説明

ネット平張施設における雨除け構造

【課題】栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設において、該圃場内が降雨で濡れるのを防止するための雨除け構造に関し、既存のネット平張施設において、必要最小限の改造で容易に付加可能な簡易で安価な雨除け構造を実現する。
【解決手段】栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持すると共に、樋載置手段を利用して、隣接する桁部材の間のアーチパイプを連結固定する構造であるため、桁部材の上方に樋を載置支持して、雨除けシート上に降った雨水を樋に導いて排水できる。そして、この樋載置手段を利用して、隣接する桁部材との間のアーチパイプを連結固定する構造となっているため、各アーチパイプの上に雨除けシートを張って、ネット平張施設内が降雨で濡れるのを防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設において、該圃場内が降雨で濡れるのを防止するための雨除け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設は、降雨の影響をまともに受けるため、かっぱん病などの発生を抑制できず、また雨天時に収穫すると、出荷前に乾燥機で乾燥処理する必要があり、しかも乾燥状態を常時監視しながら乾燥機を制御するなどの面倒を伴う。さらに、ソリダコのように雨に弱い作物の栽培が困難で栽培品目も限定され、農家の安定収入に支障を来している。
【0003】
このような問題を解消すべく、既存のネット平張施設の天井部にビニールなどの雨除けシートを張って、ビニールハウス同様な施設を実現することを発案した。このような構造が既に提案されているか、先行技術を検索した結果、最も近似する技術として、特開平10−327681号が存在する程度である。しかしながら、この発明は、園芸ハウス内に任意の高さの内張りシートを形成し、しかもその高さを任意に調節できる構造である。
【特許文献1】特開平10−327681
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1の内容は、園芸ハウス内の内張りシートの高さを調節可能とした構造であって、既存のネット平張施設において、その防虫ネットの上側に雨除けのためのシートを張る構造ではないので、本発明のように、既存のネット平張施設における雨除け構造を実現することはでなきい。本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、既存のネット平張施設において、必要最小限の改造で容易に付加可能な簡易で安価な雨除け構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持すると共に、樋載置手段を利用して、隣接する桁部材の間のアーチパイプを連結固定する構造となっていることを特徴とするネット平張施設における雨除け構造である。このように、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなる既存のネット平張施設の天井部に所定間隔で配設されている桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持する構造であるため、桁部材の上方に樋を載置支持して、雨除けシート上に降った雨水を樋に導いて排水できる。そして、この樋載置手段を利用して、隣接する桁部材との間のアーチパイプを連結固定する構造となっているため、各アーチパイプの上に雨除けシートを張って、ネット平張施設内が降雨で濡れるのを防止することが可能となる。
【0006】
請求項2は、前記のアーチパイプの上に雨除けシートを被せると共に、その両端を、前記の樋保持手段に保持された樋の内側に取付け固定してなることを特徴とする請求項1に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このように、前記の各アーチパイプの上に雨除けシートを被せると共に、その両端を、前記の樋保持手段に保持された樋の内側に取付け固定してあるため、雨除けシートの上に降った雨水は、樋保持手段に保持された樋の中に導かれて、確実に排水可能となる。
【0007】
