、図3を更に追加して説明すると、その軸心方向に延びて手動式の操作ハンドル40の軸部41及び巻取軸部30(図1参照)の右側端部を挿入可能な挿入孔部55が貫通している。この挿入孔部55はその中心軸線が軸部51の中心軸線と略同一軸線上になるように設けられている。つまり、挿入孔部55は大径部52及及び小径部53を貫いて設けられている。
【0031】
小径部53の長さ方向中間部には挿入孔部55に直交する方向に貫通する貫通孔53bが設けられている。この貫通孔53bにはボルト53cが挿通されて、右側支持部50の挿入孔部55に挿入された操作ハンドル40の軸部41を右側支持部50に連結する。このため、操作ハンドル40を回動させると、右側支持部50は操作ハンドル40の回転方向と同一方向に回転する。操作ハンドル40を右側支持部50に連結する詳細については後述する。
【0032】
ボルト53cは先端部が小径部53から延出してナット53dと螺合される。小径部53の右側端部に固着された六角ナット59は、その内側のねじ部59aの内径が操作ハンドル40の軸部41の外径よりも僅かに大きな径を有し、六角ナット59の中心軸線が右側支持部50の軸部51の中心軸線と略同一軸線上に位置するように配設されている。このため、操作ハンドル40の軸部41は、六角ナット59のねじ部59aを通って挿入孔部55内へ容易に挿入することができる。
【0033】
ガイド板57は、その中央部に軸部51(大径部52)を挿入可能な孔部57aが設けられ、この孔部57aに挿入された軸部51にガイド板57が溶接等によって固着されている。ガイド板57の内側の周縁部には径方向外側に進むに従ってガイド板57の外側に傾く傾斜面57bが環状に設けられている。この傾斜面57bによって、フラワーネットの巻取軸部30(図1参照)側への移動を案内する。
【0034】
挿入孔部55の左側にはこの挿入孔部中心を通る板部材58が設けられている(図4(a)参照)。この板部材58は、巻取軸部30の一方側の端部に設けられた切り欠き(図示せず)と係合して回転する右側支持部50の動力を巻取軸部30に伝達する機能を有する。
【0035】
操作ハンドル40は、図3に示すように、挿入孔部55に挿入可能な直線状に延びる前述した軸部41と、軸部41の一端部に繋がって軸部41に対して直交する方向に延びる腕部43と、腕部43の一端部に繋がって軸部41と反対側へ延びる操作軸部45とを有してなる。操作軸部45には作業者が把持するゴム製の把持部46が挿着されている。
【0036】
軸部41の軸方向中間部には、前述した小径部53の貫通孔53bに挿通されるボルト53cを通すための貫通孔41aが設けられている。この貫通孔41aは、操作ハンドル40の軸部41が右側支持部50の挿入孔部55に挿入されると、貫通孔53bと連通可能である。貫通孔41aと貫通孔53bが連通した状態で、これらの孔にボルト53cを通し、小径部53から延出するボルト53cにナット53dを螺合することで、操作ハンドル40が右側支持部50に連結される(図4(b)参照)。
【0037】
操作ハンドル40の把持部46は、軸部41に対して腕部43の長さ分の距離を有した位置に配置されている。このため、軸部41を中心として把持部46を回転させると、モーメントによって比較的に小さい力で軸部41に連結された右側支持部50を回転させることができる。
【0038】
なお、図5に示すように、操作ハンドル40の代わりに、図示しない電動式のドライバの先端部に設けられる刃部等を装着するチャックに六角ナット59に係合可能なソケット61を装着し、このソケット61を軸部51の端部に固着された六角ナット59に係合してもよい。このようにすると、電動式のドライバの動力がソケット61及び六角ナット59を介して右側支持部50の軸部51に伝達されて、右側支持部50に装着される巻取軸部30(図1参照)を高速で回転させることができ、作業者の負担をより軽減することができる。
【0039】
本体フレーム3の左側に配設されたフレーム側部左6に設けられた支持本体左20は、図6(a)に示すように、その右端に支持本体左20の貫通孔20aの内径よりも大きい内径を有した孔部を備える平座金21が溶接等によって固着されている。支持本体左20の貫通孔20aは、後述する左側支持部70に設けられたガイド軸部71を摺動可能な大きさを有している。支持本体左20の左側端部には、ガイド軸部71を移動可能に挿通する六角ナット23が溶接等によって固着されている。このため、ガイド軸部71を有する左側支持部70は、支持本体左20に対して左右方向に移動自在に支持される。
【0040】