請求項3は、逆台形状棒材を挿通支持する支持穴を、コ字状に形成された板金の両腕先端に開けると共に、このコ字状板金を、前記の桁部材に下側から装着して被せ、コ字状板金の内部に桁部材が収納される構造としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このような逆台形状棒材を利用して、樋を保持したり各アーチパイプを取付け支持するが、この逆台形状棒材を挿通支持する支持穴を、コ字状に形成された板金の両腕先端に開けた構造を採っている。そして、このコ字状板金を、前記の桁部材に下側から装着して被せ、コ字状板金の内部に桁部材が収納される構造を採っている。このコ字状板金を、前記桁部材に下側から装着して、コ字状板金の内部に桁部材を収納すると共に、コ字状板金の両腕先端に開けた支持穴に逆台形状棒材を挿通して支持可能となり、コ字状板金を介して、各逆台形状棒材を桁部材に取付け支持することができる。
【0008】
請求項4は、逆台形状棒材を挿通支持する支持手段として、エンドレス又は両耳状に連結してなる挿通用ワイヤーを使用し、
前記挿通用ワイヤーを前記の桁部材の下側からU字状に巻き付け、その両上端に形成される穴部に前記の逆台形状棒材を挿通してなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このように、逆台形状棒材を挿通支持する支持手段として、エンドレス又は両耳状に連結してなる挿通用ワイヤーを使用するので、コ字状板金に比べて構成が簡素となり、かつネットの破損が極めて少ない。ワイヤーであるから、くさび手段を圧入して際の引っ張り力に対する強度も充分に確保できる。
【0009】
請求項5は、前記の桁部材の下部とコ字状板金又は挿通用ワイヤーの底部との間にくさび手段を圧入する構造となっていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造。このように、前記の桁部材の下部とコ字状板金又は挿通用ワイヤーの底部との間にくさび手段を圧入する構造となっているため、桁部材の上に各逆台形状棒材を強固に取付け固定できる。
【0010】
請求項6は、前記の逆台形状棒材の先端を前記のアーチパイプ及び/又は樋保持パイプに挿入固定してなることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このように、前記の逆台形状棒材の先端を前記のアーチパイプ及び/又は樋保持パイプに挿入固定してなる構造であるため、前記の逆台形状棒材にアーチパイプを取付け固定することが可能となる。端部の棟において、アーチパイプが不要な部分では、樋保持パイプを挿入固定しておけば、樋を取付け保持できるので、排水に支障は生じない。
【0011】
請求項7は、前記アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部及び/又は樋保持パイプの上に前記の樋を載置し固定してなることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このように、前記アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部及び/又は樋保持パイプの上に前記の樋を載置し固定してなる構造であるため、隣接棟の間における樋は、隣接棟のアーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部の上に樋を載置し固定することができる。端部の棟においては、アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部と樋保持パイプの上に樋を載置し固定することができる。
【0012】
請求項8は、アーチパイプを挿入する空間を形成するコ字状の両腕部の両側面に、樋のビニペットを水平に通す前向きの凹部を形成し、その上下アームの先端同士を連結する部分に、ビニペットの括れ部に嵌入する嵌入爪部を設け、前記コ字状腕部の背部にくさび挿入穴を水平方向に開けてあることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造である。このように、樋のビニペットを水平に通す前向きの凹部中にビニペットを前端の開口から収納し、上下アームの先端同士を連結する部分に形成されている嵌入爪部をビニペットの括れ部に嵌入させた状態で、コ字状の両腕部間の空間中に背部からアーチパイプ先端をほぼ上下向きに挿入してから、前記コ字状腕部の背部のくさび挿入穴にくさびを圧入することによって、アーチパイプ先端や樋保持パイプと樋のビニペットとを強固に締め付け連結可能となる。
【0013】