左側支持部70は、前述したガイド軸部71と、ガイド軸部71の右側端部を接続する接続部73と、接続部73の右端に接続されるガイド板75とを有してなる。ガイド軸部71の左側端にはガイド軸部71に対して直交する方向に延びる操作レバー77が設けられている。この操作レバー77は、詳細は後述するが、左側支持部70及び右側支持部50(図1参照)間に装着された巻取軸部30をこれらから取り外す際に操作される。
【0041】
ガイド軸部71の右側端部は接続部73に設けられた穴部に挿着され、接続部73と支持本体左20との間を延びるガイド軸部71には圧縮ばね78が装着されている。圧縮ばね78は、操作レバー77が六角ナット23に当接して左側支持部70が右側への移動が規制されると(この左側支持部70の記載された位置を「初期位置Ps」と記す。)、圧縮状態になるように構成されている。このため、左側支持部70が初期位置Psから矢印X方向にフレーム側部左6側へ移動すると、左側支持部70は常に圧縮ばね78によって初期位置Ps側へ附勢された状態になる(図7参照)。
【0042】
ガイド板75は、図6(a)及び図6(b)に示すように、右側の面の中央部に巻取軸部30の端部を挿抜可能な凹部75aが設けられている。この凹部75aは接続部73の内部まで延びている。またガイド板75の内側の周縁部には径方向外側に進むに従ってガイド板75の外側に傾く傾斜面75bが環状に設けられている。この傾斜面75bによってフラワーネットの巻取軸部側への移動を案内する。
【0043】
これら右側支持部50及び左側支持部70間に装着される巻取軸部30は、図1に示すように、左側支持部70が初期位置Psよりも左側に僅かに移動した位置と右側支持部50との間に装着可能な長さを有している。このため、巻取軸部30が右側支持部50及び左側支持部70間に装着されると、左側支持部70の圧縮ばね78の附勢によって、巻取軸部30はこれらの支持部間に確実に保持される。巻取軸部30の外径は、前述した右側支持部50の挿入孔部55(図2参照)及び左側支持部70の凹部75a(図6(a)参照)に挿抜可能な大きさを有している。
【0044】
巻取軸部30は、その軸方向に所定距離を有して複数のボルト31が挿通された状態で設けられている。これらのボルト31はフラワーネットN(図8参照)を巻取軸部30に巻き付ける際にフラワーネットNの網目にボルト31を引っ掛けてフラワーネットNの巻き取りを容易にするとともに、巻き取られたフラワーネットNのずれを抑えるものである。隣接するボルト31間の距離SはフラワーネットNの網目の大きさに応じて設定される。
【0045】
ボルト31は、巻取軸部30を貫通してその軸部が巻取軸部30から延出し、延出した軸部にナット32が螺合されて巻取軸部30に固定されている。
【0046】
このように構成された巻取軸部30を右側支持部50及び左側支持部70間に装着する場合には、図7に示すように、作業者はネット回収装置1を地面等に設置した状態で、左側支持部70が初期位置Psからフレーム側部左6側へ移動するように、左側支持部70の操作レバー77を左側に引っ張る。その結果、左側支持部70のガイド板75は圧縮ばね78の附勢に抗して左側に移動して、左側支持部70のガイド板75と図1に示す右側支持部50のガイド板57との間の距離は巻取軸部30の長さよりも大きくなる。
【0047】
そして、左側支持部70及び右側支持部50間に巻取軸部30を配置し、巻取軸部30の一端部を右側支持部50の挿入孔部55に挿入し、巻取軸部30の他端部が左側支持部70の凹部75aに挿入できるように、操作レバー77によって左側支持部70のガイド板75の位置を調整する。従って、巻取軸部30は左側支持部70及び右側支持部50間に確実に保持された状態で装着される。
【0048】
一方、左側支持部70及び右側支持部50間に装着された巻取軸部30を取り外す場合には、ネット回収装置1を地面等に置き、作業者は本体フレーム3を把持した状態で左側支持部70のガイド板75が左側に移動するように、左側支持部70の操作レバー77を左側に引っ張る。その結果、左側支持部70は圧縮ばね78の附勢に抗して左側に移動して、左側支持部70のガイド板75と図1に示す右側支持部50のガイド板57との間の距離が巻取軸部30の長さよりも大きくなり、巻取軸部30の他端部が凹部75aから抜脱される。そして、巻取軸部30の一端部を挿入孔部55から抜脱して、巻取軸部30の取り外し作業が終了する。
【0049】
次に、ネット回収装置1を用いた本願発明のネット回収方法を、図1及び図8を用いて説明する。図8は、作業者Mが畝Uに設けられたフラワーネットNを回収しているときの様子を図示したものである。フラワーネットNを回収する場合には、先ず、図1に示すように、左側支持部70及び右側支持部50間に巻取軸部30を装着する。そして、作業者Mは、図8に示すように、畝Uに設けられたフラワーネットNの長手方向の一端部を巻取軸部30に掛け止した後に、ネット回収装置1の本体フレーム3を把持しながら操作ハンドル40を回転して、フラワーネットNを巻取軸部30に巻き上げるとともに、畝Uに沿って歩きながら本体フレーム3をフラワーネットNの他端側(矢印B方向)へ移動させる。