請求項9は、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋保持手段を取付け支持すると共に、樋保持手段を利用して、隣接する桁部材の間のアーチパイプを固定する構造となっているネット平張施設における雨除け構造において、雨除けシートの不要時又は台風襲来時などは、前記の各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端を他方の樋側に集積することを特徴とするネット平張施設における雨除けシートの処理方法である。このように、請求項1のようなネット平張施設の雨除け構造において、雨除けシートの不要時や台風襲来時などには、前記の各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端を他方の樋側に集積する方法によると、雨除けシートの不要時や台風襲来時などには、各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端のみを剥がし取って、他方の樋側の上まで移動し、集積することによって、各アーチパイプの上側を雨除けシートの無い状態にできると共に、剥がし取った雨除けシートを一時的に他方の樋の上に集積保管できる。したがって、次に雨除けシートを張る場合は、集積保管されている雨除けシートを各アーチパイプの上側に移動して被せ、張ることができる。その結果、雨除けシートを繰り返し使用できるので、維持費を節減できると共に、新しい雨除けシートを張り替える必要が無いので、作業の負担も軽減される。
【0014】
請求項10は、前記のようにして集積した雨除けシートの上に遮光ネットを被せることを特徴とする請求項9に記載のネット平張施設における雨除けシートの処理方法である。このように、前記のようにして樋の上に集積した雨除けシートの上に遮光ネットを被せることによって、日差しの強い夏場に、雨除けシートが高熱で劣化損傷したり、雨除けシート同士が熱融着したりするのを防止できる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1のように、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなる既存のネット平張施設の天井部に所定間隔で配設されている桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持する構造であるため、桁部材の上方に樋を載置支持して、雨除けシート上に降った雨水を樋に導いて排水できる。そして、この樋載置手段を利用して、隣接する桁部材との間の各アーチパイプを連結固定する構造となっているため、各アーチパイプの上に雨除けシートを張って、ネット平張施設内が降雨で濡れるのを防止することが可能となる。
【0016】
請求項2のように、前記の各アーチパイプの上に雨除けシートを被せると共に、その両端を、前記の樋保持手段に保持された樋の内側に取付け固定してあるため、雨除けシートの上に降った雨水は、樋保持手段に保持された樋の中に導かれて、確実に排水可能となる。
【0017】
請求項3のように、逆台形状棒材を利用して、樋を保持したり各アーチパイプを取付け支持するが、この逆台形状棒材を挿通支持する支持穴を、コ字状に形成された板金の両腕先端に開けた構造を採っている。そして、このコ字状板金を、前記の桁部材に下側から装着して被せ、コ字状板金の内部に桁部材が収納される構造を採っている。このコ字状板金を、前記桁部材に下側から装着して、コ字状板金の内部に桁部材を収納すると共に、コ字状板金の両腕先端に開けた支持穴に逆台形状棒材を挿通して支持可能となり、コ字状板金を介して、各逆台形状棒材を桁部材に取付け支持することができる。
【0018】
請求項4のように、逆台形状棒材を挿通支持する支持手段として、エンドレス又は両耳状に連結してなる挿通用ワイヤーを使用するので、コ字状板金に比べて構成が簡素となり、かつネットの破損が極めて少ない。ワイヤーであるから、くさび手段を圧入した際の引っ張り力に対する強度も充分に確保できる。
【0019】
請求項5のように、前記の桁部材の下部とコ字状板金又は挿通用ワイヤーの底部との間にくさび手段を圧入する構造となっているため、桁部材の上に各逆台形状棒材を強固に取付け固定できる。
【0020】
請求項6のように、前記の逆台形状棒材の先端を前記のアーチパイプ及び/又は樋保持パイプに挿入固定してなる構造であるため、前記の逆台形状棒材にアーチパイプを取付け固定することが可能となる。端部の棟において、アーチパイプが不要な部分では、樋保持パイプを挿入固定しておけば、樋を取付け保持できるので、排水に支障は生じない。
【0021】
請求項7のように、前記アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部及び/又は樋保持パイプの上に前記の樋を載置し固定してなる構造であるため、隣接棟の間における樋は、隣接棟のアーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部の上に樋を載置し固定することができる。端部の棟においては、アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部と樋保持パイプの上に樋を載置し固定することができる。