【0050】
このようにフラワーネットNの回収作業時において、作業者Mはネット回収装置1を把持した状態で操作ハンドル40を回転させながら畝Uに沿って歩くことで、フラワーネットNを畝Uから回収することができる。ここで、操作ハンドル40の把持部46は、前述したように巻取軸部30に繋がる図4(b)に示す軸部41に対して腕部43の分だけ距離を有した位置に配置されているので、巻取軸部30に作用する負荷に対して小さい力で巻取軸部30を回転させることができる。このため、フラワーネットNの回収時の作業者Mの負担を軽減することができる。また作業者Mの負担が軽減されるので、フラワーネットNの回収時に作業者の休憩時間が短くなって回収作業の中断時間を短縮することができ、フラワーネットNの回収作業の作業効率を向上することができる。
【0051】
なお、前述したように操作ハンドル40の代わりに、電動式のドライバを用いると、フラワーネットNの回収時間をより短縮することができ、フラワーネットNの回収作業の作業効率をさらに向上することができる。
【0052】
また、本発明のネット回収装置1は、図9(a)、図9(b)に示すように、畝Uの幅方向両側に畝Uに沿って所定の間隔を有して配設された複数の支柱杭80が存在し、フラワーネットNがこれらの支柱杭80に引っ掛かった状態にある場合でも、前述したネット回収方法を同様に使用することで、畝U上に設けられたフラワーネットNを回収することができる。さらに、フラワーネットN、N'がこれらの支柱杭80に上下に複数段(図9(a)、図9(b)では2段の場合を示している。)に設けられた場合でも、前述したネット回収方法を同様に使用することで、上から一段ずつ順にフラワーネットN'、Nを回収することができる。
【0053】
次に、ネット回収装置1を用いた本願発明のネット展張方法を、図8を用いて説明する。先ず、フラワーネットNが巻回された巻取軸部30を本体フレーム3の左側支持部70及び右側支持部50間に装着する。そして、作業者Mは本体フレーム3を把持しながら操作ハンドル40を回転して巻取軸部30からフラワーネットNを繰り出し、フラワーネットNの一端部を木の角材等に繋いで畝Uの長手方向一端部に設置する。そして、作業者Mは、畝Uに沿って畝Uの他端側へ歩きながら、本体フレーム3の移動に伴って巻取軸部30を回転させ又は操作ハンドル40を回転して、巻取軸部30からフラワーネットNを繰り出して畝U上に設置し、フラワーネットNの他端部を木の角材等に繋いで畝U上に設置する。そして、畝U上に設置されたフラワーネットNは、その長手方向両端部に繋がれた木の角材を介して引っ張られて展張される。
【0054】
なお、フラワーネットNの一端部は木の角材等に繋がれて畝Uの長手方向一端部に設置されてるので、巻取軸部30からフラワーネットNを繰り出す際に、作業者Mが畝Uに沿って歩くことで、操作ハンドル40を回転させる操作を行うことなく、巻取軸部30が自然に回転して巻取軸部30からフラワーネットNを繰り出すことができる。但し、操作ハンドル40を回転させる操作を行うことで、巻取軸部30からフラワーネットNをより確実に繰り出すことができる。
【0055】
このようにフラワーネットNの展張作業時において、作業者Mはネット回収装置1を把持した状態で操作ハンドル40を回転させながら畝Uに沿って歩くことで、フラワーネットNを畝Uに設置することができる。ここで、操作ハンドル40の把持部46は前述したようにモーメントを利用して巻取軸部30を回転させることができるので、巻取軸部30に作用する負荷に対して小さい力で巻取軸部30を回転させることができる。このため、フラワーネットNの展張作業時の作業者の負担を軽減することができる。従って、フラワーネットNの展開時に作業者が休憩する時間が短くなって展開作業の中断時間が短くなり、フラワーネットNの展開作業の作業効率を向上することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 ネット回収装置
3 本体フレーム
10 支持本体右(一方側端部)
20 支持本体左(他方側端部)
30 巻取軸部
40 操作ハンドル(回転手段)
50 右側支持部(一側支持部)
55 挿入孔部(孔部)
61 ソケット(回転手段)
70 左側支持部(他側支持部)
71 ガイド軸部(支軸)
73 接続部
75a 凹部(穴部)
77 操作レバー
78 圧縮ばね(弾性体)
N フラワーネット(ネット)