【0022】
請求項8のように、樋のビニペットを水平に通す前向きの凹部中にビニペットを前端の開口から収納し、上下アームの先端同士を連結する部分に形成されている嵌入爪部をビニペットの括れ部に嵌入させた状態で、コ字状の両腕部間の空間中に背部からアーチパイプ先端をほぼ上下向きに挿入してから、前記コ字状腕部の背部のくさび挿入穴にくさびを圧入することによって、アーチパイプ先端や樋保持パイプと樋のビニペットとを強固に締め付け連結可能となる。
【0023】
請求項9のように、請求項1のようなネット平張施設の雨除け構造において、雨除けシートの不要時や台風襲来時などには、前記の各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端を他方の樋側に集積する方法によると、雨除けシートの不要時や台風襲来時などには、各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端のみを剥がし取って、他方の樋側の上まで移動し、集積することによって、各アーチパイプの上側を雨除けシートの無い状態にできると共に、剥がし取った雨除けシートを一時的に他方の樋の上に集積保管できる。したがって、次に雨除けシートを張る場合は、集積保管されている雨除けシートを各アーチパイプの上側に移動して被せ、張ることができる。その結果、雨除けシートを繰り返し使用できるので、維持費を節減できると共に、新しい雨除けシートを張り替える必要が無いので、作業の負担も軽減される。
【0024】
請求項10のように、前記のようにして樋の上に集積した雨除けシートの上に遮光ネットを被せることによって、日差しの強い夏場に、雨除けシートが高熱で劣化損傷したり、雨除けシート同士が熱融着したりするのを防止できる。
【0025】
以上のように、本発明の雨除け施設を実施することによって、低コストで耐風性施設の改良と周年利用型施設が実現可能となった。また、栽培作物のかっぱん病などの発病抑制や降雨の影響を受けない安定生産・安定収穫作業が可能となり、かつソリダコのように雨に弱い作物も栽培可能で、栽培品目の拡大も図れる。特に、既存の施設を変形・破壊せずに雨除け施設の脱着ができ、かつ利用者個人でも行える程度の簡易な構造となっている。その結果、花卉類などの施設栽培を採用することによって、露地よりも高品質の作物を栽培が可能となり、農家の収益向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明によるネット平張施設における雨除け構造が実際上どのように具体化されるか実施形態を説明する。図1は、既存のネット平張施設の平面図であり、縦方向の各桁部材1a、1b、1cの上に、ビニペット(登録商標)と呼ばれる溝状の被覆材固定部材を取付け固定してあるので、各ビニペットと各母屋2…の上から防虫ネットを被せた状態で、防虫ネットの上からジグザグ状のスプリングをビニペットの溝中に挿入することによって、防虫ネットを各桁部材1a、1b、1cと各母屋2…の上に取付け固定してある。
【0027】
本発明は、このような各桁部材1a、1b、1cの上に逆台形状棒材を一定の間隔で取付け固定することによって、隣接する棟間に樋を配設すると共に各棟のアーチパイプを取付け固定する構造になっている。図2は、図1のA−A方向の縦断面図で、各桁部材1a、1b、1cと、樋5と、ビニペット7・Pと、母屋2…だけが断面図で現れる。前記の各桁部材1a、1b、1cと各母屋2…の上に防虫ネットnを被せて固定することによって、ネット平張施設の天井部が構成されている。このネット平張施設の前後左右の側壁にも防虫ネットを取付けることによって、害虫が施設内に侵入不能にしてある。
【0028】
各桁部材1a、1b、1cに取付け固定した逆台形状棒材3を利用して、樋5の荷重を載置支持している。すなわち、各逆台形状棒材3に各棟の各アーチパイプ4の端部を取付け固定すると共に、樋5を載置支持してある。図3は、この部分の拡大図であり、逆台形状棒材3の逆台形状の両端3eをアーチパイプ4の先端4e中に挿入してリベット6で固定してあり、その上に樋5を載置してある。樋5の両端縁には予め溝状のビニペット7が一体化されており、このビニペット7と各アーチパイプ先端4eが固定金具8で連結固定されている。
【0029】
図4は、図3の構造の側面図であり、縦方向の桁部材1bの上に前記の逆台形状棒材3を取付け固定してある。コ字状に形成された板金9は、前記の桁部材1bに下側から装着して被せてあり、該コ字状板金9の内部に桁部材1bを挿入した構造になっている。コ字状板金9の両腕9a、9bの先端に支持穴10、10を開けてあって、その中に、前記の逆台形状棒材3を挿通してある。そして、この状態で、前記の桁部材1bの下部とコ字状板金9の底部9bとの間にくさび11を圧入することによって、支持穴10中の逆台形状棒材3を桁部材1b上面に強固に締め付け固定してある。その結果、締め付け力によって、桁部材1b上のビニペットPは、押し潰された状態となる。なお、防虫ネットnを突き破って両腕9a、9bの先端を挿通してから、防虫ネットnの上側において、逆台形状棒材3を支持穴10に挿通する。
【0030】
こうして桁部材1b上に強固に固定された逆台形状棒材3の両端に、アーチパイプ4の先端4eを挿入連結してある。すなわち、アーチパイプ先端4e、4e中に逆台形状棒材3の両先端3e、3eを挿入した状態で、横からビス6、6を螺入して固定してある。アーチパイプ4、4の他端は、他端側の桁部材1a、1cの上の逆台形状棒材3に同様にして連結固定されている。なお、各アーチパイプ4と両先端4e、4eとの間は予め所定の曲率で多少曲げ加工してあり、両先端4e、4eに逆台形状棒材3の先端3eを挿入固定することによって、アーチパイプ4の全長が、図2のようにアーチ状に湾曲する。
【0031】
以上のようにして逆台形状棒材3の両端3e、3eが挿入連結されたアーチパイプ先端4e、4e間の逆台形状の空間中に樋5を挿入し載置すると共に、前記のように、樋5の両端縁に予め連結固定されているビニペット7、7をアーチパイプ先端4e、4eに連結固定してある。図5は、連結金具8の斜視図であり、コ字状に曲げた連結金具8の両腕部8a、8b間の空間Sにアーチパイプ先端4eをほぼ上下向き挿入できる。また、側面から見た場合、樋のビニペット7が入る前向きの凹部空間hの上下のアーム8c、8dが両腕部8a、8bに形成されている。そして、上下のアーム8c、8dの先端の両腕部8a・8b間の部分に嵌入爪部8e、8fが形成されている。この嵌入爪部8e、8fは、樋のビニペット7の底部から両側に突出した突起部71、72を越えて括れ凹部73、74中に嵌入する部分であって、両腕部8a、8bの背部には、くさび挿入穴8g、8hを開けてある。
【0032】
連結操作に際しては、連結金具8の片方の嵌入爪部8eをビニペットの片方の括れ凹部73中に嵌入させ、次いで他方の嵌入板縁8fをビニペットの他方の括れ凹部74中に嵌入させて樋側と連結した状態で、連結金具8の両腕部8a、8bをアーチパイプ先端4eに被せて、両腕部8a、8b間の空間Sにアーチパイプ先端4eを上下向きに挿入した状態とする。そして、両腕部8a、8bの背部のくさび挿入穴8g、8h中にくさび12を圧入することによって、アーチパイプ先端4eや樋保持パイプ5eに樋のビニペット7の背面を締め付け固定すると、図3、図4の状態となる。
【0033】
図1、図2の端部(左側)の棟においては、片方(右側)には、隣接する棟との間に樋5を挿入載置できるが、他方(左側)には隣接棟が存在しないため、図2の左側の棟の左端に現れているように、樋5を設けてあるだけである。したがって、逆台形状棒材3の両先端3e、3eの右側はアーチパイプ先端4eに挿入固定してあるのに対し、左側の先端3eは、図6のように、アーチパイプの先端部4eのみ残した形状をしている樋保持パイプ5eに挿入固定した構造となっている。結局、逆台形状棒材3の片方の先端3eはアーチパイプの先端4eに挿入固定するのに対し、他方の先端3eは樋保持パイプ5eに挿入固定した構造となる。なお、逆台形状棒材3の両先端3e、3eの長さは任意であり、図示のビニペット7取付け位置よりも長くすれば、両端まで直線状態のアーチパイプに挿入連結することも可能でアーチパイプ両端の曲げ加工は不要となり、また樋保持パイプ5eも不必要となる。
【0034】
図7は、図1のB−B方向の側面図であり、各棟の妻側の状態を示している。各棟の妻側の両端においては、妻側の端部のアーチパイプ4と妻側の梁13との間を数本の妻連結パイプ14で連結してある。妻側の端部のアーチパイプ4は、ネット平張施設の妻側の支柱や梁13から例えば数十cm内側に配置してあるので、妻連結パイプ14は、例えば45度程度の傾斜を持たせて取付けてある。その結果、妻側から強風を受けても、強風をアーチパイプ4…の上側に逸らすことができ、強風対策にもなる。また、各棟の両端において、妻側のアーチパイプ4を妻連結パイプ14で斜めに引っ張っているので、両端の妻間の各アーチパイプ4…が倒れたりすることも防止できる。なお、各アーチパイプ4…は、図1のように母屋パイプ15で連結して安定性を確保してあるので、各アーチパイプ4…が倒れたりする恐れはない。