U 畝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畝に生育される作物を支持するため前記畝に設けられたネットを巻き上げて回収するネット回収装置であって、
逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、
前記本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、
前記巻取軸部の一端部に連結されて該巻取軸部を回転させる回転手段と
を有してなることを特徴とするネット回収装置。
【請求項2】
前記巻取軸部は、前記本体フレームの両端部に着脱可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のネット回収装置。
【請求項3】
前記本体フレームの一方側端部には、該一方側端部に回転自在に支持されて前記巻取軸部の一端部を挿入可能な孔部を有した一側支持部が設けられ、
前記本体フレームの他方側端部には、前記巻取軸部の他端部を挿入可能な穴部を有して、前記他方側端部に回転自在に支持されるとともに該他方側端部に対して前記巻取軸部の軸心方向に摺動自在に支持されて、前記一側支持部との間に前記巻取軸部を装着する他側支持部が設けられ、
前記他側支持部は、弾性体を介して前記他方側端部に支持されて、前記弾性体によって、前記一側支持部及び前記他側支持部間に装着された前記巻取軸部を前記一側支持部側へ附勢することを特徴とする請求項1又は2に記載のネット回収装置。
【請求項4】
前記回転手段は、前記一側支持部の前記巻取軸部が挿入される側と反対側の端部に着脱可能に連結される手動式の操作ハンドル又は電動式のドライバであることを特徴とする請求項3に記載のネット回収装置。
【請求項5】
前記他側支持部は、これに装着される前記巻取軸部の軸心方向に延びて前記他側支持部に摺動自在に支持される支軸と、該支軸の一側支持部側の端部に設けられて前記穴部を有する接続部と、前記他側支持部の前記一側支持部側の端部と前記接続部との間に延びる支軸に装着された前記弾性体と、前記他側支持部の前記一側支持部側と反対側の端部から延出する支軸に設けられ、前記接続部の穴部に挿入された前記巻取軸部を該穴部から抜脱させる際に操作される操作レバーとを有してなることを特徴とする請求項3に記載のネット回収装置。
【請求項6】
逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、該本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、該巻取軸部の一端部に連結されて前記巻取軸部を回転させる回転手段とを有し、畝に生育される作物を支持するため前記畝に設けられたネットを巻き上げて回収するネット回収装置によって、作物を収穫した後の畝に残された前記ネットを回収するネット回収方法であって、
前記巻取軸部に前記畝に残された前記ネットの一端部を掛け止し、
前記本体フレームを把持しながら前記回転手段によって前記巻取軸部を回転させて前記ネットを巻き上げるとともに、前記本体フレームを前記畝に沿って前記ネットの他端側へ移動させることを特徴とするネット回収方法。
【請求項7】
逆U字状に形成されて作業者が把持可能な本体フレームと、該本体フレームの両端部間に回転自在に装着された巻取軸部と、該巻取軸部の一端部に連結されて前記巻取軸部を回転させる回転手段とを有し、畝に生育される作物を支持するため前記畝に設けられたネットを巻き上げて回収するネット回収装置を使用して、作物を生育する畝に前記ネットを展張するネット展張方法であって、
前記ネット回収装置によって回収されたネットが巻回された前記巻取軸部を前記本体フレームに装着し、
前記本体フレームを把持しながら前記回転手段によって前記巻取軸部を回転させて前記巻取軸部から繰り出されたネットを畝の長手方向一端側に設置し、
前記本体フレームを前記畝に沿って長手方向他端側へ移動させるとともに、該本体フレームの移動に伴って前記巻取軸部を回転させ又は前記回転手段によって前記巻取軸部を回転させて、前記巻取軸部からネットを繰り出すことを特徴とするネット展張方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−191883(P2012−191883A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57703(P2011−57703)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、農林水産省、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)