【0035】
以上のようにして各棟の各アーチパイプ4…を組立て、各棟間の端部に樋5を取付けた状態において、各アーチパイプ4…の上にビニールシートなどの雨除けシートを被せる。そして、雨除けシートのアーチパイプ両端側の端部を樋両端縁のビニペット7中に押し込んで取付け固定する。すなわち、ジグザグ状のスプリングを雨除けシート端部の上からビニペット4の凹溝中に押し込んでジグザグ状のスプリングをフリーにすると、そのバネ力で雨除けシートがビニペット7中に強固に取付け固定される。
【0036】
沖縄のような台風の多い地域では、アーチパイプ4…上に張った雨除けシートを張りっぱなしにしておくのでなく、台風が襲来する際は、前もって雨除けシートをアーチパイプ4…上から外しておく必要がある。また、ネット平張施設内の圃場を自然の降雨で水分を加えたりする場合も、雨除けシートを外す必要がある。このように、雨除けシートを外す必要がある場合は、全部完全に外して撤去するのでなく、各棟間の窪んだ状態の位置に集めて集積する方法が好都合である。すなわち、雨除けシートの不要時や台風襲来時などには、前記の各アーチパイプ4…の上に被せてある雨除けシートの樋5側の一端を剥がして取り外した状態で、他方の樋5側に移動して集積する。雨除けシートを完全撤去して、新品と張り替えすることも可能ではあるが、コスト高になるほか、張り替え作業の負担も大きく、一人では不可能であるので、樋の上に集積する方法が簡便である。
【0037】
ところで、日差しの強い夏場には、樋の上に集積した雨除けシートが高熱で劣化損傷したり、雨除けシート同士が熱融着したりする恐れがある。これを回避するには、前記のようにして樋5の上に集積した雨除けシートの上に遮光ネットを被せると、遮光効果によって断熱されるので、雨除けシートが高熱で劣化損傷したり、熱融着したりするのを防止できる。
【0038】
図8は、コ字状板金9の代わりに、逆台形状棒材の挿通用のワイヤーを用いた実施形態で、(1)は環状に形成したワイヤー、(2)は両端に支持穴10、10を形成した両耳ワイヤーである。(1)のように、例えばワイヤーを綱状に撚ってなる高強度ワイヤーなどでエンドレスの環状に連結し形成する。この環状のワイヤーを二つ折りにして、図3のコ字状板金9のように桁部材1bの下側から被せると、両端に支持穴10、10に相当する半円状の穴が形成されるので、この半円状穴10、10中に逆台形状棒材3を挿通でき、丁度図3、図4と同様な構造となり、くさび11を打ち込むことによって、逆台形状棒材3を桁部材1b上に強固に締め付け固定できる。
【0039】
(1)図の環状ワイヤーの両端に支持穴10、10を残して、他の部分を平行状態に一体化したり、互いに縒り合わせて一本化すると、(2)図のような両耳状態となる。この場合も、一体化されたワイヤー部Wを桁部材1bの下側から被せて両端の支持穴10、10に逆台形状棒材3を挿通することができる。このように、コ字状板金に代えてワイヤーを用いると、平張ネットを上向きに通す際にネットの破損を極めて低減でき、あるいは破損を皆無にできる。なお、ワイヤーを二つ折りにすると、折り曲げ部は半円状となるため、くさびは、半円柱状体が好ましい。この場合、くさびの直径は、桁部材1bの幅寸法と同程度が好ましい。以上の逆台形状棒材3は、鉄筋のような棒状体でもよいし、中空のパイプ状体でもよい。
【0040】
以上の実施形態においては、各桁部材1a、1b、1cの間隔は例えば6m、桁方向の全長は例えば30m以上、桁部材断面寸法は例えば75mm×45mm、アーチパイプ4の外径は例えば22mm、逆台形状棒材3の外径は例えば19mmであるが、これらの寸法に限定されないことは言うまでもない。各桁部材1a、1b、1cは、四角鋼に代えて丸鋼を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明によると、栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持すると共に、樋載置手段を利用して、隣接する桁部材の間の各アーチパイプを固定する構造を採っているため、既存のネット平張施設において、ネットを突き破るだけで容易に桁部材上に樋載置手段を付加し、各アーチパイプを連結固定して、雨除けシートを被せることが可能で、一人でも施工可能な簡易な雨除け構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】既存のネット平張施設の上に本発明によるアーチパイプを施工した平面図である。
【図2】図1のA−A方向の縦断面図である。
【図3】桁部材とアーチパイプと樋との連結部の正面図である。
【図4】図3の連結部の側面図である。
【図5】各アーチパイプと樋側ビニペットとの連結金具の斜視図である。
【図6】樋保持パイプの部分を示す正面図である。
【図7】図1のB−B方向の側面図である。
【図8】コ字状板金の代用の挿通用ワイヤーで、(1)は環状に形成したワイヤー、(2)は両端に支持穴を形成した両耳ワイヤーである。
【符号の説明】
【0043】
1a、1b、1c 桁部材
2… 母屋
3 逆台形状棒材
4 アーチパイプ
5 樋
6 リベット
7 ビニペット
8 固定金具
9 コ字状板金
9a、9b 両腕
10 支持穴
11 くさび
P ビニペット
12 くさび
13 妻側の梁
14 妻連結パイプ
15 母屋パイプ
W 一体化ワイヤー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋載置手段を取付け支持すると共に、樋載置手段を利用して、隣接する桁部材の間のアーチパイプを連結固定する構造となっていることを特徴とするネット平張施設における雨除け構造。
【請求項2】
前記のアーチパイプの上に雨除けシートを被せると共に、その両端を、前記の樋保持手段に保持された樋の内側に取付け固定してなることを特徴とする請求項1に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項3】
逆台形状棒材を挿通支持する支持穴を、コ字状に形成された板金の両腕先端に開けると共に、このコ字状板金を、前記の桁部材に下側から装着して、コ字状板金の内部に桁部材が収納される構造としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項4】
逆台形状棒材を挿通支持する支持手段として、エンドレス又は両耳状に連結してなる挿通用ワイヤーを使用し、
前記挿通用ワイヤーを前記の桁部材の下側からU字状に巻き付け、その両上端に形成される穴部に前記の逆台形状棒材を挿通してなることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項5】
前記の桁部材の下部とコ字状板金又は挿通用ワイヤーの底部との間にくさび手段を圧入する構造となっていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項6】
前記の逆台形状棒材の先端を前記のアーチパイプ及び/又は樋保持パイプに挿入固定してなることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項7】
前記アーチパイプへの逆台形状棒材の挿入部及び/又は樋保持パイプの上に前記の樋を載置し固定してなることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項8】
アーチパイプを挿入する空間を形成するコ字状の両腕部の両側面に、樋のビニペットを水平に通す前向きの凹部を形成し、その上下アームの先端同士を連結する部分に、ビニペットの括れ部に嵌入する嵌入爪部を設け、前記コ字状腕部の背部にくさび挿入穴を水平方向に開けてあることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの項に記載のネット平張施設における雨除け構造。
【請求項9】
栽培圃場を防虫ネットで囲ってなるネット平張施設の天井部に所定間隔で配設された桁部材を利用して樋保持手段を取付け支持すると共に、樋保持手段を利用して、隣接する桁部材の間のアーチパイプを固定する構造となっているネット平張施設における雨除け構造において、
雨除けシートの不要時又は台風襲来時などには、前記の各アーチパイプの上に被せてある雨除けシートの樋側の一端を他方の樋側に移動して集積することを特徴とするネット平張施設における雨除けシートの処理方法。
【請求項10】
前記のようにして集積した雨除けシートの上に遮光ネットを被せることを特徴とする請求項8に記載のネット平張施設における雨除けシートの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−300900(P2007−300900A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−135642(P2006−135642)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【出願人】(506164394)沖阪産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】